JP2009158130A - ハイブリッド電解質膜及びハイブリッド電解質膜の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】プロトン伝導性を保持しつつ、機械的強度及びガス遮断性に優れたハイブリッド電解質膜を提供する。
【解決手段】少なくとも、組成式Sn(a+b=1、0<a≦1、0≦b<1、x>2.0、y=3.5x、Mは、In、Al、Ga、Sc及びYから選ばれる少なくとも1種の金属カチオン)で表されるプロトン伝導性無機化合物粒子と、ポリベンゾイミダゾールと、フッ素系樹脂と、を混合してなることを特徴とする、ハイブリッド電解質膜、並びに、前記プロトン伝導性無機化合物粒子と、ポリベンゾイミダゾールと、溶媒とを混合して得られるペーストから、前記溶媒を除去し、該溶媒除去により得られた残渣分とフッ素系樹脂とを混練して混練物を調製し、該混練物を膜化する、ハイブリッド電解質膜の製造方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、プロトン伝導性無機化合物を特定の有機バインダーを用いることによって、製膜したハイブリッド電解質膜及びその製造方法に関する。
燃料電池は、電気的に接続された2つの電極に燃料と酸化剤を供給し、電気化学的に燃料の酸化を起こさせることで、化学エネルギーを直接電気エネルギーに変換する。火力発電とは異なり、燃料電池はカルノーサイクルの制約を受けないので、高いエネルギー変換効率を示す。燃料電池は、使用する電解質の種類に応じて種々のタイプに分類されるが、電解質膜として固体高分子電解質膜を用いた固体高分子電解質型燃料電池は、小型化が容易であること、低い温度で作動すること、などの利点があることから、特に携帯用、移動体用電源として注目されている。
固体高分子型燃料電池に代表されるプロトン伝導性電解質膜を用いた燃料電池では、下記式(1)に対して触媒活性を有する電極触媒を備えたアノードと、下記式(2)に対して触媒活性を有する電極触媒を備えたカソードとが、電解質膜表面に形成され、アノード側に水素ガス、カソード側に空気(酸素)を供給することで、発電する。
2 → 2H+ + 2e- ・・・(1)
2H+ + 1/2O2 + 2e- → H2O ・・・(2)
一般的なプロトン伝導性電解質膜としては、従来、ナフィオン(デュポン社製)等に代表されるパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂や、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン等にスルホン酸基やリン酸基等のプロトン伝導性基を導入した高分子電解質樹脂が用いられている。
これら高分子電解質樹脂、特にパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂は、湿潤状態において高いプロトン伝導性を発現するため、高分子電解質樹脂を用いて構成された燃料電池では、電解質膜や電極を高い湿潤状態に保持することが重要である。このような理由から、高分子電解質樹脂を用いた固体高分子電解質型燃料電池の作動温度は、80〜100℃程度である。しかしながら、80〜100℃程度の低温度域における燃料電池の作動には、廃熱効率が悪い、白金電極触媒が燃料中の一酸化炭素により被毒される、排水性が低い、等の問題がある。
そこで、100〜300℃のような中温度域での発電が可能なプロトン伝導性電解質を用いた燃料電池が注目されている。中温度域発電が可能な燃料電池は、ナフィオン等の低温度域発電型燃料電池と比較して以下のような点で優れている。すなわち、廃熱効率がよい、燃料極の白金触媒の一酸化炭素による被毒の回避が可能(一酸化炭素耐性が高い)であり、CO除去ユニットが不要、電極反応速度が大きく、白金使用量の低減が可能、排水性が高い、等の優位性を有している。
本発明者らは、250℃のような中温度域で、且つ、無加湿条件で、良好なプロトン伝導性を発現する物質として、SnP27に注目し、研究開発を進めている。例えば、Sn0.9In0.127粉末を加圧成形したペレットを電解質膜とし、該電解質膜の両面に白金担持カーボンとカーボンペーパーからなる電極を設けた膜・電極接合体であって、該電解質膜とカソード電極との間に、Sn0.9In0.127、白金担持カーボン、ポリビニリデンフルオライドバインダー、及び1−メチル−2−ピロリドンを混合し、得られたペーストを塗布して形成した中間層を備えた膜・電極接合体について、報告している(非特許文献1)。
また、特許文献1には、少なくとも金属リン酸塩を含有するプロトン伝導体が提案されており、具体的な金属リン酸塩として、SnPx7(典型例としてはSnP27)が記載されている。
特開2005−294245号公報 J.Electrochem.Soc.,153,A897(2006)
SnP27等のプロトン伝導性無機化合物は、高密度で焼結することが難しいため、従来は、加圧により成型して使用されてきた。加圧成型では、成型体の緻密性が低くなるため、成型体がガス透過性を示し、燃料電池用電解質膜として使用すると、いわゆるクロスリークが生じやすいという問題がある。また、加圧成型による成型体は、機械的強度に乏しく、薄膜化が難しい。さらに、SnP27は潮解性を有しているため、SnP27単独で成型した場合、使用環境によっては、成型体からSnP27が溶出してしまう。
特許文献1には、SnPをボールミルのような粉砕方法で粉末状にした後、高フッ化ポリマーのようなバインダー樹脂と混合し、膜の形態で成型することにより、SnPを含有する電解質膜を得る方法が記載されている。しかしながら、本発明者らは、SnP27の膜化について鋭意検討を行ったところ、特許文献1に記載のような方法でSnP27等のプロトン伝導性無機化合物を膜化する場合、該無機化合物表面がバインダー樹脂で被覆されることにより、該無機化合物の粒子間におけるプロトン伝導ネットワークが寸断され、粒界抵抗が増加し、充分なプロトン伝導性を発現する電解質膜が得られないことを見出した。
本発明は、上記実情を鑑みて成し遂げられたものであり、プロトン伝導性を保持しつつ、機械的強度及びガス遮断性に優れたハイブリッド電解質膜を提供することを目的とする。
本発明のハイブリッド電解質膜は、少なくとも、組成式Sn(a+b=1、0<a≦1、0≦b<1、x>2.0、y=3.5x、Mは、In、Al、Ga、Sc、Yから選ばれる少なくとも1種の金属カチオン)で表されるプロトン伝導性無機化合物粒子と、ポリベンゾイミダゾールと、フッ素系樹脂と、を混合してなることを特徴とする。
本発明のハイブリッド電解質膜は、過剰のリン酸を含有するプロトン伝導性無機化合物粒子とポリベンゾイミダゾールとを組み合わせることで、該過剰のリン酸とポリベンゾイミダゾールを固溶化し、前記プロトン伝導性無機化合物粒子がポリベンゾイミダゾールに被覆されることによる該プロトン伝導性無機化合物粒子間のプロトン伝導性低下を抑制しながら、該プロトン伝導性無機化合物の膜化を可能とした。さらに、フッ素系樹脂を組み合わせることによって、膜の機械的強度の確保を実現させた。
前記組成式において、xの上限値に特に限定はなく、例えば、x≦2.37とすることができる。
プロトン伝導性の観点から、前記ポリベンゾイミダゾールの含有割合は前記プロトン伝導性無機化合物粒子と該ポリベンゾイミダゾールの合計量に対して、1〜30wt%とすることが好ましい。
また、プロトン伝導性及び機械的強度の観点から、前記フッ素系樹脂の含有割合は5〜25wt%とすることが好ましい。
具体的な前記フッ素系樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレンが挙げられる。
前記ポリベンゾイミダゾールは、プロトン伝導性の観点から、ベンゾイミダゾールモノマー由来の繰り返し単位を80mol%以上含有することが好ましい。
前記組成式Snにおいて、MとしてはIn又はAlのカチオンが挙げられる。
本発明のハイブリッド電解質膜の製造方法は、少なくとも、組成式Sn(a+b=1、0<a≦1、0≦b<1、x>2.0、y=3.5x、Mは、In、Al、Ga、Sc、Yから選ばれる少なくとも1種の金属カチオン)で表されるプロトン伝導性無機化合物粒子と、ポリベンゾイミダゾールと、溶媒とを混合して得られるペーストから、前記溶媒を除去し、該溶媒除去により得られた残渣分とフッ素系樹脂とを混練して混練物を調製し、該混練物を膜化することを特徴とする。
以上のような方法により、前記プロトン伝導性無機化合物と、ポリベンゾイミダゾールと、フッ素系樹脂とが均一に混合されたハイブリッド電解質膜を得ることができる。
前記組成式Snにおいて、xの上限値に特に限定はなく、例えば、x≦2.37とすることができる。
前記Snは、Sn含有化合物及びM含有化合物と、リン酸とを、Sn、M及びリン酸のモル比が、Sn:M:P=a:b:xとなるように混合した混合物を、200〜400℃の加熱条件下、攪拌してペースト化し、得られたペーストを450〜750℃でか焼することによって、調製することができる。
具体的な前記溶媒としては、ジメチルアセトアミドが挙げられる。
前記溶媒除去は、150〜250℃で行うことができる。
前記混練物を膜化する方法としては、例えば、圧延が挙げられる。
本発明によれば、プロトン伝導性無機化合物粒子の優れたプロトン伝導性を保持しつつ、機械的強度及びガス遮断性に優れたハイブリッド電解質膜を提供することが可能である。本発明のハイブリッド電解質膜は、100〜300℃のような中温度域でも高いプロトン伝導性を示すことから、燃料電池用電解質膜として用いることで、高い廃熱効率、燃料極における白金触媒のCO被毒の回避、白金使用量の低減、高い排水性、等の利点を有する、優れた燃料電池を得ることが可能である。
本発明のハイブリッド電解質膜は、少なくとも、組成式Sn(a+b=1、0<a≦1、0≦b<1、x>2.0、y=3.5x、Mは、In、Al、Ga、Sc及びYから選ばれる少なくとも1種の金属カチオン)で表されるプロトン伝導性無機化合物粒子と、ポリベンゾイミダゾールと、フッ素系樹脂と、を混合してなることを特徴とするものである。
本発明のハイブリッド電解質膜は、上記プロトン伝導性無機化合物粒子、ポリベンゾイミダゾール及びフッ素系樹脂を必須成分として含有し、これら必須成分の以下のような作用効果により、高いプロトン伝導性と共に、優れた機械的強度及びガス遮断性を発現する。
組成式Sn(a+b=1、0<a≦1、0≦b<1、x>2.0、y=3.5x、Mは、In、Al、Ga、Sc及びYから選ばれる少なくとも1種の金属カチオン)で表される無機化合物は、ストイキオメトリ組成であるSn27の結晶構造(岩塩型構造)を維持した状態で、その結晶内や結晶表面にリン酸(以下、過剰なリン酸ということがある)を含有している。Sn無機化合物において、過剰なリン酸は、非晶質として存在している。組成式Sn27(a、bは上記と同じ)で表される無機化合物は、100〜300℃のような中温度域においてもプロトン伝導性を示す無水プロトン伝導体であり、SnもSn27同様のプロトン伝導性を発現する。
このようなSn27が過剰なリン酸を含有した状態のSn粒子を、ポリベンゾイミダゾール(以下、PBIということがある)溶液と混合すると、Sn粒子はその表面をPBIに被覆される。そして、Sn粒子の表面に存在する過剰のリン酸が、Sn粒子を被覆するPBIと固溶する。リン酸と固溶したPBIは、プロトン伝導性を有するため、Sn粒子がPBIに被覆されていても、粒界抵抗の増加を抑制し、電解質膜におけるSn27粒子間のプロトン伝導性を確保することができる。
Sn27等のプロトン伝導性無機化合物の粒子は、バインダー樹脂に被覆されることで、該粒子間のプロトン伝導が阻害され、粒界抵抗が増大してしまうが、本発明においては、プロトン伝導性無機化合物として、Sn27に過剰のリン酸をドープさせたSnabxyを用い、且つ、リン酸との固溶性が高いPBIを用いることで、Sn粒子間に介在するPBIを、バインダー成分として機能させると同時にプロトン伝導性成分として機能させることに成功した。
PBIとリン酸の固溶化は、塩基性ポリマーであるPBIと強酸であるリン酸の酸‐塩基相互作用によるものである。本発明者らは、塩基性ポリマーの中で、特にPBIがリン酸との固溶性が高く、多くのリン酸と固溶化できることを見出した。多量のリン酸との固溶化が可能であるPBIを用いることで、プロトン伝導性無機化合物粒子間のプロトン伝導性が確保される。例えば、ポリベンゾイミダゾールの代わりに塩基性ポリマーであるポリイミドを用いた場合、ポリイミドは、リン酸との固溶性が低いため、ポリイミドのプロトン伝導性の向上効果は低く、プロトン伝導性無機化合物粒子間のプロトン伝導性を確保することができない上、得られる膜はポリイミダゾールと固溶化できない過剰のリン酸により潮解性を示す。
また、予め、リン酸を過剰に含有するSn粒子を調製し、該粒子とPBIとを混合することで、該粒子表面を被覆するPBIに均一にリン酸が固溶され、該粒子間のプロトン伝導性が得られると共に、Sn27の潮解を抑えることができる。これに対して、予めSn27粒子の表面にPBIを被覆させたものを調製し、これをリン酸液中に浸漬させた場合、PBIへのリン酸の固溶が不均一となり、プロトン伝導性向上効果が低く、また、Sn27が潮解性を示すという知見が得られている。
PBIは、リン酸との固溶性を有していることに加えて、Sn27の結晶構造に影響を及ぼさないため、Sn自身のプロトン伝導性を低下させることがなく、また、Sn27と比較すると非常に微弱ではあるが、PBI自身も、プロトン伝導性を有していることから、Sn粒子同士を結着させるバインダー成分としてPBIは非常に好適である。
また、PBIは、耐熱性及び化学安定性に優れるポリマーであることから、100〜300℃のような中温度域においても、分解、劣化等が生じにくい。
さらに、本発明の電解質膜は、フッ素系樹脂を添加することにより、電解質膜の柔軟性、可撓性が高められ、引っ張り強度、寸法安定性等の機械的強度に優れた電解質膜となっている。フッ素系樹脂は、プロトン伝導性を有していないため、電解質膜のプロトン伝導性を低下させるが、本発明においては、上記したような、プロトン伝導性無機化合物粒子、及び、リン酸と固溶化したPBIによるプロトン伝導パスの形成によってプロトン伝導性が確保されているため、機械的強度と高いプロトン伝導性とが両立した電解質膜を得ることができる。
また、本発明の電解質膜は、プロトン伝導性成分の主成分であるSn粒子が、PBI及びフッ素系樹脂によって結着されているため、緻密性が高く、ガス遮断性が高い。そのため、燃料電池用膜・電極接合体を構成する電解質膜として利用した際には、該電解質膜の両面にそれぞれ形成された燃料極及び酸化剤極に供給される反応ガスが、電解質膜を透過する、いわゆるクロスリークの発生を抑制することができる。
以下、3つの必須成分について、詳しく説明していく。
本発明のハイブリッド電解質膜は、プロトン伝導性材料の主成分として、下記組成式で表される無機化合物粒子を含有する。
Sn
(式中、a+b=1、0<a≦1、0≦b<1、x>2.0、y=3.5x、Mは、In、Al、Ga、Sc及びYから選ばれる少なくとも1種の金属カチオン)
上記組成式において、Mは、In、Al、Ga、Sc及びYから選ばれる少なくとも1種の金属カチオンであり、SnP27結晶の結晶構造を変えることなくドープされている。Mとしては、高いプロトン伝導性を発現する観点から、In又はAlが好ましい。特に、豊富な資源であり、入手容易性、コスト等の観点から、Alが好適である。
Snのモル比を示すaは、a+b=1を満たし、且つ、0<a≦1であれば、特に限定されないが、高いプロトン伝導性、結晶構造の維持の観点から、0.8≦a≦1、特に0.9≦a≦0.97であることが好ましい。また、Mのモル比を示すbは、a+b=1を満たし、且つ、0≦b<1であれば、特に限定されないが、高いプロトン伝導性、結晶構造の維持の観点から、0≦b≦0.2、特に0.03≦b≦0.1であることが好ましい。
aとbの比率は、Sn調製時におけるSn含有化合物及びM含有化合物の配合割合により調節することができ、蛍光X線分析測定、ICP(高周波誘導結合プラズマ)発光分析等により、測定することができる。
さらに、リン酸由来のリン(P)のモル比を示すxは、x>2.0であれば、特に限定されないが、x値の増大により、Sn自体のプロトン伝導性が向上し、また、Snと固溶するPBIのプロトン伝導性も向上することから、ハイブリッド電解質膜のプロトン伝導性の観点からは、xの値は大きいほどよい。ただし、過度の潮解性を防止する観点からは、x≦2.5であることが好ましく、x≦2.37とすることができる。
(a+b)に対するxの比率[x/(a+b)]は、Sn調製時におけるSn含有化合物、M含有化合物及びリン酸の配合割合により調節することができ、蛍光X線分析測定、ICP蛍光分析等により、測定することができる。
一方、リン酸やSn含有化合物、M含有化合物に由来する酸素(O)のモル比を示すyは、xに対する比率が3.5、つまり、y=3.5xと仮定でき、その値を算出することができる。
Snの調製方法としては、以下のような方法が挙げられる。
すなわち、Sn含有化合物及びM含有化合物と、リン酸とを、Sn、M及びリン酸のモル比が、Sn:M:P=a:b:xとなるように混合した混合物を、200〜400℃の加熱条件下、攪拌してペースト化し、得られたペーストを450〜750℃でか焼することによって、調製することができる。
ここで、Sn含有化合物としては、例えば、酸化物、塩化物、水酸化物等が挙げられ、具体的には、SnO2、SnCl4、Sn(OH)4等が挙げられる。M含有化合物としては、酸化物、塩化物、水酸化物、硝酸塩等が挙げられ、具体的には、Al(OH)3、Al23、AlCl3、Al(NO33、・nH2O、In23等が挙げられる。
リン酸としては、濃度が50〜95(%H3PO4)、特に75〜85(%H3PO4)の水溶液を用いることが好ましい。リン酸水溶液濃度が50%未満であると、プロトン伝導性無機化合物に、過剰量のリン酸を含有させにくく、リン酸水溶液濃度が95%より高いと、リン酸水溶液の粘度が高くなりすぎ、プロトン伝導性無機化合物粒子との混合性が低くなるおそれがある。
Sn含有化合物、M含有化合物及びリン酸は、混合性の観点から、イオン交換水と共に、混合し、ペースト化することが好ましい。
得られた混合物は、200〜400℃、好ましくは250〜350℃の加熱条件下、攪拌し、ペースト化する。ペースト化は、イオン交換水が全て蒸発するまで行うことが好ましい。得られたペーストは、450〜750℃、好ましくは500〜700℃で、2〜3時間、か焼することによって、脱水、結晶化され、Snが得られる。
Snは、粉末状にて、ハイブリッド電解質膜内に含有されることが好ましい。Sn粒子の粒径は特に限定されないが、通常、10nm〜1μm、特に100nm〜500nmであることが好ましい。
Snの含有量は、ハイブリッド電解質膜のプロトン伝導性保持と、機械的強度及びガス遮断性の両立の観点から、通常、プロトン伝導性無機化合物粒子とポリベンゾイミダゾールの合計量(該合計量を100wt%とする)に対して、70〜99wt%、特に、85〜98%、さらに95〜97%であることが好ましく、電解質膜を構成する全成分の合計量に対して、60〜98wt%、特に80〜98wt%、さらに、85〜90wt%であることが好ましい。
本発明において、ポリベンゾイミダゾールとは、置換又は非置換のベンゾイミダゾールモノマー由来の繰り返し単位を含む重合体をいう。ベンゾイミダゾールモノマーが置換基を有する場合、その置換基は本発明の効果を損なわない範囲で任意に選択することができる。また、PBIは、また、ベンゾイミダゾールモノマー由来の繰り返し単位以外のその他繰り返し単位を含有していてもよい。
上記プロトン伝導性無機化合物粒子間のプロトン伝導性の確保という観点からは、PBIとリン酸の酸−塩基相互作用及び固溶化が充分に行われるように、PBIはベンゾイミダゾールモノマー由来の繰り返し単位を80mol%以上、特に90mol%以上、さらに、95mol%以上含有することが好ましい。
ポリベンゾイミダゾールの具体例としては、例えば、ポリ‐2,2’-(m‐フェニレン)‐5,5’‐ジベンゾイミダゾール、ポリ‐2,2’‐(ジフェニレン‐2’’,2’’’)‐5,5’‐ジベンゾイミダゾール、ポリ‐2,2’‐(ジフェニレン‐4’’,4’’’)‐5,5’‐ジベンゾイミダゾール、ポリ‐2,2’‐(ナフタレン‐1’’,6’’)‐5,5’‐ジベンゾイミダゾール、ポリ‐2,2’‐(ナフタレン‐2’’,6’’)‐5,5’‐ジベンゾイミダゾール、ポリ‐2,2’‐アミレン‐5,5’‐ジベンゾイミダゾール、ポリ‐2,2’‐オクタメチレン‐5,5’‐ジベンゾイミダゾール、ポリ‐2,2’‐シクロヘキセニル‐5,5’‐ジベンゾイミダゾール、ポリ‐2,2’‐(m‐フェニレン)‐5,5’‐ジ(ベンゾイミダゾール)エーテル、ポリ‐2,2’‐(m‐フェニレン)‐5,5’‐ジ(ベンゾイミダゾール)サルファイド、ポリ‐2,2’‐(m‐フェニレン)‐5,5’‐ジ(ベンゾイミダゾール)スルフォン、ポリ‐2,2’‐(m‐フェニレン)‐5,5’‐ジ(ベンゾイミダゾール)メタン、ポリ‐2,2’‐(m‐フェニレン)‐5,5’‐ジ(ベンゾイミダゾール)プロパン2,2、及びポリ-エチレン‐1,2,2,2’’‐(m‐フェニレン)‐5,5’‐ジ(ベンゾイミダゾール)エチレン‐1,2等が挙げられる。
ポリベンゾイミダゾールの含有量は、特に限定されないが、上記プロトン伝導性無機化合物間のプロトン伝導性の保持、及び、過剰のリン酸との固溶化とのバランスから、プロトン伝導性無機化合物粒子と該ポリベンゾイミダゾールの合計量(該合計量を100wt%とする)に対して、1〜30wt%、特に2〜15wt%、さらに、4wt%であることが好ましい。
また、プロトン伝導性無機化合物とポリベンゾイミダゾールの合計量は、電解質膜を構成する全成分の合計量に対して、50〜95wt%、特に、75〜95wt%、さらに、90wt%とすることが好ましい。
本発明において、フッ素系樹脂とは、主鎖及び/又は側鎖にフッ素を有する樹脂であり、具体的には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、フッ化ビニリデン−六フッ化プロピレン共重合体等が挙げられる。これらの中でも、結着性、耐熱性の観点から、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が好ましい。
電解質膜におけるフッ素系樹脂の含有量は、特に限定されないが、電解質膜のプロトン伝導性と機械的強度のバランスから、電解質膜を構成する全成分の合計量に対して、5〜50wt%、特に5〜25wt%、さらに、10wt%であることが好ましい。
本発明の電解質膜は、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、上記3つの必須成分以外の成分を含有していてもよい。
本発明によれば、1×10-2S/cm-1以上、さらには5×10-2S/cm-1以上のプロトン伝導性を発現する電解質膜を得ることが可能である。
以下、本発明のハイブリッド電解質膜の製造方法について説明する。
本発明のハイブリッド電解質膜は、少なくとも、組成式Sn(a+b=1、0<a≦1、0≦b<1、x>2.0、y=3.5x、Mは、In、Al、Ga、Sc及びYから選ばれる少なくとも1種の金属カチオン)で表されるプロトン伝導性無機化合物と、ポリベンゾイミダゾールと、溶媒とを混合して得られるペーストから、前記溶媒を除去し、該溶媒除去により得られた残渣分とフッ素系樹脂とを混練して混練物を調製し、該混練物を膜化することにより得ることができる。
以上のように、予めリン酸を過剰に含有するSn粒子とPBIとを溶媒中で混合することにより、Sn粒子の過剰分のリン酸をPBIに均一にドープさせることができる。
溶媒としては、PBIを溶解できるものであれば特に限定されず、具体的には、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホン(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、メタンスルホン酸(MSA)等が挙げられるが、DMAcが特に好適に使用できる。
溶媒の使用量は特に限定されないが、適当な粘性を確保するため、PBIの濃度が10wt%程度となるようにすることが好ましい。
Sn27粒子とPBIの溶媒中における混合において、各成分の添加時期は特に限定されない。例えば、上記3成分を同時に添加混合してもよいし、予め溶媒にPBIを溶解させたPBI溶液を調製し、該PBI溶液にSn27粒子を添加してもよい。均一に混合させる観点からは、予めPBI溶液を調製し、該PBI溶液にSn27粒子を添加することが好ましい。
Sn27、PBI及び溶媒は、均一なペースト状になるまで、一般的な方法、例えば、遊星ミル、振動ミル、サンドミル、ポットミル等で攪拌する。
次に得られたペーストから溶媒を除去する。溶媒除去は、150〜250℃、特に180〜200℃の加熱により行うことが好ましい。このような加熱により溶媒を揮発させることで、過剰なリン酸を脱水させることなく、溶媒のみを短時間で除去することができる。
続いて、溶媒除去により得られた残渣分とフッ素系樹脂とを、均一に混練した混練物を調製し、膜化する。このように、予めPBIとSn27粒子とを複合化した後に、フッ素系樹脂と混合することで、これら3成分が均一に混合された膜を形成することができる。例えば、フッ素系樹脂を、Sn27粒子、PBI及びDMAc等の溶媒と同時に混合する場合、フッ素系樹脂が均一に混合されずに、この混合溶液中でフッ素系樹脂が凝集し、単独で膜化してしまうおそれがある。
混練方法は、特に限定されず、一般的な方法を採用することができる。混練物を膜化する方法としては、圧延、プレス、鍛造等が挙げられる。圧延は、熱間圧延でも冷間圧延でもよいが、フッ素系樹脂の耐熱性の観点から冷間圧延が好ましい。ハイブリッド電解質膜は、機械的強度、ガス遮断性、電解質抵抗等の観点から、厚さを5〜100μm程度とすることがこのましい。
本発明のハイブリッド電解質膜は、燃料電池におけるプロトン伝導性電解質膜としての利用の他、例えば、水素センサー、分離膜等においての利用が可能である。特に、本発明のハイブリッド電解質膜は、湿潤状態を保持しなくても、優れたプロトン伝導性を発現するため、燃料電池用電解質膜として使用する場合、反応ガスを加湿しなくてもよく、燃料電池の小型化やシステムの簡略化が可能である上に、湿潤状態に影響されない安定した発電性能を発現するという優れた利点がある。さらに、100〜300℃のような中温度域においてもプロトン伝導性を発現するため、80〜100℃で作動する燃料電池と比較して、廃熱効率がよい、燃料極の白金触媒の一酸化炭素による被毒の回避が可能(一酸化炭素耐性が高い)であり、CO除去ユニットが不要である、電極反応速度が大きく、白金使用量の低減が可能である、排水性が高い、等の利点もある。
[合成例1]
(Sn0.95Al0.05の合成)
SnO2、Al(OH)3、85%H3PO4及びイオン交換水を、Sn、Al及びPのモル比(Sn:Al:P=a:b:x)が、表1に示すモル比となるように混合し、高粘度ペーストが得られるまで、300℃を維持しながら攪拌した。
得られたペーストは、650℃で2.5時間、アルミナボックス中でか焼し、Sn0.95Al0.05(以下、SAPOということがある)を合成した。
尚、表1において、各SAPOの組成は、XRF測定により確認した。また、O(酸素)のモル比yは、x×3.5と過程して算出した。
Figure 2009158130
[参考実験1]
合成例1にて得られたSAPO(1)を、2×103kg/cm-2で加圧し、ペレット化し、サンプル(1)を得た。
一方、合成例1にて得られたSAPO(1)と、PBIのDMAc溶液(AZ Electronic Materials製、PBI含有量10wt%。以下同じ。)とを、SAPO(1)とPBIが表2に示す重量比となるように混合し、遊星ミルで16時間混合して均一なペーストを調製した。得られたペーストをガラス板上に流延塗布し、190℃で7時間加熱し溶媒を除去した。ガラス板から残渣を削り取り、2×103kg/cm2で加圧、ペレット化し、サンプル(2)〜(5)を得た。
Figure 2009158130
得られたサンプル(1)〜(5)について、無加湿の空気中、温度条件を変えて、周波数0.1〜1×106Hz、振幅10mVでプロトン伝導率を測定した。結果を図1に示す。
図1に示すように、ペレット中のPBIの含有量が増えるほど、プロトン伝導率は低下した。また、200℃以下の温度域において、各サンプルのプロトン伝導率は、温度上昇と共に上昇したが、200℃以上の温度域において、PBIを含有するサンプル(2)〜(5)のプロトン伝導率は、温度上昇と共に低下する傾向を示した。この結果から、リン酸と固溶したPBIによるプロトン伝導性は、200℃以上のような高温で低下し、SAPO粒子間の粒界抵抗の増加を招くことが示唆されている。
[参考実験2]
合成例1にて得られたSAPO(1)、SAPO(6)を、それぞれ、2×103kg/cm2で加圧、ペレット化し、サンプル(6)及びサンプル(7)を得た。
一方、合成例1にて得られたSAPO(1)〜SAPO(6)と、PBIのDMAc溶液とを、各SAPOとPBIの重量比(SAPO:PBI)が96:4となるように混合し、遊星ミルで16時間混合して均一なペーストを調製した。得られたペーストをガラス板上に流延塗布し、190℃で7時間加熱し溶媒を除去した。ガラス板から残渣を削り取り、2×103kg/cm2で加圧、ペレット化し、サンプル(8)〜(13)を得た。
Figure 2009158130
得られたサンプル(6)〜(13)について、無加湿の空気中、温度条件を変えて、周波数0.1〜1×106Hz、振幅10mVでプロトン伝導率を測定した。結果を図2に示す。
また、サンプル(6)、サンプル(7)、サンプル(8)及びサンプル(13)については、SEM観察を行った。結果を図3に示す。
また、サンプル(8)、サンプル(9)、サンプル(11)及びサンプル(13)について、熱重量測定(TGA)及び示差熱重量分析(DTA)を行った。結果を図4に示す。尚、TGA及びDTAは室温から450℃まで昇温速度10℃/minで測定した。
図2のサンプル(6)とサンプル(7)の結果から、リン酸を過剰に含有するSAPO(6)はSAPO(1)と比較して、温度に関わらず高いプロトン伝導性を示すことがわかる。また、図3のSEM写真(a)と(b)を比較すると、サンプル(7)では、SAPO(6)粒子の表面を覆うリン酸層が確認できる。すなわち、サンプル(7)では、過剰のリン酸によるSAPO(6)粒子間のプロトン伝導ネットワークが形成されており、この作用によってサンプル(7)のプロトン伝導性が向上したと考えられる。
一方、図2より、PBIを含有するサンプル(8)〜(13)は、PBIを含有しないサンプル(6)及び(7)と比較するとプロトン伝導性に劣るが、SAPOのリン酸量の増加(x値の増加)に伴い、プロトン伝導性が飛躍的に向上することがわかる。また、サンプル(8)〜サンプル(13)を比較すると、x値の増加に伴い、最大伝導率が高温側にシフトした。最も優れたプロトン伝導挙動を示したサンプル(13)においては、250℃において0.18S/cmの高プロトン伝導性を示した。尚、サンプル(11)は、低温度域で低プロトン伝導性を示しているが、これは低温度域の導電率が物質本来の性質以外に吸着水等の影響を受けやすく、湿度等の実験条件に影響されたためである。
また、図3のSEM写真(a)と(c)を比較すると、PBIを含有するサンプル(8)は、SAPO粒子表面がPBIに被覆されていることが確認できた。図3のSEM写真(b)と(d)の比較から、サンプル(13)についても同様のことが確認できた。さらに、図3のSEM写真(c)と(d)を比較すると、過剰のリン酸を含有するSAPO(6)を用いたサンプル(13)では、SAPOを被覆するPBIの膨潤が確認できた。これは、PBIと過剰なリン酸とが固溶していることを証明している。すなわち、PBIは過剰なリン酸と固溶し、この固溶したリン酸によってプロトンを伝導させ、SAPOとPBIを含有するペレットのプロトン伝導性を高めることがわかる。
さらに、図4に示したように、TGA及びDTAでは、150℃〜225℃において、重量減少及び吸熱ピークが観察された。重量減少は、SAPOのリン酸量の増加(x値の増加)に伴い大きくなった。H3PO4をドープしたPBI膜において、同様の熱的挙動が観察され、ポリリン酸が形成されると報告(Y.-L.Ma, J.S.Wainright, M.H.Litt, and R.F.Savinell, J.Electrochem.Soc, 151, A8(2004)、J.Lobato, P. Canizares, M.A.Rodrigo, and J.J.Linares, Electrochem.Acta, 52,3910(2007))されていることから、図2におけるサンプル(8)〜(13)の200℃以上でのプロトン伝導性の低下は、過剰のリン酸からポリリン酸が形成されるためと考えられる。
また、図4のDTA曲線では、300〜350℃において、PBIの酸化に帰属する発熱ピークが観察され、PBIが耐熱性を有することがわかる。
[実施例1]
(ハイブリッド電解質膜の作製)
合成例1にて得られたSAPO(6)とPBIのDMAc溶液とを、SAPO(6)とPBIの重量比(SAPO(6):PBI)が96:4となるように混ぜ、遊星ミルで16時間混合し、均一なペーストを調製した。得られたペーストをガラス板上に流延塗布し、190℃で7時間加熱し溶媒を除去した。ガラス板から削りとった残渣を、表4に示す量のPTFEと混合、混練し、約60μmの厚さに冷間圧延し、実施例1−1〜1−4のハイブリッド電解質膜を得た。
Figure 2009158130
(ハイブリッド電解質膜の評価)
<プロトン伝導性と引っ張り強度>
得られた実施例1−1〜1−4のハイブリッド電解質膜について、無加湿の空気中、200℃にて、周波数0.1〜1×106Hz、振幅10mVでプロトン伝導率を測定した。結果を図5に示す。
また、実施例1−1〜1−4のハイブリッド電解質膜について、引っ張り強度を測定した。引っ張り強度は、室温にて、標準試験機械を用いて測定し、最大荷重をハイブリッド電解質膜の断面積で割って算出した。結果を図5に示す。
図5より、ハイブリッド電解質膜の引っ張り強度とプロトン伝導性はトレードオフの関係であることがわかる。すなわち、PTFEの含有量の増加は、ハイブリッド電解質膜の引っ張り強度を強化するが、プロトン伝導性を低下させる。そして、引っ張り強度とプロトン伝導性のバランスから、フッ素系樹脂であるPTFEの含有量は特に5〜25wt%が好ましく、中でも10wt%が好ましいことがわかる。
[実施例2]
(膜・電極接合体の作製)
実施例1−2のハイブリッド電解質膜の作製において、膜厚を60μm、100μm、150μm、200μmに変更した以外は同様にして、ハイブリッド電解質膜を作製した。
2枚のカーボンペーパー(東レ製、TGPH−090)を準備し、各カーボンペーパーの一方の表面に、白金担持カーボン(白金担持量10wt%)とPTFEとグリセリンを混合してなる触媒インクを塗布、乾燥し、アノード電極及びカソード電極(面積0.5cm2、白金担持量0.6mg/cm2)を作製した。
上記にて得られた各ハイブリッド電解質膜を、アノード電極とカソード電極の間に挟み、130℃でホットプレスし、膜・電極接合体を得た。
(膜・電極接合体の評価)
<開回路電圧とオーム抵抗の膜厚依存性>
上記膜厚の異なるハイブリッド電解質膜を備えた膜・電極接合体について、開回路電圧及びオーム抵抗を測定した。結果を図6に示す。
尚、開回路電圧は、200℃にて、無加湿の水素及び空気をそれぞれ流速30mL/minで供給し、測定した。また、オーム抵抗は、電流遮断法により分極抵抗と分離した。
図6より、開回路電圧は、電解質膜の膜厚に対する依存性を示さず、約985mVの一定の値を示し、電解質膜の膜厚による水素及び酸素のクロスオーバーを無視できることがわかった。尚、開回路電圧が理論値1.1Vよりも低い値を示したが、これは、SAPOが燃料電池作動条件下、プロトン伝導性以外に僅かなP型性を示すため、電池内部で自己短絡するためである。
また、図6より、オーム抵抗は、電解質膜の膜厚の低下に伴い、ほぼ直線的に低下した。この結果から、電解質膜内において、10μm以下のスケールレベルでSAPO粒子が均一に分散しているといえる。また、電解質膜のさらなる薄膜化によって、オーム抵抗をさらに低下することができると考えられる。
[実施例3]
(膜・電極接合体の作製)
実施例1−2と同様にして、ハイブリッド電解質膜(膜厚60μm)を作製した。該電解質膜を用いて実施例2と同様にして、膜・電極接合体を得た。
(膜・電極接合体の評価)
<発電性能>
得られた膜・電極接合体について、100〜250℃にて、無加湿の水素及び空気をそれぞれ流速30mL/minで供給し、発電性能を測定した。結果を図7に示す。
図7に示すように、測定全温度域において、980mV以上の開回路電圧を示し、高電流密度域においても、限界電流が観察されなかった。電流‐電圧曲線では、作動温度の上昇に伴い、電圧が低下した。
出力密度のピークは、100℃で224mW/cm2、250℃では325mW/cm2に達した。200℃における出力密度のピーク値は、実施例2における200℃でのオーム抵抗値から予測される出力密度よりも低い値であり、電流遮断測定から全分極抵抗は0.60Ωcm2と見積もられる。電極‐電解質膜間の接合性の向上により発電性能の向上が期待できる。
参考実験1における結果(プロトン伝導率)を示すグラフである。 参考実験2における結果(プロトン伝導率)を示すグラフである。 参考実験2における結果(SEM観察)を示すグラフである。 参考実験3における結果(TGA及びDTA)を示すグラフである。 実施例1における結果(プロトン伝導率及び引っ張り強度)を示すグラフである。 実施例2における結果(開回路電圧及びオーム抵抗)を示すグラフである。 実施例3における結果(発電性能)を示すグラフである。

Claims (13)

  1. 少なくとも、組成式Sn(a+b=1、0<a≦1、0≦b<1、x>2.0、y=3.5x、Mは、In、Al、Ga、Sc及びYから選ばれる少なくとも1種の金属カチオン)で表されるプロトン伝導性無機化合物粒子と、ポリベンゾイミダゾールと、フッ素系樹脂と、を混合してなることを特徴とする、ハイブリッド電解質膜。
  2. 前記組成式において、x≦2.37である、請求項1に記載のハイブリッド電解質膜。
  3. 前記ポリベンゾイミダゾールを、前記プロトン伝導性無機化合物粒子と該ポリベンゾイミダゾールの合計量に対して、1〜30wt%含有する、請求項1又は2に記載のハイブリッド電解質膜。
  4. 前記フッ素系樹脂を5〜25wt%含有する、請求項1乃至3のいずれかに記載のハイブリッド電解質膜。
  5. 前記フッ素系樹脂がポリテトラフルオロエチレンである、請求項1乃至4のいずれかに記載のハイブリッド電解質膜。
  6. 前記ポリベンゾイミダゾールが、ベンゾイミダゾールモノマー由来の繰り返し単位を80mol%以上含有する、請求項1乃至5のいずれかに記載のハイブリッド電解質膜。
  7. 前記組成式Snにおいて、MがIn又はAlのカチオンである、請求項1乃至6のいずれかに記載のハイブリッド電解質膜。
  8. 少なくとも、組成式Sn(a+b=1、0<a≦1、0≦b<1、x>2.0、y=3.5x、Mは、In、Al、Ga、Sc及びYから選ばれる少なくとも1種の金属カチオン)で表されるプロトン伝導性無機化合物粒子と、ポリベンゾイミダゾールと、溶媒とを混合して得られるペーストから、前記溶媒を除去し、該溶媒除去により得られた残渣分とフッ素系樹脂とを混練して混練物を調製し、該混練物を膜化する、ハイブリッド電解質膜の製造方法。
  9. 前記組成式Snにおいて、x≦2.37である、請求項8に記載のハイブリッド電解質膜の製造方法。
  10. Sn含有化合物及びM含有化合物と、リン酸とを、Sn、M及びリン酸のモル比が、Sn:M:P=a:b:xとなるように混合した混合物を、200〜400℃の加熱条件下、攪拌してペースト化し、得られたペーストを450〜750℃でか焼することによって、前記Snを調製する、請求項8又は9に記載のハイブリッド電解質膜の製造方法。
  11. 前記溶媒が、ジメチルアセトアミドである、請求項8乃至10のいずれかに記載のハイブリッド電解質膜の製造方法。
  12. 前記溶媒除去を、150〜250℃で行う、請求項8乃至11のいずれかに記載のハイブリッド電解質膜の製造方法。
  13. 前記混練物を圧延により膜化する、請求項8乃至12のいずれかに記載のハイブリット電解質膜の製造方法。
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