JP2009191164A - ポリγ−グルタミン酸誘導体及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、ポリγ−グルタミン酸誘導体及びその製造方法に関する。
従来より浄水汚泥のリサイクルが切望されているが、解決すべき課題がいくつかあり、その一つが汚泥の脱水技術の向上である。リサイクルのためには無薬注による脱水が好ましいことから、長時間の脱水または天日干しにより含水率を調節するなど、非効率的な脱水を行わざるを得ないことが問題となっている。また、浄水汚泥は、従来の凝集剤を用いて脱水しても、十分に含水率を低下させるのは困難であり、高コストとなる。さらに、従来の凝集剤は環境に対して無害であるとは言えない。
汚泥の脱水を高効率かつ環境に対して無害にするために、生分解性と感温性を併せ持つ
生分解性高分子材料を用いることが望ましい。このことで、含水率を改善し、再資源化を促進することができる。高分子材料の感温特性を向上させるためには、構成するモノマー単位の純度を高める必要がある。これまでに、感温性を示す各種の生分解性高分子材料が報告されている(特許文献1〜3)。
生分解性高分子材料を用いることが望ましい。このことで、含水率を改善し、再資源化を促進することができる。高分子材料の感温特性を向上させるためには、構成するモノマー単位の純度を高める必要がある。これまでに、感温性を示す各種の生分解性高分子材料が報告されている(特許文献1〜3)。
特許文献1には、ポリγ−グルタミン酸(γ−PGA)の側鎖カルボキシル基を介する部分的に親水性基をグラフトおよび部分的に疎水性基を導入した親−疎水性修飾ポリγ−グルタミン酸が記載されている。また、特許文献2には、スルホアルキルアミノ基が導入されたγ−ポリグルタミン酸誘導体が記載されているが、特許文献2のポリマーは十分な感温特性を示さない。さらに、特許文献3には、ポリアスパラギン酸の側鎖をアミド化したものが記載されている。しかし、特許文献3のポリマーは、対応するポリコハク酸イミドとアルキルアミンの開環付加反応により合成され、反応が完全に進行しないためコハク酸イミド残基が残留しており感温特性は高くない。
ジカルボン酸とジアミンとのポリアミド合成について縮合剤を用いた高分子合成が盛んに研究され、様々な縮合剤が開発されている。これらの重合を通して、亜リン酸トリフェニル(TPP)−ピリジン系などの縮合剤が開発されてきた(「有機合成協会誌」東著、第47巻、995頁、1989年)。しかしながら、この縮合剤は芳香族アミンのアミド化において有効であるが、塩基性の高いアルキルアミンのアミド化反応においてはそれほど有効ではなく、ポリマー側鎖のカルボン酸とアルキルアミンのアミド化に応用するのは困難である。
また、特許文献1および2の方法では、の水溶性のカルボジイミドを用いたポリγ−グルタミン酸の水溶媒中でのアミド化について報告しているが、定量的にアミド化するほどアミド化率は高くない。
本発明は、かかる問題点を鑑みてなされたものであり、ポリγ−グルタミン酸本来の生分解性や水溶性などの特性を保持するとともに感温性を有する、ポリγ−グルタミン酸誘導体およびその製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、ポリγ−グルタミン酸のアミド化反応を、高効率かつ定量的に進捗させるポリγ−グルタミン酸誘導体の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、ポリγ−グルタミン酸本来の生分解性や水溶性などの特性を保持しつつ、感温特性を有する、新規のポリγ−グルタミン酸誘導体を見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下よりなる。
1.下式(1)で表される繰り返し単位を含むポリγ−グルタミン酸誘導体。
[式(1)中、Aは炭素数2から4のアルキル基であり、Bは−(CH2)2−N(CH3)2または−(CH2)3−N(CH3)2である。p、qおよびrは各繰り返し単位のモル比を表し、p+q+r=1である。]
2.式(1)中、Aが−CH(CH3)2である前項1に記載のポリγ−グルタミン酸誘導体。
3.式(1)中、Bが−(CH2)3−N(CH3)2である前項1または2に記載のポリγ−グルタミン酸誘導体。
4.式(1)中、q:rが90:0〜60:40である前項1〜3のいずれか1項に記載のポリγ−グルタミン酸誘導体。
5.20〜50℃の水性媒体中で、親水性−疎水性の相転移を示す前項1〜4のいずれか1項に記載のポリγ−グルタミン酸誘導体。
6.以下の工程(i)および(ii)を含む、下式(1)で表される繰り返し単位を含むポリγ−グルタミン酸誘導体の製造方法。
(i)ポリγ−グルタミン酸(γ−PGA)のメタノール溶液に、ポリγ−グルタミン酸と等モル量の第三アミンを添加して、ポリγ−グルタミン酸と第三アミンのポリマー塩を調製する工程
(ii)縮合剤の存在下、工程(i)で調製したポリマー塩を下式(2)で表されるアルキルアミンおよび下式(3)で表されるアルキルアミンでアミド化する工程
[式(1)中、Aは炭素数2から4のアルキル基であり、Bは−(CH2)2−N(CH3)2または−(CH2)3−N(CH3)2である。p、qおよびrは各繰り返し単位のモル比を表し、p+q+r=1である。]
[式(2)中、Aは炭素数2から4のアルキル基である。]
[式(3)中、Bは−(CH2)2−N(CH3)2または−(CH2)3−N(CH3)2である。]
7.式(1)中、q:rが90:10〜60:40である前項6に記載の製造方法。
8.触媒が1,8−ジアザビシクロウン[5.4.0]−7−デセン(DBU)である前項6または7に記載の製造方法。
9.縮合剤がトリフェニルホスフェート(TPP)である前項6〜8のいずれか1項に記載の製造方法。
10.工程(ii)において、式(2)で表されるアルキルアミンと式(3)で表されるアルキルアミンのモル比が90:10〜60:40である前項6〜9のいずれか1項に記載の製造方法。
11.式(2)で表されるアルキルアミン化合物が、イソプロピルアミン(IPA)である前項6〜10のいずれか1項に記載の製造方法。
12.式(3)で表されるアルキルアミン化合物が、N,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン(DMAPDA)である前項6〜11のいずれか1項に記載の製造方法。
13.前項1〜5のいずれか1項に記載のポリγ−グルタミン酸誘導体を含む凝集剤。
1.下式(1)で表される繰り返し単位を含むポリγ−グルタミン酸誘導体。
2.式(1)中、Aが−CH(CH3)2である前項1に記載のポリγ−グルタミン酸誘導体。
3.式(1)中、Bが−(CH2)3−N(CH3)2である前項1または2に記載のポリγ−グルタミン酸誘導体。
4.式(1)中、q:rが90:0〜60:40である前項1〜3のいずれか1項に記載のポリγ−グルタミン酸誘導体。
5.20〜50℃の水性媒体中で、親水性−疎水性の相転移を示す前項1〜4のいずれか1項に記載のポリγ−グルタミン酸誘導体。
6.以下の工程(i)および(ii)を含む、下式(1)で表される繰り返し単位を含むポリγ−グルタミン酸誘導体の製造方法。
(i)ポリγ−グルタミン酸(γ−PGA)のメタノール溶液に、ポリγ−グルタミン酸と等モル量の第三アミンを添加して、ポリγ−グルタミン酸と第三アミンのポリマー塩を調製する工程
(ii)縮合剤の存在下、工程(i)で調製したポリマー塩を下式(2)で表されるアルキルアミンおよび下式(3)で表されるアルキルアミンでアミド化する工程
[式(2)中、Aは炭素数2から4のアルキル基である。]
[式(3)中、Bは−(CH2)2−N(CH3)2または−(CH2)3−N(CH3)2である。]
7.式(1)中、q:rが90:10〜60:40である前項6に記載の製造方法。
8.触媒が1,8−ジアザビシクロウン[5.4.0]−7−デセン(DBU)である前項6または7に記載の製造方法。
9.縮合剤がトリフェニルホスフェート(TPP)である前項6〜8のいずれか1項に記載の製造方法。
10.工程(ii)において、式(2)で表されるアルキルアミンと式(3)で表されるアルキルアミンのモル比が90:10〜60:40である前項6〜9のいずれか1項に記載の製造方法。
11.式(2)で表されるアルキルアミン化合物が、イソプロピルアミン(IPA)である前項6〜10のいずれか1項に記載の製造方法。
12.式(3)で表されるアルキルアミン化合物が、N,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン(DMAPDA)である前項6〜11のいずれか1項に記載の製造方法。
13.前項1〜5のいずれか1項に記載のポリγ−グルタミン酸誘導体を含む凝集剤。
本発明のγ−グルタミン酸誘導体は、ポリγ−グルタミン酸本来の生分解性や水溶性などの特性を保持するとともに、優れた感温性を示す。また、本発明の方法によれば、従来の方法に比べて、高効率かつ定量的にポリγ−グルタミン酸のアミド化反応を進捗させるポリγ−グルタミン酸誘導体を製造することが可能となる。
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明するが、本発明は以下の形態に限定されるものではない。
式(1)中、Aは炭素数2から4のアルキル基である。炭素数2から4のアルキル基としては、例えば、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基が挙げられ、中でも、イソプロピル基が好ましい。また、Bは−(CH2)2−N(CH3)2または−(CH2)3−N(CH3)2であり、−(CH2)3−N(CH3)2が好ましい。
式(1)において、p、qおよびrは各繰り返し単位のモル比を表し、p+q+r=1である。ポリγ−グルタミン酸のアミド化はほぼ定量的に進むので、pはほぼ0であることが好ましい。また、q:rは90:0〜60:40であることが好ましく、80:20〜70:30であることがより好ましい。qとrの比率をこの範囲内とすることで、感温性と凝集性の両方を満足するからである。
本発明のポリγ−グルタミン酸誘導体の分子量は、感温性が発現すれば特に制限がないが、凝集性を効率よく発現するためにはより高分子量のものが望ましく、1,000〜10,000,000とすることが好ましく、10,000〜1,000,000とすることがより好ましい。分子量をこの範囲内とすることで、凝集性が最大となるからである。
本発明のポリγ−グルタミン酸誘導体は、20〜50℃の水性媒体中で、親水性−疎水性の相転移を示すことが好ましい。水性媒体としては、例えば、水、生理食塩水等の無機塩類を含有する水溶液、メタノール、エタノール、イソプロパノールおよびエチレングリコール等のアルコール類、N,N−ジメチルフォルムアミド、N−メチル−2−ピロリジノン(NMP)などが挙げられる。ただし、所望の相転移が実質的に発現すればよく、水性媒体の種類は特に限定されない。また、水性媒体は1種類を単独で使用してもよく、複数種を混合して使用してもよい。
本発明のポリγ−グルタミン酸誘導体の親水性−疎水性の相転移点の測定方法は、例えば、次の通りである。まず、ポリγ−グルタミン酸誘導体を、水またはその他の溶媒を使用して溶解し、0.5〜1.0%水溶液を調製する。この溶液を恒温槽中で温度変化させ、親水性−疎水性の相転移を溶液の透化度の変化を測定することにより確認する。
本発明のポリγ−グルタミン酸誘導体の製造方法は、以下の工程(i)および(ii)を含む。
(i)ポリγ−グルタミン酸と第三アミンのポリマー塩を調製する工程
工程(i)は、ポリγ−グルタミン酸(γ−PGA)のメタノール溶液に、ポリγ−グルタミン酸と等モル量の第三アミンを添加して、ポリγ−グルタミン酸と第三アミンのポリマー塩を調製し、その後メタノールを乾固し、乾燥した固体のポリマー塩を作成する工程である。当該ポリマー塩は、工程(ii)で用いる溶媒に不溶のポリマー塩であることが好ましい。
(i)ポリγ−グルタミン酸と第三アミンのポリマー塩を調製する工程
工程(i)は、ポリγ−グルタミン酸(γ−PGA)のメタノール溶液に、ポリγ−グルタミン酸と等モル量の第三アミンを添加して、ポリγ−グルタミン酸と第三アミンのポリマー塩を調製し、その後メタノールを乾固し、乾燥した固体のポリマー塩を作成する工程である。当該ポリマー塩は、工程(ii)で用いる溶媒に不溶のポリマー塩であることが好ましい。
50%メタノール水溶液中の、ポリγ−グルタミン酸の濃度は、5〜10質量%とすることが好ましい。
工程(i)で用いる第三アミンとしては、例えば、1,8−ジアザビシクロウン[5.4.0]−7−デセン(DBU)、1,5−ジアザビシクロウン[4.3.0]−7−ノネン[DBN]が挙げられ、1,8−ジアザビシクロウン[5.4.0]−7−デセンが好ましい。
(ii)工程(i)で調製した乾燥固形体のポリマー塩を二種のアルキルアミンでアミド化する工程
工程(ii)は、縮合剤の存在下、工程(i)で調製したポリマー塩を下式(2)で表されるアルキルアミンおよび下式(3)で表されるアルキルアミンでアミド化する工程である。
工程(ii)は、縮合剤の存在下、工程(i)で調製したポリマー塩を下式(2)で表されるアルキルアミンおよび下式(3)で表されるアルキルアミンでアミド化する工程である。
式(2)中、Aは炭素数2から4のアルキル基である。炭素数2から4のアルキル基としては、例えば、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基およびn−ブチル基が挙げられ、中でも、イソプロピル基が好ましい。
式(2)で表されるアルキルアミンとしては、例えば、エチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン(IPA)およびn−ブチルアミン等が挙げられ、イソプロピルアミンが好ましい。
式(3)中、Bは−(CH2)2−N(CH3)2または−(CH2)3−N(CH3)2であり、−(CH2)3−N(CH3)2が好ましい。
式(3)で表されるアルキルアミンとしては、例えば、N,N−ジメチル−1,2−エチレンジアミンおよびN,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン(DMAPDA)が挙げられ、N,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミンが好ましい。
工程(ii)において、工程(i)で調製したポリγ−グルタミン酸と第三アミンの乾燥固形体のポリマー塩100重量部に対し、式(2)で表されるアルキルアミンを好ましくは50〜80重量部、より好ましくは60〜70重量部、式(3)で表されるアルキルアミンを好ましくは10〜60重量部、より好ましくは20〜50重量部反応させてアミド化することが好ましい。この範囲内とすることで、感温性と凝集性の両方を満足するからである。
また、式(2)で表されるアルキルアミンと式(3)で表されるアルキルアミンのモル比は、90:10〜60:40とすることが好ましく、80:20〜70:30とすることがより好ましい。当該モル比をこの範囲内とすることで、感温性と凝集性の両方を満足するからである。
工程(ii)で用いる縮合剤としては、例えば、トリフェニルホスフェート(TPP)が挙げられる。縮合剤は、ポリマー塩100重量部に対し、好ましくは200〜500重量部、より好ましくは300〜400重量部用いる。
工程(ii)で用いる溶媒としては、例えば、N−メチル−2−ピロリジノンおよびN,N−ジメチルホルムアミドなどの非プロトン性極性溶媒が挙げられる。
以上に説明してきた本発明のポリγ−グルタミン酸誘導体は、具体的には、例えば、下記反応スキームに示すように、製造することができる。下記反応スキームでは、工程(i)の第三アミンとして、1,8−ジアザビシクロウン[5.4.0]−7−デセン(DBU)を用い、工程(ii)の式(2)で表されるアルキルアミンとしてイソプロピルアミンを、式(3)で表されるアルキルアミンとしてN,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミンを、縮合剤としてトリフェニルホスフェート(TPP)を用いて製造する場合を示している。
本発明のポリγ−グルタミン酸誘導体は、汚泥処理用の凝集剤に用いることができる。本発明のポリγ−グルタミン酸誘導体を汚泥処理用の凝集剤に用いる場合、本発明のポリγ−グルタミン酸誘導体を固形物量に対して0.5〜10質量%含有することが好ましい。
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明は下記実施例よって限定されるものではなく、種々変形が可能であることは言うまでもない。
表1に示す配合比のイソプロピルアミン(IPA)とN,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン(DMAPDA)とを用いて、下記工程(i)及び工程(ii)を経てポリγ−グルタミン酸誘導体を調製した。
(i)ポリγ−グルタミン酸と第三アミンのポリマー塩を調製する工程
出発原料のポリγ−グルタミン酸(γ−PGA)5.89g(40mmol)を三角フラスコに量り取り、水30mlおよびメタノール30mlの混合溶媒に溶かし、そこへ強塩基性の第三アミン化合物である1,8−ジアザビシクロウン[5.4.0]−7−デセン(DBU)7.30g(48mmol)を加えてγ−PGAとDBUとのポリマー塩を調製し、次いで、このポリマー塩を乾燥させて乾燥固形体とした。
出発原料のポリγ−グルタミン酸(γ−PGA)5.89g(40mmol)を三角フラスコに量り取り、水30mlおよびメタノール30mlの混合溶媒に溶かし、そこへ強塩基性の第三アミン化合物である1,8−ジアザビシクロウン[5.4.0]−7−デセン(DBU)7.30g(48mmol)を加えてγ−PGAとDBUとのポリマー塩を調製し、次いで、このポリマー塩を乾燥させて乾燥固形体とした。
(ii)工程(i)で調製したポリマー塩を二種のアルキルアミンでアミド化する工程
工程(i)で調製した乾燥固形体のポリマー塩1.40g(5mmol)を三角フラスコに量り取り、溶媒のN−メチル−2−ピロリジノン(NMP)20mlに、イソプロピルアミン(IPA)とN,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン(DMAPDA)とが表1に示す配合比で混合した混合アルキルアミン20mmolを加え、更に縮合剤である亜リン酸トリフェニル(TPP)6.21g(20mmol)を加えた。これを120℃のオイルバス下で、24時間撹拌して固−液系で反応させた。反応が進行するに従い、固体のポリマー塩が反応して消失した。反応後、ジエチルエーテルを加えてポリマーを沈殿させ、真空乾燥機で乾燥させて目的とするポリγ−グルタミン酸誘導体を得た。得られたポリγ−グルタミン酸誘導体の物性を以下の(1)〜(4)について評価した。
工程(i)で調製した乾燥固形体のポリマー塩1.40g(5mmol)を三角フラスコに量り取り、溶媒のN−メチル−2−ピロリジノン(NMP)20mlに、イソプロピルアミン(IPA)とN,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン(DMAPDA)とが表1に示す配合比で混合した混合アルキルアミン20mmolを加え、更に縮合剤である亜リン酸トリフェニル(TPP)6.21g(20mmol)を加えた。これを120℃のオイルバス下で、24時間撹拌して固−液系で反応させた。反応が進行するに従い、固体のポリマー塩が反応して消失した。反応後、ジエチルエーテルを加えてポリマーを沈殿させ、真空乾燥機で乾燥させて目的とするポリγ−グルタミン酸誘導体を得た。得られたポリγ−グルタミン酸誘導体の物性を以下の(1)〜(4)について評価した。
(1)IRスペクトル
γ−PGA、並びに配合4および7を約20質量%の濃度でメタノールに溶解し、溶液をKRS5板の表面に塗布し、薄膜を作成した。該薄膜を保持したKRS5板を用い、赤外線回折装置(島津製作所製、IRPrestige−21)による特定IRスペクトル値を調べ、IPAおよびDMAPDAによるγ−PGAのアミド化反応性を評価した。その結果を図1に示す。
γ−PGA、並びに配合4および7を約20質量%の濃度でメタノールに溶解し、溶液をKRS5板の表面に塗布し、薄膜を作成した。該薄膜を保持したKRS5板を用い、赤外線回折装置(島津製作所製、IRPrestige−21)による特定IRスペクトル値を調べ、IPAおよびDMAPDAによるγ−PGAのアミド化反応性を評価した。その結果を図1に示す。
図1において、1700〜1600cm−1付近のピークは主鎖のアミド結合と側鎖のカルボン酸誘導体のC=O伸縮振動を示す。図1から分かるように、γ−PGAと配合4および7とを比較すると、γ−PGAには1700〜1600cm−1付近に主鎖のアミド結合と側鎖のカルボン酸のC=Oに基づく二本のピークがほぼ同じ強度で存在しているが、アミド化したポリマーには側鎖のカルボン酸のC=Oの吸収が消失し、主鎖と側鎖のアミド結合のC=Oのピークが強く現れた。このことから、配合4および7では、γ−PGAの側鎖のカルボキシル基がアミド基に変換されたと考えられる。
(2)水への溶解性
γ−PGAおよび配合1〜7について、室温にて各々0.05gを10mlの水に溶解し、水への溶解性を評価した。その結果を表1に示す。表1から分かるように、γ−PGAは水に溶解したが、配合1は水には溶解しなかった。これは、配合1ではγ−PGAの側鎖へIPAが100%導入され、ポリマーの親水性が失われたためと考えられる。一方、配合2は一部水に溶解し、配合3〜7は水に溶解した。これは、配合2〜7ではγ−PGAの側鎖に親水性のDMAPDAを導入したためと考えられる。すなわち、γ−PGAの側鎖に親水性のDMAPDAを適度に導入することで、γ−PGAをアミド化しても水に溶解できることが分かった。また、これらの結果から、IPAとDMAPDAのモル比を、80:20〜70:30とすることにより、高い水への溶解性を示すことが分かった。
γ−PGAおよび配合1〜7について、室温にて各々0.05gを10mlの水に溶解し、水への溶解性を評価した。その結果を表1に示す。表1から分かるように、γ−PGAは水に溶解したが、配合1は水には溶解しなかった。これは、配合1ではγ−PGAの側鎖へIPAが100%導入され、ポリマーの親水性が失われたためと考えられる。一方、配合2は一部水に溶解し、配合3〜7は水に溶解した。これは、配合2〜7ではγ−PGAの側鎖に親水性のDMAPDAを導入したためと考えられる。すなわち、γ−PGAの側鎖に親水性のDMAPDAを適度に導入することで、γ−PGAをアミド化しても水に溶解できることが分かった。また、これらの結果から、IPAとDMAPDAのモル比を、80:20〜70:30とすることにより、高い水への溶解性を示すことが分かった。
(3)pH
γ−PGAおよび配合1〜7について、0.5質量%の水溶液を調製して、室温にてpHを測定した。その結果を表1に示す。表1から分かるように、配合2〜7では、アミド化によりγ−PGAの側鎖にカチオン基が導入されたことが分かった。
γ−PGAおよび配合1〜7について、0.5質量%の水溶液を調製して、室温にてpHを測定した。その結果を表1に示す。表1から分かるように、配合2〜7では、アミド化によりγ−PGAの側鎖にカチオン基が導入されたことが分かった。
(4)感温性
γ−PGAおよび配合1〜7について、各々0.1gを10mlの水に溶解し、室温から50℃に水溶液の温度を変化させて、親水性−疎水性の相転移を観察した。その結果を表1に示す。表1において、○は感温性が確認されたことを示し、×は確認されなかったことを示す。表1から分かるように、配合2、5〜7では、親水性−疎水性の相転移は見られなかった。一方、配合3および4では、親水性−疎水性の相転移が観察された。
γ−PGAおよび配合1〜7について、各々0.1gを10mlの水に溶解し、室温から50℃に水溶液の温度を変化させて、親水性−疎水性の相転移を観察した。その結果を表1に示す。表1において、○は感温性が確認されたことを示し、×は確認されなかったことを示す。表1から分かるように、配合2、5〜7では、親水性−疎水性の相転移は見られなかった。一方、配合3および4では、親水性−疎水性の相転移が観察された。
また、図2に配合4の相転移を観察した結果を示す。図2から分かるように、配合4の水溶液は25℃では無色透明であるのに対し、50℃では白い凝集体が確認された。これらのことから、IPAとDMAPDAのモル比を、80:20〜70:30とすることにより、より好ましい相転移性が得られることが分かった。
Claims (13)
- 式(1)中、Aが−CH(CH3)2である請求項1に記載のポリγ−グルタミン酸誘導体。
- 式(1)中、Bが−(CH2)3−N(CH3)2である請求項1または2に記載のポリγ−グルタミン酸誘導体。
- 式(1)中、q:rが90:10〜60:40である請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリγ−グルタミン酸誘導体。
- 20〜50℃の水性媒体中で、親水性−疎水性の相転移を示す請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリγ−グルタミン酸誘導体。
- 以下の工程(i)および(ii)を含む、下式(1)で表される繰り返し単位を含むポリγ−グルタミン酸誘導体の製造方法。
(i)ポリγ−グルタミン酸(γ−PGA)のメタノール溶液に、ポリγ−グルタミン酸と等モル量の第三アミンを添加して、ポリγ−グルタミン酸と第三アミンのポリマー塩を調製する工程
(ii)縮合剤の存在下、工程(i)で調製したポリマー塩を下式(2)で表されるアルキルアミンおよび下式(3)で表されるアルキルアミンでアミド化する工程
[式(2)中、Aは炭素数2から4のアルキル基である。]
[式(3)中、Bは−(CH2)2−N(CH3)2または−(CH2)3−N(CH3)2である。] - 式(1)中、q:rが90:10〜60:40である請求項6に記載の製造方法。
- 触媒が1,8−ジアザビシクロウン[5.4.0]−7−デセン(DBU)である請求項6または7に記載の製造方法。
- 縮合剤がトリフェニルホスフェート(TPP)である請求項6〜8のいずれか1項に記載の製造方法。
- 工程(ii)において、式(2)で表されるアルキルアミンと式(3)で表されるアルキルアミンのモル比が90:10〜60:40である請求項6〜9のいずれか1項に記載の製造方法。
- 式(2)で表されるアルキルアミン化合物が、イソプロピルアミン(IPA)である請求項6〜10のいずれか1項に記載の製造方法。
- 式(3)で表されるアルキルアミン化合物が、N,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン(DMAPDA)である請求項6〜11のいずれか1項に記載の製造方法。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリγ−グルタミン酸誘導体を含む凝集剤。
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