JP2010003794A - 薄膜デバイスの転写方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】大型の転写体で有っても容易に且つ安定的に薄膜デバイスを剥離して転写する方法を提供する事。
【解決手段】第一基板上に形成された薄膜デバイスを第二基板に転写する薄膜デバイスの転写方法で、まずこの薄膜デバイス上に接着剤を形成して第一基板と第二基板とを接着する。次に第一基板と第二基板との間に糸又は細い棒を挿入し、此等糸又は細い棒を第一基板側に引きつつ、第二基板法線に対して斜め方向に力を加える事で糸又は細い棒を第二基板の水平方向に移動させて、薄膜デバイスを第一基板から第二基板へと移設する。
【選択図】図2

Description

本発明は、薄膜デバイスの転写方法に関する。
半導体素子などの積層体(デバイス)の形成方法として転写技術を用いる手法が知られている。例えば特開平10−125929号公報や特開平10−125931号公報には予め転写元基板上に剥離層を介して薄膜トランジスタ等の被転写体を形成しておき、その後被転写層を転写先基板に接合し、剥離層に光照射等を行って剥離を生じさせる事に依り、被転写体を転写先基板に転写する手法が開示されている。この手法に依れば、製造条件の異なる複数種類の薄膜素子や薄膜回路等を其々最適な条件で転写元基板に形成した後に転写先基板へ移動させ、所望の電子デバイスを製造する事が出来る。
薄膜デバイスを剥離して転写する際には、転写元基板と転写先基板とを接合した後に基板外周部から刃状体を挿入して、物理的な力を両基板間に加える事で二つの基板を剥離していた。或いは流体(気体及び液体)を両基板間に吹き入れ、この流体の力を利用して二つの基板を剥離していた。
特開平10−125929号公報 特開平10−125931号公報 特開2005−89007号公報 特開2005−79553号公報
しかしながら上述した従来の手法は大型基板の転写に適さぬとの課題が見られた。第一の刃状体を用いる方法では刃の近傍にしか力が伝わらない為に、大型基板の剥離と転写が不可能であった。又、第二の流体を用いた剥離方法でも流体が拡散する為に、矢張り流体吹き出し口近傍しか剥離出来なかった。デバイスの量産性を高め、大面積な電子デバイスを作成するには基板の大型化は不可欠であるが、従来の転写方法を用いては大型基板の剥離と転写は極めて困難であった。
其処で本発明は、上述の諸課題を鑑みてなされたもので、大型の転写体で有っても容易に且つ安定的に薄膜デバイスを剥離して転写する方法を提供する事を目的とする。
上記目的を達成する為に、本発明は第一基板上に形成された薄膜デバイスを第二基板に転写する薄膜デバイスの転写方法に於いて、この薄膜デバイス上に接着剤層を形成して第一基板と第二基板とを接着する貼り合わせ工程と、第一基板と第二基板との間に糸又は細い棒と云った剥離部材を挿入し、此等剥離部材を両基板間で移動させて、薄膜デバイスを第一基板から第二基板へと移設する移設工程とを含む事を特徴とする。両基板間で糸又は細い棒と云った剥離部材を移動させる際には、剥離部材が第一基板乃至は第二基板の外周部二ヶ所で交差部を有して居る状態にて基板間を移動させる。剥離部材が糸又は細い棒の場合、剥離部材を第一基板側に引きつつ、第二基板法線に対して斜め方向に力を加える事で糸又は細い棒を第二基板水平方向に移動させる。斯うすると、二ヶ所の交差部を結ぶ曲線乃至は直線の線分上総てに於いて第一基板から薄膜デバイスが剥離され、剥離部材の水平移動に伴い線状の剥離部も順次水平方向に移動して行くので、大型化が進む基板からも大面積の電子デバイスを剥離して転写する事が可能となる。
又本発明は、第一基板と薄膜デバイスとの間に犠牲層が形成されおり、犠牲層は移設工程時に第二基板へ移設される事を特徴とする。斯うする事で転写された薄膜デバイス表面に犠牲層が移行し、薄膜デバイス表面が機械的な損傷から保護される。即ち、仮令剥離時に糸又は細い棒が薄膜デバイス表面に接してもデバイスを摩耗破壊する可能性が小さくなり、生産性を高める。又、犠牲層に半導体膜や導電膜を用いると、薄膜デバイスを静電気から保護する事にもなる。剥離時に生ずる静電気(剥離帯電)は時として薄膜デバイスを破壊する程にもなるが、本発明では転写した犠牲層が導電性を示す為、静電破壊から薄膜デバイスを守り、静電破壊の可能性を著しく小さくして、生産性を向上させるので有る。
又本発明は貼り合わせ工程にて接着剤層が第一基板乃至は第二基板の中心部のみに塗布されている事を特徴とする。中心部とは第一基板乃至は第二基板端部(基板エッジ)近傍の外周部を除いた領域を示す。斯うする事で第一基板と第二基板の外周部に接着剤が塗布されぬ領域を設ける事が出来る。外周部に接着剤塗布されていないと、第一基板と第二基板とが外周部にて直に接着されなくなる。外周部が直に接着されて居ると薄膜デバイスの剥離は極めて困難であるが、本発明に則ると、外周部では第一基板と第二基板との間に剥離部材を簡単に挿入する事が可能になるので、薄膜デバイスの剥離と転写が極めて容易となる。
又本発明は移設工程にて第二基板を平面に全面固定する事を特徴とする。第二基板は薄膜デバイスが移設される表面とその反対の裏面とを有し、この裏面を固定平面に全面吸着させて固定した状態で移設工程を進める。斯うする事で第二基板へ転写された薄膜デバイスが壊れる可能性が著しく小さくなり、生産性が向上する。これは薄膜デバイスの転写先である第二基板を全面固定する事に依り、第二基板の歪みを防げるからである。即ち、剥離時に第二基板が歪みに依って割れる可能性が減少する。この場合、剥離時に変形に依って割れる可能性が高いのは第一基板となるが、薄膜デバイスは既に第二基板へ転写されている為、転写不良を防ぐ事が出来る事になる。
又本発明は移設工程にて第二基板と剥離部材との間に微少な空間が生ずる様に剥離部材を第一基板側に引く事を特徴とする。斯うする事で剥離部材が第二基板に転写された薄膜デバイスに触れ難くなり、剥離部材の接触又は摩擦で薄膜デバイスを痛める事がなくなり、生産性を向上させる。
又本発明は剥離部材がヴィッカース硬度1000HV未満の硬さを有する材質で有る事を特徴とする。斯うする事で剥離部材が第二基板に転写された薄膜デバイスや犠牲層に万が一接触しても、薄膜デバイスを痛める可能性を低減出来る。
又本発明は剥離部材が導電性を有する物質で有る事を特徴とする。斯うする事で第一基板乃至第二基板の剥離帯電(静電気)を低減し、薄膜デバイスを剥離帯電から守るとの効果を有する。導電性を有する剥離部材は金属など導電物質そのもので出来ていても構わないし、或いは導電性を有する物質にて絶縁体物質からなる芯の表面を覆って居ても良い。
又本発明は導電性を有する剥離部材が移設工程にて接地電位を取られている事をも特徴とする。斯うする事で剥離帯電に基づく静電破壊を大幅に減少させ、生産性を高めるとの効果が得られる。
以下図面を参照しながら本発明の詳細を説明する。
本実施形態は第一基板上に形成された薄膜デバイスを第二基板に転写する薄膜デバイスの転写方法に関する。取り分け本実施形態は大型基板の転写を可能にすべく、接合された二枚の基板間に糸又は細い棒と云った剥離部材を挿入し、これを基板平面に水平な方向に移動させる事で転写を実現する。図1はその概念を示す剥離時の断面図である。非転写体で有る薄膜デバイス12が形成された第一基板10と転写先となる第二基板14とが接着剤層15を介して貼り合わされ、それらの間に剥離部材(糸又は細い棒)21を挿入し、これを水平方向Yに移動させる事で薄膜デバイス12を第一基板10から剥離して第二基板14へと転写する。最初に薄膜デバイス12は第一基板10に犠牲層11を介して形成されるが、剥離後には犠牲層11と共に第二基板14へと移設される。以下、この原理に基づく薄膜デバイスの転写方法を工程毎に詳述する。
図2は本実施形態の薄膜デバイス転写方法を説明する図である。本実施形態の転写は図2の第一工程から第四工程にて終了するが、その後に二度目の転写となる第五工程を加えても良い。
[第一工程]
第一工程では、図2(a)に示す様に、第一基板10上に犠牲層11及び薄膜デバイス12を形成する。犠牲層11と薄膜デバイス12との間には絶縁層13を設ける。
第一基板10は光が透過し得る透光性を有するものであるのが好ましい。この場合、光の透過率は10%以上であるのが好ましく、50%以上であるのがより好ましい。この透過率が低過ぎると、第三工程にて光を照射して薄膜デバイス12と第一基板10との接着力を弱める際に光の減衰(ロス)が大きくなり、犠牲層11又は犠牲層11と第一基板10との界面にて剥離するのにより大きな光量が必要となる。又、第一基板10は信頼性の高い材料で構成されているのが好ましく、特に耐熱性に優れた材料で構成されているのが好ましい。その理由は、例えば後述する薄膜デバイス12や絶縁層13を形成する際に、その種類や形成方法によってはプロセス温度が高くなる(例えば350℃から1000℃程度)事があるが、その場合でも第一基板10が耐熱性に優れていれば、第一基板10上への薄膜デバイス12等の形成に際し、その温度条件等の成膜条件の設定の幅が広がるからである。従って第一基板10は、薄膜デバイス12の形成の際の最高温度をTmaxとした時、歪点がTmax以上の材料で構成されている材質で有る事が好ましい。具体的に第一基板10の形成材料としては歪点が350℃以上のものが好ましく、500℃以上のものがより好ましい。この様な物としては、例えば、石英ガラス、コーニング7059、日本電気硝子株式会社製OA−2等の耐熱性ガラスが挙げられる。又、第一基板10の厚さについては特に限定されないものの、通常は0.1mmから5.0mm程度であるのが好ましく、0.5mmから1.5mm程度であるのがより好ましい。第一基板10の厚さが薄すぎると強度の低下を招き、厚すぎると、第一基板10の透過率が低い場合に、光の減衰を生じ易くなる。犠牲層11が光を均一に吸収すべく、第一基板10の厚さは均一であるのが好ましい。尚、第一基板10の光の透過率が高い場合には、その厚さは前記上限値5.0mmを超えるものであっても良い。
犠牲層11は薄膜デバイス12を製造する過程では極めて安定で有りながら、剥離転写時には機械的な力の作用に依り容易に剥離する材料によって構成される。更にこの犠牲層11は、剥離転写時に犠牲層11と第一基板10との界面に於いて剥離し易い材料から成るのが好ましい。取り分けレーザ光等の強い光を吸収して犠牲層11と第一基板10とを接合する原子間結合力や分子間結合力を消失乃至は減少させる物資である事が望ましい。具体的には犠牲層11に光を照射すると、そこから水素や窒素、または水蒸気等の気体を放出したり、或いは犠牲層11の構成物質その物が気化して膨張力を生み出したり、短時間溶融して固化する際に体積収縮するなどして、犠牲層11と第一基板10との界面を分離させる効果を有する材質が好ましい。また、半導体膜や導電膜であることが好ましい。この様な犠牲層11の形成材料としては、例えば、次のAからFに記載されるものが挙げられる。
A.アモルファスシリコン(a−Si)
アモルファスシリコン中には水素(H)が含有されていても良い。この場合、Hの含有量は2原子%以上程度であるのが好ましく、2原子%から20原子%程度であるのがより好ましい。この様に水素(H)が所定量含有されていると、光の照射によって水素が放出され、犠牲層11に内圧が発生し、それが上下の薄膜を剥離する力となる。アモルファスシリコン中の水素(H)の含有量は、成膜条件、例えばCVDにおけるガス組成、ガス圧、ガス雰囲気、ガス流量、温度、基板温度、投入パワー等の条件を適宜設定する事に依り調整する事が出来る。
B.酸化ケイ素又はケイ酸化合物、酸化チタン又はチタン酸化合物、酸化ジルコニウム又はジルコン酸化合物、酸化ランタン又はランタン酸化化合物等の各種酸化物セラミックス、透電体(強誘電体)あるいは半導体。
酸化ケイ素としては、SiOやSiO2、またはSi32が挙げられ、ケイ酸化合物としては、例えばK2SiO3、Li2SiO3、CaSiO3、ZrSiO4、Na2 SiO3 が挙げられる。
酸化チタンとしては、TiOやTi23、またはTiO2が挙げられ、チタン酸化合物としては、例えば、BaTiO4、BaTiO3、Ba2Ti920、BaTi511、CaTiO3、SrTiO3、PbTiO3、MgTiO3、ZrTiO2、SnTiO4、Al2TiO5、またはFeTiO3が挙げられる。
酸化ジルコニウムとしてはZrO2が挙げられ、ジルコン酸化合物としては、例えばBaZrO2、ZrSiO4、PbZrO3、MgZrO3、K2ZrO3が挙げられる。
C.PZT、PLZT、PLLZT、PBZT等のセラミックスあるいは誘電体(強誘電体)。
D.窒化珪素、窒化アルミ、窒化チタン等の窒化物セラミックス。
E.有機高分子材料
有機高分子材料としては−CH−や−CO−(ケトン)、−CONH−(アミド)、−NH−(イミド)、−COO−(エステル)、−N=N−(アゾ)、または−CH=N−(シフ)等の結合(光の照射により此等の結合が切断される)を有する物、特に此等の結合を多く有する物であればいかなる有機高分子材料でも良い。又、有機高分子材料は構成式中に芳香族炭化水素(1又は2以上のベンゼン環又はその縮合環)を有するものであっても良い。この様な有機高分子材料の具体例としては、ポリエチレンやポリプロピレンの様なポリオレフィン、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルスルホン(PES)、またはエポキシ樹脂等が挙げられる。
F.金属
金属としては、例えば、AlやLi、Ti、Mn、In、Sn、Y、La、Ce、Nd、Pr、Gd、Sm又は此等の内の少なくとも一種を含む合金が挙げられる。
犠牲層11の厚さは剥離目的や犠牲層11の組成や層構成、形成方法等の諸条件により異なるが、通常は1nmから20μm程度であるのが好ましく、10nmから2μm程度であるのがより好ましく、20nmから1μm程度であるのが更に好ましい。犠牲層11の膜厚が小さすぎると、成膜の均一性が損なわれ、剥離にムラが生じると共に、薄膜デバイス12の物理的な保護膜としての機能が低下する。又、膜厚が厚すぎると、犠牲層11の良好な剥離性を確保するのに光のパワー(光量)を大きくする必要がある。加えて剥離後に犠牲層11を除去する場合、その作業に時間がかかる。尚、犠牲層11の膜厚は出来るだけ均一であるのが好ましい。犠牲層11としては上述の如く様々な材質が可能であるが、本実施形態に取り分け効果的な物は、その厚みが100nm以上の水素含有アモルファスシリコン膜で有る。
犠牲層11の形成方法は特に限定されず、膜組成や膜厚等の諸条件に応じて適宜選択される。例えば、CVD(MOCVD、低圧CVD、ECR−CVDを含む)、蒸着、分子線蒸着(MB)、スパッタリング、イオンプレーティング、PVD等の各種気相成膜法、電気メッキ、浸漬メッキ(ディッピング)、無電解メッキ等の各種メッキ法、ラングミュア・プロジェット(LB)法、スピンコート、スプレーコート、ロールコート等の塗布法、各種印刷法、転写法、インクジェットコーティング法、粉末ジェット法等が挙げられ、此等の内の二以上を組み合わせて形成する事も出来る。犠牲層11の組成がアモルファスシリコン(a−Si)の場合には、CVD、特に低圧CVDやプラズマCVDにより成膜するのが好ましい。又、犠牲層11をゾル−ゲル法によるセラミックスで構成する場合や有機高分子材料で構成する場合には、塗布法、特に、スピンコートに依り成膜するのが好ましい。尚、図2には示されないが、第一基板10と犠牲層11の性状に応じて、両者の密着性の向上等を目的とした中間層を第一基板10と犠牲層11の間に設けても良い。
本実施形態では、犠牲層11に接して設けられる絶縁層13としてSiO2膜を使用しているが、Si34などのその他の絶縁膜を使用する事も出来る。絶縁層13(SiO2膜)の厚みは、その形成目的や発揮し得る機能の程度に応じて適宜決定されるが、通常は、10nmから5μm程度であるのが好ましく、40nmから1μm程度であるのがより好ましい。絶縁層13は種々の目的で形成され、例えば、被転写層(薄膜デバイス12)を物理的又は化学的に保護する保護層、絶縁層、導電層、レーザ光の遮光層、マイグレーション防止用のバリア層、反射層としての機能の内の少なくとも1つを発揮するものが挙げられる。尚、場合によってはSiO2膜等の絶縁層を形成せず、犠牲層11上に直接被転写層(薄膜デバイス12)を形成しても良い。
被転写層である薄膜デバイス12は、TFT等の薄膜素子を含む層である。薄膜素子としては、TFTの他に、例えば、薄膜ダイオードやシリコンのPIN接合からなる光電変換素子(光センサ、太陽電池)、シリコン抵抗素子、その他の薄膜半導体デバイス、電極(例:ITO、メサ膜のような透明電極)、スイッチング素子、メモリ、圧電素子等のアクチュエータ、マイクロミラー(ピエゾ薄膜セラミックス)、磁気記録薄膜ヘッド、コイル、インダクター、薄膜高透磁材料およびそれらを組み合わせたマイクロ磁気デバイス、フィルター、反射膜、ダイクロイックミラー等がある。この様な薄膜デバイス12(薄膜素子)はその形成方法との関係で、通常、比較的高いプロセス温度を経て形成される。従って、この場合、第一基板10はそのプロセス温度に耐え得る信頼性の高いものが必要となる。
[第二工程]
図2(b)に示す様に、第二工程は第一基板10と第二基板14とを接着剤層15を介して接着する貼り合わせ工程である。薄膜デバイス12上に接着剤を塗布して接着剤層15を形成した後に、第一基板10と第二基板14とを接着する。接着剤層15は第一基板10の薄膜デバイス12上に塗布しても良いし、反対に第二基板14上に塗布しても良い。又、第二基板14には予め基板上に光吸収層16を形成しておき、第一基板10上の薄膜デバイス12と第二基板14上の光吸収層16とを接着剤を用いて接合しても良い。
接着剤層15は溶剤可溶性接着剤を用いて仮接着させておく事が望ましい。溶剤可溶性接着剤としては、水やアルコール、アセトン、酢酸エチル、またはトルエン等の何れかの溶剤で比較的容易に溶解され、必要に応じて接着物を剥離する接着剤から適宜選択する。例えばポリビニルアルコール系、水性ビニルウレタン系、アクリル系、ポリビニルピロリドン、アルファオレフィン、マレイン酸系、もしくは光硬化型接着剤などの水溶性接着剤、またはアクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、もしくはシリコン系接着剤などの多くの有機溶媒可溶性接着剤を挙げる事が出来る。
接着剤層15は、図3に示す様に、第一基板10乃至は第二基板14の基板中心部付近にのみに塗布形成されて居り(接着剤塗布領域32)、外周部には接着剤が形成されていない接着剤未塗布領域31を設ける。接着剤塗布領域32に位置する第一基板10には必ず犠牲層11が存在する様にし、接着剤層15と第一基板10で犠牲層11が設けられていない領域とが直に接合する事の無い様に接着剤を形成する。斯うすると外周部にて第一基板10と第二基板14とが直に接着される事が無くなり、第一基板10と第二基板14とは必ず接着剤層15を介して接着する事になる。この為に第一基板10と第二基板14との剥離が極めて容易になる。接着剤未塗布領域31は、各辺とも第一基板10端面から1mmから3mm程の幅が望ましく、その内側に接着剤塗布領域32が設けられる。1mm未満に接着剤塗布領域32を形成するのは困難で、接着剤が基板端面にて第一基板10と第二基板14の双方を接着する恐れが高まる。従って第一基板10と第二基板14とを直に接着させない確実な方法は接着剤未塗布領域31を1mm以上に取る事である。一方、接着剤未塗布領域31は当然転写されないので、其処が広過ぎると生産性を落とす事になる。接着剤の粘度は2cpsから20cps程度で、この粘度と基板面での広がり等を鑑みると、接着剤未塗布領域31の幅は2mm程の変動に制御出来る。従って基板端面から3mmも有ると確実に接着剤未塗布領域31を形成出来る。接着剤未塗布領域31が広過ぎると生産性を落とすので、接着剤未塗布領域31の最大幅は3mm程度となる。第一基板10乃至は第二基板14の中央部付近にのみ接着剤層15を形成する方法としては、スピンコート法等で基板全面に接着剤を塗布した後に外周部のみから接着剤を取り除く方法や、インクジェットコーティング法やスクリーン印刷法等各種印刷法で選択的に接着剤を塗布する方法等が有る。接着剤層15は、20μmから150μm位の厚みとし、第一基板10と第二基板14との間隔を20μmから150μmとしておく。こうする事で第四工程でのデバイス移設が容易になる。
第二基板14はその種類が特に限定されないが、第四工程を鑑みると、平面乃至は平面に成り得る基板が好ましい。即ち硬い平板であっても柔軟な湾曲板であっても良い。第二基板14は透明で有っても透明で無くても構わない。本実施形態の応用目的に応じてその種類は随時選ばれる。又、第二基板14は第一基板10に比べ、耐熱性や耐腐食性等の特性が劣るものであっても良い。その理由は、本実施形態では、第一基板10側に薄膜デバイス12を形成し、その後、薄膜デバイス12を第二基板14に転写するため、第二基板14に要求される特性、特に耐熱性は、薄膜デバイス12の形成の際の温度条件等に依存しないからである。従って薄膜デバイス12の形成の際の最高温度をTmaxとしたとき、第二基板14の形成材料として、ガラス転移点(Tg)又は軟化点がTmax以下のものを用いる事が出来る。例えば、第二基板14は、ガラス転移点(Tg)又は軟化点が好ましくは800℃以下、より好ましくは500℃以下、更に好ましくは320℃以下の材料で構成する事が出来る。更に第二基板14の機械的特性としては、ある程度の剛性(強度)を有するものが好ましいが、可撓性や弾性を有するものであっても良い。この様な第二基板14の形成材料としては、各種合成樹脂又は各種ガラス材が挙げられ、特に、各種合成樹脂や通常の(低融点の)安価なガラス材が好ましい。合成樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれでもよく、例えば、ポリエチレン、ポロプロピレン、エチレン−プレピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等のポリオレフィン、環状ポリオレフィン、変性ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリ−(4−メチルベンテン−1)、アイオノマー、アクリル系樹脂、ポリメチルメタクリレート、アクリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリオ共重合体(EVOH)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプチレンテレフタレート(PBT)、ポリシクロヘキサンテレフタレート(PCT)等のポリエステル、ポリエーテル、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK(登録商標))、ポリエーテルイミド、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンオキシド、変性ポリフェニレンオキシド、ポリアリレート、芳香族ポリエステル(液晶ポリマー)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、その他フッ素系樹脂、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、フッ素ゴム系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマー、エボキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル、シリコン樹脂、ポリウレタン等、又は此等を主とする共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイ等が挙げられる。此等のうちの1種又は2種以上を組み合わせて(例えば2層以上の積層体として)用いる事が出来る。ガラス材としては、例えば、ケイ酸ガラス(石英ガラス)、ケイ酸アルカリガラス、ソーダ石灰ガラス、カリ石灰ガラス、鉛(アルカリ)ガラス、バリウムガラス、ホウケイ酸ガラス等が挙げられる。このうち、ケイ酸ガラス以外のものは、ケイ酸ガラスに比べて融点が低く、又、成形、加工も比較的容易であり、しかも安価であり、好ましい。
[第三工程]
第三工程は第一基板10と犠牲層11との接着力乃至は犠牲層11と絶縁層13との接着力を弱める剥離前処理工程である。具体的には、図2(c)に示す様に、第一基板10と第二基板14との接合体に対して、第一基板10側から犠牲層11の全面に強力な光Lを照射し、第一基板10と犠牲層11との界面、又は犠牲層11と絶縁層13との界面、或いは犠牲層11内部に於ける結合強度を弱める。本実施形態では取り分け第一基板10と犠牲層11との界面での接着力を弱め、犠牲層11は移設工程時に第二基板14へ移設される。
犠牲層11乃至は第一基板10と犠牲層11との界面にて接着力を低下させるには、犠牲層11にレーザ光などの強力な光を照射すれば良い。犠牲層11への光照射に依り接着力を低下させる第一の方法としては、犠牲層11中に気体分子を含ませ、光照射にて此等気体分子を加熱膨張させて、接着力を弱めるものがある。ここでの気体分子とは水素や窒素、アンモニア、水、酸素などである。第二の方法は犠牲層11を構成する元素それ自体を加熱して、気化乃至は膨張させ、接着力を弱めるものである。この場合、犠牲層11は膨張係数の大きい物質や容易に気化しやすい物質が用いられる。第三の方法は強力な光のエネルギーにて犠牲層11が吹き飛ばされる所謂アブレーションである。第四の方法は犠牲層11を第一基板10や絶縁層13に対して選択的に加熱し、犠牲層11だけを水平方向に膨張させる。斯うすると界面にて剪断応力が生じ、接着力が落ちるのである。第五の方法は犠牲層11が加熱されて溶融した後に、再度固化する際に体積変化を生じさせるものである。例えば水素含有アモルファスシリコンの密度は結晶シリコンの密度よりも10%余り低いので、溶融結晶化により10%程度の体積収縮が生じ得る。此が接着力を弱める原因に成り得るのである。
本実施形態では第一基板10と犠牲層11との界面で接着力を落とし、犠牲層11を移設工程時に第二基板14へ移設させる方法を採る。具体的には犠牲層11に厚みが100nm以上の水素含有アモルファスシリコン膜を用い、波長が250nmから370nmの紫外レーザ光を照射するのである。その際のレーザエネルギー強度は、シリコン膜の膜厚方向で50%以上80%以下が溶融する条件とする。此の波長領域の光は非晶質シリコン膜での吸収が非常に強く、非晶質シリコン膜への入射光の90%以上が入射表面から20nm以内で吸収される。従って犠牲層11となる非晶質シリコン膜の厚みを100nm以上とすれば、レーザ照射直後に非晶質シリコン膜表面から20nm程度は著しく高温となる一方で、反対の裏面の温度は比較的低く保たれ、強い温度勾配がシリコン膜厚方向に発生する。この為に上述した各種方法が第一基板10近傍の犠牲層11にて発生し易くなり、第四工程で剥離が第一基板10と犠牲層11との界面になる訳である。斯うして犠牲層11は移設工程後に薄膜デバイス12と共に第二基板14側に移るのである。シリコン膜の膜厚方向で50%以上80%以下が溶融する条件とするのは次の理由に基づく。まず50%以上ならばシリコン膜の温度が十分に上昇して、剥離が容易となる。一方、80%以下だと膜厚方向の温度差を大きく保てるので、犠牲層11と絶縁層13との界面では剥離が生じにくくなり、剥離は犠牲層11と第一基板10との界面で進行し易くなるからである。要するに、シリコン膜の膜厚方向での溶融割合が50%以上80%以下ならば、犠牲層11が安定的に第二基板14側に移設されるのである。犠牲層11として水素を1%から10%含有する水素含有アモルファスシリコンを用い、上述の条件を満たすと、移設工程時に剥離が容易となる上、第二基板14に移設された犠牲層11は多結晶シリコン膜に変わる。多結晶シリコン膜は電荷注入により導電体となるので、剥離帯電しても移設された犠牲層11が導電体として電荷を拡散させる事になる。即ち、薄膜デバイス12が移設工程時に静電破壊される事故を著しく減少させるのである。斯うして本実施形態は転写歩留まりを上げ、以て生産性を改善せしめるのである。
波長が250nmから370nmの紫外レーザ光としては、例えばエキシマレーザを挙げる事が出来る。エキシマレーザは、短波長紫外域の高エネルギーのレーザ光出力が可能なガスレーザであり、レーザ媒質として希ガス(Ar、Kr、Xeなど)とハロゲンガス(F2、HClなど)とを組み合わせたものを用いる事に依り、代表的な4種類の波長のレーザ光を出力する事が出来る(XeF=351nm、XeCl=308nm、KrF=248nm、ArF=193nm)。エキシマレーザは、短波長域で高エネルギーを出力するため、極めて短時間で犠牲層11での接着力を低下させる事が出来、それ故に隣接する薄膜デバイス12等に劣化や損傷を生じさせる事がなくなる。
[第四工程]
第四工程は、図2(d)に示す様に、薄膜デバイス12を第一基板10から剥離して第二基板14へと移設する移設工程である。本実施形態では、糸又は細い棒と云った剥離部材21を用いて犠牲層11と第一基板10との界面にて互いを分離する事に依り、薄膜デバイス12を第一基板10から第二基板14へと移設する。糸又は細い棒21にはその長さに対する制限がないので、本実施形態を用いると、大型化が進む基板(第一基板10)からも大面積の電子デバイス(薄膜デバイス12)を剥離して転写する事が可能となる。
まず、第一基板10と第二基板14との間に糸又は細い棒21を挿入し易くすべく、本工程に先立ち第二工程にて接着剤層15を20μmから150μm位の厚みに塗布し、第一基板10と第二基板14との間隔を20μmから150μmとしておく。又、前述の如く、貼り合わせた両基板の端面や外周部に接着剤が塗布されぬ様に第一基板10乃至は第二基板14の外周部に接着剤未塗布領域31を作製しておく。即ち、第一基板10と第二基板14とを貼り合わせた際に、当該基板の周辺部に接着剤が存在せず、二枚の基板が接着しない領域を設けておくのである。さて、本実施形態で用いる糸又は細い棒21は、その線径が第一基板10と第二基板14の間隔よりも小さい事が望ましい。第一基板10と第二基板14との間隔が、本工程で使用される糸又は細い棒21の線径よりも大きくなる様に接着材を塗布しておくのが好ましいので有る。基板周辺に未接着領域を儲け、更に線径を基板間隔よりも細くする事で容易に第一基板10と第二基板14との間に糸又は細い棒21を挿入出来るからである。一般に各種ピアノ線や汎用的な細い硬鋼線の線径は20μmから150μm程度であるので、此等を糸又は細い棒21として利用して、線材の硬度や弾性定数を比較的自由に選択するには、第一基板10と第二基板14との間隔を20μmから150μmとすべきなのである。剥離部材21の長さに関しては、剥離部材21が第一基板10乃至は第二基板14の外周部二ヶ所で交差部を有している状態にて両基板間を水平方向に移動させるので、二ヶ所の交差部間距離よりも剥離部材は長くなっている。
第一基板10と第二基板14との間に糸又は細い棒21を挿入した後に、此等糸又は細い棒21を第一基板10側に引きつつ、第二基板14の法線(Z方向)に対して斜め方向に力を加える。斯うする事で糸又は細い棒21は第一基板10と第二基板14とを引き離す力を第一基板10に加え、且つ糸又は細い棒21を第二基板14の水平方向Yに移動させて、薄膜デバイス12を第一基板10から第二基板14へと移設するので有る。
基板の固定に関しては、第二基板14を固体50の平面(吸着平面)に全面固定し、第一基板10側に変形の自由度を与えるのが望ましい(図1参照)。第二基板14は薄膜デバイス12が移設される表面とその反対の裏面とから成る。移設工程には第二基板14の裏面を固定平面に全面吸着させて、第二基板14が動かない状態とする。斯うする事で薄膜デバイス12の転写先である第二基板14の歪みを無くし、第二基板14へ転写された薄膜デバイス12が割れる可能性を最小として生産性を向上させるからである。この場合、剥離時に変形に依って割れる可能性が高いのは第一基板10の糸又は細い棒21の近傍領域(図1にて破線で囲んだ領域)となるが、此等の領域では、薄膜デバイス12は既に第二基板14へ転写されている為、仮令割れたとしても薄膜デバイス12が悪影響を被ることは無く、それ故に転写不良発生を抑制し得るからである。第二基板14の固定方法としては、真空吸着法や静電チャック法等の吸着法が利用される。その際、面全体としての吸着力は、剥離時に糸又は細い棒21に掛かる法線方向Zの分力より強くなくてはならない。斯うする事で剥離時に基板が吸着平面から外れなくなり、安定的に剥離工程が実行されるからである。
図4は剥離時に糸又は細い棒と云った剥離部材21に掛かる力とその移動方向を説明している。まず、剥離時に糸又は細い棒21の移動距離を最小として剥離欠陥発生確率を減ずるには、第一基板10が長方形の場合、その長辺(X方向)に平行して糸又は細い棒21を二枚の基板間に挿入し、水平移動方向Yを長方形の短辺に平行に取る。剥離時に糸又は細い棒21に掛ける力は、第一基板10側に掛かる法線方向分力Zを、糸又は細い棒21を挿入する辺(長辺)の長さに対し1g重/cm以上で、且つ100g重/cm以下とする。例えば長辺の長さが25cmの場合、法線方向分力は25g重から2500g重とする。水素含有アモルファスシリコン膜を犠牲層11として用い、波長が308nmのエキシマレーザを照射した場合、実験に依ると、1g重/cm未満の法線方向分力Zでは二枚の基板を剥がす事が出来ないからである。反対に100g重/cmを超える力とすると、第一基板10の変位が大きくなり過ぎ、直ぐに第一基板10が割れて仕舞う。第一基板10が割れても転写されたデバイスへの悪影響は小さいが、割れた第一基板10の端面が転写されたデバイスを傷つけたり、或いは糸又は細い棒21が二枚の基板間から外れ、それ以降の剥離を困難にするので、歩留まりや生産性が落ちて仕舞う。斯うした弊害を無くすには、法線方向分力Zを100g重/cm以下とする必要がある。水平移動方向分力Yは、糸又は細い棒21の水平移動方向Yへの平均移動速度が1mm/秒から10mm/秒位となるようにする。糸又は細い棒21の水平方向への移動はなめらかで連続的とはならず、瞬時に数ミリ以上移動した後短時間停止する非連続的な動作を繰り返す。これは水平方向分力Yが剥離の弾性限界を超えた時にのみ水平方向への移動が生じるからである。移動時には、糸又は細い棒21が上下に振動し、第一基板10と第二基板14の両基板にパルス的な強い圧力を加える。実験に依ると水平移動方向Yへの平均の移動速度が10mm/秒を越えると上側の第一基板10が割れたり、或いは第二基板14に転写した薄膜デバイス12が傷つくとの不具合が生ずる。此は恐らく糸又は細い棒21が上下方向にパルス的な変位を為し、この変位が回復しない内に次の平行移動に伴うパルス的な変位が加算される為と思われる。斯うした弊害を無くし、生産性を高めるには平均移動速度を10mm/秒以下とするように水平方向に力を加えねばならない。水平移動速度が1mm/秒以下であると、基板剥離に時間が掛かり、生産性を落とすので1mm/秒以上が望ましく、斯うした条件を満たす様に水平移動方向分力Yを加える。
法線方向Zと水平移動方向Yとに直交するX方向に糸又は細い棒21を張る力は、糸又は細い棒21の基板内での歪みが10mm以下となるようにする(図5参照)。二枚の基板間に糸又は細い棒21を挿入して基板の剥離を図ると、物理的な抵抗に依り糸又は細い棒21は基板内の中央部付近で最も歪む。図5では糸又は細い棒21が基板内に入る端部同士を結んだ直線の中央部をB点とし、B点を基準として水平移動方向Yと交差する糸又は細い棒21の位置をA点としている。A点は糸又は細い棒21上でのB点への最短距離点でもある。このA点とB点との距離が10mm以下となる様にX方向に糸又は細い棒21を張る。無論挿入する糸又は細い棒21が剛体棒で有るならば、X方向に張る分力は必要ない。実験に依ると、X方向への張力が弱く、糸又は細い棒21の基板内での歪みが10mm以上になる場合には、基板の端部にZ方向応力が集中し、上側の第一基板10が短辺周辺で割れる現象がしばしば観察された。斯うした弊害を防ぐには、糸又は細い棒21の基板内での歪みが10mm以下となる様に張力を加える必要がある。結局、移設工程時に糸又は細い棒21は此等三方向の分力が合成された引っ張る力(V)が加えられる(図4参照)。
移設工程時には、図1に示す様に、第二基板14と糸又は細い棒21との間に微少な隙間(微少空間)30を発生させ、これを維持する様に糸又は細い棒21を第一基板10側に引きながら移動させる。第二基板14と糸又は細い棒21との間の隙間(微少空間)は、0.5mmから3mm位の距離が望ましい。これによって糸又は細い棒21が第二基板14に転写された薄膜デバイス12に触れる回数が著しく減少する。即ち、糸又は細い棒21が摩擦で薄膜デバイス12を痛める可能性が小さくなり、生産性が向上するからである。又、前述の如く、本実施形態では、第一基板10と犠牲層11との界面で剥離を行い、犠牲層11は移設工程時に第二基板14へ移設されて居る。それ故に犠牲層11は第二基板14側で最表面となり、薄膜デバイス12を保護する事が出来る。糸又は細い棒21を水平移動方向Yに動かして剥離を進めて行くと、必然的に糸又は細い棒21は上下方向(Z方向)に微振動する。その為に仮令微少な空間を発生させ、此を維持する様に努めても、糸又は細い棒21の第二基板14表面への接触回数を完全に無くす事は不可能である。糸又は細い棒21が第二基板14に接触しても薄膜デバイス12の破壊を最小として、高歩留りの転写を実現させるには、犠牲層11を第二基板14側に移設し、糸又は細い棒21と第二基板14との間に微少空間30を維持する様に糸又は細い棒21を第一基板10側に引くのが肝要なのである。微少空間距離は僅かでも構わないが、経験的に0.5mm以下に保つのは困難である。又、3mmよりも大きくすると第一基板10の歪みも自動的に3mmよりも大きくなる為、移設工程時に第一基板10が割れ易くなる。第一基板10を割らずに安定的に転写を実現させるには微少空間の最大距離は3mm以下が好ましい。
第一基板10と第二基板14との間に挿入する糸又は細い棒21は、ヴィッカース硬度が1000HV未満の硬さを有する材質の物を使用する事が望ましい。例えば、ヴィッカース硬度が20HVから300HV位の金属材料や10HVから30HV位の樹脂材料などが上げられる。又、樹脂材料等からなる芯にヴィッカース硬度が800HVから1000HV位のニッケルめっき等を覆った材料が糸又は細い棒21として使用される。此は犠牲層11を為すシリコンのヴィッカース硬度が1100HV程度である為、糸又は細い棒21が1000HVよりも低い硬度で有れば、仮令犠牲層11に接触したとしても、薄膜デバイス12が傷つく可能性を低減出来るからである。斯うした糸又は細い棒21は導電性を有する物質で有る事が望ましい。即ち、第一基板10と第二基板14との間に挿入する糸又は細い棒21は、導電性を有する金属など導電物質そのもので出来ていても構わないし、或いは絶縁性物質からなる芯の表面を導電性を有する物質が覆って居る物でも良い。前述の如く、剥離時に糸又は細い棒21は第二基板14の法線方向Zに微振動し、第一基板10面と第二基板14面とに接する。剥離帯電は第一基板10と第二基板14とで反対の電荷が溜まるので、導電性を有する糸又は細い棒21が交互に第一基板10と第二基板14とに接する事で双方の帯電量を減少させ、薄膜デバイス12を剥離帯電から守る事になる。此の効果をより高めるには、導電性を有する糸又は細い棒21を移設工程には接地電位とするのである。斯うする事で剥離帯電した電荷は速やかに除去され、剥離帯電に基づく静電破壊を大幅に減少させ、生産性を高めるとの効果が得られるからである。
尚、本実施形態では剥離部材としての糸又は細い棒21の断面形状を、図1に示すが如く、円形として説明して来たが、無論断面形状はこれに限定される訳ではない。糸又は細い棒21の断面形状は、図6(a)に示す様な楕円であっても良く、更には剥離部材の水平移動方向に凸部を有する多角形(図6(b)、(c))であっても、第一基板10と第二基板14とにほぼ平行な辺を有する多角形(図6(d))で有っても良い。また、上述の実施形態において、糸又は細い棒21は、両端を有する様に図4に示したが、これに限定されるものではなく、図4に示した糸又は細い棒21の両端を延長させて繋げることにより、両端を有せぬ環状であっても良い。
又、上述の説明では第一基板10および第二基板14を長方形として説明したが、第一基板10および第二基板14は多角形や円形、または楕円形などで有って良く、その場合の糸又は細い棒21の長さは、第一基板10乃至は第二基板14の外周の二点以上と交差するに充分の長さを有しており、例えば多角形の対角線、円形の直径、または楕円形の短軸の長さ(短径)もしくは長軸の長さ(長径)を超える長さを有して居れば良い。
この様にして、第一基板10上の薄膜デバイス12は第二基板14に移設される。その結果、第二基板14側には移設された薄膜デバイス12が存在し、その最表面には犠牲層11となる。犠牲層11は移設工程時には薄膜デバイス12に対する保護膜として機能していたが、次工程以降では不要となる為、次工程に進む前にこれを完全に取り除いておく事が望ましい。犠牲層11を除去するための方法としては、洗浄やエッチング、アッシング、研磨等の方法、或いは此等を組み合わせた方法の中から適宜選択する。
[第五工程]
第一基板10と犠牲層11を取り除いた後、図2(e)に示す様に薄膜デバイス12上に熱融着接着剤又はそれを含む熱融着シート25を設ける。熱融着接着剤又はそれを含む熱融着シート25としては、ポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン、EVAなど)やエポキシ系樹脂、フッ素系樹脂、またはカルボキシル基含有アクリル系樹脂などの熱溶融樹脂のうちの一種又は二種以上を混合して用いる事が出来る。熱融着接着剤又はそれを含む熱融着シート25の厚みは0.1μmから100μm、好ましくは1μmから50μm程度とされる。この熱融着接着剤又はそれを含む熱融着シート25を薄膜デバイス12上に設ける方法は特に限定されず、例えば第二基板14に併せて裁断した熱融着接着剤又はそれを含む熱融着シート25を薄膜デバイス12上に載せ、加熱しながら押圧する方法などによって簡単に設ける事が出来る。尚、この時点で熱融着接着剤又はそれを含む熱融着シート25を薄膜デバイス12上に接着せず、後述する最終基板24を薄膜デバイス12上に載置する時点で、熱融着接着剤又はそれを含む熱融着シート25を介し最終基板24と加熱しながら押圧する方法などによって接合する事も出来る。
最終基板24としては、ある程度の剛性(強度)を有するものが好ましいが、可撓性や弾性を有するものであっても良い。この様な形成材料としては、例えば各種合成樹脂や紙、繊維、または金属薄膜等が挙げられ、特に、各種合成樹脂や金属薄膜等が好ましい。合成樹脂としては熱可塑性樹脂でも熱硬化性樹脂でも何れでも良く、例えば、ポリエチレン、ポロプロピレン、エチレン−プレピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等のポリオレフィン、環状ポリオレフィン、変性ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリ−(4−メチルベンテン−1)、アイオノマー、アクリル系樹脂、ポリメチルメタクリレート、アクリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリオ共重合体(EVOH)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプチレンテレフタレート(PBT)、ポリシクロヘキサンテレフタレート(PCT)等のポリエステル、ポリエーテル、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK(登録商標))、ポリエーテルイミド、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンオキシド、変性ポリフェニレンオキシド、ポリアリレート、芳香族ポリエステル(液晶ポリマー)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、その他フッ素系樹脂、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、フッ素ゴム系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマー、エボキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル、シリコン樹脂、ポリウレタン等、又は此等を主とする共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイ等が挙げられ、此等のうちの1種又は2種以上を組み合わせて(例えば2層以上の積層体として)用いる事が出来る。最終基板24として合成樹脂で構成されたものを用いる場合には、湾曲面や凹凸を有するもの等の複雑な形状であっても容易に製造する事ができ、又、材料コスト、製造コストも安価であるという種々の利点が享受出来る。従って、合成樹脂の使用は、大型で安価なデバイス(例えば、液晶ディスプレイ)を製造する上で有利である。金属薄膜としては、安価なステンレススチールなどが利用でき、その他にもアルミ箔や金箔を用いる事も出来る。尚、最終基板24は、液晶セルの様に、それ自体独立したデバイスを構成するものや、例えばカラーフィルター、電極層、誘電体層、絶縁層、半導体素子の様に、デバイスの一部を構成するものであっても良い。
次に図2(f)に示す様に最終基板24と接合した第二基板14に対し、全面に光Lを照射し、光吸収層16と接着剤層15と界面に於いて剥離を生じさせる。光吸収層16の剥離により、殆どの薄膜デバイス12が接着剤層15を介し光吸収層16から切り離され、此等が最終基板24側にのみ接合された状態となる。ここで使用する光Lは、前記で述べたものと同様で、X線、紫外線、可視光、赤外線(熱線)、レーザ光、ミリ波、マイクロ波、電子線、放射線(α線、β線、γ線)等が挙げられる。そのなかでも、光吸収層16の発熱を生じさせ易く、かつ高精度の局部照射が可能である点で、レーザ光が好ましい。レーザ光としては、前記、第三工程で用いたと同種のレーザ光を用いても良いし、異なる種類のレーザ光を用いても良い。
最後に図2(g)に示す様に、薄膜デバイス12表面に残った接着剤層15を除去すべく、最終基板24上に薄膜デバイス12が転写された後、水又は有機溶媒などの適当な溶剤を用いて接着剤層15を取り除く。フレキシブル電子デバイス(薄膜デバイス12)残存する溶剤を熱風乾燥等によって完全に留去する事が望ましい。
以上詳述して来た様に、本実施形態は以下に記す効果を有する。
(1)剥離部材21が第一基板10の外周部二ヶ所と交差する状態にて水平方向Yに移動する事に依り、二ヶ所の交差部を結ぶ線分上総てに於いて薄膜デバイス12が剥離され、剥離部材の移動に伴い線状の剥離が順次水平方向に進行するので、第一基板10が大型化しても、薄膜デバイス12を第一基板10から第二基板14へと移設(転写)することが出来る。
(2)第一基板10と第二基板14との間隔が、剥離部材(糸又は細い棒)21の線径よりも大きいので、容易に第一基板10と第二基板14との間に剥離部材21を挿入出来、第一基板10を薄膜デバイス12から順次剥離することが出来る。
(3)第一基板10と犠牲層11との界面で剥離を行い、犠牲層11は移設工程時に第二基板14へ移設されるので、犠牲層11は第二基板14側で最表面となり、剥離部材21が薄膜デバイス12に接触することを防ぎ、薄膜デバイス12を保護することが出来る。又、犠牲層11に半導体膜や導電膜を用いると、薄膜デバイス12を静電気から保護することにもなる。剥離時に生ずる静電気(剥離帯電)は、時として薄膜デバイス12を破壊する程にもなるが、転写された犠牲層11が導電性を示す為、静電破壊から薄膜デバイス12を守り、静電破壊の可能性を著しく小さくして、生産性を向上させるのである。
(4)第一基板10と第二基板14とがそれぞれの外周部にて直に接着される事が無くなり、第一基板10と第二基板14との間に、剥離部材21を挿入し易くなるので、第一基板10の剥離が極めて容易に出来る。
(5)第一基板10の剥離時に、第二基板14が固体50の吸着面、たとえば吸着平面に吸着され、固体50から外れなくなり、薄膜デバイス12の転写先である第二基板14の歪みを無くし、第二基板14へ転写された薄膜デバイス12が割れる可能性を最小として安定的に剥離工程が実行され生産性を向上させることができる。この場合、剥離時に変形によって割れる可能性が高いのは第一基板10の剥離部材21の近傍領域となるが、これらの領域では、薄膜デバイス12は既に第二基板14へ転写されている為、たとえ割れたとしても薄膜デバイス12が悪影響を被ることは無く、それ故に転写不良発生を抑制することが出来る。
(6)剥離部材21と第二基板14との間に微少空間を維持する様に努めて剥離部材21を第一基板10側に引くので、剥離部材21が第二基板14に接触しても薄膜デバイス12の破壊を最小として、高歩留りの転写を実現させることが出来る。
(7)犠牲層11を為すシリコンのヴィッカース硬度が1100HV程度である為、剥離部材21が1000HVよりも低い硬度であれば、たとえ剥離部材21が犠牲層11に接触したとしても、薄膜デバイス12が剥離部材21により傷つく可能性を低減出来る。
(8)第一基板10の剥離時に、剥離部材21は第二基板14法線方向Zに微振動し、第一基板10面と第二基板14面とに接する。剥離帯電は第一基板10と第二基板14とで反対の電荷が溜まるが、導電性を有する剥離部材21が交互に第一基板10と第二基板14とに接することで双方の帯電量を減少させ、薄膜デバイス12を剥離帯電から守ることが出来る。
(9)導電性を有する剥離部材21を移設工程には接地電位とするので、剥離帯電した電荷は速やかに除去され、剥離帯電に基づく静電破壊を大幅に減少させ、生産性を高めることが出来る。
本実施形態の概念を示す剥離時の断面図。 本実施形態の薄膜デバイス転写方法を説明する図。 接着剤の塗布領域を示す接着塗布概略図。 剥離時の剥離部材としての細い棒または糸に掛かる力とその移動方向を示す図。 剥離時の剥離部材としての細い棒または糸の歪みを示す図。 剥離部材の断面形状図。
符号の説明
10…第一基板、11…犠牲層、12…薄膜デバイス、13…絶縁層、14…第二基板、15…接着剤層、16…光吸収層、21…糸又は細い棒、24…最終基板、25…熱融着接着剤又はそれを含む熱融着シート、31…接着剤未塗布領域、32…接着剤塗布領域、L…光、V…引っ張る力、X…Y軸とZ軸とに直交する方向、Y…水平方向(水平移動方向)、Z…法線方向。

Claims (9)

  1. 第一基板上に形成された薄膜デバイスを第二基板に転写する薄膜デバイスの転写方法に於いて、
    前記薄膜デバイス上に接着剤層を形成して前記第一基板と前記第二基板とを接着する貼り合わせ工程と、
    前記第一基板と前記第二基板との間に剥離部材を挿入し、前記剥離部材を両基板間で移動させて、前記薄膜デバイスを前記第一基板から前記第二基板へと移設する移設工程とを含む事を特徴とする薄膜デバイスの転写方法。
  2. 前記第一基板と前記薄膜デバイスとの間に犠牲層が形成されており、前記犠牲層は前記移設工程時に第二基板へ移設される事を特徴とする請求項1記載の薄膜デバイスの転写方法。
  3. 前記貼り合わせ工程にて、前記接着剤層は前記第一基板乃至は前記第二基板の中心部のみに塗布されている事を特徴とする請求項1乃至2に記載の薄膜デバイスの転写方法。
  4. 前記移設工程にて、前記第二基板を平面に全面固定する事を特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の薄膜デバイスの転写方法。
  5. 前記移設工程にて、前記第二基板と前記剥離部材との間に空間が生ずる様に前記剥離部材を前記第一基板側に引く事を特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の薄膜デバイスの転写方法。
  6. 前記剥離部材は、ヴィッカース硬度1000HV未満の硬さを有する材質で有る事を特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の薄膜デバイスの転写方法。
  7. 前記剥離部材は、導電性を有する物質で有る事を特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の薄膜デバイスの転写方法。
  8. 前記剥離部材は、導電性を有する物質がその表面を覆っている事を特徴とする請求項7に記載の薄膜デバイスの転写方法。
  9. 前記移設工程にて、前記剥離部材は接地電位が取られている事を特徴とする請求項7乃至は8に記載の薄膜デバイスの転写方法。
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