JP2010009837A - リチウム二次電池用合金負極材料 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】スズと結晶化抑制剤(D)から形成された非晶質スズ合金(A)と、構造体中に空隙を有する炭素材料(B)とからなる合金負極材料であり、該合金負極材料中において非晶質スズ合金(A)と炭素材料(B)との間に空隙(C)が5〜40体積%存在する、リチウム二次電池用合金負極材料。
【選択図】なし
Description
負極活物質としての炭素系材料は372mAh/gの理論容量を有するが、これよりも更に高容量な負極活物質を得るためには、炭素系材料とは別の材料を開発する必要がある。現在、炭素系材料に代わる負極活物質としては、リチウムと合金化する多くの金属が検討されている。
下記特許文献2には、低融点合金の表面にシリコン又はスズが他の元素と合金化した非結晶領域を有する合金粒子と炭素材料からなる負極活物質粒子が開示されている。
下記特許文献3には、主成分であるカーボンナノファイバーと、Si、Ge、Mg、Sn、Pb、Ag、Al、Zn、Cd、Sb、Bi、In、Ca、Fe、Ni、Co及びMnからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素を含む無機質粒子とからなる負極材料が開示されている。
下記特許文献4には、電極活物質が、Li合金、窒化リチウム系材料、酸化ケイ素系材料、酸化スズ等の金属酸化物系材料等の電極活物質と繊維径1〜1000nmの炭素繊維を含み、空隙率が25%以下である高密度電極が開示されている。
しかし、炭素系材料に比べて十分なサイクル特性が得られていないため未だ実用化には至っていない。
(1)スズと結晶化抑制剤(D)から形成された非晶質スズ合金(A)と、構造体中に空隙を有する炭素材料(B)とからなる合金負極材料であり、該合金負極材料中において非晶質スズ合金(A)と炭素材料(B)との間に空隙(C)が5〜40体積%存在する、リチウム二次電池用合金負極材料。
(2)前記リチウム二次電池用合金負極材料が非晶質スズ合金(A)60〜99質量%と炭素材料(B)1〜40質量%とからなる(ここで質量%の合計は100質量%である)ことを特徴とする、前記(1)に記載のリチウム二次電池用合金負極材料。
(3)前記非晶質スズ合金(A)がスズ40〜97質量%と結晶化抑制剤(D)3〜60質量%とからなる(ここで質量%の合計は100質量%である)ことを特徴とする、前記(1)又は(2)に記載のリチウム二次電池用合金負極材料。
(4)前記結晶化抑制剤(D)がリン(P)、銅(Cu)、及び珪素(Si)から選択された1種又は2種以上であることを特徴とする、前記(1)ないし(3)のいずれかに記載のリチウム二次電池用合金負極材料。
(5)前記非晶質スズ合金(A)がスズ85〜97質量%と、リン3〜15質量%からなる(ここで質量%の合計は100質量%である)ことを特徴とする、前記(1)ないし(4)のいずれかに記載のリチウム二次電池用合金負極材料。
(7)前記炭素材料(B)が単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、単層カーボンナノホーン、多層カーボンナノホーン、及びフラーレンから選択される1種又は2種以上を70体積%以上含有する、前記(1)ないし(6)のいずれかに記載のリチウム二次電池用合金負極材料。
(8)前記炭素材料(B)が単層カーボンナノチューブ、及び/又は単層カーボンナノホーンを60体積%以上含有することを特徴とする、前記(1)ないし(7)のいずれかに記載のリチウム二次電池用合金負極材料。
(9)前記炭素材料(B)が、カルボニル基、エーテル基、ヒドロキシル基、及びメトキシ基から選択される1種又は2種以上の官能基で修飾されていることを特徴とする、前記(1)ないし(8)のいずれかに記載の表面被覆材。
(10)前記リチウム二次電池用合金負極材料において非晶質スズ合金(A)が連続相を形成していることを特徴とする、前記(1)ないし(9)のいずれかに記載のリチウム二次電池用合金負極材料。
(11)前記リチウム二次電池用合金負極材料が電解水溶液中で電解めっき法により負極集電体上に形成された膜状物であることを特徴とする、前記(1)ないし(10)のいずれか1にリチウム二次電池用合金負極材料。
また、合金負極材料(E)内には空隙が存在するので、充放電の際にリチウムイオンが充放電容量の大きい非晶質スズに容易に到達して、リチウムイオンが円滑に吸蔵・放出される。また、長期間の使用により仮に合金負極材料(E)に微細のクラックが入っても、炭素材料(B)が含有されているので、絶縁に基づくトラブルを回避できる。
更に、本発明の合金負極材料(E)は、非晶質スズ合金(A)と炭素材料(B)を形成する材料を電解水溶液に含有させておけば、電解めっき等により、負極集電体上に合金負極材料(E)を効率よく形成することができる。
以下、本発明の「リチウム二次電池用合金負極材料」について説明する。
〔1〕合金負極材料(E)
本発明のリチウム二次電池用合金負極材料は、下記の非晶質スズ合金(A)と炭素材料(B)とから形成され、これらの間に空隙(C)が5〜40体積%存在する。
(1)非晶質スズ合金(A)
これまで負極材料としてはLiに近い卑な電位で単位質量当たりの充放電容量の大きい炭素材料が使用されてきているが、電極材料として質量あたりの充放電容量が理論値に近いところまで使われており、電池としての重量あたりのエネルギー密度が更に高い充放電容量を有する材料が開発されている。このような負極材料として、Sn、Ag、Fe、Pd、Pb、Al、Si、In、Ni、Cu、Co、Zn、Cd等、又はこれらと炭素材料との複合材料が検討されているが、これらの中でもスズは以下の式(1)で示されるLiとの合金化が容易に可能で、理論放電容量は990mAh/gと炭素材料よりは極めて高いという特徴を有している。
Sn + xLi+ +xe― → LixSn (x <4.4)・・・(1)
しかしながら、これらのスズ系は、ケイ素系、アルミニウム、アンチモン等と同様にLiと合金化反応をすることにより膨張するので、スズ系材料をリチウム二次電池の負極材料に使用すると膨張・収縮サイクルが繰り返えされることになる。このような膨張・収縮が繰り返されることによる負極電極板のクラック発生、および該クラック発生により合金が微分化して電極から粒子が脱落して容量低下等の不都合を防止して充放電サイクルの安定性を図る必要がある。
従って、本発明の合金負極材料(E)は、スズと結晶化抑制剤(D)から形成された非晶質スズ合金(A)と、構造体中に空隙を有する炭素材料(B)とからなる合金負極材料であり、合金負極材料(E)中において非晶質スズ合金(A)と炭素材料(B)との間に空隙(C)が5〜40体積%存在する、構成とした。
本発明において、リチウム二次電池用の負極活物資としては、リチウムと合金化が容易で、充放電容量が大きく、充放電のサイクル安定性が得られる可能性のある非晶質スズ合金(A)を使用する。合金負極材料(E)をスズと結晶化抑制剤(D)を含有する非晶質スズ合金(A)と、構造体中に空隙を有する炭素材料(B)とから形成すると、スズの長所と炭素材料の長所を併せ持った負極活物資を形成することができる。
また、スズ系合金を用いると合金負極材料(E)を形成する際に、非晶質スズ合金(A)中に炭素材料(B)を取り込むために、電極に金属集電体を使用すると電解メッキ法により膜状の負極電極が効率よく製造できるという特徴がある。
スズ系合金として、非晶質スズを使用すると結晶化したスズと比較して弾性限界が増加してLiが合金中に入り易くなると共に、クラックの発生を抑制する効果を発揮することができる。
本発明において、スズ系合金が非晶質スズ合金(A)であることは、エネルギー分散型X線分析装置(EDS)を用いた分析結果で、スズのピークがブロードになることから確認される。
本発明において、非晶質スズ合金(A)中には、結晶化抑制剤(D)が含有されている。上記したように、スズ系材料をリチウム二次電池用の負極活物質の成分として負極集電体上に形成する場合、スズが結晶化するのを防止ないし抑制する必要がある。電解めっきにより電解水溶性からスズ金属を析出させる等の場合に、結晶化を防止する結晶化抑制剤(D)としては、リン(P)、銅(Cu)、珪素(Si)等が例示できるが、本発明において使用する結晶化抑制剤(D)は、主にスズの結晶化を防止して、リチウム二次電池用の合金負極材料(E)としての作用を阻害しない限りとくに限定されるものではない。
尚、スズを非晶化するために酸化スズを配合することは知られているが、本発明においては、スズに対しP系の結晶化抑制剤を使用することが望ましく、酸化スズでは弾性限界の増加が少ない。また、スズは高温で処理されると結晶化し易くなるので、スズに結晶化抑制剤(D)としてCuを使用すると、高温条件でスズが結晶化するのを効果的に抑制できる。
非晶質スズ合金(A)としては、Sn−P、又はSn−Pに更に他の結晶化抑制剤が添加された合金が好適に使用できる。非晶質スズ合金(A)は、スズ40〜97質量%と結晶化抑制剤(D)3〜60質量%からなる組成が好ましく、スズ85〜95質量%と結晶化抑制剤(D)5〜15質量%からなる組成がより好ましい(ここで質量%の合計は100質量%である)。このような組成範囲でスズの結晶化を効果的に抑制することができる。し、また非晶質スズの放電容量を大幅に低下させることはない。
(2−1)炭素材料(B)の種類
本発明の構造体中に空隙を有する炭素材料(B)として、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、単層カーボンナノホーン、多層カーボンナノホーン、フラーレン、及びカーボンナノファイバーから選択される1種又は2種以上が使用できる。該フラーレンには、フラーレン重合物も含まれる。カーボンナノファイバーは、構造体中に空隙を有するロッド状、中空状のものであれば使用可能である。
本発明で使用する炭素材料(B)として、これらの中でも単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、単層カーボンナノホーン及び多層カーボンナノホーンが好ましい。
カーボンナノチューブとは、グラファイトの1枚面を巻いた筒状形状を有するものをいい、1層に巻かれたものを単層カーボンナノチューブ、2層以上に巻かれたものを多層カーボンナノチューブという。
(ii)カーボンナノホーン
カーボンナノホーンとはグラファイトの1枚面が円錐状に巻かれた形状を有しており、1層に巻かれたものを単層カーボンナノホーンといい、2層以上に巻かれたものを多層カーボンナノホーンという。
フラーレンとは炭素原子からなるクラスターで、炭素の同素体であり、通常はC36、C60、C70、C76、C78、C80、C82、C84などから選ばれる。フラーレン重合物とは、2個のC60が結合して出来た二量体や、さらに密に結合した落花生型などのC120、3個が結合したトリマーのC180やn個が結合したポリマーなども合成されている。
(iv)カーボンナノファイバー
カーボンナノファイバーとは直径が1nmないし500nmであり、長さが1μm以上の成分組成が炭素50%以上であるもので、構造体中に空隙有する炭素材料であればロッド状でも中空状でもよい。
本発明の合金負極材料(E)中に炭素材料(B)を含有させる場合に、官能基により修飾された炭素材料(B)を使用することが望ましい。例えば、電気メッキにより電解水溶液から負極集電体上に非晶質スズ合金(A)を形成させると共に、炭素材料(B)を多く取り込むには、炭素材料(B)を予め官能基で修飾しておくことが望ましい。このような官能基としては、カルボニル基、エーテル基、ヒドロキシル基、及びメトキシ基から選択される1種又は2種以上の官能基を使用するのが好ましいが、更に、−OSO3H、−COOH、−SO3H、−OPO(OH)3等の官能基で修飾して使用することもできる。
(i)カルボニル基、エーテル基
炭素材料(B)の修飾は、特許文献(特開2006−193380)に開示されているように、一酸化窒素、二酸化窒素又は水蒸気等の気相の酸化剤、又は過酸化水素水、濃硝酸又はアルカリ塩水溶液等の液相の酸化剤を用いてカルボニル基、及び/又はエーテル基を導入することができる。
尚、前記アルカリ塩水溶液としては、HClO,HClO2 ,HClO3 又はHClO4 と、Na又はKとのアルカリ塩水溶液が例示できる。
(ii)ヒドロキシル基
プラズマ処理、又は酸化剤等の反応試薬により形成できる。
(iii)メトキシ基
プラズマ処理、又は酸化剤等の反応試薬によりヒドロキシル基を形成し、塩基の存在下、ヒドロキシル基にヨードメタンや硫酸ジメチルなどのメチル化剤を反応させてメトキシ基を形成する。
本発明で使用する炭素材料(B)の長さや直径(太さ)は、特に限定されるものではないが、好ましい長さとしては、全体の90%以上の長さが10nm〜1000μmの範囲のものが好ましく、炭素材料(B)の構造中の最大長さが10nm以上の炭素材料(B)を50体積%以上含むことがより好ましい。炭素材料(B)の直径(カーボンナノホーンの場合は平均直径)としては、全体の90%以上の直径が1nm〜5μmの範囲が好ましく、3nm〜1μmの範囲のものがより好ましい。このような形状の炭素材料(B)を使用することにより、適度な弾力性(フレキシビィリティ)を付与することができる。このような形状は、走査電子顕微鏡(SEM)写真の観察から測定することが可能である。
本発明の合金負極材料(E)は、非晶質スズ合金(A)60〜99質量%と炭素材料(B)1〜40質量%とからなることが好ましく、非晶質スズ合金(A)85〜99質量%と炭素材料(B)1〜15質量%とからなることがより好ましい(ここで質量%の合計は、100質量%である)。
非晶質スズ合金(A)の含有量が前記60質量%以上で高い充放電容量を維持することができ、一方、前記99質量%以下でLi吸収の際のリチウム合金負極材料(E)の膨張・収縮を吸収して歪を緩和する効果を発揮できる。
尚、非晶質スズ合金(A)と炭素材料(B)の割合は、エネルギー分散型X線分析装置(EDS)により測定することが可能である。
本発明の合金負極材料(E)中には、非晶質スズ合金(A)と炭素材料(B)との間に空隙が5〜40体積%存在する。該空隙率が5体積%以上でLi吸収の際のリチウム合金負極材料(E)の膨張・収縮を吸収して歪を緩和する効果が発揮でき、一方、該空隙率が40体積%以下で高い充放電容量を維持することができる。該空隙率は10〜20体積%がより好ましい。
このような空隙率は、合金負極材料(E)の断面を走査電子顕微鏡(SEM)を用いて測定することが可能である。
合金負極材料(E)において、負極集電体上で非晶質スズ合金(A)が連続相を形成していることが好ましい。非晶質スズ合金(A)が連続相を形成することにより、負極内の導電性が維持されると共にLiの充放電がスムーズに進行して、合金負極材料(E)としての機能を有効に発揮することができる。非晶質スズ合金(A)の連続相の形成は、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて確認することが可能である。このような非晶質スズ合金(A)の連続相の形成は、例えば、電解めっき法により負極集電体上に合金負極材料(E)を形成する場合に、電解めっき液の調整、電解条件等の選択により容易に行うことができる。
この場合、負極集電体上に形成される合金負極材料(E)の厚みは、1μm〜200μmが好ましく、5μm〜50μmがより好ましい。該厚みが200μmを超えるとリチウムイオンを吸蔵・放出する際の体積変化で被覆層にクラックが発生して微粉砕化し易くなり、一方、1μm未満では、高い充電容量を得ることが出来ないおそれがある。
本発明の合金負極材料(E)の製造方法に特に制限はないが、電解めっき法の採用により効率よく、負極集電体上に合金負極材料(E)を膜状に形成することができる。
尚、電解還元法により、合金負極材料を粒状物として得る場合には、該粒状の負極活物質粒子を導電材およびバインダーなどと混錬した塗工液で負極集電体上に塗工するといった表面処理方法を用いることができる。
電解還元法による合金負極材料(E)の製造方法としては、めっき浴中に所定のめっき液を調製すると共に、上記した所定量の修飾された炭素材料(B)をめっき浴中に分散させて撹拌下に、アノード(負極集電体)とカソードである基材間に印加してめっきを行うことにより、炭素材料(B)が非晶質スズ合金(A)中に分散している、合金負極材料(E)を負極集電体上に形成することができる。
また、無電解還元法としては、めっき液を調製すると共に、上記した所定量の修飾された炭素材料(B)をめっき浴中に分散させて、還元剤の存在下に撹拌しながらめっきを行うことにより、炭素材料(B)が非晶質スズ合金(A)中に分散している、合金負極材料(E)を負極集電体上に形成することができる。
非晶質スズ−リン合金(非晶質Sn−P合金)を形成する際にはめっき浴中にピロリン酸第1スズ(Sn2P2O7)及びピロリン酸カリウム(K4P2O7)、
また、非晶質スズ−銅−リン合金(非晶質Sn−Cu−P合金)を形成する際にはめっき浴中にピロリン酸第1スズ(Sn2P2O7)、ピロリン酸第2銅(Cu2P2O7)、及びピロリン酸カリウム(K4P2O7)
を含有させ、更に炭素材料(B)、及び分散媒として有機物分散媒等を含有させることが好ましい。
尚、該有機物分散媒としては、ポリエチレンイミン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、デンプン、及びゼラチンから選択される1種又は2種以上が例示できる。
上記電解めっき、又は無電解めっきにより、負極集電体上に非晶質スズ合金(A)と炭素材料(B)からなる膜状の合金負極材料(E)を形成することができる。
このようにして得られた合金負極材料(E)は、リチウムイオン電池やLiポリマー電池等の高エネルギー密度の非水系二次電池の負極電極として好ましく用いることができる。
以下、リチウム二次電池について説明する。リチウム二次電池の主構成物は、前記負極電極、正極電極、電解液、及びセパレータとからなり、正極電極(シート状)/セパレータ/負極電極(シート状)に積層して、正極と負極がふれないようにして、円筒形、角形、コイン型、あるいはシート型等の種々の容器の中に収納される。
本発明の負極活物質である合金負極材料(E)は、負極集電体上に形成され、正極電極におけるリチウムの吸蔵、放出量とのバランスを考慮して、その空隙率を考慮した厚み、面積に形成する。
(2)正極電極
正極活物質材料として、リチウム含有遷移金属酸化物を使用することが好ましく、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、及びMoから選ばれる少なくとも1種の遷移金属元素とリチウムとを主として含有する酸化物等であって、LiMn2O4、LiCoO2、LiNiO2、LiFeO2、V205、TiS、MoS等のリチウムを吸蔵、放出が可能な化合物を挙げることができる。
正極電極は、一般には正極活物質材料、炭素繊維、及びバインダー材料を混合後、アルミニウム箔等の集電体に塗布後、乾燥、プレスすることにより、空隙率を25%以下となるように所定の厚み、密度に成形することができる。
リチウムイオン電池、Liポリマー電池等における電解液及び電解質には、有機電解液(非水系電解液)、無機固体電解質、高分子固体電解質等が使用できる。
具体例として、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート等のカーボネート;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル;ベンゾニトリル、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、γ−ブチロラクトン、ジオキソラン、4-メチルジオキソラン、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン、スルホラン、ジクロロエタン、クロロベンゼン、ニトロベンゼン等の非プロトン性溶媒、あるいはこれらの溶媒のうちの二種以上を混合した混合溶媒が挙げられる。
電解質には、LiClO4、LiBF4、LiPF6、LiAlO4、LiAlCl4、LiSbF6、LiSCN、LiCl、LiCF3SO3、LiCF3CO2、LiC4F9SO3、LiN(CF3SO2)2等のリチウム塩からなる電解質の1種または2種以上を混合させたものを用いることができる。
また上記の電解液に代えて高分子固体電解質を用いる場合にはリチウムイオンに対するイオン導電性の高い高分子である、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリエチレンイミン等を用いることができる。
セパレータとしては、薄くて高強度の観点から、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系多孔質フィルムを用いることができる。多孔度は、イオン伝導という観点から40〜80%が好ましい。また、セパレータの厚みは、イオン伝導性、電池容量の観点から5〜80μmが好ましい。
(1)実施例で使用した修飾前の炭素材料
(i)実施例1〜3に使用した修飾前の炭素材料
NEC(株)製、カーボンナノホーンで、単層カーボンナノホーンの含有割合は80体積%以上の炭素材料(以下、炭素材料1という)である。
(ii)実施例5に使用した修飾前の炭素材料
上記NEC(株)製、カーボンナノホーンにアモルファスカーボンを混合して単層カーボンナノホーンの含有割合を40体積%とした炭素材料(以下、炭素材料2という)である。
(iii)実施例6に使用した修飾前の炭素材料
単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、単層カーボンナノホーン、多層カーボンナノホーン、及びフラーレンを併せて80体積%含み、かつ単層カーボンナノチューブ及び単層カーボンナノホーンを併せて50体積%含む炭素材料(以下、炭素材料3という)である。
(2)上記炭素材料1〜3の修飾
上記炭素材料1、2、3をそれぞれ、気相酸化窒素ガス(N2O)中、500℃で部分酸化してカルボニル基とエーテル基を導入して修飾された炭素材料11、12、13を調製した。
電解還元法により、非晶質Sn−P合金と構造体中に空隙を有する炭素材料とからなり、これらの層間に空隙が形成されている合金負極材料を銅箔上に形成して、得られた合金負極材料の評価を行った。
(1)合金負極材料の調製
有機物分散媒としてポリビニルピロリドン(数平均分子量:3500)100g、ピロリン酸第1スズ(Sn2P2O7)23g、ピロリン酸カリウム(K4P2O7)160gを含む1000mlの還元反応水溶液を調製した。尚、この溶液中のスズ原子とP2O7イオンとのモル比([Sn/P2O7]モル比)は0.18であった。
次にこの還元水溶液に上記炭素材料11を2g添加し、該水溶液中で2cm四方の銅箔からなる陽極(アノード電極)と、白金基板からなる陰極(カソード電極)間を60℃で30分間通電した。この時、印加した電流密度は5A/dm2とした。電解還元反応により、銅箔上に、炭素材料11と非晶質Sn−P合金とを含む膜状の合金負極材料2.5gを形成した。
(2)合金負極材料の評価
形成した合金負極材料について、エネルギー分散型X線分析装置(EDS)により分析した結果、組成は、質量比でC/Sn/P=5/91/4であった。
得られた合金負極材料について、SEMによる断面観察の結果、合金負極材料中の非晶質スズ合金:炭素材料:空隙の割合は、体積割合で非晶質スズ合金/炭素材料/空隙=78/12/10であった。また、SEMによる断面観察で、非晶質合金相が連続相を形成していることが確認された。
電解還元法により炭素材料と非晶質Cu−Sn−P合金とを含む合金負極材料を銅箔上に形成して、得られた合金負極材料の評価を行った。
(1)合金負極材料の調製
有機物分散媒としてポリビニルピロリドン(数平均分子量:3500)100g、ピロリン酸第1スズ(Sn2P2O7) 23g、ピロリン酸第2銅(Cu2P2O7)15g、ピロリン酸カリウム(K4P2O7) 160gを含む1000mlの還元反応水溶液を調製した。尚、この溶液中の銅原子とP2O7イオンとのモル比([Cu/P2O7]モル比)は0.16、スズ原子とP2O7イオンとのモル比([Sn/P2O7]モル比)は0.18であった。
次にこの還元水溶液に上記炭素材料11を2g混合し、次にこの溶液中で2cm四方の銅箔からなる陽極(アノード電極)と、白金基板からなる陰極(カソード電極)間を60℃で30分間通電した。この時、印加した電流密度は5A/dm2とした。
電解還元反応により、銅箔上に炭素材料11と非晶質Cu−Sn−P合金とを含む膜状の合金負極材料2.5gを形成した。
(2)合金負極材料の評価
形成した合金負極材料について、エネルギー分散型X線分析装置(EDS)による分析結果、組成は、質量比でC/Cu/Sn/P=5/2/91/2であった。
また、得られた炭素材料を含む合金負極材料について、SEMによる断面観察の結果、合金負極材料中の非晶質Cu−Sn−P合金:炭素材料:空隙の割合は、体積割合で合金/炭素材料/空隙=76/12/12であった。
電解還元法により非晶質Cu−Sn合金膜を調製して、得られた合金膜の評価を行った。
(1)Cu−Sn合金膜の調製
ピロリン酸カリウム160g、ピロリン酸第1スズ(Sn2P2O7) 23g、ピロリン酸第2銅(Cu2P2O7)7.5g、及びポリビニルピロリドン(数平均分子量:3500)100gを含む1000mlの還元反応水溶液を調製した。尚、この溶液中の銅原子とP2O7イオンのモル比([Cu/P2O7]モル比)は0.09、スズ原子とP2O7イオンとのモル比([Sn/P2O7]モル比)は0.2であった。
次にこの還元水溶液中で2cm四方の銅箔からなる陽極(アノード電極)と、白金基板からなる陰極(カソード電極)間を45℃で30分間通電した。この時、印可した電流密度は5A/dm2とした。上記電解還元により、銅箔上に非晶質Cu―Sn合金膜2.1gを形成した。
(2)非晶質Cu―Sn合金膜の評価
形成した非晶質Cu―Sn合金膜についてエネルギー分散型X線分析装置(EDS)による分析結果、合金の組成は、質量比でCu/Sn=27/73であった。
電解還元法によりSn膜を調製して、得られたSn膜の評価を行った。
(1)Sn膜の調製
ピロリン酸カリウム160g、ピロリン酸第1スズ(Sn2P2O7) 23g及びポリビニルピロリドン(数平均分子量:3500)100gを含む1000mlの還元反応溶液を調製した。次にこの還元溶液中で2cm四方の銅箔からなる陽極(アノード電極)と、白金基板からなる陰極(カソード電極)間を45℃で30分間通電した。この時、印可した電流密度は5A/dm2とした。上記電解還元により、銅箔上にSn膜2.1gを形成した。
(2)Sn膜の評価
得られたSn膜についてエネルギー分散型X線分析装置(EDS)により分析した結果、組成は、質量比でSn=100であった。
[充放電試験用のテストセルの作成]
実施例1、2及び比較例1、2においては、厚さ18μmの銅箔上に電解メッキにより厚さ120μmの合金負極材料を積層した。そして、該合金負極材料が積層された銅箔を直径13mmの円形に打ち抜いて負極電極とした。
この負極電極を作用極とし、円形に打ち抜いた金属リチウム箔を対極(正極)とし、作用極と対極との間に多孔質ポリプロピレンフィルムからなるセパレータを挿入し、電解液としてプロピレンカーボネート(PC)、ジメチルカーボネート(DEC)とエチレンカーボネート(EC)の混合溶媒(体積比)(PC:DEC:EC=1:1:1)に、電解質としてLiPF6が1(モル/L)の濃度となるように溶解させたものを用いて、コイン型のテストセルを作成した。
そして、充放電電流密度を0.2Cとし、充電終止電圧を0V(Li/Li+ )、放電終止電圧を2.0V(Li/Li+)として充放電試験を行った。
評価結果を表1に示す。
実施例1,2で作製した負極材料は、比較例1,2で作製した負極材料と比較して、放電容量とその維持率のバランスに優れていることがわかる。
実施例5において、炭素材料11の代わりに炭素材料12を使用した以外は、実施例1と同様にして合金負極材料を調製し、得られた合金負極材料について実施例1で行ったと同様に合金負極材料の評価を行った。その結果、放電容量は720mAh/gで、容量維持率は62%であった。
実施例6において、炭素材料11の代わりに炭素材料13を使用した以外は、実施例1と同様にして合金負極材料を調製し、該合金負極材料について実施例1で行ったと同様に合金負極材料の評価を行った。その結果、放電容量は720mAh/gで、容量維持率は89%であった。
電解還元法により炭素材料を含むSn−P合金膜を調製する際に、Pの配合割合を変えることで非晶質化に適した構成比になる複合合金膜の評価を行った。
(1)炭素材料を含むSn−P合金膜の調製
有機物分散媒としてポリビニルピロリドン(数平均分子量:3500)100g、ピロリン酸第1スズ(Sn2P2O7) 23g、を含む1000mlの反応溶液を調製した。この反応液にピロリン酸カリウム(K4P2O7)をそれぞれ 40g、80g、160g、320g混合して還元反応溶液を調製した。尚、この溶液中のスズ原子とP2O7イオンとのモル比([Sn/P2O7]モル比)はそれぞれ0.45、0.9、0.18、36であった。
次にこれら還元反応水溶液に炭素材料11を2g混合し、次にこの溶液中で2cm四方の銅箔からなる陽極(アノード電極)と、白金基板からなる陰極(カソード電極)間を60℃で30分間通電した。この時、印加した電流密度は5A/dm2とした。電解還元反応により、銅箔上に炭素材料11を含んだSn−P合金膜2.5gを形成した。
得られた炭素材料11を含むSn−P合金膜について、エネルギー分散型X線分析装置(EDS)により分析した結果、合金組成はそれぞれ質量比でC/Sn/P=5/94/1、C/Sn/P=5/93/2、C/Sn/P=5/91/4、C/Sn/P=5/87/8、であった。
エネルギー分散型X線分析装置(EDS)による分析結果、Snのピークが非晶質化を示すブロードになる組成比は、C/Sn/P=5/91/4、C/Sn/P=5/87/8、であった。
Claims (11)
- スズと結晶化抑制剤(D)から形成された非晶質スズ合金(A)と、構造体中に空隙を有する炭素材料(B)とからなる合金負極材料であり、該合金負極材料中において非晶質スズ合金(A)と炭素材料(B)との間に空隙(C)が5〜40体積%存在する、
リチウム二次電池用合金負極材料。 - 前記リチウム二次電池用合金負極材料が非晶質スズ合金(A)60〜99質量%と炭素材料(B)1〜40質量%とからなる(ここで質量%の合計は100質量%である)ことを特徴とする、
請求項1に記載のリチウム二次電池用合金負極材料。 - 前記非晶質スズ合金(A)がスズ40〜97質量%と結晶化抑制剤(D)3〜60質量%とからなる(ここで質量%の合計は100質量%である)ことを特徴とする、
請求項1又は2に記載のリチウム二次電池用合金負極材料。 - 前記結晶化抑制剤(D)がリン(P)、銅(Cu)、及び珪素(Si)から選択された1種又は2種以上であることを特徴とする、
請求項1ないし3のいずれか1項に記載のリチウム二次電池用合金負極材料。 - 前記非晶質スズ合金(A)がスズ85〜97質量%と、リン3〜15質量%からなる(ここで質量%の合計は100質量%である)ことを特徴とする、
請求項1ないし4のいずれか1項に記載のリチウム二次電池用合金負極材料。 - 前記非晶質スズ合金(A)がスズ50〜95質量%、銅2〜40質量%、及びリン3〜10質量%からなる(ここで質量%の合計は100質量%である)ことを特徴とする、請求項1ないし4のいずれか1項にリチウム二次電池用合金負極材料。
- 前記炭素材料(B)が単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、単層カーボンナノホーン、多層カーボンナノホーン、及びフラーレンから選択される1種又は2種以上を70体積%以上含有することを特徴とする、請求項1ないし6のいずれか1項に記載のリチウム二次電池用合金負極材料。
- 前記炭素材料(B)が単層カーボンナノチューブ、及び/又は単層カーボンナノホーンを60体積%以上含有することを特徴とする、請求項1ないし7のいずれか1項に記載のリチウム二次電池用合金負極材料。
- 前記炭素材料(B)が、カルボニル基、エーテル基、ヒドロキシル基、及びメトキシ基から選択される1種又は2種以上の官能基で修飾されていることを特徴とする、請求項1ないし8のいずれか1項に記載の表面被覆材。
- 前記リチウム二次電池用合金負極材料において非晶質スズ合金(A)が連続相を形成していることを特徴とする、請求項1ないし9のいずれか1項に記載のリチウム二次電池用合金負極材料。
- 前記リチウム二次電池用合金負極材料が電解水溶液中で電解めっき法により負極集電体上に形成された膜状物であることを特徴とする、請求項1ないし10のいずれか1項にリチウム二次電池用合金負極材料。
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