以下に、この発明を実施するための最良の形態について、図面に基づいて説明する。図1は、この発明の実施形態に係る画像形成装置100の概略の正面断面図である。
画像形成装置100は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色の現像剤を用いて画像を形成するタンデム方式のカラー画像形成装置である。この実施形態では、現像剤として、トナーとキャリアとを含む2成分現像剤が用いられる。画像形成装置100は、スキャナ等の原稿読取装置によって読み取られた画像データ、又は、図示しないネットワークを介して通信自在に接続されたPC(Personal Computer)等の端末装置から送信される画像データに基づいて、記録媒体である用紙Pに、カラー画像又はモノクロ画像を形成する。
画像形成装置100は、給紙トレイ110、搬送装置120、画像形成ユニット130、定着装置140を備えている。
給紙トレイ110は、画像を形成すべき多数の用紙を収容する。
搬送装置120は、駆動ローラ121、従動ローラ122、及び搬送ベルト123を備えている。搬送ベルト123は、無端ベルトであって、駆動ローラ121と従動ローラ122との間に張架されている。搬送ベルト123は、回転することで、給紙トレイ110から供給された用紙Pを、定着装置140へ向けて搬送する。
画像形成ユニット130は、感光体ドラム31A〜31D、帯電装置32A〜32D、露光ユニット33A〜33D、現像装置34A〜34D、転写ローラ35A〜35D、及びクリーニングユニット36A〜36Dを備えている。感光体ドラム31A〜31Dは、この発明の静電潜像担持体に相当する。現像装置34A〜34Dは、この発明の現像剤担持体に相当する現像ローラ41A〜41Dを有している。
画像形成ユニット130は、ブラック、並びに、カラー画像を色分解して得られる減法混色の3原色であるシアン、マゼンタ、及びイエローの4色の各色相に対応した画像データを用いて画像を形成する4個の画像形成部30A,30B,30C,30Dから構成されている。
ブラック用の画像形成部30A、シアン用の画像形成部30B、マゼンタ用の画像形成部30C、及びイエロー用の画像形成部30Dは、搬送ベルト123に沿って、用紙搬送方向の下流側からこの順に、一列に並設されている。
以下では、主としてブラック用の画像形成部30Aについて説明する。他の色相用の画像形成部30B〜30Dは、画像形成部30Aと同様に構成されている。
画像形成部30Aは、図1において時計方向に回転する感光体ドラム31Aを備えている。感光体ドラム31Aの周囲には、感光体ドラム31Aの回転方向に沿って、帯電装置32A、露光ユニット33A、現像装置34A、転写ローラ35A、及びクリーニングユニット36Aが、この順に配置されている。転写ローラ35Aは、搬送ベルト123及び用紙Pを挟んで感光体ドラム31Aに対向する位置に配置されている。
帯電装置32Aは、感光体ドラム31Aの表面を、所定の電位に均一に帯電させる。この実施形態では、接触型のローラ方式の帯電装置が用いられているが、チャージャ方式やブラシ方式の帯電装置を用いてもよい。
露光ユニット33Aは、図示しない半導体レーザ、ポリゴンミラー、第1fθレンズ、及び第2fθレンズを備えている。露光ユニット33Aは、ブラックの色相の画像データによって変調されたレーザビームを感光体ドラム31Aに照射する。感光体ドラム31A〜31Dのそれぞれには、ブラック、シアン、マゼンタ及びイエローの各色相の画像データによる静電潜像が形成される。露光ユニット33Aとして、レーザスキャニングユニット(LSU)、又は、ELやLED等の発光素子をアレイ状に並べた書込み装置を用いることができる。
現像装置34Aは、ブラックのトナーを収容しており、現像ローラ41Aを有している。現像ローラ41Aは、トナーが感光体ドラム31Aの表面へ移動し得る現像領域へ現像剤を搬送する。現像装置34Aは、感光体ドラム31Aの表面に形成された静電潜像にトナーを供給することで、静電潜像をトナー像に可視像化する。
現像装置34B〜34Dのそれぞれは、シアン、マゼンタ及びイエローの各色相のトナーを収容しており、感光体ドラム31B〜31Dのそれぞれに形成された各色相の静電潜像をシアン、マゼンタ及びイエローの各色相のトナー像に可視像化する。
この実施形態では、トナーは、感光体ドラム31Aの表面電位と同極性に帯電している。感光体ドラム31Aの表面電位の極性及びトナーの帯電極性は、ともにマイナスである。
クリーニングユニット36Aは、現像及び画像転写後における感光体ドラム31Aの表面に残留したトナーを回収する。
転写ローラ35Aには、感光体ドラム31Aの表面に担持されたトナー像を用紙Pに転写するために、トナーの帯電極性と逆極性(この実施形態では、プラス)の転写バイアス電圧が印加される。これによって、感光体ドラム31Aに形成されたブラックの色相のトナー像は、用紙P上で他の色相のトナー像と重なるように、用紙Pに転写される。各画像形成部30A〜30Dで、各色相のトナー像が用紙Pに重ねて転写されることで、用紙Pにフルカラーのトナー像が形成される。
但し、イエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの色相の一部のみの画像データが入力された場合は、4個の感光体ドラム30A〜30Dのうち、入力された画像データの色相に対応する一部のみにおいて静電潜像及びトナー像の形成が行われる。例えば、モノクロ印刷モード時には、ブラックの色相に対応した感光体ドラム31Aのみにおいて静電潜像の形成及びトナー像の形成が行われ、用紙Pにはブラックのトナー像のみが転写される。
定着装置140は、加熱ローラ141及び加圧ローラ142を有している。トナー像が転写された用紙Pは、定着装置140へ導かれ、加熱ローラ141と加圧ローラ142との間を通過して加熱及び加圧される。これによって、トナー像が、用紙Pの表面に堅牢に定着する。トナー像が定着した用紙は、図示しない排紙トレイ上へ排出される。
図2は、画像形成装置100に備えられた現像装置34Aの一部の正面断面図である。現像装置34B〜34Dは、現像装置34Aと同様に構成されている。
現像装置34Aは、現像ローラ41Aの他に、規制ブレード42A、2個の撹拌搬送スクリュ43A,44A、及び現像槽45Aを有している。
現像槽45A内に、トナー及びキャリアを含む2成分現像剤が収容されている。撹拌搬送スクリュ43A,44Aは、現像槽45A内に配置されている。撹拌搬送スクリュ43Aと撹拌搬送スクリュ44Aとの間には、隔壁46Aが配置されている。隔壁46Aは、撹拌搬送スクリュ43A,44Aの回転軸方向における両端部を除いて、撹拌搬送スクリュ43A近傍の領域と、撹拌搬送スクリュ44A近傍の領域と、を仕切っている。
現像槽45A内に収容された現像剤中のトナーは、撹拌搬送スクリュ43A,44Aの撹拌動作によってキャリアと共に撹拌されることで、摩擦帯電される。
現像槽45Aは、感光体ドラム31Aと対向する部分に、開口部47Aを有している。現像ローラ41Aは、現像槽45Aの開口部47Aから一部を露出させた状態であって、感光体ドラム31Aの表面との間に0.3mm〜1.0mm程度の現像ギャップが設けられるように、現像槽45A内に配置されている。
現像ローラ41Aは、マグネットローラ48A及び非磁性の現像スリーブ49Aを有している。マグネットローラ48Aは、周方向に沿って配置された複数の磁極部材を内蔵している。マグネットローラ48Aは、現像槽45Aに固定配置されている。現像スリーブ49Aは、略円筒形のアルミニウム合金又は黄銅等で形成され、マグネットローラ48Aに対して所定方向(図2における矢印方向)に回転自在に外嵌している。現像スリーブ49Aは、図示しない駆動源によって、所定方向に回転する。
現像剤に含まれるキャリアは、磁性体で構成されている。トナーは、摩擦帯電によるクーロン力によってキャリアの表面に付着している。現像剤は、マグネットの磁力によって現像スリーブ49Aの表面に吸着して磁気ブラシを形成し、現像スリーブ49Aが回転することで、感光体ドラム31Aとの対向位置である現像領域へ搬送される。
規制ブレード42Aは、現像槽45Aのうち現像スリーブ49Aの回転方向における開口部47Aの上流側に、先端部が現像スリーブ49Aに対向するように配置されている。規制ブレード42Aは、現像ローラ41Aの表面に形成された現像剤の層厚を規制する。
現像装置34Aは、現像領域へ所定量の現像剤を供給する。現像領域へ供給された現像剤に含まれるトナーは、感光体ドラム31Aの表面に担持された静電潜像へ、静電気力によって吸引される。これによって、静電潜像は現像されてトナー像となる。
現像装置34Aは、現像領域へ供給された現像剤のうち、キャリア及び現像に用いられなかったトナーを、現像スリーブ49Aの回転によって、再び現像槽45A内に戻す。
図3は、画像形成装置100の制御部50の構成を示すブロック図である。
画像形成装置100は、画像形成装置100の全体を統括的に制御する制御部50を備えている。制御部50には、画像処理部61、入力部62、現像バイアス電圧印加部71A、駆動モータ72A,73A、帯電バイアス電圧印加部74Aが、電気的に接続されている。
画像処理部61は、原稿読取装置200によって読み取られた画像データ、又は、図示しないネットワークを介して通信自在に接続された端末装置から送信される画像データを受信し、この画像データを所定の画像形成信号に変換して、制御部50へ出力する。
入力部62は、画像形成時の画像濃度のユーザによる設定の入力を受け付ける。制御部50は、入力部62から入力された画像濃度を、画像濃度の入力設定値として記憶する。制御部50は、ユーザによる画像濃度の入力設定値の入力がない場合、予め決定された所定の標準濃度を入力設定値として記憶する。制御部50は、入力設定値として記憶された画像濃度で実際の画像が形成されるように、現像バイアス電圧V10を調整する。
制御部50は、CPU51を含み、CPU51には、CPU51が実行するプログラムや各種データが格納されたROM52、作業用のメモリとなるRAM53が接続されている。CPU51は、入力された画像形成信号に応じて、画像形成装置100の各部の動作を制御する。
CPU51は、現像バイアス電圧印加部71A、駆動モータ72A、駆動モータ73A、及び、帯電バイアス電圧印加部74Aのそれぞれに、入力された画像形成信号に応じた制御信号を送信して画像形成動作を実行させる。
現像バイアス電圧印加部71Aは、現像ローラ41Aの現像スリーブ49Aに現像バイアス電圧を印加する。駆動モータ72Aは、現像スリーブ49Aを回転させる。駆動モータ73Aは、感光体ドラム31Aを回転させる。帯電バイアス電圧印加部74Aは、帯電装置32Aに帯電バイアス電圧を印加する。
現像スリーブ49Aを回転させる駆動モータ72A及び感光体ドラム31Aを回転させる駆動モータ73Aとして、単一の駆動モータを共用することもできる。
図4は、画像濃度の調整前の現像バイアス電圧V10を示す図である。図4では、上側ほどマイナス値が大きくなる。
現像バイアス電圧V10は、交流電圧成分と直流電圧成分V11とが重畳した振動バイアス電圧である。現像バイアス電圧V10は、現像側電位V1及び逆現像側電位V2のそれぞれをピーク電位とする。現像側電位V1は、現像ローラ41Aから感光体ドラム31Aへ向かう力をトナーに与える。逆現像側電位V2は、感光体ドラム31Aから現像ローラ41Aへ向かう力をトナーに与える。
現像側電位V1の印加時間をT1、逆現像側電位V2の印加時間をT2とするとき、デューティ比は、T1/(T1+T2)で表わされる。この第1の実施形態に係る画像形成装置100では、デューティ比が0.5の矩形波である現像バイアス電圧V10を用いた。
現像バイアス電圧V10は、現像スリーブ41Aに印加され、現像ローラ41Aと感光体ドラム31Aとの間に、バイアス電界を発生させる。
画像濃度、画像が形成されてはいけない非画像部に薄膜状にトナーが供給されるかぶり、現像剤中のキャリアが感光体ドラム31Aへ付着するキャリア上り、及び画像の再現性は、現像バイアス電圧V10と、感光体ドラム31Aの表面のうち画像部の電位である画像部電位V21、又は、感光体ドラム31Aの表面のうち非画像部の電位である非画像部電位V20と、の関係によって変化する。
電子写真方式の画像形成プロセスにおいて、トナーの帯電量は画像濃度に大きく影響する。ある一定環境において図4のような現像バイアス電圧V10で適切な画像濃度が得られたとしても、現像ローラ41A周辺の湿度が上がる等の環境変化によってトナーの帯電量が下がると、感光体ドラム31Aに付着するトナー量が増えるため、同じ現像バイアス電圧V10の下では画像濃度が上がりすぎてしまう。
図5は、比較例における画像濃度の調整後の現像バイアス電圧を示す図である。図5では、上側ほどマイナス値が大きくなる。
画像濃度を調整する比較例として、画像濃度を下げる場合に、図5のように、現像バイアス電圧V10のピーク間電圧Vppは一定で、直流電圧成分V11を上げることが考えられる。これによって、現像側電位V1が上がる。この場合、直流電圧成分V11の上昇分をΔVとすると、感光体ドラム31Aの帯電電位も変更し、非画像部電位V20をΔV上げる。これは、非画像部電位V20を一定にしておくと、直流電圧成分V11と非画像部電位V20との差が大きくなり、キャリア上りが増加するためである。
また、比較例において、逆に画像濃度の調整のために直流電圧成分V11を下げた場合、感光体ドラム31Aの帯電電位を変更しないと直流電圧成分V11と非画像部電位V20との差が小さくなり、かぶりが増加する。
したがって、いずれの場合も、直流電圧成分V11と非画像部電位V20とを、電位差がほとんど変化しないように、連動して変更する。
比較例において、感光体ドラム31Aの帯電電位を上げると、画像部電位V21も多少変化する。しかし、画像部電位V21の変化は比較的小さいので、図5では画像部電位V21は変更されていないように表している。
図6は、第1の実施形態における画像濃度の調整後の現像バイアス電圧を示す図である。
この実施形態では、画像濃度の調整時に、現像バイアス電圧V10の高い側のピーク電位である逆現像側電位V2を変更せずに予め設定された所定値に保持し、低い側のピーク電位である現像側電位V1を変更する。具体的には、例えば、図6に示すように、現像側電位V1を2×ΔV上げたい場合、交流電圧成分の振幅(ピーク間電圧Vpp)を2×ΔV減少し、直流電圧成分V11をΔV上げる。また、現像側電位V1を2×ΔV下げたい場合は、交流電圧成分の振幅(ピーク間電圧Vpp)を2×ΔV増加し、直流電圧成分V11をΔV下げる。これによって、逆現像側電位V2を所定値に保持したまま、現像側電位V1を変更することができる。
次に、ΔVを決める方法について説明する。基準となる所定サイズの画素を露光、現像し、濃度パッチを形成する。形成された濃度パッチの濃度を光学的に検出する。転写ベルトを介してトナー像を用紙に転写する構成の画像形成装置においては、濃度パッチの濃度の検出を、感光体ドラム31A上で行なうことに限定されず、転写ベルト上で行なうこともできる。濃度を検出する光学センサは、LED(Light Emitting Diode)等の発光素子及びPD(Photo Diode)等の受光素子を含み、トナーの色相や材料等に応じて、正反射光又は拡散光を検出する。
前回設定した現像バイアス電圧V10による濃度パッチと、この現像バイアス電圧V10から±50V、シフトさせた場合の濃度パッチとを形成し、上述の方法によってこれら3個の濃度パッチの濃度を検出する。CPU51で3個の濃度値から適切な濃度に相当する現像バイアス電圧V10を決定し、ΔVの値を決め、現像バイアス電圧印加部71Aから画像濃度の調整後の現像バイアス電圧V10を現像スリーブ41Aに印加する。
逆現像側電圧V2を一定に保持して画像濃度を調整した場合の効果について検証するため、直流電圧成分V11のみで濃度調整した場合の比較実験を行なった。画像濃度の調整前に、図4の現像バイアス電圧V10の波形となるように設定した。このとき、非画像部電位V20は−500V、画像部電位V21は−100V、直流電圧成分V11は−350V、ピーク間電圧Vppは800V(現像側電位V1=−750V、逆現像側電位V2=+50V)である。
次に、トナーの帯電量、及び現像バイアス電圧V10を変更した。実験において、帯電量が下がったトナーとして、長期間放置することで劣化したトナーを用い、帯電量が上がったトナーについての実験は、湿度が低下した環境下で実施した。
図7(A)は、トナーの帯電量の変更前である初期に画像形成した孤立ドットの写真を表す図であり、図7(B)は、直流電圧成分V11のみで画像濃度を調整後に画像形成した孤立ドットの写真を表す図である。
ここでは、トナーの帯電量が下がった場合の実験を行なった。直流電圧成分V11のみで画像濃度を調整した場合、現像バイアス電圧V10のシフト量ΔVは、150Vであった。図7(B)に示すように、画像濃度を調整した後の孤立ドットは、非常に薄く小さくなっていることが分かる。つまり、直流電圧成分V11のみで画像濃度を調整した場合、ベタ画像の濃度は一定に保つことができたとしても、孤立ドットの再現性は大きく変化してしまう。
一方、この第1の実施形態の制御方法で画像濃度を調整すると、現像バイアス電圧V10のシフト量ΔVは80Vとなった。直流電圧成分V11は80V上がり、ピーク間電位Vppは160V小さくなった。直流電圧成分V11が上がったことによって画像濃度を低下させる効果と、ピーク間電位Vppを小さくしたことによって画像濃度を低下させる効果と、の両方があるので、直流電圧成分V11だけで濃度調整した場合や、ピーク間電位Vppだけで濃度調整した場合と比べて、直流電圧成分V11及びピーク間電位Vppのそれぞれの変更量は小さくて済む。このため、画像の再現性の低下を抑制しつつ画像濃度を調整することができる。
図8は、第1の実施形態における画像濃度の調整後に画像形成した孤立ドットの写真を表す図である。図8に示す孤立ドットは、図7(A)に示す初期の孤立ドットとほとんど同じであることが分かる。
図7(B)の孤立ドットと図8の孤立ドットとの違いは、逆現像側電位V2と画像部電位V21との関係に依存するところが大きいと考えられる。直流電圧成分V11のみをシフトさせる制御方法では、現像バイアス電圧V10のシフトに伴って、逆現像側電位V2と画像部電位V21との位置関係が現像バイアス電圧V10のシフト分だけ変更されてしまう。孤立ドットの再現性は、トナーが感光体ドラム31Aから現像スリーブ41A方向へ戻る方向に働く電界によって低下しやすい。このため、逆現像側電位V2と画像部電位V21との電位差が変更されると、孤立ドットの再現性が大きく変化する。
この発明では、逆現像側電位V2は変更されず、画像部電位V21もほとんど変更されないので、孤立ドットが安定して良好に再現される。
図9は、電圧のシフト量ΔVとライン幅との関係についての実験結果を示す図である。図10(A)は、トナーの帯電量の変更前である初期に画像形成した画像のライン幅を示し、図10(B)は、トナーの帯電量の変化に応じた画像濃度の調整後に画像形成した画像のライン幅を示す。
図10(A)及び図10(B)に示すように、初期のライン幅X0、及び、帯電量が変化し画像濃度の調整後のライン幅X1を計測した。図9では、横軸は電圧のシフト量ΔVを表し、縦軸は初期(ΔV=0)のライン幅との比率(X1/X0)を表す。比較例の直流電圧成分V11のみのシフトで画像濃度を調整した場合は、ライン幅も変化しやすいのに対して、この発明ではライン幅が安定して形成されている。
上述のように、現像バイアス電圧V10において、現像ローラ41Aから感光体ドラム31Aへ向かう力をトナーに与えるピーク電位が現像側電位V1であるのに対して、感光体ドラム31Aから現像ローラ41Aへ向かう力をトナーに与えるピーク電位が逆現像側電位V2である。このとき、逆現像側電位V2と画像部電位V21との関係によって、用紙等に転写されるトナー像のドット再現性、及び細線再現性が大きく変化する。
図11は、画像部電位V21を−100Vと一定にした場合の逆現像側電位V2と画像部電位V21との電位差と、ドット再現性との関係についての実験結果を示している。
図11に示すように、V2−V21<+100、すなわちV2<V21+100である場合に、用紙等への転写画像のドット再現性は、良好となる。一方、V2≧V21+100の場合は、ドット再現性は、低下する。これは、画像部から現像ローラ41Aへ向かう力をトナーに与える電界が強くなり、一旦画像部に到達したトナーが引き戻され、ドットが乱されることが影響していると考えられる。
以上の検討結果から、感光体ドラム31Aの画像部電位V21に対する逆現像側電位V2の電位差が100Vを超えないように、現像バイアス電圧印加部71Aを制御部50で制御することが望ましいことが分かる。
この実施形態では、トナーの帯電極性がマイナスの場合について説明したが、トナーの帯電極性がプラスの場合についても同様の実験を行い、図12に示す結果を得た。この実験結果から、V21−V2<+100、すなわちV2>V21−100であれば、ドット再現性が良好になることが分かる。
したがって、トナーの帯電極性がマイナスの場合に逆現像側電位V2から画像部電位V21を減算した電位差、又は、トナーの帯電極性がプラスの場合に画像部電位V21から逆現像側電位V2を減算した電位差は、100ボルト未満であることが望ましい。
これによって、ドット再現性、及び細線再現性の低下をより抑制しつつ画像濃度を調整することができる。
図13は、第2の実施形態における画像濃度の調整後の現像バイアス電圧V10を示す図である。
この実施形態では、画像濃度の調整時に、現像バイアス電圧V10の現像側電位V1及び逆現像側電位V2を変更せず、現像側電位V1の印加時間T1又は逆現像側電位V2の印加時間T2の少なくともいずれか一方を変更する。
ここでは、印加時間T1を変更する場合について説明する。
T1=T2を標準状態と考えると、印加時間T1をΔT変化させたときの現像バイアス電圧V10の直流電圧成分V11のシフト量ΔVは、次式で表現される。
ΔV=Vpp×ΔT/2(2×T1+ΔT)
図14は、印加時間T1と画像濃度との関係についての実験結果を示す。ここでは、感光体ドラム31Aの非画像部電位V20を−600V、画像部電位V21を−100V、ピーク間電圧Vppを800V、現像側電位V1を−850V、逆現像側電位V2を−50V、印加時間T2=0.25msecとして実験を行なった。この実験結果から、印加時間T1を変更することによって広範囲に画像濃度を調整することができることが分かる。
この場合も、逆現像側電位V2を変更していないので、トナーが感光体ドラム31Aから現像スリーブ41A方向に戻る方向に働く電界が一定であり、トナーが現像スリーブ41Aから感光体ドラム31Aへ向かう方向に働く現像側電圧V1の印加時間T1を長くしても、孤立ドットやライン幅の再現性の低下はほとんどない。
なお、印加時間T1の調整範囲はピーク間電圧Vppによって変わる。調整すべき範囲の広さは、トナーの帯電量の変化がどの程度起こるかによって異なる。調整範囲を広く取らなければならない場合は、ピーク間電圧Vpp値を高め(例えば、1600V)に設定する。
次に、第3の実施形態に係る画像形成装置について説明する。この第3の実施形態に係る画像形成装置は、現像ローラ41A近傍の湿度に応じてトナー濃度を調整することを除いて、第1の実施形態に係る画像形成装置100と同様に構成されている。
上述のように、電子写真方式の画像形成プロセスでは、トナーの帯電量が、感光体ドラム31Aに担持された静電潜像を現像するトナー量に、大きな影響を与え、画像濃度の変化の主な要因になる。
そこで、この第3の実施形態に係る画像形成装置は、現像ローラ41A近傍の湿度を計測して計測データをCPU51へ出力する湿度計測部63をさらに備え、湿度計測部63で計測した湿度に基づいて、低湿度でトナーの帯電量が高くなる場合は現像剤中のトナー濃度を高く設定し、高湿度でトナーの帯電量が低くなる場合は現像剤中のトナー濃度を低く設定する。
トナーの帯電量が高い場合は画像濃度が低くなるので、トナー濃度を高く設定することで画像濃度を補うことができる。また、トナーの帯電量が高い場合はトナー濃度が高くても、かぶりを抑えることができる。
一方、トナーの帯電量が低い場合は画像濃度が高くなりやすいので、トナー濃度を低く設定することで画像濃度の上昇を抑えることができる。また、トナーの帯電量が低い場合は一般的にはかぶりが多くなるが、トナー濃度を低くすることでかぶりを抑えることができる上、画像濃度を低くすることでトナー帯電量が上がり、トナーの帯電量低下を緩和する効果もある。
一般的に、現像槽45A内のトナー濃度は、透磁率センサ等を用いて一定に保たれている。現像剤中のトナー濃度を湿度に応じて変更する場合、現像槽45A内のトナー濃度の設定値を湿度に応じて変更することによって実現する。この際、湿度に応じてトナー濃度の設定値を連続的に変更してもよく、又は、数段階の変換チャートを用い、所定範囲毎の湿度に応じた設定値にトナー濃度を設定してもよい。
この第3の実施形態における画像濃度の制御方法は、第1の実施形態における画像濃度の制御方法又は第2の実施形態における画像濃度の制御方法と、併用されることが望ましい。
第1の実施形態、又は第2の実施形態によって画像の再現性の低下を抑制しつつ画像濃度を調整できる。しかし、第1の実施形態及び第2の実施形態では、トナーの帯電量の変化が大きい場合は現像バイアス電圧V10の調整量も大きくなるので、画像の再現性の低下をより抑制するために、この第3の実施形態における画像濃度の制御方法を併用することで、現像バイアス電圧V10の調整量を小さくすることができる。これによって、ドットサイズやライン幅の変化を更に小さく抑え、画像の再現性の低下をより抑制しつつ、画像濃度を調整することが可能になる。
次に、第4の実施形態に係る画像形成装置について説明する。
この第4の実施形態に係る画像形成装置は、湿度計測部63を備え、現像ローラ41A近傍の湿度に応じて現像バイアス電圧の周波数を調整することを除いて、第1の実施形態に係る画像形成装置100と同様に構成されている。
図15は、現像バイアス電圧V10の異なる複数の周波数についての、現像バイアス電圧V10の平均電圧V12(ここでは直流電圧成分V11の電位と同等)と非画像部電位V20との電位差の絶対値と、かぶりと、の関係についての実験結果を示す。ここでは、かぶりの値として、感光体ドラム31A上の非画像部に付着するトナーの光学濃度を測定した値を示した。
図15を参照すれば、現像バイアス電圧V10の周波数が高くなるほど、かぶりが減少することが分かる。
そこで、湿度が高い場合、トナーの帯電量が低くなり、画像濃度が高くなるので、現像バイアス電圧V10の周波数を高めることで、画像濃度が一定化するように調整する。トナーの帯電量が低い場合は一般的にはかぶりが多くなるが、図15に示すように、現像バイアス電圧V10の周波数を高めることで、かぶりを減少させることができる。
また、湿度が低い場合、トナーの帯電量が高くなり、画像濃度が低くなるので、現像バイアス電圧V10の周波数を低くすることで、画像濃度が一定化するように調整する。トナーの帯電量が高い場合は、かぶりが減少する。
いずれの場合も逆現像側電位V2を変更しないので、画像の再現性の低下を抑制しつつ画像濃度を調整できる。
この第4の実施形態における画像濃度の制御方法は、第1の実施形態における画像濃度の制御方法又は第2の実施形態における画像濃度の制御方法と、併用されることが望ましい。
第1の実施形態又は第2の実施形態での画像濃度の制御方法と、この第4の実施形態での画像濃度の制御方法とを併用することで、現像バイアス電圧V10の調整量を小さくすることができるので、ドットサイズやライン幅の変化を更に小さく抑え、画像の再現性の低下をより抑制しつつ、画像濃度を調整することが可能になる。
次に、現像バイアス電圧V10のデューティ比について説明する。
上述のように、現像側電位V1の印加時間をT1、逆現像側電位V2の印加時間をT2とするとき、デューティ比は、T1/(T1+T2)で表わされる。デューティ比は、キャリア上りと非常に大きな相関性を有する。
図16は、異なる複数のデューティ比における、平均電圧V12と非画像部電位V20との電位差の絶対値と、キャリア上りと、の関係についての実験結果を示す。ここでは、キャリア上りの値として、感光体ドラム31A上の非画像部のうち所定領域(300mm×15mm)に付着したキャリアを粘着テープで捕獲し、キャリアの個数を目視で計数した値を示した。この実験では、平均電圧V12を一定としている。
図16では、縦軸にキャリア上りの量(単位:a.u.)を示し、横軸に現像バイアス電圧V10の平均電圧V12と感光体ドラム31Aの非画像部電位V20との電位差の絶対値を示す。この実験では、現像剤中のキャリアとして、平均粒径35μmのものを使用した。この実験から、デューティ比とキャリア上りとの相関性が分かる。
図16を参照すれば、デューティ比が、0.5、0.38、0.25と小さくなるのに伴って、キャリア上りが減少していることが分かる。特に、現像バイアス電圧V10のデューティ比を小さくすることによって、現像バイアス電圧V10の平均電圧V12と感光体ドラム31Aの画像部電位V21との電位差を大きくした場合であっても、キャリア上りを減少させられることが分かる。
このように、現像バイアス電圧V10のデューティ比を小さくすることによって、キャリア上りを減少させることができる。しかし、この反面、一般的にデューティ比を小さくしすぎると、かぶりが増加してしまう。このため、かぶりを抑制するためには、現像ローラ41Aに印加する現像バイアス電圧V10のデューティ比が、制限される。
次に、かぶりの減少とキャリア上りの減少とを両立し得る好適なデューティ比を検証するための実験結果を示す。
図17は、異なる複数のデューティ比における、感光体ドラム31Aの非画像部電位V20と現像バイアス電圧V10の平均電圧V12との電位差の絶対値と、かぶり及びキャリア上りのそれぞれの量と、の関係についての実験結果を示す図である。この実験では、非画像部電位V20及び現像バイアス電圧V10のバイアス波形を維持したまま、平均電圧V12をシフトさせることで電位差を異ならせ、デューティ比0.25、0.38、及び0.5のそれぞれの場合について、かぶり及びキャリア上りのそれぞれの量を測定した。
かぶりの減少とキャリア上りの減少とを両立し得る、感光体ドラム31Aの非画像部電位V20と現像バイアス電圧V10の平均電圧V12との電位差の絶対値の範囲として、|V20−V12|=100V〜200Vの範囲を主として比較する。すると、図17に示すように、デューティ比0.5では、かぶりが減少しているものの、キャリア上りが電位差200Vで非常に増加している。一方、デューティ比0.25では、キャリア上りが電位差250Vくらいまで減少しているものの、電位差100Vでのかぶりが増加している。また、デューティ比0.38の場合は、かぶり及びキャリア上りの両方が減少している。
また、同様の実験をデューティ比0.43、及び0.32の場合についても行い、これらの実験結果をまとめて図18に示す。図18に示すように、デューティ比T1/(T1+T2)が0.3〜0.45の範囲にある場合に、かぶり及びキャリア上りともに減少している。
また、デューティ比が0.3〜0.45の範囲では、トナー濃度を高く保つことができる。図19は、デューティ比と感光体ドラム31Aへのトナーの付着量との関係についての実験結果を示す。ここでは、トナーの付着量の値として、感光体ドラム31Aに付着したトナーの単位面積当たりの重量を測定した値を示した。
デューティ比が0.3を超える範囲では、デューティ比が0.5の場合と略同一又はそれ以上の画像濃度を保つことができる。一方、デューティ比が0.3以下になると、感光体ドラム31Aへのトナーの付着量が減少し、用紙に転写されるトナー像の画像濃度の低下が顕著に表れる。
要するに、デューティ比T1/(T1+T2)が0.45以上の場合は、キャリア上りが非常に増加し、デューティ比が0.3以下の場合は、かぶりが非常に増加するとともに、トナーの感光体ドラム31Aへの付着量が減少して、画像濃度が、所定の許容範囲から外れるほど非常に低下する。デューティ比が0.3を超えて0.45未満の範囲内にあれば、キャリア上りを減少できるとともに、かぶりの増加を抑え、画像濃度を所定の許容範囲内に維持することができる。したがって、デューティ比は、0.3を超えて0.45未満の範囲内にあることが望ましい。
したがって、制御部50は、画像濃度の調整時に、次式が成立する範囲内で印加時間T1又は印加時間T2の少なくともいずれか一方を調整することが望ましい。
0.3<T1/(T1+T2)<0.45
なお、上述の実施形態では、2成分系の現像剤を用いる場合について説明したが、1成分系の現像剤を用いる場合にも、この発明を適用することができる。
また、静電潜像を現像するに際しては、1成分系及び2成分系の現像剤に関わらず、感光体ドラム31Aが帯電する表面電位と同極性に帯電したトナーを用いて現像する場合の他に、感光体ドラム31Aが帯電する表面電位と逆極性に帯電したトナーを用いて現像する場合があり、いずれの場合にも、この発明を適用することができる。
最後に、上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。