JP2009280500A - リン酸カルシウム結合性リポソーム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】脂質に結合したポリエチレングリコール誘導体および脂質を構成成分とするリポソームであって、少なくとも一部の前記脂質に結合したポリエチレングリコール誘導体の、両末端のうち、リポソームの内相および表面からより離れた末端に、リン酸カルシウム結合部位を有する化合物が結合していることを特徴とするリン酸カルシウム結合性リポソーム。
【選択図】なし
Description
脂質に結合したポリエチレングリコール誘導体および脂質を構成成分とするリポソームであって、少なくとも一部の前記脂質に結合したポリエチレングリコール誘導体の、両末端のうち、リポソームの内相および表面からより離れた末端に、リン酸カルシウム結合部位を有する化合物が結合していることを特徴とするリン酸カルシウム結合性リポソーム。
ることが好ましい。
前記生理活性成分として、骨疾患の予防薬、治療薬、診断薬および骨再生剤などが挙げられる。
ることが好ましい。
生理活性成分を保持させた本発明のリン酸カルシウム結合性リポソームは、適当な剤形を付与することにより医薬とすることができる。
[リン酸カルシウム結合性リポソーム]
本発明のリン酸カルシウム結合性リポソームは、脂質に結合したポリエチレングリコール誘導体および脂質を構成成分とし、少なくとも一部の前記脂質に結合したポリエチレングリコール誘導体の、両末端のうち、リポソームの内相および表面からより離れた末端に、リン酸カルシウム結合部位を有する化合物が結合していることを特徴としている。以下、本発明のリン酸カルシウム結合性リポソームの製造方法を説明することにより、これら各構成要素について説明する。
本発明のリン酸カルシウム結合性リポソーム(以下単に本発明のリポソームとも言う)は、通常のリポソームの調製方法に準じて製造することができ、その製造に用いる原料に特徴がある。
いる。
前記リン酸カルシウム結合部位を有する化合物として具体的には、ビスホスホネート系化合物、テトラサイクリン、4−カルボキシ−3−ヒドロキシ−1,2−ピラゾール、ポリマロン酸および(L-アスパラギン酸)6ペプチドが挙げられる。これらの化合物がリン
酸カルシウムに対して親和性を有することは、たとえばD. Wang et al. / advanced Drug
Delivery Reviews 57 (2005) 1049-1076に記載されている。
ト、ネリドロネート、オルパドロネート、パミドロネート、リセドロネート、チルドロネート、ゾレドロネートなどが挙げられ、前記脂質に結合したポリエチレングリコール誘導体との反応性の観点から、アレンドロネート、ネリドロネート、パミドロネートが好ましい。
前記脂質に結合したポリエチレングリコール誘導体において、脂質に特に制限はなく、たとえば脂肪酸、中性脂質、リン脂質、コレステロールが本発明において使用可能である。
が、通常500〜50000、好ましくは1000〜10000、より好ましくは1000〜5000である。
前記脂質に結合したポリエチレングリコール誘導体は、脂質とポリエチレングリコール誘導体を公知の方法により反応させることで得ることができ、また市販されている。
化合物Aは、前述のようにリン酸カルシウム結合部位を有する化合物と、脂質に結合したポリエチレングリコール誘導体とを接触させて得られる。この際の反応条件に特に制限はなく、反応は室温で実施することができる。緩衝液などの溶媒を使用することが好ましい。化合物Aをリポソーム調製の原料として用いることで、得られるリポソームにおいては、少なくとも一部の化合物Aの、両末端のうち、リポソームの内相および表面から離れた位置にリン酸カルシウム結合部位が存在する。このことによって、後述の実施例で述べるが、生理活性成分をリポソームに保持させた場合の、生理活性成分の内包率が高まる。
本発明のリポソームは、上記化合物Aおよび脂質をその構成成分としている。前記脂質に特に制限はなく、脂肪酸、中性脂質、リン脂質、コレステロールなどの様々な脂質が使用可能である。
前記リン脂質は分子中にリン原子を有する脂質であり、たとえばグリセロリン脂質やスフィンゴリン脂質が挙げられる。
本発明のリポソームは、通常のリポソームの調製方法に準じて製造することができる。より詳細に説明すると、本発明のリポソームは、前記化合物Aと、脂質とを混合し、得られた原料および水相を使用して、薄膜法、逆相蒸発法、エタノール注入法、エーテル注入法、脱水―再水和法、超音波照射法、エクストルージョン法、フレンチプレス法、ホモジナイゼーション法などによりリポソームを調製することで、製造することができる。
は確率の問題であり、制御することは一般に困難であるが、上記のような通常のリポソームの調製方法に準じた製造方法によれば、前記末端が本発明の効果を奏するに十分な数だけリポソームの外側を向いたリポソームが得られる。
このようにして得られる本発明のリポソームは、その光散乱法により測定した平均粒子径が通常20〜1000nm、好ましくは50〜500nmである。
本発明のリポソームは、少なくとも一部の脂質に結合したポリエチレングリコール誘導体の、両末端のうち、リポソームの内相および表面からより離れた末端にリン酸カルシウム結合部位を有する化合物が結合しているため、リン酸カルシウムに対して高い親和性を有する。そのため本発明のリポソームを生体内に投与すると、リン酸カルシウムに富んだ部位に集積する。そして、リポソームには様々な物質を保持させることができる。したがって本発明のリポソームは、リン酸カルシウムに富んだ部位に様々な化合物、たとえば生理活性成分を選択的にデリバリーすることができる。本明細書において生理活性成分とは、疾患の診断から治療までのいずれかの段階において有用な成分を指し、疾患の診断薬なども生理活性成分に含まれる。
リポソームの外側および内側表面は脂質の頭部から形成されており、この頭部は親水性である。したがってリポソームの表面には親水性の化合物を保持させることができる。
リポソームに化合物を保持させる方法は公知であり、たとえばpH勾配法、リポソームの調製の際に、使用する水相に化合物を溶解させておく方法、凍結融解法、界面活性剤除去法が挙げられる。
[背景技術]でも述べたように、ある種の癌(たとえば肺癌、乳癌)細胞の骨転移や、社会の高齢化に伴い増加の一途をたどる骨粗鬆症、関節リウマチなどの骨疾患などが問題となっており、これらの疾患を有効に予防、治療することができる医薬品が求められている。
一方、本発明のリポソームを関節リウマチ治療に用いる場合には、該リポソームに関節リウマチの治療薬を保持させる。関節リウマチの治療薬としてはDMARDs(Disease Modifying Antirheumatic Drugs)、ステロイド、インフリキシマブなどの分子標的治療
薬などが挙げられる。インフリキシマブのような抗体医薬は、リポソーム表面に保持させて使用することが可能である。
ともできる。
更に本発明のリポソームは、骨再生医療にも適用することができる。すなわち、本発明のリポソームに成長因子などの骨再生医療に用いられる物質(骨再生剤)を保持させ、これを骨欠損部にインプラントすることにより、骨芽細胞などへ前記物質が局所的に送達される。したがって、従来よりも迅速で安全な骨再生医療が可能になる。
リン酸系化合物は、金属にも高い親和性を示すことが知られている(S. Pallu et al. / Biomaterials 26 (2005) 6932およびI. Fishbein et al. / Proc Natl Acad Sci USA 103 (2006) 159参照)。したがってリン酸カルシウム結合部位を有する化合物がビスホス
ホネート系化合物である場合の本発明のリポソームは、チタンプレートの移植やあるいはステント治療を受けた患者の、チタンやステントにも選択的に生理活性成分などを送達することができる。
合化して、ステント表面に吸着させ、このステントを冠動脈へ留置することで、ステント近傍局所での薬物徐放が達成される。リポソーム構成脂質は生体適合性が高いため、これまでにない安全な薬剤溶出ステントとなると期待できる。
様々な化合物をデリバリーするのに利用することができる。
(投与方法)
生理活性成分を保持した本発明のリポソーム(以下生理活性成分保持リポソームとも言う)を投与する場合の医薬としての剤形および投与方法は特に限定されず、投与方法が経口投与であれば錠剤、カプセル剤、丸剤、散剤、顆粒剤、シロップ剤など経口用の任意の剤形を取ることができ、投与方法が非経口投与であれば注射剤(静脈注射、皮下注射、皮内注射など)などの非経口用の任意の剤形を取ることができる。
このようにして投与された本発明の生理活性成分保持リポソームはリン酸カルシウムや金属に富んだ部位、たとえば骨に集積し、リポソームからの薬剤の徐放や細胞による取り込みにより標的細胞に作用するものと考えられる。
本発明の生理活性成分保持リポソームを含有する医薬の投与量は、保持する生理活性成分、投与方法などにより異なり、それぞれの生理活性成分、投与方法ごとに動物実験、臨床試験を経て定めていくことが望ましい。
[合成例]
カルボキシ末端を活性化したポリエチレングリコール(PEG)化リン脂質(DSPE-PEG-NHS(3-(N-succinimidyloxy-glutaryl)aminopropyl, polyethyleneglycol-carbamyl distearoyl phosphtidyl ethanolamine、日本油脂製、PEG分子量2000)30 mmolを3 mlの水に溶
かした。この溶液にアレンドロネート45 mmolを溶解した炭酸緩衝液(pH 8.5)4 mlを加
え、一晩室温で撹拌した。その後、反応液を3日間室温で透析し(分画分子量10000)、凍結乾燥することによりDSPE-PEG-BPを得た。以上の反応を下記式に示す。
DSPC(Distearoyl phosphatidyl choline)とコレステロールをモル比で2:1となるようにし、かつDSPE-PEG-BPを、自身と前記2種類の脂質との合計を100 mol%とした場合に、
自身の濃度が0(DSPE-PEG-BPを使用せず), 1, 2, 5, 10 mol%となるように混合し、真空ポンプを用いて減圧乾燥することで、5種類のリピッドフィルムを調製した。
分間超音波照射バス型し、脂質を分散させた。これをボルテックスミキサーにて数分間角撹拌し、リポソーム溶液を得た。この溶液について、60℃加温下でextruderを用いて(100 nmポアフィルター)整粒した。この溶液を、総脂質濃度が200 mMになるように10 mM NaCl溶液で希釈して、動的光散乱、ゼータ電子測定システムにより平均粒子径及びゼータ電位を測定した。これらの測定はn=3で行った。
大きさであった。DSPE-PEG-BPを含むリポソームはその含有量が多くなるに伴いゼータ電
位が負に大きくなった。これはDSPE-PEG-BPが分子内にリン酸基を2つ有する構造を反映したものであり、リポソームへDSPE-PEG-BPが取り込まれていることを示していると考えら
れる。また、アレンドロネート部位がリポソームの外側に多く存在していることを示している。アレンドロネートを含まないDSPE-PEGを使用して得られたリポソームも、DSPE-PEG
の割合が多くなると負電荷が大きくなる傾向にあったが、同含量のDSPE-PEG-BPを含むリ
ポソームと比べると負電荷は小さかった。
表1に示したそれぞれのリポソームを50 mM Tris-HCl(pH 7.4)中に100 mMになるよう
に溶解して溶液とし、HAを、前記溶液における含有量が0, 1, 2, 3, 5, 10 mg/mlとなる
ように添加した。得られた液を3時間回転混和した後、3000 rpmで2分間遠心分離し、上澄みに含まれるリポソーム由来の散乱強度を光散乱計を用いて測定した。
アレンドロネート((4-アミノ-1-ヒドロキシブチリデン)ビスホスホン酸一ナトリウム塩)
である。
5, 10 mol%となるように混合し、実施例1と同様にしてリポソームを調製した。
、上澄みに含まれるリポソーム由来の散乱強度を光散乱計を用いて測定した。
ームにおけるHAが0 mg/mlの場合を対照(control)として用いた。なお、上記DSPC、コレステロールおよび化合物5から調製されたリポソームは図1(B)および表3においてはBPL liposomeと表記されている。
の吸着はほとんど見られなかった。
。全てのリポソームにおいてHA 3 mg/ml以上の添加量でほぼ100%のリポソームがHAに結合したと考えられる。
に示すように、アレンドロネートが結合している脂質の含有率が少ない場合(1〜5%)に
はDSPE-PEG-BPリポソームの方がBPLリポソームよりもHAへの吸着能が高いことがわかる。
<実験>生体内へリポソームを導入する場合に血中安定性の向上と細網内皮系からの回避のためにリポソーム表面をPEG修飾した「ステルスリポソーム」が報告されている。ビ
スホスホネート修飾リポソームを生体内で用いることを想定し、リポソームをPEG化した
場合のHAへの吸着をDSPE-PEG-BPリポソームとBPLリポソームとで比較した。
DSPC:コレステロール:DSPE-PEG = 10:5:1(モル比)とし、上記化合物5を、自身と上記3種類の脂質との合計を100mol%とした場合に、自身の濃度が1mol%または5mol%となるよ
うに混合して、実施例1と同様にしてリポソームを調製した。
DSPC:コレステロール:DSPE-PEG:DSPE-PEG-BP = 10:5:(1-x):x(モル比)としてリ
ポソームを調製した(xは0.15(この場合全脂質中のDSPE-PEG-BP量は1mol%)または0.75 (この場合全脂質中のDSPE-PEG-BP量は5mol%))。
造を取っているためではないかと推察される。
アレンドロネート部分がPEG鎖の先端にあるためHA結合能が保持されていると考えられる
。
これは、実施例3のDSPE-PEG-BPリポソームにおいて、アレンドロネートのついていないPEG鎖がアレンドロネートのHA吸着を妨害したためであると考えられる。
<実験>抗癌剤の一種であるドキソルビシン(下記式参照、別名アドリアマイシン、以下Doxと表記)がリモートローディング法(pH勾配法)によりリポソーム内へ取り込まれ
るかの確認を行った。
)になるようにDox水溶液をリポソーム溶液に添加した。その溶液を60℃で10分間加温し
、Doxをリポソーム内へ内包させた。
ソームの破壊)、得られた溶液の480 nmにおける吸光度を測定し、内包されていたDoxの
定量を行った。
する化合物を導入することで、リポソーム表面近傍からアレンドロネートを遠ざけることができ、それによりアレンドロネートのDox取り込みへの干渉を抑制できたことによるも
のと考えられる。しかしながら、全てのリポソームにおいてConventional liposomeより
内包率は低下した。これはアレンドロネートを含まないDSPE-PEGリポソームにおいても内包率が低下していることから、PEGがリポソーム内水相に入り込み(つまりPEGがリポソームの内側を向いている)、Dox内包率が下がるためであると考えられる。
また、薬剤は標的以外の細胞へ作用することに因る副作用が常に問題となるが、本発明のリポソームによれば、骨などへのターゲティングにより副作用の低減が可能となり、全身投与においてこれまでは副作用が強く臨床試験でドロップアウトした薬物を本リポソームに保持させることで利用できるようになる可能性もある。
Claims (8)
- 脂質に結合したポリエチレングリコール誘導体および脂質を構成成分とするリポソームであって、
少なくとも一部の前記脂質に結合したポリエチレングリコール誘導体の、両末端のうち、リポソームの内相および表面からより離れた末端に、リン酸カルシウム結合部位を有する化合物が結合していることを特徴とするリン酸カルシウム結合性リポソーム。 - 前記リン酸カルシウム結合部位を有する化合物が、ビスホスホネート系化合物、テトラサイクリン、4−カルボキシ−3−ヒドロキシ−1,2−ピラゾール、ポリマロン酸および(L-アスパラギン酸)6ペプチドからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物であ
ることを特徴とする請求項1に記載のリン酸カルシウム結合性リポソーム。 - 前記リン酸カルシウム結合性リポソームが、その表面、疎水部または内部の水相のいずれか1つ以上において、生理活性成分を保持していることを特徴とする請求項1または2に記載のリン酸カルシウム結合性リポソーム。
- 前記生理活性成分が、骨疾患の予防薬、治療薬、診断薬または骨再生剤であることを特徴とする請求項3に記載のリン酸カルシウム結合性リポソーム。
- リン酸カルシウム結合部位を有する化合物と、脂質に結合したポリエチレングリコール誘導体とを接触させて得られた化合物と、
脂質と
を混合する工程を含むことを特徴とするリン酸カルシウム結合性リポソームの製造方法。 - 前記リン酸カルシウム結合部位を有する化合物が、ビスホスホネート系化合物、テトラサイクリン、4−カルボキシ−3−ヒドロキシ−1,2−ピラゾール、ポリマロン酸および(L-アスパラギン酸)6ペプチドからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物であ
ることを特徴とする請求項5に記載のリン酸カルシウム結合性リポソームの製造方法。 - 請求項5または6に記載のリン酸カルシウム結合性リポソームの製造方法により得られたリン酸カルシウム結合性リポソームに、生理活性成分を保持させて得られた生理活性成分保持リポソーム。
- 請求項7に記載の生理活性成分保持リポソームを含有する医薬。
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