JP2009017836A - 生菌の遺伝子検査方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】生菌選択性の高い生菌の遺伝子検査方法を提供する。
【解決手段】生菌を所定時間培養して得られる培養系から取得される試料と、該試料における前記生菌の培養開始時において前記生菌の増殖を停止又は抑制する処理を施した対照培養系から取得される対照試料とを準備して、これらについてそれぞれRNAを増幅対象とする逆転写PCRを実施し、増幅産物の生成量に関する増幅産物生成量情報に基づいて生菌の有無を検出するようにする。
【選択図】図1
【解決手段】生菌を所定時間培養して得られる培養系から取得される試料と、該試料における前記生菌の培養開始時において前記生菌の増殖を停止又は抑制する処理を施した対照培養系から取得される対照試料とを準備して、これらについてそれぞれRNAを増幅対象とする逆転写PCRを実施し、増幅産物の生成量に関する増幅産物生成量情報に基づいて生菌の有無を検出するようにする。
【選択図】図1
Description
本発明は、生きた菌(生菌)の遺伝子検査方法及びキットに関し、詳しくは、高感度でかつ再現性に優れた遺伝子検査方法に関する。
食中毒の原因菌の検査では、食品中の生きた病原細菌の検出が重要である。また、感染症患者由来被験試料中の病原菌の検査においては、治療に用いる抗菌剤の種類の決定や治療効果の判定においても、被験試料中の生きた病原細菌の検出が重要である。
生菌の検出法としては、従来より、培養に増殖させてコロニーを得たのち、適当な染色法等を用いて検出及び同定する方法がある。また、培養を要しない手法として、生菌と死菌とを蛍光色素で染め分ける方法も知られている(特許文献1)。
さらに、検査の迅速性及び検出感度の観点から、生菌が有するDNAなどの核酸に基づいてPCRを実施して生菌を検出する方法も開発されてきている(特許文献2)。なかでも、生菌が存在する可能性のある検体から時間を置いて試料を採取してこれらの複数の試料中のDNAに基づいて得られるPCR増幅量等を利用して生菌を検出する手法も開示されている(特許文献3)。
特開2000-201697
特開2003-038181
国際公開第WO2002/052034号パンフレット
PCR等を用いた生菌の遺伝子検査については、増幅対象としてDNAを含む以上、生菌のDNAと死滅菌のDNAとを区別できない。このため、遺伝子検査法については、迅速性、簡便性に優れるものの、死滅菌の検査を実施している可能性を否定することができなかった。
このような観点から、検体から時間差をおいて試料を採取し、PCRを実施するという上記特許文献3に記載の方法がある。すなわち、検体中に生菌が存在する場合、一定期間内におけるDNAの増加は細胞増殖に比例するため、しかるべき間隔をおいて同一検体から試料を採取し、その試料中のDNAに基づいてPCRを実施すれば、最初に採取した試料及び後に採取した試料中に存在したDNA量に比例したPCR増幅結果が得られるため、これらの増幅結果を対比して、後採取試料におけるPCR産物量が増大していれば生菌が存在することを検出できる。
しかしながら、本発明者らによれば、時間差を置いて検体から採取した試料中のDNAのPCR増幅結果に基づいて生菌を検出するには、6時間以上の時間差が必要であり、特に、検体中に少数存在する生菌の判定には十分な感度と精度が得られないことがわかった。
また、上記特許文献2の方法では、染め分けによる蛍光を顕微鏡下で確認するには10e5細胞以上が必要で、臨床検体等における生菌検出には感度が十分でなかった。
加えて、医療現場における臨床検査においては、以下のような具体的問題点があった。すなわち、血液検体では、血液には通常死菌及び破壊した菌の核酸が流れており、PCR法などDNA増幅ではこれらの核酸を検出して、本来の生菌の存在の有無が極めて困難であり遺伝子検査の導入の障害になっていた。一方、従来の培養法によれば、1月以上かかってしまっている。さらに、薬剤選択にあたって薬剤感受性を判定する場合、培養方法では108cuf/ml,106cfu/mlの菌液を薬剤を入れた培地にいれ、4-18時間培養で判定する方法が実施されているが、結果が出るまでに時間がかかってしまっていた。
また、環境検査関連では、以下のような問題があった。すなわち、風呂水や冷却塔水にあっては、しばしば死菌が含まれ、高温処理、消毒薬で処理した水の安全性の確認に生菌の確認が必要なため、培養法を採用せざるを得なかった。
さらに、食品検査関連では、加工食品、加熱食品、保存食、牛乳の瞬間殺菌処理後の菌の生死判定が要請されているなか、蛍光顕微鏡あるいはフローサイトで測定する蛍光染色法が開発されているが、一般に106cfu/ml以上の菌数を必要としており、高感度ではなかった。
したがって、現状において、生菌に選択的であって、迅速性及び良好な精度・再現性を備えて高感度な生菌の検査方法は未だ遺伝子検査法が要請されている。
そこで、本発明は、生菌選択性の高い生菌の遺伝子検査方法を提供することを一つの目的とする。また、本発明は、迅速性及び良好な精度・再現性を備えて高感度な生菌の遺伝子検査方法を提供することを他の一つの目的とする。さらに、本発明はこうした遺伝子検査方法の利用を提供することをさらに他の一つの目的とする。
本発明者らは、PCRの増幅結果に時間差の影響が出にくいのは、試料中における死滅菌由来のDNAによるものと考え、増殖中の微生物細胞内でコピー数が極めて大量となるRNAをPCRの増幅対象とし、RNAを増幅対象とすることで、迅速にかつ高感度に生菌を検出できるという知見を得た。また、本発明者らは、培養後の生菌由来のRNA量を反映するRT-PCR増幅結果に対するコントロール(培養時間ゼロ試料)に対して一定の処理を行うことで、RT-PCRのための処理時間内に意図せず増殖等してしまった生菌由来のRNAの影響やRT-PCR時の操作誤差の影響を回避又は抑制して、高感度で迅速かつ精度の高い生菌の遺伝子検査が可能となるという知見を得た。本発明者らは、これらの知見に基づいて以下の発明を完成した。
本発明によれば、生菌の遺伝子検査方法であって、前記生菌を所定時間培養して得られる培養系から取得される試料と、該試料における前記生菌の培養開始時において前記生菌の増殖を停止又は抑制する処理を施した対照培養系から取得される対照試料と、を準備する試料準備工程と、前記試料と前記対照試料とについてそれぞれRNAを増幅対象とする逆転写PCRを実施する増幅工程と、前記増幅工程で得られたそれぞれの試料における増幅産物の生成量に関する増幅産物生成量情報に基づいて前記生菌の有無を検出する検出工程と、を備える、検査方法が提供される。
この検査方法においては、前記試料準備工程は、前記培養系における前記生菌の培養開始時から培養終了までの間前記生菌の増殖を停止又は抑制する処理を施した対照培養系から前記対照試料を準備する工程とし、前記増幅工程は、前記試料及び前記増殖抑制試料について同時期的に逆転写PCRを実施する工程とすることができる。
また、前記試料準備工程は、前記生菌の増殖を抑制又は停止する処理として低温処理及び静菌剤による処理のいずれかから選択される処理を実施する工程とすることができる。さらに、前記試料準備工程は、1時間以上4時間以下培養した培養系由来の試料を準備する工程とすることができ、より好ましくは1時間以上3時間以下、さらに好ましくは1時間以上2時間以下とすることができる。
また、前記増幅工程は、逆転写PCRにより得られる増幅産物に基づくシグナルを逐次検出する工程であり、前記検出工程は、前記増幅工程における前記シグナルの変化量を前記増幅産物生成量情報として利用する工程とすることができる。
さらに、前記増幅工程は、2種類以上の生菌由来のRNAを同時に増幅対象として逆転写PCRを実施する工程であり、前記検出工程は、2種類以上の前記生菌を含む可能性のある検体中の1種又は2種以上の生菌の有無を検出工程とすることができる。
本検査方法は、臨床検査検体、環境検査検体及び食品検査検体から選択されるいずれかの検体中の生菌の検査方法とすることができる。
本発明によれば、薬剤感受性の測定方法であって、生菌を所定時間培養して得られる対照培養系から取得される対照試料と、前記生菌に対して薬剤による処理を施した状態で前記所定時間培養して得られる培養系から取得される試料と、を準備する試料準備工程と、前記試料と前記増殖抑制試料とについてそれぞれRNAを増幅対象とする逆転写PCRを実施する増幅工程と、前記増幅工程で得られたそれぞれの試料における増幅産物の生成量に関する増幅産物生成量情報に基づいて前記生菌の前記薬剤に対する感受性を測定する測定工程と、を備える、測定方法が提供される。前記生菌は、血液や痰などの生体由来の臨床検体中の1種又は2種以上の生菌を用いることができる。
本発明の遺伝子検査方法は、生菌を所定時間培養した培養系由来の試料と、前記生菌の培養開始時において増殖を停止又は抑制する処理を施した対照試料とについて、増幅工程においてそれぞれの試料中のRNAを増幅対象とする逆転写PCRによる増幅産物が取得され、検出工程においてそれぞれの試料における増幅産物の生成量に関する増幅産物生成量情報に基づいて前記生菌の有無が検出される。本検査方法では、培養液由来の試料中のRNAを増幅対象としており、RNAは増殖初期において数千倍程度までコピー数が増加するため、より短い培養時間においても効果的に微量の生菌を選択的に検出することができる。さらに、対照試料として、生菌の増殖を停止又は抑制した対照試料を用いることで、試料調製操作時間中において増殖してしまった生菌由来のRNAの影響を排除することができるとともに、処理時間のバラツキによるRNA量の変動(増えたり分解により減ったりする)の影響も排除することができる。すなわち、本検査方法においては、測定対象とすべきでない生菌の影響が効果的に排除されている。
以上のことから、本発明の遺伝子検査方法によれば、生菌に対して選択的であり、しかも、微量の生菌であっても高感度に、精度よく、迅速に検出することができる。さらに、本検査方法ではPCR工程において、検出しようとする生菌特異的なプライマーを利用することで生菌の検出と同時に生菌を同定できる。
以下、本発明の具体的効果を図を参照して説明する。図1は、検体中に死滅菌が多く生菌が少ない場合における従来法(PCR)と本検査法とを対比する図であり、図2は、検体中に生菌数が少ない場合の従来法(PCR)と本検査法とを対比する図である。
図1は、検体中に菌(死滅菌)が多い場合における従来法(PCR)と本検査法とをPCRサイクルを横軸に増幅産物のシグナルを縦軸にしたグラフ図(増幅曲線)にて対比する図である。なお、従来法及び本検査法のいずれについても2時間培養した。検体中のDNAを増幅対象とするPCR法により生菌を検出しようとする場合、図1に示すように、培養前であってもPCR陽性となり、しかも培養後と実質的な差を得ることができない。したがって、生菌の判定には、相当長い培養時間が必要になる。これに対して、本検査法によれば、明確に増幅曲線に差を得ることができる。これは増殖中にRNAのコピーが菌体一個あたり数千倍に増加するためと考えられる。
図2は、検体中に生菌が少ない場合における従来法(PCR)と本検査法とをPCRサイクルを横軸に増幅産物のシグナルを縦軸にしたグラフ図(増幅曲線)にて対比する図である。なお、従来法及び本検査法のいずれについても2時間培養した。図2に示すように、検体中の生菌数が少ない場合でも、本検査法では、2時間の培養で増幅曲線に明確な差が出る。
以上のように、本発明によれば、RNAを増幅対象とすることで、より短時間の培養で生菌の増殖をいち早く捕らえて生菌を選択的に検出することができる。そして、培養により増殖した生菌を選択的に検出するための所定の処理をした対照試料を用いることで、短時間の培養であっても高精度かつ高感度に生菌を検出することができる。以下、本発明の各種実施形態について詳細に説明する。
(遺伝子検査方法)
本発明の検査方法は、生菌の有無を検出する方法であるほか、生菌の種類(属や種)を同定するものとすることができる。検査対象となる生菌の検査レベル(生きているか否か、生菌の属、種及び株の同定をするかどうか)は、増幅工程で用いるプライマー等の選択により適宜設定することができる。
本発明の検査方法は、生菌の有無を検出する方法であるほか、生菌の種類(属や種)を同定するものとすることができる。検査対象となる生菌の検査レベル(生きているか否か、生菌の属、種及び株の同定をするかどうか)は、増幅工程で用いるプライマー等の選択により適宜設定することができる。
(試料準備工程)
本検査方法の試料準備工程は、生菌を所定時間培養して得られる培養系から取得される試料と、該試料における生菌の培養開始時において生菌の増殖を停止又は抑制する処理を施した対照培養系から取得される対照試料とを準備する工程である。ここで、生菌は、菌体そのものであってもよいが、1種又は2種以上の生菌を含有する可能性のある検体又は検体から採取した細胞画分としてもよい。また、検体は、特に限定しないで、各種の生菌検出要請のあるものであればよい。
本検査方法の試料準備工程は、生菌を所定時間培養して得られる培養系から取得される試料と、該試料における生菌の培養開始時において生菌の増殖を停止又は抑制する処理を施した対照培養系から取得される対照試料とを準備する工程である。ここで、生菌は、菌体そのものであってもよいが、1種又は2種以上の生菌を含有する可能性のある検体又は検体から採取した細胞画分としてもよい。また、検体は、特に限定しないで、各種の生菌検出要請のあるものであればよい。
本検査方法における試料は、生菌を適切な培地で所定時間培養して得られる培養系から菌体を破砕して得られる画分あるいはさらにそのなかの核酸画分とすることができる生菌を培養するための培地は特に限定されない。存在可能性のある生菌が増殖可能なものであればよい。培地は液体培地であっても固体培地であってもよいが、好ましくは液体培地である。
培養時間は、特に限定しない。通常、適切な培養時間は、菌の種類によって異なる。したがって、予め、試料を得るのに適切な培養時間を設定しておくことが好ましい。本検査方法によれば、RNAを増幅対象としかつ所定処理した対照試料を利用するため、1時間以上4時間以下培養するだけでも適切な試料、すなわち、対照試料の増幅曲線等と区別可能な程度の生菌由来のRNAを得ることができる。より好ましくは、1時間以上3時間以下であり、さらに好ましくは1時間以上2時間以下である。
本検査方法における対照試料は、試料を調製するのにあたって生菌の培養を開始した時点において、同時に同じ生菌に対してその増殖を停止又は抑制する処理をほどこして得られる対照培養系に由来している。対照試料は、換言すれば、培養時間が0時間試料である。本検査方法において、対照試料の準備にあたり、このような態様で生菌の増殖を停止又は抑制するのは、検出対象を生菌とし、増幅対象をそのRNAとする以上、0時間試料においてその後の処理時間中に少しでも生菌が増殖すると一挙にRNAが増加し、対照試料としての意味をなさなくなり、試料における増幅曲線と区別が困難になるからである。すなわち、生菌の検出感度も低下し、精度及び再現性も低下するからである。対照培養系には、増殖抑制処理がなされる以外は、培養系と同一組成の培地を用いるなど同一の条件が適用されることが好ましい。
従来は、培養時間0時間の対照試料であっても、菌体破壊の操作までは生菌が増殖できるため、培地中で生菌が増殖開始してしまうと短時間でもRNAが一挙に増大してしまい、培養時間0時間試料としての意義がなくなっていたが、本検査方法によれば、このような意図しない生菌の増殖を抑制できるため、高い検出感度で微量の生菌を精度よく検出できる。
生菌の増殖を停止又は抑制する処理は、試料の取得源である検体から採取された一部に対して実施することが好ましい。そして、対照試料として意義あらしめるためには、試料についての培養開始と同時に増殖停止又は抑制処理を施すことが好ましい。
増殖の停止又は抑制処理としては、特に限定しないが、その後の増幅工程に悪影響を与えない処理であればよい。例えば、生菌が増殖できない程度の凍結しない温度であってかつ4℃以下の低温で保管する低温処理としてもよいし、抗菌剤や防腐剤等の適当な静菌剤を用いてもよい。このような静菌剤としては、例えば、アジ化ナトリウムが挙げられる。アジ化ナトリウムは入手容易性等の観点から好ましく用いることができる。
増殖抑制処理の簡便さからは低温処理が好ましいが、低温処理の場合、その後の菌体破砕処理も低温で行わないと菌体が増殖を開始する可能性があるため、その点において操作上の不都合がある。これに対し、薬剤を用いる増殖抑制処理にはそのような不都合はない。
対照培養系では、試料を準備するときの生菌培養開始時において増殖抑制処理を行う。このため、当該処理後、試料の培養終了を待たずに、ただちに増殖抑制処理後の対照培養系から対照試料を調製してもよい。好ましくは、対照培養系においても、試料における生菌の培養開始時から培養終了までの間、生菌の増殖を停止又は抑制する処理を継続的に施すようにする。こうすることで、培養系の培養終了時期に合わせて対照培養系を準備できるからである。対照培養系においては、培養期間中、継続的に生菌の増殖が停止又は抑制されているため、培養時間0時間のコントロールとして成立している。このようにして培養系の培養期間中も静菌処理を継続しておくことで、培養系における培養終了後、培養系と対照培養系とを同様に菌体破砕処理し、同様にその後の各種の操作を行って同様の条件で試料及び対照試料を準備することができる。この結果、試料及び対照試料の調製にあたっての、人的条件(熟練度やくせ)、周辺環境条件(温度や湿度等)、薬剤鮮度、処理時間等の各種の面においてのバラツキを抑制できる。そして、こうした処理操作のバラツキによるRNAの分解等による試料中のRNA含有量のバラツキを効果的に抑制又は回避できる。RNAは極めて不安定であるため、試料と対照試料における処理操作の同質性や同時性が極めて重要となる。以上のことから、培養系における培養終了時まで増殖抑制処理を継続させた対照培養系から対照試料を調製し、好ましくは、培養系からの試料の調製と同時期的に対照試料を調製することは、各種面からのバラツキ要因を排除して、検出の精度や再現性の優れた生菌検査を可能とする。
こうして同時期的に取得した試料と対照試料については、後段の増幅工程についても同時期的に行うことが好ましい。増幅工程においても各種面において大きなバラツキ要因が存在するためであり、同時期的に増幅工程を実施することで、確実に検出感度及び精度・再現性に優れた検査が可能となる。
なお、低温処理により生菌の増殖を停止又は抑制して得た対照試料は、低温で菌体破砕処理を行うことが好ましい。常温での環境下に戻した際に一挙に増殖が開始される可能性があるからである。この点、薬剤により増殖抑制処理した場合には、培養期間中の保存及び破砕処理等も常温で可能であるため使用性がよい。
(増幅工程)
増幅工程は、試料と対照試料とについてそれぞれRNAを増幅対象とする逆転写PCRを実施する工程である。増幅工程では、逆転写PCRにより、RNAを増幅対象とし、cDNAを増幅産物として取得する。なお、増幅対象とするRNAは、mRNA又はrRNAである。いずれとするかは、検出しようとする生菌の特異性等に基づいて選択される。また、逆転写PCRの実施のためのプライマーは、検体中に存在する可能性のある生菌に特異的であり、好ましくは菌種が同定可能なプライマーを用いることで、生菌の検出と同時に生菌の同定も可能となる。
増幅工程は、試料と対照試料とについてそれぞれRNAを増幅対象とする逆転写PCRを実施する工程である。増幅工程では、逆転写PCRにより、RNAを増幅対象とし、cDNAを増幅産物として取得する。なお、増幅対象とするRNAは、mRNA又はrRNAである。いずれとするかは、検出しようとする生菌の特異性等に基づいて選択される。また、逆転写PCRの実施のためのプライマーは、検体中に存在する可能性のある生菌に特異的であり、好ましくは菌種が同定可能なプライマーを用いることで、生菌の検出と同時に生菌の同定も可能となる。
逆転写PCRについては、逆転写工程とcDNA合成工程とを同時に実施するワンステップ型と別々に実施するツゥーステップ型とがある。いずれであってもよい。操作の簡便性からはワンステップ型である。また、逆転写PCRは、増幅と同時に定量的に増幅産物を検出できるものであることが好ましい。このような逆転写PCRは定量的逆転写PCRと呼ばれており、例えば、リアルタイム逆転写PCR等として種々のキットや装置が商業的に入手可能であり、これらを適宜選択して用いることができる。なお、逆転写PCRをツゥーステップで行う場合には、cDNA合成工程を定量的PCR(リアルタイムPCR)で行うことができる。
典型的な定量的逆転写PCRでは、逆転写PCRにより得られる増幅産物に基づくシグナル(増幅産物生成量情報)を逐次検出するようになっている。すなわち、定量的逆転写PCRでは、増幅されたcDNAに選択的な各種の検出試薬が増幅反応系内において準備されており、これらの検出試薬によって増幅されたcDNAがシグナル化されるようになっている。検出試薬は、蛍光試薬やインターカレーションを利用したものが通常用いられている。そして、PCR反応サイクルの進行又は反応時間の進行に伴って増幅産物が増量してくると、この増量した増幅産物を蛍光シグナルとして検出できるようになる。そして、蛍光シグナルをモニターすることで、横軸にPCRサイクル数(反応時間)をとり、縦軸に増幅産物のシグナル強度をとることで、増幅曲線を得ることができる。このような増幅曲線は、後段の検出工程において便利に用いることができる。
なお、増幅工程においては、不安定なRNAについて検出感度及び精度・再現性のよい検査を実現する観点から、試料と対照試料とについて同時期的に逆転写PCRを実施することが好ましい。
(検出工程)
検出工程は、それぞれの試料における増幅産物の生成量に関する増幅産物生成量情報に基づいて前記生菌の有無を検出する工程である。増幅産物生成量情報とは、既に説明した定量的逆転写PCR法におけるシグナルに限定するものではない。通常の逆転写PCRで得られた増幅産物の生成量自体あるいはそれをシグナル化したものであればよい。したがって、特定cDNAを定量的に取得できるものであればよい。プローブを用いたアレイやビーズ等によってもシグナル化して定量することが可能である。増幅産物生成量情報としては、公知の各種手法に基づく情報を用いることができるが、検出の迅速性の観点からは、定量的逆転写PCRや定量的PCRにおける増幅産物に基づくシグナルを用いることが好ましい。
検出工程は、それぞれの試料における増幅産物の生成量に関する増幅産物生成量情報に基づいて前記生菌の有無を検出する工程である。増幅産物生成量情報とは、既に説明した定量的逆転写PCR法におけるシグナルに限定するものではない。通常の逆転写PCRで得られた増幅産物の生成量自体あるいはそれをシグナル化したものであればよい。したがって、特定cDNAを定量的に取得できるものであればよい。プローブを用いたアレイやビーズ等によってもシグナル化して定量することが可能である。増幅産物生成量情報としては、公知の各種手法に基づく情報を用いることができるが、検出の迅速性の観点からは、定量的逆転写PCRや定量的PCRにおける増幅産物に基づくシグナルを用いることが好ましい。
生菌の有無の判定手法は特に限定しないが、対照試料の増幅産物生成量と試料の増幅産物生成量に有意な差があるかどうかで判定することができる。こうした判定の際には、定量的逆転写PCRを用いた得られた増幅曲線のCP値(Crossing Point Value)を用いることが好ましいCP値は、増幅曲線においてもっとも大きいシグナル変化量示すときのPCRサイクル数である。
以上の本検査方法においては、増幅工程において、2種類以上の生菌由来のRNAを同時に増幅対象として逆転写PCRを実施し、検出工程において、2種類以上の前記生菌を含む可能性のある検体中の1種又は2種以上の生菌の有無を検出するようにしてもよい。こうすることで、存在する可能性のある生菌について一挙に生菌検査を実施でき、従来までの手法を一挙に効率化できる。このためには、増幅工程において、互いに干渉せずしかも検出しようとする菌(菌種)に特異的なプライマーセットを用いる。
(用途)
以上のことから、本検査方法は、臨床検査検体、環境検査検体及び食品検査検体から選択されるいずれかの検体中の生菌の検査方法として利用できる。
以上のことから、本検査方法は、臨床検査検体、環境検査検体及び食品検査検体から選択されるいずれかの検体中の生菌の検査方法として利用できる。
(臨床検査用途)
臨床検査検体としては、特に限定されない。例えば、ヒト及び非ヒトから採取された血液由来検体;唾液;汗、尿、便及び痰等の排泄物検体;その他の体液等由来検体が挙げられる。また、検出対象とする生菌も特に限定されないが、通常、各種病原菌等である。臨床用途の場合、特に、結核の治療中に数ヶ月間、排菌が続くが、死菌であるかどうかの判定がいるので、1か月の培養結果をみて退院を判断するため退院が長引くが、本発明の検査方法によれば、1−2時間で判定できるので1日で退院判定できるというメリットがある。また、従来、死滅菌等の混在により生菌の検出が困難であったが、本検査方法によれば、確実に迅速に生菌を検出できる。例えば、従来、血液の遺伝子検査では血液培養を1〜数日おこなって菌の増殖の有無を判定した後同定作業を行っていたが、本検査方法によれば、2時間培養で、コントロールと比較し、明らかに増殖がみられれば生きた菌がいたことになるため、次の同定作業に迅速に対応できる。すなわち、本検査方法は、患者の治療に十分な貢献ができる。
臨床検査検体としては、特に限定されない。例えば、ヒト及び非ヒトから採取された血液由来検体;唾液;汗、尿、便及び痰等の排泄物検体;その他の体液等由来検体が挙げられる。また、検出対象とする生菌も特に限定されないが、通常、各種病原菌等である。臨床用途の場合、特に、結核の治療中に数ヶ月間、排菌が続くが、死菌であるかどうかの判定がいるので、1か月の培養結果をみて退院を判断するため退院が長引くが、本発明の検査方法によれば、1−2時間で判定できるので1日で退院判定できるというメリットがある。また、従来、死滅菌等の混在により生菌の検出が困難であったが、本検査方法によれば、確実に迅速に生菌を検出できる。例えば、従来、血液の遺伝子検査では血液培養を1〜数日おこなって菌の増殖の有無を判定した後同定作業を行っていたが、本検査方法によれば、2時間培養で、コントロールと比較し、明らかに増殖がみられれば生きた菌がいたことになるため、次の同定作業に迅速に対応できる。すなわち、本検査方法は、患者の治療に十分な貢献ができる。
(環境検査用途)
環境検査検体としては、特に限定されない。例えば、飲料水、風呂水、冷却塔水、井戸水、地下水、ろ過水、漏出水、雨水、河川水、海水等の水系検体や土壌等の検体が挙げられる。こうした検体にも死滅菌が多く含まれるとともに、生菌数が少ない傾向にあるため、従来は培養法を採用するしかなかったが、本発明の検査方法によれば、多くの死滅菌の影響なく少数の生菌を検出できるため、迅速にかつ精度よくこれらの検体の生菌を検出することができる。特に、フィルター等によるろ過、高温処理、消毒薬で処理した水の安全性の確認に有用である。
環境検査検体としては、特に限定されない。例えば、飲料水、風呂水、冷却塔水、井戸水、地下水、ろ過水、漏出水、雨水、河川水、海水等の水系検体や土壌等の検体が挙げられる。こうした検体にも死滅菌が多く含まれるとともに、生菌数が少ない傾向にあるため、従来は培養法を採用するしかなかったが、本発明の検査方法によれば、多くの死滅菌の影響なく少数の生菌を検出できるため、迅速にかつ精度よくこれらの検体の生菌を検出することができる。特に、フィルター等によるろ過、高温処理、消毒薬で処理した水の安全性の確認に有用である。
(食品検査用途)
食品検査検体としては、特に限定されない。例えば、食品、加熱、加工食品、保存食、牛乳等の飲料、調理品、生鮮食料品、菓子類等が挙げられる。特に、殺菌済み食品が好ましい。こうした検体にも死滅菌が多く含まれるとともに、生菌数が少ない傾向にあるため、従来は培養法を採用するしかなかったが、本発明の検査方法によれば、多くの死滅菌の影響なく少数の生菌を検出できるため、迅速にかつ精度よくこれらの検体の生菌を検出することができる。したがって、生産や流通に影響なく確実な食品管理が可能となる。
食品検査検体としては、特に限定されない。例えば、食品、加熱、加工食品、保存食、牛乳等の飲料、調理品、生鮮食料品、菓子類等が挙げられる。特に、殺菌済み食品が好ましい。こうした検体にも死滅菌が多く含まれるとともに、生菌数が少ない傾向にあるため、従来は培養法を採用するしかなかったが、本発明の検査方法によれば、多くの死滅菌の影響なく少数の生菌を検出できるため、迅速にかつ精度よくこれらの検体の生菌を検出することができる。したがって、生産や流通に影響なく確実な食品管理が可能となる。
(薬剤感受性測定法)
本発明の薬剤感受性の測定方法は、前記生菌を所定時間培養して得られる対照培養系から取得される対照試料と、前記生菌に対して薬剤による処理を施した状態で前記所定時間培養して得られる培養系から取得される試料と、を準備する試料準備工程と、前記試料と前記対照試料とについてそれぞれRNAを増幅対象とする逆転写PCRを実施する増幅工程と、前記RNA増幅工程で得られたそれぞれの試料における増幅産物の生成量に関する増幅産物生成量情報に基づいて前記生菌の前記薬剤に対する感受性を測定する測定工程と、を備えることができる。
本発明の薬剤感受性の測定方法は、前記生菌を所定時間培養して得られる対照培養系から取得される対照試料と、前記生菌に対して薬剤による処理を施した状態で前記所定時間培養して得られる培養系から取得される試料と、を準備する試料準備工程と、前記試料と前記対照試料とについてそれぞれRNAを増幅対象とする逆転写PCRを実施する増幅工程と、前記RNA増幅工程で得られたそれぞれの試料における増幅産物の生成量に関する増幅産物生成量情報に基づいて前記生菌の前記薬剤に対する感受性を測定する測定工程と、を備えることができる。
本測定方法によれば、本発明の検査方法と同様の効果を、菌の薬剤感受性の測定について得ることができる。すなわち、生菌の薬剤感受性を、迅速に、高感度及び高精度に測定することができる。臨床現場においてこうした薬剤感受性の測定ができれば、早期に適切な薬剤の選択が可能であり、患者及び医療経済の双方にとって有用である。なお、ここで薬剤感受性とは、薬剤選択に関連する菌の感受性を含む概念である。したがって、薬剤抵抗性(耐性)も含むことができる。
本測定方法の試料準備工程、増幅工程及び検出工程については、既に説明した本発明の検査方法の各工程における実施態様をそのまま適用することができる。なお、本測定方法は、生菌の薬剤に対する感受性、すなわち、生菌が薬剤に対して抵抗性があるか薬剤により増殖が抑制されるかを検出するものであるため、薬剤を含む培養系から試料を取得し、薬剤が供給されない対象培養系から対照試料を取得する。したがって、本測定方法の試料準備工程における対照試料は、本検査方法における試料に相当し、本測定方法における試料は本検査方法における対照試料に相当している。よって、本検査方法の実施態様を本測定方法に適用するのにあたっては、上記の試料の対応関係に基づくものとする。
本測定方法においては、検体としては、患者から採取した血液、尿や痰等の排泄物、滲出液、腹腔内液等の各種体液、細胞、組織等が挙げられる。測定方法にあたっては、こうした検体をそのまま試料準備工程に供してもよいが、検体から菌体画分を採取しこれを試料準備工程に供してもよい。
本測定方法によれば、一つの検体を分離して使用し、それぞれ異なる薬剤の存在下生菌を培養して培養系を取得し、この培養系から試料を取得する。そうすることで、同時に迅速に複数種類の薬剤感受性を測定できる。すなわち、検出工程において、試料の生菌の増殖が抑制されているほど、すなわち、増幅に時間を要するほど、その生菌が用いた薬剤に対して有効であると判定できる。また、試料の生菌の増殖が抑制されていないときには、その生菌はその薬剤に対して抵抗性があると判定できる。
以下、本実施例について説明する。以下の実施例は本発明を具体的に説明したものであって本発明を限定するものではない。
本実施例では、RNA試料の作製手法の再現性を評価した。すなわち、培地に生菌(サルモネラ・エンテリカATCC13076)を接種後、4C保存、あるいは防腐剤入りの培地に入れたコントロールを準備し2時間後に同時に核酸を抽出し、リアルタイムRT-PCRを実施するプロトコールを実施した。合計14回の実験を行った。各実験で得られた増幅曲線を結果を図3に示す。
図3に示すように、実験ごとの誤差は標準偏差1.42に収まっており、上記プロトコールによれば、再現性に優れる結果が得られることがわかった。
さらに図4に示すプライマーを使用し、10種類の細菌の精製DNAを10倍濃度の連続希釈液を作製し、濃度とPCRのサイクルの実測値を計測した。DNA濃度とCP値の実測値を図5に示し、サルモネラ・エンテリカATCC13076についての増幅曲線を図6に示し、DNA濃度の10倍濃度さとPCRサイクルとの関係を図7に示す。
図5〜図7に示すように、10倍の濃度の違いがPCRサイクルでは理論値は3−4の増幅サイクルの違いに相当するが、実測値でも図7のように、3.63-4.53サイクル(平均4.05、標準偏差0.28)であることがわかった。以上のことから、CP値がPCRの6サイクル以上(遺伝子量で26=64倍以上)の遺伝子の増幅の違いがあれば菌が明らかに増殖していると判断できるとした。
本実施例では、培養に3-7日かかるレジオネラ菌の生死判定を120分の短時間培養で判定できることを確認した。
冷却塔の水は定期的に消毒し、レジオネラ菌数を10個/100ml以下に押さえることが基準で定められている。その確認のために培養検査を行う場合、水を濃縮し、濃縮液を3-7日培養して菌数を計測するのが一般的である。この方法を遺伝子で行うと消毒薬で死滅した菌を検出する可能性が出てくる。そこで濃縮した菌液(200個/ml相当)1mlを防腐剤(アジ化ナトリウムが0.5%)入ったBCYE brothと防腐剤抜きのBCYE broth 5mlにそれぞれ摂取し培養した。2時間後、PCR、およびRT-PCRを実施した。使用した菌株及びプライマーは以下のとおりであった。
使用菌株: Legionella pneumophila ATCC 33152
使用プライマー:5-ATACGACTCACTATAGGGCCITCACCCCACCAACT(配列番号24)
:5-TAGCAGGATCCCTCTAAGGACAACTTGGGGAAACTCAAG(配列番号11)
共通プライマー:5-TAGCAGGATCCCTCTAAG(配列番号13)
:5-ATACGACTCACTATAGG(配列番号26)
使用菌株: Legionella pneumophila ATCC 33152
使用プライマー:5-ATACGACTCACTATAGGGCCITCACCCCACCAACT(配列番号24)
:5-TAGCAGGATCCCTCTAAGGACAACTTGGGGAAACTCAAG(配列番号11)
共通プライマー:5-TAGCAGGATCCCTCTAAG(配列番号13)
:5-ATACGACTCACTATAGG(配列番号26)
培養液の上澄み100μlを、100℃で3分加熱し2μlをPCRに使用した。PCRは以下の条件で行った。すなわち、PCR反応液を以下の組成で調製し、95℃30秒1回、95℃1秒、60℃1秒、72℃7秒を50回、PCR反応を行った。なお、反応には、ロッシュのlight cyclerを使用した。また、RT-PCRは核酸液10μl、逆転写酵素キット(アプライドバイオ社製)を使用し、37℃、15分間、RT反応を実施した。その後、2μlを上記PCRと同じ条件でPCRに使用した。これらの結果を図8に示す。図8左図はPCRによる増幅曲線を示し、図8右図は、RT-PCRの増幅曲線を示す。
PCR:2μl DNA液,
5μlの4x16S rDNA増幅用上記Legionella primersおよび共通プライマー
10μl2xSYBR premix EXTaQ(宝バイオ)
3μl dH2O
PCR:2μl DNA液,
5μlの4x16S rDNA増幅用上記Legionella primersおよび共通プライマー
10μl2xSYBR premix EXTaQ(宝バイオ)
3μl dH2O
図8に示すように、PCR法では0,2時間で明確な遺伝子増幅の差が見られなかったが、RT-PCR法では10倍以上の遺伝子の違いが見られた。すなわち、防腐剤が入っていない培地ではCP 値=29.34(n=4)、防腐剤入り培地ではCP値=41.92(n=4)で12.6サイクルの違いが見られた。これらの結果から、RNAを増幅対象とすれば、適切な静菌処理を施すことで培養前後において明確な増幅曲線の相違を検出できることがわかった。
本実施例では、抗菌剤の入った培地で結核菌を培養し、4時間で薬剤感受性を判定できることを確認した。すなわち、Myco broth(極東)にrifampicin、INHをいれ、多剤耐性結核菌を培養した。100個相当の結核菌が4時間で増殖していることが判定した。
小川培地に発育した結核菌GTC17821株を1集落とり、抗菌剤リファンピシンとイゾニアジドの入った 抗酸菌用マイコブロスに接種した。この培養液から1mlを採取し、4Cに保存した。培養4時間経過した培地から上澄み100μlをとり、MORA-EXTRACT(エーエムアール)で細胞を破壊し、100℃3分加熱処理した。このとき4℃に保存していた陰性コントロール用の培地からも同様に核酸を抽出した。抽出核酸を実施例2の方法でPCR及びRT-PCRを行った。結果を、図9に示す。
使用プライマー:
抗酸菌用プライマー:
5-TAGCAGGATCCCTCTAAGTTGTTCGGTGGCTTGTTC(配列番号10)
5-ATAATACGACTCACTATAGGCCTCCACGAAATCCAACTC(配列番号23)
共通プライマー :
5-TAGCAGGATCCCTCTAAG(配列番号13)
5-ATACGACTCACTATAGG(配列番号26)
抗酸菌用プライマー:
5-TAGCAGGATCCCTCTAAGTTGTTCGGTGGCTTGTTC(配列番号10)
5-ATAATACGACTCACTATAGGCCTCCACGAAATCCAACTC(配列番号23)
共通プライマー :
5-TAGCAGGATCCCTCTAAG(配列番号13)
5-ATACGACTCACTATAGG(配列番号26)
図9に示すように、RT-PCRによれば4時間で開始時点に対して100倍以上の遺伝子コピーの差(CP値が7.33)が見られ薬剤耐性を判定することができた。すなわち、薬剤培地で増殖していると判定したため多剤耐性結核菌と判断した。
本実施例では、風呂水に存在する大腸菌の生死判定を30分か90分で生死判定できることを確認した。すなわち、PCR法では0時間と2時間で菌数の違いを確認できなかったがRT-PCR法で明確な違いが証明でき、生きた大腸菌が存在することを証明した。
(風呂水にいる大腸菌群の生死判定を1.5時間で行った例)
浴槽の水を1ml採取し、BHI broth 5mlと混合し、37℃で培養した。培養1.5時間と1時間で実施例1に示す方法でRT-PCRを実施した。ただしprimerは大腸菌群の16S rDNAを増幅するプライマーを用い、実施例2と同様の条件でPCR及びRT-PCRを実施した。結果を図11に示す。
5-TAGCAGGATCCCTCTAAGGCCTTCGGGTTGTAAAGTA(配列番号1)
5-TACGACTCACTATAGGCTTCTGCGGGTAACGTCAATG(配列番号14)
5-TAGCAGGATCCCTCTAAG(配列番号13)
5-ATACGACTCACTATAGG(配列番号26)
浴槽の水を1ml採取し、BHI broth 5mlと混合し、37℃で培養した。培養1.5時間と1時間で実施例1に示す方法でRT-PCRを実施した。ただしprimerは大腸菌群の16S rDNAを増幅するプライマーを用い、実施例2と同様の条件でPCR及びRT-PCRを実施した。結果を図11に示す。
5-TAGCAGGATCCCTCTAAGGCCTTCGGGTTGTAAAGTA(配列番号1)
5-TACGACTCACTATAGGCTTCTGCGGGTAACGTCAATG(配列番号14)
5-TAGCAGGATCCCTCTAAG(配列番号13)
5-ATACGACTCACTATAGG(配列番号26)
図11に示すように、浴水中の大腸菌は90分の培養でPCR法ではCP値の差は2.1で判定不能であったが、RT-PCR法ではCP値の差は6.88で約100倍の遺伝子の増加が見られ増殖が確認できた。
本実施例では、血液培養を開始して0時間、および2時間後に、RT-PCRを実施、2時間後に遺伝子量が100倍以上増加していることを確認し、Vancomycin耐性菌の増殖を証明した。
発熱患者の血液4mlをBBL社の血液培養瓶に加え、37Cで培養した。培養0時間、1時間、2時間、4時間で1mlを取り出し、15000gで5分間遠心後、上澄みを捨て、100μlのTE bufferに懸濁しGirconia beads法(エーエムアール製)で菌を破壊、100℃で3分加熱した。この液を実施例2に従ってRT-PCRを行いMRSAの遺伝子の増幅を確認した。なお、使用したプライマーは、以下のとおりであった。結果を図11に示す。
プライマー:5-ATTCCAGGAATGCAGAAAGACC(配列番号12)
プライマー:5-CTCATATGCTGTTCCTGTATTG(配列番号25)
プライマー:5-ATTCCAGGAATGCAGAAAGACC(配列番号12)
プライマー:5-CTCATATGCTGTTCCTGTATTG(配列番号25)
図11に示すように、0時間では増幅なし、1,2,4時間でそれぞれ38.5、26.7、17.3のCP値が得られ、MRSA遺伝子を持ったブドウ球菌が増殖していることが確認された
本実施例では、食品における生菌の検出を確認した。すなわち、レタス、トマトとマヨネーズが入ったサラダ100gに大腸菌とブドウ球菌をそれぞれ1000個混合し、さらに酢を加え4℃に1時間保存した。このサラダ10gに生理食塩水を90ml加え、ストマッカーで混合し、5mlをBHI brothにいれ培養した。 実施例2に従って、0,1、2、4時間でRT-PCRを実施した。RT-PCRを実施した。なお、使用したプライマーは以下のとおりであった。結果を図12に示す。
ブドウ球菌の16SrDNAを増幅するプライマー:
5-TAGCAGGATCCCTCTAAGGACACTTTTCGGAGCGTA(配列番号4)
5-TACGACTCACTATAGGAGTTAGCCGGTGCTTATTCC(配列番号17)
大腸菌のプライマー:
5-TAGCAGGATCCCTCTAAGGCCTTCGGGTTGTAAAGTA(配列番号1)
5-TACGACTCACTATAGGCTTCTGCGGGTAACGTCAATG(配列番号14)
ブドウ球菌の16SrDNAを増幅するプライマー:
5-TAGCAGGATCCCTCTAAGGACACTTTTCGGAGCGTA(配列番号4)
5-TACGACTCACTATAGGAGTTAGCCGGTGCTTATTCC(配列番号17)
大腸菌のプライマー:
5-TAGCAGGATCCCTCTAAGGCCTTCGGGTTGTAAAGTA(配列番号1)
5-TACGACTCACTATAGGCTTCTGCGGGTAACGTCAATG(配列番号14)
図12に示すように、RT−PCR法では大腸菌は0,2及び4時間とも検出されなかったがブドウ球菌は1、2,4時間でコピー数の増加(1時間のCP値=36.65、 2時間のCP値= 30.15,4時間のCP値= 24.05)がみられ、1時間でブドウ球菌の増殖が確認できたとともに、ブドウ球菌がサラダ内で生存していることが確認できた。従ってサラダの中で大腸菌は死滅し、ブドウ球菌は増殖したと判断した。このサラダを24時間、従来法で培養を行ったところ、大腸菌の発育はみられず、ブドウ球菌の発育が確認された。
配列番号1〜26:プライマー
Claims (8)
- 生菌の遺伝子検査方法であって、
前記生菌を所定時間培養して得られる培養系から取得される試料と、該試料における前記生菌の培養開始時において前記生菌の増殖を停止又は抑制する処理を施した対照培養系から取得される対照試料と、を準備する試料準備工程と、
前記試料と前記対照試料とについてそれぞれRNAを増幅対象とする逆転写PCRを実施する増幅工程と、
前記増幅工程で得られたそれぞれの試料における増幅産物の生成量に関する増幅産物生成量情報に基づいて前記生菌の有無を検出する検出工程と、
を備える、検査方法。 - 前記試料準備工程は、前記培養系における前記生菌の培養開始時から培養終了までの間前記生菌の増殖を停止又は抑制する処理を施した対照培養系から前記対照試料を準備する工程であり、
前記RNA増幅工程は、前記試料及び前記増殖抑制試料について同時期的に逆転写PCRを実施する工程である、請求項1に記載の検査方法。 - 前記試料準備工程は、前記生菌の増殖を抑制又は停止する処理として低温処理及び静菌剤による処理のいずれかから選択される処理を実施する工程である、請求項1又は2に記載の検査方法。
- 前記試料準備工程は、前記生菌を1時間以上4時間以下培養した培養系由来の試料を準備する工程である、請求項1〜3のいずれかに記載の検査方法。
- 前記増幅工程は、逆転写PCRにより得られる増幅産物に基づくシグナルを逐次検出する工程であり、
前記検出工程は、前記増幅工程における前記シグナルの変化量を前記増幅産物生成量情報として利用する工程である、請求項1〜4のいずれかに記載の検査方法。 - 前記増幅工程は、2種類以上の生菌由来のRNAを同時に増幅対象として逆転写PCRを実施する工程であり、
前記検出工程は、2種類以上の前記生菌を含む可能性のある検体中の1種又は2種以上の生菌の有無を検出工程である、請求項1〜5のいずれかに記載の検査方法。 - 臨床検査検体、環境検査検体及び食品検査検体から選択されるいずれかの検体中の生菌の検査方法である、請求項1〜6のいずれかに記載の検査方法。
- 薬剤感受性の測定方法であって、
前記生菌を所定時間培養して得られる対照培養系から取得される対照試料と、前記生菌に対して薬剤による処理を施した状態で前記所定時間培養して得られる培養系から取得される試料と、を準備する試料準備工程と、
前記試料と前記対照試料とについてそれぞれRNAを増幅対象とする逆転写PCRを実施する増幅工程と、
前記RNA増幅工程で得られたそれぞれの試料における増幅産物の生成量に関する増幅産物生成量情報に基づいて前記生菌の前記薬剤に対する感受性を測定する測定工程と、
を備える、測定方法。
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---|---|---|---|
JP2007183771A JP2009017836A (ja) | 2007-07-13 | 2007-07-13 | 生菌の遺伝子検査方法 |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2013520206A (ja) * | 2010-02-24 | 2013-06-06 | ザ ブロード インスティテュート, インコーポレイテッド | 感染性疾患の病原体およびそれらの薬剤感受性を診断する方法 |
-
2007
- 2007-07-13 JP JP2007183771A patent/JP2009017836A/ja active Pending
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JP2013520206A (ja) * | 2010-02-24 | 2013-06-06 | ザ ブロード インスティテュート, インコーポレイテッド | 感染性疾患の病原体およびそれらの薬剤感受性を診断する方法 |
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