JP2009143396A - 車両用可動スパッツ装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】加速や減速に対応する最適時に、可動スパッツの下降や上昇を自動的に行う車両用可動スパッツ装置とできる。
【解決手段】車両の車輪前方に配置する可動スパッツと、可動スパッツに係合されたベアリングと、ベアリングを介して、可動スパッツが整流機能発揮状態となる位置と非整流機能発揮状態となる位置との間で移動可能なように、可動スパッツを支持するベアリングスライドレールとを備える車両用可動スパッツ装置とする。
【選択図】図1
【解決手段】車両の車輪前方に配置する可動スパッツと、可動スパッツに係合されたベアリングと、ベアリングを介して、可動スパッツが整流機能発揮状態となる位置と非整流機能発揮状態となる位置との間で移動可能なように、可動スパッツを支持するベアリングスライドレールとを備える車両用可動スパッツ装置とする。
【選択図】図1
Description
本発明は、車両に搭載する車両用可動スパッツ装置に関する。
従来、車両の走行時等にタイヤ周辺の気流を整える車両用整流装置として、例えば下記特開平5−105124に示されるような車両用スパッツが知られている。
この文献で開示される車両用整流装置は、モータ駆動可能なようにモータ駆動装置と連結して設置した車両用スパッツ(整流板)を、車両の走行速度に対応させて上昇又は下降させるものである。モータ駆動が可能なように設置された車両用スパッツは、駆動用モータに係合されたギアを介して上昇又は下降する。
このようなモータ駆動スパッツは、車両の左右の前輪の直前等に配置され、車両やタイヤに対する揚力や空気抵抗を適宜制御する。空気抵抗等を制御することで車両の前輪周辺の空気の流れが整流される。
また、モータ駆動スパッツを車速に応じて下降させることで、空気整流が必要な車速時に、モータ駆動スパッツが車両のヨーイング抑制制御又はローリング抑制制御を行う。また、モータ駆動スパッツを車速に応じて上昇させることで、空気整流が必要でない車速時には、モータ駆動スパッツが車両のヨーイング抑制制御又はローリング抑制制御を行うことはなく、車両の前輪周辺に多量の空気流を送り込むことができる。
特開平5−105124号公報
実開昭62−37588号公報
しかし、従来知られているモータ駆動の可動スパッツにおいては、スパッツを制御するための制御装置やスパッツを駆動するための駆動モータやその電源等の装置や配線が別途に必要であった。
このため、装置が複雑となり、車両の小型軽量化やコストダウンを図る意味において、好ましいものとはいえなかった。
本発明は、上述のような問題点に鑑み為されたものであり、より小型軽量で簡易な車両用可動スパッツ装置を提供することを目的とする。
この発明にかかる車両用可動スパッツ装置は、車両の車輪前方に配置する可動スパッツと、可動スパッツに係合されたベアリングと、ベアリングを介して、可動スパッツが整流機能発揮状態となる位置と非整流機能発揮状態となる位置との間で移動可能なように、可動スパッツを支持するベアリングスライドレールとを備える事を特徴とする。
また、この発明にかかる車両用可動スパッツ装置は、好ましくはベアリングスライドレールが、可動スパッツを整流機能発揮状態に誘導するように可動スパッツ挟んで互いに平行に対抗して設けられる二本の第一ベアリングスライドレールと、可動スパッツを非整流機能発揮状態に誘導するように可動スパッツ挟んで互いに平行に対抗して設けられ、第一ベアリングスライドレールより車両前方に配置される二本の第二ベアリングスライドレールとからなることを特徴とする。
また、この発明にかかる車両用可動スパッツ装置は、さらに好ましくは第二ベアリングスライドレールが、第一ベアリングスライドレールよりも車両の加速度方向との為す角度が小さくなるように配置されることを特徴とする。
また、この発明にかかる車両用可動スパッツ装置は、さらに好ましくは第二ベアリングスライドレールが車両の略加速度方向に設けられ、第一ベアリングスライドレールは第二ベアリングスライドレールと略直交する略鉛直方向に設けられることを特徴とする。
また、この発明にかかる車両用可動スパッツ装置は、さらに好ましくは可動スパッツが、車両が加速すると整流機能発揮状態となる位置に移動し、車両が減速すると収納状態となる位置に移動するように、第二ベアリングスライドレールに嵌るベアリングに車両の加速又は減速に基づく駆動力を与える錘部を備えることを特徴とする。
また、この発明にかかる車両用可動スパッツ装置は、可動スパッツには二本の第二ベアリングスライドレールのそれぞれに嵌る一対のベアリングが係合されており、錘部は、第二ベアリングスライドレールに嵌る一対のベアリング間に対応する可動スパッツ上に配置されることを特徴とする。
より小型軽量で簡易な車両用可動スパッツ装置とできる。また、加速や減速に対応する最適時に、可動スパッツの展開や収納を自動的に行う車両用可動スパッツ装置とできる。
実施形態で例示する車両用可動スパッツ装置は、略長方形の形状を有する可動スパッツの四隅に、各々係合された四つのベアリングを備える。また、この車両用可動スパッツ装置は、略加速度方向に一対のベアリングスライドレールと、加速度方向と略直交する略鉛直方向に一対のベアリングスライドレールとを備える。
また、可動スパッツの上方角隅の二つのベアリングは、略加速度方向の一対のベアリングスライドレールにスライド可能に嵌め込まれる。また、可動スパッツの下方角隅の二つのベアリングは、加速度方向と略直交する略鉛直方向の一対のベアリングスライドレールにスライド可能に嵌め込まれる。
また、変形例で示す可動スパッツは、加速度方向の一対のベアリングスライドレールに嵌め込まれるベアリング間に略棒状の錘部を備える。錘部は、車両の加速時には、慣性力により可動スパッツへ車両後ろ方向への駆動力を与える。また、錘部は、車両の減速時には、慣性力により可動スパッツへ車両前方方向への駆動力を与える。
可動スパッツに錘部からの駆動力が加えられることで、可動スパッツは、ベアリングが車両の加速時と減速時とでベアリングスライドレール上を、各々異なる方向に移動する。すなわち、車両の加速時には、可動スパッツは、ベアリングスライドレール上をベアリングに誘導されるように車両後方へ移動する。また、車両の減速時には、可動スパッツは、ベアリングスライドレール上をベアリングに誘導されるように車両前方へ移動する。
一方、可動スパッツの下端隅の二個のベアリングは、略鉛直方向に配置されたベアリングスライドレールに沿って、上述の車両の加速・減速に対応して略鉛直方向にスライドする。
このスライド動作により、可動スパッツは、車両の加速時には車輪の前方で風圧を受けて整流する整流機能発揮状態(展開状態)となり、車両の減速時には車輪前方で略水平方向に収納され非整流機能発揮状態(収納状態)となる。
すなわち、可動スパッツは、車両の加速時には整流機能発揮状態となり、タイヤやホイール周りへの風を整流するので、車両用可動スパッツ装置は、車両の直進安定性等を向上させることができる。
一方、可動スパッツは、車両の減速時には非整流機能発揮状態となる。従って、車両用可動スパッツ装置は、タイヤやホイール周りへの風を抑制しないので、車両の前輪やホイール周辺は多量の風により冷却される。
すなわち、車両の減速時には、タイヤやホイールやブレーキ周辺が多量の風により冷却されるので、ブレーキ冷却効果を大きく発揮させる事ができ、当該車両のブレーキ性能を高いレベルで発揮させることが可能となる。
さらに、このような車両用可動スパッツ装置においては、構造上、可動スパッツが車両の加減速に伴い自動的に整流機能発揮状態(又は展開状態)と非整流機能発揮状態(又は収納状態)との位置間を移動する。
従って、可動スパッツの移動を制御するための制御装置や電気的駆動装置等を必要としないので、各種検出器や駆動制御装置やその電源や配線を無くした小型軽量かつ簡易な車両用可動スパッツ装置とできる。
そこで、以下図面に基づき、実施形態の車両用可動スパッツ装置の構造等について詳細に説明する。
(第一の実施形態)
図1は、車両用可動スパッツ装置100の構成を模式的に説明する構造概念図である。図1に示す車両用可動スパッツ装置100において、図面左側が車両前方方向である。車両用可動スパッツ装置100は、略長方形の可動スパッツ6の四隅それぞれにベアリング3,4を備える。
図1は、車両用可動スパッツ装置100の構成を模式的に説明する構造概念図である。図1に示す車両用可動スパッツ装置100において、図面左側が車両前方方向である。車両用可動スパッツ装置100は、略長方形の可動スパッツ6の四隅それぞれにベアリング3,4を備える。
また、可動スパッツ6は、上片に対応する位置に略棒状の錘部5を有する。そして、錘部5の両端部には、一対のベアリング3が配置される。また、ベアリング3は、車両の略加減速方向でありかつ略水平方向に配置される一対の第二ベアリングスライドレール1に嵌めて配設される。
また、ベアリング3が第二ベアリングスライドレール1に沿って移動することに対応して、可動スパッツ6も錘部5に駆動力を付与されるように、ベアリング3に誘導されて移動する。
一方、車両用可動スパッツ装置100は、可動スパッツ6の下両端に一対のベアリング4を備える。また、車両用可動スパッツ装置100は、第二ベアリングスライドレール1と略直交する略鉛直方向に、一対の第一ベアリングスライドレール2を備える。
ベアリング4は、第一ベアリングスライドレール2に沿って移動可能なように、第一ベアリングスライドレール2に嵌めて配設される。
すなわち、可動スパッツの上端部に位置する一対のベアリング3が第二ベアリングスライドレール1上を略水平方向にスライドする事に対応して、可動スパッツ6の下端部に位置する一対のベアリング4が、第一ベアリングスライドレール2上を略鉛直方向にスライドする。
従って、一対のベアリング3が、第二ベアリングスライドレール1の図面右(車両後方側)端に位置する場合には、一対のベアリング4は第一ベアリングスライドレール2の下端部に位置する。また、一対のベアリング3が、第二ベアリングスライドレール1の図面左(車両前方側)端に位置する場合には、一対のベアリング4は第一ベアリングスライドレール2の上端部に位置する。
このような移動状態について、図2を用いてさらに詳述する。図2は、可動スパッツ6が非整流機能発揮状態、すなわち収納状態となる状態図を示すものである。
図2に示すように、車両用可動スパッツ装置100は、可動スパッツ6を収納状態にする場合には、ホイール等に対する空気整流機能を発揮しないように、また可動スパッツ6自体が受ける空気抵抗が少なくなるように可動スパッツ6を略水平に保持する。
また、車両用可動スパッツ装置100は、可動スパッツ6を特に電気駆動や電気制御することなく図2に示す収納状態とできる。また、車両用可動スパッツ装置100は、可動スパッツ6の上辺に対応する位置に、円柱状の錘部5を有する。
そして、錘部5は、車両の減速時には慣性力により、見かけ上車両前方向(図面左方向)への力を受ける。図4は、錘部5が車両の減速時に受ける慣性力Fについて概念的に説明する図である。
図4に示すように、錘部5が車両前方向の慣性力Fを受けると、錘部5はその両端の一対のベアリング3に車両前方方向への駆動力を付与し、一対のベアリング3は第二ベアリングスライドレール1上を車両前方側に移動する。
一対のベアリング3の移動に対応して、可動スパッツ6もその上辺の錘部5に引っ張られるように車両前方に移動する。可動スパッツ6は、その四隅を第二ベアリングスライドレール1と第一ベアリングスライドレール2とに、各々一対のベアリング3と一対のベアリング4とを介して配置されている。
従って、可動スパッツ6の四隅は、第二ベアリングスライドレール1と第一ベアリングスライドレール2とに沿って移動する。
すなわち、車両の減速時には、図2に示すように可動スパッツ6の下両端の一対のベアリング4は、第一ベアリングスライドレール2の上端にまで移動する。図2に示す可動スパッツ6の収納状態においては、車両前方から風の流れは、実質的に可動スパッツ6により遮られることは殆どない。このため、より多くの風が不図示のタイヤやホイール周辺等に供給されることとなり、ブレーキ冷却効果を発揮できるので好ましい。
一方、図3は、可動スパッツ6が整流機能発揮状態となる展開状態の状態図を示すものである。図3に示すように、車両用可動スパッツ装置100は、可動スパッツ6を整流機能発揮状態にする場合には、タイヤやホイール等に対する空気整流や風圧抑制機能を発揮するように、また可動スパッツ6自体の空気抵抗が大きくなるように可動スパッツ6を略鉛直に保持する。
また、車両用可動スパッツ装置100は、可動スパッツ6を特に電気駆動や電気制御することなく図3に示す整流機能発揮状態とできる。また、上述するように車両用可動スパッツ装置100は、可動スパッツ6のに上辺に対応する位置に錘部5を有する。
そして、錘部5は、車両の加速時には慣性力により、見かけ上車両後方向(図面右方向)への力を受ける。図5は、錘部5が車両の加速時に受ける慣性力F´について概念的に説明する図である。
図5に示すように、錘部5が車両後方向の慣性力F´を受けることで、錘部5はその両端の一対のベアリング3に車両後方向への駆動力を付与し、一対のベアリング3は、第二ベアリングスライドレール1上を車両後方に移動する。
これに対応して、可動スパッツ6もその上辺の錘部5に駆動されるように、一対のベアリング3に誘導されて、第二ベアリングスライドレール1に沿って車両後方に移動する。このように、可動スパッツ6は、四隅を第二ベアリングスライドレール1と第一ベアリングスライドレール2とに、各々一対のベアリング3とベアリング4とを介して配置されている。
従って、展開状態となる場合も可動スパッツ6の四隅は、第二ベアリングスライドレール1と第一ベアリングスライドレール2とに沿って移動する。
すなわち、車両の加速時には、図3に示すように可動スパッツ6の下両端の一対のベアリング4は、第一ベアリングスライドレール2の下端にまで移動する。図3に示す可動スパッツ6の整流機能発揮状態においては、車両前方から風の流れは、可動スパッツ6により遮られ、また整流される。
このため、可動スパッツ6により、不図示のタイヤやホイール周辺等に供給される風量や風圧を低下させる効果が期待でき、車両の直進安定性を向上させ、また車両全体の空気抵抗を低減することができるので好ましい。
上述するように、車両用可動スパッツ装置100は、車両の加減速時に、加減速度に対応する大きさの慣性力が可動スパッツ6等に発生する事を利用して、可動スパッツ6を移動させることができる。
これにより、特別な電気的駆動制御装置等の駆動装置を用いることなく、簡単な構造により、小型軽量な車両用可動スパッツ装置とできる。
車両用可動スパッツ装置100を構成する各部材は、ステンレス等を典型例として任意の材料や素材で構成することができる。また、各部材の材料密度や重量配分を適宜調整することで、車両の加速時や減速時にスムーズに所望の移動をする車両用の可動スパッツ装置とできる。
次に、車両に搭載する車両用可動スパッツ装置100の変形例について図6等を用いて詳細に説明する。
(変形例)
図6は、第二ベアリングスライドレール1の車両前方向端部に下方傾斜溝を設ける変形例を示す図である。図6に示す変形例では、ベアリング3は、第二ベアリングスライドレール1の図面左側(車両前方側)端部まで移動すると、傾斜部61に嵌り込む。
図6は、第二ベアリングスライドレール1の車両前方向端部に下方傾斜溝を設ける変形例を示す図である。図6に示す変形例では、ベアリング3は、第二ベアリングスライドレール1の図面左側(車両前方側)端部まで移動すると、傾斜部61に嵌り込む。
傾斜部61に嵌り込んだベアリング3は、車両の加速時に車両後方に移動するに際し、傾斜部61の溝を上昇し乗り越えるのに対応する力を必要とする。
すなわち、傾斜部61が無い場合には、第二ベアリングスライドレール1が略水平でありベアリング摩擦力が実質的に無視できる事を勘案すると、一対のベアリング3は、車両の加速に対応して極めて容易に車両後方側に移動を開始する。
一方、傾斜部61がある場合には、第二ベアリングスライドレール1が略水平でありベアリング摩擦力が実質的に無視できる程度としても、ベアリング3は車両の加速に対応して傾斜部61を乗り超えて(駆け登って)から車両後方側に移動する必要がある。
換言すれば、ベアリング3は、傾斜部61を乗り越える(駆け登る)だけの力を可動スパッツ6又は錘部5から付与されなければ、車両後方へ移動開始することができない。
従って、傾斜部61の傾斜角度や傾斜長さ、傾斜深さ等を適宜調整することで、可動スパッツ6が整流機能発揮状態となる位置に移動開始するために必要な、所望の車両の加速度や加速度継続時間等を設計することが可能となる。
このため、例えば車両のブレーキング期間中に、車両挙動上の反動等に起因して、一対のベアリング3に車両後方方向への駆動力が一時的に付与されたとしても、ベアリング3が傾斜部61を超えない限り、一対のベアリング3が図3に示すような整流機能発揮状態にまで移動する事はない。
従って、車両用可動スパッツ装置100は、車両挙動上の反動等が生じても、また所定の値以下の車両加速度が加わっても、収納状態の位置を保持し続ける。このため、ブレーキ周辺部に十分な風量が供給され、ブレーキが空冷されることによりブレーキ性能を高く保つ事が可能となる。
図7及び図8は、車両用可動スパッツ装置100を車両700の前輪701前方に取り付けた例を示すものである。図7は、車両用可動スパッツ装置100を車両に取り付けた斜視図を示すものである。また、図8は、車両用可動スパッツ装置100を車両に取り付けた側面図を示すものである。
図7及び図8に示すように、車両用可動スパッツ装置100は、好ましくは車両前輪の前方に、風圧抑制や整流効果が発揮できるように配置される。また、車両用可動スパッツ装置100は、車両後輪の前方に、風圧抑制や整流効果が期待できるように配置してもよく、車両の四輪全ての前方に配置してもよい。なお、図7及び図8は、可動スパッツ6が車輪前方に展開されて、整流機能発揮状態となっている状態を示すものである。
次に、図9及び図10を用いて、車両用可動スパッツ装置100における可動スパッツ6の挙動と各部材構成との関係について説明する。
図9は、車両用可動スパッツ装置100の側面図を模式的に説明する図である。図9に示すように、板状の可動スパッツ6の左右側片長さをaとし、第一ベアリングスライドレール2の長さをbとする。
また、可動スパッツ6の整流機能発揮状態下での可動スパッツ6と第一ベアリングスライドレール2との為す角をθとすると、第二ベアリングスライドレール1の長さLは、図9に示す関係から、以下の式(1)に基づいて設計できる。
L=(a2−(acosθ−b)2)1/2−asinθ・・・(1)
また、図10は車両用可動スパッツ装置100の側面図を模式的に説明する図であり、図10(a)は減速時、図10(b)は加速時の可動スパッツ6の挙動を説明するものである。
ここで、図10(a)に示すように、可動スパッツ6が整流機能発揮状態において、可動スパッツ6の下端側のベアリング4部分での質量をm1、可動スパッツ6の上端側で錘部5も含めたベアリング3部分での質量をm2と仮定する。
また、可動スパッツ6が整流機能発揮状態において、可動スパッツ6と第一ベアリングスライドレール2との間の為す角度をαとすると、可動スパッツ6が前方に動き始める時の減速度aについて下記の関係式(2)が成り立つ。
m1gcosαsinα=m2a・・・(2)
なお、gは重力加速度とする。また、可動スパッツ6が完全に収納状態(非整流機能発揮状態)になるために必要とされる減速度をa´とすれば、例えばα=π/4と仮定すると式(2)は、
m1gcos(π/4)sin(π/4)=m2a´・・・(3)
となるので、必要な減速度は
a´=m1g/2m2・・・(3)
と計算できる。
a´=m1g/2m2・・・(3)
と計算できる。
また、可動スパッツ6やベアリング3への減速度方向は、車両の前方方向である。従って、式(3)に示すように、m1とm2とを適宜調整し、重量配分することで、可動スパッツ6が完全に収納状態になるために必要な減速度a´を、適宜任意の値に設計することが可能となる。
また、車両の加速時については図10(b)に示すように、可動スパッツ6が非整流機能発揮状態において、可動スパッツ6の下端側のベアリング4での質量をm1、可動スパッツ6の上端側で錘部5も含めたベアリング3での質量をm2と仮定する。
また、可動スパッツ6が非整流機能発揮状態において、可動スパッツ6と第二ベアリングスライドレール1との間の為す角度をβとし、傾斜部(又は傾斜溝)61下端の為す角をγとすると、可動スパッツ6が動き出す時の加速度aについて下記の関係式(4)が成り立つ。
m2acos(π/2−γ)+m1gsinβcos(π/2−γ+β)
=m2gcosγ・・・(4)
=m2gcosγ・・・(4)
また、可動スパッツ6やベアリング3への加速度方向は、車両の後方方向である。従って、式(4)に示すように、γを適宜調整する事で、可動スパッツ6が動き出すために必要な加速度aを設計することが可能となる。
なお、上述する算出式においては、各ベアリング等における摩擦力や空気抵抗等は考慮していないので、大凡の目安としての設計計算を例示するものである。もちろん、一般に摩擦力は材質や潤滑剤等によっても異なり、また空気抵抗等は車両形状等によっても異なるものであるので、これらを考慮してさらに精密な設計やシミュレーションを行ってもよい。
上述するように、車両用可動スパッツ装置100は、車両のブレーキングを行う減速時には、ブレーキに十分な風が供給されてブレーキ等が冷却されるように、可動スパッツ6を収納する。
また、車両用可動スパッツ装置100は、車両の加速時や加速後の走行時には、車両の前方からの風がタイヤ周辺を迂回するように整流機能を発揮する位置に可動スパッツ6を展開する。
これにより、車両用可動スパッツ装置100は、可動スパッツ6を必要に応じて収納したり、展開させて整流機能を持たせたりすることができる。
また、車両用可動スパッツ装置100は、一対のベアリング3と一対のベアリング4との取り付け部分が、可動スパッツ6に対して自由に回転できる。このため、可動スパッツ6の上端部と下端部とで互いにモーメントを及ぼし合うことがなく、可動スパッツ6がスムーズに移動し、傾きを変えることが可能となる。
また、一対のベアリング3と一対のベアリング4は、各々第二ベアリングスライドレール1と第一ベアリングスライドレール2とに沿って移動する。
例えば、第二ベアリングスライドレール1と第一ベアリングスライドレール2とを、各々車両の略前後方向、車両の略上下方向に配設する場合には、一対のベアリング3と一対のベアリング4及びそれらに係合される可動スパッツ6の係合部分は、各々車両の略前後・略上下方向のみの移動を許容される。これにより、可動スパッツ6は、傾きを変更するように移動する。
また、この場合に可動スパッツ6等は、移動方向を第一ベアリングスライドレール2等にガイドされるので、車両の横方向(車両側面方向)へ移動することはない。上述するように、第二ベアリングスライドレール1と第一ベアリングスライドレール2との配設位置や方向を適宜設計し、調整することで、可動スパッツ6の移動方向や傾き変更度合い、配置位置を適宜設計することが可能となるので、様々な車両の形状等や配置位置に対してフレキシブルに対応可能な車両用可動スパッツ装置100とできる。
また、車両用可動スパッツ装置100は、可動スパッツ6に錘部5を有する。錘部5は、車両の加速・減速の影響を受けて慣性力により、可動スパッツ6が移動するためのトリガー又は動力源となる。
また、車両の減速時等において可動スパッツ6が収納状態となる時に、ベアリング3又は錘部5が傾斜部(傾斜溝)61に落ち込むことで、その後一定以上の加速度が加わらない限り、可動スパッツ6が車両後方方向へ移動開始しないように、いわゆるロック機能を発揮する。
また、車両用可動スパッツ装置100は傾斜部61を有するので、可動スパッツ6の下端側重量や風圧等の外力により、予期せぬ場合に可動スパッツ6が整流機能発揮状態に展開されることを制限し調整することができる。
また、上述する設計計算に例示するように、車両用可動スパッツ装置100は、バネ等の弾性材や外力付与部材、電気的駆動制御装置その他の強制駆動制御装置を使用しなくても、可動スパッツ6の上端側と下端側の重量バランスを適宜調整することで、可動スパッツ6を収納開始する減速度を所望の値に調整し、設計できる。
従って、一定以上の減速度が発生するような強いブレーキ作動時、すなわちブレーキロータ等の温度が急上昇するようなブレーキ作動状況下においてのみ、可動スパッツ6を収納するように設計調整することができる。
これにより、強いブレーキ作動時には、ホイールハウス周辺に風を導入し、ブレーキロータの冷却性を向上させることが可能である。
また、傾斜部61の溝角度や深さ、溝長さを適宜調整することで、可動スパッツ6の展開開始加速度(収納状態から整流機能発揮状態へと展開を開始する車両加速度)を設計し調整することができる。
これにより、わずかな加速度が生じた場合でも迅速に可動スパッツ6を展開し、整流機能を発揮させることも可能となる。従って、車両は、加速とともに速やかに可動スパッツにより直進安定性を獲得し、空気抵抗の増加を抑制することも可能となる。
また、実施形態で説明した車両用可動スパッツ装置100は、第二ベアリングスライドレール1の長辺が、略水平かつ略車両の加減速度方向に配置されるものとして説明した。しかしこれに限られず、第二ベアリングスライドレール1は、可動スパッツ6を加減速方向への成分を有する方向へ誘導できるように、長辺が加減速方向成分を有するように配置すれば足りる。
また、実施形態で説明した車両用可動スパッツ装置100は、第一ベアリングスライドレール2の長辺が、第二ベアリングスライドレール1と略直交する略鉛直方向に配置されるものとして説明した。
しかしこれに限られず、第一ベアリングスライドレール2は、可動スパッツ6が整流機能を発揮できるような所定の配置や傾斜に、可動スパッツ6を誘導できるように、長辺が鉛直方向成分を有するように配置すれば足りる。
また、傾斜部61は、第二ベアリングスライドレール1の下端に一定の傾斜角度を有する構造として説明した。しかし、傾斜部61は、ベアリング3が車両後方へ移動を開始する事に一定の制限を付与する構造であればよく、この開示例に限定されることはない。
例えば傾斜部61は、突起を形成したり、溝部や凹凸部、テーパ形状等により、ベアリング3又は錘部5の動きだしに一定の歯止めをかける構成とできる。また、可動スパッツ6は、板状に限られず円形状やその他の立体形状とすることができる。
また、 実施形態に示す車両用可動スパッツ装置100は、自明な範囲で適宜構成と動作及び部材を変更して用いることができる。
1・・第二ベアリングスライドレール、2・・第一ベアリングスライドレール、3,4・・ベアリング、5・・錘部、6・・可動スパッツ、61・・傾斜部、100・・車両用可動スパッツ装置、700・・車両、701・・前輪。
Claims (6)
- 車両の車輪前方に配置する可動スパッツと、
前記可動スパッツに係合されたベアリングと、
前記ベアリングを介して、前記可動スパッツが整流機能発揮状態となる位置と非整流機能発揮状態となる位置との間で移動可能なように、前記可動スパッツを支持するベアリングスライドレールと、
を備える事を特徴とする車両用可動スパッツ装置。 - 請求項1に記載の車両用可動スパッツ装置において、
前記ベアリングスライドレールは、
前記可動スパッツを整流機能発揮状態に誘導するように前記可動スパッツを挟んで互いに平行に対抗して設けられる二本の第一ベアリングスライドレールと、前記可動スパッツを非整流機能発揮状態に誘導するように前記可動スパッツを挟んで互いに平行に対抗して設けられ、前記第一ベアリングスライドレールより車両前方に配置される二本の第二ベアリングスライドレールと、
であることを特徴とする車両用可動スパッツ装置。 - 請求項2に記載の車両用可動スパッツ装置において、
前記第二ベアリングスライドレールは、前記第一ベアリングスライドレールよりも前記車両の加速度方向との為す角度が小さくなるように配置される、
ことを特徴とする車両用可動スパッツ装置。 - 請求項3に記載の車両用可動スパッツ装置において、
前記第二ベアリングスライドレールは前記車両の略加速度方向に設けられ、
前記第一ベアリングスライドレールは前記第二ベアリングスライドレールと略直交する略鉛直方向に設けられる
ことを特徴とする車両用可動スパッツ装置。 - 請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の車両用可動スパッツ装置において、
前記可動スパッツは、前記車両が加速すると前記整流機能発揮状態となる位置に移動し、前記車両が減速すると収納状態となる位置に移動するように、第二ベアリングスライドレールに嵌るベアリングに前記車両の加速又は減速に基づく駆動力を与える錘部、
を備えることを特徴とする車両用可動スパッツ装置。 - 請求項5に記載の車両用可動スパッツ装置において、
前記可動スパッツには、前記二本の第二ベアリングスライドレールのそれぞれに嵌る一対のベアリングが係合されており、
前記錘部は、前記一対のベアリング間に対応する前記可動スパッツ上に配置される
ことを特徴とする車両用可動スパッツ装置。
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JP2021075257A (ja) * | 2019-11-13 | 2021-05-20 | アイシン精機株式会社 | 車両用スパッツ装置 |
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2007
- 2007-12-14 JP JP2007322852A patent/JP2009143396A/ja active Pending
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