本発明は、衣類などのプレス仕上げに使用するアイロンに関する。
従来のアイロンとして特許文献1に開示されるようなものがある。この種のアイロンについて、図16に基づき説明すると、1はアイロン本体であり、このアイロン本体1は加熱手段としてのヒータを埋設したベース3を下部に備えている。ベース3は、アルミニウムダイカスト加工により形成され、当該アイロン底面所謂かけ面102には滑りを良くするため例えばフッ素樹脂などの樹脂コートが施されている。ベース3の内部には、ヒータの近傍に位置して蒸気室すなわち気化室が形成され、この気化室に連通する噴出孔がベース3の下面に設けられ、噴出孔からスチームを噴出させる構成となっている。また、8はベース3の上部に設けられたカバーであり、9はカバー8の上方に設けられたハンドルであり、ハンドル9の前方には、水タンクに相当する容器たるカセットタンク10がアイロン本体1に対し、着脱可能に設けられる。
カセットタンク10は、例えば合成樹脂で形成され、上面から見た形状が略U字状で、その両側がハンドル9の前端部側から後端部側の両端にかけて跨るように配置されている。11は、カセットタンク10の前部に設けられた開閉自在な注水口蓋であり、ここからカセットタンク10内に水を収容し、かつ、カセットタンク10内の不用水を廃棄できるようになっている。また、カセットタンク10のロック機構は、ハンドル9の一側面にやや突出して、タンクロック釦12が設けられており、このタンクロック釦12を操作することにより、カセットタンク10の係止,解除を行なう。
特開2003−265898号公報
しかし、上記従来のアイロンでは、ベース3とカバー8との間には、ベース3とカバー8とが接触しないように若干の隙間が形成されており、この隙間から、アイロン掛け作業時には衣類からの埃が、収納時には室内の埃が侵入し、本体内部の回路に付着する虞があった。とりわけ長期の使用,収納においてはその虞が大きい。その他、子供のいたずら等で前記隙間からコイン等の異物を挿入することで、本体内部の回路を損傷させたり、短絡させたりする虞があった。これらを防ぐための侵入防止,挿入防止として、カバー8に一定間隔でリブを設けることもあるが、ヒケがでてしまうため外観上あまり好ましいものではなかった。
そこで本発明は上記問題点に鑑み、外観を損なうことなく、本体内への埃や異物の侵入を防ぐことが可能なアイロンを提供することを目的とする。
本発明の請求項1では、フランジ部を設けてベースと外郭部材との隙間を少なくすることにより、本体内部への埃や異物の侵入を防ぐことができるため、回路の損傷や短絡の虞を払拭することができる。フランジ部は、ベースに設けられたかけ面部材の形状に略沿うように設けられているので、フランジ部とかけ面部材との間に段差がなくなるため、衣類を傷つけにくくし、また外観上も良くすることができる。
本発明の請求項2では、フランジ部と外郭部材とが接触しないように、両者の間に隙間を設けることにより、本体内部の異常加熱を抑え、外郭部材の溶損を防ぐことができる。
本発明の請求項3では、前方部へくるに従ってフランジ部の高さが変わることにより、当該先端部を用いてボタン周辺などの細かい部分をアイロン掛けする場合でも、フランジ部が邪魔にならず、スムーズにアイロン掛けすることができる。
本発明の請求項1によると、外観を損なうことなく、本体内への埃や異物の侵入を防ぐことが可能なアイロンを提供することができる。また、安全性が向上するため長期に亘って安全に使用することができる。
本発明の請求項2によると、請求項1の効果に加え、使用時間が長い場合でも安全に使用することができる。
本発明の請求項3によると、請求項1又は請求項2の効果に加え、使い勝手を損なうことなく安全性を向上することができる。
以下、添付図面を参照しながら、本発明におけるアイロンの好ましい実施例及び参考例を説明する。なお、これらの実施例及び参考例において、従来例と同一箇所には同一符号を付し、共通する部分の説明は重複するため極力省略する。
参考例
まず、全体構成を図1乃至図4に基づき説明すると、1はアイロン本体であり、このアイロン本体1は加熱手段としてのヒータ2を埋設したベース3を下部に備えている。ベース3の底面には、図5で示すように、かけ面部材100が具備され、該かけ面部材100に固着された締結部材101によりベース3と密着している。かけ面部材100は、硬質の金属製プレートと熱伝導性の良い金属プレートとを接合したクラッド材からなる。かけ面部材100に使用されるクラッド材は、硬質の金属製プレートと熱伝導性の良い金属製プレートとを接合した2層又は熱伝導性の良い金属製プレートを硬質の金属製プレートで挟み込んだ3層どちらでもよいが、3層の方が、異種金属を接合した場合に生じるひずみを緩和でき、形状を安定させることができるため好ましい。3層クラッド材を使用する場合には、ベース3の熱を中間層の金属製プレートに伝達し易くするために、ベース3側を比較的薄くするのがよい。
かけ面部材100は、着脱可能なベース裏板5が備えられ、ネジ4にてベース3に固定されるが、かけ面部材100が2層クラッド材の場合には、かけ面102が硬質の金属製プレートとなるよう設けられる。アイロンのかけ面102を硬質の金属製プレートとすることで、磨耗や傷に強いかけ面102とすることができる。このとき、かけ面部材100のうち熱伝導性の良い金属製プレートがベース3側となり、熱伝導性の劣る金属製プレートがかけ面102側となる。かけ面部材100のうち、熱伝導性の良い金属製プレートをベース側にすることで、かけ面部材100にベースの熱を効率よく伝達することができる。一方、かけ面102側を熱伝導性の劣る金属製プレートとすることで、かけ面102の温度変化を少なくすることができ、過度の熱で衣類を傷めたり、反対に温度低下によりアイロン掛けの効果が弱くなることがない。3層クラッド材では、上記2層クラッド材の作用,効果の他に、熱伝導性の良い金属製プレートを熱伝導性の劣る硬質の金属製プレートで挟み込んでいるため、アイロン掛けでの熱損失が少なくなるという利点もある。従って、3層クラッド材を使用することにより、アイロンの通電率を減らすことができるため、省エネとなると共に、かけ面部材100の形状を安定させることができる。なお、硬質の金属製プレートを例えばステンレス鋼板などとし、熱伝導性の良い金属製プレートを例えばアルミニウム,銅などの一般的な材料とすることによりコストを低く抑えることができる。
ベース3の内部には、ヒータ2の近傍に位置して蒸気室すなわち気化室6が形成され、この気化室6に連通する噴出孔7がベース3の下面に設けられる。気化室6は、ベース3に形成されず別体であってもよい。また、8はベース3の上部に設けられたカバーであり、9はカバー8の上方に設けられたハンドルであり、ハンドル9の前方には、水タンクに相当する容器たるカセットタンク10がアイロン本体1に対し、着脱可能に設けられる。
カセットタンク10は、例えば合成樹脂で形成され、上面から見た形状が略U字状で、その両側がハンドル9の前端部側から後端部側の両端にかけて跨るように配置されている。11は、カセットタンク10の前部に設けられた開閉自在な注水口蓋であり、ここからカセットタンク10内に水を収容し、かつ、カセットタンク10内の不用水を廃棄できるようになっている。また、カセットタンク10のロック機構は、ハンドル9の一側面にやや突出して、タンクロック釦12が設けられており、このタンクロック釦12を操作することにより上下動する昇降体13が、弾性部材たるスプリング14により常時下方に付勢されている。そして、昇降体13の下部に突設したロック部15が、カセットタンク10の傾斜する上面に形成した凹部16に係止する構成になっている。
カセットタンク10の内部には、弁装置17が設けられており、この弁装置17の下部には、気化室6に連通する導水路たる通水継手18が設けられている。弁装置17は、支持体19により、直立状態かつ摺動自在に支持されたスチーム開閉体たるスチーム開閉棒20と、支持体19の凹底面上に設けられたパッキン21と、このパッキン21を常時、支持体19の凹底面側に付勢して、密着状態を保護する付勢部材としてのスプリング22とを備え、スチーム開閉棒20の下端部に形成した弾性を有する弁体66は、カセットタンク10の底面に形成した流出孔23の中心部に臨んで設けられている。また、通水継手18とベース3との間には、ベース3からの熱を遮断する遮熱板24が介在している。この遮熱板24の下方には、気化室6の上部開口部を覆うようにして、蓋体25が設けられる。26は、通水継手18の途中に設けられたノズルであり、このノズル26を開閉する開閉弁27が、前記遮熱板24及び蓋体25に共通して設けられた開口部32より、ベース3の凹部33に向けて下方に突出している。このベース3の凹部33には、感熱応動体に相当する反転式のバイメタル34が収容されており、凹部33の近傍にある気化室6が所定の温度に達すると、バイメタル34が凹部33の内部で反転し、スプリング30の付勢に抗して開閉弁27を押し上げることにより、ノズル26を開くよう構成されている。
前記ハンドル9は、把持部に相当する取手部35の他に、この取手部35の下方に位置するアイロン本体1の腹部36と取手部35との間に、手を差し入れるための空洞37を形成してある。なお、ここでいう腹部とは、カセットタンク10の両側を除く取手部35に対向したアイロン本体1の平坦状の中央上面部を指すものである。
ハンドル9の上部には、ベース3の設定温度を変えるための設定釦39が配設されており、ハンドル9の内部には、ヒータ2を適宜通断電することにより、ベース3を所定の温度に制御する温度制御装置42が設けられる。この温度制御装置42は、具体的には、前記設定釦39のスイッチ部43や複数の発光ダイオードすなわちLED40の他に、温度設定の切替時や不適温状態を使用者に報知する報知手段としてのブザー44や、現在の設定温度を記憶保持し、設定釦39の受付けを可能にする2次電池あるいはコンデンサなどの蓄電装置45などを、基板46の上面に実装して構成される。LED40の光は、取手部35を透過し、取手部35の上部に配置されるカセットタンク10の一部に配設された温度表示部41によって、現在の設定温度を表示する。47は、基板46の後方に形成された基板支持部であり、この基板支持部47に支持されて、別の基板48がアイロン本体1内の後方に設けられている。また、49はアイロン本体1の後部外郭をなす後カバーであり、後カバー49の下側に形成した凹部50には、アイロン本体1に電力を供給する一対の給電端子51が突出した状態で取付けられている。
一方、52は、アイロン本体1の載置可能な載置台であり、これは上面が一方向の傾斜した載置部53の傾斜下端側に受部54が突設される。受部54には、給電端子51に対応して、板バネ状の電源接点55が設けられており、アイロン本体1を載置台52の載置部53に載置すると、給電端子51が電源接点55に当接して、コンセント(図示せず)に接続した電源コード56からアイロン本体1内に、必要に応じて電源供給が行なわれるようになっている。
次に、図6に基づき電気的な構成を説明する。温度制御装置42は、具体的には、例えばマイクロコンピュータなどで構成され、当該マイクロコンピュータの記憶装置(図示せず)に記憶されたプログラムの制御シーケンスに従って、一連の動作を行うように構成されている。温度制御装置42の入力側には、設定釦39の他に、ベース3の温度を検知する例えばサーミスタなどの温度検知手段57と、アイロン本体1が載置台52に載置されたか否かを判断するアイロン載置検知手段58などが各々接続される。
また、温度制御装置42の出力側には、ヒータ2,温度表示部41,ブザー44などが接続される。温度制御装置42は、アイロン本体1が載置台52に載置されているか否かに拘らず、設定釦39からの操作信号を受けて、ベース3の設定温度を、例えばアクリルなどの温度にデリケートな繊維(耐熱温度100℃以下)のための温度を意味する「デリケート」、低温を意味する「低」、中程度の温度を意味する「中」、及び高温を意味する「高」の4段階に切換え設定する温度設定手段59と、同じくアイロン本体1が載置台52に載置されているか否かに拘らず、設定釦39からの操作信号を受け付けて、アイロン本体1を切状態に設定する切状態設定手段60とを備えている。そして、本参考例では、設定釦39を1回押動操作する毎に、温度設定手段59または切状態設定手段60における各設定モードが、「切」→「デリケート」→「低」→「中」→「高」→「切」の順に、一段ずつ高い温度設定に切換わるようになっている。ただし、高温に設定されている場合は、設定釦39を操作すると切状態の設定モードになる。なお、本参考例のように、ベース3の設定温度を段階的ではなく、連続的に可変設定できるように温度設定手段59を構成してもよい。この場合、操作手段は押釦式のものではなく、例えばスライド式のスイッチなどを用いてもよい。また、ベース3の設定温度を切換える設定手段と、離脱中も、操作手段からの操作信号を受付けて、ベース3の設定温度を切換え設定できるような温度設定手段59を温度制御装置42に備えてあればよい。温度設定手段59または切状態設定手段60により、一旦設定された前記設定モードは、アイロン本体1の離脱中にバックアップ用の蓄電装置45により、所定時間保持記憶されるようになっている。温度制御装置42は、アイロン載置検知手段58により、アイロン本体1が、載置台52に載置されていることを検知すると、温度検知手段57で検知されるベース3の温度が、温度設定手段59で設定された設定温度に一致するように、加熱手段であるヒータ2を通断電制御する。また、温度制御装置42は、温度表示部41およびブザー44を制御する報知・表示制御手段61を備えており、アイロン本体1の載置時において、温度検知手段57で検知されるベース3の温度が、設定温度付近の適温範囲にあるときには、当該設定温度に対応する温度表示部41のLED40を点灯状態にし、かつブザー44による報知を行なう一方、ベース3の温度が前記適温範囲以外にあるときには、設定温度に対応する温度表示部41のLED40を点滅状態にし、ブザーによる報知は行なわないように構成されている。
一方、アイロン本体1が載置台52から離脱すると、載置台52からアイロン本体1側への電源供給が遮断されることにより、ヒータ2は断電状態となる。このとき、温度制御装置42は、蓄電装置45からの給電により、引き続き動作し、温度検知手段57により検知されるベース3の温度を監視するとともに、設定釦39による操作信号を受付ける。そして、このベース3の温度が、温度設定手段59で設定された設定温度付近の適温範囲よりも下がったとき、或いは、設定釦39を操作して、温度設定手段59における設定温度がそれまでよりも高温に切換えたときに、報知・表示制御手段61がブザー44或いは温度表示部41のLED40を利用して、アイロン本体1の載置台52への載置を促す給電放置または表示を行なうように構成している。
ここで、本参考例におけるカセットタンク10の構造について、図1乃至図4、及び図7を参照して詳述する。カセットタンク10の内部には、このカセットタンク10から気化室6に対し、一時的に多量の水を圧送するためのポンプ装置62が設けられる。ポンプ装置62は、支持体19の後方寄りに形成した円筒状のシリンダー63と、このシリンダー63内の垂直方向に沿って摺動自在に設けられたピストン64と、ピストン64を手動で操作するための操作釦65とで概ね構成され、気化室6に連通する噴出孔7から通常のスチーム若しくは増量スチームを噴出するようになっている。操作釦65は、操作パネル38の上面より突出して押動操作可能に設けられており、カセットタンク10から気化室6に至る通水路中に設けた弁体66を、操作釦65の操作に応じて開閉する開閉制御部としての回転子67と、この回転子67の下方にあってスチーム開閉棒20の上部に連結し、操作釦65の押動位置に応じて、カセットタンク10の内部で上下動する継手68とを備えている。
回転子67は下面が開口した凹状に形成され、当該凹部に、ピストン64の上部に形成した棒体80が挿入し、その上端が当接している。ピストン64の下部に形成したフランジ部81は、シリンダ63の内周面に密着状態で当接しており、シリンダ63の底面および内周面と、ピストン64の下面とにより囲まれた水導入室82内に、ピストン64を上方に付勢するピストン付勢体としてのスプリング69が配設される。また、シリンダ63の上面と継手68との間にも、継手68ひいてはスチーム開閉捧20を上方に付勢する継手付勢体としてのスプリング70が設けられる。回転子67は、操作釦65と連動して操作釦65の押動力をピストンに伝達するとともに、操作釦65をその動作下端にまで押し下げると、カセットタンク10内に形成した係合部(図示せず)に係合してロック状態となり、操作釦65ひいてはピストン64をその位置に保持するように構成している。このとき、継手68および継手68に連結するスチーム開閉棒20は、スプリング70の付勢に抗して下方に移動し、スチーム開閉棒20の下端部にある弁体66が流出孔23を閉塞して、カセットタンク10から気化室6への水の供給を遮断する。一方、回転子67がロックした状態から、操作釦65をさらに下方へ押込むと、回転子67とカセットタンク10内の係合部との係合状態は解除され、シリンダ63内にあるスプリング69の弾性反発力により、ピストン64ひいては回転子67および操作釦65が押し上げられ、元の位置に復帰する。当該動作の途中で、スプリング70の弾性反発力も作用して、継手68が押し上げられ、スチーム開閉棒20の下端部にある弁体66が、流出孔23を開放して、カセットタンク10から気化室6への水の供給を可能にする。このように、操作釦65の押動操作によって、弁体66による流出孔23の開閉すなわちドライとスチームの切換えを行なうように構成している。
ポンプ装置62の下方には、それぞれ水導入室82に連通する流入口83と流出口84が形成される。カセットタンク10内の水をシリンダ63内に取り入れる流入口83内には、スプリング付きの逆止弁71が設けられるとともに、シリンダ63から気化室6に水を送り出す流出口84内にも、別のスプリング付きの逆止弁85が設けられる。そして、回転子67がロック状態とならない範囲内で、操作釦65を途中まで押込むと、流入口83内の逆止弁71が閉じる代わりに、流出口84内の逆止弁85が開いて、水導入室82内の水が流出口84から気化室6に吐き出される一方、操作釦65から指を離すと、スプリング69の弾性反発力が作用して、ピストン64ひいては回転子67および操作釦65が押し上げられ、流出口84内の逆止弁85が閉じる代わりに、流入口83内の逆止弁71が開いて、カセットタンク10内の水が流入口83を介して水導入室82内に収容される。このように、回転子67がロック状態とならない範囲で操作釦65を操作する間は、ポンプ装置62を利用して、一時的に気化室6に多量の水を送り出す所謂増量スチームができるように構成されている。なお、前記スプリング70は、増量スチームと通常のスチーム・ドライ切換との誤動作をなくすため、スプリング68よりも荷重を大きく設定してある。なおここでは、アイロン本体1を水平状態にして使用するだけでなく、ハンガーなどに掛けたスーツなどの衣類に対し、アイロン本体1を略垂直にして、ポンプ装置62により衣類に増量スチームを噴射する使い方もある。
次に、図11のフローチャートに基づいて、上記構成のスチームアイロンにおける動作の説明をする。予め注水口蓋11から水をカセットタンク10内に収容するとともに、このカセットタンク10をハンドル9の前部から差し込むと、カセットタンク10の上面がスプリング14に抗してロック部15を押し上げ、最終的に凹部16にロック部が係止することで、カセットタンク10がアイロン本体1の所定位置にセットされる。次いで、ステップS1において、アイロン本体1を載置台52に載置した状態で、電源コード56をコンセント(図示せず)に差し込むと、載置台52の電源接点55からアイロン本体1内の温度制御装置42および蓄電装置45に電源が供給される。温度制御装置42においては、初期状態として切状態設定手段60による切状態の設定モードが先ず設定され、報知・表示制御手段61によって操作パネル38の「切」に対応するLED40が点灯する。なお、この切状態では、安全のためにヒータ2への通電は行なわない。その後、ステップS2において、設定釦39を押動操作すると、設定モードは「切」から「デリケート」,「低」,「中」,「高」の順に切換わり、これに対応するLED40が点灯する。そして、ステップS3にて、「切」以外の温度設定手段59の設定モードに切換わると、温度制御装置42によりヒータが通電される。以下、設定モードを「デリケート」に設定した場合について説明する。
温度制御装置42は、次のステップS4において、アイロン本体1が載置中であるか離脱中であるかをアイロン載置検知手段58により検知する。アイロン本体1が引き続き載置台52に載置される状態では、ベース3が温度設定手段59にて設定した温度に達するまで、ヒータ2によるベース3への加熱が行なわれる。「デリケート」設定は、耐熱温度100℃以下の繊維を対象としているため、当該ベース3の設定温度を100℃とし、温度検知手段57からの検知出力が100℃を超えている場合は、ヒータ2による加熱を停止する。このとき、温度制御装置42は、ベース3が設定温度100℃に近い適温範囲内であるか否かを、温度検知手段57からの検知出力により判断する(ステップS5)。そして、ベース3の温度が適温範囲を外れているときは、次のステップ6に移行して、設定温度に対応する温度表示部41のLED40を点滅状態にし、ブザー44による報知は行なわないようにして、ベース3が不適温状態であることを使用者に知らせる。一方、前記ステップS5において、ベース3の温度が適温範囲内にあるときには、ステップS7に移行して、設定温度に対応する温度表示部41のLED40を点灯状態にするとともに、ブザー44を一定時間鳴動させて、使用者にアイロン掛けが可能なことを報知する。そして、温度制御装置42は、アイロン本体1が載置台52に載置されている限り、ベース3の温度が適温範囲内に維持されるように、ヒータ2を通断電制御するとともに、ベース3の温度が適温か不適温であるかに拘らず、前述のステップS4の手順に戻る。
その後、ステップS4において、アイロン掛けのためにアイロン本体1を載置台52から離脱すると、載置台52からアイロン本体1側への電源供給が遮断され、ヒータ2は断電状態となる。温度制御装置42は、蓄電装置45からの給電により引き続き動作するが、次のステップS8において、ベース3の温度が適温範囲よりも下がったとき、或いは、設定釦39を操作することにより、温度設定手段59におけるそれまでよりも高温に切換わったときに、ブザー44或いはLED40を利用して、アイロン本体1の載置台52への載置を促す給電報知または表示を行なう。そして、その後はステップS4の手順に再び戻る。
アイロン掛けを行なう場合、アイロン本体1の空洞37から手を差し入れた後、ハンドル9の取手部35を掌で抱えるようにして握る。この際取手部35の後端部の幅を略中央部より徐々に広げるとともに、高さを下げることによりアイロン掛け最中に、アイロン本体1が手から抜け出ないようにしてある。また、ベース3の先端部に対する目視を良好にするために、カセットタンク10の前端面は、アイロン本体1の後方側に向けて比較的大きく倒れるように傾斜させてあるが、本参考例におけるカセットタンク10の両側は、十分な水量を収容できるだけの高さを確保してあるので、従来のような水タンクの容量不足を解消することが可能になる。
アイロン掛け中にドライ動作を行うには、図8に示すように、スプリング69,70の弾性に抗して、カセットタンク10内の係合部に回転子67が係合する位置まで、操作パネル38にある操作釦65を押し下げる。すると、操作釦65の動作下端で回転子67によりロックされ、他の回転子67,継手68およびピストン64なども操作釦65により押込まれた位置に保持される。この操作釦65を押し下げる動作中に、回転子67の下部に継手68が接して、継手68が下方に移動すると、継手68に連結するスチーム開閉棒20も下方に移動し、スチーム開閉棒20の下端部にある弁体66の下端が流出孔23を閉塞するとともに、弁体66の外周面が流出孔23より放射状に広がる円錐面を密着状態で閉塞する。これにより、カセットタンク10から弁装置17を経て気化室6に供給する水の通路が確実に遮断される。また、回転子67により操作釦65がロックされると、カセットタンク10内にあるピストン64も動かなくなるので、ポンプ装置62による気化室6への水の供給も遮断される。こうして、カセットタンク10から気化室6への水の供給が全て遮断され、噴出孔7からはスチームが噴出しないドライ動作となる。
一方、ドライ動作から通常のスチーム動作への切換えを行なうには、再度、操作釦65を押し下げて、回転子67による操作釦65のロック状態を解除する。こうすると、図9に示すようにシリンダ63内にあるスプリング69の弾性反発力が作用して、ピストン64が押し上げられるとともに、回転子67や操作釦65も同時に押し上げられる。回転子67によるロック状態の解除と連動して、継手68の下方にあるスプリング70が継手68を持ち上げ、流出孔23を開く方向に弁体66およびスチーム開閉棒20を操作する。これにより、ポンプ装置62は作動しないものの、カセットタンク10から弁装置17を経て気化室6に供給する水の通路が確保され、ヒータ2により気化室6で加熱された水が、噴出孔7からスチームとして噴出する。このときのスチーム量は、弁装置17による水の通過量で規定された通常のものとなる。
また、通常よりも多量のスチームを噴出孔7から一時的に噴出する増量スチーム動作は、図10に示すように、回転子67がロック状態とならない範囲内で操作釦65により、回転子67を介して、ピストン64をシリンダ63内でスプリング69の弾性反発力を利用して、摺動自在に操作することで行なわれる。具体的には、回転子67がロック状態とならない範囲内で、操作釦65を途中まで押込むと、流入口83内の逆止弁71が閉じるとともに、流出口84から気化室6に吐き出される。その後、操作釦65から指を離すと、スプリング69の弾性反発力が作用して、ピストン64ひいては回転子67および操作釦65が押し上げられ、流出口84内の逆止弁85が閉じる代わりに、流入口83内の逆止弁71が開いて、カセットタンク10内の水が流入口83を介して、水導入室82内に収容される。この操作釦65の操作を繰り返せば、ポンプ装置62を利用して、一時的に気化室6に多量の水を送り出すことができる。
以上のように本参考例では、アイロン本体1の下部に設けられた加熱手段たるヒータ2を有するベース3を備えたアイロンにおいて、熱伝導性の良い金属製プレートと当該金属製プレートより熱伝導性の劣る硬質の金属製プレートとのクラッド材からなるかけ面部材100を、かけ面102側を前記硬質の金属製プレートとしてベース3の下面に設けている。
このようにすると、かけ面102を硬質の金属製プレートとしているため、磨耗や傷に強いかけ面102とすることができる。また、かけ面部材100のうち熱伝導性の良い金属製プレートをベース3側にすることで、かけ面部材100にベース3の熱を効率よく伝達することができる。一方、かけ面102側を熱伝導性の劣る金属製プレートとすることで、かけ面102の温度変化を少なくすることができ、過度の熱で衣類を傷めたり、反対に温度低下によりアイロン掛けの効果が弱くなることがない。以上により、耐磨耗,耐傷付きに優れたアイロンを提供することができると共に、かけ面102の温度変化を少なくすることができる。
また本参考例では、アイロン本体1の下部に設けられた加熱手段たるヒータ2を有するベース3を備えたアイロンにおいて、熱伝導性の良い金属製プレートを当該金属製プレートより熱伝導性の劣る硬質の金属製プレートで挟み込んだ3層クラッド材からなるかけ面部材100を、ベース3の下面に設けている。
このようにすると、かけ面102を硬質の金属製プレートとしているため、磨耗や傷に強いかけ面102とすることができる。また、熱伝導性の良い金属製プレートを熱伝導性の劣る硬質の金属製プレートで挟み込んでいるため、アイロン掛けでの熱損失が少なくなると共に、かけ面102側が熱伝導性の劣る金属製プレートとなるので、かけ面102の温度変化を少なくすることができ、過度の熱で衣類を傷めたり、反対に温度低下によりアイロン掛けの効果が弱くなることがない。クラッド材を3層とすることにより、異種金属の接合によるひずみが緩和されるため、形状を安定させることができる。以上より、耐磨耗,耐傷付きに優れたアイロンを提供することができると共に、かけ面102の温度変化を少なくすることができる。また、アイロンの通電率を減らすことができるため、省エネとなると共に、かけ面部材100の形状を安定させることができる。
さらに本参考例では、かけ面部材100を構成する前記硬質の金属製プレートをステンレス鋼板としている。
このようにすると、硬質の金属製プレートを一般的なステンレス鋼板とすることによりコストを低く抑えることができる。従って、コストを掛けずに耐磨耗,耐傷付きに優れたアイロンを提供することができる。
また本参考例では、かけ面部材100を構成する前記熱伝導性の良い金属製プレートをアルミニウム又は銅としている。
このようにすると、熱伝導性の良い金属製プレートを一般的なアルミニウム,銅とすることによりコストを低く抑えることができる。従って、コストを掛けずに耐磨耗,耐傷付きに優れたアイロンを提供することができる。
まず、全体構成を図12乃至図14に基づき説明すると、3はアルミニウムダイカスト加工により形成されたベースであり、このベース3にヒータ2が埋設されていると共に、ベース3の外周部には後述するフランジ部110が形成される。またベース3の上面には気化室6が形成され、この気化室6に連通してベース3の下面に噴出孔7を形成したかけ面部材100が設けられている。かけ面部材100は、スポット等で取り付けられたねじ部(図示せず)をベース3に貫通させ、ベース3の上方より締結することでベース3に固着されている。そして、気化室6の上面に蓋体25が取り付けられている。
ベース3の上には遮熱板24が取り付けられ、この遮熱板24上にカバー8が設けられ、カバー8の上にハンドル9が結合され、このハンドル9に着脱自在なカセットタンク10が形成されている。カセットタンク10の前部には、注水口11aが形成され、この注水口11aに注水口蓋11が開閉自在に取り付けられている。そして、注水口11aからカセットタンク10内に水を収容し、かつ、カセットタンク10内の不用水を廃棄できるようになっている。
また、カセットタンク10の下部に気化室6に臨ませたノズル26が取り付けられ、このノズル26に対し、カセットタンク10と貫通した弁杆120が上下自在に設けられ、この弁杆120はコイルスプリング121により常時下降方向に付勢されている。ハンドル9は空洞37を有するU字状になっており、これによりアイロン本体1の上部前後方向に延びて位置する握り部としての取手部35を形成するものである。ハンドル9の上部には、操作パネル122が設けられると共に、ベース3の設定温度を変えるための操作手段に相当する設定釦39が設けられている。ハンドル9の内部にはヒータ2を適宜通断電することにより、ベース3を所定温度に制御する温度制御装置42が設けられている。カセットタンク10のロック機構としてハンドル9の一側にやや突出してタンクロック釦12が設けられており、このタンクロック釦12の操作に連動して上下動する昇降体13が、弾性部材たるスプリング14により常時下方に付勢されている。そして昇降体13の下部に突出したロック部15が、カセットタンク10の降面に上向きに形成された凹部16に係止する構成になっている。
次に、フランジ部110について詳述する。
図15は、アイロン本体1から外したベース3及びかけ面部材100を示したものである。フランジ部110は、ベース3の両側に羽を設けたような形で外周部に設けられ、その外周110aはかけ面部材100の外周100aと一致している。すなわち、フランジ部110は、当該かけ面を構成するかけ面部材100の形状を表す外周100aに沿って設けられている。フランジ部110は、ベース3とカバー8との隙間を覆うように、ベース3外周部からカバー8に向けて立設されており、前記隙間を少なくすることにより、カバー8ひいてはアイロン本体1内部への埃や異物の侵入を防ぐ。従って、ベース3にフランジ部110を設けることにより、アイロン本体1内部に具備された回路の損傷や短絡の虞を払拭することができる。また、フランジ部110の外周110aをかけ面部材100の外周100aに合わせることにより、ベース3とかけ面部材100との間に段差がなくなるため、衣類を傷つけにくくし、また外観上も良くすることができる。
一方で、フランジ部110は、ベース3の先端部3aには設けておらず、フランジ部110の稜線は、かけ面部材100の後方から一定の高さで立ち上がり、前方部に相当する、ベース3の先端部3aひいてはかけ面部材100の先端部100bへくるに従って低くなっていき、次第にベース3若しくはかけ面部材100の上面に一致していく。これは、かけ面部材100の先端部100bを用いてボタン周辺などの細かい部分をアイロン掛けする際に、フランジ部110が邪魔にならないよう意図されたものである。フランジ部110をベース3の先端部3aひいてはかけ面部材100の先端部100bへくるに従って低くすることにより、ボタン等の裏側などの細かい部分をアイロン掛けする場合でも、フランジ部110が邪魔にならず、スムーズにアイロン掛けすることができる。なお、かけ面部材100の外周100aにフランジ部110を設けてもよく、また本実施例はベース3とかけ面部材100とを別体にて構成しているが、ベース3とかけ面部材100を一体にしたものの外周部にフランジ部110を形成したものでもよい。
フランジ部110は、ベース3と一体に形成されているため、ベース3の熱により高温となる。そこで、ベース3にカバー8を取り付けた時、フランジ部110とカバー8とが接触しないように、両者の間に所定の隙間125が形成されるようにすることで、アイロン本体1内部の異常加熱を抑え、カバー8の溶損を防ぐようにしている。
以上のように本実施例では、アイロン本体1の下部に設けられた加熱手段たるヒータ2を有するベース3を備えたアイロンにおいて、ベース3の下面にかけ面部材100を設け、このかけ面部材100の外周100aに一致させて、ベース3にフランジ部110を設けている。
このようにすると、フランジ部110を設けてベース3とカバー8との隙間を少なくすることにより、アイロン本体1内部への埃や異物の侵入を防ぐことができるため、回路の損傷や短絡の虞を払拭することができる。フランジ部110は、ベース3の下面に設けられたかけ面部材100の外周100aに一致させて設けられているので、フランジ部110とかけ面部材100との間に段差がなくなるため、衣類を傷つけにくくし、また外観上も良くすることができる。以上により、外観を損なうことなく、アイロン本体1内への埃や異物の侵入を防ぐことが可能なアイロンを提供することができる。また、安全性が向上するため長期に亘って安全に使用することができる。
また本実施例では、フランジ部110とアイロン本体1の外郭部材としてのカバー8との間に隙間を設けている。
このようにすると、フランジ部110とカバー8とが接触しないように、両者の間に隙間125を設けることにより、アイロン本体1内部の異常加熱を抑え、カバー8の溶損を防ぐことができる。従って、使用時間が長い場合でも安全に使用することができる。
さらに本実施例では、フランジ部110は、かけ面部材100の先端部100bへくるに従って低くなっていくよう構成している。
このようにすると、フランジ部110をかけ面部材100の先端部100bへくるに従って低くすることにより、当該先端部100bを用いてボタン周辺などの細かい部分をアイロン掛けする場合でも、フランジ部110が邪魔にならず、スムーズにアイロン掛けすることができる。従って、使い勝手を損なうことなく安全性を向上することができる。
なお、本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更可能である。着脱式のカセットタンク10に限らず、上記ロック機構を備えていない固定式の水タンクであってもよい。また、水タンクを備えないドライ専用のアイロンであってもよい。また、コードレスアイロンに限らず、コード付きのアイロンであってもよい
本発明の第1実施例におけるアイロン本体の縦断面図である。
同上、アイロン本体を載置台に載置した状態の縦断面図である。
同上、アイロン本体の側面図である。
同上、アイロン本体の平面図である。
同上、かけ面部材をベースに取り付ける前の要部縦断面図である。
同上、電気的構成を示すブロック図である。
同上、アイロン本体の要部を示す縦断面図である。
同上、ドライ設定時におけるアイロン本体の要部を示す縦断面図である。
同上、スチーム設定時におけるアイロン本体の要部を示す縦断面図である。
同上、増量スチーム設定時におけるアイロン本体の要部を示す縦断面図である。
同上、動作手順を示すフロー図である。
本発明の第2実施例におけるアイロン本体の側面図である。
同上、アイロン本体の平面図である。
同上、アイロン本体の要部を示す縦断面図である。
同上、アイロン本体から外したベース及びかけ面部材を示す平面図である。
従来例におけるアイロン本体の平面図である。
符号の説明
1 アイロン本体(本体)
2 ヒータ(加熱手段)
3 ベース
8 カバー
100b 先端部(前方部)
110 フランジ部