JP2009039755A - 切断用加工方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 板状の加工対象物を切断予定ラインに沿って確実に切断することを可能にする切断用加工方法を提供する。
【解決手段】 非溶融処理領域のエッチングレートよりも溶融処理領域13のエッチングレートのほうが高いことを利用して、切断予定ラインに沿って加工対象物1に溶融処理領域13を形成した後に、エッチング処理を施すことにより、切断予定ラインに沿って加工対象物1に断面V字状の溝26を形成する。これにより、加工対象物1に外部応力を印加する場合に、例えば、チップサイズが小さく、チップ1箇所当たりに作用する力が小さくても、断面V字状の溝26を起点として、加工対象物1を切断予定ラインに沿って確実に切断することが可能となる。
【選択図】 図12

Description

本発明は、板状の加工対象物を切断予定ラインに沿って切断するための切断用加工方法に関する。
従来における上記技術分野の切断用加工方法として、板状の加工対象物に集光点を合わせてレーザ光を照射することにより、切断予定ラインに沿って、切断の起点となる改質領域を加工対象物に形成するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。このような切断用加工方法においては、改質領域が形成された加工対象物に外部応力を印加することにより、改質領域を起点として割れを発生させ、切断予定ラインに沿って加工対象物を複数のチップに切断する。
特開2004−343008号公報
しかしながら、上述したような切断用加工方法にあっては、改質領域が形成された加工対象物に外部応力を印加した際に、例えば、チップサイズが小さくなる程、チップ1箇所当たりに作用する力が小さくなるため、切断予定ラインに沿って加工対象物を確実に切断することができないおそれがある。
そこで、本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、板状の加工対象物を切断予定ラインに沿って確実に切断することを可能にする切断用加工方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明に係る切断用加工方法は、板状の加工対象物を切断予定ラインに沿って切断するための切断用加工方法であって、加工対象物に集光点を合わせてレーザ光を照射することにより、切断予定ラインに沿って加工対象物に改質領域を形成する工程と、加工対象物に改質領域を形成した後に、エッチング処理を施すことにより、切断予定ラインに沿って加工対象物に断面V字状の溝を形成する工程と、を含むことを特徴とする。
この切断用加工方法では、非改質領域のエッチングレートよりも改質領域のエッチングレートのほうが高いことを利用して、切断予定ラインに沿って加工対象物に改質領域を形成した後に、エッチング処理を施すことにより、切断予定ラインに沿って加工対象物に断面V字状の溝を形成する。これにより、加工対象物に外部応力を印加する場合に、例えば、チップサイズが小さく、チップ1箇所当たりに作用する力が小さくても、断面V字状の溝を起点として、加工対象物を切断予定ラインに沿って確実に切断することが可能となる。なお、断面V字状の溝とは、溝の延在方向と略直交する溝の断面形状がV字状である溝を意味する。
本発明に係る切断用加工方法においては、加工対象物を保持するための保持部材に加工対象物を取り付ける工程を含むことが好ましい。この場合、切断後の加工対象物が散乱するのを防止することができる。
本発明に係る切断用加工方法においては、加工対象物に断面V字状の溝を形成した後に、保持部材を拡張することにより、切断予定ラインに沿って加工対象物を切断することが好ましい。このように、加工対象物に断面V字状の溝を形成した後に保持部材を拡張すれば、加工対象物を切断予定ラインに沿ってより一層確実に切断することができる。
本発明に係る切断用加工方法においては、加工対象物は半導体基板を備え、改質領域は溶融処理領域を含む場合がある。
本発明によれば、板状の加工対象物を切断予定ラインに沿って確実に切断することが可能となる。
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
本実施形態に係る切断用加工方法においては、板状の加工対象物に集光点を合わせてレーザ光を照射することにより、切断予定ラインに沿って加工対象物に改質領域を形成する。そして、非改質領域のエッチングレートよりも改質領域のエッチングレートのほうが高いことを利用して、改質領域が形成された加工対象物にエッチング処理を施すことにより、切断予定ラインに沿って加工対象物に断面V字状の溝を形成する。
そこで、まず、本実施形態に係る切断用加工方法における改質領域の形成について、図1〜図9を参照して説明する。
図1に示すように、レーザ加工装置100は、レーザ光(加工用レーザ光)Lをパルス発振するレーザ光源101と、レーザ光Lの光軸の向きを90°変えるように配置されたダイクロイックミラー103と、レーザ光Lを集光するための集光用レンズ105と、を備えている。また、レーザ加工装置100は、集光用レンズ105で集光されたレーザ光Lが照射される加工対象物1を支持するための支持台107と、支持台107をX、Y、Z軸方向に移動させるためのステージ111と、レーザ光Lの出力やパルス幅等を調節するためにレーザ光源101を制御するレーザ光源制御部102と、ステージ111の移動を制御するステージ制御部115と、を備えている。
このレーザ加工装置100においては、レーザ光源101から出射されたレーザ光Lは、ダイクロイックミラー103によってその光軸の向きを90°変えられ、支持台107上に載置された加工対象物1の内部に集光レンズ105によって集光される。これと共に、ステージ111が移動させられ、加工対象物1がレーザ光Lに対して切断予定ライン5に沿って相対移動させられる。これにより、切断予定ライン5に沿って、切断の起点となる改質領域が加工対象物1に形成されることとなる。以下、この改質領域について詳細に説明する。
図2に示すように、板状の加工対象物1には、加工対象物1を切断するための切断予定ライン5が設定されている。切断予定ライン5は、直線状に延びた仮想線である。加工対象物1の内部に改質領域を形成する場合、図3に示すように、加工対象物1の内部に集光点Pを合わせた状態で、レーザ光Lを切断予定ライン5に沿って(すなわち、図2の矢印A方向に)相対的に移動させる。これにより、図4〜図6に示すように、改質領域7が切断予定ライン5に沿って加工対象物1の内部に形成され、切断予定ライン5に沿って形成された改質領域7が切断起点領域8となる。
なお、集光点Pとは、レーザ光Lが集光する箇所のことである。また、切断予定ライン5は、直線状に限らず曲線状であってもよいし、仮想線に限らず加工対象物1の表面3に実際に引かれた線であってもよい。また、改質領域7は、連続的に形成される場合もあるし、断続的に形成される場合もある。また、改質領域7は少なくとも加工対象物1の内部に形成されていればよい。また、改質領域7を起点に亀裂が形成される場合があり、亀裂及び改質領域7は、加工対象物1の外表面(表面、裏面、若しくは外周面)に露出していてもよい。
ちなみに、ここでは、レーザ光Lが、加工対象物1を透過すると共に加工対象物1の内部の集光点近傍にて特に吸収され、これにより、加工対象物1に改質領域7が形成される(すなわち、内部吸収型レーザ加工)。よって、加工対象物1の表面3ではレーザ光Lが殆ど吸収されないので、加工対象物1の表面3が溶融することはない。一般的に、表面3から溶融され除去されて穴や溝等の除去部が形成される(表面吸収型レーザ加工)場合、加工領域は表面3側から徐々に裏面側に進行する。よって、除去部の近傍にはエッチングレートを急伸させる改質領域が形成されない。
ところで、本実施形態に係る切断用加工方法にて形成される改質領域は、密度、屈折率、機械的強度やその他の物理的特性が周囲とは異なる状態になった領域をいう。例えば、(1)溶融処理領域、(2)クラック領域、絶縁破壊領域、(3)屈折率変化領域等があり、これらが混在した領域もある。
本実施形態に係る切断用加工方法における改質領域は、レーザ光の局所的な吸収や多光子吸収という現象により形成される。多光子吸収とは、材料の吸収のバンドギャップEよりも光子のエネルギーhνが小さいと光学的に透明となるため、材料に吸収が生じる条件はhν>Eであるが、光学的に透明でも、レーザ光Lの強度を非常に大きくするとnhν>Eの条件(n=2,3,4,・・・)で材料に吸収が生じる現象をいう。多光子吸収による溶融処理領域の形成は、例えば、溶接学会全国大会講演概要第66集(2000年4月)の第72頁〜第73頁の「ピコ秒パルスレーザによるシリコンの加工特性評価」に記載されている。
また、D.Du,X.Liu,G.Korn,J.Squier,and G.Mourou,”Laser Induced Breakdown by Impact Ionization in SiO2 with Pulse Widths from 7ns to 150fs”,Appl Phys Lett64(23),Jun.6,1994に記載されているようにパルス幅が数ピコ秒からフェムト秒の超短パルスレーザ光を利用することにより形成される改質領域を利用してもよい。
(1)改質領域が溶融処理領域を含む場合
加工対象物(例えばシリコンのような半導体材料)の内部に集光点を合わせて、集光点における電界強度が1×10(W/cm)以上で且つパルス幅が1μs以下の条件でレーザ光Lを照射する。これにより、集光点近傍にてレーザ光Lが吸収されて加工対象物の内部が局所的に加熱され、この加熱により加工対象物の内部に溶融処理領域が形成される。
溶融処理領域とは、一旦溶融後再固化した領域や、まさに溶融状態の領域や、溶融状態から再固化する状態の領域であり、相変化した領域や結晶構造が変化した領域ということもできる。また、溶融処理領域とは単結晶構造、非晶質構造、多結晶構造において、ある構造が別の構造に変化した領域ということもできる。つまり、例えば、単結晶構造から非晶質構造に変化した領域、単結晶構造から多結晶構造に変化した領域、単結晶構造から非晶質構造及び多結晶構造を含む構造に変化した領域を意味する。加工対象物がシリコン単結晶構造の場合、溶融処理領域は例えば非晶質シリコン構造である。
図7は、レーザ光が照射されたシリコンウェハ(半導体基板)の一部における断面の写真を表した図である。図7に示すように、半導体基板11の内部に溶融処理領域13が形成されている。
入射するレーザ光の波長に対して透過性の材料の内部に溶融処理領域13が形成されたことを説明する。図8は、レーザ光の波長とシリコン基板の内部の透過率との関係を示す線図である。ただし、シリコン基板の表面側と裏面側それぞれの反射成分を除去し、内部のみの透過率を示している。シリコン基板の厚さtが50μm、100μm、200μm、500μm、1000μmの各々について上記関係を示した。
例えば、Nd:YAGレーザの波長である1064nmにおいて、シリコン基板の厚さが500μm以下の場合、シリコン基板の内部ではレーザ光Lが80%以上透過することが分かる。図7に示す半導体基板11の厚さは350μmであるので、溶融処理領域13は半導体基板11の中心付近、つまり表面から175μmの部分に形成される。この場合の透過率は、厚さ200μmのシリコンウェハを参考にすると、90%以上なので、レーザ光Lが半導体基板11の内部で吸収されるのは僅かであり、殆どが透過する。しかし、1×10(W/cm)以上で且つパルス幅が1μs以下の条件でレーザ光Lをシリコンウェハ内部に集光することで集光点とその近傍で局所的にレーザ光が吸収され溶融処理領域13が半導体基板11の内部に形成される。
なお、シリコンウェハには、溶融処理領域を起点として亀裂が発生する場合がある。また、溶融処理領域に亀裂が内包されて形成される場合があり、この場合には、その亀裂が、溶融処理領域においての全面に渡って形成されていたり、一部分のみや複数部分に形成されていたりすることがある。更に、この亀裂は、自然に成長する場合もあるし、シリコンウェハに力が印加されることにより成長する場合もある。溶融処理領域から亀裂が自然に成長する場合には、溶融処理領域が溶融している状態から成長する場合と、溶融処理領域が溶融している状態から再固化する際に成長する場合とのいずれもある。ただし、どちらの場合も溶融処理領域はシリコンウェハの内部に形成され、切断面においては、図7に示すように、内部に溶融処理領域が形成されている。
(2)改質領域がクラック領域を含む場合
加工対象物(例えばガラスやLiTaOからなる圧電材料)の内部に集光点を合わせて、集光点における電界強度が1×10(W/cm)以上で且つパルス幅が1μs以下の条件でレーザ光Lを照射する。このパルス幅の大きさは、加工対象物の内部にレーザ光Lが吸収されてクラック領域が形成される条件である。これにより、加工対象物の内部には光学的損傷という現象が発生する。この光学的損傷により加工対象物の内部に熱ひずみが誘起され、これにより加工対象物の内部に、1つ又は複数のクラックを含むクラック領域が形成される。クラック領域は絶縁破壊領域とも言える。
図9は電界強度とクラックの大きさとの関係の実験結果を示す線図である。横軸はピークパワー密度であり、レーザ光Lがパルスレーザ光なので電界強度はピークパワー密度で表される。縦軸は1パルスのレーザ光Lにより加工対象物の内部に形成されたクラック部分(クラックスポット)の大きさを示している。クラックスポットが集まりクラック領域となる。クラックスポットの大きさは、クラックスポットの形状のうち、最大の長さとなる部分の大きさである。グラフ中の黒丸で示すデータは集光用レンズ(C)の倍率が100倍、開口数(NA)が0.80の場合である。一方、グラフ中の白丸で示すデータは集光用レンズ(C)の倍率が50倍、開口数(NA)が0.55の場合である。ピークパワー密度が1011(W/cm)程度から加工対象物の内部にクラックスポットが発生し、ピークパワー密度が大きくなるに従いクラックスポットも大きくなることが分かる。
(3)改質領域が屈折率変化領域を含む場合
加工対象物(例えばガラス)の内部に集光点を合わせて、集光点における電界強度が1×10(W/cm)以上で且つパルス幅が1ns以下の条件でレーザ光Lを照射する。このように、パルス幅が極めて短い状態で加工対象物の内部にレーザ光Lが吸収されると、そのエネルギーが熱エネルギーに転化せず、加工対象物の内部にはイオン価数変化、結晶化又は分極配向等の永続的な構造変化が誘起され、屈折率変化領域が形成される。
なお、改質領域とは、溶融処理領域、絶縁破壊領域、屈折率変化領域等やそれらが混在した領域を含めて、その材料において改質領域の密度が非改質領域の密度と比較して変化した領域であったり、格子欠陥が形成された領域であったりする。これらをまとめて高密転移領域と言うこともできる。
また、溶融処理領域や屈折率変化領域、改質領域の密度が非改質領域の密度と比較して変化した領域、格子欠陥が形成された領域は、更にそれら領域の内部や改質領域と非改質領域との界面に亀裂(割れ、マイクロクラック)を内包している場合がある。内包される亀裂は改質領域の全面に渡る場合や一部分のみや複数部分に形成される場合がある。このように亀裂を内包する場合、亀裂を通じて改質領域全面や改質領域内部にエッチング液が浸潤し、改質領域の厚さ方向だけでなく、厚さ方向に渡って改質領域の側面方向にもエッチングが行われるので、通常知られているエッチングのように厚さ方向に対して上から下へとエッチングが進むものに比べてエッチングの反応領域を多くすることができ、エッチング速度をより高めるという本発明に有利な効果をもたらす。
ちなみに、加工対象物の結晶構造やその劈開性等を考慮して、改質領域を次のように形成すれば、精度よく加工対象物を切断することが可能になる。
すなわち、シリコン等のダイヤモンド構造の単結晶半導体からなる基板の場合は、(111)面(第1劈開面)や(110)面(第2劈開面)に沿った方向に改質領域を形成するのが好ましい。また、GaAs等の閃亜鉛鉱型構造のIII−V族化合物半導体からなる基板の場合は、(110)面に沿った方向に改質領域を形成するのが好ましい。更に、サファイア(Al)等の六方晶系の結晶構造を有する基板の場合は、(0001)面(C面)を主面として(1120)面(A面)或いは(1100)面(M面)に沿った方向に改質領域を形成するのが好ましい。
また、上述した改質領域を形成すべき方向(例えば、単結晶シリコン基板における(111)面に沿った方向)、或いは改質領域を形成すべき方向に直交する方向に沿って基板にオリエンテーションフラットを形成すれば、そのオリエンテーションフラットを基準とすることで、改質領域を容易且つ正確に基板に形成することが可能になる。
次に、本実施形態に係る切断用加工方法について説明する。なお、図11〜図13は、図10のX−X線に沿っての断面図である。
図10に示すように、加工対象物1は、半導体基板11と、半導体基板11の表面11aに形成された複数の機能素子15とを備えている。半導体基板11は、例えば、厚さ625μmのシリコンウェハ等である。機能素子15は、例えば、結晶成長により形成された半導体動作層、フォトダイオード等の受光素子、レーザダイオード等の発光素子、或いは回路として形成された回路素子等であり、半導体基板11のオリエンテーションフラット6に平行な方向及び垂直な方向にマトリックス状に複数形成されている。
以上のように構成された加工対象物1を以下のようにして機能素子15毎に切断する。まず、図11(a)に示すように、加工対象物1の表面3に保護テープ22を貼り付ける。保護テープ22は、例えば、塩化ビニル、ポリオレフィン或いはPET等からなり、円環状のフレーム24に張られている。続いて、図11(b)に示すように、保護テープ22及びフレーム24と共に加工対象物1をレーザ加工装置の支持台(図示せず)上に固定する。そして、加工対象物1の裏面21をレーザ光入射面として半導体基板11の内部に集光点Pを合わせてレーザ光Lを照射し、支持台の移動によって、隣り合う機能素子15,15間を通るように格子状に設定された切断予定ライン5(図10の破線参照)に沿って集光点Pをスキャンする。
この切断予定ライン5に沿った集光点Pのスキャンを1本の切断予定ライン5に対して複数回行うが、集光点Pを合わせる位置の裏面21からの距離を各回毎に変えることで、複数列の溶融処理領域13を切断予定ライン5に沿って半導体基板11の内部に1列ずつ形成する。なお、加工対象物1の表面3や裏面21に溶融処理領域13が到達する場合もあるし、溶融処理領域13から加工対象物1の表面3や裏面21に割れが発生する場合もある。また、溶融処理領域13には、クラックが混在する場合もある。更に、1本の切断予定ライン5に対して半導体基板11の内部に形成される溶融処理領域13の列数は、半導体基板11の厚さ等に応じて変化するものであり、複数列に限定されず、1列の場合もある。
続いて、図12(a)に示すように、エッチング処理装置(図示せず)において、加工対象物1に対し、裏面21側からエッチング処理を施す。エッチング処理は、例えば、SF、C及びOの混合ガスを用いた異方性のドライエッジング処理である。これにより、図12(b)に示すように、機能素子15が保護テープ22により保護されつつ、加工対象物1の裏面21、すなわち半導体基板11の裏面がエッチングされる。このとき、半導体基板11においては、例えば単結晶シリコンである非溶融処理領域のエッチングレートよりも、例えば多結晶シリコンである溶融処理領域13のエッチングレートのほうが高いため、切断予定ライン5に沿って加工対象物1の裏面21に断面V字状の溝26が形成される。
続いて、図13(a)に示すように、加工対象物1を保持するためのエキスパンドテープ(保持部材)23を、フレーム24に張られるように加工対象物1の裏面21に貼り付け、加工対象物1の表面3から保護テープ22を剥がし取る。そして、図13(b)に示すように、エキスパンドテープ拡張装置(図示せず)において、フレーム24を固定した状態で、エキスパンドテープ23を介して円柱状の押圧部材27を裏面21側から加工対象物1に押し当てるようにして、エキスパンドテープ23を拡張させる。これにより、溝26を切断の起点として加工対象物1が切断予定ライン5に沿って切断され、切断されることで得られた複数の半導体チップ25の散乱がエキスパンドテープ23によって防止されつつ、半導体チップ25が互いに離間する。
以上説明したように、本実施形態に係る切断用加工方法では、非溶融処理領域のエッチングレートよりも溶融処理領域13のエッチングレートのほうが高いことを利用して、切断予定ライン5に沿って加工対象物1に溶融処理領域13を形成した後に、エッチング処理を施すことにより、切断予定ライン5に沿って加工対象物1に断面V字状の溝26を形成する。これにより、加工対象物1に外部応力を印加する場合に、例えば、チップサイズが小さく、チップ1箇所当たりに作用する力が小さくても、断面V字状の溝26を起点として、加工対象物1を切断予定ライン5に沿って確実に切断することが可能となる。
また、切断されることで得られた半導体チップ25は、裏面側(機能素子15の反対側)の角部が面取りされた形状となるため、角部におけるチッピングやクラッキングの発生が抑制されると共に、抗折強度の向上が図られる。
なお、エッチング処理において、エッチングの進行方向前側の溶融処理領域13の端部を超えてエッチングが進行すると、溝26の内面部分が非溶融処理領域となってエッチングレートの差がなくなるため、溝26の断面形状が断面U字状となる。そうすると、加工対象物1を切断予定ライン5に沿って確実に切断することが困難となる。従って、エッチング処理においては、エッチングの進行方向前側の溶融処理領域13の端部を超えてエッチングが進行しないようにする必要がある。
図14は、断面V字状の溝が形成されるエッチング処理を説明するための断面図であり、図15は、断面U字状の溝が形成されるエッチング処理を説明するための断面図である。
図14(a)に示すように、厚さ625μmのシリコンウェハである加工対象物1に対し、ミラー面である表面3をレーザ光入射面として、梨地面である裏面21から143μmの範囲に、切断予定ライン5に沿って溶融処理領域13を形成した後に、SF、C及びOの混合ガスを用いて、加工対象物1の裏面21側から異方性のドライエッジング処理を施した。図14(b),(c)に示すように、エッチングレート50μm/25分で加工対象物1の裏面21を50μmエッチングすると(エッチングの進行方向前側の溶融処理領域13の端部を超えないようにエッチングすると)、溶融処理領域13が形成されている部分は、更に44μmエッチングされ、断面V字状の溝26が形成された。なお、図14(c)は、図14(a),(b)における切断予定ライン5と直交する断面図である。
一方、図15(a)に示すように、厚さ625μmのシリコンウェハである加工対象物1に対し、ミラー面である表面3をレーザ光入射面として、梨地面である裏面21から143μmの範囲に、切断予定ライン5に沿って溶融処理領域13を形成した後に、SF、C及びOの混合ガスを用いて、加工対象物1の裏面21側から異方性のドライエッジング処理を施した。図15(b),(c)に示すように、エッチングレート151μm/75分で加工対象物1の裏面21を151μmエッチングすると(エッチングの進行方向前側の溶融処理領域13の端部を超えるようにエッチングすると)、溶融処理領域13が形成されていた部分は、更に54μmエッチングされ、断面U字状の溝26が形成された。なお、図15(c)は、図15(a),(b)における切断予定ライン5と直交する断面図である。
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。
例えば、上記実施形態では、半導体材料からなる加工対象物1の内部に溶融処理領域13を形成したが、ガラスや圧電材料等、他の材料からなる加工対象物1の内部に、クラック領域や屈折率変化領域等、他の改質領域7を形成してもよい。これらの場合にも、非改質領域のエッチングレートに比べ改質領域7のエッチングレートが高いことから、切断予定ライン5に沿って加工対象物1に断面V字状の溝26を形成し、加工対象物1を切断予定ライン5に沿って確実に切断することができる。
なお、エッチング処理は、異方性のドライエッチング処理に限定されず、KOH溶液等を用いたウェットエッチングであってもよい。そして、エッチング処理の方法は、エッチング処理の対象となる材料に応じて適宜選択すればよい。
また、改質領域7を形成する際におけるレーザ光入射面は、加工対象物1の裏面21に限定されず、加工対象物1の表面3であってもよい。
また、エキスパンドテープ23に加工対象物1を貼り付けるタイミングは、断面V字状の溝26を形成した後に限定されず、改質領域7を形成する前であってもよいし、或いは改質領域7を形成した後であって断面V字状の溝26を形成する前であってもよい。これらの場合には、エキスパンドテープ23が保護テープ22の役割をも果たすことになる。
更に、図16及び図17に示すように、加工対象物1における改質領域7の形成状態を変化させることで、一度のエッチング処理によって、断面V字状の溝26や断面U字状の溝26からなる様々な形状のエッチングパターンを形成することができる。
改質領域の形成に用いられるレーザ加工装置の概略構成図である。 改質領域の形成の対象となる加工対象物の平面図である。 図2の加工対象物のII−II線に沿っての断面図である。 レーザ加工後の加工対象物の平面図である。 図4の加工対象物のV−V線に沿っての断面図である。 図4の加工対象物のVI−VI線に沿っての断面図である。 レーザ加工後のシリコンウェハの切断面の写真を表した図である。 レーザ光の波長とシリコン基板の内部の透過率との関係を示すグラフである。 レーザ光のピークパワー密度とクラックスポットの大きさとの関係を示すグラフである。 本実施形態に係る加工対象物の平面図である。 本実施形態に係る切断用加工方法を説明するための断面図である。 本実施形態に係る切断用加工方法を説明するための断面図である。 本実施形態に係る切断用加工方法を説明するための断面図である。 断面V字状の溝が形成されるエッチング処理を説明するための断面図である。 断面U字状の溝が形成されるエッチング処理を説明するための断面図である。 加工対象物に様々なエッチングパターンを形成する方法を説明するための断面図である。 加工対象物に様々なエッチングパターンを形成する方法を説明するための断面図である。
符号の説明
1…加工対象物、5…切断予定ライン、7…改質領域、11…半導体基板、13…溶融処理領域、23…エキスパンドテープ(保持部材)、26…溝、L…レーザ光、P…集光点。

Claims (4)

  1. 板状の加工対象物を切断予定ラインに沿って切断するための切断用加工方法であって、
    前記加工対象物に集光点を合わせてレーザ光を照射することにより、前記切断予定ラインに沿って前記加工対象物に改質領域を形成する工程と、
    前記加工対象物に前記改質領域を形成した後に、エッチング処理を施すことにより、前記切断予定ラインに沿って前記加工対象物に断面V字状の溝を形成する工程と、を含むことを特徴とする切断用加工方法。
  2. 前記加工対象物を保持するための保持部材に前記加工対象物を取り付ける工程を含むことを特徴とする請求項1記載の切断用加工方法。
  3. 前記加工対象物に断面V字状の前記溝を形成した後に、前記保持部材を拡張することにより、前記切断予定ラインに沿って前記加工対象物を切断することを特徴とする請求項2記載の切断用加工方法。
  4. 前記加工対象物は半導体基板を備え、前記改質領域は溶融処理領域を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載の切断用加工方法。
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