以下、本発明を実施するための形態(以下実施形態という)を図面に従って説明する。
「実施形態1」
図1,2は、本発明の実施形態1に係る変速装置の概略構成を示す図である。本実施形態に係る変速装置は、入力軸111と、入力軸111に結合され入力軸111とともに回転する入力歯車112と、入力軸111と同軸に配置された出力軸(回転軸)101と、出力軸101に結合され出力軸101とともに回転する変速歯車102と、出力軸101と平行に配置された複数の変速歯車軸(回転軸)103−1,103−2と、変速歯車軸103−1,103−2とともにそれぞれ回転する複数の変速歯車104−1,104−2と、変速歯車軸103−1,103−2にそれぞれ結合され変速歯車軸103−1,103−2(変速歯車104−1,104−2)とともにそれぞれ回転する複数の変速歯車軸入力歯車113−1,113−2と、を備える。変速歯車102及び変速歯車104−1,104−2は、いずれも外歯車であり、所定のねじれ角βを有するはすば歯車(ヘリカルギア)である。変速歯車104−1,104−2の基準円半径(ピッチ円半径)rp1は互いに等しく、出力軸101と変速歯車軸103−1との軸間距離は変速歯車102の基準円半径rp2と変速歯車104−1の基準円半径rp1との和に等しく、出力軸101と変速歯車軸103−2との軸間距離は変速歯車102の基準円半径rp2と変速歯車104−2の基準円半径rp1との和に等しい。各変速歯車(はすば歯車)104−1,104−2は、変速歯車(はすば歯車)102と噛み合う。図1に示す例では、出力軸101の軸線方向に関する変速歯車102の長さは、この軸線方向に関する変速歯車104−1,104−2の長さよりも長い。そして、変速歯車軸入力歯車113−1,113−2の基準円半径は互いに等しく、変速歯車軸入力歯車113−1,113−2は入力歯車112と噛み合う。なお、入力歯車112及び変速歯車軸入力歯車113−1,113−2は必ずしもはすば歯車である必要はない。
変速歯車102の歯は、その回転方向(周方向)に関して360°(2π[rad])より小さい所定角度θの範囲に部分的に設けられている。一方、変速歯車104−1,104−2の歯は全周に渡って形成されている。そのため、各変速歯車104−1,104−2については、変速歯車102の回転に伴って、変速歯車102と噛み合っている係合状態と変速歯車102と噛み合っていない解放状態とが交互に生じる。図1,2に示す例では、変速歯車102の歯は、その回転方向に関して180°(π[rad])の範囲に形成されている。そして、変速歯車軸103−1及び変速歯車104−1と、変速歯車軸103−2及び変速歯車104−2とが、変速歯車102の回転方向(周方向)に関して180°(π[rad])の間隔、つまり変速歯車102の歯が形成された角度範囲θと等しい間隔をおいて配置されている。この配置により、変速歯車104−1,104−2のいずれかが変速歯車102と常に噛み合い(係合し)、変速歯車102の回転に伴って、変速歯車102と噛み合う歯車が変速歯車104−1,104−2間で切り替わる。さらに、後述するように、変速歯車104−1,104−2の両方が一時的に変速歯車102と噛み合う。
スライド機構105−1は、変速歯車104−1を変速歯車軸103−1にその軸線方向に沿ってスライド可能(移動可能)に支持し、スライド機構105−2は、変速歯車104−2を変速歯車軸103−2にその軸線方向に沿ってスライド可能(移動可能)に支持する。そのため、各変速歯車104−1,104−2は、変速歯車102に対して噛み合いを維持した状態で変速歯車軸103−1,103−2の軸線方向(以下単に軸線方向とする)に沿ってスライド可能である。図1では、スライド機構105−1,105−2の具体的構成の図示を省略しているが、公知の構成で実現可能である。
カム機構106は、変速歯車104−1,104−2を変速歯車軸103−1,103−2(変速歯車102)に対してその軸線方向に沿ってそれぞれ往復移動させる。カム機構106は、出力軸101を介して変速歯車102に連結されており、変速歯車102と同期して回転する。図1に示す例では、スライド機構105−1,105−2(変速歯車104−1,104−2)には、カム機構106へ向けて突出したピン107−1,107−2がそれぞれ連結されている。カム機構106は、軸線方向に関する各ピン107−1,107−2の位置をそれぞれ案内するための溝106aが外周部に複数形成された円筒カムであり、複数の溝106aのいずれか1つに各ピン107−1,107−2が嵌合されることで、各変速歯車104−1,104−2の軸線方向位置がカム機構(円筒カム)106の回転角に応じて決まる。各溝106aは、カム機構(円筒カム)106の周方向(回転方向)に対して傾斜して形成されており、カム周方向に対する傾斜角度が各溝106a毎に異なる。変速歯車102の回転と同期してカム機構106が回転し、カム機構106の回転に連動して各ピン107−1,107−2が溝106aの形状に従って移動することで、各変速歯車104−1,104−2が軸線方向に沿ってそれぞれ往復移動する。変速歯車102の回転角に対する各変速歯車104−1,104−2の軸線方向位置の関係は、カム機構106の外周部に形成する溝106aの形状により設定することが可能であり、より具体的には、溝106aのカム周方向位置(位相)に対する軸線方向位置の関係により決まる。さらに、図3Aに示すように、カム機構106の回転の際に各ピン107−1,107−2が通る溝106aをスイッチ106bにより切り替えることで、変速歯車102の回転角に対する各変速歯車104−1,104−2の軸線方向位置の関係を切り替えることができる。スイッチ106bの構成例を図3B〜3Fに示す。図3B,3Eはカム機構106の外周の構成例を示し、図3Cは図3BのA−A断面図を示し、図3D,3Fは図3CのB−B断面図を示す。図3B,3Dの状態から図3E,3Fの状態に示すように、カム機構106の内部に配置されたリンク機構106cにより略円筒状のスイッチ106bの角度を変化させることで、各ピン107−1,107−2が通る溝106aを切り替えることが可能である。カム機構106の溝106aについては、スイッチ106bの溝を基準として、溝側面の継ぎ目で段差・角度違いが生じないように作成する。また、溝106aに沿って往復運動するピン107−1,107−2については、溝106aに嵌る先端部を球形状にする。なお、図1は、カム機構106(円筒カム)の外周部に4通りの溝106aが形成された例を示しているが、カム機構106の外周部に形成する溝106aの数については任意に設定することができる。
本実施形態では、カム機構106は、複数の変速歯車104−1,104−2のうち、変速歯車102と噛み合っており係合状態にある歯車(以下係合側歯車とする)を軸線方向の一方側(例えば図1の左側)へスライド(移動)させ、変速歯車102と噛み合っておらず解放状態にある歯車(以下解放側歯車とする)を軸線方向の他方側(例えば図1の右側)へスライド(移動)させる。つまり、係合側歯車と解放側歯車とを互いに反対方向にスライドさせる。そして、カム機構106は、軸線方向の一方側へスライドさせる係合側歯車を変速歯車104−1,104−2間で切り替える。前述のように、変速歯車102の歯は、その回転方向に関して所定角度θ(=180°)の範囲に部分的に形成されており、各変速歯車104−1,104−2のスライド方向(軸線方向の一方側か他方側か)は、各ピン107−1,107−2が通る溝106aの形状(カム周方向に対する傾斜方向)に応じて決まる。そのため、カム機構(円筒カム)106の各溝106aについては、変速歯車102の歯が形成された角度(位相)範囲ではピン107−1,107−2が軸線方向の一方側へ移動する方向へ傾斜させ、変速歯車102の歯が形成されていない角度(位相)範囲ではピン107−1,107−2が軸線方向の他方側へ移動する方向へ傾斜させるように設計する。
変速歯車104−1が変速歯車102と噛み合っている状態では、エンジン等の動力源から入力軸111に入力された動力は、入力歯車112と変速歯車軸入力歯車113−1との噛み合いにより変速歯車軸103−1へ伝達され、さらに、変速歯車104−1と変速歯車102との噛み合いにより出力軸101へ伝達される。また、変速歯車104−2が変速歯車102と噛み合っている状態では、入力軸111に入力された動力は、入力歯車112と変速歯車軸入力歯車113−2との噛み合いにより変速歯車軸103−2へ伝達され、さらに、変速歯車104−2と変速歯車102との噛み合いにより出力軸101へ伝達される。入力軸111から出力軸101への動力伝達の際には、カム機構106が変速歯車102と噛み合う変速歯車104−1(あるいは変速歯車104−2)を移動させるスライド速度Lに応じて、変速歯車軸入力歯車113−1(あるいは変速歯車軸入力歯車113−2)と出力軸101との回転速度比が変化し、変速装置全体の変速比(入力軸111と出力軸101との回転速度比)が変化する。変速歯車104−1,104−2の基準円半径(ピッチ円半径)をrp1、変速歯車102の基準円半径(ピッチ円半径)をrp2、変速歯車102,104−1,104−2のねじれ角をβ、変速歯車104−1,104−2の回転角速度をωin、変速歯車102と噛み合っている係合側歯車のスライド速度をLとすると、変速装置全体の変速比γは、入力歯車112と変速歯車軸入力歯車113−1,113−2とで基準円半径が等しい場合は、変速歯車軸入力歯車113−1(あるいは変速歯車軸入力歯車113−2)と出力軸101との回転速度比に等しく、前述の(5)式で表される。カム機構106は、係合側歯車を一定速度(あるいはほぼ一定速度)で軸線方向の一方側へスライドさせることで、変速比γを一定値(あるいはほぼ一定値)に維持することが可能となる。係合側歯車のスライド速度Lは、係合側歯車と連結されたピンが通る溝106aの形状(カム周方向に対する傾斜角度)に応じて決まる。そのため、カム機構(円筒カム)106の各溝106aについては、変速歯車102の歯が形成された位相範囲ではカム周方向に対する傾斜角度が一定(あるいはほぼ一定)となるように設計する。さらに、各溝106a毎にカム周方向に対する傾斜角度が異なるため、カム機構106の回転の際に各ピン107−1,107−2が通る溝106aをスイッチ106bにより切り替えることで、係合側歯車のスライド速度Lを変化させることができ、変速比γを変更することができる。
前述のように、変速比γを一定値に維持するためには、変速歯車102と噛み合い且つ一定速度で軸線方向の一方側へスライドする係合側歯車を変速歯車104−1,104−2間で切り替える必要がある。そのためには、各変速歯車104−1,104−2のスライド方向を切り替える必要がある。ここで、係合側歯車が変速歯車104−1から変速歯車104−2へ切り替わるとともに、解放側歯車が変速歯車104−2から変速歯車104−1へ切り替わる場合を考えると、変速歯車104−1のスライド方向を軸線方向の一方側から他方側へ切り替えるとともに、変速歯車104−2のスライド方向を軸線方向の他方側から一方側へ切り替える必要がある。ただし、変速歯車104−1のスライド方向を軸線方向の一方側から他方側へ切り替える際には、図4の期間t1〜t2に示すように、変速歯車104−1のスライド速度Lが一時的に低下することになる。変速歯車104−1と変速歯車102との噛み合いが終了する前に変速歯車104−1のスライド速度Lが低下すると、変速比γが変化することになる。そして、変速歯車104−2のスライド方向を軸線方向の他方側から一方側へ切り替える際には、図4の期間t1〜t2に示すように、変速歯車104−2のスライド速度Lが一時的に低下する。変速歯車104−2のスライド速度Lが低下している状態で変速歯車104−2と変速歯車102との噛み合いが開始されると、変速比γが変化することになる。その結果、係合側歯車が変速歯車104−1から変速歯車104−2へ切り替わる際に、変速歯車104−1,104−2のスライド速度Lの一時的な低下により、変速比γが一時的に変化することになる。なお、図4は、変速歯車104−1,104−2でスライド方向が常に反対方向となるように各変速歯車104−1,104−2のスライド方向を切り替える場合を示している。
また、係合側歯車が変速歯車104−1から変速歯車104−2へ切り替わる際に、スライド方向やスライド速度Lの異なる変速歯車104−1,104−2が変速歯車102と同時に噛み合うと、変速歯車102,104−1,104−2による歯車機構がロックし、動力伝達を行うことができなくなる。変速歯車102の歯がその回転方向に関して形成された角度範囲と、変速歯車102の回転方向に関する変速歯車104−1,104−2同士の間隔(成す角度)とが等しい場合は、基準円(ピッチ円)上の位置での噛み合いを考えると、変速歯車104−1と変速歯車102との噛み合いが終了するときに、変速歯車104−2と変速歯車102との噛み合いが始まる。しかし、ピッチ円上の位置で変速歯車104−1と変速歯車102との噛み合いが終了しても、変速歯車104−1のピッチ円より先の位置(歯先側)では、変速歯車102の歯との噛み合いが終了していないことになる。さらに、ピッチ円上の位置で変速歯車104−2と変速歯車102との噛み合いが始まる前に、変速歯車102のピッチ円より先の位置(歯先側)では、変速歯車104−2の歯との噛み合いが始まることになる。そのため、変速歯車102と噛み合う係合側歯車が変速歯車104−1,104−2間で切り替わる際には、変速歯車104−1,104−2の両方が変速歯車102と噛み合う状態(オーバーラップ期間)が一時的に生じる。その状態において、変速歯車104−1,104−2のスライド方向やスライド速度Lが互いに異なっていると、変速歯車102,104−1,104−2による歯車機構がロックする。図4に示す場合は、実線の「係合」で示す部分が変速歯車102と噛み合っている期間となり、破線の「解放」で示す部分が変速歯車102と噛み合っていない期間となる。図4の期間t1〜t2のオーバーラップ期間において、変速歯車104−1,104−2のスライド方向及びスライド速度Lが互いに異なっているため、変速歯車102,104−1,104−2による歯車機構がロックする。
そこで、本実施形態では、複数の変速歯車104−1,104−2のうち、変速歯車102と噛み合う(係合する)係合側歯車が切り替わる場合には、カム機構106は、変速歯車104−1,104−2の両方が変速歯車102と噛み合うオーバーラップ期間において、変速歯車104−1,104−2の両方を互いに等しいスライド速度Lで軸線方向の一方側へ移動させる。以下、係合側歯車が変速歯車104−1から変速歯車104−2へ切り替わる場合の動作について、図5のタイムチャートを用いて説明する。
図5の期間t1〜t2においては、カム機構106は、変速歯車102と噛み合っている係合状態にある変速歯車104−1(係合側歯車)を一定のスライド速度Lで軸線方向の一方側へ移動させるとともに、変速歯車102と噛み合っていない解放状態にある変速歯車104−2(解放側歯車)を軸線方向の他方側へ移動させる。つまり、変速歯車104−1,104−2を互いに反対方向に移動させる。その際には、カム機構106は、変速歯車104−2(解放側歯車)を変速歯車104−1(係合側歯車)よりも速いスライド速度で軸線方向の他方側へ移動させる。
次に、図5の期間t2〜t3において、変速歯車104−1が変速歯車102と噛み合い(係合し)且つ一定のスライド速度Lで軸線方向の一方側へ移動している状態で、カム機構106は、変速歯車104−2の軸線方向の他方側へのスライド速度を減少させて、そのスライド方向を軸線方向の他方側から一方側へ切り替える。つまり、変速歯車104−2のスライド方向を変速歯車104−1のスライド方向と反対方向から同方向へ切り替える。そして、カム機構106は、変速歯車104−2と変速歯車102との噛み合い(係合)が始まるまでに、変速歯車104−2の軸線方向の一方側へのスライド速度を変速歯車104−1のスライド速度Lまで増加させる。ここでは、スライド方向やスライド速度の異なる変速歯車104−1,104−2が変速歯車102と同時に噛み合うことを防止するために、変速歯車104−2の歯と変速歯車102の歯先との噛み合いが始まるまでに、変速歯車104−2の軸線方向の一方側へのスライド速度を変速歯車104−1のスライド速度Lまで増加させる。さらに、軸線方向に長さを持った変速歯車104−2がスライドすることを考慮すると、変速歯車104−2と変速歯車102との歯先が干渉するまでに、変速歯車104−2の軸線方向の一方側へのスライド速度を変速歯車104−1のスライド速度Lまで増加させることが好ましい。
変速歯車104−2の歯と変速歯車102の歯先との噛み合いが始まる直前の変速歯車102の回転角は、ピッチ円上の位置で変速歯車104−2と変速歯車102との噛み合いが始まる直前の変速歯車102の回転角よりも、図6に示す角度θsだけ手前となる。そして、変速歯車104−2と変速歯車102との歯先が干渉する直前の変速歯車102の回転角は、ピッチ円上の位置で変速歯車104−2と変速歯車102との噛み合いが始まる直前の変速歯車102の回転角よりも、図6に示す角度θsrだけ手前となる。ただし、図6において、Aは出力軸101と変速歯車軸103−2との軸間距離、rt1は変速歯車104−2の歯先円半径、rt2は変速歯車102の歯先円半径、rp1は変速歯車104−2の噛み合いピッチ円半径、rp2は変速歯車102の噛み合いピッチ円半径、rb1は変速歯車104−2の基礎円半径、rb2は変速歯車102の基礎円半径である。そして、θsは、ピッチ円上の位置で変速歯車104−2と変速歯車102との噛み合いが始まる直前から変速歯車102の歯先が変速歯車104−2と噛み合い始める直前まで回転を戻した場合の変速歯車102の回転角であり、θsrは、ピッチ円上の位置で変速歯車104−2と変速歯車102との噛み合いが始まる直前から変速歯車104−2と変速歯車102との歯先が干渉する直前まで回転を戻した場合の変速歯車102の回転角である。
図5の期間t3〜t4においては、変速歯車104−2が変速歯車102と噛み合い、変速歯車104−1,104−2の両方が変速歯車102と噛み合うオーバーラップ期間となるが、カム機構106は、変速歯車104−1,104−2の両方を互いに等しい一定のスライド速度Lで軸線方向の一方側へ移動させるため、変速歯車102,104−1,104−2による歯車機構がロックすることはなく、スライド速度Lに応じた変速比γで動力伝達を行うことが可能となる。
次に、図5の期間t4〜t5において、変速歯車104−2が変速歯車102と噛み合い且つ一定のスライド速度Lで軸線方向の一方側へ移動している状態で、カム機構106は、変速歯車104−1と変速歯車102との噛み合い(係合)が終了してから、変速歯車104−1の軸線方向の一方側へのスライド速度を減少させて、そのスライド方向を軸線方向の一方側から他方側へ切り替える。つまり、変速歯車104−1のスライド方向を変速歯車104−2のスライド方向と同方向から反対方向へ切り替える。ここでは、スライド方向やスライド速度の異なる変速歯車104−1,104−2が変速歯車102と同時に噛み合うことを防止するために、変速歯車104−1の歯先と変速歯車102の歯との噛み合いが終了してから、変速歯車104−1の軸線方向の一方側へのスライド速度を減少させる。さらに、軸線方向に長さを持った変速歯車104−1がスライドすることを考慮すると、変速歯車104−1と変速歯車102との歯先が干渉しなくなってから、変速歯車104−1の軸線方向の一方側へのスライド速度を減少させることが好ましい。
変速歯車104−1の歯先と変速歯車102の歯との噛み合いが終わるときの変速歯車102の回転角は、ピッチ円上の位置で変速歯車104−2と変速歯車102との噛み合いが終わるときの変速歯車102の回転角よりも、図7に示す角度θeだけ進めた角度となる。そして、変速歯車104−1と変速歯車102との歯先が干渉しなくなるときの変速歯車102の回転角は、ピッチ円上の位置で変速歯車104−2と変速歯車102との噛み合いが終わるときの変速歯車102の回転角よりも、図7に示す角度θerだけ進めた角度となる。ただし、図7において、Aは出力軸101と変速歯車軸103−1との軸間距離、rt1は変速歯車104−1の歯先円半径、rt2は変速歯車102の歯先円半径、rp1は変速歯車104−1の噛み合いピッチ円半径、rp2は変速歯車102の噛み合いピッチ円半径、rb1は変速歯車104−1の基礎円半径、rb2は変速歯車102の基礎円半径、rm2は変速歯車104−1の歯先との噛み合いが終わる時点で変速歯車102の歯が接している半径である。そして、θeは、ピッチ円上の位置で変速歯車104−1と変速歯車102との噛み合いが終わるときから変速歯車104−1の歯先と変速歯車102の歯との噛み合いが終わるときまで回転させた場合の変速歯車102の回転角であり、θerは、ピッチ円上の位置で変速歯車104−1と変速歯車102との噛み合いが終わるときから変速歯車104−1と変速歯車102との歯先が干渉しなくなるときまで回転させた場合の変速歯車102の回転角である。
なお、図6,7において、rm2は以下の(6)式で表され、θsは以下の(7)式で表され、θeは以下の(8)式で表され、θsr,θerは以下の(9)式で表される。
図5の期間t5〜t6においては、カム機構106は、変速歯車102と噛み合っている変速歯車104−2(係合側歯車)を一定のスライド速度Lで軸線方向の一方側へ移動させるとともに、変速歯車102と噛み合っていない変速歯車104−1(解放側歯車)を軸線方向の他方側へ移動させる。つまり、変速歯車104−1,104−2を互いに反対方向に移動させる。その際には、カム機構106は、変速歯車104−1(解放側歯車)を変速歯車104−2(係合側歯車)よりも速いスライド速度で軸線方向の他方側へ移動させる。なお、係合側歯車が変速歯車104−2から変速歯車104−1へ切り替わる場合の動作についても、係合側歯車が変速歯車104−1から変速歯車104−2へ切り替わる場合の動作と同様であり、上記の説明において、変速歯車104−1を変速歯車104−2、変速歯車104−2を変速歯車104−1にそれぞれ置き換えたものを考えればよい。また、図5のタイムチャートにおいても、実線の「係合」で示す部分が変速歯車102と噛み合っている期間となり、破線の「解放」で示す部分が変速歯車102と噛み合っていない期間となる。
上記の動作を実現するためのカム機構106の溝106aの構成例を図8,9に示す。図8では、カム機構106の外周面を周方向に沿って展開して示しており、図9では、溝106aの形状を3次元的に示している。図8,9に示す構成例の各溝106aにおいては、ピン107−1,107−2を軸線方向の一方側へ移動させる方向へ一定の傾斜角度φで傾斜した部分の位相範囲θ1〜θ2が、変速歯車102の歯が形成された位相範囲θ3〜θ4よりも広く設計されている。θ3は、変速歯車104−2(あるいは変速歯車104−1)と噛み合い始める歯の位相であり、θ4は、変速歯車104−2(あるいは変速歯車104−1)と噛み合い終わる歯の位相である。θ3とθ1との位相差Δθ1は、前述のθs以上に設計することが好ましく、さらには、前述のθsr以上に設計することが好ましい。そして、θ2とθ4との位相差Δθ2は、前述のθe以上に設計することが好ましく、さらには、前述のθer以上に設計することが好ましい。また、各溝106aにおいては、ピン107−1,107−2を軸線方向の他方側へ移動させる方向へ傾斜した部分の位相範囲が前述の位相範囲θ1〜θ2よりも狭く設計されている。そのため、ピン107−1,107−2を軸線方向の他方側へ移動させる方向へ傾斜した部分の傾斜角度αが、ピン107−1,107−2を軸線方向の一方側へ移動させる方向へ傾斜した部分の傾斜角度φよりも大きい。
上記のように、本実施形態では、ピッチ円上の位置で変速歯車104−2(あるいは変速歯車104−1)と変速歯車102との噛み合いが始まる前から、変速歯車104−2(あるいは変速歯車104−1)を軸線方向の一方側へスライドさせる。そして、ピッチ円上の位置で変速歯車104−2(あるいは変速歯車104−1)と変速歯車102との噛み合いが終了した後でも、変速歯車104−2(あるいは変速歯車104−1)を軸線方向の一方側へスライドさせる。変速歯車102に対する変速歯車104−1,104−2の移動軌跡を図10に示す。ただし、図10では、変速歯車102をピッチ円上の位置で周方向に沿って展開して示している。図11より、変速歯車102の歯先が変速歯車104−2(あるいは変速歯車104−1)と噛み合い始める直前からピッチ円上の位置で変速歯車104−2(あるいは変速歯車104−1)と変速歯車102との噛み合いが始まる直前までにおける変速歯車104−2(あるいは変速歯車104−1)のスライド量ΔWsは、以下の(10)式で表される。そして、変速歯車104−2(あるいは変速歯車104−1)と変速歯車102との歯先が干渉する直前からピッチ円上の位置で変速歯車104−2(あるいは変速歯車104−1)と変速歯車102との噛み合いが始まる直前までにおける変速歯車104−2(あるいは変速歯車104−1)のスライド量ΔWsrは、以下の(11)式で表される。また、図11より、ピッチ円上の位置で変速歯車104−2(あるいは変速歯車104−1)と変速歯車102との噛み合いが終わるときから変速歯車104−2(あるいは変速歯車104−1)の歯先と変速歯車102の歯との噛み合いが終わるときまでにおける変速歯車104−2(あるいは変速歯車104−1)のスライド量ΔWeは、以下の(12)式で表される。そして、ピッチ円上の位置で変速歯車104−2(あるいは変速歯車104−1)と変速歯車102との噛み合いが終わるときから変速歯車104−2(あるいは変速歯車104−1)と変速歯車102との歯先が干渉しなくなるときまでにおける変速歯車104−2(あるいは変速歯車104−1)のスライド量ΔWerは、以下の(13)式で表される。ただし、(10)〜(13)式において、Wは、ピッチ円上の位置で変速歯車104−2(あるいは変速歯車104−1)と変速歯車102との噛み合いが始まる直前から終わるときまでにおける変速歯車104−2(あるいは変速歯車104−1)のスライド量である。そして、θは、変速歯車102の歯が形成された角度範囲(変速歯車104−1,104−2同士の成す角度、図10,11に示す例ではπ[rad])である。
ΔWs=θs×W/θ (10)
ΔWsr=θsr×W/θ (11)
ΔWe=θe×W/θ (12)
ΔWer=θer×W/θ (13)
したがって、変速歯車102の歯先が変速歯車104−2(あるいは変速歯車104−1)と噛み合い始める直前から変速歯車104−2(あるいは変速歯車104−1)の歯先と変速歯車102の歯との噛み合いが終わるときまで、変速歯車104−2(あるいは変速歯車104−1)を一定のスライド速度Lでスライドさせる場合のスライド量は、W+ΔWs+ΔWeとなる。そして、変速歯車104−2(あるいは変速歯車104−1)と変速歯車102との歯先が干渉する直前から変速歯車104−2(あるいは変速歯車104−1)と変速歯車102との歯先が干渉しなくなるときまで、変速歯車104−2(あるいは変速歯車104−1)を一定のスライド速度Lでスライドさせる場合のスライド量は、W+ΔWsr+ΔWerとなる。
ただし、ピッチ円上の位置での変速歯車104−2(あるいは変速歯車104−1)と変速歯車102との噛み合い始めと噛み合い終わりとの相対位置関係より、Wは以下の(14)式または(15)式で表される離散的な値をとる必要がある。そのため、変速歯車104−2(あるいは変速歯車104−1)のスライド速度Lも離散的な値となり、変速比γも離散的な値となる。なお、(14)、(15)式において、Z2は変速歯車102の歯数であり、nは1以上の整数である。
また、本実施形態では、入力軸111からのトルクは、変速歯車104−1,104−2と変速歯車102との噛み合いにより出力軸101へ伝達されるだけでなく、ピン107−1,107−2及びカム機構106を介しても出力軸101へ伝達される。図12,13から、変速歯車104−2(あるいは変速歯車104−1)と変速歯車102との噛み合いにより出力軸101へ伝達されるトルクTout1は以下の(16)式で表され、ピン107−2(あるいはピン107−1)及びカム機構106を介して出力軸101へ伝達されるトルクTout2は以下の(17)式で表される。そして、出力軸101へ伝達される合計トルクTout1+Tout2は以下の(18)式で表される。ただし、図12,13及び(16)〜(18)式において、rcamはカム機構の半径、φはカム周方向に対する溝106aの傾斜角度、F1は変速歯車104−2(あるいは変速歯車104−1)と変速歯車102との間に作用する接線力、F2はピン107−2(あるいはピン107−1)とカム機構106との間に作用する接線力である。
ベルト式無段変速機やトロイダル式無段変速機等の変速装置は、摩擦力による伝達であるため、滑りによる損失が発生し、高トルクに対応するのに押し付け力を増大させる必要があり、体格の大型化を招きやすい。これに対して本実施形態では、変速歯車(はすば歯車)102,104−1,104−2の歯のねじれ角を利用して変速歯車104−1,104−2をスライドさせることで、変速比を多段階に変化させることができる。動力伝達の際には、常に歯車同士が噛み合っている状態であるため、回転トルクの大きさに関係なく動力を確実に伝達することができ、変速装置の高効率化及び高トルク化を実現することができる。さらに、動力伝達の際には大きな押し付け力も必要としないため、変速装置の小型化も可能となる。
さらに、本実施形態では、変速歯車102と噛み合い且つ軸線方向の一方側へ移動させる歯車(動力伝達に寄与する歯車)を変速歯車104−1,104−2間で切り替える場合には、解放側歯車が変速歯車102と噛み合うまでに解放側歯車のスライド速度を係合側歯車のスライド速度まで増加させる。これによって、解放側歯車が変速歯車102と噛み合うときに、動力伝達に寄与する歯車のスライド速度が変化するのを防止することができるとともに、スライド方向やスライド速度の異なる歯車が同時に変速歯車102と噛み合うのを防止することができる。そして、解放側歯車が変速歯車102と噛み合い、係合側歯車と変速歯車102との噛み合いが終了してから、この噛み合いが終了した歯車のスライド速度を低下させる。これによって、この噛み合いが終了した歯車のスライド速度を低下させるときに、動力伝達に寄与する歯車のスライド速度が変化するのを防止することができるとともに、スライド方向やスライド速度の異なる歯車が同時に変速歯車102と噛み合うのを防止することができる。したがって、本実施形態によれば、動力伝達に寄与する歯車を変速歯車104−1,104−2間で切り替える場合に、変速比γの変化及び歯車機構のロックが生じるのを防止することができる。
本実施形態に係る変速装置において、スライド速度Lと変速比γとの関係を計算した結果の一例を図14に示す。(5)式から、スライド速度Lを大きくとることが可能であれば、発進機構や後退機構としての利用も可能となる。
本実施形態では、例えば図15に示すように、変速歯車102から変速歯車104−2(あるいは変速歯車104−1)へ動力を伝達してもよい。図15に示す構成例では、変速歯車102は、入力軸111に結合され、入力軸111とともに回転する。カム機構106は、入力軸111を介して変速歯車102に連結されている。変速歯車軸出力歯車123−1,123−2は、変速歯車軸103−1,103−2にそれぞれ結合され、変速歯車軸103−1,103−2(変速歯車104−1,104−2)とともにそれぞれ回転する。出力歯車122は、出力軸101に結合され、出力軸101とともに回転する。変速歯車軸出力歯車123−1,123−2の基準円半径は互いに等しく、変速歯車軸出力歯車123−1,123−2は出力歯車122と噛み合う。なお、出力歯車122及び変速歯車軸出力歯車123−1,123−2は必ずしもはすば歯車である必要はない。また、出力歯車122を内歯車にすることも可能である。図15に示す構成例の場合は、図5の期間t2〜t3において、変速歯車104−2の歯先と変速歯車102の歯との噛み合いが始まるまでに、変速歯車104−2の軸線方向の一方側へのスライド速度を変速歯車104−1のスライド速度Lまで増加させる。そして、図5の期間t4〜t5において、変速歯車104−1の歯と変速歯車102の歯先との噛み合いが終了してから、変速歯車104−1の軸線方向の一方側へのスライド速度を減少させる。
また、本実施形態では、例えば図16に示すように、カム機構106が斜板カムであってもよい。図16に示す構成例では、スライド機構105−1,105−2に溝105−1a,105−2aがそれぞれ形成されており、変速歯車102と同期して回転するカム機構(斜板カム)106の外周部がスライド機構105−1,105−2の溝105−1a,105−2aに嵌合されている。傾動機構108は、出力軸101(軸線方向)に対するカム機構(斜板カム)106の傾斜角度を変更する。図16では、傾動機構108の具体的構成の図示を省略しているが、公知の構成で実現可能である。図16に示す構成例では、変速歯車102の回転角に対する各変速歯車104−1,104−2の軸線方向位置の関係は、カム機構106の外周部(溝105−1a,105−2aに嵌合される部分)の形状により設定することが可能であり、より具体的には、カム機構106の外周部の周方向位置(位相)に対する軸線方向位置の関係により決まる。さらに、傾動機構108により軸線方向に対するカム機構106の傾斜角度を変更することで、変速歯車102の回転角に対する各変速歯車104−1,104−2の軸線方向位置の関係を変更することができるので、各変速歯車104−1,104−2のスライド速度を変更することができ、変速比γを変更することができる。図5に示す変速歯車104−1,104−2のスライド動作を実現するためのカム機構(斜板カム)106の構成例(外周部のカム位相に対する軸線方向位置の関係)を図17に示す。図17に示す関係では、変速歯車104−1,104−2を軸線方向の一方側へ移動させる部分の位相範囲θ1〜θ2が、変速歯車102の歯が形成された位相範囲θ3〜θ4よりも広く設計されている。そして、変速歯車104−1,104−2を軸線方向の他方側へ移動させる部分の位相範囲が位相範囲θ1〜θ2よりも狭く、変速歯車104−1,104−2を軸線方向の他方側へ移動させる部分の傾きが、変速歯車104−1,104−2を軸線方向の一方側へ移動させる部分の傾きよりも大きい。
「実施形態2」
図18,19は、本発明の実施形態2に係る変速装置の概略構成を示す図である。以下の実施形態2の説明では、実施形態1と同様の構成または対応する構成には同一の符号を付し、説明を省略する構成については実施形態1と同様である。
本実施形態に係る変速装置は、入力軸111と、中心軸が入力軸111と同軸に配置された変速歯車102と、入力軸111(変速歯車102の中心軸)と平行に配置された複数の変速歯車軸(回転軸)103−1,103−2と、変速歯車軸103−1とともに回転する変速歯車104−1,154−1と、変速歯車軸103−2とともに回転する変速歯車104−2,154−2と、各変速歯車軸103−1,103−2(変速歯車104−1,104−2,154−1,154−2)を回転自在に支持し、入力軸111に結合され入力軸111とともに回転するキャリア114と、入力軸111と同軸に配置された出力軸101と、出力軸101に結合され出力軸101とともに回転する変速歯車152と、を備える。変速歯車102は、内歯車であり、所定のねじれ角を有するはすば歯車である。変速歯車104−1,104−2は、外歯車であり、変速歯車102と等しいねじれ角を有するはすば歯車である。変速歯車104−1,104−2の基準円半径(ピッチ円半径)rp2は互いに等しく、入力軸111(変速歯車102の中心軸)と変速歯車軸103−1との軸間距離は変速歯車102の基準円半径rrと変速歯車104−1の基準円半径rp2との差に等しく、入力軸111と変速歯車軸103−2との軸間距離は変速歯車102の基準円半径rrと変速歯車104−2の基準円半径rp2との差に等しい。
変速歯車152の中心軸は、変速歯車軸103−1,103−2と平行であり、変速歯車102の中心軸と一致している。変速歯車152は、外歯車であり、所定のねじれ角を有するはすば歯車である。変速歯車154−1,154−2は、外歯車であり、変速歯車152と等しいねじれ角を有するはすば歯車である。変速歯車154−1,154−2の基準円半径(ピッチ円半径)rp1は互いに等しく、出力軸101(変速歯車152の中心軸)と変速歯車軸103−1との軸間距離は変速歯車152の基準円半径rsと変速歯車154−1の基準円半径rp1との和に等しく、出力軸101と変速歯車軸103−2との軸間距離は変速歯車152の基準円半径rsと変速歯車154−2の基準円半径rp1との和に等しい。各変速歯車(はすば歯車)154−1,154−2は、変速歯車(はすば歯車)152と噛み合う。図18に示す例では、出力軸101の軸線方向に関する変速歯車152の長さは、この軸線方向に関する変速歯車154−1,154−2の長さよりも長い。変速歯車154−1,154−2の半径(基準円半径rp1)は変速歯車104−1,104−2の半径(基準円半径rp2)と異なり、図18に示す例では、変速歯車154−1,154−2の基準円半径rp1が変速歯車104−1,104−2の基準円半径rp2よりも小さい。
変速歯車102は、図示しないケーシングに固定されており、その回転が拘束されている。そのため、入力軸111(キャリア114)の回転に伴って、各変速歯車104−1,104−2,154−1,154−2が自軸まわりに回転(自転)するとともに、変速歯車102,152の中心軸まわりに回転(公転)する。このように、本実施形態では、変速歯車102,104−1,104−2,152,154−1,154−2による歯車機構が遊星歯車機構として機能し、変速歯車102がリングギア、変速歯車152がサンギア、変速歯車104−1,104−2,154−1,154−2がピニオンギア(プラネタリギア)として機能する。
本実施形態でも、変速歯車102の歯は、その周方向(キャリア114の回転方向)に関して360°(2π[rad])より小さい所定角度θの範囲に部分的に設けられており、変速歯車104−1,104−2の歯は全周に渡って形成されている。図18,19に示す例では、変速歯車102の歯は、その周方向に関して180°(π[rad])の範囲に形成されている。そして、変速歯車軸103−1及び変速歯車104−1と、変速歯車軸103−2及び変速歯車104−2とが、変速歯車102の周方向(キャリア114の回転方向)に関して180°(π[rad])の間隔、つまり変速歯車102の歯が形成された角度範囲θと等しい間隔をおいて配置されている。この配置により、変速歯車104−1,104−2のいずれかが変速歯車102と常に噛み合い、キャリア114の回転に伴って、変速歯車102と噛み合う歯車が変速歯車104−1,104−2間で切り替わる。さらに、実施形態1と同様に、変速歯車104−1,104−2の両方が一時的に変速歯車102と噛み合う。一方、変速歯車152,154−1,154−2の歯は、全周に渡って設けられている。各変速歯車104−1,104−2とともにそれぞれ回転する変速歯車154−1,154−2は、変速歯車152の周方向(回転方向)に関して180°の間隔をおいて配置されている。
スライド機構105−1は、変速歯車104−1,154−1を変速歯車軸103−1にその軸線方向に沿ってスライド可能(移動可能)に支持し、スライド機構105−2は、変速歯車104−2,154−2を変速歯車軸103−2にその軸線方向に沿ってスライド可能(移動可能)に支持する。そのため、各変速歯車104−1,104−2は、変速歯車102に対して噛み合いを維持した状態で変速歯車軸103−1,103−2の軸線方向(以下単に軸線方向とする)に沿ってスライド可能であり、各変速歯車154−1,154−2は、変速歯車152に対して噛み合いを維持した状態で軸線方向に沿ってスライド可能である。
カム機構106は、変速歯車104−1,154−1を変速歯車軸103−1に対してその軸線方向に沿って往復移動させ、変速歯車104−2,154−2を変速歯車軸103−2に対してその軸線方向に沿って往復移動させる。これによって、変速歯車104−1,104−2を変速歯車102に対して軸線方向に沿ってそれぞれ往復移動させ、変速歯車154−1,154−2を変速歯車152に対して軸線方向に沿ってそれぞれ往復移動させる。カム機構106は、ケーシング(変速歯車102)に固定されており、その回転が拘束されている。カム機構106の構成は実施形態1と同様である。キャリア114の回転に連動して各ピン107−1,107−2が溝106aの形状に従って移動することで、各変速歯車104−1,104−2,154−1,154−2が軸線方向に沿ってそれぞれ往復移動する。その際には、変速歯車104−1,154−1は、同一のスライド機構105−1に支持されているため、互いに同方向にスライドし、変速歯車104−2,154−2は、同一のスライド機構105−2に支持されているため、互いに同方向にスライドする。キャリア114の回転角に対する各変速歯車104−1,104−2,154−1,154−2の軸線方向位置の関係は、溝106aのカム周方向位置(位相)に対する軸線方向位置の関係により決まる。本実施形態でも、カム機構106は、複数の変速歯車104−1,104−2のうち、変速歯車102と噛み合っている歯車(係合側歯車)を軸線方向の一方側(例えば図18の左側)へスライド(移動)させ、変速歯車102と噛み合っていない歯車(解放側歯車)を軸線方向の他方側(例えば図18の右側)へスライド(移動)させる。つまり、係合側歯車と解放側歯車とを互いに反対方向にスライドさせる。そして、カム機構106は、軸線方向の一方側へスライドさせる係合側歯車を変速歯車104−1,104−2間で切り替える。
変速歯車104−1が変速歯車102と噛み合っている状態では、入力軸111(キャリア114)に入力された動力は、変速歯車104−1と変速歯車102との噛み合いにより出力軸101(変速歯車152)へ伝達される。また、変速歯車104−2が変速歯車102と噛み合っている状態では、入力軸111に入力された動力は、変速歯車104−2と変速歯車102との噛み合いにより出力軸101へ伝達される。変速歯車154−1,154−2の基準円半径をrp1、変速歯車104−1,104−2の基準円半径をrp2、変速歯車152の基準円半径をrs、変速歯車102の基準円半径をrr、変速歯車102,104−1,104−2,152,154−1,154−2の歯のねじれ角をβ、変速歯車104−1,104−2,154−1,154−2の回転角速度をωp、変速歯車152の回転角速度をωs、変速歯車102の回転角速度をωr、キャリア114の回転角速度をωc、変速歯車102と噛み合っている係合側歯車のスライド速度をLとすると、以下の(19)〜(21)式が成立する。(19)、(20)式における±の符号はねじれ角βの方向に応じて決まる。
変速歯車102は固定されており、その回転角速度ωrが0であるため、以下の(22)式が成立する。(22)式から、係合側歯車のスライド速度Lを変化させることで、変速装置全体の変速比γ(キャリア114と変速歯車152との回転角速度比ωc/ωs)の変更が可能となる。なお、本実施形態では、変速歯車104−1,104−2と変速歯車154−1,154−2とで、歯のねじれ角を異ならせることもできる。ここでは、変速歯車104−1,104−2と変速歯車154−1,154−2とで、歯のねじれ方向を互いに反対方向にすることもできるし、歯のねじれ角の大きさを異ならせることもできる。例えば、変速歯車104−1,104−2と変速歯車154−1,154−2とで、歯のねじれ方向を互いに反対方向にすることで、変速比γの可変幅を増大させることができる。なお、変速歯車104−1,104−2と変速歯車154−1,154−2とで、歯のねじれ角(大きさやねじれ方向)が異なる場合は、必ずしも基準円半径が異なっている必要はない。
次に、変速歯車102と噛み合う係合側歯車が変速歯車104−1,104−2間で切り替わる場合の動作について説明する。図5の期間t1〜t2においては、カム機構106は、変速歯車102と噛み合っている変速歯車104−1(係合側歯車)と変速歯車154−1とを一定のスライド速度Lで軸線方向の一方側へ移動させるとともに、変速歯車102と噛み合っていない変速歯車104−2(解放側歯車)と変速歯車154−2とを軸線方向の他方側へ移動させる。つまり、変速歯車104−1,154−1と変速歯車104−2,154−2とを互いに反対方向に移動させる。その際には、カム機構106は、変速歯車104−2,154−2を変速歯車104−1,154−1よりも速いスライド速度で軸線方向の他方側へ移動させる。
次に、図5の期間t2〜t3において、変速歯車104−1が変速歯車102と噛み合い且つ一定のスライド速度Lで軸線方向の一方側へ移動している状態で、カム機構106は、変速歯車104−2,154−2の軸線方向の他方側へのスライド速度を減少させて、そのスライド方向を軸線方向の他方側から一方側へ切り替える。つまり、変速歯車104−2,154−2のスライド方向を変速歯車104−1,154−1のスライド方向と反対方向から同方向へ切り替える。そして、カム機構106は、変速歯車104−2と変速歯車102との噛み合いが始まるまでに、変速歯車104−2,154−2の軸線方向の一方側へのスライド速度を変速歯車104−1,154−1のスライド速度Lまで増加させる。ここでは、スライド方向やスライド速度の異なる変速歯車104−1,104−2が変速歯車102と同時に噛み合うことを防止するために、変速歯車104−2の歯先と変速歯車102の歯との噛み合いが始まるまでに、変速歯車104−2,154−2の軸線方向の一方側へのスライド速度を変速歯車104−1,154−1のスライド速度Lまで増加させる。さらに、軸線方向に長さを持った変速歯車104−2がスライドすることを考慮すると、変速歯車104−2と変速歯車102との歯先が干渉するまでに、変速歯車104−2,154−2の軸線方向の一方側へのスライド速度を変速歯車104−1,154−1のスライド速度Lまで増加させることが好ましい。
図5の期間t3〜t4においては、変速歯車104−2が変速歯車102と噛み合い、変速歯車104−1,104−2の両方が変速歯車102と噛み合うオーバーラップ期間となるが、カム機構106は、変速歯車104−1,104−2の両方を互いに等しい一定のスライド速度Lで軸線方向の一方側へ移動させるため、変速歯車102,104−1,104−2,152,154−1,154−2による歯車機構がロックすることはなく、スライド速度Lに応じた変速比γで動力伝達を行うことが可能となる。
次に、図5の期間t4〜t5において、変速歯車104−2が変速歯車102と噛み合い且つ一定のスライド速度Lで軸線方向の一方側へ移動している状態で、カム機構106は、変速歯車104−1と変速歯車102との噛み合いが終了してから、変速歯車104−1,154−1の軸線方向の一方側へのスライド速度を減少させて、そのスライド方向を軸線方向の一方側から他方側へ切り替える。つまり、変速歯車104−1,154−1のスライド方向を変速歯車104−2,154−2のスライド方向と同方向から反対方向へ切り替える。ここでは、スライド方向やスライド速度の異なる変速歯車104−1,104−2が変速歯車102と同時に噛み合うことを防止するために、変速歯車104−1の歯と変速歯車102の歯先との噛み合いが終了してから、変速歯車104−1,154−1の軸線方向の一方側へのスライド速度を減少させる。さらに、軸線方向に長さを持った変速歯車104−1がスライドすることを考慮すると、変速歯車104−1と変速歯車102との歯先が干渉しなくなってから、変速歯車104−1,154−1の軸線方向の一方側へのスライド速度を減少させることが好ましい。
図5の期間t5〜t6においては、カム機構106は、変速歯車102と噛み合っている変速歯車104−2(係合側歯車)と変速歯車154−2とを一定のスライド速度Lで軸線方向の一方側へ移動させるとともに、変速歯車102と噛み合っていない変速歯車104−1(解放側歯車)と変速歯車154−1とを軸線方向の他方側へ移動させる。つまり、変速歯車104−1,154−1と変速歯車104−2,154−2とを互いに反対方向に移動させる。その際には、カム機構106は、変速歯車104−1,154−1を変速歯車104−2,154−2よりも速いスライド速度で軸線方向の他方側へ移動させる。なお、係合側歯車が変速歯車104−2から変速歯車104−1へ切り替わる場合の動作についても、係合側歯車が変速歯車104−1から変速歯車104−2へ切り替わる場合の動作と同様である。
以上説明した本実施形態でも実施形態1と同様に、動力伝達に寄与する歯車を変速歯車104−1,154−1と変速歯車104−2,154−2との間で切り替える場合に、変速比γの変化及び歯車機構のロックが生じるのを防止することができる。
本実施形態では、変速歯車102を外歯車にすることも可能である。また、変速歯車152を内歯車にすることも可能である。
また、本実施形態では、入力軸111を変速歯車152に結合し、出力軸101をキャリア114に結合し、変速歯車152からキャリア114へ動力を伝達することも可能である。その場合は、図5の期間t2〜t3において、変速歯車104−2の歯と変速歯車102の歯先との噛み合いが始まるまでに、変速歯車104−2,154−2の軸線方向の一方側へのスライド速度を変速歯車104−1,154−1のスライド速度Lまで増加させる。そして、図5の期間t4〜t5において、変速歯車104−1の歯先と変速歯車102の歯との噛み合いが終了してから、変速歯車104−1,154−1の軸線方向の一方側へのスライド速度を減少させる。
また、本実施形態では、変速歯車102の代わりにキャリア114をケーシングに固定してその回転を拘束することで、変速歯車102と変速歯車152との間で動力伝達を行うことも可能である。その場合の構成例を図20に示す。図20は、変速歯車102が外歯車である例を示している。カム機構106は、変速歯車102に同期して回転することで、各変速歯車104−1,104−2,154−1,154−2を軸線方向に沿ってそれぞれ往復運動させる。カム機構106が各変速歯車104−1,104−2をスライドさせる動作は図15に示す構成例と同様である。
また、本実施形態でも実施形態1と同様に、例えば図21に示すように、カム機構106が斜板カムであってもよい。
また、本実施形態では、各変速歯車154−1,154−2を変速歯車軸103−1,103−2にそれぞれ結合して軸線方向に沿って往復運動させないように構成することも可能である。その場合は、各変速歯車152,154−1,154−2は必ずしもはすば歯車である必要はない。
また、実施形態1,2では、変速歯車102の歯が形成された角度範囲を変速歯車104−1,104−2同士の成す角度(180°)より大きくすることによっても、変速歯車104−1,104−2のいずれかが変速歯車102と常に噛み合い(係合し)、且つ変速歯車104−1,104−2の両方が一時的に変速歯車102と噛み合うように構成することが可能である。また、実施形態1,2では、変速歯車102に対してスライドする変速歯車(スライド側変速歯車とする)を変速歯車102の回転方向に関して間隔をおいて3つ以上配置することも可能である。その場合は、変速歯車102の歯が形成された角度範囲を変速歯車102の回転方向に隣接するスライド側変速歯車同士の間隔(成す角度)以上にすることで、スライド側変速歯車のいずれか1つ以上が変速歯車102と常に噛み合い、且つスライド側変速歯車の2つ以上が一時的に変速歯車102と噛み合うように構成することが可能である。このように、実施形態1,2では、変速歯車102の歯が形成された角度範囲と、変速歯車104−1,104−2同士の成す角度(隣接するスライド側変速歯車同士の成す角度)は、必ずしも180°である必要はない。
「実施形態3」
図22は、本発明の実施形態3に係る変速装置の概略構成を示す図である。以下の実施形態3の説明では、実施形態1,2と同様の構成または対応する構成には同一の符号を付し、説明を省略する構成については実施形態1,2と同様である。
本実施形態では、実施形態2(図18に示す構成例)と比較して、変速歯車102の代わりに変速歯車152がケーシングに固定されその回転が拘束されていることで、キャリア114に入力された動力は変速歯車102へ伝達される。そして、変速歯車154−1,154−2は、スライド機構105−1,105−2に支持されておらず、変速歯車軸103−1,103−2にそれぞれ結合されている。つまり、変速歯車154−1,154−2は軸線方向に往復運動しない。さらに、変速歯車152の歯は、その周方向(キャリア114の回転方向)に関して360°(2π[rad])より小さい所定角度θの範囲に部分的に設けられている。図22に示す例では、変速歯車152の歯は、その周方向に関して180°(π[rad])の範囲に形成されている。そして、変速歯車軸103−1及び変速歯車154−1と、変速歯車軸103−2及び変速歯車154−2とが、変速歯車152の周方向(キャリア114の回転方向)に関して180°(π[rad])の間隔、つまり変速歯車152の歯が形成された角度範囲θと等しい間隔をおいて配置されている。この配置により、変速歯車154−1,154−2のいずれかが変速歯車152と常に噛み合うことで、変速歯車104−1,104−2のいずれかが変速歯車152と常に係合し、キャリア114の回転に伴って、変速歯車152と噛み合う歯車が変速歯車154−1,154−2間で切り替わることで、変速歯車152と係合する歯車が変速歯車104−1,104−2間で切り替わる。さらに、実施形態1,2の変速歯車102,104−1,104−2と同様に変速歯車154−1,154−2の両方が一時的に変速歯車152と噛み合うことで、変速歯車104−1,104−2の両方が一時的に変速歯車152と係合する。一方、変速歯車102の歯は、全周に渡って設けられている。
次に、変速歯車152と係合する係合側歯車が変速歯車104−1,104−2間で切り替わる場合の動作について説明する。図5の期間t1〜t2においては、カム機構106は、変速歯車152と係合状態にある変速歯車104−1(係合側歯車)を一定のスライド速度Lで軸線方向の一方側へ移動させるとともに、変速歯車152と解放状態にある変速歯車104−2(解放側歯車)を軸線方向の他方側へ移動させる。つまり、変速歯車104−1,104−2を互いに反対方向に移動させる。その際には、カム機構106は、変速歯車104−2を変速歯車104−1よりも速いスライド速度で軸線方向の他方側へ移動させる。
次に、図5の期間t2〜t3において、変速歯車104−1が変速歯車152と係合し且つ一定のスライド速度Lで軸線方向の一方側へ移動している状態で、カム機構106は、変速歯車104−2の軸線方向の他方側へのスライド速度を減少させて、そのスライド方向を軸線方向の他方側から一方側へ切り替える。つまり、変速歯車104−2のスライド方向を変速歯車104−1のスライド方向と反対方向から同方向へ切り替える。そして、カム機構106は、変速歯車104−2と変速歯車152との係合(変速歯車154−2と変速歯車152との噛み合い)が始まるまでに、変速歯車104−2の軸線方向の一方側へのスライド速度を変速歯車104−1のスライド速度Lまで増加させる。ここでは、スライド方向やスライド速度の異なる変速歯車104−1,104−2が変速歯車152と同時に係合する(回転方向や回転速度の異なる変速歯車154−1,154−2が変速歯車152と同時に噛み合う)ことを防止するために、変速歯車154−2の歯先と変速歯車152の歯との噛み合いが始まるまでに、変速歯車104−2の軸線方向の一方側へのスライド速度を変速歯車104−1のスライド速度Lまで増加させる。さらに、変速歯車154−2と変速歯車152との歯先が干渉するまでに、変速歯車104−2の軸線方向の一方側へのスライド速度を変速歯車104−1のスライド速度Lまで増加させることが好ましい。
図5の期間t3〜t4においては、変速歯車104−2が変速歯車152と係合し、変速歯車104−1,104−2の両方が変速歯車152と係合する(変速歯車154−1,154−2の両方が変速歯車152と噛み合う)オーバーラップ期間となるが、カム機構106は、変速歯車104−1,104−2の両方を互いに等しい一定のスライド速度Lで軸線方向の一方側へ移動させるため、変速歯車102,104−1,104−2,152,154−1,154−2による歯車機構がロックすることはなく、スライド速度Lに応じた変速比γで動力伝達を行うことが可能となる。
次に、図5の期間t4〜t5において、変速歯車104−2が変速歯車152と係合し且つ一定のスライド速度Lで軸線方向の一方側へ移動している状態で、カム機構106は、変速歯車104−1と変速歯車152との係合(変速歯車154−1と変速歯車152との噛み合い)が終了してから、変速歯車104−1の軸線方向の一方側へのスライド速度を減少させて、そのスライド方向を軸線方向の一方側から他方側へ切り替える。つまり、変速歯車104−1のスライド方向を変速歯車104−2のスライド方向と同方向から反対方向へ切り替える。ここでは、回転方向や回転速度の異なる変速歯車154−1,154−2が変速歯車152と同時に噛み合うことを防止するために、変速歯車154−1の歯と変速歯車152の歯先との噛み合いが終了してから、変速歯車104−1の軸線方向の一方側へのスライド速度を減少させる。さらに、変速歯車154−1と変速歯車152との歯先が干渉しなくなってから、変速歯車104−1の軸線方向の一方側へのスライド速度を減少させることが好ましい。
図5の期間t5〜t6においては、カム機構106は、変速歯車152と係合状態にある変速歯車104−2(係合側歯車)を一定のスライド速度Lで軸線方向の一方側へ移動させるとともに、変速歯車152と解放状態にある変速歯車104−1(解放側歯車)を軸線方向の他方側へ移動させる。つまり、変速歯車104−1,104−2を互いに反対方向に移動させる。その際には、カム機構106は、変速歯車104−1を変速歯車104−2よりも速いスライド速度で軸線方向の他方側へ移動させる。なお、係合側歯車が変速歯車104−2から変速歯車104−1へ切り替わる場合の動作についても、係合側歯車が変速歯車104−1から変速歯車104−2へ切り替わる場合の動作と同様である。
以上説明した本実施形態でも実施形態1,2と同様に、動力伝達に寄与する歯車を変速歯車104−1,154−1と変速歯車104−2,154−2との間で切り替える場合に、変速比γの変化及び歯車機構のロックが生じるのを防止することができる。
本実施形態でも実施形態2と同様に、変速歯車102を外歯車にすることも可能である。また、変速歯車152を内歯車にすることも可能である。
また、本実施形態では、変速歯車102からキャリア114へ動力を伝達することも可能である。その場合は、図5の期間t2〜t3において、変速歯車154−2の歯と変速歯車152の歯先との噛み合いが始まるまでに、変速歯車104−2の軸線方向の一方側へのスライド速度を変速歯車104−1のスライド速度Lまで増加させる。そして、図5の期間t4〜t5において、変速歯車154−1の歯先と変速歯車152の歯との噛み合いが終了してから、変速歯車104−1の軸線方向の一方側へのスライド速度を減少させる。
また、本実施形態では、変速歯車152の代わりにキャリア114をケーシングに固定してその回転を拘束することで、変速歯車102と変速歯車152との間で動力伝達を行うことも可能である。その場合は、カム機構106は変速歯車152に同期して回転することで、各変速歯車104−1,104−2を軸線方向に沿ってそれぞれ往復運動させる。変速歯車102から変速歯車152へ動力を伝達する場合にカム機構106が各変速歯車104−1,104−2をスライドさせる動作は、変速歯車102からキャリア114へ動力を伝達する場合と同様であり、変速歯車152から変速歯車102へ動力を伝達する場合にカム機構106が各変速歯車104−1,104−2をスライドさせる動作は、キャリア114から変速歯車102へ動力を伝達する場合と同様である。
また、本実施形態では、変速歯車152の歯が形成された角度範囲を変速歯車154−1,154−2同士の成す角度(180°)より大きくすることによっても、変速歯車154−1,154−2のいずれかが変速歯車152と常に噛み合い、且つ変速歯車154−1,154−2の両方が一時的に変速歯車152と噛み合うように構成することが可能である。また、変速歯車152と噛み合う変速歯車を変速歯車152の周方向に関して間隔をおいて3つ以上配置することも可能である。本実施形態では、変速歯車152の歯が形成された角度範囲と、変速歯車154−1,154−2同士の成す角度は、必ずしも180°である必要はない。
「実施形態4」
図23は、本発明の実施形態4に係る変速装置の概略構成を示す図である。以下の実施形態4の説明では、実施形態1〜3と同様の構成または対応する構成には同一の符号を付し、説明を省略する構成については実施形態1〜3と同様である。
本実施形態では、実施形態1(図16に示す構成例)と比較して、変速歯車102の歯が全周に渡って形成されている。スライド及びクラッチ機構155−1は、変速歯車104−1と変速歯車軸103−1との間に設けられ、変速歯車104−1を変速歯車軸103−1にその軸線方向に沿ってスライド可能に支持するスライド機構と、変速歯車104−1と変速歯車軸103−1(変速歯車軸入力歯車113−1)との係合/解放を切り替えることで変速歯車104−1と入力歯車112との係合/解放を切り替えるクラッチ機構とを含んで構成される。ここでのクラッチ機構は、例えばワンウェイクラッチにより構成することができる。スライド及びクラッチ機構155−1のワンウェイクラッチは、変速歯車軸103−1(変速歯車軸入力歯車113−1)が変速歯車104−1に対し所定の一方向(例えば図23の矢印に示す方向)に相対的に回転しようとするときに、変速歯車軸103−1(変速歯車軸入力歯車113−1)と変速歯車104−1とを係合させることで、入力歯車112と変速歯車104−1とを係合させる。一方、変速歯車軸103−1(変速歯車軸入力歯車113−1)が変速歯車104−1に対しこの所定の一方向と逆方向(例えば図23の矢印に示す方向と逆方向)に相対的に回転しようとするときは、スライド及びクラッチ機構155−1のワンウェイクラッチは、変速歯車軸103−1(変速歯車軸入力歯車113−1)と変速歯車104−1とを解放することで、入力歯車112と変速歯車104−1とを解放する。ただし、ここでのクラッチ機構は、例えば油圧力や電磁力により変速歯車104−1と変速歯車軸103−1との係合/解放を切り替えるクラッチであってもよいし、カム機構106(変速歯車102)の回転と連動して変速歯車104−1と変速歯車軸103−1との係合/解放を切り替えるクラッチであってもよい。また、クラッチ機構を変速歯車軸入力歯車113−1と変速歯車軸103−1との間に設けることも可能である。
同様に、スライド及びクラッチ機構155−2は、変速歯車104−2と変速歯車軸103−2との間に設けられ、変速歯車104−2を変速歯車軸103−2にその軸線方向に沿ってスライド可能に支持するスライド機構と、変速歯車104−2と変速歯車軸103−2(変速歯車軸入力歯車113−2)との係合/解放を切り替えることで変速歯車104−2と入力歯車112との係合/解放を切り替えるクラッチ機構とを含んで構成される。ここでのクラッチ機構は、例えばワンウェイクラッチにより構成することができる。スライド及びクラッチ機構155−2のワンウェイクラッチは、変速歯車軸103−2(変速歯車軸入力歯車113−2)が変速歯車104−2に対し所定の一方向(例えば図23の矢印に示す方向)に相対的に回転しようとするときに、変速歯車軸103−2(変速歯車軸入力歯車113−2)と変速歯車104−2とを係合させることで、入力歯車112と変速歯車104−2とを係合させる。一方、変速歯車軸103−2(変速歯車軸入力歯車113−2)が変速歯車104−2に対しこの所定の一方向と逆方向(例えば図23の矢印に示す方向と逆方向)に相対的に回転しようとするときは、スライド及びクラッチ機構155−2のワンウェイクラッチは、変速歯車軸103−2(変速歯車軸入力歯車113−2)と変速歯車104−2とを解放することで、入力歯車112と変速歯車104−2とを解放する。ただし、ここでのクラッチ機構についても、例えば油圧力や電磁力により変速歯車104−2と変速歯車軸103−2との係合/解放を切り替えるクラッチであってもよいし、カム機構106(変速歯車102)の回転と連動して変速歯車104−2と変速歯車軸103−2との係合/解放を切り替えるクラッチであってもよい。また、クラッチ機構を変速歯車軸入力歯車113−2と変速歯車軸103−2との間に設けることも可能である。なお、図23では、スライド及びクラッチ機構155−1,155−2の具体的構成の図示を省略しているが、公知の構成で実現可能である。
変速歯車(はすば歯車)104−1,104−2の歯は、軸線方向の他方側(例えば図23の右側)へ移動させた場合に変速歯車軸103−1,103−2(変速歯車軸入力歯車113−1,113−2)に対し前述の所定の一方向(例えば図23の矢印に示す方向)に相対的に回転する方向にねじれている。より具体的には、変速歯車104−1,104−2の歯は、軸線方向の一方側から他方側(例えば図23の左側から右側)へ向かうにつれて前述の所定の一方向(例えば図23の矢印に示す方向)にねじれている。そして、変速歯車(はすば歯車)102の歯は、変速歯車104−1,104−2の歯と噛み合うように、軸線方向の一方側から他方側(例えば図23の左側から右側)へ向かうにつれて、変速歯車104−1,104−2が前述の所定の一方向に回転するときに回転する方向(例えば図23の矢印に示す方向)にねじれている。
スライド及びクラッチ機構155−1,155−2には、溝155−1a,155−2aがそれぞれ形成されており、変速歯車102と同期して回転するカム機構(斜板カム)106の外周部がスライド及びクラッチ機構155−1,155−2の溝155−1a,155−2aに嵌合されている。傾動機構108により軸線方向に対するカム機構106の傾斜角度を連続的に変更することで、各変速歯車104−1,104−2のスライド速度を連続的に変更することができ、変速比γを無段階に変更することができる。図23でも、傾動機構108の具体的構成の図示を省略しているが、公知の構成で実現可能である。
カム機構(斜板カム)106の構成(外周部のカム位相に対する軸線方向位置の関係)は図17に示す関係と同様であり、変速歯車104−1,104−2を軸線方向の一方側へ移動させる部分の位相範囲θ1〜θ2が、変速歯車104−1,104−2を軸線方向の他方側へ移動させる部分の位相範囲よりも広く、変速歯車104−1,104−2を軸線方向の一方側へ移動させる部分の傾きが、変速歯車104−1,104−2を軸線方向の他方側へ移動させる部分の傾きよりも小さい。そのため、カム機構106が各変速歯車104−1,104−2を軸線方向に沿って往復運動させる際の各変速歯車104−1,104−2の軸線方向位置及びスライド速度は図5に示すタイムチャートと同様である。以下、カム機構106が各変速歯車104−1,104−2を軸線方向に沿って往復運動させる際に、入力歯車112(変速歯車軸103−1,103−2)と係合させる歯車を変速歯車104−1,104−2間で切り替える場合の動作について、図24のタイムチャートを用いて説明する。ただし、以下の説明において、変速歯車104−1,104−2の回転方向は、前述の所定の一方向(図23の矢印に示す方向)であるものとする。
図24の期間t1〜t2においては、カム機構106は、変速歯車104−1を一定のスライド速度Lで軸線方向の一方側へ移動させるとともに、変速歯車104−2を軸線方向の他方側へ移動させる。その場合は、変速歯車軸103−1が変速歯車104−1よりも速い回転速度で回転しようとし、変速歯車104−2が変速歯車軸103−2よりも速い回転速度で回転しようとする。そのため、クラッチ機構がワンウェイクラッチである場合は、スライド及びクラッチ機構155−1のワンウェイクラッチが係合状態となり、スライド及びクラッチ機構155−2のワンウェイクラッチが解放状態となる。また、クラッチ機構が油圧力や電磁力やカム機構106の回転を利用して係合/解放を切り替えるクラッチである場合は、カム機構106の回転角に基づいて、スライド及びクラッチ機構155−1のクラッチを係合状態に制御し、スライド及びクラッチ機構155−2のクラッチを解放状態に制御する。つまり、軸線方向の一方側へ移動している変速歯車104−1(係合側歯車)を変速歯車軸103−1(入力歯車112)と係合させ、軸線方向の他方側へ移動している変速歯車104−2(解放側歯車)を変速歯車軸103−2(入力歯車112)から解放する。入力軸111に入力された動力は、変速歯車104−1と変速歯車102との噛み合いにより出力軸101へ伝達され、変速比γは、変速歯車104−1のスライド速度Lに応じて決まる。
次に、図24の期間t2〜t3において、変速歯車104−1(係合側歯車)が一定のスライド速度Lで軸線方向の一方側へ移動し且つ変速歯車軸103−1(入力歯車112)と係合している状態で、カム機構106は、変速歯車104−2(解放側歯車)の軸線方向の他方側へのスライド速度を減少させて、そのスライド方向を軸線方向の他方側から一方側へ切り替える。そして、カム機構106は、変速歯車104−2の軸線方向の一方側へのスライド速度を変速歯車104−1のスライド速度Lまで増加させる。変速歯車104−2のスライド速度が変速歯車104−1のスライド速度Lに等しくなると、変速歯車104−2の回転速度が変速歯車104−1の回転速度に等しくなる。そのため、クラッチ機構がワンウェイクラッチである場合は、変速歯車104−2のスライド速度が変速歯車104−1のスライド速度Lに等しいときに、スライド及びクラッチ機構155−2のワンウェイクラッチが係合状態となり、変速歯車104−2が変速歯車軸103−2(入力歯車112)と係合する。また、クラッチ機構が油圧力や電磁力やカム機構106の回転を利用して係合/解放を切り替えるクラッチである場合は、カム機構106の回転角に基づいて、変速歯車104−2のスライド速度が変速歯車104−1のスライド速度Lに等しい(あるいはほぼ等しい)ときにスライド及びクラッチ機構155−1のクラッチを係合状態に制御する。
図24の期間t3〜t4においては、変速歯車104−1,104−2の両方が入力歯車112と係合するオーバーラップ期間となるが、カム機構106は、変速歯車104−1,104−2の両方を互いに等しい一定のスライド速度Lで軸線方向の一方側へ移動させるため、変速歯車102,104−1,104−2による歯車機構がロックすることはなく、スライド速度Lに応じた変速比γで動力伝達を行うことが可能となる。入力軸111に入力された動力は、変速歯車104−1と変速歯車102との噛み合い、及び変速歯車104−2と変速歯車102との噛み合いにより出力軸101へ伝達される。
次に、図24の期間t4〜t5において、変速歯車104−2が一定のスライド速度Lで軸線方向の一方側へ移動し且つ変速歯車軸103−2(入力歯車112)と係合している状態で、カム機構106は、変速歯車104−1の軸線方向の一方側へのスライド速度を減少させる。その場合は、変速歯車104−1が変速歯車104−2よりも速い回転速度で回転しようとする。そのため、クラッチ機構がワンウェイクラッチである場合は、スライド及びクラッチ機構155−1のワンウェイクラッチが解放状態となり、変速歯車104−1が変速歯車軸103−1(入力歯車112)から解放される。また、クラッチ機構が油圧力や電磁力やカム機構106の回転を利用して係合/解放を切り替えるクラッチである場合は、カム機構106の回転角に基づいて、変速歯車104−1の軸線方向の一方側へのスライド速度を減少させるときにスライド及びクラッチ機構155−1のクラッチを解放状態に制御する。そして、カム機構106は、変速歯車軸103−1(入力歯車112)から解放された変速歯車104−1のスライド方向を軸線方向の一方側から他方側へ切り替える。
図24の期間t5〜t6においては、カム機構106は、変速歯車104−2を一定のスライド速度Lで軸線方向の一方側へ移動させるとともに、変速歯車104−1を軸線方向の他方側へ移動させる。その場合は、変速歯車軸103−2が変速歯車104−2よりも速い回転速度で回転しようとし、変速歯車104−1が変速歯車軸103−1よりも速い回転速度で回転しようとする。そのため、クラッチ機構がワンウェイクラッチである場合は、スライド及びクラッチ機構155−1のワンウェイクラッチが解放状態となり、スライド及びクラッチ機構155−2のワンウェイクラッチが係合状態となる。また、クラッチ機構が油圧力や電磁力やカム機構106の回転を利用して係合/解放を切り替えるクラッチである場合は、カム機構106の回転角に基づいて、スライド及びクラッチ機構155−1のクラッチを解放状態に制御し、スライド及びクラッチ機構155−2のクラッチを係合状態に制御する。つまり、軸線方向の一方側へ移動している変速歯車104−2(係合側歯車)を変速歯車軸103−2(入力歯車112)と係合させ、軸線方向の他方側へ移動している変速歯車104−1(解放側歯車)を変速歯車軸103−1(入力歯車112)から解放する。入力軸111に入力された動力は、変速歯車104−2と変速歯車102との噛み合いにより出力軸101へ伝達され、変速比γは、変速歯車104−2のスライド速度Lに応じて決まる。なお、入力歯車112と係合させる歯車を変速歯車104−2から変速歯車104−1へ切り替える場合の動作についても、入力歯車112と係合させる歯車を変速歯車104−1から変速歯車104−2へ切り替える場合の動作と同様である。
以上説明した本実施形態では、入力歯車112(変速歯車軸103−1,103−2)と係合させる歯車(動力伝達に寄与する歯車)を変速歯車104−1,104−2間で切り替える場合には、解放側歯車のスライド速度を係合側歯車のスライド速度まで増加させ、解放側歯車のスライド速度が係合側歯車のスライド速度に略等しいときに解放側歯車を入力歯車112と係合させる。これによって、解放側歯車を入力歯車112と係合させるときに、動力伝達に寄与する歯車のスライド速度が変化するのを防止することができるとともに、スライド方向やスライド速度の異なる歯車が同時に入力歯車112と係合するのを防止することができる。そして、解放側歯車を入力歯車112と係合させてから、係合側歯車のスライド速度を低下させて係合側歯車を入力歯車112から解放する。これによって、係合側歯車を入力歯車112から解放するときに、動力伝達に寄与する歯車のスライド速度が変化するのを防止することができるとともに、スライド方向やスライド速度の異なる歯車が同時に入力歯車112と係合するのを防止することができる。したがって、本実施形態でも、動力伝達に寄与する歯車を変速歯車104−1,104−2間で切り替える場合に、変速比γの変化及び歯車機構のロックが生じるのを防止することができる。さらに、本実施形態では、入力歯車112と係合させる歯車をワンウェイクラッチにより切り替えることで、変速装置の構成(動力伝達に寄与する歯車を切り替える構成)を簡略化することができる。
本実施形態でも実施形態1と同様に、例えば図25に示すように、変速歯車102から変速歯車104−2(あるいは変速歯車104−1)へ動力を伝達してもよい。図25に示す構成例では、変速歯車102は、入力軸111に結合され、入力軸111とともに回転する。カム機構106は、出力軸101を介して出力歯車122に連結されている。出力歯車122及び変速歯車軸出力歯車123−1,123−2の構成は実施形態1(図15に示す構成例)と同様である。図25に示す構成例においても、入力歯車112と係合させる歯車を変速歯車104−1,104−2間で切り替える場合の動作は図24に示すタイムチャートと同様である。
「実施形態5」
図26は、本発明の実施形態5に係る変速装置の概略構成を示す図である。以下の実施形態4の説明では、実施形態1〜4と同様の構成または対応する構成には同一の符号を付し、説明を省略する構成については実施形態1〜4と同様である。
本実施形態では、実施形態2(図21に示す構成例)と比較して、変速歯車152が入力軸111に結合され入力軸111とともに回転し、キャリア114が出力軸101に結合され出力軸101とともに回転する。そして、変速歯車102の歯が全周に渡って形成されている。スライド及びクラッチ機構155−1は、変速歯車104−1,154−1を変速歯車軸103−1にその軸線方向に沿ってスライド可能に支持するスライド機構と、変速歯車104−1と変速歯車154−1(変速歯車軸103−1)との係合/解放を切り替えることで変速歯車104−1と変速歯車152との係合/解放を切り替えるクラッチ機構とを含んで構成される。ここでのクラッチ機構は、例えばワンウェイクラッチにより構成することができる。スライド及びクラッチ機構155−1のワンウェイクラッチは、変速歯車154−1(変速歯車軸103−1)が変速歯車104−1に対し所定の一方向(例えば図26の矢印に示す方向)に相対的に回転しようとするときに、変速歯車154−1(変速歯車軸103−1)と変速歯車104−1とを係合させることで、変速歯車152と変速歯車104−1とを係合させる。一方、変速歯車154−1(変速歯車軸103−1)が変速歯車104−1に対しこの所定の一方向と逆方向(例えば図26の矢印に示す方向と逆方向)に相対的に回転しようとするときは、スライド及びクラッチ機構155−1のワンウェイクラッチは、変速歯車154−1(変速歯車軸103−1)と変速歯車104−1とを解放することで、変速歯車152と変速歯車104−1とを解放する。ただし、ここでのクラッチ機構は、例えば油圧力や電磁力により変速歯車104−1と変速歯車154−1との係合/解放を切り替えるクラッチであってもよいし、キャリア114の回転と連動して変速歯車104−1と変速歯車154−1との係合/解放を切り替えるクラッチであってもよい。
同様に、スライド及びクラッチ機構155−2は、変速歯車104−2,154−2を変速歯車軸103−2にその軸線方向に沿ってスライド可能に支持するスライド機構と、変速歯車104−2と変速歯車154−2(変速歯車軸103−2)との係合/解放を切り替えることで変速歯車104−2と変速歯車152との係合/解放を切り替えるクラッチ機構とを含んで構成される。ここでのクラッチ機構は、例えばワンウェイクラッチにより構成することができる。スライド及びクラッチ機構155−2のワンウェイクラッチは、変速歯車154−2(変速歯車軸103−2)が変速歯車104−2に対し所定の一方向(例えば図26の矢印に示す方向)に相対的に回転しようとするときに、変速歯車154−2(変速歯車軸103−2)と変速歯車104−2とを係合させることで、変速歯車152と変速歯車104−2とを係合させる。一方、変速歯車154−2(変速歯車軸103−2)が変速歯車104−2に対しこの所定の一方向と逆方向(例えば図26の矢印に示す方向と逆方向)に相対的に回転しようとするときは、スライド及びクラッチ機構155−2のワンウェイクラッチは、変速歯車154−2(変速歯車軸103−2)と変速歯車104−2とを解放することで、変速歯車152と変速歯車104−2とを解放する。ただし、ここでのクラッチ機構についても、例えば油圧力や電磁力により変速歯車104−2と変速歯車154−2との係合/解放を切り替えるクラッチであってもよいし、キャリア114の回転と連動して変速歯車104−2と変速歯車154−2との係合/解放を切り替えるクラッチであってもよい。図26でも、スライド及びクラッチ機構155−1,155−2の具体的構成の図示を省略しているが、公知の構成で実現可能である。
変速歯車(はすば歯車)104−1,104−2,154−1,154−2の歯は、軸線方向の他方側(例えば図26の右側)へ移動させた場合に変速歯車104−1,104−2が変速歯車154−1,154−2に対し前述の所定の一方向(例えば図26の矢印に示す方向)に相対的に回転するようにねじれている。より具体的には、変速歯車154−1,154−2の基準円半径をrp1、変速歯車104−1,104−2の基準円半径をrp2、変速歯車154−1,154−2の歯のねじれ角をβ1、変速歯車104−1,104−2の歯のねじれ角をβ2とすると、以下の(23)式が成立するように、変速歯車154−1,154−2の歯のねじれ角β1、及び変速歯車104−1,104−2の歯のねじれ角β2が設定されている。例えば、tanβ1/rp1>tanβ2/rp2が成立するように、ねじれ角β1、β2を設定することが可能である。ただし、ねじれ角β1、β2の値については、軸線方向の他方側から一方側(例えば図26の右側から左側)へ向かうにつれて前述の所定の一方向(例えば図26の矢印に示す方向)にねじれる場合を正としている。
tanβ1/rp1≠tanβ2/rp2 (23)
例えば、図26に示す変速歯車154−1,154−2の基準円半径をrp1が変速歯車104−1,104−2の基準円半径rp2よりも小さい例では、変速歯車104−1,104−2の歯、及び変速歯車154−1,154−2の歯は、いずれも軸線方向の他方側から一方側(例えば図26の右側から左側)へ向かうにつれて前述の所定の一方向(例えば図26の矢印に示す方向)にねじれており、ねじれ角の大きさが等しい(β1=β2>0)。そして、変速歯車(はすば歯車)102の歯は、変速歯車104−1,104−2の歯と噛み合うように、軸線方向の他方側から一方側(例えば図26の右側から左側)へ向かうにつれて、変速歯車104−1,104−2が前述の所定の一方向に回転(自転)するときにキャリア114が回転する方向と逆方向(例えば図26の矢印に示す方向と逆方向)にねじれている。そして、変速歯車(はすば歯車)152の歯は、変速歯車154−1,154−2の歯と噛み合うように、軸線方向の他方側から一方側(例えば図26の右側から左側)へ向かうにつれて、変速歯車154−1,154−2が前述の所定の一方向に回転(自転)するときに回転する方向(例えば図26の矢印に示す方向)にねじれている。ただし、歯のねじれ角β1、β2(大きさ、ねじれ方向)については、(23)式が成立する範囲で任意に設定することが可能である。
次に、カム機構106が変速歯車104−1,154−1と変速歯車104−2,154−2とを軸線方向に沿ってそれぞれ往復運動させる際に、変速歯車152と係合させる歯車を変速歯車104−1,104−2間で切り替える場合の動作について説明する。ただし、以下の説明において、変速歯車104−1,104−2,154−1,154−2の回転方向(自転方向)は、前述の所定の一方向(図26の矢印に示す方向)であるものとする。
図24の期間t1〜t2においては、カム機構106は、変速歯車104−1,154−1を一定のスライド速度Lで軸線方向の一方側へ移動させるとともに、変速歯車104−2,154−2を軸線方向の他方側へ移動させる。その場合は、変速歯車154−1が変速歯車104−1よりも速い回転速度で回転しようとし、変速歯車104−2が変速歯車154−2よりも速い回転速度で回転しようとする。そのため、クラッチ機構がワンウェイクラッチである場合は、スライド及びクラッチ機構155−1のワンウェイクラッチが係合状態となり、スライド及びクラッチ機構155−2のワンウェイクラッチが解放状態となる。また、クラッチ機構が油圧力や電磁力やキャリア114の回転を利用して係合/解放を切り替えるクラッチである場合は、キャリア114の回転角に基づいて、スライド及びクラッチ機構155−1のクラッチを係合状態に制御し、スライド及びクラッチ機構155−2のクラッチを解放状態に制御する。つまり、軸線方向の一方側へ移動している変速歯車104−1(係合側歯車)を変速歯車154−1(変速歯車152)と係合させ、軸線方向の他方側へ移動している変速歯車104−2(解放側歯車)を変速歯車154−2(変速歯車152)から解放する。入力軸111に入力された動力は、変速歯車152と変速歯車154−1との噛み合い、及び変速歯車104−1と変速歯車102との噛み合いにより出力軸101へ伝達され、変速比γは、変速歯車104−1,154−1のスライド速度Lに応じて決まる。
次に、図24の期間t2〜t3において、変速歯車104−1(係合側歯車)が一定のスライド速度Lで軸線方向の一方側へ移動し且つ変速歯車154−1(変速歯車152)と係合している状態で、カム機構106は、変速歯車104−2(解放側歯車)及び変速歯車154−2の軸線方向の他方側へのスライド速度を減少させて、そのスライド方向を軸線方向の他方側から一方側へ切り替える。そして、カム機構106は、変速歯車104−2,154−2の軸線方向の一方側へのスライド速度を変速歯車104−1,154−1のスライド速度Lまで増加させる。変速歯車104−2,154−2のスライド速度が変速歯車104−1,154−1のスライド速度Lに等しくなると、変速歯車104−2の回転速度が変速歯車154−2の回転速度に等しくなる。そのため、クラッチ機構がワンウェイクラッチである場合は、変速歯車104−2,154−2のスライド速度が変速歯車104−1,154−1のスライド速度Lに等しいときに、スライド及びクラッチ機構155−2のワンウェイクラッチが係合状態となり、変速歯車104−2が変速歯車154−2(変速歯車152)と係合する。また、クラッチ機構が油圧力や電磁力やキャリア114の回転を利用して係合/解放を切り替えるクラッチである場合は、キャリア114の回転角に基づいて、変速歯車104−2,154−2のスライド速度が変速歯車104−1,154−1のスライド速度Lに等しい(あるいはほぼ等しい)ときにスライド及びクラッチ機構155−1のクラッチを係合状態に制御する。
図24の期間t3〜t4においては、変速歯車104−1,104−2の両方が変速歯車152と係合するオーバーラップ期間となるが、カム機構106は、変速歯車104−1,154−1と変速歯車104−2,154−2との両方を互いに等しい一定のスライド速度Lで軸線方向の一方側へ移動させるため、変速歯車102,104−1,104−2,152,154−1,154−2による歯車機構がロックすることはなく、スライド速度Lに応じた変速比γで動力伝達を行うことが可能となる。入力軸111に入力された動力は、変速歯車152と変速歯車154−1との噛み合い、及び変速歯車104−1と変速歯車102との噛み合いにより出力軸101へ伝達されるとともに、変速歯車152と変速歯車154−2との噛み合い、及び変速歯車104−2と変速歯車102との噛み合いにより出力軸101へ伝達される。
次に、図24の期間t4〜t5において、変速歯車104−2が一定のスライド速度Lで軸線方向の一方側へ移動し且つ変速歯車154−2(変速歯車152)と係合している状態で、カム機構106は、変速歯車104−1,154−1の軸線方向の一方側へのスライド速度を減少させる。その場合は、変速歯車104−1が変速歯車154−1よりも速い回転速度で回転しようとする。そのため、クラッチ機構がワンウェイクラッチである場合は、スライド及びクラッチ機構155−1のワンウェイクラッチが解放状態となり、変速歯車104−1が変速歯車154−1(変速歯車152)から解放される。また、クラッチ機構が油圧力や電磁力やキャリア114の回転を利用して係合/解放を切り替えるクラッチである場合は、キャリア114の回転角に基づいて、変速歯車104−1,154−1の軸線方向の一方側へのスライド速度を減少させるときにスライド及びクラッチ機構155−1のクラッチを解放状態に制御する。そして、カム機構106は、変速歯車154−1(変速歯車152)から解放された変速歯車104−1と変速歯車154−1のスライド方向を軸線方向の一方側から他方側へ切り替える。
図24の期間t5〜t6においては、カム機構106は、変速歯車104−2,154−2を一定のスライド速度Lで軸線方向の一方側へ移動させるとともに、変速歯車104−1,154−1を軸線方向の他方側へ移動させる。その場合は、変速歯車154−2が変速歯車104−2よりも速い回転速度で回転しようとし、変速歯車104−1が変速歯車154−1よりも速い回転速度で回転しようとする。そのため、クラッチ機構がワンウェイクラッチである場合は、スライド及びクラッチ機構155−1のワンウェイクラッチが解放状態となり、スライド及びクラッチ機構155−2のワンウェイクラッチが係合状態となる。また、クラッチ機構が油圧力や電磁力やキャリア114の回転を利用して係合/解放を切り替えるクラッチである場合は、キャリア114の回転角に基づいて、スライド及びクラッチ機構155−1のクラッチを解放状態に制御し、スライド及びクラッチ機構155−2のクラッチを係合状態に制御する。つまり、軸線方向の一方側へ移動している変速歯車104−2(係合側歯車)を変速歯車154−2(変速歯車152)と係合させ、軸線方向の他方側へ移動している変速歯車104−1(解放側歯車)を変速歯車154−1(変速歯車152)から解放する。入力軸111に入力された動力は、変速歯車152と変速歯車154−2との噛み合い、及び変速歯車104−2と変速歯車102との噛み合いにより出力軸101へ伝達され、変速比γは、変速歯車104−2,154−2のスライド速度Lに応じて決まる。なお、変速歯車152と係合させる歯車を変速歯車104−2から変速歯車104−1へ切り替える場合の動作についても、変速歯車152と係合させる歯車を変速歯車104−1から変速歯車104−2へ切り替える場合の動作と同様である。
以上説明した本実施形態でも実施形態4と同様に、変速歯車152と係合させる歯車(動力伝達に寄与する歯車)を変速歯車104−1,104−2間で切り替える場合に、変速比γの変化及び歯車機構のロックが生じるのを防止することができる。さらに、本実施形態でも実施形態4と同様に、変速歯車152と係合させる歯車をワンウェイクラッチにより切り替えることで、変速装置の構成(動力伝達に寄与する歯車を切り替える構成)を簡略化することができる。
本実施形態では、変速歯車152の回転に同期させてカム機構106を回転させ、カム機構106の回転と連動させて各変速歯車104−1,104−2,154−1,154−2を軸線方向に沿ってそれぞれ往復運動させることも可能である。
また、本実施形態でも実施形態2と同様に、変速歯車102を外歯車にすることも可能である。また、変速歯車152を内歯車にすることも可能である。
また、本実施形態でも実施形態2と同様に、入力軸111をキャリア114に結合し、出力軸101を変速歯車152に結合し、キャリア114から変速歯車152へ動力を伝達することも可能である。また、変速歯車152をケーシングに固定してその回転を拘束することで、キャリア114と変速歯車102との間で動力伝達を行うことも可能である。それらの場合においても、変速歯車152と係合させる歯車を変速歯車104−1,104−2間で切り替えるときの動作は図24に示すタイムチャートと同様である。なお、変速歯車152をケーシングに固定した場合は、変速歯車102の回転に同期させてカム機構106を回転させ、カム機構106の回転と連動させて各変速歯車104−1,104−2,154−1,154−2を軸線方向に沿ってそれぞれ往復運動させることも可能である。
また、本実施形態でも実施形態2と同様に、キャリア114をケーシングに固定してその回転を拘束することで、変速歯車102と変速歯車152との間で動力伝達を行うことも可能である。その場合の構成例を図27に示す。図27は、変速歯車102が外歯車であり、変速歯車104−1,104−2と変速歯車154−1,154−2とで歯のねじれ方向が反対方向である例を示している。図27に示す構成例では、変速歯車154−1,154−2が変速歯車104−1,104−2に対し図中の矢印の方向に回転しようとするときにスライド及びクラッチ機構155−1,155−2のワンウェイクラッチが係合状態となる。図27に示す構成例でも、変速歯車152と係合させる歯車を変速歯車104−1,104−2間で切り替えるときの動作は図24に示すタイムチャートと同様である。なお、図27では、カム機構106は、変速歯車152に同期して回転するが、変速歯車102に同期して回転するように構成することも可能である。
また、本実施形態でも実施形態2と同様に、各変速歯車154−1,154−2を変速歯車軸103−1,103−2にそれぞれ結合して軸線方向に沿って往復運動させないように構成することも可能である。その場合は、各変速歯車152,154−1,154−2は必ずしもはすば歯車である必要はない。
また、実施形態4,5では、変速歯車102に対してスライドする変速歯車を変速歯車102の周方向に関して間隔をおいて3つ以上配置することも可能であり、実施形態5では、変速歯車152に対してスライドする変速歯車を変速歯車152の周方向に関して間隔をおいて3つ以上配置することも可能である。
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
101 出力軸、102,104−1,104−2,152,154−1,154−2 変速歯車、103−1,103−2 変速歯車軸、105−1,105−2 スライド機構、106 カム機構、108 傾動機構、111 入力軸、155−1,155−2 スライド及びクラッチ機構。