プロテインキナーゼは、細胞内における様々なシグナル伝達過程の制御に関与する構造的に関連する酵素の大きなファミリーを形成している(ハーディー(Hardie,G.)およびハンクス(Hanks,S.)、1995年、タンパク質キナーゼファクトブックIおよびII(The Protein Kinase Facts Book、I and II)アカデミックプレス(Academic Press)、サンディエゴ、カリフォルニア)。前記キナーゼは、それらがリン酸化する基質により、各ファミリーに分類される(例えば、タンパク質‐チロシン、タンパク質‐セリン/スレオニン、脂質など)。これらキナーゼファミリーの各々に通常対応する配列モチーフが特定されてきた(例えば、ハンクス(Hanks,S.K.)、ハンター(Hunter,T.)、米国実験生物学協会誌(FASEB J.)、9:576−596、1995年;ナイトン(Knighton)ら、サイエンス(Science)、253:407−414、1991年;ハイルズ(Hiles)ら、セル(Cell)、70:419−429、1992年;クンツ(Kunz)ら、セル(Cell)、73:585−596、1993年;ガルシア−ブストス(Garcia−Bustos)ら、欧州分子生物学機構誌(EMBO J.)、13:2352−2361、1994年)。
プロテインキナーゼはそれらの調節メカニズムにより特徴付けられる。これらのメカニズムには、例えば自己リン酸化、他のキナーゼによるリン酸基転移、タンパク質‐タンパク質相互作用、タンパク質‐脂質相互作用、およびタンパク質‐ポリヌクレオチド相互作用がある。個々のプロテインキナーゼは2以上のメカニズムにより調節されることもある。
キナーゼは、リン酸基を標的タンパク質へ付加することにより、増殖、分化、アポトーシス、運動、転写、翻訳、および他のシグナル伝達作用に限定されないが、それらを含めた多くの異なる細胞過程を調節している。これらのリン酸化現象は、標的タンパク質の生物学的機能を調整または調節しうる分子オン/オフスイッチとして作用する。標的タンパク質のリン酸化は、様々な細胞外シグナル(ホルモン、神経伝達物質、増殖、および分化因子など)、細胞周期現象、環境ストレス、または栄養ストレスなどに反応して生じる。適切なプロテインキナーゼは、例えば代謝酵素、調節タンパク質、受容体、細胞骨格タンパク質、イオンチャンネルまたはイオンポンプ、または転写因子を(直接的または間接的に)活性化または不活性化するために、シグナル伝達経路において機能する。タンパク質リン酸化の制御の欠陥に起因する制御されないシグナルは、例えば炎症、癌、アレルギー/喘息、免疫系の疾患および症状、中枢神経系の疾患および症状、および血管新生を含む、多くの疾患に関与している。
細胞周期全体を通じて種々のcdkおよびサイクリンの発現レベル、分解率および活性化レベルが調整されることで、cdkが酵素的に活性化されている一連のcdk/サイクリン複合体の周期的な形成がもたらされる。これらの複合体の形成により、個々の細胞周期チェックポイントの通過が制御され、それにより細胞分裂のプロセスが継続し得る。既定の細胞周期チェックポイントで必須の生化学的基準を満たさない、すなわち、必要とするcdk/サイクリン複合体を形成できないと、細胞周期の停止および/または細胞アポトーシスがもたらされることがある。癌において現れるような異常な細胞増殖は、多くの場合、正しい細胞周期制御の欠如に起因し得る。従って、cdk酵素活性の阻害により、異常に分裂する細胞が、それらの分裂の停止および/または死滅を生じ得る手段が提供される。cdkおよびcdk複合体の多様性ならびに細胞周期を媒介するそれらの重要な役割により、定義された生化学的根拠に基づいて選択される広範囲の可能性のある治療標的が提供される。
細胞周期のG1期からS期への進行は、D型およびE型サイクリンのメンバーとの結合を介して、主としてcdk2、cdk3、cdk4およびcdk6により調節される。D型サイクリンは、G1制限点を超えて通過するのに役立つと思われ、ここで、cdk2/サイクリンE複合体がG1期からS期への移行に重要である。続くS期を経た進行およびG2期への進入には、cdk2/サイクリンA複合体が必要であると思われる。有糸分裂と、それを引き起こすG2期からM期への移行はどちらも、cdk1とA型サイクリンとの複合体およびcdk1とB型サイクリンとの複合体により調製される。
G1期において、網膜芽細胞腫タンパク質(Rb)およびp130のような関連するポケットタンパク質は、cdk(2、4、および6)/サイクリン複合体の基質である。G1からの進行は、1つには、cdk(4/6)/サイクリン−D複合体によるRbおよびp130の過剰リン酸化、従って不活性化、により促進される。Rbおよびp130の過剰リン酸化により、E2Fなどの転写因子の放出が起こり、従ってG1からの進行さらにはS期への進入のために必要なサイクリンE遺伝子などの遺伝子の発現が起こる。サイクリンEの発現により、Rbのさらなるリン酸化を介してE2Fレベルを増幅または維持するcdk2/サイクリンE複合体の形成が促進される。また、このcdk2/サイクリンE複合体は、ヒストン生合成に関与するNPATなどの、DNA複製に必要な他のタンパク質もリン酸化する。また、G1の進行およびG1/S移行は、cdk2/サイクリンE経路につながるマイトジェンによって刺激されたMyc経路を介しても調節される。また、cdk2は、p21レベルのp53調節を介して、p53が媒介するDNA損傷応答経路にも接続される。p21は、CDK2/サイクリンEのタンパク質阻害剤であり、従って、G1/S移行を遮断または遅延させることができる。従って、cdk2/サイクリンE複合体は、Rb、Mycおよびp53経路からの生化学的刺激がある程度統合される点を表す可能性がある。従って、cdk2および/またはcdk2/サイクリンE複合体は、異常に分裂する細胞において細胞周期を停止させる、または細胞周期の制御を回復させるように設計される治療の良い標的となる。
細胞周期におけるcdk3の厳密な役割は明らかになっていない。同系統サイクリンパートナーはまだ同定されていないが、ドミナントネガティブ型のcdk3がG1における細胞を遅延させ、このことは、cdk3がG1/S移行を調節する役割を有することを示唆している。
ほとんどのCDKが細胞周期の調節に関与しているが、cdkファミリーの特定のメンバーが、他の生化学的過程に関与している証拠がある。これは、正確な神経発生に必要であり、かつ、Tau、NUDE−1、シナプシン1、DARPP32およびMunc18/シンタキシン1A複合体などのいくつかの神経タンパク質のリン酸化にも関与するCDK5によって例示される。神経のcdk5は、通常、p35/p39タンパク質への結合により活性化される。しかしながら、cdk5活性は、p35の短縮型であるp25の結合により脱調節され得る。p35からp25への変換および続いてのcdk5活性の脱調節は、虚血、興奮毒性およびベータ−アミロイドペプチドにより誘導することができる。その結果、p25は、アルツハイマー病などの神経変性疾患の病因に関与しており、従って、これらの疾病に対する治療標的として注目される。
cdk7は、cdc2CAK活性を有し、かつ、サイクリンHに結合する核タンパク質である。cdk7は、RNAポリメラーゼIIC末端ドメイン(CTD)活性を有するTFIIH転写複合体の成分として同定されている。これは、Tatが媒介する生化学経路を介したHIV−1転写の調節に関与する。cdk8はサイクリンCと結合し、RNAポリメラーゼIIのCTDのリン酸化に関連付けられている。同様に、cdk9/サイクリン−T1複合体(P−TEFb複合体)は、RNAポリメラーゼIIの伸張制御に関連付けられている。また、PTEF−bは、サイクリンT1との相互作用を介したウイルス性トランス活性化因子TatによるHIV−1ゲノムの転写の活性化に必要とされる。従って、cdk7、cdk8、cdk9およびP−TEFb複合体は、抗ウイルス治療の可能性のある標的となる。
分子レベルで、cdk/サイクリン複合体活性の媒介には、一連の促進的および阻害的リン酸化または脱リン酸化の事象が必要である。cdkのリン酸化は、cdk活性化キナーゼ群(CAK)および/またはwee1、Myt1およびMik1などのキナーゼによって行われる。脱リン酸化は、cdc25(aおよびc)、pp2aまたはKAPなどのホスファターゼによって行われる。
cdk/サイクリン複合体活性は、さらに、Kip/CipファミリーまたはINKファミリーという、内因性の細胞タンパク性阻害剤の2つのファミリーにより調節され得る。INKタンパク質は、cdk4およびcdk6と特異的に結合する。p16ink4(MTS1としても知られている)は多数の原発性癌において変異または欠失している腫瘍抑制遺伝子の可能性がある。Kip/Cipファミリーは、p21Cip1,Waf1、p27Kip1およびp57kip2などのタンパク質を含む。上記したように、p21はp53により誘導され、cdk2/サイクリン(E/A)複合体およびcdk4/サイクリン(D1/D2/D3)複合体を不活性化することができる。乳癌、結腸癌および前立腺癌においては、典型的に低レベルのp27発現が観察されている。逆に、固形癌におけるサイクリンEの過剰発現は、患者の予後の悪さと相関性があることが示されている。サイクリンD1の過剰発現は、食道癌、乳癌、扁平上皮癌および非小細胞性肺癌と関連する。
増殖細胞において細胞周期を統括および駆動する上でのcdkおよびそれらの関連タンパク質の中枢的役割については上記で概要を述べた。cdkが重要な役割を果たす生化学的経路のいくつかについても記載してきた。従って、全般的なCDKまたは特定のcdkを標的とした治療薬を用いた、癌などの増殖性疾患の治療に向けた単剤療法の開発は、極めて望ましい可能性がある。cdk阻害剤は、とりわけウイルス感染、自己免疫疾患および神経変性疾患などの他の症状を治療するのにも使用できると考えられる。また、cdkを標的とした治療も、既存の治療薬または新しい治療薬との併用療法に用いた場合に、上記の疾病の治療において臨床的利益をもたらし得る。cdkを標的とする抗癌療法は、DNAと直接相互作用せず、従って、二次腫瘍の発生の危険性を軽減するはずであることから、現行の多くの抗腫瘍剤に優る利点を持つ可能性がある。
従来用いられているアルキル化剤に基づく療法に比べ、症候性CLL患者に対する初期療法としてフルダラビンを付加するとより高い完全奏功率(3%に対して27%)と無増悪生存期間(17ヶ月に対して33ヶ月)をもたらした。治療後に完全臨床奏功を得ることはCLLにおける生存率を向上させる第一段階であるが、大多数の患者は完全寛解が得られないか、またはフルダラビンに応答することができない。さらに、フルダラビンで治療した総てのCLL患者がやがて再発に至り、その単剤としての役割は全く緩和剤的なものとなる(ライ(Rai KR)、ピーターソン(Peterson B)、イリアス(Elias L)、シェパード(Shepherd L)、ハインズ(Hines J)、ネルソン(Nelson D)、チェソン(Cheson B)、コリッツ(Kolitz J)、シファー(Schiffer CA):過去に未治療の慢性リンパ球性白血病を有する患者に対するフルダラビンおよびクロラムブチルの無作為比較(A randomized comparison of fludarabine and chlorambucil for patients with previously untreated chronic lymphocytuc leukemia)、A CALGB SWOG、CTG/NCI−CおよびECOGのグループ間研究、ブラッド(BLOOD)88:141a、1996年(アブストラクト552、付録1)。従って、この疾病の治療法にさらなる進展が実現されるとすれば、フルダラビンの細胞傷害性を相補し、内在性のCLL薬剤耐性因子によって誘導される耐性を無効にする新規作用機序を有する新薬剤を同定することが必要である。
最も包括的に研究されている、CLL患者の不十分な治療応答と生存率の悪さの一様な推定因子は、点変異または染色体17p13の欠失を特徴とするような異常なp53機能である。実際、異常なp53機能を有するCLL患者に関する複数の単一施設症例シリーズにおいてアルキル化剤またはプリン類似体のいずれかによる療法に対する応答は実証されたことがない。CLLにおけるp53変異に関連する薬剤耐性を克服する能力を有する治療薬を導入することは、この疾病の治療に大きな進展をもたらす可能性がある。
サイクリン依存性キナーゼの阻害剤であるフラボピリドールおよびCYC202は、インビトロにおいてB細胞慢性リンパ性白血病(B−CLL)由来の悪性細胞のアポトーシスを誘導する。
フラボピリドールへの暴露はカスパーゼ3活性の刺激、ならびにB−CLLにおいて過剰発現される、細胞周期の負の調節因子p27(kip1)のカスパーゼ依存性切断をもたらす(ブラッド(Blood)、1998年11月15;92(10):3804−16、bcl−2調節または機能性p53依存の所見を呈せずフラボピリドールはカスパーゼ−3の活性化を通して慢性リンパ球性白血病細胞のアポトーシスを誘発する(Flavopiridol induces apoptosis in chronic lymphocytic leukemia cells via activation of caspase−3 without evidence of bcl−2 modulation or dependence on functional p53)、バード(Byrd JC)、シン(Shinn C)、ワセレンコ(Waselenko JK)、フュックsu(Fuchs EJ)、レーマン(Lehman TA)、ニューエン(Nguyen PL)、フリン(Flinn IW)、ディール(Diehl LF)、ソースビル(Sausville E)、グレバー(Grever MR))。
オーロラキナーゼの正確な役割はまだ解明されていないが、それらは有糸分裂のチェックポイントの制御、染色体ダイナミクスおよび細胞質分裂に役割を果たしている(アダムス(Adams)ら、細胞生物学の潮流(Trends Cell Biol.)、11:49−54、2001年)。オーロラキナーゼは分裂間期の細胞の中心体、二極紡錘体の分裂極、および分裂装置の中央体に存在する。
これまでに哺乳類でオーロラキナーゼファミリーの3つのメンバーが発見されている(二グ(E.A.Nigg)、ナショナルレビューオブモルキュラーセルバイオロジー(Nat.Rev.Mol.Cell Biol.)、2:21−32、2001年)。それらは、
オーロラA(文献ではオーロラ2とも呼ばれている);
オーロラB(文献ではオーロラ1とも呼ばれている);および
オーロラC(文献ではオーロラ3とも呼ばれている)。
オーロラキナーゼは相同性の高い触媒ドメインを有するが、そのN末端部分で著しく異なる(カタヤマ(Katayama H)、ブリンクリー(Brinkley WR)、セン(Sen S);オーロラキナーゼ:細胞形質転換および腫瘍形成における役割(The Aurora kinases:role in cell transformation and tumorigenesis)、癌転移レビュー(Cancer Metastasis Rev.)、2003年12月、22(4):451−64)。
オーロラキナーゼAおよびBの基質は、キネシン様モータータンパク質、紡錘体装置タンパク質、ヒストンH3タンパク質、動原体タンパク質および腫瘍抑制タンパク質p53を含むものと同定されている。
オーロラAキナーゼは紡錘体の形成に関与し、それらが紡錘体関連タンパク質をリン酸化するG2期初期に中心体に局在すると考えられている(プライジェント(Prigent)ら、セル(Cell)、114:531−535、2003年)。ヒロタ(Hirota)ら、(セル(Cell)、114:585−598、2003年)により、オーロラAタンパク質キナーゼを枯渇させた細胞は有糸分裂に進入することができないことが見出された。さらに、様々な種におけるオーロラA遺伝子の変異または破壊は、中心体の分離および成熟の欠陥、紡錘体異常ならびに染色体分離の欠陥を含む、有糸分裂異常をもたらすことが見出されている(アダムス(Adams)、2001年)。
オーロラキナーゼは、一般に、胸腺および精巣のような分裂細胞の割合の高い組織を除く、大部分の正常組織において低レベルで発現される。しかしながら、多くのヒト癌において高レベルのオーロラキナーゼが見出されている(ギート(Giet)ら、ジャーナルオブセルサイエンス(J.Cell.Sci.)112:3591−361、1999年およびカタヤマ(Katayama)、2003年)。さらに、オーロラAキナーゼは、多くのヒト癌で増幅されることがしばしば見出されている染色体20q13領域にもマッピングされている。
このように、例えば、ヒト乳癌、卵巣癌、および膵臓癌において有意なオーロラAの過剰発現が検出されている(シュウ(Zhou)ら、ネイチャージェネティクス(Nat.Genet.)、20:189−193、1998年、タナカ(Tanaka)ら、癌研究(Cancer Res.)、59:2041−2044、(1999)およびハン(Han)ら、癌研究(Cancer Res.)、62:2890−2896、2002年、参照)。
さらに、イソラ(Isola)、アメリカンジャーナルオブパソロジー(American Journal of Pathology)147、905−911、1995年は、オーロラA遺伝子座(20q13)の増幅がリンパ節転移陰性乳癌を有する患者の予後不良と相関していることを報告している。
ヒト膀胱癌ではオーロラ−Aの増幅および/または過剰発現が観察され、異数性および侵攻性の臨床特性にはオーロラ−Aの増幅が関連している(セン(Sen)ら、米国国立癌研究所誌(J. Natl. Cancer Inst.)94:1320−1329、2002年、参照)。
オーロラ−Aの高い発現は結腸直腸癌(ビショフ(Bischoff)ら、欧州分子生物学機構誌(EMBO J.)、17:3052−3065、1998年、およびタカハシ(Takahashi)ら、日本癌学会誌(Jpn.J.Cancer Res.)、91:1007−1014、2000、参照)、卵巣癌(グリツコ(Gritsko)ら、臨床癌研究(Clin.Cancer Res.)、9:1420−1426、2003年、参照)、および胃癌(サカクラ(Sakakura)ら、ブリティッシュジャーナルオブキャンサー(British Journal of Cancer)、84:824−831、2001年)の50%を超えるもので検出されている。
タナカ(Tanaka)ら(癌研究(Cancer Research)59:2041−2044、1999年)は、浸潤性乳管腺癌の94%でオーロラAの過剰発現の証拠を見出した。
また、腎臓癌、子宮頸癌、神経芽腫、黒色腫、リンパ腫、膵臓癌および前立腺癌細胞株でも、高レベルのオーロラAキナーゼが見出されている(ビショフ(Bischoff)ら1998年、欧州分子生物学機構誌(EMBO J.)、17:3052−3065、1998年;キムラ(Kimura)、ジャーナルオブバイオロジカルケミストリー(J。Biol.Chem.)、274:7334−7340、1999年;シュウ(Zhou)ら、ネイチャージェネティクス(Nature Genetics)、20:189−193、1998年;リ(Li)ら、臨床癌研究(Clin.Cancer Res.)、9(3):991−7、2003年)。
オーロラ−Bは白血病細胞をはじめとする複数のヒト腫瘍細胞株で発現が高い(カタヤマ(Katayama)ら、ジーン(Gene)244:1−7)。原発性結腸直腸癌では、この酵素のレベルはデュークステージ(Duke’s Stage)の臨床病期の関数として増加する(カタヤマ(Katayama)ら、国立癌研究所誌(J.Natl Cancer Inst.)、91:1160−1162、1999)。
オーロラ−3(オーロラ−C)は正常組織の生殖細胞に限定される傾向があるが、いくつかの腫瘍細胞株において高レベルのこのキナーゼが検出された(キムラ(Kimura)ら、ジャーナルオブバイオロジカルケミストリー(Journal of Biological Chemistry、274:7334−7340、1999年、参照)。結腸直腸癌の約50%でオーロラ−3が過剰発現することが、タカハシ(Takahashi)ら、日本癌学会誌(Jpn. J.Cancer Res.)、91:1007−1014、2001、参照)により文献で報告されている。
増殖性疾患におけるオーロラキナーゼの役割に関する他の報告は、ビショフ(Bischoff)ら、細胞生物学の潮流(Trends in Cell Biology)9:454−459、1999年;ギート(Giet)ら、ジャーナルオブセルサイエンス(Journal of Cell Science)、112:3591−3601、1999年)およびデュテルトル(Dutertre)ら、オンコジーン(Oncogene)、21:6175−6183、2002年に見出すことができる。
ロイス(Royce)らは、原発性乳癌の約4分の1でオーロラ2遺伝子(STK15またはBTAKとしても知られている)の発現が示されることを報告している(ロイス(Royce ME)、シャ(Xia W)、サヒン(Sahin AA)、カタヤマ(Katayama H)、ジョンストン(Johnston DA)、ホルトバージ(Hortobagyi G)、セン(Sen S)、フン(Hung MC);原発性乳癌におけるSTK15/オーロラ−A発現は核階級と関連し、予後とは無関係である(STK15/Aurora−A expression in primary breast tumours is correlated with nuclear grade but not with prognosis);キャンサー(Cancer)、2004年1月、1;100(1):12−9)。
子宮内膜癌(EC)は少なくとも2つのタイプの癌を含んでいる。類内膜癌(EEC)はエストロゲン依存性腫瘍であり、多くの場合正倍数性であり、予後も良好である。非類内膜癌(NEEC;漿液性型および明細胞型)はエストロゲン非依存性で、多くの場合異数性であり、臨床上は侵攻性である。また、オーロラはNEECの55.5%では増幅されているが、EECでは増幅されていないことも判明した(P≦0.001)(モレノ−ブエノ(Moreno−Bueno G)、サンチェス−エステベス(Sanchez−Estevez C)、カッシャ(Cassia R)、ロドリゲス−ペラレス(Rodriguez−Perales S)、ディアス−ウリアルテ(Diaz−Uriarte R)、ドミンゲス(Dominguez O)、ハーディション(Hardisson D)、アンデュジャー(Andujar M)、プラット(Prat J)、マティアス−ギウ(Matias−Guiu X)、シグドサ(Cigudosa JC)、パラシオス(Palacios J)、癌研究(Cancer Res.)2003年9月、15;63(18):5697−702)。
ライハルト(Reichardt)ら(オンコロジーリポート(Oncol Rep.)、2003年、9〜10月、10(5):1275−9)は、グリオーマにおけるオーロラ増幅を調べるためのPCRによる定量的DNA分析により、WHO病期の異なる16の腫瘍のうち5つ(31%)(1つがグレードII、1つがグレードIII、3つがグレードIV)が、オーロラ2遺伝子のDNA増幅を示したことを明らかにした。オーロラ2遺伝子の増幅は、腫瘍形成の遺伝的経路に役割を果たす、ヒトグリオーマにおけるランダムでない遺伝子変化である可能性があるとの仮説が立てられた。
また、ハマダ(Hamada)ら(ブリティッシュジャーナルオブへマトロジー(Br.J.Haematol.)、2003年5月、121(3):439−47)による結果は、オーロラ2が非ホジキンリンパ腫の疾病活性だけでなく、非ホジキンリンパ腫の腫瘍形成を示すために有効な候補であることも示唆している。この遺伝子の機能を制限することから起こる腫瘍細胞増殖の遅延は非ホジキンリンパ腫の治療アプローチとなり得る。
グリツコ(Gritsko)ら(臨床癌研究(Clin.Cancer Res.、2003年4月、9(4):1420−6)による研究では、原発性卵巣癌を有する92名の患者においてオーロラAのキナーゼ活性およびタンパク質レベルが調べられた。インビトロキナーゼ分析では、44症例(48%)で高いオーロラAキナーゼ活性が明らかになった。52検体(57%)で高いオーロラAタンパク質レベルが検出された。オーロラAの高いタンパク質レベルはキナーゼ活性の上昇とよく相関していた。
リ(Li)ら(臨床癌研究(Clin.Cancer Res.)、2003年3月、9(3):991−7)によって得られた結果は、膵臓腫瘍および膵臓癌細胞株でオーロラA遺伝子が過剰発現されることを示し、オーロラAの過剰発現が膵臓癌形成に役割を果たし得ることを示唆している。
同様に、オーロラA遺伝子の増幅およびそれがコードする有糸分裂キナーゼの、関連する発現の増加が、ヒト膀胱癌の異数性および侵攻性の臨床特性と関連していることが示された(国立癌研究所誌(J.Natl Cancer Inst.)、2002年9月、4;94(17):1320−9)。
いくつかのグループによる研究(デュテルトル(Dutertre S)、プライジェント(Prigent C)、オーロラ−A過剰発現は動原体と微小管との接合チェックポイントの無効化をもたらす(Aurora−A overexpression leads to override of the microtubule−kinetochore attachment checkpoint)、モルキュラーインターベンション(Mol.Interv.)2003年5月、3(3):127−30およびアナンド(Anand S)、ペンリン−ロウ(Penrhyn−Lowe S)、ベンキタラマン(Venkitaraman AR.)、オーロラ−A増幅は、紡錘体形成チェック ポイントを無効化し、タキソールに対する抵抗性を誘発する(Aurora−A amplification overrides the mitotic spindle assembly checkpoint, inducing resistance to Taxol)、キャンサーセル(Cancer Cell)、2003年1月、3(1):51−62)は、オーロラキナーゼ活性の過剰発現がいくつかの現行癌治療に対する耐性に関連していることを示唆している。例えば、マウス胚線維芽細胞におけるオーロラAの過剰発現はタキサン誘導体の細胞毒性に対するこれらの細胞の感受性を低下させ得る。従って、オーロラキナーゼ阻害剤は、既存の治療に耐性を発達させた患者において特に使用が見出せる。
これまでに行われた研究に基づけば、オーロラキナーゼ、特にオーロラキナーゼAおよびオーロラキナーゼB、の阻害が腫瘍成長を停止させる有効な手段を実証すると考えられる。
ハリントン(Harrington)ら(NatMed誌(Nat Med.)2004年5月;10(3):262−7)は、オーロラキナーゼの阻害剤が腫瘍増殖を抑制し、インビボで腫瘍退縮を誘導することを実証した。この研究では、オーロラキナーゼ阻害剤は癌細胞の増殖を遮断し、また、白血病細胞株、結腸直腸細胞株および乳房細胞株を含む様々な癌細胞株において細胞死を誘導した。さらに、オーロラキナーゼ阻害剤は白血病細胞での細胞死の誘導による白血病の治療の可能性を示した。VX−680は治療難治性の原発性急性骨髄性白血病(AML)細胞を患者から強力に破壊した(アンドリューズ(Andrews)、オンコジーン(Oncogene)、2005、24、5005−5015)。
最近の報告ではオーロラキナーゼAおよびオーロラキナーゼBがヒト白血病細胞で過剰表現されること、低分子オーロラキナーゼ阻害剤が、インビトロで原発性急性骨髄性細胞の増殖に対して活性があることが示されている(ハリントン(Harrington)ら、2004)。さらに、急性前骨髄球性白血病においてt(15:17)転座(PML3)によって破壊されるPML遺伝子産物が、オーロラAと相互作用しそのキナーゼ活性を抑えることが最近報告されている。PMLが腫瘍抑制因子であり、その破壊は白血病に限定されず、リンパ腫およびいくつかの固形腫瘍においても一般的あり得るというさらなる証拠が出現している(シュ(Xu)ら、モルキュラーセル(Molecular Cell)17:721−732、2005)。
オーロラ阻害剤に特に影響されやすい癌としては、乳癌、膀胱癌、結腸直腸癌、膵臓癌、卵巣癌、非ホジキンリンパ腫、グリオーマおよび非類内膜性子宮内膜癌が挙げられる。オーロラ阻害剤に特に影響されやすい白血病としては、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、B細胞リンパ腫(マントル細胞)および急性リンパ芽球性白血病(ALL)が挙げられる。その他、白血病は急性前骨髄球性白血病を含む。
オーロラキナーゼAの過剰発現は髄芽細胞腫、小脳の極めて悪性の未分化神経外胚葉性腫瘍、の患者において予後不良の独立予測因子であると見なされている(ネベン(Neben)ら、癌研究(Cancer Research)、64: 3103−3111(2004)。
GSK3により認識されるコンセンサスペプチド基質配列は(Ser/Thr)−X−X−X−(pSer/pThr)であり、ここで、Xは任意のアミノ酸であり((n+1)、(n+2)、(n+3)の位置)、pSerおよびpThrはそれぞれホスホ−セリンおよびホスホ−スレオニンである(n+4)。GSK3は(n)の位置の最初のセリン、またはスレオニン、をリン酸化する。(n+4)の位置のホスホ−セリン、またはホスホ−スレオニンは、基質ターンオーバーを最大にするためGSK3をプライミングするのに必要であると思われる。GSK3アルファのSer21におけるリン酸化、またはGSK3ベータのSer9におけるリン酸化は、GSK3の阻害をもたらす。変異誘発およびペプチド競合研究は、GSK3のリン酸化されたN末端が、自己阻害機構を介してホスホ−ペプチド基質(S/TXXXpS/pT)と競合し得るというモデルを導いた。また、GSK3アルファおよびGSKベータがそれぞれチロシン279およびチロシン216のリン酸化により敏感に調節され得るということを示唆するデータもある。これらの残基のPheへの変異により、インビボキナーゼ活性の低下が起こった。GSK3ベータのX線結晶構造はGSK3の活性化および調節のあらゆる局面に光を当てる助けとなっている。
GSK3は哺乳類インスリン応答経路の一部をなし、グリコーゲンシンターゼをリン酸化することで、これを不活性化することができる。GSK3の阻害によるグリコーゲンシンターゼ活性のアップレギュレーションおよびそれによるグリコーゲン合成はII型すなわち、身体の組織がインスリン刺激に耐性となる状態であるインスリン非依存性糖尿病(NIDDM)に対処する、可能性ある手段であると考えられてきた。肝組織、脂肪組織または筋肉組織における細胞のインスリン応答は、細胞外インスリン受容体に結合するインスリンにより誘発される。これがリン酸化をもたらし、次に、インスリン受容体基質(IRS)タンパク質の原形質膜への動員が起こる。これらのIRSタンパク質がさらにリン酸化されれば、原形質膜へのホスホイノシチド−3キナーゼ(PI3K)の動員が始まり、そこでは、第二のメッセンジャーであるホスファチジルイノシチル3,4,5−3リン酸(PIP3)の放出が可能である。これは3−ホスホイノシチド依存性タンパク質キナーゼ1(PDK1)とタンパク質キナーゼB(PKBまたはAkt)の膜への共局在を助け、そこでPDK1はPKBを活性化する。PKBはリン酸化され、その結果Ser9またはser21のリン酸化によりそれぞれGSK3アルファおよび/またはGSKベータを阻害することができる。このGSK3の阻害は、次に、グリコーゲンシンターゼ活性のアップレギュレーションを誘発する。従って、GSK3を阻害することができる治療薬は、インスリン刺激に対して見られるものと同様の細胞応答を誘導し得る可能性がある。GSK3のさらなるインビボ基質として、真核生物タンパク質合成開始因子2B(eIF2B)がある。eIF2Bはリン酸化によって不活性化され、従って、タンパク質の生合成を抑制することができる。従って、例えば、“ラパマイシンの哺乳類標的”タンパク質(mTOR)の不活性化によるGSK3の阻害はタンパク質生合成をアップレギュレートすることができる。最後に、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ活性化タンパク質キナーゼ1(MAPKAP−K1またはRSK)などのキナーゼによるGSK3のリン酸化を経るマイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)経路を介したGSK3活性の調節の証拠がいくつかある。これらのデータは、GSK3活性が有糸分裂促進刺激、インスリン刺激および/またはアミノ酸刺激によって調整され得ることを示唆する。
また、GSK3ベータが脊椎動物Wntシグナル伝達経路の重要な成分であることも示されている。この生化学経路は、正常な胚発生に重要であり、正常組織における細胞増殖を調節することが示されている。GSK3はWnt刺激に応答して阻害されるようになる。これにより、アキシン、腺腫様多発結腸ポリープ(APC)遺伝子産物およびベータ−カテニンなどのGSK3基質の脱リン酸化をもたらし得る。Wnt経路の調節の異常は多くの癌に関連している。APCおよび/またはベータ−カテニンの変異は結腸直腸癌および他の腫瘍に共通している。また、ベータ−カテニンは細胞接着に重要であることも示されている。従って、GSK3もまたある程度細胞接着過程を調整し得る。すでに記載した生化学経路とは別に、サイクリン−D1のリン酸化を介した細胞分裂の調節、c−Jun、CCAAT/エンハンサー結合タンパク質アルファ(C/EBPアルファ)、c−Mycなどの転写因子および/または活性化T細胞の核因子(NFATc)、熱ショック因子−1(HSF−1)およびc−AMP応答エレメント結合タンパク質(CREB)などの他の基質のリン酸化にGSK3を関連づけるデータもある。また、GSK3は、組織特異的ではあるが、細胞アポトーシスの調節にも役割を果たしていると思われる。プロアポトーシス機構を介した細胞アポトーシスの調整におけるGSK3の役割は、神経アポトーシスが起こり得る医学的状態に特に関連がある可能性がある。これらの例としては、頭部外傷、卒中、癲癇、アルツハイマー病、および運動神経性疾患、進行性の核上麻痺、皮質基底核変性症、およびピック病がある。インビトロにおいては、GSK3は微小管関連タンパク質Tauを過剰リン酸化することができることが示されている。Tauの過剰リン酸化は微小管との正常な結合を破壊し、細胞内Tau線維の形成ももたらす可能性がある。これらの線維の進行的な蓄積は、最終的に神経の機能不全および変性をもたらすと考えられている。従って、GSK3の阻害によるTauリン酸化の阻害は、神経変性作用を制限し、かつ/または防ぐ手段となり得る。
CMLは死に至る病であり、それには、慢性期、加速期および急性転化期、という3つの段階を進む。CMLは、初期段階においては、最終分化した好中球の増殖によって特徴付けられる。疾病が進行するにつれて、過剰数の骨髄性前駆細胞またはリンパ前駆細胞が生産される。前記疾病のこの慢性期は急性転化期に進行する前に何年も続く場合があり、多数のさらなる遺伝子変異に特徴付けられる。CMLは主に成人に起こり、病気が明らかになった後5年の平均生存期間がある。CMLは初期段階では、C−ablのATP競合的阻害剤、イマチニブ(グリベック)、によって結果よく治療されている。第1相臨床試験に於いてこの薬では95%の寛解率が実証された。イマチニブへの持続的反応が慢性期のCML患者で観察されている。しかしながら、急性転化期での寛解は2〜6か月続くだけである。残念ながら、CML患者におけるイマチニブへの獲得耐性の発生は年間15%程と推測される。
BCR−ABL中のキナーゼドメイン変異は、症例の50%〜90%で起こり、イマチニブに対する獲得耐性の最も一般的なメカニズムを示している。直接あるいは間接的にイマチニブ結合に影響する、c−ablキナーゼドメインでの点変異の発生がイマチニブ耐性の最も一般的な原因である。25を超える明確なAb1キナーゼドメイン変異がイマチニブ治療を受けるCML患者中で確認され、それらがイマチニブに対する臨床上の耐性に関与する(ヘマトロジーシャー(Hematology Shah)2005年、(1):183)。これらの変異にはイマチニブに対する様々な程度の感受性がある。イマチニブは不活性型構造もしくは閉じた構造のABLキナーゼドメインへ結合すること、また結合時にタンパク質への様々な構造変化を誘導することが示されている。直接イマチニブとの接触に関係するアミノ酸位置である程度の耐性関連変異が生じる一方で、大多数はキナーゼドメインがイマチニブが結合する特定の構造をとることを妨げると考えられる。研究では、いくつかの変異は弱い耐性しかもたらさず、結果として、いくつかの症例で反応性を取り戻すための投与量増加が予測される。第二世代BCR−ABL阻害剤(例えば、BMS354825、AMN−107)の同時投与が多くのイマチニブ耐性c−abl変異体を有効に阻害することが示されている。しかしながら、臨床では最もイマチニブに耐性のc−abl変異体、すなわちT315I、に対して効果が示される薬剤はない。
フィラデルフィア染色体も急性リンパ芽球性白血病(ALL)という形態で見出される。このALLという形態はCMLと同じ染色体および分子のメカニズムによるものである可能性が高いようである。
FLT3およびその特異的リガンドであるFLT3−リガンド(FL)は造血前駆細胞の調節に役割を果たし、多能性前駆細胞、骨髄性前駆細胞およびBリンパ前駆細胞に対応するCD34陽性骨髄細胞を含む造血細胞や単球細胞に発現される。
FLT3の活性化変異は急性骨髄性白血病で観察される最も頻繁に観察される変異の1つである。最も頻繁に起こる変異は線変異(LM)あるいは遺伝子内タンデム重複(ITD)と呼ばれ、重複配列、もしくはエキソン11に属し時にはイントロン11およびエキソン12を含む挿入物からなる。
FLT3遺伝子における遺伝子内タンデム重複および/又は挿入ならびに希に欠失は、急性骨髄性白血病(AML)全体の20〜25%および骨髄異形成症候群(MDS)の5〜10%、そして急性リンパ芽球性白血病(ALL)のいくらかの症例と関連がある。
FLT3タンパク質の変異は、負の調節ドメインの破壊によりチロシンキナーゼ活性の構成的活性化を引き起こす。この活性化はraf−MEK−ERK経路を含むいくつかの増殖因子依存性経路の刺激を生じ、また白血病細胞の増殖および生存の一因となる。したがって、FLT3のキナーゼ活性の抑制は、FLT3活性に依存する上述されたような疾病の有効な治療法になる。
PDK1が媒介するシグナル伝達は、インシュリンおよび増殖因子ならびに細胞外マトリックスへの細胞の付着(インテグリンシグナル伝達)の結果として活性化される。一旦活性化されると、これらの酵素は、細胞生存、成長、増殖およびグルコース調節などの過程を制御する重要な役割を果たす重要な調節タンパク質をリン酸化することにより、多くの種々の細胞的事象を媒介する(ローラー(Lawlor,M.A.)ら、ジャーナルオブセルサイエンス(J.Cell Sci.)、114、2903−2910、2001年)、(ローラー(Lawlor,M.A.)ら、欧州分子生物学機構誌(EMBO J.)、21、p.3728−3738、2002年)。したがって、PDK1阻害剤は、糖尿病と癌などの疾病の新しい治療法を提供する可能性がある。
PDK1はN末端触媒ドメインおよびC末端プレクストリン相同(PH)ドメインを有する556個のアミノ酸からなるタンパク質であり、それらの活性化ループにおいてこれらキナーゼをリン酸化することによってその基質を活性化する(ベラム(Belham,C.)ら、カレントバイオロジー(Curr.Biol.)、9、pR93−96、1999)。前立腺癌やNSCLを含む多くのヒト癌は、PTENの変異あるい特定の主要な調節タンパク質の過剰発現のような多くの個別の遺伝的事象に起因する上昇したPDK1シグナル伝達経路機能を示す(グラフ(Graff,J。R.)、エキスパートオピニオンオンセラピューティックターゲット(Expert Opin.Ther.Targets、6、p.103−13、2002年)、(ブロナード(Brognard、J.)ら、癌研究(Cancer Res.)、61、3986−97ページ、2001)。癌を治療する可能性のある機序としてのPDK1の阻害は、PDK1に対するアンチセンスオリゴヌクレオチドによるPTEN陰性ヒト癌細胞株(IJ87MG)のトランスフェクションによって証明された。その結果として起こるPDK1タンパク質レベルの減少は、細胞増殖と生存の減少につながった(フリン(Flynn,P.)ら、カレントバイオロジー(Curr.Biol.)、10、p.1439−42、2000年)。したがって、PDK1の阻害は、癌治療のため、魅力的な標的になるかもしれない。
刺激をうけていない細胞では、大部分が不活性型で存在するPKB/AKTは、PDK1が媒介するPKB/AKTのリン酸化によりPKB/AKTは触媒的に活性型に変わる。これはAKT2のスレオニン309およびAKT1のスレオニン308でのAKTの活性化ループドメインのリン酸化によって生じる。AKTは、正常な刺激されていない細胞では低い基礎レベルの活性化を示すが、AKTはしばしば腫瘍細胞中で構成的に活性化されている。これは、様々な異なるシグナル伝達分子のアップレギュレーション、あるいはP1−3キナーゼ、増殖因子受容体(例えば,EGFRファミリーメンバー)、Ras、SrcおよびBCR−ABLの活性化のようなAKTの活性化を促進可能な癌細胞で一般に見つけられる発癌性変異の存在を通じて生じる。腫瘍抑制因子PTENの欠損は癌細胞のAKT活性を大幅に増加させる別の手段である(ベッソン(Besson,A.)ら、ヨーロピアンジャーナルオブバイオケミストリー(Eur.J.Biochem.)、1999年、第263巻、第3号、pp.605−611)。PTEN変異あるいはPTENタンパク質のダウンレギュレーションは多くの腫瘍や癌細胞株で見られる。PTENは、ホスファチジルイノシトール3,4,5−トリスホスファートやホスファチジリノシトール3,4−ビスホスファートなどのP1−3キナーゼ産物からD−3リン酸塩を取り除くホスファターゼである(マイヤーズ(Myers,M.P.)ら、米国科学アカデミー紀要(Proc.Natl.Acad.Sci.)、米国、1998年、第95巻、第23号、p.13513−13518;スタンボリック(Stambolic,V.)ら、セル(Cell)、1998年、95号、p.29−39)。したがって、PTENの欠損はP1−3キナーゼ産物を増加しAKTの構成的活性化を促進する効果がある。高度にアップレギュレートされたAKTレベルの癌は、PDK−1/AKT経路阻害剤の効果に特に感受性が高い。
したがってPDK1は、成長、増殖および生存を含む様々な細胞機能を調節するPI3Kシグナル経路の重要なメディエータである。それゆえ、PDK1阻害剤が非常に広範囲のヒト癌の成長に影響があると予想されるなど、この経路の阻害が癌進行に必要な多くの決定的な条件に影響し得る。
血管新生は一般に、新しい血管もしくは置換された血管の発生または新血管新生を記載するのに用いられる。これは、胚における血管系の確立に必要かつ生理的な正常過程である。血管新生は、排卵、月経および創傷治癒の部位を除くと、一般に、ほとんどの正常な成人組織においては起こらない。しかし、多くの疾患は持続的かつ無制御な血管新生により特徴付けられる。例えば、関節炎では新しい毛細血管が関節に浸入しそして軟骨を破壊する(コルビル−ナッシュ(Colville−Nash)およびスコット(Scott)、1992年、リウマチ性疾患年報(Ann.Rhum.Dis.)、第51巻、p.919)。糖尿病(および多くの種々の眼疾患)では、新しい血管が黄斑または網膜または他の眼構造に浸入して、失明を起こしうる(ブルックス(Brooks)ら、1994年、セル(Cell)、第79巻、p.1157)。アテローム性動脈硬化症の過程は血管新生につながる(カーロン(Kahlon)ら、1992年、カナディアンジャーナルオブカーディオロジー(Can.J.Cardiol.)第8巻、p.60)。腫瘍増殖と転移は血管新生依存性であることがわかっている(フォークマン(Folkman)、1992年、キャンサーバイオロジー(Cancer Biol.)、第3巻、p.65;デネカンプ(Denekamp)、1993年、ブリティッシュジャーナルオブラジオロジー(Br.J.Rad.)、第66巻、p.181;フィドラー(Fidler)およびエリス(Ellis)、1994年、セル(Cell)、第79巻、p.185)。
主な疾患における血管新生の関与は、血管新生の阻害剤を同定しかつ開発する研究に関連して認識されてきた。これらの阻害剤の分類は、一般に、血管新生カスケードにおける個々の標的、例えば、血管新生シグナルによる内皮細胞の活性化;分解酵素の合成と放出;内皮細胞の遊走;内皮細胞の増殖;および毛細血管の形成など、に対応して行われている。このように、血管新生は多くの段階に起こり、これらの様々な段階における血管新生の妨害に作用する化合物を発見しかつ開発する試みが進められている。
様々な文献が色々な機構で作用する血管新生の阻害剤を教示しており、これらは、癌および転移(オライリー(O’Reilly)ら、1994年、セル(Cell)、第79巻、p.315;イングバー(Ingber)ら、1990年、ネイチャー(Nature)、第348巻、p.555)、眼疾患(フリードランダー(Friedlander)ら、1995年、サイエンス(Science)、第270巻、p.1500)、関節炎(ピーコック(Peacock)ら、1992年、ジャーナルオブエクスペリメンタルメディシン(J.Exp.Med.)、第175巻、p.1135;(ピーコック(Peacock)ら、1995年、セルラーイミュノロジー(Cell.Immun.)、第160巻、p.178)および血管腫(タラボレッティ(Taraboletti)ら、1995年、米国国立癌研究所誌(J.Natl.Cancer Inst.)、第87巻、p.293)などの疾患に対して有益である。
受容体チロシンキナーゼ(RTK)は細胞の細胞膜を超える生化学的シグナルの伝達に重要である。これらの膜貫通分子は、特徴として、細胞内チロシンキナーゼドメインへ細胞膜内セグメントを介して結合した細胞外リガンド結合ドメインから成る。リガンドの受容体との結合は、受容体に結びついたチロシンキナーゼ活性を刺激して、受容体および他の細胞内タンパク質の両方のチロシン残基のリン酸化を導いて様々な細胞応答を引き起こす。今日まで、アミノ酸配列相同性により規定された少なくとも19種の個別のRTKサブファミリーが同定されている。
ポリペプチドの血管内皮増殖因子(VEGF)は、内皮細胞に対してインビトロで分裂促進性がありかつインビボで血管新生応答を刺激する。VEGFはまた、不適当な血管新生にも関係している(ピネド(Pinedo,H.M.)ら、2000年、オンコロジスト(Oncologist)、第5巻(90001)、p.1−2)。VEGFRはタンパク質チロシンキナーゼ(PTK)である。PTKは細胞増殖、生存および分化の調節に関わるタンパク質の特定のチロシン残基のリン酸化を触媒する(ウィルクス(Wilks,A.F.)、1990年、増殖因子研究の進歩(Progress in Growth Factor Research)、第2巻、p.97−111;コートニッジ(Courtneidge,S.A.)、1993年、DevelopmentSupplement誌(Dev.Supp.l)、p.57−64;クーパー(Cooper,J.A.)、1994年、セミナーズインセルバイオロジー(Semin.Cell Biol.)、第5(6)巻、p.377−387;ポールソン(Paulson,R.F.)、1995年,セミナーズインイミュノロジー(Semin.Immunol.)、第7(4)巻、p.267−277;チャン(Chan,A.C.)、1996年、カレントオピニオンインイミュノロジー(Curr.Opin.Immunol.)、第8(3)巻、p.394−401)。
VEGFに対する3種のPTK受容体が同定されている:すなわちVEGFR−1(F1t−1)、VEGFR−2(F1k−1またはKDR)、およびVEGFR−3(F1t−4)。これらの受容体は血管新生に関わりかつシグナル伝達に参加する(ムストネン(Mustonen,T.)ら、1995年、ジャーナルオブセルバイオロジー(J.Cell Biol.)、第129巻、p.895−898)。
特に興味深いのは、主に内皮細胞に発現される膜貫通受容体PTKである、VEGFR−2である。VEGFによるVEGFR−2の活性化は、腫瘍血管新生を開始するシグナル伝達経路の重要なステップである。VEGF発現は腫瘍細胞にとって構成的であってもよいしかつある特定の刺激に応答してアップレギュレートされたものであってもよい。かかる刺激の1つは低酸素であり、その場合、VEGF発現は腫瘍および付随する宿主組織の両方でアップレギュレートされる。VEGFリガンドはVEGFR−2の細胞外VEGF結合部位との結合によりVEGFR−2を活性化する。この結合はVEGFRの受容体二量体化およびVEGFR−2の細胞内キナーゼドメインにおけるチロシン残基の自己リン酸化を起こす。キナーゼドメインはリン酸をATPからチロシン残基へ転移する作用をし、そしてVEGFR−2の下流のシグナル伝達タンパク質のための結合部位を提供して、最終的に血管新生の開始に導く(マクマホン(McMahon,G.)、2000年、オンコロジスト(Oncologist、第5(90001)巻、p.3−10)。
血管新生は、血管新生因子と呼ばれる様々なサイトカインが媒介する新しい血管の形成の生理的過程である。固形腫瘍における血管新生の考えられる病態生理的役割は30年間以上にわたって広く研究されているが、慢性リンパ球性白血病(CLL)や他の悪性血液学的疾患における血管新生の増加は、より最近になってから認知されてきた。増加した血管新生レベルは、CLLの患者の骨髄およびリンパ節の両方で様々な実験的方法を使い実証されている。この疾病の病態生理における血管新生の役割は今後に十分な解明を待つが、実験データによっていくつかの血管新生因子が疾患進行に役割を果たすことを示唆されている。血管新生の生物学的マーカーもCLLの予後に関連があることが示された。これは、VEGFR阻害剤もCLLなどの白血病の患者に有益である可能性を示している。
JAK2はエリスロポイエチン(EPO)によって活性化される主要なチロシンキナーゼで、最終的な赤血球形成にとって不可欠である(パルガナス(Parganas)ら、セル(Cell)、1998年、93(3)385−95)。
JAK2活性の脱調節をもたらす点変異などのメカニズムによるJAK−STAT経路の構成的活性化は、リガンド非依存性の生存および過感受性をもたらすことが示されており、いくつかの白血病細胞タイプで観察されている(ラバイン(Levine)ら、2005年;イェリネック(Jelinek)、2005年;スタルク(Staerk)ら、2005年)。
チロシンキナーゼJAK2における活性化変異は、真性赤血球増加症、本態性血小板血症および骨髄様化生を伴う骨髄線維症中で観察されている(ラバイン(Levine)ら、キャンサーセル(Cancer Cell)、2005年、7、387−97)。JAK2変異の1849G>Tは急性白血病においては希であるが、CMML、フィラデルフィア染色体陰性CMLおよび巨核球性白血病で見られる(イェリネック(Jelinek)、ブラッド(Blood)2005年、106:3370−3)。慢性骨髄単球性白血病(CMML)には次の2つのタイプがある:CMMLと呼ばれる成人型、および若年性骨髄単球性白血病(JMML)あるいは若年型慢性骨髄性白血病(JCML)と呼ばれる小児白血病型である。CMML白血病には骨髄性白血病の特徴が見られる。CMMLは過去に骨髄異形成症候群(MDS)の一種として分類、言及されることがあった。CMMLは、“典型的な”慢性骨髄性白血病より急速に進行し、急性骨髄単球性白血病として知られている急性白血病の一種より緩やかに進行する。若年性骨髄単球性白血病は成人型CMMLといくつかの点で異なる。骨髄増殖性障害(MPD;(真性多血症、本態性血小板増加症、特発性骨髄線維症)患者の多く(>50%)は、JAK2のJH2キナーゼ様ドメインにドミナント機能獲得型V617F変異を有する。大多数の真性赤血球増加症(PV)患者は、構成的シグナル伝達をもたらす、JAK2のキナーゼ様ドメイン中の特有の体細胞変異(V617F)を有する(スタルク(Staerk)ら、ジャーナルオブバイオロジカルケミストリー(J.Biol.Chem)、10.1074/jbc.C500358200)。この変異は、キナーゼ活性の脱調節、そして構成的チロシンリン酸化活性をもたらす。別の研究ではV617F変異の発生率は、真性多血症では65〜97%、本態性血小板増加症患者では41〜57%、そして特発性骨髄線維症患者では23〜95%である。MPDにおける変異は、ほとんどの患者でヘテロ接合で起こり、マイナーな集団においてのみホモ接合的である。有糸分裂組み換えは恐らく9pのLOHおよびヘテロ接合性からホモ接合性への変化の両方を引き起こす。同一の変異は、Ph陰性異型CMLの約20%、CMMLの10%以上、巨核球性AML(AML M7)患者の約15%、および若年性骨髄単球性白血病(JMML)の1/5の患者でも見られた。V617F変異は、もっぱら骨髄性の造血性悪性腫瘍で生じるようである。
真性多血症(PV)、本態性血小板増加症(ET)および骨髄様化生を合併する骨髄線維症(MMM)を含む古典的なBCR/ABL陰性MPDにおける、JAK2の新規な体細胞点変異(コドン617でのバリンのフェニルアラニンへの置換をもたらすエキソン12のヌクレオチド1849におけるG−CからT−Aへのトランスバージョン;JAK2V617F)が記載されている(ブラッド(Blood)、2005年11月15日、第106巻、第10号、p.3335−3336)。JAK2V617Fの比較的高い発生率(PVでは65%〜97%、ETでは23%〜57%、そしてMMMでは35%〜57%)を報告した相次ぐ初期の研究に続き、はるかに低い変異頻度(3%〜33%)ではあったが、後の研究では異型MPDの範囲そして骨髄異形成症候群(MDS)で同一の変異の発生が示された。これら後の研究の1つでは、JAK2V617FならびにBCR/ABLおよびFIP1L1−PDGFRAを含む他の癌形成性キナーゼ変異は、相互排反事象であることが示された。
したがって、トポイソメラーゼ阻害剤、アルキル化薬、代謝拮抗物質、DNA結合剤、シスプラチン、シクロホスファミド、ドキソルビシン、イリノテカン、フルダラビンマイトマイシンCなどのDNA標的剤および放射線療法とCHK1/2の阻害とを組み合わせることは、現行の化学療法を回避する癌細胞により使用されるいくつかのメカニズムを克服できることで有益であると考えられる。
Chk2は同様に、二本鎖切断および毛細血管拡張性失調症変異キナーゼ(ATM)を介して、DNA損傷チェックポイントに重要な役割を果たす。したがって、Chk2阻害も、いくつかの化学療法剤から正常な感受性の組織を防御することができる。Chk1とChk2を標的とすることは、臨床において利用可能なDNA損傷剤の治療濃度域を著しく増加させる可能性がある。
FGFとそれらの受容体はいくつかの組織および細胞株で高レベルで発現し、過剰発現は悪性表現型の一因となると考えられる。更に、多くの癌遺伝子は増殖因子受容体をコードする遺伝子のホモログである。また、ヒト膵臓癌でのFGF依存性シグナル伝達の異常活性化を引き起こす可能性がある(オザワ(Ozawa)ら、催奇性発癌性変異(Teratog. Carcinog. Mutagen.)、21、27−44、2001年)。2つの原型のメンバーは、酸性線維芽細胞増殖因子(aFGFまたはFGF1)および塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGFまたはFGF2)である。また、現在まで、少なくとも20の異なるFGFファミリーメンバーが確認されている。FGFに対する細胞の反応は、1〜4(FGFR1〜FGFR4)と番号付けされた、4つのタイプの高親和性膜貫通型タンパク質チロシンキナーゼ線維芽細胞増殖因子受容体を介して伝達される。リガンド結合に際して、受容体は二量体化し、最終的に核転写因子エフェクターを調節する細胞内シグナルを伝達するために細胞質の特異的なチロシン残基を自己リン酸化もしくはトランスリン酸化する。
FGFR1は多くの腫瘍の型で活性化されるので、FGFR1経路の破壊は、内皮細胞増殖に加えて、腫瘍細胞増殖に影響するはずである。腫瘍に関連する血管系中のFGFR1の過剰発現および活性化は、腫瘍血管新生におけるこれらの分子の役割を示唆している。
線維芽細胞増殖因子受容体2は、酸性線維芽細胞増殖因子および/または塩基性線維芽細胞増殖因子に、そしてケラチノサイト増殖因子リガンドに対して、高親和性を有している。線維芽細胞増殖因子受容体2はまた、骨芽細胞の増殖および分化中にFGFの強力な骨形成作用を伝播する。複雑な機能的変化をもたらす線維芽細胞増殖因子受容体2の変異は、頭蓋縫合の異常骨化(頭蓋骨癒合症)を誘発することが示され、これは膜性骨形成におけるFGFRシグナル伝達の主要な役割を示唆している。例えば、早期の頭蓋縫合骨化で特徴付けられるアペール(AP)症候群では、ほとんどの症例は、機能獲得型線維芽細胞増殖因子受容体2を引き起こす点変異と関連がある(ルモニエ(Lemonnier)ら、ジャーナルオブボーンアンドミネラルリサーチ(J.Bone Miner.Res.)、16、832−845、(2001))。
アペール症候群、クルーゾン症候群、ジャクソン-ワイス症候群、ベーレ−スティーブンソン脳回状頭皮症候群およびパイフェル症候群を含むヒトの骨格発生でのいくつかの重篤な異常は、線維芽細胞増殖因子受容体2での変異の出現に関連性がある。パイフェル症候群(PS)の、すべてでないにしても、ほとんどの症例も、線維芽細胞増殖因子受容体2遺伝子のデノボ変異によって引き起こされ(マイヤーズ(Meyers)ら、アメリカンジャーナルオブヒューマンジェネティクス(Am.J.Hum.Genet.)、58、491−498、1996年;(プロンプ(Plomp)ら、アメリカンジャーナルオブメディカルジェネティクス(Am.J.Med.Genet.)、75、245−251、1998年)、また、線維芽細胞増殖因子受容体2中の変異がリガンド特異性を決定する基本的なルールの1つを犯すことが最近示された。すなわち、線維芽細胞増殖因子受容体の2つの変異によるスプライシング型(FGFR2cおよびFGFR2b)が、異型のFGFリガンドに結合しそして活性化される能力を獲得した。このリガンド特異性の損失は異常なシグナル伝達をもたらすとともに、これらの疾病症候群の重篤な表現型が線維芽細胞増殖因子受容体2の異所性のリガンド依存性活性化に起因することを示唆する(ユー(Yu)ら、米国科学アカデミー紀要(Proc.Natl.Acad.Sci.)、米国、97、14536−14541、2000)。
染色体転座あるいは点変異のようなFGFR3受容体チロシンキナーゼの遺伝的な異常は、異所的に発現するか脱調節された構成的に活性のあるFGFR3受容体に帰着する。そのような異常は、多発性骨髄腫の一部や、膀胱癌、肝細胞癌、口腔扁平細胞癌および子宮頚癌に関連している(パワーズ(POWERS,C.J.)ら、エンドクリン関連癌(Endocr.Rel.Cancer)、7、165、2000年);チウ(Qiu,W.)ら、ワールドジャーナルオブガストロエンテロロジー(World Journal Gastroenterol)、11(34)、2005年)。従って、FGFR3阻害剤は、多発性骨髄腫、膀胱癌および子宮頚癌の治療に役立つ。
それゆえ、FGFRを阻害する化合物は、特に血管新生の阻害により、新生物および腫瘍の増殖を阻害するあるいはアポトーシスを誘導する手段の提供に有益である。したがって、前記化合物は、癌のような増殖性疾患の治療または予防に役立つことが証明される。特に、受容体チロシンキナーゼの活性化変異体あるいは受容体チロシンキナーゼのアップレギュレーションを伴う腫瘍は、前記阻害剤に特に感受性がある可能性がある。本明細書で検討されている特異的なのRTKのアイソフォームのうちのいずれかの活性化変異体を有する患者にも、RTK阻害剤を使用した治療が特に有益である可能性がある。
FGFR4の過剰発現は、前立腺癌と甲状腺癌の両方の予後不良に関連付けられている(エザット(Ezzat,S.)ら、ジャーナルオブクリニカルインベスティゲーション(The Journal of Clinical Investigation)、109、1、2002年;ワン(Wang)ら、臨床癌研究(Clinical Cancer Research)、10、2004年)。さらに、生殖細胞系列多型(Gly388Arg)は、肺癌、乳癌、結腸癌および前立腺癌の罹患率増加に関連している(ワン(Wang)ら、臨床癌研究(Clinical Cancer Research)、10、2004年)。
最近の研究は、古典的小葉癌(CLC)においてFGFR1発現と癌形成性の関連性を示している。CLCは、乳癌全体の10〜15%を占めており、一般に、エストロゲン受容体の発現を保持する一方でp53およびHer2の発現を欠く。8p12〜p11.2の遺伝子増幅はCLC症例の〜50%で実証され、これはFGFR1の発現増加に関連することが示された。FGFR1に対するsiRNA、すなわち受容体の低分子阻害剤、の予備的研究は、この増幅を有する細胞株がこのシグナル伝達経路の阻害に特に感受性があること示した(レイス−フィルホ(Reis−Filho)ら、臨床癌研究(Clin.Cancer Res.)、2006年、12(22):6652−6662)。
線維化病態は、線維組織の異常蓄積もしくは過剰蓄積に起因する主要な医学的問題である。これは自然創傷治癒だけではなく、肝硬変、糸球体腎炎、肺線維症、全身性線維症、関節リウマチを含む、多くの疾病で生じる。病理学的な線維症のメカニズムは完全には理解されていないが、線維芽細胞の増殖および細胞外マトリックスタンパク質(コラーゲンとフィブロネクチンを含む)の沈着に関係する様々なサイトカイン(腫瘍壊死因子(TNF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)および形質転換増殖因子ベータ(TGFベータ)を含む)の作用に起因すると思われる。これは組織構造と組織機能および後の病状の変化をもたらす。
多くの前臨床試験は、肺線維症の前臨床モデルで線維芽細胞増殖因子のアップレギュレーションを実証した(イノウエ(Inoue)ら、1997&2002;バリオス(Barrios)ら、1997年))。TGFベータ1およびPDGFが繊維形成過程に関係することが報告され (アタマス(Atamas)およびホワイト(White)による総説、2003年)、さらなる出版済み研究は、FGFの上昇および結果としての線維芽細胞増殖の増加は高レベルのTGFベータ1に対する応答であることを示唆している(カリル(Khalil)ら、2005年)。線維症状態に対するこの経路の治療上の関連性の可能性は、特発性肺線維症(IPF)に対するピルフェニドンの報告された臨床効果によって示唆されている(アラタ(Arata)ら、2005年)。
特発性肺線維症(特発性間質性肺炎とも呼ばれる)は肺瘢痕性の進行性疾患である。徐々に、肺嚢が線維症の組織に置換され、厚くなり、組織の血流への酸素運搬能力は不可逆に失われる。この疾患の症状は息切れ、慢性の空咳、疲労、胸痛、および急速な体重減少をもたらす食欲不振を含む。この疾患は5年後の死亡率がおよそ50%とという非常に重篤なものである。
RET受容体チロシンキナーゼにおける変異は、様々な疾病での表現型不均一性の古典的な例を提供する。RETの機能獲得型変異はヒト癌に関連し、特に遺伝性および非遺伝性の甲状腺癌を引き起こす。RETのチロシンキナーゼドメインを非相同遺伝子パートナーに並列する遺伝子再配置は、散発性甲状腺乳頭癌(PTC)で見られる。これら再配置はキメラのRET/PTC癌遺伝子を生成する。生殖細胞系癌では、RETの点変異は、多発性内分泌腺腫2型(MEN2Aおよび2B)および家族性甲状腺髄様癌(FMTC)の原因である。MEN2変異およびPTC遺伝子再配置のいづれも、RETの内因性のチロシンキナーゼ活性を促進し、最終的に、RETの下流の標的を活性化する。
したがって、RETの体細胞遺伝子再配置は甲状腺乳頭癌(PTC)でみられ、生殖細胞系点変異は多発性内分泌腺腫(MEN)2A型および2Bならびに家族性甲状腺髄様癌(FMTC)でみられる。一方、機能欠損型変異は、腸神経系の先天性奇形である、ヒルシュスプルング病の成長の原因であるアサイナオヤ(Naoya Asai)ら、パソロジーインターナショナル(Pathology International)、第56巻、p.164、2006年4月)。
EphRTKおよびそれらのエフリンリガンドは胚の血管発生に重要な役割を果たす。特異的なEph受容体とリガンド(エフリン−B2を含む)を破壊すると、血管再構築、組織化および出芽に欠陥が生じ、その結果、胚の死をもたらす(ワン(Wang,H.U.)ら、セル(Cell)、93:741−753、1998年;アダムス(Adams,R.H.)ら、遺伝子と発生(Genes Dev.)、13、295−306、1999;ゲール(Gale)およびヤンコプーロス(Yancopoulos)、遺伝子と発生(Genes Dev.)、13、1055−1066、1999年;ヘルブリング(Helbling,P.M.)ら、発生(Development)、127、269−278、2000年)。Eph/エフリン系の協調発現は胚の血管構造の表現型を決定する、すなわちエフリン−B2は動脈の内皮細胞(EC)に存在し、EphB4は静脈のECに存在するゲール(Gale)およびヤンコプーロス(Yancopoulos)、遺伝子と発生(Genes Dev.)、13、1055−1066、1999、;シン(Shin,D.)ら、発生生物学(Dev.Biol.)、230、139−150、2001年)。最近になって、特異的なEphとエフリンが腫瘍増殖および血管新生に関連づけられている。
Ephおよびエフリンは、多くのヒト腫瘍で過剰発現することが分かっている。特に、小細胞肺癌(タン(Tang,X.X.)ら、臨床癌研究(Clin.Cancer Res.)、5、455-460 (1999))、ヒト神経芽腫(タン(Tang,X.X.)ら、臨床癌研究(Clin.Cancer Res.)、5,1491−1496、1999年)および結腸直腸癌(リュー(Liu,W.)ら、ブリティッシュジャーナルオブキャンサー(Brit.J.Canc.)、90、1620−1626、2004)でEphB2の役割が確認されており、EphB2をはじめEphおよびエフリンのより高い発現は、より侵攻性が高くより転移性が高い腫瘍と相関することが分かっている(ナカモト(Nakamoto,M.)およびベルゲマン(Bergemann,A.D.)、Microsc.Res.Tech.、59、58−67、2002)。
上述のように、様々な文献が色々な機構で作用する血管新生の阻害剤を教示しており、これらは、癌および転移(オライリー(O’Reilly)ら、セル(Cell)、第79巻、315、1994年;イングバー(Ingber)ら、ネイチャー(Nature)、348、555、1990年)、眼疾患(フリードランダー(Friedlander)ら、サイエンス(Science)、270、1500、1995年)、関節炎(ピーコック(Peacock)ら、ジャーナルオブエクスペリメンタルメディシン(J.Exp.Med.)、175、1135、1992年;(ピーコック(Peacock)ら、セルラーイミュノロジー(Cell.Immun.)、160、178、1995年)および血管腫(タラボレッティ(Taraboletti)ら、1995年、米国国立癌研究所誌(J.Natl.Cancer Inst.)、第87巻、p.293などの疾患に有益である。
EGFRチロシンキナーゼ活性を標的とする薬剤の例はチロシンキナーゼ阻害剤のゲフィチニブおよびエルロチニブを含む。4−(3−クロロ−4−フルオロアニリノ)−7−メトキシ−6−(3−モルフォリノプロポキシ)キナゾリンという化学名を有するゲフィチニブは非小細胞肺癌の治療に使用され、また乳癌と結腸直腸癌のようなEGF受容体を過剰発現する他の固形腫瘍向け開発中である。N−(3−エチニル−フェニル)−6,7−ビス(2−メトキシエトキシ)−4−キナゾリンという化学名を有するエルロチニブも非小細胞肺癌の治療に使用されており、また膵臓癌のような様々な他の固形腫瘍の治療のために開発中である。
腫瘍発生に重要な他の増殖因子は、細胞表面チロシンキナーゼ受容体(PDGFR)によってシグナル伝達し、成長、増殖および分化を含む様々な細胞機能を刺激するペプチド増殖因子のファミリーを含む血小板由来増殖因子(PDGF)である。PDGF発現はグリア芽腫および前立腺癌を含む多くの異なった固形腫瘍で実証されている。4−[(4−メチル−1−ピペラジニル)メチル]−N−[4−メチル−3−[[4−(3−ピリジニル)−2−イルピリジニル]アミノ]−フェニル]ベンズアミドメタンスルフォネートという化学名を有するチロシンキナーゼ阻害剤イマチニブメシレートは、Bcr−Abl癌タンパク質および細胞表面チロシンキナーゼ受容体c−Kitの活性を遮断し、それ自身、慢性骨髄性白血病と胃腸間質性腫瘍の治療のために承認されている。イマチニブメシレートはまたPDGFRキナーゼの強力な阻害剤で、慢性骨髄単球性白血病と多形性グリア芽腫においてPDGFR中での活性化変異の証拠に基づいて、慢性骨髄単球性白血病と多形性グリア芽腫の治療のために現在査定されている。さらに4−(4−(3−(4−クロロ−3(トリフルオロメチル)フェニル)ウレイド)フェノキシ)−N2−メチルピリジン−2−カルボキサミドという化学名を有するソラフェニブ(BAY43−9006)は細胞増殖を阻害するためにRafシグナル伝達経路および腫瘍血管新生を阻害するためにVEGFR/PDGFRシグナル伝達カスケードの両方を標的にする。ソラフェニブは、肝臓癌と腎臓癌を含む多くの癌の治療のために研究されている。
高好酸球症候群のようなPDGFRの活性化に依存する症状がある。PDGFR活性化は、慢性骨髄単球性白血病(CMML)を含む他の悪性腫瘍とも関連性がある。別の疾患、隆起性皮膚線維肉腫、浸潤性皮膚腫瘍では、PDGF−Bリガンドをコードする遺伝子が関与する相互転座は、キメラリガンドの構成的分泌および受容体活性化をもたらす。公知のPDGFR阻害剤であるイマチニブ、はこれら3つ疾病すべてに対して活性がある。
デュポン(DuPont)のWO02/34721には、サイクリン依存性キナーゼの阻害剤としてのある種のインデノ[1,2−c]ピラゾール−4−オンが開示されている。
ブリストルマイヤーズスクイブ(BristolMyersSquibb)のWO01/81348には、サイクリン依存性キナーゼ阻害剤としての5−チオ−、スルフィニル−およびスルホニルピラゾロ[3,4−b]−ピリジンの使用が記載されている。
またブリストルマイヤーズスクイブ(BristolMyersSquibb)のWO00/62778には、ある種のタンパク質チロシンキナーゼ阻害剤が開示されている。
サイクラセル(Cyclacel)のWO01/72745A1には、2−置換4−ヘテロアリール−ピリミジンおよびそれらの製造方法、それらを含有する医薬組成物、ならびにサイクリン依存性キナーゼ(CDK)の阻害剤としての前記化合物の使用、そして癌、白血病、乾癬などの増殖性疾患の治療における前記化合物の使用が記載されている。
アゴーロン(Agouron)のWO99/21845には、CDK1、CDK2、CDK4、およびCDK6などのサイクリン依存性キナーゼ(CDK)を阻害するための4−アミノチアゾール誘導体が記載されている。この発明はまた、そのような化合物を含有する医薬組成物の治療的使用または予防的使用、ならびにそのような化合物の有効量を投与することによる悪性腫瘍および他の疾患の治療方法をも対象としている。
アゴーロン(Agouron)のWO01/53274には、窒素含有へテロ環基に結合したアミド置換ベンゼン環を含みうる特定の種類の化合物をCDKキナーゼ阻害剤として開示している。
WO01/98290(ファーマコピアアンドアップジョン(Pharmacia&Upjohn))には、タンパク質キナーゼ阻害剤としての、ある種の3−アミノカルボニル−2−カルボキサミドチオフェン誘導体が開示されている。これらの化合物は複数のタンパク質キナーゼ活性を有すると記載されている。
アゴーロン(Agouron)のWO01/53268およびWO01/02369には、サイクリン依存性キナーゼまたはチロシンキナーゼなどのタンパク質キナーゼの阻害により細胞増殖を媒介または阻害する化合物が開示されている。これらAgouronの化合物は、直接的またはCH=CHもしくはCH=N基を介してインダゾール環の3位と結合したアリールまたはヘテロアリール環を有する。
WO00/39108およびWO02/00651(いずれもデュポンファーマシューティカルズ(DuPontPharmaceuticals)は、トリプシン様セリンプロテアーゼ酵素、特に第Xa因子およびトロンビンの阻害剤である広範な種の複素環式化合物を記載している。これらの化合物は抗凝固薬として、または血栓塞栓性疾患の予防に有用であるとされている。
また、第Xa因子に対して活性を有する複素環式化合物がUS2002/0091116(シュウ(Zhu)ら)、WO01/1978およびWO01/64642にそれぞれ開示されている。
WO03/035065(アベンティス(Aventis))は、タンパク質キナーゼ阻害剤として広範な種のベンゾイミダゾール誘導体を開示しているが、CDKキナーゼまたはGSKキナーゼに対する活性に関しては開示していない。
WO97/36585およびUS5,874,452(いずれもメルク(Merck))は、ファルネシルトランスフェラーゼの阻害剤である二ヘテロアリール化合物を開示している。
WO2004/54515(スミスクラインビーチャム(SmithKlineBeechamCorporation))は、トロンボポイエチン模倣薬としてある種のベンゾイミダゾールを開示している。
発明の概要
第一の態様では、本発明は、下記のものの予防または治療用薬剤の製造のための化合物の使用を提供する:
A.BCR−abl、VEGFR、PDGFR、EGFR、Flt3、JAK(例えば、JAK2もしくはJAK3)、C−abl、PDK1、Chk(例えば、Chk1もしくはChk2)、FGFR(例えば、FGFR3)、Ret、Eph(例えば、EphB2もしくはEphB4)またはSrc(例えば、cSrc)であるキナーゼが媒介する病態または症状;あるいは
B.癌細胞が:
(a)スレオニンゲートキーパー変異;または
(b)薬剤耐性ゲートキーパー変異;または
(c)イマチニブ耐性変異;または
(d)ニロチニブ耐性変異;または
(e)ダサチニブ耐性変異;または
(f)KITにおけるT670I変異;または
(g)PDGFRにおけるT674I変異;または
(h)EGFRにおけるT790M変異;または
(i)ablにおけるT315I変異;
である薬剤耐性キナーゼ変異を含む癌;あるいは
C.BCRabl、c−kit、PDGF、EGF受容体またはErbB2の変異型である変異分子標的を発現する癌;あるいは
D.他の抗癌剤と結合または相互作用するが式(I)または(I´)の化合物と結合または相互作用をしないタンパク質の領域に変異を有するキナーゼ、例えばc−abl、c−kit、PDGFRベータおよびPDGFRアルファを含むPDGFRならびに,EGFR(ErbBl)、HER2(ErbB2)、ErbB3およびErbB4などのErbBフェミリーのメンバー、ならびにEphA1、EphA2、EphA3、EphA4、EphA5、EphA8、EphA10、EphB1、EphB2、EphB3、EphB5、EphB6などのエフリン受容体ファミリーのメンバー、c−Src、ならびにTYK2などのJAKファミリーのキナーゼから選ばれる変異キナーゼ、が媒介する疾病で;
前記化合物は、
I.式(I)の化合物:
〔式中、
X´は、CR
5´またはNであり;
A´は、結合または−(CH
2)
m−(B´)
n−であり;
B´は、C=O、NR
g(C=O)またはO(C=O)であり、ここで、R
gは、水素、またはヒドロキシもしくはC
1−4アルコキシで置換されていてもよいC
1−4ヒドロカルビルであり;
mは、0、1または2であり;
nは、0または1であり;
R
0´は、水素であるか、または存在する場合にはNR
gと一緒になって−(CH
2)
p−基、ここでpは2〜4である、を形成し;
R
1´は、水素、3〜12環員を有する炭素環式基もしくは複素環式基、または置換されていてもよいC
1−8ヒドロカルビル基であり;
R
2´は、水素、ハロゲン、メトキシ、またはハロゲン、ヒドロキシルもしくはメトキシで置換されていてもよいC
1−4ヒドロカルビル基であり;
R
3´およびR
4´は、これらが結合している炭素原子と一緒になって、このうち3個までがN、OおよびSから選ばれるヘテロ原子であり得る5〜7環員を有する、置換されていてもよい縮合炭素環式環または複素環式環を形成し;
R
5´は、水素、R
2´基またはR
10´基であり、ここで、R
10´は、ハロゲン、ヒドロキシ、トリフルオロメチル、シアノ、ニトロ、カルボキシ、アミノ、モノ−またはジ−C
1−4ヒドロカルビルアミノ、3〜12環員を有する炭素環式基および複素環式基、R
a−R
b基であり、ここで、R
aは、結合、O、CO、X
1C(X
2)、C(X
2)X
1、X
1C(X
2)X
1、S、SO、SO
2、NR
c、SO
2NR
cまたはNR
cSO
2であり;R
bは、水素、3〜12環員を有する炭素環式基および複素環式基、ならびにヒドロキシ、オキソ、ハロゲン、シアノ、ニトロ、カルボキシ、アミノ、モノ−またはジ−C
1−4ヒドロカルビルアミノ、3〜12環員を有する炭素環式基および複素環式基から選ばれる1以上の置換基で置換されていてもよいC
1−8ヒドロカルビル基から選ばれ、前記C
1−8ヒドロカルビル基の1以上の炭素原子はO、S、SO、SO
2、NR
c、X
1C(X
2)、C(X
2)X
1またはX
1C(X
2)X
1で置き換えられていてもよく;
R
cは、水素およびC
1−4ヒドロカルビルから選ばれ;
X
1は、O、SまたはNR
cであり、X
2は=O、=Sまたは=NR
cである〕
またはその塩、溶媒和物、互変異性体もしくはN−オキシドであるか、あるいは
II.前記化合物は式(I´)で表される化合物:
〔式中、
MはD1基およびD2基:
から選ばれ、そして:
(A)MはD1基の場合:
XはO、NHおよびNCH
3から選ばれ;
Aは結合およびNR
2から選ばれ、R
2は水素またはメチルであり;
Eは、結合、CH
2、CH(CN)およびC(CH
3)
2から選ばれ;
R
1は下記のものから選ばれる:
(i)ヒドロキシ、フッ素、アミノ、メチルアミノ、メチルまたはエチルにより置換されていてもよい3〜5個の環員を有するシクロアルキル基;
(ii)O、N、SおよびSO
2から選ばれる1もしくは2のヘテロ原子環員を有する4〜6個の環員を有する飽和複素環基(前記複素環基はC
1−4アルキル、アミノまたはヒドロキシで置換されていてもよいが、非置換4−モルホリニル、非置換テトラヒドロピラン−4−イル、非置換2−ピロリジニル、および非置換そして1−置換ピペリジン−4−イルを除く);
(iii)下記式で表される2,5−置換フェニル基:
(式中、(a)XがNHあるいはN−CH
3の場合、R
3は塩素およびシアノから選ばれ、(b)XがOの場合、R
3はCNである);
(iv)CR
6R
7R
8で表される基(R
6及びR
7はそれぞれ水素およびメチルから選ばれ、R
8は、水素、メチル、C
1−4アルキルスルホニルメチル、ヒドロキシメチルおよびシアノから選ばれる);
(v)メチル、エチル、メトキシおよびエトキシから選ばれる1あるいは2個の置換基に置換されてもよいピリダジン−4−イル基;
(vi)置換基がメチル、エチル、アミノ、フッ素、塩素、アミノおよびメチルアミノから選ばれる、置換イミダゾチアゾール基;
(vii)置換されていてもよい1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イルあるいは置換されていてもよい2,3−ジヒドロ−インドール−1−イル基(各々の場合の置換基はハロゲン、シアノ、アミノ、C
1−4モノ−またはジアルキルアミノ、CONH
2またはCONH−C
1−4アルキル、C
1−4アルキルおよびC
1−4アルコキシから選ばれ、前記C
1−4アルキルおよびC
1−4アルコキシ基は、ヒドロキシ、メトキシまたはアミノで置換されていてもよい);
(viii)ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、アミノ、C
1−4モノ−およびジアルキルアミノ、CONH
2またはCONH−C
1−4アルキル、C
1−4アルキルならびにC
1−4アルコキシから選ばれる1または2個の置換基により置換されていてもよい3−ピリジル(前記C
1−4アルキルならびにC
1−4アルコキシ基は、ヒドロキシ、メトキシまたはアミノで置換されていてもよいが、2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−カルボン酸[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−(ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル)−アミドおよび2,6−ジメトキシ−N−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−ニコチンアミドを除く);
(ix)ハロゲン、シアノ、アミノ、C
1−4モノ−またはジアルキルアミノ、CONH
2またはCONH−C
1−4アルキル、C
1−4アルキルおよびC
1−4アルコキシから選ばれる1または2個の置換基により置換されていてもよいチオモルホリンあるいはそのS−オキシドまたはS,S−ジオキシド(前記C
1−4アルキルおよびC
1−4アルコキシ基は、ヒドロキシ、メトキシまたはアミノで置換されていてもよい);
また、E−AがNR
2の場合、R
1はさらに下記から選ばれる:
(x)2−フルオロフェニル、3−フルオロフェニル、4−フルオロフェニル、2,4−ジフルオロフェニル、3,4−ジフルオロフェニル、2,5−ジフルオロフェニル、3,5−ジフルオロフェニル、2,4,6−トリフルオロフェニル、2−メトキシフェニル、5−クロロ−2−メトキシフェニル、シクロヘキシル、非置換4−テトラヒドロピラニル、およびtert−ブチル;
(xi)NR
10R
11で表される基(R
10およびR
11はそれぞれC
1−4アルキルあるいはR
10およびR
11は結合してNR
10R
11がO、N、SおよびSO
2から選ばれる第2のヘテロ原子環員を含んでいてもよい4〜6個の環員を有する飽和複素環基を形成し、前記複素環基がC
1−4アルキル、アミノまたはヒドロキシで置換されていてもよい);
(xii)ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、アミノ、C
1−4モノ−およびジアルキルアミノ、CONH
2、CONH−C
1−4アルキル、C
1−4アルキルならびにC
1−4アルコキシから選ばれる1または2個の置換基により置換されていてもよいピリドン(前記C
1−4アルキルならびにC
1−4アルコキシ基は、ヒドロキシ、メトキシまたはアミノで置換されていてもよい);
E−AがC(CH
3)
2NR
2あるいはCH
2−NR
2の場合、R
1はさらに下記から選ばれる:
(xiii)非置換2−フリルおよび2,6−ジフルオロフェニル;また
E−AがC(CH
3)
2NR
2の場合、R
1はさらに下記から選ばれる:
(xiv)非置換フェニル;また
EがCH
2の場合、R
1はさらに下記から選ばれる:
(xv)非置換テトラヒドロピラン−4−イル;そして
(B)MがD2基である場合:
Aは結合またはNR
2基から選ばれ、R
2は水素またはメチルであり;
Eは結合、CH
2、CH(CN)およびC(CH
3)
2から選ばれ;
R
1は下記から選ばれる:
(xvi)下記式で表される2−置換3−フリル基:
(式中、R
4およびR
5同一または異なって水素およびC
1−4アルキルから選ばれる、あるいはR
4およびR
5は結合しておりNR
4R
5がO、NH、NMe、SまたはSO
2から選ばれる第2のヘテロ原子を有してもよい5または6員の飽和複素環基を形成し、前記飽和5または6員複素環基はヒドロキシ、フッ素、アミノ、メチルアミノ、メチルまたはエチルにより置換されていてもよい);
(xvii)下記式で表される5−置換2−フリル基:
(式中、R
4およびR
5同一または異なって水素およびC
1−4アルキルから選ばれる、あるいはR
4およびR
5は結合しておりNR
4R
5がO、NH、NMe、SまたはSO
2から選ばれる第2のヘテロ原子を有してもよい5または6員の飽和複素環基を形成し、前記飽和5または6員複素環基はヒドロキシ、フッ素、アミノ、メチルアミノ、メチルまたはエチルにより置換されていてもよい、ただし、前記化合物が5−ピペリジン−1−イルメチル−フラン−2−カルボン酸[3−(5,6−ジメトキシ−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−アミドではない);
(xviii)下記式で表される基:
(式中、R
9は水素、メチル、エチルまたはイソプロピルであり;Gは、CH、O、S、SO、SO
2またはNHであり、前記基はC
1−4ヒドロカルビル、ヒドロキシ、C
1−4ヒドロカルビルオキシ、フッ素、アミノ、モノ−およびジ−C
1−4アルキルアミノから選ばれる1、2または3個の置換基により置換されていてもよく、前記C
1−4ヒドロカルビルおよびC
1−4ヒドロカルビルオキシ基はそれぞれ、ヒドロキシ、フッ素、アミノ、モノ−またはジ−C
1−4アルキルアミノで置換されていてもよい);そして
(xix)下記式で表される3,5−二置換フェニル基:
(式中、XはO、NHおよびNCH
3から選ばれる);ならびに
(C)MがD1基の場合:
XはOであり;AはNR
2であり、ここでR
2は水素である;Eは結合であり;R
1は2,6−ジフルオロフェニルであり;したがって、式(I)の化合物は下記から選ばれた酸と形成された塩から選ばれる酸付加塩である:酢酸、アジピン酸、アルギン酸、アスコルビン酸(例えば、L−アスコルビン酸)、アスパラギン酸(例えば、L−アスパラギン酸)、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、ショウノウ酸(例えば、(+)ショウノウ酸)、カプリン酸、カプリル酸、炭酸、クエン酸、シクラミン酸、ドデカン酸、ドデシル硫酸、エタン−1,2−二スルホン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、ガラクタル酸、ゲンチジン酸、グルコヘプトン酸、D−グルコン酸、グルクロン酸(例えば、D−グルクロン酸)、グルタミン酸(例えば、L−グルタミン酸)、アルファ−オキソグルタル酸、グリコール酸、馬尿酸、塩酸、イセチオン酸、イソ酪酸、乳酸(例えば(+)−L−乳酸および(±)−DL乳酸)、ラクトビオン酸、ラウリルスルホン酸、マレイン酸、リンゴ酸、(−)−L−リンゴ酸、マロン酸、メタンスルホン酸、ムチン酸、ナフタレンスルホン酸(例えば、ナフタレン−2−スルホン酸、ナフタレン−1,5−二スルホン酸、ニコチン酸、オレイン酸、オロチン酸、シュウ酸、パルミチン酸、パモ酸、リン酸、プロピオン酸、セバシン酸、ステアリン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸(例えば、(+)−L−酒石酸)、チオシアン酸、トルエンスルホン酸(例えば、p−トルエンスルホン酸)、吉草酸およびキナホイック酸〕
またはその塩、溶媒和物、互変異性体もしくはN−オキシドである。
式(I)の化合物は、我々の先の出願PCT/GB2004/002824(WO2005/002552)で開示された式(I)の化合物に相当する。これら文献の内容は参照によりに本書に援用される。式(I´)中の基X´、A´、B´、R0´、R1´、R2´、R3´、R4´およびR5´はPCT/GB2004/002824の式(I)中の基X、A、B、R0、R1、R2、R3、R4およびR5に相当する。
式(I)の具体的な化合物は、PCT/GB2004/002824(WO 2005/002552)に定義されている式(I)のサブグループ、実施態様および実施例の化合物である。
式(I´)の化合物は、我々の国際特許出願番号PCT/GB2005/005097(WO 2006/070195)に開示された式(I´)の化合物に相当する。この文献の内容は参照によりに本書に援用される。
式(I´)の具体的な化合物は、PCT/GB2005/005097(WO 2006/070195)に定義されている式(I)のサブグループ、実施態様および実施例の化合物である。
さらなる態様では、本発明は以下のものを提供する:
BCR−abl、VEGFR、PDGFR、EGFR、Flt3、JAK(例えば、JAK2またはJAK3)、C−abl、PDK1、Chk(例えば、Chk1またはChk2)、FGFR(例えば、FGFR3)、Ret、Eph(例えば、EphB2またはEphB4)あるいはSrc(例えば、cSrc)であるキナーゼが媒介する病態または症状の予防または治療用薬剤の製造のための、本明細書で定義されている式(I)および(I´)の化合物あるいはそのサブグループ、個々の種、塩または結晶形態の使用。
BCR−abl、VEGFR、Flt3、JAK、C−abl、PDK1、Chk1、FGFR(例えば、FGFR3)、Ret、Eph(例えば、EphB2またはEphB4)あるいはSrcであるキナーゼが媒介する病態または症状の予防または治療用薬剤の製造のための、本明細書で定義されている式(I)および(I´)の化合物あるいはそのサブグループ、個々の種、塩または結晶形態の使用。
BCR−ablに起因する悪性腫瘍の病態または症状の治療または予防用薬剤の製造のための、本明細書で定義されている式(I)および(I´)の化合物あるいはそのサブグループ、個々の種、塩または結晶形態の使用。
BCR−ablに起因する悪性腫瘍の病態または症状の治療または予防用薬剤の製造のための、本明細書で定義されている式(I)および(I´)の化合物あるいはそのサブグループ、個々の種、塩または結晶形態の使用であって、前記悪性腫瘍がフィラデルフィア染色体陽性の悪性腫瘍、例えば、フィラデルフィア染色体陽性CMLおよびフィラデルフィア染色体陽性ALLなどのフィラデルフィア染色体陽性白血病ならびに骨髄増殖性症候群から選ばれる。
VEGFRが媒介する病態または症状の治療または予防用薬剤の製造のための、本明細書で定義されている式(I)および(I´)の化合物あるいはそのサブグループ、個々の種、塩または結晶形態の使用。
VEGFRが媒介する病態または症状の治療または予防用薬剤の製造のための、本明細書で定義されている式(I)および(I´)の化合物あるいはそのサブグループ、個々の種、塩または結晶形態の使用であって、前記病態または症状は加齢黄斑変性症(例えば、湿潤型加齢黄斑変性症);虚血性増殖性網膜症(例えば、未熟児網膜症(ROP)および糖尿病性網膜症);および血管腫から選ばれる病態および症状などの眼疾患または症状である。
Flt3、JAK、C−abl、PDK1、Chk1またはChk2であるキナーゼが媒介する病態または症状の治療または予防用薬剤の製造のための、本明細書で定義されている式(I)および(I´)の化合物あるいはそのサブグループ、個々の種、塩または結晶形態の使用。
Flt3、JAK、C−abl、PDK1、Chk1またはChk2であるキナーゼが媒介する病態または症状の治療または予防用薬剤の製造のための、本明細書で定義されている式(I)および(I´)の化合物あるいはそのサブグループ、個々の種、塩または結晶形態の使用であって、前記病態または症状が真性多血症、本態性血小板増加症、特発性骨髄線維症、若年性骨髄単球性白血病(JMML)、慢性骨髄単球性白血病(CMML)、巨核球性白血病、巨核球性AML(AML M7)、フィラデルフィア染色体陰性CMLおよびイマチニブ耐性CMLから選ばれる1つまたは複数の疾病または症状(どのような組み合わせでもよい)である。
Flt3、JAK、C−abl、PDK1、Chk1またはChk2であるキナーゼが媒介する病態または症状の治療または予防用薬剤の製造のための、本明細書で定義されている式(I)および(I´)の化合物あるいはそのサブグループ、個々の種、塩または結晶形態の使用であって、前記病態または症状が真性多血症、本態性血小板増加症および骨髄様化生(MMM)を伴う骨髄線維症を含む特発性骨髄線維症のような骨髄増殖性障害(MPD)から選ばれる。
FGFR(例えば、FGFR3)、Ret、Eph(例えば、EphB2またはEphB4)あるいはcSrcであるキナーゼが媒介する病態または症状の治療または予防用薬剤の製造のための、本明細書で定義されている式(I)および(I´)の化合物あるいはそのサブグループ、個々の種、塩または結晶形態の使用。
FGFR(例えば、FGFR3)、Ret、Eph(例えば、EphB2またはEphB4)あるいはcSrcであるキナーゼが媒介する病態または症状の治療または予防用薬剤の製造のための、本明細書で定義されている式(I)および(I´)の化合物あるいはそのサブグループ、個々の種、塩または結晶形態の使用であって、前記病態または症状が甲状腺乳頭癌、多発性内分泌腺腫(MEN)2A型および2B型、家族性甲状腺髄様癌(FMTC)、ヒルシュスプルング病、アペール(AP)症候群、クルーゾン症候群、ジャクソン−ワイス症候群、ベーレ−スティーブンソン脳回状頭皮症候群、パイフェル症候群(PS)、多発性骨髄腫、頭頸部癌および上皮癌から(どのような組み合わせでもよく)選ばれる。
FGFR(例えば、FGFR3)、Ret、Eph(例えば、EphB2またはEphB4)あるいはcSrcであるキナーゼが媒介する病態または症状の治療または予防用薬剤の製造のための、本明細書で定義されている式(I)および(I´)の化合物あるいはそのサブグループ、個々の種、塩または結晶形態の使用であって、前記病態または症状がアペール(AP)症候群、クルーゾン症候群、ジャクソン―ワイスの症候群、ベーレ―スティーブンソン脳回状頭皮症候群およびパイフェル症候群(PS)などのヒトの骨格発生異常から選ばれる。
FGFR(例えば、FGFR3)、Ret、Eph(例えば、EphB2またはEphB4)あるいはcSrcであるキナーゼが媒介する病態または症状の治療または予防用薬剤の製造のための、本明細書で定義されている式(I)および(I´)の化合物あるいはそのサブグループ、個々の種、塩または結晶形態の使用であって、前記病態または症状が甲状腺乳頭癌、家族性甲状腺髄様癌(FMTC)、多発性内分泌腺腫(MEN)2A型および2B型などの甲状腺癌から選ばれる。
癌細胞が:
(a)スレオニンゲートキーパー変異;または
(b)薬剤耐性ゲートキーパー変異;または
(c)イマチニブ耐性変異;または
(d)ニロチニブ耐性変異;または
(e)ダサチニブ耐性変異;または
(f)KITにおけるT670I変異;または
(g)PDGFRにおけるT674I変異;または
(h)EGFRにおけるT790M変異;または
(i)ablにおけるT315I変異、
である薬剤耐性キナーゼ変異を含む癌の治療または予防用薬剤の製造のための、本明細書で定義されている式(I)および(I´)の化合物あるいはそのサブグループ、個々の種、塩または結晶形態の使用。
癌細胞が:
(a)スレオニンゲートキーパー変異;または
(b)薬剤耐性ゲートキーパー変異;または
(c)T315Iイマチニブ耐性変異;または
(d)KITにおけるT670I変異;または
(e)PDGFRにおけるT674I変異;または
(f)EGFRにおけるT790M変異、
である薬剤耐性キナーゼ変異を含む癌の治療または予防用薬剤の製造のための、本明細書で定義されている式(I)および(I´)の化合物あるいはそのサブグループ、個々の種、塩または結晶形態の使用。
癌細胞が:
(a)スレオニンゲートキーパー変異;または
(b)薬剤耐性ゲートキーパー変異;または
(c)T315Iイマチニブ耐性変異;または
(d)KITにおけるT670I変異;または
(e)PDGFRにおけるT674I変異、
である薬剤耐性キナーゼ変異を含む癌の治療または予防用薬剤の製造のための、本明細書で定義されている式(I)および(I´)の化合物あるいはそのサブグループ、個々の種、塩または結晶形態の使用。
癌細胞が:
(a)スレオニンゲートキーパー変異;または
(b)薬剤耐性ゲートキーパー変異;または
(c)イマチニブ耐性変異;または
(d)ニロチニブ耐性変異;または
(e)ダサチニブ耐性変異;または
(f)KITにおけるT670I変異;または
(g)PDGFRにおけるT674I変異;または
(h)EGFRにおけるT790M変異;または
(i)ablにおけるT315I変異、
である薬剤耐性キナーゼ変異を含む癌の治療または予防用薬剤の製造のための、本明細書で定義されている式(I)および(I´)の化合物あるいはそのサブグループ、個々の種、塩または結晶形態の使用であって、前記薬剤は、胃腸間質性腫瘍(GIST)、慢性骨髄単球性白血病(CMML)、高好酸球症候群および隆起性皮膚線維肉腫の1つまたは複数(どのような組み合わせでもよい)の治療または予防用である。
癌細胞が:
(c)イマチニブ耐性変異;または
(d)ニロチニブ耐性の変異;または
(e)ダサチニブ耐性の変異、
である薬剤耐性キナーゼ変異を含む癌の治療または予防用薬剤の製造のための、本明細書で定義されている式(I)および(I´)の化合物あるいはそのサブグループ、個々の種、塩または結晶形態の使用であって、前記薬剤は、ニロチニブ耐性、ダサチニブ耐性またはイマチニブ耐性CMLの治療または予防用である。
BCRabl、c−kit、PDGF、EGF受容体またはErbB2の変異型である変異分子標的を発現する癌の治療または予防用薬剤の製造のための、本明細書で定義されている式(I)および(I´)の化合物あるいはそのサブグループ、個々の種、塩または結晶形態の使用。
他の抗癌剤と結合または相互作用するが式(I)または(I´)の化合物と結合または相互作用をしないタンパク質の領域に変異を有するキナーゼ、例えばc−abl、c−kit、PDGFRベータおよびPDGFRアルファを含むPDGFRならびに,EGFR(ErbBl)、HER2(ErbB2)、ErbB3およびErbB4などのErbBフェミリーのメンバー,ならびにEphA1、EphA2、EphA3、EphA4、EphA5、EphA8、EphA10、EphB1、EphB2、EphB3、EphB5、EphB6などのエフリン受容体ファミリーのメンバー、c−Src、ならびにTYK2などのJAKファミリーのキナーゼから選ばれる変異キナーゼ、が媒介する疾病の治療または予防用薬剤の製造のための、本明細書で定義されている式(I)および(I´)の化合物あるいはそのサブグループ、個々の種、塩または結晶形態の使用。
下記から選択される疾病および症状の1つまたは複数(どのような組み合わせでもよい)の予防または治療用薬剤の製造のための請求項1〜106のいずれか一項の中で定義された化合物の使用:
眼疾患あるいは症状(加齢黄斑変性症[例えば、湿潤型加齢黄斑変性症];虚血性増殖性網膜症[例えば、未熟児網膜症(ROP)および糖尿病性網膜症];および血管腫);骨髄増殖性障害(MPD)(真性多血症、本態性血小板増加症および骨髄様化生(MMM)を伴う骨髄線維症を含む特発性骨髄線維症など);若年性骨髄単球性白血病(JMML);慢性骨髄単球性白血病(CMML);巨核球性白血病(巨核球性AML(AML M7)を含む);フィラデルフィア染色体陰性CML;イマチニブ耐性CML;ニロチニブ耐性CML;ダサチニブ耐性CML;胃腸間質性腫瘍(GIST);多形性グリア芽腫、慢性骨髄単球性白血病(CMML)などのグリア芽腫;高好酸球症候群;隆起性皮膚線維肉腫;フィラデルフィア染色体陽性悪性腫瘍(例えば、フィラデルフィア染色体陽性CMLおよびフィラデルフィア染色体陽性ALLなどのフィラデルフィア染色体陽性白血病);骨髄増殖性症候群;多発性骨髄腫、上皮癌、頭頸部癌、ヒトの骨格発生異常(アペール(AP)症候群、クルーゾン症候群、ジャクソン−ワイス症候群、ベーレ−スティーブンソン脳回状頭皮症候群、パイフェル症候群(PS)など)、甲状腺癌(甲状腺乳頭癌、家族性甲状腺髄様癌(FMTC)、多発性内分泌腺腫(MEN)2A型および2B型など);およびヒルシュスプルング病。
下記から選択される疾病および症状の1つまたは複数(どのような組み合わせでもよい)の予防または治療用薬剤の製造のための本明細書で定義されている式(I)および(I´)の化合物あるいはそのサブグループ、個々の種、塩または結晶形態の使用:
眼疾患あるいは症状(加齢黄斑変性症[例えば、湿潤型加齢黄斑変性症];虚血性増殖性網膜症[例えば、未熟児網膜症(ROP)および糖尿病性網膜症];および血管腫);骨髄増殖性障害(MPD)(真性多血症、本態性血小板増加症および骨髄様化生(MMM)を伴う骨髄線維症を含む特発性骨髄線維症など);若年性骨髄単球性白血病(JMML);慢性骨髄単球性白血病(CMML);巨核球性白血病(巨核球性AML(AML M7)を含む);フィラデルフィア染色体陰性CML;イマチニブ耐性CML;胃腸間質性腫瘍(GIST);多形性グリア芽腫、慢性骨髄単球性白血病(CMML)などのグリア芽腫;高好酸球症候群;隆起性皮膚線維肉腫;フィラデルフィア染色体陽性悪性腫瘍(例えば、フィラデルフィア染色体陽性CMLおよびフィラデルフィア染色体陽性ALLなどのフィラデルフィア染色体陽性白血病);骨髄増殖性症候群;多発性骨髄腫、上皮癌、頭頸部癌、ヒトの骨格発生異常(アペール(AP)症候群、クルーゾン症候群、ジャクソン−ワイス症候群、ベーレ−スティーブンソン脳回状頭皮症候群、パイフェル症候群(PS)など)、甲状腺癌(甲状腺乳頭癌、家族性甲状腺髄様癌(FMTC)、多発性内分泌腺腫(MEN)2A型および2B型など);およびヒルシュスプルング病。
加齢黄斑変性症(例えば、湿潤型加齢黄斑変性症);虚血性増殖性網膜症(例えば、未熟児網膜症(ROP)および糖尿病性網膜症);および血管腫などの眼疾患あるいは症状の1つまたは複数(どのような組み合わせでもよい)の予防または治療用薬剤の製造のための本明細書で定義されている式(I)および(I´)の化合物あるいはそのサブグループ、個々の種、塩または結晶形態の使用。
真性多血症、本態性血小板増加症および骨髄様化生(MMM)を伴う骨髄線維症を含む特発性骨髄線維症などの骨髄増殖性障害(MPD);若年性骨髄単球性白血病(JMML);慢性骨髄単球性白血病(CMML);巨核球性AML(AML M7)を含む巨核球性白血病;フィラデルフィア染色体陰性CML;およびイマチニブ耐性CMLから選ばれる1つまたは複数(どのような組み合わせでもよい)の疾病または症状の予防または治療用薬剤の製造のための本明細書で定義されている式(I)および(I´)の化合物あるいはそのサブグループ、個々の種、塩または結晶形態の使用。
BCR−abl、特にフィラデルフィア染色体陽性悪性腫瘍、例えば、フィラデルフィア染色体陽性CMLおよびフィラデルフィア染色体陽性ALLなどのフィラデルフィア染色体陽性白血病によりもたらされた悪性腫瘍の治療または予防用薬剤の製造のための本明細書で定義されている式(I)および(I´)の化合物あるいはそのサブグループ、個々の種、塩または結晶形態の使用。
骨髄増殖性症候群の治療または予防用薬剤の製造のための本明細書で定義されている式(I)および(I´)の化合物あるいはそのサブグループ、個々の種、塩または結晶形態の使用。
アペール(AP)症候群、クルーゾン症候群、ジャクソン−ワイス症候群、ベーレ−スティーブンソン脳回状頭皮症候群およびパイフェル症候群(PS)などのヒトの骨格発生異常、甲状腺乳頭癌、家族性甲状腺髄様癌(FMTC)、多発性内分泌腺腫(MEN)2A型および2B型などの甲状腺癌ならびにヒルシュスプルング病から選ばれる1つまたは複数(どのような組み合わせでもよい)の疾病または症状の治療または予防用薬剤の製造のための本明細書で定義されている式(I)および(I´)の化合物あるいはそのサブグループ、個々の種、塩または結晶形態の使用。
胃腸間質性腫瘍(GIST);多形性グリア芽腫、慢性骨髄単球性白血病(CMML)などのグリア芽腫;高好酸球症候群;および隆起性皮膚線維肉腫から選ばれる病態または症状の治療または予防用薬剤の製造のための本明細書で定義されている式(I)および(I´)の化合物あるいはそのサブグループ、個々の種、塩または結晶形態の使用。
イマチニブ耐性CML、ニロチニブ耐性CMLおよびダサチニブ耐性CMLから選ばれる病態または症状の治療または予防用薬剤の製造のための本明細書で定義されている式(I)および(I´)の化合物あるいはそのサブグループ、個々の種、塩または結晶形態の使用。
イマチニブ耐性CMLの治療または予防用薬剤の製造のための本明細書で定義されている式(I)および(I´)の化合物あるいはそのサブグループ、個々の種、塩または結晶形態の使用。
骨髄様化生(MMM)を伴う骨髄線維症の治療または予防用薬剤の製造のための本明細書で定義されている式(I)および(I´)の化合物あるいはそのサブグループ、個々の種、塩または結晶形態の使用。
下記ものの予防または治療方法:
A.BCR−abl、VEGFR、PDGFR、EGFR、Flt3、JAK(例えば、JAK2もしくはJAK3)、C−abl、PDK1、Chk(例えば、Chk1もしくはChk2)、FGFR(例えば、FGFR3)、Ret、Eph(例えば、EphB2もしくはEphB4)またはSrc(例えば、cSrc)であるキナーゼが媒介する病態または症状;あるいは
B.癌細胞が:
(a)スレオニンゲートキーパー変異;または
(b)薬剤耐性ゲートキーパー変異;または
(c)イマチニブ耐性変異;または
(d)ニロチニブ耐性変異;または
(e)ダサチニブ耐性変異;または
(f)KITにおけるT670I変異;または
(g)PDGFRにおけるT674I変異;または
(h)EGFRにおけるT790M変異;または
(i)ablにおけるT315I変異、
である薬剤耐性キナーゼ変異を含む癌;あるいは
C.BCR−abl、c−kit、PDGF、EGF受容体またはErbB2の変異型である変異分子標的を発現する癌;あるいは
D.他の抗癌剤と結合または相互作用するが式(I)または(I´)の化合物と結合または相互作用をしないタンパク質の領域に変異を有するキナーゼ、例えばc−abl、c−kit、PDGFRベータおよびPDGFRアルファを含むPDGFRならびに,EGFR(ErbBl)、HER2(ErbB2)、ErbB3およびErbB4などのErbBフェミリーのメンバー、ならびにEphA1、EphA2、EphA3、EphA4、EphA5、EphA8、EphA10、EphB1、EphB2、EphB3、EphB5、EphB6などのエフリン受容体ファミリーのメンバー、c−Src、ならびにTYK2などのJAKファミリーのキナーゼから選ばれる変異キナーゼ、が媒介する疾病であって、
前記方法はそのような治療を必要とする患者に有効な量の本明細書で定義されている式(I)および(I´)の化合物あるいはそのサブグループ、個々の種、塩または結晶形態を投与することを含む。
BCR−abl、VEGFR、PDGFR、EGFR、Flt3、JAK(例えば、JAK2またはJAK3)、C−abl、PDK1、Chk(例えば、Chk1またはChk2)、FGFR(例えば、FGFR3)、Ret、Eph(例えば、EphB2またはEphB4)あるいはSrc(例えば、cSrc)であるキナーゼが媒介する病態または症状の予防または治療方法であって、前記方法はそのような治療を必要とする患者に有効な量の本明細書で定義されている式(I)および(I´)の化合物あるいはそのサブグループ、個々の種、塩または結晶形態を投与することを含む。
BCR−abl、VEGFR、Flt3、JAK、C−abl、PDK1、Chk1、Chk2、FGFR(例えば、FGFR3)、Ret、Eph(例えば、EphB2またはEphB4)あるいはcSrcであるキナーゼが媒介する病態または症状の予防または治療方法であって、前記方法はそのような治療を必要とする患者に有効な量の本明細書で定義されている式(I)および(I´)の化合物あるいはそのサブグループ、個々の種、塩または結晶形態を投与することを含む。
BCR−ablに起因する悪性腫瘍の病態または症状の予防または治療方法であって、前記方法はそのような治療を必要とする患者に有効な量の本明細書で定義されている式(I)および(I´)の化合物あるいはそのサブグループ、個々の種、塩または結晶形態を投与することを含む。
BCR−ablに起因する悪性腫瘍の病態または症状の予防または治療方法であって、前記悪性腫瘍がフィラデルフィア染色体陽性の悪性腫瘍、例えば、フィラデルフィア染色体陽性CMLおよびフィラデルフィア染色体陽性ALLなどのフィラデルフィア染色体陽性白血病ならびに骨髄増殖性症候群であり、前記方法はそのような治療を必要とする患者に有効な量の本明細書で定義されている式(I)および(I´)の化合物あるいはそのサブグループ、個々の種、塩または結晶形態を投与することを含む。
VEGFRが媒介する病態または症状の予防または治療方法であって、前記方法はそのような治療を必要とする患者に有効な量の本明細書で定義されている式(I)および(I´)の化合物あるいはそのサブグループ、個々の種、塩または結晶形態を投与することを含む。
VEGFRが媒介する病態または症状の予防または治療方法であって、前記病態または症状は加齢黄斑変性症(例えば、湿潤型加齢黄斑変性症);虚血性増殖性網膜症(例えば、未熟児網膜症(ROP)および糖尿病性網膜症);および血管腫から選ばれる病態および症状などの眼疾患または症状であり、前記方法はそのような治療を必要とする患者に有効な量の本明細書で定義されている式(I)および(I´)の化合物あるいはそのサブグループ、個々の種、塩または結晶形態を投与することを含む。
Flt3、JAK、C−abl、PDK1、Chk1またはChk2であるキナーゼが媒介する病態または症状の予防または治療方法であって、前記方法はそのような治療を必要とする患者に有効な量の本明細書で定義されている式(I)および(I´)の化合物あるいはそのサブグループ、個々の種、塩または結晶形態を投与することを含む。
Flt3、JAK、C−abl、PDK1、Chk1またはChk2であるキナーゼが媒介する病態または症状の予防または治療方法であって、前記病態または症状は真性多血症、本態性血小板増加症、特発性骨髄線維症、若年性骨髄単球性白血病(JMML)、慢性骨髄単球性白血病(CMML)、巨核球性白血病、巨核球性AML(AML M7)、フィラデルフィア染色体陰性CMLおよびイマチニブ耐性CMLから選ばれる1つまたは複数の疾病または症状(どのような組み合わせでもよい)であって、前記方法はそのような治療を必要とする患者に有効な量の本明細書で定義されている式(I)および(I´)の化合物あるいはそのサブグループ、個々の種、塩または結晶形態を投与することを含む。
Flt3、JAK、C−abl、PDK1、Chk1またはChk2であるキナーゼが媒介する病態または症状の予防または治療方法であって、前記病態または症状が真性多血症、本態性血小板増加症および骨髄様化生(MMM)を伴う骨髄線維症を含む特発性骨髄線維症のような骨髄増殖性障害(MPD)から選ばれ、前記方法はそのような治療を必要とする患者に有効な量の本明細書で定義されている式(I)および(I´)の化合物あるいはそのサブグループ、個々の種、塩または結晶形態を投与することを含む。
FGFR(例えば、FGFR3)、Ret、Eph(例えば、EphB2またはEphB4)あるいはcSrcであるキナーゼが媒介する病態または症状の予防または治療方法であって、前記方法はそのような治療を必要とする患者に有効な量の本明細書で定義されている式(I)および(I´)の化合物あるいはそのサブグループ、個々の種、塩または結晶形態を投与することを含む。
FGFR(例えば、FGFR3)、Ret、Eph(例えば、EphB2またはEphB4)あるいはcSrcであるキナーゼが媒介する病態または症状の予防または治療方法であって、前記病態または症状が甲状腺乳頭癌、多発性内分泌腺腫(MEN)2A型および2B型、家族性甲状腺髄様癌(FMTC)、ヒルシュスプルング病、アペール(AP)症候群、クルーゾン症候群、ジャクソン−ワイス症候群、ベーレ−スティーブンソン脳回状頭皮症候群、パイフェル症候群(PS)、多発性骨髄腫、頭頸部癌および上皮癌から選ばれ(どのような組み合わせでもよい)、前記方法はそのような治療を必要とする患者に有効な量の本明細書で定義されている式(I)および(I´)の化合物あるいはそのサブグループ、個々の種、塩または結晶形態を投与することを含む。
FGFR(例えば、FGFR3)、Ret、Eph(例えば、EphB2またはEphB4)あるいはcSrcであるキナーゼが媒介する病態または症状の予防または治療方法であって、前記病態または症状がアペール(AP)症候群、クルーゾン症候群、ジャクソン―ワイスの症候群、ベーレ―スティーブンソン脳回状頭皮症候群およびパイフェル症候群(PS)などのヒトの骨格発生異常から選ばれ、前記方法はそのような治療を必要とする患者に有効な量の本明細書で定義されている式(I)および(I´)の化合物あるいはそのサブグループ、個々の種、塩または結晶形態を投与することを含む。
FGFR(例えば、FGFR3)、Ret、Eph(例えば、EphB2またはEphB4)あるいはcSrcであるキナーゼが媒介する病態または症状の予防または治療方法であって、前記病態または症状が甲状腺乳頭癌、家族性甲状腺髄様癌(FMTC)、多発性内分泌腺腫(MEN)2A型および2B型などの甲状腺癌から選ばれ、前記方法はそのような治療を必要とする患者に有効な量の本明細書で定義されている式(I)および(I´)の化合物あるいはそのサブグループ、個々の種、塩または結晶形態を投与することを含む。
癌細胞が:
(a)スレオニンゲートキーパー変異;または
(b)薬剤耐性ゲートキーパー変異;または
(c)イマチニブ耐性変異;または
(d)ニロチニブ耐性変異;または
(e)ダサチニブ耐性変異;または
(f)KITにおけるT670I変異;または
(g)PDGFRにおけるT674I変異;または
(h)EGFRにおけるT790M変異;または
(i)ablにおけるT315I変異、
である薬剤耐性キナーゼ変異を含む癌の予防または治療方法であって、前記方法はそのような治療を必要とする患者に有効な量の本明細書で定義されている式(I)および(I´)の化合物あるいはそのサブグループ、個々の種、塩または結晶形態を投与することを含む。
癌細胞が:
(a)スレオニンゲートキーパー変異;または
(b)薬剤耐性ゲートキーパー変異;または
(c)T315Iイマチニブ耐性変異;または
(d)KITにおけるT670I変異;または
(e)PDGFRにおけるT674I変異;または
(f)EGFRにおけるT790M変異、
である薬剤耐性キナーゼ変異を含む癌の予防または治療方法であって、前記方法はそのような治療を必要とする患者に有効な量の本明細書で定義されている式(I)および(I´)の化合物あるいはそのサブグループ、個々の種、塩または結晶形態を投与することを含む。
癌細胞が:
(a)スレオニンゲートキーパー変異;または
(b)薬剤耐性ゲートキーパー変異;または
(c)T315Iイマチニブ耐性変異;または
(d)KITにおけるT670I変異;または
(e)PDGFRにおけるT674I変異、
である薬剤耐性キナーゼ変異を含む癌の予防または治療方法であって、前記方法はそのような治療を必要とする患者に有効な量の本明細書で定義されている式(I)および(I´)の化合物あるいはそのサブグループ、個々の種、塩または結晶形態を投与することを含む。
癌細胞が:
(a)スレオニンゲートキーパー変異;または
(b)薬剤耐性ゲートキーパー変異;または
(c)イマチニブ耐性変異;または
(d)ニロチニブ耐性変異;または
(e)ダサチニブ耐性変異;または
(f)KITにおけるT670I変異;または
(g)PDGFRにおけるT674I変異;または
(h)EGFRにおけるT790M変異;または
(i)ablにおけるT315I変異、
である薬剤耐性キナーゼ変異を含む癌の予防または治療方法であって、前記方法はそのような治療を必要とする患者に有効な量の本明細書で定義されている式(I)および(I´)の化合物あるいはそのサブグループ、個々の種、塩または結晶形態を投与することを含み、前記薬剤は、胃腸間質性腫瘍(GIST)、慢性骨髄単球性白血病(CMML)、高好酸球症候群および隆起性皮膚線維肉腫の1つまたは複数(どのような組み合わせでもよい)の治療または予防用である。
癌細胞が:
(c)イマチニブ耐性変異;または
(d)ニロチニブ耐性の変異;または
(e)ダサチニブ耐性の変異、
である薬剤耐性キナーゼ変異を含む癌の予防または治療方法であって、前記方法はそのような治療を必要とする患者に有効な量の本明細書で定義されている式(I)および(I´)の化合物あるいはそのサブグループ、個々の種、塩または結晶形態を投与することを含み、前記薬剤は、ニロチニブ耐性、ダサチニブ耐性またはイマチニブ耐性CMLの治療または予防用である。
BCR−abl、c−kit、PDGF、EGF受容体またはErbB2の変異型である変異分子標的を発現する癌の予防または治療方法であって、前記方法はそのような治療を必要とする患者に有効な量の本明細書で定義されている式(I)および(I´)の化合物あるいはそのサブグループ、個々の種、塩または結晶形態を投与することを含む。
他の抗癌剤と結合または相互作用するが式(I)または(I´)の化合物と結合または相互作用をしないタンパク質の領域に変異を有するキナーゼ、例えばc−abl、c−kit、PDGFRベータおよびPDGFRアルファを含むPDGFRならびに,EGFR(ErbBl)、HER2(ErbB2)、ErbB3およびErbB4などのErbBフェミリーのメンバー、ならびにEphA1、EphA2、EphA3、EphA4、EphA5、EphA8、EphA10、EphB1、EphB2、EphB3、EphB5、EphB6などのエフリン受容体ファミリーのメンバー、c−Src、ならびにTYK2などのJAKファミリーのキナーゼから選ばれる変異キナーゼ、が媒介する疾病の予防または治療方法であって、前記方法はそのような治療を必要とする患者に有効な量の本明細書で定義されている式(I)および(I´)の化合物あるいはそのサブグループ、個々の種、塩または結晶形態を投与することを含む。
下記から選択される疾病および症状の1つまたは複数(どのような組み合わせでもよい)の予防または治療方法であって、前記方法はそのような治療を必要とする患者に有効な量の本明細書で定義されている式(I)および(I´)の化合物あるいはそのサブグループ、個々の種、塩または結晶形態を投与することを含む:
眼疾患あるいは症状(加齢黄斑変性症[例えば、湿潤型加齢黄斑変性症];虚血性増殖性網膜症[例えば、未熟児網膜症(ROP)および糖尿病性網膜症];および血管腫);骨髄増殖性障害(MPD)(真性多血症、本態性血小板増加症および骨髄様化生(MMM)を伴う骨髄線維症を含む特発性骨髄線維症など);若年性骨髄単球性白血病(JMML);慢性骨髄単球性白血病(CMML);巨核球性白血病(巨核球性AML(AML M7)を含む);フィラデルフィア染色体陰性CML;イマチニブ耐性CML;ニロチニブ耐性CML;ダサチニブ耐性CML;胃腸間質性腫瘍(GIST);多形性グリア芽腫、慢性骨髄単球性白血病(CMML)などのグリア芽腫;高好酸球症候群;隆起性皮膚線維肉腫;フィラデルフィア染色体陽性悪性腫瘍(例えば、フィラデルフィア染色体陽性CMLおよびフィラデルフィア染色体陽性ALLなどのフィラデルフィア染色体陽性白血病);骨髄増殖性症候群;多発性骨髄腫、上皮癌、頭頸部癌、ヒトの骨格発生異常(アペール(AP)症候群、クルーゾン症候群、ジャクソン−ワイス症候群、ベーレ−スティーブンソン脳回状頭皮症候群、パイフェル症候群(PS)など)、甲状腺癌(甲状腺乳頭癌、家族性甲状腺髄様癌(FMTC)、多発性内分泌腺腫(MEN)2A型および2B型など);およびヒルシュスプルング病。
下記から選択される疾病および症状の1つまたは複数(どのような組み合わせでもよい)の予防または治療方法であって、前記方法はそのような治療を必要とする患者に有効な量の本明細書で定義されている式(I)および(I´)の化合物あるいはそのサブグループ、個々の種、塩または結晶形態を投与することを含む:
眼疾患あるいは症状(加齢黄斑変性症[例えば、湿潤型加齢黄斑変性症];虚血性増殖性網膜症[例えば、未熟児網膜症(ROP)および糖尿病性網膜症];および血管腫);骨髄増殖性障害(MPD)(真性多血症、本態性血小板増加症および骨髄様化生(MMM)を伴う骨髄線維症を含む特発性骨髄線維症など);若年性骨髄単球性白血病(JMML);慢性骨髄単球性白血病(CMML);巨核球性白血病(巨核球性AML(AML M7)を含む);フィラデルフィア染色体陰性CML;イマチニブ耐性CML;胃腸間質性腫瘍(GIST);多形性グリア芽腫、慢性骨髄単球性白血病(CMML)などのグリア芽腫;高好酸球症候群;隆起性皮膚線維肉腫;フィラデルフィア染色体陽性悪性腫瘍(例えば、フィラデルフィア染色体陽性CMLおよびフィラデルフィア染色体陽性ALLなどのフィラデルフィア染色体陽性白血病);骨髄増殖性症候群;多発性骨髄腫、上皮癌、頭頸部癌、ヒトの骨格発生異常(アペール(AP)症候群、クルーゾン症候群、ジャクソン−ワイス症候群、ベーレ−スティーブンソン脳回状頭皮症候群、パイフェル症候群(PS)など)、甲状腺癌(甲状腺乳頭癌、家族性甲状腺髄様癌(FMTC)、多発性内分泌腺腫(MEN)2A型および2B型など);およびヒルシュスプルング病。
加齢黄斑変性症(例えば、湿潤型加齢黄斑変性症);虚血性増殖性網膜症(例えば、未熟児網膜症(ROP)および糖尿病性網膜症);および血管腫などの眼疾患あるいは症状の1つまたは複数(どのような組み合わせでもよい)の予防または治療方法であって、前記方法はそのような治療を必要とする患者に有効な量の本明細書で定義されている式(I)および(I´)の化合物あるいはそのサブグループ、個々の種、塩または結晶形態を投与することを含む。
真性多血症、本態性血小板増加症および骨髄様化生(MMM)を伴う骨髄線維症を含む特発性骨髄線維症などの骨髄増殖性障害(MPD);若年性骨髄単球性白血病(JMML);慢性骨髄単球性白血病(CMML);巨核球性AML(AML M7)を含む巨核球性白血病;フィラデルフィア染色体陰性CML;およびイマチニブ耐性CMLから選ばれる1つまたは複数(どのような組み合わせでもよい)の疾病または症状の予防または治療方法であって、前記方法はそのような治療を必要とする患者に有効な量の本明細書で定義されている式(I)および(I´)の化合物あるいはそのサブグループ、個々の種、塩または結晶形態を投与することを含む。
フィラデルフィア染色体陽性悪性腫瘍、例えば、フィラデルフィア染色体陽性CMLおよびフィラデルフィア染色体陽性ALLなどのフィラデルフィア染色体陽性白血病によりもたらされた悪性腫瘍の予防または治療方法であって、前記方法はそのような治療を必要とする患者に有効な量の本明細書で定義されている式(I)および(I´)の化合物あるいはそのサブグループ、個々の種、塩または結晶形態を投与することを含む。
骨髄増殖性症候群の予防または治療方法であって、前記方法はそのような治療を必要とする患者に有効な量の本明細書で定義されている式(I)および(I´)の化合物あるいはそのサブグループ、個々の種、塩または結晶形態を投与することを含む。
アペール(AP)症候群、クルーゾン症候群、ジャクソン−ワイス症候群、ベーレ−スティーブンソン脳回状頭皮症候群およびパイフェル症候群(PS)などのヒトの骨格発生異常、甲状腺乳頭癌、家族性甲状腺髄様癌(FMTC)、多発性内分泌腺腫(MEN)2A型および2B型などの甲状腺癌ならびにヒルシュスプルング病から選ばれる1つまたは複数(どのような組み合わせでもよい)の疾病または症状の予防または治療方法であって、前記方法はそのような治療を必要とする患者に有効な量の本明細書で定義されている式(I)および(I´)の化合物あるいはそのサブグループ、個々の種、塩または結晶形態を投与することを含む。
胃腸間質性腫瘍(GIST);多形性グリア芽腫、慢性骨髄単球性白血病(CMML)などのグリア芽腫;高好酸球症候群;および隆起性皮膚線維肉腫から選ばれる病態または症状の予防または治療方法であって、前記方法はそのような治療を必要とする患者に有効な量の本明細書で定義されている式(I)および(I´)の化合物あるいはそのサブグループ、個々の種、塩または結晶形態を投与することを含む。
イマチニブ耐性CML、ニロチニブ耐性CMLおよびダサチニブ耐性CMLから選ばれる病態または症状の予防または治療方法であって、前記方法はそのような治療を必要とする患者に有効な量の本明細書で定義されている式(I)および(I´)の化合物あるいはそのサブグループ、個々の種、塩または結晶形態を投与することを含む。
イマチニブ耐性CMLの予防または治療方法であって、前記方法はそのような治療を必要とする患者に有効な量の本明細書で定義されている式(I)および(I´)の化合物あるいはそのサブグループ、個々の種、塩または結晶形態を投与することを含む。
骨髄様化生(MMM)を伴う骨髄線維症の予防または治療方法であって、前記方法はそのような治療を必要とする患者に有効な量の本明細書で定義されている式(I)および(I´)の化合物あるいはそのサブグループ、個々の種、塩または結晶形態を投与することを含む。
下記のものの予防または治療で用いる本明細書で定義されている式(I)および(I´)の化合物あるいはそのサブグループ、個々の種、塩または結晶形態:
A.BCR−abl、VEGFR、PDGFR、EGFR、Flt3、JAK(例えば、JAK2もしくはJAK3)、C−abl、PDK1、Chk(例えば、Chk1もしくはChk2)、FGFR(例えば、FGFR3)、Ret、Eph(例えば、EphB2もしくはEphB4)またはSrc(例えば、cSrc)であるキナーゼが媒介する病態または症状;あるいは
B.癌細胞が:
(a)スレオニンゲートキーパー変異;または
(b)薬剤耐性ゲートキーパー変異;または
(c)イマチニブ耐性変異;または
(d)ニロチニブ耐性変異;または
(e)ダサチニブ耐性変異;または
(f)KITにおけるT670I変異;または
(g)PDGFRにおけるT674I変異;または
(h)EGFRにおけるT790M変異;または
(i)ablにおけるT315I変異、
である薬剤耐性キナーゼ変異を含む癌;あるいは
C.BCR−abl、c−kit、PDGF、EGF受容体またはErbB2の変異型である変異分子標的を発現する癌;あるいは
D.他の抗癌剤と結合または相互作用するが式(I)または(I´)の化合物と結合または相互作用をしないタンパク質の領域に変異を有するキナーゼ、例えばc−abl、c−kit、PDGFRベータおよびPDGFRアルファを含むPDGFRならびに,EGFR(ErbBl)、HER2(ErbB2)、ErbB3およびErbB4などのErbBフェミリーのメンバー、ならびにEphA1、EphA2、EphA3、EphA4、EphA5、EphA8、EphA10、EphB1、EphB2、EphB3、EphB5、EphB6などのエフリン受容体ファミリーのメンバー、c−Src、ならびにTYK2などのJAKファミリーのキナーゼから選ばれる変異キナーゼ、が媒介する疾病。
BCR−abl、VEGFR、PDGFR、EGFR、Flt3、JAK(例えば、JAK2またはJAK3)、C−abl、PDK1、Chk(例えば、Chk1またはChk2)、FGFR(例えば、FGFR3)、Ret、Eph(例えば、EphB2またはEphB4)あるいはSrc(例えば、cSrc)であるキナーゼが媒介する病態または症状の予防または治療で用いる本明細書で定義されている式(I)および(I´)の化合物あるいはそのサブグループ、個々の種、塩または結晶形態。
BCR−abl、VEGFR、Flt3、JAK、C−abl、PDK1、Chk1、Chk2、FGFR(例えば、FGFR3)、Ret、Eph(例えば、EphB2またはEphB4)あるいはcSrcであるキナーゼが媒介する病態または症状の予防または治療で用いる本明細書で定義されている式(I)および(I´)の化合物あるいはそのサブグループ、個々の種、塩または結晶形態。
BCR−ablに起因する悪性腫瘍の病態または症状の治療または予防で用いる本明細書で定義されている式(I)および(I´)の化合物あるいはそのサブグループ、個々の種、塩または結晶形態。
BCR−ablに起因する悪性腫瘍の病態または症状の治療または予防で用いる本明細書で定義されている式(I)および(I´)の化合物あるいはそのサブグループ、個々の種、塩または結晶形態であって、前記悪性腫瘍はフィラデルフィア染色体陽性の悪性腫瘍、例えば、フィラデルフィア染色体陽性CMLおよびフィラデルフィア染色体陽性ALLなどのフィラデルフィア染色体陽性白血病ならびに骨髄増殖性症候群である。
VEGFRが媒介する病態または症状の治療または予防で用いる本明細書で定義されている式(I)および(I´)の化合物あるいはそのサブグループ、個々の種、塩または結晶形態。
VEGFRが媒介する病態または症状の治療または予防で用いる本明細書で定義されている式(I)および(I´)の化合物あるいはそのサブグループ、個々の種、塩または結晶形態であって、前記病態または症状は加齢黄斑変性症(例えば、湿潤型加齢黄斑変性症);虚血性増殖性網膜症(例えば、未熟児網膜症(ROP)および糖尿病性網膜症);および血管腫から選ばれる病態および症状などの眼疾患または症状である。
Flt3、JAK、C−abl、PDK1、Chk1またはChk2であるキナーゼが媒介する病態または症状の治療または予防で用薬剤の製造のための本明細書で定義されている式(I)および(I´)の化合物あるいはそのサブグループ、個々の種、塩または結晶形態。
Flt3、JAK、C−abl、PDK1、Chk1またはChk2であるキナーゼが媒介する病態または症状の治療または予防で用いる本明細書で定義されている式(I)および(I´)の化合物あるいはそのサブグループ、個々の種、塩または結晶形態であって、前記病態または症状が真性多血症、本態性血小板増加症、特発性骨髄線維症、若年性骨髄単球性白血病(JMML)、慢性骨髄単球性白血病(CMML)、巨核球性白血病、巨核球性AML(AML M7)、フィラデルフィア染色体陰性CMLおよびイマチニブ耐性CMLから選ばれる1つまたは複数の疾病または症状(どのような組み合わせでもよい)である。
Flt3、JAK、C−abl、PDK1、Chk1またはChk2であるキナーゼが媒介する病態または症状の治療または予防で用いる本明細書で定義されている式(I)および(I´)の化合物あるいはそのサブグループ、個々の種、塩または結晶形態であって、前記病態または症状は真性多血症、本態性血小板増加症および骨髄様化生(MMM)を伴う骨髄線維症を含む特発性骨髄線維症のような骨髄増殖性障害(MPD)から選ばれる。
FGFR(例えば、FGFR3)、Ret、Eph(例えば、EphB2またはEphB4)あるいはcSrcであるキナーゼが媒介する病態または症状の治療または予防で用いる本明細書で定義されている式(I)および(I´)の化合物あるいはそのサブグループ、個々の種、塩または結晶形態。
FGFR(例えば、FGFR3)、Ret、Eph(例えば、EphB2またはEphB4)あるいはcSrcであるキナーゼが媒介する病態または症状の治療または予防で用いる本明細書で定義されている式(I)および(I´)の化合物あるいはそのサブグループ、個々の種、塩または結晶形態であって、前記病態または症状が甲状腺乳頭癌、多発性内分泌腺腫(MEN)2A型および2B型、家族性甲状腺髄様癌(FMTC)、ヒルシュスプルング病、アペール(AP)症候群、クルーゾン症候群、ジャクソン−ワイス症候群、ベーレ−スティーブンソン脳回状頭皮症候群、パイフェル症候群(PS)、多発性骨髄腫、頭頸部癌および上皮癌から選ばれる(どのような組み合わせでもよい)。
FGFR(例えば、FGFR3)、Ret、Eph(例えば、EphB2またはEphB4)あるいはcSrcであるキナーゼが媒介する病態または症状の治療または予防で用いる本明細書で定義されている式(I)および(I´)の化合物あるいはそのサブグループ、個々の種、塩または結晶形態であって、前記病態または症状が甲状腺乳頭癌、家族性甲状腺髄様癌(FMTC)、多発性内分泌腺腫(MEN)2A型および2B型などの甲状腺癌から選ばれる。
癌細胞が:
(a)スレオニンゲートキーパー変異;または
(b)薬剤耐性ゲートキーパー変異;または
(c)イマチニブ耐性変異;または
(d)ニロチニブ耐性変異;または
(e)ダサチニブ耐性変異;または
(f)KITにおけるT670I変異;または
(g)PDGFRにおけるT674I変異;または
(h)EGFRにおけるT790M変異;または
(i)ablにおけるT315I変異、
である薬剤耐性キナーゼ変異を含む癌の治療または予防で用いる本明細書で定義されている式(I)および(I´)の化合物あるいはそのサブグループ、個々の種、塩または結晶形態。
癌細胞が:
(a)スレオニンゲートキーパー変異;または
(b)薬剤耐性ゲートキーパー変異;または
(c)T315Iイマチニブ耐性変異;または
(d)KITにおけるT670I変異;または
(e)PDGFRにおけるT674I変異;または
(f)EGFRにおけるT790M変異、
である薬剤耐性キナーゼ変異を含む癌の治療または予防用薬剤の製造のための本明細書で定義されている式(I)および(I´)の化合物あるいはそのサブグループ、個々の種、塩または結晶形態。
癌細胞が:
(a)スレオニンゲートキーパー変異;または
(b)薬剤耐性ゲートキーパー変異;または
(c)T315Iイマチニブ耐性変異;または
(d)KITにおけるT670I変異;または
(e)PDGFRにおけるT674I変異、
である薬剤耐性キナーゼ変異を含む癌の治療または予防で用いる本明細書で定義されている式(I)および(I´)の化合物あるいはそのサブグループ、個々の種、塩または結晶形態。
癌細胞が:
(a)スレオニンゲートキーパー変異;または
(b)薬剤耐性ゲートキーパー変異;または
(c)イマチニブ耐性変異;または
(d)ニロチニブ耐性変異;または
(e)ダサチニブ耐性変異;または
(f)KITにおけるT670I変異;または
(g)PDGFRにおけるT674I変異;または
(h)EGFRにおけるT790M変異;または
(i)ablにおけるT315I変異、
である薬剤耐性キナーゼ変異を含む癌の治療または予防で用いる本明細書で定義されている式(I)および(I´)の化合物あるいはそのサブグループ、個々の種、塩または結晶形態であって、前記癌は胃腸間質性腫瘍(GIST)、慢性骨髄単球性白血病(CMML)、高好酸球症候群および隆起性皮膚線維肉腫の1つまたは複数(どのような組み合わせでもよい)である。
癌細胞が:
(c)イマチニブ耐性変異;または
(d)ニロチニブ耐性の変異;または
(e)ダサチニブ耐性の変異、
である薬剤耐性キナーゼ変異を含む癌の治療または予防で用いる本明細書で定義されている式(I)および(I´)の化合物あるいはそのサブグループ、個々の種、塩または結晶形態であって、前記癌はニロチニブ耐性、ダサチニブ耐性またはイマチニブ耐性CMLである。
BCRabl、c−kit、PDGF、EGF受容体またはErbB2の変異型である変異分子標的を発現する癌の治療または予防で用いる本明細書で定義されている式(I)および(I´)の化合物あるいはそのサブグループ、個々の種、塩または結晶形態。
他の抗癌剤と結合または相互作用するが式(I)または(I´)の化合物と結合または相互作用をしないタンパク質の領域に変異を有するキナーゼ、例えばc−abl、c−kit、PDGFRベータおよびPDGFRアルファを含むPDGFRならびに,EGFR(ErbBl)、HER2(ErbB2)、ErbB3およびErbB4などのErbBフェミリーのメンバー、ならびにEphA1、EphA2、EphA3、EphA4、EphA5、EphA8、EphA10、EphB1、EphB2、EphB3、EphB5、EphB6などのエフリン受容体ファミリーのメンバー、c−Src、ならびにTYK2などのJAKファミリーのキナーゼから選ばれる変異キナーゼ、が媒介する疾病の治療または予防で用いる本明細書で定義されている式(I)および(I´)の化合物あるいはそのサブグループ、個々の種、塩または結晶形態。
下記から選択される疾病および症状の1つまたは複数(どのような組み合わせでもよい)の予防または治療用薬剤の製造のための請求項1〜106のいずれか一項の中で定義された化合物:
眼疾患あるいは症状(加齢黄斑変性症[例えば、湿潤型加齢黄斑変性症];虚血性増殖性網膜症[例えば、未熟児網膜症(ROP)および糖尿病性網膜症];および血管腫);骨髄増殖性障害(MPD)(真性多血症、本態性血小板増加症および骨髄様化生(MMM)を伴う骨髄線維症を含む特発性骨髄線維症など);若年性骨髄単球性白血病(JMML);慢性骨髄単球性白血病(CMML);巨核球性白血病(巨核球性AML(AML M7)を含む);フィラデルフィア染色体陰性CML;イマチニブ耐性CML;ニロチニブ耐性CML;ダサチニブ耐性CML;胃腸間質性腫瘍(GIST);多形性グリア芽腫、慢性骨髄単球性白血病(CMML)などのグリア芽腫;高好酸球症候群;隆起性皮膚線維肉腫;フィラデルフィア染色体陽性悪性腫瘍(例えば、フィラデルフィア染色体陽性CMLおよびフィラデルフィア染色体陽性ALLなどのフィラデルフィア染色体陽性白血病);骨髄増殖性症候群;多発性骨髄腫、上皮癌、頭頸部癌、ヒトの骨格発生異常(アペール(AP)症候群、クルーゾン症候群、ジャクソン−ワイス症候群、ベーレ−スティーブンソン脳回状頭皮症候群、パイフェル症候群(PS)など)、甲状腺癌(甲状腺乳頭癌、家族性甲状腺髄様癌(FMTC)、多発性内分泌腺腫(MEN)2A型および2B型など);およびヒルシュスプルング病。
下記から選択される疾病および症状の1つまたは複数(どのような組み合わせでもよい)の治療または予防で用いる本明細書で定義されている式(I)および(I´)の化合物あるいはそのサブグループ、個々の種、塩または結晶形態:
眼疾患あるいは症状(加齢黄斑変性症[例えば、湿潤型加齢黄斑変性症];虚血性増殖性網膜症[例えば、未熟児網膜症(ROP)および糖尿病性網膜症];および血管腫);骨髄増殖性障害(MPD)(真性多血症、本態性血小板増加症および骨髄様化生(MMM)を伴う骨髄線維症を含む特発性骨髄線維症など);若年性骨髄単球性白血病(JMML);慢性骨髄単球性白血病(CMML);巨核球性白血病(巨核球性AML(AML M7)を含む);フィラデルフィア染色体陰性CML;イマチニブ耐性CML;胃腸間質性腫瘍(GIST);多形性グリア芽腫、慢性骨髄単球性白血病(CMML)などのグリア芽腫;高好酸球症候群;隆起性皮膚線維肉腫;フィラデルフィア染色体陽性悪性腫瘍(例えば、フィラデルフィア染色体陽性CMLおよびフィラデルフィア染色体陽性ALLなどのフィラデルフィア染色体陽性白血病);骨髄増殖性症候群;多発性骨髄腫、上皮癌、頭頸部癌、ヒトの骨格発生異常(アペール(AP)症候群、クルーゾン症候群、ジャクソン−ワイス症候群、ベーレ−スティーブンソン脳回状頭皮症候群、パイフェル症候群(PS)など)、甲状腺癌(甲状腺乳頭癌、家族性甲状腺髄様癌(FMTC)、多発性内分泌腺腫(MEN)2A型および2B型など);およびヒルシュスプルング病。
加齢黄斑変性症(例えば、湿潤型加齢黄斑変性症);虚血性増殖性網膜症(例えば、未熟児網膜症(ROP)および糖尿病性網膜症);および血管腫などの眼疾患あるいは症状の1つまたは複数(どのような組み合わせでもよい)の治療または予防で用いる本明細書で定義されている式(I)および(I´)の化合物あるいはそのサブグループ、個々の種、塩または結晶形態。
真性多血症、本態性血小板増加症および骨髄様化生(MMM)を伴う骨髄線維症を含む特発性骨髄線維症などの骨髄増殖性障害(MPD);若年性骨髄単球性白血病(JMML);慢性骨髄単球性白血病(CMML);巨核球性AML(AML M7)を含む巨核球性白血病;フィラデルフィア染色体陰性CML;およびイマチニブ耐性CMLから選ばれる1つまたは複数(どのような組み合わせでもよい)の疾病または症状の治療または予防で用いる本明細書で定義されている式(I)および(I´)の化合物あるいはそのサブグループ、個々の種、塩または結晶形態。
BCR−ablに起因する悪性腫瘍、特にフィラデルフィア染色体陽性の悪性腫瘍、例えば、フィラデルフィア染色体陽性CMLおよびフィラデルフィア染色体陽性ALLなどのフィラデルフィア染色体陽性白血病の治療または予防で用いる本明細書で定義されている式(I)および(I´)の化合物あるいはそのサブグループ、個々の種、塩または結晶形態。
骨髄増殖性症候群の予防で用いる本明細書で定義されている式(I)および(I´)の化合物あるいはそのサブグループ、個々の種、塩または結晶形態。
多発性骨髄腫、頭頸部癌、上皮癌、ヒトの骨格発生異常、例えばアペール(AP)症候群、クルーゾン症候群、ジャクソン−ワイス症候群、ベーレ−スティーブンソン脳回状頭皮症候群およびパイフェル症候群(PS)、甲状腺癌、例えば甲状腺乳頭癌、家族性甲状腺髄様癌(FMTC)、多発性内分泌腺腫(MEN)2A型および2B型、ヒルシュスプルング病から選ばれる1つまたは複数(どのような組み合わせでもよい)の疾病または症状の治療または予防で用いる本明細書で定義されている式(I)および(I´)の化合物あるいはそのサブグループ、個々の種、塩または結晶形態。
胃腸間質性腫瘍(GIST);多形性グリア芽腫、慢性骨髄単球性白血病(CMML)などのグリア芽腫;高好酸球症候群;および隆起性皮膚線維肉腫から選ばれる病態または症状の治療または予防で用いる本明細書で定義されている式(I)および(I´)の化合物あるいはそのサブグループ、個々の種、塩または結晶形態。
イマチニブ耐性CML、ニロチニブ耐性CMLおよびダサチニブ耐性CMLから選ばれる病態または症状の治療または予防で用いる本明細書で定義されている式(I)および(I´)の化合物あるいはそのサブグループ、個々の種、塩または結晶形態。
イマチニブ耐性CMLの治療または予防で用いる本明細書で定義されている式(I)および(I´)の化合物あるいはそのサブグループ、個々の種、塩または結晶形態。
骨髄様化生(MMM)を伴う骨髄線維症の治療または予防で用いる本明細書で定義されている式(I)および(I´)の化合物あるいはそのサブグループ、個々の種、塩または結晶形態。
BCR−abl、VEGFR、PDGFR、EGFR、Flt3、JAK(例えば、JAK2またはJAK3)、C−abl、PDK1、Chk(例えば、Chk1またはChk2)、FGFR(例えば、FGFR3)、Ret、Eph(例えば、EphB2またはEphB4)あるいはSrc(例えば、cSrc)であるキナーゼが媒介する病態または症状の診断および治療方法であって、前記方法は(i)患者が罹患している、または罹患している可能性のある疾病または症状が前記キナーゼに対して活性を有する化合物による治療に感受性があるものかどうかを判定すべく患者をスクリーニングすること、および(ii)患者の疾病または症状がそのような感受性を有することが示された場合に、その後、患者に本明細書で定義されている式(I)および(I´)の化合物あるいはそのサブグループ、個々の種、塩または結晶形態を投与することを含む。
スクリーニングされ、BCR−abl、VEGFR、PDGFR、EGFR、Flt3、JAK(例えば、JAK2またはJAK3)、C−abl、PDK1、Chk(例えば、Chk1またはChk2)、FGFR(例えば、FGFR3)、Ret、Eph(例えば、EphB2またはEphB4)あるいはSrc(例えば、cSrc)であるキナーゼに対して活性を有する化合物による治療に感受性のある疾病または症状に罹患している、または罹患するリスクがあると判定された患者における病態または症状の治療または予防用薬剤の製造のための本明細書で定義されている式(I)および(I´)の化合物あるいはそのサブグループ、個々の種、塩または結晶形態の使用。
スクリーニングされ、BCR−abl、VEGFR、PDGFR、EGFR、Flt3、JAK(例えば、JAK2またはJAK3)、C−abl、PDK1、Chk(例えば、Chk1またはChk2)、FGFR(例えば、FGFR3)、Ret、Eph(例えば、EphB2またはEphB4)あるいはSrc(例えば、cSrc)であるキナーゼに対して活性を有する化合物による治療に感受性のある疾病または症状に罹患している、または罹患するリスクがあると判定された患者における病態または症状の治療または予防に用いる本明細書で定義されている式(I)および(I´)の化合物あるいはそのサブグループ、個々の種、塩または結晶形態。
癌細胞が:
(a)スレオニンゲートキーパー変異;または
(b)薬剤耐性ゲートキーパー変異;または
(c)イマチニブ耐性変異;または
(d)ニロチニブ耐性変異;または
(e)ダサチニブ耐性変異;または
(f)KITにおけるT670I変異;または
(g)PDGFRにおけるT674I変異;または
(h)EGFRにおけるT790M変異;または
(i)ablにおけるT315I変異、
である薬剤耐性キナーゼ変異を含む癌の診断および治療方法であって、前記方法が(i)患者が罹患している、または罹患している可能性のある癌がその癌細胞が前記薬剤耐性キナーゼ変異を含んでいるかどうかを判定すべく患者をスクリーニングすること、および(ii)その癌細胞が前記薬剤耐性キナーゼ変異を含んでいることが示された場合に、その後、患者に本明細書で定義されている式(I)および(I´)の化合物あるいはそのサブグループ、個々の種、塩または結晶形態を投与することを含む。
スクリーニングされ、癌細胞が薬剤耐性キナーゼ変異を含む癌に罹患している、または罹患するリスクがあると判定された患者における病態または症状の治療または予防用薬剤の製造のための本明細書で定義されている式(I)および(I´)の化合物あるいはそのサブグループ、個々の種、塩または結晶形態の使用であって、前記薬剤耐性キナーゼ変異が:
(a)スレオニンゲートキーパー変異;または
(b)薬剤耐性ゲートキーパー変異;または
(c)イマチニブ耐性変異;または
(d)ニロチニブ耐性変異;または
(e)ダサチニブ耐性変異;または
(f)KITにおけるT670I変異;または
(g)PDGFRにおけるT674I変異;または
(h)EGFRにおけるT790M変異;または
(i)ablにおけるT315I変異である。
スクリーニングされ、癌細胞が薬剤耐性キナーゼ変異を含む癌に罹患している、または罹患するリスクがあると判定された患者における癌の治療または予防に使用される本明細書で定義されている式(I)および(I´)の化合物あるいはそのサブグループ、個々の種、塩または結晶形態であって、前記薬剤耐性キナーゼ変異が:
(a)スレオニンゲートキーパー変異;または
(b)薬剤耐性ゲートキーパー変異;または
(c)イマチニブ耐性変異;または
(d)ニロチニブ耐性変異;または
(e)ダサチニブ耐性変異;または
(f)KITにおけるT670I変異;または
(g)PDGFRにおけるT674I変異;または
(h)EGFRにおけるT790M変異;または
(i)ablにおけるT315I変異である。
BCRabl、c−kit、PDGF、EGF受容体またはErbB2の変異型である変異分子標的を発現する癌の予防および治療方法であって、前記方法は(i)患者が罹患している、または罹患している可能性のある癌が前記変異分子標的を発現する癌であるかどうかを判定すべく患者をスクリーニングすること、および(ii)前記癌細胞が前記変異分子標的を発現することが示された場合に、その後、患者に本明細書で定義されている式(I)および(I´)の化合物あるいはそのサブグループ、個々の種、塩または結晶形態を投与することを含む。
スクリーニングされ、BCRabl、c−kit、PDGF、EGF受容体またはErbB2の変異型である変異分子標的を発現する癌に罹患している、または罹患するリスクがあると判定された患者における癌の治療または予防用薬剤の製造のための本明細書で定義されている式(I)および(I´)の化合物あるいはそのサブグループ、個々の種、塩または結晶形態の使用。
スクリーニングされ、BCRabl、c−kit、PDGF、EGF受容体またはErbB2の変異型である変異分子標的を発現する癌に罹患している、または罹患するリスクがあると判定された患者における癌の治療または予防で用いる本明細書で定義されている式(I)および(I´)の化合物あるいはそのサブグループ、個々の種、塩または結晶形態。
本明細書で定義されている式(I)および(I´)の化合物あるいはそのサブグループ、個々の種、塩または結晶形態を用いて、BCR−abl、VEGFR、PDGFR、EGFR、Flt3、JAK(例えば、JAK2またはJAK3)、C−abl、PDK1、Chk(例えば、Chk1またはChk2)、FGFR(例えば、FGFR3)、Ret、Eph(例えば、EphB2またはEphB4)あるいはSrc(例えば、cSrc)から選ばれるキナーゼの活性を調整(例えば、阻害)することによって細胞過程(例えば、細胞分裂)を調整する方法。
BCR−abl、VEGFR、PDGFR、EGFR、Flt3、JAK(例えば、JAK2またはJAK3)、C−abl、PDK1、Chk(例えば、Chk1またはChk2)、FGFR(例えば、FGFR3)、Ret、Eph(例えば、EphB2またはEphB4)あるいはSrc(例えば、cSrc)から選ばれるキナーゼの調整剤(例えば、阻害剤)として用いる本明細書で定義されている式(I)および(I´)の化合物あるいはそのサブグループ、個々の種、塩または結晶形態。
BCR−abl、VEGFR、PDGFR、EGFR、Flt3、JAK(例えば、JAK2またはJAK3)、C−abl、PDK1、Chk(例えば、Chk1またはChk2)、FGFR(例えば、FGFR3)、Ret、Eph(例えば、EphB2またはEphB4)あるいはSrc(例えば、cSrc)から選ばれるキナーゼの活性の調整(例えば、阻害)用薬剤の製造のための本明細書で定義されている式(I)および(I´)の化合物あるいはそのサブグループ、個々の種、塩または結晶形態の使用。
他の抗癌剤と結合または相互作用するが式(I)または(I´)の化合物と結合または相互作用をしないタンパク質の領域に変異を有するキナーゼ、例えばc−abl、c−kit、PDGFRベータおよびPDGFRアルファを含むPDGFRならびに,EGFR(ErbBl)、HER2(ErbB2)、ErbB3およびErbB4などのErbBフェミリーのメンバー、ならびにEphA1、EphA2、EphA3、EphA4、EphA5、EphA8、EphA10、EphB1、EphB2、EphB3、EphB5、EphB6などのエフリン受容体ファミリーのメンバー、c−Src、ならびにTYK2などのJAKファミリーのキナーゼから選ばれる変異キナーゼ、が媒介する疾病の診断および治療方法であって、前記方法が(i)患者が罹患している、または罹患している可能性のある疾病または症状が他の抗癌剤と結合または相互作用するが式(I)または(I´)の化合物と結合または相互作用をしないタンパク質の領域に変異を有するキナーゼが媒介するものかどうかを判定すべく患者をスクリーニングすること、および(ii)前記疾病または症状が本明細書で定義されたものであると示された場合に、その後、患者に本明細書で定義されている式(I)および(I´)の化合物あるいはそのサブグループ、個々の種、塩または結晶形態を投与することを含む。
他の抗癌剤と結合または相互作用するが式(I)または(I´)の化合物と結合または相互作用をしないタンパク質の領域に変異を有するキナーゼ、例えばc−abl、c−kit、PDGFRベータおよびPDGFRアルファを含むPDGFRならびに,EGFR(ErbBl)、HER2(ErbB2)、ErbB3およびErbB4などのErbBフェミリーのメンバー、ならびにEphA1、EphA2、EphA3、EphA4、EphA5、EphA8、EphA10、EphB1、EphB2、EphB3、EphB5、EphB6などのエフリン受容体ファミリーのメンバー、c−Src、ならびにTYK2などのJAKファミリーのキナーゼから選ばれる変異キナーゼ、が媒介する疾病の治療または予防用薬剤の製造のための本明細書で定義されている式(I)および(I´)の化合物あるいはそのサブグループ、個々の種、塩または結晶形態の使用。
他の抗癌剤と結合または相互作用するが式(I)または(I´)の化合物と結合または相互作用をしないタンパク質の領域に変異を有するキナーゼ、例えばc−abl、c−kit、PDGFRベータおよびPDGFRアルファを含むPDGFRならびに,EGFR(ErbBl)、HER2(ErbB2)、ErbB3およびErbB4などのErbBフェミリーのメンバー、ならびにEphA1、EphA2、EphA3、EphA4、EphA5、EphA8、EphA10、EphB1、EphB2、EphB3、EphB5、EphB6などのエフリン受容体ファミリーのメンバー、c−Src、ならびにTYK2などのJAKファミリーのキナーゼから選ばれる変異キナーゼ、が媒介する疾病の治療または予防で用いる本明細書で定義されている式(I)および(I´)の化合物あるいはそのサブグループ、個々の種、塩または結晶形態。
ニロチニブ耐性、ダサチニブ耐性またはイマチニブ耐性CMLの治療または予防に用いる本明細書で定義されている式(I)および(I´)の化合物あるいはそのサブグループ、個々の種、塩または結晶形態の使用。
ニロチニブ耐性、ダサチニブ耐性またはイマチニブ耐性CMLの治療または予防用薬剤の製造のための本明細書で定義されている式(I)および(I´)の化合物あるいはそのサブグループ、個々の種、塩または結晶形態の使用。
ニロチニブ耐性、ダサチニブ耐性またはイマチニブ耐性CMLの予防または治療方法であって、前記方法はそのような治療を必要とする患者に有効な量の本明細書で定義されている式(I)および(I´)の化合物あるいはそのサブグループ、個々の種、塩または結晶形態を投与することを含む。
本明細書で定義されている疾病の予防または治療用薬剤の製造のための本明細書で定義されている1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素あるいはその塩または結晶形態の使用。
本明細書で定義されている病状または症状の予防方法であって、前記方法は予防を必要とする患者に有効な量の本明細書で定義されている1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素あるいはその塩または結晶形態を投与することを含む。
本明細書で定義されている病状または症状の予防または治療に用いる本明細書で定義されている1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素あるいはその塩または結晶形態。
本明細書で定義されている病態または症状の罹患率の減少または低減用薬剤の製造のための本明細書で定義されている式(I)および(I´)の化合物あるいはそのサブグループ、個々の種、塩または結晶形態の使用。
本明細書で定義されている病態または症状の罹患率の減少または低減方法であって、前記方法は患者(例えば、それを必要とする患者)に(例えば、治療上有効な量で)本明細書で定義されている式(I)および(I´)の化合物あるいはそのサブグループ、個々の種、塩または結晶形態を投与することを含む。
本明細書で定義されている病態または症状の罹患率の減少または低減に用いる式(I)および(I´)の化合物あるいはそのサブグループ、個々の種、塩または結晶形態。
加えて、本発明はまた、加齢黄斑変性症、特に湿潤型加齢黄斑変性症、および血管腫などの眼疾患ならびにフィラデルフィア染色体陽性ALLの治療における式(I)または(I´)の化合物の使用を提供する。
また、真性多血症、本態性血小板増加症;特発性骨髄線維症;若年性骨髄単球性白血病(JMML);慢性骨髄単球性白血病(CMML);巨核球性AML(AML M7)を含む巨核球性白血病;フィラデルフィア染色体陰性CML;イマチニブ耐性CML;胃腸間質性腫瘍(GIST)、高好酸球症候群または隆起性皮膚線維肉腫の治療法を提供し、前記方法ではそのような治療を必要とする患者に有効な量の本明細書およびPCT/GB2004/002824(WO2005/002552)で定義されている式(I)の化合物もしくは式(I´)の化合物を投与する。
また、加齢黄斑変性症、特に湿潤型加齢黄斑変性症、および血管腫、などの眼疾患ならびにフィラデルフィア染色体陽性ALLの治療法を提供し、前記方法ではそのような治療を必要とする患者に有効な量の本明細書およびPCT/GB2004/002824(WO2005/002552)で定義されている式(I)の化合物もしくは式(I´)の化合物を投与する。
本発明は、加齢黄斑変性症、特に湿潤型加齢黄斑変性症、未熟児網膜症(ROP)および糖尿病性網膜症などの虚血性増殖性網膜症ならびに血管腫、などの眼疾患の治療用薬剤の製造のための式(I)または(I´)の化合物の使用を提供する。
また、加齢黄斑変性症、特に湿潤型加齢黄斑変性症、未熟児網膜症(ROP)および糖尿病性網膜症などの虚血性増殖性網膜症ならびに血管腫、などの眼疾患の治療法を提供し、前記方法ではそのような治療を必要とする患者に有効な量の本明細書およびPCT/GB2004/002824(WO2005/002552)で定義されている式(I)の化合物もしくは式(I´)の化合物を投与する。
本発明は、フィラデルフィア染色体陽性ALLの治療用薬剤の製造のための式(I)または(I´)の化合物の使用を提供する。
また、フィラデルフィア染色体陽性ALLの治療法を提供し、前記方法ではそのような治療を必要とする患者に有効な量の本明細書およびPCT/GB2004/002824(WO2005/002552)で定義されている式(I)の化合物もしくは式(I´)の化合物を投与する。
さらなる態様では、本発明は以下のものを提供する:
多発性骨髄腫、上皮癌、頭頸部癌、ならびにアペール(AP)症候群、クルーゾン症候群、ジャクソン−ワイス症候群、ベーレ−スティーブンソン脳回状頭皮症候群およびパイフェル症候群(PS)などのヒトの骨格発生異常、ならびに甲状腺乳頭癌、家族性甲状腺髄様癌(FMTC)、多発性内分泌腺腫(MEN)2A型および2B型などの甲状腺癌、ならびにヒルシュスプルング病の治療に用いる本明細書で定義されている式(I)または(I´)の化合物ならびにそのサブグループおよび例。
多発性骨髄腫、上皮癌、頭頸部癌、ならびにアペール(AP)症候群、クルーゾン症候群、ジャクソン−ワイス症候群、ベーレ−スティーブンソン脳回状頭皮症候群およびパイフェル症候群(PS)などのヒトの骨格発生異常、ならびに甲状腺乳頭癌、家族性甲状腺髄様癌(FMTC)、多発性内分泌腺腫(MEN)2A型および2B型などの甲状腺癌、ならびにヒルシュスプルング病の治療用薬剤の製造のための本明細書で定義されている式(I)または(I´)の化合物ならびにそのサブグループおよび例の使用。
多発性骨髄腫、上皮癌、頭頸部癌、ならびにアペール(AP)症候群、クルーゾン症候群、ジャクソン−ワイス症候群、ベーレ−スティーブンソン脳回状頭皮症候群およびパイフェル症候群(PS)などのヒトの骨格発生異常、ならびに甲状腺乳頭癌、家族性甲状腺髄様癌(FMTC)、多発性内分泌腺腫(MEN)2A型および2B型などの甲状腺癌、ならびにヒルシュスプルング病の治療方法であり、前記方法はそのような治療を必要とする患者に本明細書で定義されている式(I)または(I´)の化合物ならびにそのサブグループおよび例を投与することを含む。
一般的な好ましい選択肢および定義
本明細書では、キナーゼの活性に対して使用される“調節”なる語は、プロテインキナーゼの生物学的活性レベルの変化を明確にすることを目的とする。したがって、調節は、関連するプロテインキナーゼ活性の上昇または減少をもたらす生理的変化を包含する。後者の場合、調節は“阻害”とも表現される。前記調節は、直接あるいは間接的に発生し、どのようなメカニズムおよび、例えば遺伝子発現(例えば、転写、翻訳および/または翻訳後修飾を含む)の段階やキナーゼ活性レベルに直接あるいは間接的に作用する調節要素をコードする遺伝子の発現の段階を含むどのような生理的段階で起こってもよい。したがって、調節はキナーゼの上昇/抑制された発現もしくは過剰なまたは不十分な発現を意味してもよく、それには転写効果による遺伝子増幅(すなわち、多重遺伝子コピー)および/または上昇したもしくは減少した発現や、((非)活性化を含む)変異によるプロテインキナーゼの過剰な(もしくは低下した)活性および(非)活性化が含まれる。従って、“調節された”、“調節している”および“調節する”なる語は適宜解釈されるべきである。
本明細書では、例えば、本明細書に記載されているようなキナーゼに関して(そして、例えば、様々な生理的な過程、疾病、状態、症状、処置、治療あるいは診療に対して)使用される“媒介される”なる語は、制限的に作用することを意味し、それによりその用語が使用される様々な過程、疾病、状態、症状、治療および診療で、前記キナーゼが生物学的役割を果たすものである。その用語が疾病、状態あるいは症状に対して使用される場合、キナーゼが奏する生物学的役割は直接的あるいは間接的であってもよく、また、その疾病、状態あるいは症状(あるいはその病因または進行)の発現に必要および/または十分な程度である。したがって、キナーゼ活性(特に、異常なキナーゼ活性レベル、例えばキナーゼ過剰発現)は、必ずしも疾病、状態あるいは症状の近因である必要はなく、むしろ、キナーゼが媒介する疾病、状態または症状は、多要因的な病因や複雑な進展を有するものを含み、その中で問題となっているキナーゼは部分的にのみ関係している、と理解される。その用語が治療、予防あるいは診療に対して使用される場合、キナーゼが奏する役割は直接的あるいは間接的であってもよく、また、治療、予防の作用あるいは診療の成果に必要および/または十分な程度である。したがって、キナーゼが媒介する病態または症状は、ある特定の抗癌剤あるいは治療に対する耐性の発生を含む。
本発明の化合物への言及は、式(I)および/または式(I´)もしくは式(I0)の化合物ならびに/あるいはそれらの塩(例えば、乳酸塩もしくはクエン酸塩)を含む。
癌などの病態または症状の予防または治療への言及は、癌の発生率を軽減するもしくは軽減することをその言葉の範囲に含む。
式(I)の化合物
次の一般的な好ましい選択肢および定義が、特に断りのない限り、式(I)のR1〜R10部分の各々、ならびにそれらの種々のサブグループ、部分定義、例および実施態様に当てはまる。本明細書では、R基の数字の後の上付文字は、そのR基がその数字のみにより示されるR基のサブグループを表す。従って、例えば、R1a、R1bおよびR1cは総てR1のサブグループであり、同様に、R9aおよびR9bはR9のサブグループである。従って、特に断りのない限り、例えばR1に関して示された一般的な好ましい選択肢、定義および例はそのサブグループR1a、R1b、R1cなどにも当てはまり、他のR基も同様である。
本明細書において式(I)に対する言及はいずれも、特に断りのない限り、式(II)〜(VIII)および式(I)の範囲内の化合物の他のサブグループについての言及であるとも見なされる。
本明細書においてオーロラキナーゼのアップレギュレーションとは、遺伝子増幅(すなわち、多重遺伝子コピー)をはじめとするオーロラキナーゼの発現の上昇または過剰発現、ならびに転写効果による発現の増加、ならびに変異による活性化をはじめとするオーロラキナーゼの過剰活性および活性化を含むものと定義される。
本明細書において“炭素環式”基および“複素環式”基とは、特に断りのない限り、芳香族環系と非芳香族環系の双方を含む。従って、例えば、“炭素環式基および複素環式基”とは、その範囲内に、芳香族、非芳香族、不飽和、部分飽和および完全飽和炭素環系および複素環系を含む。一般に、このような基は単環式または二環式であってよく、例えば、3〜12環員、より一般的には5〜10環員を含み得る。単環式基の例としては、3、4、5、6、7および8環員、より一般的には3〜7、好ましくは5または6環員を含む基がある。二環式基の例としては、8、9、10、11および12環員、より一般的には9または10環員を含むものがある。
炭素環式基または複素環式基は5〜12環員、より一般的には5〜10環員を有するアリールまたはヘテロアリール基であり得る。本明細書において“アリール”とは、芳香族性を有する炭素環式基を意味し、本明細書において“ヘテロアリール”とは、芳香族性を有する複素環式基を表す。“アリール”および“ヘテロアリール”とは1以上の環が非芳香族であるが、少なくとも1つの環が芳香族である、多環式(例えば、二環式)環系を包含する。このような多環式系では、基は芳香環によって結合されてもよいし、または非芳香環によって結合されてもよい。アリール基またはヘテロアリール基は、単環式基または二環式基であってよく、非置換型であっても、1以上の置換基、例えば、本明細書で定義される1以上の基R10で置換されていてもよい。
“非芳香族基”とは、芳香性を持たない不飽和環系、部分飽和および完全飽和炭素環式環系および複素環式環系を包含する。“不飽和”および“部分飽和”とは、環構造が1を超える価数の結合を共有する原子を含む環を意味し、すなわち、その環は少なくとも1つの多重結合、例えば、C=C、C≡CまたはN=C結合を含む。“完全飽和”とは、環原子間に多重結合がない環を意味する。飽和炭素環式基としては、以下で定義するようなシクロアルキル基が挙げられる。部分飽和炭素環式基としては、以下で定義するようなシクロアルケニル基、例えば、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニルおよびシクロオクテニルが挙げられる。
ヘテロアリール基の例としては、5〜12環員、より一般的には5〜10環員を含む単環式基および二環式基が挙げられる。ヘテロアリール基は、例えば、5員または6員単環式環であるか、または縮合5員環および6員環または2つの縮合6員環から、または2つの縮合5員環から形成された二環式構造であり得る。各環は、典型的には窒素、硫黄および酸素から選ばれる約4個までの異種原子を含んでいてもよい。典型的には、ヘテロアリール環は4個までのヘテロ原子を含んでいてよいが、さらに典型的には3個までのヘテロ原子、より一般的には2個までのヘテロ原子、例えば、1個のヘテロ原子を含む。一つの実施態様によれば、ヘテロアリール環は、少なくとも1個の環窒素原子を含む。ヘテロアリール環の窒素原子は、イミダゾールまたはピリジンの場合のように塩基性であってもよいし、あるいはインドールまたはピロール窒素の場合のように実質的に非塩基性であってもよい。一般に、環のアミノ基置換基を含むヘテロアリール基に存在する塩基性窒素原子数は5個未満である。
5員ヘテロアリール基の例としては、限定されるものではないが、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、フラザン、オキサゾール、オキサジアゾール、オキサトリアゾール、イソキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、ピラゾール、トリアゾールおよびテトラゾール基が挙げられる。
6員ヘテロアリール基の例としては、限定されるものではないが、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、ピリミジンおよびトリアジンが挙げられる。
二環式ヘテロアリール基としては、例えば、次のものから選ばれる基であり得る。
a)1、2または3環ヘテロ原子を含む5員または6員環と縮合したベンゼン環;
b)1、2または3環ヘテロ原子を含む5員または6員環と縮合したピリジン環;
c)1または2環ヘテロ原子を含む5員または6員環と縮合したピリミジン環;
d)1、2または3環ヘテロ原子を含む5員または6員環と縮合したピロール環;
e)1または2環ヘテロ原子を含む5員または6員環と縮合したピラゾール環;
f)1または2環ヘテロ原子を含む5員または6員環と縮合したイミダゾール環;
g)1または2環ヘテロ原子を含む5員または6員環と縮合したオキサゾール環;
h)1または2環ヘテロ原子を含む5員または6員環と縮合したイソキサゾール環;
i)1または2環ヘテロ原子を含む5員または6員環と縮合したチアゾール環;
j)1または2環ヘテロ原子を含む5員または6員環と縮合したイソチアゾール環;
k)1、2または3環ヘテロ原子を含む5員または6員環と縮合したチオフェン環;
l)1、2または3環ヘテロ原子を含む5員または6員環と縮合したフラン環;
m)1または2環ヘテロ原子を含む5員または6員環と縮合したオキサゾール環;
n)1または2環ヘテロ原子を含む5員または6員環と縮合したイソキサゾール環;
o)1、2または3環ヘテロ原子を含む5員または6員環と縮合したシクロヘキシル環;および
p)1、2または3環ヘテロ原子を含む5員または6員環と縮合したシクロペンチル環。
他の5員環と縮合した5員環を含む二環式ヘテロアリール基の特定の例としては、限定されるものではないが、イミダゾチアゾール(例えば、イミダゾ[2,1−b]チアゾール)およびイミダゾイミダゾール(例えば、イミダゾ[1,2−a]イミダゾール)が挙げられる。
5員環と縮合した6員環を含む二環式ヘテロアリール基の特定の例としては、限定されるものではないが、ベンズフラン、ベンズチオフェン、ベンゾイミダゾール、ベンズオキサゾール、イソベンズオキサゾール、ベンズイソキサゾール、ベンズチアゾール、ベンズイソチアゾール、イソベンゾフラン、インドール、イソインドール、インドリジン、インドリン、イソインドリン、プリン(例えば、アデニン、グアニン)、インダゾール、ピラゾロピリミジン(例えば、ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン)、トリアゾロピリミジン(例えば、[1,2,4]トリアゾロ[1,5−a]ピリミジン)、ベンゾジオキソールおよびピラゾロピリジン(例えば、ピラゾロ[1,5−a]ピリジン)基が挙げられる。
2つの縮合6員環を含む二環式ヘテロアリール基の特定の例としては、限定されるものではないが、キノリン、イソキノリン、クロマン、チオクロマン、クロメン、イソクロメン、クロマン、イソクロマン、ベンゾジオキサン、キノリジン、ベンズオキサジン、ベンゾジアジン、ピリドピリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、フタラジン、ナフチリジンおよびプテリジン基が挙げられる。
芳香環と非芳香環を含む多環式アリール基およびヘテロアリール基の例としては、テトラヒドロナフタレン、テトラヒドロイソキノリン、テトラヒドロキノリン、ジヒドロベンズチエン、ジヒドロベンズフラン、2,3−ジヒドロ−ベンゾ[1,4]ジオキシン、ベンゾ[1,3]ジオキソール、4,5,6,7−テトラヒドロベンゾフラン、インドリンおよびインダン基が挙げられる。
炭素環式アリール基の例としては、フェニル、ナフチル、インデニル、およびテトラヒドロナフチル基が挙げられる。
非芳香族複素環式基の例としては、3〜12環員を有する、より一般的には5〜10環員を有する基がある。このような基は例えば単環式または二環式であってよく、通常は窒素、酸素および硫黄から選ばれる1〜5個のヘテロ原子環員(より通常は1、2、3または4個のヘテロ原子環員)を典型的に有する。これらの複素環式基は例えば、環状エーテル部分(例えば、テトラヒドロフランおよびジオキサンの場合)、環状チオエーテル部分(例えば、テトラヒドロチオフェンおよびジチアンの場合)、環状アミン部分(例えば、ピロリジンの場合)、環状アミド部分(例えば、ピロリドンの場合)、環状チオアミド、環状チオエステル、環状尿素(例えば、イミダゾリジン−2−オンの場合)、環状エステル部分(例えば、ブチロラクトンの場合)、環状スルホン(例えば、スルホランおよびスルホレン)、環状スルホキシド、環状スルホンアミドおよびその組合せ(例えば、チオモルホリン)を含み得る。
特定の例としては、モルホリン、ピペリジン(例えば、1−ピペリジニル、2−ピペリジニル、3−ピペリジニルおよび4−ピペリジニル)、ピペリドン、ピロリジン(例えば、1−ピロリジニル、2−ピロリジニルおよび3−ピロリジニル)、ピロリドン、アゼチジン、ピラン(2H−ピランまたは4H−ピラン)、ジヒドロチオフェン、ジヒドロピラン、ジヒドロフラン、ジヒドロチアゾール、テトラヒドロフラン、テトラヒドロチオフェン、ジオキサン、テトラヒドロピラン(例えば、4−テトラヒドロピラニル)、イミダゾリン、イミダゾリジノン、オキサゾリン、チアゾリン、2−ピラゾリン、ピラゾリジン、ピペラゾン、ピペラジン、およびN−メチルピペラジンなどのN−アルキルピペラジンが挙げられる。一般に、好ましい非芳香族複素環式基としては、ピペリジン、ピロリジン、アゼチジン、モルホリン、ピペラジンおよびN−アルキルピペラジンなどの飽和基が挙げられる。
非芳香族炭素環式基の例としては、シクロヘキシルおよびシクロペンチルなどのシクロアルカン基、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニルおよびシクロオクテニルなどのシクロアルケニル基、ならびにシクロヘキサジエニル、シクロオクタテトラエン、テトラヒドロナフテニルおよびデカリニルが挙げられる。
本明細書において炭素環式基および複素環式基に関して、この炭素環式環または複素環式環は、特に断りのない限り、非置換型であるか、またはハロゲン、ヒドロキシ、トリフルオロメチル、シアノ、ニトロ、カルボキシ、アミノ、モノ−またはジ−C1−4ヒドロカルビルアミノ、3〜12環員を有する炭素環式基および複素環式基、Ra−Rb基(ここで、Raは、結合、O、CO、X1C(X2)、C(X2)X1、X1C(X2)X1、S、SO、SO2、NRc、SO2NRcまたはNRcSO2であり;Rbは、水素、3〜12環員を有する炭素環式基および複素環式基、ならびにヒドロキシ、オキソ、ハロゲン、シアノ、ニトロ、カルボキシ、アミノ、モノ−またはジ−C1−4ヒドロカルビルアミノ、3〜12環員を有する炭素環式基および複素環式基から選ばれる1以上の置換基で置換されていてもよいC1−8ヒドロカルビル基から選ばれ、このC1−8ヒドロカルビル基の1以上の炭素原子はO、S、SO、SO2、NRc、X1C(X2)、C(X2)X1またはX1C(X2)X1で置き換えられていてもよい)から選ばれる1以上の置換基R10で置換されているか、あるいは、2個の隣接する基R10は、これらが結合している炭素原子またはヘテロ原子と一緒になって5員ヘテロアリール環または5員もしくは6員非芳香族炭素環式環または複素環式環を形成していてもよく、ここで、前記ヘテロアリール基および複素環式基はN、OおよびSから選ばれる3個までのヘテロ原子環員を含み;
Rcは水素およびC1−4ヒドロカルビルから選ばれ;
X1はO、SまたはNRcであり、X2は=O、=Sまたは=NRcである。
置換基R10が炭素環式基または複素環式基を含んでなるか、または含む場合、前記炭素環式基または複素環式基は非置換型であってもよいし、またはそれ自体、1以上のさらなる置換基R10で置換されていてもよい。式(I)の化合物の1つのサブグループでは、このようなさらなる置換基R10は炭素環式基または複素環式基を含んでよく、これらは典型的にはそれ自体さらに置換されていない。式(I)の化合物のもう1つのサブグループでは、前記さらなる置換基は炭素環式基または複素環式基を含まないが、R10の定義において上記で挙げた基から選ばれる。
これらの置換基R10は、20個以下の非水素原子、例えば、15個以下の非水素原子、例えば、12個、または11個、または10個、または9個、または8個、または7個、または6個、または5個以下の非水素原子を含むように選ぶことができる。
これらの炭素環式基および複素環式基が隣接する環原子上に1対の置換基を有する場合、その2個の置換基は環式基を形成するように結合していてもよい。例えば、環の隣接する炭素原子上の隣接する1対の置換基は1以上のヘテロ原子および置換されていてもよいアルキレン基を介して結合し、縮合オキサ−、ジオキサ−、アザ−、ジアザ−またはオキサ−アザ−シクロアルキル基を形成していてもよい。このような結合置換基の例としては、
が挙げられる。
ハロゲン置換基の例としては、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素が挙げられる。フッ素および塩素は特に好ましい。
上記式(I)で表され、また、以下で使用される化合物の定義において、“ヒドロカルビル”とは、特に断りのない限り、総てが炭素の骨格を有する脂肪族基、脂環式基および芳香族基を含む包括的な用語である。本明細書で定義されるような特定の場合では、炭素骨格を形成している1以上の炭素原子は特定の原子または原子群で置き換えられていてもよい。ヒドロカルビル基の例としては、アルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル、炭素環式アリール、アルケニル、アルキニル、シクロアルキルアルキル、シクロアルケニルアルキル、ならびに炭素環式アラルキル、アラルケニルおよびアラルキニル基が挙げられる。このような基は、非置換型であっても、または記載のように、本明細書で定義される1以上の置換基で置換されていてもよい。以下で示す例および好ましい選択肢は、特に断りのない限り、式(I)の化合物についての種々の置換基の定義において言及される、ヒドロカルビル置換基またはヒドロカルビル含有置換基の各々に当てはまる。
好ましい非芳香族ヒドロカルビル基はアルキルおよびシクロアルキル基などの飽和基である。
一般に、例えば、ヒドロカルビル基は、特に断りのない限り、8個までの炭素原子を有することができる。1〜8個の炭素原子を有するヒドロカルビル基のサブセット内で、特定の例としては、C1−4ヒドロカルビル基(例えば、C1−3ヒドロカルビル基またはC1−2ヒドロカルビル基)のようなC1−6ヒドロカルビル基があり、具体例は、C1、C2、C3、C4、C5、C6、C7およびC8ヒドロカルビル基から選ばれるいずれかの個々の値または値の組合せである。
“アルキル”なる語は、直鎖および分岐鎖の双方のアルキル基を含む。アルキル基の例としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、2−ペンチル、3−ペンチル、2−メチルブチル、3−メチルブチルおよびn−ヘキシルおよびその異性体が挙げられる。1〜8個の炭素原子を有するアルキル基のサブセット内で、特定の例としては、C1−4アルキル基(例えば、C1−3アルキル基またはC1−2アルキル基)のようなC1−6アルキル基が挙げられる。
シクロアルキル基の例としては、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサンおよびシクロヘプタンから得られるものがある。シクロアルキル基のサブセット内で、シクロアルキル基は、3〜8個までの炭素原子を有し、特定の例としては、C3−6シクロアルキル基が挙げられる。
アルケニル基の例としては、限定されるものではないが、エテニル(ビニル)、1−プロペニル、2−プロペニル(アリル)、イソプロペニル、ブテニル、ブタ−1,4−ジエニル、ペンテニルおよびヘキセニルが挙げられる。アルケニル基のサブセット内で、アルケニル基は2〜8個の炭素原子を有し、特定の例としては、C2−4アルケニル基のようなC2−6アルケニル基が挙げられる。
シクロアルケニル基の例としては、限定されるものではないが、シクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロペンタジエニルおよびシクロヘキセニルが挙げられる。シクロアルケニル基のサブセット内で、シクロアルケニル基は、3〜8個の炭素原子を有し、特定の例としては、C3−6シクロアルケニル基が挙げられる。
アルキニル基の例としては、限定されるものではないが、エチニルおよび2−プロピニル(プロパルギル)基が挙げられる。アルキニル基のサブセット内で、アルキニル基は2〜8個の炭素原子を有し、特定の例としては、C2−4アルキニル基のようなC2−6アルキニル基が挙げられる。
炭素環式アリール基の例としては、置換および非置換フェニルが挙げられる。
シクロアルキルアルキル基、シクロアルケニルアルキル基、炭素環式アラルキル基、アラルケニル基およびアラルキニル基の例としては、フェネチル、ベンジル、スチリル、フェニルエチニル、シクロヘキシルメチル、シクロペンチルメチル、シクロブチルメチル、シクロプロピルメチル基およびシクロペンテニルメチル基が挙げられる。
ヒドロカルビル基は、存在し、記載されている場合には、ヒドロキシ、オキソ、アルコキシ、カルボキシ、ハロゲン、シアノ、ニトロ、アミノ、モノ−またはジ−C1−4ヒドロカルビルアミノならびに3〜12(典型的には3〜10、より通常は5〜10)の環員を有する単環もしくは二環炭素環式基および複素環式基から選ばれる1以上の置換基で置換されていてもよい。好ましい置換基としては、フッ素などのハロゲンが挙げられる。従って、例えば、置換ヒドロカルビル基は、ジフルオロメチルまたはトリフルオロメチルなどの部分フッ素化または過フッ素化基であり得る。一つの実施態様では、好ましい置換基としては、3〜7環員、より一般的には3、4、5または6環員を有する単環炭素環式基および複素環式基が挙げられる。
記載のように、ヒドロカルビル基の1以上の炭素原子が、O、S、SO、SO2、NRc、X1C(X2)、C(X2)X1またはX1C(X2)X1(式中、X1およびX2は、上記で定義した通りであり、ただし、ヒドロカルビル基の少なくとも1個の炭素原子は残っている)で置き換えられていてもよい。例えば、ヒドロカルビル基の1個、2個、3個または4個の炭素原子は、列挙した原子または基のうちの1つで置き換えられていてもよく、置き換わる原子または基は、同一であっても、異なっていてもよい。一般に、置き換えられる直鎖または骨格の炭素原子の数は、それらに取って代わる基の直鎖または骨格原子の数に相当する。ヒドロカルビル基の1以上の炭素原子が上記で定義した置換原子または基で置き換えられている基の例としては、エーテルおよびチオエーテル(OまたはSで置換されたC)、アミド、エステル、チオアミドおよびチオエステル(X1C(X2)またはC(X2)X1で置換されたC−C)、スルホンおよびスルホキシド(SOまたはSO2で置換されたC)、アミン(NRcで置換されたC)、および尿素、カーボネート、およびカルバメート(X1C(X2)X1で置換されたC−C−C)が挙げられる。
アミノ基が2個のヒドロカルビル置換基を有する場合、これらは、これらが結合している窒素原子と一緒に、かつ、場合によって窒素、硫黄または酸素などの別のヘテロ原子と一緒に、結合して4〜7環員の環構造を形成してもよい。
本明細書において定義“Ra−Rb”には、炭素環部分または複素環部分に存在する置換基に関してか、または式(I)の化合物上の他の位置に存在する他の置換基に関して、とりわけ、Raが、結合、O、CO、OC(O)、SC(O)、NRcC(O)、OC(S)、SC(S)、NRcC(S)、OC(NRc)、SC(NRc)、NRcC(NRc)、C(O)O、C(O)S、C(O)NRc、C(S)O、C(S)S、C(S)NRc、C(NRc)O、C(NRc)S、C(NRc)NRc、OC(O)O、SC(O)O、NRcC(O)O、OC(S)O、SC(S)O、NRcC(S)O、OC(NRc)O、SC(NRc)O、NRcC(NRc)O、OC(O)S、SC(O)S、NRcC(O)S、OC(S)S、SC(S)S、NRcC(S)S、OC(NRc)S、SC(NRc)S、NRcC(NRc)S、OC(O)NRc、SC(O)NRc、NRcC(O)NRc、OC(S)NRc、SC(S)NRc、NRcC(S)NRc、OC(NRc)NRc、SC(NRc)NRc、NRcC(NRcNRc、S、SO、SO2、NRc、SO2NRcおよびNRcSO2、ここでRcは上記で定義した通りである、から選ばれる化合物が含まれる。
部分Rbは、水素であってもよいし、あるいは3〜12(典型的には3〜10、より通常は5〜10)環員を有する炭素環式基および複素環式基、ならびに上記で定義されたように、置換されていてもよいC1−8ヒドロカルビル基から選ばれる基であってもよい。ヒドロカルビル、炭素環式基および複素環式基の例は上記で示した通りである。
RaがOであり、RbがC1−8ヒドロカルビル基である場合、RaおよびRbは一緒になってヒドロカルビルオキシ基を形成する。好ましいヒドロカルビルオキシ基としては、アルコキシ(例えば、C1−6アルコキシ、より一般的にはエトキシおよびメトキシ、特にメトキシなどのC1−4アルコキシ)、シクロアルコキシ(例えば、シクロプロピルオキシ、シクロブチルオキシ、シクロペンチルオキシおよびシクロヘキシルオキシなどのC3−6シクロアルコキシ)およびシクロアルキルアルコキシ(例えば、シクロプロピルメトキシなどのC3−6シクロアルキル−C1−2アルコキシ)などの飽和ヒドロカルビルオキシが挙げられる。
これらのヒドロカルビルオキシ基は、本明細書で定義した種々の置換基で置換されていてもよい。例えば、アルコキシ基は、ハロゲン(例えば、ジフルオロメトキシおよびトリフルオロメトキシの場合)、ヒドロキシ(例えば、ヒドロキシエトキシの場合)、C1−2アルコキシ(例えば、メトキシエトキシの場合)、ヒドロキシ−C1−2アルキル(ヒドロキシエトキシエトキシの場合)または環式基(例えば、上記で定義したシクロアルキル基または非芳香族複素環式基)で置換されていてもよい。置換基として非芳香族複素環式基を有するアルコキシ基の例は、その複素環式基がモルホリン、ピペリジン、ピロリジン、ピペラジン、C1−4アルキル−ピペラジン、C3−7−シクロアルキル−ピペラジン、テトラヒドロピランまたはテトラヒドロフランなどの飽和環状アミンであり、そのアルコキシ基がC1−4アルコキシ基、より典型的にはメトキシ、エトキシまたはn−プロポキシなどのC1−3アルコキシ基であるものがある。
ピロリジン、ピペリジン、モルホリンおよびピペラジンなどの単環式基で置換されたアルコキシ基、ならびにN−ベンジル、N−C1−4アシルおよびN−C1−4アルコキシカルボニルなどのそのN−置換誘導体。特定の例としては、ピロリジノエトキシ、ピペリジノエトキシおよびピペラジノエトキシが挙げられる。
Raが結合であり、RbがC1−8ヒドロカルビル基である場合、ヒドロカルビル基Ra−Rbの例は上記で定義した通りである。ヒドロカルビル基はシクロアルキルおよびアルキルなどの飽和基であってもよく、このような基の特定の例としては、メチル、エチルおよびシクロプロピルが挙げられる。ヒドロカルビル(例えば、アルキル)基は上記で定義した種々の基および原子で置換されていてもよい。置換アルキル基の例としては、フッ素および塩素などの1以上のハロゲン原子で置換されたアルキル基(特定の例としては、ブロモエチル、クロロエチルおよびトリフルオロメチルが挙げられる)、またはヒドロキシで置換されたアルキル基(例えば、ヒドロキシメチルおよびヒドロキシエチル)、C1−8アシルオキシで置換されたアルキル基(例えば、アセトキシメチルおよびベンジルオキシメチル)、アミノおよびモノ−およびジアルキルアミノで置換されたアルキル基(例えば、アミノエチル、メチルアミノエチル、ジメチルアミノメチル、ジメチルアミノエチルおよびtert−ブチルアミノメチル)、アルコキシで置換されたアルキル基(例えば、メトキシエチルの場合のメトキシなどのC1−2アルコキシ)、ならびに上記で定義したシクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基および非芳香族複素環式基などの環式基で置換されたアルキル基が挙げられる。
環式基で置換されたアルキル基の特定の例としては、その環式基が、モルホリン、ピペリジン、ピロリジン、ピペラジン、C1−4−アルキル−ピペラジン、C3−7−シクロアルキル−ピペラジン、テトラヒドロピランまたはテトラヒドロフランなどの飽和環状アミンであり、そのアルキル基がC1−4アルキル基、より典型的にはメチル、エチルまたはn−プロピルなどのC1−3アルキル基であるものがある。環式基で置換されたアルキル基の具体例としては、ピロリジノメチル、ピロリジノプロピル、モルホリノメチル、モルホリノエチル、モルホリノプロピル、ピペリジニルメチル、ピペラジノメチルおよび上記で定義したそのN−置換形態が挙げられる。
アリール基およびヘテロアリール基で置換されたアルキル基の特定の例としては、ベンジルおよびピリジルメチル基が挙げられる。
RaがSO2NRcであるとき、Rbは例えば水素または置換されていてもよいC1−8ヒドロカルビル基、または炭素環式基もしくは複素環式基であってよい。RaがSO2NRcである場合のRa−Rbの例としては、アミノスルホニル、C1−4アルキルアミノスルホニルおよびジ−C1−4アルキルアミノスルホニル基、およびピペリジン、モルホリン、ピロリジン、またはN−置換されていてもよいピペラジン(N−メチルピペラジンなど)といった環状アミノ基から形成されたスルホンアミドが挙げられる。
Ra−Rb基の例としては、RaがSO2である場合、アルキルスルホニル、ヘテロアリールスルホニルおよびアリールスルホニル基、特に単環式アリールおよびヘテロアリールスルホニル基が挙げられる。特定の例としては、メチルスルホニル、フェニルスルホニルおよびトルエンスルホニルが挙げられる。
RaがNRcである場合、Rbは例えば、水素または置換されていてもよいC1−8ヒドロカルビル基、または炭素環式基または複素環式基であってよい。RaがNRcである場合のRa−Rb基の例としては、アミノ、C1−4アルキルアミノ(例えば、メチルアミノ、エチルアミノ、プロピルアミノ、イソプロピルアミノ、tert−ブチルアミノ)、ジ−C1−4アルキルアミノ(例えば、ジメチルアミノおよびジエチルアミノ)ならびにシクロアルキルアミノ(例えば、シクロプロピルアミノ、シクロペンチルアミノおよびシクロヘキシルアミノ)が挙げられる。
特定のおよび好ましい式(I)の化合物
式(I)において、XはCR5またはNであってよい。特定の一つの実施態様では、XはNである。もう1つの特定の実施態様では、XはCHである。好ましくは、XはNである。
R0は水素であるか、または存在する場合、Rgと一緒になって架橋基−(CH2)p−、ここでpは2〜4、より一般的には2〜3、例えば2である、を形成していてもよい。好ましくは、R0は水素である。
R
0とR
g基が架橋基−(CH
2)
p−を形成する場合、−(CH
2)
m−(B)
n−NR
0−部分は次のように表すことができる。
Aが結合または−(CH2)m−(B)n−基、ここでnは0である、である場合、XはNまたはCR5、ここでR5は水素またはR10基である、である。より好ましくは、XはNである。
Aが結合または−(CH2)m−(B)n−基、ここでnは1である、である場合、XはNまたはCR5、ここでR5は水素またはR2基である、であるのが好ましい。より好ましくは、XはNである。
R5が水素以外であり、より具体的には、nが1である場合、R5は好ましくは、14個以下の原子を含む小さな置換基、例えば、C1−4アルキルまたはC3−6シクロアルキル基、例えば、メチル、エチル、プロピルおよびブチル、またはシクロプロピルおよびシクロブチルである。
Aは結合または−(CH2)m−(B)n−、ここでBはC=O、NRg(C=O)またはO(C=O)であり、mは0、1または2でありnは0または1である、である。本発明の化合物の1つの好ましい群では、mは0または1であり、nは1であり、BはC=OまたはNRg(C=O)、好ましくは、C=Oである。より好ましくは、mは0であり、nは1であり、BはC=Oである。現在のところ、BがNRg(C=O)である場合、Rgが水素であるのが好ましい。
ピラゾール環の4位に結合されたR1−A−NH部分はアミンR1−(CH2)m−NH、アミドR1−(CH2)m−C(=O)NH、尿素R1−(CH2)m−NHC(=O)NHまたはカルバメートR1−(CH2)m−OC(=O)NHの形態をとり得ると考えられ、各場合において、mは0、1または2、好ましくは0または1、最も好ましくは0である。
R1は水素、3〜12環員を有する炭素環式基もしくは複素環式基、または置換されていてもよい、上記で定義したC1−8ヒドロカルビル基である。炭素環式基および複素環式基、ならびに置換されていてもよいヒドロカルビル基の例は上記で示した通りである。
例えば、R1は3〜10環員を有する単環式基または二環式基であってよい。
R1が単環式基である場合、典型的にはそれは3〜7環員、より通常は3〜6環員、例えば、3、4、5または6環員を有する。
単環式基R1がアリール基である場合、それは6環員を有し、非置換または置換フェニル環である。
単環式基R1が非芳香族炭素環式基である場合、それは3〜7環員、より通常は3〜6環員、例えば、3、または4、または5、または6環員を有し得る。この非芳香族炭素環式基は飽和型であっても部分不飽和型であってもよいが、好ましくは飽和型であり、すなわち、R1はシクロアルキル基である。
単環式基R1がヘテロアリール基である場合、それは5員環または6環員を有する。5員環および6環員を有するヘテロアリール基の例は上記に示されており、特定の例を下記に示す。
化合物の1つのサブグループでは、ヘテロアリール基は5環員を有する。
化合物のもう1つのサブグループでは、ヘテロアリール基は6環員を有する。
単環式ヘテロアリール基R1は典型的にはN、OおよびSから選ばれる4個までの環ヘテロ原子、より典型的には3個までの環ヘテロ原子、例えば1個、または2個、または3個の環ヘテロ原子を有する。
R1は非芳香族単環式複素環式基である場合、それは上記または下記に列挙されるいずれか1つの基であり得る。このような基は典型的には4〜7環員、より好ましくは5員環または6環員を有する。非芳香族単環式複素環式基は一般に、N、SおよびOから選ばれる3個までの環ヘテロ原子、より典型的には1個または2個の環ヘテロ原子を含む。この複素環式基は飽和型であっても部分不飽和型であってもよいが、飽和型が好ましい。非芳香族単環式複素環式基の特定の例としては、上記“一般的な好ましい選択肢および定義”の部分で定義した、そして下記の表および例で示される特定の例および好ましい例がある。
R1が二環式基である場合、それは典型的には8〜10環員、例えば、8環員、または9環員、または10環員を有する。この二環式基はアリール基またはヘテロアリール基であってよく、このような基の例としては、他の5員環と縮合した5員環;6員環と縮合した5員環;他の6員環と縮合した6員環を含んでなる基が挙げられる。このようなカテゴリーの各々の基の例は上記“一般的な好ましい選択肢および定義”の部分で示されている。
二環式アリール基またはヘテロアリール基は2個の芳香族環もしくは不飽和環、または1個の芳香族と1個の非芳香族(例えば、部分飽和)環を含んでいてもよい。
二環式ヘテロアリール基は典型的にはN、SおよびOから選ばれる4個までのヘテロ原子環員を含む。従って、例えば、それらは1個、または2個、または3個、または4個のヘテロ原子環員を含み得る。
単環式および二環式複素環式基R1において、ヘテロ原子環員の組合せの例としては、N;NN;NNN;NNNN;NO;NNO;NS、NNS、O、S、OO、およびSSが挙げられる。
R1の特定の例としては、ピラゾロ[1,5−a]ピリジニル(例えば、ピラゾロ[1,5−a]ピリジン−3−イル)、フラニル(例えば、2−フラニルおよび3−フラニル)、インドリル(例えば、3−インドリル、4−インドリルおよび7−インドリル)、オキサゾリル、チアゾリル(例えば、チアゾール−2−イルおよびチアゾール−5−イル)、イソキサゾリル(例えば、イソキサゾール−3−イルおよびイソキサゾール−4−イル)、ピロリル(例えば、3−ピロリル)、ピリジル(例えば、2−ピリジル)、キノリニル(例えば、キノリン−8−イル)、2,3−ジヒドロ−ベンゾ[1,4]ジオキシン(例えば、2,3−ジヒドロ−ベンゾ[1,4]ジオキシン−5−イル)、ベンゾ[1,3]ジオキソール(例えば、ベンゾ[1,3]ジオキソール−4−イル)、2,3−ジヒドロベンゾフラニル(例えば、2,3−ジヒドロベンゾフラン−7−イル)、イミダゾリルおよびチオフェニル(例えば、3−チオフェニル)から選ばれる置換されていてもよい、または非置換のヘテロアリール基が挙げられる。
R1の他の例としては、ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン、イソベンゾフラン、[1,2,4]トリアゾロ[1,5−a]ピリミジン、テトラゾリル、テトラヒドロイソキノリニル(例えば、1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−7−イル)、ピリミジニル、ピラゾリル、トリアゾリル、4,5,6,7−テトラヒドロ−ベンゾ[d]イソキサゾール、フタラジン、2H−フタラジン−1−オン、ベンズオキサゾール、シンノリン、キノキサリン、ナフタレン、ベンゾ[c]イソキサゾール、イミダゾ[2,1−b]チアゾール、ピリドン、テトラヒドロキノリニル(例えば、1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−6−イル)、および4,5,6,7−テトラヒドロ−ベンゾフラン基から選ばれる置換または非置換ヘテロアリール基が挙げられる。
好ましいR1ヘテロアリール基としては、ピラゾロ[1,5−a]ピリジニル、フラニル、2,3−ジヒドロベンゾフラニル、チオフェニル、インドリル、チアゾリル、イソキサゾリルおよび2,3−ジヒドロ−ベンゾ[1,4]ジオキシン基が挙げられる。
好ましいアリール基R1は置換されていてもよいフェニル基である。
非芳香族基R1の例としては、単環式シクロアルキルおよびアザシクロアルキル基、例えば、シクロヘキシル、シクロペンチルおよびピペリジニル、特にシクロヘキシルおよび4−ピペリジニル基などが挙げられる。非芳香族基R1の他の例としては、テトラヒドロピラニルなどの単環式オキサシクロアルキル基、およびモルホリノ(例えば、2−モルホリノおよび4−モルホリノ)などのアザ−オキサシクロアルキル基が挙げられる。
好ましい置換および非置換C1−8ヒドロカルビル基としては、トリフルオロメチルおよび第三級ブチル基が挙げられる。
好ましいR1基の1つのサブセットとしては、フェニル、ピラゾロ[1,5−a]ピリジニルおよび2,3−ジヒドロ−ベンゾ[1,4]ジオキシン基が挙げられる。
好ましいR1基のもう1つのサブセットとしては、非置換および置換フェニル、ピラゾロ[1,5−a]ピリジニル、2,3−ジヒドロ−ベンゾ[1,4]ジオキシン、インドール−4−イル、2,3−ジヒドロベンゾフラニル、tert−ブチル、フラニル、ピラゾロ[1,5−a]ピリジン−3−イル、ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3−イル、オキサゾリル、イソキサゾリル、ベンゾオキサゾール−2−イル、2H−テトラゾール−5−イル、ピラジン−2−イル、ピラゾリル、ベンジル、アルファ,アルファ−ジメチルベンジル、アルファ−アミノベンジル、アルファ−メチルアミノベンジル、4,5,6,7−テトラヒドロ−ベンゾ[d]イソキサゾール−3−イル、2H−フタラジン−1−オン−4−イル、ベンゾキサゾール−7−イル、キナゾリニル、2−ナフチル、シクロプロピル、ベンゾ[c]イソキサゾール−3−イル、4−ピペリジニル、5−チアゾリル、2−ピリジル、3−ピリジル、3−ピロリル、イソキサゾリル、イミダゾ[2,1−b]チアゾリル、4−ピリミジニル、シクロヘキシル、テトラヒドロピラン−4−イル、テトラヒドロキノリニル、4,5,6,7−テトラヒドロ−ベンゾフラニルおよびモルホリニル基が挙げられる。
R1基は非置換または置換炭素環式基または複素環式基であってよく、その1以上の置換基は上記で定義したR10基から選ぶことができる。一つの実施態様では、R1上の置換基は、ハロゲン、ヒドロキシ、トリフルオロメチル、シアノ、ニトロ、カルボキシ、5または6環員と、O、NおよびSから選ばれる2個までのヘテロ原子とを有する複素環式基、Ra−Rb基からなるR10a基から選ぶことができ、ここでRaは結合、O、CO、X3C(X4)、C(X4)X3、X3C(X4)X3、S、SO、またはSO2であり、Rbは水素、5または6環員と、O、NおよびSから選ばれる2個までのヘテロ原子とを有する複素環式基、ならびにヒドロキシ、オキソ、ハロゲン、シアノ、ニトロ、カルボキシ、アミノ、モノ−またはジ−C1−4ヒドロカルビルアミノ、5または6環員と、O、NおよびSから選ばれる2個までのヘテロ原子とを有する炭素環式基および複素環式基から選ばれる1以上の置換基で置換されていてもよいC1−8ヒドロカルビル基からから選ばれ、このC1−8ヒドロカルビル基の1以上の炭素原子はO、S、SO、SO2、X3C(X4)、C(X4)X3またはX3C(X4)X3で置き換えられていてもよく、X3はOまたはSであり、X4は=Oまたは=Sである。
さらなる実施態様では、R1上の置換基は、ハロゲン、ヒドロキシ、トリフルオロメチル、シアノ、ニトロ、カルボキシ、Ra−Rb基からなるR10b基から選ぶことができ、ここでRaは結合、O、CO、X3C(X4)、C(X4)X3、X3C(X4)X3、S、SO、またはSO2であり、Rbは水素、およびヒドロキシ、オキソ、ハロゲン、シアノ、ニトロ、カルボキシから選ばれる1以上の置換基で置換されていてもよいC1−8ヒドロカルビル基から選ばれ、このC1−8ヒドロカルビル基の1以上の炭素原子はO、S、SO、SO2、X3C(X4)、C(X4)X3またはX3C(X4)X3で置き換えられていてもよく、X3はOまたはSであり、X4は=Oまたは=Sである。
他の実施態様では、R1上の置換基は、ハロゲン、ヒドロキシ、トリフルオロメチル、Ra−Rb基から選ぶことができ、ここでRaは、結合またはOであり、Rbは、水素、ならびにヒドロキシルおよびハロゲンから選ばれる1以上の置換基で置換されていてもよいC1−4ヒドロカルビル基から選ばれる。
R1基(例えば、アリールまたはヘテロアリール基R1)上に存在し得る置換基の1つのサブセットとしては、フッ素、塩素、メトキシ、メチル、オキサゾリル、モルホリノ、トリフルオロメチル、ブロモメチル、クロロエチル、ピロリジノ、ピロリジニルエトキシ、ピロリジニルメチル、ジフルオロメトキシおよびモルホリノメチルが挙げられる。
R1基上に存在し得る置換基のもう1つのサブセットとしては、フッ素、塩素、メトキシ、エトキシ、メチル、エチル、イソプロピル、tert−ブチル、アミノ、オキサゾリル、モルホリノ、トリフルオロメチル、ブロモメチル、クロロエチル、ピロリジノ、ピロリジニルエトキシ、ピロリジニルメチル、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、モルホリノ、N−メチルピペラジノ、ピペラジン、ピペリジノ、ピロリジノ、およびモルホリノメチルが挙げられる。
このR1部分は1以上の置換基で置換されていてもよい。従って、例えば、1または2または3または4個の置換基、より典型的には1、2または3個の置換基が存在し得る。一つの実施態様では、R1が6員環(例えば、フェニル環などの炭素環式環)である場合、単一の置換基が存在してもよく、これはその環の2位、3位および4位のうちいずれか1つに存在し得る。他の実施態様では、2個または3個の置換基が存在してよく、これらはその環の2位、3位、4位または6位に存在し得る。例として、フェニル基R1は2,6−二置換、2,3−二置換、2,4−二置換、2,5−二置換、2,3,6−三置換または2,4,6−三置換であってもよい。
一つの実施態様では、フェニル基R1は、フッ素、塩素およびRa−Rb、ここでRaはOであり、RbはC1−4アルキルである、から選ばれる置換基、(フッ素が特定の置換基である)で、2位と6位に二置換されていてもよい。
化合物の1つのサブグループでは、R1基はO、NおよびSから選択される1または2個の環ヘテロ原子を含む5員ヘテロアリール基である。特定のヘテロアリール基としては、フラン、チオフェン、ピロール、オキサゾール、イソキサゾールおよびチアゾール基が挙げられる。これらのヘテロアリール基は非置換型であっても、上記で定義した1以上の置換基で置換されていてもよい。
5員ヘテロアリール基の1つの好ましい群は、置換されていてもよいイソキサゾールおよびチアゾール基からなる。
化合物のもう1つのサブグループでは、R1はピラゾロピリジン基、例えば、3−ピラゾロ[1,5−a]ピリジニル基などのピラゾロ[1,5−a]ピリジン基である。
R1基の特定の例としては、PCT/GB2004/002824(WO2005/002552)の37〜46ページの表1に示されている基A1〜A183(例えば、A1〜A60)が挙げられる。
本発明の化合物の1つの好ましいサブセットとしては、R1がA1〜A34から選ばれる基であるサブセットである。
本発明の化合物のもう1つの好ましいサブセットとしては、R1がA1〜A24、A26〜A34、A38〜A46、A48〜A57、A59〜A64、A66〜A114、A116〜A165、A167〜A168およびA170〜A183から選ばれるサブセットである。
R1基の1つの特に好ましいサブセットは、2,6−ジフルオロフェニル、2−クロロ−6−フルオロフェニル、2−フルオロ−6−メトキシフェニル、2,6−ジクロフェニル、2,4,6−トリフルオロフェニル、2−クロロ−6−メチル、2,3−ジヒドロ−ベンゾ[1,4]ジオキシン−5−イルおよびピラゾロ[1,5−a]ピリジン−3−イルを含む。このサブセットから選ばれるR1基を含む化合物は特に優れたcdk阻害活性を有する。
R1基のもう1つの特に好ましいサブセットは、2,6−ジフルオロフェニル、2−メトキシフェニル、2,6−ジフルオロ−4−メトキシフェニル、2−フルオロ−6−メトキシフェニル、2−フルオロ−5−メトキシフェニル、2,6−ジメトキシフェニル、2,4−ジメトキシフェニル、2−クロロ−6−フルオロフェニル、2,6−ジクロロフェニル、2,4,6−トリフルオロフェニル、2−クロロ−6−メチル、2,3−ジヒドロ−ベンゾ[1,4]ジオキシン−5−イルおよびピラゾロ[1,5−a]ピリジン−3−イルを含む。
cdkキナーゼの阻害に関して、現在最も好ましい1つのR1基は2,6−ジフルオロフェニルである。
R2は水素、ハロゲン、メトキシ、またはハロゲン、ヒドロキシルまたはメトキシで置換されていてもよいC1−4ヒドロカルビル基である。好ましくは、R2は水素、塩素またはメチルであり、最も好ましくは、R2は水素である。
式(I)の化合物において、R3およびR4は、これらが結合している炭素原子と一緒になって、その3個までがN、OおよびSから選ばれるヘテロ原子であり得る5〜7環員を有する縮合複素環式基または炭素環式基を形成している。この縮合炭素環式環または複素環式環は上記で定義した0〜4個のR10基で置換されていてもよい。この縮合複素環式基または炭素環式基は芳香族であっても非芳香族であってもよいが、芳香族であるのが好ましい。
1つの好ましい化合物群では、R3およびR4は、これらが結合している炭素原子と一緒になって5〜7環員を有する縮合炭素環式基を形成している。
縮合5員および6員炭素環式基または複素環式基が特に好ましい。縮合複素環式環の例としては、チアゾロ、イソチアゾロ、オキサゾロ、イソキサゾロ、ピロロ、ピリド、チエノ、フラノ、ピリミド、ピラゾロ、ピラジノ、テトラヒドロアゼピノン、およびイミダゾロ縮合環などの5員環および6員環が挙げられる。この縮合複素環式基は6員環基から選択されるのが好ましく、1つの特に好ましい基はピリド基である。
縮合炭素環式環の例は、ベンゾ、ジヒドロまたはテトラヒドロ−ベンゾおよびシクロペンタ−縮合環などの5員環および6員環を含む。6員環が好ましい。1つの特に好ましい基はベンゾ基である。
5員環とR
3およびR
4により形成される環系の特定の例として、以下に示される環系(i)〜(iv)がある。環系(i)が一般に好ましい。
この縮合炭素環式基または複素環式基は、上記で定義した1以上の基R10で置換されていてもよい。
一つの実施態様では、縮合炭素環式基または複素環式基上の置換基は、ハロゲン、ヒドロキシ、トリフルオロメチル、シアノ、ニトロ、カルボキシ、アミノ、3〜7環員(典型的には5または6環員)を有する単環の炭素環式基および複素環式基、Ra−Rb基から選ぶことができ、ここでRaは、結合、O、CO、X1C(X2)、C(X2)X1、X1C(X2)X1、S、SO、SO2、NRc、SO2NRcまたはNRcSO2であり;Rbは、水素、3〜7環員を有する炭素環式基または複素環式基、ならびにヒドロキシ、オキソ、ハロゲン、シアノ、ニトロ、カルボキシ、アミノ、モノ−またはジ−C1−4ヒドロカルビルアミノ、3〜7環員を有する炭素環式基または複素環式基から選ばれる1以上の置換基で置換されていてもよいC1−8ヒドロカルビル基から選ばれ、このC1−8ヒドロカルビル基の1以上の炭素原子はO、S、SO、SO2、NRc、X1C(X2)、C(X2)X1またはX1C(X2)X1で置き換えられていてもよく;Rc、X1およびX2は上記で定義した通りであるか、あるいは2つの隣接する基R10は、これらが結合している炭素原子またはヘテロ原子と一緒になって5員ヘテロアリール環または5員もしくは6員非芳香族複素環式環を形成してもよく、前記ヘテロアリールおよび複素環式基はN、OおよびSから選ばれる3個までのヘテロ原子環員を含む。
R3およびR4により形成される縮合炭素環式基または複素環式基上の好ましいR10基としては、ハロゲン(例えば、フッ素および塩素)、Ra−Rb基が挙げられ、ここでRaは結合、O、CO、C(X2)X1であり、Rbは水素、3〜7環員(好ましくは、5環員または6環員)を有する複素環式基、ならびにヒドロキシ、カルボキシ、アミノ、モノ−またはジ−C1−4ヒドロカルビルアミノ、3〜7環員(例えば、5環員または6環員)を有する複素環式基から選ばれる1以上の置換基で置換されていてもよいC1−4ヒドロカルビル基(例えば、アルキルまたはシクロアルキル基などの飽和ヒドロカルビル基)から選択される。
特定の式(I)の化合物は、例えばPCT/GB2004/002824(WO2005/002552)中の式(II)〜(IXa)の化合物およびそのいずれのサブグループ、PCT/GB2004/002824(WO2005/002552)中で列挙された化合物、およびPCT/GB2004/002824(WO2005/002552)中の実施例部分で例示された化合物で定義されたものである。
好ましい式(I)の化合物は、1−(2,6−ジフルオロフェニル)−N−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素ならびにその塩、N−オキシド、互変異性体および溶媒和物、特にその塩である。
特定の式(I)の化合物は、下記に示したようなWO2005/002252の実施例3〜305のものを含む。
NH部分(例えば、アミドおよび尿素NH基、ベンゾイミダゾールNH基およびピラゾールNH基)を含む以下に示される多くの化合物で、水素原子は明確に示されていない。しかしながら、そのような場合、水素原子が存在すると理解されてしかるべきである。例えば、多くの化合物で、ピラゾール環の1位の水素原子は明確に示されていない、つまりピラゾール環は次のように記される。
そのような場合、水素原子は1位に存在すると理解されてしかるべきである、すなわち上記構造は次と同じである。
これらの化合物はWO2005/002552の109〜257ページに記載されているように製造することができる。
本発明で使用する特定の式(I)の化合物はWO2005/002552の式(III)の化合物である。
〔式中、R
1、R
2およびR
6〜R
9は本明細書で定義した通りである。〕
本発明で使用する更なる化合物群はWO2005/002552の式(Va)で表すことができる
〔式中、R
6a〜R
9a、R
13、R
14およびR
16ならびにそのサブグループは、WO2005/002552で定義したとおりである〕。
本発明で使用する他の化合物群はWO2005/002552の式(VII)および(VIIa)で表すことができる。
〔式中、R
1dは当該明細書で定義されたR
1、R
1a、R
1bまたはR
1cである。〕
式(I´)
式(I´)の化合物の一般的な好ましい選択肢および定義
次の一般的な好ましい選択肢および定義が、特に断りのない限り、式(I´)におけるD1、D2,A、E、X、XaおよびR1〜R9部分の各々、ならびにそれらの種々のサブグループ、部分定義、例および実施態様に当てはまる。
本明細書において式(I´)に対する言及はいずれも、特に断りのない限り、式(II´)〜(VIII´)および式(I´)の範囲内の化合物の他のサブグループについての言及であるとも見なされる。
本明細書においてオーロラキナーゼのアップレギュレーションとは、遺伝子増幅(すなわち、多重遺伝子コピー)をはじめとするオーロラキナーゼの発現の上昇または過剰発現、ならびに転写効果による発現の増加、ならびに変異による活性化をはじめとするオーロラキナーゼの過剰活性および活性化を含むものと定義される。
“飽和”なる語は、環原子間に多重結合がない環を意味する。
本明細書では“ヒドロカルビル”なる語は、その語が単独で使われてあっても“ヒドロカルビルオキシ”のように複合語の一部分として使用されていても、総てが炭素の骨格を有する脂肪族基、脂環式基および芳香族基を含む包括的な用語である。ヒドロカルビル基の例は、アルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキルアルキル、シクロアルケニルアルキルを含む。特定のヒドロカルビル基はアルキルおよびシクロアルキル基などの飽和基である。
ヒドロカルビルオキシ基の例としてはアルコキシ、シクロアルコキシ、シクロアルケノキシ、アルケニロシキ、アルキニロキシ、シクロアルキルアルキルオキシ、シクロアルケニルアルキルオキシを含む。特定のヒドロカルビルオキシ基はアルコキシのような飽和基である。
本明細書で使用される接頭語“C1−n”(nは整数)はその基における炭素原子数を表す。したがって、C1−4ヒドロカルビル基は1〜4個の炭素原子を有し、一方、C1−3ヒドロカルビルオキシ基は1〜3個の炭素原子を有している。
C1−4ヒドロカルビル基の例はC1−3ヒドロカルビル基またはC1−2ヒドロカルビル基が含まれ、その具体例としてはC1、C2、C3およびC4ヒドロカルビル基から選ばれる個々の値または組み合わせである。
“アルキル”なる語は、直鎖および分岐鎖の双方のアルキル基を含む。アルキル基の例としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチルおよびtert−ブチル基である。
シクロアルキル基の例としては、シクロプロパン、シクロブタンおよびシクロペンタンから得られるものがある。
アルケニル基の例としては、エテニル(ビニル)、1−プロペニル、2−プロペニル(アリル)、イソプロペニル、ブテニル、およびブタ−1,4−ジエニル基である。
シクロアルケニル基の例としては、シクロプロペニルおよびシクロブテニルである。
アルキニル基の例としては、エチニルおよび2−プロピニル(プロパルギル)基である。
シクロアルキルアルキル基およびシクロアルケニルアルキル基の例としては、シクロプロピルメチル基を含む。
アルコキシ基の例は、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、i−プロポキシ、n−ブトキシ、イソブトキシおよびtert−ブトキシである。
アルキル基がモノ-アルキルアミノ基またはジアルキルアミノ基の一部を形成する場合、アルキル基は上述したアルキル基の例のいずれであってもよい。特定のアルキルアミノ基およびジアルキルアミノ基はメチルアミノ、ジメチルアミノ、エチルアミノ、ジエチルアミノ、n−プロピルアミノ、イソプロピルアミノ、ブチルアミノ、イソブチルアミノおよびi−ブチルアミノ。特定のアルキル- およびジアルキルアミノ基はメチルアミノおよびジメチルアミノである。
本明細書で使用される“飽和複素環基”なる語は、隣接する環員の間に多重結合を含んでいない複素環基を意味する。飽和複素環基は、O、SおよびNから選ばれる1または2個のヘテロ原子環員を含んでいてもよい。
状況によっては、複素環式基は例えば、環状エーテル部分(例えば、テトラヒドロフランおよびジオキサンの場合)、環状チオエーテル部分(例えば、テトラヒドロチオフェンおよびジチアンの場合)、環状アミン部分(例えば、ピロリジンの場合)、環状アミド部分(例えば、ピロリドンの場合)、環状チオアミド、環状チオエステル、環状尿素(例えば、イミダゾリジン−2−オンの場合)、環状エステル部分(例えば、ブチロラクトンの場合)、環状スルホン(例えば、スルホランおよびスルホレン)、環状スルホキシド、環状スルホンアミドおよびその組合せ(例えば、チオモルホリン)を含み得る。
飽和複素環基は、特に明記しない限り、典型的には単環式で通常4、5あるいは6環員を有する。
4環員を有する飽和複素環基の特定の例は、アゼチジン基である。
5環員を有する飽和複素環基の例としては、ピロリジン(例えば、1−ピロリジニル、2−ピロリジニルおよび3−ピロリジニル)、ピロリドン、テトラヒドロフラン、およびテトラヒドロチオフェン基が挙げられる。
6環員を有する飽和複素環基の例としては、モルホリン、チオモルホリン、チオモルホリンS−オキシド、チオモルホリンS,S−ジオキシド、ピペリジン(例えば、1−ピペリジニル、2−ピペリジニル、3−ピペリジニルおよび4−ピペリジニル)、ピペリドン、ジオキサン、テトラヒドロピラン(例えば、4−テトラヒドロピラニル)、ピペラゾン、ピペラジン、およびN−メチルピペラジンなどのN−アルキルピペラジン基が挙げられる。
式(I´)のサブグループ(A)および(B)におけるD1、D2、A、E,R 1 〜R 9 およびXの特定の実施態様および好ましい選択肢
1つの一般的な実施態様では、MはDl基である。
他の一般的な実施態様では、MはD2基である。
XはO、NHおよびNCH3から選ばれる。1つの特定の実施態様では、XはOである。
Aは結合およびNR2から選ばれ、R2は水素またはメチル基である。
一つの実施態様では、Aは結合である。
他の実施態様では、AはNR2であり、R2は水素またはメチル基である。
Eは、結合、CH2、CH(CN)およびC(CH3)2から選ばれる。
化合物の1つのサブグループでは、Eは結合である。
化合物のもう一つのサブグループでは、EはCH2である。
化合物の他のサブグループでは、EはCH(CN)である。
化合物のもう一つのサブグループでは、EはC(CH3)2である。
MがDlである場合、R1は基(i)、(ii)、(iii)、(iv)、(v)、(vi)、(vii)、(viii)、(ix)、(x)、(xi)、(xii)、(xiii)、(xiv)および(xv)から選ぶことができる。
基(i)〜(xv)のそれぞれの基は、本発明の個々の実施態様を表わす。
実施態様(i)では、R1は、ヒドロキシ、フッ素、アミノ、メチルアミノ、メチルまたはエチルで置換されていてもよい3〜5環員のシクロアルキル基である。
具体的なシクロアルキル基は、置換されていてもよいシクロプロピル基およびシクロブチル基であり、より典型的には置換されていてもよいシクロプロピル基である。好ましい実施態様では、R1は非置換シクロプロピル基である。
実施態様(ii)では、R1は、O、N、SおよびSO2から選ばれる1または2個のヘテロ原子環員を含んでいる4〜6環員の飽和複素環基であり、前記複素環基はC1−4アルキル、アミノまたはヒドロキシ基で置換されていてもよい。しかし、非置換4−モルホリニル、非置換テトラヒドロピラン−4−イル、非置換2−ピロリジニル、ならびに非置換および1−置換ピペリジン−4−イルは除く。
飽和複素環基の例は上記“一般的な好ましい選択肢および定義”の部分に記載した通りである。
O、NおよびSから選ばれた1個のヘテロ原子環員を有する五員環(非置換2−ピロリジニル基を除く);および
O、NおよびSから選ばれた2個のヘテロ原子環員を有する六員環(非置換4−モルホリニルを除く)。
飽和複素環基は置換されていても置換されていなくてもよい。一つの実施態様では、飽和複素環基は置換されていない。他の実施態様では、飽和複素環基は、1または2個のC1−4アルキル基、例えば、1または2個のメチル基で置換されている。
1つの特定の複素環基としては、置換されていてもよいテトラヒドロフラン基(例えば、テトラヒドロフラン−2−イルおよびテトラヒドロフラン−3−イル)であり、より好ましくは非置換テトラヒドロフラン基である。
実施態様(iii)では、R
1は下記式で表される、2,5−置換フェニル基である:
〔式中、(a)XがNHまたはN−CH
3である場合、R
3は塩素とシアノ基から選ばれ;
(b)XがOの場合、R
3はCNである〕。
実施態様(iii)の化合物の1つのサブグループでは、XはN−CH3であり、R3は塩素とシアノから選ばれる。
実施態様(iii)の化合物の他のサブグループでは、XはOであり、R3はCNである。
実施態様(iv)では、R1は、CR6R7R8であり、ここでR6およびR7はそれぞれ水素およびメチルから選ばれ、R8は水素、メチル、C1−4アルキルスルホニルメチル、ヒドロキシメチルおよびシアノ基から選ばれる。
実施態様(iv)で、R1の特定の例はとしてはメチル、シアノメチル、HOCH2C(CH3)2−、および2−メチルスルホニルエチル基が挙げられる。
実施態様(iv)では、R1のさらに特定の例はとしてはメチルおよびイソプロピル基が挙げられる。
実施態様(v)では、R1は、メチル、エチル、メトキシおよびエトキシ基から選ばれる1または2個の置換基により置換されていてもよいピリダジン−4−イル基である。ピリダジニル基はピリダジン−3−イルまたはピリダジン−4−イルであり、ピリダジン−4−イルが典型的である。特定の置換基はメトキシ基であり、例えば、ピリダジニル基は2個のメトキシ置換基を有してもよい。
実施態様(vi)では、R1は、置換基がメチル、エチル、アミノ、フッ素、塩素、アミノおよびメチルアミノから選ばれる、置換イミダゾチアゾール基である。特定の置換基はメチルである。
実施態様(vii)では、R1は、置換されていてもよい1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イルあるいは置換されていてもよい2,3−ジヒドロ−インドール−1−イル基であり、各々の場合の置換基はハロゲン、シアノ、アミノ、C1−4モノ−またはジアルキルアミノ、CONH2またはCONH−C1−4アルキル、C1−4アルキルおよびC1−4アルコキシで、前記C1−4アルキルおよびC1−4アルコキシ基は、ヒドロキシ、メトキシまたはアミノで置換されていてもよい。
特定の置換基は、メチル、エチル、フッ素、塩素(好ましくはジヒドロインドールまたはジヒドロイソインドールのアリル環上にのみ)、CONH2、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、およびメトキシが挙げられる。
実施態様(vii)の化合物の1つのサブグループでは、ジヒドロイソインドールまたはジヒドロインドールは各々非置換である。
実施態様(viii)では、R1は、ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、アミノ、C1−4モノ−およびジアルキルアミノ、CONH2またはCONH−C1−4アルキル、C1−4アルキルならびにC1−4アルコキシから選ばれる1または2個の置換基により置換されていてもよい3−ピリジルである(前記C1−4アルキルならびにC1−4アルコキシ基は、ヒドロキシ、メトキシまたはアミノで置換されていてもよいが、2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−カルボン酸[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H− (ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル)−アミドおよび2,6−ジメトキシ−N−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−ニコチンアミドを除く)。
一つの実施態様では、R1は、ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、アミノ、C1−4モノ−およびジアルキルアミノ、CONH2、CONH−C1−4アルキル、C1−4アルキルおよびC1−4アルコキシから選ばれる1あるいは2個の置換基で置換されていてもよい3−ピリジルであって、前記C1−4アルキル基およびC1−4アルコキシ基は、ヒドロキシ、メトキシまたはアミノで置換されていてもよく、R1が3−ピリジルの場合、XはOであり、Aは結合であり、Eは結合であり、ピリジルは、ハロゲン、シアノ、アミノ、C1−4モノ−およびジアルキルアミノ、CONH2、CONH−C1−4アルキル、C1−4アルキルおよびC1−4アルコキシから選ばれた1つあるいは2つの置換基を有し、前記C1−4アルキル基およびC1−4アルコキシ基は、ヒドロキシ、メトキシまたはアミノで置換されていてもよい。
特定の置換基は、メチル、エチル、フッ素、塩素、CONH2、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノおよびメトキシから選ばれる。さらに特定の置換基は、メチル、エチル、フッ素、塩素、CONH2、アミノ、メチルアミノおよびジメチルアミノから選ばれる。
化合物の1つのサブグループでは、3−ピリジル基は非置換である。
実施態様(ix)では、R1は、ハロゲン、シアノ、アミノ、C1−4モノ−およびジアルキルアミノ、CONH2またはCONH−C1−4アルキル、C1−4アルキルならびにC1−4アルコキシから選ばれる1または2個の置換基により置換されていてもよいチオモルホリンあるいはそのS−オキシドまたはS,S−ジオキシドであり、前記C1−4アルキルならびにC1−4アルコキシ基は、ヒドロキシ、メトキシまたはアミノで置換されていてもよい。
化合物の1つのサブグループでは、前記チオモルホリンあるいはそのS−オキシドまたはS,S−ジオキシドは非置換である。
実施態様(x)では、E−AはNR2でありR1は2−フルオロフェニル、3−フルオロフェニル、4−フルオロフェニル、2,4−ジフルオロフェニル、3,4−ジフルオロフェニル、2,5−ジフルオロフェニル、3,5−ジフルオロフェニル、2,4,6−トリフルオロフェニル、2−メトキシフェニル、5−クロロ−2−メトキシフェニル、シクロヘキシル、非置換4−テトラヒドロピラニル、およびtert−ブチルである。
実施態様(xi)では、E−AはNR2でありR1はNR10R11で表される基で、R10およびR11はそれぞれC1−4アルキルあるいはR10およびR11は結合してNR10R11がO、N、SおよびSO2から選ばれる第2のヘテロ原子環員を含んでいてもよい4〜6個の環員を有する飽和複素環基を形成し、前記複素環基がC1−4アルキル、アミノまたはヒドロキシで置換されていてもよい。
この実施態様において、化合物の1つのサブグループは、R10およびR11がそれぞれC1−4アルキル、特にメチル、である化合物群である。
化合物の他のサブグループは、R10およびR11は結合してNR10R11がO、N、SおよびSO2から選ばれる第2のヘテロ原子環員を含んでいてもよい4〜6個の環員を有する飽和複素環基を形成し、前記複素環基がC1−4アルキル、アミノまたはヒドロキシで置換されていてもよい、化合物群である。前記飽和複素環基は、上記“一般的な好ましい選択肢および定義”の部分で記載された窒素含有飽和複素環基いずれかであり得るが、特定の飽和複素環基にはピロリジニル、モルホリニル、ピペラジニルおよびN−C1−4アルキル−ピペラジニル基が挙げられる。そのような基は典型的には非置換もしくは1または2個のメチル基により置換されており、1つの特定の実施態様では、非置換である。
実施態様(xii)では、E−AはNR2でありR1はヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、アミノ、C1−4モノ−およびジアルキルアミノ、CONH2、CONH−C1−4アルキル、C1−4アルキルならびにC1−4アルコキシから選ばれる1または2個の置換基により置換されていてもよいピリドンであって、前記C1−4アルキルならびにC1−4アルコキシ基は、ヒドロキシ、メトキシまたはアミノで置換されていてもよい。
前記ピリドン基は、例えばメチルのようなアルキル基でN−置換されていてもよく、そうでなければ非置換である。
実施態様(xiii)では、E−AはC(CH3)2NR2またはCH2−NR2でありR1は非置換2−フリルおよび2,6−ジフルオロフェニルから選ばれる。
実施態様(xiv)では、E−AはC(CH3)2NR2でありR1は非置換フェニルである。
実施態様(xv)では、EはCH2でありR1は非置換テトラヒドロピラン−4−イルである。
MがD2である場合、R1はグループ(xvi)、(xvii)、(xviii)および(xix)から選ぶことができる。
グループ(xvi)〜(xix)の個々のグループは、本発明の別個の実施態様を表わす。
実施態様(xvi)では、R
1は下記式で表される2−置換3−フリル基である。
〔式中、R
4およびR
5同一または異なって水素およびC
1−4アルキルから選ばれる、あるいはR
4およびR
5は結合しておりNR
4R
5がO、NH、NMe、SまたはSO
2から選ばれる第2のヘテロ原子を有してもよい5または6員の飽和複素環基を形成し、前記飽和5または6員複素環基はヒドロキシ、フッ素、アミノ、メチルアミノ、メチルまたはエチルにより置換されていてもよい。〕
一つの実施態様では、R
1は下記式で表される2−置換3−フリル基である。
〔式中、R
4およびR
5同一または異なって水素およびC
1−4アルキルから選ばれる、あるいはR
4およびR
5は結合しておりNR
4R
5がO、NH、NMe、SまたはSO
2から選ばれる第2のヘテロ原子を有してもよい5または6員の飽和複素環基を形成し、前記飽和5または6員複素環基はヒドロキシ、フッ素、アミノ、メチルアミノ、メチルまたはエチルにより置換されていてもよいが、Aが結合でEが結合である場合、R
4およびR
5は結合しておらずNR
4R
5は非置換ピペリジンを形成する。〕
特定の飽和複素環基は“一般的な好ましい選択肢および定義”の部分で上記に記載した通りであり、特定の飽和複素環基にはピロリジニル、モルホリニル、ピペラジニルおよびN−C1−4アルキル−ピペラジニル基が挙げられる。そのような基は典型的には非置換あるいは1または2個のメチル基で置換されており、1つの特定の実施態様では、非置換である。
R4およびR5が水素およびC1−4アルキルから選ばれる化合物の特定の例は、メチルアミノおよびジメチルアミノ基が挙げられ、より典型的にはジメチルアミノ基である。
実施態様(xvii)では、R
1は下記式で表される5−置換2−フリル基である。
〔式中、R
4およびR
5同一または異なって水素およびC
1−4アルキルから選ばれる、あるいはR
4およびR
5は結合しておりNR
4R
5がO、NH、NMe、SまたはSO
2から選ばれる第2のヘテロ原子を有してもよい5または6員の飽和複素環基を形成し、前記飽和5または6員複素環基はヒドロキシ、フッ素、アミノ、メチルアミノ、メチルまたはエチルにより置換されていてもよい、ただし、前記化合物は5−ピペリジン−1−イルメチル−フラン−2−カルボン酸[3−(5,6−ジメトキシ−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−アミドではない。〕
特定の飽和複素環基は“一般的な好ましい選択肢および定義”の部分で上記に記載した通りであり、特定の飽和複素環基にはピロリジニル、モルホリニル、ピペラジニルおよびN−C1−4アルキル−ピペラジニル基が挙げられる。そのような基は典型的には非置換あるいは1または2個のメチル基で置換されており、1つの特定の実施態様では、非置換である。
実施態様(xviii)では、R
1は下記式で表される基である。
〔式中、R
9は水素、メチル、エチルまたはイソプロピルであり;Gは、CH、O、S、SO、SO
2またはNHであり、前記基はC
1−4ヒドロカルビル、ヒドロキシ、C
1−4ヒドロカルビルオキシ、フッ素、アミノ、モノ−またはジ−C
1−4アルキルアミノから選ばれる1、2または3個の置換基により置換されていてもよく、前記C
1−4ヒドロカルビルおよびC
1−4ヒドロカルビルオキシ基はそれぞれ、ヒドロキシ、フッ素、アミノ、モノ−またはジ−C
1−4アルキルアミノで置換されていてもよい。〕
実施態様(xix)における化合物の1つのサブグループでは、GはOとCHから選ばれる。
実施態様(xviii)では、R1は典型的には非置換であるか、1または2個のメチル基により置換されており、より典型的には非置換である。
実施態様(xix)では、R
1は下記式で表される3,5−二置換フェニル基である。
〔式中、X
aはXと同様にO、NHおよびNCH
3から選ばれる〕
好ましくは、XaはN−CH3である。
R1−A−部分の特定の例は表Xに示されており、星印はR1−E−A−C(=O)−NH−基におけるカルボニル基C=Oへの結合地点を表す。
表Xにおいて、好ましいR1−E−A−基としては、A1、A4、A10、A11、A13、A20、A22、A23、A24、A29、A30、A31、A32、A38、A42、A43、A44、A46、A47、A49、A54およびA56が挙げられる。
他の実施態様では、R1−E−AはA57、A58またはA59である。
R1−E−A−の好ましいサブセットとしては、A1、A4、A20、A24、A30、A44、A46およびA54が挙げられる。このサブセットでは、1つの特定のR1−A−基はA24である。
本発明の新規な治療上の使用のための化合物の1つのサブグループは、式(II´)で表わされる:
〔式中、R
1、E、AおよびXは本明細書で定義した通りである〕。
式(II´)の範囲内で、化合物の一つサブセットはXがOであるサブセットである。
式(II´)の化合物の1つのサブグループは、式(III´)により表わすことができる:
式(III´)の範囲内で、化合物の1つのサブセットはEが結合であるサブセットである。
式(III´)の範囲内の化合物の他のサブセットはEがCH2またはC(CH3)2であるサブセットである。
式(III´)の範囲内の1つの特に好ましい実施態様では、Eは結合であり、R2はH、そしてR1は本明細書で定義されるようなシクロアルキル基(i)である。一つの実施態様では、シクロアルキル基はシクロプロピルまたはシクロブチルになり得る。より好ましくは、R1はシクロプロピル基である。
誤解を避けるため記述すると、R1基の一般なおよび特定の好ましい選択肢、実施態様および例のそれぞれは、R2および/またはR3および/またはR4および/またはR5および/またはR6および/またはR7および/またはR8および/またはR9および/またはR10および/またはR11および/またはD1および/またはD2および/またはAおよび/またはEおよび/またはXおよび/またはXaの一般的なおよび特定の好ましい選択肢、実施態様および例ならびに本明細書で定義されるようなそれらのサブグループと組み合わされてもよいと理解するるべきであって、そのような組み合わせはすべて本明細書に包含される。
式(I)の化合物を構成する様々な官能基および置換基は、典型的には式(I)の化合物の分子量が1000を超えないように選択される。より通常は、化合物の分子量は750未満、例えば700未満、650未満、600未満、または550未満である。より好ましくは、分子量は525未満、例えば、500以下である。
式(I´)のサブグループ(C)の化合物
本発明の新規な治療上の使用のための式(I)の化合物の1つのサブグループ(すなわち式(I)のサブグループ(C))で、MはD1基であり;XはOであり;
AはNR2であり、ここでR2は水素;Eは結合であり;R1は2,6−ジフルオロフェニルである)では、前記化合物は酸の特定のグループから形成された酸付加塩である。
従って、一つの実施態様では、本発明は、本発明の新規な治療に使用する、下記の群から選ばれる酸から形成される1−(2,6−ジフルオロフェニル)−N−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の酸付加塩を提供する:酢酸、アジピン酸、アルギン酸、アスコルビン酸(例えば、L−アスコルビン酸)、アスパラギン酸(例えば、L−アスパラギン酸)、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、ショウノウ酸(例えば、(+)ショウノウ酸)、カプリン酸、カプリル酸、炭酸、クエン酸、シクラミン酸、ドデカン酸、ドデシル硫酸、エタン−1,2−二スルホン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、ガラクタル酸、ゲンチジン酸、グルコヘプトン酸、D−グルコン酸、グルクロン酸(例えば、D−グルクロン酸)、グルタミン酸(例えば、L−グルタミン酸)、アルファ−オキソグルタル酸、グリコール酸、馬尿酸、塩酸、イセチオン酸、イソ酪酸、乳酸(例えば(+)−L−乳酸および(±)−DL乳酸(+))、ラクトビオン酸、ラウリルスルホン酸、マレイン酸、リンゴ酸、(−)−L−リンゴ酸、マロン酸、メタンスルホン酸、ムチン酸、ナフタレンスルホン酸(例えば、ナフタレン−2−スルホン酸)、ナフタレン−1,5−二スルホン酸、ニコチン酸、オレイン酸、オロチン酸、シュウ酸、パルミチン酸、パモ酸、リン酸、プロピオン酸、セバシン酸、ステアリン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸(例えば、(+)−L−酒石酸)、チオシアン酸、トルエンスルホン酸(例えば、p−トルエンスルホン酸)、吉草酸およびキナホイック酸。
一つの実施態様では、前記酸付加塩は下記の群から選ばれる酸から形成される:アジピン酸、アルギン酸、アスコルビン酸(例えば、L−アスコルビン酸)、アスパラギン酸(例えば、L−アスパラギン酸)、安息香酸、ショウノウ酸(例えば、(+)ショウノウ酸)、カプリン酸、カプリル酸、炭酸、シクラミン酸、ドデカン酸、ドデシル硫酸、エタン−1,2−二スルホン酸、ガラクタル酸、ゲンチジン酸、グルコヘプトン酸、D−グルコン酸、グルタミン酸(例えば、L−グルタミン酸)、アルファ−オキソグルタル酸、グリコール酸、馬尿酸、イソ酪酸、ラウリルスルホン酸、ムチン酸、ナフタレン−1,5−二スルホン酸、ニコチン酸、オレイン酸、オロチン酸、シュウ酸、パルミチン酸、パモ酸、セバシン酸、ステアリン酸、酒石酸(例えば、(+)−L−酒石酸)、チオシアン酸およびキナホイック酸。
一つの実施態様では、前記酸付加塩は下記の群から選ばれる酸から形成される:酢酸、アジピン酸、アスコルビン酸、アスパラギン酸、クエン酸、DL−乳酸、フマル酸、グルコン酸、グルクロン酸、馬尿酸、塩酸、グルタミン酸、DL−リンゴ酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸(メシル酸塩)、エタンスルホン酸(エシル酸塩)、セバシン酸、ステアリン酸、コハク酸、および酒石酸。
更なる実施態様では、前記酸付加塩は下記の群から選ばれる酸から形成される:アジピン酸、アスコルビン酸、アスパラギン酸、グルコン酸、馬尿酸、グルタミン酸、セバシン酸、ステアリン酸および酒石酸。
他の特定の実施態様では、前記化合物は塩酸と形成される酸付加塩である。
本発明の新規な治療上の使用のための好ましい塩は所定の液体担体(例えば水)での溶解度が前記液体担体の25mg/mlより大きく、より典型的には50mg/mlより大きく、好ましくは100mg/mlより大きい塩である。そのような塩は、液体の形、例えば注射または点滴、での投与に特に有利である。
溶解度が25mg/mlより大きい本発明の塩としては、D−グルクロン酸塩、メシル酸塩、エシル酸塩およびDL−乳酸塩が挙げられる。それら最後の3つの塩の溶解度が100mg/mlを越える。
従って、1つの特定の実施態様では、本発明の新規な治療上の使用のための1−(2,6−ジフルオロフェニル)−N−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素のメシル酸塩が提供される。
他の特定の実施態様では、本発明の新規な治療上の使用のための1−(2,6−ジフルオロフェニル)−N−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素のエシル酸(エタンスルホン酸)塩が提供される。
更なるの特定の実施態様では、本発明の新規な治療上の使用のための1−(2,6−ジフルオロフェニル)−N−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素のDL乳酸塩が提供される。一つの実施態様では、前記乳酸塩はL−乳酸塩である。
本発明の式(I)のサブグループ(C)の化合物(すなわち酸付加塩)が由来する遊離塩基または親化合物は式(IA)で表される。
本発明の特定の化合物は下記の実施例において示された通りである。
本発明の新規な治療上の使用のための1つの好ましい化合物は、1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素ならびに塩(例えば、乳酸塩、クエン酸塩あるいはその混合物)、溶媒和物および互変異性体である。
一つの実施態様では、1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の塩は、酢酸塩、メシル酸、エタンスルホン酸塩、DL−乳酸塩、アジピン酸塩、D−グルクロン酸塩、D−グルコン酸塩あるいは塩酸塩であってもよい。
本発明の他の態様
本発明の他の態様では、下記のものが提供される:
真性多血症、本態性血小板増加症または特発性骨髄線維症の治療に用いる、本明細書およびPCT/GB2004/002824(WO2005/002552)で定義されるような式(I)または(II´)(式中R1、R2、R3、R4、AおよびXは、PCT/GB2004/002824(WO2005/002552)で定義された通りである)の化合物ならびにそのサブグループ、実施態様および例ならびにその塩(例えば、酢酸塩、メシル酸塩、エタンスルホン酸塩、DL−乳酸塩、アジピン酸塩、D−グルクロン酸塩、D−グルコン酸塩または塩酸塩)。
若年性骨髄単球性白血病(JMML)または慢性骨髄単球性白血病(CMML)の治療に用いる、本明細書およびPCT/GB2004/002824(WO2005/002552)で定義されるような式(I)または(I´)(式中R1、R2、R3、R4、AおよびXは、PCT/GB2004/002824(WO2005/002552)で定義された通りである)の化合物ならびにそのサブグループ、実施態様および例ならびにその塩(例えば、酢酸塩、メシル酸塩、エタンスルホン酸塩、DL−乳酸塩、アジピン酸塩、D−グルクロン酸塩、D−グルコン酸塩または塩酸塩)。
巨核球性AML(AML M7)あるいはフィラデルフィア染色体陰性またはイマチニブ耐性CMLを含む巨核球性白血病の治療に用いる、本明細書およびPCT/GB2004/002824(WO2005/002552)で定義されるような式(I)または(I´)(式中R1、R2、R3、R4、AおよびXは、PCT/GB2004/002824(WO2005/002552)で定義された通りである)の化合物ならびにそのサブグループ、実施態様および例ならびにその塩(例えば、酢酸塩、メシル酸塩、エタンスルホン酸塩、DL−乳酸塩、アジピン酸塩、D−グルクロン酸塩、D−グルコン酸塩または塩酸塩)。
胃腸間質性腫瘍(GIST)、高好酸球症候群または隆起性皮膚線維肉腫の治療に用いる、本明細書およびPCT/GB2004/002824(WO2005/002552)で定義されるような式(I)または(I´)(式中R1、R2、R3、R4、AおよびXは、PCT/GB2004/002824(WO2005/002552)で定義された通りである)の化合物ならびにそのサブグループ、実施態様および例ならびにその塩(例えば、酢酸塩、メシル酸塩、エタンスルホン酸塩、DL−乳酸塩、アジピン酸塩、D−グルクロン酸塩、D−グルコン酸塩または塩酸塩)。
式(I 0 )の化合物ならびにその塩および結晶形態
上記の式(I)および(I´)の両方の範囲に含まれる特に好ましい化合物は、化合物1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素ならびにその塩、互変異性体および結晶形態である。
本発明はとりわけ、本明細書に定義された新規な使用のための、化合物1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の乳酸塩およびクエン酸塩ならびにその結晶形態を提供する。
本発明はまた、本発明の使用のための、前記化合物、その乳酸塩および結晶形態を製造するための新規なプロセスの生成物ならびにそのプロセスで用いる新規な中間体を提供する。
本発明はさらに、前記化合物およびその塩の治療上の使用ならびに1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の類似体の治療上の使用を提供する。
さらに特定には、本発明は本明細書に記載される新規な使用のための、乳酸塩、クエン酸塩およびその混合物から選ばれる1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の塩を提供する。
前記塩が由来する1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の遊離塩基 は式(I
0)で表される。
式(I0)の化合物は本明細書ではその化学名1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素として言及されるか、あるいは、便宜上、化合物(I0)または式(I0)の化合物として言及される。これらの同義語はそれぞれ、上記式(I0)で表される化合物を指し、化学名1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素を有する。
化合物1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素遊離塩基およびその乳酸塩またはクエン酸塩、混合物に対する言及はそれらの範囲内にすべての溶媒和物、互変異性体および同位体ならびに文脈が許す場合は、N−オキシド、他のイオン型およびプロドラッグを含む。したがって、式(I)で表される代わりの互変異性体1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素への言及は化合物(I)に言及すると理解すべきである。
式(I 0 )の化合物の乳酸塩、クエン酸、混合物および結晶
便宜上、L−乳酸およびクエン酸から形成される塩は、本明細書では、それぞれL−乳酸塩およびクエン酸塩と呼ぶ。
1つの特定の実施態様では、塩はL−乳酸塩またはD−乳酸塩であり、好ましくはL−乳酸塩である。
他の実施態様では、塩はクエン酸から形成される塩である。
より具体的には、塩はL−乳酸塩およびクエン酸塩の混合物である。
固体の状態では、本発明の乳酸塩またはクエン酸塩は(特にL−乳酸塩)は結晶またはアモルファスあるいはその混合物であってもよい。
一つの実施態様では、乳酸塩(特にL−乳酸塩)またはクエン酸塩はアモルファスである。
アモルファス固体では、結晶形態で通常存在する3次元構造は存在せず、アモルファス形態での分子のお互いに関連する位置は実質的にランダムである。例えばハンコック(Hancock)ら、J. Pharm. Sci (1997), 86, 1参照。
他の実施態様では、乳酸塩(特にL−乳酸塩)またはクエン酸塩は実質的に結晶性である、すなわち、これら塩は50%〜100%結晶性、より具体的には、これら塩は少なくとも50%結晶性、または少なくとも60%結晶性、または少なくとも70%結晶性、または少なくとも80%結晶性、または少なくとも90%結晶性、または少なくとも95%結晶性、または少なくとも98%結晶性、または少なくとも99%結晶性、または少なくとも99.5%結晶性、または少なくとも99.9%結晶性、例えば100%結晶性であってもよい。
さらなるの実施態様では、乳酸塩またはクエン酸塩は、50%〜100%結晶性の乳酸塩(特にL−乳酸塩)またはクエン酸塩から成る群から選ばれる、例えば少なくとも50%結晶性、少なくとも60%結晶性、少なくとも70%結晶性、少なくとも80%結晶性、少なくとも90%結晶性、少なくとも95%結晶性、少なくとも98%結晶性、少なくとも99%結晶性、少なくとも99.5%結晶性、少なくとも99.9%結晶性、例えば100%結晶性である。
より好ましくは乳酸塩(特にL−乳酸塩)またはクエン酸塩は、95%〜100%結晶性のものであってもよい(あるいは95%〜100%結晶性のものから成る群から選ばれてもよい)、例えば少なくとも98%結晶性、または少なくとも99%結晶性、または少なくとも99.5%結晶性、または少なくとも99.6%結晶性か、または少なくとも99.7%結晶性、または少なくとも99.8%結晶性、または少なくとも99.9%結晶性、例えば100%結晶性である。
実質的に結晶性の塩の一例はL−乳酸で形成された結晶塩である。
実質的に結晶性の塩の他の例はクエン酸で形成された結晶塩である。
本発明の塩は、固体の状態で、溶媒和されていても(例えば、水和)、あるいは溶媒和されていなくてもよい(例えば、無水)。
一つの実施態様では、塩は溶媒和されていない(例えば、無水)。
溶媒和されていない塩のさらなる例は、本明細書に定義されるような乳酸(特に、L−乳酸)で生成された結晶塩である。
一つの実施態様では、式(I)の塩の結晶形態は、L−乳酸塩およびクエン酸塩(特に、L−乳酸塩)から選ばれる。
本明細書で使用される“無水”なる語は塩(例えば、塩の結晶)のまわり、またはその中に、いくらかの水分が存在する可能性を排除しない。例えば、塩(例えば、塩結晶)の表面に存在するいくらかの水分、あるいは塩(例えば、結晶)の塊の中に少量の水分、が存在してもよい。典型的には、無水形態は、化合物の分子1個当たり水分子を0.4個未満の含んでおり、より好ましくは化合物の分子1個当たり水分子を0.1個未満、例えば、水の分子を0個、含んでいる。
他の実施態様では、乳酸塩(特にL−乳酸塩)またはクエン酸塩は溶媒和されている。塩が水和されている場合、塩は例えば、結晶水の分子を3個まで、より通常は水の分子を2個まで、例えば水の分子1個のまたは水の分子2個、を含むことができる。存在する水の分子の数が1未満すなわち非整数である非化学量論的水和物が形成されてもよい。例えば、1未満の水の分子が存在する場合、例えば、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、あるいは0.9個の水の分子が化合物の分子1個当たり存在していてもよい。
他の溶媒和物としてはエタノラートやイソプロパノラートのようなアルコラートが挙げられる。
一つの実施態様では、乳酸塩(特にL−乳酸塩)は、例えば水および/またはエタノールで溶媒和される。
本発明の乳酸塩(特にL−乳酸塩)またはクエン酸塩は、Pharmaceutical Salts; Properties, Selection, and Use, ハインリヒスタール(P. Heinrich Stahl)(編者), カミールワーマスCamille G. Wermuth (編者), ISBN: 3-90639-026-8,ハードカバー, 388ページ, August 2002に記載されている方法ような従来の化学的方法により親化合物1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素から合成することができる。
一般的に、そのような塩は水、有機溶媒、またはそれら2つの混合物の中で適当な酸と親化合物1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素を反応させることにより製造することができる。一般的に、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノールまたはアセトニトリルのような非水性媒体が使用される。
他の態様では、本発明は1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の乳酸塩(特にL−乳酸塩)またはクエン酸塩を製造する方法を提供し、前記方法は溶媒(典型的には有機溶媒)または混合溶媒中で1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素遊離塩基の溶液を形成すること、および酸で前記溶液を処理して塩の沈澱物を形成することを含む。
酸は、遊離塩基が溶解している溶媒と混和性がある溶媒に溶液として加えられてもよい。遊離塩基がまずに溶解される溶媒はその塩が不溶性のものであってもよい。また、遊離塩基がまず溶解される溶液は塩が少なくとも部分的に溶解されるものであってもよく、塩がそれほど可溶でない異なる溶媒が、塩が溶液から沈殿するように、続いて加えられる。
塩を形成する別の方法では、1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素は揮発性酸および必要に応じて共溶媒を含む溶媒に溶解し、それにより揮発性酸との塩の溶液を形成し、得られた溶液を濃縮あるいは蒸発させて塩を単離する。
他の態様では、本発明は本明細書で定義するような1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の乳酸塩(特にL−乳酸塩)またはクエン酸塩を製造する方法を提供し、前記方法は式(I)で表される化合物:
を有機溶媒中で本明細書に定義されるような有機または無機酸で処理し、このようにして形成された塩を必要に応じて単離することを含む。
乳酸塩(特にL−乳酸塩)またはクエン酸塩は典型的には有機溶媒から形成されると共に沈殿し、したがって溶液から固体の分離、例えば、濾過、により単離することができる。
本発明の1つの塩形態は、当業者に公知の方法により遊離塩基および必要に応じて他の塩形態に変換することができる。例えば、遊離塩基はアミン固定相(例えば、ストラタ(Strata)−NH2カラム)を有するカラムに塩溶液を通すことにより形成することができる。あるいは、塩の水溶液を重炭酸ナトリウムで処理し、塩を分解し、遊離塩基を沈殿させることができる。その後、遊離塩基は、上述あるいは本明細書の他の箇所に記載された方法の1つにより酸と組み合わせてもよい。
乳酸塩(特にL−乳酸塩)またはクエン酸塩は対応する遊離塩基と比較して多くの長所を有する。例えば、塩は、遊離塩基と比較して下記の1またはそれ以上の利点を享受する:
溶解度が大きい、特に水溶液中で向上した溶解度があり、したがって静脈内投与(例えば、点滴)により適している;
溶液のpHの制御を可能にし、したがって、静脈内投与により適している;
より安定性が高い、例えば熱安定性(例えば、向上したシェルフライフ);
製造に関して利点がある;
より優れた物理化学的特徴がある;
向上した抗癌活性があり得る;そして
向上した治療係数を持ち得る。
本発明の結晶性乳酸塩(特にL−乳酸塩)は下記の理由で特に有利である:
吸湿性がある
無水性であり水和物を形成しない
単一の多形相である。
結晶性である
保管安定性がある
明確なた融点を有し、DSC実験で形態変化をきたさない
水に対して優れた溶解性を有し、緩衝系でより優れた溶解性を付与する。
本明細書で使用される“安定”または“安定性”なる語は化学的安定性と固体状態(物理的)安定性を含む。“化学的安定性”なる語は、化合物が単離された形で保存できることを意味するか、あるいは化合物が、例えば、本明細書に記載される薬学的に許容される担体、希釈剤あるいはアジュバントとともに混合物として提供される製剤の形態で、通常の貯蔵条件下で、ほとんどもしくは全く化学的に劣化または分解しないことを意味する。“固体状態安定性”は、化合物が単離された形で保存できることを意味するか、あるいは化合物が、例えば、本明細書に記載される薬学的に許容される担体、希釈剤あるいはアジュバントとともに混合物として提供される固体製剤の形態で、通常の貯蔵条件下で、ほとんどもしくは全く固体変換(例えば、水和、失水、溶媒和物化、脱溶媒和物化、結晶化、再結晶化または固体相転移)しないことを意味する。
液体(例えば、水性)医薬組成物の製造に用いる好ましい塩は、任意の液体担体(例えば、水または緩衝系)での溶解度が1mg/mlより大きい、典型的には液体担体(例えば、水)に対して5mg/mlより大きい、より典型的には15mg/mlより大きい、さらにより典型的には20mg/mlより大きい、そして好ましくは25mg/mlより大きい本発明の塩(すなわち、本明細書に定義されるような乳酸塩、クエン酸塩、またはその混合物)である。
他の態様では、本明細書で定義されるような新規な使用のための、1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の乳酸塩(特にL−乳酸塩)、クエン酸塩またはこれら塩の混合物を、例えば液体キャリア(例えば、水または緩衝系)に対して1mg/mlより大きい、典型的には5mg/mlより大きい、より典型的には15mg/mlより大きい、より典型的には20mg/mlより大きい、および好ましくは25mg/mlより大きい濃度で、含有する水溶液を含む医薬組成物が提供される。
好ましい実施態様では、前記医薬組成物は、1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の乳酸塩を、液体キャリア(例えば、水)に対して1mg/mlより大きい、典型的には5mg/mlより大きい、より典型的には15mg/mlより大きい、典型的には20mg/mlより大きい、および好ましくは25mg/mlより大きい濃度で、含有する水溶液を含む。
他の態様では、本明細書で定義されるような新規な使用のための、1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の乳酸塩(特にL−乳酸塩)、クエン酸塩またはこれら塩の混合物の水溶液を提供し、前記水溶液のpHは2〜6、例えば2〜5、そしてさらに詳細には4〜6、例えば4〜5である。
上記に定義された水溶液では、塩は本明細書に記載されたいずれの塩でもよいが、1つの好ましい実施態様ではL−乳酸塩である。1つの好ましい実施態様では、塩はL−乳酸塩およびクエン酸塩の混合物である。
本発明はまた、本明細書で定義されるような新規な使用のための、1以上の対イオンおよび必要に応じてさらに1以上の対イオンとの、プロトン化された形態の1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の水溶液を提供する。一つの実施態様では、対イオンのうちの1つは乳酸塩とクエン酸塩から選ばれる。他の実施態様では、対イオンのうちの1つはクエン酸塩などの本明細書に記載されているような製剤用緩衝剤に由来する。さらなる実施態様では、塩化物イオン(例えば、食塩水からの)のような1以上のさらなる対イオンが存在していてもよい。
したがって、本発明は、本明細書で定義されるような新規な使用のための、L−乳酸塩およびクエン酸塩から選ばれる1以上の対イオンおよび必要に応じてさらに1以上の塩化物イオンのような対イオンとの、プロトン化された形態の1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の水溶液を提供する。
1つを超える対イオンがある場合は、プロトン化された形態の1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の水溶液は対イオンの混合物、例えばL−乳酸塩およびクエン酸塩対イオンの混合物、ならびに必要に応じて1以上の対イオン例えば塩化物イオンを含んでいてもよい。
したがって、本発明は、本明細書で定義されるような新規な使用のための、L−乳酸塩およびクエン酸塩から選ばれる1以上の対イオンおよび必要に応じてさらに1以上の塩化物イオンのような対イオン、ならびにそれらの混合物との、プロトン化された形態の1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の水溶液を提供する。
本発明はまた、本明細書で定義されるような新規な使用のための、1以上の対イオンとのプロトン化された形態の1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素と必要に応じて等浸透圧の製剤を達成するための希釈のための1つ以上のIV賦形剤との水溶液を提供する。一つの実施態様では、対イオンの1つはL−乳酸塩およびクエン酸塩から選ばれる。他の実施態様では、対イオンのうちの1つはクエン酸塩などの本明細書に記載されているような製剤用緩衝剤に由来する。さらなる実施態様では、1つ以上のヘキソース糖、例えばデキストロース(D−グルコース)のような米国薬局方および英国医学会薬学会共同編集処方集で詳述されるようなIV賦形剤が存在していてもよい。したがって、本発明は、L−乳酸塩およびクエン酸塩から選ばれる1以上の対イオンとのプロトン化された形態の1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素と必要に応じて1つ以上のデキストロースなどのIV賦形剤との水溶液を提供する。1つを超える対イオンがある場合は、プロトン化された形態の1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の水溶液は対イオンの混合物、例えばL−乳酸塩とクエン酸塩の対イオンの混合物、ならびに必要に応じてさらに1以上のデキストロースなどのIV賦形剤を含んでいてもよい。したがって、本発明は、L−乳酸塩およびクエン酸塩から選ばれる1以上の対イオンとのプロトン化された形態の1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素と必要に応じてさらに1以上のデキストロースなどのIV賦形剤との水溶液を提供する。
水溶液はとりわけクエン酸塩イオン(例えば、クエン酸塩緩衝剤)の溶液中の乳酸塩を溶解することにより、あるいは乳酸塩イオンの溶液中のクエン酸塩を溶解することにより形成することができる。乳酸塩イオンおよびクエン酸イオンは溶液中に乳酸塩:クエン酸塩比で10:1以下、例えば10:1〜1:10に、より好ましくは8:1未満、または7:1未満、または6:1未満、または5:1未満、または4:1未満、または3:1未満、または2:1未満、または1:1未満、より具体的には1:1〜1:10までで存在していてもよい。一つの実施態様では、乳酸塩イオンおよびクエン酸イオンは溶液中に乳酸塩:クエン酸塩比で1:1〜1:10、例えば1:1〜1:8、または1:1〜1:7、または1:1〜1:6、または1:1〜1:5、例えば、ほぼ1:4.4で存在する。
塩の水溶液は緩衝化されていても緩衝化されていなくてもよく、一つの実施態様では緩衝化される。
他の態様では、本明細書で定義されるような新規な使用のための、1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の乳酸塩またはクエン酸塩またはこれら塩の混合物を含有する凍結乾燥された製剤を含む医薬組成物が提供され、前記製剤のpHは2〜6、例えば2〜5、より具体的には4〜6、例えば4〜5である。
上記に定義された凍結乾燥された製剤の1つの好ましい実施態様では、塩はL−乳酸塩である。
本発明はまた、本明細書で定義されるような新規な使用のための、1以上の対イオンとの、プロトン化された形態の1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の凍結乾燥された製剤を提供する。他の実施態様では、対イオンのうちの1つはクエン酸塩などの本明細書に記載されているような製剤用緩衝剤に由来する。
したがって、本発明は、本明細書で定義されるような本発明の新規な使用のための、L−乳酸塩およびクエン酸塩から選ばれる1以上の対イオンとの、プロトン化された形態の1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の凍結乾燥された製剤を提供する。1つを超える対イオンがある場合は、プロトン化された形態の1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の水溶液は対イオンの混合物、例えばL−乳酸塩およびクエン酸塩対イオンの混合物、を含んでいてもよい。
したがって、本発明は、本明細書で定義されるような本発明の新規な使用のための、L−乳酸塩、クエン酸塩およびその混合物から選ばれる1以上の対イオンとの、プロトン化された形態の1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の凍結乾燥された製剤を提供する。
上記に定義された凍結乾燥された製剤の1つの好ましい実施態様では、塩はL−乳酸塩であり、緩衝塩はクエン酸塩である。
一つの実施態様では、乳酸塩イオンおよびクエン酸イオンは凍結乾燥された製剤に乳酸塩:クエン酸塩比で10:1以下、例えば10:1〜1:10に、より好ましくは8:1未満、または7:1未満、または6:1未満、または5:1未満、または4:1未満、または3:1未満、または2:1未満、または1:1未満、より具体的には1:1〜1:10、例えば1:1〜1:8、または1:1〜1:7、または1:1〜1:6、または1:1〜1:5、例えば、ほぼ1:4.4で存在する。
塩の凍結乾燥された製剤は緩衝化されていても緩衝化されていなくてもよく、一つの実施態様では緩衝化される。
乳酸で形成された塩という状況では、好ましい緩衝剤は、クエン酸から形成され、NaOHまたはHClで適正なpHへ調整された緩衝剤で、例えば溶液のpHはほぼ4.5である。このpHでそしてクエン酸塩緩衝剤中では、遊離塩基はそれぞれにおいて約80mg/mlの溶解度を有する。
その後、凍結乾燥された製剤は、食塩水またはデキストロース(好ましくはデキストロース)のようなIV賦形剤を含有している無菌水溶液へ再構成される。
本発明の塩は、典型的には薬学上許容される塩であり、薬学上許容される塩の例は、ベルジュ(Berge)ら、1977,“薬学的許容塩(Pharmaceutically Acceptable Salts)”薬学ジャーナル(J.Pharm.Sci.)、第66巻、p.1−19で検討されている。しかしながら、医薬上許容されない塩も中間体として製造してもよく、これをその後薬学上許容される塩に変換することができる。このような医薬上許容されない塩の形態もまた本発明の一部をなす。
化合物1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素はまた、N−オキシドを形成してもよい。N−オキシドは、過酸化水素または過酸(例えば、ペルオキシカルボン酸)のような酸化剤で対応のアミンを処理することにより形成できる(例えば、機能化学特論(Advanced Organic Chemistry)、ジェリーマーチ(Jerry March)、第4版、ワイリーインターサイエンス(Wiley Interscience)、ページ、参照)。より具体的には、N−オキシドは、デディー(L.W.Deady)(Syn.Comm.、1977年、7、509−514)の方法により製造することができ、この方法では、アミン化合物を、例えば、ジクロロメタンのような不活性溶媒中、m−クロロペルオキシ安息香酸(MCPBA)と反応させる。
本発明の乳酸塩およびクエン酸塩が由来する、化合物1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素は多数の異なる幾何異性型および互変異性型で存在することができ、本明細書中での前記化合物への言及はこのような形態の総てを含むものである。
より具体的には、本発明の1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の乳酸塩およびクエン酸塩において、ベンゾイミダゾール基は以下の2つの互変異性型AおよびBのいずれをとってもよい。便宜上、一般式(I)はA型を示すが、この式には4つすべての互変異性体型を含むものとみなされる。
さらに、1−シクロプロピル−3−[3−(6−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の文脈では、すなわち別の互変異性体への言及は、明らかに、1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素と同一の化合物の乳酸またはクエン酸塩への言及である。
ピラゾール環もまた互変異性を示すことがあり、下記の2つの互変異性型CおよびDで存在し得る。
1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の乳酸塩またはクエン酸塩(例えば、L−乳酸塩)ならびに本発明の塩への言及はまた、1個以上の同位体置換を含んだ変異型を含み、特定の元素への言及はその範囲内に元素のすべての同位体を含む。例えば、水素への言及はその範囲内に1H、2H(D)および3H(T)を含む。同様に、炭素と酸素への言及はそれらの範囲内にそれぞれ12C、13Cおよび14Cならびに16Oおよび18Oを含む。
同位体は放射性であってもよいし非放射性であってもよい。本発明の一つの実施態様では、前記化合物は放射性同位体を含んでいない。そのような化合物は治療上の使用に好ましい。他の実施態様では、しかしながら、前記化合物は1個以上の放射性同位体を含んでもよい。そのような放射性同位体を含んでいる化合物は、診断の場合に役立つ。
また本発明の1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素および塩への言及には、任意のそれらの多形相、溶媒和物(例えば、水和物)、または錯体(例えば、シクロデキストリンなどの化合物との包接錯体または包接化合物、または金属との錯体)を包含する。
1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の結晶構造
上述したように、1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の乳酸塩またはクエン酸は、アモルファスでも実質的に結晶性でもよい。1つの特定の実施態様では、乳酸塩またはクエン酸塩は実質的に結晶性である。“実質的に結晶性”なる語は上記に定義した意味を有する。特に、1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素は実質的に結晶性である。
本明細書に記載された結晶ならびに本明細書に定義されるような結晶構造および本発明の新規な使用のへの採用は、発明のさらなる態様を構成する。
1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の乳酸塩(特にL−乳酸塩)が実質的に結晶性の場合、他の結晶形態は僅かに、好ましくは、無視できる量で存在していてもよいが、単一の結晶形態が支配的であってよい。
結晶形態の1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素は約5重量%以下の他の結晶形態の1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素を含んでおり、特に約1重量%以下の他の結晶形態のもの含んでいる。
好ましい実施態様では、本発明は、実質的に結晶性の1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の塩(例えば、本明細書で定義されるような乳酸塩(特にL−乳酸塩))を提供し、前記塩は単一の結晶形態を含み他のどのような結晶形態も5重量%以下でのみ含まれる。
好ましくは、単一の結晶形態には、他の結晶形態が4重量%未満、3重量%未満、または2重量%未満伴われ、特に他の結晶形態は約1重量%以下で伴われる。より好ましくは、単一の結晶形態には、他の結晶形態が0.9重量%未満、0.8重量%未満、0.7重量%未満、0.6重量%未満、0.5重量%未満、0.4重量%未満、0.3重量%未満、0.2重量%未満、0.1重量%未満、0.05重量%未満、または0.01重量%未満、例えば0重量%未満、伴われる。
結晶およびその結晶構造は単結晶X線結晶学、粉末X線回折(XRPD)、示差走査熱量測定法(DSC)および赤外線分光法、例えば、フーリエ変換赤外線分光法(FTIR)を含む多くの手法を使い特徴づけることができる。様々な湿度条件下での結晶の性質は重量蒸気収着法によって、またXRPDによって分析することができる。
化合物の結晶構造の測定はX線結晶学的方法により行なうことができ、本明細書や結晶学の基礎(Fundamentals of Crystallography)、ジャコバッツォ(C.Giacovazzo)、モナコ(H.L.Monaco)、ビテルボ(D.Viterbo)、スコルダリ(F.Scordari)、ジリ(G.Gilli)、ザノッティ(G.Zanotti)およびキャッティ(M.Catti)、(国際結晶学連合(International Union of Crystallography)/オックスフォード大学出版(Oxford University Press)、1992 ISBN 0−19−855578−4 (p/b)、0−19−85579−2 (h/b))に記載されたような従来の方法によって行なうことができる。この手法は、単結晶のX線回折の分析および解釈を伴う。
1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の乳酸塩および二水和物遊離塩基の結晶構造はX線結晶学的手法によって測定された(下記の実施例5および7参照)。
表1および表3は1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の結晶の座標データを示し、該データは結晶学的情報ファイル(Crystallographic Information File)形式である(ホール(Hall)、アレン(ALLen)およびブラウン(Brown)、Acta Cryst.、1991年、A47、655−685;http://www.iucr.ac.uk/iucr−top/cif/home.html参照)。PDBファイル形式(例えば、EBI巨大分子構造データベース(EBI Macromolecular Structure Database)(ヒンクストン、英国)に整合性を有する形式)のような他のファイル形式も当業者に使用され、また好まれる。しかしながら、表の座標を示したり操作するための異なったファイル形式の使用は本発明の範囲内であることが明からである。表中のカッコ内の数値は偏差(s.u.、標準不確かさ)を表わす。乳酸塩の結晶構造は図4および図5に示す。
一つの実施態様では、本発明は、本明細書に定義されるような本発明の新規な使用のための、1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の乳酸塩(特にL−乳酸塩)を提供し、前記乳酸塩は結晶性であり本明細書の表3の座標に定義されるような結晶構造を有する。
他の実施態様では、本発明は、本明細書に定義されるような本発明の新規な使用のための、1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の乳酸塩(特にL−乳酸塩)を提供し、前記乳酸塩は結晶性であり本明細書の図4および5の座標に定義されるような結晶構造を有する。
他の実施態様では、本発明は、本明細書に定義されるような本発明の新規な使用のための、1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の乳酸塩(特にL−乳酸塩)を提供し、前記乳酸塩は結晶性であり、斜方晶系空間群P212121(#19)に属し97(2)Kで、a=9.94(10)、b=15.03(10)、c=16.18(10)Å、アルファ=ベータ=γ=90°の結晶格子パラメーターを有する。
他の実施態様では、本発明は、本明細書に定義されるような本発明の新規な使用のための、1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の乳酸塩(特にL−乳酸塩)を提供し、前記乳酸塩は結晶性であり、室温で、a=10.08(10)、b=15.22(10)、c=16.22(10)Å、アルファ=ベータ=γ=90°の結晶格子パラメーターを有する。
したがって、他の実施態様では、本発明は、本明細書に定義されるような本発明の新規な使用のための、1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の乳酸塩(特にL−乳酸塩)を提供し、前記乳酸塩は結晶性であり:
(a)図4および図5に示されるような結晶構造有する;かつ/または
(b)本明細書の表3の座標により定義されるような結晶構造を有する;かつ/または
(c)97(2)Kで、a=9.94(10)、b=15.03(10)、c=16.18(10)Å、アルファ=ベータ=γ=90°の結晶格子パラメーターを有する;かつ/または
(d)室温で、a=10.08(10)、b=15.22(10)、c=16.22(10)Å、アルファ=ベータ=γ=90°の結晶格子パラメーターを有する;かつ/または
(e)斜方晶系空間群P212121(#19)に属する結晶構造を有する。
実質的に結晶性の塩には、例えば、塩を再結晶させるかそうでなければ精製するために使用される有機溶媒あるいは水などの他の溶剤が実質的に残存していないことが好ましい。
一つの実施態様では、式(I)および(I´)の化合物の乳酸塩(特にL−乳酸塩)、特に1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の乳酸塩、の結晶には残存溶媒(例えば、水または有機溶媒)が10重量%未満、例えば5%未満の残存溶媒、が含まれている結晶である。
一つの実施態様では、結晶性の塩(例えば、乳酸塩、特にL−乳酸塩)は無水であり、“無水”なる語は上記に定義した意味を有する。
他の実施態様では、結晶性の1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の乳酸塩には、有機溶媒、例えばエタノール、が約0〜5重量%の範囲で、例えば約2重量%のエタノールが、残存する。
粉末X線回折(XRPD)固体法により分析することができる。XRPDは、本明細書に記載されたような(実施例6および実施例8参照)また粉末X線回折入門(Introduction to X−ray Powder Diffraction)、(ロンジェンキンス(Ron Jenkins)およびロバートスナイダー(Robert L.Snyder)(ジョンワイリー&サンズ、ニューヨーク、1996年)に記載されたような従来の方法にしたがって行なうことができる。XRPD回折図中で明確なピーク(ランダムなバックグラウンドノイズとは対照的に)の存在は、化合物が結晶化度を有していることを示す。
また、化合物の結晶構造は、化合物の粉末X線図形は、X線回折スペクトルまたは図形の回折角(2θ)および/または面間隔(d)パラメーターで特性決定した。これらは、ブラッグの式、nλ=2dSinθ(式中、n=l;λ=使用される放射線またはカソードの波長;d=面間隔;ならびにθ=回折角)、により関連づけられる。本明細書では、面間隔、回折角および全体的な図形は、データの特徴により、粉末X線回折における結晶の識別のために重要である。結晶成長の方向、粒径および測定条件によって相対強度は変わりうるので、相対強度は厳密に解釈されるべきでない。さらに、回折角は通常2θ+0.2°の範囲内で一致する角度を意味する。ピークは主要ピークを意味し、上述した以外の回折角の中間よりも大きくないピークを含む。
1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の乳酸塩および遊離塩基の両方はXRPDで特性決定した。それぞれの場合、粉末X線回折パターンは、回折角(2θ)、面間隔(d)および/または相対強度によって表される。表2、表3および表4は、遊離塩基、乳酸塩および二水和物遊離塩基形態の1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の回折角値に相当するX線回折スペクトルの面間隔(d)値を示す。
したがって、1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素は本質的に図3、図6、図7もしくは図8および/または表2、表4もしくは表5に示されるような粉末X線回折パターンを有する。
本発明は、したがって、本明細書に定義されるような本発明の新規な使用のための、1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の塩(例えば、乳酸塩、特にL−乳酸塩)の結晶を提供し、前記結晶は実質的に図3、図6、図7または図8に示されるような粉末X線回折パターンを有する。好ましくは、本発明の化合物は、図3、図6、図7あるいは図8および/または表2および/または表4および/または表5で示される粉末X線回折パターンのものと同様の回折角でピークを示す化合物であり、また任意に同様の相対強度を有する。
本発明はさらに、本明細書に定義されるような本発明の新規な使用のための、1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の乳酸塩(特にL−乳酸塩)の結晶を提供し、前記結晶は本質的に図6に示されるような粉末X線回折パターンを有する。従って、他の実施態様では、本発明は、本明細書に定義されるような本発明の新規な使用のための、1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の実質的に結晶性の乳酸塩(特にL−乳酸塩)を提供し、前記塩は図6で示される粉末X線回折パターンのものと同様の回折角でピークを示す。好ましくは、ピークは図6に示されたピークと同様の相対強度を有する。したがって、本発明は、本明細書に定義されるような本発明の新規な使用のための、1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の実質的に結晶性の乳酸塩(特にL−乳酸塩)を提供し、前記塩は実質的に図6で示されるような粉末X線回折パターンを有する。
前記乳酸塩の粉末X線回折パターンは、回折角(2θ)および面間隔(d)、そして好ましくは表4に示される強度でのピークの存在によって特性決定してもよい。
したがって、本発明は、本明細書に定義されるような本発明の新規な使用のための、シクロプロピル−3−[3−(6−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の乳酸塩(特にL−乳酸塩)を提供し、前記塩は表4の回折角(2θ±1.0°、例えば±0.2°、特に0.1°)に特徴的ピークを有する粉末X線回折パターンを示す。
また、本発明は、本明細書に定義されるような本発明の新規な使用のための、シクロプロピル−3−[3−(6−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の乳酸塩(特にL−乳酸塩)の結晶を提供し、前記結晶は17.50、18.30、19.30、19.60および21.85±1.0°、例えば±0.2°、特に±0.1°、の回折角2θに主要なピークを示す。
したがって、一つの実施態様では、本発明は、本明細書に定義されるような本発明の新規な使用のための、シクロプロピル−3−[3−(6−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素乳酸塩(特にL−乳酸塩)の結晶形態を提供し、前記結晶形態は、12.40、15.20、15.60、17.50、18.30、18.50、19.30、19.60、21.85および27.30±0.1°の2θでのX線回折パターンにおけるピークによって特徴付けられる。
シクロプロピル−3−[3−(6−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素乳酸塩(特にL−乳酸塩)の結晶はまた、特徴的粉末X線回折パターンは格子面間の間隔、表4のd(Å)、により表わされるという点で特徴付けられる。
さらなる実施態様では、本発明は、本明細書に定義されるような本発明の新規な使用のための、シクロプロピル−3−[3−(6−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素乳酸塩(特にL−乳酸塩)の結晶を提供し、前記結晶はその特徴的ピークが5.06、4.85、4.60、4.53および4.07、より具体的には、7.13、5.83、5.68、5.06、4.85、4.79、4.60、4.53、4.07および3.26Åの粉末X線回折の格子面間隔(d)として現われる、粉末X線回折パターンを有する。
したがって、他の実施態様では、本発明は、本明細書に定義されるような本発明の新規な使用のための、1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の実質的に結晶性の乳酸塩(特にL−乳酸塩)を提供し、前記塩は17.50、18.30、19.30、19.60および21.85°、より具体的には12.40、15.20、15.60、17.50、18.30、18.50、19.30、19.60、21.85、27.30°、の回折角(2θ)、ならびに5.06、4.85、4.60、4.53および4.07、より具体的には7.13、5.83、5.68、5.06、4.85、4.79、4.60、4.53、4.07および3.26Åの面間隔(d)における、主要なピークの存在を特徴とする粉末X線回折パターンを有する。
その他の実施態様では、本発明は、本明細書に定義されるような本発明の新規な使用のための、1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の実質的に結晶性のL−乳酸塩を提供し、前記乳酸塩は、回折角(2θ)および面間隔(d)、そして好ましくは表4に示される強度、でのピークの存在によって特徴付けられる粉末X線回折パターンを有する。
本発明の結晶性の塩はまた示差走査熱量測定法(DSC)によって特徴づけることができる。
前記乳酸塩はDSCにより分析され、190℃で始まりを示し、194〜197℃でピークを示す。
従って、他の態様では、本発明は、本明細書に定義されるような本発明の新規な使用のための、その乳酸塩(特にL−乳酸塩)を提供し、前記塩は無水で、DSCにかけられた場合190℃で始まりを示しかつ/または194〜197℃で吸熱ピークを示す。
DSCに関連して本明細書で使用される“始まり”なる語は、DSC走査における吸熱ピークの開始を表し、そのピークは最大の出熱点である。
したがって、本発明のその他の態様は、図6、図7または図8で示される粉末X線回折パターンのものと同様の回折角でピークを示しかつ熱分析(DSC)による始まりが190℃を示しかつ/または194〜197℃のピーク近傍に分解を伴う吸熱ピークを示す1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の乳酸塩(特に、L−乳酸塩)の新規の使用に関する。
高湿度状況での本発明の塩の性質は、例えば実施例4に記載されているような、標準的な重量蒸気収着(GVS)法、によって分析することができる。
前記乳酸塩は、高相対湿度状況で安定した無水結晶形態で存在することができ、そのような状況下で結晶構造に変化が起こらない。
本発明の塩はさらに赤外線分光法、例えばFTIR、によって特徴づけることができる。
乳酸塩の赤外線スペクトル(KBrディスク法)は、3229、2972および1660cm−1に特徴的ピークを有する。
従って、その他の実施態様では、本発明は、本明細書に定義されるような本発明の新規な使用のための、1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の(好ましくは実質的に結晶性の)乳酸塩(特にL−乳酸塩)を提供し、前記塩は、KBrディスク法を用いて分析された場合、3229、2972および1660cm−1に特徴的ピークを有する赤外線スペクトルを示す。
本発明の乳酸塩(特にL−乳酸塩)は上記の段落から明らかなように多くの異なった物理化学パラメーターによって特徴づけることができる。従って、好ましい実施態様では、本発明は、1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素のL−乳酸塩(特にL−乳酸塩)を提供し、前記塩は結晶性であり、下記の任意の1以上(どのような組み合わせでもよい)またはすべてパラメーターによって特徴付けられる。すなわち、前記塩は:
(a)図4および図5に示されるような結晶構造有する;かつ/または
(b)本明細書の表3の座標により定義されるような結晶構造を有する;かつ/または
(c)97(2)Kで、a=9.94(10)、b=15.03(10)、c=16.18(10)Å、アルファ=ベータ=γ=90°の結晶格子パラメーターを有する;かつ/または
(d)室温で、a=10.08(10)、b=15.22(10)、c=16.22(10)Å、アルファ=ベータ=γ=90°の結晶格子パラメーターを有する;かつ/または
(e)斜方晶系空間群P212121(#19)に属する結晶構造を有する;かつ/または
(f)17.50、18.30、19.30、19.60および21.85°、より具体的には12.40、15.20、15.60、17.50、18.30、18.50、19.30、19.60、21.85および27.30°、の回折角(2θ)、ならびに5.06、4.85、4.60、4.53および4.07、より具体的には7.13、5.83、5.68、5.06、4.85、4.79、4.60、4.53,4.07および3.26Åの面間隔(d)における、主要なピークの存在を特徴とする粉末X線回折パターンを有する;かつ/または
(g)図6または表4のピークと同様の相対強度を有していてもよい、図6または表4で示される粉末X線回折パターンのものと同様の回折角でピークを示す;かつ/または
(h)実質的に図6のような粉末X線回折パターンを有する;かつ/または
(i)無水で、DSCにかけられた場合190℃で始まりを示す、かつ/または194〜197℃で吸熱ピークを示す;かつ/または
(j)KBrディスク法を用いて分析された場合、3229、2972および1660cm−1に特徴的ピークを有する赤外線スペクトルを示す。
1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の尿素遊離塩基の結晶構造
1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の遊離塩基はアモルファスもしくは実質的に結晶性であってもよい。1つの特定の実施態様では、遊離塩基は実質的に結晶性である、“実質的に結晶性”なる語は上記に定義した意味を有する。一つの実施態様では、1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の遊離塩基は二水和物結晶形態で存在する。
本明細書に記載される結晶の新規な使用および結晶構造は本発明のさらなる態様を構成する。
1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の二水和物遊離塩基の結晶構造はX線結晶学的手法によって測定された。
一つの実施態様では、本発明は、本明細書に定義されるような本発明の新規な使用のための、1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の二水和物遊離塩基を提供し、前記二水和物遊離塩基は結晶性であり(i)本明細書の表2の座標に定義されるような結晶構造を有する、かつ/または(ii)二水和物遊離塩基中、結晶は単斜晶系空間群P21/n(#14)に属しa=7.66(10)、b=15.18(10)、c=17.71(10)Å、ベータ=98.53(2)°、アルファ=γ=90°の結晶格子パラメーターを有する。
1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の遊離塩基形態はXRPDで特性決定し、その結果、1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の遊離塩基形態は実質的に図3、図6、図7または図8および/または実施例70および72の表3、表5または表6に示されたような粉末X線回折パターンを有する。
したがって、一つの実施態様では、本発明は、本明細書に定義されるような本発明の新規な使用のための、1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素遊離塩基の結晶を提供し、前記結晶は図3、図6、図7あるいは図8および/または表3および/または表5および/または表6で示される粉末X線回折パターンのものと同様の回折角でピークを有する粉末X線回折パターンを示し、前記ピークは同じ相対強度を有していてもよい。
したがって、本発明は、本明細書に定義されるような本発明の新規な使用のための、1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素遊離塩基の結晶を提供し、前記結晶は表2の回折角(2θ±1.0°、例えば±0.2°、特に±0.1°)に特徴的ピークを有する粉末X線回折パターンを示す。
さらなる実施態様では、本発明は、本明細書に定義されるような本発明の新規な使用のための、1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素遊離塩基の結晶を提供し、前記結晶はその特徴的ピークが表2の格子面間隔(d)として現われる粉末X線回折パターンを有する。
1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の遊離塩基は、図3および/または表2で示される粉末X線回折パターンのものと同様の回折角でピークを示し、さらに熱分析(DSC)によれば193℃近傍に分解を伴う発熱ピークを示す。
生物学的活性
式(I0)の化合物の乳酸塩またはクエン酸塩はオーロラキナーゼの阻害剤である。例えば、前記乳酸塩またはクエン酸塩はオーロラAおよび/またはオーロラBを阻害する。
本発明の化合物の乳酸塩またはクエン酸塩はまたサイクリン依存性キナーゼに対する活性を有する。例えば、前記乳酸塩またはクエン酸塩はCDK2、CDK4、CDK5、CDK6およびCDK9キナーゼ、特にCDK2、に対する活性を有する。
本発明の化合物の乳酸塩またはクエン酸塩はまたグリコーゲンシンターゼキナーゼ−3(GSK−3)に対しても活性を有する。
CDKおよびオーロラキナーゼおよびグリコーゲンシンターゼキナーゼを調整または阻害するこれら塩の活性の結果として、異常に分裂する細胞の細胞周期を停止させる、またはその制御を回復させる手段を提供するのに有用である。よって、本明細書で定義される新規な使用に加えて、前記化合物は癌などの増殖性疾患の治療または予防に有用であるものと考えられる。本発明の化合物は、ウイルス感染、II型またはインスリン非依存性糖尿病、自己免疫疾患、頭部損傷、卒中、癲癇、アルツハイマー病などの神経変性疾患、運動神経性疾患、進行性の核上麻痺、皮質基底核変性症およびピック病、例えば、自己免疫疾患および神経変性疾患などの症状の治療に有用である。
本発明の化合物の硫酸塩またはクエン酸塩が有用である病態および症状の1つのサブグループは、ウイルス感染、自己免疫疾患および神経変性疾患からなる。
CDKは、細胞周期、アポトーシス、転写、分化およびCNS機能の調節に役割を果たす。従って、CDK阻害剤は、増殖、アポトーシスまたは分化に障害がある、癌などの疾病の治療に有用であり得る。特に、RB+veおよびPB−ve腫瘍は、特にCDK阻害剤に感受性であり得る。
阻害可能な癌の例としては、限定されるものではないが、癌腫、例えば、膀胱癌、乳癌、結腸癌(例えば、直腸腺癌および直腸腺腫などの結腸直腸癌)、腎臓癌、表皮癌、肝臓癌、肺癌、例えば、腺癌、小細胞性肺癌および非小細胞性肺癌、食道癌、胆嚢癌、卵巣癌、膵臓癌、例えば、外分泌膵臓癌、胃癌、子宮頚癌、甲状腺癌、前立腺癌または皮膚癌、例えば、扁平上皮癌;リンパ系の造血系腫瘍、例えば、白血病、急性リンパ性白血病、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、ヘアリーセルリンパ腫またはバーケットリンパ腫;骨髄系の造血系腫瘍、例えば、急性および慢性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群または前骨髄球性白血病;甲状腺瀘胞癌;間葉由来の腫瘍、例えば、線維肉腫または横紋筋肉種;中枢または末梢神経系の腫瘍、例えば、星状細胞腫、神経芽細胞腫、グリオーマまたは神経鞘腫;黒色腫;精上皮腫;奇形癌;骨肉種;色素性乾皮症;角化棘細胞種;甲状腺濾胞癌;またはカポジ肉腫が挙げられる。さらに、リンパ系の造血系腫瘍には小リンパ球性リンパ腫を含むことができる。
前記癌は、任意の1つ以上のサイクリン依存性キナーゼの阻害に感受性のある癌であってもよい。
特定の癌がサイクリン依存性キナーゼあるいはオーロラキナーゼによる阻害に感受性のあるものかどうかは、以下の実施例で示すような細胞増殖アッセイにより、または“診断法”と題した節で示されるような方法により判定することができる。
CDKはまた、アポトーシス、増殖、分化および転写においても役割を果たすことが知られており、従って、CDK阻害剤は、癌以外の以下の疾病の治療にも有用でありうる:ウイルス感染、例えば、ヘルペスウィルス、ポックスウィルス、エプスタイン−バーウィルス、シンドビスウィルス、アデノウィルス、HIV、HPV、HCVおよびHCMV;HIV感染個体におけるAIDS発現の予防;慢性炎症性疾患、例えば、全身性紅斑性狼瘡、自己免疫媒介糸球体腎炎、慢性関節リウマチ、乾癬、炎症性腸疾患および自己免疫性糖尿病;心血管系疾患、例えば、心肥大、再狭窄、アテローム性動脈硬化症;神経変性疾患、例えば、アルツハイマー病、AIDS関連痴呆、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、色素性網膜炎、脊髄性筋萎縮および小脳変性症;糸球体腎炎;骨髄異形成症候群、虚血傷害関連心筋梗塞、卒中および再灌流障害、不整脈、アテローム性動脈硬化症、毒素誘発またはアルコール関連肝疾患、血液疾患、例えば、慢性貧血および再生不良性貧血;筋骨格系の変性疾患、例えば、骨粗鬆症および関節炎、アスピリン感受性鼻副鼻腔炎、嚢胞性線維症、多発性硬化症、腎疾患および癌性疼痛。
また、いくつかのサイクリン依存性キナーゼ阻害剤は、他の抗癌剤と組み合わせて使用できることが分かった。例えば、サイクリン依存性キナーゼ阻害剤フラボピリドールの細胞傷害活性が、併用療法において他の抗癌剤とともに使用されてきた。
従って、異常細胞増殖を含む疾病または症状を治療するための本発明の医薬組成物、使用または方法において、一つの実施態様では、異常細胞増殖を含む疾病または状態は癌である。
癌の1つの群としては、ヒト乳癌(例えば、原発性乳癌、リンパ節転移陰性乳癌、浸潤性乳管癌、非類内膜性乳癌)、およびマントル細胞リンパ腫を含む。その他、他の癌として結腸直腸癌および子宮内膜癌がある。
もう1つの癌のサブセットとしては、乳癌、卵巣癌、結腸癌、前立腺癌、食道癌、扁平上皮癌および非小細胞肺癌を含む。
オーロラキナーゼに対して活性を有する化合物の乳酸塩またはクエン酸塩の場合、本発明のオーロラキナーゼ阻害化合物が有用であると考えられる癌の特定の例としては:
ヒト乳癌(例えば、原発性乳癌、リンパ節転移陰性乳癌、浸潤性乳管癌、非類内膜性乳癌);
卵巣癌(例えば、原発性卵巣癌);
膵臓癌;
ヒト膀胱癌;
結腸直腸癌(例えば、原発性結腸直腸癌);
胃癌;
腎臓癌;
子宮頸癌;
神経芽腫;
黒色腫;
リンパ腫;
前立腺癌;
白血病;
非類内膜性子宮内膜癌;
グリオーマ;および
非ホジキンリンパ腫が挙げられる。
オーロラ阻害剤に特に反応性の高い癌としては、乳癌、膀胱癌、結腸直腸癌、膵臓癌、卵巣癌、非ホジキンリンパ腫、グリオーマおよび非類内膜性子宮内膜癌が挙げられる。
オーロラ阻害剤に特に反応性の高い癌の特定のサブセットは、乳癌、卵巣癌、結腸癌、肝臓癌、胃癌および前立腺癌から成る。
オーロラ阻害剤が特に適用可能な癌の他のサブセットは血液の癌、特に白血病、である。したがって、さらなる実施態様では、式(I)の化合物の乳酸塩またはクエン酸塩は血液の癌、特に白血病、を治療するために使用される。特定の白血病は、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、B細胞リンパ腫(マントル細胞)および急性リンパ芽球性白血病(ALL、急性リンパ性白血病としても知られる)から選ばれる。一つの実施態様では、白血病は、再発性もしくは難治性急性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、急性リンパ性白血病および慢性骨髄性白血病から選ばれる。他の白血病は急性前骨髄球性白血病を含む。
癌の1つグループは、ヒト乳癌(例えば、原発性乳癌、リンパ節転移陰性乳癌、浸潤性乳管癌、非類内膜性乳癌)、およびマントル細胞リンパ腫を含む。その他、他の癌として結腸直腸癌および子宮内膜癌がある。
癌のもう1つのサブセットは、リンパ系の造血系腫瘍、例えば、白血病、慢性リンパ性白血病、マントル細胞リンパ腫およびB細胞リンパ腫(びまん性大B細胞リンパ腫)を含む。
ある特定の癌として慢性リンパ性白血病である。
もう1つの特定の癌としてマントル細胞リンパ腫がある。
他の特定の癌としてびまん性大B細胞リンパ腫がある。
オーロラキナーゼ阻害活性を有する本発明の化合物は、高レベルのオーロラキナーゼの存在が伴う、または高レベルのオーロラキナーゼの存在を特徴とするタイプの癌、例えば、これに関して本願の導入の節で挙げられている癌の治療または予防に特に有用である。そのような癌は髄芽細胞腫を含む。
式(I)の化合物の乳酸塩(特にL−乳酸塩)またはクエン酸塩VEGFR活性の阻害剤である。さらに、前記乳酸塩またはクエン酸塩はEpHおよびFGFR活性の阻害剤でもある。それゆえ、前記乳酸塩またはクエン酸塩は、特に血管新生の阻害により、組織異常増殖を防ぐもしくは組織異常増殖に細胞死を誘発する手段の提供に有用である。したがって、前記化合物は、癌のような増殖性疾患を治療または予防するのに役立つこと実証することが予想される。特に、VEGFRの活性化変異体あるいはVEGFRのアップレギュレーションを伴う腫瘍および高レベルの血清乳酸脱水素酵素を有する患者は、前記阻害剤に特に感受性がある可能性がある。本明細書で検討されているような特定のVEGFRのアイソフォームのうちのいずれの活性化変異体を有する患者にも、VEGFR阻害剤を使用した治療が特に有益である可能性がある。例えば、クローン前駆細胞がVEGFRを発現する可能性がある急性白血病細胞でのVEGFRの過剰発現である。また、FGFR1、FGFR2もしくはFGFR3のようなFGFRのアイソフォームのうちのいずれの活性化変異体、アップレギュレーションまたは過剰発現を伴う特定の腫瘍は、本発明の化合物に特に感受性がある可能性があり、そのような特定の腫瘍を有する本明細書で検討されるような患者にも本発明の化合物を使用した治療が有益である可能性がある。前記治療が、上述されたような、受容体チロシンキナーゼの変異型に関係するかもしくは対象とすることが好ましい。
Flt3、JAK、C−abl、PDK1、Chk1およびChk2阻害活性を有する本発明の化合物の乳酸塩またはクエン酸塩は、次の疾病および白血病の治療および予防に特に有用である:
真性多血症;
本態性血小板増加症;
特発性骨髄線維症;
若年性骨髄単球性白血病(JMML);
慢性骨髄単球性白血病(CMML);
巨核球性AML(AML M7);
巨核球性白血病;
フィラデルフィア染色体陰性CML;
慢性骨髄性白血病(CML);
イマチニブ耐性CML;
急性骨髄性白血病(AML);
骨髄異形成症候群(MDS);および
急性リンパ芽球性白血病(ALL)。
したがって、さらなる実施態様では、式(I)の化合物の乳酸塩またはクエン酸塩は次の疾病を治療するために使用される:真性多血症;本態性血小板増加症;特発性骨髄線維症;若年性骨髄単球性白血病(JMML);慢性骨髄単球性白血病(CMML);巨核球AML(AML M7);巨核球性白血病;フィラデルフィア染色体陰性CML;またはイマチニブ耐性CML。
さらなる実施態様では、式(I)の化合物の乳酸塩またはクエン酸塩は真性多血症、本態性血小板増加症、および骨髄様化生(MMM)を伴う骨髄線維症を含む特発性骨髄線維症のような骨髄増殖性障害(MPD)を治療するために使用される。
さらに、本発明の化合物は悪性腫瘍がBCR−ablに起因する疾病、特にフィラデルフィア染色体陽性、の治療に使用できる。さらなる実施態様では、式(I)の化合物の乳酸塩またはクエン酸塩は骨髄増殖性症候群ならびにフィラデルフィア染色体陽性CMLおよびフィラデルフィア染色体陽性ALLのようなフィラデルフィア染色体陽性白血病を治療するために使用される。特に、式(I)の化合物の乳酸塩またはクエン酸塩はフィラデルフィア染色体陽性ALLを治療するために使用される。
VEGFR阻害活性を有する本発明の化合物の乳酸塩またはクエン酸塩は、加齢黄斑変性症、特に湿潤型加齢黄斑変性症、未熟児網膜症(ROP)および糖尿病性網膜症のような虚血性増殖性網膜症ならびに血管腫などの眼疾患の治療または予防に特に有用である。したがって、さらなる実施態様では、式(I)の化合物の乳酸塩またはクエン酸塩は加齢黄斑変性症(AMD)、特に湿潤型加齢黄斑変性症、未熟児網膜症(ROP)および糖尿病性網膜症のような虚血性増殖性網膜症ならびに血管腫などの眼疾患の治療に使用される。前記治療が、上述されたような、キナーゼの変異型に関係するかもしくは対象とすることが好ましい。
サイクリン依存性キナーゼ、オーロラキナーゼ、グリコーゲンシンターゼキナーゼ−3、VEGFR、Flt3、JAK、C−abl、PDK1、Chk1およびChk2の阻害剤としての本発明の化合物の乳酸塩またはクエン酸塩の活性は下記実施例において記載されたアッセイを使用して測定することができ、ある化合物が示す活性のレベルは、IC50値として決定することができる。
FGFR3のようなFGFR、Ret、EphB2またはEphB4のようなEphあるいはcSrc阻害活性を有する本発明の化合物の乳酸塩またはクエン酸塩は、次の疾病の治療および予防に特に有用である:
甲状腺乳頭癌
多発性内分泌腺腫(MEN)2A型および2B型
家族性甲状腺髄様癌(FMTC)
ヒルシュスプルング病
アペール(AP)症候群
クルーゾン症候群
ジャクソン-ワイス症候群
ベーレ−スティーブンソン脳回状頭皮症候群
パイフェル症候群(PS)
多発性骨髄腫
頭頸部癌
上皮癌
したがって、さらなる実施態様では、式(I)の化合物の乳酸塩またはクエン酸塩は多発性骨髄腫、上皮癌、頭頸部癌、アペール(AP)症候群、クルーゾン症候群、ジャクソン−ワイス症候群、ベーレ−スティーブンソン脳回状頭皮症候群およびパイフェル症候群(PS)などのヒトの骨格発生異常、甲状腺乳頭癌、家族性甲状腺髄様癌(FMTC)、多発性内分泌腺腫(MEN)2A型および2B型などの甲状腺癌ならびにヒルシュスプルング病の治療に使用される。
前記化合物がFGFRに対する活性を有する場合、特定の癌は、多発性骨髄腫、膀胱癌、肝細胞性癌、口腔扁平細胞癌、頚部癌、前立腺癌、甲状腺癌、肺癌、乳癌および結腸癌が挙げられる。FGFR1のようなFGFR阻害活性を有する本発明の化合物は、乳癌、特に古典的小葉癌(CLC)、の治療または予防に特に有用である。FGFR2またはFGFR3のようなFGFR阻害活性を有する本発明の化合物は、骨疾患の治療または予防に特に有用である。
更に、FGFR1、FGFR2またはFGFR3のようなFGFR阻害活性を有する本発明の化合物は、進行性線維症が症状である病状の治療または予防に特に有用である。本発明の化合物が治療に有用かもしれない線維性の疾患は、例えば肝硬変、糸球体腎炎、肺線維症、全身性線維症、関節リウマチ、そして自然創傷治癒過程、における線維組織の異常もしくは過剰蓄積示す疾病が挙げられる。特に、本発明の化合物はまた、肺線維症、特に特発性肺線維症、の治療にも有用である。
本発明の化合物がPDGFRを阻害するので、本発明の化合物は、多形性グリア芽腫のようなグリア芽腫、前立腺癌、胃腸間質性腫瘍、肝臓癌、腎臓癌、慢性骨髄性白血病、慢性骨髄単球性白血病(CMML)、そして高好酸球症候群、希な増殖性血液疾患(rare proliferative hematological disorder)、隆起性皮膚線維肉腫、および浸透性皮膚腫瘍を含む多くの腫瘍や白血病タイプの治療に有用である。
FGFR3のようなFGFR、Ret、EphB2またはEphB4のようなEphあるいはcSrcの阻害剤としての本発明の化合物の乳酸塩またはクエン酸塩の活性は下記実施例において記載されたアッセイを使用して測定することができ、前記化合物が示す活性のレベルは、IC50値として決定することができる。
さらなる態様では、本発明は以下のものを提供する:
VEGFR、Flt3、JAK、C−abl、PDK1、Chk1またはChk2が媒介する病態または症状の予防または治療方法であって、前記方法はそれが必要な被検者に治療上有効な量の式(I0)の化合物の乳酸塩(特にL−乳酸塩)またはクエン酸を投与することを含む。
VEGFR、Flt3、JAK、C−abl、PDK1、Chk1またはChk2が媒介する病態または症状の予防または治療に用いる式(I0)の化合物の乳酸塩(特にL−乳酸塩)またはクエン酸。
VEGFR、Flt3、JAK、C−abl、PDK1、Chk1またはChk2が媒介する病態または症状の予防または治療用薬剤の製造のための式(I0)の化合物の乳酸塩(特にL−乳酸塩)またはクエン酸の使用。
FGFR3などのFGFR、Ret、EphB2またはEphB4などのEph、あるいはcSrcが媒介する病態または症状の予防または治療方法であって、前記方法はそれが必要な被検者に治療上有効な量の式(I0)の化合物の乳酸塩(特にL−乳酸塩)またはクエン酸を投与することを含む。
FGFR3などのFGFR、Ret、EphB2またはEphB4などのEph、あるいはcSrcが媒介する病態または症状の予防または治療に用いる式(I0)の化合物の乳酸塩(特にL−乳酸塩)またはクエン酸。
FGFR3などのFGFR、Ret、EphB2またはEphB4などのEph、あるいはcSrcが媒介する病態または症状の予防または治療用薬剤の製造のための式(I0)の化合物の乳酸塩(特にL−乳酸塩)またはクエン酸の使用。
変異キナーゼ
キナーゼ阻害剤で治療されている患者集団で発生する薬剤耐性キナーゼ変異は、治療で使用される特定の阻害剤に結合するか相互に作用するタンパク質の領域で、部分的に起こり得る。そのような変異は問題のキナーゼに結合阻害する阻害剤の能力を縮小させる。これは、阻害剤と相互に作用するか、標的への前記阻害剤の結合をサポートにするために重要なアミノ酸残基のうちのどれにおいても起こり得る。変異したアミノ酸残基との相互作用を必要とせずに、標的キナーゼに結合する他の阻害剤は、前記変異に影響されなくことなく前記酵素の有効な阻害剤であり続けると考えられる(カーター(Carter)ら、PNAS, 2005, 102, 31, 11011-110116)。
薬剤耐性変異の1つの好発部位はいわゆるゲートキーパー残基である。この特定の残基は、いくつかのキナーゼ阻害剤とそれらのそれぞれの標的の相互作用のための重要な部位を構成する。例えば、イマチニブ(グリベック)は、ablキナーゼドメインのゲートキーパー残基であるスレオニン315と部分的に結合する。T315I変異は、イマチニブで治療を受けるCML患者で発生する薬物耐性の主形態のうちの1つである、また急性リンパ芽球性白血病の患者でも観察される。したがって、有効な標的阻害のためのT315との相互作用を必要としないBCR−abl阻害剤は、依然T315Iイマチニブ耐性変異の有効な阻害剤である。
イマチニブは、abl活性を妨害することに加えて、受容体c−kitおよびPDGF−Rのチロシンキナーゼ活性を阻害する。したがって、前記薬剤は、胃腸の腫瘍および高好酸球症候群に用いられており、これらはそれぞれc−kitおよびPDGFRの活性化に依存性の疾病である。PDGF−R活性化は、異なった分子の状況下でイマチニブに応答する他の悪性腫瘍に関与している。これら他の悪性腫瘍は、悪性腫瘍は慢性骨髄単球性白血病(CMML)を含む。他の疾患では、隆起性皮膚線維肉腫、浸透性皮膚腫瘍、PDGF−Bリガンドをコードする遺伝子を伴う相互転座は、キメラリガンドの構成性分泌および受容体の活性化をもたらす。グリベックはこれら3つ疾病すべてに対して活性がある。
CMLで観察されるT315I耐性の疾病に加えて、類似のゲートキーパー変異による耐性はc−kitおよびPDGFrの両方でイマチニブで治療される患者において観察される。したがって、KITにおけるT670I変異およびPDGFRにおけるT674I変異は、BCR−ablにおけるT3151変異とホモログであり、3つの変異はすべてBMS−354825(ダサチニブ)およびAMN−107(ニロチニブ)を含む臨床ステージのATP拮抗キナーゼ阻害剤に対する耐性を与える。この変異は患者におけるsrc/Abl阻害剤に対する耐性の主要なメカニズムを示しているように見え、この変異の臨床上の重要性は相当に大きくなる可能性がある。現在スレオニンゲートキーパー変異を伴う患者へのキナーゼを標的にした有効な治療法はない。
さらに、EGFRにおけるT790M変異はBCR−ablにおけるT315I変異に相同し、この変異はまた臨床ステージのATP拮抗キナーゼ阻害剤に対する耐性を与える可能性がある。したがって、他の臨床ステージのATP拮抗キナーゼ阻害剤としては、EGFR阻害剤イレッサ(ゲフィチニブ)、タルセバ(エルロチニブ)、SU−11248(スニチニブマレエート、ステント)、PDGFrおよびc−kit阻害剤、およびソラフェニブのような他のPDGFR阻害剤が挙げられる。
オーロラキナーゼはキナーゼ活性部位のゲートキーパー領域にスレオニンを含んでいない。したがって、本発明のものを含む多くのオーロラキナーゼ阻害剤は、キナーゼ活性の阻害を支持するのにこの相互作用に依存しない。従って、abl、kit、PDGFRまたは他のキナーゼに対する交差反応性を有するオーロラキナーゼ阻害剤は、薬剤耐性ゲートキーパー変異、特にスレオニンゲートキーパー変異、同じく野生型変異体にも抑制的であり、ゲートキーパー−領域での変異により発生する耐性の疾病対して有効である。
したがって、本発明の化合物は、BCRabl、c−kit、PDGF、EGF受容体、ErbB2のような変異した分子標的を示す癌に関して特に用途がある。そのような変異を伴う腫瘍の診断は当業者に公知の手法ならびにRTPCRおよびFISHのような本明細書に記載された手法を使って行なうことができる。
したがって、オーロラキナーゼは、ゲートキーパースレオニン有するキナーゼではないので、オーロラ阻害剤は、タンパク質のその領域における変異のために既存の治療法に耐性がある適応症の治療に有用である。そのような適応症としては、胃腸間質性腫瘍(GIST)、慢性骨髄単球性白血病(CMML)、高好酸球症候群、希な増殖性血液学的疾患および隆起性皮膚線維肉腫(浸透性皮膚腫瘍)が挙げられる。
本発明の一態様は、他の抗癌剤と結合または相互作用するが式(I)の化合物とは結合または相互作用しないタンパク質の領域に変異を含んでいるキナーゼの阻害のための、式(I)、式(I´)または式(I0)の化合物あるいはそのサブグループまたは例の使用である。
本発明のさらなる態様は、他の抗癌剤と結合または相互作用するが式(I)、式(I´)または式(I0)の化合物とは結合または相互作用しないタンパク質の領域に変異を含んでいるキナーゼが媒介する疾病を、式(I)、式(I´)または式(I0)の化合物あるいはそのサブグループまたは例で治療する方法である。
阻害対象である特定のキナーゼとしては、c−abl、c−kit、PDGFRベータおよびPDGFRアルファを含むPDGFRならびにEGFR(ErbBl)、HER2(ErbB2)ならびにErbB3およびErbB4などのErbBフェミリーのメンバーが挙げられ、特に、c−abl、c−kitおよびPDGFRである。
さらなるキナーゼとしては、EphA1、EphA2、EphA3、EphA4、EphA5、EphA8、EphA10、EphB1、EphB2、EphB3、EphB5、EphB6などのエフリン受容体ファミリーのメンバー、c−Src、ならびにTYK2などのJAKファミリーのキナーゼが挙げられる。
他の抗癌剤としては、グリベック、BMS−354825、AMN−107、SU−11248(スニチニブマレエート、ステント)、ソラフェニブ(BAY43−9006)、イレッサ(ゲフィチニブ)およびタルセバ(エルロチニブ)などのATP拮抗キナーゼ阻害剤、特にグリベック、BMS−354825(ダサチニブ)、およびAMN−107(ニロチニブ)が挙げられる。さらなるキナーゼ阻害剤はデービース(Davies)ら、Biochem. J. 2000, 351, 95-105;およびマキネス(McInnes C)、フィッシャー(Fischer P.M.)、Curr. Pharm. Des. 2005 11:14 (1845-1863)で検討されている。
他の抗癌剤と結合または相互作用する特定の領域としては、キナーゼ活性部位、ATP結合部位およびゲートキーパー領域が挙げられ、特にablにおけるT315、KTTにおけるT670、PDGFRにおけるT674およびEGFRにおけるT790を含むスレオニンゲートキーパー残基である。ATP結合ポケットを含むキナーゼ活性部位の特定の領域はブルペッティ(Vulpetti A.)、ボソッティ(Bosotti R.)、Farmaco 2004 59:10 (759-765);ナイト(Knight)ら、Chemistry & Biology, 12, 621-637;およびチェリー(Cherry M.)、ウィリアムス(Williams D.H.)Curr. Med. Chem. 2004 11:6 (663-673)で検討されている。
本発明のさらなる態様は、スレオニンゲートキーパー残基(すなわちablにおけるT315、T670におけるKIT、PDGFRにおけるT674)に変異を含むc−abl、c−kitおよびPDGFRの阻害のための式Iの化合物の使用に関する。
したがって、本発明のさらなる実施態様では、式(I)、式(I´)または式(I0)の化合物の乳酸塩またはクエン酸塩あるいはそのサブグループまたは例は、胃腸間質性腫瘍(GIST)、多形性グリア芽腫のようなグリア芽腫、高好酸球症候群または隆起性皮膚線維肉腫を治療するために使用される。
上記の段落に従って、さらなる態様では、本発明は下記のものを提供する:
癌細胞が:
(a)スレオニンゲートキーパー変異;または
(b)薬剤耐性ゲートキーパー変異;または
(c)T315Iイマチニブ耐性変異;または
(d)KITにおけるT670I変異;または
(e)PDGFRにおけるT674I変異、
である薬剤耐性キナーゼ変異を含む癌の治療に用いる本明細書で定義されている式(I)の化合物(例えば、その乳酸塩またはクエン酸塩形態)。
BCRabl、c−kit、PDGF、EGF受容体またはErbB2の変異型である変異分子標的を発現する癌の治療に用いる本明細書で定義されている式(I)の化合物(例えば、その乳酸塩またはクエン酸塩形態)。
胃腸間質性腫瘍(GIST)、慢性骨髄単球性白血病(CMML)、高好酸球症候群および隆起性皮膚線維肉腫の治療に用いる本明細書で定義されている式(I)の化合物(例えば、その乳酸塩またはクエン酸塩形態)。
他の抗癌剤と結合または相互作用するが式(I)のすべての化合物、式(I)の1つの化合物、と結合または相互作用をしないタンパク質の領域に変異を有するキナーゼ、例えばc−abl、c−kit、PDGFRベータおよびPDGFRアルファを含むPDGFRならびに,EGFR(ErbBl)、HER2(ErbB2)、ErbB3およびErbB4などのErbBフェミリーのメンバー、特に、c−abl、c−kitおよびPDGFR、EphA1、EphA2、EphA3、EphA4、EphA5、EphA8、EphA10、EphB1、EphB2、EphB3、EphB5、EphB6などのエフリン受容体ファミリーのメンバー、c−Src、ならびにTYK2などのJAKファミリーのキナーゼから選ばれる変異キナーゼ、が媒介する疾病の治療に用いる本明細書で定義されている式(I)の化合物(例えば、その乳酸塩またはクエン酸塩形態)。
癌細胞が:
(a)スレオニンゲートキーパー変異;または
(b)薬剤耐性ゲートキーパー変異;または
(c)T315Iイマチニブ耐性変異;または
(d)KITにおけるT670I変異;または
(e)PDGFRにおけるT674I変異、
である薬剤耐性キナーゼ変異を含む癌の治療用薬剤の製造のための本明細書で定義されている式(I)の化合物(例えば、その乳酸塩またはクエン酸塩形態)。
BCRabl、c−kit、PDGF、EGF受容体またはErbB2の変異型である変異分子標的を発現する癌の治療用薬剤の製造のための本明細書で定義されている式(I)の化合物(例えば、その乳酸塩またはクエン酸塩形態)の使用。
胃腸間質性腫瘍(GIST)、慢性骨髄単球性白血病(CMML)、高好酸球症候群および隆起性皮膚線維肉腫の治療用薬剤の製造のための本明細書で定義されている式(I)の化合物(例えば、その乳酸塩またはクエン酸塩形態)の使用。
他の抗癌剤と結合または相互作用するが式(I)のすべての化合物、式(I)の1つの化合物、と結合または相互作用をしないタンパク質の領域に変異を有するキナーゼ、例えばc−abl、c−kit、PDGFRベータおよびPDGFRアルファを含むPDGFRならびに,EGFR(ErbBl)、HER2(ErbB2)、ErbB3およびErbB4などのErbBフェミリーのメンバー、特に、c−abl、c−kitおよびPDGFR、EphA1、EphA2、EphA3、EphA4、EphA5、EphA8、EphA10、EphB1、EphB2、EphB3、EphB5、EphB6などのエフリン受容体ファミリーのメンバー、c−Src、ならびにTYK2などのJAKファミリーのキナーゼから選ばれる変異キナーゼ、が媒介する疾病の治療用薬剤の製造のための本明細書で定義されている式(I)の化合物(例えば、その乳酸塩またはクエン酸塩形態)の使用。
癌細胞が:
(a)スレオニンゲートキーパー変異;または
(b)薬剤耐性ゲートキーパー変異;または
(c)T315Iイマチニブ耐性変異;または
(d)KITにおけるT670I変異;または
(e)PDGFRにおけるT674I変異、
である薬剤耐性キナーゼ変異を含む癌に罹患している患者を治療する方法であって、前記方法は本明細書で定義されている式(I)の化合物(例えば、その乳酸塩またはクエン酸塩形態)を患者に投与することを含む。
BCRabl、c−kit、PDGF、EGF受容体またはErbB2の変異型である変異分子標的を発現する癌の治療方法であって、前記方法は本明細書で定義されている式(I)の化合物(例えば、その乳酸塩またはクエン酸塩形態)を治療が必要な患者に投与することを含む。
胃腸間質性腫瘍(GIST)、慢性骨髄単球性白血病(CMML)、高好酸球症候群および隆起性皮膚線維肉腫の治療方法であって、前記方法は本明細書で定義されている式(I)の化合物(例えば、その乳酸塩またはクエン酸塩形態)を治療が必要な患者に投与することを含む。
他の抗癌剤と結合または相互作用するが式(I)のすべての化合物、式(I)の1つの化合物、と結合または相互作用をしないタンパク質の領域に変異を有するキナーゼ、例えばc−abl、c−kit、PDGFRベータおよびPDGFRアルファを含むPDGFRならびに,EGFR(ErbBl)、HER2(ErbB2)、ErbB3およびErbB4などのErbBフェミリーのメンバー、特に、c−abl、c−kitおよびPDGFR、EphA1、EphA2、EphA3、EphA4、EphA5、EphA8、EphA10、EphB1、EphB2、EphB3、EphB5、EphB6などのエフリン受容体ファミリーのメンバー、c−Src、ならびにTYK2などのJAKファミリーのキナーゼから選ばれる変異キナーゼ、が媒介する疾病の治療方法であって、前記方法は本明細書で定義されている式(I)の化合物(例えば、その乳酸塩またはクエン酸塩形態)を治療が必要な患者に投与することを含む。
さらなる態様では、本発明は、若年性骨髄単球性白血病(JMML)または慢性骨髄単球性白血病(CMML)の治療で用いる1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素あるいはその塩(例えば、L−乳酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、メシル酸塩、エタンスルホン酸塩、DL−乳酸塩、アジピン酸塩、D−グロクロン酸塩、D−グルコン酸塩または塩酸塩、溶媒和物、互変異性体またはN−オキシドを提供する。
本発明はさらに、真性多血症、本態性血小板増加症あるいは特発性骨髄線維症の治療に用いる1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素あるいはその塩(例えば、L−乳酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、メシル酸塩、エタンスルホン酸塩、DL−乳酸塩、アジピン酸塩、D−グロクロン酸塩、D−グルコン酸塩または塩酸塩、溶媒和物、互変異性体またはN−オキシドを提供する。
本発明はさらに、巨核球性AML(AML M7)を含む巨核球性白血病あるいはフィラデルフィア染色体陰性CMLまたはイマチニブ耐性CMLの治療の治療に用いる1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素あるいはその塩(例えば、L−乳酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、メシル酸塩、エタンスルホン酸塩、DL−乳酸塩、アジピン酸塩、D−グロクロン酸塩、D−グルコン酸塩または塩酸塩、溶媒和物、互変異性体またはN−オキシドを提供する。
真性多血症;本態性血小板増加症;特発性骨髄線維症;若年性骨髄単球性白血病(JMML);慢性骨髄単球性白血病(CMML);巨核球性AML(AML M7)を含む巨核球性白血病;フィラデルフィア染色体陰性CMLまたはイマチニブ耐性のCMLの治療において、1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の遊離塩基を使用してもよく、より好ましくは、塩を使用してもよい。前記塩は、我々の先の出願であるUSSN60/640,475およびGB0428552.4に開示された酢酸塩、メシル酸塩、エタンスルホン酸塩、DL−乳酸塩、アジピン酸塩、D−グロクロン酸塩、D−グルコン酸塩または塩酸塩であってもよい、あるいは、前記塩は本明細書に開示された塩、例えば乳酸塩またはクエン酸、のうちの1つであってもよい。
また、真性多血症;本態性血小板増加症;特発性骨髄線維症;若年性骨髄単球性白血病(JMML);慢性骨髄単球性白血病(CMML);巨核球性AML(AML M7)を含む巨核球性白血病;フィラデルフィア染色体陰性CMLまたはイマチニブ耐性のCMLの治療法が提供され、前記治療法はそのような治療を必要とする患者に1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素またはその塩に投与することによる。
本発明はまた、ニロチニブ耐性CMLまたはダサチニブ耐性CMLの治療に用いる本発明の化合物を提供する。
1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素(式(I 0 )の化合物)の利点
式(I0)の化合物は従来の化合物に比べて多くの利点を有する。例えば、式(I0)の化合物は、Jak2、T315IablおよびVEGFRキナーゼ(表Aを参照)などの癌の増殖および維持に関わるキナーゼを含む種々のキナーゼに対するその活性がより強力かつ選択的であり、特にオーロラキナーゼAおよびオーロラキナーゼBに対して増強した選択性および効能を示す。前記化合物が標的とする他のキナーゼの多くは腫瘍形成性のシグナル伝達経路にあり、それらキナーゼは前記化合物の抗腫瘍作用(PDK1、Flt3、VEGFR2)に積極的に寄与する可能性を有している。さらに、JAK2およびc−ablT315I変異体に対する効能は、グリベック耐性CMLおよび真性多血症を含む白血病や骨髄増殖性疾患に関して潜在的に興味深いものである。
さらに、前記化合物が標的とする他のキナーゼは、特に血管新生を阻害または抑制し甲状腺癌(表B)の治療に関して興味深いものであリ得る。
また、式(I0)の化合物はP450酵素(表C)に対して異なる感受性を有している点で従来の化合物に対して有利である。
表C:インビトロでの発現シトクロムP450アイソフォームの阻害
さらに、本発明の化合物はまた、薬物代謝と薬物速度論的特性に関して向上を示す点で従来の化合物に比べて有利である。特に、本発明の化合物は減少した血漿タンパク結合を示す。実施例24、62、63および64の化合物の血漿タンパクへの結合は、ラットの血漿では61%、マウスの血漿では82%の範囲であり、試験された種類のすべてにわたって同じように中程度であった。これは、遊離薬物が治療効果を発揮するために遊離薬物を適切な作用部位に到達させるため、より多くの遊離薬物を体循環中に確保しておくことの利点を示している可能性がある。腫瘍中で薬理作用を発揮ために増加された遊離分画は、向上した有効性をもたらす可能性があり、それにより投与される量の低減を可能する。
式(I0)の化合物はまた、増殖(proliferation)およびクローン(clonogenic)アッセイにおいて向上した細胞活性を示し(例えば実施例16および実施例17に記載のアッセイ)、それにより広範囲の固形腫瘍および白血病細胞株(表D)に対する向上した抗癌活性を示す。
表D:腫瘍細胞集落形成に対する妨害作用
*:+は、野生型p53の発現を示す;−は、p53の発現が無かったかp53が機能性でなかったことを示す。
式(I0)の化合物は減少した毒性を有し、したがってより大きな治療濃度域を有する。初代ヒト乳房上皮細胞を使用したインビトロ研究では、正常細胞の処理後、腫瘍細胞と比較して、より少数の細胞が多核になるか、あるいは処理後により少数の細胞が死に、その代わりに一旦処理を止めれば、細胞周期に再び入る前に可逆的にG2/M停止を受けることが示された。データは、化合物処理が正常細胞と比較して腫瘍細胞に対して異なった効果があることを示す。チェックポイント不全腫瘍細胞では、オーロラキナーゼ阻害を介した、有糸分裂の破壊、細胞質分裂の阻害および紡錘体チェックポイントの迂回により、化合物処理が多核細胞化を引き起こす。この多核細胞化が細胞死にもたらすようである。対照的に、化合物処理された正常なチェックポイントコンピテント細胞では、24時間の化合物処理後に、より少数の細胞が多核になるか、あるいはより少数の細胞が死ぬ、その代わりに、より多くの割合の細胞が、一旦化合物が取り除かれれば可逆的にG2/M停止を受け、再び細胞周期に入る。これらの効果の違いは、正常細胞はもし正確な染色体分離が起こらない場合、細胞周期を停止させるため、有系分裂後のp53依存性チェックポイントなどの、チェックポイントが機能しているという事実を反映している可能性がある。腫瘍細胞では、これらのチェックポイントは不在であり、有糸分裂が進み多核細胞化が起こることを可能にする。
更に、式(I0)の化合物の塩形態は、水溶液において向上した溶解度を示し、よりよい物理化学的特性(例えば、より低いlogD)を示す。
式(I´)の化合物の製造方法
式(I´´)の化合物は当業者に公知の合成法に従って製造することができる。
例えば、式(I´´)の化合物、式中Aは結合(すなわちAとカルボニル基がアミド結合を形成)、は標準的なアミド形成条件下で式(X)の化合物:
およびカルボン酸R
1E−CO
2Hまたはその反応性誘導体との反応により製造することができる。
前記カルボン酸とアミン(X)のカップリング反応は、ペプチド結合の形成に一般に用いられるタイプの試薬の存在下で行うことができる。このような試薬の例としては、1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)(シーハン(Sheehan)ら、J. Amer. Chem Soc. 1955, 77, 1067)、1−エチル−3−(3´−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド(EDC)(シーハン(Sheehan)ら、J. Org. Chem., 1961, 26, 2525)、ウロニウム系カップリング剤、例えば、O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N´,N´−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HATU)(カルピノ(L. A. Carpino)、J. Amer. Chem. Soc., 1993, 115, 4397)、およびホスホニウム系カップリング剤、例えば、1−ベンゾ−トリアゾリルオキシトリス(ピロリジノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBOP)(カストロ(Castro)ら、Tetrahedron Letters, 1990, 31, 205)が挙げられる。カルボジイミド系カップリング剤は、1−ヒドロキシアザベンゾトリアゾール(HOAt)または1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)(コーニック(Konig)ら、Chem. Ber., 103, 708, 2024-2034)と併用するのが有利である。好ましいカップリング試薬としては、EDCおよびDCCとHOAtまたはHOBtとの組合せが挙げられる。
カップリング反応は、典型的にはアセトニトリル、ジオキサン、ジメチルスルホキシド、ジクロロメタン、ジメチルホルムアミドまたはN−メチルピロリジンなどの非水性非プロトン性溶媒中、または1以上の混和性補助溶媒を伴ってもよい水性溶媒中で行われる。反応は、室温、または反応物の反応性が小さい場合には適当な高温で行うことができる(例えば、スルホンアミド基のような電子求引基を有する電子不足のアニリンの場合)。反応は、非干渉塩基、例えば、トリエチルアミンまたはN,N−ジイソプロピルエチルアミンなどの第三級アミン、の存在下で行ってもよい。
別法として、カルボン酸の反応性誘導体、例えば無水物または酸塩化物を用いてもよい。無水物などの反応性誘導体との反応は典型的には、ピリジンなどの塩基の存在下、室温でそのアミンと無水物を撹拌することによって達成される。
式(X)のアミンは、標準的な条件下で対応する式(XI)のニトロ−化合物を還元することにより製造できる。この還元は、例えば、室温にて、エタノールまたはジメチルホルムアミドなどの極性溶媒中、パラジウム炭素などの触媒の存在下での触媒的水素化により行うことができる。
式(XI)のニトロ−化合物は、式(XII):
のニトロ−ピラゾールカルボン酸を4−モルホリン−4−イルメチル−ベンゼン−l,2−ジアミン(MがDlである化合物を形成)または4,5−ジメトキシ−ベンゼン−1,2−ジアミン(MがD2である化合物を形成)と反応させることにより製造することができる。
このジアミンとカルボン酸(XII)との反応は、これまでに記載したアミドカップリング条件下、上記のようなHOBtの存在下、DCCまたはEDCなどの試薬の存在下で行うことができ、中間体オルト−アミノフェニルアミド(図示せず)が得られ、次にこれを環化してベンゾイミダゾール環を形成させる。最終の環化工程は典型的には、酢酸の存在下、還流下で加熱することにより行うことができる。
MがD1である式(X)の化合物の製造を示す例示的な反応スキームはスキーム1に記されている。
スキーム1の各ステップの典型的な条件は下記の実施例部分に記載されている。
MがD2である化合物は、類似の方法で製造することができるが、スキーム1のジアミン(XVI)に代わり4,5−ジメトキシ−ベンゼン−l,2−ジアミンを使用する。
式中Aは結合である式(I´)の化合物の他の合成方法では、4−モルホリン−4−イルメチル−ベンゼン−l,2−ジアミンおよび4,5−ジメトキシ−ベンゼン−1,2−ジアミンはまた、式中Aが結合である式(XVII)のカルボン酸と反応させることができ、式(I´)の化合物が得られる。
カルボン酸(XVII)とジアミンとの反応はニトロ化合物(XI)の製造に関して上述した反応と類似の条件で行なうことができる。式(XVII)のカルボン酸は、スキーム2に示される一連の反応により製造することができる。
スキーム2に示されるように、置換または非置換4−ニトロ−3−ピラゾールカルボン酸(XVIII)は塩化チオニルとの反応によりエステル化して酸塩化物中間体を得ることができ、その後、エタノールと反応させて式(XIX)のエチルエステルを形成することができる。あるいは、このエステル化は、酸性触媒、その一例としては塩化チオニル、の存在下でアルコールとカルボン酸を反応させることにより行うこともできる。この反応は典型的には、室温で、溶媒としてエステル化アルコール(例えば、エタノール)を用いて行われる。アミン(XX)を、上記のものと同様または類似のアミド形成条件下で、適当なカルボン酸R
1−E−CO
2Hとカップリングしてアミド(XXI)を得る。次に、このアミド(XXI)のエステル基を、典型的には室温で、メタノールなどの極性水和性溶媒中、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物を用い、加水分解することができる。
AがNR2である式(I´)の化合物は、尿素の合成のための標準的な方法を用いて製造することができる。例えば、このような化合物は、式(X)のアミノピラゾール化合物を、DMFなどの極性溶媒中、式R1−E−N=C=Oで表される適宜置換されたイソシアネートと反応させることにより製造することができる。この反応は室温で都合よく行なわれる。
また、式(I´)の尿素はカルボニルジイミダゾール(CDI)の存在下で式R1−E−NH2で表されるアミンと式(X)のアミンとを反応させることにより製造することができる。前記反応は、典型的には約150℃の温度まで熱し(例えば、マイクロ波ヒーターを使用して)THFなどの極性溶媒中で行なわれる。
CDIを使用する代わりに、尿素を形成する2つのアミンのカップリングは、室温でジクロロメタンなどの溶剤中、トリエチルアミンなどの非干渉塩基の存在下で、トリホスゲン((トリクロロメチル)カーボネート)を使用することで達成することができる。
CDIに代わるさらなる選択肢として、トリホスゲンの代わりにホスゲンを使用してもよい。
上記の反応の多くのものでは、分子の望まない位置で反応が起こらないように1以上の基を保護する必要のある場合がある。保護基の例ならびに官能基を保護および脱保護する方法は、有機合成における保護基(Protective Groups in Organic Synthesis)(グリーン(T.Green)およびワッツ(Wuts);第3版、ジョンワイリー&サンズ、1999年)に見出すことができる。ヒドロキシ基は、例えば、エーテル(−OR)またはエステル(−OC(=O)R)、例えば、t−ブチルエーテル;ベンジル、ベンズヒドリル(ジフェニルメチル)またはトリチル(トリフェニルメチル)エーテル;トリメチルシリルまたはt−ブチルジメチルシリルエーテル;またはアセチルエステル(−OC(=O)CH3、−OAc)、として保護することができる。アルデヒドまたはケトン基は、例えば、第一級アルコールとの反応により、カルボニル基(>C=O)がジエーテル(>C(OR)2)に変換される、それぞれ、アセタール(R−CH(OR)2)またはケタール(R2C(OR)2)、として保護することができる。アルデヒド基またはケトン基は、酸の存在下で、過剰の水を用いて加水分解により容易に再生される。アミン基は、例えば、アミド(−NRCO−R)またはウレタン(−NRCO−OR)、例えば、メチルアミド(−NHCO−CH3);ベンジルオキシアミド(−NHCO−OCH2C6H5、−NH−Cbz)として;t−ブトキシアミド(−NHCO−OC(CH3)3、−NH−Boc);2−ビフェニル−2−プロポキシアミド(−NHCO−OC(CH3)2C6H4C6H5、−NH−Bpoc)として、9−フルオレニルメトキシアミド(−NH−Fmoc)として、6−ニトロベラトリルオキシアミド(−NH−Nvoc)として、2−トリメチルシリルエチルオキシアミド(−NH−Teoc)として、2,2,2−トリクロロエチルオキシアミド(−NH−Troc)として、アリルオキシアミド(−NH−ALLoc)として、または2(−フェニルスルホニル)エチルオキシアミド(−NH−Psec)、として保護することができる。アミン、例えば、環状アミンおよび複素環式N−H基のための他の保護基としては、トルエンスルホニル(トシル)およびメタンスルホニル(メシル)基ならびにベンジル基、例えば、パラ−メトキシベンジル(PMB)基が挙げられる。カルボン酸基は、エステル、例えば、C1−7アルキルエステル(例えば、メチルエステル;t−ブチルエステル);C1−7ハロアルキルエステル(例えば、C1−7トリハロアルキルエステル);トリC1−7アルキルシリル−C1−7アルキルエステル;またはC5−20アリール−C1−7アルキルエステル(例えば、ベンジルエステル;ニトロベンジルエステル);またはアミド、例えば、メチルアミド、として保護することができる。チオール基は、例えば、チオエーテル(−SR)、例えば、ベンジルチオエーテル;アセタミドメチルエーテル(−S−CH2NHC(=O)CH3)、として保護することができる。
式(I´)のサブグループ(C)を構成する酸付加塩は、親化合物1−(2,6−ジフルオロフェニル)−N−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の合成中に形成することができる、あるいは親化合物の遊離塩基の所望の塩への変換により形成することができる、あるいは親化合物の1つの塩を親化合物の他の所望の塩へ変換することにより形成することができる。親化合物1−(2,6−ジフルオロフェニル)−N−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素(式(IA)の化合物)は下記のスキーム3に示された方法により製造することができる。
スキーム3に示されるように、市販されている化合物である3,4−ジニトロカルボン酸(XIII)はモルホリド(XXI)に変換される。アミドの形成は標準的な方法を使用して、酸(XII)を酸クロリドのような活性誘導体に変換することにより達成することができる。例えば、酸クロリドは、塩化チオニルの還流温度で過剰の塩化チオニルとともに熱し次に過剰の塩化チオニルをトルエンとの共沸により除去することにより形成することができる。
モルホリド(XXI)は、三フッ化ホウ素と組み合わせた水素化ホウ素ナトリウムなどの適当な還元剤との処理によりジニトロベンジルモルホリン(XXIII)に還元することができる。還元反応は、典型的には低温、例えば0〜5℃の温度で、テトラヒドロフランのような無水溶媒中で行なわれる。ジニトロベンジルモルホリン(XXIII)はその後、標準条件下、例えば室温でエタノールのような極性溶媒中パラジウム炭素のような触媒の存在下で接触水素化により、ジアミノベンジルモルホリン(XXIV)に還元できる。
ジアミノベンジルモルホリン(XXIV)をその後、市販の4−ニトロピラゾール−3−カルボン酸と反応させ、ニトロピラゾリル-ベンゾイミダゾール(XXV)を形成する。ニトロピラゾリル-ベンゾイミダゾール(XXV)の形成は、まず、芳香族アミン基とアミド結合形成を促進することができるO−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N´,N´−テトラメチルウロニウムテトラフルオロ硼酸塩(TBTU)のようなペプチド結合試薬を使用して、カルボン酸とジアミノベンジル化合物(XXIV)間にアミド結合を形成することにより達成されてもよい。中間体アミド(図示せず)はそれから、過剰の氷酢酸中で、例えば約65℃の温度で熱することによりニトロ−ピラゾリル−ベンゾイミダゾール(XXV)に環化される。
ニトロピラゾリル-ベンゾイミダゾール(XXV)は標準条件下で対応するアミン(XXVI)に還元することができる。還元は、例えばパラジウム炭素のような触媒の存在下でエタノールまたはジメチルホルムアミドのような極性溶媒中、室温で接触水素化により達成されてもよい。アミン(XXVI)は次に尿素合成の標準的な方法を使用して、例えばTHFのような極性溶媒中、室温あるいはそれ以下、例えば0−5℃の温度で、アミン(XXVI)を2,6−ジフルオロフェニル−イソシアネートと反応させることによって、尿素(IA)に変換することができる。
尿素(IA)の遊離塩基形態は本発明の酸付加塩を製造するために使用することができる。
本発明の塩は、医薬用塩:特性、選択および使用(Pharmaceutical Salts:Properties,Selection,and Use)、ハインリヒスタール(P.Heinrich Stahl)(編者)、カミールワーマス(Camille G.Wermuth)(編者)、ISBN:3−90639−026−8、ハードカバー、p.388、2002年8月、に記載の方法などの従来の方法により遊離塩基から製造することができる。例えば、前記塩は、遊離塩基を水もしくは有機溶媒または両者の混合物中(一般的には、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール、またはアセトニトリルなどの非水性媒体を用いる)、適当な酸と反応させることにより製造することができる。
他の態様では、本発明は、溶媒(典型的には有機溶媒)または混合溶媒中で1−(2,6−ジフルオロフェニル)−N−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素遊離塩基の溶液を形成し、酸で前記溶液を処理して酸付加塩の沈澱物を形成することを含む方法により、本明細書で定義されるような本発明の新規な使用のための、1−(2,6−ジフルオロフェニル)−N−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の酸付加塩を提供する。
酸は、典型的には、遊離塩基が溶解している溶媒と混和性がある溶媒に溶液として加えられる。
遊離塩基がまずに溶解される溶媒はその塩が不溶性のものであってもよい。また、遊離塩基がまず溶解される溶液は塩が少なくとも部分的に溶解されるものであってもよく、酸付加塩がそれほど可溶でない異なる溶媒が、塩が溶液から沈殿するように、続いて加えられる。
例えば、本発明の塩の一製造方法では、遊離塩基は第1の溶媒(酢酸エチルあるいは酢酸エチルとメタノールのようなアルコールの混合物であってもよい)、そして第2の溶媒(ジエチルエーテルまたはダイオキシンのようなエーテルであってもよい)での塩酸のような酸の溶液(例えば、濃縮もしくは飽和溶液)がその後、酸付加塩の沈澱物が形成されるように、加えられ、その後、沈澱物を、例えば濾過により、採取する。
1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の製造方法
我々の先の出願WO2005/002552の実施例および上記スキーム1および3において、[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−アミドは下記を含むの一連の工程によって製造することができると開示されている:
(i)4−モルホリン−4−イルメチル−ベンゼン−1,2−ジアミンと4−ニトロ−lH−ピラゾール−3−カルボン酸とを1−エチル−3−(3´−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド(EDC)および1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)の存在下でN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)中で反応させ、5−モルホリン−4−イルメチル−2−(4−ニトロ−1H−ピラゾール−3−イル)lH−ベンゾイミダゾールを得る工程;および
(ii)水素雰囲気下パラジウム炭素で処理することによりニトロ基を還元する工程;
あるいは
(i)4−アミノ−1H−ピラゾール−3カルボン酸エステルと適当なカルボン酸とを1−エチル−3−(3´−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド(EDC)および1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)の存在下でN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)中で反応させる、または適当な酸クロリドとトリエチルアミンの存在下で反応させて、4−アミド−lH−ピラゾールを形成する工程;および
(ii)4−モルホリン−4−イルメチル−ベンゼン−1,2−ジアミンと適当な4−アミド−1H−ピラゾールカルボン酸とを1−エチル−3−(3´−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド(EDC)および1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)の存在下でジメチルホルムアミド(DMF)中で反応させ、[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−アミドを得る工程。
ニトロ-ピラゾール化合物とジアミンとを反応させ次にニトロ基をアミンに還元する、もしくはアミド-ピラゾールとジアミンとを反応させる代わりに、アミノピラゾールのアミノ基が適切に保護されていれば、アミノ-ピラゾールをジアミンと反応させてもよいことが現在見出されている。反応生成物はその後ベンゾイミダゾールを形成するために環化することができる。さらに、アミン保護基の除去およびベンゾイミダゾールへの環化は一つの工程で行なうことができることが見出されている。
従って、式(XXVII)または(XXVIII)の化合物あるいはその塩の製造方法は以下の工程を有する:
(i)式中PGはアミン保護基である式(XXIX)の化合物と:
(ii)式(XXXI)の化合物とを:
有機溶媒中EDCおよびHOBtなどのカップリング剤の存在下で反応させる工程(式(XXVIII)は(XXVII)の位置異性体をである)。
アミン保護基PGは、上記の方法中で適用される条件下でアミン基を保護するのに用いるために公知のどのような保護基であってもよい、例えば前記のGreenらの文献を参照。従って、例えば、窒素は、アミド(NCO−R)またはウレタン(NCO−OR)として、例えば、メチルアミド(NCO−CH3);ベンジルオキシアミド(NCO−OCH2C6H5、−NH−Cbz)として;tert−ブトキシアミド(−NHCO−OC(CH3)3、N−Boc)として;2−ビフェニル−2−プロポキシアミド(NCO−OC(CH3)2C6H4C6H5、N−Bpoc)として、9−フルオレニルメトキシアミド(N−Fmoc)として、6−ニトロベラトリルオキシアミド(N−Nvoc)として、2−トリメチルシリルエチルオキシアミド(N−Teoc)として、2,2,2−トリクロロエチルオキシアミド(N−Troc)として、アリルオキシアミド(N−Alloc)として、または2(−フェニルスルホニル)エチルオキシアミド(N−Psec)として保護することができる。アミンのための他の保護基としては、パラ−メトキシベンジル(PMB)基などのベンジル基が挙げられる。好ましいアミン保護基はウレタン(NCO−OR)、例えば、ベンジルオキシアミド(NCO−OCH2C6H5、−NH−Cbz);tert−ブトキシアミド(−NHCO−OC(CH3)3、N−Boc);またはアリルオキシアミド(N−Alloc)である。一つの実施態様では、保護基PGは、酸性条件下で除去されてもよいアミン保護基である保護基APGである。そのような基としては、ウレタンが挙げられる。特に好ましいウレタン保護基は酸性条件下で除去されてもよいtert−ブチルオキシカルボニルである。
一つの実施態様では、保護基PGはその後式(XXVII)または(XXVIII)の化合物から除去され、保護基APGと置換され、式(XXVIIa)または(XXVIIIa)の化合物が形成される。
式(XXIX)の特に好ましい化合物の1つは、下記の式(XXXII)の化合物である。
本発明はさらに、式(XXXII)の中間体自体を提供する。
本発明はまた、式(XXVII)および(XXVIII)の中間体自体を提供する、例えば、下記の新規な式(XXVIIa)および(XXVIIIa)の化学中間体である。したがって、本発明は4−アミノ−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(2−アミノ−4−モルホリン−4−イルメチル−フェニル)−アミドおよび4−アミノ−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(2−アミノ−5−モルホリン−4−イルメチル−フェニル)−アミドならびにそれらの保護された形態を新規な化学中間体として提供する。特に好ましい新規な式(XXVII)の化学中間体の1つは、[3−(2−アミノ−4−モルホリン−4−イルメチル−フェニルカルバモイル)−1H−ピラゾール−4−イル]−カルバミン酸tert−ブチルエステルである。特に好ましい新規な式(XXVIII)の化学中間体の1つは、[3−(2−アミノ−5−モルホリン−4−イルメチル−フェニルカルバモイル)−1H−ピラゾール−4−イル]−カルバミン酸tert−ブチルエステルである。
保護基PGがtert−ブチルオキシカルボニル基である場合、前記方法からの全収率は85%を越える。更に、前記方法は、比較的単純で安価な試薬および溶媒を利用する点で有利であり、また生成物の精製の容易さに関しても有利である。
他の態様では、本発明は、本明細書で定義されるような新規な使用のための、下記の工程を有する方法によって製造された(3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イルアミンまたはその塩を提供する:
(i)式(XXVIIa)または(XXIIIa)の化合物を
溶媒中において酸で、必要に応じて加熱と共に、処理する工程;および
(ii)反応物を中和する工程。
アミン保護基APGは、式(XXVII)または(XXVIII)の化合物に関して上記に定義されるようなアミン基を保護するのに用いるために公知のどのような保護基であってもよい、そして前記アミン保護基は上記方法で適用される条件下で除去可能である。
工程(i)では、酸との反応は加熱、例えば80〜100℃の範囲の温度、を伴って行なってもよい。工程(i)が行なわれる溶媒はアルコール溶媒であり、例えばそれはエタノールであってもよい。
工程(i)では、保護基は酸で処理することにより除去できるBoc基のようなものが好適である。前記酸は、環化反応のためカルボニル基を活性化させるために中間体のプロトン化に適当であるように選択される。適当な酸としては、硫酸、メタンスルホン酸あるいは塩酸などの強酸が挙げられ、1つの特定の酸は塩酸である。
例えば出発物質(XIIIa)の消失で判断される、工程(i)における反応の完了に続いて、反応物を中和できる。
工程(ii)では、非干渉塩基が使用される。当該文脈では“非干渉塩基”なる語は、生成される化合物と反応しない炭酸ナトリウムのような塩基を意味する。工程(ii)は、典型的には室温で行なわれる。
工程(ii)では、反応物は、例えば反応物が中和剤で飽和するまで、そしてpH8.5で中和される。
工程(ii)に続き、化合物は1,1´−カルボニルジイミダゾール(CDI)などのカルボニル化試薬またはホスゲン均等物と反応させることができ、次に、シクロプロピルアミンで処理できる。
ホスゲン均等物としてはトリホスゲンまたはホスゲンが挙げられる。
好ましいカルボニル化試薬は1,1´−カルボニルジイミダゾール(CDI)である。
また、尿素は、溶媒、例えばTHF、中でピリジンのような塩基の存在下でアミノピラゾールをクロロギ酸フェニルと反応させ環状尿素を得て、次にシクロプロピルアミンで処理することにより製造することができる、もしくはアミノピラゾールを(US4,313,755およびUS4,299,778に記載されているように)シクロプロパンカルボキシル酸アジドのクルチウス転位から製造することができるシクロプロピルイソシアネートと反応させることにより製造することができる。
したがって、さらなる態様では、本明細書で定義されるような新規な使用のための、下記の工程を有する方法によって製造された1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素またはその塩が提供される:
(i)式(XXVIIa)の化合物を、必要に応じて加熱と共に、溶媒中において酸で処理する工程;
(ii)反応物を中和する工程;
(iii)工程(ii)の生成物とカルボニル化試薬とを反応させる工程;
(iv)工程(iii)の生成物をシクロプロピルアミンと反応させる工程。
工程(iii)は、典型的には還流下、例えばまで約100℃までの温度、さらに典型的には70〜75℃まで、で行なわれる。工程(iii)で、反応はテトラヒドロフランのような極性の非プロトン性溶媒中で行なわれてもよい。カルボニル化試薬は1,1´−カルボニルジイミダゾール(CDI)のような化合物あるいはトリホスゲンまたはホスゲンのようなホスゲン均等物。好ましいカルボニル化試薬は1,1´−カルボニルジイミダゾール(CDI)である。
工程(iv)は典型的には、例えば約100℃までの温度に加熱して行なわれる。
工程(iv)に続いて、純度を高めるたり結晶形態を得るために、生成物は(例えば、2−プロパノールまたはエタノールを溶媒として使用して)塩変換または再結晶されてもよい。
上記工程(iii)は式(XXXIII)の中間体化合物および/またはその位置異性体(XXXIIIa)を発生させる。
必要であれば単離することができる式(XXXIII)および(XXXIIIa)の中間体は、その後シクロプロピルアミンと反応させて式(XXX)の化合物を得る。
従って、本明細書で定義されるような式(XXX)の化合物の製造方法は、式(XXXIII)または(XXXIIIa)の化合物とシクロプロピルアミンとを反応させ、その後、必要であれば式(XXX)の化合物の酸付加塩を形成することを含む。前記反応は、典型的にはN−メチルピロリドンのような極性の非プロトン性溶媒中で、好ましくは80℃を越える温度、より典型的には90℃を超える温度、例えば95℃〜105℃、のような高温で行なわれる。
前述の方法はまた、本明細書に定義されるような式(I)の他の化合物、ここで式(I)における部分AはNHである、およびそのサブグループを製造するために使用されてもよい。
従って、本明細書に定義されるような式(I)の化合物、ここで式(I)における部分AはNHである、の製造方法は(i)式(XXXIII)の化合物および/またはその位置異性体(XXXIIIa)、あるいは(ii)式(XXXIV)の化合物および/またはその位置異性体(XXXIVa)を:
式R
1−E−NH
2の化合物と、好ましくはN−メチルピロリドンのような極性の非プロトン性溶媒中で、好ましくは80℃を越える温度、より典型的には90℃を超える温度、例えば95℃〜105℃のような高温で、反応させ、そしてその後必要に応じて式(I)の化合物の酸付加塩を形成することを含む。
本発明はさらに、式(XXXIII)、(XXXIIIa)、(XXXIV)および(XXXIVa)の化学中間体を提供する。
さらなる実施態様では、上記の(3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イルアミンまたはその塩の製造方法あるいは1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素またはその塩の製造方法における式(XXVIIa)の化合物は下記の工程を含む方法によって製造することができる:
(i)PGが酸で除去可能なアミン保護基すなわちAPGである式(XXIX)の化合物と;
(ii)EDCおよびHOBtのようなカップリング剤の存在下、有機溶媒中で式(XXXI)の化合物とを反応させる工程。
精製方法
前記化合物は当業者に公知の多くの方法によって単離および精製することができ、このような方法の例としては、カラムクロマトグラフィー(例えば、フラッシュクロマトグラフィー)およびHPLCなどのクロマトグラフィー技術が挙げられる。分取LC−MSは、本明細書に記載の化合物などの小有機分子の精製に用いる標準的かつ有効な方法である。液体クロマトグラフィー(LC)および質量分析(MS)の方法は、粗物質のよりよい分離とMSによるサンプルの検出の向上を得るために可変である。分取勾配LC法の至適化には、カラム、揮発性溶離剤および改質剤、ならびに勾配の変更を含む。分取LC−MS法を至適化し、その後それらを化合物の精製に用いるための方法は当技術分野で公知のものである。このような方法は、ローゼントレター(Rosentreter U)、フーバー(Huber U.);分取LC/MSにおける至適部分採取(Optimal fracion collecting in preparative LC/MS);ジャーナルオブコンビナトリアルケミストリー(J.Comb.Chem.);2004年;6(2)、159−64およびリースター(Leister W)、ストラウス(Strauss K)、ビスノスキ(Wisnoski D)、ジャオ(Zhao Z)、リンズリー(Lindsley C.)、化合物ライブラリの予備精製および解析的分析のためのカスタムハイスループット分取液体クロマトグラフィー/質量分析計プラットフォームの開発(Development of a custom high−throughput preparative liquid chromatography/mass spectrometer platform for the preparative purification and analytical analysis of compound libraries);ジャーナルオブコンビナトリアルケミストリー(J.Comb.Chem.);2003年;5(3);322−9に記載されている。
分取LC−MSにより化合物を精製するためのこのような系の1つを下記実験の節に記載するが、当業者ならば、記載のものに代わる系および方法が使用できることが分かるであろう。特に、本明細書に記載の逆相法の代わりに、順相分取LCに基づく方法を用いてもよい。ほとんどの分取LC−MS系では逆相LCと揮発性酸性改質剤を用いるが、これはこのアプローチが低分子の精製に極めて有効であり、これらの溶離剤が陽イオンエレクトロスプレー質量分析に適合しているからである。他のクロマトグラフィー溶液、上記の分析法で概略を示したような、例えば順相LC、あるいは緩衝移動相、塩基性改質剤などを代わりに用いて化合物を精製することもできる。
再結晶
1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の乳酸塩またはクエン酸塩の再結晶方法は、当業者に公知の方法により行なうことができる、例えば、ハインリヒスタール(P.Heinrich Stahl)(編者)、カミールワーマス(Camille G.Wermuth)(編者)、ISBN:3−90639−026−8、医薬用塩便覧:特性、選択および使用(Handbook of Pharmaceutical Salts:Properties,Selection,andUse、第8章, 出版者Wiley−VCHを参照。有機反応から得られた生成物は、反応混合物から直接単離された時には、ほとんどが純粋ではない。もしも化合物(またはその塩)が固体の場合、適当な溶媒からの再結晶により精製および/または結晶化されてもよい。良再結晶溶媒は、精製される物質を高温で適度な量溶解するが低温ではその物質を少量しか溶解しないはずである。前記溶媒は、低温で不純物を容易に溶解してもよいし、全く溶解しなくてもよい。最後に溶媒は精製物から容易に除去されるはずである。これは通常、前記溶媒は比較的低沸点を有しており、当業者は特定の物質用の再結晶溶媒を認識していることを意味し、その情報がない場合は、いくつかの溶媒を試験すればよい。精製物の良好な収率を得るために、不純物をすべて溶解する最小量の高温溶媒が使用される。実際には、溶液が飽和しないように必要よりも3〜5%多くの溶媒が使用される。不純化合物が溶媒に不溶の不純物を含んでいる場合、前記不純物は濾過により除去され、その後、溶液が結晶化される。加えて、不純化合物が化合物に固有でない少量の有色物質を含んでいる場合、前記有色物質は、高温溶液へ少量の脱色炭を加え、濾過し、結晶化することより除去されてもよい。通常、結晶化は溶液を冷やすことで自然に起こる。そうでない場合は、結晶化は溶液を室温より低い温度に冷やしたり、純粋な物質の単結晶(種晶)を加えることにより誘発されてもよい。再結晶はまた貧溶媒の使用により行なわれてもよく、かつ/または貧溶媒の使用により収率を最大化してもよい。この場合、化合物は高温で適当な溶媒に溶解され、濾過され、次に結晶化を補助するために、所望の化合物が低い溶解度を示す追加の溶媒を加える。その後、結晶は典型的には、真空濾過を使用して単離され、洗浄され、次に例えばオーブン中であるいは脱水を介して乾燥される。
結晶化方法の他の例としては、例えばシールドチューブまたは気流中での蒸発工程を含む蒸気からの結晶化、ならびに溶融物からの結晶化が挙げられる(結晶化技術便覧(Crystallization Technology Handbook)、第2版、マースマン(A.Mersmann)による編集、2001年)。
特に、式(I0)の化合物は、純度を高めるためや結晶形態を得るために、(例えば、溶媒として2−プロパノールまたはエタノールを使用して)再結晶されてもよい。
一般に、得られる結晶は、粉末X線回折(XRPD)または結晶X線回折のようなX線回折法により分析される。
したがって、さらなる実施態様では、本明細書で製造される化合物の乳酸塩は必要に応じて結晶形態、例えば、本明細書に定義されるような結晶形態、を得るために再結晶化される。
医薬製剤
化合物(例えば、式(I)または(I´)の化合物あるいは1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素あるいはその乳酸塩またはクエン酸塩のような塩すべて)は単独で投与することもできるが、本明細書の少なくとも1種類の有効化合物を1以上の薬学上許容される担体、アジュバント、賦形剤、希釈剤、増量剤、緩衝剤、安定剤、保存剤、滑沢剤または当業者に公知の他の物質、ならびに必要に応じて他の治療薬または予防薬、例えば、化学療法に伴ういくつかの副作用を減少または軽減する薬剤とともに含んでなる医薬組成物(例えば、製剤)として提供するのが好ましい。このような薬剤の特定の例としては、制吐薬、ならびに化学療法関連の好中球減少を予防する、または持続時間を軽減する薬剤、および赤血球または白血球、例えば、エリスロポエチン(EPO)、顆粒球マクロファージ−コロニー刺激因子(GM−CSF)、および顆粒球−コロニー刺激因子(G−CSF)のレベル低下から起こる合併症を予防する薬剤が挙げられる。
従って、本発明はさらに、本明細書で定義されている本発明の新規な使用のための、上記で定義されている医薬組成物、ならびに上記で定義されている式(I)または(I´)の化合物あるいは1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素あるいはその乳酸塩またはクエン酸塩のような塩すべてを本明細書に記載されたようなの1以上の薬学上許容される担体、賦形剤、緩衝剤、アジュバント、安定剤、または他の物質とともに混合することを含む方法によって製造された医薬組成物を提供する。
本明細書において“薬学上許容される”とは、適切な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題もしくは合併症なく、被験体(例えば、ヒト)の組織との接触に用いるのに好適であり、妥当な利益/リスク比で釣り合いがとれた化合物、物質、組成物および/または投与形を意味する。担体、賦形剤などの各々はまた、その製剤の他の成分と適合するという点で“許容される”ものでなければならない。
よって、さらなる態様では、本発明は、本明細書で定義されている本発明の新規な使用のための、本明細書で定義されている1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の乳酸塩またはクエン酸塩またはそれらの混合物を医薬組成物の形で提供する。
前記医薬組成物は、経口投与、非経口投与、局所投与、鼻腔内投与、点眼投与、点耳投与、直腸投与、膣内投与または経皮投与に好適ないずれの形態であってもよい。前記組成物が非経口投与を意図したものである場合、静脈内投与、筋肉内投与、腹腔内投与、皮下投与用に処方することもできるし、あるいは注射、注入または他の送達手段により標的臓器または組織に直接送達するために処方することもできる。送達はボーラス注射、短時間注入または長時間注入によるものとすることもでき、また、受動的送達であっても、または好適な注入ポンプの利用を介したものでもよい。
非経口投与に適した医薬製剤としては、酸化防止剤、緩衝剤、静菌剤、および製剤を意図するレシピエントの血液と等張にする溶質を含有していてもよい水性および非水性無菌注射液;ならびに増粘剤を含有していてもよい水性および非水性無菌懸濁剤が挙げられる。これらの例はストリックリー(R.G.Strickly)、経口および注射製剤における賦形剤の溶解(Solubilizing Excipients in oral and injectable formulation)、薬学研究(Pharmaceutical Research)、第21(2)巻、2004年、p.201−230に記載されている。さらに、前記医薬製剤は補助溶媒、有機溶媒混合物、シクロデキストリン複合体形成剤、乳化剤(エマルション製剤を発泡および安定化するため)、リポソーム形成のためのリポソーム成分、高分子ゲルを形成するためのゲル化可能なポリマー、凍結乾燥保護剤、ならびにとりわけ有効成分を可溶形態で安定化させるための薬剤、および製剤を意図するレシピエントの血液と等張にする薬剤の組合せを含んでもよい。これらの製剤は単回用量容器または複数用量容器、例えば、密閉アンプルおよびバイアルで提供することもできるし、使用直前に無菌液体担体、例えば、注射水を加えるだけのフリーズドライ(凍結乾燥)状態で保存することもできる。
イオン性の薬剤分子は、その薬剤のpKaが製剤のpH値と十分に離れている場合には、pH調整により所望の濃度まで可溶化させることができる。許容される範囲は、静脈内投与および筋肉内投与ではpH2〜12であるが、皮下ではpH2.7〜9.0である。溶液pHは塩形態の薬剤、塩酸もしくは水酸化ナトリウムなどの強酸/塩基、緩衝剤溶液(限定されるものではないが、グリシン、クエン酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、コハク酸塩、ヒスチジン、リン酸塩、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS)、または炭酸塩が挙げられる)のいずれかにより制御される。
注射製剤では多くの場合、水溶液と水溶性有機溶媒/界面活性剤(すなわち、補助溶媒)の組合せが用いられる。注射製剤に用いられる水溶性有機溶媒および界面活性剤としては、限定されるものではないが、プロピレングリコール、エタノール、ポリエチレングリコール300、ポリエチレングリコール400、グリセリン、ジメチルアセトアミド(DMA)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP;Pharmasolve)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ソルトール(Solutol)HS15、クレモホールEL、クレモホールRH60、およびポリソルベート80が挙げられる。このような製剤は、必ずというわけではないが、通常、注射前に希釈される。
プロピレングリコール、PEG300、エタノール、クレモホールEL、クレモホールRH60、およびポリソルベート80は市販の注射製剤に用いられている、完全に水混和性の有機溶媒および界面活性剤であり、互いに併用が可能である。得られた有機注射製剤は通常、IVボーラスまたはIV注入前に少なくとも2倍希釈される。
あるいは、水に対する溶解度の上昇は、シクロデキストリンとの分子複合体形成によっても達成することができる。
リポソームは外側の脂質二重膜と内側の水性核からなる、閉じられた球状小胞であり、全体の直径が100μm未満である。疎水性の程度によって、中程度の疎水性薬剤であれば、薬剤をリポソーム内に封入またはインターカレーションした場合に、リポソームにより可溶化させることができる。疎水性薬剤はまた、薬剤分子を脂質二重膜の一体部分とした場合にも、リポソームにより可溶化させることができ、この場合、この疎水性薬剤を脂質二重膜の脂質部分に溶解させる。典型的なリポソーム製剤はリン脂質を5〜20mg/mlで含む水、等張剤、pH5〜8の緩衝液、および必要に応じてコレステロールを含む。
前記製剤は単回用量容器または複数用量容器、例えば、密閉アンプルおよびバイアルで提供することもできるし、使用直前に無菌液体担体、例えば、注射水を加えるだけのフリーズドライ(凍結乾燥)状態で保存することもできる。
前記医薬製剤は、式(I)の化合物または1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素またはその乳酸塩またはクエン酸塩のようなすべての塩を凍結乾燥させることにより製造することができる。凍結乾燥とは、組成物をフリーズドライする手順をさす。よって、本明細書においてフリーズドライと凍結乾燥は同義語として用いられる。典型的な方法としては、化合物を可溶化させ、得られた製剤を明澄化し、濾過除菌し、凍結乾燥に適当な容器(例えば、バイアル)に無菌的に移すことである。バイアルの場合には、リオストッパー(lyo−stopper)で軽く栓をする。製剤は標準条件下で凍結するまで冷却し、凍結乾燥を行った後に密閉キャップをし、安定な凍結乾燥製剤を形成させることができる。この組成物は典型的には残留水分含量が低く、例えば、凍結乾燥物の重量の5重量%未満、例えば1重量%未満である。
前記凍結乾燥製剤は、他の賦形剤、例えば、増粘剤、分散剤、緩衝剤、酸化防止剤、保存剤、および張力調整剤を含み得る。典型的な緩衝剤としては、リン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩およびグリシンが挙げられる。酸化防止剤の例としては、アスコルビン酸、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、モノチオグリセロール、チオ尿素、ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシルアニソール、およびエチレンジアミン四酢酸塩が挙げられる。保存剤としては、安息香酸およびその塩、ソルビン酸およびその塩、パラ−ヒドロキシ安息香酸のアルキルエステル、フェノール、クロロブタノール、ベンジルアルコール、チメロサール、塩化ベンザルコニウムおよび塩化セチルピリジニウムが挙げられる。必要に応じて張力調整のために、これまでに挙げた緩衝剤ならびにデキストロースおよび塩化ナトリウムを使用することができる。
凍結乾燥技術では一般に、プロセスを容易にするため、かつ/または凍結乾燥塊に嵩および/または機械的強度をもたせるために増量剤を用いる。増量剤は、前記化合物またはその塩とともに凍結乾燥した際に物理的に安定な凍結乾燥塊を生じ、より好適な凍結乾燥プロセスとし、さらに、迅速かつ完全な再構成をもたらす、水溶性の高い固体粒子希釈剤を意味する。増量剤はまた、溶液を等張とするためにも利用することができる。
水溶性増量剤は、凍結乾燥に典型的に用いられる薬学上許容される不活性の固体材料のいずれのものであってもよい。このような増量剤としては、例えば、グルコース、マルトース、スクロース、およびラクトースなどの糖類;ソルビトールまたはマンニトールなどのポリアルコール;グリシンなどのアミノ酸;ポリビニルピロリジンなどのポリマー;およびデキストランなどの多糖類が挙げられる。
有効化合物の重量に対する増量剤の重量比は典型的には、約1〜約5、例えば、約1〜約3の範囲、例えば、約1〜2の範囲である。
あるいは、医薬製剤は、濃縮および適当なバイアルへの密封が可能な溶液の形態で提供することもできる。投与形の滅菌は、処方工程の適当な段階で、濾過によるか、またはバイアルとその内容物のオートクレーブ処理により行うことができる。供給された製剤は、例えば、適当な無菌注入パック中で希釈するなど、送達前にさらなる希釈または調製が必要な場合がある。
即時調合注射溶液および懸濁液は無菌粉末、顆粒および錠剤から調製することができる。
注射剤用の本発明の医薬組成物はまた、薬学的に許容される無菌の水性または非水性溶液、分散液、懸濁液および乳液、加えて使用直前に無菌注射溶液または分散液へ再構成される無菌粉末を含む。適当な水性および非水性の担体、希釈剤、溶媒あるいは賦形剤の例としては、水、エタノール、多価アルコール(グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、カルボキシメチルセルロースおよびそれらの適当な混合物、植物油(オリーブオイルなど)、およびオレイン酸エチルのような注射可能な有機エステルが挙げられる。適切な流動性は、例えば、レシチンのような被覆剤の使用、分散液の場合は必要とされる粒径の維持、および界面活性剤の使用により維持することができる。
前記組成物はまた、防腐剤、湿潤剤、乳化剤および分散剤のようなアジュバントを含んでいてもよい。微生物の作用の予防は、様々な抗菌剤および抗黴剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸など、を含有することにより確保されてもよい。糖、塩化ナトリウムなどの等張剤を含有することも望ましい。注射可能な剤型での持続的吸収は、モノステアリン酸アルミニウムやゼラチンのような吸収を遅らせる薬剤の含有によりもたらされてもよい。
水性媒体中で安定でない、または水性媒体に溶解度が低い化合物の場合、前記化合物は有機溶媒中に濃縮物として処方することができる。濃縮物はその後、水系で低濃度に薄めることができ、投薬中の短期間は十分に安定でありうる。したがって、他の態様では、完全に1または2つ以上の有機溶媒からなる非水溶液を含有する医薬組成物が提供される、そして前記組成物はそのまま投与できるが、より一般には投与の前に適当なIV賦形剤(生理食塩水、デキストロース;緩衝もしくは無緩衝で)で薄めることができる(Solubilizing Excipients in oral and injectable formulation)、薬学研究(Pharmaceutical Research)、21(2)、2004年、p.201−230)。溶媒と界面活性剤の例としては、プロピレングリコール、PEG300、PEG400、エタノール、ジメチルアセトアミド(DMA)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP、Pharmasolve)、グリセリン、クレモホールEL、クレモホールRH60およびポリソルベートが挙げられる。特定の非水溶液は70〜80%のプロピレングリコールおよび20〜30%のエタノールからなる。1つの特定の非水溶液は70%のプロピレングリコールおよび30%のエタノールからなる。他のものは80%のプロピレングリコールおよび20%のエタノールである。普通は、これらの溶媒は組み合わせて使用され、通常IVボーラスまたはIVインフュージョンの前に少なくとも2倍に薄められる。ボーラスIV製剤用の典型的な量は、グリセリン、プロピレングリコール、PEG300、PEG400が〜50%、ならびにエタノールが〜20%である。IVインフュージョン製剤用の典型的な量はグリセリンが〜15%、DMAが〜3%、ならびにプロピレングリコール、PEG300、PEG400およびエタノールが〜10%である。
本発明の好ましい一つの実施態様では、前記医薬組成物は、例えば注射またはインフュージョンによるIV投与に適当な形態である。静脈内投与には、前記溶液はそのまま投与でき、また投与前に(0.9%生理食塩水または5%デキストロースのような薬学的に許容される賦形剤を含む)輸液バッグに注入することもできる。
もう1つの好ましい実施態様では、前記医薬組成物は皮下(s.c.)投与に好適な形態である。
経口投与に好適な医薬投与形としては、錠剤、カプセル剤、カプレット剤、丸剤、トローチ剤、シロップ剤、液剤、散剤、顆粒剤、エリキシル剤および懸濁剤、舌下錠、ウエハー剤またはパッチ剤ならびにバッカルパッチ剤が挙げられる。
式(I´)の化合物または1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素またはその乳酸塩またはクエン酸塩を含有する医薬組成物は、公知の技術に従って処方することができる。例えば、レミントンの薬学(Remington’s Pharmaceutical Sciences、マック出版社(Mack Publishing Company)、イーストン、ペンシルベニア、米国、参照。
従って、錠剤組成物は、単位用量の有効化合物を、不活性希釈剤または担体、例えば、糖または糖アルコール、例えば、ラクトース、スクロース、ソルビトールまたはマンニトール;および/または非糖由来希釈剤、例えば、炭酸ナトリウム、リン酸カルシウム、炭酸カルシウムまたはセルロースもしくはその誘導体、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびデンプン、例えば、コーンスターチとともに含有することができる。また、錠剤は、標準的な成分、例えば、結合剤および造粒剤、例えば、ポリビニルピロリドン、崩壊剤(例えば、架橋カルボキシメチルセルロースなどの膨潤性架橋ポリマー)、滑沢剤(例えば、ステアリン酸塩)、保存剤(例えば、パラベン)、酸化防止剤(例えば、BHT)、緩衝剤(例えば、リン酸緩衝液またはクエン酸緩衝液)、および発泡剤、例えば、クエン酸塩/重炭酸塩混合物を含有してもよい。このような賦形剤は公知であり、ここでは詳細に記載する必要はない。
カプセル製剤は、硬質ゼラチン種であっても軟質ゼラチン種であってもよく、固体、半固体または液体状の有効成分を含有することができる。ゼラチンカプセルは、動物ゼラチンまたはその合成もしくは植物由来の均等物から形成することができる。
固形投与形(例えば、錠剤、カプセル剤など)はコーティングを施しても施さなくともよいが、典型的には例えば、保護フィルムコーティング(例えば、ワックスまたはワニス)または放出制御コーティングを施す。前記コーティング(例えば、Eudragit(商標)型ポリマー)は、胃腸管内の所望の位置で有効成分が放出されるように設計することができる。従って、コーティングは、胃腸管内の特定のpH条件下で分解するように選択することができ、これにより選択的に胃または回腸もしくは十二指腸で化合物を放出する。
コーティングの代わりに、またはコーティングに加えて、放出制御剤、例えば、胃腸管において酸度またはアルカリ度が変化する条件下で化合物を選択的に放出するようにすることができる放出遅延剤、を含んでなる固相マトリックス中に薬剤を提供してもよい。あるいは、マトリックス材料または放出遅延コーティングは、投与形が胃腸管を通過するにつれて実質的に連続的に崩壊する崩壊性ポリマー(例えば、無水マレイン酸ポリマー)の形態をとることができる。さらなる別法としては、有効化合物を、化合物の放出の浸透圧制御をもたらす送達系に処方することもできる。浸透圧放出性ならびに他の遅延放出性または徐放性製剤は当業者に公知の方法に従って製造することができる。
前記医薬組成物は、有効成分を約1%から約95%まで、好ましくは約20%から約90%、含む。発明による医薬品組成物は、例えばアンプル、バイアル、坐剤、糖衣錠、タブレットまたはカプセル形態のような単位用量形態であってもよい。
経口投与用医薬組成物は、有効成分と固体担体とを組み合わせ、所望であれば得られた混合物を粒状にし、所望または必要であれば適当な賦形剤の添加後、混合物を錠剤、糖衣錠コアまたはカプセルへ加工することにより得られる。また、前記経口投与用医薬組成物を、一定量の有効成分を拡散させたり放出させたりする可塑性の担体に組み入れることも可能である。
局所使用のための組成物としては、軟膏、クリーム、スプレー、パッチ、ゲル、液滴および挿入物(例えば、眼内挿入物)が挙げられる。このような組成物は、公知の方法に従って処方することができる。
非経口投与用の組成物は、典型的には無菌水性もしくは油性溶液または微細懸濁液として提供されるか、あるいは、注射用無菌水で即時構成できる微細無菌粉末の形態で提供してもよい。
直腸投与または膣内投与用の製剤の例としては、ペッサリーおよび坐剤が挙げられ、これらは、例えば、有効化合物を含有する付形成形材またはワックス材から形成することができる。
吸入投与用組成物は、吸入可能な粉末組成物または液状もしくは粉末スプレーの形態をとってもよく、粉末吸入装置またはエアゾールディスペンシング装置を用いた標準的な形態で投与することができる。このような装置は、公知のものである。吸入投与用の粉末製剤は、典型的には有効化合物を、ラクトースなどの不活性固体粉末希釈剤とともに含む。
前記医薬製剤は単一のパッケージ、通常はブリスターパック中、に全コースの治療薬を含んだ“患者パック”として患者に提供することができる。患者パックは、調剤師がバルク供給から患者分の医薬を分配する従来の処方箋調剤に優る利点があり、患者は患者パックに入っている、患者の処方箋調剤では見ることができない添付文書をいつでも見ることができる。添付文書を包含しておけば、患者が医師の指示を遵守する割合が改善されることが示されている。
式(I´)の化合物および1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素およびそのすべての塩は一般的には単位投与形態で提供され、それ自体、所望の生物活性レベルを与えるのに十分な化合物を典型的に含んでいる。例えば、経口投与を意図した製剤は0.1ミリグラム〜2グラムの有効成分、または1ナノグラム〜2ミリグラムの有効成分を含んでいてもよい。この範囲内での化合物の特定の部分範囲としては、0.1ミリグラム〜2グラムの有効成分(より通常は、10ミリグラム〜1グラム、例えば、50ミリグラム〜500ミリグラム)、または1マイクログラム〜20ミリグラム(例えば、1マイクログラム〜10ミリグラム、例えば、0.1ミリグラム〜2ミリグラムの有効成分)である。
経口投与に関しては、単位投与形態は1ミリグラム〜2グラム、より典型的には、10ミリグラム〜1グラム、例えば、50ミリグラム〜1グラム、例えば、100ミリグラム〜1グラムの有効化合物を含んでいてもよい。
有効化合物は、投与を必要とする患者(例えば、ヒトまたは動物患者)に、所望の治療効果を達成するのに十分な量で投与する。
治療方法
本明細書で定義されるような式(I)または(I´)の化合物あるいは1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素あるいはその乳酸塩またはクエン酸塩のような塩は、本明細書で定義されるような一連の病態または症状、例えば、無秩序なJAKシグナル伝達、ablキナーゼおよびオーロラキナーゼが媒介する疾病および症状、の予防または治療に有用である。
式(I)または(I´)の化合物あるいは1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素あるいはその乳酸塩またはクエン酸塩のようなすべての塩は、一般に、このような投与を必要とする被験体、例えば、ヒトまたは動物患者、好ましくはヒト、に投与する。
式(I)または(I´)の化合物あるいは1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素あるいはその乳酸塩またはクエン酸塩のようなすべての塩は、典型的には、治療的または予防的に有用であって、かつ、一般的に無毒な量で投与される。しかしながら、一定の状況(例えば、生命をおびやかす疾病の場合)では、式(I)の化合物を投与するメリットは、有毒作用または副作用の欠点に優り、このような場合では、化合物を、ある程度の毒性が伴う量で投与することが望ましいと考えられる。
式(I)または(I´)の化合物あるいは1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素あるいはその乳酸塩またはクエン酸塩のようなすべての塩は有益な治療効果を維持するために長期にわたって投与してもよいし、あるいは短期間だけ投与してもよい。また、それらは拍動的に投与してもよいし、または連続的に投与してもよい。
前記化合物の典型的な一日量は、体重1キログラム当たり100ピコグラム〜100ミリグラム、より典型的には体重1キログラム当たり5ナノグラム〜25ミリグラム、より通常は、体重1キログラム当たり10ナノグラム〜15ミリグラム(例えば、体重1キログラム当たり10ナノグラム〜10ミリグラム、より典型的には1キログラム当たり1マイクログラム〜1キログラム当たり20ミリグラム、例えば、1ミリグラム〜10ミリグラム)の範囲であり得るが、必要に応じてより高用量または低用量を投与してもよい。前記化合物は、例えば、日単位で、または2日おき、または3日おき、または4日おき、または5日おき、または6日おき、または7日おき、または10日おき、または14日おき、または21日おき、または28日おきに反復投与することができる。しかしながら、最終的には、投与する化合物の量および用いる組成物の種類は、治療する疾病または生理状態の性質と見合うものとし、医師の裁量による。
前記化合物の一日量の一例としては、本明細書で定義されるような式(I)の化合物、例えば、化合物Iの乳酸塩、を開始用量1mg/m2/日〜100mg/m2/日、特に1mg/m2/日〜10mg/m2/日、より具体的には3〜6mg/m2/日(遊離塩基2.5〜5mg/m2/日に相当)あるいは化合物Iの乳酸塩を有効用量2.5mg/m2/日〜1.5g/m2/日/、特に25mg/m2/日〜600mg/m2/日、より具体的には200〜500mg/m2/日、例えば、250mg/m2/日、または45〜200mg/m2/日、例えば、45〜150mg/m2/日もしくは56〜185mg/m2/日、(遊離塩基45〜150mg/m2/日に相当)で投与することを含むが、必要であればより高用量または低用量を投与してもよい。しかしながら、最終的には、投与する化合物の量および用いる組成物の種類は、治療する疾病または生理状態の性質と見合うものとし、医師の裁量による。
1つの特定の服薬スケジュールでは、患者は前記化合物またはその塩、例えば式(I)の化合物、の連続的IVインフュージョンを2時間から120時間の間、例えば2〜96時間、特に24〜72時間受け、治療は毎週〜3週間ごとなどの所望の間隔で繰り返される。
より具体的には、患者は前記化合物またはその塩の連続的IVインフュージョンを24時間毎日5日間にわたって受けその治療を毎週繰り返してもよい、あるいは24時間にわたって受けその治療は毎週繰り返してもよい、あるいは48時間にわたって受けその治療を2週間ごとに繰り返してもよい、あるいは72時間にわたって受けその治療を3週間ごとに繰り返してもよい。
他の特定の服薬スケジュールでは、患者は、2時間にわたって1日1回毎週または2もしくは3週間ごとに、あるいは2時間にわたって毎週または2もしくは3週間に1度IVボーラスとして前記化合物のインフュージョンを受ける。
頻繁な治療中止期間を設け毎週または2週間ごとに24〜48時間の連続的IVインフュージョンを施すような投与計画を使用して1.5g/m2/dayのようなより高用量で投与されてもよい。より低用量での投与は、2〜3週間ごとに48から72時間の連続的IVインフュージョンを施すようなより継続的な投薬(しかし、なお周期的な治療期間/治療中止期間を設けて)を含んだ投与計画を使用してなされる。
特に、式(I)または(I´)の化合物あるいは1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素あるいはその乳酸塩またはクエン酸塩のようなすべての塩は3週間ごとに250mg/m2/dayで72時間の連続的IVインフュージョンにより患者に投与することができる。
他の実施態様では、式(I)または(I´)の化合物あるいは1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素あるいはその乳酸塩またはクエン酸塩のようなすべての塩は5日間の治療周期で患者に投与することができる。
しかしながら、最終的に、投与する化合物の量、選択される投与計画および用いる組成物の種類は、治療する疾病または生理状態の性質と見合うものとし、医師の裁量による。
本明細書で定義されるような式(I)または(I´)の化合物あるいは1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素あるいはその乳酸塩またはクエン酸塩のようなすべての塩は、単一の治療薬として投与することもでき、また特定の病態、例えば、上記で定義されている癌などの腫瘍性疾患、の治療用の1以上の他の化合物との併用療法において投与することもできる。本発明の化合物とともに投与または使用できる(同時、あるいは異なる時間間隔であっても)他の治療薬または治療法の例としては、限定されるものではないが、トポイソメラーゼ阻害剤、アルキル化剤、代謝拮抗薬、DNA結合剤、微小管阻害剤(チューブリン標的剤)、特定の例としては、シスプラチン、シクロホスファミド、ドキソルビシン、イリノテカン、フルダラビン、5FU、タキサン、マイトマイシンC、ならびに放射線療法が挙げられる。一つの実施態様では、式(I´)の化合物あるいは1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素あるいはその乳酸塩またはクエン酸塩のようなすべての塩は、トポイソメラーゼ阻害剤、アルキル化剤、代謝拮抗薬、DNA結合剤、特にシスプラチン、シクロホスファミド、ドキソルビシン、イリノテカン、フルダラビン、マイトマイシンCなどのDNA標的剤ならびに放射線療法と組み合わせてもよい。
本明細書で定義されるような式(I)または(I´)の化合物あるいは1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素あるいはその乳酸塩またはクエン酸塩のようなすべての塩とともに投与または使用できる(同時、あるいは異なる時間間隔であっても)治療薬の他の例としては、モノクローナル抗体およびシグナル伝達阻害剤が挙げられる。
CDKまたはオーロラ阻害剤と他の療法を組み合わせた場合、2種類以上の治療を個々に異なる投与計画で、異なる経路によって投与してもよい。従って、例えば、化合物Iの塩形態は(例えば、乳酸塩またはクエン酸塩およびそれらの混合物)は非経口経路により溶液として投与してもよく、一方、他の治療薬を経口投与してもよい。
式(I)または(I´)の化合物あるいは1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素あるいはその乳酸塩またはクエン酸塩のようなすべての塩を1、2、3、4またはそれ以上の他の治療薬(好ましくは、1または2、より好ましくは1)との併用療法で投与する場合、これらの化合物は同時投与することができ(同じまたは異なる医薬製剤中で)、また逐次投与することもできる。逐次投与する場合、それらは短時間間隔で(例えば、5〜10分)投与することもできるし、または長時間間隔で(例えば、1、2、3、4時間またはそれ以上おいて、または必要であればいっそう長時間おいて)投与することもでき、厳密な投与計画はその治療薬の特性に見合ったものとする。
式(I)または(I´)の化合物あるいは1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素あるいはその乳酸塩またはクエン酸塩のようなすべての塩はまた、放射線療法、光線力学療法、遺伝子療法などの非化学療的治療;外科術および食事制限と組み合わせて投与してもよい。
別の化学療法薬との併用療法で用いるため、式(I)または(I´)の化合物あるいは1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素あるいはその乳酸塩またはクエン酸塩と1、2、3、4またはそれ以上の他の治療薬を例えば2、3、4またはそれ以上の治療薬を含有する投与形態に一緒に処方することができる。別法として、個々の治療薬を個別に処方し、場合によってそれらの使用説明書を添えて、キットの形態で一緒に提供してもよい。
当業者であれば、通常の知識により、用いる投与計画および併用療法が分かるであろう。
診断方法
式(I)および(I´)の化合物、ならびに特に1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素ならびにその乳酸塩またはクエン酸塩などの塩および結晶形態の投与前に、患者が罹患している、または罹患している可能性のある疾病または症状が:
A.BCR−abl、VEGFR、PDGFR、EGFR、Flt3、JAK(例えば、JAK2もしくはJAK3)、C−abl、PDK1、Chk(例えば、Chk1もしくはChk2)、FGFR(例えば、FGFR3)、Ret、Eph(例えば、EphB2もしくはEphB4)またはSrc(例えば、cSrc)であるキナーゼが媒介する病態または症状;あるいは
B.癌細胞が:
(a)スレオニンゲートキーパー変異;または
(b)薬剤耐性ゲートキーパー変異;または
(c)イマチニブ耐性変異;または
(d)ニロチニブ耐性変異;または
(e)ダサチニブ耐性変異;または
(f)KITにおけるT670I変異;または
(g)PDGFRにおけるT674I変異;または
(h)EGFRにおけるT790M変異;または
(i)ablにおけるT315I変異、
である薬剤耐性キナーゼ変異を含む癌;あるいは
C.BCR−abl、c−kit、PDGF、EGF受容体またはErbB2の変異型である変異分子標的を発現する癌;あるいは
D.他の抗癌剤と結合または相互作用するが式(I)または(I´)の化合物と結合または相互作用をしないタンパク質の領域に変異を有するキナーゼ、例えばc−abl、c−kit、PDGFRベータおよびPDGFRアルファを含むPDGFRならびに,EGFR(ErbBl)、HER2(ErbB2)、ErbB3およびErbB4などのErbBフェミリーのメンバー、ならびにEphA1、EphA2、EphA3、EphA4、EphA5、EphA8、EphA10、EphB1、EphB2、EphB3、EphB5、EphB6などのエフリン受容体ファミリーのメンバー、c−Src、ならびにTYK2などのJAKファミリーのキナーゼから選ばれる変異キナーゼ、が媒介する疾病;ならびに
前記疾病または症状が式(I)または(I´)化合物による治療に感受性がある病態または症状かどうかを判定するために患者をスクリーニングすることができる。
特定の実施態様では、式(I)または(I´)の化合物の投与前に、患者が罹患している、または罹患している可能性のある疾病または症状が、BCR−abl、VEGFR、PDGFR、EGFR、Flt3、JAK(例えば、JAK2またはJAK3)、C−abl、PDK1、Chk(例えば、Chk1またはChk2)、FGFR(例えば、FGFR3)、Ret、Eph(例えば、EphB2またはEphB4)、Src(例えば、cSrc)あるいは本明細書で定義されたその変異型、ならびに特にC−ablおよびJAKキナーゼ、に対して活性を有する化合物による治療に感受性があるものかどうかを判定するために患者をスクリーニングすることができる。
患者から採取した生体サンプルを分析し、その患者が罹患している、または罹患している可能性のある癌などの症状または疾病がキナーゼの過剰活性化または正常キナーゼ活性への経路の増感をもたらす遺伝的異常(例えば、上記したようなキナーゼの変異型を含む)または異常なタンパク質発現を特徴とするものかどうかを判定することができる。また、あるいは、加えて、患者から採取した生体サンプルを分析し、その患者が罹患している、または罹患している可能性のある癌などの症状または疾病が特定のキナーゼのアップレギュレーションを特徴とするもの、したがってそのキナーゼの阻害剤に特に感受性があるかどうかを判定することができる。アップレギュレーションなる語には、遺伝子増幅(すなわち、多重遺伝子コピー)および転写効果による発現の増加をはじめとする発現上昇または過剰発現、ならびに変異による活性化をはじめとする活性亢進および活性化が挙げられる。
BCR−abl、VEGFR、PDGFR、EGFR、Flt3、JAK(例えば、JAK2またはJAK3)、C−abl、PDK1、Chk(例えば、Chk1またはChk2)、FGFR(例えば、FGFR3)、Ret、Eph(例えば、EphB2またはEphB4)、Src(例えば、cSrc)キナーゼあるいは本明細書で定義されたその変異型の場合において、患者から採取した生体サンプルを分析し、その患者が罹患している、または罹患している可能性のある癌などの症状または疾病が、前記キナーゼのレベルもしくは活性のアップレギュレーションまたは正常なキナーゼ活性への経路の増感、あるいはキナーゼリガンドレベルもしくはキナーゼリガンド活性などのキナーゼシグナル伝達経路のアップレギュレーションまたはキナーゼ活性化の下流にある生化学経路のアップレギュレーションをもたらす遺伝的異常または異常なタンパク質発現を特徴とするものかどうかを判定することができる。
キナーゼシグナルの活性化または増感を引き起こすそのような異常の例としては、アポトーシス経路の欠損または阻害、受容体またはリガンドのアップレギュレーション、あるいは、PTK変異体などの受容体またはリガンドの変異体の存在が挙げられる。
FGFR1、FGFR2またはFGFR3の変異体あるいはFGFR1のアップレギュレーション、特に過剰発現、あるいはFGFR2またはFGFR3の機能獲得型変異体、を伴う腫瘍は特にFGFR阻害剤に感受性がある可能性がある。
例えば、FGFR2において機能獲得を引き起こす点変異は多くの症状で確認されている(レモニエ(Lemonnier)ら、J. Bone Miner. Res., 16, 832-845 (2001))。さらに、異所的に発現または脱調節されて構成的に活性のあるFGFR3受容体をもたらす染色体転座または点変異のようなFGFR3受容体チロシンキナーゼの遺伝的異常が確認されており、多発性骨髄腫、膀胱癌および子宮頚癌の一部に関連付けられている(パワーズ(Powers, CJ.)ら、Endocr. Rel. Cancer, 7, 165 (2000))。PDGF受容体の特定の変異T674Iはイマチニブで治療される患者において確認されている。
さらに、8p12〜p11.2の遺伝子増幅はCLC症例の〜50%で実証され、これはFGFR1の発現増加に関連することが示された。FGFR1に対するsiRNA、すなわち受容体の低分子阻害剤、の予備的研究は、この増幅を有する細胞株がこのシグナル伝達経路の阻害に特に感受性があること示した(レイス−フィルホ(Reis-Filho)ら、臨床癌研究(Clin.Cancer Res.)、 2006 12(22): 6652-6662。
また、患者から採取した生体サンプルは、特定のキナーゼ(例えば、BCR−abl、VEGFR、PDGFR、EGFR、Flt3、JAK(例えば、JAK2またはJAK3)、C−abl、PDK1、Chk(例えば、Chk1またはChk2)、FGFR(例えば、FGFR3)、Ret、Eph(例えば、EphB2またはEphB4)あるいはSrc(例えば、cSrc))の負の調節因子または抑制因子の欠損に関して分析することができる。本明細書では、“欠損”なる語は、調節因子もしくは抑制因子をコードする遺伝子の欠失、遺伝子の切断(例えば、変異による)、遺伝子の転写産物の切断、または転写産物の不活性化(例えば、点変異による)もしくは他の遺伝子産物による隔離を包含する。
よって、患者に対して、キナーゼの過剰発現、アップレギュレーションおよび活性化に特徴的なマーカーを検出するための診断試験を行うことができる。診断なる語はスクリーニングを包含する。本発明者らはマーカーに、例えば、特定のキナーゼの変異を同定するためのDNA組成の測定を含む、遺伝マーカーも含める。マーカーなる語はまた、上記タンパク質の酵素活性、酵素レベル、酵素状態(例えば、リン酸化の有無)およびmRNAレベルをはじめ、キナーゼの活性のアップレギュレーションに特徴的なマーカーを含む。アップレギュレーションなる語には、遺伝子増幅(すなわち、多重遺伝子コピー)および転写効果による発現の増加をはじめとする発現上昇または過剰発現、ならびに変異による活性化をはじめとする活性亢進および活性化が挙げられる。
診断試験は典型的には、腫瘍生検サンプル、血液サンプル(脱落した腫瘍細胞の単離および濃縮)、糞便生検、痰、染色体分析、胸膜液、腹水、頬内からの塗抹標本、生検または尿から選択される生体サンプルに対して行なわれる。
より具体的には、患者に対して、BCR−abl、VEGFR、PDGFR、EGFR、Flt3、JAK(例えば、JAK2またはJAK3)、C−abl、PDK1、Chk(例えば、Chk1またはChk2)、FGFR(例えば、FGFR3)、Ret、Eph(例えば、EphB2またはEphB4)、Src(例えば、cSrc)あるいは本明細書で定義されたその変異型、ならびに特にC−ablおよびJAKキナーゼ、のアップレギュレーションに特徴的なマーカーを検出するための診断試験を行うことができる。診断なる語はスクリーニングを包含する。本発明者らはマーカーに、例えば、特定のキナーゼの変異を同定するためのDNA組成の測定を含む、遺伝マーカーも含める。マーカーなる語はまた、上記タンパク質の酵素活性、酵素レベル、酵素状態(例えば、リン酸化の有無)およびmRNAレベルをはじめ、キナーゼの活性のアップレギュレーションに特徴的なマーカーを含む。
タンパク質の変異およびアップレギュレーションの同定および分析の方法は当業者に公知である。スクリーニング方法としては、限定されるものではないが、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)または蛍光インサイツハイブリダイゼーション(FISH)のようなインサイツハイブリダイゼーションなどの標準的な方法が挙げられる。
BCR−abl、VEGFR、PDGFR、EGFR、Flt3、JAK(例えば、JAK2またはJAK3)、C−abl、PDK1、Chk(例えば、Chk1またはChk2)、FGFR(例えば、FGFR3)、Ret、Eph(例えば、EphB2またはEphB4)、Src(例えば、cSrc)あるいは本明細書で定義されたその変異型、ならびに特にC−ablおよびJAKキナーゼ、などのキナーゼに変異を有する個体の同定は、その患者が問題となっているキナーゼの阻害剤による治療に特に好適であることを意味し得る。腫瘍は、治療前にキナーゼ変異体の存在に関して優先的にスクリーニングすることができる。スクリーニング過程は典型的には、直接配列決定、オリゴヌクレオチドマイクロアレイ分析、または変異体特異的抗体を伴う、あるいは上述のRT−PCRおよびFISH技術を用いる。
さらに、例えば、BCR−abl、VEGFR、PDGFR、EGFR、Flt3、JAK(例えば、JAK2またはJAK3)、C−abl、PDK1、Chk(例えば、Chk1またはChk2)、FGFR(例えば、FGFR3)、Ret、Eph(例えば、EphB2またはEphB4)、Src(例えば、cSrc)あるいは本明細書で定義されたその変異型、ならびに特にC−ablおよびJAKキナーゼ、などのキナーゼの変異型は、例えば、PCRを用いた腫瘍生検の直接配列決定およびPCR産物を直接配列決定する方法により同定することができる。当業者であれば、前記タンパク質の過剰発現、活性化、または変異の検出に用いるそのような公知の技法が本発明の場合に適用可能であることを認識しているであろう。
RT−PCRによるスクリーニングでは、腫瘍におけるmRNAのレベルは、そのmRNAのcDNAコピーを作成した後、そのcDNAをPCRにより増幅することにより評価する。PCR増幅の方法、プライマーの選択、および増幅条件は当業者に公知である。核酸の操作およびPCRは、例えば、オースベル(Ausubel,F.M.)ら(編者)、分子生物学における現在のプロトコル(Current Protocols in Molecular Biology)、2004年、ジョンワイリー&サンズ、またはイニス(Innis,M.A.)ら(編者)、PCRプロトコル:方法および応用の手引き(PCR Protocols:a guide to methods and applications)、1990年、アカデミックプレス(Academic Press)、サンディエゴ、に記載のような標準的な方法により行う。核酸技術に関する反応および操作はまた、サムブルック(Sambrook)ら、2001年、第3版、分子クローニング:実験マニュアル(Molecular Cloning: A Laboratory Manual、コールドスプリングハーバーラボラトリー出版(Cold Spring Harbor Laboratory Press)に記載されている。あるいは、RT−PCR用の市販キット(例えば、ロシュモルキュラーバイオケミカルズ(Roche Molecular Biochemicals)、または米国特許第4,666,828号;第4,683,202号;第4,801,531号;第5,192,659号;第5,272,057号;第5,882,864号および同第6,218,529号に開示されている方法が使用でき、これらは参照によりに本書に援用される。
mRNAの発現を評価するためのインサイツハイブリダイゼーション技術の例として、蛍光インサイツハイブリダイゼーション(FISH)がある(アンゲラー(Angerer)、1987、Meth.Enzymol、152:649、参照)。
一般に、インサイツハイブリダイゼーションは以下の主要工程を含む:(1)分析する組織の固定;(2)標的核酸の接近性を高めるため、また、非特異的結合を軽減するためのサンプルのプレハイブリダイゼーション処理;(3)その核酸混合物と生体構造または組織中の核酸とのハイブリダイゼーション;(4)ハイブリダイゼーションにおいて結合しなかった核酸断片を除去するためのハイブリダイゼーション後の洗浄;および(5)ハイブリダイズした核酸断片の検出。このような用途に用いるプローブは典型的には、例えば、放射性同位元素または蛍光リポーターで標識される。好ましいプローブは、ストリンジェント条件下で標的核酸との特異的ハイブリダイゼーションを可能とするに十分な長さ、例えば、約50、100、または200ヌクレオチド〜約1000以上のヌクレオチドである。FISHを行うための標準的な方法は、オースベル(Ausubel,F.M.)ら(編者)、分子生物学における現在のプロトコル(Current Protocols in Molecular Biology)、2004年、ジョンワイリー&サンズ、およびバートレット(John M.S.Bartlett)による、インサイツハイブリダイゼーションにおける蛍光:癌の分子診断、方法およびプロトコルにおける技術的概観(Fluorescence In Situ Hybridization:Technical Overview in Molecular Diagnosis of Cancer、Methods and Protocols、第2版;ISBN:1−59259−760−2;2004年3月、p.077−088;シリーズ:分子医学における方法(Series:Methods in Molecular Medicine)に記載されている。
あるいは、これらのmRNAから発現されたタンパク質産物を、腫瘍サンプルの免疫組織化学、マイクロタイタープレートを用いる固相イムノアッセイ、ウエスタンブロット、二次元SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動、ELISA、フローサイトメトリーおよび特定のタンパク質を検出するための当技術分野で公知の他の方法により評価することができる。検出方法には、部位特異的抗体の使用が含まれる。当業者ならば、サイクリンEのアップレギュレーション、またはp21もしくはp27の欠損の検出、またはCDC4変異体、オーロラアップレギュレーションおよびオーロラの変異を検出するためのこのような公知の技術はすべて本発明の場合に適用可能であることを認識しているであろう。
よって、これらの技術はいずれも、本発明の化合物による治療に特に好適な腫瘍を同定するために使用することができる。
本発明の一つの実施態様では、式(I)または(I´)の化合物あるいは1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素あるいはその乳酸塩またはクエン酸塩のようなすべての塩の投与前に、患者が罹患している、または罹患している可能性のある疾病または症状が、Flt3、JAK、C−abl、PDK1、Chk1およびChk2に対して活性を有する化合物による治療に感受性があるものかどうかを判定するために患者をスクリーニングすることができる。これらの手法もまた、Flt3、JAK、C−abl、PDK1、Chk1およびChk2キナーゼのアップレギュレーションあるいは変異体が原因の疾病または症状のスクリーニングのために使用できる。
他の一つの実施態様では、式(I)または(I´)の化合物あるいは1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素あるいはその乳酸塩またはクエン酸塩のようなすべての塩の投与前に、患者が罹患している、または罹患している可能性のある疾病または症状が、FGFR、Ret、Eph、cSrc、VEGFR、PDGFRキナーゼに対して活性を有する化合物による治療に感受性があるものかどうかを判定するために患者をスクリーニングすることができる。これらの手法もまた、Flt3、JAK、C−abl、PDK1、Chk1およびChk2キナーゼのアップレギュレーションあるいは変異体が原因の疾病または症状のスクリーニングのために使用できる。これらの手法もまた、GFR、Ret、Eph、cSrc、VEGFR、PDGFRキナーゼのアップレギュレーションあるいは変異体が原因の疾病または症状のスクリーニングのために使用できる。
これらの手法もまた、VEGFRキナーゼのアップレギュレーションまたは変異体が原因の疾病または症状のスクリーニングのために使用でき、それらの手法としては、限定されるものではないが、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)またはインサイツハイブリダイゼーションなどの標準的な方法が挙げられる。
VEGFRなどのタンパク質の異常なレベルは、標準的な酵素アッセイ、例えば、本明細書に記載されるアッセイを用いて測定することができる。活性化または過剰発現はまた、腫瘍サンプル、例えば腫瘍組織、において、ケミコンインターナショナル(Chemicon International)から入手可能のものなどのアッセイでチロシンキナーゼ活性を測定することにより検出することができる。対象とするチロシンキナーゼをサンプル溶解物から免疫沈降させ、その活性を測定する。
アイソフォームを含むVEGFRの過剰発現または活性化の測定の別法としては、微細血管密度の測定を含む。これは例えば、オッレ(Orre)およびロジャース(Rogers)(Int.J.Cancer、1999年、84(2)、101−8)により記述されている方法を用いて測定することができる。アッセイ方法はまた、例えば、VEGFRの場合にはマーカーの使用を含み、これらのマーカーとしてはCD31、CD34およびCD105(ミネオ(Mineo)ら、ジャーナルオブクリニカルパソロジー(J.Clin.Pathol.),2004、57(6)、591−7)が挙げられる。
FLT3の活性化変異は、急性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群(MDS)および急性リンパ芽球性白血病(ALL)のいくつかの症例で頻繁に認められる。FLT3の活性化変異体を伴う癌患者には、FLT3阻害剤に最も感受性のある変異の指標として線変異または遺伝子内タンデム重複変異の存在のスクリーニングをすることができる。
チロシンキナーゼJAK2における活性化変異は、真性赤血球増加症、本態性血小板血症および骨髄様化生を合併する骨髄線維症において観察されている。本明細書に記載の方法はこれらの変異を有する患者を同定するためにを使用することができる可能性がある。
BCR−abl、例えばT315I、の耐性変異体を発現する細胞を有する腫瘍のある患者は、本明細書に記載の方法を使用して同定することができる。
したがって、さらに、本明細書に記載の方法はJAK2の例えばV617Fの変異、FLT3の活性化変異、C−AbIの例えばT315Iの変異体を診断するために使用することができる可能性がある。
さらなる実施態様では、本発明の化合物は、患者および/または腫瘍および/またはフィラデルフィア染色体陽性(Ph+)白血病を治療するためにを使用することができる可能性がある。これは、染色体9と染色体22の間に起こる転座であり、変化した染色体22をもたらす。しばしばBCR−abl転座と呼ばれる、前記転座は、細胞遺伝学的方法、例えば本明細書に記載の方法、特にFISH、を含む当業者に公知の方法、により識別することができ、発明の化合物を用いた治療に適した患者を同定するために使用できる。
本発明の化合物は、有糸分裂チェックポイント欠陥と直接関連するオーロラキナーゼの阻害剤であるので、本発明の化合物は、染色体の完全性の喪失、紡錘体欠陥または疾患進行の兆候として倍数性を示す白血病に罹患している患者の治療に特に適している可能性がある。
遺伝的不安定性は多くの白血病での共通の特徴であり、異数性をもたらす。中心体異常は最近、急性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、ホジキンリンパ腫に加えて非ホジキンリンパ腫、慢性リンパ球性白血病および多発性骨髄腫を含むいくつかの異なる血液悪性腫瘍に関連して記述されている。多くの固形腫瘍と類似して、骨髄性悪性腫瘍、慢性リンパ球性白血病および少なくともいくつかのタイプの非ホジキンリンパ腫において、一方では中心体異常そして他方では核型異常と臨床での侵攻性の間に相関性があるようである。
複雑な染色体異常は、原発性骨髄異形成症候群(MDS)または急性骨髄性白血病(AML)の患者の30%以下で存在し、予後不良に関与する。複雑な核型の特定の変化を従来の細胞遺伝学だけで定義するのは難しい。骨髄サンプルに選択プローブを用いるスペクトル核型分析(SKY)および蛍光インサイツハイブリダイゼーション(FISH)が使用される場合、再発異常についてのより総合的な見解を得ることができる(Cancer Genet.Cytogenet,2006年、165(1)、51−63、(トロスト(Trost D)ら)。特定の切断点および欠失の詳細な分析は、既知の癌抑制遺伝子または癌遺伝子を有する特定の染色体バンドの再発性関与を示すことができる。SKYとFISHを用いた同様の詳細な方法でのMDSとAMLの多くの症例の分析は、それらの遺伝的変化によって新規サブグループが同定できるかどうかを示す。臨床的指標との相関性は、これらの遺伝子サブグループの予後的意義を示す可能性がある。例えばMDSでは、国際予後判定システムは、芽球の割合、核型、および血球減少の数を組み合わせ、MDSを患う患者の生存率および急性骨髄性白血病への進行の危険性を確実に予測する判定システムを作成する。より完全な臨床像および可能な限り正確な予後評価を提供するため、広く一般に受け入れるられているこの判定システムはFABまたは世界保健機関の形態学的基準としばしば組み合わされる(Semin Oncol.2005年8月;32(4 Suppl 5):S3−10、(ベネット)Bennett)。
遺伝的不安定性は、急性骨髄性白血病(AML)で共通の特徴である(ブラッド(Blood)、2003、101(1)、289−91、(ネベン(Neben)ら)、そして中心体異常が多くのヒト腫瘍での異数性の考えられる原因として記載されている。中心体異常がAMLにおける細胞遺伝学的所見と相関するかどうか調査するため、一連のAMLサンプルはぺリセントリンに対する中心体特異抗体を使用して試験された。分析したAMLサンプルは、末梢血単核細胞と比較して、中心体の数と構造の異常を示した。正常な染色体数のAMLサンプルと比較して、中心体の数と構造の異常の程度は、染色体数の変化を有するサンプルではより高かった。細胞遺伝学的に定義されたリスクグループにおける中心体異常の頻度を分析した時、相関性は中心体異常の程度との間で3つのリスクグループすべてでみられた。これらの結果は、中心体欠陥が染色体異常の獲得、そしてAMLにおける予後、に寄与している可能性を示す。
このように、腫瘍または白血病が染色体異常に関連していたかどうかを決定するために、当業者に公知の多くの手法が使用できる。
したがって、本発明の一態様は、患者が染色体異常を示す疾病、特に癌、に罹患しているかどうか検出し、本発明の化合物で染色体異常を治療する方法である。
本発明はさらに、患者が染色体異常を示す白血病に罹患しているかどうかを診断し、本発明の化合物を投与する方法を提供する。
本発明のさらなる態様は、癌に罹患している、または罹患していると疑われる患者における癌の予防および治療(あるいは癌の発生率の軽減または減少)方法である。前記方法は(i)患者が染色体異常を有しているかどうかを判定すべく患者に診断試験を行うこと、および(ii)患者が前記染色体異常を有することが示された場合に、その後、患者にオーロラキナーゼ阻害活性を有する本明細書で定義されている式(I)の化合物を投与することを含む。
他の実施態様では、1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の乳酸塩またはクエン酸塩の投与前に、患者が罹患している、または罹患している可能性のある疾病または症状が、オーロラキナーゼおよび/またはサイクリン依存性キナーゼに対して活性を有する化合物による治療に感受性があるものかどうかを判定するために患者をスクリーニングすることができる。
例えば、患者から採取した生体サンプルを分析し、その患者が罹患している、または罹患している可能性のある癌などの症状または疾病がCDKの過剰な活性化または正常なCDK活性への経路の増感をもたらす遺伝的異常または異常なタンパク質発現を特徴とするものかどうかを判定することができる。CDK2シグナルの活性化または増感ををもたらすこのような異常の例としては、サイクリンEのアップレギュレーション(ハーウェル(Harwell RM)、マル(Mull BB)、ポーター(Porter DC)、ケヨマルシ(Keyomarsi K.);J Biol.Chem.2004年3月、26;279(13):12695−705)またはp21もしくはp27の欠損、またはCDC4変異体の存在(ラジャゴパラン(Rajagopalan H)、ジャレパリ(Jallepalli PV)、ラゴ(Rago C)、ベルクレスク(Velculescu VE)、キンズラー(Kinzler KW)、ボーゲルスタイン(Vogelstein B)、レンガウアー(Lengauer C.);ネイチャー(Nature)、2004年3月、4;428(6978):77−81)が挙げられる。CDC4の変異体またはサイクリンEのアップレギュレーション、特に過剰発現、またはp21もしくはp27の欠損を伴う腫瘍は、特にCDK阻害剤に対して感受性がある可能性がある。代わりに、あるいは、それに加えて、患者から採取した生体サンプルを分析し、その患者が罹患している、または罹患している可能性のある癌などの症状または疾病がオーロラキナーゼのアップレギュレーションを特徴とするもの、したがってオーロラ阻害剤に特に感受性がある可能性がある、かどうかを判定することができる。アップレギュレーションなる語はとしては、遺伝子増幅(すなわち、多重遺伝子コピー)および転写作用による発現の増強をはじめとする発現上昇または過剰発現、ならびに変異による活性化をはじめとする活性亢進および活性化が挙げられる。
よって、患者に対して、オーロラキナーゼ過剰発現、アップレギュレーションまたは活性化に特徴的なマーカーを検出するための診断試験を行うことができる、あるいは患者に対して、サイクリンEのアップレギュレーション、またはp21もしくはp27の欠損、またはCDC4変異体の存在に特徴的なマーカーを検出するための診断試験を行うことができる。診断なる語は、スクリーニングも含む。本発明者らはマーカーに、例えば、オーロラまたはCDC4の変異を同定するためのDNA組成の指標をはじめとする遺伝マーカーも含める。マーカーとはまた、オーロラまたはサイクリンEの酵素活性、酵素レベル、酵素状態(例えば、リン酸化の有無)およびmRNAレベルをはじめ、オーロラまたはサイクリンEのアップレギュレーションに特徴的なマーカーを含む。サイクリンEのアップレギュレーション、またはp21もしくはp27の欠損は、特にCDK阻害剤に対して感受性がある可能性がある。腫瘍は治療の前にサイクリンEのアップレギュレーション、またはp21もしくはp27の欠損に関して優先的にスクリーニングすることができる。よって、患者に対して、サイクリンEのアップレギュレーション、またはp21もしくはp27の欠損に特徴的なマーカーを検出するための診断試験を行うことができる。
診断試験は典型的には、腫瘍生検サンプル、血液サンプル(脱落した腫瘍細胞の単離および濃縮)、糞便生検、痰、染色体分析、胸膜液、腹水、または尿から選ばれる生体サンプルに対して行う。
STK遺伝子(オーロラキナーゼAの遺伝子)のIle31変異体を有する部分集団の一部を形成している個体が、ある形態の癌に高い感受性を有する可能性があることが判明した(エワート−トーランド(Ewart−Toland)ら、Nat.Genet.2003年8月;34(4):403−12参照)。従って、このような癌を患っている個体にはオーロラキナーゼ阻害活性を有する化合物の投与が有益であると考えられる。従って、癌を患っている、または患っている疑いのある患者を、その患者がIle31変異体部分集団の一部を形成するかどうかを判定すべくスクリーニングすることができる。加えて、ラジャゴパラン(Rajagopalan)ら、(ネイチャー(Nature)、2004年3月4;428(6978):77−81)は、ヒト結腸直腸癌および子宮内膜癌(スプルック(Spruck)ら、Cancer Res. 2002年8月15;62(16):4535−9)に、CDC4に存在する変異(Fbw7またはアーキペラゴ(Archipelago)としても知られる)があることを見出した。CDC4に変異を有する個体の同定は、その患者がCDK阻害剤による治療に特に好適であることを意味し得る。腫瘍は、治療前にCDC4変異体の存在に関して優先的にスクリーニングすることができる。このスクリーニング方法は典型的には、直接配列決定、オリゴヌクレオチドマイクロアレイ分析、または変異体特異的抗体を含む。
オーロラの活性化変異またはそのいずれかのアイソフォームを含むオーロラのアップレギュレーションを伴う腫瘍はオーロラ阻害剤に特に感受性がある。治療前にオーロラのアップレギュレーションに関して、またはIle31変異体を有するオーロラに関して、腫瘍を優先的にスクリーニングできる(エワート−トーランド(Ewart−Toland)ら、Nat Genet.2003年8月;34(4):403−12)。Ewart−Tolandらは、ヒト結腸腫瘍において優先的に増幅され、異数性の程度と関連があるSTK15の共通の遺伝変異体(アミノ酸置換F31Iを生じる)を同定した。これらの結果は、ヒト癌感受性におけるSTK15のIle31変異体に対する重要な役割と一致している。特に、オーロラAにおけるこの多型性は、乳癌発症に関する遺伝的修飾因子であると示唆されている(ソン(Sun)、Carcinogenesis,2004、25(11)、2225−2230)。
オーロラA遺伝子は、多くの癌、例えば、乳癌、膀胱癌、結腸癌、卵巣癌、膵臓癌、でしばしば増幅されている染色体20q13領域にマッピングされている。この遺伝子増幅を伴う腫瘍を有する患者は、オーロラキナーゼ阻害を標的とする治療に特に感受性が高い可能性がある。
タンパク質、例えばオーロラアイソフォーム、の変異およびアップレギュレーションならびに染色体20q13の増幅の同定および分析の方法は当業者に公知である。スクリーニング方法としては、限定されるものではないが、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)またはインサイツハイブリダイゼーションなどの標準的な方法が挙げられる。
CDC4の変異体、またはサイクリンEのアップレギュレーション、特に過剰発現、あるいはp21もしくはp27の欠損を伴う腫瘍はCDK阻害剤に対して特に感受性がある可能性がある。腫瘍は治療前に、サイクリンEのアップレギュレーション、特に過剰発現に関して(ハーウェル(Harwell RM)、マru(Mull BB)、ポーター(Porter DC)、ケヨマルシ(Keyomarsi K.)、;J.Biol.Chem.2004年3月26;279(13);12695−705)、またはp21もしくはp27の欠損、またはCDC4変異体に関して(ラジャゴパラン(Rajagopalan H)、ジャレパリ(Jallepalli PV)、ラゴ(Rago C)、ベルクレスク(Velculescu VE)、キンズラー(Kinzler KW)、ボーゲルスタイン(Vogelstein B)、レンガウアー(Lengauer C.);ネイチャー(Nature)、2004年3月4;428(6978):77−81)優先的にスクリーニングすることができる。
マントル細胞リンパ腫(MCL)を有する患者については、本明細書で概略を示した診断試験を用い、本発明の化合物による治療が適用できるかを選定することができる。MCLは、CD5およびCD20の共発現、侵攻性および難治性の臨床経過、および頻繁なt(11;14)(q13;q32)の転座を伴う小型〜中型のリンパ球の増殖を特徴とする非ホジキンリンパ腫の明瞭な臨床病理態である。マントル細胞リンパ腫(MCL)で観察されるサイクリンD1mRNAの過剰発現が重要な診断マーカーとなる。ヤタベ(Yatabe)ら(Blood、2000年4月1;95(7):2253−61)は、MCLの標準的な判定基準の1つとしてサイクリンD1陽性を含めるべきこと、およびこの新たな判定基準に基づいてこの難病の革新的療法を探索すべきであることを提案している。ジョーンズ(Jones)ら(J.Mol.Diagn.2004年5月;6(2):84−9)は、マントル細胞リンパ腫(MCL)の診断の助けとなるよう、サイクリンD1(CCND1)発現のリアルタイム定量的逆転写PCRアッセイを開発した。ホウ(Howe)ら(Clin Chem.2004年1月;50(1):80−7)は、リアルタイム定量的RT−PCRを用いてサイクリンD1mRNAの発現を評価し、CD19mRNAに対して正規化したサイクリンD1mRNAの定量的RT−PCRが血液、骨髄および組織におけるMCLの診断に使用できることを見出した。あるいは、乳癌患者については、上記で概略を示した診断試験を用い、CDK阻害剤による治療が適用できるかを選定することができる。腫瘍細胞は共通してサイクリンEを過剰発現し、乳癌でもサイクリンEが過剰発現することが示されている(ハーウェル(Harwell)ら、Cancer Res、2000、60、481−489)。従って、乳癌は特に本明細書で提供されるCDK阻害剤で治療可能である。
本発明を、以下の実施例に記載される具体的実施態様を参照して説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例においては次の略語が使用される。
AcOH 酢酸
BOC tert−ブチルオキシカルボニル
CDI 1,1−カルボニルジイミダゾール
DMAW90 溶媒混合物:DCM:MeOH、AcOH、H2O(90:18:3:2)
DMAW120 溶媒混合物:DCM:MeOH、AcOH、H2O(120:18:3:2)
DMAW240 溶媒混合物:DCM:MeOH、AcOH、H2O(240:20:3:2)
DCM ジクロロメタン
DMF ジメチルホルムアミド
DMSO ジメチルスルホキシド
EDC 1−エチル−3−(3´−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド
Et3N トリエチルアミン
EtOAc 酢酸エチル
Et2O ジエチルエーテル
HOAt 1−ヒドロキシアザベンゾトリアゾール
HOBt 1−ヒドロキシベンゾトリアゾール
MeCN アセトニトリル
MeOH メタノール
SiO2 シリカ
TBTU N,N,N´,N´−テトラメチル−O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)ウロニウムテトラフルオロボレート
THF テトラヒドロフラン
分析的LC−MSシステムおよび方法の説明
実施例では、調製した化合物は、以下に示すシステムおよび作動条件を用いた液体クロマトグラフィーおよび質量分析により特性決定した。種々の同位体を含む原子が存在し、単一の質量が表示される場合には、その化合物についての質量はモノアイソトピック質量(すなわち、35Cl;79Brなど)である。下記のようにいくつかのシステムを用いたが、これらは、近似した作動条件で実施されるように装備および設定を行った。使用した作動条件はまた、下記に示す。
ウォーターズプラットフォーム(Waters Platform)LC−MSシステム:
HPLCシステム:ウォーターズ(Waters)2795
質量分析検出器:マイクロマスプラットフォーム(Micromass Platform)LC
PDA検出器:ウォーターズ(Waters)2996 PDA
酸性分析条件:
溶離剤A:H2O(0.1%ギ酸)
溶離剤B:CH3CN(0.1%ギ酸)
勾配:3.5分で5〜95%溶離剤B
流速:0.8ml/分
カラム:フェノメネックスシナジー(Phenomenex Synergi)4μ Max−RP80A、2.0×50mm
塩基性分析条件:
溶離剤A:H2O(NH4OHでpH=9.2に調整した10mM NH4HCO3バッファー)
溶離剤B:CH3CN
勾配:3.5分で05〜95%溶離剤B
流速:0.8ml/分
カラム:フェノメネックスルナ(Phenomenex Luna)C18(2) 5μm 2.0×50mm
極性分析条件:
溶離剤A:H2O(0.1%ギ酸)
溶離剤B:CH3CN(0.1%ギ酸)
勾配:3分で00〜50%溶離剤B
流速:0.8ml/分
カラム:フェノメネックスシナジー(Phenomenex Synergi)4μ Max−RP80A、2.0×50mm
親油性分析条件:
溶離剤A:H2O(0.1%ギ酸)
溶離剤B:CH3CN(0.1%ギ酸)
勾配:3.5分で55〜95%溶離剤B
流速:0.8ml/分
カラム:フェノメネックスシナジー(Phenomenex Synergi)4μ Max−RP80A、2.0×50mm、
長時間酸性分析条件:
溶離剤A:H2O(0.1%ギ酸)
溶離剤B:CH3CN(0.1%ギ酸)
勾配:15分で05〜50%溶離剤B
流速:0.4ml/分
カラム:フェノメネックスシナジー(Phenomenex Synergi)4μ Max−RP80A、2.0×150mm
長時間塩基性分析条件:
溶離剤A:H2O(NH4OHでpH=9.2に調整した10mM NH4HCO3バッファー)
溶離剤B:CH3CN
勾配:15分で05〜95%溶離剤B
流速:0.8ml/分
カラム:フェノメネックスルナ(Phenomenex Luna)C18(2) 5μm 2.0×50mm
Platform MS条件:
キャピラリー電圧:3.6kV(ESネガティブでは3.40kV)
コーン電圧:25V
ソース温度:120℃
走査範囲:100〜800amu
イオン化モード:エレクトロスプレーポジティブまたはエレクトロスプレーネガティブまたはエレクトロスプレーポジティブ&ネガティブ
ウォーターズフラクションリンクス(Waters Fractionlynx)LC−MSシステム:
HPLCシステム:2767オートサンプラー−2525二元勾配ポンプ
質量分析検出器:ウォーターズ(Waters)ZQ
PDA検出器:ウォーターズ(Waters)2996 PDA
酸性分析条件:
溶離剤A:H2O(0.1%ギ酸)
溶離剤B:CH3CN(0.1%ギ酸)
勾配:4分で5〜95%溶離剤B
流速:2.0ml/分
カラム:フェノメネックスシナジー(Phenomenex Synergi)4μ Max−RP80A、4.6×50mm
極性分析条件:
溶離剤A:H2O(0.1%ギ酸)
溶離剤B:CH3CN(0.1%ギ酸)
勾配:4分で00〜50%溶離剤B
流速:2.0ml/分
カラム:フェノメネックスシナジー(Phenomenex Synergi)4μ Max−RP80A、4.6×50mm
親油性分析条件:
溶離剤A:H2O(0.1%ギ酸)
溶離剤B:CH3CN(0.1%ギ酸)
勾配:4分で55〜95%溶離剤B
流速:2.0ml/分
カラム:フェノメネックスシナジー(Phenomenex Synergi)4μ Max−RP80A、4.6×50mm
Fractionlynx MS条件:
キャピラリー電圧:3.5kV(ESネガティブでは3.2kV)
コーン電圧:25V(ESネガティブでは30V)
ソース温度:120℃
走査範囲:100〜800amu
イオン化モード:エレクトロスプレーポジティブまたはエレクトロスプレーネガティブまたはエレクトロスプレーポジティブ&ネガティブ
質量分析精製 LC−MSシステム
分取LC−MSは、本明細書に記載の化合物などの小有機分子の精製に用いられる標準的かつ有効な方法である。液体クロマトグラフィー(LC)および質量分析(MS)方法は、粗材料のより良い分離やMSによるサンプルの検出の向上を得るために変更することができる。分取勾配LC法の至適化には、カラム、揮発性溶離剤と改質剤、および勾配の変更が含まれる。分取LC−MS法を至適化した後、それを化合物の精製に用いるための方法は当技術分野で公知のものである。このような方法は、ローゼントレター(Rosentreter U)、フーバー(Huber U.);分取LC/MSにおける至適部分採取(Optimal fracion collecting in preparative LC/MS);ジャーナルオブコンビナトリアルケミストリー(J.Comb.Chem.);2004年;6(2)、159−64およびリースター(Leister W)、ストラウス(Strauss K)、ビスノスキ(Wisnoski D)、ジャオ(Zhao Z)、リンズリー(Lindsley C.)、化合物ライブラリの予備精製および解析的分析のためのカスタムハイスループット分取液体クロマトグラフィー/質量分析計プラットフォームの開発(Development of a custom high−throughput preparative liquid chromatography/mass spectrometer platform for the preparative purification and analytical analysis of compound libraries);ジャーナルオブコンビナトリアルケミストリー(J.Comb.Chem.);2003年;5(3);322−9に記載されている。
分取LC−MSによって化合物を精製するためのこのようなシステムの1つを以下に記載するが、当業者ならば、記載されているものとは別のシステムおよび方法も使用可能であることが分かるであろう。特に、ここに記載されている逆相分取LCに基づく方法の代わりに順相法を用いてもよい。ほとんどの分取LC−MSシステムでは逆相LCと揮発性酸性改質剤を用いるが、これはこのアプローチが低分子の精製に極めて有効であるため、また、これらの溶離剤が陽イオンエレクトロスプレー質量分析に適合するためである。上記の分析法で概略を示したように、他のクロマトグラフィー溶液、例えば、順相LC、代わりに緩衝移動相、塩基性改質剤などを用いると、これらの化合物の精製のために代用することができる。
分取LC−MSシステム:
ウォーターズフラクションリンクス(Waters Fractionlynx)システム:
ハードウエア:
2767デュアルループオートサンプラー/フラクションコレクター
2525分取ポンプ
カラム選択用としてCFO(カラム液体オーガナイザー(column fluidic organiser))
メイクアップポンプとしてRMA(ウォーターズ試薬マネージャー(Waters reagent manager))
ウォーターズ(Waters)ZQ 質量分析計
ウォーターズ(Waters)2996 フォトダイオードアレイ検出器
ウォーターズ(Waters)ZQ 質量分析計
ソフトウェア:
マスリンクス(Masslynx)4.0
ウォーターズ(Waters)MS作動条件:
キャピラリー電圧:3.5kV(ESネガティブでは3.2kV)
コーン電圧:25V(ESネガティブでは30V)
イオン源温度:120℃
増倍管:500V
走査範囲:125〜800amu
イオン化モード:エレクトロスプレーポジティブまたはエレクトロスプレーネガティブ
アジレント(Agilent)1100 LC−MS分取システム:
ハードウエア:
オートサンプラー:1100シリーズ“prepALS”
ポンプ:分取流勾配用として1100シリーズ“PrepPump”および分取流のポンピングモディファー用としての1100シリーズ“QuatPump”
UV検出器:1100シリーズ“MWD”(多波長検出器)
MS検出器:1100シリーズ“LC−MSD VL”
フラクションコレクター:2דPrep−FC”
メイクアップポンプ:“ウォーターズ(Waters)RMA”
アジレントアクティブスプリッター(Agilent Active Splitter)
ソフトウェア:
ケムステーション:ケム(Chem)32
アジレント(Agilent)MS作動条件:
キャピラリー電圧:4000V(ESネガティブでは3500V)
フラクション/増分:150/l
乾燥ガス流:13.0L/分
ガス温度:350℃
噴霧器圧:50psig
走査範囲:125〜800amu
イオン化モード:エレクトロスプレーポジティブまたはエレクトロスプレーネガティブ
クロマトグラフィー条件:
カラム:
1.低pHクロマトグラフィー:
フェノメネックスシナジー(Phenomenex Synergy)MAX−RP、10μ、100×21.2mm
(より極性の高い化合物には、代用としてサーモハイパーシルキーストーン、ハイピュリティーアクアスター(Thermo Hypersil−Keystone HyPurity Aquastar)5μ、100×21.2mm)
2.高pHクロマトグラフィー:
フェノメネックスルナ(Phenomenex Luna)C18(2)、10μ、100×21.2mm
(代用として、フェノメネックスジェミニ(Phenomenex Gemini)5μ、100×21.2mm)
溶離剤:
1.低pHクロマトグラフィー:
溶媒A:H2O+0.1%ギ酸、pH〜1.5
溶媒B:CH3CN+0.1%ギ酸
2.高pHクロマトグラフィー:
溶媒A:H2O+10mM NH4HCO3+NH4OH、pH9.2
溶媒B:CH3CN
3.メイクアップ溶媒:
MeOH+0.2%ギ酸(両クロマトグラフィータイプとも)
方法:
分析トレースに従い、最も適切な分取クロマトグラフィーのタイプを選択した。典型的な常法としては、化合物の構造に最も適したタイプのクロマトグラフィー(低pHまたは高pH)を用いて分析的LC−MSを行った。分析トレースが良好なクロマトグラフィーを示したところで、同じタイプの好適な分取法を選択した。低pHおよび高pHクロマトグラフィー法とも、典型的な実施条件は次の通りであった。
流速:24ml/分
勾配:一般に、勾配は総て、初期段階は95%A+5%Bで0.4分とした。次に、分析トレースに従い、良好な分離を達成するために3.6分勾配を選択した(例えば、初期保持化合物については5%〜50%B、中期保持化合物については35%〜80%B、など)。
洗浄:勾配の終了時には1.2分の洗浄工程を行った。
再平衡:次の実施のためにシステムを準備するために、2.1分の再平衡工程を行った。
メイクアップ流速:1ml/分
溶媒:
化合物は総て通常、100%MeOHまたは100%DMSOに溶解した。
当業者であれば得られた情報から、分取LC−MSにより、本明細書に記載の化合物を精製することができる。
各実施例の出発材料は特に断りのない限り市販のものである。
(実施例1)
5−シアノ−2−メトキシの−N−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−ベンズアミドの合成
1A (3,4−ジニトロ−フェニル)−モルホリン−4−イル−メタノンの合成
3,4−ジニトロ安息香酸(10.0g)と塩化チオニル(30ml)との混合物を還流下2時間加熱し、周囲温度まで冷却し、過剰の塩化チオニルをトルエンとの共沸により除去した。残渣をTHF(100ml)に溶解し、モルホリン(4.1ml)およびEt3N(7.2ml)を0℃で同時に混合物に添加した。混合物を3時間撹拌し、水(100ml)を添加し、EtOAcで抽出した。有機画分を塩水で洗浄し、乾燥(MgSO4)し、真空内で減量した。MeOHからの残渣の再結晶により、(3.4−ジニトロ−フェニル)−モルホリン−4−イル−メタノン(8.23g)を黄色の固体として得た。(1H NMR(300MHz、DMSO−d6)δ8.3(d、1H) 8.3(s、1H)、8.0(d、1H)、3.7−3.5(m、8H)。
1B (3,4−ジアミノ−フェニル)−モルホリン−4−イル−メタノンの合成
MeOH(30ml)中、(3,4−ジニトロ−フェニル)−モルホリン−4−イル−メタノン(1.0g)と10%Pd/C(150mg)との混合物を、水素雰囲気下、周囲温度で、10時間振とうし、その後、セライトプラグで濾過し、真空内で減量し、(3,4−ジアミノ−フェニル)−モルホリン−4−イル−メタノン(900mg)を得た。(1H NMR(300MHz、DMSO−d6)δ6.6(s、1H)、6.5(s、2H)、4.8(s、1.5H)、4.6(s、1.5H)、4.1(s、1H)、3.6(m、4H)および3.4(m、4H))。
1C 4−モルホリン−4−イルメチル−ベンゼン−1,2−ジアミンの合成
無水THF(50ml)中の(3,4−ジニトロ−フェニル)−モルホリン−4−イル−メタノン(2.84g)の混合物に、NaBH4(954mg)を添加し、次にBF3・Et2O(3.2ml)を滴下した。混合物を周囲温度で3時間撹拌し、次に、MeOHの添加により急冷した。混合物を真空内で減量し、EtOAcと水で分液し、有機画分を塩水で洗浄し、乾燥し(MgSO4)、真空内で減量した。残渣を、EtOAcで溶出するフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製し、4−(3,4−ジニトロ−ベンジル)−モルホリン(1.08g)を得た。MeOH(10ml)中で4−(3,4−ジニトロ−ベンジル)−モルホリン(550mg)と10%Pd/C(75mg)との混合物を、水素雰囲気下、周囲温度で、4時間振とうし、その後、セライトプラグで濾過し、真空内で減量し、混合物の主成分として4−モルホリン−4−イルメチル−ベンゼン−1.2−ジアミン(483mg)を得た。
1D 5−モルホリン−4−イルメチル−2−(4−ニトロ−1H−ピラゾール−3−イル)1H−ベンゾイミダゾールの合成
無水DMF(25ml)中の4−モルホリン−4−イルメチル−ベンゼン−l,2−ジアミン(2.30g、11.1mmol)、4−ニトロ−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1.57g、10.0mmol)、EDC(2.13g、11.1mmol)およびHOBt(1.50g、11.1mmol)の混合物を周囲温度で24時間振とうした。混合物を真空内で減量し、粗残渣をAcOH(40ml)に溶解し、還流下で3時間加熱した。溶媒を真空内で除去し、残渣をEtOAcにおいて0−20%MeOHで溶出するフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製し、5−モルホリン−4−イルメチル−2−(4−ニトロ−1H−ピラゾール−3−イル)1H−ベンゾイミダゾールを黄色の固体として得た(1.0g、61%)。(LC/MS:Rt1.83、[M+H]+329)
1E 3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イルアミンの合成
DMF(30ml)中の5−モルホリン−4−イルメチル−2−4−ニトロ−1H−ピラゾール−3−イル)lH−ベンゾイミダゾール(0.82g、2.5mmol)の溶液に窒素雰囲気下でパラジウム炭素(10%、0.08g)を添加した。混合物を水素雰囲気下で4時間振とうし、その後セライトで濾過し、MeOHで洗浄した。濾液を真空濃縮し、3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イルアミンを茶色の固体として得た(530mg、71%)。(LC/MS:Rt1.94、[M+H]+299)
アセトン(50ml)中の、メチル−2−ヒドロキシ−5−シアノベンゾエート(2.g、5.6mmol)とK2CO3(4.68g、16.8mmol)との混合物に、ヨウ化メチル(0.7ml、5.6mmol)を添加した。反応物をその後65℃で一晩加熱し、固体が生成し、これを熱いうちに濾過し、アセトンで洗浄して、5−シアノ−2−メトキシ−安息香酸メチルエステル(0.45g)を得た。粗生成物をTHF(5ml)で溶解し、次に水(5ml)中でLiOH(0.108g、0.26mmol)で処理し、室温で一晩撹拌した。反応物を2M HCl酸性化し、EtOAc(×2)で抽出した。有機画分を乾燥(MgSO4)し、真空内で減量し、5−シアノ−2−メトキシ-安息香酸(0.277g)を得た。(酸性LC/MS:Rt2.92、[M+H]+178)。
1G 5−シアノ−2−メトキシ−N−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−ベンズアミドの合成(酸クロリド法)
5−シアノ−2−メトキシ−安息香酸(実施例1F)(40mg、0.22mmol)をDCM(5ml)に溶解し、塩化オキサリル(34.4mg、0.264mmol)をその後滴下し、続いてDMF(1滴)を滴下した。反応混合物を周囲温度で1時間撹拌し、真空内で減量し、その後トルエン(×2)を用いて再度蒸発した。THF(5ml)中の、3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イルアミン(100mg、0.33mmol)と5−シアノ−2−メトキシ−ベンゾイルクロリドとイソプロピルエチルアミン(1.83μl、0.9mmol)との混合物を0℃で撹拌し、その後2時間で室温まで暖めた。その後、反応混合物を真空濃縮した。残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(SiO2、5−7%MeOH−DCM)により精製し、5−シアノ−2−メトキシ−N−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−ベンズアミド(12mg)を得た。(酸性LC/MS:Rt2.02min[M−H]+458)。
(実施例2)
6−メチル−イミダゾール[2.1−b]チアゾール−5−カルボン酸[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]アミドの合成
6−メチル−イミダゾ[2.1−b]チアゾール−5−カルボン酸(Bionet)(61mg、0.33mmol)と3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イルアミン(100mg、0.33mmol)とEDC(77mg、0.39mmol)とHOAt(54mg、0.39mmol)との混合物をDMF(3ml)中80℃で1時間、そして周囲温度で20時間撹拌した。混合物を真空内で減量し、残渣をEtOAcと飽和NaHCOとに分液した。有機画分を塩水で洗浄し、乾燥(MgSO4)し、真空内で減量した。残渣を分取LC/MSにより精製し、6−メチル−イミダゾール[2.1−b]チアゾール−5−カルボン酸[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]アミド(29mg)を得た。(塩基性LC/MS:Rt2.56[M+H]+463)
(実施例3)
2−シアノ−N−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダキソール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]アセトアミドの合成
シアノ酢酸(23mg、0.28mmol)と3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イルアミン(70%、100mg、0.23mmol)とTBTU(89mg、0.28mmol)とDMF(2ml)との混合物を、25℃で一晩撹拌した。その後、この混合物を真空内で蒸発した。DCM−6%MeOH/DCMで溶出するフラッシュクロマトグラフィーは2−シアノ−N−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダキソール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]アセトアミドを黄色の固体(65mg、77%)として生成した。(LC/MS(酸性法/最終化合物):Rt4.61、[M+H]+366)
(実施例4)
2−シアノ−2−シクロプロピル−N−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−アセトアミド
4A シアノ−シクロプロピル−酢酸の合成
THF(15ml)中のシアノ−シクロプロピル−酢酸エチルエステル(0.5g、3.26mmol)溶液に1NNaOH(3.26ml、3.26mmol)を添加した。25℃で4時間攪拌後、反応混合物を真空内で蒸発し、水(20ml)に再度溶解し、1NHCl溶液(3.26ml)の添加により中和した。その後、この混合物をEtOAc(3×20ml)で抽出し、そして、合わせて乾燥(Na2SO4)された有機物を真空内で蒸発し、不純なシアノ−シクロプロピル−酢酸を透明な油状物として得た。この物質をさらなる精製なしに実施例4Bの調製で使用した。
4B 2−シアノ−2−シクロプロピル−N−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−(ピラゾール−4−イル−アセトアミド
実施例4Aの生成物を、粗生成物をDCMと飽和したNaHCO3水溶液とで分液した以外は実施例3と同様の方法で3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イルアミンと反応させ、その後Et2Oで粉状化して精製した。LC/MS(酸性法)Rt1.79、[M+H]+406
(実施例5〜14)
実施例1,2および3に記載の方法に従い、下表に示されている点を変更して、実施例5〜14の化合物を調製した。
(実施例15)
N−[3−(5,6−ジメトキシ−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−rac−2−モルホリン カルボキサミド−トリフルオロアセテートの合成
15A 5,6−ジメトキシ−2−(4−ニトロ−1H−ピラゾール−3−イル)−1H−ベンゾイミダゾールの合成
DMF(100ml)中の、EDC(4.81g,25mmol)とHOBt(3.40g,25mmol)とトリエチルアミン(4.67g,46mmol)との溶液に、4−ニトロ−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(3.63g,23.09mmol)および4,5−ジメトキシ−ベンゼン−1,2−ジアミン二塩酸塩(5.06g,20.99mmol)を添加し、この混合物を室温で一晩撹拌した。溶媒を真空除去し、得られた固体をEtOAc(50ml)と飽和NaHCO3(50ml)とで分液した。沈殿が生じ、濾別した。これを水、次いでジエチルエーテルで洗浄した後、メタノールおよびトルエンと共沸させ、4−ニトロ−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(2−アミノ−4,5−ジメトキシ−フェニル)−アミド(2.35g,36%)を得た。4−ニトロ−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(2−アミノ−4,5−ジメトキシ−フェニル)−アミド(2.35g,7.65mmol)を酢酸(150ml)に溶解し、140℃で5時間還流した。この溶液を冷却し、溶媒を真空除去した。得られた固体をEtOAc(25ml)と塩水(25ml)とで分液した。有機層を分離し、乾燥させ(MgSO4)、濾過し、溶媒を真空除去し、5,6−ジメトキシ−2−(4−ニトロ−1H−ピラゾール−3−イル)−1H−ベンゾイミダゾール(2.08g,94%)を得た。
15B 3−(5,6−ジメトキシ−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イルアミンの合成
エタノール(150ml)およびDMF(50ml)中の5,6−ジメトキシ−2−(4−ニトロ−1H−ピラゾール−3−イル)−1H−ベンゾイミダゾール(2.08g,7.2mmol)および10%パラジウム炭素(200mg)の混合物を室温および室内圧で一晩水素化した。この反応混合物をセライト濾過し、溶媒を真空除去した。得られた固体をメタノールおよびトルエンと共沸させ、溶媒を真空除去した。この粗物質をDCM、MeOH、酢酸、水(120:18:3:2)(DMAW120)、その後、DCM、MeOH、酢酸、水(90:18:3:2)(DMAW90)で溶出するフラッシュカラムクロマトグラフィーにて精製した。生成物画分を合わせ、溶媒を真空除去し、3−(5,6−ジメトキシ−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イルアミン(〜1g、〜53%)を得た。
15C N−[3−(5,6−ジメトキシ−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−rac−4−BOC−2−モルホリン カルボキサミドの合成
DMF(2ml)中のEDC(125mg,0.54mmol)およびHOAt(74mg,0.54mmol)の溶液に、3−(5,6−ジメトキシ−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イルアミン(117mg,0.45mmol)(実施例15B)および(rac)−BOC−カルボキシモルホリン(125mg,0.54mmol)を添加し、この混合物を室温で一晩撹拌した。この混合物をEtOAcと水とで分液した。有機層を飽和重炭酸ナトリウム水溶液および塩水で逐次洗浄し、乾燥した(MgSO4)。溶液を真空内で蒸発乾固し、残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製し[SiO2、勾配溶離:EtOAc−ヘキサン(1:1)−EtOAc−MeOH(80:20)]、N−[3−(5,6−ジメトキシ−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−rac−4−BOC−2−モルホリン カルボキサミド(65mg)を無色の固体として得た。(LC/MS(酸性法)Rt2.65min、[M+H]+473)
15D N−[3−(5,6−ジメトキシ−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−rac−2−モルホリン カルボキサミド−トリフルオロ酢酸塩の合成
N−[3−(5,6−ジメトキシ−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−rac−4−BOC−2−モルホリン カルボキサミド(65mg、0.14mmol)およびアニソール(60μl、0.56mmol)を、トリフルオロ酢酸とジクロロメタンとの混合物(1:1;2ml)に溶解した。室温で3時間放置後、混合物を蒸発乾固し、N−[3−(5,6−ジメトキシ−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−rac−2−モルホリン カルボキサミド−トリフルオロ酢酸塩(73mg)を無色の固体として得た(LC/MS(酸性法)Rt1.42min、[M−H+]−371)。
(実施例16)
N−[3−(5,6−ジメトキシ−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−rac−4 イソプロピル−2−モルホリン カルボキサミドの合成
MeCN(1ml)中、N−[3−(5,6−ジメトキシ−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−rac−2−モルホリン カルボキサミド−トリフルオロ酢酸塩(実施例15D)(34mg、0.07mmol)およびK2CO3(20mg、0.14mmol)に、2−ヨードプロパン(17μl、0.15mmol)を添加した。混合物を、80℃でほぼ48時間撹拌し、その後は混合物が濃縮されていた。残渣をフラッシュクロマトグラフィーにより精製し[SiO2、勾配溶離:DCM:MeOH(98:2)〜DCM:MeOH:濃縮NH3水溶液(90:10:1)]、N−[3−(5,6−ジメトキシ−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−rac−4 イソプロピル−2−モルホリン カルボキサミドを無色のガム質として得た(LC/MS(塩基性法)Rt2.52min、[M+H]+415。
(実施例17)
N−[3−(5,6−ジメトキシ−H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−rac−1−メチル−ピペリジン 3−カルボキサミドの合成
DMF(1ml)中の3−(5,6−ジメトキシ−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イルアミン(65mg、0.25mmol)(実施例15B)と(rac)−1−メチル−ピペリジン−3−カルボン酸−塩酸塩(50mg、0.27mmol)とジイソプロピルエチルアミン(50μl、0.27mmol)との溶液にTBTU(97mg、0.30mmol)を添加した。この混合物を室温でほぼ17時間撹拌し、その後1NNaOH水溶液(1ml)を添加し、もう1時間混合物を撹拌した。混合物はその後真空内で蒸発乾固され、残渣をフラッシュクロマトグラフィーにより精製して(SiO2、勾配溶離:DCM:MeOH(98:2)〜DCM:MeOH:濃縮NH3水溶液(70:30:3)の勾配溶離)、をN−[3−(5,6−ジメトキシ−H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−rac−1−メチル−ピペリジン 3−カルボキサミド(20mg)を無色のガム質として得た(LC/MS(塩基性法)Rt2.35min、(M+H)+385)。
(実施例18)
3−クロロ−N−(5,6−ジメトキシ−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル−5−(4−メチル−ピペリジン−1−イル)−ベンズアミドの合成
18A 3−クロロ−5−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−ベンゾニトリルの合成
5−フルオロ−3−クロロ−ベンゾニトリル(1g、6.4mmol)をDMSO(20ml)に溶解し、その後K2CO3(1.3g、9.6mmol)および1−メチルピペラジン(1.4ml、12.8mmol)を添加した。反応混合物を80℃で20時間加熱した。ジエチルエーテルを粗生成物(10ml)に添加し、1N HClで酸性化した。沈澱物を粗反応混合物から濾別し、3−クロロ−5−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−ベンゾニトリル(1.4g、収率93%)を白色固形物として得た(LC/MS:Rt1.83[M+H]+236、酸性法)。
18B 3−クロロ−5−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−安息香酸の合成
エタノール(10ml)に溶解した3−クロロ−5−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−ベンゾニトリル(1.4g、5.9mmol)に2M NaOH(20ml)を添加し、反応混合物を還流下20時間加熱した。混合物を真空内で減量し、粗生成物をpH6まで1N HClで酸性化し、EtOAcとH2Oで分液した。有機層を真空内で蒸発乾固し、0.7gの表題化合物を白色固形物として得た(LC/MS:Rt1.67[M+H]+256、酸性法)。
18C [3−クロロ−N−[3−(5,6−ジメトキシ−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル―5−(4−メチル−ピペリジン−1−イル)−ベンズアミドの合成
化合物は、実施例15Cと類似の方法で製造したが、15Cにおける試薬としての(rac)−BOC−2−カルボキシモルホリンの代わりに3−クロロ−5−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−安息香酸(200mg、0.78mmol)を使用した。粗生成物をフラッシュカラムクロマトグラフィー[SiO2、DMAW240−90で溶出)により精製し、92mg(収率25%)の表題化合物を薄茶色の固形物として得た(LC/MS:Rt2.07[M+H]+496、酸性法)。
(実施例19−21)
実施例15に記載の方法に従い、下表に示されている点を変更して、実施例19〜21の化合物を調製した。
(実施例22)
5−クロロ−2−メトキシ−N−{3−[5(4−メチルピペラジン−1−イルメチル)−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル]−1H−ピラゾール−4−イル}−ベンズアミドの合成
22A (3、4−ジニトロフェニル)−(4−メチルピペラジン−1−イル)−メタノンの合成
3,4−ジニトロ安息香酸(50g、0.24mol)をSOCl2(160ml)中還流下で6時間加熱した。この混合物をその後真空内で蒸発乾固した。生成物をTHFに溶解し5℃まで冷却した。この溶液に、N−メチルピペラジン(26.2ml、0.24mol)とEt3N(42ml)とをTHF(50ml)溶液として滴下した。一晩室温で撹拌した後、溶液を水(1.5L)に注ぎ、0.5時間ほぼ5℃で撹拌した。生成した固体沈澱物を採取、乾燥して、(3、4−ジニトロフェニル)−(4−メチルピペラジン−1−イル)−メタノン(40g)を黄色の固体として得た。
22B 1−(3、4−ジアミノベンジル)−4−メチルピペラジンの合成
(3、4−ジニトロフェニル)−(4−メチルピペラジン−1−イル)−メタノン(12.2g、0.041mol)の冷却されたTHF溶液(5℃)に、温度を5℃未満に維持しながら、粉末NaBH4を添加し、次に、BF3・OEt2した滴下した。この混合物を2時間かけて室温にし、さらに2時間室温で撹拌した。MeOHをその後慎重に混合物に添加し(沸騰を招くので)、撹拌を10分間継続しその後混合物を濃縮した。残渣をEtOAcと飽和NaHCO3水溶液で分液した。有機層を水および塩水で洗浄し、その後乾燥(MgSO4)した。溶液を真空内で蒸発させ、残渣をフラッシュクロマトグラフィー[SiO2、勾配溶離:DCM:MeOH(98:2)〜DCM:MeOH:濃縮NH3水溶液(90:10:1)]により精製して、オレンジ色の結晶性固形物(3.7g)を得た。MeOHからの再結晶で1−(3、4−ジニトロベンジル)−4−メチルピペラジン(1g)をオレンジ色の結晶性固形物として得た。
22C 1−(3、4−ジアミノベンジル)−4−メチルピペラジンの合成
1−(3、4−ジニトロベンジル)−4−メチルピペラジン(1g)をDMF:MeOH(1:1、20ml)に溶解し、10%Pd/C(50mg)と共に水素雰囲気下で6時間撹拌した。この混合物をその後濾過そして蒸発し、暗色の固形物を得た。この固体をさらなる精製をせずに直ちに使用した。
22D 5−クロロ−2−メトキシ−N−{3−[5(4−メチル−ピペラジン−1−イルメチル)−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル]−1H−ピラゾール−4−イル}−ベンズアミドの合成
4−(5−クロロ−2−メトキシベンゾイルアミノ)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1.17g)、粗ジアミン、1−(3,4−ジアミノベンジル)−4−メチルピペラジン(0.87g)およびTBTU(1.52g)をDMF(15ml)に溶解し、ほぼ16時間撹拌した。この混合物をその後蒸発乾固し、暗色の固形物を得た。この暗色の固形物(100mg)をAcOH(4ml)に溶解し、混合物を80℃で3時間加熱した。反応混合物を真空蒸発し、残渣をフラッシュクロマトグラフィー(SiO2、DMAW120で溶出)で精製した。5−クロロ−2−メトキシ−N−{3−[5(4−メチル−ピペラジン−1−イルメチル)−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル]−1H−ピラゾール−4−イル}−ベンズアミドを二酢酸塩(35mg)として得た(LC/MS(酸性法/最終化合物):Rt6.63[M+H]+480)。
(実施例23)
1−(2,6−ジフルオロ−ベンジル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の合成
THF(2ml)中の3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イルアミン(実施例1E)(100mg、0.33mmol)とCDI(217mg、1.34mmol)との混合物に15分間マイクロ波照射(150℃、150W)した。2,6−ジフルオロ-ベンジルアミン(384mg、2.68mmol)をその後添加し、反応混合物にさらに15分間同一の条件で再び照射した。冷却後、不均質混合物をろ過し、濾液を濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィー(SiO2、DCM:MeOH:AcOH:H2O(240:20:3:2)(DMAW240〜(120:18:3:2)(DMAW120)の勾配溶出)で精製して、1−(2,6−ジフルオロ−ベンジル−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素(30mg、19%)を得た(酸性LC/MS:Rt1.84[M+H]+468)。
(実施例24〜34)
実施例23に記載の一般的方法に従い、下表に示されている点を変更して、実施例24〜34の化合物を調製した。
(実施例35)
1−[3−(5モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−3−ピリジン3−イル−尿素の合成
DCM(3ml)中の3−アミノピリジン(31.5mg、0.33mmol)とEt3N(0.195ml、1.32mmol)との混合物を0℃まで冷却し、次いでトリホスゲン(85mg、0.28mmol)で処理した。反応物を周囲温度で1時間撹拌し、その後、3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イルアミン(100mg、0.33mmol)を添加し、反応が終了するまで周囲温度で撹拌した。混合物をMeOH中で2M NaOHで30分間処理し、次いで真空内で減量した。残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(SiO2、2〜20%MeOH/DCM)で精製し、そして、DCM、続いてジエチルエーテルで粉状化して、1−[3−(5モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−3−ピリジン3−イル−尿素(20mg)を得た(塩基性LC/MS:Rt2.29[M+H]+419)。
(実施例36)
チオモルホリン−4−カルボキシル酸[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−アミドの合成
トルエン/DCM(1:1)の混合物に溶解した3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イルアミン(100mg、0.33mmol)の溶液にホスゲン(トルエン中20%)(0.3ml)を0℃で添加した。反応物を周囲温度で1時間撹拌し、次いで過剰のホスゲンを窒素気流により吹き飛ばした。チオモルホリン(35mg、0.33mmol)を添加し、反応物を周囲温度で1時間そして60℃で1時間撹拌した。混合物をその後真空濃縮し、残渣を分取LC/MSにより精製して、チオモルホリン−4−カルボキシル酸[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−アミドを得た(極性LC/MS、Rt2.58[M+H]+428)。
(実施例37)
1−(4−フルオロフェニル)−1−メチル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の合成
表題化合物を製造するために使用した方法は実施例35に関して記載した方法と同様であるが、3−アミノピリジンの代わりに4−フルオロ−N−メチルアニリンを用い、反応を50℃で2時間行なった。粗生成物を、冷却した反応混合物から沈澱物として単離し、その後フラッシュカラムクロマトグラフィー[SiO2、DCM:MeOH:AcOH:水(240:20:3:2)で溶出]により精製した。生じた生成物をジエチルエーテルを用いて粉状化して、1−(4−フルオロフェニル)−1−メチル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素(3mg)を無色の固形物として得た(酸性LC/MS:Rt2.12[M+H]+450)。
(実施例38−43)
実施例35および37に記載の方法に従い、下表に示されている点を変更して、実施例38〜43の化合物を調製した。
(実施例44)
1−(4−フルオロフェニル)−N−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の合成
THF(2ml)中の3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−イルアミン(実施例1E)(100mg、0.33mmol)に、4−フルオロフェニルイソシアネートを添加し、この混合物を約16時間室温で撹拌した。樹脂担持トリスアミン(800mg、4mmol/g)を添加し、混合物をさらに4時間撹拌した。樹脂を濾過により除去し、濾液を1N KOH(2ml、MeOH:THF;1:3)で処理し、溶液をほぼ16時間撹拌した。混合物をその後EtOAcとH2Oとで分液した。水層をEtOAcでさらに抽出し、その後合わせた有機画分を塩水で洗浄し、乾燥し(MgSO4)、蒸発乾固した。粗固形物をDCMに溶解し、ヘキサンを用いて粉状化し、濾取して固形物を得た。この固形物をフラッシュカラムクロマトグラフィー[SiO2、EtOAc−MeOH(90:10)]により精製して、1−(4−フルオロフェニル)−N−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素(30mg、20%)を黄色の固体として得た(LC/MS(酸性法):Rt2.01[M−H+]−434)。
(実施例45〜56)
実施例44に記載の方法に従い、下表に示されている点を変更して、実施例45〜56の化合物を調製した。
(実施例57〜59)
実施例23に記載の方法に従い、下表に示されている点を変更して、実施例57〜59の化合物を調製した。
(実施例60)
1−(2,6−ジフルオロフェニル)−N−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素塩酸塩の合成
60A (3,4−ジニトロ−フェニル)−モルホリン−4−イル−メタノンの合成
3,4−ジニトロ安息香酸(1mol当量)と塩化チオニル(9.2mol当量)との混合物を還流下6時間加熱し、周囲温度に冷却し、過剰の塩化チオニルをトルエンとの共沸により除去した。残渣をTHF(8vol)に溶解し、その後モルホリン(1.0mol当量)とEt3N(1.1mol当量)とを同時に上記混合物に0〜5℃で添加した。混合物を1時間周囲温度で撹拌し、水(25vol)中に注いだ。この混合物を3〜7℃まで冷却し、0.5時間放置し、その間に生成物が沈澱物として現われた。沈澱物を濾取し、水で洗浄し、乾燥して3,4−ジニトロ−フェニルモルホリン−4−イル−メタノン(75%)を黄色の固体として得た。(1H NMR(300MHz、DMSO−d6)δ8.3(d、1H)、8.3(s、1H)、8.0(d、1H)、3.7−3.5(m、8H)。
60B 4−(3,4−ジニトロ−ベンジル)−モルホリンの合成
(3、4−ジニトロ−フェニル)モルホリン−4−イル−メタノン(1mol当量)の非水テトラヒドロフラン(THF)(25vol)混合物に0〜5℃で、NaBH4(2mol当量)を添加し、続いてBF3・Et2O(1.01mol当量)を、温度を0〜5℃に維持するように、滴下した。この混合物をその後周囲温度で3時間撹拌し、その後メタノールを添加して急冷した。混合物をその後真空内で減量し、酢酸エチルと飽和NaHCO3水溶液で分液した。混合物を30分間急速に撹拌した後、各層を分離した。有機層を水と塩水で連続的に洗浄した後、真空内で減量した。生成物をメタノールから結晶化して、4−(3,4−ジニトロ−ベンジル)−モルホリン(85%)を得た(LC/MS(塩基性法):Rt2.80[M+H]+268)。
60C 4−モルホリン−4−イルメチル−ベンゼン−1,2−ジアミンの合成
容器を水素で充填しながら間、IMS(33vol)中の4−(3,4−ジニトロ−ベンジル)モルホリン(1mol当量)と5%Pd/C(0.05wt当量)との混合物を0〜5℃で撹拌した。この混合物を、反応が完了するまで(<24時間)、撹拌しつつ15〜20℃まで慎重に暖めた。混合物を濾過し、濾液を蒸発乾固して、4−モルホリン−4−イルメチル−ベンゼン−1,2−ジアミン(90%)を得た。この物質を次の工程で直ちに使用した。(LC/MS(塩基性法):Rt1.64、[M−N(CH2CH2)2O−]+121)
60D 5−モルホリン−4−イルメチル−2−(4−ニトロ−1H−ピラゾール−3−イル)lH−ベンズイミダゾールの合成
4−モルホリン−4−イルメチル−ベンゼン−1,2−ジアミン(1mol当量)および4−ニトロ−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1mol当量)をジメチルホルムアミド(DMF)(10vol)に溶解した。O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N´,N´−テトラメチルウロニウムテトラフルオロ硼酸塩(TBTU)(1.2mol当量)を添加し、この混合物を周囲温度で24時間撹拌した。この混合物を、溶媒がそれ以上蒸留するのが観察されなくなるまで、真空内で濃縮した。残渣をその後氷酢酸(10vol)に溶解し65℃で〜12時間加熱した。混合物を真空濃縮し、その後、水(6vol)に75℃で溶解した。その黒色の溶液を2時間0〜5℃まで冷却し、その間に固形物が生成した。その固形物を濾過により除去し、また水性の濾液を酢酸エチル(4vol)およびテトラヒドロフラン(2vol)で希釈した。固体NaHCO3を、さらなる沸騰が観察されなくなるまで、撹拌されている混合物にゆっくり添加した。pH6.8に到達した。この混合物をその後、析出が観察されるまで、撹拌した。混合物を0〜5℃で2時間放置後、固形物を濾取し、水(2vol)および酢酸エチル(2vol)で洗浄し、乾燥して、5−モルホリン−4−イルメチル−2−(4−ニトロ−1H−ピラゾール−3−イル)lH−ベンズイミダゾール(40%)を茶色の固体として得た(LC/MS(塩基性法):Rt1.93、[M−H+]−327)。
60E 3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンズイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾールーイルアミンの合成
DMF(36vol)中の5−モルホリン−4−イルメチル−2−(4−ニトロ−1H−ピラゾール−3−イル)1H−ベンゾイミダゾール(1mol当量)に窒素雰囲気下で5%Pd/C(0.1wt当量)を添加した。反応槽を水素充填し、周囲温度で24時間撹拌した。混合物をその後セライト濾過し、メタノールで洗浄した。濾液を真空濃縮して、3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンズイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾールーイルアミン(90%)を茶色の固形物として得た(LC/MS(塩基性法):Rt1.94、[M−H+]−297)。この生成物をそれ以上精製しないで使用した。
60F 1−(2,6−ジフルオロフェニル)−N−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素塩酸塩の合成
THF(10vol)中の3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−lH−ピラゾール−4−イルアミン(1mol当量)の混合物に0〜5℃で撹拌しながら2,6−ジフルオロフェニルイソシアネート(1.3mol当量)を添加した。この混合物を次に16時間周囲温度で撹拌し、その後1M KOH水溶液(4vol)で処理した。さらに2時間撹拌した後、混合物を真空濃縮し、酢酸エチルと飽和NaHCO3水溶液とで分液した。有機層を飽和塩水で洗浄し、乾燥し(MgSO4)、蒸発乾固し、次に残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー[SiO2、CH2Cl2−MeOH(98:2)〜(90:10)の勾配溶出]により精製して、1−(2,6−ジフルオロフェニル)−N−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素を得た。
60G 遊離塩基の再結晶および特性決定
実施例60Eに記載されたようなシリカクロマトグラフィーの後、生成物を最小量の高温の酢酸エチルに溶解し、濾過そして冷却した。遊離塩基はこのようにして微結晶固形物として得られた。
化合物1−(2,6−ジフルオロフェニル)−N−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素は以下の物理化学パラメーターを有する。
pKa値−3.42、6.92&10.97
logP−3.24
logPion−0.36
logD(pH=6)2.27
(pH=6.5)2.68
(pH=7.4)3.11
60H 塩酸塩の形成
生成物を酢酸エチルに溶解し、ジエチルエーテル中で過剰の飽和HClで処理した。得られた沈澱物を、濾取し、ジエチルエーテルで洗浄し、乾燥して、1−(2,6−ジフルオロフェニル)−N−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素塩酸塩(59%)を無色の固形物として得た(LC/MS(酸性法):Rt1.08、[M+H+]+454)。
塩化水素を他の酸(例えば、DL−乳酸、エタンスルホン酸およびメタンスルホン酸)と代え、必要に応じて溶媒の組成を変更することによって、1−(2,6−ジフルオロフェニル)−N−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の他の塩を製造することができる。
60J 遊離塩基と塩酸塩の溶解度の比較
前記遊離塩基と塩酸塩の溶解度を測定し比較した。pH7.4での遊離塩基の溶解度(緩衝水溶液)は<0.001mg/mlであることが分かり、一方pH7.1での塩酸塩の溶解度(緩衝水溶液での)は0.093mg/mlであることが分かった。したがって、塩酸塩は遊離塩基に対して溶解度の点で有意な利点を有する。
(実施例61)
1−(2,6−ジフルオロフェニル)−N−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の酸付加塩の溶解度の測定
得られる酸付加塩の溶解度を評価するために、遊離塩基形態の1−(2,6−ジフルオロフェニル)−N−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素を以下に示された手順により様々な酸と組み合わせた。
手順
遊離塩基(59mg、0.13mmol)と水(0.59ml)とを8mlバイアルに添加した。適当な酸(1当量、0.13mmol)を前記バイアルに添加し、バイアルを周囲温度で16時間振とうした。この後、バイアルを目視により観察した。均質の溶液が観察された場合、実験を終了し、このようにした形成された塩は100mg/mlより大きい溶解度を有すると結論付けた。
固形物が残った場合、さらに0.59mlの水を添加し、バイアルを4時間振とうした。この段階で均質の溶液が形成された場合、塩は50mg/mlより大きい溶解度を有すると結論付けた。
この時点で固形物が残った場合、さらに1.18mlの水を添加し、バイアルを周囲温度で振とうした。これで均質の溶液になった場合、溶解度は25mg/mlより大きいと結論付けた。なおも固形物が残った場合、塩の溶解度は25mg/ml未満であると結論付けた。
塩溶液をストラタ(Strata)−NH2カラムに通して遊離塩基を再生成した。
表中に示された結果に基づくと、メシル酸塩、エタンスルホン酸塩およびDL−乳酸塩は、例えば非経口投与用の、水性液状組成物の製造に特に有用であると証明されたと結論付けることができる。
(実施例62)
1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の遊離塩基および塩
実施例24の化合物、1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素は、下記の方法もしくはそれに類似の方法により遊離塩基もしくは酸付加塩の形態で単離することができる。
遊離塩基
シリカクロマトグラフィー(実施例24参照)に続いて、実施例24の生成物を最小量の高温のMeOHに溶解し、濾過、そして冷却した。〜16時間後、生成物を無色の結晶性固形物として採取した。
塩酸塩(一般的手順)
シリカクロマトグラフィーに続いて、生成物(2.05g)をMeOH:EtOAc(1:10、100ml)に溶解し、ジオキサン(1.1mol当量)中で4N HClで処理した。生じた沈澱物を濾取し乾燥して、1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素塩酸塩(1.5g)を得た。生成物を最小量のMeOHに溶解し、その後、曇りが数秒間持続するまでEt2Oで粉状化した。一晩冷却した後、生成物は無色の結晶性固形物として採取された。
メシル酸塩
塩酸に代えてメタンスルホン酸を使用して、上述の一般的手順を用いて生成物を無色の結晶性固形物として採取した。
他の塩
他の所期の塩は、上述の一般的手順を用いて製造できると予想される。
(実施例63)
1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の遊離塩基および塩の溶解度の測定
得られる酸付加塩の溶解度を評価するために、実施例24の化合物、すなわち1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素を以下に示された手順により様々な酸と組み合わせた。
手順
実施例24の化合物の遊離塩基(50mg、0.131mmol)と水(0.5ml)とを8mlバイアルに添加した。適当な酸(1当量、0.131mmol)を前記バイアルに添加し、バイアルを周囲温度で14〜16時間振とうした。この後、バイアルを目視により観察した。均質の溶液が観察された場合、実験を終了し、このようにした形成された塩は100mg/mlより大きい溶解度を有すると結論付けた。
固形物が残った場合、さらに0.50mlの水を添加し、バイアルを6時間振とうした。この段階で均質の溶液が形成された場合、塩は50mg/mlより大きい溶解度を有すると結論付けた。
この時点で固形物が残った場合、さらに1mlの水を添加し、バイアルを周囲温度で振とうした。これで均質の溶液になった場合、溶解度は25mg/mlより大きいと結論付けた。なおも固形物が残った場合、塩の溶解度は25mg/ml未満であると結論付けた。
塩溶液をストラタ(Strata)−NH2カラムに通して遊離塩基を再生成した。
表中に示された結果に基づくと、酢酸塩、メシル酸塩、エタンスルホン酸塩、DL−乳酸塩、アジピン酸塩、D−グルクロン酸塩、D−グルコン酸塩および塩酸塩は、例えば非経口投与用の、水性液状組成物の製造に特に有用であると証明されたと結論付けることができる。
現在までに集められたデータから、本発明の化合物、特に1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の遊離塩基および塩(特に、L−乳酸塩)は従来の化合物に対して多くの利点を有することが明らかである。特に、そのような利点とは下記の1またはそれ以上を含む:
向上した水溶液に対する溶解度;
よりよい物理化学的特性、特により低いlogD;
P450酵素に対する感受性の差;
向上した薬物代謝および薬物速度論的特性;
向上した安定性、例えば、向上したシェルフライフおよび/または向上した熱安定性;
低減した必要用量;
治療標的、特にオーロラAおよびB、に対する向上した効能;
増殖アッセイおよびクローンアッセイにおける向上した細胞活性;
向上した抗癌活性;および
向上した治療指数。
特に、前記化合物のL−乳酸塩形態は高温で良好な安定性、酸性緩衝系で十分な水溶解度を有し、そして明白な多形体または水和物形成のない非吸湿性であった。
(実施例64)
1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素乳酸塩の調製
EtOAc−MeOH中の1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素(0.7g、1.83mmol)溶液に、L−乳酸(166mg、1.85mmol)を添加した。この混合物を周囲温度で撹拌し、その後真空内で減量した。この固形物を沸騰しているEtOH(20mL)から再結晶により精製し、乾燥後に、1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素L−乳酸塩(0.48g)を得た。
(実施例65)
1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素のL−乳酸塩の合成
1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素のL−乳酸塩は下記スキームに示される合成経路により調製されてもよい。
ステージ1:(3,4−ジニトロ−フェニル)−モルホリン−4−イル−メタノンの合成
THF(100mL)中の3,4−ジニトロ安息香酸(10g、47mmol、1当量)とDMF(0.1mL)との溶液を、塩化チオニル(4.5mL、62mmol、1.3当量)で処理し、還流のため2.5時間加熱した。この混合物を氷中で冷却し、その後トリエチルアミン(10mL、71mmol、1.1当量)を、内部温度を<5℃に維持し、20分間添加した。得られた粘性の黄色い懸濁液にモルホリン(6.2mL、71mmol、1.5当量)を、内部温度を<10℃に維持し、15分間添加した。氷浴を除去し、混合物を還流温度まで暖めた。15分後、さらなる分量のモルホリン(1mL、11mmol、0.24当量)を添加し、混合物を一晩撹拌した。混合物を水(250mL)で希釈し、氷中で冷却した。ベージュ色の固形物を吸引濾過し、さらなる分量の冷水(25mL)で洗浄し、真空乾燥して、表題化合物(12.7g、96%)を得た。
ステージ2:4−(3,4−ジニトロ−ベンジル)−モルホリンの合成
水素化ホウ素ナトリウム(3.36g、89mmol、2.1当量)を粉砕し、窒素置換したフラスコに入れ、THF(120mL)中に懸濁した。〜0℃に冷却後、三弗化硼素エーテラート(11.3mL、89mmol、2.1当量)を注射器を通して添加した。この反応はやや発熱性であり、ある程度の水素放出が認められた。4−(3,4−ジニトロベンゾイル)モルホリン(11.91g、42mmol、1.0当量)をひとかたまりの分量で固形物として添加し、追加の分量のTHF(20mL)で容器をすすいだ。氷浴を除去し、懸濁液を還流温度で3時間撹拌して、再び氷中で冷却した。メタノール(100mL)を慎重(水素放出)に添加し、その後混合物を1時間還流した。この混合物を真空濃縮し、次に残渣を酢酸エチル(100mL)と1:1飽和重炭酸ナトリウム溶液/水(100mL)とで分液した。有機相を分離し、水(50mL)および塩水(100mL)で洗浄し、乾燥した(MgSO4)。先の重炭酸塩洗浄液に酢酸エチル(50mL)で2度目の抽出をし、この抽出物を次に1度目の抽出に使用したものと同じ水性の洗浄剤で洗浄し、乾燥(MgSO4)、濃縮して、10.97gの粗製品を得た。メタノール(45mL、10mL洗浄)からの再結晶で表題化合物(9.34g、83%)を得た。
ステージ3:4−モルホリン−4−イルメチル−ベンゼン−1.2−ジアミンの合成
4−(3,4−ジニトロ−ベンジル)モルホリン(21g、101mmol)をエタノール(0.9L)に懸濁し、容器を窒素パージした。10%パラジウム炭素(1.05g)をエタノール(25mL)に懸濁し、基質に添加した。この混合物をその後氷中で冷却し、雰囲気を水素置換した。混合物を15〜20℃まで暖め、また、水素添加を雰囲気圧2日間で継続した。容器を窒素パージし、その後、混合物をセライト濾過し、複数の分量に分けたエタノール(0.3L)ですすいだ。濃縮により表題化合物(15.8g、97%)を得た。
ステージ4:4−ニトロ−1H−ピラゾール−3−カルボン酸メチルエステルの合成
デジタル温度計と撹拌機を装備した2OL反応容器に、4−ニトロ−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1.117Kg、7.11mol、1wt)およびメタノール(8.950L、8vol)を仕込んだ。この反応混合物を窒素下で撹拌し、0〜50℃まで冷却し、塩化チオニル(0.581L、8.0mol、0.52vol)を180分間添加し、得られた混合物を18〜22℃まで暖め、その温度で一晩撹拌し、その後、1H NMR分析(d6−DMSO)は反応完了を示した。反応混合物を減圧下40〜45℃で濃縮し、残渣をトルエンで処理し、減圧下40〜45℃で再濃縮(3×2.250L、3×2vol)して4−ニトロ−1H−ピラゾール−3−カルボン酸メチルエステルをオフホワイト色の固形物として得た(1.210Kg、99.5%th)。
ステージ5:4−アミノ−1H−ピラゾール−3−カルボン酸メチルエステルの合成
デジタル温度計と撹拌機を装備した20L反応容器に、窒素下でパラジウム炭素(10%ウェットペースト、0.170Kg、0.14wt)を仕込んだ。別の容器で、エタノール(12.10L、10vol)中の4−ニトロ−1H−ピラゾール−3−カルボン酸メチルエステル(1.210Kg、7.07mol、1wt)のスラリーを30〜35℃まで暖め溶解し、この溶液を窒素下で触媒添加した。窒素-水素パージシーケンスに続いて、水素雰囲気を導入し、1H NMR分析(d6−DMSO)により反応完了(5〜10時間)が認められるまで反応混合物を28〜30℃に維持した。パージサイクルに続いて、窒素下の反応混合物を濾過し、また、濾液を減圧下で濃縮して、4−アミノ−1H−ピラゾール−3−カルボン酸メチルエステル(0.987Kg、98.9%th)を得た。
ステージ6:4−tert−ブトキシカルボニルアミノ−1H−ピラゾール−3−カルボン酸の合成
ジオキサン(500mL)中の4−アミノ−1H−ピラゾール−3−カルボン酸メチルエステル(50.0g、355mmol)の混合物に2M NaOH水溶液(213mL(426mmol)を添加し、この混合物を50℃まで加熱し、5時間撹拌した。この混合物に、ジオキサン洗浄(100mL)を用いて(BOC)2O(81.4g、373mmol)を添加し、また、この混合物を50℃でさらに5時間加熱し、その後周囲条件で14時間撹拌した。ジオキサンを真空除去し、水(1L)を添加した。混合物は濃縮HCl水溶液を使用してpH〜2にし、生成した固形物を濾取し、フィルター上で乾燥した。その固形物をさらに真空オーブン中でトルエンとの共沸(×3)によって乾燥して、4−tert−ブトキシカルボニルアミノ−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(70.0g、87%)をバイオレット色の固形物として得た。
ステージ7:[3−(2−アミノ−4−モルホリン−4−イルメチル−フェニルカルバモイル)−1H−ピラゾール−4−イル]−カルバミン酸tert−ブチルエステルの合成
DMF(150mL)中の、4−tert−ブトキシカルボニルアミノ−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(10.0g、44.1mmol)と、4−モルホリン−4−イルメチル−ベンゼン−l,2ジアミン(10.0g、48.5mmol)と、EDC(10.14g、52.9mmol)と、HOBt(7.15g、52.9mmol)との混合物を、周囲温度で20時間撹拌し、溶媒の大部分を真空除去した。残渣をEtOAc(150mL)と飽和NaHCO3水溶液(150mL)とで分液し、各層を分離し、有機画分を塩水で洗浄、MgSO4で乾燥、真空減量して、[3−(2−アミノ−4−モルホリン−4−イルメチル−フェニルカルバモイル)−1H−ピラゾール−4−イル]−カルバミン酸tert−ブチルエステル(17.6g、96%)を茶色の固形物として得た。LC/MS分析は、生成物がジアミドを〜15%まで含んでいることを示す。これは1H NMRの中でおよそ5%程度のレベルとして示される。ジアミドは次のステップで開裂される。
ステージ8:3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イルアミンの合成
[3−(2−アミノ−4−モルホリン−4−イルメチル−フェニルカルバモイル)−1H−ピラゾール−4−イル]−カルバミン酸tert−ブチルエステル(12.0g、28.8mmol)と2M HCl水溶液(50mL)との混合物を85℃で14時間加熱し、その後、周囲温度に冷却した。混合物がpH〜8.5になるまで固形Na2CO3を慎重に添加し溶液を飽和した。暗色の粘着性の液体が形成された。この混合物を静置し、溶媒をデカントした。残りの残渣に、EtOH(60mL)を添加し、この混合物を還流下で1時間加熱し、熱時濾過し、EtOH(2×20mL)で洗浄して、無機の残渣を除去した。濾液を真空減量し、ガラス状固形物を得、これをその後Et2O(60mL)中で1時間撹拌し、生成した紫色の粉末を濾取し、真空乾燥して3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イルアミン(6.8g、80%、〜90%純度)を得た。
ステージ9:7−モルホリン−4−イルメチル−2,4−ジヒドロ−l,2,4,5a,10−ペンタアザ−シクロペンタ[a]フルオレン−5−オンの合成
無水THF(50mL)中の3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イルアミン(3.2g、10.7mmol)の混合物に周囲温度で撹拌下、1,1´−カルボニルジイミダゾール(1.78g、11mmol)を添加した。混合物を、還流下14時間加熱し、その後周囲温度まで冷却した。形成された固形物を濾取し、THF(20mL)で洗浄し、真空乾燥して7−モルホリン−4−イルメチル−2,4−ジヒドロ−l,2,4,5a,10−ペンタアザ−シクロペンタ[a]フルオレン−5−オン(2.34g、67%)をピンク色の固形物として得た。
ステージ10:1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の合成
NMP(65mL)中の、7−モルホリン−4−イルメチル−2,4−ジヒドロ−l,2,4,5a,10−ペンタアザ−シクロペンタ[a]フルオレン−5−オン(10.7g、32.9mmol)の混合物にシクロプロピルアミン(6.9mL、99mmol)を添加した。この混合物を100℃で5時間加熱した。LC/MS分析は〜75%までの生成物への変換を示した、よって更なる分量のシクロプロピルアミン(2.3mL、33mmol)を添加し、混合物を100℃で4時間加熱し、その後周囲温度まで冷却した。混合物を水(100mL)で希釈しEtOAc(100mL)で抽出した。有機画分を飽和NH4Cl(2×50mL)水溶液および塩水(50mL)で洗浄し、その後水性画分をEtOAc(3×100mL)で再抽出した。合わせた有機画分をMgSO4で乾燥し、真空減量して、1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素(9.10g)をオレンジ色のガラス状固形物として得た。
ステージ11:1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素L−乳酸塩の合成
EtOAc−iPrOH(1:1、90mL)中の1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素(9.10g、24mmol)の溶液にL−乳酸(2.25g、25mmol)を添加した。この混合物を周囲温度24時間撹拌し、その後真空内で減量した。残渣をトルエン(100mL)およびEt2O(100mL)を使用して連続スラリー(consecutive slurries)にし、生成する固形物を採取し乾燥した(8.04g)。
この固形物を沸騰するiPrOH(200mL)から再結晶によりを精製し、乾燥後、1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素L−乳酸塩(5.7g)をベージュ色の固形物として得た。
(実施例66A)
ステージ1:(3,4−ジニトロフェニル)−モルホリン−4−イル−メタノンの製造
3,4−ジニトロ安息香酸(1.000Kg、4.71mol、1.0wt)、テトラヒドロフラン(10.00L、10.0vol)およびジメチルホルムアミド(0.010L、0.01vol)を、窒素下でフラスコに仕込んだ。塩化チオニル(0.450L、6.16mol、0.45vol)を20〜30℃で添加し、反応混合物を65〜70℃まで加熱した。1H NMR分析(d6−DMSO)により反応が完了したことを判定した、典型的には3時間であった。反応混合物を0〜5℃に冷却しトリエチルアミン(1.25L、8.97mol、1.25vol)を0〜10℃で添加した。モルホリン(0.62L、7.07mol、0.62vol)を0〜10℃で反応混合物に仕込み、そのスラリーを30分間0〜10℃で撹拌した。1H NMR分析(d6−DMSO)により反応が完了したことを判定した。反応混合物を15〜20℃まで暖め、水(4.00L、4.0vol)を添加した。この混合物を次に、生成物を沈殿させるために、15〜25℃で水(21.00L、21.0vol)を含む40Lフランジフラスコに仕込んだ。フラスコの内容物を0〜5℃に冷却し0〜5℃で1時間熟成し、固形物を濾取した。濾過ケーキを水(4×5.00Lおよび4×5.0vol)で洗浄し、最終洗浄液のpHはpH7であるとわかった。ウェットなフィルターケーキを、トリエチルアミン塩酸塩の存在をみるため、1H NMRにより分析した。濾過ケーキを、KFによる含水率が<0.2%w/wまで、真空下で40〜45℃で乾燥して、(3,4−ジニトロフェニル)−モルホリン−4−イル−メタノン(1.286Kg、97.0%、KF0.069%w/w)を黄色の固形物として得た。
ステージ2:4−(3,4−ジニトロ−ベンジル)−モルホリンの製造
(3,4−ジニトロフェニル)−モルホリン−4−イル−メタノン(0.750Kg、2.67mol、1.0wt)およびテトラヒドロフラン(7.50L、10.0vol)を窒素下でフラスコに仕込み、0〜5℃まで冷却した。三弗化硼素エーテラート(0.713L、5.63mol、0.95vol)を0〜5℃で添加し、その懸濁液をこの温度で15〜30分間撹拌した。水素化硼素ナトリウム(0.212Kg、5.60mol、0.282wt)を等しい分量で6つに分けて90〜120分間に亘り添加した(最初の分量を添加した10〜15分後に遅延発熱が認められた)。一旦これが始まり反応混合物が再度冷却されてから、他の分量を、混合物が添加と添加の間で冷却されるように、10〜15分の間隔で添加した。反応混合物を0〜5℃で30分間撹拌した。反応の完了を1H NMR分析(d6−DMSO)で判定した。メタノール(6.30L、8.4vol)を0〜10℃で滴下し反応混合物を急冷した(急速なガス発生、ある程度の発泡)。急冷した反応混合物を、0〜10℃で25〜35分間撹拌し、その後、ガス発生が遅くなるまで20〜30℃に暖め20〜30℃で撹拌した(発熱、固形物の溶解時ガス/エーテル発生)。その混合物を1時間65〜70℃に熱し65〜70℃で撹拌した。混合物を30〜40℃に冷却し、真空下40〜45℃で濃縮して、4−(3,4−ジニトロ−ベンジル)−モルホリンの粗生成物(0.702Kg、98.4%)を黄色/オレンジ色の固形物として得た。
4−(3,4−ジニトロ−ベンジル)−モルホリン(2.815kg、10.53mol、1.0wt)とメタノール(12.00L、4.3vol)とを窒素下でフラスコに仕込み、65〜70℃まで加熱した。前記温度を完全溶解まで維持した。混合物をその後には0〜5℃に冷却し、0〜5℃で1時間熟成した。固形物を濾過により単離した。濾過ケーキをメタノール(2×1.50L、2×0.5vol)で洗浄し、真空下35〜45℃で乾燥して、4−(3,4−ジニトロ−ベンジル)−モルホリン(2.353Kg、ステージ2の投入量に基づいて83.5%、ステージ1の物質の全投入量に基づいた総収率82.5%)を黄色の固形物として得た。
ステージ3:4−モルホリン−4−イルメチル−ベンゼン−1.2−ジアミンの製造
4−(3,4−ジニトロ−ベンジル)−モルホリン(0.800Kg、2.99mol、1.0wt)とエタノール(11.20L、14.0vol)とを適切なフラスコに仕込み、15〜25℃で撹拌し、真空/窒素パージサイクルを3回実施した。10%パラジウム炭素(10%Pd/C、50%ウェットペースト、0.040Kg、0.05wt含水重量)をエタノール(0.80L、1.0vol)中でスラリーにし、反応物に添加した。この混合物を10〜20℃まで冷却し真空/窒素パージサイクルを3回実施した。真空/水素パージサイクルを3回実施し、反応物を水素雰囲気下10〜20℃で撹拌した。反応完了を1H NMR分析(d6−DMSO)により判定した、典型的には14〜20時間であった。真空/窒素パージサイクルを3回実施し、反応混合物を窒素下でグラスマイクロファイバーペーパーで濾過した。濾過ケーキをエタノール(3×0.80L、3×l.0vol)で洗浄し、合わせた濾液と洗浄液を真空下35〜45℃で濃縮乾固して、4−モルホリン−4−イルメチル−ベンゼン−1.2−ジアミン(0.611Kg、98.6%)を茶色の固形物として得た。
ステージ4:4−ニトロ−1H−ピラゾール−3−カルボン酸メチルエステルの製造
4−ニトロ−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1.00kg、6.37mol、l.0wt)およびメタノール(8.00L、8.0vol)を機械式撹拌機、コンデンサーおよび温度計を装備したフランジフラスコに仕込んだ。その懸濁液を窒素下で0〜5℃まで冷却し、塩化チオニル(0.52L、7.12mol、0.52vol)をこの温度で添加した。この混合物を15〜25℃に16〜24時間暖めた。反応完了を1H NMR分析(d6−DMSO)により判定した。混合物を真空下35〜45℃で濃縮した。トルエン(2.00L、2.0vol)を残渣に仕込み、真空下35〜45℃で除去した。トルエン(2.00L、2.0vol)を使用して共沸を2度繰り返して、4−ニトロ−1H−ピラゾール−3−カルボン酸メチルエステル(1.071Kg、98.3%)をオフホワイト色の白色の固形物として得た。
ステージ5:4−アミノ−1H−ピラゾール−3−カルボン酸メチルエステルの製造
4−ニトロ−1H−ピラゾール−3−カルボン酸メチルエステル(1.084Kg、6.33mol、1.0wt)とエタノール(10.84L、10.0vol)との懸濁液を30〜35℃に加熱し、完全溶解が起こるまで、30〜35℃で維持した。10%パラジウム炭素(10%Pd/Cウェットペースト、0.152Kg、0.14wt)を窒素下で別のフラスコに仕込み、真空/窒素パージサイクルを3回実施した。エタノールに溶解した4−ニトロ−1H−ピラゾール−3−カルボン酸メチルエステルの溶液を前記触媒に仕込み、真空/窒素パージサイクルを3回実施した。真空/水素パージサイクルを3回実施し、反応物を水素雰囲気下に置いた。1H NMR分析(d6−DMSO)により完全に反応したと見なされるまで、反応混合物を28〜30℃で撹拌した。混合物を窒素下で濾過し、真空下35〜45℃で濃縮して、4−アミノ−1H−ピラゾール−3−カルボン酸メチルエステル(0.883Kg、98.9%)を紫色の固形物として得た。
ステージ6:4−tert−ブトキシカルボニルアミノ−1H−ピラゾール−3−カルボン酸の製造
4−アミノ−1H−ピラゾール−3−カルボン酸メチルエステル(1.024Kg、7.16mol、l.0wt)とジオキサン(10.24L、10.0vol)とを機械式撹拌機、コンデンサーおよび温度計を装備したフランジフラスコに仕込んだ。2M水酸化ナトリウム水溶液(4.36L、8.72mol、4.26vol)を15〜25℃で仕込み、この混合物を45〜55℃まで加熱した。1H NMR分析(d6−DMSO)により判定して、反応完了まで温度を45〜55℃に維持した。ジ−tert−ブチルジカルボン酸塩(Boc無水物、1.667Kg、7.64mol、1.628wt)を45〜55℃で添加し、混合物を55〜65分間撹拌した。1H NMR分析(d6−DMSO)は9%未反応中間体の存在を示した。追加のジ−tert−ブチルジカルボン酸塩(Boc無水物、0.141Kg、0.64mol、0.14wt)を55℃で添加し、混合物を55〜65分間撹拌した。反応完了は1H NMR分析(d6−DMSO)により判定した。ジオキサンを真空下35〜45℃で除去し、水(17.60L、20.0vol)を残渣に添加した。pHを2M塩酸水溶液(4.30L、4.20vol)でpH2までに調整し、この混合物を濾過した。濾過ケーキを20〜30分間水(10.00L、9.7vol)でスラリーにし、混合物を濾過した。濾過ケーキをヘプタン(4.10L、4.0vol)で洗浄し、パッド上で16〜20時間乾燥した。固形物をトルエン(5×4.00Lおよび5×4.6vol)で共沸し、その後真空下35〜45℃で乾燥して、4−tert−ブトキシカルボニルアミノ−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1.389Kg、85.4%)を紫色の固形物として得た。
ステージ7:[3−(2−アミノ−4−モルホリン−4−イルメチル−フェニルカルバモイル)−1H−ピラゾール−4−イル]−カルバミン酸tert−ブチルエステルの製造
4−tert−ブトキシカルボニルアミノ−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(0.750Kg、3.30mol、1.0wt)と4−モルホリン−4イル−メチルベンゼン−1,2−ジアミン(0.752Kg、3.63mol、1.0wt)とN,N´ジメチルホルムアミド(11.25L、15.0vol)とを機械式撹拌機および温度計を装備したフランジフラスコに窒素下で仕込んだ。1−ヒドロキシエンゾトリアゾール(HOBT、0.540Kg、3.96mol、0.72wt)を15〜25℃で添加した。N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N´−エチルカルボジイミド(EDC、0.759Kg、3.96mol、1.01wt)を15〜25℃で添加し、混合物をこの温度で16〜24時間撹拌した。反応完了は1H NMR分析により判定した。反応混合物を真空下35〜45℃で濃縮した。残渣を、酢酸エチル(7.50L、l0.0vol)と飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(8.03L、10.7vol)とで分液し、各層を分離した。有機相を塩水(3.75L、5.0vol)で洗浄し、硫酸マグネシウム(1.00Kg、1.33wt)で乾燥し、濾過した。濾過ケーキを酢酸エチル(1.50L、2.0vol)で洗浄した。合わせた濾液と洗浄液とを真空下35〜45℃で濃縮して、[3−(2−アミノ−4−モルホリン−4−イルメチル−フェニルカルバモイル)−1H−ピラゾール−4−イル]−カルバミン酸tert−ブチルエステル(1.217Kg、88.6%)を暗褐色の固形物として得た。
ステージ8:3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イルアミンの製造
[3−(2−アミノ−4−モルホリン−4−イルメチル−フェニルカルバモイル)−1H−ピラゾール−4−イル]−カルバミン酸tert−ブチルエステル(1.350Kg、3.24mol、1.0wt)とエタノール(6.75L、5.0vol)とを、機械式撹拌機、コンデンサーおよび温度計を装備したフランジフラスコに仕込んだ。濃縮塩酸水溶液(1.10L、13.2mol、0.80vol)を窒素下で15〜30℃で添加し、内容物をその後70〜80℃まで加熱し、16〜24時間この温度に維持した。2つ目の分量の塩酸(0.11L、1.32mol、0.080vol)を70〜80℃で添加し、反応物をさらに4時間加熱した。反応完了はHPLC分析により判定した。反応混合物を10〜20℃に冷却し、炭酸カリウム(1.355Kg、9.08mol、1.0wt)をこの温度で分割して仕込んだ。懸濁液をガス発生がなくなるまで撹拌し、その後濾過した。濾過ケーキをエタノール(1.35L、l.0vol)で洗浄し、濾液を保持した。濾過ケーキをエタノール(4.00L、3.0vol)で15〜25℃で20〜40分間スラリーにし、この混合物を濾過した。濾過ケーキをエタノール(1.35L、1.0vol)で洗浄し、合わせた濾液全体を真空下で35〜45℃で濃縮した。エタノール(4.00L、3.0vol)を残渣に仕込み、真空下35〜45℃で除去した。テトラヒドロフラン(5.90L、4.4vol)を残渣に添加し、10〜20分間15〜25℃で撹拌した。得られた溶液を濾過し、濾過ケーキをテトラヒドロフラン(1.35L、1.0vol)で洗浄した。また、合わせた濾液を真空下35〜45℃で濃縮した。テトラヒドロフラン(5.40L、4.0vol)を濃縮物に仕込み、真空下で35〜45℃で除去した。テトラヒドロフラン(5.40L、4.0vol)を濃縮物に仕込み、真空下で35〜45℃で除去して、所望の生成物3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イルアミン(0.924Kg、95.5%、HPLC面積で82.84%)を紫色の発砲体として得た。
ステージ9:7−モルホリン−4−イルメチル−2,4−ジヒドロ−l,2,4,5a,10−ペンタアザ−シクロペンタ[a]フルオレン−5−オンの製造
3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イルアミン(0.993Kg、3.33mol、1.0wt)とテトラヒドロフラン(14.0L、15.0vol)とを機械式撹拌機、コンデンサーおよび温度計を装備したフランジフラスコに仕込んだ。内容物を窒素下15〜25℃で撹拌し、1,1´−カルボニルジイミダゾール(0.596Kg、3.67mol、0.60wt)を添加した。内容物をその後60〜70℃まで加熱し、この温度で16〜24時間撹拌した。反応完了はTLC分析により判定した。混合物を15〜20℃まで冷却そして濾過した。濾過ケーキをテトラヒドロフラン(4.00L、4.0vol)で洗浄し、15〜30分間乾燥した。固形物を真空下35〜45℃で乾燥し、7−モルホリン−4−イルメチル−2,4−ジヒドロ−l,2,4,5a,10−ペンタアザ−シクロペンタ[a]フルオレン−5−オン(0.810Kg、75.0%th、HPLC面積で92.19%)を紫色の固形物として得た。
ステージ10:1−シクロプロピル−3−[3−(5‐モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H‐ピラゾール−4−イル]−尿素の製造
7−モルホリン−4−イルメチル−2,4−ジヒドロ−l,2,4,5a,10−ペンタアザ−シクロペンタ[a]フルオレン−5−オン(0.797Kg、2.46mol、1.0wt)と1‐メチル‐2‐ピロリジノン(2.40L、3.0vol)とを機械式撹拌機、コンデンサーおよび温度計を装備したフランジフラスコに仕込んだ。シクロプロピルアミン(0.279Kg、4.88mol、0.351wt)を窒素下15〜30℃で添加した。内容物を95〜105℃に加熱し、この温度で16〜24時間撹拌した。反応完了を1H NMR分析により決定した。反応混合液を10〜20℃に冷却し、酢酸エチル(8.00L、10.0vol)および飽和塩化ナトリウム水溶液(2.50L、3.0vol)を仕込み、この混合物を2〜5分間撹拌し、各層を分離した。有機相を飽和塩化ナトリウム水溶液(5.00L、6.0vol)と25〜35分間撹拌し、混合物を濾過し、濾過ケーキを酢酸エチル(0.40L、0.5vol)で洗浄した。濾過ケーキを保持し、濾液を分液漏斗へ移し、各層を分離した。この操作をさらに3回繰り返し、保持した固形物を有機相と合わせ、混合物を真空下35〜45℃で濃縮乾固した。濃縮物を45〜55℃でプロパン‐2‐オール(8.00L、10.0vol)に溶解し、活性炭(0.080Kg、0.1wt)を仕込んだ。混合物を45〜55℃で30〜40分間攪拌し、次いで45〜55℃で熱時濾過し、濾過ケーキをプロパン‐2‐オール(0.40L、0.5vol)で洗浄した。活性炭(0.080L、0.1wt)を合わせた濾液および洗浄液に仕込み、この混合物を45〜55℃で30〜40分間撹拌した。混合物を45〜55℃で熱時濾過し、濾過ケーキをプロパン‐2‐オール(0.40L、0.5vol)で洗浄した。濾液および洗液を真空下で35〜45℃で濃縮した。酢酸エチル(8.00L、10.0vol)および水(2.20L、3.0vol)を25〜35℃で濃縮物に仕込み、この混合物を1〜2分間撹拌した。各層を分離し、有機相を真空下35〜45℃で濃縮した。酢酸エチル(4.00L、5.0vol)を残渣に仕込み、真空下で35〜45℃で濃縮した。酢酸エチル(4.00L、5.0vol)を残渣に仕込み、混合物を2〜20時間15〜25℃で撹拌した。混合物を0〜5℃に冷却して0〜5℃で90〜120分間熟成し、その後、濾過した。濾過ケーキを酢酸エチル(0.80L、1.0vol)で洗浄し、15〜30分間乾燥した。固形物を真空下で35〜45℃で乾燥して、1−シクロプロピル−3−[3−(5‐モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H‐ピラゾール−4−イル]−尿素(0.533Kg、56.8%、HPLC面積で93.20%)を褐色の固形物としてを得た。
数バッチのステージ9の生成物をこのように処理した。各バッチにおける出発物質および生成物の量の詳細を表1Aに示す。
ステージ11:1−シクロプロピル−3−[3−(5‐モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H‐ピラゾール−4−イル]−尿素L−乳酸塩の製造
1−シクロプロピル−3−[3−(5‐モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H‐ピラゾール−4−イル]−尿素(1.859Kg、4.872mol、1.0wt)とプロパン‐2‐オール(9.00L、5.0vol)と酢酸エチル(8.00L、4.5vol)とを機械式撹拌機および温度計を装備したフランジフラスコに仕込んだ。内容物を窒素下で撹拌し、L‐乳酸(0.504Kg、5.59mol、0.269wt)を15〜25℃で添加し、次いで酢酸エチル(0.90L、0.5vol)でラインリンスした。混合物を15〜25℃で120〜140分間撹拌した。固形物を濾過により単離し、濾過ケーキを酢酸エチル(2×2.00L、2×1.0vol)で洗浄し、20〜40分間乾燥した。濾過ケーキを75〜85℃でエタノール(33.00L、17.7vol)に溶解し、65〜70℃に冷却し、溶液をグラスマイクロファイバーペーパーで清澄化した。濾液を15〜25℃に冷却して15〜25℃で2〜3時間熟成した。結晶化した固形物を濾過により単離し、濾過ケーキをエタノール(2×1.00L、2×0.5vol)で洗浄し、少なくとも30分間乾燥した。固形物を真空下で35〜45℃で乾燥して、1−シクロプロピル−3−[3−(5‐モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H‐ピラゾール−4−イル]−尿素L‐乳酸塩(1.386Kg、58.7%th、HPLC面積で99.47%)を暗いピンクの均一固形物として得た。
1H NMRデータ(400MHz、CD3OD)δ8.08(s、1H、ピラゾール−CH)、7.66(s、1H、アリール−CH)、7.60(d、J=8.0Hz、1H、アリール−CH)、7.29(d、J=8.5Hz、1H、アリール−CH)、4.15(q、J=7.0Hz、1H、乳酸塩−CH)、3.96(s、2H、ベンジル−CH2)、3.79−3.77(m、4H、モルホリノ−(CH2)2)、2.82−2.80(m、4H、モルホリノ−(CH2)2)、2.74−2.68(m、1H、シクロプロピル−CH)、1.38(d、J=7.0Hz、3H、乳酸塩−CH3)、0.98(br s、2H、シクロプロピル−CH2)、0.68(br s、2H、シクロプロピル−CH2)。
乳酸塩の赤外スペクトル(KBrディスク法)は3229、2972および1660cm−1に特徴的ピークを含んでいた。
特定の理論に拘束されるものではないが、赤外ピークは下記のような塩の構造成分に基づくものであると考えられる。
ピーク: 原因:
3229cm−1 N‐H
2972cm−1 脂肪族C‐H
1660cm−1 尿素C=O
(実施例66B)
ステージ1:1−シクロプロピル−3−[3−(5‐モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H‐ピラゾール−4−イル]−尿素の製造
7−モルホリン−4−イルメチル−2,4−ジヒドロ−1,2,4,5a,10−ペンタアザ−シクロペンタ[a]フルオレン−5−オン(1.0wt、実施例66Aで概説されるように製造)およびn−ブタノール、ブチロニトリル、グリコールまたはトルエンのような溶媒(3.0vol)を機械式撹拌機、コンデンサーおよび温度計を装備したフランジフラスコに仕込んでもよい。シクロプロピルアミン(0.351wt)を15〜30℃のような温度で不活性雰囲気(例えば窒素)下で添加してもよい。内容物を40〜105℃、特に40〜80℃、に加熱し、この温度で16〜24時間撹拌してもよい。反応完了は1H NMR分析により決定することができる。反応混合物をその後10〜20℃に冷却してもい。生成物をその後実施例66Aで上記に概説されたような有機相−水相抽出法により単離することができる、または、反応混合物に貧溶媒、例えばn−ヘプタン、を添加するような、別の単離方法を使用してもよい。この方法は反応生成物を沈殿させることができ、次に濾過で単離することができる。固形物を次に真空下で35〜45℃で乾燥して、1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素を得ることができる。このステージでは、固形物を適切な溶媒、好ましくはクラス2もしくはクラス3溶媒1、からの再結晶により精製することができる。さらに、再結晶に加えて、フラッシュカラムクロマトグラフィーあるいはシリカゲルまたは逆相シリカゲルプラグによる濾過のような別の精製方法を生成物の精製に使用してもよい。
1:クラス3およびクラス2溶媒は、QSC-Tables and List in Guidance for Industry Q3C Impurities: Residual Solvents (Nov 2003, CDER, CBER, FDA, ICH)に概説されたとおりであり、Guideline for Residual Solvents (1997, ICH)にさらに概説されたとおりである。
ステージ2:1−シクロプロピル−3−[3−(5‐モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素L−乳酸塩の製造
クラス2またはクラス3溶媒、特にエタノール水溶液(5.0−10.0vol)などのクラス3溶媒、中の1−シクロプロピル−3−[3−(5‐モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H‐ピラゾール−4−イル]−尿素(1.0wt)を機械式撹拌機および温度計を装備したフランジフラスコに仕込むことができる。内容物を窒素下で撹拌し、L‐乳酸(0.269wt)を15〜25℃で添加し、次いでエタノール水溶液(0.5vol)などの適切な溶媒でラインリンスすることができる。混合物を15〜25℃で120〜140分間撹拌できる。固形物を濾過により単離し、またはn−ブタノールなどの貧溶媒の添加を用いて溶液から塩を析出し、その後濾過により単離してもよい。濾過ケーキを適当な溶媒(2×1.0vol)で洗浄し、20〜40分間乾燥できる。濾過ケーキをその後クラス2またはクラス3の溶液、もしくはその混合物、特に40〜150℃でクラス3溶媒(〜3〜60vol)、に溶解し、40〜70℃に冷却し、溶液をグラスマイクロファイバーペーパーで清澄化できる。濾液を15〜25℃に冷却して15〜25℃で2〜3時間熟成することができる。結晶化した固形物を濾過により単離し、濾過ケーキを適切な溶媒(2×0.5〜2vol)で洗浄し、少なくとも30分間乾燥できる。固形物を真空下で35〜45℃で乾燥して、1−シクロプロピル−3−[3−(5‐モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H‐ピラゾール−4−イル]−尿素L‐乳酸塩を得ることができる。さらに、再結晶に加えて、フラッシュカラムクロマトグラフィーあるいはシリカゲルまたは逆相シリカゲルプラグによる濾過のような別の精製方法を生成物の精製に使用してもよい。
(実施例66C)
上記の実施例に加え、1−シクロプロピル−3−[3−(5‐モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H‐ピラゾール−4−イル]尿素L‐乳酸塩の製造は下記に概説された変更を加えた手順を用いて仕上げることができる。
ステージ1:1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の製造
7−モルホリン−4−イルメチル−2,4−ジヒドロ−l,2,4,5a,10−ペンタアザ−シクロペンタ[a]フルオレン−5−オン(1.0wt、実施例66Aで上記に概説されるように製造)と1−メチル−2−ピロリジノン(3.0vol)とを機械式撹拌機、コンデンサーおよび温度計を装備した適切なサイズのフランジフラスコに仕込む。シクロプロピルアミン(0.351wt)を窒素下15〜30℃で添加する。内容物をその後95〜105℃に加熱し、反応が1H NMR分析により完了していると判定されるまでこの温度で撹拌する。完了したら、反応混合物を16〜25℃に冷却し、混合物を16〜25℃で維持しながら、撹拌された約13%w/w塩化ナトリウム溶液(11.5vol)にゆっくりと(ほぼ2〜3時間)添加する。沈澱物が形成する。反応混合物の移動は16〜25℃で1−メチル−2−ピロリジノン(0.5vol)でリンスすることにより完了する。沈殿した固形物を、濾取し、水(0.5vol)で洗浄し、取り扱いに適当であると見なされるまでフィルター上で乾燥する。固形物を酢酸エチル(5.0vol)および水(6.0vol)に懸濁し、16〜25℃で60〜70分間撹拌する。固形物を濾取し、連続して酢酸エチル(1.0vol)および混合ヘプタン(2×2.0kan)で洗浄し、取り扱いに適当であると見なされるまでフィルター上で乾燥する。固形物を酢酸エチル(4.0vol)に懸濁し、15〜25℃で少なくとも60分間撹拌する。固形物を濾取し、酢酸エチル(1.0vol)で洗浄し、フィルター上で乾燥して、粗製1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2‐イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素(60〜80%w/w)を暗褐色/赤色の固形物として得る。
粗製1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2‐イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素(1.0wt)を45〜55℃でプロパン−2−オール(15vol)に溶解し、活性炭(ダルコ(DARCO)KB)(0.2wt)を仕込む。混合物を45〜55℃で60〜70分間撹拌し、その後45〜55℃で熱時濾過する。濾過ケーキをプロパノ−2−オール(2.5vol)で洗浄する。活性炭(ダルコ(DARCO)KB)(0.2wt)を合わせた濾液と洗浄液とに仕込み、混合物を45〜55℃で60〜70分間撹拌する。混合物を45〜55℃で熱時濾過し、濾過ケーキをプロパン−2−オール(2.5vol)で洗浄する。合わせた濾液と洗浄液とを真空下で35〜45℃で濃縮して、所望の生成物、1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2‐イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素、を茶色の発泡体として、65〜100%w/wの収率で得る。
ステージ2:1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2‐イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素L‐乳酸塩の製造
実施例66Cのステージ1(上記)の他の手法から生成された物質を使用して、実施例66Aのステージ11(上記)でのような造塩手順を実施して、1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2‐イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素L‐乳酸塩をオフホワイト色の固形物として得ることができる。
(実施例67)
1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2‐イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の結晶遊離塩基および結晶塩形の合成
A 1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2‐イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素遊離塩基の製造
粗製1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2‐イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素遊離塩基の試料を実施例60で概説してように製造し、まずシリカゲルカラムクロマトグラフィーによりEtOAc−MeOH(98:2〜80:20)で溶出して精製した。次いで、得られた遊離塩基の試料を高温のメタノールから再結晶化し、1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2‐イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素遊離塩基の結晶物質を得た。
B 1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2‐イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素遊離塩基二水和物の製造
粗製1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2‐イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素遊離塩基の試料をTHFに溶解し、次いで真空内で最小容量(〜4vol)に濃縮した。溶液が混濁するまで溶液に水(2〜4vol)を滴下した。少量のTHFを添加して溶液を再び清澄にし、混合物を一晩放置して結晶物質を得、これを風乾して、1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2‐イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素遊離塩基二水和物を得た。
C 1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2‐イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素塩酸塩の製造
粗製1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2‐イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素遊離塩基の試料を最小量のMeOHに溶解し、次いでEtOAcで希釈した。この溶液0℃に1.1当量のHCl(ジオキサン中4M溶液)をゆっくりと添加した。添加に続いて、固形物が溶液から析出し、これを濾取した。この固形物にMeOHを添加し、混合物を真空内で減少した。微量の残留MeOHを除去するために、残渣を水から蒸発し、その後60℃/0.1mbarで乾燥して、塩酸塩を得た。
D 1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2‐イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素エタンスルホン酸塩の製造
MeOH‐EtOAc中の1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2‐イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素遊離塩基の溶液に1当量のエタンスルホン酸を添加した。この混合物を周囲温度で撹拌し、その後真空内で減少した。残渣をMeOHに溶解し、この溶液にEt2Oを添加した。混合物を72時間放置し、形成された固形物を濾取し、乾燥して、1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2‐イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素エタンスルホン酸塩を得た。
E 1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2‐イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素メタンスルホン酸塩の製造
MeOH‐EtOAc中の1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2‐イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素遊離塩基(394mg)の溶液に1当量のメタンスルホン酸(67μL)を添加した。固形物が形成され、これを濾取し、EtOAcで洗浄した。この固形物を最小量の高温のMeOHに溶解し、冷却し、その後Et2Oで粉状化した。この固形物を72時間放置し、次いで濾取し、MeOHで洗浄して、1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2‐イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素メタンスルホン酸塩を得た。
(実施例68)
1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2‐イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素遊離塩基および塩の特性決定
様々な形態の1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2‐イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の特性決定を行った。特性決定のために選択した形態は、主に多形性および塩安定性の度合いを調査した研究から特定した。更なる特性決定に選択された塩はL‐乳酸塩、遊離塩基二水和物、エシル酸塩、遊離塩基および塩酸塩であった。
A1 示差走査熱量測定法(DSC):
サーモグラムは50ポジションオートサンプラーを装備したTAインスツルメンツ(TA Instrument)Q1000で収集した。エネルギーおよび温度の較正基準はインジウムとした。試料を10℃/minの割合で10℃から250℃に加熱した。30mL/分の窒素パージを試料に対して維持した。2〜10mgの試料を(特に断らない限り)使用し、蓋にピンホールを付したアルミニウムパンに全試料を入れた。
A2 さらなる示差走査熱量測定法(DSC):
サーモグラムは、メトラートレド(Mettler Toledo)821e示差走査熱量計で収集した。試料を10℃/分の割合で40℃から300℃に加熱した。80ml/分の窒素パージをサンプルに対して維持した。ほぼ5〜10mgの試料を使用し、適当な高圧パン(例えば、小型アルミニウムパン、中圧アルミニウムパンまたは高圧金メッキパン)に全試料を入れた。
B 熱重量分析(TGA):
サーモグラムはTAインスツルメンツ(TA Instruments)Q500で収集した。試料を10℃/分の割合で加熱した。100mL/分の窒素パージを試料に対して維持した。典型的には5〜20mgの試料を風袋計測オープンアルミニウムパンへ入れた。
C 偏光顕微鏡法
試料を、撮影用デジタルカメラを装備したライカ(Leica)LM/DM顕微鏡で観察した。少量の試料をスライドガラス上の浸漬油に載せ、カバースリップガラスで覆った。個別の粒子をできるだけ離し、λ波プレートへ接続して50〜500×倍率および一部極交差下で検査した。
D XRPD(粉末X線回折)
D5000
CuKアルファ線(40kV,40mA)、θ‐θゴニオメーター、自動発散および受光スリット、グラファイト二次モノクロメーターおよびシンチレーションカウンターを用いるシーメンス(Siemens)D5000回折計でXRPD検査を行った。0.02°2θまたは0.005°2θの工程サイズおよび1秒の工程時間を用いる連続走査モードで2°〜30°2θの角度範囲にわたりデータを収集した。
試料を周囲条件下でランし、粉砕せずに受け取ったままの粉末を用いて平板試料として調製した。ほぼ25〜50mgの試料を、研磨されたゼロバックグラウンド(510)シリコンウェーハー(ザ ジェムダグアウト(The Gem Dugout、1652 プリンストンドライブ、ペンシルベニア州立大学、ペンシルベニア州16803、米国)に切り込まれた直径12mm、深さ0.5mmのキャビティーに、静かに詰めた。全XRPD分析は、ディフラクプラスXRCコマンダー(Diffrac Plus XRD Commander)ソフトウェアv2.3.1を使用して行った。
ブルカー(Bruker)AXS C2 GADDS回折計(GVSから回収された試料に使用)
CuKアルファ線(40kV,40mA)、自動XYZステージ、自動試料ポジショニング用のレーザービデオ顕微鏡およびHiStar二次元面積検出器を用いたブルカー(Bruker)AXS C2 GADDS回折計で、試料の粉末X線回折パターンを取得した。X線光学機器は、0.3mmのピンホールコリメーターと接続された単一Gobel多層ミラーからなる。
試料におけるビーム発散、すなわちX線ビームの有効サイズは、ほぼ4mmであった。3.2〜29.8°の有効2θ角度を呈する20cmの試料対検出器距離でθ‐θ連続走査モードを用いた。試料の典型的な露光時間は120秒である。
粉砕せずに受け取ったままの粉末を用いて平板試料として試料を調製した。平らな表面を得るために、ほぼ1〜2mgの試料をスライドガラスに軽く押しつけた。
XRPDトレースをL‐乳酸塩および遊離塩基について記録した。トレースは良好なシグナル対ノイズ比を示し、結晶物質を表わしている。
E 重量蒸気収着(GVS):
全試料を、CFRSorpソフトウェアを実行するハイデン(Hiden)IGASorp水分収着アナライザーランニングでランした。試料サイズは約10〜25mgであった。水分吸着/脱着等温処理を下記に概説するように行った。試料を室内湿度および室温(約40%RH、25℃)で出し入れし、その後(ブルカー(Bruker)AXS C2 GADDSシステム使用)XRPDにより分析した。
標準等温ランは40%RHで開始させる単一サイクルであった。
湿度は下記のように変化させた。
40、50、60、70、80、90
85、75、65、55、45、35、25、15、5、0
10、20、30、40
(i)L‐乳酸塩
L‐乳酸塩のGVS等温処理では、試料が吸湿挙動を示さず、水和物を形成しないことを示している。GVS実験後における試料のXRPDトレースは投入物質のものと一致し、相変化が実験中に生じなかったことを示している。
(ii)遊離塩基
実験中、試料重量は0%RH〜95%RHでほぼ9%異なる。これは試料が性質上吸湿性であることを示している。
(実施例69)
X線回折による1−シクロプロピル−3−[3−(5‐モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素二水和物遊離塩基の測定
回折実験に用いられた結晶は無色で、寸法0.2×0.2×0.2mm3の不規則形状であった。その結晶は、液体−液体拡散実験において、THFでエシル酸塩の水溶液の沈殿により得た。このような試料と遊離塩基から製造された同様の結晶形態(エタノールなどのアルコール、メチルエチルケトンのようなケトン、THFおよびジオキサンのようなエーテル、などの一連の溶媒、と共に水を貧溶媒として使用して)との同等性は、両試料の粉末X線回折パターンの比較により確認した。結晶学的データは、リガク(Rigaku)回転陽極RU3HRからのCuKアルファ線(λ=1.5418Å)、オスミックブルー(Osmic blue)共焦点光学機器、AFC9 1/4χゴニオメーターおよびリガクジュピター(Rigaku Jupiter)CCD検出器を用いて、101(2)Kで収集した。画像は、67mmの検出器対結晶距離で、4回のωスキャン、2θ=30°で1スキャンそして2θ=90°で3スキャン、で収集した。データ収集をクリスタルクリア(CrystalClear)ソフトウェアにより調節し、画像をディートレック(Dtrek)により処理およびスケール調整した。吸収係数は中程度(μ=0.82mm−1)であったが、グルーおよび結晶ホルダー(マイクロマウント)吸収を補うために四次フーリエ吸収補正を用いてデータを補正した。結晶は結晶格子パラメーターa=7.66(10)、b=15.18(10)、c=17.71(10)Å、ベータ=98.53(2)°、アルファ=γ=90°の単斜晶系空間群P21/n(#14)に属することがわかった。括弧内の数は偏差(s.u.、標準不確かさ)を表わす。
結晶構造はSHELXS−97で行われた直接法を用いて解析した。11.5〜0.89Å(3.85<θ<60.01)の分解範囲における合計2822の特有の反射に関する強度データをSHELXS−97により274の結晶学的パラメーターの精査に用いた。最終的な統計パラメーターは、wR2=0.2416(全データ)、RF=0.0866(I>2σ(I)のデータ)および適合度S=1.145であった。
1個の遊離塩基分子および2個の水分子が非対称ユニット中で見つかった。非対称ユニットの元素組成はC19H26N7O4で、結晶の計算上の密度は1.36Mg/m3である。水素原子は幾何学的見地で捉え、一方で、へテロ原子に結合した水素原子の位置はFo‐Fc差マップの調査により確認した。水素原子の位置パラメーターおよび熱パラメーターは対応する非水素原子上にあるものとした。非水素原子の熱運動は異方性温度要因によりモデル化した(図1を参照)。
結晶構造には、1個の分子内(N22−H・・・N14 2.898Å)と7個の分子間水素結合が含まれている(図2を参照)。1−シクロプロピル−3−[3−(5‐モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2‐イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の分子は、2個のH結合:N7‐H・・・O24 2.761ÅおよびN25‐H・・・N2 3.310Åにより、により結晶学的なb軸に沿って鎖状に結合されている。2個の鎖からのベンゾイミダゾール部分は、3.5〜3.6Åの距離で重なりあっている。1−シクロプロピル−3−[3−(5‐モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2‐イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素分子のネットワークは4個の水分子に占められたポケットを形成し、2個の分子と2個の分子が対称中心により相関している。3個のH結合が1−シクロプロピル−3−[3−(5‐モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2‐イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素分子と水分子とを結合させ、1個のH結合が第1水分子(O1W1‐H・・・N16 2.845Å)に、そして残りの2個のH結合が第2の水分子(N1‐H・・・O1W2 2.875ÅおよびO1W2‐H・・・O19 2.746Å)に結合している。水分子は、別の2個のH結合:O1W1‐H・・・O1W2 2.884ÅおよびO1W2‐H・・・O1W1 2.771Åを通じて相互作用している。
X線回折調査により作成された前記構造の熱振動楕円体の画像を図1に示し、パッキング図は図2にある。
1−シクロプロピル−3−[3−(5‐モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2‐イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素遊離塩基二水和物の構造を築く原子の座標を表2に示す。括弧中の数は偏差(s.u、標準不確かさ)を表わす。
(実施例70)
1−シクロプロピル−3−[3−(5‐モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2‐イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素遊離塩基のXRPDパターンの測定
X線粉末回折(XRPD)データ収集用の試料を大理石乳鉢で静かに粉砕し、結晶解析用キャピラリー(ハンプトンリサーチ(Hampton Research)、石英またはガラスタイプ10、0.4または0.7mm径)中へ入れた。回折パターンは、リガク(Rigaku)回転陽極RU3HRからのCuKアルファ線(λ=1.5418Å)、オスミックブルー(Osmic blue)共焦点光学機器、1/4χゴニオメーターおよびリガク(Rigaku)HTCイメージプレート検出器を使用して、室温で収集した。250mmの検出器対結晶距離でψ軸を回転させながら、2D画像を収集した。データ収集はクリスタルクリア(CrystalClear)ソフトウェアにより調節し、2D画像はデータスクイーズ(Datasqueeze)により1Dプロット(2θ対強度)に変換した(0.01°または0.02°工程で2θ範囲3〜30°にわたり方位角0<χ<360°で平均した強度)。自社のプログラムAstex XRPDを1D XRPDパターンの取扱いおよび視覚化に用いた。
XRPDパターンとピークの相対強度は異なる結晶化バッチ間で変化せず、これは結晶形が一つしか存在しないことと一致している。
1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2‐イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素遊離塩基のFB1形態のXRPDパターンを図3に示し、主要なピークの詳細を表3に記す。
表3 主要なピークの2θ、d−間隔および相対強度。
(実施例71)
1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2‐イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素乳酸塩の結晶構造の測定
単結晶形態の1−シクロプロピル−3−[3−(5‐モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2‐イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素L‐乳酸塩が同定された。回折実験に用いられた結晶は、エタノールから蒸発により得られた寸法0.1×0.1×0.1mm3の無色のプリズムであった。結晶学的データは、リガク(Rigaku)回転陽極RU3HRからのCuKアルファ線(λ=1.5418Å)、オスミックブルー(Osmic blue)共焦点光学機器、AFC9 1/4χゴニオメーターおよびリガクジュピター(Rigaku Jupiter)CCD検出器を用いて、97Kで収集した。画像は、67mmの検出器対結晶距離で、5回のωスキャン、2θ=15°で1スキャンそして2θ=90°で4スキャン、で収集した。データ収集をクリスタルクリア(CrystalClear)ソフトウェアにより調節し、画像をディートレック(Dtrek)により処理およびスケール調整した。吸収係数は中程度(μ=0.78mm−1)であったが、グルーおよび結晶ホルダー(マイクロマウント)吸収を補うために四次フーリエ吸収補正を用いてデータを補正した。結晶は結晶格子パラメーターa=9.94(10)、b=15.03(10)、c=16.18(10)Å、アルファ=ベータ=γ=90°の斜方晶系空間群P212121(#19)に属することがわかった。括弧内の数は偏差(s.u.、標準不確かさ)を表わす。結晶格子パラメーターと対称性をチェックするために、1回の短い室温でのスキャンを行った。対称性は97(2)Kの場合と同様であり、結晶格子パラメーターが類似(室温a=10.08、b=15.22、c=16.22Å)していることがわかった。
結晶構造はSHELXS−97で行われた直接法を用いて解析した。結晶化実験で用いられたL−乳酸塩立体配置と一致する絶対立体配置を選択した。11〜0.9Å(4.01<θ<58.92)の分解範囲における合計3417の特有の反射に関する強度データをSHELXS−97により308の結晶学的パラメーターの精査に用いた。最終的な統計パラメーターは、wR2=0.2275(全データ)、RF=0.0817(I>2σ(I)のデータ)および適合度S=1.076であった。
1個のプロトン化遊離塩基分子および1個のL‐乳酸アニオンが非対称ユニット中で見つかった。非対称ユニットの元素組成はC22H29N7O5で、結晶の計算上の密度は1.30Mg/m3である。水素原子は幾何学的見地で捉え、一方で、へテロ原子に結合した水素原子の位置はFo‐Fc差マップの調査により確認した。水素原子の位置パラメーターおよび熱パラメーターは対応する非水素原子上にあるものとした。非水素原子の熱運動は異方性温度要因によりモデル化した(図4を参照)。
結晶構造には、1個の分子内(N22−H・・・N14 2.852Å)と7個の分子間水素結合が含み、複雑な3Dネットワークを形成している(図5を参照)。1−シクロプロピル−3−[3−(5‐モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2‐イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の分子は、2個の分子間H結合:N7‐H・・・O24 2.800ÅおよびN25‐H・・・N2 3.004Å、により結晶学的なc軸に沿って鎖状に結合されている。L−乳酸アニオンは、H結合:O3L‐H・・・O1L 2.626Åにより結晶学的a軸に沿い鎖状に結合されている。2個の二又H結合が1−シクロプロピル−3−[3−(5‐モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2‐イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素カチオンとL‐乳酸アニオンとを結合させている。プロトン化モルホリン窒素原子は両カルボキシル酸素原子(N16‐H・・・O1L 3.125ÅおよびN16‐H・・・O2L 2.625Å)と相互作用し、一方ピラゾールN1窒素はO2LおよびO3L(N1‐H・・・O2L 2.882Å、N1‐H・・・O3L 2.740Å)に対するHドナーである。
X線回折調査により作成された前記構造の熱振動楕円体の画像を図4に示し、パッキング図は図5にある。
1−シクロプロピル−3−[3−(5‐モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2‐イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素乳酸塩の構造を築く原子の座標を表4に示す。括弧中の数は偏差(s.u、標準不確かさ)を表わす。
(実施例72)
1−シクロプロピル−3−[3−(5‐モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2‐イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素塩の40℃、75%RH、での安定性
安定性試験用の試料ほぼ15mgを大理石乳鉢で静かに粉砕し、ペトリ皿に移し、薄い層にした。その後、過剰の未溶解NaClを有する飽和NaCl溶液を含有する密封容器に試料を入れた。次にこれを40℃に保持したインキュベーターに入れ、40℃および約75%相対湿度(RH)の環境を作った。試料を一定の間隔で粉末X線回折(XRPD)により分析した。
X線粉末回折(XRPD)データ収集用の試料を、結晶解析用キャピラリー(ハンプトンリサーチ(Hampton Research)、石英、径=0.7mm)中へ入れた。回折パターンは、リガク(Rigaku)回転陽極RU3HRからのCuKアルファ線(λ=1.5418Å)、オスミックブルー(Osmic blue)共焦点光学機器、1/4χゴニオメーターおよびリガク(Rigaku)HTCイメージプレート検出器を使用して、室温で収集した。250mmの検出器対結晶距離でψ軸を回転させながら、2D画像を収集した。データ収集はクリスタルクリア(CrystalClear)ソフトウェアにより調節し、2D画像はデータスクイーズ(Datasqueeze)により1Dプロット(2θ対強度)に変換した(0.01°工程で2θ範囲3〜30°にわたり方位角0<χ<360°で平均した強度)。自社のプログラム、アステックス(Astex)XRPDを1D XRPDパターンの取扱いおよび視覚化に用いた。
乳酸塩、遊離塩基(FB1)および二水和物遊離塩基(FB2)のXRPDパターンは、40℃および75%RHに暴露しても、1〜2月間にわたり変化しない。乳酸塩、遊離塩基(FB1)および二水和物遊離塩基(FB2)の出発および安定性試験試料のXRPDパターンを図6〜8に示す。
1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素遊離塩基のL−乳酸塩のXRPDパターンを図6に示し、主要なピークの詳細を表5に記す。
1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素遊離塩基の二水和物遊離塩基FB2形態のXRPDパターンを図8に示し、主要なピークの詳細を表6に記す。
生物活性
(実施例73)
活性化CDK2/サイクリンAキナーゼ阻害活性アッセイ(IC 50 )の測定
本発明の化合物は下記プロトコールを用いてキナーゼ阻害活性について試験した。
活性化CDK2/サイクリンA(ブラウン(Brown)ら、Nat.Cell Biol.、1、p.438−443、1999年;ロウ(Lowe,E.D.)ら、Biochemistry、41、p.15625−15634、2002年)を、2.5倍濃度のアッセイバッファー(50mM MOPS pH7.2、62.5mM ベータ−グリセロホスフェート、12.5mM EDTA、37.5mM MgCl2、112.5mM ATP、2.5mM DTT、2.5mMオルトバナジウム酸ナトリウム、0.25mg/mlウシ血清アルブミン)で125pMに希釈し、10μlを、10μlのヒストン基質混合物(60μlのウシヒストンH1(アップステートバイオテクノロジー(Upstate Biotechnology)、5mg/ml)、940μl H2O、35μCiγ33P−ATP)と混合し、DMSO中で種々の希釈率(2.5%まで)の試験化合物5μlとともに96ウェルプレートに添加する。反応を2〜4時間行った後、過剰量のオルトリン酸(2%で5μl)により停止させる。ヒストンH1に組み込まれていないγ33P−ATPを、ミリポア(Millipore)MAPHフィルタープレートでリン酸化ヒストンH1から分離する。MAPHプレートのウェルを、0.5%オルトリン酸で湿らせた後、反応物をミリポア(Millipore)真空濾過装置でウェルから濾過する。濾過後、残留物を、200μlの0.5%オルトリン酸で2回洗浄する。フィルターが乾燥したところで、20μlのマイクロシント(Microscint)20シンチラントを添加し、その後パッカードトップカウント(Packard Topcount)で30秒間カウントする。CDK2活性の阻害率(%)を算出し、プロットして、CDK2活性の50%を阻害するのに必要な試験化合物の濃度(IC50)を求める。
(実施例74)
活性化CDK1/サイクリンBキナーゼ阻害活性アッセイ(IC 50 )の測定
CDK1/サイクリンBアッセイは、CDK1/サイクリンB(アップステートディスカバリー(Upstate Discovery))を用い、この酵素を6.25nMに希釈すること以外は上記CDK2/サイクリンAと同じである。
(実施例75)
オーロラAキナーゼアッセイ
オーロラAキナーゼ活性は、GSK3由来のビオチン化ペプチドと共に解離促進ランタニド蛍光免疫検査法(DELFIA)を使用して決定することができる。生じたリン酸化ペプチドの量は、λex=337nm、λem=620nmで時間分解蛍光を使用して、リン特異的一次抗体およびユーロピウム標識抗ウサギIgG抗体により定量化する。
キナーゼ反応:
アッセイ反応液を、0.5nMオーロラA(アップステートディスカバリー(Upstate Discovery))、3μMビオチン−CGPKGPGRRGRRRTSSFAEG、15μM ATPと、10mM MOPS pH7.0、0.1mg/mL BSA、0.001% Brij−35、0.5%グリセロール、0.2mM EDTA、10mM MgCl2、0.01% ベータ−メルカプトエタノールおよび2.5%DMSOで希釈した様々な化合物希釈液とで、25μLの全反応容量で96ウェルプレートに調製する。反応を室温で60分間進行させ、その後、100mM EDTA、0.05%サーファクト−アンプス(Surfact−Amps)20(ピアス(Pierce))およびTBS中の1×ブロッカー(Blocker(商標))BSA(ピアス(Pierce))を含有する反応停止緩衝液(STOP buffer)100μLで停止させる。
検出工程:
反応混合液をその後ニュートラビジン(Neutravidin)でコーティングされた96ウェルプレート(ピアス(Pierce))に移し、ビオチン化ペプチドを捕捉するために30分間インキュベートする。1ウェル毎に200μLのTBST緩衝液で5回洗浄した後、抗リン酸化(Ser/Thr)−AKT基質抗体(セルシグナリングテクノロジー(Cell Signalling Technology))とEu−N1抗ウサギIgG(パーキンエルマー(Perkin Elmer))との混合物を全ウェルに加え、1時間放置する。さらなる洗浄工程後、デルフィアエンハンスメント溶液(DELFIA Enhancement Solution)(パーキンエルマー(Perkin Elmer))を全ウェルに加える。5分間のインキュベート後、ウェルをフュージョン(Fusion)プレートリーダーでカウントする。
(実施例76)
オーロラBキナーゼアッセイ
キナーゼ反応
アッセイ反応液を、5nMオーロラB(プロキナーゼ(ProQinase))、3μMビオチン−CGPKGPGRRGRRRTSSFAEG、15μM ATPと、25mM TRIS pH8.5、0.1mg/mL BSA、0.025% Surfact−Amps20、5mM MgCl2、1mM DTTおよび2.5%DMSOで希釈した様々な化合物希釈液とで、25μLの全反応容量で96ウェルプレートに調製する。反応を室温で90分間進行させてから、その後、100mM EDTA、0.05%サーファクト−アンプス(Surfact−Amps)20(ピアス(Pierce))およびTBS中の1×ブロッカー(Blocker(商標))BSA(ピアス(Pierce))を含有する反応停止緩衝液(STOP buffer)100μLで停止させる。
検出工程はオーロラAに関して記載されたように行う。
(実施例77)
GSK3‐ベータキナーゼ阻害活性アッセイ
GSK3‐ベータ(アップステートディスカバリー(Upstate Discovery))を25mM MOPS pH7.00、25mg/mL BSA、0.0025% Brij−35、1.25%グリセロール、0.5mM EDTA、25mM MgCl2、0.025% ベータ−メルカプトエタノール、37.5mM ATPで7.5nMに希釈し、10μLを基質ミックス10μLと混合する。GSK3−ベータ用の基質ミックスは35μCiγ33P‐ATPを含有する水1mL中の12.5μMリン酸化グリコーゲンシンターゼペプチド‐2(アップステートディスカバリー(Upstate Discovery))である。酵素および基質を、試験化合物の様々なDMSO希釈液(2.5%まで)5μLと一緒に96ウェルプレートへ添加する。反応を3時間(GSK3−ベータ)進行させてから、過剰のオルトリン酸(2%で5μL)で停止させる。濾過操作は上記の活性化CDK2/サイクリンAアッセイの通りである。
(実施例78)
A 他のキナーゼ阻害活性アッセイ
これらの酵素に対する阻害活性を(アップステートディスカバリー(Upstate Discovery Ltd))においてアッセイした。酵素は酵素用緩衝液(下記表で記載されている通り)で10×最終濃度に調製した。次いで酵素を表に記載されているような様々な基質および33P‐ATP(〜500cpm/pmol)と共にアッセイ用緩衝液中でインキュベートした。
反応をMg/ATPの添加により開始した。反応を40分間室温で進行させ、5μLの3%リン酸溶液で停止した。10μLの反応液ミックスをフィラーマット(Filtermat)AもしくはP30フィラーマット(Filtermat)のどちらかに移し、75mMリン酸で3回およびメタノールで1回洗浄し、その後シンチレーション計数のために乾燥させた。
化合物を全キナーゼに対して下記に詳述した濃度でデュプリケートで試験し、コントロールと比較した活性パーセントを計算した。阻害が高い場合は、IC50を求めた。
酵素用緩衝液は次のとおりであった。
A:20mM MOPS pH7.0、1mM EDTA、0.1%ベータ‐メルカプトエタノール、0.01% Brij−35、5%グリセロール、1mg/ml BSA
B:50mM Tris pH7.5、0.05% ベータ‐メルカプトエタノール、1mg/ml BSA
アッセイ用緩衝液は次のとおりであった。
A:8mM MOPS pH7.0、0.2mM EDTA、10mM 酢酸Mg
B:50mM Tris pH7.5、0.1% ベータ‐メルカプトエタノール、10mM 酢酸Mg
B さらなるキナーゼ阻害活性アッセイ
これらの酵素に対する阻害活性を(アップステートディスカバリー(Upstate Discovery Ltd))においてアッセイした。酵素は酵素用緩衝液(下記表で記載されている通り)で10×最終濃度に調製した。次いで酵素を表に記載されているような様々な基質および33P‐ATP(〜500cpm/pmol)と共にアッセイ用緩衝液中でインキュベートした。
反応をMg/ATPの添加により開始した。反応を40分間室温で進行させ、5μLの3%リン酸溶液で停止した。10μLの反応液ミックスをフィラーマット(Filtermat)AもしくはP30フィラーマット(Filtermat)のどちらかに移し、75mMリン酸で3回およびメタノールで1回洗浄し、その後シンチレーション計数のために乾燥させた。
化合物を全キナーゼに対して下記に詳述した濃度でデュプリケートで試験し、コントロールと比較した活性パーセントを計算した。阻害が高い場合は、IC50を求めた。
酵素用緩衝液は次のとおりだった。
A:20mM MOPS pH7.0、1mM EDTA、0.1%ベータ‐メルカプトエタノール、0.01% Brij−35、5%グリセロール、1mg/ml BSA
アッセイ用緩衝液は次のとおりだった。
A:8mM MOPS pH7.0、0.2mM EDTA、10mM 酢酸Mg
C:8mM MOPS pH7、0.2mM EDTA、10mMCl2、10mM 酢酸Mg10mM 酢酸Mg
C EGFRおよびPDGFRキナーゼ阻害活性アッセイ
EGFRおよびPDGFR−ベータ酵素に対する阻害活性を測定した。酵素(Upstateより)を、1×キナーゼアッセイ用緩衝液(下記に記載のように)中で、10×最終濃度に調製した。酵素をその後、試験化合物、ビオチン化Flt3基質(ビオチン-DNEYFYV)(セルシグナリングテクノロジー(Cell Signalling Technology Inc)およびATPでインキュベートした。60ul反応を、室温および900rpmのプレート振盪機上で60分間(EGFR)または2.5時間(PDGFR−ベータ)進行させ、その後20μlのpH8を有する55mM EDTAで反応を停止した。次に、20μlの5×検出ミックス(pH7.5の50mM HEPES、0.5M KF、0.1%BSA、11.34nM Eu−抗−pY(PT66)(パーキンエルマー(PerkinElmer))、94nM SA−XL665(シスバイオ(Cisbio))を各ウェルに添加し、プレートを密閉し、室温で1時間プレート振盪機上で900rpmでインキュベートした。プレートをその後、TRFモードのパッカードフュージョン(Packard Fusion)プレートリーダーで読み取った。
キナーゼアッセイ用緩衝液は次のとおりだった。
A:20mM HEPES pH7.5、10mM MnCl2、0.1mg/ml BSA、0.01% TritonX−100、1mM DTT、0.1mMオルトバナジウム酸ナトリウム
B:20mM MOPS pH7.0、10mM MnCl2、0.01% TritonX−100、1mM DTT、0.1mMオルトバナジウム酸ナトリウム
(実施例79)
P450法
CYP450s 1A2、2C9、2Cl9、3A4および2D6に対する化合物の有効性は、インビトロゲン(Invitrogen)(ペイズリー、英国)から入手可能なPan Vera Vivid Cyp450スクリーニングキットを使用して測定した。CYPは、CYP450およびNADPHレダクターゼを含有するバキュロゾームの形態で提供される。基質は蛍光性のVivid基質である。最終反応混合液は以下のとおりであった。
1A2
100mMリン酸カリウム、pH8、1%メタノール、2μM 1A2 Blue vivid基質、100μM NADP+、4nM CYP450 1A2、2.66mMグルコース−6−リン酸、0.32U/mLグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ。
2C9
50mMリン酸カリウム、pH8、1%メタノール、2μM Green vivid基質、100μM NADP+、8nM CYP450 2C9、2.66mMグルコース−6−リン酸、0.32U/mLグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ。
2C19
50mMリン酸カリウム、pH8、1%メタノール、8μM Blue vivid基質、100μM NADP+、4nM CYP450 2C19、2.66mMグルコース−6−リン酸、0.32U/mLグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ。
3A4
100mMリン酸カリウム、pH8、1%メタノール、10μM 3A4 Blue vivid基質、100μM NADP+、2.5nM CYP450 3A4、2.66mMグルコース−6−リン酸、0.32U/mLグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ。
2D6
100mMリン酸カリウム、pH8、1%メタノール、5μM 2D6 Blue vivid基質、100μM NADP+、5nM CYP450 2D6、2.66mMグルコース−6−リン酸、0.32U/mLグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ。
蛍光をモルキュラーディバイススペクトロマックスジェミニ(Molecular Devices Spectramax Gemini)リーダーにおいて30秒間隔で20分間モニターした。励起および発光波長は、1A2、2C19および3A4の場合390nmおよび460nm、2D6の場合390nmおよび485nm、2C9の場合485nmおよび530nmであった。初速度をプログレス曲線から求めた。化合物をメタノールに溶解し、10μMの濃度でCYP450sに対して試験した。
(実施例80)
抗増殖活性
多くの細胞株において細胞成長を阻害しうる化合物の能力を測定することにより、本発明の化合物の抗増殖活性を測定することができる。細胞成長の阻害はAlamarBlueアッセイ(Nociari,M.M、Shalev,A.、Benias,P.、Russo,C.、Journal of Immunological Methodes、1998年、213、157−167)を用いて測定される。前記方法はレザズリンをその蛍光産物レゾルフィンへ還元する生細胞の能力に基づいている。各増殖アッセイにおいては、細胞を96ウェルプレートに入れ、16時間培養してから、さらに72時間阻害剤化合物を加える。インキュベーションの終了時に10%(v/v)アラマーブルー(AlamarBlue)を加え、さらに6時間インキュベートしてから、535nM ex/590nM emにより蛍光産物を調べる。非増殖細胞アッセイの場合には、細胞を96時間集密状態で維持してから、さらに72時間阻害剤化合物を加える。生細胞の数を前記のようにアラマーブルー(AlamarBlue)アッセイで調べる。さらに、どのような形態学的変化であっても記録される。細胞株はECACC(ヨーロピアンコレクションオブセルカルチャー(European Collection of cell Cultures))から入手することができる。
特に、本発明の化合物を、ヒト結腸癌癌由来のHCT−116細胞株(ECACC Reference:91091005)に対して試験した。
このアッセイにより本発明の化合物は1μM未満のIC50値を有すること、さらに100nMの倍数性または多核化が観察される最低濃度を有することが分かった。
(実施例81)
A 一般的なコロニー形成アッセイプロトコール
付着性腫瘍細胞株に対する化合物の様々な治療処理の効果をクローンアッセイで評価した。
細胞を6または24ウェル組織培養プレートに75〜100細胞/mL関連培地の濃度で接種し、16時間リカバーした。
化合物またはビヒクルコントロール(DMSO)をデュプリケートウェルに添加し、0.1%の最終DMSO濃度とした。化合物添加後、至適個別コロニー計数のために10〜14日間コロニーを成長させた。コロニーを2mL カルノワ(Carnoys)固定液(25%酢酸,75%メタノール)中で固定し、2mLの0.4%w/vクリスタルバイオレットで染色した。各ウェルのコロニー数をカウントした。単一の細胞から多くの細胞への増殖を示す(すなわち、細胞質分裂が成功した完全な細胞周期)、ほぼ50個以上の細胞からなる多細胞コロニーのみスコアした。単一の多核(倍数)細胞はスコアしなかった。IC50値は、プリズムグラフパッドソフトウェア(Prism Graphpad Software)を使用して、S字形用量応答(可変勾配)IC50曲線により計算した。
B 1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素のコロニー形成アッセイプロトコール
A2780、A549、HCT116、HCT116N7、HT‐29、MCF7、MIA−Pa−Ca−2、SW620細胞株に対する1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の様々な治療処理の効果をクローンアッセイで評価した。
細胞を6または24ウェル組織培養プレートに75〜100細胞/mL関連培地の濃度で接種し、16時間リカバーした。
1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素またはビヒクルコントロール(DMSO)をデュプリケートウェルに添加し、0.1%の最終DMSO濃度とした。化合物添加後、至適個別コロニー計数のために10〜14日間コロニーを成長させた。コロニーを2mL カルノワ(Carnoys)固定液(25%酢酸,75%メタノール)中で固定し、2mLの0.4%w/vクリスタルバイオレットで染色した。各ウェルのコロニー数をカウントした。単一の細胞から多くの細胞への増殖を示す(すなわち、細胞質分裂が成功した完全な細胞周期)、ほぼ50個以上の細胞からなる多細胞コロニーのみスコアした。単一の多核(倍数)細胞はスコアしなかった。IC50値は、プリズムグラフパッドソフトウェア(Prism Graphpad Software)を使用して、S字形用量応答(可変勾配)IC50曲線により計算した。
* +は、野生型p53の発現を示す;−は、p53の発現が無かったかp53が機能性でなかったことを示す。
(実施例82)
赤白血病(HED)および慢性骨髄性白血病(K562)細胞におけるJAK2(例えば、Stat5)およびBcr−Abl(例えば、CRKL)の下流基質のリン酸化の阻害を測定するためのウェスタンブロットアッセイ
0.1%最終DMSO濃度での化合物処理に続いて、細胞を採取し、氷冷トリトン溶解バッファー中で溶解した。溶解物を遠心分離により除去し、上清をタンパク定量のために取り除いた。対応量のタンパク質溶解物にSDS試料緩衝液およびDTTを添加し、5分間煮沸した。
試料をSDS−PAGEにより分解し、ニトロセルロースフィルターにブロットし、5%脱脂乳または同等のブロッキング緩衝液でブロックし、特定の抗体と共に4℃でリン酸化および非リン酸化タンパク質に一晩インキュベートした。使用した二次抗体は、抗ウサギおよび抗ネズミIgG、HRP結合抗体(セルシグナリングテクノロジー(Cell Signalling Technology))で、検出はECLPLUS試薬(アマシャムバイオサイエンス(Amersham Bioscience))を使用して達成した。他に使用した二次抗体は、IRDye(登録商標)結合抗体で、検出はオデッセイ赤外線イメージングシステム(Odyssey Infrared Imaging System)(LI−CORバイオサイエンス(LI−COR Biosciences))を使用して達成した。
このプロトコールを使用により、細胞が1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素で処理される場合、赤白血病(HEL)および慢性骨髄性白血病(K562)細胞ではそれぞれJAK2(例えば、Stat5)およびBcr−Abl(例えば、CRKL)の直接下流の基質のリン酸化が阻害されることが示された。
医薬製剤
(実施例83)
(i)錠剤製剤
式(I)の化合物を含有する錠剤組成物は、化合物50mgと、希釈剤としてのラクトース(BP)197mgと、滑沢剤としてのステアリン酸マグネシウム3mgとを混合し、公知の方法で打錠することにより製造される。
(ii)カプセル製剤
カプセル製剤は、式(I)の化合物100mgとラクトース100mgを混合し、得られた混合物を標準的な不透明硬ゼラチンカプセルに充填することにより製造される。
(iii)注射用製剤I
注射投与用の非経口組成物は、式(I)の化合物(例えば、塩形態)を、10%プロピレングリコールを含有する水に溶解し、有効化合物濃度1.5重量%とすることにより製造することができる。この溶液を次に濾過除菌し、アンプルに充填し、密閉される。
(iv)注射用製剤II
注射用の非経口組成物は、式(I)の化合物(例えば、塩形態)(2mg/mL)およびマンニトール(50mg/mL)を水に溶解し、溶液を濾過滅菌し、密封可能な1mLバイアルまたはアンプルへ充填することにより製造される。
(v)注射用製剤III
注射または注入によるiv送達用の製剤は、水に式(I)の化合物(例えば、塩形態)を20mg/mLで溶解することにより製造できる。次いで、バイアルを密封し、オートクレーブ処理により滅菌する。
(vi)注射用製剤IV
注射または注入によるiv送達用の製剤は、緩衝剤(例えば、0.2M酢酸pH4.6)を含有した水に式(I)の化合物(例えば、塩形態)を20mg/mLで溶解することにより製造できる。次いで、バイアルを密封し、オートクレーブ処理により滅菌する。
(viii)凍結乾燥製剤I
本明細書に定義されているような式(I)の処方化合物またはその塩のアリコートを50mLバイアルへ入れ、凍結乾燥する。凍結乾燥に際しては、−45℃でワンステップ凍結プロトコールを用いて組成物を凍結する。温度をアニーリングのために−10℃に上げ、次いで低下させて−45℃で凍結し、次いでほぼ3400分かけて+25℃で一次乾燥させ、もし温度が50℃になれば、工程を増やして二次乾燥を行う。一次乾燥および二次乾燥中の圧力は80ミリトルに設定する。
(viii)凍結乾燥製剤II
本明細書に定義されているような式(I)の処方化合物またはその塩のアリコートを50mLバイアルへ入れ、凍結乾燥する。凍結乾燥に際しては、−45℃でワンステップ凍結プロトコールを用いて組成物を凍結する。温度をアニーリングのために−10℃に上げ、次いで低下させて−45℃で凍結し、次いでほぼ3400分かけて+25℃で一次乾燥させ、もし温度が50℃になれば、工程を増やして二次乾燥を行う。一次乾燥および二次乾燥中の圧力は80ミリトルに設定する。
(ix)iv投与用凍結乾燥製剤III
水酸化ナトリウムまたは塩酸でpH4.5に調整された0.02Mクエン酸緩衝液に12.86mg/mLの濃度で1−シクロプロピル‐3‐[3‐(5‐モルホリン‐4‐イルメチル‐1H‐ベンゾイミダゾール‐2‐イル)‐1H‐ピラゾール‐4‐イル]−尿素L‐乳酸塩を溶解することにより、水性緩衝液を調製する。
濾過により粒子状物質を除去して緩衝液を容器(例えば、クラス1ガラスバイアル)へ充填し、次いでこれを(例えば、Florotecストッパーにより)部分的に密封する。化合物および製剤が十分に安定であれば、適切な時間121℃でオートクレーブ処理することにより製剤を滅菌する。製剤がオートクレーブ処理に安定でなければ、適切なフィルターを用いて滅菌し、無菌条件下で無菌バイアルへ充填してもよい。適切なサイクルを用いて溶液をフリーズドライする、例えば:
凍結−2時間かけて−40℃に冷却し、−40℃で3時間維持する。
一次乾燥−8時間かけて−40℃から−30℃に上げ、−30℃で7時間保ち、
二次乾燥−4時間かけて+30℃に上げ、+30℃で8〜10時間保つ。
フリーズドライサイクルの完了時に、バイアルを窒素で大気圧まで逆充填し、栓で塞ぎ、固定(例えば、アルミニウムクリンプで)する。静脈内投与の場合、フリーズドライされた固形物は0.9%塩水または5%デキストロースのような薬学上許容される賦形剤で再調製できる。溶液はそのまま投与しても、または投与前に注入バッグ(0.9%塩水または5%デキストロースのような薬学上許容される賦形剤を含有)へ注入してもよい。
(x)皮下注射製剤
皮下投与用組成物は、式(I)の化合物を医薬級のコーン油と混合して濃度5mg/mlとすることにより製造される。この組成物を滅菌し、適当な容器に充填する。
(xi)iv投与用凍結乾燥製剤IV
2M水酸化ナトリウム水溶液または2M塩酸水溶液でpH4.5に調整された無水クエン酸緩衝液に20mg/mLの濃度で13mg/mlの1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素L−乳酸塩を溶解することにより、水性緩衝液を調製する。
pH4.5のほぼ100mM(例えば、104mM)クエン酸塩緩衝液中の5mlの1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素L−乳酸塩の溶液(52mgの遊離塩基に相当する65.9mgのL−乳酸塩を含有)を、20mlタイプ1ガラスバイアルに充填し凍結乾燥する。この溶液を適切なサイクルを用いてフリーズドライする。例えば:
フリーズドライサイクルの完了時に、バイアルを窒素で大気圧程度(例えば、95%をわずかに下回る)まで逆充填し、栓で塞ぎ、固定(例えば、アルミニウムクリンプで)する。静脈内投与の場合、フリーズドライされた固形物は0.9%塩水または5%デキストロースのような薬学上許容される賦形剤で再調製できる。溶液はそのまま投与しても、または投与前に注入バッグ(0.9%塩水または5%デキストロースのような薬学上許容される賦形剤を含有)へ注入してもよい。
均等
上記の実施例は、本発明を説明する目的で記載したものであり、本発明の範囲を何ら限定するものではない。上記に記載し、また、実施例で示す本発明の特定の実施態様に対して、本発明の原理から逸脱することなく、多くの改変および変更をなし得ることは容易に明らかである。このような改変および変更は総て本願に含まれるものとする。