JP2010007131A - 超音波照射陽極酸化法による二酸化チタン製造法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】チタンまたはチタン合金からなる基材の表面に、超音波照射下で、電圧を印加して陽極酸化を施すことによりあるいは高電流密度条件下に陽極酸化を施すことにより、結晶性に優れたアナタース型二酸化チタンを製造することができ、さらに、該基材の表面に、超音波を照射すると共に、電圧を印加しての陽極酸化法あるいは高電流密度条件下の陽極酸化法により作製した膜に熱処理を施すことで、結晶性に優れたアナタース型二酸化チタンを製造することができる。
【選択図】図1
Description
こうした活性を有する二酸化チタンを、チタンまたはチタン合金の表面に担持せしめるための従来技術としては、蒸着法とゾルゲル法が多用されている。ゾルゲル法はディップコートやスピンコートで行う簡便な方法で、異型基材への担持が可能であるが、量産性に劣るという問題を有している。特にスピンコートでは膜の均一性が悪く平板基板にしか担持できないという短所がある。一方、蒸着法は成膜材の緻密性や均一性に優れているものの、特殊装置を用いることからコストが高く、膜厚が厚いことから剥離の可能性が高いという欠点がある。
極酸化の際に高電圧を印加して成膜しているが、そこでは二酸化チタンなどの微粒子を添加していない場合光触媒性能が発揮されていないことが示されている。
次に、超音波照射による陽極酸化法で成膜した二酸化チタンについては、ソノケミストリー研究会主催(日本化学会共催)、第15回ソノケミストリー討論会(2006年10月27日〜28日、金沢大学)での「チタンの陽極酸化における超音波効果」〔非特許文献1〕が九州大学工学研究科の榎本尚也他により発表されている。本非特許文献1では、陽極酸化により窒素ドープ二酸化チタンを製造することを目的に、電解浴に硝酸を用いているが、窒素の添加を確認していないだけでなく、膜にはルチル相しか検出していない。また、酸化分解能や超親水性などの機能評価は全く報告していない。
した。
アナタース構造の結晶性を向上させると、紫外線照射により酸素空孔が形成され易くなるために、酸素空孔への水酸基の吸着が促進され超親水性が改善される。
一方、光触媒性能はルチル相に比べアナタース相のほうが優れていることから、アナタース結晶性の向上が効果的である。結晶性を高めるには平衡熱処理を行うことが望ましいが、熱処理は条件が適切でない場合、高温で安定なルチル相が出現する。超音波照射の条件下で、化成電圧を印加して作成した陽極酸化膜や、超音波照射の条件下で、特定の電流密度条件下に作成した陽極酸化膜は、熱処理を施す以前にすでに結晶性が高く、超音波照射の下での化成電圧印加による陽極酸化という方法自体や超音波照射の下での特定電流密度条件下の陽極酸化という方法自体が結晶性の向上に寄与している。
以上のように結晶性を高める手法である超音波照射と同時に化成電圧印加により作成した陽極酸化膜や超音波照射の下で特定の電流密度条件下に作成した陽極酸化膜に所定の熱処理を施すことで、超親水性と酸化分解性能の二つの機能を同時に満たす膜の製造が可能となる。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
〔1〕チタンまたはチタン合金からなる基材の表面に、(a)超音波照射下で、(b)(i)電圧
を印加して陽極酸化を施すあるいは(ii)高電流密度条件下に陽極酸化を施すことにより、結晶性に優れたアナタース型二酸化チタンを製造する方法。
〔2〕高電流密度条件が25mA/cm2又はそれを超える高電流密度であることを特徴とする上記〔1〕に記載の方法。
〔3〕陽極酸化が2分間又はそれを超える期間行われるものであることを特徴とする上記
〔1〕又は〔2〕に記載の方法。
〔4〕電圧が40V又はそれを超える電圧であることを特徴とする上記〔1〕に記載の方法
。
〔5〕陽極酸化が2.2時間又はそれを超える期間行われるものであることを特徴とする上
記〔1〕又は〔4〕に記載の方法。
〔6〕陽極酸化が、0.1wt%〜1.8wt%の濃度の硫酸水溶液中で行われるものであることを特徴とする上記〔1〕〜〔5〕のいずれか一に記載の方法。
〔7〕チタンまたはチタン合金からなる基材の表面に(a)超音波照射下で(b)(i)電圧を印
加して陽極酸化を施すかあるいは(ii)高電流密度条件下に陽極酸化を施すことにより作製した膜に、熱処理を施すことで、結晶性に優れたアナタース型二酸化チタンを製造する方法。
〔8〕熱処理が、400℃〜600℃の温度で行われることを特徴とする上記〔7〕に記載の方法。
〔9〕熱処理が、1時間又はそれを超える期間行われるものであることを特徴とする上記
〔7〕又は〔8〕に記載の方法。
〔10〕チタンまたはチタン合金からなる基材の表面に、(a)超音波照射下で、(b)(i)電圧
を印加して陽極酸化を施すか、あるいは、(ii)高電流密度条件下に陽極酸化を施し、次に得られた該基材上成膜に熱処理を施して、結晶性に優れたアナタース型二酸化チタンを製
造する方法。
〔11〕高電流密度条件が25mA/cm2又はそれを超える高電流密度であることを特徴とする上記〔10〕に記載の方法。
〔12〕陽極酸化が2分間又はそれを超える期間行われるものであることを特徴とする上記
〔10〕又は〔11〕に記載の方法。
〔13〕電圧が40V又はそれを超える電圧であることを特徴とする上記〔10〕に記載の方法
。
〔14〕陽極酸化が2.2時間又はそれを超える期間行われるものであることを特徴とする上
記〔10〕又は〔13〕に記載の方法。
〔15〕陽極酸化が、0.1wt%〜1.8wt%の濃度の硫酸水溶液中で行われるものであることを特徴とする上記〔10〕〜〔14〕のいずれか一に記載の方法。
〔16〕熱処理が、400℃〜600℃の温度で行われることを特徴とする上記〔10〕〜〔15〕のいずれか一に記載の方法。
〔17〕熱処理が、1時間又はそれを超える期間行われるものであることを特徴とする上記
〔10〕〜〔16〕のいずれか一に記載の方法。
〔18〕該結晶性に優れたアナタース型二酸化チタンがX線回折におけるアナタース101回
折線の半価幅が0.4未満のアナタース型二酸化チタンを90%以上含有する二酸化チタン皮
膜であることを特徴とする上記〔10〕〜〔17〕のいずれか一に記載の方法。
〔19〕チタンまたはチタン合金からなる基材の表面に形成されている二酸化チタンであって、X線回折におけるアナタース101回折線の半価幅が0.4未満のアナタース型二酸化チタンを90%以上含有することを特徴とする二酸化チタン。
〔20〕チタンまたはチタン合金からなる基材の表面に、超音波を照射すると共に電圧を印加してあるいは高電流密度条件下に陽極酸化を施すことにより製造される二酸化チタンであって、X線回折におけるアナタース101回折線の半価幅が0.4未満のアナタース型二酸化チタンを90%以上含有することを特徴とする二酸化チタン。
〔21〕チタンまたはチタン合金からなる基材の表面に、超音波照射下で、電圧を印加してあるいは高電流密度条件下に陽極酸化を施すことにより、X線回折におけるアナタース101回折線の半価幅が0.4未満のアナタース型二酸化チタンを90%以上含有する二酸化チタンを製造する方法。
本発明の技術で得られるチタンまたはチタン合金基材の表面にアナタース型二酸化チタン層を持つ材料は、優れた光触媒活性と共に優れた超親水性を持っており、脱臭、防黴、防汚性、殺菌作用等に優れた材料で、該アナタース型二酸化チタン層は基材との密着性においても非常に優れたものであって、取扱い過程での皮膜の剥離・損傷抵抗も大きいので、防黴、防汚などの効果を有する建築材、空調機器、浄水設備等に用いられる各種部材として有効に活用することができる。
本発明のその他の目的、特徴、優秀性及びその有する観点は、以下の記載より当業者にとっては明白であろう。しかしながら、以下の記載及び具体的な実施例等の記載を含めた本件明細書の記載は本発明の好ましい態様を示すものであり、説明のためにのみ示されているものであることを理解されたい。本明細書に開示した本発明の意図及び範囲内で、種々の変化及び/又は改変(あるいは修飾)をなすことは、以下の記載及び本明細書のその他の部分からの知識により、当業者には容易に明らかであろう。本明細書で引用されている全ての特許文献及び参考文献は、説明の目的で引用されているもので、それらは本明細書の一部としてその内容はここに含めて解釈されるべきものである。
本発明は、アナタース構造の結晶性を向上させると、紫外線照射により酸素空孔が形成され易くなるために、酸素空孔への水酸基の吸着が促進され、超親水性が改善されるとの知見を基礎としたものである。また、一方で、光触媒性能はルチル相に比べアナタース相のほうが優れていることから、アナタース結晶性の向上が効果的であるとの知見も利用している。結晶性を高めるには平衡熱処理を行うことが望ましいが、熱処理は条件が適切でない場合、高温で安定なルチル相が出現する。本発明に従い超音波を照射すると共に化成電圧をかけて作成した陽極酸化膜や超音波を照射すると共に高い電流密度条件下に作成した陽極酸化膜は、熱処理を施す以前にすでに結晶性が高く、さらに、超音波照射の下での化成電圧をかけての陽極酸化という方法自体や超音波照射高電流密度条件下の陽極酸化という方法自体が結晶性の向上に寄与している。かくして、以上のように結晶性を高める手法である超音波を照射すると共に化成電圧印加で作成した陽極酸化膜や超音波を照射すると共に高電流密度条件下の陽極酸化法により作製した膜に、所定の熱処理を施すことで、超親水性と酸化分解性能の二つの機能を同時に満たす膜の製造が可能となるのである。
二酸化チタン薄膜をチタンまたはチタン合金の基材上に形成する陽極酸化法において、電圧を印加すると同時に超音波を照射することで、電解中に電極表面に発生する水素や酸素が脱気され電極表面を清浄に保つことができ、同時に電極表面への電解質等の物質移動を促進できる。さらに超音波反応場で発生するラジカル等の酸化剤の陽極酸化反応への関与もあって、生成するアナタースの結晶形成が高められ、さらに所定の熱処理を施すことで、結晶性はさらに高められ、酸化分解特性と超親水性に優れた二酸化チタン膜をコーティングした材料が得られる。
びに超親水性を有するものが得られる。該チタン含有金属材料は、実質的に100%チタン
からなる純チタンであってもよく、ここで該「実質的に」とは、本発明の効果を損なわない程度の不純物、混合物の存在を包含する意味を有するものであってよい。純チタンとしては、例えば、JIS1種、JIS2種、JIS3種、JIS4種、ASTM G1、ASTM G2、ASTM G3、ASTM G4、AMS4902、AMS4900、AMS4901、AMS4921などが挙げられる。典型的な場合では、得られる金属材料の光触媒性能並びに超親水性能の観点から、成膜部分(表面並びにその近傍など)では基体に使用される合金全体におけるチタン含有量は80%以上であることが望ましい。
チタン合金としては、例えば、チタン基合金が挙げられ、5族元素(5A族元素)、6族元素(6A族元素)、7族元素(7A族元素)、鉄族元素、白金族元素、11族元素(1B族元素)、14族元素(4B族元素)、3族元素(3A族元素、ランタノイド、アクチノイド、ミッシュメタルを
包含する)よりなる群から選択される元素の少なくとも1種を含有するもの、チタンとの金属間化合物を形成する元素の少なくとも1種を含有するものなどが挙げられる。
ど、6族元素では、例えば、Cr, Mo, Wなど、7族元素では、例えば、Mn, Reなど、鉄族
元素では、例えば、Fe, Co, Niなど、白金族元素では、例えば、Ru, Rh, Pd, Os, Ir, Ptなど、11族元素では、例えば、Cu, Ag, Auなど、14族元素では、例えば、Si, Sn, Pbなど、3族元素では、Y, La, Ce, Nd, Sm, Tb, Er, Yb, Acなどが挙げられ、それらは単独あ
るいは複数のものをTiに対して配合されているものでよい。典型的な場合、本発明で用いる好ましいチタン合金としては、例えばMo, Nb, Ta, V, Ag, Co, Cr, Cu, Fe, Mn, Ni, Pb, Si, Wの元素の少なくとも1種を合金元素として含有するチタン合金が挙げられる。
金、Ti-Al-Sn-Zr-Mo合金、Ti-Al-Mo-V-Fe-Si-C合金、Ti-V-Cr-Sn-Al合金、Ti-Mo-Zr-Al合金、Ti-Mo-Ni合金、Ti-Ta合金、Ti-Al-Sn合金、Ti-Al-Mo-V合金、Ti-Al-Sn-Zn-Mo-Si-C-Ta合金、Ti-Al-Nb-Ta合金、Ti-Al-V-Sn合金、Ti-Al-Sn-Zr-Cr-Mo合金、Ti-V-Fe-Al合金、Ti-V-Cr-Al合金、Ti-V-Sn-Al-Nb合金、Ti-Al-Nb合金、Ti-Al-V-S合金などが挙げられる。
例えば、Ti-5Al-2.5Sn合金、Ti-6Al-4V合金、Ti-15Mo-5Zr-3Al合金等の如きチタン合金を使用することができる。
量%で行なうのがよい。別の態様では、希硫酸水溶液における硫酸の濃度としては、0.09
〜3.5重量%(wt%)、あるいは、0.4〜3.1重量%(wt%)、より好ましくは0.9〜2.6重量%で行なうのがよく、さらに好ましくは1.5〜2.2重量%、もっと好ましくは0.2〜1.8重量%で行なうのがよい。
学貿易などからのブランソン(BRANSON)社製超音波ホモジナイザー、ホーン型プローブ(
タップ型ホーン、ソリッド型ホーン)付き高強度超音波照射装置、例えば、BRANSON Model 250D, BRANSON Model 450Dなど、本多電子株式会社からの洗浄器型装置、例えば、W-115/W118、W-338T、WT-600-40/WT-1200-40などを使用できる。
超音波照射を行う場合、超音波自体に分散化能力が備わっているので、攪拌機又はスターラーによる攪拌はとくには要求されない。超音波の発生源は、洗浄用に用いられる超音波洗浄機、粒子の凝集の破砕や乳化に用いられる超音波ホモジナイザーなど、上記した様に、超音波を発生させる装置であればよく、特に限定されることなく目的に応じて選択して適宜使用できる。超音波の周波数は、超音波として指定されているもので、16〜10,000kHzの範囲が使用でき、代表的な場合、20 kHz、28 kHz、40kHz、45 kHz、100kHz、200kHz、600kHzなどが挙げられる。超音波の照射強度としては、0.5〜20W/cm2とすることができる。超音波照射装置の出力としては、例えば、200W、400W、800W、1100Wなどのものが市
販されて知られているが、それには限定されない。
超音波照射する際の条件は、使用陽極酸化用溶液に使用する電解質などの種類や使用量、印加する電圧など、反応容器の形状、超音波照射装置の種類や数など様々なパラメーターを考慮して、実験により、最適な値を決定できる。
好ましくは160〜500Vの電位で行なうのがよく、さらには、好ましくは160〜250V、もっと好ましくは160〜220Vの電位で行なうのがよい。ある場合には、該陽極酸化処理は、150〜400V、より好ましくは160〜400Vの電位で行なうのがよく、別の態様では、200〜350V、もっと好ましくは210〜300Vの電位で行なうものであってよい。該陽極酸化処理は、100〜400V、より好ましくは150〜350Vの電位で行なうことがよい場合もあり、さらには、好まし
くは200〜375V、もっと好ましくは210〜300Vの電位で行なうものであってよい。
、もっと好ましくは0.05〜0.9Aで行なうのがよい。ある場合には、該陽極酸化処理は、0.1〜1.0A、より好ましくは0.12〜0.9Aで行なうのがよく、別の態様では、0.15〜0.5A、も
っと好ましくは0.2〜0.5Aで行なうものであってよい。本陽極酸化処理は、1〜100時間、好ましくは1〜48時間、さらに好ましくは1〜12時間行うものであってよく、さらには1.5〜5時間あるいは1.5〜3時間行うものであってよい。
く、また150〜500Vの電位で行なってよいし、さらには、好ましくは200〜500V、もっと好ましくは210〜450Vの電位で行なってもよい。本態様では、該陽極酸化処理は、1分間〜100時間、好ましくは2分間〜48時間、さらに好ましくは3分間〜12時間行うものであってよく、さらには9分間〜5時間あるいは10分間〜3時間行うものであってよいし、さらには20分間〜3時間行うものであってよい。
本陽極酸化処理によれば、微細で均一な表面酸化が可能なため、複雑な形状の金属材料も、均一で、且つ、すぐれた光触媒機能や超親水性能を持つものに簡単に加工することができる。酸化電圧をコントロールすることにより、形成される陽極酸化膜の膜厚を様々に制御することもできる。また、酸化時の電流密度をコントロールすることにより、形成される陽極酸化膜の膜厚を様々に制御することもできる。本陽極酸化処理は、非常に簡便な方法であり、且つ、大面積を有する表面への成膜が容易であり、便利である。しかも、複雑な形状の基板に対しても成膜が可能であり、工業的に有用な方法である。
音波照射を行うが、超音波照射は、多周波型超音波発生装置を使用して電解浴槽の外側から200kHzで行う。すなわち、得られた金属材料成形体を、陽極酸化処理装置のアノードに取り付けて、0.2wt%硫酸水溶液中で、電圧40V〜500Vで陽極酸化処理(あるいは少なくと
も25mA/cm2以上の電流密度条件下で陽極酸化処理)と同時に超音波照射を行って、金属材料、特にそこに含まれるチタンを酸化し、表面にアナタース型二酸化チタン膜(陽極酸化膜)を形成させるものである。本陽極酸化された基材は、通常、十分に水洗される。また、該基材は、メタノール、エタノール、アセトンなどの有機溶媒で洗浄されてもよい。
ましい保持時間は30分間〜10時間程度であるが、好ましくは、熱処理が300℃程度で行わ
れる場合、2〜10時間程度で。熱処理が450℃程度又はそれ以上で行われる場合、1〜5時間程度である。酸化性雰囲気は、特に限定されないが、典型的には酸素が存在する雰囲気であり、通常は大気雰囲気が挙げられる。本熱処理で、金属材料基体の表面に形成された陽極酸化膜を固定化し、強度、密着性を向上させ、且つ、光触媒特性や超親水性の特性を向上させるることができる。本発明によると、基材の種類や形状、陽極酸化条件および熱処理条件を適宜変更することによって、種々の特徴を有する超親水性を有する光触媒材料を製造することが可能である。
ながら、その表面に約40V〜約500Vまでの電圧を約0.5時間〜約10時間の間印加して陽極酸化を施し、次に得られた該基材上成膜に約400℃〜約600℃までの温度で、約30分間〜約20時間の間熱処理を施して、結晶性に優れたアナタース型二酸化チタンを製造する方法が提供される。
また、本発明の別の代表的な態様では、上記したようなチタンまたはチタン合金からなる基材は、約1.5wt%〜約2.1wt%までの濃度の硫酸水溶液中で、その表面に約100V〜約500Vまでの電圧を約0.25時間〜約5時間の間印加して浴液に200kHzの超音波を照射しながら陽
極酸化を施し、次に得られた該基材上成膜に約400℃〜約600℃までの温度で、約1時間〜
約20時間の間熱処理を施して、結晶性に優れたアナタース型二酸化チタンを製造する方法が提供される。
極酸化が、0.1wt%又はそれ以上から1.8wt%までの濃度の硫酸水溶液中で行われ、熱処理が、400℃又はそれ以上の温度から600℃までの温度で、1時間又はそれを超える期間行われ
るものであるものである。
の電流下に行われるものである。
約120V〜約500Vまでの電圧を約2分間〜約5時間の間印加して陽極酸化を施し、次に得られた該基材上成膜に約400℃〜約600℃までの温度で、約4時間〜約20時間の間熱処理を施し
て、結晶性に優れたアナタース型二酸化チタンを製造する方法が提供される。
よい。本発明で得られる上記結晶性に優れたアナタース型二酸化チタンとは、X線回折におけるアナタース101回折線の半価幅が0.4未満のアナタース型二酸化チタンを少なくとも65%以上、好ましくは少なくとも75%以上、更に好ましくは少なくとも85%以上、より好ましくは少なくとも90%以上、もっと好ましくは少なくとも95%以上含有するものである。典型的な場合、本発明で得られる当該基体上の上記アナタース型二酸化チタンとは、X線回折におけるアナタース101回折線の半価幅が0.4未満のアナタース型二酸化チタンを90%以上含有する二酸化チタン皮膜である。
本発明の金属材料の使用方法としては、金属タイルや、内装材としてそのまま使用するほか、本発明の構造を有する金属材料の薄板を作製し、既存の建築材料であるセラミックス、モルタル、硝子、鉄板、アルミ板等に接合して、複合材料として使用することもできる。このように、既存材料の上に接合して用いる方法によれば、光触媒活性を有する金属材料の使用量の低減が可能となり、優れた防臭、殺菌機能等の光触媒活性を有する種々の複合材料を安価に提供できる。
本発明の方法で得られた光触媒活性を有しかつ優れた超親水性を有するアナタース型二酸化チタン薄膜を有する材は、水浄化に使用できる。、当該アナタース型二酸化チタン薄膜によりクリーンな光エネルギーを利用して、水中の希薄な有機物の除去をするといった浄化法を可能とする。
本発明の超音波照射法は、一般の陽極酸化に比較し、短時間で低電圧で作製した膜において、優れた超親水性を呈する。本発明の超音波照射法は、光触媒の酸化分解特性と超親水性の両方を兼ね備えた材料を製造できる点で、公知技術とは大きく異なる。
本発明の超音波照射法は、光触媒の酸化分解特性と超親水性の両方を兼ね備えた材料を簡便な手法で得ることができ、熱処理を施す以前に、すでに結晶性が高いことから、結晶化を高める熱処理の条件選定も容易となり、生産性を向上することもできる。また、酸化分解特性と超親水性の両方を兼ね備えることは、超親水性により紫外線照射下などの光の照射下で生成する酸素空孔への水酸基の吸着に関与することと相俟って、酸素空孔が形成し易い構造であることとの相乗的な作用効果を得ることができると期待できるものである。
以下に実施例を掲げ、本発明を具体的に説明するが、この実施例は単に本発明の説明のため、その具体的な態様の参考のために提供されているものである。これらの例示は本発明の特定の具体的な態様を説明するためのものであるが、本願で開示する発明の範囲を限
定したり、あるいは制限することを表すものではない。本発明では、本明細書の思想に基づく様々な実施形態が可能であることは理解されるべきである。
全ての実施例は、他に詳細に記載するもの以外は、標準的な技術を用いて実施したもの、又は実施することのできるものであり、これは当業者にとり周知で慣用的なものである。
10mm×20mmのTi圧延板の表面に鏡面研磨を施し、それを陽極試料とし、0.2 wt%硫酸水溶液中に浸漬し、浴液に超音波を照射した。超音波照射には、多周波型超音波発生装置(TA-4021、200kHz、(株)カイジョー)を用いた。電流を100mAとして、化成電圧を(a)40V、(b)160V、(c)210Vとして、30分の陽極酸化処理を施した。陽極酸化処理は室温で行った。陽極酸化後はメタノールにて洗浄後乾燥させたものをサンプル(a)、(b)、及び(c)とする。
この基材を450℃において、5時間の大気酸化を施したものをサンプル(d)、(e)、及び(f)とする。
比較試料として、超音波照射をしない以外は、上記と同様に処理して、陽極酸化処理して得たサンプル(o)、(p)、及び(q)、そして陽極酸化後酸化処理したサンプル(r)、(s)、
及び(t)を使用した。さらに、化成電圧を220Vで処理して調製したものも比較に使用した
。
25ppmメチレンブルー水溶液を満たした石英製セルにサンプルを浸漬し、所定の時間(
2、4、6、21時間)、365nmの紫外線を照射した。一定時間照射後に石英セルからメチ
レンブルー水溶液を採取し、分光光度計にて664nmのメチレンブルー吸光度変化から、メ
チレンブルー分解率を算出した。得られた結果を、図1(UV21時間照射時)に示す。図1中、US ASは、超音波照射の下での陽極酸化で得られたサンプル、ASは、超音波照射をしな
いで陽極酸化で得られたサンプル、US ANは、US ASを酸化熱処理を行って得られたサンプル、ANは、ASを酸化熱処理を行って得られたサンプルを示す。
この結果から、超音波照射しているもので、且つ、化成電圧が高いほどメチレンブルーの分解率が高いことがわかる。また熱処理を施すことで、どの陽極酸化条件において作成したサンプルもメチレンブルーの分解率が向上することがわかる。
サンプルに365nmの紫外線を0.2 mW/cm2の強度で、所定の時間(0.5、1、1.5、2、2.5、3時間)照射した。一定時間照射後に1.0μLの蒸留水を滴下し、θ/2法にて接触角を測定した。得られた結果を図2に示す。図2中、US 40、US 160、そしてUS 210は、超音波
照射の下で、それぞれ、40V、160V、そして210Vの電圧を印加して陽極酸化して得られた
サンプルを示し、40、160、そして220は、超音波照射をしないで、それぞれ、40V、160V
、そして220Vの電圧を印加して陽極酸化して得られたサンプルを示す。
この結果から、超音波照射しているもので、且つ、化成電圧が高いほど接触角は低下し超親水性に優れていることがわかる。また熱処理を施すことで、どの陽極酸化条件において作成したサンプルも超親水性が改善せしめられることがわかる。
サンプルの薄膜の結晶構造をX線回折により測定した。X線回折のチャートを図3に示す。40V、210Vはそれぞれ化成電圧を示し、us-annealedは、超音波照射の下で陽極酸化した後熱処理したもの、us-asは、超音波照射の下で陽極酸化したもので、熱処理前のもの
であり、annealedは、超音波照射を行うことなく陽極酸化した後熱処理したもの、asは、超音波照射を行うことなく陽極酸化したもので、熱処理前のものである。熱処理を施す前のサンプルのX線回折プロファイルと、熱処理を施した後のサンプルのX線回折プロファイルとを比較した。
この結果から、熱処理を施すことで、アナタースの回折強度は増加するが、超音波を照射することで、さらに回折強度が増加することが観察された。また、回折強度は化成電圧が高いほど増加することが認められた。
図4には、結晶性を評価する指標である半価幅(FWHM)を計算してプロットしたものを示す。図4中、us-annealedは、超音波照射の下で陽極酸化した後熱処理したもの、us-as-anodizedは、超音波照射の下で陽極酸化したもので、熱処理前のものであり、annealedは
、超音波照射を行うことなく陽極酸化した後熱処理したもの、as-anodizedは、超音波照
射を行うことなく陽極酸化したもので、熱処理前のものである。この図より、超音波を照射することで、半価幅(FWHM)は減少することから、アナタースの結晶性が向上することがわかる。本発明の方法で得られた結晶性に優れた二酸化チタン皮膜は、X線回折におけるアナタース101回折線の半価幅が0.4未満のアナタース型二酸化チタンを90%以上含有するものと評価されるものであった。
図1及び2の結果から、超親水性に優れているサンプルは光触媒性能にも優れていることが明らかである。さらにこのような試料ではアナタース相の形成が促進されると共に結晶性の増加が確認できる。
本発明は、前述の説明及び実施例に特に記載した以外も、実行できることは明らかである。上述の教示に鑑みて、本発明の多くの改変及び変形が可能であり、従ってそれらも本件添付の請求の範囲の範囲内のものである。
Claims (11)
- チタンまたはチタン合金からなる基材の表面に、(a)超音波照射下で、(b)(i)電圧を印加
して陽極酸化を施すあるいは(ii)高電流密度条件下に陽極酸化を施すことにより、結晶性に優れたアナタース型二酸化チタンを製造する方法。 - 高電流密度条件が25mA/cm2又はそれを超える高電流密度であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
- 陽極酸化が2分間又はそれを超える期間行われるものであることを特徴とする請求項1又
は2に記載の方法。 - 電圧が40V又はそれを超える電圧であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
- 陽極酸化が2.2時間又はそれを超える期間行われるものであることを特徴とする請求項1
又は4に記載の方法。 - 陽極酸化が、0.1wt%〜1.8wt%の濃度の硫酸水溶液中で行われるものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一に記載の方法。
- チタンまたはチタン合金からなる基材の表面に(a)超音波照射下で(b)(i)電圧を印加して
陽極酸化を施すかあるいは(ii)高電流密度条件下に陽極酸化を施すことにより作製した膜に、熱処理を施すことで、結晶性に優れたアナタース型二酸化チタンを製造する方法。 - 熱処理が、400℃〜600℃の温度で行われることを特徴とする請求項7に記載の方法。
- 熱処理が、1時間又はそれを超える期間行われるものであることを特徴とする請求項7又
は8に記載の方法。 - 該結晶性に優れたアナタース型二酸化チタンがX線回折におけるアナタース101回折線の
半価幅が0.4未満のアナタース型二酸化チタンを90%以上含有する二酸化チタン皮膜であ
ることを特徴とする請求項7〜9のいずれか一に記載の方法。 - チタンまたはチタン合金からなる基材の表面に形成されている二酸化チタンであって、X線回折におけるアナタース101回折線の半価幅が0.4未満のアナタース型二酸化チタンを90%以上含有することを特徴とする二酸化チタン。
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