JP2009207461A - 蛋白質の安定化のための温度応答性ポリマーの使用 - Google Patents

蛋白質の安定化のための温度応答性ポリマーの使用 Download PDF

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Abstract

【課題】 蛋白質を含む液状組成物中における蛋白質の安定化方法を提供すること。
【解決手段】 温度応答性ポリマーによる蛋白質を含む液状組成物中における蛋白質の保護、およびポリアクリル酸による温度応答性ポリマーの脱離を特徴とする。
【選択図】 図4

Description

本発明は、温度応答性ポリマーの使用に関し、特に、温度応答性ポリマーを用いる液状組成物中の蛋白質の安定化方法および温度応答性ポリマーを有効成分とする該蛋白質の安定化剤に関する。
近年、臨床診断の分野では、多くの種類の生体由来の蛋白質を、特異的かつ高精度に測定することが要求されている。この要求を満たすためには、測定技術の進歩もさることながら、測定対象となる蛋白質を含む試薬を安定に保存させておくことが求められる。しかし、蛋白質の中には、例えば、アスコルビン酸オキシダーゼやパーオキシダーゼ等、きわめて保存安定性の悪いものが存在する。一般に多くの蛋白質は、液状組成物中で温度、光、pH、塩濃度や酸化といった外的因子によって容易にその高次構造が破壊され、生理活性が失われてしまうため、蛋白質を含む試薬などの液状組成物の安定性を保つためには、外的因子から蛋白質を保護し、その生理活性を保持させることが重要となる。したがって、蛋白質を含む試薬を用いる場合には、蛋白質の精製工程や調合の際に、常にpHや塩濃度、温度といった外的因子に注意を払う必要がある。これらの外的因子から蛋白質を守るために、蛋白質を含む試薬は低温でかつ生理的条件下で保存しておくことが望ましいが、長期に渡って蛋白質の安定性を保持し続けることは難しい。
そこで、これまでに、液状組成物中における蛋白質の安定化方法について、多くの方法が提案されてきた。今までに効果的な方法として知られているのは、アルギニンなどのアミノ酸を安定化剤として用いる方法がある(例えば非特許文献1を参照のこと)。この他にも、蛋白質を含む液状組成物中における蛋白質の安定化のための有効成分としては、例えば、特許文献1にアミノ酸エステルやポリアミンが記載されており、非特許文献2にポリエチレングリコールが記載されている。しかしながら、いずれの方法も、熱に対して蛋白質を完全に安定化するものではない。
特開2004−108850号公報 K.Shiraki,et.al.「J.Biochem.」2002年、132巻、p591−595 Cleland JL,et.al.「J.Biol.Chem.」1992年、267巻、p13327−13334
上記のとおり、従来の蛋白質安定化剤にはアルギニンやアミノ酸エステル、ポリエチレングリコールおよびポリアミンなどが挙げられるが、例えば、アルギニンなどのアミノ酸やポリエチレングリコールでは安定化剤としての効果が低く、また、アミノ酸エステルも効果が低くい上に加水分解されやすく、一方、ポリアミンは効果が低く毒性が強い、といった問題があった。そこで本発明では、温度応答性ポリマーを用いて、蛋白質を含む液状組成物中における蛋白質の優れた安定化方法を提供することを目的とする。
上記の課題を解決するための手段として、本発明者らは温度に応答して親水性から疎水性へ変化する温度応答性ポリマーを用いることで、蛋白質を含む液状組成物中における蛋白質の安定性が著しく向上することを見出した。
本発明は、このような知見に基づいてなされたものであり、蛋白質を含む液状組成物中における蛋白質の安定化方法であって、温度応答性ポリマーを液状組成物中に共存させることを特徴とする方法、また、別の態様として、温度応答性ポリマーを有効成分とする蛋白質を含む液状組成物中における蛋白質の安定化剤を提供する。
また、別の態様の本発明として、温度応答性ポリマーを蛋白質の安定化剤として共存性せめることを特徴とする蛋白質を含む液状組成物、例えば、生体成分測定用試薬として使用するための組成物も提供する。
こうして安定化せしめた蛋白質と温度応答性ポリマーを含む液状組成物は、該組成物にアニオン性ポリマーを混合することにより温度応答性ポリマーと蛋白質の相互作用の除去し、好ましくは、蛋白質の本来活性の回復をもたらすことができるので、蛋白質の活性を利用する直前に回復させ、蛋白質本来の用途に当該組成物を都合よく利用できる。このような相互作用の除去方法も本発明の一態様である。
本発明によれば、温度応答性ポリマーは蛋白質の構造を本質的に変化させることなく、タンパク質の安定性、例えば熱安定性、を向上せしめることができる。このような安定性の向上は、理論により拘束されるものではないが、特に、水性の液状組成物中で、温度応答性ポリマーと蛋白質が何らかの複合体を形成して存在することに起因するものと予測される。そして上述したとおり、アニオン性ポリマーをこの液状組成物に混合せしめると、該複合体から蛋白質が解離し、蛋白質本来の活性を奏するようになるものと解される。したがって、本発明の液状組成物は蛋白質の本来の活性を容易に回復することができるので、対象とする蛋白質の特性に応じて多様な目的に使用することができる。
<発明の詳細な記述>
本発明にいう、「温度応答性ポリマー」は、温度感受性ポリマーとも称され、上述したとおり、例えば、水溶液中で温度に応答して親水性から疎水性へと変化するポリマーを意味する。換言すれば、該ポリマーを含有する水性の液状組成物中の該ポリマーは組成物の温度が上昇するにつれ溶解度を低下せしめる挙動を示す。具体的には、該ポリマーは、室温付近では、それを含有する水溶液が温度を上昇させるにつれ、例えば、45℃以上になると白濁してくる、所謂、曇天を有する。
このような範疇に入るポリマーであって、本発明の目的に沿うものであれば、ポリマーを構成する反復単位の種類を問うことなく本発明で使用できる。限定されるものではないが、このようなポリマーとしては、ポリ(N−アルキル置換アクリルアミド)、ここでアルキルは直鎖もしくは分岐のC1−6アルキルである、例えば、ポリ(N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド)(PNIPAM)、ポリ(N−ビニルアルキルアミド)、ここでアルキルはC4−6アルキルである、例えば、ポリ(N−ビニルカプロラクタム)、ポリ(ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレート)、ここで、アルキルは直鎖もしくは分岐のC1−6アルキルである、例えば、ポリ(ジエチルアミノエチルメタクリレート)、ポリ(N−アルキルオキサゾリン)、ここでアルキルは直鎖もしくは分岐のC1−6アルキルである、例えば、ポリ(N−エチルオキサゾリン)、メチルビニルエーテル、カルボキシメチルセルロースまたはポリ(N,N’−ジエチルアクリルアミド)等を挙げることができ、これらのポリマーの分子量は一般に、約2000〜250000にある。さらに、これらのポリマーが誘導されたモノマーとポリエチレングリコール化マクロマー(例えば、アルキルオキシ−ポリエチレングリコール−メタクリロイル)、ここでアルキルは、ここでアルキルは直鎖もしくは分岐のC1−6アルキルである、メチルオキシポリエチレングリコールメタクリロイルまたはビニルピロリドンへとの共重合体を本発明の温度応答性ポリマーとして好ましく使用できる。これらの共重合体のうち、メタクリル酸ジエチ
ルアミノエチルとポリエチレングリコール化メタクリレートの共重合体を、特に好ましいものとしてあげることができる。かような共重合体は、例えば、下記一般式で表すことができる。
一般式I:
式中、nは5〜50の整数であり、xは30〜500、好ましくは30〜300の整数であり、そしてyは、5〜200、好ましくは5〜100、より好ましくは10〜50の整数である。
上記の温度応答性ポリマーの詳細については、例えば、Prog.Polym.Sci.29(2004),1173−1222、Prog.Polym.Sci.32(2007),1205−1237、Advanced Drug Delivery Reviews 58(2006),1655−1670を参照。これらの文献に記載されている事項は引用することにより本明細書の内容となる。
上記の共重合体は、上記文献によりそれ自体既知のものであるか、または既知の方法で製造できる。他方、上記一般式Iで表される重合体は、マクロマーとしてのポリエチレングリコール化したメタクリレートとジエチルアミノエチルメタクリレートの共重合により得ることができる。ポリエチレングリコール鎖をペンダント鎖として有するその他の共重合体も、同様に、マクロマーとしてのポリエチレングリコール化したメタクリレート(またはアクリレート)と重合性不飽和基を有するコモノマー、例えば、N−イソプロピルアクリルアミド、N−ビニルカプロラクタム、またはN,N−ジエチルアクリルアミドとの共重合により得ることができる。これら重合体は上記のような、水溶液中で温度の上昇に応じて親水性から疎水性へ変動するものであれば、その分子量は限定されないが、上記一般式Iを参照に重合度または分子量を選ぶことができる。
このようなポリマーにより安定化せしめられる蛋白質には、周囲温度等の環境に感受性で不安定な蛋白質に限定されることなく、液状組成物の状態で使用または処理中に安定化を図る必要がある蛋白質、また、使用前、特に、直前に本来の活性を回復させて使用するような蛋白質(糖蛋白質、リポ蛋白質を包含する)であれば、その分子の種類および作用(酵素、抗体、生理活性を有する蛋白質因子、等)の種類を問うことなく、如何なる蛋白質も包含される。限定されるものでないが、パーオキシダーゼに例示される酸化還元酵素やエステラーゼやリゾチームに例示される加水分解酵素など各種の酵素、アルブミン、血液凝固因子、免疫グロブリン、C反応性蛋白質(CRP)、リューマチ因子(RF)などの血漿蛋白質の他、これらの蛋白質に対する抗体、HBV、HCV、HIVなどのウイルスに対する抗体などを前記酵素として挙げることができる。これらは生物個体から単離精製したものであってもよいし、遺伝子工学的手法によって生産されたものであってもよい。また、本発明において安定化の対象となる液状組成物に含まれる蛋白質は、ラテックス、シリカビーズ、マイクロプレート、チューブ、ガラス基盤、磁性粒子などの担体に結合させたものであってもよい。
本発明に従えば、目的とする蛋白質の安定化するための蛋白質と温度応答性ポリマーの
使用割合は、蛋白質の種類および使用する温度応答性ポリマーにより最適範囲が変動するので限定できないが、例えば上記一般式Iにおいて、xが50〜150で、yが20で、nが20で表されるポリマーを用いて卵白リゾチームを安定化する場合には、モル比によると、蛋白質に対してポリマーを約40倍以上使用するのがよい。したがって、一般的には、蛋白質に対して温度応答性ポリマーを20倍以上、好ましくは30倍以上、より好ましくは40倍以上、最も好ましくは50倍以上となるように使用することができる。濃度が低すぎると蛋白質に対する優れた安定化効果が得られない恐れがある一方、濃度が高すぎると蛋白質を含む液状組成物を抗原抗体反応などの免疫反応を行うための試薬などとして用いる場合、反応抑制や非特異性反応を引き起こすなどして特異的かつ高精度な測定を阻害する恐れがある。
本発明の温度応答性ポリマーを蛋白質の安定化剤として共存させてなる蛋白質を含む液状組成物は、蛋白質を含む液状組成物にこれらの成分を溶解させることにより調製することができる(必要に応じて界面活性剤やアルコールなどの溶解補助剤を用いてもよい)。蛋白質を含む液状組成物としては、例えば蛋白質を0.1μg/ml〜100mg/mlの濃度で溶解させたpHが2〜12で濃度が1mM〜500mMの緩衝液(リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、トリス緩衝液など)が挙げられる。蛋白質を含む液状組成物は、自体公知の添加成分である含硫還元剤、酸化防止剤、防腐剤、溶解補助剤、pH調整剤などを含んでいてもよい。
本発明の温度応答性ポリマーを蛋白質の安定化剤として共存させてなる蛋白質を含む液状組成物は、生体由来の蛋白質を生化学的、免疫学的に測定するための試薬や、測定対象となる蛋白質を含む標準試薬などの生体成分測定用試薬として用いることができる。
また、本発明の蛋白質を含む液状組成物中における蛋白質の安定化方法は、蛋白質を含む液状医薬品製剤(例えば注射剤など)において、また、目的とする蛋白質の各種処理工程(例えば、精製工程)中で採用することができる。従って、本発明の温度応答性ポリマーを蛋白質の安定化剤として共存させてなる蛋白質を含む液状組成物は、蛋白質を含む液状医薬品製剤または精製処理中の被処理液であってもよい。
本発明の温度応答性ポリマーを蛋白質の安定化剤として共存させてなる蛋白質を含む液状組成物は、蛋白質と温度応答性ポリマーの相互作用により蛋白質が本来示す、作用または機能が失われる場合があるが、かような液状組成物とアニオン性ポリマー(それ自体が固体あるかまたは固相に固定化されていてもよい)を混合することにより該相互作用した状態を解消し、蛋白質本来の作用または機能を回復することができる。混合は、アニオン性ポリマーの存在する環境下に該液状組成物を添加するか、逆に、該液状組成物中にアニオン性ポリマーを添加により行うことができる。
蛋白質と温度応答性ポリマーの相互作用の除去に用いられるアニオン性ポリマーは、分子内に負電荷の官能基を持つポリマーであれば限定されるものではないが、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、その他のカチオン交換樹脂などが例示される。アニオン性ポリマーの濃度は0.1mmol以上が望ましく、5mmol以上がより望ましい。
さらに、本発明は、以下のごとき評価を行うことで、最適な使用態様を決定することもできる:
1) 温度応答性ポリマー共存下での蛋白質の熱に対する安定性の評価
蛋白質を含む液状組成物に、蛋白質に対して温度応答性ポリマーを20から100倍量加え、98℃で加熱する。加熱後遠心して液状組成物中に生じた凝集沈殿を分離し、上清画分に含まれる蛋白質の濃度を評価する。
2) 温度応答性ポリマーが蛋白質の立体構造に与える影響
蛋白質を含む液状組成物中に、蛋白質に対して温度応答性ポリマーを20から100倍量加える。得られた液状組成物の二次構造を、円二色性分散計を用いて評価する
3) ポリアクリル酸による温度応答性ポリマーの脱離
蛋白質を含む液状組成物に、蛋白質に対して温度応答性ポリマーを20から100倍量加え、98℃で加熱する。加熱後、遠心分離して取り分けた上清画分に、ポリアクリル酸を加え、上製画分の酵素活性を測定する。
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明は以下の記載に限定して解釈されるものではない。
本実施例で使用するポリマーは、上記一般式Iで表され、一般式Iにおいて、x、y、nがそれぞれ下記の表に表されるようなポリマーを挙げることができる。
上記のyがポリマー中のアミノ基の数に該当する。
温度応答性ポリマーとしてポリメタクリル酸ジエチルアミノエチルとポリエチレングリコールのグラフト共重合体を使用した場合の蛋白質を含む液状組成物中における蛋白質の安定化作用
(実験方法)
0.5mg/mlのニワトリ卵白リゾチーム(Sigma社)を含む50mMリン酸緩衝液(pH7.0)に、ポリマー中のアミノ基の数が約20個と約33個である2種類のポリメタクリル酸ジエチルアミノエチルとポリエチレングリコールのグラフト重合体をモル比でニワトリ卵白リゾチームに対して0から100倍量加えた溶液を作製した。この溶液を98℃で1〜20分間加熱した。加熱後、15000rpmで20分間遠心分離(株式会社日立ハイテクノロジーズ製 himac CF15rxを使用)し、上清画分を取り分けた。得られた上清画分に含まれる蛋白質の濃度を、分光光度計(ナノドロップテクノロジー社製 ND−1000)を用いて、波長280nmによる吸光度から測定した。
(実験結果)
図1に、含有アミノ基が20のポリメタクリル酸ジエチルアミノエチルとポリエチレングリコールのグラフト共重合体を用いた場合の、横軸を加熱時間(分)、縦軸を溶解ニワトリ卵白リゾチーム濃度(加熱処理前の溶解濃度を100%とした場合の加熱処理後の溶解濃度)とするグラフを示す。また、含有アミノ基が約33の場合の図1と同様のグラフを図2に示す。図1、2から明らかなように、アミノ基が20個であるポリマーではニワトリ卵白リゾチームに対してモル比で40倍以上添加すると蛋白質の凝集は完全に形成しなかった。また、アミノ基が33個であるポリマーでは20倍以上添加すると完全に蛋白質の凝集は完全に形成しなかった。
温度応答性ポリマーが蛋白質を含む液状組成物中における蛋白質の二次構造に及ぼす影響
(実験方法)
0.25mg/mlのニワトリ卵白リゾチームを含む50mMリン酸緩衝液(pH7.0)を作製し、アミノ基を33個含むポリメタクリル酸ジエチルアミノエチルとポリエチレングリコールのグラフト共重合体をモル比でニワトリ卵白リゾチームに対して0から80倍量加えた。作製した溶液のポリメタクリル酸ジエチルアミノエチルとポリエチレングリコールのグラフト重合体添加による二次構造変化を、円偏光二色性分散計(日本分光社製 Jasco J720w)を用いて、波長195nmから255nmのスペクトル変化より評価した。
(実験結果)
図3に、含有アミノ基が33個のポリメタクリル酸ジエチルアミノエチルとポリエチレングリコールのグラフト共重合体を用いた場合の、円偏光二色性スペクトルのグラフを示す。図3から明らかなように、アミノ基を33個含むポリメタクリル酸ジエチルアミノエチルとポリエチレングリコールのグラフト重合体を添加することによるニワトリ卵白リゾチームの二次構造変化は認められなかった。なお、含有アミノ基の数を変えた場合においても同様の傾向が見られた。
温度応答性ポリマーによる蛋白質を含む液状組成物中における蛋白質の安定化と、アニオン性ポリマーを使用した温度応答性ポリマーの脱離による酵素活性の回復
(実験方法)
実施例1と同様、0.5mg/mlのニワトリ卵白リゾチーム溶液に、アミノ基を20個含むポリメタクリル酸ジエチルアミノエチルとポリエチレングリコールのグラフト重合体をモル比でニワトリ卵白リゾチームに対して20倍量加えた溶液を作製し、98℃で加熱した。加熱した溶液を、15000rpmで20分間遠心分離し、上清画分を取り分けた。得られた上清画分の溶液とポリアクリル酸を1:1で混合した。このとき、ポリアクリル酸の終濃度は0から10mMとなるように調整した。ポリアクリル酸を含む上記の上清画分10μlと0.5mg/mlのMicrococcus lysodeikticus溶液(Sigma社)(50mMリン酸緩衝液、pH7.0)1490μlを混合し、分光光度計(日本分光社製 V−550)を用いて波長600nmにおける吸光度変化からニワトリ卵白リゾチームの酵素活性を測定した。
(実験結果)
図4に、含有アミノ基が33のポリメタクリル酸ジエチルアミノエチルとポリエチレングリコールのグラフト共重合体をニワトリ卵白リゾチームに対してモル比で20倍添加した場合の、加熱時間(分)に対するニワトリ卵白リゾチームの酵素活性(加熱処理前の酵素活性を100%とした場合の加熱処理後の残存酵素活性)、及び分子量5000のポリアクリル酸添加後のニワトリ卵白リゾチーム酵素活性を示す。図4から明らかなように、含有アミノ基が33のポリメタクリル酸ジエチルアミノエチルとポリエチレングリコールのグラフト共重合体をニワトリ卵白リゾチーム溶液に共存させた場合には、加熱時間によらずニワトリ卵白リゾチームの酵素活性は低下した。しかしながら、ポリマー共存下で加熱処理を行ったニワトリ卵白リゾチーム溶液に、さらにポリアクリル酸を10mmol共存させることで、ニワトリ卵白リゾチームの酵素活性の回復が認められた。
本発明により、蛋白質を含む液状組成物中における蛋白質の完全な安定化手段の提供ができる点において産業上の利用可能性を有する。
実施例1における含有アミノ基が20のポリメタクリル酸ジエチルアミノエチルとポリエチレングリコールのグラフト共重合体をニワトリ卵白リゾチーム溶液に添加した場合の、ニワトリ卵白リゾチームの安定化作用を示すグラフである。 同、含有アミノ基が33のポリメタクリル酸ジエチルアミノエチルとポリエチレングリコールのグラフト共重合体をニワトリ卵白リゾチーム溶液に添加した場合の、ニワトリ卵白リゾチームの安定化作用を示すグラフである。 実施例2における含有アミノ基が33のポリメタクリル酸ジエチルアミノエチルとポリエチレングリコールのグラフト共重合体をニワトリ卵白リゾチーム溶液に添加した場合の、ニワトリ卵白リゾチームの二次構造へ及ぼす影響を示すグラフである。 実施例3における含有アミノ基が33のポリメタクリル酸ジエチルアミノエチルとポリエチレングリコールのグラフト共重合体をニワトリ卵白リゾチームに対してモル比で20倍添加した場合の、加熱時間に対するニワトリ卵白リゾチームの酵素活性の結果、及び、ポリアクリル酸添加後のニワトリ卵白リゾチームの酵素活性の結果である。

Claims (11)

  1. 蛋白質を含む液状組成物中における蛋白質の安定化方法であって、温度応答性ポリマーを液状組成物中に共存させることを特徴とする方法。
  2. 温度応答性ポリマーが、ポリ(N−アルキル置換アクリルアミド)、ポリ(N−ビニルアルキルアミド)、ポリ(ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレート)、ポリ(N−アルキルオキサゾリン)、メチルビニルエーテル、カルボキシメチルセルロースまたはポリ(N,N’−ジエチルアクリルアミド)、ポリメチルビニルエーテルおよびカルボキシメチルセルロース、並びにN−アルキル置換アクリルアミド、ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−アルキルオキサゾリン、N,N’−ジエチルアクリルアミドまたはジエチルアミノエチルメタクリレートとポリエチレングリコールマクロマーまたはポリビニルピロリドンとの共重合体からなる群より選ばれる請求項1記載の方法。
  3. 温度応答性ポリマーがポリメタクリル酸ジエチルアミノエチルとポリエチレングリコールのグラフト重合体であることを特徴とする請求項1または2記載の方法。
  4. 温度応答性ポリマーのモル比が蛋白質に対し20倍以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
  5. 温度応答性ポリマーを有効成分とする蛋白質を含む液状組成物中における蛋白質の安定化剤。
  6. 温度応答性ポリマーが、ポリ(N−アルキル置換アクリルアミド)、ポリ(N−ビニルアルキルアミド)、ポリ(ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレート)、ポリ(N−アルキルオキサゾリン)、メチルビニルエーテル、カルボキシメチルセルロースまたはポリ(N,N’−ジエチルアクリルアミド)、ポリメチルビニルエーテルおよびカルボキシメチルセルロース、並びにN−アルキル置換アクリルアミド、ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−アルキルオキサゾリン、N,N’−ジエチルアクリルアミドまたはジエチルアミノエチルメタクリレートとポリエチレングリコールマクロマーまたはポリビニルピロリドンとの共重合体からなる群より選ばれることを特徴とする請求項5記載の方法。
  7. 温度応答性ポリマーを蛋白質の安定化剤として共存せしめることを特徴とする蛋白質を含む液状組成物。
  8. 生体成分測定用試薬として使用するための請求項7記載の組成物。
  9. 温度応答性ポリマーを共存せしめた蛋白質を含む液状組成物にアニオン性ポリマーを混合することを特徴とすることによる温度応答性ポリマーと蛋白質の相互作用の除去方法。
  10. アニオン性ポリマーがポリアクリル酸であることを特徴とする請求項9記載の方法。
  11. 相互作用の除去が蛋白質の本来の活性の回復をもたらすことを特徴とする請求項9または10記載の方法。
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