JP2010014753A - 顕微鏡用対物レンズ - Google Patents

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Abstract

【課題】可視域から赤外域まで良好な透過特性を有する顕微鏡対物レンズを提供する。
【解決手段】2枚以上のレンズを、接着材を介して接合した接合レンズを有する顕微鏡用対物レンズOLにおいて、この接合レンズにおける接着材のd線に対する屈折率をn1とし、この接着材により接合されるレンズの硝材のd線に対する屈折率をn2としたとき、次式
|n1−n2| > 0.15
の条件を満足する接着材とレンズとの境界面のうち、少なくとも1面以上の境界面に、反射防止膜を形成する。
【選択図】図1

Description

本発明は、顕微鏡用対物レンズに関する。
生細胞の観察においては、細胞を生きたまま観察することが主流となり、生きたままの観察故に固定標本のような染色ができないため、蛍光観察により、生細胞がどのような生命活動を行っているかを観察することが多くなっている。従来の蛍光観察では比較的波長の短い光を細胞に照射し、発した蛍光を観察していたが、波長の短い光はエネルギーが高く、励起光の照射により細胞が活動を弱めたり、最悪の場合、細胞が死んでしまうことが多かった。このため、励起光に長い波長の光を照射し、さらに長波長の蛍光を観察することが多くなってきた。このため、顕微鏡用対物レンズに要求されるスペックは従来よりも広い波長域に対するものとなり、従来よりも広い波長域に渡っての色収差補正や、広い波長域に渡って良好な反射防止特性を持った反射防止膜等が必要となってきている。
広帯域での色収差補正では、蛍石に代表される極低分散、かつ、異常部分分散特性を有した光学材料を多用することによりある程度は良好な収差補正が可能であるが、レンズに施される反射防止薄膜は薄膜を構成する膜物質に選択の自由度が少ないために高性能化することは困難である。例えば、紫外から可視帯域で反射防止効果のある薄膜としては、特許文献1等に開示されている。この例では、6層〜11層の膜構成が開示されており、波長350nm程度から800nm程度まで、赤外域では十分な反射防止効果がないものの、可視域においては良好な反射防止特性を有している。また、更なる広帯域化を行うことは可能であり、例えば特許文献2の第3図で示されている薄膜においては波長400nmから1000nm以上の領域まで反射防止効果のある薄膜が開示されている。
特開2001−141904号公報 特許第1944598号公報
しかしながら、両者を比較すると、特許文献1で示された反射防止膜は帯域が狭いが、可視域の反射防止特性に優れ、特許文献2の第3図で示された例は帯域が広いものの、特許文献1の反射防止膜よりも可視域において反射防止性能が悪い。これは適用波長域を広げることを重視した結果であり、帯域を広げようとすると可視域の反射防止性能悪化を招き、可視域での反射防止性能向上を重視すると適用可能帯域が狭くならざるを得ない。このように、対物レンズの透過特性は、可視域を重視した薄膜を使用すると赤外域での透過特性が犠牲となり、逆に赤外までの透過特性を重視すると可視域での透過特性を犠牲にせざるを得ないという課題があった。
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、可視域から赤外域まで良好な透過特性を有する顕微鏡用対物レンズを提供することを目的とする。
前記課題を解決するために、本発明に係る顕微鏡用対物レンズは、2枚以上のレンズを、接着材を介して接合した接合レンズを有し、この接合レンズにおける接着材のd線に対する屈折率をn1とし、この接着材により接合されるレンズの硝材のd線に対する屈折率をn2としたとき、次式
|n1−n2| > 0.15
の条件を満足する接着材とレンズとの境界面のうち、少なくとも1面以上の境界面に、反射防止膜を形成したことを特徴とする。
このような顕微鏡用対物レンズは、上記反射防止膜が形成された境界面を2以上有することが好ましい。
また、このような顕微鏡用対物レンズにおいて、接着材は、次式
1.5 < n1 <1.6
の条件を満足することが好ましい。
また、このような顕微鏡用対物レンズにおいて、反射防止膜が形成されるレンズは、次式
n2 < 1.9
の条件を満足することが好ましい。
また、このような顕微鏡用対物レンズは、反射防止膜を構成する膜物質に、MgF2、SiO2、若しくは、Al23の層の少なくともいずれか1つが含まれることが好ましい。
さらに、このような顕微鏡用対物レンズは、空気と接するレンズ面のうち、少なくとも1面に、MgF2の微粒子を用いた多孔質膜が形成されていることが好ましく、この多孔質膜のd線に対する屈折率が1.3以下であることが好ましい。
本発明に係る顕微鏡用対物レンズを以上のように構成すると、可視域から赤外域まで良好な透過特性を有する顕微鏡用対物レンズを提供することができる。
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照して説明する。顕微鏡用対物レンズにおいては1倍程度の極低倍レンズから100倍〜200倍程度の高倍率まで様々な種類が存在し、また、色収差の補正状況や蛍光観察対応など、目的により様々なものが存在する。これらの顕微鏡用対物レンズは複数の正レンズ、負レンズ、又は、これらを接合した接合レンズ等により構成され、多いものでは18枚にも及ぶレンズで構成されている。このうち、色収差の補正のために高屈折率・高分散ガラスと低屈折率・低分散ガラスを組み合わせた接合レンズも複数存在する場合が多い。
このような顕微鏡用対物レンズの例として、図1を用いて本発明の実施の形態について説明する。この図1に示す顕微鏡用対物レンズOLは、物体側、すなわちカバープレートC側より順に、物体側に凹面を向けた正メニスカスレンズL1と物体側に凹面を向けた負メニスカスレンズL2とを接合した接合レンズで構成される第1レンズ群G1と、物体側に凹面を向けた正メニスカスレンズL3で構成される第2レンズ群G2と、両凹レンズL4と両凸レンズL5とを接合した接合レンズで構成される第3レンズ群G3と、両凹レンズL6と両凸レンズL7とを接合した接合レンズで構成される第4レンズ群G4と、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL8と両凸レンズL9とを接合した接合レンズで構成される第5レンズ群G5と、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL10と両凸レンズL11と両凹レンズL12とを接合した接合レンズで構成される第6レンズ群G6と、両凸レンズL13と両凹レンズL14とを接合した接合レンズで構成される第7レンズ群G7と、両凹レンズL15と両凸レンズL16とを接合した接合レンズで構成される第8レンズ群G8と、を有して構成される。
この図1に示す顕微鏡用対物レンズOLの諸元を表1に示す。なお、この表1において、fは全系の焦点距離を、NAは開口数を、βは倍率を、d0はカバープレートCから最初のレンズ(正メニスカスレンズL1)の物体側の面(第1面)の頂点までの光軸上の距離をそれぞれ示している。また、第1欄mは物体側からの各光学面の番号であって、図1に示した面番号1〜24に対応している。また、第2欄rは各光学面の曲率半径、第3欄dは各光学面から次の光学面までの光軸上の距離、第4欄ndはd線に対する屈折率、第5欄νdはアッベ数をそれぞれ示している。
(表1)
f=3.33
NA=1.25
β=60X
d0=0.25

m r d nd νd
1 -10.000 0.63 1.45850 67.8
2 -1.051 2.82 1.83481 42.7
3 -2.921 0.10
4 -12.431 2.75 1.59240 68.3
5 -6.681 0.15
6 -63.897 1.00 1.51742 52.4
7 13.457 8.85 1.49782 82.5
8 -11.960 0.20
9 -636.078 1.00 1.81600 46.6
10 17.160 9.05 1.43385 95.2
11 -13.417 0.20
12 17.111 1.20 1.75500 52.3
13 11.170 6.90 1.43385 95.2
14 -26.536 0.60
15 27.985 1.10 1.81600 46.6
16 20.792 4.50 1.43385 95.2
17 -13.585 1.00 1.81600 46.6
18 46.225 0.20
19 7.409 5.90 1.49782 82.5
20 -28.987 4.60 1.64000 60.1
21 3.708 2.90
22 -4.496 4.40 1.60300 65.4
23 36.446 3.70 1.57501 41.5
24 -7.761
このように、この顕微鏡用対物レンズOLは、8群16枚で構成され、7群もの接合レンズが用いられており、接合面が8面、空気に接する面が15面存在する。
この顕微鏡用対物レンズOLの透過率は、レンズ面に形成される反射防止膜の種類によりほぼ決定され、例えば、負メニスカスレンズL2の像側の面(第3面)、正メニスカスレンズL3の物体側の面及び像側の面(第4,5面)、両凸レンズL5の像側の面(第8面)、両凸レンズL7の像側の面(第11面)、両凸レンズL9の像側の面(第14面)、両凸レンズL13の物体側の面(第19面)、両凹レンズL14の像側の面(第21面)、両凹レンズL15の物体側の面(第22面)、及び、両凸レンズL16の像側の面(第24面)に、設計中心波長530nmのMgF2(n=1.38)単層膜(「第1の反射防止膜」と呼ぶ)を形成し、その他の空気面に膜構成が表2に代表される特性の多層膜を形成した場合、波長500nmにおいて透過率が約83%程度であることが計算により求まる。この表2に示す薄膜の透過率曲線(波長λに対する透過率Rを示す図)を図2に示す。なお、表2において、第1層がレンズ面側(基板側)に位置し、第5層が空気側に位置する。
(表2)
層番号 膜物質 膜厚[nm]
1 Al・La酸化物 88.2
2 Ti・La酸化物 71.1
3 TiO2 63.8
4 Ti・La酸化物 76.1
5 MgF2 108.7
上述の第1の反射防止膜及び上記の多層膜を形成した顕微鏡用対物レンズOLにおける反射損失17%のうち、約13%は空気との境界面での反射による損失であり、4%が接合面による反射損失であり、このことから、接合面においても無視できない反射損失が存在することがわかる。なお、計算上、接合レンズを構成するレンズを接着するための接着剤の屈折率にはn=1.573を用いた。これらの反射損失は、レンズを接合する接着剤の屈折率と接合されるレンズの屈折率との差により発生する。
さらに、長波長域まで反射防止性能を有する薄膜を表3に示し、この薄膜の代表的な透過率曲線を図3に示す(この薄膜を「第2の反射防止膜」と呼ぶ)。なお、表3においても、第1層がレンズ面側(基板側)に位置し、第8層が空気側に位置する。
(表3)
層番号 膜物質(蒸着物質) 膜厚[nm]
1 La・Ti酸化物 9.2
2 SiO2 37.1
3 La・Ti酸化物 18.3
4 Al・La酸化物 27.6
5 La・Ti酸化物 55.9
6 Al・La酸化物 18.3
7 La・Ti酸化物 27.6
8 MgF2 92.5
この第2の反射防止膜を上述の箇所(第1の反射防止膜を形成した箇所)に、同様に適用すると、波長500nmにおいては透過率が約80%程度まで低下する。第1の反射防止膜は単層膜であり、設計中心波長では反射率をほぼ0にできる。この透過率の低下量は接合面の反射損失に匹敵する量であり、逆に接合面に反射防止膜を採用することで、より高帯域な透過特性を得ることができる。
このような接合面において、接着剤のd線に対する屈折率をn1とし、この接着剤により接着されるレンズの硝材のd線に対する屈折率をn2としたとき、この接着剤とレンズとの境界面における反射率Rは、次式(a)により求められる。
R = |(n1−n2)/(n1+n2)|2 (a)
例えば、接着剤としてポリエン−ポリチオール(Polyene-polytiol)系のUV硬化樹脂を用いた場合、この樹脂の屈折率をn1=1.537と仮定し、接合されるレンズの屈折率とこの接着剤の屈折率との差(|n1−n2|)を横軸とし、反射率(R)を縦軸として、この条件式(a)から求めた反射率をグラフ化すると図4のようになる。この図4から明らかなように、屈折率の差(|n1−n2|)が0.15以下であれば、反射率は0.2%以下となり、第2の反射防止膜を上述のレンズ面に用いたとしても、接合面での反射損失は(4−0.2=)3.8%改善されるため、全体として透過率は83.8%となる。そのため、このような場合には、第1の反射防止膜を形成した顕微鏡用対物レンズとほぼ同等の反射率となり、接着剤とレンズとの屈折率差が0.15以下の接合面(接着剤とレンズ面との境界面)に反射防止膜を形成したとしても、コストが上昇するのみで効果は少ないと言える。
これに対して、例えば、接着剤とレンズとの屈折率の差が0.2の場合、反射率は0.37%となり、接着剤とレンズとの屈折率の差が0.3の場合には反射率が0.8%となり、大きな損失となることがわかる。上述の表1に諸元値を示した顕微鏡用対物レンズOLのレンズ構成の場合、屈折率n2=1.816のガラスと接着剤(屈折率n1=1.537)との境界面での反射率は0.7%にも達し、この顕微鏡用対物レンズOLにおいては、このような反射率を持つ接合面が5面程度存在するため、合計で3.3%程度の透過率が低下する。多数の種類が存在する対物レンズにおいても、特に液浸系の高倍率対物レンズでは、そのレンズ構成は6群以上であることがほとんどであり、群数に比例して面数が増えることから透過率の確保が難しくなる。そのため、接合レンズにおいて、接着剤のd線に対する屈折率n1とレンズのd線に対する屈折率n2との差|n1−n2|が以下の条件式(1)を満足する接合面が存在する場合は、そのような接着剤とレンズ面との境界面のうち、少なくとも2箇所(2面)以上に反射防止膜を形成することが望ましい。
|n1−n2| > 0.15 (1)
顕微鏡用対物レンズを使用するユーザーにとって、可視域の透過率が高ければ、より少ない励起光で蛍光観察を行うことができ、また、励起光波長域での透過率向上はエネルギー使用効率を考えてもより少ないエネルギーで観察することができることとなるため、接合レンズにおける接着剤とレンズ面との境界面に反射防止膜を形成することは効果的である。
このように、接合レンズの接合面において、上述の条件式(1)を満足する接着剤とレンズ面との境界面に反射防止膜を形成することで、高透過特性を得ることができるが、さらに好ましい態様としてレンズの接合に使用する接着剤としては、屈折率n1が、以下の条件式(2)を満足することが好ましい。
1.5 < n1 < 1.6 (2)
レンズを接着する接着剤としては、前述したポリエン−ポリチロールなどが挙げられるが、さらにアクリルなども用いられる。また、ポリエン−ポリチロールも用途により様々なタイプのものが存在し、耐熱性・柔軟性・硬化速度・低自発蛍光の特性を考慮して、使用する目的に合わせて選択される。接合面における反射防止膜のコスト等を考慮すると、顕微鏡用対物レンズの設計においては、使用するレンズの屈折率はできる限り接着剤に近いもの、可能であればこの接着剤との屈折率の差が0.15以下を使用することが透過率を向上させる目的では好ましい。このような、ガラスの組み合わせのみで設計が可能であれば、接合面における反射防止膜は不要となる。しかし、色収差や球面収差・像面湾曲などの諸収差の補正のためには、これを逸脱するガラスを使用せざるを得ないことが殆どである。とくに高倍対物レンズにおいてペッツバール和を小さくするためには、物体側に高屈折率材料を用いることはほぼ必須となり、現実問題として、上記組み合わせのみで設計することはほぼ不可能といってもよい。これが本発明の有効性を証明している。
上述のような顕微鏡用対物レンズに使用されているガラス材料を精査した結果、この顕微鏡用対物レンズを構成しているガラス材料に対して、接着剤が条件式(2)を満足すれば、接合レンズの接合面において、条件式(1)を満足しない接着剤とレンズ面との境界面を少なくすることができ、少ない面数のみに反射防止膜を形成することで透過率を向上させる効果が高い。光学ガラスや光学結晶は蛍石等を含め屈折率がn2=1.43程度からn2=2程度のものが一般的であり、度数分布的にはn2=1.5〜1.6程度のものが一番多い。このため、設計に使用される頻度もこれに比例して高くなり、接着剤の屈折率を条件式(3)の範囲内とすることで、接着剤とレンズ面との境界面のうち、反射防止膜を形成する境界面を少なくして(すなわち、条件式(1)の範囲を超える境界面を少なくして)、低コストで透過率向上を図ることができる。
また、接合レンズの接合面に反射防止膜を形成する場合、この境界面を構成するレンズのd線に対する屈折率n2が次の条件式(3)を満足することが好ましい。
n2 < 1.9 (3)
条件式(3)は、接合レンズの接合面において、反射防止膜を形成するガラス材料の屈折率を規定したものである。接合レンズの接合面に反射防止膜を形成した顕微鏡用対物レンズとしては、蛍光等の観察に用いる顕微鏡用対物レンズを想定しており、蛍光観察を行うためには一般的な落射照明法を用いて細胞等に励起光を照射する。現在では光毒性等のために励起光が長波長化していることは前述したが、試薬等によっては近紫外光を照射せざるを得ない場合がある。このため、顕微鏡用対物レンズを構成する硝材としては、屈折率が条件式(3)を満足する、すなわち、1.9を超えないことが望ましい。屈折率が高い硝材は、内部損失の為に近紫外域の透過率が低く、仮に接合面に設けられた反射防止膜により透過率が向上しても、内部損失により透過率が低下するために使用しないことが好ましいからである。更に、内部損失はガラスを構成する物質の吸収により発生しているため、条件式(3)を満足する硝材を選択することは、自発蛍光の低減の意味でも好ましい。もちろん、蛍光用途でなく、近紫外域を使用しない顕微鏡用対物レンズにおいては、屈折率が1.9以上のガラスを用いても良いし、この場合、接合面に反射防止膜を用いないと反射率が大きくなるため、この接合面(接着剤とレンズ面との境界面)に反射防止膜を設けることが好ましい。
ここで、接合レンズの接合面に設けられる反射防止膜は、膜材料としてはMgF2(屈折率1.38)、SiO2(屈折率1.43〜1.49)、または、Al23(屈折率1.61〜1.67)の層の少なくともいずれか一つを用いることが好ましい。一例を挙げると、基板側から第一層目に屈折率1.6545のAl23を84.6nm、第2層目に屈折率1.6111のAl23を88.7nmという膜を屈折率が1.67程度のガラスに施した場合、膜を施さないときと比較して可視光域で平均して0.3%以上の効果を得ることができる。
また、このような顕微鏡用対物レンズにおいて、空気側のレンズ面に設けられる最も一般的な反射防止膜としては、MgF2の単層膜が挙げられる。前述しているように、MgF2の屈折率は1.38であり、蛍石等の極低屈折率材料を多用する顕微鏡用対物レンズでは、十分な反射防止特性を得ることができない。このため、一般的には単層膜ではなく多層膜が多用されているが、比較的曲率半径が小さなレンズの集合体である顕微鏡用対物レンズでは、多層膜を均一に成膜すること自体、かなり困難である。また、設計的にも多層膜ではレンズ面に入射する光線の角度が多層膜の設計角度から外れた場合、単層膜と比較して急激に性能が劣化するため、曲率半径の小さな面に多層膜を施すことは設計的にも製造的にも好ましくない。
このため、更なる透過率向上のために、MgF2の多孔質膜を空気側のレンズ面に形成することで顕微鏡用対物レンズの高透過率化を図ることができる。MgF2の多孔質膜としては、ゾルゲル法による多孔質膜の成膜方法が開示されている(例えば、WO02/018982参照)。これらは低屈折率の膜材料となり、蛍石等の低屈折率材料を多用している顕微鏡用対物レンズには最適なものとなる。また、MgF2の多孔質膜を用いることにより、層数を少なくできるという利点もあり角度特性的にも好ましい。
MgF2の多孔質膜の屈折率はある程度任意に決めることができ、n=1.23程度から1.4程度まで任意に選ぶことができる。この屈折率の調整はMgF2微小粒子と有機溶媒との比率を変えることで実現でき、単層膜の場合、基板屈折率の平方根の屈折率である膜物質を成膜すると良い透過特性を有することができ、蛍石の屈折率n=1.43を考慮すると、多孔質膜の屈折率としては1.3以下であることが望ましい。一般的なMgF2は屈折率が1.38であり、例えば蛍石に成膜した場合、反射率は約2%程度と施さない場合と比較して、その反射率は2/3程度までしか改善できない。これに対して、薄膜の屈折率を1.3以下とれば、約1%程度まで改善が可能となる。
顕微鏡用対物レンズの一例を示すレンズ構成図である。 第1の反射防止膜の特性を示す透過率曲線である。 第2の反射防止膜の特性を示す透過率曲線である。 接合レンズの接合面において、接着材とレンズの硝材の屈折率差に対する反射率を示すグラフである。
符号の説明
OL 顕微鏡用対物レンズ G1,G3〜G8 接合レンズ(レンズ群)

Claims (7)

  1. 2枚以上のレンズを、接着材を介して接合した接合レンズを有し、
    前記接合レンズにおける前記接着材のd線に対する屈折率をn1とし、当該接着材により接合される前記レンズの硝材のd線に対する屈折率をn2としたとき、次式
    |n1−n2| > 0.15
    の条件を満足する前記接着材と前記レンズとの境界面のうち、少なくとも1面以上の前記境界面に、反射防止膜を形成したことを特徴とする顕微鏡用対物レンズ。
  2. 前記反射防止膜が形成された前記境界面を2以上有することを特徴とする請求項1に記載の顕微鏡用対物レンズ。
  3. 前記接着材は、次式
    1.5 < n1 <1.6
    の条件を満足することを特徴とする請求項1または2に記載の顕微鏡用対物レンズ。
  4. 前記反射防止膜が形成される前記レンズは、次式
    n2 < 1.9
    の条件を満足することを特徴とする請求項1〜3いずれか一項に記載の顕微鏡用対物レンズ。
  5. 前記反射防止膜を構成する膜物質に、MgF2、SiO2、若しくは、Al23の層の少なくともいずれか1つが含まれることを特徴とする請求項1〜4いずれか一項に記載の顕微鏡用対物レンズ。
  6. 空気と接するレンズ面のうち、少なくとも1面に、MgF2の微粒子を用いた多孔質膜が形成されていることを特徴とする請求項1〜5いずれか一項に記載の顕微鏡用対物レンズ。
  7. 前記多孔質膜のd線に対する屈折率が1.3以下であることを特徴とする請求項6に記載の顕微鏡用対物レンズ。
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