以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態によるエンジンの吸気装置の概略構成図である。
エンジンのシリンダ1に連通する吸気通路10には、上流から順に、スーパーチャージャ11と、インタークーラ12と、スロットル弁13とが設けられる。
スーパーチャージャ11は、クランクプーリ2とベルト3とを介してクランクシャフト(図3参照)によって駆動される容積型の機械式過給機である。スーパーチャージャ11は、運転条件に応じて過給を停止することができるように、ベルトプーリ11aに電磁クラッチを内蔵している。電磁クラッチを締結(ON)すると、スーパーチャージャ11がクランクシャフトによって駆動され、過給を開始する。一方、電磁クラッチの締結を解除(OFF)すると、スーパーチャージャ11はクランクシャフトの回転から切り離され作動を停止する。
なお、過給を停止したときなど、必要に応じてスーパーチャージャ11をバイパスして外気を自然吸気としてシリンダ1に取り入れることができるように、バイパス吸気通路20が設けられる。バイパス吸気通路20には、バイパス吸気通路20を開閉するバイパス弁21が設けられる。バイパス弁21は、スーパーチャージャ11の入口側の吸気通路10aの圧力に対する出口側の吸気通路10bの圧力(以下「圧力比」という)に応じて開閉され、圧力比が大きくなると開く。
インタークーラ12は、吸気通路10を流れる空気を冷却する。
スロットル弁13は、吸気コレクタ14に流入する空気量を調整する。吸気コレクタ14には、内部の圧力を検出する圧力センサ15が設けられる。
図2は、本発明の第1実施形態によるエンジンに適用される圧縮比可変機構100及び吸気弁可変動弁機構200の概略構成を示す図である。
圧縮比可変機構100は、エンジンの圧縮比を圧縮比制御アクチュエータ131によって変化させる。
吸気弁可変動弁機構200は、リフト・作動角可変機構210と位相可変機構240とを備える。リフト・作動角可変機構210は、吸気弁211のリフト・作動角をリフト量制御アクチュエータ230によって変化させる。位相可変機構240は、吸気弁211の中心角(吸気弁211が最大リフトを迎えるクランク角度位置)の位相を位相角制御アクチュエータ241によって進角又は遅角させる。
コントローラ300は中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)及び入出力インタフェース(I/Oインタフェース)を備えたマイクロコンピュータで構成される。コントローラ300は、クランク角センサ311の検出信号に基づいてエンジン回転数を演算し、エアーフローメータ312の検出信号に基づいて負荷を演算し、水温センサ313の検出信号に基づいて水温を検出し、筒内圧力センサ314の検出信号に基づいて筒内圧を検出する。コントローラ300は、このようにして演算又は検出した現在のエンジン運転状態に基づいて、圧縮比可変機構100の圧縮比制御アクチュエータ131と、吸気弁可変動弁機構200のリフト量制御アクチュエータ230及び位相角制御アクチュエータ241と、を制御する。
以下では、図3〜図5を参照して圧縮比可変機構100を備えたエンジンについて詳しく説明する。
図3は、圧縮比可変機構100を備えたエンジンを示す図である。
圧縮比可変機構100を備えたエンジンは、ピストン122とクランクシャフト121とを2つのリンク(アッパリンク111、ロアリンク112)で連結するとともに、コントロールリンク113でロアリンク112を制御して圧縮比を変更する。
アッパリンク111は、上端をピストンピン124を介してピストン122に連結し、下端を連結ピン125を介してロアリンク112の一端に連結する。ピストン122は、シリンダブロック123に嵌着させたシリンダライナ129に摺動自在に嵌合しており、燃焼圧力を受け、シリンダ120内を往復動する。
ロアリンク112は、一端を連結ピン125を介してアッパリンク111に連結し、他端を連結ピン126を介してコントロールリンク113に連結する。また、ロアリンク112は、ほぼ中央の連結孔に、クランクシャフト121のクランクピン121bを挿入し、クランクピン121bを中心軸として揺動する。ロアリンク112は左右の2部材に分割可能である。クランクシャフト121は、複数のジャーナル121aとクランクピン121bとを備える。ジャーナル121aは、シリンダブロック123及びラダーフレーム128によって回転自在に支持される。クランクピン121bは、ジャーナル121aから所定量偏心しており、ここにロアリンク112が揺動自在に連結する。
コントロールリンク113は、連結ピン126を介してロアリンク112に連結する。またコントロールリンク113は、他端を連結ピン127を介してコントロールシャフト114に連結する。コントロールリンク113は、この連結ピン127を中心として揺動する。またコントロールシャフト114にはギアが形成されており、そのギアが圧縮比制御アクチュエータ131の回転軸133に設けられたピニオン132に噛合する。圧縮比制御アクチュエータ131によってコントロールシャフト114が回転させられ、連結ピン127が移動する。
図4は圧縮比可変機構100による圧縮比変更方法を説明する図である。
圧縮比可変機構100は、コントローラ300が圧縮比制御アクチュエータ131を制御することでコントロールシャフト114を回転させて連結ピン127の位置を変更させて、圧縮比を変更する。例えば図4(A)、図4(C)に示すように連結ピン127を位置Pにすれば、上死点位置(TDC)が高くなり高圧縮比になる。
そして図4(B)、図4(C)に示すように、連結ピン127を位置Qにすれば、コントロールリンク113が上方へ押し上げられ、連結ピン126の位置が上がる。これによりロアリンク112はクランクピン121bを中心として反時計方向に回転し、連結ピン125が下がり、ピストン上死点におけるピストン122の位置が下降する。したがって圧縮比が低圧縮比になる。
図5は、圧縮比可変機構100を備えたエンジンのピストンストローク特性を示す図である。
圧縮比可変機構100を備えたエンジンは、ピストンとクランクシャフトとを1つのリンク(コンロッド)で連結し、圧縮比が一定である通常の単一コンロッドエンジン(以下「ノーマルエンジン」という)と、クランクジャーナル中心及びピストンピン中心とのシリンダ軸方向の距離を等しくして比べた場合に、ピストンの上死点付近に滞在する期間が長いという特性がある。
この点について、図5を参照して説明する。図5において、太線は圧縮比可変機構100を備えたエンジンのピストンストローク特性を示し、細線はノーマルエンジンのピストンストローク特性を示す。なお、圧縮比可変機構100の圧縮比は、ノーマルエンジンの圧縮比と同じに設定してある。
図5に示すように、圧縮比可変機構100を備えたエンジンは、ノーマルエンジンよりも上死点付近ではカーブの傾斜が緩く、下死点付近ではカーブの傾斜がきつい。つまり、ノーマルエンジンの場合、ピストンは上死点付近で早い動き(加速度大)になり、下死点付近では鈍い動き(加速度小)になる。
これに対し、圧縮比可変機構100の場合、リンク構成を適切に設定することで、単振動に近いピストンストローク特性を得ることができる。そのため、バランサシャフトが不要(4気筒)となるような振動低減効果が得られるとともに、ピストン加速度が平準化され、上死点付近でのピストン速度がノーマルエンジンに比べて遅くなる。その結果、圧縮比可変機構100は、同じ圧縮比にしたノーマルエンジンに比べて、ピストンが上死点付近に滞在する期間が長くなる。
上死点付近では、吸気通路から供給される高圧の新気によって掃気、充填、混合気形成が行われ、さらに点火も行われる。このように行程の集中する上死点付近のピストン速度を低下させることで、出力可能な回転速度を上げることができる。
また、圧縮比可変機構100の場合、リンク構成を適切に設定することで、低圧縮比時の上死点付近でのピストン速度を高圧縮比時に比べて遅くして、低圧縮比時にピストンが上死点付近に滞在する期間を高圧縮比時よりも長くすることができる。そのため、高圧縮比時よりも排ガス量が増大する低圧縮比時において、掃気を行う時間を長くすることができる。
次に、図6〜図10を参照して吸気弁可変動弁機構200について説明する。
図6は、本発明の第1実施形態によるエンジンの吸気弁可変動弁機構200を示す斜視図である。図6では1つの気筒に対応する一対の吸気弁211及びその関連部品のみを簡略的に図示している。図7は、吸気弁可変動弁機構200の一部を構成するリフト・作動角可変機構210の駆動軸方向視図である。
まず、リフト・作動角可変機構210の構成について説明する。
エンジンの各気筒には、一対の吸気弁211と一対の排気弁(図示せず)が設けられる。吸気弁211の上方には、気筒列方向に延びる中空状の駆動軸213が設けられる。駆動軸213は、一端部に設けられたスプロケット242等を介して、図示しないベルトやチェーンでクランクシャフトと連係され、クランクシャフトに連動して軸周りに回転する。
駆動軸213には、気筒ごとに、一対の揺動カム220が駆動軸213に対して回転自在に取り付けられる。その作用については後で詳述するが、この一対の揺動カム220が駆動軸213を中心として所定の回転範囲で揺動(上下動)することによって、その下方に位置する吸気弁211のバルブリフタ219が押圧され、吸気弁211が下方にリフトする。なお、一対の揺動カム220は、互いに円筒等で同位相に固定されている。
図7に示すように、揺動カム220は、ベースサークル224aと、ベースサークル224aからカムノーズ223側に円弧状に延びるカム面224bとを備える。ベースサークル224a及びカム面224bは、揺動カム220の揺動位置に応じてバルブリフタ219に当接する。
駆動軸213の外周には、円筒状の駆動カム215が圧入等によって固定される。駆動カム215の中心P4は、駆動軸213の軸心P3から所定量だけ偏心した位置にある。駆動カム215は、揺動カム220から軸方向に所定の距離だけ離れた位置に固定される。そして、駆動カム215の外周面には、リンクアーム225の基端225aが、回転自在に嵌合する。
駆動軸213の斜め上方には、制御軸216が、駆動軸213と平行に気筒列方向へ延びて、回転自在に支持される。
制御軸216の一端部には、制御軸216を所定回転角度範囲内で回転させるリフト量制御アクチュエータ230が設けられる。リフト量制御アクチュエータ230は、エンジン100の運転状態を検出するコントローラ300からの制御信号に基づいて、第1油圧装置301によって制御される。
制御軸216の外周面には、制御カム217が圧入等によって固定される。制御カム217の中心P1は、制御軸216の軸心P2から所定量だけ偏心した位置にある。制御カム217には、ロッカアーム218が、制御カム217の外周面に回転自在に嵌合する。ロッカアーム218は、制御カム217の軸心P1を支点として揺動する。
ロッカアーム218とリンクアーム225とは、ロッカアーム218が上方に位置するように、両者を挿通する連結ピン221によって相対回転可能に連結される。連結ピン221の中心をP5とする。
ロッカアーム218とリンク部材226とは、両者を挿通する連結ピン228によって連結される。
リンク部材226と揺動カム220とは、両者を挿通する連結ピン229によって、ロッカアーム218の下方に揺動カム220が位置するように連結される。
各ピン221,228,229の一端部には、リンクアーム225やリンク部材226の軸方向の移動を規制するスナップリングが設けられる。
続いてリフト・作動角可変機構210の作用を詳述する。
駆動軸213がクランクシャフトに連動して回転すると、駆動カム215及びその外周に回転自在に嵌合しているリンクアーム225を介してロッカアーム218が制御カム217の中心P1を中心として揺動(上下動)する。ロッカアーム218の揺動は、リンク部材226を介して揺動カム220へ伝達され、揺動カム220が所定角度範囲を揺動する。この揺動カム220が揺動、すなわち上下動することによって、バルブリフタ219が押圧され、吸気弁211が下方にリフトする。
ここで、リフト量制御アクチュエータ230を介して制御軸216が回転すると、ロッカアーム218の揺動支点となる制御カム217の中心P1も回転変位して、エンジン本体に対してロッカアーム218の支持位置が変化し、ひいては揺動カム220の初期揺動位置が変化する。したがって、揺動カム220と、バルブリフタ219との初期接触位置も変化する。クランクシャフト一回転あたりの揺動カム220の揺動角は常に一定なので、以下で説明する図8及び図9のように最大リフト量が変化する。
図8は、吸気弁211のゼロリフト時における揺動カム220の最小揺動時及び最大揺動時の位置を示す図である。図9は、吸気弁211のピークリフト時における揺動カム220の最小揺動時及び最大揺動時の位置を示す図である。ここで、吸気弁のゼロリフト時とは、吸気弁211がリフトしないことをいう(つまり吸気弁のリフト量はゼロ)。また、吸気弁のピークリフト時とは、吸気弁211が最大のリフト量となることをいう。
図8に示すように、制御カム217の中心P1が制御軸216の軸心P2の上方に位置し、制御カムの厚肉部217aが上方に位置しているときは、ロッカアーム218は全体として上方へ位置し、揺動カム220の連結ピン229側の端部が相対的に上方へ引き上げられた状態となる。つまり、揺動カム220の初期位置は、カム面224bがバルブリフタ219から離れる方向に傾く(図8(A)参照)。したがって、駆動軸213の回転に伴って揺動カム220が揺動した際に、ベースサークル224aが長くバルブリフタに接触し続け、カム面224bがバルブリフタに接触する期間が短くなる。このため、吸気弁211の最大リフト量が小さくなる(図8(B)参照)。また、吸気弁211の開時期から閉時期までのクランク角度区間、つまり吸気弁211の作動角も縮小する。
一方、図9に示すように、制御カム217の中心P1が制御軸216の軸心P2の下方に位置し、制御カムの厚肉部217aが下方に位置している場合には、ロッカアーム218は全体として下方へ位置し、揺動カム220の連結ピン229側の端部が相対的に下方へ押し下げられた状態となる。つまり、揺動カム220の初期位置は、カム面224bがバルブリフタ219に近付く方向に傾く(図9(A)参照)。したがって、駆動軸213の回転に伴って揺動カム220が揺動した際に、バルブリフタ219と接触する部位がベースサークル224aからカム面224bへと直ちに移行する。このため、吸気弁211の最大リフト量が大きくなる(図9(B)参照)。また、吸気弁211の作動角も拡大する。
次に、再び図6を参照して位相可変機構240の構成・作用について説明する。
位相可変機構240は、位相角制御アクチュエータ241と第2油圧装置302とを備える。
位相角制御アクチュエータ241は、スプロケット242と駆動軸213とを所定の角度範囲内において相対的に回転させる。
第2油圧装置302は、エンジンの運転状態を検出するコントローラ300からの制御信号に基づいて、位相角制御アクチュエータ241を制御する。
第2油圧装置302による位相角制御アクチュエータ241への油圧制御によって、スプロケット242と駆動軸213とが相対的に回転し、リフト中心角が進角又は遅角する。
図10は、吸気弁可変動弁機構200による作用を説明する図である。
先に図8及び図9を参照して説明したように、制御カム217の初期位置は連続的に変化させ得るので、これに伴って、吸気弁211のバルブリフト特性は連続的に変化する。つまり、図10の実線に示したように、吸気弁可変動弁機構200は、リフト・作動角可変機構210によって、吸気弁211のリフト量及び作動角を、両者同時に連続的に拡大、縮小させることができる。各部のレイアウトによるが、例えば、吸気弁211のリフト量及び作動角の大小変化に伴い、吸気弁211の開時期と閉時期とがほぼ対称に変化する。
さらに、図10の破線に示したように、吸気弁可変動弁機構200は、位相可変機構240によって、リフト中心角を進角又は遅角させることができる。
このように、リフト・作動角可変機構210と位相可変機構240とを組み合わせることによって、吸気弁可変動弁機構200は、任意のクランク角度位置で吸気弁211を開閉できる。
なお、排気弁側には位相可変機構240のみが備えられており、排気弁の中心角の位相を任意に進角又は遅角させることができるようになっている。これにより、排気弁の開閉時期を任意に設定することができる。
図11は、図7において駆動軸213が一回転したときのP3〜P5の軌跡を模式的に表す図である。
機関の回転に伴って駆動軸213が回転すると、駆動カム215の軸心P4は、駆動軸213の軸心P3を中心とする円上を移動する。
一方、制御カム217の軸心P1から連結ピン221の軸心P5までの長さ(P1、P5間の長さ)及び駆動軸213の軸心P3から連結ピン221の軸心P5までの長さ(P4、P5間の長さ)は常に一定である。
したがって、図11に示すように、ロッカアーム218の揺動中心が軸心P1に保持された状態で、駆動軸213の回転に伴って軸心P4が軸心P3の周りを移動すると、軸心P5は、軸心P1を中心とする円上の一部を上下に移動する。
駆動軸213の回転に伴って、揺動カム220が開弁方向に揺動するとバルブリフトが開始する。バルブリフトは、駆動カム215の軸心P4がP4OPENに位置したときに開始する。そして、P4OPENから駆動軸回転方向(時計回り)に移動してP4CLOSEに位置したときに終了する。すなわち、P4OPENからP4CLOSEまでの間は、カム面224bがバルブリフタ219と当接し、P4CLOSEからP4OPENまでの間は、ベースサークル224aがバルブリフタ219と当接している。
そして、軸心P3、P4、P5が一直線上に並ぶ状態、つまりP4、P5がそれぞれP4PEAK、P5PEAKに位置する状態のときに、揺動カム220が最も開弁方向に揺動し、バルブリフト量が最大(ピークリフト)となる。バルブリフト開始時と終了時では、駆動カム215の軸心P4の位置はそれぞれ異なる(P4OPEN、P4CLOSE)が、連結ピン221の軸心P5は同じ位置となる(P5OPEN、P5CLOSE)。
ここで、吸気弁可変動弁機構200では、図12に示すように、リフト開始点P4OPENからピークリフト点P4PEAKまでの駆動軸角度αは、ピークリフト点P4PEAKからリフト終了点P4CLOSEまでの駆動軸角度βより大きくなり、ずれ角Δ(=α−β)が生じる。
一方で、駆動軸213の回転速度は一定なので、軸心P5がP5OPENからP5PEAKまで移動する時間と、P5PEAKからP5OPENまで移動する時間とは同じである。すなわち、リフト開始点P4OPENからピークリフト点P4PEAKまでにかかる時間と、ピークリフト点P4PEAKからリフト終了点P4CLOSEまでにかかる時間とは同じである。
そうすると、吸気弁211のバルブリフト時の加速度は、同じ時間でずれ角Δだけ多く
進む上りの加速度のほうが下りの加速度よりも大きくなる。
このように、吸気弁可変動弁機構200は、吸気弁211のバルブリフト時のリフトカーブの上りの加速度が、下りの加速度よりも大きくなるという特性を有する。これにより、オーバーラップ期間に吸気弁211が開口する面積が増加するので、掃気効果を増大させることができる。
次に、図13を参照してオーバーラップ期間(吸気弁の開弁時期IVOから排気弁の閉弁時期EVCまでの期間)の設定について説明する。
図13は、各エンジン回転速度における排気弁近傍の圧力脈動を示す図である。
図13に示すように、排気弁が開くとブローダウンにより排気圧力が増加する。このブローダウンによって生じた圧力波(正圧波)は、排気通路を伝わっていくと、排気通路合流部などの開放端で位相が反転して反射し、負圧波となって戻ってくる。
図13(C)(D)に示すように、エンジン回転速度が中高〜高回転のときは、このブローダウンによって生じた圧力波の反射によってオーバーラップ期間近傍の排気圧力が大気圧より小さくなる。そのため、排気をシリンダから引っ張り出して掃気し、新気を引き込むことができる。
一方で、図13(A)(B)に示すように、エンジン回転速度が低〜中回転のときは、オーバーラップ期間近傍の排気圧力は大気圧近傍となる。
したがって、エンジン回転速度が中高〜高回転のときは、低〜中回転のときと比較してオーバーラップ期間を長くしたほうが掃気効果を得ることができる。
そこで、本実施形態では、図14に示すように、エンジン回転速度に応じてオーバーラップ期間を変更する。
図14は、スーパーチャージャ11の駆動時及び非駆動時におけるエンジン回転速度に応じたオーバーラップ期間を示した図である。
図13を参照して説明したように、エンジン回転速度が中高〜高回転のときは、低〜中回転のときと比較してオーバーラップ期間を長くしたほうが掃気効果を得ることができる。
したがって、スーパーチャージャ11の非駆動時は、エンジン回転速度が低〜中回転のときはオーバーラップ期間を小とする一方で、中高回転のときはオーバーラップ期間を大とする。そして、高回転になると、オーバーラップ期間を中とする。これは、高回転になると、吸入空気の流速が増し、オーバーラップ期間が中でも掃気効果を得られるからである。
また、スーパーチャージャ11の駆動時は、エンジン回転速度が低〜中回転のときはオーバーラップ期間を中に設定する。これは、容積型のスーパーチャージャ11を使用しているので、低回転から過給圧を上昇させることができるからである。エンジン回転速度が中高〜高回転のときは、過給機の非駆動時と同様である。
図15は、本発明の第1実施形態による加速時のスーパーチャージャ11の駆動及びオーバーラップ期間の制御を示すフローチャートである。
ステップS10において、コントローラ300は、車両が加速状態か否かを判定する。具体的には、アクセル踏込み量APOが所定量APO1より大きいか否かを判定する。コントローラ300は、アクセル踏込み量APOが所定量APO1より大きければ、加速状態であると判定してステップS12に処理を移行する。一方、アクセル踏込み量APOが所定量APO1より小さければ、加速状態ではないと判定してステップS11に処理を移行する。
ステップS11において、コントローラ300は、スーパーチャージャ11の駆動を停止する。具体的には、電磁クラッチをオフとする。
ステップS12において、コントローラ300は、スーパーチャージャ11が駆動しているか否かを判定する。具体的には、スーパーチャージャ11の回転速度が所定回転速度より大きいか否かを判定する。コントローラ300は、スーパーチャージャ11の回転速度が所定回転速度より大きければ、スーパーチャージャ11が駆動していると判定してステップS17に処理を移行する。一方、スーパーチャージャ11の回転速度が所定回転速度より小さければ、スーパーチャージャ11が駆動していないと判定してステップS13に処理を移行する。
ステップS13において、コントローラ300は、バイパス弁21を開弁する。
ステップS14において、コントローラ300は、実圧縮比がスーパーチャージャ11を駆動してもノッキングやプレイグニッションなどの異常燃焼を引き起こさない圧縮比か否かを判定する。具体的には、実圧縮比が所定圧縮比より小さいか否かを判定する。コントローラ300は、実圧縮比が所定圧縮比より小さければ、スーパーチャージャ11を駆動しても異常燃焼を引き起こさないと判定してステップS16に処理を移行する。一方、実圧縮比が所定圧縮比より大きければ、スーパーチャージャ11を駆動すると異常燃焼を引き起こすと判定してステップS15に処理を移行する。
ステップS15において、コントローラ300は、オーバーラップ期間を自然吸気時(すなわち、スーパーチャージャ11の非駆動時)のオーバーラップ期間に設定する。
ステップS16において、コントローラ300は、スーパーチャージャ11を駆動する。具体的には、電磁クラッチをオンとする。
ステップS17において、コントローラ300は、バイパス弁21を閉弁する。
ステップS18において、コントローラ300は、吸気コレクタ14の内部圧力が掃気効果を得ることができる圧力に達しているか否かを判定する。具体的には、吸気コレクタ14の内部圧力が所定圧力より大きいか否かを判定する。コントローラ300は、吸気コレクタ14の内部圧力が所定圧力より大きければ、掃気効果を得ることができると判定して、ステップS19に処理を移行する。一方、吸気コレクタ14の内部圧力が所定圧力より小さければ、掃気効果を得ることが出来ないと判定して、今回の処理を終了する。
ステップS19において、コントローラ300は、オーバーラップ期間を過給時(すなわち、スーパーチャージャ11の駆動時)のオーバーラップ期間に設定する。
図16は、本発明の第1実施形態による加速時のスーパーチャージャ11の駆動及びオーバーラップ期間の制御の動作を示すタイムチャートである。なお、図15のフローチャートとの対応を明確にするため、フローチャートのステップ番号を併記して説明する。
時刻t1で、アクセルが所定量(APO1)より多く踏み込まれると(図16(A);S10でYes)、バイパス弁21の開閉を決定するため、スーパーチャージャ11の回転速度が所定回転速度より高いか否かを判定する(S12)。時刻t1では、スーパーチャージャ11の回転速度は所定回転速度より低いので(図16(F);S12でNo)、バイパス弁21を開弁する(図16(B);S13)。これは、過給圧はスーパーチャージャ11の回転速度で決まるので、スーパーチャージャ11の回転速度が低いときはバイパス弁21を開いていたほうが好ましいからである。
次に、スーパーチャージャ11を駆動するか否かを決定するため、実圧縮比が所定圧縮比より小さいか否かを判定する(S14)。時刻t1では、実圧縮比が所定圧縮比より大きいので(図16(H);S14でNo)、スーパーチャージャ11を駆動せずに、オーバーラップ期間を、エンジン回転速度に応じて自然吸気のときのオーバーラップ期間に制御する(図16(E);S15)。なお、実圧縮比が高いときにスーパーチャージャ11を駆動しないのは、実圧縮比が高いときに過給すると、ノッキングやプレイグニッションなどの異常燃焼を引き起こす可能性があるからである。
時刻t2で、実圧縮比が所定圧縮比より小さくなると(図16(H);S14でYes)、電磁クラッチをONにしてスーパーチャージャ11を駆動する(図16(D);S16)。
時刻t3で、スーパーチャージャ11の回転速度が所定回転速度より高くなると(図16(F);S12でYes)、バイパス弁21を閉じる(図16(B);S17)。
時刻t4で、吸気コレクタ14の内部圧力が所定圧力より高くなると(図16(C);S18でYes)、オーバーラップ期間を、エンジン回転速度に応じて過給時のオーバーラップ期間に制御する(図16(E);S19)。
以上説明した本実施形態によれば、エンジン回転速度が低〜中回転時のオーバーラップ期間を、スーパーチャージャ11の非駆動時よりも駆動時のほうが大きくなるようにした。これにより掃気効果が高まるので、エンジン回転速度が低〜中回転の運転状態における吸気(新気)の充填効率が高まる。その結果、エンジン出力が増大し、良好な加速を得ることができる。
また、上死点付近でのピストン速度をノーマルエンジンに比べて遅くして、ピストンが上死点付近に滞在する時間を長くした。これにより、掃気効果を高めることができる。
また、上死点付近でのピストン速度を、高圧縮比時よりも低圧縮比時のほうが遅くなるように圧縮比可変機構100のリンク構成を設定した。すなわち、低圧縮比時の上死点付近でのピストン速度を高圧縮比時に比べて遅くして、低圧縮比時にピストンが上死点付近に滞在する期間を長くした。これにより、ガス量が増大する低圧縮比時における掃気効果を高めることができる。
このように、オーバーラップ期間のピストンモーションを適正化することで、エンジン回転速度が高回転のときであっても、排ガスを十分に掃気できる。
また、吸気弁のバルブリフト時の加速度を、下りの加速度よりも上りの加速度が大きくなるようにした。これにより、オーバーラップ時の吸気弁211の開口面積が拡大する。その結果、より多くの過給された新気をシリンダ内に取り込むことができるので、掃気効果を高めることができる。
(第2実施形態)
次に、図17を参照して本発明の第2実施形態について説明する。本発明の第2実施形態は、排気弁31のリフトカーブの下りの作動角を上りの作動角よりも短くした点で第1実施形態と相違する。以下、その相違点について説明する。なお、以下に示す各実施形態では前述した第1実施形態と同様の機能を果たす部分には、同一の符号を用いて重複する説明を適宜省略する。
図17は、本発明の第2実施形態による排気カム32及びバルブリフタ33の関係を示した図である。なお、図17(A)は排気カム32及びバルブリフタ33の正面図であり、図17(B)はバルブリフタ頂面33aのカムトラベル(排気カムのカム面がバルブリフタ頂面と接触する領域)を示した図である。
図17(A)(B)に示すように、本実施形態では、リフタ中心軸から径方向に所定量だけオフセットさせた位置に排気カム32の軸心が位置するように排気カム32を配置する。
排気弁31のバルブリフトは、排気カム32がカム軸を中心に回転し、カム面32aがQOPENに達すると開始する。そして、カム面32aがQPEAKに達したときにピークリフトとなり、QCLOSEに達したときにバルブリフトが終了する。このとき、カム軸心とQOPEN及びQPEAKとを結ぶ線で挟まれる角をθ1、カム軸心とQPEAK及びQCLOSEとを結ぶ線で挟まれる角をθ2とする。
そうすると、θ1>θ2とすることで、図17(B)に示すように、QPEAKからQCLOSEまでのカムトラベルをQOPENからQPEAKまでのカムトラベルよりも短くできる。すなわち、排気弁31の下りの作動角を上りの作動角よりも短くできる。そうすると、カム軸の回転速度は一定なので、下りのときのリフト形状の傾きが上りのときのリフト形状の傾きよりも大きくなる。これにより、オーバーラップ期間における排気弁のリフト量が大きくなるので、オーバーラップ時の排気弁31の開口面積を拡大できる。
以上説明した本実施形態によれば、第1実施形態の効果に加えて、排気弁31の下りの作動角を上りの作動角よりも短くしてオーバーラップ期間における排気弁31のリフト量が大きくした。これにより、オーバーラップ時の排気弁31の開口面積を拡大できる。その結果、掃気できるガス量が増大するので、掃気効果を高めることができる。
(第3実施形態)
次に、図18を参照して本発明の第3実施形態について説明する。本発明の第3実施形態は、遠心型の機械式過給機を用いた点で第1実施形態と相違する。以下、その相違点について説明する。
図18は、本発明の第3実施形態によるエンジンの吸気装置の概略構成図である。
吸気通路10には、スーパーチャージャ41が設けられる。スーパーチャージャ41は、クランクシャフトによって駆動される遠心型の機械式過給機である。スーパーチャージャ41は、ベルトプーリ41aに電磁クラッチを内蔵している。この電磁クラッチをONにすると、スーパーチャージャ41がクランクシャフトによって駆動され、過給を開始する。一方、電磁クラッチをOFFにすると、スーパーチャージャ41はクランクシャフトの回転から切り離され作動を停止する。
また、吸気通路10には、スーパーチャージャ41で過給された空気をスーパーチャージャ41の上流側の吸気通路10aに戻すリサーキュレーション通路42が設けられる。リサーキュレーション通路42には、リサーキュレーション通路42を開閉するリサーキュレーション弁43が設けられる。リサーキュレーション弁43は、圧力比が高くなり過ぎると過給された空気を上流側の吸気通路10aに還流させる。これにより、過給圧の過増大を防止して、減速時のサージ音の発生等を防止している。
図19は、エンジン回転速度と圧力比との関係を、本実施形態による遠心型のスーパーチャージャ41と第1実施形態による容積型のスーパーチャージャ11とで比較して示した図である。
図19に示すように、エンジン回転速度が低回転のときは、遠心型は遠心力を利用するので過給圧は上がらず圧力比は低いままである。一方で、容積型は、エンジン回転速度に比例して圧力比が増加する。そのため、エンジン回転速度が低回転のときは遠心型より容積型のほうが圧力比は高くなる。そして、エンジン回転速度が高くなると、遠心型のほうが圧力比は高くなる。
ところで、図5を参照して前述したように、ピストンストローク特性を単振動に近づけると、上死点近傍のピストン滞在期間は長くなるが、下死点近傍のピストン滞在期間は短くなる。そうすると、エンジン回転速度が低回転のときは吸気の動的効果を有効に活用でき体積効率が向上するが、高回転のときは吸気の動的効果により体積効率が低減することになる。そのため、ピストンストローク特性を単振動に近づけると、高回転時のエンジントルクが低下する。
そこで、本実施形態のように遠心型のスーパーチャージャ41を用いることで、容積型のスーパーチャージャ11を用いたときよりも、高回転時の圧力比を大きくできるので、高回転時の充填効率をあげてエンジントルクの低下を抑制することができる。
図20は、スーパーチャージャ41の駆動時及び非駆動時におけるエンジン回転速度に応じたオーバーラップ期間を示した図である。
図19を参照して前述したように、遠心型のスーパーチャージャ41を用いると、エンジン回転速度が低回転のときは、圧力比は低いままなので過給圧により掃気効果は容積型のスーパーチャージャ11を用いたときよりも低くなる。そのため、スーパーチャージャ41を駆動しているときであっても、エンジン回転速度が低〜中回転のときはオーバーラップ期間を小に設定する。
以下では、加速時のスーパーチャージャ41の駆動及びオーバーラップ期間の制御について説明する。
図21は、本発明の第3実施形態による加速時のスーパーチャージャ41の駆動及びオーバーラップ期間の制御を示すフローチャートである。
ステップS30において、コントローラ300は、エンジン回転速度が高回転か否かを判定する。具体的には、エンジン回転速度が所定回転速度より大きいか否かを判定する。コントローラ300は、エンジン回転速度が所定回転速度より大きければステップS34に処理を移行し、小さければステップS31に処理を移行する。
ステップS31において、コントローラ300は、スーパーチャージャ41を駆動する。具体的には、電磁クラッチをオンとする。
ステップS32において、コントローラ300は、吸気コレクタ14の内部圧力が掃気効果を得ることができる圧力に達しているか否かを判定する。具体的には、吸気コレクタ14の内部圧力が所定圧力より大きいか否かを判定する。コントローラ300は、吸気コレクタ14の内部圧力が所定圧力より大きければ、掃気効果を得ることができると判定して、ステップS33に処理を移行する。一方、吸気コレクタ14の内部圧力が所定圧力より小さければ、掃気効果を得ることができないと判定して、ステップS35に処理を移行する。
ステップS33において、コントローラ300は、オーバーラップ期間を過給時のオーバーラップ期間に設定する。
ステップS34において、コントローラ300は、実圧縮比がスーパーチャージャ11を駆動してもノッキングやプレイグニッションなどの異常燃焼を引き起こさない圧縮比か否かを判定する。具体的には、実圧縮比が所定圧縮比より小さいか否かを判定する。コントローラ300は、実圧縮比が所定圧縮比より小さければ、スーパーチャージャ11を駆動しても異常燃焼を引き起こさないと判定してステップS31に処理を移行する。一方、実圧縮比が所定圧縮比より大きければ、スーパーチャージャ11を駆動すると異常燃焼を引き起こすと判定してステップS35に処理を移行する。
ステップS35において、コントローラ300は、オーバーラップ期間を自然吸気時のオーバーラップ期間に設定する。
図22及び図23は、本発明の第3実施形態による加速時のスーパーチャージャ41の駆動及びオーバーラップ期間の制御の動作を示すタイムチャートである。図22は加速時のエンジン回転速度が低回転だった場合のタイムチャートであり、図23は加速時のエンジン回転速度が高回転だった場合のタイムチャートである。
まず図22を参照して、加速時のエンジン回転速度が低回転の場合の動作について説明する。なお、図21のフローチャートとの対応を明確にするため、フローチャートのステップ番号を併記して説明する。
時刻t1で、アクセルが所定量(APO1)より多く踏み込まれると(図22(A);S10でYes)、エンジン回転速度と実圧縮比とに応じてスーパーチャージャ41を駆動するか否かを決定する(S30、S34)。時刻t1では、エンジン回転速度が低回転なので(図22(F);S30でNo)、実圧縮比にかかわらず、スーパーチャージャ41を駆動する(図22(C);S31)。これは、エンジン回転速度が低回転であれば、スーパーチャージャ41を駆動しても過給圧はあまり上がらないので、ノッキング等も発生しないからである。
そして次に、吸気コレクタ14の内部圧力に応じてオーバーラップ期間を決定する(S32)。時刻t1では、吸気コレクタ14の内部圧力は所定圧力より低いので(図22(B);S32でNo)、オーバーラップ期間を、エンジン回転速度に応じて自然吸気時のオーバーラップ期間に制御する(図22(D);S35)。
時刻t2で、吸気コレクタ14の内部圧力が所定圧力より高くなると(図22(B);S32でYes)、オーバーラップ期間を、エンジン回転速度に応じて過給時のオーバーラップ期間に制御する(図22(D);S33)。
次に図23を参照して、加速時のエンジン回転速度が高回転の場合の動作について説明する。
時刻t1で、アクセルが所定量(APO1)より多く踏み込まれると(図23(A);S10でYes)、エンジン回転速度と実圧縮比とに応じてスーパーチャージャ41を駆動するか否かを決定する(S30,S34)。時刻t1では、エンジン回転速度が高回転で(図23(F);S30でYes)、かつ実圧縮比が所定圧縮比より大きいので(図23(G);S34でNo)、電磁クラッチをOFFのままとして、スーパーチャージャ41を駆動しない(図23(C))。そのため、オーバーラップ期間は、エンジン回転速度に応じて自然吸気時のオーバーラップ期間に設定される(図23(D);S35)。
時刻t2で、実圧縮比が所定圧縮比より小さくなると(図23(G);S34でYes)、電磁クラッチをONにしてスーパーチャージャ41を駆動する(図23(C);S31)。このとき、吸気コレクタ14の内部圧力は所定圧力より低いので(図23(B);S32でNo)、オーバーラップ期間は自然吸気時のオーバーラップ期間に設定される(図23(D);S35)。
時刻t3で、吸気コレクタ14の内部圧力が所定圧力より高くなると(図23(B);S32でYes)、オーバーラップ期間を、エンジン回転速度に応じて過給時のオーバーラップ期間に制御する(図23(D);S33)。
以上説明した本実施形態によれば、遠心型のスーパーチャージャ41を用いたので、高回転時の充填効率を上げることができる。そのため、第1実施形態の効果に加えて、ピストンストローク特性を単振動に近づけたときの高回転時におけるエンジントルクの低下を抑制することができる。
(第4実施形態)
次に、図24を参照して本発明の第4実施形態について説明する。本発明の第4実施形態は、燃料をシリンダ内に直接噴射する点で第1実施形態と相違する。以下その相違点について説明する。
図24は、排気弁閉時期EVCと燃料噴射時期との関係を示した図である。
シリンダ内に直接燃料を噴射することとした場合、オーバーラップ期間に燃料を噴射すると、噴射した燃料が排気通路に吹き抜けることがある。したがって、オーバーラップ期間を拡大して排気弁閉時期EVCを遅角したときは、それに応じて排気弁閉時期EVCよりも燃料噴射時期が遅くなるように、燃料噴射時期を遅角する。
一方、高圧縮比に設定したときは、低圧縮比のときよりも噴射燃料がピストン冠面に付着しやすい。したがって、高圧縮比に設定したときは、低圧縮比のときよりも燃料噴射時期を遅角する。これにより、噴射燃料がピストン冠面に付着することを防止できる。
以上説明した本実施形態によれば、第1実施形態の効果に加えて、噴射燃料を有効に活用でき、燃費の向上が図れる。
なお、本発明は上記の実施形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
例えば、高圧縮比時よりも低圧縮比時のほうが掃気しなければならない排気が増加するので、低圧縮比になるにつれてオーバーラップ期間を拡大してもよい。これにより、掃気効果が向上する。