上記の特許文献1によれば、緊急地震速報を受信することにより二次災害を防止することや、主要動が到達するまでの時間に注意喚起や車両の停止措置等を行うことができる。また、予測震度や到達予測時刻を用いた避難指示を行うことができる。
しかしながら上記のように、緊急地震速報受信機能と音声通話機能とが同一の通信装置又は通信システムにより実現されている場合、緊急地震速報の受信時に報知処理を優先するため、通話回線を強制的に切断する。このため、緊急地震速報受信時に通話が行われていた場合、通話相手は通話回線が切断された原因を知ることができなかった。このような状況では、通話相手は再接続を試みる可能性が高いが、緊急地震速報を受信した通信装置は通話機能を停止させているため、再接続要求は受け付けられない。このため、通話相手を混乱させるという問題があった。
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであって、その目的は、緊急地震速報の受信時において、所定の条件を満たす場合は通話回線の強制切断を即座に行わず、両通話者に切断通知を行ってから回線を切断することが可能な通信装置を提供することにある。
上記目的を達成するために本発明の通信装置は、通信網に接続可能な第一通信部と、前記第一通信部を用いて通信網より緊急地震速報を受信して地震情報を算出する地震情報算出部と、時刻を計時する計時部と、音声情報の復号処理を行う音声処理部と、音声を出力するスピーカとを備えた通信装置において、前記第一通信部により通話回線が確立されている状態において緊急地震速報を受信した場合に、前記地震情報算出部及び前記計時部により地震到達までの推定時間を算出し、前記推定時間が予め定められた閾値を超えるか否かを判定する時間判定部と、前記時間判定部により前記推定時間が閾値を超えると判定された際に、緊急地震速報の受信又は通話回線の切断を通知する通知音声の生成を前記音声処理部へ指示し、生成された前記通知音声を前記第一通信部により通話回線へ送信すると共に前記スピーカにより出力し、通話回線の切断を行う切断処理部とを備えたことを特徴としている。
この構成によると、本発明の通信装置は、通信網に接続可能なネットワークカードや無線LAN装置等を含む第一通信部を備えている。また第一通信部を用いてインターネット等の広域通信網から気象庁の配信する緊急地震速報を受信して予測震度や主要動の予測到達時刻を含む地震情報を算出する地震情報算出部を備えている。また、現在時刻を計時する計時部と、音声情報の復号処理を行う音声処理部と、音声を出力するスピーカとを備えている。
さらに、第一通信部により通話回線が確立されている状態において緊急地震速報を受信した場合に、地震情報算出部及び計時部により地震到達までの推定時間(=避難行動が可能な猶予時間)を算出し、推定時間が予め定められた閾値を超えるか否かを判定する時間判定部を備えている。さらに、時間判定部により推定時間が予め定められた閾値を超えると判定された際に、緊急地震速報の受信や通話回線の切断を通知する通知音声の生成を音声処理部へ指示する切断処理部を備えている。この指示を受けた音声処理部は、生成した音声をスピーカより出力すると共に、第一通信部により通話回線へ送信する。これにより、通話相手も通知音声を認識することが可能である。以上の処理が完了すると、切断処理部は通話回線を切断し、通常の緊急地震速報報知処理に移行する。
また上記目的を達成するために本発明の通信装置は、前記第一通信部により通話回線が確立されている状態において緊急地震速報を受信した場合に、前記地震情報算出部が算出する前記地震情報に含まれる推定震度が、予め定められた閾値を超えるか否かを判定する震度判定部を備え、前記切断処理部が、前記震度判定部により前記推定震度が閾値を下回ると判定された際に、緊急地震速報の受信又は通話回線の切断を通知する通知音声の生成を前記音声処理部へ指示し、生成された前記通知音声を前記第一通信部により通話回線へ送信すると共に前記スピーカにより出力し、通話回線の切断を行うことを特徴としている。
この構成によると、第一通信部により通話回線が確立されている状態において緊急地震速報を受信した場合に、地震情報算出部が算出した推定震度が、予め定められた閾値を超えるか否かを判定する震度判定部を備えている。切断処理部は、震度判定部により推定震度が閾値を下回ると判定された際に、緊急地震速報の受信又は回線の切断を通知する通知音声の生成を音声処理部へ指示し、回線の切断を行う。
また上記目的を達成するために本発明の通信装置は、前記切断処理部が、前記通知音声を、前記通話回線において伝達される音声に重畳するように前記音声処理部へ指示することを特徴としている。
この構成によると、切断処理部は、通知音声の出力を音声処理部に指示する際に、通話回線において伝達される音声、つまり両通話者の会話音声に通知音声を重畳して出力するように音声処理部へ指示する。
また上記目的を達成するために本発明の通信装置は、前記通知音声を生成するための通知音声情報を記録した記録部を備え、前記音声処理部が、前記記録部より前記通知音声情報を読み出して前記通知音声を生成することを特徴としている。
この構成によると、本発明の通信装置は、上述の通知音声を生成するための通知音声情報を記録した記録部を備えている。音声処理部は、記録部より通知音声情報を読み出すことにより、通知音声を生成してスピーカ等から出力する。
また上記目的を達成するために本発明の通信装置は、前記時間判定部が、前記地震情報算出部が算出する地震情報に含まれる地震到達推定時刻と、前記計時部が計時する時刻との差分から、前記推定時間を算出することを特徴としている。
この構成によると、時間判定部は、地震情報算出部が算出した地震到達推定時刻と、計時部が計時する現在時刻との差分を計算することにより、推定時間を算出し、算出した値に基づいて判定を行う。
また上記目的を達成するために本発明の通信装置は、前記第一通信部と、前記地震情報算出部と、前記計時部と、前記音声処理部と、前記スピーカと、前記時間判定部と、前記震度判定部と、前記切断処理部とを備えた主通信装置と、前記主通信装置と通信可能な第二通信部と、前記切断処理部と、前記音声処理部と、前記スピーカとを備えた副通信装置とを含む通信装置において、前記主通信装置が、前記時間判定部により前記推定時間が閾値を超えると判定された場合、又は前記震度判定部により前記推定震度が閾値を下回ると判定された場合に、前記副通信装置の前記切断処理部に対して、前記推定時間が閾値を超えること又は前記推定震度が閾値を下回ることを通知し、前記通知を受信した前記副通信装置の前記切断処理部が、前記通知音声の生成を前記音声処理部へ指示し、生成された前記通知音声を前記第二通信部により通話回線へ送信すると共に前記スピーカにより出力し、通話回線の切断を行うことを特徴としている。
この構成によると、本発明の通信装置は、親機(=主通信装置)と子機(=副通信装置)とを含むように構成されている。親機は、上述の第一通信部、地震情報算出部、計時部、音声処理部、スピーカ、時間判定部、震度判定部、及び切断処理部を備えている。これに対して子機は、親機と通信可能な第二通信部、切断処理部、音声処理部、及びスピーカを備えている。親機において、地震到達までの推定時間が閾値を超えると判定された場合、又は推定震度が閾値を下回ると判定された場合、親機は子機の切断処理部に対して通知を行う。この通知を受けた子機の切断処理部は、通知音声の生成を音声処理部へ指示し、生成された音声をスピーカより出力し、回線の切断を行う。
また上記目的を達成するために本発明の通信装置は、前記第一通信部と、前記地震情報算出部と、前記計時部と、前記音声処理部と、前記スピーカと、前記時間判定部と、前記震度判定部と、前記切断処理部とを備えた主通信装置と、前記主通信装置と通信可能な第二通信部と、前記切断処理部と、前記音声処理部と、前記スピーカとを備えた副通信装置とを含む通信装置において、前記切断処理部が、前記時間判定部により前記推定時間が閾値を超えると判定された場合、又は前記震度判定部により前記推定震度が閾値を下回ると判定された場合に、前記通知音声を前記第一通信部により前記副通信装置へ送信し、前記通知音声を前記第二通信部により受信した前記副通信装置が、前記スピーカにより前記通知音声を出力することを特徴としている。
この構成によると、親機は、上述の第一通信部、地震情報算出部、計時部、音声処理部、時間判定部、震度判定部、及び切断処理部を備えている。これに対して子機は、親機と通信可能な第二通信部、音声処理部、及びスピーカを備えている。親機において、地震到達までの推定時間が閾値を超えると判定された場合、又は推定震度が閾値を下回ると判定された場合、親機の音声処理部は通知音声を含む音声信号を第一通信部により子機へ送信する。これを第二通信部により受信した子機は、子機の音声処理部により音声信号を復号し、スピーカより出力する。
また上記目的を達成するために本発明の通信装置は、前記第一通信部が及び前記第二通信部が、無線通信網に接続可能な無線通信部を備え、前記主通信装置及び前記副通信装置が、前記無線通信部を用いて相互に通信を行うことを特徴としている。
この構成によると、本発明の通信装置は、親機と子機とが無線通信手段を備えており、無線通信網を介して相互に通信を行う。従って例えば、コードレス電話として用いることができる。
本発明の構成によれば、地震到達までの推定時間が閾値を超える場合に、緊急地震速報の受信や通話回線の切断を通知する通知音声を、通信装置の使用者や通話相手に対して通知してから、通話回線を切断する。従って、通信装置の使用者のみならず、通話相手も緊急地震速報の発生を認識することができる。このため、通話相手が強制切断により混乱し、再接続を何度も試みる等の不要な作業を行うことを回避できる。また、推定時間が短い場合は緊急地震速報の報知を優先するため、安全性が低下することもない。
また本発明の構成によれば、地震の推定震度が閾値を下回る場合に、緊急地震速報の受信や回線の切断を通知する通知音声を、通信装置の使用者や通話相手に対して通知してから回線を切断する。従って、通信装置の使用者のみならず、通話相手も緊急地震速報の発生を認識することができる。また、推定震度が大きい場合は緊急地震速報の報知を優先するため、安全性が低下することもない。
また本発明の構成によれば、通話回線の音声に上述の通知音声を重畳して出力する。このため使用者は、通話を行いながら通知音声を聞くことができるため、利便性が向上する。
また本発明の構成によれば、記録部より通知音声情報を読み出すことにより、通知音声を生成してスピーカ等から出力する。このため、通知実施の度に通知音声情報を生成する必要がない。
また本発明の構成によれば、地震情報に含まれる地震到達推定時刻と現在時刻との差分から、推定時間を算出する。このため、既存の地震情報を利用して簡易な処理で推定時間を算出することができる。
また本発明の構成によれば、本発明の通信装置は、親機と子機とを含むように構成されている。親機において推定時間が閾値を超える、又は推定震度が閾値を下回ると判定された場合、子機の切断処理部に対して音声通知が指示される。このため、親機と子機とで独立して通知を行うため、例えば通知内容を子機毎に変更したり、或いは一部の子機で通知処理を行わないように設定したりすることが可能である。
また本発明の構成によれば、子機が切断処理部を備えている。親機において推定時間が閾値を超える、又は推定震度が閾値を下回ると判定された場合、子機に対して通知音声を送信して通知を行う。このため使用者が子機を使用して通話を行っている場合でも、本発明の通知処理を実施することが可能である。
また本発明の構成によれば、本発明の通信装置は、無線通信網を介して相互に通信を行う。このため本発明をコードレス電話に適応することが可能であり、子機が移動中であっても、本発明の通知処理を実施することが可能である。
以下に本発明の実施形態を、図面を参照しながら説明する。なお、ここで示す実施形態は一例であり、本発明はここに示す実施形態に限定されるものではない。
[実施の形態1]
〈1−1.電話システムの構成について〉
図1は、本発明のコードレス電話装置(=通信装置)を含む電話システムの構成を示すブロック図である。本システムは少なくとも、親機1(=主通信装置)、子機2(=副通信装置)、有線LAN41、無線通信網42、IP電話ルータ51、ブロードバンドルータ52、ゲートウェイ53、IP電話網61、インターネット62、PSTN網63(=Public Switched Telephone Network:公衆電話交換網)、及び加入者電話装置71を含むように構成されている。
本発明のコードレス電話装置は、IP通信網に接続可能なコードレス電話装置であり、図中の親機1及び複数の子機2(子機A2a〜子機C2c)がこれに該当する。親機1は、有線LAN41に接続されることにより、電話網を介した音声通信が可能であるIP電話装置である。また親機1は、有線LAN41と無線通信網42との通信を中継する中継機能を持っている。これにより後述する子機2は、親機1を中継してIP電話網61やPSTN網63を介した通話を行うことが可能である。また親機1は、インターネット62を介して、気象庁が配信する緊急自身速報を受信する機能を持つ。なお、親機1の内部構造の詳細については後述する。
子機2は、後述する無線通信網42に接続されて親機1と通信を行うことにより、IP電話網61やPSTN網63を介して他の電話装置と音声通信を行うことが可能な無線通話装置である。なお、子機2の内部構成の詳細については後述する。
有線LAN41は、親機1、IP電話ルータ51、ブロードバンドルータ52、及びゲートウェイ53等が有線接続されたローカルのネットワークである。前記の各装置は有線LAN41に接続されることにより、相互に通信が可能となっている。なお、有線LAN41を構成する物理的な手段としては、例えばツイストペアケーブルを用いた10BASE−T(IEEE802.3iとして標準化)や100BASE−TX(IEEE802.3uとして標準化)等があげられる。
無線通信網42は、親機1と、複数の子機2とが無線接続された小規模の通信網である。具体的には例えば、2.4GHz(ギガヘルツ)の周波数帯の電波を利用したFHSS−WDCT(Frequency Hopping Spread Spectrum - Worldwide Digital Cordless Telephone)準拠の通信方式等を用いて相互に通信を行う。
IP電話ルータ51、及びブロードバンドルータ52は、複数のIPネットワークを相互接続するためのネットワーク中継装置である。具体的には、OSI(Open Systems Interconnection)参照モデルでいうネットワーク層(第3層)やトランスポート層(第4層)の一部のプロトコルを解析して転送を行う。本実施形態では、IP電話ルータ51は有線LAN41とIP電話網61との二つのIPネットワークを相互に接続する役割を持つ。またブロードバンドルータ52は、有線LAN41とインターネット62との二つのIPネットワークを相互に接続する役割を持つ。
ゲートウェイ53は、プロトコル体系が異なるネットワーク間を相互接続するためのプロトコル変換器である。ゲートウェイ53は例えば、有線LAN41とPSTN網63とを接続し、SIP等のシグナリングプロトコルを用いてシグナル変換を行うことにより、両ネットワーク間での通信を可能とする。
IP電話網61は、電話網の一部もしくは全てにVoIP(Voice over Internet Protocol)技術を利用した通信網であり、用いる通信回線としてはFTTH(Fiber To The Home)やADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)等の、いわゆるブロードバンド回線が利用される。なおVoIPとは、音声を各種符号化方式で圧縮してパケットに変換し、IPネットワークでリアルタイム伝送する技術である。これによりIP電話網61は音声通話サービスの他、画像の送受信を行うテレビ電話サービス等も提供可能である。
インターネット62は、通信プロトコルによるネットワークを相互接続して構築された広域通信網である。大小様々なコンピュータネットワークを相互に連結させて、国際的な通信ネットワークが構築されている。通信プロトコルとしては主に、TCP/IPが標準的なプロトコルとして採用されている。
PSTN網63は、一般の加入者電話回線ネットワークである。末端に電話装置を接続し、回線交換方式で通信相手に接続して音声通話を行うのに用いられる。加入者電話装置71は、電話加入者がPSTN網63を用いて他の加入者電話装置やIP電話装置と音声通話を行うための電話装置である。
〈1−2.親機の内部構成について〉
図2は、本発明の第一の実施形態に係る親機1の内部を示すブロック図である。親機1は少なくとも、制御部11、メモリ12、表示部13、入力部14、通信制御部15(=第一通信部)、アンテナ装置16(=無線通信部)、音声信号処理部17(=音声処理部)、スピーカ18、マイク19、時計回路20(=計時部)、及びフラッシュメモリ31(=記録部)を含むように構成されている。
制御部11は、親機1の各部を制御することにより通信制御処理(音声データの送受信、発呼の実施、或いは着呼の検知等)を統括制御するための中央処理装置である。また制御部11は、制御部11が備える演算処理装置上でプログラムを実行することにより実現される機能部として、地震情報算出部11a、猶予時間判定部11b(=時間判定部)、及び切断処理部11cを備えている。
地震情報算出部11aは、通信制御部15を用いてインターネット62から緊急地震速報を受信する。緊急地震速報には、地震検知時刻、地震識別番号、震央地名コード、震源の緯度/経度、震源の深さ、マグニチュード、最大予測震度、データの正確性(測定に使用したシステムや処理手法等)等のデータが含まれている。ただし緊急地震速報に含まれる予測震度及び主要動到達までの予測時間は大まかなものであり、地域毎の詳細な予測震度等は受信装置側で算出する必要がある。
算出処理には大きく分けて、単独観測点処理と、複数観測点処理との二つが存在する。単独観測点処理は、例えばP波検測やレベル法といった、観測点の近くで地震が発生したことを前提とした、局地的な一点型の測定処理である。複数観測点処理は、複数の単独測定点処理の結果を用いて、特定地の予測震度や主要動到達時刻を算出するためのものである。代表的な処理方法としては、テリトリー法やグリッドサーチ法が存在する。
地震情報算出部11aは、緊急地震速報に含まれる単独観測点処理結果と、メモリ12に記録されている緯度/経度情報に基づき、複数観測点処理を行う。具体的には例えば、まず複数の単独観測点処理結果から地震の三要素(震央:X、Y、時間:T、大きさ:M )を求める。さらに特定地の震央距離(震央X、Yから特定地X0、Y0までの距離)D、及び地震の大きさMから有感半径Rを求める。なおここでいう特定地とは、親機1が存在する緯度/経度を意味する。
地震情報算出部11aは、震央距離Dと、地震の大きさMと、震源の深さHとから、特定地での標準強度Sr を求める。そして地質状況などによる特定地における増幅係数Aを求め、標準強度Sr と増幅係数Aとを用いて主要動(S波)の予測強度、最大速度、最大加速度、最大変位、及び到達予測時刻等を求める。なお、地震情報算出部11aが用いる算出方法は上記内容に限定されるものではなく、運用の形態や緊急地震速報に含まれるデータ内容に応じて適宜変更可能である。
猶予時間判定部11bは、上記で算出された主要動到達予測時刻と、時計回路20が計時している現在時刻とから、主要動到達までの予測時間、すなわち使用者が避難行動をとることができる時間(以下、「猶予時間」という)を算出する。そして算出された猶予時間の値(以下、「猶予時間T」という)が、予め定められた閾値(以下、「閾値Ta」という)を超えるかどうかの判定を行う。判定結果は、後述する切断処理部11c及び切断処理部21aに与えられる。
なお、猶予時間判定部11bが用いる閾値Taの値は、例えば工場出荷時においてフラッシュメモリ31等の記録媒体に記録されている。或いは、使用者が設定画面等において設定できる形態でもよい。ただしこの場合、安全性確保のため、閾値Taを下げすぎないように、閾値Taの下限を定めておくことが望ましい。
切断処理部11cは、猶予時間判定部11bより与えられる判定結果が、T>Taを示すものである場合に、親機1の使用者及び通話相手に対して、緊急地震速報が発令されたことと、現在確立されている通話回線を切断することを示す通知音声の生成を、音声信号処理部17(後述)に対して指示する。
この指示を受けた音声信号処理部17は、予めフラッシュメモリ31に記録されている音声情報を読み出して復号処理を行い、スピーカ18から出力するとともに、通信制御部15により通話相手に送信する。通知音声の内容としては例えば、「緊急地震速報受信、電話を切断します」といった通知音声を用いる。なお、この通知音声はできるだけ短く、簡略な内容であることが望ましい。
なおこの際、音声信号処理部17が備えるミュート回路(不図示)により、通話音声のミュートを行うかどうかを、運用形態により適宜変更可能である。例えばミュートを行わない設定にしている場合、通話音声と通知音声とが重畳されてスピーカ18から出力される。これは、通話相手の通信装置に対して送信する通話音声に関しても同様である。
逆にミュートを行う設定にしている場合、通知音声のみがスピーカ18から出力される。この場合、通話を行うことはできなくなるが、使用者が通知音声を聞くことに集中できるようになる。
以上のような音声通知を行った後、制御部11は、通常の緊急地震速報の報知処理を行う。これにより例えば、「地震到達まであと9秒です、8秒です、7秒です…」といったカウントダウン音声が出力される。
メモリ12は、親機1が保持する各種データを一時的に記録する媒体であり、例えば書込可能なRAM(Random Access Memory)等により構成されている。メモリ12は制御部11によって各種通信制御処理が行われる際の処理データや、使用者から受けた指示命令等を一時的に記録しておくためのバッファメモリとしての役割を持つ。
表示部13は、親機1が保持する各種情報(例えば着信時における発信側電話番号等)を使用者に対して表示する。表示部13は例えば、液晶パネル等の小型で消費電力の少ない表示装置を用いる。入力部14は、使用者が親機1を用いて通信を行うための各種操作(例えば通話を行う相手の電話番号の入力等)を行うためのものである。入力部14は通常、数字ボタンやリダイヤルボタン等の複数の操作ボタンから構成されている。
通信制御部15は、親機1を有線LAN41に接続するための通信インタフェースである。通信制御部15は、有線LAN41に接続された呼制御サーバ(不図示)と通信を行うことにより、IP電話システムにおける着信処理や発信処理等を実施することが可能である。また通信制御部15は、アンテナ装置16による無線通信網42を介した無線通信の制御を行う。
アンテナ装置16は、子機2との間で無線通信電波の送受信を行うための無線通信装置である。アンテナ装置16は、所定の通信規格、例えばFHSS−WDCT(Frequency Hopping Spread Spectrum - Worldwide Digital Cordless Telephone)準拠の通信方式等に則って、無線通信を行う。これにより、子機2との間で音声通信やデータ通信等を行うことが可能である。
音声信号処理部17は、通信制御部15により入力された音声データの復号処理を行い、音声信号としてスピーカ18に与える。また音声信号処理部17は、マイク19より入力された音声信号に所定の符号化処理を施して音声データを作成し、通信制御部15に与える。これにより音声データは有線LAN41、無線通信網42、或いはIP電話網61等を通じて接続される他の電話装置へ送信される。
時計回路20は、現在時刻を計時するための回路であり、例えば所定の周波数による発振出力を行う水晶振動子を用いて計時を行う。また時計回路20は、時刻情報だけではなく、現在の月日や曜日といった暦に関連する暦情報の管理を行うことも可能である。
フラッシュメモリ31は、親機1が保持する各種データを一時的に記録する記録装置である。フラッシュメモリ31は、例えば音声信号処理部17が音声信号を生成するための音声情報や、各種制御よって発生する処理データ、設定データ、ユーザデータ等を記録する役割を持つ。フラッシュメモリ31は不揮発の記録媒体であるが、1バイト単位の書き換えが不可能であり、セクタ単位、或いはブロック単位でしか書き換えを行うことができない。
〈1−3.子機の内部構成について〉
図3は、本発明の第一の実施形態に係る子機2の内部を示すブロック図である。子機2は少なくとも、制御部21、メモリ22、表示部23、入力部24、通信制御部25(=第二通信部)、アンテナ装置26(=無線通信部)、音声信号処理部27(=音声処理部)、スピーカ28、マイク29、バッテリ部30、及びフラッシュメモリ32(=記録部)を含むように構成されている。
制御部21は、子機2の各部を制御することにより通信制御処理(音声データの送受信、発呼の実施、或いは着呼の検知等)を統括制御するための中央処理装置である。また制御部21は、制御部21が備える演算処理装置上でプログラムを実行することにより実現される機能部として、切断処理部21aを備えている。
切断処理部21aは、猶予時間判定部11bより無線通信網42を介して与えられる判定結果が、T>Taを示すものである場合に、子機2の使用者及び通話相手に対して、緊急地震速報が発令されたことと、現在確立されている通話回線を切断することを示す通知の実施を、音声信号処理部27(後述)に対して指示する。この指示を受けた音声信号処理部27は、予めフラッシュメモリ32に記録されている音声情報を読み出して、スピーカ28から出力するとともに、通信制御部25により通話相手に送信する。
メモリ22は、子機2が保持する各種データを一時的に記録する媒体であり、例えば書込可能なRAM(Random Access Memory)等により構成されている。メモリ22は制御部21によって各種通信制御処理が行われる際の処理データや、使用者から受けた指示命令等を一時的に記録しておくためのバッファメモリとしての役割を持つ。
表示部23は、子機2が保持する各種情報(例えば着信時における発信側電話番号等)を使用者に対して表示する。表示部23は例えば、液晶パネル等の小型で消費電力の少ない表示装置を用いる。入力部24は、使用者が子機2を用いて通信を行うための各種操作(例えば通話を行う相手の電話番号の入力等)を行うためのものである。入力部24は通常、数字ボタンやリダイヤルボタン等の複数の操作ボタンから構成されている。
通信制御部25は、アンテナ装置26による無線通信の制御を行う。これにより子機2は、無線通信網42に接続された親機1との通信を行うことが可能である。また、親機1を中継して、PSTN網63を介した着信処理や発信処理等を実施することが可能である。
アンテナ装置26〜フラッシュメモリ32については、親機1のアンテナ装置16〜フラッシュメモリ31と同一の構成であるため、ここでは説明を省略する。バッテリ部30は、外部電源(不図示)より電力の供給を受け、電力を一時的に備蓄しておく。例えば充電式アルカリ電池やリチウムイオンバッテリ等が用いられる。
〈1−4.避難指示処理について〉
ここで、本発明の第一の実施形態における親機1及び子機2を用いた、緊急地震速報受信時における避難指示処理について、図1〜図3のブロック図と、図4のフロー図とを用いながら説明する。
図4は、本実施形態における親機1の処理フローである。図4に示す処理フローは、親機1の電源が起動し、且つPSTN網63等を介した通話処理状態となった段階で、開始される。本処理の開始後、地震情報算出部11aはステップS110において、LAN41等の通信網を介した緊急地震速報の受信を検知したかどうかの判定を行う。検知していない場合、再びステップS110に移行し、継続して監視を行う。なお、図示していないが、監視中に通話処理が終了した場合は、本処理を終了する。
緊急地震速報を検知した場合、猶予時間判定部11bはステップS120において、地震到達までの猶予時間Tの算出を行う。さらに猶予時間判定部11bはステップS130において、猶予時間Tと閾値Taの比較を行う。比較の結果に基づき、ステップS140において処理の分岐を行う。
T>Taである場合、つまり猶予時間が閾値よりも大きく、比較的緊急度が低い場合、切断処理部11cはステップS145において、両通話者、つまり親機1の使用者と通話相手に対して、緊急地震速報の受信や、回線切断を行う旨を告げるメッセージを通知する。これは例えば、フラッシュメモリ31に予め記録されている固定メッセージを読み出し、音声信号処理部17により音声信号に変換し、スピーカ18及び通信制御部15に与えることにより行われる。
なおステップS145において、通話が行われているのが親機1ではなく子機2である場合、切断処理部11cは通信制御部15及びアンテナ装置16を用いて子機2の切断処理部21aと通信を行い、T>Taである旨を通知する。この通知を受けた切断処理部21aは、フラッシュメモリ32に予め記録されている固定メッセージを読み出し、音声信号処理部27により音声信号に変換し、スピーカ28より出力する。これにより、子機2を使用している使用者に対しても、回線切断メッセージを通知することができる。
次に切断処理部11c、又は切断処理部21aはステップS150において、通話回線の強制切断を行う。なお、ステップS140においてT>Taではないと判定された場合、つまり猶予時間が閾値よりも大きく、緊急度が高い場合は、即座にステップS150に移行する。
次に制御部11はステップS160において、緊急地震速報の報知処理を開始する。なお、報知処理の詳細については、従来技術と同様であるため、ここでは説明を省略する。次に地震情報算出部11aはステップS170において、新たな緊急地震速報が検知されたかどうかの判定を行う。
検知されていない場合、後述するステップS190に移行する。検知された場合、ステップS160において実施していた報知処理の内容を最新の情報、つまり後から受信した緊急地震速報の内容に切り替えて報知を行う。
次に制御部11はステップS190において、報知処理が継続中であるかどうかの判定を行う。なお報知処理は通常、主要動予測到達時刻が到来してから所定時間後、例えば一分後や二分後まで継続される。上記の所定時間の間は、例えば「緊急地震速報を受信しました」等の、猶予時間に関係のない固定メッセージを繰り返し出力する。
ステップS190において報知処理が継続中ではないと判定された場合、本処理を終了する。報知処理が継続中であると判定された場合、制御部11はステップS200において、通信制御部15による通話着信が検知されたかどうかの判定を行う。検知されていない場合、再びステップS170に移行する。
通話着信が検知された場合、制御部11はステップS210において、通信制御部15等に対して、着信応答に関連する処理を全て禁止し、着信応答を実施しない。これにより、緊急地震速報の報知中は通話を行えない状態とし、使用者が避難に専念できるようにする。その後、再びステップS170に移行する。
以上に説明した本実施形態によれば、通話中において緊急地震速報を受信し、且つ地震到達までの猶予時間が比較的長い場合において、即座に通話回線を強制切断せず、通話回線を確立した状態で、両通話者に対して緊急地震速報が発令された旨を伝えることができる。このため、通話相手が切断の理由を認識できず混乱し、再接続を何度も試みる等の不要な作業を行うことを回避できる。また、猶予時間が短い場合は緊急地震速報の報知を優先するため、安全性が低下することもない。
次に、本発明の第二の実施形態ついて、図面を参照しつつ説明する。
[実施の形態2]
〈2−1.電話システムの構成について〉
実施の形態1と同内容であるため、ここでは説明を省略する。
〈2−2.親機の内部構成について〉
本実施形態の親機1は、実施の形態1の猶予時間判定部11bに代わり、推定震度判定部11d(=震度判定部)を制御部11が備えている。また、切断処理部11cの機能が実施の形態1と一部異なる。
推定震度判定部11dは、地震情報算出部11aにより算出された推定震度の値(以下、「推定震度G」という)が、予め定められた閾値(以下、「閾値Ga」という)を超えるかどうかの判定を行う。判定結果は、後述する切断処理部11c及び切断処理部21aに与えられる。
なお、推定震度判定部11dが用いる閾値Gaの値は、例えば工場出荷時においてメモリ12等の記録媒体に記録されている。或いは、使用者が設定画面等において設定できる形態でもよい。ただしこの場合、安全性確保のため、閾値Gaを下げすぎないように、閾値Gaの下限を定めておくことが望ましい。
本実施形態の切断処理部11cは、猶予時間判定部11bより与えられる判定結果が、G<Gaを示すものである場合に、親機1の使用者及び通話相手に対して、緊急地震速報が発令されたことと、現在確立されている通話回線を切断することを示す音声通知を行うことを、音声信号処理部17に対して指示する。
〈2−3.子機の内部構成について〉
本実施形態の子機2は、切断処理部21aの機能が実施の形態1と一部異なる。本実施形態の切断処理部21aは、通信制御部25を介して猶予時間判定部11bより与えられる判定結果が、G<Gaを示すものである場合に、子機2の使用者に対して、緊急地震速報が発令されたことや、現在確立されている通話回線を切断することを示す通知音声の生成を、音声信号処理部27に対して指示する。
〈2−4.避難指示処理について〉
ここで、本発明の第二の実施形態における親機1及び子機2を用いた、緊急地震速報受信時における避難指示処理について、図5のブロック図と、図6のフロー図とを用いながら説明する。なお、実施の形態1と同内容の処理については、同じステップ番号を付加することにより説明を省略する。
図6に示すステップS110において地震情報算出部11aが緊急地震速報を検知した場合、推定震度判定部11dはステップS121において、地震情報算出部11aが算出した地震情報の中から、推定震度Gの取得を行う。さらに推定震度判定部11dはステップS131において、推定震度Gと閾値Gaとの比較を行う。比較の結果に基づき、ステップS141において処理の分岐を行う。
G<Gaである場合、つまり推定震度が閾値より小さく、比較的危険度が低い場合、切断処理部11cはステップS145において、両通話者、つまり親機1又は子機2の使用者と通話相手とに対して、緊急地震速報を受信したことや、回線切断を行う旨を告げるメッセージを通知する。なおステップS145の詳細については、実施の形態1と同様であるため、ここでは説明を省略する。
ステップS141においてG<Gaではないと判定された場合、つまり推定震度が閾値より大きく、危険度が高い場合、即座にステップS150に移行する。なお、ステップS150以降の処理については、実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。
以上に説明した本実施形態によれば、通話中において緊急地震速報を受信し、且つ推定震度が比較的小さい場合において、即座に通話回線を強制切断せず、通話回線を確立した状態で、両通話者に対して緊急地震速報が発令された旨を伝えることができる。このため、通話相手が切断の理由を認識できず混乱し、再接続を何度も試みる等の不要な作業を行うことを回避できる。また、推定震度が大きい場合は緊急地震速報の報知を優先するため、安全性が低下することもない。
[その他の実施の形態]
以上、好ましい実施の形態及び実施例をあげて本発明を説明したが、本発明は必ずしも上記実施の形態に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内において様々に変形して実施することができる。
従って本発明は、以下の形態にも適用可能である。
(A)本実施形態では、親機1が緊急地震速報を受信するための通信回線として、有線LAN41、及びインターネット62を使用しているが、これ以外の通信網、例えば専用回線やケーブルテレビ回線から緊急地震速報を受信する形態であってもよい。また、地上デジタル放送やBSデジタル放送のような、放送波から緊急地震速報を取得する形態であってもよい。
(B)本実施形態では、親機1及び子機2の両方が切断処理部を備えている形態を例に説明を行ったが、親機1のみが切断処理部を備えている形態でもよい。この場合、子機2で外線通話中に親機1が緊急地震速報を受信すると、親機1の切断処理部11cが、通信制御部15を介して通知音声を子機2に送信し、スピーカ28より出力した後、通話回線を切断する。このように親機1側で全ての処理を行うことにより、子機2の部材を減らすことが可能である。
(C)本実施形態では、避難指示処理に関わる各機能部が親機1及び子機2内部に備わっている構成を例として説明したが、これらの機能部の一部が電話網やLAN等のネットワークを介して接続された外部装置により実現される形態であってもよい。例えば、切断処理部11cが用いる音声情報が、フラッシュメモリ31ではなく、ネットワーク上に存在する情報処理装置(ネットワークサーバ等)に記録されている形態であってもよい。これにより例えば、通知音声の内容を変更したい場合に、複数の通信装置が用いる音声情報を一括して変更することが可能である。従って、一台毎に音声情報を変更する手間を省くことができる。
(D)本実施形態では、本発明の緊急地震速報通知機能を備えた通信装置として、親機1及び子機2を含むコードレス電話機を例にあげているが、広域通信網に接続して緊急地震速報を受信可能な通信装置であれば、これ以外の装置において本発明を実施する形態でもよい。例えば、無線LAN接続機能付き携帯電話、インターネット電話、IP通信が可能な子機を備えたIP電話、通話機能を搭載したパソコン上で実行されるアプリケーション等において実施する形態であってもよい。
(E)本実施形態では、本発明の避難指示処理に関わる親機1及び子機2の各種機能部が、マイクロプロセッサ等の演算処理装置上でプログラムを実行することにより実現されているが、各種機能部が複数の回路により実現される形態でもよい。
(F)本実施形態では、本発明の避難指示処理に関わる子機として無線通信機能を備えた子機2を例に説明しているが、無線通信機能を持たない有線通信のみ可能な子機において、本発明の避難指示処理を行う形態であってもよい。
(G)本実施形態では、緊急地震速報の重要度が高いか低いかの判定基準として、地震到達までの推定猶予時間、又は推定震度を用いているが、この両方を用いて判定する形態でもよい。例えば、推定猶予時間が10秒以上であり、且つ推定震度が3以下の場合のみ、本発明の通知処理を行うようにした実施形態でもよい。
(H)本実施形態では、猶予時間が閾値以上である場合に、固定メッセージにより通信者及び通信相手に対する通知を行っているが、固定メッセージを用いず、通常の緊急地震速報の音声を流用する形態でもよい。この場合、猶予時間が閾値以上であれば通話回線の強制切断を行わず、通信回線を確立したまま、使用者及び通信相手に対して緊急地震速報のカウントダウン音声を通話音声に重畳して通知する。これにより、双方において、緊急地震速報が発令されたことを認識することができる。
(I)本実施形態では、緊急地震速報のカウントダウン終了後に報知を行う時間の長さに付いては特に規定していないが、例えば予め使用者設定により、30秒、一分、二分のように時間指定で設定する形態でもよい。或いは、時間を定めず、使用者が親機1に対する操作を行うまで報知を継続する形態でもよい。また或いは、工場出荷時に固定値が定められており、使用者変更できない形態でもよい。