JP2009279409A - 天然ラテックスを主成分とする靴底の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】靴底の衝撃吸収性、通気性等の基本性能を確保しつつ、美観や廃棄時の環境対応性を損なわないようにする。
【解決手段】液体状又は粉末状の天然ラテックスを主成分とする天然ゴムからなる靴底の製造方法において、ラテックスと、加硫剤、加硫促進剤等の各添加物との混合・撹拌工程においてエアーセルを導入する。連通したエアーセルは空気の通り道となって通気性が確保されるとともに、スリップ抑制効果、衝撃吸収性を発揮する。また、加硫剤等の添加によって、カーボンを添加することなく靴底に要求される強度・硬度を得ることができるため、カーボンによる着色を防止し、良好な美観を発揮する。さらに、自然界において年月とともに次第に分解されるため、環境対応性も高い。
【選択図】なし
【解決手段】液体状又は粉末状の天然ラテックスを主成分とする天然ゴムからなる靴底の製造方法において、ラテックスと、加硫剤、加硫促進剤等の各添加物との混合・撹拌工程においてエアーセルを導入する。連通したエアーセルは空気の通り道となって通気性が確保されるとともに、スリップ抑制効果、衝撃吸収性を発揮する。また、加硫剤等の添加によって、カーボンを添加することなく靴底に要求される強度・硬度を得ることができるため、カーボンによる着色を防止し、良好な美観を発揮する。さらに、自然界において年月とともに次第に分解されるため、環境対応性も高い。
【選択図】なし
Description
この発明は、ゴムの木(Hevea brasiliensis)等から採取した天然のラテックス(Latex)を主成分とする靴底の製造方法に関し、特に、その靴底の衝撃吸収性、圧力分散性、通気性を高めて歩行時の履き心地を高め、高いスリップ抑制効果によって歩行時の安全性を高めるとともに、素材自体の透明感を損なわないように工夫した靴底の製造方法に関する。
靴底の素材として、例えば、合成ゴム、ポリウレタン、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体等が用いられることが多い。
合成ゴムは、硫黄を主成分とする加硫剤を添加して弾性率を調節するとともに、カーボン(carbon)を添加してゴムの硬度を高めることによって、靴底に要求される衝撃吸収性、強度、耐候性等を確保している。
また、ポリウレタンは、衝撃吸収性、成形性、変形後の復元性が良好なため、子供用靴やビジネス用靴の靴底によく用いられており、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体は、比較的安価であるため、靴の種類を問わず幅広く用いられている。
また、ポリウレタンは、衝撃吸収性、成形性、変形後の復元性が良好なため、子供用靴やビジネス用靴の靴底によく用いられており、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体は、比較的安価であるため、靴の種類を問わず幅広く用いられている。
上記のように汎用されている靴底の素材にも、それぞれ欠点がある。
合成ゴムは、ゴムの硬度を確保する目的で添加されるカーボンによって、靴底が黒く着色してしまい、美観を損ねるという問題がある。また、カーボンの添加によってゴムの化学構造が安定しているため、例えば自然界に廃棄された場合に、紫外線等による光分解(Photolysis)が生じにくくなる。このため、環境面で問題となることがある。
また、ポリウレタンは、通気性が劣るとともに、加水分解によって数年のうちに劣化して、使い物にならなくなるという問題がある。
さらに、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体は、衝撃吸収性、成形性、変形後の復元性、通気性等のいずれの面においても良好とはいえず、履き心地の面で不十分なことが多いという問題がある。
合成ゴムは、ゴムの硬度を確保する目的で添加されるカーボンによって、靴底が黒く着色してしまい、美観を損ねるという問題がある。また、カーボンの添加によってゴムの化学構造が安定しているため、例えば自然界に廃棄された場合に、紫外線等による光分解(Photolysis)が生じにくくなる。このため、環境面で問題となることがある。
また、ポリウレタンは、通気性が劣るとともに、加水分解によって数年のうちに劣化して、使い物にならなくなるという問題がある。
さらに、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体は、衝撃吸収性、成形性、変形後の復元性、通気性等のいずれの面においても良好とはいえず、履き心地の面で不十分なことが多いという問題がある。
そこで、この発明は、靴底の衝撃吸収性、通気性等の基本性能を確保しつつ、美観や廃棄時の環境対応性を損なわないようにすることを課題とする。
上記の課題を解決するため、この発明は、加硫剤としての硫黄と、酸化亜鉛と、水とを混合して、ボールミルで粉砕して粉砕物を得る第1工程と、上記粉砕物に、液体状の天然のラテックスを撹拌しつつ混合して、ラテックス混合液を得る第2工程と、上記ラテックス混合液に、加硫促進剤を添加して加硫促進混合液を得る第3工程と、上記加硫促進混合液に、乳化剤と水で乳化した可塑剤を撹拌しつつ混合して、可塑剤混合液を得る第4工程と、上記可塑剤混合液を常温で24時間熟成し、熟成液を得る第5工程と、上記熟成液を靴底の成形型に注入して、150℃の温度で、15〜20分間保持して硬化させ、靴底成形体を得る第6工程と、上記靴底成形体を自然冷却する第7工程と、からなる製造方法によって、天然ラテックスを主成分とする靴底を製造することとした。
天然のラテックスからなる天然ゴムは、高い衝撃吸収性を有しており、優れた履き心地を発揮する。また、加硫によって十分な強度や硬度が得られるため、硬度を高めるためにカーボンを添加する必要がない。このため、靴底が黒く着色せず、天然ラテックスの有する自然な透明感を生かしたデザイン設計を行うことができる。また、上述した光分解特性が損なわれないため、自然界に廃棄されても、年月とともに紫外線によって次第に分解される。このため、廃棄時における環境負荷を小さくすることができる。
また、天然ラテックスは、抗菌作用を有しているといわれており、雑菌の繁殖を防ぎ、足の健康状態を良好に保つというメリットも期待できる。
上記各工程における添加物・混合物の分量として、液体状の天然ラテックス100重量%に対して、硫黄を0.8重量%、酸化亜鉛を0.5重量%、さらに、ジチオカーバメート系の加硫促進剤(NaBDC(JIS K6220−2))を0.4重量%とするのが好ましい。ここで分量の単位を「重量%」としたが、「重量部」と読み替えることもできる。読み替えても各成分の比率自体には影響しないからである。この添加物・混合物の分量は、靴底に要求される衝撃吸収性、強度等が確保できるのであれば、上記各数値からの若干の変動は許容される。
酸化亜鉛は、第3工程で添加する加硫促進剤を活性化し加硫効率を向上するために、加硫促進助剤として添加されるものである。
第1工程における粉砕手段は、簡便に実施し得る点においてボールミル(Ball mill)が最も好ましいが、同様の粉砕効率が得られるのであれば、例えばハンマー式等の他の粉砕手段も採用し得る。
上記第2〜4の各工程では、各混合液の撹拌混合が行われ、その際に、混合液内に細かなエアーセル(Air cell)が形成される。この撹拌の撹拌速度を高めたり、撹拌時間を長くしたりすることによって、エアーセル量が次第に増大し、やがて隣り合うエアーセル同士が互いに連通するようになる。このように連通状態となると、エアーセル内を通って空気を流すことができるため、靴底を成形した際にこの靴底の通気性を確保することができる。このため、靴内に湿気がこもりにくく、履き心地が向上する。また、上記エアーセルを導入することで、素材自体の柔軟性も向上するため、その履き心地が一層向上する。
さらに、靴底に多数のエアーセルを形成することによって、靴底の表面(地面に接する底面側)にこのエアーセルが露出して細かな凹凸が形成される。この凹凸が地面をグリップするとともに、ラテックスからなる天然ゴム自体が滑り止め作用を有するため、高いスリップ抑制(Non slip)効果が発揮される。また、靴の使用に伴って靴底が摩耗しても、靴底内に内包されるエアーセルが次々に表面に露出するため、常にそのスリップ抑制効果が維持される。
第3工程で加硫促進剤を添加することで、加硫剤として添加した硫黄による加硫(架橋)が促進され、速やかに所定の弾性を有するゴム材が生成される。また、第4工程で可塑剤を乳化しておくことにより、加硫促進混合液中に、均一に可塑剤を混合することができる。
第5工程における熟成時間は、熟成液の特性(粘性、含有エアーセル量等)に大きな差異がない限り、24時間からの若干の変動は許容される。天然のラテックスは、産地等によってその成分の若干のばらつきがあるのが一般的であって、上記熟成時間を若干調節することによって、最適な熟成状態とする必要もあり得るからである。
第6工程における硬化温度は、靴底に要求される硬度が確保できるのであれば、150℃からの若干の変動は許容される。これも、上記熟成時間の変動と同じ理由による。
また、保持時間は長すぎると靴底が硬くなりすぎて履き心地が低下する一方で、短すぎると十分な耐久性が発揮できないため、上記硬化温度で硬化させる際は、15〜20分の範囲とするのが好ましい。この硬化温度に若干の変動が生じた場合は、それに対応して上下限時間を若干変動させることも許容される。
また、保持時間は長すぎると靴底が硬くなりすぎて履き心地が低下する一方で、短すぎると十分な耐久性が発揮できないため、上記硬化温度で硬化させる際は、15〜20分の範囲とするのが好ましい。この硬化温度に若干の変動が生じた場合は、それに対応して上下限時間を若干変動させることも許容される。
第7工程における自然冷却は、常温においてそのまま放置するのが一般的であるが、常温の空気をファン等で送風するのも許容される。
上記の一連の工程の代わりに、加硫剤としての硫黄と、ステリアン酸と、酸化亜鉛と、水とを混合して、ボールミルで粉砕して粉砕物を得る第1工程と、上記粉砕物に、水分を蒸発させて粉末状とした天然のラテックスを撹拌しつつ混合して、ラテックス混合液を得る第2工程と、上記ラテックス混合液に、加硫促進剤を添加して加硫促進混合液を得る第3工程と、上記加硫促進混合液を常温で24時間熟成し、熟成液を得る第4工程と、上記熟成液を靴底の成形型に注入して密閉し、150℃の温度で、15〜20分間保持して硬化させ、靴底成形体を得る第5工程と、上記靴底成形体を自然冷却する第6工程と、からなる製造方法によって、天然ラテックスを主成分とする靴底を製造することもできる。
上記各工程における添加物・混合物の分量として、粉末状の天然ラテックス100重量%に対して、硫黄を1.7重量%、ステリアン酸を2重量%、酸化亜鉛を3重量%、さらに、チアゾール系の加硫促進剤(MBT(JIS K6220−2))を1.5重量%、チウラム系の加硫促進剤(TMTD(JIS K6220−2))を0.2重量%とするのが好ましい。ここでも、上述したのと同じ理由で、「重量%」を「重量部」と読み替えることができる。この添加物・混合物の分量は、靴底に要求される衝撃吸収性、強度等が確保できるのであれば、上記各数値からの若干の変動は許容される。
この一連の工程は、先に説明した一連の工程と、第1工程においてステアリン酸を用いた点、第2工程において粉末状の天然ラテックスを用いた点、第4工程において加硫促進混合液から直接熟成液を得た点、第5工程において熟成液を型内で密閉した点、において異なっている。
このステアリン酸も、酸化亜鉛と同様に、加硫促進助剤として添加される。このようにステアリン酸と酸化亜鉛をともに、添加することにより、より高い加硫促進効果が期待できる。
また、液体状の天然ラテックスの水分を蒸発させた粉末状のラテックスを用いたことにより、ラテックスの容積を大幅に小さくできる等、取り扱い上の利便性が高い。
また、液体状の天然ラテックスの水分を蒸発させた粉末状のラテックスを用いたことにより、ラテックスの容積を大幅に小さくできる等、取り扱い上の利便性が高い。
この方法においても、上述した方法と同様に、各混合液の撹拌混合の際にエアーセルが形成され、靴底に通気性、柔軟性、スリップ抑制効果等が付与される。このため、この靴底を使用した靴の履き心地が向上する。また、抗菌作用を有するとともに、高い環境対応性を備えている。
この発明によると、靴底を天然のラテックスを主成分とする天然ゴムで形成するとともに、その製造工程において、この靴底内にエアーセルを導入した。このエアーセルは、靴底内で連通することによって空気の通り道を確保するため、通気性等の靴底としての基本性能を高めることができる。
また、ラテックスは加硫剤で加硫(架橋)されており、その結合は紫外線等によって、年月の経過とともに次第に切断される。このため、自然界において次第に分解され、環境対応性を高めることができる。
また、ラテックスは加硫剤で加硫(架橋)されており、その結合は紫外線等によって、年月の経過とともに次第に切断される。このため、自然界において次第に分解され、環境対応性を高めることができる。
まず、液体状の天然ラテックスを使用した靴底の製造方法について説明する。
はじめに、加硫剤としての硫黄(Sulphur)と酸化亜鉛(ZnO)を水とともにボールミル(Ball mill)で粉砕し、硫黄(Sulphur)と酸化亜鉛(ZnO)の粉砕物に、液体状の天然ラテックスに撹拌しつつ混合し、ラテックス混合液を得る。
次に、このラテックス混合液に、ジチオカーバメート(dithio carbamate)系の加硫促進剤であるNaBDC(Na−dibutyl diathiocarbamate:NOCCELER TP)を添加し、さらに約30分間撹拌して加硫促進混合液を得る。
上記混合工程においては、液体状のラテックス100重量%に対して、硫黄(Sulphur)0.8重量%、酸化亜鉛(ZnO)0.5重量%、NaBDC0.4重量%をそれぞれ混合・添加する。
さらに、可塑剤(Plasticizer)であるNEDCIZER−A((株)エキョン乳化製)を、乳化剤であるKoremul−NP5((株)ハンノン化成製)で水に乳化させ、これを上記加硫促進混合液に撹拌しつつ混合し、可塑剤混合液を得る。
この可塑剤混合液をさらに十分撹拌した後、常温で24時間熟成し、熟成液を得る。
この熟成液を靴底の成形型に注入して、150℃の温度で、15〜20分間保持して硬化させ、靴底成形体を得る。
そして、この靴底成形体を自然冷却して靴底を得る。
次に、水分を蒸発させた粉末状の天然ラテックスを使用した靴底の製造方法について説明する。
はじめに、加硫剤としての硫黄(Sulphur)と、ステアリン酸(Stearicacid)と、酸化亜鉛(ZnO)とを水とともにボールミル(Ball mill)で粉砕し、硫黄(Sulphur)と酸化亜鉛(ZnO)の粉砕物に、粉末状の天然ラテックスに撹拌しつつ混合し、ラテックス混合液を得る。
次に、このラテックス混合液に、チアゾール(Thiazole)系の加硫促進剤であるMBT(2−Mercapto benzo thiazole:NOCCELER M)、及び、チウラム(Thiuram)系の加硫促進剤であるTMTD(Tetramethylthiuramdisulfide:NOCCELER TT)を少しずつ添加し、加硫促進混合液を得る。
このMBTは、最も広く用いられている加硫促進剤の一つであって、TMTDは、非常に高い効力を有する加硫促進剤の一つである。
このMBTは、最も広く用いられている加硫促進剤の一つであって、TMTDは、非常に高い効力を有する加硫促進剤の一つである。
上記混合工程においては、粉末状のラテックス100重量%に対して、硫黄(Sulphur)1.7重量%、ステアリン酸(Stearic acid)2重量%、酸化亜鉛(ZnO)3重量%、MBT1.5重量%、TMTD0.2重量%をそれぞれ混合・添加する。
この加硫促進混合液をさらに十分撹拌した後、常温で24時間熟成し、熟成液を得る。
この熟成液を靴底の成形型に注入して密閉し、150℃の温度で、15〜20分間保持して硬化させ、靴底成形体を得る。
そして、この靴底成形体を自然冷却して靴底を得る。
上記実施例1及び2に記載の製造方法で製造された靴底を靴に適用すると、天然のラテックスの有する物性(弾性等)に加え衝撃吸収性が向上するとともに、足の裏にかかる圧力分布が改善し、履き心地が向上する。
さらに、撹拌工程においてエアーセルを内包させたので、連通するエアーセルが通気性を確保するとともに、このエアーセルが靴底の表面(底面)に露出することにより、スリップ抑制効果が高まる。
また、天然ラテックスに加硫剤及び加硫促進剤を添加することで十分な強度・硬度が得られるため、カーボンを添加する必要がない。このため、天然ラテックスの有する自然な透明感を生かすことができ美観に優れるとともに、自然界において次第に分解され、環境対応性が高い。
Claims (2)
- 加硫剤としての硫黄と、酸化亜鉛と、水とを混合して、ボールミルで粉砕して粉砕物を得る第1工程と、
上記粉砕物に、液体状の天然のラテックスを撹拌しつつ混合して、ラテックス混合液を得る第2工程と、
上記ラテックス混合液に、加硫促進剤を添加して加硫促進混合液を得る第3工程と、
上記加硫促進混合液に、乳化剤と水で乳化した可塑剤を撹拌しつつ混合して、可塑剤混合液を得る第4工程と、
上記可塑剤混合液を常温で24時間熟成し、熟成液を得る第5工程と、
上記熟成液を靴底の成形型に注入して、150℃の温度で、15〜20分間保持して硬化させ、靴底成形体を得る第6工程と、
上記靴底成形体を自然冷却する第7工程と、
から構成される天然のラテックスを主成分とする靴底の製造方法。 - 加硫剤としての硫黄と、ステリアン酸と、酸化亜鉛と、水とを混合して、ボールミルで粉砕して粉砕物を得る第1工程と、
上記粉砕物に、水分を蒸発させて粉末状とした天然のラテックスを撹拌しつつ混合して、ラテックス混合液を得る第2工程と、
上記ラテックス混合液に、加硫促進剤を添加して加硫促進混合液を得る第3工程と、
上記加硫促進混合液を常温で24時間熟成し、熟成液を得る第4工程と、
上記熟成液を靴底の成形型に注入して密閉し、150℃の温度で、15〜20分間保持して硬化させ、靴底成形体を得る第5工程と、
上記靴底成形体を自然冷却する第6工程と、
から構成される天然のラテックスを主成分とする靴底の製造方法。
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