JP2008533990A - インフルエンザ治療剤 - Google Patents

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Abstract

本発明は、インフルエンザウイルス転写物にターゲティングされるRNAi誘導性実体および任意の種々の送達因子を含む組成物を提供する。本発明は、インフルエンザウイルスの生物学的活性を阻害するためおよび/またはインフルエンザの処置もしくは予防のための組成物の使用方法をさらに包含する。本発明は、ヒト宿主および/または鳥類宿主から単離された複数種のインフルエンザウイルスA株にわたりRNAiに対して好ましく保存された標的部分配列およびこのような好ましく保存された標的部分にターゲティングされるRNAi誘導性実体を提供する。本発明は、1つ以上のこれらの好ましく保存された標的部分配列の少なくとも一部と同一または相補的である配列を含む種々の核酸を提供する。本発明は、RNAi誘導性物質を哺乳動物被験体の器官または組織(例えば、肺)に送達するための方法および組成物をさらに提供する。

Description

本願は、米国仮特許出願第60/664,580号(2005年3月22日出願)、および表題「Influenza Therapeutic」の米国特許出願第11/102,097号(2005年4月8日出願)(これらは、本明細書に参考として援用される)に基づく優先権を主張する。
(政府援助)
合衆国政府は、本発明の開発で使用した助成金を支給した。特に、国立衛生研究所助成金番号5−RO1−AI44477,5−RO1−AI44478,5−RO1−CA60686、および1−ROl−AI50631で本発明の開発を補助した。合衆国政府は、本発明に一定の権利を有し得る。
(発明の背景)
インフルエンザは世界中で最も蔓延している感染症の1つである。米国では、2万人〜4万人がインフルエンザAウイルス感染またはその合併症により死亡している。命にかかわる感染症であり、1918年インフルエンザAウイルス流行時には2000万人〜4000万人が死亡したと推定されている。流行時のインフルエンザに関連する入院は、冬季のみで300,000人超に達し得る。
いくつかの性質がインフルエンザウイルスの疫学的な蔓延の原因になっている。第1に、エアゾールによってヒトからヒトに容易に伝播する(飛沫感染)。第2に、インフルエンザウイルス抗原の小規模の変化(抗原連続変異)が頻繁であるため、ウイルスは異なるウイルス変異型に対する以前の曝露によって誘導された防御免疫を容易に回避する。第3に、異なる株間での遺伝物質の再集合および混合(抗原不連続変異)によって新規のインフルエンザウイルス株を容易に作製することができる。インフルエンザAウイルスの場合、このような混合は、異なる種に影響を与えるサブタイプまたは株の間で起こり得る。1918年の流行は、ブタおよびヒトでのインフルエンザAウイルスの間の再集合に由来するハイブリッド株によって引き起こされたと考えられている。
集中的な取り組みにもかかわらず、インフルエンザウイルス感染に対する有効な治療方法は依然として存在せず、上記の抗原不連続変異および抗原連続変異により部分的に既存のワクチンの効果が制限される。これらの理由のために、インフルエンザAウイルスの世界的調査が長年に及んでおり、国立衛生研究所は、生物兵器防御の最優先病原体の1つに指定している。不活性化ウイルスに基づいた現在のワクチンは65歳未満の健常な個体において約70〜80%の疾患を防止することができるにもかかわらず、この比率は高齢者または免疫無防備状態の個体ではさらに低い。さらに、ワクチン投与に関連する費用および潜在的な副作用により、このアプローチは決して最適ではない。米国ではインフルエンザの治療および/または予防用の現在承認された4つの抗ウイルス薬が有益であるが、副作用、服薬遵守、および耐性株出現の可能性が懸念されるためにその用途は制限される。従って、インフルエンザ感染の治療および防止のための有効な治療方法の開発が必要である。
(発明の要旨)
本発明は、呼吸器ウイルス感染(例えば、インフルエンザウイルスA型、インフルエンザウイルスB型、および/またはインフルエンザウイルスC型に起因するインフルエンザ感染)の処置のための、新規の組成物および方法を提供する。上記組成物および方法は、RNA干渉(RNAi)に基づく。RNAiは、標的RNAと相補的である部分を含む二本鎖RNAの存在が標的RNAの発現を配列特異的様式で阻害する保存された細胞プロセスである。阻害は、標的の切断またはその翻訳の阻害によって引き起こされ得る。現在利用可能なインフルエンザ治療剤とは対照的に、本発明のRNAi誘導性実体は、インフルエンザウイルス転写物の発現を阻害し、したがってウイルスタンパク質の合成を妨げる。これは、インフルエンザウイルス感染を制御する基本的に新規なアプローチを示す。
本発明は、ウイルスの産生、複製、感染、および/またはウイルスRNAの転写などに関与する1つ以上の標的転写物ターゲティングされるRNAi誘導性物質(例えば、短干渉RNA(siRNA)分子および短ヘアピンRNA(shRNA)分子)を提供する。さらに、本発明は、細胞内での存在が1つ以上のRNAの転写をもたらし、そのRNAがウイルス産生、ウイルス感染、ウイルス複製、および/またはウイルスmRNAの転写などに関与する少なくとも1つの標的転写物の発現を阻害するsiRNAまたはshRNAを形成するために、互いにハイブリッド形成するか、または自己ハイブリッド形成する、ベクターを提供する。好ましくは、上記ウイルスは、呼吸器ウイルスである。好ましいウイルスは、RNAウイルスである。RNAウイルスは、+鎖RNAウイルスおよび−鎖RNAウイルス(例えば、インフルエンザウイルス)を含む。そのウイルスゲノムは、分節されても、分節されなくてもよい。本発明の特定の実施形態に従って、上記標的転写物は、以下からなる群より選択されるタンパク質をコードする:ポリメラーゼ、ヌクレオカプシドタンパク質、ノイラミニダーゼ、血球凝集素、基質タンパク質、および非構造タンパク質。特定の実施形態において、上記標的転写物は、血球凝集素、ノイラミニダーゼ、膜タンパク質1、膜タンパク質2、非構造タンパク質1、非構造タンパク質2、ポリメラーゼタンパク質PB1、ポリメラーゼタンパク質PB2、ポリメラーゼタンパク質PA、核タンパク質NPからなる群より選択されるインフルエンザウイルスタンパク質をコードする。
本発明はまた、RNAi誘導性物質および/またはベクター(例えば、上記RNAi誘導性物質および/または本明細書中に記載されるベクター)を含む組成物を提供し、その組成物は、そのRNAi誘導性物質またはベクターの送達を容易にする送達因子をさらに含む。好ましい送達因子としては、カチオン性ポリマーが挙げられる。
本発明は、RNAi誘導性実体を含む本発明の組成物を、そのウイルスへの曝露前、曝露が生じている間、もしくは曝露後、または被験体がそのウイルスによって引き起こされた症状を示す間の任意の時点において、適切な期間内に被験体に投与することによって、ウイルス疾患(特に、呼吸器ウイルス(例えば、インフルエンザ)によって引き起こされる疾患)を処置または予防する方法をさらに提供する。上記組成物は、種々の経路で投与され得る。好ましい経路は、静脈内経路、またはエアロゾルとしての吸入(鼻腔内)による呼吸系への直接的な経路などを含む。
本発明は、RNAiのための好ましい標的であるインフルエンザウイルス転写物の部分を示す核酸配列を提供する。特定の好ましい標的部分は、RNAiに対する機能的に好ましい標的である。特定の好ましい標的部分は、複数の変異型の間で好ましく保存され、その結果、特定の変異型の配列に基づいて設計されたRNAi誘導性物質が、対応する標的部分が配列において異なる変異型も阻害する。特定の好ましい標的部分は、複数の変異型の間で高度に保存される。
本発明は、1つ以上の好ましい標的部分を含む核酸、その相補体を含む核酸、およびそれらいずれかのフラグメントを含む核酸を提供する。本発明は、これらの標的部分の1つ以上にターゲティングされるRNAi誘導性実体(例えば、RNAi誘導性物質およびRNAi誘導性ベクター)である核酸をさらに提供する。好ましい実施形態において、上記RNAi誘導性実体は、NP遺伝子、PA遺伝子、PB1遺伝子、またはPB2遺伝子にターゲティングされる。本発明は、特定の好ましい標的部分にターゲティングされる非常に有効なRNAi誘導性実体を提供する。このような非常に有効なRNAi誘導性実体は、インフルエンザウイルス感染の処置または予防に特に有用であり得る。
特に、本発明は、インフルエンザウイルス転写物にターゲティングされるRNAi誘導性物質を提供し、そのRNAi誘導性物質は、配列が配列番号272〜380、その相補体、または少なくとも15ヌクレオチドの長さを有するそれらいずれかのフラグメントからなる群より選択される配列を含む核酸部分を含む。本発明は、ポリメラーゼタンパク質PB1遺伝子、ポリメラーゼタンパク質PB2遺伝子、ポリメラーゼタンパク質PA遺伝子、および核タンパク質NP遺伝子からなる群より選択されるインフルエンザウイルス遺伝子にターゲティングされるRNAi誘導性物質をさらに提供する。
本発明はまた、単離された核酸、またはその相補体を提供し、それらの配列は、配列番号272〜380からなる群より選択される配列を含むか、または少なくとも15ヌクレオチドの長さを有する配列番号272〜380からなる群より選択される配列のフラグメントを含み、その核酸は、100ヌクレオチド以下の長さを有する。特定の実施形態において、上記長さは、少なくとも16ヌクレオチドである。
本発明は、ウイルス感染の診断のための方法、およびウイルス感染を有すると疑われる被験体が特定の型、株などのウイルスに感染しているか否かを決定するための方法を提供する。特定の実施形態において、本方法は、被験体が本発明のRNAi誘導性実体の1つ以上による阻害に感受性であるインフルエンザウイルスに感染しているか否かを決定することを包含する。好ましい実施形態において、患者は、インフルエンザ感染と診断され、そしてその被験体に感染している特定のインフルエンザ株にターゲティングされるRNAi誘導性実体が、投与される。したがって、本発明は、インフルエンザの診断と処置との統合された方法を提供する。特定の診断方法は、本発明の1つ以上の核酸を使用する。
本発明はまた、インフルエンザウイルス感染を検出し、そして/またはインフルエンザウイルスがRNAi誘導性物質による阻害に感受性であるか否かを決定する診断キットを提供する。上記キットは、本発明の1つ以上の核酸および/またはインフルエンザウイルス転写物の好ましい標的部分を検出するためのプローブもしくはプライマーを備え得る。
本発明は、RNAi誘導性実体を哺乳動物被験体の気道に送達する方法をさらに提供する。本発明者らは、RNAi誘導性実体が、哺乳動物被験体の気道に直接送達される場合、肺において遺伝子発現を有効にサイレンシングし得ることを見出した。本発明者らは、RNAi誘導性物質(例えば、siRNA)が従来の容量および投与方法を使用して哺乳動物被験体の脈管系に対して直接的に投与され得ること、およびそのRNAi誘導性物質が呼吸系(例えば、肺)において遺伝子発現を有効にサイレンシングし得ることを、さらに見出した。例えば、インフルエンザウイルス転写物にターゲティングされるsiRNAは、静脈内経路または吸入経路のいずれかによってマウスに送達された場合、肺においてインフルエンザ産生を阻害し、これは、呼吸系における遺伝子発現の治療的に有効な阻害がいずれかの方法によって達成され得ることを示した。さらに、ルシフェラーゼ転写物にターゲティングされるsiRNAは、ルシフェラーゼを発現したマウスに吸入経路または静脈内経路のいずれかによって投与した場合、肺においてルシフェラーゼ発現をサイレンシングし、これは、本質的に任意の遺伝子の発現が、これらの方法のいずれかを使用して阻害され得る。内因性遺伝子にターゲティングされるsiRNAはまた、吸入によって送達された場合、肺において発現を阻害するのに有効であった。したがって、本発明は、呼吸系に影響する広範の疾患を処置するためのRNAiの使用を可能にする方法を提供し、その疾患としては、呼吸器ウイルスによって引き起こされる感染が挙げられる。脈管内送達の方法はまた、RNAi誘導性物質の有効量を肺以外の器官または組織に送達するために使用され得る。
1つの局面において、本発明は、哺乳動物被験体の器官または組織において転写物の発現を阻害する方法を提供し、その方法は、RNAi誘導性実体(例えば、その転写物にターゲティングされるRNAi誘導性物質)をその被験体の呼吸系に対して直接的に導入することを包含する。好ましい実施形態において、上記器官または組織は、気道の一部(例えば、肺)である。したがって、本発明は、哺乳動物被験体の呼吸系において転写物の発現を阻害する方法を提供し、その方法は、RNAi誘導性実体(例えば、その転写物にターゲティングされるRNAi誘導性物質)をその被験体の呼吸系に対して直接的に導入することを包含する。他の実施形態において、上記RNAi誘導性実体は、呼吸系に対して直接的に送達され、脈管に進入し、そして脈管系を介して呼吸系以外の活性部位に輸送される(すなわち、呼吸性経路は、全身送達のために使用される)。
本発明は、哺乳動物被験体の呼吸系において転写物の発現を阻害する方法をさらに提供し、その方法は、その転写物にターゲティングされるRNAi誘導性物質をその哺乳動物被験体の脈管系に対して直接的に導入することを包含する。
別の局面において、本発明は、哺乳動物被験体の器官または組織において転写物の発現を阻害する方法を提供し、その方法は、その転写物にターゲティングされるRNAi誘導性物質を哺乳動物被験体の脈管系に対して直接的に導入することを包含する。別の実施形態において、本発明は、哺乳動物被験体の実質器官または実質組織において転写物の発現を阻害する方法を提供し、その方法は、RNAi誘導性実体(例えば、その転写物にターゲティングされるRNAi誘導性物質)をその被験体の呼吸系に導入することを包含し、そのRNAi誘導性物質は、その脈管系に進入し、そして身体の他の位置に輸送される。任意の上述の方法の特定の実施形態において、上記RNAi誘導性物質は、脂質または送達増強性ポリマーを本質的に含まない水性媒体において投与される。本発明の他の実施形態において、上記RNAi誘導性物質は、カチオン性ポリマーを含む組成物において投与される。
本発明は、呼吸系に送達するのに適している組成物を提供する。特に、本発明は、液体粒子または固体粒子(例えば、乾燥粉末)を含む呼吸用エアロゾル処方物を提供し、その粒子は、本発明のRNAi誘導性物質および/またはRNAi誘導性ベクターの1つ以上を含む。上記処方物は、送達因子および/または賦形剤を含み得る。本発明はまた、RNAi誘導性物質またはRNAi誘導性ベクターを含む鼻腔用スプレーを提供する。本発明は、本発明の組成物を送達するためのデバイス(例えば、呼吸系への乾燥エアロゾル処方物または液体エアロゾル処方物の送達のための吸入器または噴霧器などのデバイス)をさらに提供する。上記デバイスは、単一用量または複数用量の上記組成物を送達し得る。本発明の組成物は、上記デバイスの内部に提供され得、そして/または本発明の組成物は、別個に提供され得る(例えば、詰め替えとして)。上記デバイスは、使い捨て可能であり得る。
別の局面において、本発明は、インフルエンザ遺伝子にターゲティングされるRNAi誘導性物質を発現する非ヒトトランスジェニック動物を提供する。
本願は、種々の特許、学術論文、および他の刊行物(これらの全ては、本明細書中に参考として援用される)を参照する。さらに、以下の標準的な参考資料は、本明細書中に参考として援用される:Ausubel,F.ら(編)Current Protocols in Molecular Biology、Current Protocols in Immunology、Current Protocols in Protein Science、およびCurrent Protocols in Cell Biology、John Wiley & Sons、N.Y.、2002年7月の版;Sambrook、Russell、and Sambrook、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第3版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、2001;Goodman and Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics、第10版.McGraw Hill、2001。
他で定義しない限り、本明細書中で使用した全ての技術用語および科学用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般に理解されている意味と同じ意味を有する。本明細書中に記載のものと類似するか等価な方法および材料を本発明の実施または試験で使用することができるが、適切な方法および材料を以下に記載する。矛盾する場合、本明細書(定義が含まれる)が支配する。さらに、材料、方法、および実施例は、例示のみを目的とし、本発明を制限することを意図しない。本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および特許請求の範囲から明らかである。要素がマーカッシュ群形式で記載される場合、これらの要素のそれぞれの部分群もまた開示されること、および任意の要素がその群から除外され得ることが、理解され得る。範囲が与えられた場合、終点は、他に示されないかまたは文脈から明らかでない限りその範囲に含まれる。
(略語)
DNA:デオキシリボ核酸
RNA:リボ核酸
vRNA:インフルエンザウイルスゲノム中のビリオンRNA(マイナス鎖)
cRNA:相補的RNA(vRNAの直接的転写物、プラス鎖)
mRNA:vRNAまたは細胞遺伝子から転写されたメッセンジャーRNA(タンパク質合成のテンプレート)
dsRNA:二本鎖RNA
siRNA:短干渉RNA
shRNA:短ヘアピンRNA
miRNA:マイクロRNA
RNAi:RNA干渉
bp:塩基対
nt:ヌクレオチド。
(定義)
本明細書中で使用される場合、数に関する用語「約(approximately)」または「約(about)」は、一般に、他で記載するか文脈から明らかでない限り、いずれかの方向(超えるまたは未満)で5%の範囲内の数字を含むこととする(このような数字は可能性のある値の100%を超えない)。範囲が示されている場合、他で記載するか文脈から明らかでない限り、終点は範囲内に含まれる。
本明細書中で使用される場合、用語「鳥類」は、分類学の鳥類網(class ava)の生物体のあらゆる種、亜種または品種(例えば、ニワトリ、シチメンチョウ、アヒル、ガチョウ、ウズラ、キジ、オウム、フィンチ、タカ、およびカラス)をいうことを意図する。この用語は、種々の公知であるGallus gallus、またはニワトリの系統(例えば、White Leghorn、Brown Leghorn、Barred−Rock、Sussex、New Hampshire、Rhode Island、Ausstralorp、Minorca、Amrox、Calif.Gray、Italian Partidge−colored)、ならびにシチメンチョウ、キジ、ウズラ、アヒル、ダチョウおよび一般的に飼育されている他の家禽の系統を含む。
用語「相補的」とは、特定の塩基、ヌクレオシド、ヌクレオチド、または核酸の間の正確な対形成の能力をいうために当該分野で受け入れられている意味に従って本明細書中で使用される。例えば、アデニン(A)とウリジン(U)とは相補的であり、アデニン(A)とチミジン(T)とは相補的であり、グアニン(G)とシトシン(C)とは相補的であり、それらは、当該分野でワトソン−クリック塩基対形成と称される。第1の核酸配列の一定の位置でのヌクレオチドが、鎖が逆平行の方向で整列されるときの第2の核酸配列中の反対に位置するヌクレオチドと相補的である場合、そのヌクレオチドは相補塩基対を形成し、その核酸はその位置で相補的である。第1の核酸の第2の核酸に対する%相補性は、第2の核酸に沿った評価窓にわたる相補性が最大になるように逆平行の方向でそれらを整列し、その窓内で相補塩基対を形成する両方の鎖のntの総数を決定し、その窓内のntの総数によって除算し、そして100を乗算することによって評価され得る。例えば、AAAAAAAAおよびTTTGTTATは、塩基対中の全部で16個のうちの12個のヌクレオチドが相補的であるため、75%相補的である。評価枠にわたり少なくとも70%相補的である核酸を、この枠にわたって実質的に相補的であると見なす。特定の%相補性を達成するために必要とされる相補的ntの数を計算する場合、分数は、小数点第1位で四捨五入して整数にされる。非相補ヌクレオチドによって占められる位置は、ミスマッチを構成する(すなわち、その位置は、非相補塩基対によって占められる)。最大の相補性を達成するために、ギャップは、評価窓内の核酸のいずれかまたは両方に導入され得る。ギャップに向かい合うヌクレオチドは、対形成せず、そしてバルジを構成する(すなわち、他の核酸において向かい合って位置するヌクレオチドが存在しない)。代表的に、%相補性は、少なくとも15nt(例えば、19nt)長の評価窓にわたって決定され、その長さは、ギャップを含まない。%相補性を決定するために、1ntのバルジは、単一の非相補的ntであると見なされ;2ntと5ntとの間のバルジは、2個の非相補的ntと見なされる;6ntと10ntとの間のバルジは、3個の非相補的ntと見なされる。長さがKntのバルジ(ここで、Kは、10より大きい)は、3+(K−10)個の非相補的ntであると見なされる。
「呼吸系に直接的に」とは、組成物中の活性因子の顕著な分画(例えば、10重量%より多い活性因子、好ましくは25重量%より多い活性)が上気道および/または下気道に進入するように鼻、口、または気管(好ましくは、鼻または口)を介して投与することをいう。
「脈管系に直接的に」とは、脈管系に身体の外部から入れられる注射もしくはカテーテルまたは任意の他の方法による脈管(例えば、動脈または静脈)への投与をいい、それは、脈管の壁を貫通することを含む。「脈管系に間接的に」とは、脈管系が貫通されない投与の様式をいう。脈管系に対する皮下の間接送達の好ましい例は、呼吸系に物質が直接送達され、次いで脈管壁をその物質が横切って通過することである。次いでこの物質は、身体の他の標的組織または標的器官に輸送され得る(そして、肺に戻り得る)。
活性因子の「有効量」とは、所望の生物学的応答を誘発するのに十分な活性因子の量をいう。当業者によって認識されるように、有効な特定の因子の絶対量は、所望の生物学的エンドポイント、送達される因子、標的組織などのような因子に依存して変動し得る。「有効量」は、単数用量または複数用量において投与され得る。例えば、RNAi誘導性実体の有効量は、以下のうちの1つ以上を達成するのに十分な量であり得る:(i)標的転写物の発現を少なくとも20%(好ましくは、少なくとも40%)減少させる;(ii)ウイルス力価を少なくとも25%減少させる;(iii)ウイルス力価を少なくとも2分の1に減少させる;(iv)臨床的に顕著なウイルス感染の発症を遅延させるかまたは予防する;(v)ウイルス感染の少なくとも1つの症状の持続期間または重篤度を減少させるなど。
組成物が1重量%、好ましくは、0.5重量%未満、より好ましくは0.1重量%未満の物質を含む場合、その組成物は、その物質を「本質的に含まない」。より好ましくは、その物質は、その組成物から完全に欠けている。組成物は、送達増強性ポリマーまたは脂質がその組成物に意図的に含まれていない場合、送達増強性ポリマーまたは脂質を本質的に含まない。
本明細書中で使用される場合、用語「ハイブリッド形成する」とは、目的とする特定の条件(例えば、真核生物細胞、ドロソフィア溶解物など)の下で安定な二重鎖構造が形成されるような、相補部分を含むかまたは相補部分からなる2つの核酸配列の間の相互作用をいう。代表的に、第1の核酸は、第1の核酸と第2の核酸とによって形成される二重鎖のTmが、第2の核酸と、第2の核酸と同じ長さでありかつ100%相補的であり、そして同じ型のヌクレオシドおよびヌクレオシド間結合を含む第3の核酸とによって形成される二重鎖のTmを15℃未満(好ましくは、10℃未満)下回っている場合、第2の核酸にハイブリッド形成すると考えられる。種々の用途に適したハイブリッド形成条件は、当該分野において公知であり、そして/または標準的な参考資料(例えば、Ausubel、前出、およびSambrook、前出)において見出される。例示の実施形態において、ストリンジェントなハイブリッド形成条件は、完全に相補的な二重鎖のTmを10〜15℃下回る温度での6×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)および0.1% SDS、その後の完全に相補的な二重鎖のTmを25℃下回る温度で2×SSCおよび0.1% SDSにおいて30分間にわたって1〜2回洗浄することを含む。
「同一性」とは、2個以上の核酸の配列が同じである程度をいう。評価窓にわたる第1の核酸と第2の核酸との間の%同一性は、平行の方向で核酸を整列し、同一のヌクレオチドが向かい合う評価窓内のヌクレオチドの数を決定し、その窓内のヌクレオチドの総数で除算し、そして100を乗算することによって計算され得る。特定の%同一性を達成するために必要とされる同一のヌクレオチドの数を計算する場合、分数は、小数点第1位で四捨五入して整数にされる。評価窓にわたって少なくとも70%(例えば、少なくとも80%、少なくとも90%)以上同一である核酸が、その窓にわたって実質的に同一であると見なされる。代表的に、上記評価窓は、第2の核酸に沿って少なくとも15nt長(例えば、19nt長)であり、その長さは、ギャップを含まない。%同一性を決定するために、1ntギャップは、同一のntに向かい合わない単一のntであると見なされる;2ntと5ntとの間のギャップは、同一のntに向かい合わない2ntと見なされる;6ntと10ntとの間のギャップは、同一のntに向かい合わない3ntと見なされる。長さがKntのギャップ(ここで、Kは、10より大きい)は、同一のntに向かい合わない3+(K−10)ntであると見なされる。
本明細書中で使用される場合、用語「インフルエンザウイルス」は、動物またはヒト被験体で疾患を引き起こすことができるか実験分析のための興味深い候補である任意のインフルエンザウイルス株をいう。インフルエンザウイルスは、Fields,B.,ら,Fields’Virology,4th.ed.,Philadelphia:Lippincott WilliamsおよびWilkins;ISBN:0781718325,2001に記載されている。特に、この用語は、動物またはヒト被験体で疾患を引き起こすことができるか実験分析のための興味深い候補である任意のインフルエンザAウイルス株を含む。非常に多数のインフルエンザA単離物が部分的または完全に配列決定されている。付録Aは、公的データベース(The Influenza Sequence Database (ISD)(Macken,C.,Lu,H.,Goodman,J.,& Boykin,L.,’’The value of a database in surveillance and vaccine selection.’’in Options for the Control of Influenza IV A.D.M.E.Osterhaus,N.Cox & A.W.Hampson(Eds.)Amsterdam:Elsevier Science,2001,103−106)を参照のこと)に示されているインフルエンザAゲノムセグメントの完全な配列表の一部のみを示す。このデータベースは、インフルエンザBおよびCゲノムセグメントの完全な配列も含む。ユーザーがゲノムセグメント、ウイルスに感染した種、および単離年によって検索可能な便利な検索エンジンと共に、URLがhttp://www.flu.lanl.gov/を有するウェブサイトにおいてワールドワイドウェブ上でこのデータベースが利用可能である。Genbankのインフルエンザ配列も利用可能である。従って、インフルエンザの遺伝子配列は、当業者が容易に利用可能であるか、または当業者が容易に決定可能である。
RNAi誘導性物質の合成、プロセシング、または活性に関して本明細書中で使用される場合、用語「インビボ」は、一般に、無細胞系において起きる事象とは対照的に、細菌内で起きる事象をいう。一般に、その細胞は、組織培養において維持され得るか、またはインタクトな器官の一部であり得る。
本明細書中で使用される場合、「単離された」は、1)通常天然で会合している成分の少なくとも一部から分離されること、2)人の手を含むプロセスによって調製または精製されること、および/または3)天然に存在しないことを意味する。
本明細書中で使用される場合、「リガンド」は、抗原−抗体相互作用以外の機構によって第2の分子に特異的に結合する分子を意味する。この用語は、例えば、天然に存在するか合成された、ポリペプチド、ペプチド、および低分子(その構造が人によって発明された構造を有する分子を含む)を含む。
「核酸ベースのアッセイ」とは、核酸の存在が検出され、そして/または核酸が同定される任意のアッセイまたは方法をいう。そのアッセイは、定性的であっても定量的であってもよい。
本明細書中で使用される場合、「核酸塩基」は、相補的な核酸塩基または核酸塩基アナログとの対形成において水素結合(好ましくは、ワトソン−クリック水素結合)を形成し得る窒素含有ヘテロ環式部分(例えば、プリンまたはピリミジン)を意味する。代表的な核酸塩基は、天然に存在する核酸塩基であるアデニン、グアニン、シトシン、ウラシル、チミン、および天然に存在する核酸塩基のアナログ(Fasman、Practical Handbook of Biochemistry and Molecular Biology、pp.385−394、CRC Press、Boca Raton、Fla.、1989)である。用語「核酸塩基」および「塩基」は、本明細書中で交換可能に使用される。
「ヌクレオチド」は、窒素性塩基、糖分子、およびリン酸基を含む。ヌクレオシドは、糖分子に連結された窒素性塩基(核酸塩基)を含む。天然に存在する核酸において、リン酸基は、隣接するヌクレオシドに共有結合してポリマーを形成する。核酸は、天然に存在するヌクレオシド(例えば、アデノシン、チミジン、グアノシン、シチジン、ウリジン、デオキシアデノシン、デオキシチミジン、デオキシグアノシン、およびデオキシシチジン)、ヌクレオシドアナログ(例えば、2−アミノアデノシン、2−チオチミジン、イノシン、ピロロ−ピリミジン、3−メチルアデノシン、C5−プロピニルシチジン、C5−プロピニルウリジン、C5−ブロモウリジン、C5−フルオロウリジン、C5−ヨードウリジン、C5−メチルシチジン、7−デアザアデノシン、7−デアザグアノシン、8−オキソアデノシン、8−オキソグアノシン、O(6)−メチルグアニン、および2−チオシチジン)、化学的に改変された塩基、生物学的に改変された塩基(例えば、メチル化塩基)、介在塩基(intercalated base)、改変された糖(例えば、2’−フルオロリボース、リボース、2’−デオキシリボース、アラビノース、およびヘキソース)を含み得る。ヌクレオシドは、ユニバーサル塩基(universal base)(すなわち、二重鎖で核酸が向かい合う場合に核酸において一般的に見出される1つ(または好ましくは、任意)の天然の塩基を置換し得る塩基(例えば、142〜149を参照のこと))を含み得る。本発明の特定の実施形態において、核酸は、無塩基性残基を有する。
本明細書中で使用される場合、「作動可能に連結された」は、1つの核酸配列の発現が他の核酸配列によって調節、制御、調整などが行われる2つの核酸配列間の関係をいう。例えば、作動可能に連結されたプロモーター配列によって核酸配列の転写が指示される;作動可能に連結されたプロセシング配列によって核酸の転写後プロセシングが指示される;作動可能に連結された翻訳調節配列によって核酸配列の翻訳が指示される;作動可能に連結された輸送配列または局在化配列によって核酸またはポリペプチドの輸送または局在化が指示される;および、作動可能に連結されたプロセシング配列によってポリペプチドの翻訳後プロセシングが指示される。好ましくは、第2の核酸配列に作動可能に連結された核酸配列はこのような配列と直接または間接的に共有結合するが、任意の有効な三次元会合が許容可能である。
用語「器官」とは、当該分野において使用される場合、生物体の形態学的かつ機能的に異なる部分を構成する組織または組織の群をいう。例としては、肺、心臓、肝臓、膵臓、乳、腎臓、腸、膀胱、骨、皮膚などが挙げられる。用語「組織」とは、当該分野において使用される場合、通常、類似の構造(代表的に、1つ以上の同一かまたは関連する機能を行なうように組織化されている)細胞の群をいう。赤血球、白血球、および血小板は、個々の細胞または細胞フラグメントを含む循環する組織であると見なされる。
「予防する」とは、疾患、障害、病態、もしくは症状またはそれらの発現の発生、あるいはそれらの重篤度の悪化が起こらないようにすることをいう。予防することは、疾患、障害、病態、もしくは症状またはそれらの発現の発生、あるいはそれらの重篤度の悪化が起きる危険性を減少させることを含む。したがって、組成物または方法が、個体または集団ベースで、疾患、障害、病態、もしくは症状またはそれらの発現の発生、あるいはそれらの重篤度の悪化が起きる危険性を減少させる場合、その組成物または方法は、疾患、障害、病態、もしくは症状またはそれらの発現、あるいはそれらの重篤度の悪化を予防するといわれる。
本明細書中で使用される場合、用語「プライマー」は、天然であるか合成であるかにかかわらず、プライマー伸長(例えば、ポリメラーゼ触媒性プライマー伸長)が開始される条件下で核酸テンプレートにハイブリッド形成した場合に、核酸合成の開始点として機能し得るオリゴヌクレオチドをいう。プライマーの適切な長さは、そのプライマーの意図された用途に依存するが、代表的には15nt〜35ntの範囲である。いくつかの場合において、プライマーは、より長いものであり得る(例えば、約60nt長まで)。短いプライマー分子は、一般に、テンプレートと十分に安定なハイブリッド複合体を形成するために、より低い温度を必要とする。プライマーが、テンプレートの正確な配列を反映する必要はないが、テンプレートとハイブリッド形成してプライマー伸長を生じるために十分に相補的でなければならない。
本明細書中で使用される場合、用語「プローブ」とは、核酸について言及する場合、相補的核酸とハイブリッド形成し、それによって相補的核酸の存在を検出し得る核酸をいう。プローブは、特異的なハイブリッド形成が使用されるハイブリッド形成ストリンジェンシー条件下で起こり得るように、検出される核酸に十分に相補的であるべきである。プローブは、標識(例えば、蛍光部分、ビオチンなど)によって改変され得る。
本明細書中で使用される場合、「精製された」は、多数の他の化合物または物質から分離したことを意味する。化合物または物質は、部分的に精製されているか、実質的に精製されているか、純粋であり得る(実質的に全ての他の化合物または物質から取り出された場合、純粋であり得る(すなわち、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または99%を超えて純粋である))。
用語「調節配列」は、作動可能に連結された配列の発現(特に、転写であるが、いくつかの場合、スプライシングまたは他のプロセスなどの他の事象)を指示、強化、または阻害する核酸配列領域を記載するために本明細書中で使用される。この用語には、プロモーター、エンハンサー、および他の転写調節エレメントが含まれる。本発明のいくつかの実施形態では、調節配列は、ヌクレオチド配列の構成的発現を指示することができ、他の実施形態では、調節配列は、組織特異的および/または誘導性発現を指示することができる。調節配列は、感染性因子に感染した細胞中でのみヌクレオチド配列の発現を指示することができる。例えば、調節配列は、ウイルスタンパク質(例えば、ウイルスポリメラーゼ、転写因子など)によって認識されるウイルス特異的プロモーターまたはエンハンサーなどのプロモーターおよび/またはエンハンサーを含み得る。あるいは、調節配列は、上皮細胞(例えば、肺上皮細胞)において活性なプロモーターおよび/またはエンハンサーを含み得る。例えば、サーファクタントタンパク質をコードする遺伝子に対するプロモーターが、使用され得る。
「呼吸系」とは、上気道(例えば、鼻腔路(nasal passage)、鼻咽頭、口腔咽頭部)または下気道(例えば、気管、気管支、細気管支、および/または肺胞)の任意の構成要素をいう。咽頭は、上気道または下気道のいずれかの構成要素と見なされ得る。用語「呼吸系」および「気道」は、本明細書中で交換可能に使用される。
「呼吸器ウイルス」は、被験体の上気道および/または下気道に存在する細胞に感染するウイルスである。好ましくは、そのウイルスは、気道上皮細胞に感染する。感染され得る他の細胞としては、気管支肺胞マクロファージ、樹状細胞などが挙げられるが、これらに限定されない。呼吸器ウイルスの例としては、以下が挙げられる:インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス(PIV)、肺炎ウイルス、メタニューモウイルス、コロナウイルス、アデノウイルス、ライノウイルス、RSウイルス(RSV)、レオウイルス、ヘルペスウイルス、およびハンタウイルス。
用語「RNAi誘導性物質」は、siRNA、shRNA、およびプロセシングされてsiRNAもしくはshRNAまたはRNA干渉によって標的転写物の発現を阻害する他の小さいRNA種を生じ得る他の二本鎖構造物(例えば、dsRNA)をいうために使用される。本発明の特定の実施形態において、RNAi誘導性物質は、翻訳の抑制を含むRNA干渉経路を介して標的RNAの発現を阻害する。
用語「RNAi誘導性実体」、細胞内におけるその存在が、RNAiをもたらし、そしてRNAi誘導性実体がターゲティングされる転写物の発現の減少を生じるRNA分子およびベクターを包含する。RNAi誘導性実体は、例えば、RNAi誘導性物質(例えば、siRNA、shRNA)、またはRNAi誘導性ベクターであり得る。用語「RNAi誘導性実体」、「RNAi誘導性物質」、または「RNAi誘導性ベクター」の使用は、実体、物質、またはベクターが、一般に、RNAiをアップレギュレートまたは活性化することを意味すること意図するが、RNAi誘導性ベクターがそのようにし得るにもかかわらず、細胞内での実体、物質、またはベクターの存在が標的転写物の発現におけるRNAi媒介性の減少をもたらすことを単に示すことを意図する。本明細書中で使用される場合、「RNAi誘導性実体」は、例えば、内因性RNA種またはウイルス感染の自然の過程の間に細胞中で産生されるRNA種とは異なる、人の手によって改変もしくは産出され、そして/または細胞におけるその存在が人の介入の結果である実体である。
「RNAi誘導性ベクター」は、細胞内での存在により1つ以上のRNAが転写され、互いにハイブリッド形成するか、または自己ハイブリッド形成してsiRNAまたはshRNAなどのRNAi誘導性物質を形成するベクターである。本発明の種々の実施形態では、この用語は、細胞内での存在により1つ以上のRNAが産生され、自己ハイブリッド形成または互いにハイブリッド形成してRNAi誘導性物質を形成するプラスミドを含む。一般に、ベクターは、ベクターが細胞内に存在する場合にハイブリッド形成または自己ハイブリッド形成してRNAi誘導性物質を形成する1つ以上のRNA分子が転写されるように発現シグナルに作動可能に連結された核酸を含む。したがって、ベクターは、RNAi誘導性物質の細胞内合成のためのテンプレートを提供する。RNAiの誘導のために、細胞内のウイルスゲノムの存在は、細胞内でのウイルスの存在を構成する。細胞内に移入されるか、細胞に侵入するか、親細胞から遺伝した場合、その後細胞内で改変またはプロセシングするかに関係なく、ベクターは細胞内に存在すると見なされる。RNAi誘導性ベクターは、そのベクターがRNAi誘導性物質の転写のためのテンプレートを含む場合、転写物にターゲティングされるものと見なされる。このようなベクターは、細胞中の転写阻害に加えて、多くの他の用途を有する。例えば、それらのベクターは、RNAi誘導性物質のインビトロ産生において使用され得、および/またはベクターがターゲティングされる転写物を含んでも含まなくてもよい細胞におけるRNAi誘導性物質の産生に使用され得る。
「短干渉RNA」は、15ヌクレオチド長と約29ヌクレオチド長との間であるか、または15と29との間の間隔内にある任意の他の部分的範囲(subrange)もしくは特定の値(例えば、16〜18nt長、17〜19nt長、21〜23nt長、24〜27nt長、27〜29nt長)である二本鎖(二重鎖)RNAを含み、そして必要に応じて、一方または両方の鎖上に1つまたは2つの一本鎖突出部(例えば、3’突出部)をさらに含む。特定の実施形態において、上記二重鎖は、約19nt長である。上記突出部は、例えば、1〜6残基長(例えば、2nt)であり得る。siRNAは、一緒にハイブリッド形成する2つのRNA分子から形成され得るか、または代替的に、shRNAから産出され得る。本発明の特定の実施形態において、siRNAの5’末端の一方または両方は、リン酸基を有するが、他の実施形態において、その5’末端の1つ以上は、リン酸基を欠く。本発明の特定の実施形態において、siRNAの3’末端の一方または両方は、水酸基を有するが、他の実施形態において、それらの3’末端は、水酸基を有さない。「アンチセンス鎖」または「ガイド鎖(guide strand)」と称されるsiRNAの一方の鎖は、標的転写物とハイブリッド形成する部分を含む。本発明の特定の好ましい実施形態において、上記siRNAのアンチセンス鎖は、上記標的転写物の領域と100%相補的である(すなわち、それは、15nt長と約29nt長との間(好ましくは少なくとも16nt長、より好ましくは18〜20nt長(例えば、19nt長))の標的領域にわたってミスマッチまたはバルジを1つも含まずにその標的転写物にハイブリッド形成する)。相補性の領域は、17と29との間の間隔内にある任意の部分的範囲または特定の値(例えば、17〜18、19〜21、21〜23、19〜23、24〜27、27〜29)であり得る。他の実施形態において、上記アンチセンス鎖は、標的領域と実質的に相補的である(すなわち、1つ以上のミスマッチおよび/またはバルジは、上記アンチセンス鎖と標的転写物とによって形成される二重鎖に存在する)。siRNAの2つの鎖は、二重鎖部分内で実質的に相補的(好ましくは、互いと100%相補的)である。
用語「短ヘアピンRNA」とは、RNAi(siRNA二重鎖について記載されるような)を媒介するのに十分な長さである二本鎖(二重鎖)構造、および上記二重鎖を形成するshRNAの領域を接続するループを形成する少なくとも1つの一本鎖部分を形成するようにハイブリッド形成するか、またはハイブリッド形成し得る少なくとも2つの相補部分を含むRNA分子である。上記構造はまた、二重鎖部分であるステムを有するステム/ループ構造を称する。上記構造は、5’末端または3’末端において突出部(例えば、siRNAについて記載されるような)をさらに含み得る。好ましくは、上記ループは、約1〜20nt長、より好ましくは約4〜10nt長、そして最も好ましくは約6〜9nt長であり、そして/または上記突出部は、約1〜20nt長、そしてより好ましくは約2〜15nt長である。上記ループは、阻害が所望される標的転写物と相補的である領域(すなわち、shRNAのアンチセンス部分)の5’末端または3’末端のいずれかに位置し得る。特定の実施形態において、上記突出部は、1つ以上のU残基(例えば、1と5との間のU)を含む。下でさらに記載されるように、shRNAは、保存された細胞RNAi機構によってsiRNAへとプロセシングされる。したがって、shRNAは、siRNAの前駆体であり、そしてshRNAは、一般に、shRNAの一部(shRNAのアンチセンス鎖またはガイド鎖と称される)と相補的である標的転写物の発現を同様に阻害し得る。一般に、shRNAのアンチセンス鎖と標的転写物との間に形成される二重鎖の形状は、siRNAのガイド鎖と標的転写物との間に形成される二重鎖の形状と類似する。本発明の特定の実施形態において、shRNAの5’末端は、リン酸基を有するが、他の実施形態において、shRNAの5’末端は、リン酸基を有さない。本発明の特定の実施形態において、shRNAの3’末端は、水酸基を有するが、他の実施形態において、shRNAの3’末端は、水酸基を有さない。
本明細書中で使用される場合、用語「被験体」とは、ウイルス(例えば、インフルエンザウイルス)に感染しやすい個体をいう。この用語には、トリおよび動物(例えば、ニワトリおよび哺乳動物(ブタ、ウマ、イヌ、ネコなど)などが含まれる)、ならびに野生動物、非ヒト霊長類、およびヒト)が含まれる。
RNAi誘導性物質は、(1)そのRNAi誘導性物質が、少なくとも約15ヌクレオチド長、より好ましくは少なくとも約17ヌクレオチド長、よりさらに好ましくは少なくとも約18ヌクレオチド長または19ヌクレオチド長から約21〜23ヌクレオチド長、または24〜29ヌクレオチド長のストレッチ(stretch)にわたって、標的転写物と少なくとも80%、好ましくは少なくとも約85%、より好ましくは少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%相補的である鎖を含む場合;および/あるいは(2)そのRNAi誘導性物質の1つの鎖が、標的転写物にハイブリッド形成する場合に、本明細書中に記載される目的のために標的転写物に「ターゲティングされる」と見なされる。適切なハイブリッド形成条件は、代表的に、例えば、米国公開第20020086356号および同第20040229266号ならびに参考文献21および参考文献28に記載されるような、哺乳動物細胞の細胞質もしくは核および/またはドロソフィア溶解物において見出されるものである。本発明の特定の実施形態において、アンチセンス鎖と標的転写物とによって形成される二重鎖中のGU塩基対またはUG塩基対は、RNAi誘導性物質がその転写物にターゲティングされるか否かを決定する目的に関してミスマッチと見なされない。細胞内に存在するRNA誘導性ベクターは、転写物にターゲティングされるRNAi誘導性物質の産生をもたらし、そしてまた、そのRNA誘導性ベクターは、転写物にターゲティングされると見なされる。転写物にターゲティングされるRNAi誘導性物質はまた、その転写物の合成を指揮する遺伝子をターゲティングすると見なされる。ウイルスの産生、ウイルスの複製、ウイルスの病原性および/またはウイルスによる感染に関連する標的転写物の発現を阻害するRNAi誘導性物質は、そのウイルスを阻害するといわれる。
「標的部分」は、RNAi誘導性物質のアンチセンス鎖とハイブリッド形成する標的転写物の領域である。
用語「標的転写物」とは、RNAiについての標的である任意のRNAをいう。メッセンジャーRNAが、好ましい標的である。用語「標的RNA」および「標的転写物」は、本明細書中で交換可能に使用される。
本明細書中で使用される場合、「処置する」には、疾患、障害、もしくはこのような用語が適用される病態、またはこのような疾患、障害、もしくは病態の1つ以上の徴候もしくは発症の進行の逆転、緩和、および/または阻害が含まれる。
一般に、用語「ベクター」とは、細胞への第2の核酸分子の侵入(例えば、導入、輸送など)を媒介することができる核酸分子をいう。導入される核酸は、一般に、ベクター核酸分子と連結される(例えば、挿入される)。ベクターは、自律複製を指示する配列を含み得るか、宿主細胞DNAへの組み込みに十分な配列を含み得る。有用なベクターには、例えば、プラスミド(代表的にはDNA分子であるが、RNAプラスミドも公知である)、コスミド、およびウイルスベクターが含まれる。当該分野で周知なように、用語「ウイルスベクター」は、代表的には核酸分子の導入もしくは組み込みを容易にするウイルス由来の核酸エレメントを含む核酸分子(例えば、プラスミド)(例はレトロウイルスベクターまたはレンチウイルスベクターを含む)または核酸導入を媒介するウイルスもしくはウイルス粒子(例は、レトロウイルスまたはレンチウイルスを含む)のいずれかをいうことができる。当業者に自明なように、ウイルスベクターは、核酸に加えて種々のウイルス構成要素を含み得る。
(本発明の一定の好ましい実施形態の詳細な説明)
(I.インフルエンザウイルスの生活環および特徴)
インフルエンザウイルスは、オルトミクソウイルス科のエンベロープで包まれたマイナス鎖のRNAウイルスである。これらは、インフルエンザA型、B型、およびC型に分類され、インフルエンザAは病原性が最も高く、動物株内で再集合を受けることができる唯一の型と考えられている。インフルエンザA型、B型、およびC型を、その核タンパク質および基質タンパク質の相違によって区別することができる(図1を参照のこと)。以下でさらに考察されるように、インフルエンザAサブタイプは、その血球凝集素(HA)およびノイラミニダーゼ(NA)遺伝子の変化によって定義され、通常、対応するタンパク質に結合する抗体によって区別される。
インフルエンザAウイルスゲノムは、8つのRNAセグメント中に分布した10個の遺伝子からなる。遺伝子は、以下の10個のタンパク質をコードする:エンベロープ糖タンパク質血球凝集素(HA)およびノイラミニダーゼ(NA)、基質タンパク質(M1)、核タンパク質(NP)、本明細書中でポリメラーゼまたはポリメラーゼ複合体とも呼ばれるRNA依存性RNA転写酵素の構成要素である3つのポリメラーゼ(PB1、PB2、およびPA)、イオンチャネルタンパク質(M2)、および非構造タンパク質(NS1およびNS2)。インフルエンザAウイルスおよびその分子病原性についてのさらなる詳細については、Julkunen,I.,ら,Cytokine and Growth Factor Reviews,12:171−180,2001を参照のこと。Fields,B.,ら,Fields’Virology,4th.ed.,Philadelphia:Lippincott Williams and Wilkins;ISBN:0781718325,2001も参照のこと。インフルエンザBウイルスゲノムの組織化は、インフルエンザAのそれと非常に類似しているが、インフルエンザCウイルスゲノムは、7個のRNAセグメントを含み、NA遺伝子を欠く。
インフルエンザAウイルス分類は、血球凝集素(H1〜H15)およびノイラミニダーゼ(N1〜N9)遺伝子に基づく。世界保健機関(WHO)の命名法により、各ウイルス株は各株をその起源となる動物宿主(ヒトでない場合に指定する)、地理的起源、株数、単離年、ならびにHAおよびNAの抗原についての説明によって定義される。例えば、A/Puerto Rico/8/34(H1N1)は、1934にプエルトリコでヒトで発生し、且つHAおよびNAの抗原のサブタイプ1を有するA株の単離物8を示す。別の例として、A/Chiken/Hong Kong/258/97(H5N1)は、1997年にホンコンでニワトリで発生し、且つHAのサブタイプ5およびNAのサブタイプ1を有するA株の単離物258を示す。ヒトでの流行は、HAのH1、H2、およびH3型およびNAのN1型およびN2型を有するウイルスに起因した。
上記のように、インフルエンザウイルスAにおいて2つの主な機構によって遺伝子が変化する。点変異を介して遺伝的浮動が起こり、これは、宿主免疫応答による選択圧および遺伝的シフト(genetic shift)(再集合ともいう)(これは、1つのサブタイプの全ウイルスゲノムセグメントから別のものへの置換を含む)によって抗原的に重要な位置でしばしば起こる。多数の異なる動物種型(ヒト、ブタ、トリ、ウマ、水生動物などが含まれる)が、インフルエンザAウイルスで感染されるようになり得る。いくつかのインフルエンザAウイルスは、特定の種に限定され、通常、他の種に感染しない。しかし、いくつかのインフルエンザAウイルスは、いくつかの異なる動物種(主にトリ、ブタ、およびヒト)に感染し得る。この能力は、インフルエンザAウイルスの主な抗原不連続変異を担うと考えられる。例えば、ブタがヒト由来のインフルエンザAウイルスに感染し、同時にアヒル由来の異なるインフルエンザAウイルスに感染したとする。2つの異なるウイルスがブタ細胞で再生される場合、ヒト株およびアヒル株の遺伝子が「混合」されて、RNAセグメントの固有の組み合わせを有する新規のウイルスが得られることとなり得る。このプロセスは、遺伝子の再集合と呼ばれる。
他のウイルスと同様に、インフルエンザウイルスは細胞内で複製される。インフルエンザAウイルスは、気道の上皮細胞で複製される。しかし、単球/マクロファージおよび他の白血球にも感染することができる。シアル酸含有細胞表面糖タンパク質を含む多数の他の細胞型は、ウイルスが受容体としてこれらの分子を使用するため、インビトロで感染しやすい。
インフルエンザA感染/複製サイクルを、概略的に図1に示す。図1Aに示すように、インフルエンザAビリオン100は、以下の8つのマイナス鎖RNAセグメントからなるゲノム101を含む:PB2(102)、PB1(103)、PA(104)、HA(105)、NP(106)、NA(107)、M(108)、およびNS(109)。従来は以下のように1〜8の番号を付けている:PB2=1、PB1=2、PA=3、HA=4、NP=5、NA=6、M=7、およびNS=8。ゲノムRNAセグメントは、エンベロープ糖タンパク質HA(140)およびNA(150)の細胞外ドメインならびにイオンチャネルM2(160)が突き出した脂質二重層130に囲まれた膜タンパク質M1(120)の膜内にパッケージングされている。RNAセグメント(102〜108)は、核タンパク質MP(170)で覆われており、ポリメラーゼPB1、PB2、およびPAからなるウイルスポリメラーゼ複合体180を含む。非構造タンパク質NS1(示さず)は、感染細胞内で発見される。非構造タンパク質NS2 190もまた、ビリオン内で発見される。
図1Bは、インフルエンザウイルスのゲノム構造およびインフルエンザゲノムから作製した転写物を示す(一定の比率では描いていない)。8個のゲノムRNAセグメントのうちの6個(PB1(102)、PB2(103)、PA(104)、HA(105)、NP(106)、NA(107))はそれぞれ対応するタンパク質をコードする1つの非スプライシング転写物のテンプレートとして作用する。以下の3つのmRNA転写物は、インフルエンザウイルスAセグメントM(108)に由来すると同定された:Mタンパク質をコードする共線的(colinear)転写物191、Mタンパク質をコードし、且つ689個のヌクレオチドイントロンを含むスプライシングmRNA(192)、およびウイルス感染細胞で検出されなかった9アミノ酸ペプチド(M3)をコードする能力を有する別の選択的にスプライシングされたmRNA(193)。以下の2つのmRNA転写物は、インフルエンザウイルスAセグメントNSに由来する:NSタンパク質をコードする非スプライシングmRNA(194)およびNSタンパク質をコードし、且つ473ヌクレオチドイントロンを含むスプライシングmRNA(195)。
感染サイクル(図2)は、ビリオン100がその血球凝集素を介してシアル酸含有細胞表面タンパク質との相互作用によって感染しやすい細胞の表面に付着する場合に開始される。付着したウイルスは、クラスリン依存性エンドサイトーシスを介して被覆小胞200にエンドサイトーシスされる。エンドソームの低pHにより、ウイルスとエンドソーム膜との融合が誘発され、それによりウイルスリボ核タンパク質(vRNP)複合体(ヌクレオキャプシド)210が細胞質に遊離する。ウイルスヌクレオキャプシドが細胞核にインポートされ、その後PB1、PB2、およびPAポリメラーゼからなるウイルスRNAポリメラーゼ複合体によって一次ウイルスmRNA合成が開始される。宿主細胞前mRNAに対するPB2タンパク質のエンドヌクレアーゼ活性によって産生されたプライマーを使用して、テンプレートとしてウイルスRNA(vRNA)220を使用したウイルスmRNA合成が開始される。PB1タンパク質は、細胞質に輸送されて翻訳されるウイルス特異的mRNA230の合成を触媒する。
新規に合成されたポリメラーゼは核に輸送され、複製および二次ウイルスmRNA合成を調節する。ウイルスRNA(vRNA)由来の相補RNA(cRNA)(240)の合成は、PB1、PB2、PA、およびNPによって開始され、その後新規のvRNA分子(250)が合成される。ウイルスポリメラーゼ複合体は、二次mRNA(260)の合成のためのテンプレートとしてこれらのvRNAを使用する。したがって、ウイルスコード転写酵素によるvRNAの転写により、ウイルスタンパク質合成のためのテンプレートとして作用するmRNAが産生され、5’キャップおよび3’ポリAテールの欠如がmRNAと異なり、且つ新規のビリオン産生のためにより多くのvRNAを合成するためのテンプレートとして作用する相補RNA(cRNA)も産生される。感染後期では、NS1タンパク質は、MおよびNSのmRNAのスプライシングを調節し、それによりM2およびNS2のmRNAが産生される。ウイルスmRNAが細胞質に輸送され、ウイルス構造タンパク質270が産生される。タンパク質PB1、PB2、PA、およびNPが核(vRNP複合体(ヌクレオキャプシド)280のアセンブリ部位)に輸送される。M1およびNS2タンパク質は核にも輸送されるため、これらはvRNPと相互作用してその核輸送を調節する。ウイルスvRNA−M1タンパク質複合体は、原形質膜でHAおよびNA分子の細胞質部分と相互作用し、成熟ビリオンが出芽し、ウイルス粒子が放出される。ウイルス粒子の出芽および放出は、原形質膜にて生じる。
インフルエンザAウイルスは細胞内で急速に複製され、細胞溶解効果またはアポトーシスによって宿主細胞が死滅する。感染により広範な種々の細胞活動およびプロセスが変化する(宿主細胞遺伝子発現の阻害が含まれる)。ウイルスポリメラーゼ複合体は、核内で新規に合成された細胞ポリメラーゼII転写物に結合して、これを切断する。NS1タンパク質は、細胞前mRNAスプライシングを遮断し、宿主mRNAの核輸送を阻害する。細胞mRNAの翻訳が非常に阻害されるのに対して、ウイルスmRNAは有効に翻訳される。細胞インターフェロン(IFN)応答(代表的にはウイルス感染細胞における翻訳を阻害するように作用する宿主応答)のウイルス下方制御によってウイルスmRNAの有効な翻訳が一部維持される。特に、ウイルスNS1タンパク質は、IFN誘導性PKRに結合し、その活性を阻害する。したがって、インフルエンザウイルスの感染により細胞生合成において著しく変化する(細胞mRNAのプロセシングおよび翻訳の変化が含まれる)ことが明らかである。
(II.RNAi誘導性実体のsiRNAの選択、設計、および合成)
(A.RNAi誘導性実体の選択および設計)
本発明は、1つ以上のインフルエンザウイルス転写物にターゲティングされるRNAi誘導性実体を含む組成物を提供する。上記のインフルエンザウイルス複製サイクルの説明は、種々のウイルスRNA転写物(一次および二次vRNA、一次および二次ウイルスmRNA、ならびにウイルスのcRNA)がインフルエンザウイルスに感染された細胞内に存在し、ウイルスの生活環で重要な役割を果たすことを証明する。任意のこれらの転写物は、本発明の直接的かまたは間接的な機構のいずれかによるRNAi媒介阻害の適切な標的である。任意のウイルスmRNA転写物をターゲティングするRNAi誘導性実体により、直接的様式で(例えば、転写物の分解によって)転写物自体のレベルが特異的に減少する。さらに、以下で考察するように、一定のインフルエンザウイルス転写物(例えば、NP、PA、PB1)をターゲティングするRNAi誘導性物質により、特異的にターゲティングされないインフルエンザウイルス転写物のレベルが間接的に減少する。別のスプライシングが可能な状況では、MおよびMをコードするmRNAならびにNSおよびNSをコードするmRNAに関して、非スプライシング転写物またはスプライシング転写物は、標的転写物として作用し得る。
本発明のRNAiベースの治療のための標的として作用し得る潜在的なウイルス転写物には、例えば、1)任意のインフルエンザウイルスゲノムセグメント、2)タンパク質PB1、PB2、PA、NP、NS1、NS2、M1、M2、HA、またはNAをコードする転写物を含む任意のウイルスタンパク質をコードする転写物が含まれる。転写物を、1つのRNAi誘導性物質によってそのvRNA、cRNA、および/またはmRNA形態にターゲティングすることができるが、本発明者らは、ウイルスmRNAが唯一または主なRNAiの標的であることが示唆されるデータを得た。特に好ましい実施形態において、標的転写物は、インフルエンザウイルスタンパク質NP、PA、PB1、またはPB2をコードする。
RNAi誘導性物質の一般的な特徴は、当該分野において公知である。RNA干渉は、最初に、細胞中の長いdsRNA(代表的に、数百のnt)の存在がdsRNAの1つの鎖と相補的な領域を含むmRNAの配列特異的分解を生じる現象として認識された(米国特許第6,506,559号)。siRNAは、WO 01/75164ならびに米国公開第20020086356号および同第20030108923号に記載されるようなドロソフィア中のRNAiの研究において最初に見出された。特に、ドロソフィアにおいて、長いdsRNAsは、2nt〜3’突出部によって隣接(flank)される19ntの二重鎖領域が存在するように、Dicerと称されるRNase III様酵素(Bernsteinら、Nature 409:363、2001)によって、2つの21ntの鎖(それぞれが5’リン酸基および3’水酸基を有し、そして他の鎖と正確に相補的な19ntの領域を含む)から構成されるより小さいdsRNAへとプロセシングされる。図3は、ドロソフィアにおいて見出されるsiRNAの概略図を示す。その構造は、センス鎖310およびアンチセンス鎖315を含む19ヌクレオチドの二本鎖(DS)部分300を含む。各鎖は、2ntの3’突出部320を有する。
これらの短dsRNA(siRNA)は、そのdsRNA鎖の1つと相補的な領域を含むあらゆる遺伝子の発現をサイレンシングするように作用する。なぜならば、おそらくヘリカーゼ活性は、そのsiRNA中の19bpの二重鎖をほどき、代替的な二重鎖をsiRNAの1つの鎖(「アンチセンス」鎖または「ガイド」鎖)とその標的転写物との間に形成させるからである。上記アンチセンス鎖は、相補的な標的RNAにガイドされるエンドヌクレアーゼ複合体(RISC)に組み込まれる。RISCに存在する酵素活性は、標的RNAをエンドヌクレアーゼ複合体(RISC)にガイドし、1個の位置で切断(「スライス」)して細胞機構によって即座に分解される非保護RNA末端が得られる(図4)。下記のように、短いRNA種(ミクロRNA)によって媒介されるさらなるサイレンシング機構も公知である(例えば、Ruvkun,G.,Science,294,797−799,2001;Zeng,Y.,ら,Molecular Cell,9,1−20,2002を参照のこと)。機構およびこれらを示した図の考察は、本発明において使用されるRNA干渉の機構にいかなる制限も与えないことを意図することに留意すること。
C.elegansからヒトまでの範囲の種々の種でDICER酵素のホモログが見出されており(Sharp,Genes Dev.15;485,2001;Zamore,Nat.Struct.Biol.8:746,2001)、RNAi様機構が種々の異なる細胞型(哺乳動物細胞、さらにはヒト細胞)での遺伝子発現をサイレンシングすることができる可能性が高まっている。しかし、長dsRNA(例えば、約30〜50ヌクレオチドより長い二本鎖領域を有するdsRNA)は、哺乳動物細胞中でインターフェロン応答を活性化することが公知である。したがって、ドロソフィラRNAi機構を使用して認められた特異的遺伝子サイレンシングの達成よりもむしろ、哺乳動物細胞中の長dsRNAの存在により、インターフェロンに媒介されて非特異的に翻訳が抑制され、おそらく細胞が死滅する。したがって、長dsRNAは、哺乳動物細胞における特定の遺伝子発現の阻害に有用であると考えられない。
しかし、本発明者らおよび他は、siRNAは、哺乳動物に移入した場合、標的遺伝子(ウイルス遺伝子が含まれる)の発現を有効に減少させることができることを見出した。本発明者らは、siRNAまたはshRNAに含まれ、そして以下および同時係属中の特許出願U.S.S.N.10/674,159において記載される通りに試験された場合に、本明細書中に記載される設計パラメータの第1のセットを使用して選択される配列の著しい割合が、効率的に抑制する配列であると判明したことを見出した。最初に設計したセット由来の約15%のsiRNA(実施例1)は、強力な効果を示し、そしてインフルエンザウイルスのPR8株またはWSN株のいずれかに感染した細胞においてウイルス産生を強力に阻害した;約40%が、有意な効果を示した(すなわち、PR8に感染した細胞および/またはWSNに感染した細胞におけるsiRNAの存在下 対 非存在下の間でのウイルス産生の統計学的な有意差(p≦0.05));約45%は、全く効果を示さないか、または最小限の効果を示した。
特に、RNA依存性RNA転写酵素および核タンパク質NPをコードする遺伝子にターゲティングされるRNAは、感染した哺乳動物細胞において産生されるウイルスのレベルを劇的に減少させた(実施例2、4、5、6)。本発明者らはまた、インフルエンザウイルス転写物にターゲティングされるsiRNAがインタクトな生物体(すなわちインフルエンザウイルスに感染したニワトリ胚)におけるインビボでのインフルエンザウイルス複製を阻害し得ることを示した(実施例3)。さらに、本発明者らは、インフルエンザウイルス転写物にターゲティングされるsiRNAがウイルス感染の前または後のいずれかに投与した場合にマウスにおけるウイルス産生を阻害し得ることを示した(実施例12、14、16、23〜26など)。さらに、本発明者らは、マウスにおけるsiRNA前駆体(shRNA)が発現され得るDNAベクターの投与がインフルエンザウイルス産生を阻害することを示した。さらなる有効なRNAi誘導性物質(細胞および/またはマウスにおいてインフルエンザウイルス産生を阻害するの能力について試験した場合に非常に有効であった多くのsiRNAを含む)は、設計基準の第2のセットを使用して設計された。したがって、本発明は、RNAi物質(例えば、siRNA、shRNA)、または細胞内における存在がこのような物質の発現を生じるベクターによる処理が呼吸器ウイルス(例えば、インフルエンザウイルス)の感染および/または複製を阻害するのに有効なストラテジーであることを示す。次いで、非常に有効なsiRNAのうちの2つは、高度に病原性の鳥類インフルエンザウイルス株に対して試験され、そしてそれらのsiRNAは、そのインフルエンザウイルス株を阻害することが示され、これは、広範なインフルエンザウイルス株を阻害する能力を確認した(Tompkinsら、Proc.Natl.Acad.Sci.、101(23):8682−6、2004)。したがって、本発明は、任意の複数の異なるインフルエンザウイルス株に感染した細胞においてウイルス産生を阻害するRNAi誘導性物質を提供する。
任意の理論に拘束されることを望まないが、本発明者らは、これらの知見がインフルエンザウイルスの感染の際に生じる細胞活性(例えば、代謝活性および生合成活性)の顕著な変化に関して特に著しいことを示唆する。インフルエンザウイルスによる感染は、細胞のmRNAスプライシング、輸送、および翻訳のような基本的な細胞プロセスを阻害し、そして細胞のタンパク質合成の阻害をもたらす。これらの変化にかかわらず、インフルエンザウイルス転写物にターゲティングされるRNAi誘導性物質がウイルス複製を阻害するという知見は、遺伝子発現のRNAi媒介性阻害の基礎をなす細胞機構がインフルエンザウイルスに感染した細胞をインフルエンザ遺伝子発現を阻害するのに十分なレベルにて機能し続けることを示唆する。
選択される任意の特定の遺伝子標的に関して、本発明に従って使用するためのRNAi誘導性物質の設計は、好ましくは、特定の指針に従う。一般に、ウイルスに特異的(宿主と比較した場合)であり、そして好ましくは、ウイルスの機能に重要であるか、または必須である配列をターゲティングすることが、望ましい。したがって、分解が望まれない他の転写物によって共有され得る標的転写物の切断を回避することが、望ましい。データデース検索は、いずれかの鎖が上記RNAi誘導性物質が送達される生物体(例えば、ヒト)のゲノム中の任意の配列と実質的に相補的であるか否かを決定するために行なわれ得、そしてこのような配列は、回避され得る。本明細書中に記載される場合、複数の変異型の間で保存されるウイルス転写物の部分が、好ましい標的である。
本発明で使用するための好ましいRNAi誘導性物質は、15nt長と約29nt長(例えば、約19nt長)との間の塩基対合領域を含み、必要に応じて1つ以上の遊離またはループ状の末端を有し得る。図5は、本発明のRNAi誘導性物質として使用することができる種々の構造を示す。図5Aは、上記のドロソフィラ系、および哺乳動物細胞中で活性であることが見出された構造を示し得る。本発明は、インフルエンザ感染を治療または防止するための哺乳動物細胞への図5Aに記載の構造を有するsiRNAの投与を含む。しかし、投与した因子がこの構造を有する必要はない。例えば、投与した因子がインターフェロン応答の誘導などの望ましくないまたは有害な事象を引き起こさない限り、投与した組成物はインビボで図5Aの構造にプロセシングすることができる任意の構造を含み得る。例えば、本発明はまた、このような物質の投与が十分に本明細書中で考察されるようなウイルス転写物レベルを減少させる限り、図5Aに示される構造に正確にプロセシングされない物質の投与を含み得る。いくつかの場合において、本発明に従う細胞に送達される物質は、活性な抑制物質になる前に1つ以上のプロセシング工程を受け得る(さらなる考察については下を参照のこと);このような場合において、当業者は、関連する物質が好ましくはそのプロセシングに必要であり得る配列を含む設計であることを認識する。
図5Bおよび5Cは、RNAiを媒介するために使用することができるさらなる構造を示す。これらのヘアピン(ステム−ループ)構造は、阻害RNAとして直接機能することができるか、細胞内でプロセシング(例えば、Dicerによって)されて、図5Aに示されるsiRNA構造などのsiRNA構造を生じることができる。図5Bは、互いにハイブリッド形成してステム400として示される二重鎖領域、ループ410、および突出部320を形成する、2つの相補領域を含むRNA分子を含む因子を示す。このような分子を自己ハイブリッド形成するといい、この種の構造をshRNAという。shRNA構造の例については図20および21も参照のこと。図5Cは、約19bp長のステム400の形成に十分な相補エレメントを含むRNAサークルを含む因子を示す。このような因子は、本明細書中に記載の種々の他のsiRNAと比較して改良された安定性を示すことができる。
RNAi誘導性物質およびそれらの活性を記載することにおいて、siRNAの場合における通り、2つの鎖を有するような物質をいうことは、頻繁に都合がよい。一般に、上記RNAi誘導性物質の一方の鎖の二重鎖部分の配列は、この領域において標的転写物と実質的に相補的である。そのRNAi誘導性物質の他方の鎖の二重鎖部分の配列は、代表的に、標的転写物のターゲティング部分と実質的に同一である。上記標的と相補的な部分を含む鎖が、「アンチセンス鎖」と称される一方で、他方の鎖は、しばしば、「センス鎖」と称される。上記標的と相補的であるアンチセンス鎖の部分は、「阻害性領域」と称され得る。
shRNAの二重鎖構造は、アンチセンス鎖およびセンス鎖を含むことが考慮され得、そのアンチセンス鎖は、その分子の第2部分と二重鎖を形成するか、または形成できるその分子の第1部分であり、上記標的転写物のターゲティング部分と相補的である。上記センス鎖は、上記第1部分と二重鎖を形成するか、または形成できる上記分子の部分である。当業者は、−鎖RNAウイルス由来のvRNA鎖をターゲティングする「アンチセンス鎖」がそのvRNAに対してアンチセンスであるが、そのウイルスcRNAに対する「センス鎖」であることを、認識する。同様に、−鎖RNAウイルス由来のcRNA鎖をターゲティングする「アンチセンス鎖」は、そのcRNAに対してアンチセンスであるが、そのvRNA配列に対して「センス鎖」である。
説明のために、以下の考察では、siRNAをいうことが多い。しかし、当業者に明らかなように、siRNAの2つの鎖に関連する教示は、一般に、任意のRNAi誘導性物質(例えば、細胞内でプロセシングされてsiRNAを生じ得る対応するshRNA)のステム部分のセンス部分およびアンチセンス部分に適用可能である。したがって、一般に以下の検討材料を、本発明のRNAi誘導性物質(例えば、細胞内で切断されて標的の切断または翻訳の抑制を媒介するRNAを生じるshRNA)の設計、選択、および送達にも適用する。
一般に、好ましいsiRNAアンチセンス鎖は、標的転写物中のエキソン配列を構成する標的部位または標的転写物中のエキソン配列からなる標的部位と、ハイブリッド形成する。本発明の特定の実施形態において、上記アンチセンス鎖は、5’非翻訳領域または3’非翻訳領域にハイブリッド形成する。一般に、上記転写物のスライスおよび分解ならびに/または翻訳の抑制をもたらすアンチセンス鎖とのハイブリッド形成に利用可能である任意の部位が、利用され得る。
RNAi誘導性物質は、種々のアプローチに従って選択され得る。一般に、上述の通り、本発明のRNAi誘導性物質は、好ましくは、領域(「二重鎖領域」)(その一方の鎖は標的転写物(「標的部分」)の一部と十分に相補的である15〜29nt長の間の阻害性領域を含む)を含み、その結果、ハイブリッドがインビボでこの鎖と標的転写物との間に形成し得る。「コア領域」とも称されるこの二重鎖領域は、突出部を含まないと理解される。突出部は、存在する場合、標的転写物と相補的であり得るが、標的転写物と相補的である必要はない。好ましくは、この二重鎖領域は、図3、4、および5に示される二本鎖構造の大部分または全てを含む。
好ましくは、上記阻害性領域は、標的と100%相補的である。しかし、当業者は、ミスマッチおよびバルジがアンチセンス鎖と標的とによって形成される二重鎖に存在し得ることを認識する。したがって、上記阻害性領域は、ハイブリッド形成が、例えば、細胞および/またはRNAiを支援するインビトロ系(例えば、上述のドロソフィア抽出物系)で生理学的条件下において起こり得るように、標的と十分に相補的であることのみを必要とする。好ましくは、上記阻害性領域および上記標的は、互いに少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、そして最も好ましくは100%と相補的である。好ましくは、この領域中のアンチセンス鎖残基のうちの6残基より少ない残基あるいは約20%(例えば、1、2、3、4)が、15〜29nt(例えば、19nt)の窓にわたって標的とミスマッチである。好ましくは、この領域中のアンチセンス鎖残基のうちの4残基より少ない残基あるいは約15%が、標的とミスマッチである。好ましくは、1個または2個だけのミスマッチが、存在する。そのミスマッチの1個以上(または全て)は、U−Gミスマッチであり得る。例えば、上記阻害性領域が15〜16nt長である場合、0〜3個のミスマッチが存在し得る;上記阻害性領域が17nt長である場合、0〜4個のミスマッチが存在し得る;上記阻害性領域が18nt長である場合、0〜5個のミスマッチが存在し得る;上記阻害性領域が19nt長である場合、0〜6個のミスマッチが存在し得る。許容され得るミスマッチの数は、最大でRNAi誘導性物質の阻害性領域の上限(例えば、約30ntの長さ)の阻害性領域中に存在する1個のさらなるntに対して1ntで、増加する。特定の実施形態において、上記ミスマッチは、連続した位置に存在しない。特定の実施形態において、2nt長より長いミスマッチのストレッチは、存在しない。好ましい実施形態において、15〜19ntの評価窓は、0〜1個のミスマッチ(好ましくは、0個)を含み、そして20〜29ntの評価窓は、0〜2個のミスマッチ(好ましくは、0〜1個、より好ましくは、0個)を含む。当業者は、バルジによって分断される二重鎖構造が、代表的に、より多い数の対形成していないntを許容することを認識する。当業者はまた、アンチセンス鎖/標的RNA二重鎖の中心部分においてミスマッチを回避することが好まれ得ることを認識する(例えば、Elbashirら、EMBO J.20:6877、2001を参照のこと)。例えば、上記siRNAのアンチセンス鎖の3’ヌクレオチドは、しばしば、標的認識の特異性に著しく寄与せず、そして標的の切断にあまり重要ではない可能性がある。特定の実施形態において、上記アンチセンス鎖および上記標的は、上記アンチセンス鎖の阻害性領域の10位において相補的である。他の実施形態において、それらは、上記アンチセンス鎖の阻害性領域の10位において相補的ではない。
特定のRNAi誘導性物質は、3’UTR配列を含むか、全体的に3’UTR配列からなる標的部位にハイブリッド形成する鎖を含む。当業者は、得られた二重鎖が、有効なサイレンシングを依然としてもたらしつつ、上記二重鎖の中心領域内により大きい数のミスマッチおよび/またはバルジ(特に、ミスマッチ)を許容し得ることを認識する。例えば、一方または両方の鎖は、図6に示されるように、バルジを形成する1つ以上の「特別な(extra)」ヌクレオチドを含み得る。例えば、5〜10nt長の1個以上のバルジが、存在し得る。代表的に、完全に相補性のストレッチは、少なくとも5nt長(例えば、6、7、またはそれ以上のnt)である一方で、ミスマッチの領域は、例えば、1、2、3、または4nt長であり得る。上記二重鎖は、頻繁に、ミスマッチの領域によって隔てられる完全に相補性の2つのストレッチを含む。種々の構造が、可能である。例えば、ミスマッチの複数の領域が存在し得る。
3’UTRまたは他の場所における二重鎖形成が、転写物によってコードされるタンパク質の発現を、古典的なRNA阻害の特徴である切断に関連するが、それとは異なる機構によって阻害し得る場合、いくつかのミスマッチが、望まれ得る。図6に示されるように、上で考察されるドロソフィアおよびまた種々の生物体におけるsiRNAを産生するDicer酵素は、小さな一時的RNA(stRNA)基質を標的転写物の3’UTR内に結合される場合にその転写物の翻訳をブロックする阻害物質へとプロセシングすることも公知である(Grishok,A.ら、Cell 106、23−24、2001;Hutvagner,G.ら、Science、293、834−838、2001;Ketting,R.ら、Genes Dev.、15、2654−2659を参照のこと)。その後の知見は、C.elegans〜哺乳動物の範囲の生物体のゲノムが、それらが部分的に相補的である内因性mRNAの翻訳を阻害するマイクロRNA(miRNA)として公知である短い(約19〜25ヌクレオチド)RNAのクラスをコードすることを示した。マイクロRNAは、Bartel,DP.、Cell、116(2):281−97、2004;Novina,C.およびSharp,PA、Nature、430:161−164、2004;ならびに米国公開第20050059005号において考察される。miRNAは、部分的に相補的な部位においてmRNA転写物をターゲティングし、そしてそれらの翻訳を妨げるように結合する。siRNAの構造(互いにハイブリッド形成した2つの個別の短い鎖)を有するRNAi誘導性物質は、miRNAと同様の様式(すなわち、その安定性を低下させることよりもむしろ転写物の翻訳を減少させること)で作用し得る(Doench、JGら Genes & Development、17:438−442、2003)。このようなsiRNAは細胞内でプロセシングされてmiRNA翻訳抑制経路を介して作用する一本鎖RNAを生じると、考えられる。本発明の目的のために、本明細書中に記載されるような任意の部分的かまたは完全に二本鎖の短いRNA(その一方の鎖は、標的転写物に結合し、そしてその発現を減少させる(すなわち、その転写物のレベルを減少させ、かつ/またはその転写物によってコードされるポリペプチドの合成を減少させる))は、それが、分解を誘発することよって作用するか、翻訳を阻害することよって作用するか、または他の手段によって作用するかにかかわらず、RNAi誘導性物質であると見なされる。さらに、インビボ(すなわち、細胞内または生物体内)でプロセシングされてこのようなRNAi誘導性物質を生じ得る任意の前駆体RNA構造が、本発明において有用である。
いくつかの場合において、RNAi誘導性物質の配列は、アンチセンス鎖全体(存在する場合、3’突出部を含む)が標的転写物と完全に相補的であるように選択される。しかし、それは、突出部が標的転写物と相補的であるかまたは同一であるかのいずれかであることを必要としない。任意の所望の配列(例えば、UU)は、単純にアンチセンスコア領域および/またはセンスコア領域の3’末端に付加されて3’突出部を産生し得る。一般に、1つ以上のピリミジン(通常は、U、T、またはdT)を含む突出部が、使用される。RNAi誘導性物質を合成する場合、上記突出部においてUよりもむしろTを使用することが、より好都合であり得る。TよりもむしろdTの使用が、増大した安定性を与え得る。
好ましくは、RNAi誘導性物質の鎖は、上記コア領域内で互いと100%相補的である。しかし、当業者は、ミスマッチおよびバルジがアンチセンス鎖とセンス鎖とによって形成される二重鎖に存在し得ることを認識する。その鎖は、ハイブリッド形成が、例えば、細胞および/またはRNAiを支援するインビトロ系(例えば、上述のドロソフィア抽出物系)で生理学的条件下において起こり得るように、互いに十分に相補的であることのみを必要とする。好ましくは、RNAi誘導性物質の2つの鎖は、上記コア領域内で互いに少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、そして最も好ましくは100%相補的である。例えば、15〜16nt長のコア領域は、0〜3個のミスマッチを含み得る;17nt長のコア領域は、0〜4個のミスマッチを含み得る;18nt長のコア領域は、0〜5個のミスマッチを含み得る;19nt長のコア領域は、0〜6個のミスマッチを含み得る。許容され得るミスマッチの数は、最大でRNAi誘導性物質のコア領域の上限(例えば、約30ntの長さ)の阻害性領域中に存在する1個のさらなるntに対して1ntで、増加する。好ましい実施形態において、15〜19ntのコア領域は、0〜1個のミスマッチ(好ましくは、0個)を含み、そして20〜29ntのコア領域は、0〜2個のミスマッチ(好ましくは、0〜1個、より好ましくは、0個)を含む。当業者は、バルジによって分断される二重鎖構造が、代表的に、より多い数の対形成していないntを許容することを認識する。
まとめると、RNAi誘導性物質は、標的部分を選択し、配列が標的とハイブリッド形成するために15〜29ヌクレオチドにわたる(例えば、19ヌクレオチド)標的転写物と十分に相補的(例えば、実質的に相補的または100%相補的)であるアンチセンス鎖、およびその配列とハイブリッド形成するためにそのアンチセンス鎖と十分に相補的(例えば、そのアンチセンス鎖と実質的か、または好ましくは、100%相補的)であるセンス鎖を含むRNAi誘導性物質を設計することによって設計され得る。3’突出部(例えば、上に記載されるもの)は、次いで、これらの配列に付加されてsiRNA構造を生じ得る。
当業者は、siRNAなどのRNAi誘導性物質が上述の原理に従って融解温度(Tm)の範囲を示し得ることを認識する。Tmは、核酸およびその完全な相補体の50%が溶液中で二重鎖である温度として定義される。受容可能なTmの代表例は、本明細書中の実施例において開示されるsiRNA配列に基づいて、当該分野において周知である方法を使用して、実験によってかあるいは適切な経験または理論から誘導された方程式を使用するかのいずれかで、容易に決定され得る。本発明の特定の実施形態において、アンチセンス鎖と標的転写物とによって形成された二重鎖の計算Tmは、標的とその標的と完全に相補的である阻害性領域を有するアンチセンス鎖との間に形成される二重鎖の計算Tmよりも5℃、10℃、または15℃低い。本発明の特定の実施形態において、RNAi誘導性物質のアンチセンス鎖とセンス鎖とによって形成された二重鎖の計算Tmは、完全に相補的であるアンチセンス鎖とセンス鎖との間に形成される二重鎖(必要に応じて突出部を除外する)の計算Tmよりも5℃、10℃、または15℃低い。
当業者は、Tm値を計算し得る。いくつかの研究は、最近接の相互作用について熱力学的基底関数(basis set)を使用して、Tmについての的確な方程式を誘導した。熱力学的パラメータについての値は、文献において入手可能である。RNAについては、Freier,S.M.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.83、9373−9377、1986.Rychlik,W.ら、Nucl.Acids Res.18(21)、6409−6412、1990を参照のこと。好ましくは、Walter,A.E.、Proc.Natl.Acad.Sci、91、9218−9222、1994におけるより最近の値および方法、またはより好ましくはMathews,DH、J.Mol.Biol.、288、911−940、1999におけるより最近の値および方法が、使用される。Tmを計算するためのコンピュータープログラムは、広範に利用可能である。例えば、URL www.basic.nwu.edu/biotools/oligocalc.htmlを有するウェブサイトを参照のこと。好ましくは、Zuker,M.、Nucl.Acids.Res.、31(13)、2003に記載されるような、URL www.bioinfo.rpi.edu/applications/mfoldにおけるmfoldウェブサーバー上で利用可能である関連するパラメータ(例えば、ΔGおよびTm)を計算するためのプログラムが、使用される。
本発明の1つの態様は、ゲノム配列が異なる感染性因子の複数の株、サブタイプなど(集合的に変異型という)が存在する場合、異なる変異型の間で高度に保存された領域をターゲティングするRNAi誘導性物質を選択および/または設計することがしばしば望ましいという認識である。十分な数の配列の比較および高度に保存された領域の選択により、このような高度に保存された領域にターゲティングされる1つのRNAi誘導性物質によって複数の変異型をターゲティングすることが可能である(例えば、その物質のアンチセンス鎖は、RNAi誘導性物質がRNAiを媒介するように、十分な長さにわたって高度に保存された領域に対して実質的に相補的である)。本発明の一定の実施形態によれば、ある領域が、変異型の間で同一の場合、その領域は複数の変異型の間で高度に保存されている。本発明の一定の実施形態によれば、RNAi誘導性物質によってターゲティングされる領域(例えば、15〜29ヌクレオチド(好ましくは、19ヌクレオチド)の領域)が、変異型の間で多くとも1つのヌクレオチド(すなわち、0または1ヌクレオチド位置)によって異なる場合、その領域は高度に保存されている。本発明の一定の実施形態によれば、このような領域が、変異型の間で多くとも2つのヌクレオチド(すなわち、0、1、または2ヌクレオチド位置)によって異なる場合、このような領域は複数の変異型の間で高度に保存されている。本発明の一定の実施形態によれば、ある領域が、変異型の間で多くとも3つのヌクレオチド(すなわち、0、1、2、または3ヌクレオチド位置)によって異なる場合、この領域は複数の変異型の間で高度に保存されている。本発明の一定の実施形態によれば、RNAi誘導性物質は、少なくとも5個の変異型、少なくとも10個の変異型、少なくとも15個の変異型、少なくとも20個の変異型、少なくとも25個の変異型、少なくとも30個の変異型、少なくとも40個の変異型、もしくは少なくとも50個またはそれ以上の変異型の間で高度に保存されている領域をターゲティングする。
ある領域が複数の変異型組の間で高度に保存されているかどうかを判定するために、以下の手順を使用することができる。配列組の1つのメンバーを基本配列(すなわち、他の配列と比較する配列)として選択する。本発明の異なる実施形態によれば、基本配列は、比較される組の配列の1つであり得るか、例えば、各位置について組中の配列の間のその位置で最も頻繁に見出されるヌクレオチドの判定に由来するコンセンサス配列であり得る。
基本配列が選択されると、複数の変異型組の各メンバーの配列を基本配列と比較する。基本配列とその配列の領域(例えば、15〜29ヌクレオチド(例えば、19ヌクレオチド)の領域)にわたる複数の変異型組の任意のメンバーとの間の相違数を使用して、その基本配列およびそのメンバーが目的の特定の領域にわたって高度に保存されているかどうかを判定する。上記のように、本発明の種々の実施形態では、2つの領域の間の配列相違数が0;0もしくは1、0、1、もしくは2;または0、1、2、もしくは3である場合、配列は高度に保存されていると見なす。上記RNAi誘導性物質のアンチセンス配列は、15〜29ヌクレオチド(例えば、19ヌクレオチド)の高度に保存された領域にわたって基本配列と相補的であるように選択されても、高度に保存された領域にわたって他の配列のうちの1つと相補的であるように選択されてもよい。代表的に、上記センス鎖配列は、高度に保存された領域にわたって基本配列または他の配列のうちの1つと同一であるように選択され、その結果、上記アンチセンス鎖および上記センス鎖は、上記RNAi誘導性物質の二重鎖部分内で互いに100%相補的である。
一般に、上記アンチセンス鎖配列は、上に記載されるように、基本配列を参照して選択される。しかし、本発明の特定の実施形態において、特に、比較される組における第2の配列中の特定の位置に存在するヌクレオチドが、比較される配列において、基本配列中の対応して位置付けられるヌクレオチドより多く見出される場合、上記アンチセンス鎖配列は、その第2の配列を参照して選択され得る(例えば、その第2の配列に存在する高度に保存された領域と100%相補的)。さらに、本発明の特定の実施形態にしたがって、違いが生じる位置におけるコンセンサスヌクレオチド(最も共通して存在するヌクレオチド)が、基本配列中に見出されるものと異なる場合、そのコンセンサスヌクレオチドが、使用され得る。これは任意の比較される配列と同一でない配列を生じ得る(基本配列としてコンセンサス配列を使用し得る場合)ことに留意すること。
実施例1は、ヒト宿主起源の6つのインフルエンザA株由来の配列組の比較および異なる動物宿主起源(ヒトが含まれる)由来の7つのインフルエンザA株由来の配列組の比較に基づく高度に保存された標的位置の選択を記載する。高度に保存された領域の異なる選択方法を使用することができる。本発明は、どのようにして高度に保存された領域を選択するかに関係なく、その二重鎖領域(および必要に応じて、任意の突出部)が本明細書中に提供された基準を満たす高度に保存された領域に基づいて選択される、RNAi誘導性物質を含む。本発明は、本明細書中に記載の高度に保存された領域の基準を満たさないインフルエンザウイルス転写物の一部にターゲティングされるRNAi誘導性物質を含むことも理解すべきである。例えば、高度に保存された標的部分または好ましく保存された標的部分にターゲティングされないRNAi誘導性物質は、特定の株に対するインフルエンザウイルス産生の有効なインヒビターであり得る。あまり有効ではないRNAi誘導性実体はまた、標的特異性を評価するため、RNAi効力の決定因子を同定するため、RNAi設計を改良するためなどに使用され得る。
表1Aは、各ウイルス遺伝子セグメントの各々について、インフルエンザウイルス配列組の間で高度に保存された21ヌクレオチド領域を列挙している。表1Aに列挙した各配列は、19nt領域(nt3〜21)および対応するsiRNAのセンス鎖中に存在しないがsiRNAのアンチセンス鎖の3’突出部と相補的な最初の2nt配列を含む。センス鎖およびアンチセンス鎖のいずれかまたは両方に異なる3’突出部を有する種々のsiRNA分子を設計するために、19nt領域をセンス鎖として使用することができると認識される。したがって、種々のセンスsiRNA配列およびアンチセンスsiRNA配列は、表1Aに列挙される各配列から得られ得る。20種のこのようなsiRNA配列を、表2に列挙する。
表1Bは、インフルエンザウイルスの高度に保存された領域に基づいて設計したさらなるsiRNAを列挙する。両方の鎖を、5’→3’方向で示す。dTdT3’突出部を各鎖に付加する。表1Bに列挙した各センス鎖配列中のヌクレオチド1〜19は、インフルエンザウイルス転写物の高度に保存された領域と同一の配列を有する。対応するアンチセンス配列は、センス鎖と相補的である。本発明の特定の実施形態において、「高度に保存された領域」は、表1Aに列挙した任意の配列中のnt3〜21または表1Bに列挙した任意のセンス鎖のnt1〜19をいう。これらの領域は、本発明の特定のRNAi誘導性物質において二本鎖形態で存在し、その結果、そのRNAi誘導性物質のアンチセンス鎖は、高度に保存された部分にターゲティングされる。これらの領域の配列は、「高度に保存された配列」または「高度に保存された標的部分」と称される。
高度に保存された標的部分の選択は、複数の異なるインフルエンザウイルス株を首尾よく阻害するRNAi誘導性実体の設計に対する1つのアプローチを示す。しかし、本発明はまた、標的部分にターゲティングされるRNAi誘導性物質が複数種の異なる株(標的部分内の配列において異なる)において標的転写物の発現を阻害する可能性を向上させるために、好ましく保存される好ましい標的部分を選択するための代替的な方法を提供する。本発明に従って、標的部分が好ましく保存される場合、アンチセンス鎖が1つ以上の株(例えば、PR8)において見出されるような標的部分と100%相補的である阻害性領域を含むRNAi誘導性物質は、好ましくは、対応する標的部分がそのアンチセンス鎖の阻害性領域と100%未満相補的である1種以上の他の株に存在する対応する転写物の発現を阻害する。
本発明は、インフルエンザAウイルス転写物の好ましく保存された部分をターゲティングする種々のRNAi誘導性物質を提供し、その好ましく保存された標的部分は、本発明の方法に従って選択される。本発明の特定の実施形態において、上記標的部分は、ヒトから単離された複数種のインフルエンザAウイルス株にわたって好ましく保存される。本発明の特定の実施形態において、上記部分は、ヒト以外の動物(例えば、鳥類)から単離された複数種のインフルエンザAウイルス株わたって好ましく保存される。本発明の特定の実施形態において、上記部分は、ヒトから単離された複数種のインフルエンザAウイルス株およびヒト以外の動物(例えば、鳥類)から単離された複数種のインフルエンザAウイルス株わたって好ましく保存される。例えば、上記部分は、ヒトおよび/または動物起源の少なくとも5、10、15、20、またはそれ以上の変異型の間で好ましく保存され得る。本発明の特定の実施形態において、標的部分は、好ましくかつ高度に保存される。
任意のウイルスに関して、好ましく保存された標的部分は、最初に複数種の変異型由来の転写物配列を整列し、そしてそれらを違い(すなわち、配列の1つ以上におけるヌクレオチドの同一性が基本配列におけるものと異なる位置)を同定するために選択された基本配列と比較することによって同定され得る。上記の違いの性質は、それが有意であるか否かを決定するために評価される。保存された領域を選択するために整列かつ比較される配列の組を考察する場合、「違い」とは、多くの配列がどのようにして基本配列と異なっているかにかかわらず、1つ以上の配列が基本配列と異なっている位置をいう。基本配列は、種々の方法で選択され得る。例えば、非常に流行しているかまたは実験室環境で容易に使用可能である株由来の配列を選択することが、好都合であり得る。
好ましく保存された標的部分は、上記組における変異型中に存在する対応する標的部分が比較される場合、以下の判定基準を満たす:(1)基本配列と対応する配列との間のAからGへの変化またはCからUへの変化が任意の位置において許容される;(2)基本配列と対応する配列との間のGからAへの変化またはCからAへの変化が1位、18位、および19位の1つ以上においてのみ許容される;(3)1位と9位との間での基本配列と対応する配列との間に0、1、2、または3個の違いが存在する;(4)基本配列と対応する配列との間の2つ以下の連続した変化が存在する;ならびに(5)11位と17位との間での基本配列と対応する配列との間に最大で1つの変化が存在する。任意の株は、基本株として選択され得る。好ましくは、少なくとも5種の変異型は、好ましく保存された標的部分を同定するために比較される。
鳥類および/または他の動物宿主において循環するインフルエンザウイルスは、ときとして、ヒトに感染する能力を獲得する。このような株は、頻繁に、おそらくヒトの間の免疫力の欠如に部分的に起因して、高い死亡率をもたらす。例としては、1918年の流行ならびに香港(1997)およびベトナム(2004)において鳥類インフルエンザによるヒトの感染によって引き起こされた死亡が挙げられる。起源の鳥類または他の動物宿主による株のヒト集団への潜在的な伝播に関する懸念が、増しており、そして存在するワクチンは、鳥インフルエンザウイルス感染または豚インフルエンザウイルス感染からヒトを保護することができない。本発明は、複数種のヒトから最初に単離された株(ヒト由来株)および鳥類などの非ヒト動物から最初に単離された株(鳥類由来株)にわたって好ましくかつ/または高度に保存された標的部分を同定し、そしてこのような標的部分にターゲティングされるRNAi誘導性物質を提供する。このようなRNAi誘導性物質は、広範な種々のインフルエンザウイルス株(ヒト由来株および非ヒト動物宿主に由来する株の両方が挙げられる)から保護し得る。
実施例17は、RNAiのために好ましく保存された標的であるインフルエンザ転写物標的部分の同定を記載する。第1の工程は、全ての可能性のある19ヌクレオチドのインフルエンザウイルス標的部分を同定することである。PR8または表15A〜15Hまたは表19A〜19Fに列挙される別のインフルエンザウイルス株において見出されるような各19ヌクレオチドの可能性のある標的部分の配列は、本明細書中に列挙されると見なされるが、それらは、具体的に示されない。それらは、図32A〜32J中のインフルエンザウイルスセグメントの配列への参照によって容易に同定され得る。
次の工程は、RNAiのための好ましい機能性標的部分(すなわち、配列の特徴は標的にハイブリッド形成するアンチセンス鎖を有するRNAi誘導性物質が標的の発現を有効に阻害することを示唆する遺伝子の領域)を同定することであった。上記好ましい機能性標的部分は、GC含量およびG残基またはC残基の連続したストレッチの非存在に関する種々の判定基準を満たす。表17(図33)は、基本株PR8に存在するような好ましい機能性標的部分の配列を列挙する。
好ましく保存された標的部分を同定するために、多数のヒト由来のインフルエンザウイルス株において見出されるような対応する機能性標的部分は、その後整列された。一般に、異なる株における「対応する標的部分」は、一般に、ゲノム配列が最大の同一性を達成するように整列されそして/または相同(例えば、異なる株において少なくとも50%同一である)である場合に、異なる株のゲノム中のほぼ同じ部分に存在する。代表的に、2つの株を比較する場合、対応する標的部分の同一性の程度は、少なくとも60%、70%、80%、またはそれ以上である。例えば、対応する標的部分は、1、2、3、または4個の位置において基本株中に見出される標的部分と異なり得る。これらの好ましい相同性標的部分は正確な配列、データベース(例えばGenBank)中の関係するインフルエンザウイルスセグメント配列にアクセスし、それを基本株配列と整列し、そして基本株(例えば、PR8)において見出される標的部分とほぼ同じヌクレオチド位置および/または少なくとも80%同一、好ましくは少なくとも90%同一である位置を見出すことによって容易に同定される。相同性標的部分は、本発明の局面である。上記の判定基準は、好ましく保存された標的部分を選択するために使用された。表18(図34)は、基本株PR8中に存在するようなヒトに由来するインフルエンザ株の間で好ましく保存される標的部分の配列を列挙する。
ヒト宿主から単離された株を考慮することに加えて、鳥類宿主から単離された株は、ヒト宿主由来の単離物および鳥類宿主由来の単離物の両方の間で好ましくかつ/または高度に保存された標的部分を同定するために、整列および比較された。1つ以上の他の動物宿主由来の単離物もまた、このような比較のために使用され得た。基本配列の好ましく保存された標的部分は、整列された鳥類配列と比較され、そして好ましく保存された標的部分は、ヒト単離物の間で好ましく保存された標的部分を同定するために使用された同じ判定基準を使用して選択された。表20(図35)は、基本株PR8に存在するようなヒトおよび鳥類に由来するインフルエンザ株の間で好ましく保存される標的部分の配列を列挙する。
PR8または表15A〜15Hまたは表19A〜19Fに列挙される別のインフルエンザウイルス株において見出されるようなそれぞれの19ヌクレオチドの可能性のある標的部分は、本発明の局面である。PR8または表15A〜15Hまたは表19A〜19Fに列挙される別のインフルエンザウイルス株において見出されるようなそれぞれの好ましい機能性標的部分は、本発明の局面である。PR8または表15A〜15Hまたは表19A〜19Fに列挙される別のインフルエンザウイルス株において見出されるようなそれぞれの好ましくかつ/または高度に保存された標的部分は、本発明の局面である。それぞれのこのような配列(すなわち、潜在的であり、好ましく機能的であり、ヒト由来株の間で好ましく保存され、ヒト由来株および鳥類由来株の間で好ましく保存され、ならびに/またはヒトまたは鳥類あるいはその両方の間で高度に保存される)の相補体は、標的部分にターゲティングされるRNAi誘導性物質のアンチセンス鎖の阻害性領域についての配列として機能し得る。これらの配列の各々、または少なくとも15ヌクレオチド長のそれらのフラグメントを含むアンチセンス鎖を有するRNAi誘導性物質は、本発明の局面である。しかし、標的部分に対して完全より低い相補性を示すアンチセンス鎖あるいはより短いかまたはより長いアンチセンス鎖を含む種々のRNAi誘導性物質がまた、本明細書中に記載されるように使用され得る。標的部分の配列は、RNAi誘導性物質のセンス鎖として機能し得る。アンチセンス鎖と完全に相補的でないセンス鎖はまた、本明細書中に記載されるように使用され得る。
上述されるように、表17、18、および20に列挙される標的部分は、インフルエンザAウイルスPR8転写物の部分と同一である。各転写物に対して対応する標的部分(表17、18、および20に列挙される標的部分と同一または高度に相同的のいずれかである)は、他のインフルエンザウイルスA株において見出される。本発明の特定の実施形態において、可能性のあるインフルエンザウイルス標的部分(例えば、表17、18、または20に列挙される標的部分)にターゲティングされるRNAi誘導性物質アンチセンス鎖の阻害性領域は、PR8配列と100%相補的ではないが、表15A〜15Hまたは表19A〜19Fに列挙される他の株の1つ以上において見出される対応する標的部分と100%相補的である。本発明は、本明細書中に記載される可能性のある標的部分、機能性標的部分、好ましく保存された部分、および高度に保存された標的部分の各々にターゲティングされるRNAi誘導性実体(例えば、siRNAまたはshRNAなどのRNAi誘導性物質)を提供する。本発明はまた、本明細書中に記載される可能性のある標的部分、機能性標的部分、好ましく保存された部分、または高度に保存された標的部分のうちの少なくとも15個連続したntを含む標的部分にターゲティングされるRNAi誘導性実体(例えば、siRNAまたはshRNAなどのRNAi誘導性物質)を提供する。本発明はまた、本明細書中に記載される可能性のある標的部分、機能性標的部分、好ましく保存された部分、または高度に保存された標的部分を含む約29nt長までの標的部分にターゲティングされるRNAi誘導性実体(例えば、siRNAまたはshRNAなどのRNAi誘導性物質)を提供する。上記標的部分のさらなるヌクレオチドは、好ましくは、本明細書に列挙される19ntの標的部分の5’および/または3’の直近に位置する。いいかえると、これらのより長い標的部分のならなる約10ntのいくつかは、19ntの標的部分の上流であり得、そしていくつかは、その19ntの標的部分の下流であり得る。正確な配列は、任意の株由来の列挙される標的部分または対応する標的部分を含むゲノムセグメントについての適切な進入にアクセスし、列挙されるかもしくは対応する標的部分の5’および/または3’の直近にあるヌクレオチドを同定することによって容易に同定され得る。図32A〜32Jは、PR8(プラス鎖形態)についてのゲノムセグメント配列を示す。
本発明は、RNAi誘導性物質の有効性を検証するため、および非常に有効な様式でターゲティングされ得るインフルエンザウイルス転写物を同定する細胞培養物および/または動物モデルにおいて試験されたRNAi誘導性物質を提供する。実施例18は、ターゲティングされるインフルエンザウイルス転写物のレベルを有効に減少させるsiRNAを同定するために使用されたハイスループットスクリーニング(HTS)を記載する。実施例19〜22は、細胞においてインフルエンザウイルス産生を有効に減少させるsiRNAを同定するために使用されたハイスループットスクリーニングを記載する。特定の好ましい有効なsiRNAは、100nMの濃度にて細胞と接触させた場合にインフルエンザAウイルス力価を少なくとも4分の1に減少させた。特定の好ましい非常に有効なsiRNAは、100nMの濃度にて細胞と接触させた場合に少なくとも8分の1、またはそれより大きい程度までにもインフルエンザウイルス力価を減少させた。特定の好ましい有効なsiRNAは、1nMの濃度にて細胞と接触させた場合にインフルエンザAウイルス力価を少なくとも4分の1を減少させた。特定の好ましい有効なsiRNAは、100nMの濃度にて細胞と接触させた場合にインフルエンザAウイルス力価を少なくとも4分の1、少なくとも8分の1、または少なくとも16分の1に減少させた。特定の非常に有効なsiRNAは、5nM以下の濃度にて細胞と接触させた場合にインフルエンザAウイルス力価を少なくとも2分の1に減少させた。特定のよりさらに非常に有効なsiRNAは、1nM以下の濃度にて細胞と接触させた場合にインフルエンザAウイルス力価を少なくとも2分の1に減少させた。さらになお非常に有効なsiRNAは、0.8pM以下の濃度にて細胞と接触させた場合にインフルエンザAウイルス力価を少なくとも2分の1の減少させる。濃度とは、上記siRNAが導入の時間において細胞外部の媒体に存在した濃度をいう。
特定の実施形態において、RNAi誘導性物質は、遺伝子(例えば、NP遺伝子、PA遺伝子、PB1遺伝子、またはPB2遺伝子)の3’末端から200nt内の標的部分にターゲティングされる。7種の非常に有効なsiRNAは、この領域内の標的部分に対して見出された。本発明者らは、インフルエンザ遺伝子セグメントの5’末端および3’末端が異なる遺伝子セグメントおよび異なるインフルエンザウイルス株の両方にわたって高度に保存される約10塩基を含むことを観察した。とりわけ、PB1転写物の5’UTRをターゲティングする3種のsiRNAは、100nMにてウイルス力価の4分の1の減少を示した。
(B.RNAi誘導性実体の合成)
本発明のRNAi誘導性物質は、任意の利用可能な技術によって調製され得、その技術としては、化学合成、インビボもしくはインビトロでの酵素的切断もしくは化学的切断、またはインビボもしくはインビトロでのテンプレートの転写が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、RNAは、酵素的にか、または部分的/完全な有機合成によって産生され得、そして改変ヌクレオチドは、インビトロでの酵素的合成または有機合成によって導入され得る。1つの実施形態において、siRNAは、化学的に調製される。RNA分子を合成する方法は、当該分野において公知である(特に、VermaおよびEckstein、Anna.Rev.Biochem、67:99−134(1998)に記載されるような化学合成法)。別の実施形態において、siRNAは、酵素的に調製される。例えば、siRNAは、所望の標的RNAに対する十分な相補性を有する長dsRNAの酵素的プロセシングによって調製され得る。長dsRNAのプロセシングは、例えば、適切な細胞溶解物を使用してインビトロで達成され得、次いでsiRNAは、ゲル電気泳動またはゲル濾過によって精製され得る。例えば、RNAは、溶媒または樹脂による抽出、沈殿、電気泳動、クロマトグラフィー、あるいはそれらの組み合わせによって混合物から精製され得る。あるいは、RNAは、サンプルのプロセシングに起因する損失を回避するために、精製せずにか、または最小限の精製を伴って使用され得る。
本発明のRNAi誘導性物質は、単一のshRNA分子または互いにハイブリッド形成される2つの鎖として送達され得る。例えば、2つの別個の21ntのRNA鎖が、産生され得、それらの各々は、他方と相補的な19ntの領域を含み、そして個々の鎖は、一緒にハイブリッド形成されて構造物(例えば、図5Aに示されるもの)を産生し得る。
いくつかの実施形態において、siRNAの各鎖は、インビトロまたはインビボのいずれかでのプロモーターからの転写によって産生される。例えば、構築物は、2つの別個の転写可能な領域を含み得、それらの各々は、他方と相補的な19ntの領域を含む21ntの転写物を産生する。あるいは、対向する配置されたプロモーターP1およびP2ならびにターミネーターt1およびt2を含む単一の構築物が、利用され得、2つの異なる転写物(それらの各々は、他方と少なくとも部分的に相補的である)が、産生される(図7)。別の実施形態において、shRNAは、例えば、自己相補領域をコードする単一の転写単位の転写によって単一の転写物として産生される。図8は、1つのこのような実施形態を示す。示される通り、第1の相補領域および第2の相補領域を含み、そして必要に応じてループ領域を含むテンプレートが、利用される。本発明は、1つ以上のsiRNA鎖および/またはshRNA鎖をコードする構築物を包含する。プロモーターに加えて、上記構築物は、必要に応じて、1つ以上の他の調節エレメント(例えば、ターミネーター)を含む。
インビトロ転写は、T7プロモーター/ポリメラーゼシステム、SP6プロモーター/ポリメラーゼシステム、およびT3プロモーター/ポリメラーゼシステム(例えば、Promega、Clontech、New England Biolabsなどから入手可能なもの)を含む種々の種々の入手可能なシステムを使用して行われ得る。siRNAは、インビトロで合成される、それらは、被験体へのトランスフェクションまたは送達前にハイブリッド形成させられ得る。本発明のsiRNA組成物が全体的に二本鎖(ハイブリッド形成した)分子からなることを必要としないことが、認識される。例えば、siRNA組成物は、小さい割合の一本鎖RNAを含み得る。一般に、好ましい組成物は、少なくとも約80%のdsRNA、少なくとも約90%のdsRNA、少なくとも約95%のdsRNA、または少なくとも約99−100%ものdsRNAを含む。しかし、上記siRNA組成物は、80%未満のハイブリッド形成したRNAを含み得るが、但しそれらは、有効であるために十分なdsRNAを含む。
当業者は、本発明のsiRNA物質またはshRNA物質がインビボで産生される場合、それらが1つ以上の転写単位の転写によって産生されることが一般に好ましいことを認識する。一次転写物は、必要に応じて、遺伝子阻害を達成する最終物質を産生するために、(例えば、1種以上の細胞酵素によって)プロセシングされる。適切なプロモーターおよび/または調節エレメントが哺乳動物細胞における関連する転写単位の発現を可能にするように容易に選択され得ることが、さらに認識される。本発明のいくつかの実施形態において、調節可能なプロモーターを利用することが、所望され得る;他の実施形態において、構成的発現が、所望され得る。本明細書中で使用される場合、用語「発現」は、siRNAまたはsiRNA前駆体の合成(転写)への言及において、転写されたRNAの翻訳を意味しない。
本発明の特定の好ましい実施形態において、1つ以上のsiRNA転写単位またはshRNA転写単位のインビボ発現を指揮するために使用されるプロモーターは、RNAポリメラーゼIII(Pol III)についてのプロモーターである。Pol IIIは、テンプレート中の4〜5個のT残基のストレッチに直面する際に終結する小さい転写物の合成を指揮する。特定のPol IIIプロモーター(例えば、U6プロモーターまたはH1プロモーター)は、転写された領域内でcis作用性調節エレメント(最初に転写されたnt以外)を必要とせず、したがって、本発明の特定の実施形態よって好まれる。なぜならば、それらは、所望のsiRNA配列の選択を容易に可能にするからである。例えば、Yu,J.ら、Proc.Natl.Acad.Sci、99(9)、6047−6052(2002);Sui,G.ら、Proc.Natl.Acad.Sci、99(8)、5515−5520(2002);Paddison,P.ら、Genes and Dev.、16、948−958(2002);Brummelkamp,T.ら、Science、296、550−553(2002);Miyagashi,M.およびTaira,K.、Nat.Biotech、20、497−500(2002);Paul,Cら、Nat.Biotech、20、505−508(2002);Tuschl,T.ら、Nat.Biotech、20、446−448(2002)を参照のこと。Pol IIについてのプロモーターはまた、例えば、Xia,H.ら、Nat.Biotechnol、20、pp.1006−1010、2002に記載される通りに使用され得る。それに記載される通り、ヘアピン配列が転写開始部位およびそれに続くポリAカセットに隣接した範囲内に並置される構築物(転写されたヘアピンにおいて最小限の突出部を生じるか、突出部をまったく生じない)が、使用され得る。本発明の特定の実施形態において、組織特異的Pol IIプロモーター、細胞特異的Pol IIプロモーター、または誘導性Pol IIプロモーターが、上述の必要条件が満たされる限り使用され得る。Pol Iプロモーターはまた、種々の実施形態において使用され得る(McCown 2003)。
siRNAまたはshRNAの合成のためのテンプレートを提供する構築物(例えば、図7および8に示されるもの)のインビボ発現は、例えば、DNAプラスミドまたはウイルスベクターなどのベクターにその構築物を導入し、そしてそのベクターを哺乳動物細胞を導入することによって望ましく達成され得ることが、認識される。任意の種々のベクターが、選択され得るが、特定の実施形態において、上記構築物をインフルエンザウイルス感染に感受性である1種以上の細胞に送達し得るベクターを選択することが、望まれ得る。本発明は、siRNA転写単位および/またはshRNA転写単位を含むベクター、ならびにこのようなベクターを含むか、または1種以上のsiRNA鎖もしくはshRNA鎖をコードする転写単位を含むように操作された細胞を包含する。本発明の特定の好ましい実施形態において、本発明のベクターは、siRNAまたはshRNAを発現する構築物を哺乳動物細胞(最も好ましくは、ヒト細胞)を送達するのに適した遺伝子治療ベクターである。このようなベクターは、インフルエンザウイルスに対する曝露の前後に、そのウイルスによる感染によって引き起こされる疾患および病態に対する予防または処置を提供するために被験体に投与され得る。
したがって、本発明は、細胞内におけるその存在が細胞において少なくとも1種のインフルエンザウイルス転写物の発現を阻害するRNAi物質を形成するために自己ハイブリッド形成するかまたは互いにハイブリッド形成する1種以上のRNAの転写をもたらす種々のウイルスベクターまたは非ウイルスベクターを提供する。本発明の特定の実施形態において、2つの別個の相補siRNA鎖は、2つのプロモーターを含む単一のベクターを使用して転写され、それらのプロモーターの各々は、単一のsiRNA鎖の転写を指揮する(すなわち、転写が起こるようにsiRNAについてのテンプレートに作動可能に連結される)。上記2つのプロモーターは、同じ方向であり得、この場合において、それらの各々は、siRNA鎖の1つについてのテンプレートに作動可能に連結される。あるいは、上記プロモーターは、プロモーターからの転写が2つの相補RNA鎖の合成を生じるように単一のテンプレートに隣接(flank)する反対の方向であり得る
本発明の他の実施形態において、2つの相補領域を含む単一のRNA分子(例えば、shRNA)の転写を駆動するプロモーターを含むベクターが、使用される。本発明の特定の実施形態において、複数のプロモーターを含むベクター(それらのプロモーターの各々は、2つの相補領域を含む単一のRNA分子の転写を駆動する)が、使用される。あるいは、複数の異なるshRNAが、単一のプロモーターまたは複数のプロモーターのいずれかから転写され得る。種々の構成が、可能である。例えば、単一のプロモーターは、複数の自己相補領域を含む単一のRNA転写物の合成を指揮し得、それらの領域の各々は、ハイブリッド形成して複数のステム−ループ構造物を生じ得る。これらの構造物は、例えば、Dicerによってインビボで切断されて、複数の異なるshRNAを生じ得る。このような転写物は好ましくはその転写物の3’末端にて終結シグナルを含むが、個々のshRNA単位の間には含まないことが、認識される。本発明の別の実施形態において、上記ベクターは、複数のプロモーターを含み、それらのプロモーターの各々は、ハイブリッド形成してshRNAを形成する自己相補RNA分子の合成を指揮する。複数のshRNAは全て、同じ転写物をターゲティングし得るか、またはそれらは、異なる転写物をターゲティングし得る。ウイルス転写物のあらゆる組み合わせが、ターゲティングされ得る。実施例11および図21を参照のこと。
当業者は、本発明に従うRNAi誘導性物質のインビボ発現が長時間(例えば、数日間より長い、好ましくは少なくとも数週間〜数ヶ月、より好ましくは少なくとも1年間以上、おそらく生存期間)にわたってその物質を産生する細胞の産生を可能にし得ることをさらに認識する。このような細胞は、インフルエンザウイルスから不確定に保護され得る。
RNAi誘導性物質の細胞内発現を提供する組成物において使用するための好ましいウイルスベクターとしては、例えば、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクターなどが挙げられる。例えば、フィロウイルスエンベロープタンパク質−偽型HIVベクターに基づくベクター(これは、頂端表面由来のインタクトな気道上皮を効率的に形質導入する)を記載するKobinger,G.P.ら、Nat Biotechnol 19(3):225−30、2001を参照のこと。Lois,Cら、Science、295:868−872、Feb.1、2002年2月1日(FUGWレンチウイルスベクターを記載する);Somia,N.ら、J.Virol.74(9):4420−4424、2000;Miyoshi,H.ら、Science 283:682−686、1999;および米国特許第6,013,516号もまた参照のこと。
RNAi誘導性物質(例えば、本明細書中に記載される核酸(図5に記載される任意の構造を有する核酸、もしくは本明細書中に記載される任意の他の有効な構造を有する核酸が挙げられるが、これらに限定されない))は、全体的にヌクレオチド(例えば、天然に存在する核酸において見出されるヌクレオチド)から構成され得るか、またはこのようなヌクレオチドの1つ以上のアナログを代わりに含み得るか、またはそうでなければ天然に存在する核酸とは異なり得ることが、当業者によって認識される。改変骨格または天然に存在しないヌクレオシド間連結を含む核酸が、本発明において使用され得る。
改変核酸は、上記分子の全長にわたって均一に改変される必要はない。例えば、異なるヌクレオチド改変および/または骨格構造は、上記核酸中の種々の位置に存在し得る。本発明の特定の実施形態において、上記siRNA構造を、例えば、消化(例えば、エンドヌクレアーゼによる)を減少させるために1つ以上の自由な鎖の末端にヌクレオチドアナログを含むことによって安定化することが、望まれ得る。1つ以上の自由な末端においてデオキシヌクレオチド(例えば、ピリミジン(例えば、デオキシチミジン))を含むことは、この目的を果たし得る。代替的または追加的に、特に、RNAi物質の一方に鎖と標的転写物との相互作用によって形成される任意のハイブリッドと比較した場合19bpのステムの安定性を増大または減少させるために1つ以上のヌクレオチドアナログを含むことが、望まれ得る。当業者は、上記ヌクレオチドアナログは、標的特異的活性(例えば、RNAi媒介活性)が実質的に影響されない任意の位置(例えば、上記RNA分子の5’末端および/または3’末端における領域)にあり得ることを認識する。例えば、特定の実施形態において、siRNA鎖またはshRNA鎖の5’末端および/または3’末端における1〜5個の間の残基が、ヌクレオチドアナログである。本発明の特定の実施形態において、本発明のRNAi誘導性物質中の核酸の1つ以上は、少なくとも50%の改変されていないRNA、少なくとも80%の改変RNA、少なくとも90%改変されていないRNA、または100%の改変されていないRNAを含む。本発明の特定の実施形態において、本発明のRNAi誘導性物質中の核酸の1つ以上は、RNAi誘導性物質中の二重鎖形成に関与する部分内に100%の改変されていないRNAを含む。
本発明の特定の実施形態に従って、種々のヌクレオチド改変は、siRNA、shRNA、またはマイクロRNAの前駆体のセンス鎖またはアンチセンス鎖のいずれかにおいて選択的に使用される(例えば、そのセンス鎖中のいくつかもしくは全ての位置において改変リボヌクレオチドおよび/または改変されたか、もしくは改変されていないデオキシリボヌクレオチドを使用しつつそのアンチセンス鎖において改変されていないリボヌクレオチド利用することが、好まれ得る)。本発明の特定の実施形態に従って、唯一の改変されていないリボヌクレオチドが、上記アンチセンス鎖および/または上記センス鎖の二重鎖部分において使用される一方で、アンチセンス鎖および/またはセンス鎖の突出部は、改変リボヌクレオチドおよび/または改変デオキシリボヌクレオチドを含み得る。本発明の特定の実施形態において、一方または両方のsiRNA鎖は、1つ以上のO−メチル化リボヌクレオチドを含む。
多くのヌクレオチドアナログおよびヌクレオチド改変は、当該分野において公知であり、そしてハイブリッド形成およびヌクレアーゼ抵抗性などの特性に対するそれらの効果が、探索されている。多くの改変は、上記オリゴヌクレオチドの1つ以上の局面(例えば、相補核酸にハイブリッド形成するその能力、その安定性、バイオアベイラビリティー、ヌクレアーゼ抵抗性など)を変化させることが示されている。例えば、2’−改変としては、ハロ基、アルコキシ基およびアリルオキシ基が挙げられる。いくつかの実施形態において、2’−OH基は、H、OR、R、ハロ、SH、SR、NH、NH、NRまたはCNから選択される基によって置換され、Rは、C1〜C6アルキル、C1〜C6アルケニルまたはC1〜C6アルキニルであり、そしてハロは、F、Cl、BrまたはIである。改変された連結の例としては、ホスホロチオエート連結および5’−N−ホスホラミダイト連結が挙げられる。米国特許第6,403,779号;同第6,399,754号;同第6,225,460号;同第6,127,533号;同第6,031,086号;同第6,005,087号;同第5,977,089号、およびその中の参考文献は、本発明の実施において使用され得る広範な種々のヌクレオチドアナログおよびヌクレオチド改変を開示する。Crooke,S.(編)「Antisense Drug Technology:Principles,Strategies,and Applications」(第1版)、Marcel Dekker;ISBN:0824705661;第1版(2001)およびその中の参考文献もまた参照のこと。本発明の目的のために、上記化学的エレメントは、元素周期表、CASバージョン、Handbook of Chemistry and Physics、第75版(内表紙)にしたがって同定され、そして特定の官能基は、その中に記載されるような一般に定義されれる。アナログおよび改変は、ウイルス遺伝子の発現を有効に減少させるものを選択するために、例えば、本明細書中に記載されるアッセイまたは他の適切なアッセイを使用して試験され得る。特定の実施形態において、上記RNAi誘導性物質は、糖、ヌクレオシド、またはヌクレオシド間連結に対する1つ以上の改変(例えば、米国公開第20030175950号、同第20040192626号、同第20040092470号、同第20050020525号、同第20050032733号および/または参考文献137〜139において記載されるもののいずれか)を含む。
本発明の特定の実施形態において、上記改変は、増大した吸収性(例えば、粘膜層を横切る増大した吸収性、増大した経口吸収など)、血流中または細胞内での増大した安定性、腎臓系を介する低下したクリアランス、細胞膜を横切る増大した能力、細胞内区画(例えば、エンドソームなど)から回避する増大した能力を有する核酸をもたらす。当業者によって認識されるように、アナログまたは改変は、変化したTmをもたらし得、そのTmは、有効な抑制を依然として達成しつつガイド配列と標的との間のミスマッチの増大した許容性を生じ得るか、あるいは所望の標的転写物に対する増大または減少した特異性を生じ得る。
本発明に従う使用に有効なRNAi誘導性物質がヌクレオチドもしくはヌクレオチドアナログではない1つ以上の部分を含み得ることが、当業者によってさらに認識される。特定の実施形態において、上記核酸は、主にヌクレオチド残基を含むが、ヌクレオチドではない1つ以上の残基を含む。例えば、特定の実施形態において、有効なサイレンシング物質のいずれかの鎖中の残基の1、2、3、4、5、またはそれ以上は、ヌクレオシドではない。特定の実施形態において、二重鎖形成に関与するそして/または標的転写物と相補的であるRNAi誘導性物質の部分は、ヌクレオシドからなるが、上記突出部は、非ヌクレオシド残基からなる。本発明の特定の実施形態において、RNAi誘導性物質のセンス鎖およびアンチセンス鎖は、リンカーを含む非ヌクレオシドによって互いに結合される。
(III.好ましいインフルエンザウイルス標的部分の同定に基づくRNAi誘導性物質および他の核酸)
本発明は、可能性のある標的部分、機能性標的部分、好ましく保存された標的部分、および高度に保存された標的部分の同定に基づく種々の核酸を提供する。特に、本発明は、表1A、1B、17、18、20、および/または34に記載されるインフルエンザ配列あるいは少なくとも15ヌクレオチド長であるそれらの下位配列(フラグメント)を含む、その配列が任意の上に記載される可能性のある標的部分を構成するかまたはそれからなる核酸を提供する。特定の標的部分にターゲティングされるsiRNAは、予想外に高い効力をを示した。効力を評価するために、siRNAは、インフルエンザウイルスによる感染の6時間前に細胞に投与され、そしてインフルエンザウイルス産生は、感染の24時間後に試験された。特定の実施形態において、上記配列は、配列番号272〜380から選択される。これらの標的部分にターゲティングされるsiRNA(上記標的部分と100%相補的なアンチセンス鎖を含む)は、100nMにてウイルス産生の4分の1の減少(75%の減少)を示した。特定の実施形態において、上記配列は、配列番号274、286、287、292、297、298、304、305、309、310、311、319、324、327、334、346、347、360、361、364、および366から選択される。これらの標的部分にターゲティングされるsiRNA(上記標的部分と100%相補的であるアンチセンス鎖を含む)は、5nMにてウイルス産生の2分の1の減少(50%の減少)を示した。特定の実施形態において、上記配列は、配列番号297、309、310、311、346、347、364、および366から選択される。これらの標的部分にターゲティングされるsiRNAは、標的部分が2個までの位置においてPR8中の対応する標的部分と異なった場合(すなわち、アンチセンスsiRNA鎖とその標的部分との間に2つまでのミスマッチが存在する)でさえ、5nMにてウイルス産生の2分の1の減少(50%の減少)を示した。これらの核酸の相補体およびフラグメントもまた、提供される。いくつかの実施形態において、上記フラグメントは、16nt長、17nt長、または18nt長である。上記核酸は、単一鎖または二本鎖であり得、そして改変されていないRNAもしくはDNA、またはそれらの改変バージョンであり得る。上記配列は、3’突出部(例えば、dTdT突出部)をさらに含み得る。本発明はまた、表1A、1B、17、18、20、および/または34に列挙される任意の配列あるいは少なくとも15ヌクレオチド長であるそれらの下位配列と実質的に同一(例えば、少なくとも70%同一、少なくとも80%同一、少なくとも90%同一、100%同一)、100%相補的、または実質的に相補的(例えば、少なくとも70%、少なくとも80%同一、少なくとも90%同一、100%同一)である核酸を提供する。本発明はさらに、上述の核酸の1つ以上を含むベクターをさらに提供する。
上記核酸としては、RNAi誘導性物質(例えば、(i)siRNA;(ii)shRNA;(iii)相補的な一本鎖RNAとハイブリッド形成してsiRNAを形成する一本鎖RNA;および(iv)任意の前述の核酸の転写のためのテンプレートを含むベクター)が挙げられる。配列がRNAとして提示される場合、対応するDNA配列はまた、本発明(およびその逆も同様)によって提供される。配列が本明細書中に提示される場合、本発明は、その配列およびその相補体を含む二本鎖核酸を包含する。本発明の任意の核酸は、サイズが限定され得る。例えば、核酸の長さは、19nt以下、29ntまたは30nt以下、35nt以下、50nt以下、あるいは100nt以下であり得る。
本発明は、任意の核酸塩基含有構造を包含し、ここで残基(例えば、ヌクレオチド)は、核酸塩基配列がその構造に割り当てられ得るように、順序付けられた様式(代表的に、線形様式)で1つに連結され、その配列は、本明細書中に開示される任意の配列である。種々の核酸塩基および改変ヌクレオチドおよび改変骨格は上に記載され、それらのうちの任意のものが、使用され得る。本発明の種々の実施形態において、上記構造物は、核酸、ペプチド核酸(PNA)、ロックされた(locked)核酸(LNA)、またはキメラ分子などである。例えば、WO92/20702、米国特許第6,316,230号、およびその中の参考文献を参照のこと。本発明はまた、同じ塩基対形成特異性を有するか、またはそうでなければ上記配列中に存在する核酸塩基を置換し得る代替的な核酸塩基を含む構造物を包含する。
上記一本鎖核酸は、RNAi誘導性物質(例えば、siRNAまたはshRNA(必要に応じて、突出部を形成する3’末端における1つ以上のヌクレオチドの付加を有する))のアンチセンス鎖またはセンス鎖として使用され得る。本発明の核酸はまた、例えば、従来のアンチセンス試薬、プローブ(例えば、インフルエンザウイルス感染を検出するための)などとして使用され得る。「従来のアンチセンス」とは、インビトロで一本鎖オリゴヌクレオチドを投与するか、または被験体に一本鎖オリゴヌクレオチドを投与することによって転写物の発現を阻害する方法をいう。このような阻害は、RNAiのものと異なる機構によって行われ、そして二本鎖RNA分子(上記アンチセンスオリゴヌクレオチドと標的転写物との間に形成される二重鎖以外)を必要としないと考えられる。例えば、Crooke,S.、前出を参照のこと。
したがって、本発明は、インフルエンザAウイルス転写物の標的部分を含む核酸を提供し、その核酸の配列は、表1A、1B、17、18、20、および34の1つ以上に列挙される配列の少なくとも15個、16個、17個、18個、または19個連続したntを含む。特定の実施形態において、上記配列は、表1A、1B、17、18、20、および34の1つ以上に列強される配列からなるかまたはその配列内に含まれる。本発明は、インフルエンザAウイルスmRNA転写物の標的部分を含む核酸をさらに提供し、その核酸の配列は、任意の可能性のあるインフルエンザウイルス標的部分の少なくとも15個、16個、17個、18個、または19個連続したヌクレオチドを含む。5’末端および3’末端におけるヌクレオチドは、配列内に含まれると見なされる。特定の実施形態において、上記配列の長さは、30nt以下、35nt以下、50nt以下、または100nt以下である。
本発明は、その配列が任意の可能性のあるインフルエンザウイルス標的部分(例えば、任意の表1A、1B、17、18、20および/または34に列挙される標的部分)に実質的に同一(少なくとも70%同一、少なくとも80%同一、少なくとも90%同一、少なくとも95%同一、または少なくとも99%同一)である部分を含む核酸をさらに提供する。特定のこれらの位置は、可能性のあるインフルエンザウイルス標的部分(例えば、任意の表1A、1B、17、18、20、および/または34に列挙される標的部分)に関して1、2、3、4、または5個の位置にて違いを含む。本発明の特定の実施形態において、1、2、3、4、または5個の位置における違いは、実質的に同一である配列中のUによる標的部分中のCの置換、または実質的に同一である配列中のGによる標的部分中のAの置換である。本発明の特定の核酸の配列は、可能性のあるインフルエンザウイルス標的部分(例えば、表1A、1B、17、18、20、および/または34に列挙される標的部分)に隣接する標的転写物において見出される配列を含む(すなわち、その標的部分の5’または3’に位置する)。
本発明は、少なくとも15nt、少なくとも16、少なくとも17nt、少なくとも18nt(好ましくは、19nt)の窓にわたって可能性のあるインフルエンザウイルス標的部分(例えば、表1A、1B、17、18、20および/または34に列挙される標的部分)と相補的であるアンチセンス鎖を有するRNAi誘導性物質を提供する。例えば、上記アンチセンス鎖は、15nt、16nt、17nt、18nt、または19ntにわたって上記列挙された高度に保存された標的部分と100%相補的であり得るか、あるいは実質的に相補的であり得る(例えば、その標的部分に関して1個と5個との間のミスマッチを有する)。特定の実施形態において、1つ以上(例えば、全て)、アンチセンス鎖の阻害性領域と標的との間のミスマッチは、U−Gミスマッチである。RNAi誘導性物質のセンス鎖は、アンチセンス鎖と100%相補的であっても、アンチセンス鎖と実質的に相補的であってもよい。本発明はまた、15nt、16nt、17nt、18nt、または19ntにわたって表1A、1B、17、18、20、および/または341つ以上に列挙される高度かつ/または好ましく保存された配列と100%同一または実質的に同一である配列を含むセンス鎖を有するRNAi誘導性物質を提供する。
例えば、本発明は、インフルエンザウイルス転写物にターゲティングされるRNAi誘導性物質を提供し、そのRNAi誘導性物質は、以下を含む:配列が配列番号272〜380、その相補体、または少なくとも15ヌクレオチドを有するそれらいずれかのフラグメントからなる群より選択されるからなる群より選択される配列を含む核酸部分。上記RNAi誘導性物質は、好ましくは、上記第1の核酸部分と二重鎖構造を形成する第2の核酸部分を含む。特定の実施形態において、上記第1の核酸部分および第2の核酸部分は、それぞれ50nt長以下(例えば、35nt長以下(例えば、21〜23nt長など))である。特定の実施形態において、上記配列は、以下からなる群より選択される:配列番号274、286、287、292、297、298、304、305、309、310、311、319、324、327、334、346、347、360、361、364、および366、その相補体、または少なくとも15ヌクレオチドを有するそれらいずれかのフラグメント。特定の実施形態において、上記配列は、以下からなる群より選択される:配列番号297、309、310、311、346、347、364、および366、その相補体、または少なくとも15ヌクレオチドを有するそれらいずれかのフラグメント。本発明の特定の実施形態において、可能性のあるインフルエンザウイルス標的部分(例えば、配列が表1A、1B、17、18、20、および/または34に列挙される標的部分)に基づいて設計されたRNAi誘導性物質のアンチセンス鎖の配列は、その列挙される配列と100%相補的である少なくとも10個、少なくとも12個、少なくとも15個、少なくとも17個、または少なくとも19個連続したntを含む。このようなRNAi誘導性物質のセンス鎖は、上記アンチセンス鎖と100%相補的であっても、上記アンチセンス鎖と実質的に相補的であってもよい。本発明の特定の実施形態において、可能性のあるインフルエンザウイルス標的部分(例えば、表1A、1B、17、18、20および/または34に提示される配列)に基づいて設計されたRNAi誘導性物質のセンス鎖の配列は、列挙される配列の少なくとも10個、少なくとも12個、少なくとも15個、少なくとも17個、および/または少なくとも19個連続したntを含む。
本発明の特定の実施形態において、可能性のあるインフルエンザウイルス標的部分(例えば、表1A、1B、17、20および/または34に提示される配列)に基づいて設計されたRNAi誘導性物質のアンチセンス鎖の配列は、1個または2個のミスマッチが存在し得ることを除いてその列挙される配列と100%相補的である少なくとも10個、少なくとも12個、少なくとも15個、少なくとも17個、および/または少なくとも19個連続したntを含む。このようなRNAi誘導性物質のセンス鎖は、上記アンチセンス鎖と100%相補的であっても、上記アンチセンス鎖と実質的に相補的であってもよい。本発明の特定の実施形態において、可能性のあるインフルエンザウイルス標的部分(例えば、表1A、1B、17、18、20および/または34に列挙される配列)に基づいて設計されたRNAi誘導性物質のセンス鎖の配列は、1個または2個のntが列挙される配列と異なり得ることを除いて、列挙される配列の少なくとも10個連続したヌクレオチド、より好ましくは少なくとも12個連続したnt、より好ましくは少なくとも15個連続したnt、より好ましくは少なくとも17個連続したnt、およびよりなお好ましくは19個連続したntを含む。
アンチセンス鎖が19nt未満にわたって上記配列と実質的に相補的であるかまたは100%相補的である本発明の実施形態において、アンチセンス鎖の残りの部分は、列挙される標的部分の外側にあり、そして列挙される標的部分に隣接するインフルエンザ配列と実質的に相補的であっても、100%相補的であってもよく、そして好ましくは、実質的に相補的であるか、または100%相補的である。したがって、本発明は、配列が表1A、1B、17、18、20および/または34中の配列から1nt以上(例えば、9ntまで)「シフトされる(shifted)」インフルエンザ配列と相補的であるアンチセンス鎖を有するRNAi誘導性物質を包含する。隣接する配列は、図32に見出される。
本発明の特定の実施形態に従って、上記RNAi誘導性物質は、少なくとも2、3、4、5、または以上の異なる種の生物体に天然に感染するインフルエンザ変異型の間で好ましくかつ/または高度に保存される領域にターゲティングされる。上記種としては、ヒト、ウマ(equine)(ウマ(horse))、鳥類、豚およびその他が挙げられ得る。本発明の特定の好ましい実施形態において、上記種としては、ヒトが挙げられる。
本発明はまた、本発明のRNAi誘導性物質が転写され得るベクター、そのベクターを含む細胞、ならびにインフルエンザAウイルス感染の処置および/または予防のために使用する方法を提供する。
本発明は、可能性のあるインフルエンザウイルス標的部分の変異型(例えば、表1A、1B、17、18、20、および/または34に列挙される核酸の任意の変異型)、およびこのような変異型を含む核酸(例えば、このような変異型を含むRNAi誘導性物質)を提供し、変異型の配列は、その列挙される配列と、1、2、3、4、5、または6個の位置にて異なる。本発明の特定の好ましい実施形態において、列挙される配列の変異型は、PR8以外のインフルエンザウイルス株(例えば、任意の表15A〜15Hおよび/または表19A〜19Fに列挙されるインフルエンザAウイルス株)由来の転写物の配列の一部と同一または実質的に同一である。さらに、本明細書中に開示される種々の配列の下位配列もまた、包含される。好ましい下位配列は、15nt長〜18nt長の間(例えば、15nt長、16nt長、17nt長、または18nt長)である。ヌクレオチドの欠失および/または付加によって本明細書中に列挙される特定の配列に関連する配列もまた、包含される。例えば、1nt、2nt、3nt、4nt、5nt、または6ntが任意の本明細書中に列挙される配列から欠失するかまたはその配列に付加される核酸配列が、包含される。さらに、1nt、2nt、3nt、4nt、5nt、または6ntが任意の本明細書中に列挙される配列の変異型(上に記載されるような)から欠失するかまたはその変異型に付加される配列は、包含される。欠失するかまたは付加されるヌクレオチドは、最初の配列に対して近接してか、または近接せずに位置し得る。それらは、内部かあるいは一方または両方の末端に位置し得る。付加されるヌクレオチドは、配列内の任意の位置に配置され得るか、一方または両方の末端に結合され得る。
本発明の核酸(例えば、RNAi誘導性物質またはRNAi誘導性ベクター)は、任意の利用可能な方法によって細胞に導入され得る。例えば、核酸またはそれらをコードするベクターは、従来の形質転換技術またはトランスフェクション技術によって細胞に導入され得る。本明細書中で使用される場合、用語「形質転換」および「トランスフェクション」とは、外来核酸(例えば、DNAまたはRNA)を細胞に導入するための種々の当該分野で認識される技術をいい、その技術としては、リン酸カルシウム共沈殿または塩化カルシウム共沈殿、DEAE−デキストラン媒介トランスフェクション、リポフェクション、インジェクション、またはエレクトロポレーションが挙げられる。送達因子(例えば、下に記載されるもの)が、使用され得る。
本発明は、本発明の核酸(例えば、RNAi誘導性物質(例えば、siRNA、shRNA、または本発明のRNAi誘導性物質の合成のためのテンプレートを提供するベクター))を含むように操作された任意の細胞を包含する。上記細胞は、哺乳動物細胞(例えば、ヒト細胞または非ヒト哺乳動物細胞)または非哺乳動物細胞であり得る。好ましくは、上記細胞は、哺乳動物被験体の鼻腔および/または気道あるいは肺において見出されるものであり、そしてインフルエンザウイルスによる感染に感受性である。最も好ましくは、上記細胞は、気道上皮細胞である。必要に応じて、このような細胞はまた、インフルエンザウイルスRNAを含む。
(IV.診断方法および診断キット)
本発明は、感染症(例えば、呼吸器ウイルスによって引き起こされる感染)のRNAiベースの治療が、処置の必要がある被験体が1つ以上のRNAi誘導性実体による阻害に感受性である感染因子に感染しているか否かを決定する診断工程を望ましく組み込み得るという認識を包含する。「阻害に感受性」によって、感染因子の1つ以上の生物学的活性被験体に対するRNAi誘導性実体の投与によって有効に阻害され得ることが意味される。好ましくは、感染因子の複製、病原性、伝播、および/または産生は、阻害される。例えば、好ましくは、感染因子の複製、病原性、伝播、および/または産生は、RNAi誘導性実体が被験体に耐量にて投与される場合に少なくとも25%阻害される。好ましくは、上記阻害は、治療的に有用な効果をもたらすのに十分である。
インフルエンザウイルスは、本発明の診断方法を例示するために例として使用される、その方法は、感染に罹患する被験体に適したRNAi誘導性実体の選択を可能にするように調節(tailor)される。当然に、選択されたRNAi誘導性実体はまた、例えば、個体が感染の症状を発症しているか否かにかかわらず、感染した個体との接触に至った個体に対して、予防のために投与され得る
したがって、本発明は、インフルエンザウイルス感染を診断するための方法および被験体がインフルエンザウイルスに感染しているか否かを決定するための方法を提供する.特定の実施形態において、この方法は、本発明のRNAi誘導性実体の1つ以上によって阻害されるインフルエンザウイルスに感染しているか否かを決定することを包含する。例えば、サンプル(例えば、痰、唾液、鼻洗浄液、鼻腔スワブ、咽頭スワブ、気管支洗浄液、気管支肺胞洗浄(BAL)流体、生検標本など)は、ウイルス感染(例えば、インフルエンザ)を有すると疑われ得る被験体から得られる。上記サンプルは、1つ以上の処理工程に供され得る。任意のこのような処理されるサンプルは、上記被験体から得られることが考慮される。上記サンプルは、それがインフルエンザウイルス特異的核酸を含むか否かを決定するために分析される。「インフルエンザウイルス特異的核酸」は、インフルエンザウイルスが起源であるかまたはインフルエンザウイルスに由来する任意の核酸、またはその相補体であり、そしてサンプル中のインフルエンザウイルスの存在の指標として機能し得、必要に応じて、インフルエンザ株および/またはインフルエンザ遺伝子の配列を同定するために使用され得る。上記核酸は、処理工程に供され得、次いでその核酸が、単離され得る。例えば、それは、逆転写、増幅、切断などされ得る。好ましくは、上記配列は、少なくとも15nt長(例えば、20〜25nt、25〜30nt、またはそれ以上)である。特定の実施形態において、上記配列は、他のウイルスにおいて見出される配列とは異なり、その結果その存在が、インフルエンザウイルスの存在を特異的に示す。
特定の実施形態において、上記サンプル中に存在するインフルエンザウイルス特異的核酸配列、またはその相補体は、RNAi誘導性物質(例えば、siRNAまたはshRNA)のアンチセンス鎖またはセンス鎖の配列と比較される。単語「比較」は、配列が評価され得る任意の方法をいうために広義に使用され、例えば、それは、その配列が1個以上の位置において参照配列と同じであるかまたは異なるか、あるいは違いの程度が評価され得ることによってを決定され得る。
任意の広範な種々の核酸ベースのアッセイが、使用され得る。特定の実施形態において、上記診断アッセイは、好ましくかつ/もしくは高度に保存された標的部分、またはその相補体、あるいはその好ましくかつ/もしくは高度に保存された部分のフラグメントまたはその相補体を含む核酸を利用する。特定の実施形態において、上記核酸は、例えば、アッセイ(例えば、下に記載されるアッセイ)において増幅プライマーまたはハイブリッド形成プローブとして機能する。
特定の実施形態において、上記サンプル中のインフルエンザ特異的核酸は、増幅される。任意の適切な増幅方法が使用され得、その増幅方法としては、指数関数的増幅、連鎖型線形(linked linear)増幅、ライゲーションベースの増幅、および転写ベースの増幅が挙げられる。指数関数的な核酸増幅方法の例は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)であり、それは、例えば、Mullisら、Cold Spring Harbor Symp.Quant.Biol.51:263−273(1986);PCR Cloning Protocols:From Molecular Cloning to Genetic Engineering、Methods in Molecular Biology、White,B.A.編、第67巻(1998);Mullis、EP 201,184;Mullisら、米国特許第4,582,788号および同第4,683,195号;Erlichら、EP 50,424、EP 84,796、EP 258,017、EP 237,362;ならびにSaiki R.ら、米国特許第4,683,194号に記載される。連鎖型線形増幅は、米国特許第6,027,923号においてWallaceらによって開示される。ライゲーションベースの増幅の例は、ライゲーション増幅反応(LAR)(Wuら(Genomics 4:560(1989))によって教示される)およびリガーゼ連鎖反応(欧州特許出願第0320308 B1号)である。Hampsonら(Nucl.Acids Res.24(23):4832−4835、1996)は、方向性ランダムオリゴヌクレオチド初回刺激(directional random oligonucleotide primed)(DROP)法を記載する。
等温性標的増幅方法としては、転写媒介性増幅(TMA)、自立配列複製(3SR)、核酸配列ベースの増幅(Nucleic Acid Sequence Based Amplification)(NASBA)、およびそれらのバリエーション(Guatelliら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.87:1874−1878(1990);米国特許第5,766,849号(TMA);および同第5,654,142号(NASBA)を参照のこと)、ならびに他のもの(例えば、Malekら、米国特許第5,130,238号;KacianおよびFultz、米国特許第5,399,491号;Burgら、米国特許第5,437,990号において記載されるような)が挙げられる。
検出または比較は、当該分野において公知である任意の種々の方法を使用して行われ得る(例えば、増幅ベースのアッセイ、ハイブリッド形成アッセイ、プライマー伸長アッセイ(例えば、異なるインフルエンザウイルス株の対応する標的部分が遺伝子の異なる対立遺伝子に類似する対立遺伝子特異的プライマー伸長)、オリゴヌクレオチドライゲーションアッセイ(米国特許第5,185,243号、同第5,679,524号および同第5,573,907号)、切断アッセイ、ヘテロ二重鎖追跡分析(HTA)アッセイなど)。例としては、Taqman(登録商標)アッセイ、Applied Biosystems(米国特許第5,723,591号)が挙げられる。このアッセイにおいて、2つのPCRプライマーは、中心プローブオリゴヌクレオチドに隣接(flank)する。プローブオリゴヌクレオチドは、2つの蛍光部分を含む。PCRプロセスの重合工程の間に、ポリメラーゼは、上記プローブオリゴヌクレオチドを切断する。上記切断は、上記2つの蛍光部分物理的に分離させ、これは、蛍光放出の波長の変化をもたらす。より多くのPCR産物が作製される場合、新規の波長の強度が、増大する。標的の増幅よりもむしろシグナルまたはプローブの増幅に基づく核酸検出システム(米国特許第5,011,769号、同第5,403,711号、同第5,660,988号、および同第4,876,187号)であるサイクリングプローブ技術(CPT)もまた、利用され得た。侵襲的切断(Invasive cleavage)アッセイ(例えば、Eis,P.S.ら、Nat.Biotechnol.19:673、2001に記載されるInvader(登録商標)アッセイ(Third Wave Technologies))もまた、インフルエンザ特異的核酸を検出するために使用され得る。分子ビーコン(米国特許第6,277,607号;同第6,150,097号;同第6,037,130号)または蛍光エネルギー移動(FRET)に基づくアッセイが、使用され得る。分子ビーコンは、完全に一致したテンプレートに対する結合の際にコンホメーションの変化を受けるオリゴヌクレオチドヘアピンである。上記オリゴヌクレオチドのコンホメーションの変化は、そのオリゴヌクレオチド上に存在するフルオロフォア部分とクエンチャー部分との間の物理的距離を増大させる。この物理的距離の増大は、減少される上記クエンチャーの効果をもたらし、したがってフルオロフォアに由来するシグナルを増大させる。米国公開第20050069908号およびその中の参考文献は、核酸の検出のために使用され得る種々の他の方法を記載する。本発明のプローブは、したがって、インフルエンザ特異的配列にハイブリッド形成する1つ以上の部分および特定のアッセイによって設計された1つ以上の部分を含み得る。米国特許第5,854,033号、同第6,143,495号、および同第6,239,150号は、ローリングサークル複製を含む目的の分子の増幅および多重検出のための組成物および方法を記載する。この方法は、サンプル中の複数の特定の核酸を同時に検出するのに有用である。例えば、それは、サンプル中の1つ以上のインフルエンザ特異的核酸の存在を決定するために使用され得る。必要に応じて、上記核酸は、配列決定される。米国公開第20050026180号は、核酸反応を多重化するための方法を記載し、その方法としては、増幅、検出および遺伝子型決定が挙げられる、その方法は、RNAi誘導性実体に対する感受性を決定するために、インフルエンザ特異的配列の検出、および目的とする特定の位置における配列を決定するのに適し得る。
特定の実施形態において、上記アッセイは、上記サンプル中のインフルエンザ特異的核酸がRNAi誘導性実体のセンス鎖またはアンチセンス鎖と同一である部分を含むかまたは異なる部分を含むかを決定する。必要に応じて、正確な違い(存在する場合)は、同定される。この情報は、インフルエンザウイルスが上記RNAi誘導性実体による阻害に感受性であるか否かを決定するために使用される。上で考察されるものに加えて、感染因子の検出および/または遺伝子型決定のための適切なアッセイは、Molecular Microbiology:Diagnostic Principles and Practice、Persing,D.H.ら(編)、Washington,D.C:ASM Press、2004に記載される。任意の上記アッセイは、自動化されたシステムを使用して行われ得る。核酸ベースの診断アッセイを行うための多くのシステムは、当該分野において公知であり、そして本発明の目的に容易に適合し得る。1つの実施形態において、サンプル由来の核酸は、種々の異なるインフルエンザウイルス転写物またはその部分と相補的である核酸の多重度が加えられるマイクロアレイ(「チップ」とも称される)に適用される。上記ハイブリッド形成パターンは、検出される、およびそのハイブリッド形成パターンは、上記インフルエンザウイルスがRNAi誘導性実体による阻害に感受性であるか否かを決定するのに十分な情報を提供する。特定の実施形態において、上記サンプル中のインフルエンザ特異的核酸は、配列決定される(代表的に、増幅の後)。複数の異なるアッセイが、使用され得る。
上記診断アッセイは、第III説に記載される任意の核酸を使用し得る。本発明の特定の実施形態において、上記核酸は、インフルエンザウイルス転写物と実質的に相補的でないか、または実質的に同一でない核酸部分を含む。例えば、上記核酸は、プライマー結合部位(例えば、ユニバーサル配列決定プライマーまたはユニバーサル増幅プライマーに対する結合部位)、ハイブリッド形成タグ(それは、例えば、他の核酸を含むサンプル由来の核酸を単離するために使用され得る)などを含み得る。本発明の特定の実施形態において、上記核酸は、非ヌクレオチド部分を含む。上記非ヌクレオチド部分は、上記核酸の末端ヌクレオチド(例えば、3’末端)に結合され得る。上記部分は、分解から上記核酸を保護し得る。特定の実施形態において、上記非ヌクレオチド部分は、検出可能な部分(例えば、蛍光色素、放射性原子、蛍光エネルギー移動(FRET)対のメンバー、クエンチャーなど)である。特定の実施形態において、上記非ヌクレオチド部分は、結合部分(例えば、ビオチンまたはアビジン)である。特定の実施形態において、上記非ヌクレオチド部分は、ハプテン(例えば、ジゴキシゲニン、2,4−ジニトロフェニル(TEG)など)である。特定の実施形態において、上記非ヌクレオチド部分は、上記核酸の単離に使用可能なタグである。
本発明の特定の実施形態において、核酸は、支持体(例えば、ビーズ(必要に応じて、磁性である)などの微粒子)に結合される。本発明は、本発明の核酸の多重度(例えば、少なくとも10、20、50など)を含むアレイをさらに提供する。上記核酸は、支持体(例えば、ガラス製スライドなどの実質的に平らな支持体)に共有結合または非共有結合される。例えば、米国特許第5,744,305号;同第5,800,992号;同第6,646,243号を参照のこと。
特定の株のインフルエンザウイルスまたは標的部分内の特定の配列を有するインフルエンザウイルスが特定の配列を含むアンチセンス鎖を有する特定のRNAi誘導性実体(例えば、siRNAまたはshRNA)による阻害に感受性であるか否かに関する情報は、「感受性情報」と称される。感受性情報は、感受性の程度に関する定量的情報を含み得る。本発明の目的に関して、インフルエンザウイルスは、RNAi誘導性実体が、細胞と接触させるか、または耐量にて被験体に投与した場合に感染した細胞におけるウイルス産生を少なくとも25%減少させる場合、RNAi誘導性実体(例えば、siRNAまたはshRNA)による阻害に感受性であると見なされる。
好ましい実施形態において、インフルエンザウイルス転写物は、配列番号272〜380のいずれかと100%同一(好ましくは、配列番号274、286、287、292、297、298、304、305、309、310、311、319、324、327、334、346、347、360、361、364、および366のいずれかと100%同一、よりなお好ましくは配列番号297、309、310、311、346、347、364、および366のいずれかと100%同一)である標的部分を含み、上記インフルエンザウイルスは、上記標的部分と100%相補的であるアンチセンス鎖を含むRNAi誘導性実体に感受性であると見なされる。他の実施形態において、インフルエンザウイルス転写物が、1、2、または3個の位置(好ましくは、1または2個の位置、より好ましくは、1個だけの位置)にて配列番号272〜380のいずれかと異なる標的部分を有する場合、そのインフルエンザウイルスは、その標的部分と100%相補的であるアンチセンス鎖を含むRNAi誘導性実体に感受性であると見なされる。他の実施形態において、インフルエンザウイルス転写物が、1、2、または3個の位置(好ましくは、1または2個の位置、より好ましくは、1個だけの位置)にて、配列番号274、286、287、292、297、298、304、305、309、310、311、319、324、327、334、346、347、360、361、364、または366のいずれかと異なる標的部分を含む場合、そのインフルエンザウイルスは、その標的部分と100%相補的であるアンチセンス鎖を含むRNAi誘導性実体に感受性であると見なされる。他の実施形態において、インフルエンザウイルス転写物が、1、2、または3個の位置(好ましくは、1または2個の位置、より好ましくは、1個だけの位置)にて配列番号297、309、310、311、346、347、364、および366のいずれかと異なる標的部分を含む場合、その標的部分と100%相補的であるアンチセンス鎖を含むRNAi誘導性実体に感受性であると見なされる。
上記標的部分内に特定の配列を含むインフルエンザウイルスの処置における実験または以前の経験から得られる情報はまた、ウイルスが所与のRNAi誘導性実体またはその組み合わせによる阻害に感受性であるか否かを決定するために使用され得る。感受性情報はまた、例えば、上記インフルエンザウイルス配列と阻害物質のアンチセンス鎖との間に存在する任意のミスマッチの予想される効果に基づく理論的予測を含み得る。
感受性情報は、コンピューターで読み取り可能な媒体上のコンピューターで読み取り可能な形式(例えば、データベースにおける組織化された様式)で保存され得る。被験体から得られたサンプルにおいて行われる診断試験の結果は、情報を評価し、そして被験体に感染するインフルエンザウイルスの感受性プロフィールを決定するコンピューター化されたシステムに提供される。特定の実施形態において、上記システムは、特定のRNAi誘導性物質もしくはその組み合わせおよび/または用量を推奨する。したがって、本発明は、RNAi誘導性実体に対するウイルス(例えば、インフルエンザウイルス)の感受性を決定するためのコンピューター化されたシステムに提供する。本発明は、感受性情報を含むデータベースをさらに提供する。上記アッセイを行うためのコンピューター化されたシステムおよび自動化されたシステムは、1つに統合された自動化システムの一部であり得るか、または別個に提供され得る。
本発明は、インフルエンザウイルス感染を検出するための診断キットを提供する。特定のキットは、本発明の1つ以上の核酸を含む。特定のキットは、RNAiのための好ましい標的部分を含むインフルエンザウイルス転写物の部分を検出するために使用され得る1つ以上の核酸を含む。.上記キットは、以下からなる群より選択される1つ以上の物品を含み得る:プローブ、プライマー、配列特異的オリゴヌクレオチド、酵素、基質、抗体、ヌクレオチドの集団、緩衝液、ポジティブコントロール、およびネガティブコントロール。上記ヌクレオチドは、標識され得る。例えば、蛍光標識されたヌクレオチド(例えば、dNTP、ddNTPなど)の1つ以上の集団が、提供され得る。
上記プローブは、標的部分(例えば、高度かもしくは好ましく保存された標的部分、またはその相補体)の全部または一部を含む核酸であり得るか、あるいは標的部分と少なくとも80%同一または80%相補的(例えば、100%同一または100%相補的)である。特定の実施形態において、複数のプローブが、提供される。上記プローブは、1つ以上の位置にて異なり、そしてこのような位置におけるインフルエンザウイルス転写物の正確な配列を決定するためにあ使用され得る。例えば、上記プローブは、上記転写物に差次的にハイブリッド形成し得る(例えば、ハイブリッド形成が上記プローブがその転写物の標的部分と100%相補的である場合にのみ生じる)。
上記プライマーは、標的部分の上流および下流に位置する部位と相補的であり得、そして上記標的部分を含むインフルエンザウイルス核酸の領域を増幅するために使用され得、次いでそれは、配列決定され得るか、またはさらなるプロセスに供され得る。上記増幅された領域の長さは、例えば、100〜200nt、200〜300ntまたはそれ以上であり得る。所望の長さの領域を増幅するために上記標的部分から十分に離れた距離で部位に結合するプライマーが、選択される。増幅プライマーを選択するための方法は、当該分野において周知である。上記キットは、配列特異的オリゴヌクレオチドを含み得る。上記オリゴヌクレオチドは、実質的に相補的(そのオリゴヌクレオチドの3’末端ヌクレオチドがその核酸と完全にと相補的)である核酸(例えば、インフルエンザウイルス特異的核酸)にハイブリッド形成した場合にそれらがポリメラーゼ媒介性伸長またはポリメラーゼ媒介性ライゲーションを支援するだけであるという点で配列特異的である。好ましくは、複数の配列特異的オリゴヌクレオチドが、提供される。上記オリゴヌクレオチドは、3’末端位置において異なり、したがって上記オリゴヌクレオチドが目的の核酸(例えば、インフルエンザウイルス特異的核酸)にハイブリッド形成される場合に、その位置に対向して位置するヌクレオチドの同一性を確立するために使用され得る。
本発明のキットは、標本回収材料(例えば、スワブ、チューブなど)を含み得る。上記キットの構成要素は、一般に、そのキットの使用についての指示書と一緒に容器(例えば、市販に適したプラスチック容器または発泡スチレン容器)中に提供される個々の管またはチューブにパッケージ化され得る。
(V.トランスジェニック動物)
本発明は、本発明のRNAi誘導性物質を含むか、または発現するように操作されたトランスジェニック動物を包含する。このような動物は、本発明のRNAi物質の機能および/または活性を研究するために有用であり、そして/あるいはインフルエンザウイルス感染/複製系を研究するために有用である。本明細書中で使用される場合、「トランスジェニック動物」は、その動物の細胞の1つ以上が好ましくはその細胞の大部分および全部が導入遺伝子を含む非ヒト動物である。導入遺伝子は、好ましくは、トランスジェニック動物の細胞のゲノムに組み込まれるか、その細胞において生じる、外因性DNAまたは再配列(例えば、内因性染色体DNAの欠失)である。好ましくは、上記導入遺伝子は、核酸の発現が上記細胞において生じるように核酸に作動可能に連結されたプロモーターを含む。
導入遺伝子は、上記トランスジェニック動物の1つ以上の細胞型または組織におけるRNAi誘導性物質の発現を指揮し得る。特定の好ましいトランスジェニック動物は、非ヒト哺乳動物(例えば、げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス))である。トランスジェニック動物の他の例としては、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ウシ、ヤギ、トリ(例えば、ニワトリ)、両生類などが挙げられる。本発明の特定の実施形態に従って、上記トランスジェニック動物は、可能性のあるインフルエンザ治療薬を試験するための動物モデル(例えば、マウス、フェレット、または霊長類)として広範に使用される。本発明内で企図される他の非ヒト動物は、示された動物を含み、その動物としては、家畜およびペット、または利益のために使用されるかもしくは維持される任意の動物が挙げられる。このような動物は、インフルエンザウイルス感染に対して部分的かまたは完全に抵抗性である。上記RNAi誘導性物質は、例えば、siRNAまたはshRNAであり得る。上記RNAi誘導性物質は、任意の可能性のあるインフルエンザウイルス標的部分(例えば、任意の表1A、1B、17、18、20、および/または34に列挙される標的部分)にターゲティングされ得る。特定の実施形態において、上記RNAi誘導性物質は、配列が配列番号274、286、287、292、297、298、304、305、309、310、311、319、324、327、334、346、347、360、361、364、および366(例えば、配列番号297、309、310、311、346、347、364、および366のいずれか)から選択される標的部分にターゲティングされる。例えば、好ましい実施形態において、上記RNAi誘導性物質は、任意の上述の標的部分と相補的であるアンチセンス鎖およびアンチセンス鎖を有する二重鎖を形成するセンス鎖を有する。
トランスジェニック非ヒト動物を作製するための方法は、当該分野において公知である。簡単にいうと、これらの方法は、以下を包含する:(i)上記導入遺伝子を含む適切なベクターをマイクロインジェクションによって受精卵の核に導入し、次いで偽妊娠の雌の生殖器に卵を移すこと;および(ii)導入遺伝子を含む適切なベクターを(例えば、任意の従来の技術(例えば、トランスセクション、エレクトロポレーションなど)を使用して)培養された幹細胞に導入し、その導入遺伝子がゲノムDNAに組み込まれた細胞を選択し、必要に応じて、インビトロで卵胞細胞または接合体を胞胚(blastula)期または胞胚(embryo)期へと培養し、そして胚をレシピエントの雌に移すこと。他の方法に従って、上記導入遺伝子を含むレトロウイルスベクターが、使用される。上記レトロウイルスベクターは、感染によってDNAプラスミドまたはウイルス粒子のいずれかとして細胞に導入される。卵胞細胞または胚細胞への適切なベクターのの細胞質マイクロインジェクションもまた、使用され得る。精子媒介性遺伝子導入もまた、包含される。これらの方法を使用して得られたヘテロ接合動物またはキメラ動物は、ホモ接合体を産生するために同定および採血される。
上記ベクターは、好ましくは、インフルエンザウイルス転写物にターゲティングされるRNAi誘導性ベクターである。好ましい実施形態において、上記ベクターは、トランスジェニック動物の種の生物体に由来するインフルエンザウイルスの間、および必要に応じて別の種(例えば、ヒト)に由来するインフルエンザウイルスの間でも好ましくかつ/または高度に保存される標的部分にターゲティングされるRNAi誘導性物質(例えば、siRNAまたはshRNA)の転写のためのテンプレートを含む。上記ベクターは、RNAi誘導性物質の転写のためのテンプレートに作動可能に連結されるプロモーターを含む。上記RNAi誘導性物質は、上に記載されるように、相補部分を含む単一のRNA分子または細胞内でハイブリッド形成する2つのRNA分子として産生され得る。上記プロモーターは、トランスジェニック動物の種に由来し得るが、そうである必要はない。RNA Pol Iプロモーター、RNA Pol IIプロモーターまたはRNA Pol IIIプロモーターが、使用され得る。上記プロモーターは、構成的であっても誘導性であってもよい。
好ましい実施形態において、上記トランスジェニック動物は、鳥類(例えば、ニワトリ)である。トランスジェニック鳥類を作製するための方法は、当該分野において公知であり、そしてそれとしては、上に記載されるものおよびそれらの改変体が挙げられる。トランスジェニック鳥類および他のトランスジェニック動物の産生に適したベクターおよび方法は、例えば、米国特許第6,730,822号、米国公開第20020108132号および同第20030126629号、ならびにこれらの中の参考文献に記載される。特定の実施形態において、上記トランスジェニック鳥類は、レトロウイルスベクター(例えば、トリ白血病ウイルスベクター)を使用して産生される。他の実施形態において、上記トランスジェニック鳥類は、レトロウイルスベクター以外の真核生物ベクターを使用して産生されるが、上記ベクターは、レトロウイルスに由来する1つ以上の配列を含み得る。特定の実施形態において、上記トランスジェニック鳥類は、異なる阻害性領域配列を含むアンチセンス鎖をそれぞれ有する複数種のRNAi誘導性物質を発現する。上記RNAi誘導性物質は、異なるインフルエンザウイルス株にそれぞれターゲティングされる得る。
本発明は、トランスジェニック鳥類の一団を提供し、その一団の異なるメンバーは、異なる阻害性領域配列を含むアンチセンス鎖をそれぞれ有する1つ以上の異なるRNAi誘導性物質発現する。例えば、上記一団の第1の分画は、第1の鳥類インフルエンザ株の標的部分と100%相補的であるアンチセンス鎖を含むRNAi誘導性物質を発現し、その一団の第2の分画は、第2の鳥類インフルエンザ株の標的部分と100%相補的であるアンチセンス鎖を含む第1のRNAi誘導性物質を発現し、そして上記一団の第3の分画は、標的部分と100%相補的であるアンチセンス鎖を含む第3のRNAi誘導性物質を発現するなど。メンバーが第3の鳥類インフルエンザ株の異なるRNAi誘導性物質を発現する一団は、全てのメンバーが同一のRNAi誘導性物質を発現する場合よりも耐性インフルエンザウイルス株の出現に対して低い感受性であり得る。
別の好ましい実施形態において、上記トランスジェニック動物は、哺乳動物(例えば、ブタ(pig)(ブタ(swine))、ウシなど)である。トランスジェニック哺乳動物を作製するのに適した方法としては、上に記載されるものが挙げられ、その局面は、Gordonら、Proc.Natl.Acad.Sci U.S.A.、77:7380−7384、1980(生殖系列が1細胞の胚へのDNAのマイクロインジェクションによって移入する)、Hooperら、Nature、326:292−295、1987;Kuehn ら、Nature、326:295−298、1987(一般に操作された胚性幹細胞の胚盤胞への移入)、およびCampbellら、Nature、380:64−66、1996(除核した卵母細胞への操作された細胞由来の核の移入)にさらに記載される。さらなる参考文献は、ブタ(米国特許第6,558,663号;Machaty,Zら、Cloning Stem Cells、4(1):21−7、2002;Wallら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、88:1696−1700、1991)、ヒツジ(Wrightら、Biotechnology、9:830−834、1991)、ヤギ(Wang,B.ら、Mol Reprod Dev.、63(4):437−43、2002)、およびウシ(Krimpenfortら、Biotechnology、9:844−847、1991;Galliら、Theriogenology、59(2):599−616、2003)に対するトランスジェニック技術の適用を記載する。
別の好ましい実施形態において、上記トランスジェニック動物は、げっ歯類(例えば、マウス)である。RNAi誘導性物質を発現するマウスおよびラットは、種々の異なるアプローチを使用して産生された(例えば、Hasuwaら、FEBS Lett.2002年12月4日;532(1−2):227−30.Xiaら、Nat.Biotechnol.、20(10):1006−10、2002;Rubinsonら、Nat Genet、33(3):401−6、2003を参照のこと)。
(VI.RNAi誘導性実体の送達のための組成物および方法)
RNAi誘導性実体は、種々のアプローチに従って投与され得る。本発明の1つの実施形態において、RNAi誘導性物質の単一の種が、被験体に投与される。非限定的な例は、種々のインフルエンザウイルス株由来の好ましくかつ/または高度に保存された標的部分と相補的であるアンチセンス鎖を含む単一のsiRNA種である。関連する実施形態において、2つ以上の異なるRNAi誘導性物質の集団は、被験体に投与される。1つの実施形態において、2つ以上の異なるRNAi誘導性物質の集団は、配列が特定のウイルス(例えば、インフルエンザウイルス)の種々の株由来の同じ好ましくかつ/または高度に保存された領域と実質的に相補的(好ましくは、100%相補的)であるアンチセンス鎖を含む物質を含む。別の実施形態において、2つ以上のRNAi誘導性物質の集団は、配列が同じウイルス株由来の異なる保存された領域と実質的に相補的(好ましくは100%相補的)であるアンチセンス鎖を含む物質を含む。なお別の実施形態において、2つ以上のRNAi誘導性物質の集団は、配列が特定のウイルス(例えば、インフルエンザウイルス)の種々の株由来の同じ好ましくかつ/または高度に保存された領域と実質的に相補的(好ましくは、100%相補的)であるアンチセンス鎖を含む物質を含み、そしてRNAi誘導性物質は、配列が同じウイルス株由来の異なる高度に保存された領域と実質的に相補的(好ましくは100%相補的)であるアンチセンス鎖を含む物質を含む。
本発明者らは、インフルエンザウイルス感染の予防および治療を含む有効なRNAi治療が、一般に、インタクトな生物体中の細胞へのRNAi誘導性物質および/またはRNAi誘導性ベクターの効率的な送達によって増強されることを、認識している。インフルエンザウイルスの場合において、このような物質は、インフルエンザ感染が通常生じる気道中の細胞に導入されなくてはならない。ヒトにおいて使用するために、RNAi誘導性物質の細胞内への取り込みを容易にする非ウイルス性の方法を使用することが、好まれ得る。したがって、本発明は、インタクトな生物体(例えば、哺乳動物および鳥類)中の細胞へのRNAi誘導性物質および/またはRNAi誘導性ベクターの増強した送達のための任意の種々の非ウイルス性送達因子を含む組成物を提供する。本明細書中で使用される場合、「送達」の概念は、身体への進入の部位から細胞の位置へのRNAi誘導性物質またはRNAi誘導性ベクターの輸送を含み、それは、機能、細胞の取り込み、および/またはその物質の作製に関する任意のその後の工程のためのものであるか、あるいは細胞内RNAi機構(例えば、エンドソームからのsiRNAまたはshRNAの放出)に利用可能である。RNAi誘導性物質を安定化する成分(一旦それが、身体中にあるか、または送達のための因子を処方するプロセスの間にあると、その分解を阻害する)(例えば、RnasinなどのRnase阻害物質)はまた、本発明の組成物中に含まれ得る。一般に、完全または部分的のいずれかでRnaseの活性を阻害する任意の物質が、使用され得る。例としては、ヒト胎盤から精製されたRnaseインヒビターまたはその組換えバージョンが挙げられる。上記送達因子が、主に、RNAi誘導性物質の送達を増強するために使用される一方で、それらはまた、RNAi誘導性ベクターの送達を増強するために使用され得る。
本発明の特定の実施形態において、上記送達因子は、安定性を増強するか、クリアランスを阻害するか、上記組成物の細胞取り込みを促進するか、細胞内でのRNAi誘導性実体の放出を促進するか、細胞毒性を減少させるか、または上記組成物を特定の細胞型、組織、または器官に指向させる。「クリアランスを阻害する」とは、腎臓系による身体からの上記組成物の除去の速度を減少させることを意味する。上記送達因子は、網内皮系(例えば、マクロファージ)の細胞による取り込みを阻害し得る。上記RNAi誘導性実体自体は、安定性を増強するか、クリアランスを阻害するか、細胞取り込みを促進するか、細胞内区画(例えば、エンドソーム)からのRNAi物質および/またはRNAiベクターの放出を促進するか、細胞毒性を減少させるか、または上記組成物を特定の細胞型、組織、または器官に指向させるために改変(例えば、共有結合的に改変)され得る。例えば、RNAi誘導性物質は、ペグ化され得、そして/またはアルギニンが豊富なペプチドは、上記RNAi誘導性物質に結合体化され得る。
したがって、本発明は、以下を含む組成物を包含する:(i)転写物にターゲティングされるRNAi誘導性物質、および/または細胞内での存在が転写物にターゲティングされるRNAi誘導性物質の産生をもたらすRNAi誘導性ベクター;ならびに(ii)任意の種々の送達因子(カチオン性ポリマー、改変カチオン性ポリマー、ペプチド分子輸送体(アルギニンが豊富なペプチドまたはヒスチジンが豊富なペプチドを含む)、炭水化物、脂質(カチオン性脂質、中性脂質、およびそれらの組み合わせを含む)、リポソーム、リポポリプレックス(lipopolyplex)、非カチオン性ポリマー、肺への導入に適した界面活性剤、またはそれらの任意の混合物などが挙げられるが、これらに限定されない)。特定の上記送達因子は、送達を増大させるか、あるいはRNAi上記転写物を阻害することが望まれる細胞への誘導性物質またはRNAi誘導性ベクターの選択的送達を増大させる部分を組み込む。特定の実施形態において、上記転写物は、呼吸器ウイルス転写物(例えば、インフルエンザウイルス転写物)である。
特定の送達因子の使用が、本発明の特定の実施形態において好ましい一方で、他の好ましい実施形態において、RNAi誘導性実体(例えば、RNAi誘導性物質)は、「むき出しの(naked)」形態(すなわち、トランスフェクション、細胞への進入などを増強する任意の送達因子の非存在下)で投与される。例えば、RNAi誘導性物質は、脂質を本質的に含まずそして送達増強性ポリマー(例えば、カチオン性ポリマーまたは非カチオン性ポリマー(例えば、下に記載されるポリマー))を本質的に含まない水性媒体で投与され得る。RNAi誘導性物質は、むき出しの形態を静脈内かまたは呼吸系に直接(例えば、鼻または口を介し、かつ肺への吸入によって)投与し得る。特定の実施形態において、上記RNAi誘導性物質は、血液への最小限の吸収を生じ、したがってそのRNAi誘導性物質の全身送達を最小化しつつ呼吸器ウイルス感染を処置または予防するのに有効な量で投与される。
(A.送達方法)
本発明は、RNAi誘導性実体を含む組成物を哺乳動物被験体に送達するための種々の方法を提供する。特定の実施形態において、上記組成物は、脈管系に直接送達され、そして被験体の器官または組織(例えば、肺)において標的転写物の阻害を達成する。他の実施形態において、上記組成物は、呼吸系に直接送達される。特定の方法は、実施例16、22、23、および24において利用され、ここでインフルエンザウイルス産生およびルシフェラーゼまたはシクロフィリンBの発現が、その方法を使用して哺乳動物被験体の標的器官において阻害される。これらの結果は、上記方法が実質的に任意の所望の標的転写物の阻害に広範に適用可能であることを示す。
特に、本発明は、哺乳動物被験体の組織または器官において遺伝子の発現を阻害する方法を提供し、その方法は、以下の工程を包含する:上記遺伝子にターゲティングされるRNAi誘導性物質の有効量を含む組成物をハイドロダイナミックトランスフェクション技術を使用せずに上記被験体の脈管系に直接的に導入する工程。好ましくは、上記RNAi誘導性物質は、肺において標的転写物の発現を阻害する。上記組織は、非循環組織(すなわち、血液以外の組織)であり得る。関連する実施形態において、本発明はさらに、哺乳動物被験体の呼吸系においてウイルスの産生を阻害する方法をさらに提供し、そのウイルスは、気道上皮細胞に感染し、その方法は、以下の工程を包含する:ウイルスの遺伝子にターゲティングされるRNAi誘導性物質の有効量を含む組成物を、ハイドロダイナミックトランスフェクション技術を使用せずに注射によって上記被験体の脈管系に導入する工程。
本発明は、哺乳動物被験体の肺において遺伝子の発現を阻害する方法をさらに提供し、その方法は、以下の工程を包含する:上記遺伝子にターゲティングされるRNAi誘導性物質の有効量および送達因子を含む組成物を、上記被験体の呼吸系に対して直接的に導入する工程。好ましい実施形態において、上記遺伝子は、呼吸器ウイルス遺伝子(例えば、インフルエンザウイルス遺伝子)である。好ましくは、上記有効量は、上記被験体の呼吸系においてインフルエンザウイルスの産生を阻害する。本方法の特定の実施形態または本発明の任意の他の局面において、上記ウイルスは、RSV以外の呼吸器ウイルスである。
上記組成物は、例えば、鼻または口を介し、代表的に、次いで吸入によって投与され得る。上記組成物は、代表的には鼻腔内スプレーまたは口腔内スプレーにおけるように、上気道(例えば、鼻腔、咽頭など)において主に残存する粒子を含み得る。他の実施形態において、上記粒子は、下気道に吸入される。組成物を呼吸系に直接的に送達するために使用され得る呼吸用処方物は、下で考察される。特定の実施形態において、呼吸系への直接的な送達は、全身送達をもたらす(例えば、上記RNAi誘導性物質は、肺から脈管系に進入し、そして身体の他の場所の標的器官または組織に輸送される)。
RNAi誘導性物質の有効量を哺乳動物被験体の呼吸系に送達するための方法は、広範な種々の用途を有し、その用途としては、呼吸器ウイルス感染を予防または処置することが挙げられるが、これらに限定されない。適切な転写物にターゲティングされるRNAi誘導性物質はまた、呼吸系に影響する種々の他の疾患および病態の予防および/または処置のために本発明の方法を使用して投与され得る。例としては、癌(例えば、肺癌)、嚢胞性線維症(例えば、U.S.S.N.10/200,607を参照のこと)、喘息(例えば、U.S.S.N.11/069,611を参照のこと)、肺高血圧症、肺線維症、気腫などが挙げられる。適切な標的遺伝子としては、例えば、オンコジーン、血管新生促進分子および/または増殖因子(例えば、血管内皮増殖因子、炎症促進分子など)をコードする遺伝子が挙げられる。当然に、身体の任意の部分に影響する疾患において役割を果たす転写物は、上記RNAi誘導性物質が全身に送達される場合に、ターゲティングされ得る。
本発明の特定の実施形態において、上記有効量は、上記被験体の体重1kgあたり0.1mgと5mgとの間である。他の実施形態において、上記有効量は、上記被験体の体重1kgあたり0.1mgと10mgとの間であるか、または上記被験体の体重1kgあたり0.5mgと20mgとの間である。
RNAi誘導性実体を含む組成物は、送達因子を含んでも含まなくてもよい。本発明において使用するのに適した送達因子としては、下および同時係属中のU.S.S.N.10/674,087に記載されるものが挙げられる。上記送達因子は、組み合わせて使用され得る。
(B.カチオン性ポリマーおよび改変カチオン性ポリマー)
本発明者らは、多くの異なる経路によるRNAi誘導性物質の送達が任意の種々のカチオン性ポリマーおよび改変カチオン性ポリマーによって増強されることを決定した。したがって、本発明は、いかを含む組成物を提供する:(i)標的転写物にターゲティングされるRNAi誘導性実体および(ii)カチオン性ポリマー。本発明は、標的遺伝子発現を阻害する方法をさらに提供し、その方法は、標的転写物にターゲティングされるRNAi誘導性物質を含む組成物を哺乳動物被験体に投与することを包含する。特に、本発明は、インフルエンザウイルス感染を処置および/または予防する方法を提供し、その方法は、インフルエンザウイルス転写物をターゲティングするRNAi誘導性物質およびカチオン性ポリマーを含む組成物を哺乳動物被験体に投与することを包含する。
一般に、カチオン性ポリマーは、ほぼ生理学的なpH(例えば、約7.0〜7.6の範囲のpH、好ましくは約7.2〜7.6の範囲のpH、より好ましくは約7.4のpH)にて正に荷電されるポリマーである。このようなカチオン性ポリマーとしては、ポリリジン(PLL)、ポリアルギニン(PLA)、ポリヒスチジン、ポリエチレンイミン(PEI)(37)(例えば、(76)に記載されるような直鎖状PEIまたは分枝状PEIおよび低分子量PEI)、ポリビニルピロリドン(PVP)(38)、キトサン(39、40)、プロタミン、ポリホスフェート、ポリホスホエステル(例えば、米国公開第20020045263号に記載されるもの)、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)などが挙げられるが、これらに限定されない。特定のこれらのポリマーは、第1級アミン基、イミン基、グアニジン基、および/またはイミダゾール基を含む。好ましいカチオン性ポリマーは、比較的低い毒性を有する。参考文献85〜87;U.S.S.N.6,013,240;WO9602655;ならびに米国公開第20040167087号および同第20030157030号は、本発明の実施において有用なPEIおよび他のポリマーについてのさらなる情報を提供する。市販のPEI試薬は、jetPEITM(Qbiogene、Carlsbad、CA)として公知であり、PEIの直鎖形態(U.S.S.N.6,013,240)が、使用され得る。
適切なカチオン性ポリマーとしてはまた、異なる分子量のポリマーのブレンド、任意の上述のポリマー(または他のポリマー)のサブユニットを含むコポリマー(例えば、リジン−ヒスチジンコポリマー)などが挙げられる。種々のサブユニットの%は、コポリマーにおいて等しい必要はないが、例えば、細胞毒性を最小限にしつつ核酸との複合体を形成する能力のような特性を最適にするために選択され得る。さらに、上記サブユニットは、規則的な様式で交互にある必要はない。所望の特性に関して種々のポリマーを評価するのに適したアッセイは、実施例において記載される。好ましいカチオン性ポリマーとしてはまた、任意の種々の改変をさらに組み込む上述などのポリマーが挙げられる。適切な改変は、下で考察され、そしてそれらとしては、アセチル基、スクシニル基、アシル基、またはイミダゾール基による改変(32)が挙げられるが、これらに限定されない。
カチオン性ポリマーは、siRNA分子およびshRNA分子とDNAプラスミドとの間の構造およびサイズにおけるかなりの違いを前提として、DNAプラスミドトランスフェクションを容易にすることが示されている一方で、カチオン性ポリマーがsiRNAの取り込みを増強するのに有用であるか否かは、非常に不明確であった。しかし、実施例12に記載されるように、本発明者らは、PEI、PLL、またはPLAおよびインフルエンザウイルスRNAをターゲティングするsiRNAを含む組成物が、インフルエンザウイルス感染の前または後のいずれかに静脈内に投与した場合、マウスにおいてインフルエンザウイルスの産生を顕著に阻害することを示した。上記阻害は、用量依存的であり、そして異なるインフルエンザウイルスRNAにターゲティングされる2種のsiRNAを使用した場合、相加効果を示す。したがって、siRNAは、カチオン性ポリマー(例えば、PEI、PLL、またはPLA)と組み合わせた場合、肺に到達し得、細胞に進入し得、そしてウイルス複製サイクルを有効に阻害し得る。PEIの存在は、肺への送達を顕著に増強したが、有効な送達は、その非存在下においてさえ生じ(実施例12;図22C)、これは、呼吸系への有効なsiRNA送達が、「むき出しの」siRNAを使用して達成され得ることを示した。これらの知見が、siRNAを使用した哺乳動物における感染性ウイルスの産生の阻害(例えば、ウイルス複製サイクルにおいてウイルス転写物またはウイルス中間体の産生の阻害とは対照的)における効力の最初の報告を示すと考えられる。実施例16に記載されるように、siRNAとカチオン性ポリマーとの混合物の肺投与は、肺細胞において標的転写物を有効に阻害した。実施例23および24ならびに図31は、哺乳動物被験体の呼吸系に送達されたむき出しのsiRNAがそこでの標的転写物の発現を有効に阻害するというさらなる証拠を提供する。
siRNAを身体内の実質器官および実質組織に対して静脈内送達する他の試み(例えば、McCaffrey 2002;McCaffrey 2003;Lewis,D.L.、2002を参照のこと)は、ハイドロダイナミックトランスフェクションとして公知である技術を使用し、それは、マウスの尾静脈に対する多量の流体の迅速な送達を含み、そして実質器官(例えば、肝臓)において有意な量のプラスミドDNAの蓄積を生じることが示されている(Liu 1999;Zhang 1999;Zhang 2000)。この技術は、約200μlの流体の注射を含む従来の技術(Liu 1999)とは対照的に、動物の全血液容量にほぼ等しい流体容量(例えば、18〜20グラムの体重を有するマウスに対して1.6ml(体重の約8〜12%と等しい))の送達を含む。さらに、ハイドロダイナミックトランスフェクションアプローチを使用した注射は、短い時間間隔(例えば、5秒間)にわたって行われ、それは、注射した導入遺伝子の効率的な発現に必要である(Liu 1999)。siRNAはまた、ヌードマウスにおいて皮下に移植された腫瘍細胞に対して静脈内送達された(Filleur 2003)が、ネイティブな器官および組織に対するRNAi誘導性物質の静脈内送達についてのこの知見の関連性は、このシステムに特有の特徴を考慮して明確ではない。さらに、本発明は、被験体の体重1kgあたり5mg以下(例えば、0.1〜5mg)の用量にてRNAi誘導性物質の有効な静脈内送達を示す。
ハイドロダイナミックトランスフェクションが肝臓において注射した導入遺伝子の移入および高レベル発現を達成する機構が、完全に明確でない一方で、一過性の心臓性うっ血に起因した肝静脈を介する肝臓へのDNA溶液の逆流に起因すると、考えられる(Zhang 2000)。ヒトにおける治療のための匹敵するアプローチは、実行できないであろうと考えられる。本発明者らは、対照的に、従来の容量の流体(例えば、200μl)を使用し、そして肝臓(発現がハイドロダイナミックトランスフェクションを使用して最も迅速に達成される部位)においてでさえ注射した導入遺伝子の最小限の発現を生じることが予想される条件下において、肺へのsiRNAの有効な送達を示した。
したがって、本発明は、哺乳動物被験体内の細胞において転写物(例えば、インフルエンザウイルス転写物などのウイルス転写物)の発現を阻害する方法を提供し、その方法は、RNAi誘導性物質(例えば、標的転写物にターゲティングされるsiRNAまたはshRNA)を含む組成物を、従来の注射技術(例えば、従来の圧力および/または従来の容量の流体を使用した技術)を使用して被験体の脈管系に導入する工程を包含する。本発明の好ましい実施形態において、静脈内投与は、標的器官(例えば、肺)内でRNAi誘導性物質の治療有効量をもたらす。本発明の特定の実施形態において、上記組成物は、カチオン性ポリマーを含む。本発明の好ましい実施形態において、上記組成物は、被験体の体重の10%未満に等しい流体容量で導入される。本発明の特定の実施形態において、上記流体容量は、被験体の体重の5%未満、2%未満、1%未満、または0.1%未満に等しい。本発明の特定の実施形態において、その方法は、肝臓以外の身体組織または身体器官(例えば、肺)中の細胞においてRNAi誘導性物質の有効量の送達を達成する。本発明の特定の好ましい実施形態において、上記組成物は、例えば、静脈内注射によって静脈に導入される。しかし、上記組成物はまた、動脈に投与され得、カテーテル、留置する静脈内ラインなどのようなデバイスを使用して送達され得る。本発明の特定の好ましい実施形態において、上記RNAi誘導性物質は、例えば、肺においてウイルスの産生を阻害する。
実施例15に記載のように、本発明者らは、カチオン性ポリマーPLLおよびPLAはsiRNAと複合体を形成し、培養細胞中の機能的siRNAの取り込みを促進することができることも示した。PLLとNP−1496との複合体またはPLAとNP−1496siRNAとの複合体でのトランスフェクションにより、細胞中のインフルエンザウイルスの産生を阻害した。これらの結果および上記で考察したマウスでの結果は、被験体の体内の哺乳動物細胞へのsiRNAの送達のためのカチオン性ポリマーとsiRNAとの混合物の使用の利点を証明する。実施例15に記載のアプローチを使用して、細胞傷害性を減少させ、最初に有効なものを至適化させるさらなるポリマー(例えば、基(アシル基、スクシニル基、アセチル基、またはイミダゾール基)の付加によって改変されたポリマー)について試験を行うことができる。一定の好ましい改変により、カチオン性ポリマーの正電荷が減少する。一定の好ましい改変により、第1級アミンが第2級アミンに変換される。このようなさらなる基を組み込むためのカチオン性ポリマーの改変方法は、当該分野で周知である(例えば、引用文献32を参照のこと)。例えば、種々の残基のε−アミノ基を、例えば、結合体化によってポリマー合成後の所望の改変基と置換することができる。一般に、ポリマーがRNAi誘導性物質の送達を強化する能力を非常に大きく減少させることなく非置換ポリマーと比較して細胞傷害性が適切に減少するのに十分な置換率を選択することが望ましい。したがって、本発明の一定の実施形態では、ポリマー中の残基の5%と75%(例えば、約50%)との間の残基を置換する。同様の効果が、適切に選択されたモノマーサブユニット(すなわち、そのいくつかが所望の改変を既に組み込むサブユニット)のコポリマーを最初に形成することによって達成され得る。RNAi誘導性物質の送達を容易にするために使用するカチオン性ポリマーは、それらがそのポリマーに含まれる主要なモノマーサブユニット以外の1つ以上の残基を組み込むように改変され得る。例えば、1つ以上の代替的な残基は、ポリマーの末端に付加され得るか、またはポリマーは、そのポリマーに含まれる主要なモノマー以外の残基によって連結され得る。
種々のさらなるカチオン性ポリマーもまた、使用され得る。例としては、ポリ(β−アミノエステル)(PAE)ポリマー(例えば、U.S.S.N.09/969,431;同10/446,444;米国公開第20020131951号ならびに参考文献34および93に記載されるもの)が挙げられる。いくつかのポリ(β−アミノエステル)(PAE)ポリマーは、siRNA分子およびshRNA分子とDNAプラスミドとの間の構造およびサイズにおけるかなりの違いを前提として、DNAプラスミドトランスフェクションを容易にすることが示されている一方で、カチオン性ポリマーがsiRNAの取り込みを増強するのに有用であるか否かは、非常に不明確であった。しかし、実施例12に記載されるように、本発明者らは、NP(NP−1496)にターゲティングされるsiRNAがポリ(βアミノエステル)と一緒に静脈内に投与した場合、マウスにおいてインフルエンザウイルス産生を阻害したことを示した。さらに、このsiRNAは、第2のポリ(βアミノエステル)と一緒に腹腔内に投与した場合、マウスにおいてインフルエンザウイルス産生を阻害した。
本発明のRNAi誘導性物質の送達を強化するために使用することもできるさらなるカチオン性ポリマーには、ポリアミドアミン(PAMAM)デンドリマー、ポリ(2−ジメチルアミノ)エチルメタクリレート(pDMAEMA)およびその第4級アミンアナログであるポリ(2−トリメチルアミノ(triemethylamino))エチルメタクリレート(pTMAEMA)、ポリ[a−(4−アミノブチル)−L−グリコール酸(PAGA)、およびポリ(4−ヒドロキシ−1−プロリンエステル)が含まれる。これらの薬剤のさらなる説明についてはHan(2000)を参照のこと。
改変カチオン性ポリマー(例えば、ポリ(L−ヒスチジン)−グラフト−ポリ(L−リジン)ポリマー(Benns 2000)、ポリヒスチジン−PEG(Putnam 2003)、フォレート(folate)−PEG−グラフト−ポリエチレンイミン(Benns 2002)、ポリエチレンイミン−デキストランサルフェート(Tiyaboonchai 2003)など)が、使用され得る。上記ポリマーは、分枝状であっても直鎖状であってもよく、そしてグラフトされてもグラフトされなくてもよい。特定の実施形態において、ポリマーは、本発明のRNAi誘導性実体と複合体を形成し、それは、次いで被験体に投与される。任意の上記ポリマーは、PEGまたは他の親水性ポリマーを組み込むために改変され得る。カチオン性ポリマーは、多重に改変され得る。
本発明は、細胞へのRNAi誘導性物質の送達を増強しそして/または特定の細胞へのRNAi誘導性物質の選択的送達を増強する部分を組み込むための本明細書中に記載される任意の送達因子の改変を包含する。任意の種々の部分が、使用され得る(例えば、(i)阻害が所望される細胞(例えば、気道上皮細胞)によって発現される分子に特異的に結合する抗体または抗体フラグメント;(ii)阻害が所望される細胞によって発現される分子に特異的に結合するリガンド)。抗体、リガンド、および/または送達因子を核酸または本明細書中に記載される種々の送達因子に結合体化するための方法は、当該分野において周知である。例えば、「Cross−Linking」、Pierce Chemical Technical Library(URL www.piercenet.comを有するウェブサイトにて利用可能であり、そして1994−95 Pierce Catalog and references cited therein and Wong SS、Chemistiy of Protein Conjugation and Crosslinking、CRC Press Publishers、Boca Raton、1991において最初に公開された);およびG.T.Hermanson、Bioconjugate Techniques、Academic Press,Inc.、1995を参照のこと。
(C.RNAi誘導性実体を呼吸系に送達するためのさらなる因子)
本発明は、任意の種々のさらなる因子およびRNAi誘導性実体を含む組成物を包含し、その因子は、例えば、気道上皮細胞への上記RNAi誘導性実体の送達を増強する。
特定の実施形態において、細胞表面から原形質膜に透通し得るペプチドであるペプチド分子輸送体は、組成物に含まれる。それらは、一般に、11〜34アミノ酸残基からなり、areアルギニンについて高度に濃縮され、そしてしばしばアルギニンが豊富なペプチド(arginine rich peptide)(ARP)またはペネトラチン(penetratin)と称される(参考文献42〜51、120、134〜36を参照のこと)。
他の実施形態において、組成物は、肺への導入に適した界面活性剤を含む。例としては、以下が挙げられる:市販の処方物であるInfasurf(登録商標)(ONY,Inc.、Amherst、NY);Survanta(登録商標)(Ross Labs、Abbott Park、IL)、およびExosurf Neonatal(登録商標)(GlaxoSmithKline、Research Triangle Park、NC)。米国特許第4,338,301号;同第4,397,839号;同第4,312,860号;同第4,826,821号;同第5,110,806号。U.S.S.N.4,312,860;同4,826,821;および同5,110,806は、さらなる界面活性剤組成物を記載する。一般に、肺に対して実質的な傷害を引き起こさずに任意の脂質含有材料が、界面活性剤として使用され得る。
洗浄剤および揺変性溶液を伴う投与もまた、使用され得る。全フッ素置換化合物液(例えば、ヘプタコサフルオロトリブチルアミン(Fluorinert)、および関連する分子)もまた、使用され得る。さらなる考察については、(74、126、150)および米国特許第6,638,767号を参照のこと。さらに、本発明は、例えば、呼吸系(例えば、肺)への送達のために本発明のRNAi誘導性実体を組み込むタンパク質/ポリエチレンイミン複合体の使用を包含する。使用され得る他の送達因子としては、天然のシクロデキストリンおよび合成のシクロデキストリンならびに他の送達因子を含むこれらの混合物が挙げられる。さらなる情報については、Singh,Mら、Biotechnol Adv.20(5−6):341−59、2002;Eastburn,SDおよびTao,BY、Biotechnol Adv.、12(2):325−39、1994)ならびに米国公開第20030157030号を参照のこと。種々の非カチオン性ポリマー(例えば、ポリ(ラクチド)(PLA)、ポリ(グリコリド)(PLG)、およびポリ(DL−ラクチド−co−グリコリド)(PLGA)(Panyam 2002)、ポリビニルアルコール、ポリ(N−エチル−4−ビニルピリジニウムブロミド、Pluronics、ポリ(エーテル−無水物))が、使用され得る。カチオン性ポリマーと非カチオン性ポリマーとの間の組み合わせ(ポリ(乳酸−co−グリコール酸)(PLGA)−グラフトポリ(L−リジン)(Jeong 2002))、ならびにPLA、PLG、またはPLGAおよび任意のカチオン性ポリマーまたは改変カチオン性ポリマーを含む他の組み合わせ(上で考察されるもの)が、特定の実施形態において使用される。カチオン性モノマーおよび/または非カチオン性モノマーを含み得るブロックコポリマーもまた、使用され得る。例は、米国特許第6,800,663号;同第6,692,770号;同第6,669,959号;同第6,616,941号;同第6,592,899号および同第6,517,869号に記載される。
(VII.RNAi誘導性実体の吸入送達のための組成物)
本発明は、吸入による投与のためのRNAi誘導性実体を含む組成物を提供する。好ましくは、上記RNAi誘導性実体は、siRNAまたはshRNAなどのRNAi誘導性実体である。上述されるように、RNAi誘導性物質は、むき出しの形態かあるいは鼻または口を介し、そして肺に達する吸入によって送達因子と一緒にかのいずれかで呼吸系に直接的に投与され得る。特定の実施形態において、上記RNAi誘導性物質は、血液への最小限の吸収を生じ、したがってそのRNAi誘導性物質の全身送達を最小化しつつ呼吸系に影響する病態(例えば、呼吸器ウイルス感染)を処置または予防するのに有効な量で投与される。本発明の特定の実施形態において、血液への吸収の程度は、臨床的に有意な効果は、上記RNAi物質が肺において有効である用量にて投与される場合に呼吸系外部の器官または組織において観察されないようなものである。
特に、本発明は、RNAi誘導性実体(好ましくは、RNAi誘導性物質)を含む乾燥粉末組成物を提供する。本発明の物質は、好ましくは、適切な噴霧剤(例えば、二酸化炭素などの気体)、または噴霧器を含む加圧された容器またはディスペンサーからエアロゾルスプレーの形態で送達される。特定の実施形態において、上記送達システムは、被験体の主要な気道(気管および気管支)および/またはより深く肺(細気管支および/または肺胞)に組成物を送達するのに適している。特定の実施形態において、RNAi誘導性実体を含む組成物は、鼻腔用スプレーを使用して送達される。送達因子は、上記薬学的組成物に含まれ得る。しかし、本発明者らはまた、RNAi誘導性物質が、特定の送達因子の非存在下において呼吸経路を介して呼吸系に送達した場合にインフルエンザウイルスを有効に阻害し得ることを見出した(実施例23)。特定の実施形態において、RNAi誘導性物質は、乾燥形態(例えば、乾燥粉末)で本質的にそのRNAi誘導性物質からなる組成物、あるいは本質的に水からなる水性媒体(必要に応じてまた、塩(例えば、NaCl、リン酸塩)、緩衝液、および/またはアルコールを含む)で本質的にそのRNAi誘導性物質からなる組成物(例えば、むき出しのsiRNAまたはshRNA)として肺に送達される。
気道および肺への送達のためのエアロゾル処方物は、種々の寸法および特性の液体粒子または乾燥粒子を含み得る。直径約1mmよりも小さい粒子を含む乾燥粒子組成物はまた、本明細書中で乾燥粉末と称される。「乾燥」によって、粒子がエアロゾルまたはスプレーを形成するために、例えば、乾燥粉末吸入デバイスにおいて容易に分散可能であるように、上記組成物が比較的低い液体含量を有することを意味する。「粉末」によって、比較的自由に流動し、かつ吸入デバイス中に容易に分散され得、ついで被験体(例えば、患者)によって吸入され、その結果好ましくは、粒子が肺の肺胞に到達し得る微細に分散した固体粒子(すなわち、それらが肺送達に適している)から大部分または全体がなる組成物を意味する。粉末組成物は、種々のパラメータ(例えば、細粒分(FPF)、放出される用量、平均粒子密度、および空気動力学的中央粒子径(MMAD))に基づいて特徴付けられ得る。適切な方法は、当該分野において公知であり、そして例えば、参考文献31および58ならびに米国公開第20020146373号、同第20030012742号、および同第20040092470号に見出される。本発明の特定の実施形態において、1μmと25μmとの間(好ましくは、1μmと10μmとの間)の空気動力学的中央粒子径を有する粒子が、使用される。特定の実施形態において、3μmと15μmとの間の範囲の平均幾何学粒径(mean geometric diameter)および0.04g/cmと0.6g/cmとの間のタップ密度を有する大きな多孔性粒子が、使用される(31、58)。
乾燥粒子を作製するための方法は、当該分野において公知である。適切な方法としては、噴霧乾燥、噴霧凍結乾燥、相分離、単一または二重のエマルション溶媒エバポレーション(emulsion solvent evaporation)、溶媒抽出、ならびに単純コアセルベーションおよび複合コアセルベーションが挙げられる。粒子組成物はまた、顆粒化、押し出し、および/または球形化を使用して作製され得る。乾燥粉末オリゴヌクレオチド処方物を調製するのに適した方法は、当該分野において公知である。例えば、米国公開第20040092470号を参照のこと。使用される方法は、好ましくは、標的転写物を阻害するための核酸の物理的完全性および能力を大きく減少させない。核酸の著しい分解をもたらすことが公知である極端な温度またはpHを回避することが、望ましい。一般に、分解の程度が、特定の条件および上記核酸が上記条件に曝される時間の両方の関数であり得、その結果、曝露の持続時間を最小化することが、望まれ得、そしてより極端な条件が使用されることを可能にすることが、認識される。組成物は、選択された方法が残りの十分な効力に関して適切であるか否かを決定するために試験され得る。好ましくは、選択された処方方法は、核酸からなる部分が少なくとも10%(好ましくは少なくとも20%、50%、またはそれ以上)の投入核酸の活性のレベルを有する組成物をもたらす。
上記粒子の調製に使用される条件は、所望のサイズまたは特性(例えば、疎水性、親水性、外部形態(external morphology)、「粘性(stickiness)」、形状など)の粒子をもたらすために選択され得る。上記粒子を調製する方法および使用される条件(例えば、溶媒、温度、濃度、気流速度など)はまた、特定の活性因子および上記組成物に含まれる他の成分に依存し得る。任意の上記方法よって調製された粒子が、所望の範囲外のサイズ範囲を有する、その粒子は、例えば、ふるいを使用して、ミリングなどによってサイジングされ得る。方法の組み合わせが、使用され得る。
上記乾燥粉末は、本質的に1つ以上のRNAi誘導性物質からなり得る。特定の実施形態において、上記処方物は、1つ以上のさらなる因子(例えば、安定化剤、送達増強性因子(上に記載されるもの)、賦形剤など)を含む。本明細書中で使用される場合、用語「賦形剤」とは、活性因子または送達増強性因子以外の本発明の処方物中に存在する物質をいう。肺送達のための適切な賦形剤は、当該分野において公知である。任意の多数の当該分野で認識された化合物は、本発明の処方物中に含まれ得る。一般に、0.1重量%と100重量%との間の濃度の活性因子(すなわち、RNAi誘導性物質)を有する組成物が、使用され得る。
粒子を(例えば、標的転写物レベルを減少させそして/またはインフルエンザウイルス産生を阻害する能力について)試験するための方法は、実施例10において記載される。同様の方法は、任意の本発明のエアロゾル処方物のために使用され得る。乾燥粒子組成物は、適切な溶媒に溶解され得、液体エアロゾルとしてか、または他の適切な送達手段によって送達される得る。
液体粒子はまた、例えば、エアロゾル処方物として送達され得る。一般に、このような粒子のサイズ範囲は、乾燥粒子について上に記載されるものと同様であり得る。特定の実施形態において、上記液体粒子は、呼吸性送達のために約0.5μm〜5μmとの間であるが、より小さい粒子またはより大きい粒子もまた、使用され得る。適切な水性ビヒクルとしては、水または生理食塩水(必要に応じて、アルコールを含む)が挙げられる。
肺送達についてのさらなる検討は、「Lung Biology in Health and Disease」、Marcel Dekker、New York、2002中のBisgaard,H.ら(編)、Drug Delivery to the Lung、第26巻において考察される。
本発明のRNAi誘導性物質を含む粒子はまた、所望される場合、静脈内に投与され得る。静脈内送達に関して、約10nm〜50μmのサイズは、一般に、好ましい。
(VIIl.治療適用)
本発明のRNAi誘導性実体を含む組成物は、呼吸器ウイルスの感染または複製を阻害するか、または減少させるために使用され得る。このような適用において、本発明の組成物の有効量は、ウイルス(例えば、インフルエンザウイルス)に対する曝露の前、その曝露と同時、またはその曝露の後に、細胞または器官に送達される。好ましくは、上記RNAi誘導性実体の量は、感染の1つ以上の症状を減少または遅延させるのに十分である。説明のために、この節は、しばしば、本発明のsiRNAsをいうが、本発明は、ウイルス転写物にターゲティングされる他のRNAi誘導性実体に関して同様の適用を包含する。インフルエンザウイルスは、例として本明細書中で使用されるが、本方法は、任意の広範な他の呼吸器ウイルスに適用され得ることもまた、認識される。
本発明の組成物は、単一のインフルエンザ転写物中の単一の部位にターゲティングされるRNAi誘導性物質の単一の種を含み得るが、または1つ以上のインフルエンザ転写物中の1つ以上の部位にターゲティングされる複数の異なる種を含み得る。本発明のいくつかの実施形態において、異なるインフルエンザ遺伝子にターゲティングされる複数のRNAi誘導性物質(例えば、複数の異なるsiRNA)のコレクション(collection)を含む組成物を利用することが、望ましい。例えば、異なるウイルス転写物に対する種々のsiRNAを使用してウイルスの生活環における複数の時点にてウイルスを攻撃することが、望ましい。本発明の特定の実施形態に従って、上記組成物は、各セグメントにターゲティングされるsiRNAiを含む。
特定の実施形態において、上記組成物は、2、3、4、5、6、7、8、9、または10種の異なるRNAi誘導性物質種(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、または10種の異なるsiRNA)を含む。本発明の特定の実施形態において、上記RNAi誘導性物質は、配列番号272〜380からなる群より選択される配列を有するインフルエンザウイルスゲノムの部分にターゲティングされる。本発明の特定の実施形態において、上記RNAi誘導性物質は、配列番号272〜380の任意の選択されたサブセットからなる群より選択される配列を有するインフルエンザウイルスゲノムのターゲティング部分である。全てのこのようなサブセットは、明確に示されない場合でさえ、任意の目的および全ての目的のために本明細書中に含まれる。
本発明の特定の実施形態において、上記組成物は、PAにターゲティングされる少なくとも1つのRNAi誘導性物質および別のインフルエンザウイルス遺伝子(例えば、NP、PB1、またはPB2)にターゲティングされる少なくとも1つのRNAi誘導性物質を含む。本発明の特定の実施形態において、上記組成物は、PB1にターゲティングされる少なくとも1つのRNAi誘導性物質および別のインフルエンザウイルス遺伝子(例えば、NP、PA、またはPB2)にターゲティングされる少なくとも1つのRNAi誘導性物質を含む。本発明の特定の実施形態において、上記組成物は、PB2にターゲティングされる少なくとも1つのRNAi誘導性物質および別のインフルエンザウイルス遺伝子(例えば、NP、PB1、またはPA)にターゲティングされる少なくとも1つのRNAi誘導性物質を含む。本発明の特定の実施形態において、上記組成物は、NPにターゲティングされる少なくとも1つのRNAi物質および別のインフルエンザウイルス遺伝子(例えば、PA、PB1、またはPB2)にターゲティングされる少なくとも1つのRNAi誘導性物質を含む。
本発明の特定の実施形態、本発明のsiRNA組成物は、単一の転写物にターゲティングされる1つより多いsiRNA種を含み得る。一例を挙げると、標的転写物のコーディング領域にターゲティングされる少なくとも1つのsiRNAおよび3’UTRにターゲティングされる少なくとも1つのsiRNAを含むことが、所望され得る。このストラテジーは、関連する転写物によってコードされる産物は産生されない正確な保証を提供し得る。なぜならば、上記組成物中の少なくとも1つのsiRNAが、分解のために転写物をターゲティングする一方で、少なくとも1つの他のsiRNAが、分解を回避する任意の転写物の翻訳を阻害するからである。
したがって、本発明は、本発明のRNAi誘導性実体の組み合わせを包含し、それとしては、複数のRNAi誘導性物質(例えば、複数のsiRNAまたはshRNA)が投与されるアプローチ、および単一のベクターが、複数のインフルエンザウイルス転写物を阻害するsiRNAまたは複数種のsiRNAをもたらすようにプロセシングされる得るRNAの合成を指揮するアプローチが挙げられるが、これに限定されない。さらなる詳細については、実施例11を参照のこと。本発明の特定の実施形態に従って、上記組成物は、少なくとも1つのインフルエンザウイルスA転写物にターゲティングされるRNAi誘導性物質および少なくとも1つのインフルエンザウイルスB転写物にターゲティングされるRNAi誘導性物質を含む。特定の実施形態において、上記組成物は、インフルエンザAウイルス転写物およびインフルエンザBウイルス転写物の両方にターゲティングされるRNAi誘導性物質を含む。本発明の特定の実施形態に従って、上記組成物は、特定のセグメントの同じ部分をターゲティングする異なる配列を有する複数のsiRNAを含む。本発明の特定の実施形態に従って、上記組成物は、異なるインフルエンザウイルス株またはインフルエンザウイルスサブタイプを阻害する複数のRNAi誘導性物質を含む。
インフルエンザウイルスは、抗原不連続変異および抗原ドリフトの両方を受け、そして治療用抗体に対する抵抗性が、生じ得る。本発明の組成物がいくつかの時間に対して使用された後に、変異および/または再集合が、生じ得、その結果、提供された特定のRNAi誘導性物質によって阻害されない変異型が出現し得ることが、予想され得る。したがって、本発明は、治療レジメンを進化させることを企図する。例えば、1つ以上の新規RNAi誘導性物質は、特定の変異または再集合に応じて特定の場合に選択され得る。例えば、変異が発生したものをなんでも組み込むことまたは新規に獲得されたRNAセグメントをターゲティングすることを除いて最初のものと同一である新規のRNAi誘導性物質を設計することが、しばしば、可能である;他の場合において、同じ転写物内で新規の配列をターゲティングすることが、望ましい;なお他の場合において、完全に新規の転写物をターゲティングすることが、所望される。
感染の1つ以上の症状または特徴を阻害するか、減少させるか、または予防するために、本発明のRNAi誘導性物質の投与を1つ以上の他の抗ウイルス剤と組み合わせることが、しばしば、所望される。本発明の特定の好ましい実施形態において、本発明のRNAi誘導性物質は、1つ以上の他の抗ウイルス剤(例えば、NAインヒビター、Mインヒビターなど)と組み合わされる。例としては、アマンダジンもしくはリマンタジンおよび/またはザミナビル、オセルタミビル、ペラミビル(peramivir)(BCX−1812、RWJ−270201)、Ro64−0796(GS 4104)もしくはRWJ−270201が挙げられる。しかし、本発明のRNAi誘導性物質組成物の投与はまた、任意の種々の薬剤の1つ以上と組み合され得、その薬剤としては、例えば、多くが公知であるインフルエンザワクチン(例えば、インフルエンザウイルスを使用する従来のワクチンまたはウイルス抗原およびDNAワクチン)が挙げられる。さらなる情報については、Palese,P.およびGarcfa−Sastre、2002;CheungおよびLieberman、2002、Leuscher−Mattli、2000;ならびにStiver、2003を参照のこと。
本発明の異なる実施形態において、上記RNAi誘導性物質は、他の薬剤と同じ混合物中に存在するか、または個体にたいする処置レジメンは、必ずしも同じ混合物または同時に送達されない、RNAi誘導性物質および他の薬剤の両方を含む、したがって、本明細書中で使用される場合、用語「組み合わせ」は、化合物が、物質の単一の組成物(例えば、同じ投薬単位の一部として(例えば、同じエアロゾル処方物、粒子組成物、錠剤、カプセル、丸剤、溶液などにおいて)(それらは可能性がある))で存在するか、または物質の単一の組成として被験体に投与されなければならないことを示すことを意図しない。代わりに、本発明の特定の実施形態において、上記RNAi誘導性物質は、個別であるが同時に投与される。本明細書中で使用される場合、2種以上の化合物の用語「共投与」または「同時投与」は、それらの化合物が厳密に同時に投与されるべきであることを示すことを意図しない。一般に、化合物は、それらが僅少な量未満で同時に身体内に存在する場合、共投与または同時に投与される。したがって、上記化合物は、単一の組成物の一部として一緒に投与され得るが、そうである必要はない。さらに、上記化合物は、同時(例えば、5分未満、または1分未満)か、または互いに短い時間内(例えば、1時間未満、30分未満、10分未満、約5分の間隔を空けて)で投与され得るが、そうである必要はない。本発明の種々の実施形態にしたがって、このような時間間隔内で投与される化合物は、実質的に同時に投与されるとみなされ得る。当業者は、上記化合物の投与の間の適切な時間間隔を容易に決定し得、その結果、それらの化合物が、各々、身体内で僅少より大きいレベル、好ましくは、身体内で有効な濃度にて存在する。
本発明のRNAi誘導性物質およびRNAi誘導性ベクターは、ワクチン接種に対する補完的ストラテジーを提供し、任意の現在利用可能かまたは開発中である種々のワクチン(Palese,P.およびGarcia−Sastre,A.、J.Clin.Invest.、110(1):9−13、2002)を用いてワクチン接種されたかまたはワクチン接種されていない個体に投与され得る。米国における現在のワクチン処方物は、不活化ウイルスを含み、そして筋肉内注射によって投与されるなければならない。上記ワクチンは、三つ組であり、そしてインフルエンザB型に加えて、現在流行しているインフルエンザA(H3N2およびH1N1)の両方のサブタイプ由来の代表的な株を含む。それぞれの季節に特異的な推奨は、その季節のワクチンにおいて使用するための特定の株を同定する。他のワクチンアプローチとしては、以下が挙げられる:鼻腔用スプレーによって投与され得る低温に適応した生インフルエンザウイルス;ウイルスゲノムにおいて欠失または他の変異を含む遺伝的に操作された生インフルエンザウイルスワクチン;複製欠損インフルエンザウイルス、およびDNAワクチン、ここで1種以上のウイルスタンパク質をコードするプラスミドDNAが筋肉内かまたは局所のいずれかで投与される(例えば、Macklin,M.D.ら、J Virol、72(2):1491−6、1998;Illium,L.ら、Adv Drug Deliv Rev、51(l−3):81−96、2001;Ulmer,J.、Vaccine、20:S74−S76、2002を参照のこと)。免疫無防備状態の患者および高齢の個体は、RNAiベースの治療薬から特定の利益を獲得し得る。なぜならば、それらは、インフルエンザウイルス ワクチンの効力の減少を経験し得る。
本発明のいくつかの実施形態において、インフルエンザウイルスに感染した細胞、または少なくともインフルエンザウイルス感染に感受性の細胞(例えば、シアル酸含有レセプターを発現する細胞)に対する本発明の組成物の投与をターゲティングすることが、望まれ得る。他の実施形態において、最も広い幅の送達選択肢を利用可能であることが、望ましい。
上に記載される通り、本発明の治療プロトコルは、RNAi誘導性物質またはRNAi誘導性ベクターの有効量を、インフルエンザウイルスに対する曝露の前、その曝露と同時、またはその曝露の後に投与することを含む。例えば、感染していない個体は、インフルエンザに対する曝露前に本発明の組成物によって「免疫化される」;危険性のある患者(例えば、高齢者、免疫無防備状態の個体、インフルエンザウイルスに感染したことが疑われるか、インフルエンザウイルスに感染した可能性があるか、またはインフルエンザウイルスに感染したことが知られる者と最近接触した者など)は、実質的に曝露と同時(例えば、曝露後2時間以内)に処置され得る。他の実施形態において、被験体は、より遅い時間(例えば、疑われるか、または知られた曝露の後2〜12時間、12〜24時間、24〜36時間、または36〜48時間)にて処置される。上記被験体は、症候性であっても無症候性であってもよい。特定の実施形態において、上記被験体は、曝露前の48時間、24時間、12時間、3時間などまでのRNAi誘導性物質またはRNAi誘導性ベクターの投与によって保護される。当然に、感染が疑われるか、または感染が知られる個体は、任意の時間において本発明の処置を受容し得る。
特定の好ましいインフルエンザウイルスインヒビターは、複製のレベルが、そのインヒビターを含まないコントロール細胞よりもそのインヒビターを含む細胞において、少なくとも約2倍、好ましくは少なくとも約4倍、より好ましくは少なくとも約8倍、16倍、64倍、100倍、200倍、またはより大きい程度で低いように、ウイルス複製を阻害する。特定の好ましいインフルエンザウイルスインヒビターは、RNAi誘導性物質の投与および/または感染の後に少なくとも24時間、少なくとも36時間、少なくとも48時間、または約60時間にわたって、ウイルス複製を妨害する(例えば、検出不可能なレベルまで減少させる)か、または顕著に減少させる(例えば、上記RNAi誘導性物質の非存在下において生じるレベルと比較して10%以下、25%以下、50%以下、75%以下)。
本発明の特定の実施形態において、持続放出調製物は、予防目的のために使用される(例えば、インフルエンザウイルス感染から被験体を保護するか、このような感染の症状を一定期間にわたって和らげるために十分量の活性因子を放出する処方物)。例えば、上記調製物は、数日間、1週間、1〜2週間以上の期間にわたって有効量の因子を放出し得る。RNAi誘導性物質またはRNAi誘導性ベクターを含む生分解性ポリマー送達システムが、使用され得る。
したがって、本発明のRNAi誘導性実体は、以下の少なくとも3つの異なる状況において治療的に有用である:(i)RNAi誘導性実体は、インフルエンザウイルスに曝露されたと疑われていないか、またはそれが知られていない被験体に投与され得る。このような状況において、上記RNAi誘導性実体は、好ましくは、臨床的に顕著な感染の発症を妨害するか、またはその重篤度を減らす;(ii)RNAi誘導性実体は、例えば、1週間までの先行する時間間隔内にインフルエンザウイルスに曝露されたと疑われるか、またはそれが知られる被験体に投与され得る。上記RNAi誘導性実体は、好ましくは、臨床的に顕著な感染の発症を妨害するか、またはその重篤度を減らし;(iii)RNAi誘導性実体は、臨床的に病気になっている被験体に投与され得る。上記RNAi誘導性実体は、インフルエンザウイルス複製を阻害し、そして好ましくは、インフルエンザウイルス感染の重篤度および/または少なくとも1つの症状の持続期間を減らす。上気道、下気道、またはその両方の感染を有する被験体が、処置され得る。本発明の特定の実施形態において、上記被験体は、インフルエンザウイルス感染の結果としてウイルス性肺炎を有する。
本発明の特定の実施形態において、遺伝子治療は、インフルエンザを予防するためか、または既に病気である個体を処置するために使用される。遺伝子治療プロトコルは、阻害性RNAi誘導性物質の発現を指揮し得る遺伝子治療ベクターの有効量を、インフルエンザウイルス感染の前、その感染と実質的に同時、またはその感染の後に、被験体に投与することを含み得る。
上記のように、インフルエンザウイルスは、ヒトに加えて、広範な種々の種に感染する。本発明は、非ヒト種、特にニワトリ、ブタ、およびウマなどの種の処置のための本発明の組成物の使用を含む。
(IX.薬学的処方物)
上で考察されるように、上記RNAi誘導性実体の吸入送達が、本発明の特定の実施形態において好ましい一方で、静脈内送達は、本発明の他の実施形態において好ましい。吸入送達が、比較的良好に健康である患者に対してより適切であり得る一方で、静脈内送達は、十分な吸息の試みを始められず、そして/もしくは呼吸経路による有効な送達を妨げ得る病態(例えば、過剰な粘液産生;肺の部分が、細菌感染に起因して硬化するか、または瘢痕組織などによって閉塞される状況)に罹患する個体、またはRNAi誘導性物質の比較的一定の濃度を維持することが、必要とされる個体に対してより適切であり得る。
しかし、本発明の組成物を、任意の利用可能な経路(非経口(例えば、静脈内)経路、皮内経路、皮下経路、経口経路、鼻腔内経路、気管支経路、眼内経路、経皮(局所)経路、経粘膜経路、直腸経路、および膣内経路が含まれるが、これらに限定されない)による送達のために処方することができる。好ましい送達経路には、非経口、経粘膜、鼻腔内、気管支、および経口が含まれる。本発明の薬学的組成物は、代表的には、薬学的に受容可能なキャリアと組み合わせたRNAi誘導性物質または送達後にsiRNAを産生するベクターなどを含む。本明細書中で使用される場合、用語「薬学的に受容可能なキャリア」は、薬学的投与に適合する溶媒、分散媒、コーティング、抗菌薬および抗真菌薬、ならびに等張化剤および吸収遅延剤などを含む。補助活性化合物を、組成物に組み込むことがもできる。
薬学的組成物を、その意図する投与経路に適合するように処方する。非経口(例えば、静脈内)適用、筋肉内適用、皮内適用、または皮下適用のために使用される溶液または懸濁液には、以下の成分が含まれ得る:注射用の水、生理食塩水、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、または他の合成溶媒などの滅菌希釈剤;ベンジルアルコールまたはメチルパラベンなどの抗菌薬;アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウムなどの抗酸化剤;エチレンジアミン四酢酸などのキレート化剤;酢酸塩、クエン酸塩、またはリン酸塩などの緩衝剤;および塩化ナトリウムまたはデキストランなどの張度を調整するための因子。塩酸または水酸化ナトリウムなどの酸または塩基でpHを調整することができる。pHは、酸または塩基(例えば、塩酸または水酸化ナトリウム)によって調整され得る。非経口調製物を、ガラスまたはプラスチック製のアンプル、使い捨てシリンジ、または複数回用量バイアル中に封入することができる。
注射可能物に使用するために適切な薬学的組成物は、代表的には、滅菌水溶液(水溶性の場合)または分散液および滅菌注射用溶液または分散液の即時調製のための滅菌粉末を含む。静脈内投与については、適切なキャリアには、生理学的食塩水、静菌水、Cremophor EL(商標)(BASF,Parsippany,NJ)、またはリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)が含まれる。全ての場合、組成物は滅菌されているべきであり、容易な注入可能性が存在する範囲の流動物であるべきである。好ましい薬学的処方物は、製造および保存条件下で安定であり、細菌および真菌などの微生物の汚染作用から保護されなければならない。一般に、関連するキャリアは、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、およびそれらの適切な混合物を含む溶媒または分散媒であり得る。例えば、レシチンなどのコーティングの使用、分散液の場合に必要な粒子サイズの維持、および界面活性剤の使用によって適切な流動性を維持することができる。種々の抗菌薬および抗真菌薬(例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、およびチメロサールなど)によって微生物作用を防止することができる。多くの場合、組成物中に等張化剤(例えば、糖、ポリアルコール(例えば、マンニトール(manitol)、ソルビトール、塩化ナトリウム))を含めることが好ましい。組成物に吸収を遅延させる因子(例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチン)を含めることにより、注射用組成物を長期吸収させることができる。
上で列挙した成分の1つまたは組み合わせを含む適切な溶媒中に必要量の活性化合物を組み込み、必要な場合、その後濾過滅菌することによって、滅菌注射用溶液を調製することができる。好ましくは、注射用溶液は、内毒素を含まない。一般に、基本分散媒および上記由来の必要な他の成分を含む滅菌ビヒクルの中に活性化合物を組み込むことよって分散液を調製する。滅菌注射溶液の調製のための滅菌粉末の場合、好ましい調製方法は、活性成分およびその予め濾過滅菌した溶液からの任意のさらなる所望の成分の粉末が得られる真空乾燥および凍結乾燥である。
経口組成物は、一般に、不活性希釈剤または食用キャリアを含む。経口治療投与の目的のために、活性化合物を、賦形剤に組み込み、錠剤、トローチ、またはカプセル(例えば、ゼラチンカプセル)の形態で使用することができる。うがい薬として使用するための流動物キャリアを使用して、経口組成物を調製することもできる。組成物の一部として薬学的に適合する結合剤および/またはアジュバント材料を含むことができる。錠剤、丸薬、カプセル、トローチなどは、以下の任意の成分または類似の性質の化合物を含み得る:微結晶性セルロース、トラガカントガム、またはゼラチンなどの結合剤;デンプンまたはラクトースなどの賦形剤;アルギン酸、Primogel、またはコーンスターチなどの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムまたはSterotesなどの滑沢剤;コロイド状二酸化ケイ素などの流動促進剤(glidant);スクロースまたはサッカリンなどの甘味料;あるいはペパーミント、メチルサリチル酸、またはオレンジフレーバーなどの嬌味嬌臭薬。経口送達用の処方物は、胃腸管内の安定性を改善し、そして/または吸収を強化するための薬剤を有利に組み込むことができる。
本発明のRNAi誘導性実体の任意の全身投与はまた、経粘膜手段または経皮手段によるものであり得る。経粘膜投与または経皮投与のために、透過すべき障壁に適切な浸透剤を処方物で使用する。このような浸透剤は、一般に、当該分野で公知であり、例えば、経粘膜投与については、界面活性剤、胆汁酸塩、およびフシジン酸誘導体が挙げられる。鼻腔用スプレー、または坐剤の使用によって経粘膜投与を行うことができる。経皮投与のために、活性化合物を、当該分野で一般に公知の軟膏、軟膏剤(salve)、ゲル、またはクリームの中に処方する。直腸送達のために、坐剤(例えば、カカオバターおよび他のグリセリドなどの従来の坐剤基剤)または残留浣腸剤の形態で化合物を調製することもできる。
上記の送達因子に加えて、本発明の一定の実施形態では、徐放性の処方物(移植片およびマイクロカプセル化送達系が含まれる)などの体内からの急速な排除から化合物を保護するキャリアを使用して、活性実体を調製する。エチレンビニルアセテート、ポリアンヒドライド、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルソエステル、およびポリ乳酸などの生分解性生体適合性ポリマーを使用することができる。このような処方物の調製方法は、当業者に明らかである。時間、日、週またはそれより長い期間にわたってでさえ活性剤を放出し得る持続放出性の処方物は、予防目的のために特に有用であり得る。そのような処方物の調製のための方法は、当業者に明らかである。材料を、Alza Corporation および Nova Pharmaceuticals,Inc.から商業的に入手することもできる。リポソーム懸濁液(ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体を使用して感染細胞にターゲティングされるリポソームが含まれる)を、薬学的に受容可能なキャリアとして使用することもできる。例えば、米国特許第4,522,811号に記載の当業者に公知の方法にしたがって、これらを調製することができる。
投与の容易さおよび投薬量の均一性の点から、投薬単位形態で経口組成物または非経口組成物を処方することが有利である。本明細書中で使用される投薬単位形態とは、処置すべき被験体のための単位投薬量として適切な物理的に個別の単位(各単位は、必要な薬学的キャリアとともに、所望の治療効果が得られるように計算された所定量の活性化合物を含む)をいう。
例えば、LD50(集団の50%に致死な用量)およびED50(集団の50%において治療に有効な用量)を決定するための、細胞培養または実験動物における標準的な薬学的手順によって、このような化合物の毒性および治療有効性を判定することができる。毒性効果と治療効果との間の用量比は治療指数であり、LD50/ED50比として示すことができる。高い治療指数を示す化合物が好ましい。有毒な副作用を示す化合物を使用することもできるが、非感染細胞に対する損傷の可能性を最小にし、それにより副作用を軽減するために、罹患組織部位へとこのような化合物をターゲティングする送達系を設計するように注意すべきである。
細胞培養アッセイおよび動物研究から得たデータを、ヒトで使用するための一定の投薬範囲の処方で使用することができる。このような化合物の投薬量は、好ましくは、ほとんどまたは全く毒性のないED50を含む体循環濃度範囲内である。投薬量は、使用される投与形態および使用される投与経路に依存してこの範囲内で変化することができる。本発明の方法で使用される任意の化合物について、細胞培養アッセイからの治療有効量を最初に評価することができる。細胞培養物において判定されるIC50(すなわち、症状の最大阻害の半分を達成する試験化合物の濃度)を含む循環血漿濃度範囲を達成するために、動物モデルにおいて用量を処方することができる。このような情報を使用して、ヒトに有用な用量をより正確に判定することができる。例えば、高速液体クロマトグラフィーによって血漿レベルを測定することができる。
薬学的組成物の治療有効量は、代表的には、約0.001〜30mg/kg体重、好ましくは約0.01〜25mg/kg体重、より好ましくは約0.1〜20mg/kg体重、さらにより好ましくは約1〜10mg/kg、2〜9mg/kg体重、3〜8mg/kg体重、4〜7mg/kg体重、または5〜6mg/kg体重の範囲である。薬学的組成物を、必要に応じて種々の間隔および異なる期間(例えば、1日に複数回、毎日、隔日、約1週間〜10週間の間、2週間〜8週間の間、3週間〜7週間の間(約4、5、または6週間など)に1回)投与することができる。当業者は、一定の因子(疾患もしくは障害の重症度、以前の処置、被験体の身体全体の健康および/または年齢ならびに存在する他の疾患が含まれるが、これらに限定されない)が被験体を有効に治療するために必要な投薬量およびタイミングに影響を与えることができると認識する。一般に、本明細書中に記載のRNAi誘導性実体での被験体の処置は、1回の治療を含み得るか、多数の場合、一連の処置を含み得る。
例示的な用量としては、被験体またはサンプル重量の1kgあたり本発明の核酸(例えば、siRNA)のミリグラム量またはマイクログラム量(例えば、約1μg/kg〜約500mg/kg、約100μg/kg〜約5mg/kg、または約mg/kg〜約50mg/kg)が挙げられる。局所投与(例えば、鼻腔内)では、これらよりもはるかに少ない用量を使用することができる。
RNAi誘導性物質の適切な用量はRNAi誘導性物質の効力に依存し、(例えば、予め選択した所望の応答を達成するまでの漸増用量の投与によって)必要に応じて特定のレシピエントに合わせることができることがさらに理解される。任意の特定の動物被験体のための特定の用量レベルは、種々の要因(使用される特定の化合物の活性、被験体の年齢、体重、身体全体の健康、性別、および食事、投与期間、投与経路、排泄率、任意の薬物の組み合わせ、ならびに調節すべき発現または活性の程度が挙げられる)に依存し得ると理解される。
本発明は、非ヒト動物(ウマ、ブタ、およびトリが含まれるが、これらに限定されない)の処置のための本発明の核酸(例えば、siRNAまたはshRNA含有組成物)の使用を含む。したがって、獣医学に関する薬理学および医学の公知の原理にしたがって、投与量および投与方法を選択することができる。指針を、例えば、Adams,R.(ed.),Veterinary Pharmacology and Therapeutics,8th edition,Iowa State University Press;ISBN:0813817439;2001に見出すことができる。
本発明の薬学的組成物を、投与についての説明書と共に、コンテナ、パック、またはディスペンサーに含めることができる。
(実施例1:インフルエンザAウイルスを阻害するためのsiRNAの設計)
インフルエンザウイルス株組由来のゲノム配列を+センス形態において比較し、最も保存された各セグメントの領域を同定した。このウイルス群は、トリ、ブタ、ウマ、およびヒト由来のウイルスを含んでいた。比較するために、異なる年に単離した異なる動物(非ヒト)種由来のインフルエンザAウイルスの12〜15株由来の個々のセグメントの配列と異なる年において単離したヒト由来のインフルエンザAウイルスの12〜15株由来の個々のセグメントとを整列させた。広範な種々のHAおよびNAサブタイプを含むように株を選択した。異なる株の間で0、1、または2個のいずれかのヌクレオチドが異なる領域を選択した。例えば、NP転写物をターゲティングするsiRNAの選択のために以下の株を使用し、各株の名前の前のアクセッション番号はNP配列のアクセッション番号をいい、比較した配列の長さをヌクレオチド数によって示す。
以下のリスト中のエントリーの順番は、アクセッション番号、株名、比較した配列の長さ、年数、サブタイプである。他のゲノムセグメントのアクセッション番号は異なるが、上記データベースで容易に見出すことができる。以下の株を比較した。
Figure 2008533990
図9は、6つのインフルエンザA変異型(その全てがヒト宿主起源)の間で高度に保存されている一定のPA転写物領域の選択の例を示し、これらの領域が0、1、または2個のいずれかのヌクレオチドによって異なる場合に、これらの領域は高度に保存されているものと見なされる。(配列をRNAではなくてDNAとして列挙しているため、UではなくてTを含むことに留意のこと)。A/Puerto Rico/8/34(H1N1)株の配列を、基本配列(すなわち、他の配列と比較した配列)として選択した。他の組のメンバーは、A/WSN/33(H1N1)、A/Leningrad/134/17/57(H2N2)、A/Hong Kong/1/68(H3N2)、A/Hong Kong/481/97(H5N1)、およびA/Hong Kong/1073/99(H9N2)であった。図は、コンピュータプログラムCLUSTAL W(1.4)によって作成された複数の配列アラインメントを示す。基本配列と異なるヌクレオチドに影をつけている。
図10は、5つのインフルエンザA変異型(その全てが異なる動物宿主起源)の間およびヒト宿主起源の2つの株の間でも高度に保存されている一定のPA転写領域の選択の例を示し、これらの領域が0、1、または2個のいずれかのヌクレオチドにより異なる場合に、これらの領域は高度に保存されているものと見なされる。(配列をRNAではなくてDNAとして列挙しているため、UではなくてTを含むことに留意のこと)。A/Puerto Rico/8/34(H1N1)株の配列を、基本配列(すなわち、他の配列と比較した配列)として選択した。他の組のメンバーは、A/WSN/33(H1N1)、A/chicken/FPV/Rostock/34(H7N1)、A/turkey/California/189/66(H9M2)、A/Equine/London/1416/73(H7N7)、A/gull/Maryland/704/77(H13N6)、およびA/swine/Hong Kong/9/98(H9N2)であった。基本配列と異なるヌクレオチドに影をつけている。
図9および10中の配列比較では、配列の大部分が高度に保存されたという基準を満たすため、多数の異なる高度に保存された領域を選択することができることに留意のこと。しかし、5’末端にAAを有する配列により、相補(アンチセンス)siRNA鎖中に19ヌクレオチドのコア配列および2ヌクレオチドの3’UU突出部が得られる。したがって、siRNAのアンチセンス鎖中に存在する相補ヌクレオチドがUUであるように、その5’末端にAAを有する21ヌクレオチド部分を同定するために高度に保存された領域をスキャニングした。例えば、それぞれ影をつけた配列はその5’末端にAAを有する。表2に示すように、得られたsiRNA分子のアンチセンス鎖中のUU3’突出部をTTまたはdTdTに置換することができることに留意のこと。しかし、アンチセンス鎖の2ntの3’突出部はUUである必要はない。
方法のさらなる例示のために、図12は、ヒト宿主または動物宿主のいずれかを起源とする12種のインフルエンザAウイルスサブタイプまたは単離物の間のNP配列の3’領域部分の間の配列比較を示す。下線を引いた配列および下線を引いた配列の下の対応する配列部分を使用して、siRNA NP−1496を設計した(以下を参照のこと)。これらの配列を図12に示す。基本配列は、A/Puerto Rico/8/34株の配列である。影をつけた文字は、基本配列と異なるヌクレオチドを示す。
表1Aは、ウイルス遺伝子セグメントの各々に対するインフルエンザウイルス配列組の間で高度に保存される21ヌクレオチド領域を列挙する。表1A中の配列は、TをUの代わりに使用することを除いてウイルスmRNAに存在する配列に従って、5’から3’の方向で列挙される。数は、ウイルスゲノム中の配列の位置を示す。例えば、PB2−117/137は、セグメントPB2中の117位から137位まで伸びる配列を示す。上記配列の多くは、相補鎖中の3’UU突出部を生じるために、それらが5’末端にAAを有するというさらなる判定基準を満たす。PAセグメントについて、1個または2個のヌクレオチドの違いが存在した場合において、上記siRNAの配列は、A/WSN/33(H1N1)株に基づいた配列PA−2087/2107 AAGCAATTGAGGAGTGCCTGA(配列番号30)を除いて、A/PR8/34(H1N1)株に基づいた。20位において、6種の配列のうちの5種が、Gを含む一方で、基本配列(アクセッション番号NC_002019)が、Aを含むことに留意すること。したがって、この場合において、基本配列の配列を、siRNA設計に使用しなかった。用語PA−2087およびPA−2087(G)を、本明細書中で交換可能に使用する。
表1Aに列挙した配列に基づいたsiRNAを設計するために、siRNAセンス鎖配列のコア領域としてヌクレオチド3〜21を選択し、dTdTからなる2ntの3’突出部を得られた各配列に付加した。各配列のヌクレオチド1〜21と相補的な配列を、対応するアンチセンス鎖として選択した。例えば、高度に保存された配列PA−44/64(すなわち、AATGCTTCAATCCGATGATTG(配列番号22))に基づいてsiRNAを設計するために、配列TGCTTCAATCCGATGATTG(配列番号109)を有する19ntのコア領域を選択した。dTdTからなる2ntの3’突出部を付加し、(TのUへの置換後に)siRNAセンス鎖配列である配列5’−UGCUUCAAUCCGAUGAUUGdTdT−3’(配列番号79)を得た。対応するアンチセンスsiRNA鎖配列は、配列番号22と相補的である(すなわち、CAAUCAUCGGAUUGAAGCAdTdT(配列番号80)(2ntの3’突出部以外はTがUに置換されている))。
表1Bは、インフルエンザウイルス転写物のさらなる高度に保存された領域に基づいて設計したsiRNAを列挙する。表1Bで「センス鎖」として示した配列の最初の19nt配列は、高度に保存された領域の配列である。インフルエンザウイルス配列に対応せず、siRNAの選択的特徴である、3’末端にdTdT突出部を有するセンス鎖siRNA配列を示す。選択的特徴として3’末端にdTdT突出部も組み込まれた対応するアンチセンス鎖も示す。名称は、表1Bのとおりである。例えば、PB2−4/22センスは、センス鎖がPB2転写物のヌクレオチド4〜22の配列を有するsiRNAを示す。PB2−4/22アンチセンスは、PB2−4/22センスに対応する相補アンチセンス鎖を示す。スプライス部位にわたる転写物中の部位をターゲティングするsiRNAについて、非スプライシング転写物内の位置を示す。例えば、M−44−52/741−750は、ゲノム配列の44〜52および741〜750に対応するヌクレオチドをスプライシングされたmRNA中にターゲティングすることを示す。
図9および10の影をつけた領域は、高度に保存されるという基準を満たすいくつかの21ヌクレオチド領域を示す。上記のこれらの配列に基づいて、siRNAを設計した。試験した実際のsiRNA配列を、表2に列挙する。
Figure 2008533990
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(実施例2:ウイルスRNAポリメラーゼまたは核タンパク質をターゲティングするsiRNAはインフルエンザAウイルス産生を阻害する)
(材料および方法)
細胞培養。Madin−Darbyイヌ腎臓細胞(MDCK)(Dr.Peter Palese,Mount Sinai School of Medicine,New York,NYからの好意的な贈呈)を、10%熱不活化FCS、2mM L−グルタミン、100単位/mlペニシリン、および100μg/mlストレプトマイシンを含むDMEM培地で増殖させた。細胞を、37℃、5%COで増殖させた。エレクトロポレーションのために、細胞を、無血清RPMI1640培地で維持した。感染培地(DMEM、0.3%ウシ血清アルブミン(BSA、Sigma,St.Louis,MO)、10mM Hepes、100単位/mlペニシリン、および100μg/mlストレプトマイシン)中でウイルス感染を行った。
ウイルス。インフルエンザウイルスA/PR/8/34(PR8)およびA/WSN/33(WSN)(サブタイプH1N1、Dr.Peter Palese,Mount Sinai School of Medicineからの好意的な贈呈)を、10日齢の胚含有ニワトリ卵(Charles River laboratories,MA)中、37℃で48時間成長させた。ウイルス接種から48時間後に尿膜腔液を回収し、−80℃で保存した。同じウイルス株および方法を、本明細書中に記載した実施例全体を通して使用した。
siRNA。siRNAを上記のように設計した。実施例1に記載の選択基準に従うことに加えて、siRNAを、Dharmacon Research,Inc.,Lafayette,CO 80026(RNA試薬の販売業者)から、一般に利用可能な技術告示番号003−Revision B,「siRNA Oligonucleotides for RNAi Applications」に記載の原理に従って設計した。Dharmaconの技術告示番号003(ワールドワイドウェブ www.dharmacon.com/tech/tech003B.htmlからアクセス可能)およびwww.dharmacon.com/tech/tech004.htmlから利用可能な#004は、siRNA設計パラメーター、合成などに関連する種々の情報を含み、本明細書中で参考として援用される。試験したセンスおよびアンチセンス配列を表2に列記する。
Figure 2008533990
2’ACE保護化学を使用して、Dharmacon Research(Lafayette,CO)によって全てのsiRNAを合成した。製造者の説明書に従ってsiRNA鎖を脱保護し、等モル比で混合し、95℃での加熱および35℃までの30秒毎に1℃ずつならびに5℃までの1分毎に1℃ずつの温度のゆっくりとした低下によってアニーリングした。
siRNAエレクトロポレーション。MDCK細胞の対数期培養物をトリプシン処理し、洗浄し、無血清RPMI1640中に2×10細胞/mlにて再懸濁した。0.5mlの細胞を0.4cmキュベットに入れ、2.5nmolのsiRNAを含むGene Pulser装置(Bio−Rad)を使用して400V、975μFでエレクトロポレーションを行った。エレクトロポレーション効率は、約30〜40%の生存細胞であった。エレクトロポレーションを行った細胞を、10%FCSを含むDMEM培地中で6ウェルプレートを3ウェルに分割し、37℃、5%COでインキュベートした。
ウイルス感染。エレクトロポレーションから6〜8時間後、血清含有培地を洗浄し、適切な感染多重度の100μlのPR8またはWSNウイルスを、それぞれ約10細胞を含むウェルに接種した。細胞を、1,000PFU(1,000個の細胞あたり1個のウイルス;MOI=0.001)または10,000PFU(100個の細胞あたり1個のウイルス;MOI=0.01)のウイルスのいずれかに感染させた。室温で1時間のインキュベーション後、4μg/mlのトリプシンを含む2mlの感染培地を各ウェルに添加し、細胞を37℃、5%COでインキュベートした。示した時間においては、感染培養物から上清を回収し、ウイルス力価をニワトリ赤血球の血球凝集素(50μl、0.5%、Charles River laboratories,MA)によって判定した。
ウイルス力価の測定。感染から24、36、48、および60時間後に上清を回収した。Knipe DM,Howley,PM,Fundamental Virology,4th edition,p34−35に記載の標準的な血球凝集素アッセイを使用して、ウイルス力価を測定した。V底96ウェルプレートで血球凝集素アッセイを行った。各サンプルの連続2倍希釈物を、同体積のニワトリ赤血球(Charles River Laboratories)の0.5%懸濁液とともに氷上で1時間インキュベートした。接着性の均一な赤血球層を含むウェルを正として記録した。プラークアッセイのために、Fundamental Virology,4th edition,p.32(本明細書中で参考として援用される)に記載され、且つ当該分野で周知の各サンプルの連続10倍希釈物のウイルス力価を測定した。
(結果)
インフルエンザウイルス複製を抑制するためのsiRNA使用の可能性を調査するために、種々のインフルエンザウイルスAのRNAをターゲティングした。具体的には、容易に感染し、インフルエンザウイルスを研究するために広範に使用されているMDCK細胞株を使用した。各siRNAを、エレクトロポレーションによってそれぞれMDCK細胞の集団に組み込んだ。GFPにターゲティングされたsiRNA(センス:5’−GGCUACGUCCAGGAGCGCAUU−3’(配列番号110);アンチセンス:5’−UGCGCUCCUGGACGUAGCCUU−3’(配列番号111))をコントロールとして使用した。このsiRNAを、GFP−949という。その後の実験(以下の実施例に記載)では、両鎖の3’末端のUU突出部をdTdTと置換したが、結果として効果はなかった。コントロールとして偽エレクトロポレーションも行った。エレクトロポレーションから8時間後、細胞を0.1または0.01のいずれかのMOIにてインフルエンザAウイルスPR8またはWSNのいずれかを感染させ、種々の測定点(24、36、48、60時間)で、標準的な血球凝集素アッセイを使用してウイルス産生について分析した。標準的な方法を使用したフローサイトメトリーによってGFP発現をアッセイした。
図11Aおよび11Bは、個々のsiRNAがインフルエンザウイルスA株A/Puerto Rico/8/34(H1N1)(図11A)またはインフルエンザウイルスA株A/WSN/33(H1N1)(図11B)の複製を阻害する能力をHA力価の測定によって判定した実験結果を比較している。したがって、高HA力価は阻害の欠如を示すが、低HA力価は有効な阻害を示す。MDCK細胞を0.01のMOIで感染させた。これらの実験のために、PB1セグメント(PB1−2257/2277)をターゲティングする1つのsiRNA、PB2セグメント(PB2−2240/2260)をターゲティングする1つのsiRNA、PAセグメント(PA−2087/2107(G))をターゲティングする1つのsiRNA、ならびにNPゲノムおよび転写物をターゲティングする3つの異なるsiRNA(NP−231/251、NP−390/410、およびNP−1496/1516)を試験した。図11Aおよび11Bは、siRNAの5’ヌクレオチドのみを列挙することに留意のこと。
図11Aおよび11B中の記号は、以下を示す:黒塗りの四角はsiRNAを投与していないコントロール細胞を示す。白抜きの四角は、GFPコントロールsiRNAを投与した細胞を示す。黒塗りの円は、siRNA PB1−2257/2277を投与した細胞を示す。白抜きの円は、siRNA PB2−2240/2260を投与した細胞を示す。白抜きの三角は、siRNA PA−2087/2107(G)を投与した細胞を示す。X記号は、siRNA NP−231/251を投与した細胞を示す。+記号は、siRNA NP−390/410を投与した細胞を示す。黒塗りの三角は、siRNA NP−1496/1516を投与した細胞を示す。グラフ中の一定の記号は重なっている場合があることに留意のこと。例えば、図11Bでは、白抜きおよび黒塗りの三角が重なっている。各測定点で数値を列挙した表3および4を、明らかにするために参考にすることができる。
図11Aおよび11B(表3および4)に示すように、siRNAの非存在下(偽TF)またはコントロール(GFP)siRNAの存在下で、ウイルス力価が長期間増加し、感染から約48〜60時間後にピークに達する。対照的に、60時間後のウイルス力価は、任意のsiRNAの存在下で有意に低かった。例えば、WSN株では、HA力価(ウイルスレベルを反映する)は、siRNA PB2−2240またはsiRNA NP−231の存在下ではコントロールの約半分であった。特に、siRNA NP−1496の存在下でのウイルスレベルは、両株で検出限界(10,000PFU/ml)未満であった。これは、PR8株での1/60未満への減少およびWSN株での1/120未満への減少を示す。ウイルスレベルはまた、WSN株においてsiRNA PA−2087(G)の存在下で検出限界(10,000PFU/ml)未満であり、PR8株では極めて低い。siRNAによるウイルス産生の抑制は、最も初期の測定点でさえも明らかであった。感染から72時間後ほどの有効な抑制(検出不可能レベル(HA力価による測定)へのウイルス産生の抑制が含まれる)が測定点で認められた。
表5は、阻害倍率に関して示したMDCK細胞における60時間のsiRNA阻害アッセイの結果をまとめている。したがって、低い値は阻害の欠如を示し、高い値は有効な阻害を示す。ウイルス遺伝子内のsiRNAの位置を、遺伝子名の後に数字で示す。本明細書中の他のところのように、数字は、遺伝子中のsiRNAの出発ヌクレオチドを示す。例えば、NP−1496は、NPに特異的なsiRNA(NP配列のヌクレオチド1496から出発する第1のヌクレオチド)を示す。示した値(阻害倍率)は、偽トランスフェクション由来の血球凝集素単位を、示したsiRNAでのトランスフェクション由来の血球凝集素単位で割ることによって計算され、値1は阻害無しを意味する。
インフルエンザウイルスゲノムの6つのセグメント(PB2、PB1、PA、NP、M、およびNS)にターゲティングされた全部で20個のsiRNAを、MDCK細胞株系で試験した(表5)。約15%の試験したsiRNA(PB1−2257、PA−2087G、およびNP−1496)は、PR8ウイルスまたはWSNウイルスのいずれを使用したかとは無関係に、ほとんどの場合MOI=0.001で1/100未満およびMOI=0.01で1/16〜1/64にウイルス産生を阻害する高い効果を示した。特に、siRNA NP−1496またはPA−2087を使用した場合、阻害は、培養上清が検出可能な血球凝集素活性をもたらさないことが非常に明白であった。これらの強力なsiRNAが3つの異なるウイルス遺伝子セグメント(RNA転写複合体に関与するPB1およびPAならびに一本鎖RNA結合核タンパク質であるNP)をターゲティングする。他の系における所見と一致して、これらのsiRNAによってターゲティングされた配列は全てコード領域の3’末端に比較的隣接させて配置させる(図13)。
約40%のsiRNAはウイルス産生を有意に阻害するが、阻害範囲は一定のパラメーターに依存して変化した。PR8またはWSNウイルスのいずれを使用したかとは無関係に、約15%のsiRNAがウイルス産生を強力に阻害した。しかし、一定のsiRNAの場合、阻害の程度はPR8またはWSNのいずれを使用するかに依存していくらか変化した。いくつかのsiRNAは初期の測定点(感染から24〜36時間後)でのみまたはより低い感染量(MOI=0.001)でのみ、ウイルス産生を阻害した(例えばPB2−2240、PB1−129、NP−231、およびM37など)。これらのsiRNAは、異なるウイルス遺伝子セグメントをターゲティングし、対応する配列を、コード領域の3’末端または5’末端のいずれかに近接して位置付ける(図13)。表5Aおよび5Bは、そのアッセイの結果を提示する。約45%のsiRNAはウイルス力価に対する効果は認識できず、これらがMDCK細胞におけるインフルエンザウイルス産生の干渉で有効でないことを示した。特に、NS遺伝子セグメントをターゲティングする4つのsiRNAにおいて阻害効果を示したものはなかった。
ウイルス力価をより正確に評価するために、偽トランスフェクションまたはNP−1496でのトランスフェクションを行ったウイルス感染細胞から得た培養物上清由来の培養物上清を使用したプラークアッセイを行った(60時間目)。偽上清において約6×10pfu/mlが検出されたのに対し、非希釈NP−1496上清においてはプラークは検出されなかった(図11C)。プラークアッセイの検出限界が約20pfu(プラーク形成単位)/mlであるため、NP−1496によるウイルス産生を少なくとも約1/30,000に阻害する。0.1のMOIでさえ、NP−1496はウイルス産生を約1/200に阻害した。
siRNAの有効性を判定するために、段階的な量のNP−1496を、MDCK細胞にトランスフェクトし、その後PR8ウイルスを感染させた。血球凝集素アッセイによって培養上清のウイルス力価を測定した。図11Dに示すように、siRNA量が減少するにつれて、培養物上清のウイルス力価が増加した。しかし、トランスフェクションのために25pmolほどのsiRNAしか使用しない場合でさえ、偽トランスフェクションと比較してウイルス産生を約1/4に阻害することが認められ、このことは、インフルエンザウイルス産生阻害におけるNP−1496 siRNAの有効性を示す。
治療に関して、siRNAが既存のウイルス感染を有効に阻害することができることが望ましい。代表的なインフルエンザウイルス感染では、感染の約4時間後から新規のビリオンが放出され始める。siRNAが既存の感染に反して新規に放出されたウイルスによって感染を減少または消失させることができるかを判定するために、MDCK細胞にPR8ウイルスを2時間感染させ、その後、NP−1496 siRNAでトランスフェクトした。図11Eに示すように、偽トランスフェクション後長期間安定にウイルス力価が増大するのに対し、NP−1496トランスフェクト細胞では僅かに増加しただけであった。したがって、ウイルス感染後のsiRNAの投与が有効である。
まとめると、これらの結果は、(i)一定のsiRNAはインフルエンザウイルス産生を強力に阻害することができること、(ii)インフルエンザウイルス産生を、異なるウイルス遺伝子に特異的なsiRNA(NP、PA、およびPB1タンパク質をコードするものが含まれる)によって阻害することができること、および(iii)siRNAの投与と同時または投与後に感染させた細胞に加えて、以前に感染した細胞でsiRNA阻害が起こることを示す。
Figure 2008533990
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(実施例3:ウイルスRNAポリメラーゼまたは核タンパク質をターゲティングするsiRNAはニワトリ胚におけるインフルエンザAウイルス産生を阻害する)
(材料および方法)
siRNA−オリゴフェクタミン複合体の形成およびニワトリ胚接種。siRNAを上記のように調製した。ニワトリの卵を標準的な条件下で保持した。30μlのオリゴフェクタミン(製品番号:12252011。Life Technologies,now Invitrogen製)を、30μlのOpti−MEM I(Gibco)と混合し、室温で5分間インキュベートした。2.5nmol(10μl)のsiRNAを30μlのOpti−MEM Iと混合し、希釈したオリゴフェクタミンに添加した。siRNAおよびオリゴフェクタミンを、室温で30分間インキュベートした。10日齢のニワトリ卵に、100μlのPR8ウイルス(5000pfu/ml)と共にsiRNA−オリゴフェクタミン複合体を接種した。卵を、37℃で指示された時間インキュベートし、尿膜腔液を採取した。尿膜腔液におけるウイルス力価を、上記のHAアッセイによって試験した。
(結果)
MDCK細胞が得られたか否かを確認するために、siRNAがニワトリ受精卵中のインフルエンザウイルス産生を阻害する能力もアッセイした。卵にはエレクトロポレーションを使用することができないため、オリゴフェクタミン(DNAオリゴヌクレオチドの細胞内への取り込みを容易にすることが示されている脂質ベースの薬剤)およびインビトロでsiRNAを使用した(25)。簡単に述べれば、図14Aに図示するように、PR8ウイルスのみ(500pfu)またはウイルス+siRNA−オリゴフェクタミン複合体を、10日齢のニワトリ卵の尿膜腔に注射した。血球凝集素アッセイによるウイルス力価の測定のために、17時間後に尿膜腔液を採取した。図14Bに示すように、ウイルスを単独で注射した場合(オリゴフェクタミンの存在下)、高ウイルス力価が容易に検出された。GFP−949の同時注射では、有意にはウイルス力価に影響を与えなかった(オリゴフェクタミンを省略した場合、ウイルス力価の有意な減少は認められなかった)。
インフルエンザウイルスに特異的なsiRNAの注射により、MDCK細胞で認められた結果と一致する結果が示された。MDCK細胞のインフルエンザウイルス産生を阻害した同一のsiRNA(NP−1496、PA2087、およびPB1−2257)もニワトリ卵におけるウイルス産生を阻害するのに対して、MDCK細胞では有効性の低いsiRNA(NP−231、M−37、およびPB1−129)は、ニワトリ受精卵で無効であった。したがって、siRNAはまた、ニワトリ受精卵におけるインフルエンザウイルス産生の干渉に有効である。
(実施例4:siRNAはmRNAレベルでインフルエンザウイルス産生を阻害する)
(材料および方法)
siRNA調製物を上記のように調製した。
RNAの抽出、逆転写、およびリアルタイムPCR。1×10個のMDCK細胞に対して、2.5nmolのNP−1496を用いてエレクトロポレーションを行うか、偽エレクトロポレーション(siRNAなし)を行った。8時間後、MOI=0.1のインフルエンザA PR8ウイルスを細胞に接種した。感染から1、2、および3時間後の、上清を除去し、細胞をTrizol試薬(Gibco)で溶解した。製造者の説明書に従って、RNAを精製した。製造者の説明書に従って、200ngの総RNA、特異的プライマー(以下を参照のこと)、およびOmniscript逆転写酵素キット(Qiagen)を含む20μlの反応混合物を使用して、37℃で1時間逆転写(RT)を行った。mRNA、NPvRNA、NPcRNA、NSvRNA、またはNScRNAのいずれかに特異的なプライマーを以下に示す。
Figure 2008533990
1μlのRT反応混合物(すなわち、逆転写の実施によって得られるサンプル)および配列特異的プライマーを、SYBR Green I二本鎖DNA結合色素を含むSYBR GreenPCRマスターミックス(AB Applied Biosystems)を使用したリアルタイムPCRのために使用した。ABI PRISM 7000配列検出システム(AB applied Biosystems)でPCRサイクルを実施し、ABI PRISM 7000 SDSソフトウェア(AB Applied Biosystems)で分析した。50℃で2分間、95℃で10分間、その後95℃で15秒間および60℃で1分間を50サイクルでPCR反応を行った。0.2蛍光単位の読み取りでサイクル時間を分析した。全ての反応を二連で行った。二連の間で1.0を超えて変化するサイクル時間を捨てた。次いで二連のサイクル時間を平均し、正規化された値のために、これらからβ−アクチンのサイクル時間を引いた。
PCRプライマーは以下の通りであった。
Figure 2008533990
(結果)
上記のように、インフルエンザウイルスの複製時、vRNAが転写されてcRNA(より多くのvRNA合成のためのテンプレートとして作用する)およびmRNA(タンパク質合成のためのテンプレートとして作用する)を産生する(1)。RNAiは配列特異的様式でmRNAの分解をターゲティングすることが公知であるが(16〜18)、インフルエンザAウイルスのvRNAがヌクレアーゼに感受性を示すため、vRNAおよびcRNAもsiRNAの標的である可能性がある(1)。種々のRNA種の分解に対するsiRNAの効果を調査するために、配列特異的プライマーを使用した逆転写およびその後のリアルタイムPCRを使用して、vRNA、cRNA、およびmRNAのレベルを定量することができた。図16は、インフルエンザウイルスのvRNAと、mRNAと、およびcRNAとの間の関係を示す。図16Aおよび16Bに示すように、cRNAはvRNAの正確な相補体であるが、mRNAは、5’末端にキャップ構造および宿主細胞mRNA由来のさらなる10〜13ヌクレオチドを含み、mRNAは、vRNAセグメントの5’末端から15〜22ヌクレオチド下流の部位に相補的な部位から始まるポリA配列を3’末端に含む。したがって、vRNAおよびcRNAと比較すると、mRNAは3’末端の15〜22ヌクレオチドを欠く。3つのウイルスRNA種を区別するために、第1の逆転写反応においてvRNAに特異的なプライマー、cRNAに特異的なプライマー、およびmRNAに特異的なプライマーを使用した(図16B)。mRNAについて、プライマーとしてポリdT18を使用した。cRNAについて、mRNAから失われたRNAの3’末端に相補的なプライマーを使用した。vRNAについて、vRNAに相補的であり、且つ5’末端にあまり接近しない限り、プライマーは、RNAの間のほとんどどこでも良い。たった1つのRNAから転写して得られたcDNAを、リアルタイムPCRによって増幅した。
インフルエンザウイルス感染後、新規のビリオンがパッケージングされ始め、約4時間までに放出される。mRNAおよびcRNA転写の第1の波(wave)に対するsiRNAの効果を決定するために、RNAを感染後の早い時期に単離した。簡単に述べれば、NP−1496を、MDCK細胞にエレクトロポレーションした。偽エレクトロポレーション(siRNAなし)も行った。6〜8時間後、細胞にMOI=0.1にてPR8ウイルスを感染させた。次いで、細胞を、感染から1、2、および3時間後に溶解し、RNAを単離した。mRNA、vRNA、およびcRNAのレベルを、各RNA種のためのプライマーを使用した逆転写およびその後のリアルタイムPCRによってアッセイした。
図17は、感染前に約6〜8時間偽トランスフェクトするかsiRNA NP−1496でトランスフェクトした細胞中のウイルスに感染後の種々の時間でのウイルスNPおよびNS RNA種の量を示す。図17に示すように、感染から1時間後、NP siRNAトランスフェクションを用いるか用いないサンプルの間のNP mRNAの量に有意差はなかった。早ければ感染から2時間で、NP mRNAが偽トランスフェクション群で38倍に増加するのに対して、siRNAでトランスフェクトした細胞におけるNP mRNAレベルは増加しなかった(またはさらに僅かに減少した)。感染から3時間後、偽トランスフェクションにおいてmRNA転写物レベルが増加しつづけるのに対して、siRNA処理を受けた細胞ではNP mRNA量が連続的に減少することが認められた。偽トランスフェクションにおけるvRNAおよびcRNAの量の増加は感染から3時間後のみで有意であったこと以外は、NP vRNAおよびcRNAは類似のパターンを示した。いかなる理論にも拘束されることを望まないが、これはおそらくcRNAおよびさらなるvRNAの合成前に最初のmRNA転写ラウンドが起こるインフルエンザウイルスの生活環に起因する。
これらの結果は、血球凝集素アッセイまたはプラークアッセイによるインタクトな生ウイルスの測定結果と一致して、全てのNP RNA種の量が、NP siRNAでの処理によっても有意に減少することを示す。siRNAが主にmRNAの分解を媒介することが公知であるにもかかわらず、この実験によるデータは、NP cRNAおよびvRNAのsiRNA媒介分解の可能性を除外しないが、下記の結果により、NP mRNA減少の結果としてのNPタンパク質レベルの減少によりNP cRNAおよび/またはvRNAの安定性が減少することが示唆される。
(実施例5:RNA干渉の標的の同定)
(材料および方法)
未改変siRNAのsiRNA調製物を上記のように調製した。センス鎖もしくはアンチセンス鎖または両方のいずれかの各ヌクレオチド残基の2’−水酸基が2’−O−メチル基に置換された改変RNAオリゴヌクレオチドもDharmaconによって合成した。未改変オリゴヌクレオチドについて記載のように、改変オリゴヌクレオチドを脱保護し、相補鎖にアニーリングした。ゲル電気泳動によって二重鎖形成の完了についてsiRNA二重鎖を分析した。
細胞培養、siRNAでのトランスフェクション、およびウイルスでの感染。これらを本質的に上記のように行った。簡単に述べれば、改変NP−1496 siRNAに関する実験のために、MDCK細胞を最初に野生型(wt)鎖および改変(m)鎖から形成されたNP−1496siRNA(2.5nmol)でトランスフェクトし、8時間後に0.1のMOIにてPR8ウイルスに感染させた。感染から24時間後に培養上清のウイルス力価をアッセイした。M−37siRNAに関する実験のために、MDCK細胞を、M−37 siRNA(2.5nmol)でトランスフェクトし、0.01のMOIにてPR8ウイルスに感染させ、感染から1、2、および3時間後にRNA単離のために回収した。M−37センスおよびアンチセンス配列については、表2を参照のこと。
本質的に上記のようにRNA抽出、逆転写、およびリアルタイムPCRを行った。逆転写のために使用されるmRNA、M特異的vRNA、およびM特異的cRNAのいずれかに特異的なプライマーは以下の通りであった:
Figure 2008533990
(結果)
mRNAに加えてsiRNAがvRNAおよび/またはcRNAを干渉する可能性を調査するために、センス(Sまたは+)鎖またはアンチセンス(ASまたは−)鎖のいずれかが改変されたNP−1496siRNAを合成した。各ヌクレオチド残基中の2’−水酸基を2’−O−メチル基に置換する改変では、二重鎖形成のための塩基対合に影響を与えないが、改変RNA鎖はもはやRNA干渉を補助していない。言い換えれば、センス鎖が改変されているがアンチセンス鎖が野生型であるsiRNA(mS:wtAS)は、アンチセンス鎖と相補的な配列を有するRNAの分解を補助するが、センス鎖と相補的な配列はそうではない。逆に、センス鎖が野生型であるがアンチセンス鎖が改変されているsiRNA(wtS:mAS)は、センス鎖と相補的な配列を有するRNAの分解を補助するが、センス鎖と相補的な配列を有するRNAの分解は補助しない。
MDCK細胞を、偽トランスフェクトしたか、あるいはセンス鎖(mS:wtAS)またはアンチセンス鎖(wtS:mAS)のいずれかの鎖が改変される一方で他の鎖が野生型であるNP−1496siRNAでトランスフェクトした。細胞を、両方の鎖が改変されたNP−1496siRNA(mS:mAS)でもトランスフェクトした。次いで、細胞を、PR8ウイルスに感染させ、上清のウイルス力価を測定した。図18Aに示すように、偽トランスフェクションに供した培養物で高ウイルス力価が検出された。予想通り、野生型siRNA(wtS:wtAS)でトランスフェクトした培養物で非常に低いウイルス力価が検出されたが、両方の鎖を改変したsiRNA(ms:mAS)でトランスフェクトした培養物では高ウイルス力価が検出された。アンチセンス鎖が改変されたsiRNA(wtAS:mAS)でトランスフェクトした培養物でウイルス力価が高かったのに対して、センス鎖のみが改変されたsiRNA(mS:wtAS)でトランスフェクトした培養物ではウイルス力価は低かった。いかなる理論にも拘束されることを望まないが、本発明者らは、インフルエンザウイルスの産生を阻害するsiRNA二重鎖の野生型アンチセンス(−)鎖のための要件が、RNA干渉の標的が、mRNA(+)、cRNA(+)、または両方のいずれかであることを示唆する。
これらの可能性をさらに区別するために、対応するmRNA、vRNA、およびcRNAの蓄積に対するsiRNAの効果を試験した。同時に感染した細胞のコホートにおける転写を追跡するために、感染から1、2、および3時間後(新規のビリオンの放出および再感染前)にRNA単離用のsiRNAトランスフェクトMDCK細胞を採取した。ウイルスmRNA、vRNA、およびcRNAを、特異的プライマーを使用した逆転写によって最初に独立してcDNAに変換した。次いで、リアルタイムPCRによって各cDNAのレベルを定量した。図18Bに示すように、M特異的siRNA M−37を使用した場合、感染から1時間後または2時間後にM特異的mRNAはほとんど検出されなかった。感染から3時間後、M−37の非存在下でM特異的mRNAが容易に検出された。M−37でトランスフェクトされた細胞では、M特異的mRNAのレベルは、約50%減少した。対照的に、M特異的vRNAおよびcRNAのレベルは、M−37の存在によって阻害されなかった。いかなる理論にも拘束されることを望まないが、これらの結果は、ウイルスmRNAがおそらくsiRNA媒介性干渉の標的であることを示す。
(実施例6:ウイルスRNA蓄積に対する一定のsiRNAの広範な効果)
(結果)
上記のようにsiRNA調製物を調製した。
実施例3に記載のように、RNAの抽出、逆転写、およびリアルタイムPCRを行った。mRNA、NP vRNA、NP cRNA、NS vRNA、NS cRNA、Mv RNA、またはMc RNAのいずれかに特異的なプライマーを、実施例4および5に記載した。逆転写に使用するPB1 vRNA、PB1 cRNA、PB2 vRNA、PB2 cRNA、PA vRNA、またはPA cRNAに特異的なプライマーは以下の通りであった。
Figure 2008533990
PB1、PB2、およびPA RNAのPCRプライマーは以下の通りであった。
Figure 2008533990
(結果)
上記のように(実施例4)、NP−1496がNP遺伝子セグメントの分解を特異的にターゲティングするかどうかまたはNP以外のウイルスRNAレベルも影響を受けるかどうかを決定するために、NSに特異的なプライマーを、異なるNS RNA種(mRNA、vRNA、cRNA)の量を測定するためのRTおよびリアルタイムPCRに使用した。図19に示すように、NS mRNA、vRNA、およびcRNAの変化は、NP RNAについて認められたものと同一のパターンを示した。感染から3時間後、偽トランスフェクト細胞で全てのNS RNA種の有意な増加が認められるのに対し、NP−1496siRNAを投与された細胞でNS RNAレベルの有意な変化は認められなかった。この結果は、異なるウイルスRNAの転写および複製が少なくともNP RNAに関して調和良く調節されることを示す。「調和良く調節された」とは、ある転写物レベルが別の転写物レベルに直接または間接的に影響を与えることを意味する。特別な機構は含まれていない。NP転写物がsiRNA処理によって分解された場合、他のウイルスRNAレベルも減少する。
他のウイルスRNAに対するNP siRNAの効果をさらに調査するために、NP−1496で処理された細胞中の全てのウイルス遺伝子のmRNA、vRNA、およびcRNAの蓄積を測定した。図19A(上のパネル)に示すように、NP特異的mRNAは、感染から1〜2時間後は低かった。感染から3時間後、NP−1496の非存在下でNP mRNAが容易に検出されたのに対し、NP−1496の存在下では、NP mRNAレベルはバックグラウンドレベルを保持し、siRNAが特定のmRNAの蓄積を阻害したことを示した。図19A(中央および下のパネル)に示すように、NP−1496の存在によってNP特異的およびNS特異的vRNAおよびcRNAのレベルは大幅に阻害された。これらの結果は、実施例4に記載の結果を確認するものである。さらに、NP−1496処理細胞では、M遺伝子、NS遺伝子、PB1遺伝子、PB2遺伝子、およびPA遺伝子のmRNA、vRNA、およびcRNAの蓄積も阻害された(図19B、19C、および19H)。さらに、PA−2087については広範な阻害効果も認められた。図19E、19F、および19Gの左側の上、中央、および下のパネルは、NP−1496 siRNAによるウイルスmRNA転写ならびにvRNAおよびcRNA複製の阻害を示す図19A、19B、および19Cに示す結果と同一の結果を示す。図19E、19F、および19Gの右側の上、中央、および下のパネルは、同一濃度でPA−2087siRNAを使用して行った同一の実験の結果を示す。図19E(それぞれ右側の上、中央、および下のパネル)に示すように、感染から3時間後、PA−2087の非存在下でPA、M、およびNSのmRNAが容易に検出されたのに対し、PA−2087の存在により、PA、M、およびNSのmRNAの転写が阻害された。図19F(それぞれ右側の上、中央、および下のパネル)に示すように、感染から3時間後、PA−2087の非存在下でPA、M、およびNSのvRNAが容易に検出されたのに対し、PA−2087の存在によりPA、M、およびNSのvRNAの蓄積が阻害された。図19G(それぞれ右側の上、中央、および下のパネル)に示すように、感染から3時間後、PA−2087の非存在下でPA、M、およびNSのcRNAが容易に検出されたのに対し、PA−2087の存在によりPA、M、およびNSのcRNAの蓄積が阻害された。さらに、図19Hは、NP特異的siRNAがPB1特異的mRNA(上のパネル)、PB2特異的mRNA(中央のパネル)、およびPA特異的mRNA(下のパネル)の蓄積を阻害することを示す。
いかなる理論にも拘束されることを望まないが、本発明者らは、NP siRNAの広範な効果は、おそらくvRNAおよびcRNAの結合および安定化におけるNPの重要性の結果であり、NP特異的siRNAがRNA分解を非特異的にターゲティングするためではないことを示唆する。インフルエンザウイルス中のNP遺伝子セグメントは、vRNAおよびcRNAの両方に結合することができる一本鎖RNA結合核タンパク質をコードする(図15を参照のこと)。ウイルスの生活環では、NP mRNAは最初に転写され、翻訳される。NPタンパク質の主な機能は、RNAの転写、複製、およびパッケージングのためにウイルスゲノムをキャプシドに包むことである。NPタンパク質の非存在下では、vRNAおよびcRNAの両方の全長合成は強く損なわれる。NP siRNAがNP RNAの分解を誘導する場合、NPタンパク質合成が損なわれ、それにより十分なNPタンパク質がないことが他のウイルス遺伝子セグメントの複製に影響を与える。この方法で、NP siRNAは、非常に初期の段階でウイルス産生を強力に阻害することができる。
感染細胞中のNPタンパク質分子数は、ゲノムRNA(vRNAおよびcRNA)複製に対するmRNA合成のレベルを調節すると仮定されている(1)。NPタンパク質の温度感受性変異を使用して、以前の研究で、cRNAの合成はインビトロおよびインビボの両方で温度感受性を示すが、mRNAはそうではないことが示されている(70、71)。NPタンパク質は、初期のcRNAおよびvRNA転写物の伸長および抗終結のために必要であることが示された(71、72)。上記の結果は、NP特異的siRNAが感染細胞中の全てのウイルスRNAの蓄積を阻害したことを示す。いかなる理論にも拘束されることを望まないが、おそらく、NP特異的siRNAの存在下で、新規に転写されたNPmRNAが分解され、ウイルス感染後にNPタンパク質合成が阻害されるようである。新規に合成されたNP、さらなるウイルス転写、および複製がなければ、新規のビリオン産生は阻害される。
同様に、PA特異性の存在下で、新規に転写されたPA mRNAが分解され、PAタンパク質合成が阻害される。インフルエンザビリオンあたり30〜60コピーのRNA転写酵素が存在するにもかかわらず(1)、新規に合成されたRNA転写酵素がなければ、さらなるウイルスの転写および複製は同様に阻害される。PB1に特異的なsiRNAを使用しても類似の結果が得られた。対照的に、ウイルス感染後期まで基質(M)タンパク質は必要ない(1)。したがって、M特異的siRNAはM特異的mRNAの蓄積を阻害するが、vRNA、cRNA、または他のウイルスRNAの蓄積は阻害しない。まとめると、これらの所見は、インフルエンザウイルスRNAの転写および複製における新規に合成された核タンパク質およびポリメラーゼタンパク質についての重要な要件を証明する。NP、PA、およびPB1特異的siRNAがmRNA特異的機構の蓄積および他のウイルスRNA転写を干渉するmRNA特異的機構およびウイルス特異的機構により、これらのsiRNAはインフルエンザウイルス感染の特に強力なインヒビターであり得ることが示唆される。
(実施例7:一定のsiRNAによるウイルスRNA蓄積の広範な阻害は、インターフェロン応答にもウイルス誘導性RNA分解にも起因しない)
(材料および方法)
RNAレベルの測定。標準的な条件下でPCRを使用してRNAレベルを測定した。γ−アクチンRNAの測定のために以下のPCRプライマーを使用した。
Figure 2008533990
以下に引用された引用文献に記載の標準的な技術にしたがって、ベロ細胞の培養およびリン酸化PKRの測定を行った。
(結果)
ウイルスRNA蓄積の広範な阻害についての1つの可能性のある理由は、siRNAの存在下での感染細胞のインターフェロン応答である(23、65、66)。したがって、全IFN遺伝子座(全てのα、β、およびω遺伝子が含まれる)が欠失したベロ細胞において上記実験を繰り返した(67、68)(Q.G.およびJ.C.未公開データ)。MDCK細胞と同様に、NP、M、およびNS特異的mRNAの蓄積の全てがNP−1496によって阻害された(図19D)。さらに、細胞遺伝子由来の転写物(β−アクチン、γ−アクチン、およびGAPDHが含まれる)のレベルに対するsiRNAの効果を、PCRを使用してアッセイした。siRNAの非存在下または存在下で転写レベルの有意な相違は検出されず(γ−アクチンmRNAに対するM−37 siRNAの効果の欠如を示す図18Cの下のパネル、データ示さず)、siRNAの効果が、ウイルスRNAに特異的であることを示唆している。一定のsiRNAによるウイルスRNA蓄積の広範な阻害は細胞インターフェロン応答の結果ではないことが示唆される。
インフルエンザウイルス感染後、dsRNAの存在は、RNAを分解のターゲットとする細胞経路も活性化させる(23)。本経路の活性化に対するsiRNAの効果について試験を行うために、本発明者らは、リン酸化プロテインキナーゼR(PKR)(経路の最も重要な成分)のレベルをアッセイした(23)。ウイルス感染の非存在下におけるNP−1496でのMDCK細胞のトランスフェクションは、活性化PKRレベルに影響を与えなかった(データ示さず)。インフルエンザウイルスによる感染によってリン酸化PKRレベルが増加し、これは以前の研究と一致する(65、66、69)。しかし、NP−1496の存在下または非存在下で増加は同一であった(データ示さず)。したがって、ウイルスRNA蓄積の広範な阻害は、siRNAの存在下での強化されたウイルス誘導性分解の結果ではない。
(実施例8:単独または組み合わせのいずれかでインフルエンザウイルス産生を阻害する優れた能力を有するsiRNAの体系的同定)
ハイスループットスクリーニング(実施例18)を、インフルエンザウイルス産生を阻害する優れた能力を有するsiRNAを同定するために行なった。そのsiRNAを、細胞培養物において個別に試験し、そしてその多くを、マウスにおいてさらに試験した。特定の組み合わせをまた、試験し、そしてそれらは、相加効果を示した。さらなる組み合わせの体系的試験を、相乗(すなわち、相加より大きい)効果を有する組み合わせを同定するために行なう。上記siRNA、および同じアンチセンス鎖を含む他のRNAi誘導性実体を、主要なヒト病原体および鳥類病原体を含むさらなるインフルエンザウイルス株に対してさらに試験する。
(実施例9:siRNAの細胞取り込みを容易にする非ウイルス送達因子の評価)
種々の非ウイルス送達因子を、siRNAの細胞取り込みを増強するそれらの能力について試験した。その後の実施例は、多くのポリマーを用いた細胞培養物および動物の両方におけるポジティブな結果(例えば、インフルエンザウイルス産生の阻害)を示すデータを提供する。さらなる送達因子を、同様のアプローチを使用して試験する。
(実施例10:マウスにおけるRNAi誘導性物質を含む組成物の試験)
インフルエンザウイルス転写物にターゲティングされるRNAi誘導性物質を含む乾燥粒子を、記載(58)されるように調製する。この手順において、水溶性賦形剤(すなわち、ラクトース、アルブミンなど)および治療剤を、蒸留水に溶解した。その溶液を、Niro Atomizer Portable Spray Dryer(Niro,Inc.、Colombus、MD)に供給して、3μmと15μmとの間の範囲の平均幾何学粒径および0.04g/cmと0.6g/cmとの間のタップ密度を有する乾燥粉末を産生した。その乾燥粉末を、マウスの呼吸系に、吸入または気管内投与によって投与する。乾燥粉末エアロゾルの吸入送達を、麻酔したマウスにおける強制換気によって達成する。気管内投与のために、治療剤を含む溶液は、麻酔したマウスの肺へのチューブによって注入する(54)。他の実験において、液体の送達のために、液体エアロゾルを、噴霧器によって密封したプラスチック製ケージ(マウスが置かれる場所)にもたらした(52)。注入器(例えば、Perm Century(URL www.penncentury.com)から入手可能(例えば、Model IA−IC))を、小動物に対する乾燥粉末の肺送達に使用し得る。
(実施例11:DNAベクターまたはレンチウイルスによって提供されたテンプレートから転写されたsiRNAによるインフルエンザウイルス感染の阻害)
上に記載したアプローチの代替法として、siRNA前駆体が転写され、そして有効なsiRNAへとプロセシングされ得るDNAベクターの使用を、実施例13および14に記載したように探索した。図20A〜20Cは、以前の研究(27、59)に使用したベクターを示し、その結果は、図20Dにおいて示され、そして米国特許出願第10/674,159号においてさらに記載される。図21A〜21Cは、複数の異なるsiRNAについての前駆体を含むヘアピン前駆体の効力を試験するために使用され得るさらなる構築物を示す。
(実施例12:siRNAによるマウスにおけるインフルエンザウイルス産生の阻害)
本実施例は、インフルエンザウイルスでの感染の前または後のいずれかで投与した場合、インフルエンザウイルスNPまたはPA転写物にターゲティングされるsiRNAの投与によりマウスにおけるインフルエンザウイルスの産生を阻害することを示す実験を記載する。阻害は用量依存性であり、2つの異なるインフルエンザウイルス遺伝子から発現した転写物にターゲティングされる2つのsiRNAを共に投与した場合、さらなる効果を示す。
(材料および方法)
siRNAの調製。上記のようにこれを行う。
siRNA送達。siRNA(30もしくは60μgのGFP−949、NP−1496、またはPA−2087)を、オリゴヌクレオチドカチオン性ポリマートランスフェクション試薬N/P(比=5)(Qbiogene,Inc.,Carlsbad,CA;Cat.No.GDSP20130;N/Pは、jetPEI試薬中のリン酸ヌクレオチドあたりの窒素残基数をいう)のためのjetPEITMまたはポリ−L−リジン(MW)(vis)52,000;MW(LALLS)41,800、Sigma Cat.No.P2636)と5%グルコース中で室温にて20分間インキュベートした。混合物をマウスに静脈内注射し、眼窩静脈に注射する(マウスあたり200μl、群あたり4マウス)。200μlの5%グルコースをコントロール(未投与)マウスに注射した。マウスを2.5%Avertinsで麻酔し、その後siRNA注射または鼻腔内感染を行った。
ウイルス感染。B6マウス(標準的な実験条件下で保持)に、ピペットを使用して30μl(12,000pfu)/マウスでマウスの鼻腔にウイルス含有緩衝液を滴下することによってPR8ウイルスを鼻腔内感染した。
ウイルス力価の決定。マウスを、感染後の種々の時間で屠殺し、肺を採取した。肺をホモジナイズし、ホモジネートを2回凍結融解してウイルスを放出させた。感染肺中に存在するPR8ウイルスを、MDCK細胞の感染によって力価測定した。平底96ウェルプレートに、3×10MDCK細胞/ウェルを播種し、24時間後に血清含有培地を除去した。25μlの肺ホモジネート(非希釈または1×10−1〜1×10−7に希釈のいずれか)を三つ組のウェルに接種した。1時間のインキュベーションの後、4μg/mlのトリプシンを含む175μlの感染培地を、各ウェルに添加した。37℃で48時間のインキュベーション後、感染細胞由来の上清によるニワトリRBCの血球凝集反応によってウイルスの有無を決定した。V底96ウェルプレート中で血球凝集反応アッセイを行った。上清の連続2倍希釈物を、同体積の0.5%懸濁液(vol/vol)のニワトリ赤血球(Charles River Laboratories)と混合し、氷上で1時間インキュベートした。接着性で均一な赤血球層を含むウェルを、正とスコアリングした。ウイルス力価を、Reed and Muench法(TCID50)による50%のウェルが感染した希釈終点の内挿によって決定した(したがって、より低いTCID50は、より低いウイルス力価を反映する)。任意の2つの群由来のデータを、有意性を評価するために本明細書中に記載の実験を通して使用したスチューデントt検定によって比較した。
(結果)
図22Aは、感染前に投与した場合、ウイルスNP転写物にターゲティングされるsiRNAがマウスにおけるインフルエンザウイルス産生を阻害することを証明する実験結果を示す。上記の材料および方法に記載のように、30または60μgのGFP−949またはNP−1496siRNAを、jetPEIとインキュベートし、マウスに静脈内注射した。3時間後、マウスに、マウスあたり12000pfuのPR8ウイルスを鼻腔内感染させた。感染から24時間後、肺を採取した。図22Aに示すように、siRNA未処理(NT;黒塗りの四角)またはGFPにターゲティングされるsiRNA(GFP60μg;白抜きの四角)を投与されたマウス肺についてのホモジネートの平均log10TCID50は4.2であった。NP(NP30μg;白抜きの円)およびjetPEIにターゲティングされる30μgのsiRNAで事前処理したマウスでは、肺ホモジネートの平均log10TCID50は3.9であった。NP(NP60μg;黒塗りの円)およびjetPEIにターゲティングされる60μgのsiRNAで事前処理したマウスでは、肺ホモジネートの平均log10TCID50は3.2であった。未処理群と60μgNP siRNAを投与した群との間の肺ホモジネートにおけるウイルス力価の相違は、P=0.0002で有意であった。各マウスについてのデータを、表6A(NT=未処理)に示す。
図22Bは、感染前にカチオン性ポリマーPLLを含む組成物中で静脈内投与した場合、ウイルスNP転写物にターゲティングされるsiRNAがマウスにおけるインフルエンザウイルス産生を阻害することを証明する別の実験結果を示す。上記の材料および方法に記載のように、30または60μgのGFP−949またはNP−1496siRNAを、PLLとインキュベートし、マウスに静脈内注射した。3時間後、マウスに、マウスあたり12000pfuのPR8ウイルスを鼻腔内感染した。感染から24時間後、肺を採取した。図22Bに示すように、siRNA未処理(NT;黒塗りの四角)またはGFPにターゲティングされるsiRNA(GFP60μg;白抜きの四角)を投与されたマウスについての肺ホモジネートの平均log10TCID50は4.1であった。NP(NP60μg;黒塗りの円)およびPLLにターゲティングされる60μgのsiRNAで事前処理したマウスでは、肺ホモジネートの平均log10TCID50は3.0であった。60μgGFPを投与した群と60μgNP siRNAを投与した群との間の肺ホモジネート中のウイルス力価の相違は、P=0.001で有意であった。各マウスのデータを表6Aに示す(NT=未処理)。これらのデータは、インフルエンザNP転写物にターゲティングされるsiRNAは、ウイルス感染前に投与した場合に肺のウイルス力価が減少することを示す。これらはまた、siRNAとカチオン性ポリマーとの混合物は静脈内注射によって投与した場合に(ハイドロダイナミックトランスフェクションなどの技術は必要ない)肺のインフルエンザウイルスの阻害に有効な因子であることを示す。
Figure 2008533990
図22Cは、ウイルスNP転写物にターゲティングされるsiRNAが感染前に投与された場合にマウスのインフルエンザウイルス産生を阻害することを証明し、カチオン性ポリマーの存在はsiRNAの阻害効果が有意に増加することを実証する第3の実験結果を示す。上記の材料および方法に記載のように、60μgのGFP−949またはNP−1496siRNAを、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)またはjetPEIとインキュベートしt、マウスに静脈注射した。3時間後、マウスに12000pfu/マウスのPR8ウイルスを鼻腔内感染した。注射から24時間後、肺を採取した。図22Cに示すように、siRNA処理を行っていないマウス(NT;白抜きの四角)についての肺ホモジネートの平均log10TCID50は4.1であるが、PBS中のGFPにターゲティングされるsiRNAを受けたマウス(GFP PBS;白抜きの三角)についての肺ホモジネートの平均log10TCID50は、4.4であった。PBS中のNP(NP PBS;白抜きの円)にターゲティングされる60μgのsiRNAで事前処理したマウスでは、肺ホモジネートの平均log10TCID50は4.2であり、処理なしまたはGFPにターゲティングされるsiRNAでの処理と比較して最も穏やかな有効性の上昇のみを示す。jetPEI中のGFP(GFP PEI;白抜きの円)にターゲティングされる60μgのsiRNAで事前処理したマウスでは、肺ホモジネートの平均log10TCID50は4.2であった。しかし、jetPEI中のNP(NP PEI;黒塗りの円)およびjetPEIにターゲティングされる60μgのsiRNAを投与されたマウスでは、肺ホモジネートの平均log10TCID50は3.9であった。jetPEI中のNP(NP PEI;黒塗りの円)にターゲティングされる60μgのsiRNAで事前処理されたマウスでは、肺ホモジネートの平均log10TCID50は3.2であった。GFP siRNAを含むPBSを投与された群とNP siRNAを含むPBSを投与された群との間の肺ホモジネートのウイルス力価の相違は、P=0.04で有意であるが、jetPEIを含むGFP siRNAを投与された群とjetPEIを含むNP siRNAを投与された群との間の肺ホモジネートのウイルス力価の相違は、P=0.003であり高度に有意であった。各マウス由来のデータを、表6Bに示す(NT=未処理)。
(表6B.カチオン性ポリマーを用いて有効性の増加示すsiRNAによるマウスにおけるインフルエンザウイルス産生の阻害)
Figure 2008533990
さらなる実験を、感染の前後の種々の時点で投与した場合の、感染後の種々の時間におけるインフルエンザウイルス産生を阻害するsiRNAの能力を評価するために行なった。
siRNAを、120ug siRNAをウイルス感染の12時間前に投与したことを除いて、上で記載したように投与した。表6Cは、log10TCID50として表した結果を示す。NP−処理をコントロール群と比較したP値は、0.049であった。
Figure 2008533990
別の実験において、siRNA(60ug)を、感染の3時間前に投与した。1500pfuのPR8ウイルスを、鼻腔内に投与した。その感染した肺を、感染の48時間後に回収した。表6Dは、log10TCID50として表した結果を示す。NP−処理をコントロール群と比較したP値は、0.03であった。
Figure 2008533990
別の実験において、siRNA(120ug)を、PR8(1500pfu)感染の24時間後に投与した。感染の52時間後、その肺を回収し、そしてウイルス力価を測定した。表6Dは、log10TCID50として表した結果を示す。NP−処理をコントロール群と比較したP値は、0.03であった。
Figure 2008533990
他のポリマーもまた、有効なsiRNA送達因子であることが示された。図22Dは、ポリ(βアミノエステル)(J28)と一緒に静脈内に投与した場合に、NP(NP−1496)にターゲティングされるsiRNAがマウスにおけるインフルエンザウイルス産生を阻害すること示すプロットである。図22Eは、ポリ(βアミノエステル)(J28またはC32)と一緒に腹腔内に投与した場合に、NP(NP−1496)にターゲティングされるsiRNAがマウスにおけるインフルエンザウイルス産生を阻害する一方で、コントロールRNA(GFP)が有意な効果を有さないことを示すプロットである。この実験を、siRNAに対するポリマーの比が重量/重量比(例えば、60:1 w/w)であったことを除いて、本質的に上に記載したように行った。ポリマーおよびsiRNAを、混合し、そして12,000pfuのPR8ウイルスによる鼻腔内感染の3時間前に、静脈内または腹腔内のいずれかにマウスに対して投与した。肺を、24時間後に回収し、そしてHAアッセイを、行なった。J28およびC32に存在するアミンモノマーおよびビス(アクリレートエステル)モノマーは、U.S.S.N.10/446,444において記載および図示される。そのポリマーは、Dr.Robert Langerからの寄贈であった。
図23は、異なるインフルエンザウイルス転写物にターゲティングされるsiRNAがさらなる効果を示すことを証明する実験結果を示す。上記の材料および方法に記載するように、60μgのNP−1496siRNA、60μgのPA−2087siRNA、または60μgのNP−1496siRNA+60μgのPA−2087siRNAを、jetPEIとインキュベートし、マウスに静脈内注射した。3時間後、マウスに12000pfu/マウスのPR8ウイルスを鼻腔内感染した。感染から24時間後に肺を採取した。図23に示すように、siRNA処理を受けていない(NT;黒塗りの四角)マウスについての肺ホモジネートの平均log10TCID50は4.2であった。NP(NP60μg;白抜きの円)にターゲティングされる60μgのsiRNAを投与されたマウスでは、肺ホモジネートの平均log10TCID50は3.2であった。PA(PA60μg;白抜きの三角)にターゲティングされる60μgのsiRNAを投与したマウスでは、肺ホモジネートの平均log10TCID50は3.4であった。NPにターゲティングされる60μgのsiRNA+PAにターゲティングされる60μgのsiRNA(NP+PA;黒塗りの円)を投与したマウスでは、肺ホモジネートの平均log10TCID50は2.4であった。未処理群と、60μgのNP siRNA、60μgのPA siRNA、または60μgのNP siRNA+60μgのPA siRNAを投与された群との間の肺ホモジネートのウイルス力価の相違は、それぞれP=0.003、0.01、および0.0001で有意であった。60μgのNP siRNAまたは60μgのNP siRNAを投与された群と、60μgのNP siRNA+60μgのPA siRNAを投与された群との間の肺ホモジネートの相違は、P=0.01で有意であった。各マウスについてのデータを、表7に示す(NT=未処理)。これらのデータは、インフルエンザNPまたはPA転写物にターゲティングされるsiRNAでの事前処理によりインフルエンザウイルスにその後感染したマウス肺のウイルス力価が減少することを示す。データは、さらに、異なるウイルス転写物にターゲティングされるsiRNAの組み合わせによりさらなる効果を示すことを示し、異なる転写物にターゲティングされるsiRNAの組み合わせを使用した治療は、等価な有効性を達成するために必要な1つのsiRNAの量と比較して各siRNAの用量を減少させることができると示唆される。
Figure 2008533990
図24は、ウイルスNP転写物にターゲティングされるsiRNAが感染後に投与された場合にマウスにおけるインフルエンザウイルス産生を阻害することを証明する実験結果を示す。マウスに、500pfuのPR8ウイルスを鼻腔内感染させた。上記の材料および方法に記載のように、60μgのGFP−949siRNA、60μgのPA−2087siRNA、60μgのNP−1496siRNA、または60μgのNP siRNA+60μgのPA siRNAをjetPEIとインキュベートし、5時間後にマウスに静脈内注射した。siRNAの投与から28時間後に肺を採取した。図24に示すように、siRNA処理なし(NT;黒塗りの四角)またはGFP特異的siRNA GFP−949(GFP;白抜きの四角)を投与されたマウスについての肺ホモジネートの平均log10TCID50は3.0であった。PA(PA60μg;白抜きの三角)にターゲティングされる60μgのsiRNAを投与されたマウスでは、肺ホモジネートの平均log10TCID50は2.2であった。NP(NP60μg;白抜きの円)にターゲティングされる60μgのsiRNAを投与されたマウスでは、肺ホモジネートの平均log10TCID50は2.2であった。60μgのNP siRNA+60μgのPA siRNA(PA+NP;黒塗りの円)を投与されたマウスでは、肺ホモジネートの平均log10TCID50は1.8であった。未処理群と、60μgのPA、NP siRNA、または60μgのNP siRNA+60μgのPA siRNAを投与された群との間の肺ホモジネートのウイルス力価の相違は、それぞれP=0.09、0.02、および0.003で有意であった。NP siRNAおよびPA+NP siRNAを投与された群の間の肺ホモジネートのウイルス力価の相違は、P値が0.2であった。各マウスについてのデータを表8に示す(NT=未処理)。これらのデータは、インフルエンザNPおよび/またはPA転写物にターゲティングされるsiRNAによりウイルス感染後に投与された場合に肺のウイルス力価が減少することを示す。
Figure 2008533990
(実施例13:shRNA産生のためのテンプレートを提供するレンチウイルス投与による細胞におけるインフルエンザウイルス産生の阻害)
(材料および方法)
細胞培養。24ウェルプレートに、4×10細胞/ウェルにて1mlのDMEM−10%FCS中でベロ細胞を播種し、37℃、5%COでインキュベートした。
shRNA産生のためのテンプレートを提供するレンチウイルスの産生。図25Aに図示されるように、NP−1496a shRNAの合成のためのテンプレートとして作用するオリゴヌクレオチド(図25Aを参照のこと)を、レンチウイルスベクターのpLL3.7のU6プロモーターと終結配列との間でクローニングした(Rubinson,D.,et al,Nature Genetics,Vol.33,pp.401−406,2003)。オリゴヌクレオチドを、pLL3.7のマルチクローニング部位内のHpaIとXhoI制限部位との間に挿入した。レンチウイルスベクターは、トランスフェクト/感染疾患のモニタリングを容易にするためにEGFPも発現する。NP−1496a shRNA産生用のテンプレートを含むDNAベクターの同時トランスフェクションおよび293T細胞へのベクターのパッケージングによってレンチウイルスが産生された。48時間後、レンチウイルスを含む培養上清を回収し、4℃、2000rpmで7分間スピンし、次いで0.45μmのフィルターで濾過した。1×10/ウェルにてベロ細胞を、24ウェルプレートに播種した。一晩の培養後、インサート(0.25mlまたは1.0mlのいずれか)を含む培養上清を、8μg/mlポリブレンの存在下でウェルに添加した。ついで、プレートを、2500rpmにて室温で1時間遠心分離し、培養物に戻した。感染から24時間後、得られたベロ細胞株(ベロ−NP−0.25およびベロ−NP−1.0)を、親(非感染)ベロ細胞とともにフローサイトメトリーによってGFP発現について分析した。NP−1496中の19よりもむしろ20nt長の二重鎖部分が得られる、センス部分の3’末端のさらなるヌクレオチド(A)およびアンチセンス部分の5’末端の相補的ヌクレオチド(U)の偶発的封入によってNP−1496aがNP−1496と異なることに留意のこと(表2を参照のこと)。本発明の他の実施形態によれば、NP−1496a配列よりもむしろNP−1496配列を使用する。さらに、図21に示すNP−1496a shRNAループ部分は、NP−1496shRNAのそれと異なる。
インフルエンザウイルス感染およびウイルス力価の決定。コントロールベロ細胞およびインサートを含むレンチウイルスで感染させたベロ細胞(ベロ−NP−0.25およびベロ−NP−1.0)に、0.04、0.2、および1のMOIにてPR8ウイルスを感染させた。実施例12に記載のように、上清中のインフルエンザウイルス力価を、感染から48時間後のHAアッセイによって決定した。
(結果)
NP−1496a shRNAの産生のためのテンプレートを含むレンチウイルスを、ベロ細胞中のインフルエンザウイルス産生を阻害する能力について試験した。NP−1496a shRNAは、上記のNP−1496a siRNAと同一の配列を有する二重鎖部分を含むステム−ループ構造を形成することができる2つの相補領域を含む。図25Bに示すように、ベロ細胞と共にレンチウイルス含有上清の一晩のインキュベーションにより、EGFPが発現され、レンチウイルスによるベロ細胞の感染が示される。影をつけた曲線は、コントロール細胞(非感染)の平均蛍光強度を示す。1mlの上清を使用した場合、ほとんど全ての細胞がEGFP陽性となり、平均蛍光強度は高かった(1818)(ベロ−NP−1.0)。0.25mlの上清を使用した場合、ほとんどの細胞(約95%)はEGFP陽性であり、平均蛍光強度は低かった(503)(ベロ−NP−0.25)。
次いで、親ベロ細胞およびレンチウイルス感染ベロ細胞に、0.04、0.2、および0.1のMOIにてインフルエンザウイルスを感染させ、インフルエンザウイルス感染から48時間後にウイルス力価をアッセイした。MOIの増加につれて、親ベロ細胞培養物の上清のウイルス力価が増加した(図25C)。対照的に、ベロ−NP−1.0細胞培養物上清のウイルス力価は非常に低値のままであり、インフルエンザウイルス産生がこれらの細胞中で阻害されることを示す。同様に、ベロ−NP−0.25細胞培養物中のインフルエンザウイルス産生も部分的に阻害された。ウイルス力価を、表9に示す。これらの結果により、ベロ細胞中のインフルエンザウイルス産生を阻害するためにレンチウイルスベクターから発現されたNP−1496shRNAをsiRNAにプロセシングすることができることが示唆される。阻害の程度は、細胞あたりのウイルス感染の程度に比例するようである(EGFPレベルによって示される)。
(表9.組織培養物中で発現したsiRNAによるインフルエンザウイルス産生の阻害)
Figure 2008533990
(実施例14:siRNA前駆体を転写することができるDNAベクターの鼻腔内投与によるマウスにおけるインフルエンザ産生の阻害)
(材料および方法)
shRNAについてのテンプレートとして作用するプラスミドの構築。NP−1496a shRNAが発現するプラスミドの構築を実施例13に記載する。実施例13に記載のように、PB1−2257 shRNAまたはRSV特異的shRNAの合成のためのテンプレートとして作用するオリゴヌクレオチドを、レンチウイルスベクターpLL3.7のU6プロモーターと終結配列との間にクローニングし、NP−1496a shRNAについて図25Aに図示する。オリゴヌクレオチドの配列は以下の通りであった。
Figure 2008533990
上記オリゴヌクレオチドを含むベクターから発現したRSV shRNAを、インビボでプロセシングして、以下の配列を含むセンス鎖およびアンチセンス鎖を有するsiRNAを作製する。
Figure 2008533990
PA特異的ヘアピンを、以下のオリゴヌクレオチドを使用して同様に構築することができる。
Figure 2008533990
ウイルス感染およびウイルス力価の決定。実施例12に記載のようにこれらを行った。
DNA送達。上記のように、NP−1496a shRNA、PB1−2257shRNA、またはRSV特異的shRNA(各60μg)の発現についてのテンプレートとして作用することができるプラスミドDNAを、40μl Infasurf(登録商標)(ONY,Inc.,Amherst NY)および20μlの5%グルコースと個別に混合し、マウス群(各群あたり4匹)に鼻腔内投与した。40μlのInfasurfと20μlの5%グルコースとの混合物を、未処理(NT)群においてマウスに投与した。上記のように、13時間後にマウスに12000pfu/マウスのPR8ウイルスを鼻腔内に感染させた。感染から24時間後に肺を採取してウイルス力価を決定した。
(結果)
DNAベクターから発現されたshRNAがマウスにおけるインフルエンザウイルス感染を阻害する能力を試験した。これらの実験では、プラスミドDNAを、Infasurf(肺内の遺伝子導入を促進することが以前に示されたビヒクルに類似の子牛肺由来の天然サーファクタント抽出物)と混合した(74)。DNA/Infasurf混合物を、ピペットを使用して鼻に混合物を滴下することによってマウスに点滴注入した。13時間後、マウスに12000pfu/マウスのPR8ウイルスを感染させた。インフルエンザウイルス感染からの24時間後、肺を採取し、ウイルス力価をMDCK/血球凝集素アッセイによって測定した。
図26に記載のように、ウイルス力価は、いかなるプラスミドDNAも投与していないか呼吸器合胞体ウイルス(RSV)特異的shRNAを発現するDNAベクターを投与したマウスで高かった。NP−1496a shRNAまたはPB1−2257 shRNAのいずれかを発現するプラスミドDNAをマウスに投与した場合により低いウイルス力価が認められた。マウスに両インフルエンザ特異的プラスミドDNA(一方はNP−1496a shRNAを発現し、他方はPB1−2257 shRNAを発現する)を一緒に投与した場合、ウイルス力価はより有意に減少した。未処理(NT;白抜きの四角)またはRSV特異的shRNA(RSV;黒塗りの四角)をコードするプラスミドを投与したマウスについての肺ホモジネートの平均log10TCID50は、それぞれ4.0または4.1であった。NP−1496a shRNA(NP;白抜きの円)についてのテンプレートとして作用することができるプラスミドを投与したマウスでは、肺ホモジネートの平均log10TCID50は3.4であった。PB1−2257 shRNA(PB;白抜きの三角)についてのテンプレートとして作用することができるプラスミドを投与したマウスでは、肺ホモジネートの平均log10TCID50は3.8であった。NPおよびPB shRNA(NP+PB1;黒塗りの円)についてのテンプレートとして作用することができるプラスミドを投与したマウスでは、肺ホモジネートの平均log10TCID50は3.2であった。未処理またはRSV特異的shRNAプラスミドを投与された群とNP shRNAプラスミド、PB1 shRNAプラスミド、またはNPおよびPB1 shRNAプラスミドを投与された群との間の肺ホモジネートのウイルス力価の相違についてのP値は、それぞれ0.049、0.124、および0.004であった。各マウスについてのデータを、表10に示す(NT=未処理)。これらの結果は、DNAベクターから発現したshRNAを、マウスにおけるインフルエンザウイルス産生を阻害するためにsiRNAにプロセシングすることができ、InfasurfがshRNAを発現することができるプラスミドの送達のための適切なビヒクルであることが証明されることを示す。特に、これらのデータは、インフルエンザNPおよび/またはPB1転写物にターゲティングされるshRNAにより、以下のウイルス感染を投与した場合に肺内ウイルス力価を減少することを示す。
Figure 2008533990
(実施例15:カチオン性ポリマーは、siRNAの細胞取り込みを促進する)
(材料および方法)
試薬。2つの異なる平均分子量のポリ−L−リジン(ポリ−L−リジン(MW(vis)52,000;MW(LALLS)41,800,Cat.No.P2636)およびポリ−L−リジン(MW(vis)9,400;MW(LALLS)8,400,Cat.No.P2636)、ポリ−L−アルギニン(MW 15,000−70,000 Cat.No.P7762)、および3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)をSigmaから購入した。説明の目的で、LALLS法を使用して得られる分子量と仮定するが、ポリマーはいくらかサイズが異なることを示すため、分子量はおおよそであると理解すべきである。
び方法
ゲル遅延アッセイ。10μlのsiRNA(10mM Hepes緩衝液(pH7.2)中に10pmol)と種々の量のポリマーを含む10μlのポリマー溶液との混合によってsiRNA−ポリマー複合体を形成した。室温で30分間複合体を形成させ、その後20μlを4%アガロースゲルで泳動した。臭化エチジウム染色を使用して、バンドを視覚化した。
細胞傷害性アッセイ。等量(50pmol)のsiRNAを含む10mM Hepes緩衝液(pH7.2)と種々の量のポリマーを含むポリマー溶液とを室温で30分間混合することによってsiRNA−ポリマー複合体を形成した。MTTアッセイによって細胞傷害性を評価した。細胞を、30,000細胞/ウェルにて10%ウシ胎児血清(FCS)を含む0.2mlのDMEMを含む96ウェルプレートに播種する。37℃で一晩のインキュベーション後、培地を除去し、0.18ml OPTI−MEM(GIBCO/BRL)と置換した。siRNA−ポリマー複合体を含む20μlのHepes緩衝液を細胞に添加した。37℃で6時間のインキュベーション後、ポリマー含有培地を除去し、DMEM−10%FCSに置き替えた。製造者の説明書に従って、MTTアッセイを使用して24時間後に細胞の代謝活性を測定した。実験を三つ組で行い、データを平均した。
細胞培養、トランスフェクション、siRNA−ポリマー複合体形成、およびウイルス力価決定。10%熱不活化FCS、2mM L−グルタミン、100単位/mlペニシリン、および100μg/mlストレプトマイシンを含むDMEM中、37℃で5%CO/95%空気にてベロ細胞を増殖させた。トランスフェクション実験のために、4×10細胞/ウェルにて対数期ベロ細胞を、1mlのDMEM−10%FCSを含む24ウェルプレートに播種した。37℃で一晩のインキュベーション後、50μlのsiRNA(400pmol(約700ng)を含む10mM Hepes緩衝液(pH7.2))の50μlのポリマーボルテックスへの添加によってsiRNA−ポリマー複合体を形成した。siRNAとポリマーとの間の完全な複合体形成を達成するために、異なる濃度のポリマーを使用した。複合体形成を完了するために混合物を室温で30分間インキュベートした。細胞増殖培地を除去し、OPTI−MEM I(Life Technologies)と置き替え、その直後に複合体を添加した。
5%CO下にて37℃で6時間の細胞と複合体とのインキュベーション後、複合体含有培地を除去し、DMEM、0.3%BSA(Sigma)、10mM Hepes、100単位/mlペニシリン、および100μg/mlストレプトマイシンからなる感染培地中の200μlのPR8ウイルス(MOI=0.04)を、各ウェルに添加した。継続的に揺り動かしながら室温で1時間のインキュベーション後、4μg/mlトリプシンを含む0.8mlの感染培地を各ウェルに添加し、細胞を37℃の5%CO下で培養した。上記のように、感染から異なる時間後に、感染培養物から上清を回収し、血球凝集反応(HA)アッセイによってウイルス力価を決定した。
接着性細胞株について製造者の説明書に従って、リポフェクタミン2000(Life Technology)によるsiRNAのトランスフェクションを行った。簡単に述べれば、4×10細胞/ウェルにて対数期のベロ細胞を1mlのDMEM−10%FCSを含む24ウェルプレートに播種し、37℃で5%CO下にてインキュベートした。翌日、50μlの希釈リポフェクタミン2000を含むOPTI−MEM Iを50μlのsiRNAに添加して(400pmolを含むOPTI−MEM I)、複合体を形成させた。細胞を洗浄し、無血清培地でインキュベートした。上記のように、複合体を細胞に適用し、細胞を37℃で6時間インキュベートし、その後洗浄してインフルエンザウイルスに感染させた。上記のように、感染から異なる時間にて、感染培養物から上清を回収し、ウイルス力価を、血球凝集反応(HA)アッセイによって決定した。
(結果)
ポリ−L−リジン(PLL)およびポリ−L−アルギニン(PLA)がsiRNAと複合体を形成する能力および培養細胞によってsiRNAの取り込みを促進する能力を試験した。PLLおよび/またはPLAがsiRNAと複合体を形成するかどうかを決定するために、定量のNP−1496siRNAを漸増量のポリマーと混合した。次いで、ポリマー/siRNA複合体の形成を、4%アガロースゲルにおいて電気泳動によって視覚化した。ポリマーの量が漸増するにつれて、siRNAの電気泳動移動度が遅延し(図27Aおよび27B)、複合体形成が示される。図27Aおよび27Bは、それぞれsiRNAとPLL(41.8K)またはPLAとの間の複合体形成を示す。各パネルで使用したポリマーの量は、左から右に増加する。図27Aおよ27Bでは、各ウェル中で、左側のレーンにバンドが認められ、複合体形成の欠如が示され、それにより、siRNAがゲルに侵入し、その後移動する。右側に移動するにつれて、バンドは消滅し、これは、複合体形成と、複合体のゲル侵入および移動の失敗とを示す。
siRNA/ポリマー複合体の細胞傷害性を調査するために、異なる比でのsiRNAとPLLまたはPLAとの混合物を、96ウェルプレート中のベロ細胞培養物に添加した。細胞の代謝活性をMTTアッセイによって測定した(74)。三つ組で実験を行い、データを平均にした。PLL(MW約42K)の量の増加に伴って細胞生存率が有意に減少するのに対して、PLL(約8K)は、毒性を有意に低減させ、PLL/siRNA比が4:1もの高さでも毒性をほとんどまたは全く示さなかった(図28A;円=PLL(MW約8K);四角=PLL(MW約42K))。図28Bに示すように、細胞生存率はPLA/siRNA比が増大するほど減少するが、生存率は、PLA/siRNA比が4.5:1もの高さで約80%超に保持された。図28Aおよび28Bにおいて、ポリマー/siRNA比をx軸に示す。図28Aおよび28Bにプロットしたデータを、表11および12に示す。表11では、数値は、未処理細胞の生存率(%)と比較したポリマー/siRNA複合体での処理後の細胞の生存率(%)を示す。ND=実施せず。表12では、数値は、示したとおりのPLA/siRNA比、生存率(%)、および標準偏差を示す。
Figure 2008533990
Figure 2008533990
PLLまたはPLAがsiRNAの細胞取り込みを促進するかどうかを決定するために、種々の量のポリマーおよびNP−1496を、全てのsiRNAがポリマーと複合体化する比で混合した。それぞれの場合において等量のsiRNAを使用した。約42K PLLについては約8K PLLよりも低いポリマー/siRNA比を使用した。前者の細胞毒性がより高いことが証明されたからである。ベロ細胞に複合体を添加し、6時間後に培養物にPR8ウイルスを感染させた。感染から異なる時間にて、培養上清を回収し、HAアッセイによってウイルスについてアッセイした。図29Aは、種々のトランスフェクション処理(円=未処理、四角=リポフェクタミン;黒塗りの三角=PLL(PLL/siRNA比=2において約42K);白抜きの三角=PLL(PLL/siRNA比=8において約8K))を受けた細胞における長期にわたるウイルス力価のプロットである。図29Aに示すように、ウイルス力価は、非トランスフェクト培養物で時間と共に増加した。ウイルス力価は、NP−1496/リポフェクタミンでトランスフェクトされた細胞で有意に低く、PLL/NP−1496複合体で処理した培養物でさらに低かった。図29Aでプロットしたデータを、表13に示す(NT=未処理;LF2K=リポフェクタミン)。PLL:siRNA比を括弧で示す。
一定範囲のポリマー/siRNA比にわたりPLAを同様に試験した。図29Bは、種々のトランスフェクション処理(黒塗りの四角=偽トランスフェクション;黒塗りの円=リポフェクタミン;白抜きの四角=PLA/siRNA比=1でのPLA;白抜きの円=PLA/siRNA比でのPLA=2;白抜きの三角=PLA/siRNA比=4でのPLA;黒塗りの三角=PLA/siRNA比=8でのPLA)を受けた細胞における長期にわたるウイルス力価のプロットである。図29Bに示すように、ウイルス力価はコントロール(偽トランスフェクション)培養物およびPLA/siRNA比が1:1で処理した培養物で時間と共に増加した。ウイルス力価は、NP−1496/リポフェクタミンでトランスフェクトした培養物で有意に低く、PLA/siRNA比が4:1またはそれ以上の複合体を含むPLA/siRNA複合体で処理した培養物でさらに低かった。ポリマーの量の増加により、ウイルス力価がより大きく減少した。図29Bでプロットしたデータを、表13Bに示す。
(表13A.ポリマー/siRNA複合体によるインフルエンザウイルス産生の阻害)
Figure 2008533990
(表13B.ポリマー/siRNA複合体によるインフルエンザウイルス産生の阻害)
Figure 2008533990
したがって、カチオン性ポリマーは、siRNAの細胞取り込みを促進し、かつ細胞株中のインフルエンザウイルス産生を阻害し、広範に使用されているトランスフェクション試薬であるリポフェクタミンより有効である。これらの結果はまた、siRNAの細胞取り込みを刺激し、その同定方法を記載するためにさらなるカチオン性ポリマーを容易に同定することができることが示唆される。PLLおよびPLAは、このような試みのための正のコントロールとして作用することができる。
(実施例16A:脈管系または気道に対するsiRNAの送達による肺におけるルシフェラーゼ活性の阻害)
(材料および方法)
siRNAを、Dharmaconから入手し、そして上に記載したように脱保護およびアニーリングした。NP(NP−1496)、PA(PA−2087)、PB1(PB1−2257)、およびGFPに対するsiRNA配列は、上で与えた通りであった。Luc特異的siRNAは、(McCaffrey,APら、Nature、418:38−39)に記載された通りであった。
マウスにおけるPEI媒介性DNAトランスフェクション。pCMV−luc DNA(Promega)を、10の窒素/リンモル比(N/P比)で室温に20分間にわたってPEI(Qbiogene、Carlsbad、CA)を混合した。i.v.投与に関して、60μgのDNAを含む200μlの上記混合物を、8週齢の雄C57BL/6マウス(Taconic Farms)に対して眼窩後に注射した。気管内(i.t.)投与に関して、30μgまたは60μgのDNAを含む50μlの上記混合物を、Penn Century Model IA−IC注入器を使用して麻酔したマウスの肺に投与した。
マウスにおけるPEI媒介性siRNA送達。siRNA−PEI組成物を、60μgのluc特異的siRNAまたはGFP特異的siRNAとjetPEIとを、5のN/P比で室温にて20分間混合することによって形成した。i.v.投与に関して、表示量のsiRNAを含む200μlの混合物を、眼窩後に注射した。肺投与に関して、50μlを、気管内に送達した。
Lucアッセイ。pCMV−luc DNA投与後の種々の時間にて、肺、脾臓、肝臓、心臓、および腎臓を、回収し、そして細胞溶解緩衝液(Marker Gene Technologies、Eugene、OR)においてホモジネートした。発光を、Luciferase Assay System(Promega)によって分析し、そしてOptocomp(登録商標)Iルミノメーター(MGM Instruments、Haniden、CT)によって測定した。ホモジネート中のタンパク質濃度を、BCAアッセイ(Pierce)によって測定した。
(結果)
マウスにおけるPEI媒介性核酸送達の組織分布を決定するために、pCMV−luc DNA−PEI複合体を、i.v.に注射し、そして24時間後、Luc活性を、種々の器官において測定した。活性は、肺において最も高く、Luc活性を、少なくとも4日間にわたって検出した(図30A)のに対して、心臓、肝臓、脾臓、および腎臓において、レベルは、100分の1〜1,000分の1低く、そして注射後により短い時間にわたって検出された。DNA−PEI複合体をi.t.に点滴注入した場合、有意なLuc活性をまた、肺において検出したが、i.v.投与後よりも低いレベルであった(図30B)。
i.v.投与後の肺によるsiRNAの取り込みを促進するPEIの能力を試験するために、マウスに、最初にpCMV−luc DNA−PEI複合体をi.t.に与え、次いでPEIと複合体形成したLuc特異的siRNA、PEIと複合体形成したコントロールGFP特異的siRNA、または同容量の5%グルコースのi.v.注射を行なった。24時間後、肺におけるLuc活性は、GFP siRNAを与えられたかまたは未処理のマウスよりもLuc siRNAを受容したマウスにおいて17倍低かった(図30C)。Luc siRNAが、上記DNAベクターによってトランスフェクトした同じ肺細胞においてのみLuc発現を阻害し得るので、これらの結果は、siRNA−PEI混合物のi.v.注射が肺における標的転写物の有効な阻害を達成することを示す。
肺投与後の肺によってsiRNAの取り込みを促進するPEIの能力を試験するために、マウスに、最初にpCMVDNA−PEI複合体をi.v.に与え、次いでPEIと混合したLuc特異的siRNA、PEIと混合したコントロールGFP特異的siRNA、または同容量の5%グルコースのi.t.投与を行なった。24時間後、ルシフェラーゼ活性を、肺ホモジネートにおいてアッセイした。図30Dは、タンパク質量に対して正規化した、ルシフェラーゼ特異的siRNAまたはGFP特異的siRNAのいずれかを与えたマウス由来の肺ホモジネートにおけるルシフェラーゼ活性を示す。ルシフェラーゼ活性は、GFP siRNAによって処理したマウスよりもルシフェラーゼsiRNAによって処理したマウスにおいて6.8倍低かった。これらの結果は、siRNA−PEI混合物の肺投与が肺細胞における標的転写物の有効な阻害を達成することを示す。
(実施例16B:呼吸系に対するsiRNAの送達による肺におけるシクロフィリンBの阻害)
シクロフィリンBは、哺乳動物において広範に発現される内因性遺伝子である。呼吸系に直接的に送達されたsiRNAの内因性遺伝子の発現を阻害する能力を評価するために、非近交系Blackswissマウス(約30g以上の体重)を、イソフルオラン/酸素によって麻酔し、そしてシクロフィリンBにターゲティングされるsiRNA(Dharmacon、D−001136−01−20 siCONTROL シクロフィリンB siRNA(Human/Mouse/Rat))またはコントロールGFP−949 siRNA(2mg/kg)を、各siRNAについて2匹のマウスの群に対して鼻腔内に投与した。肺を、投与の24時間後に回収した。RNAを、肺から抽出し、そして逆転写を、ランダムプライマーを使用して行なった。次いで、リアルタイムPCRを、シクロフィリンBを使用して行ない、そしてGAPDH Taqman遺伝子発現アッセイを行なった(Applied Biosystems)。結果(表14)を、シクロフィリンBにターゲティングされるsiRNAによるシクロフィリンBの70%のサイレンシングを示した。
(表14:肺におけるシクロフィリンBの阻害)
Figure 2008533990
(実施例17:好ましく保存された標的部分の選択)
広範な種々の株において発現を阻害するために標的RNAi誘導性物質に対する標的部分として使用するための種々のインフルエンザウイルスA転写物の好ましく保存された領域を同定するために、ヒトから単離したウイルス株組由来のゲノムセグメントを、(それらの+センス形態(すなわち、mRNAにおいて見出される配列)において)整列した。それらの株は、実施例1に列挙したものに加えて多くの株を含んだ。表15A〜15Hは、好ましく保存された領域を同定するために使用したインフルエンザAウイルスゲノムセグメントのGenbankアクセッション番号(左欄)、株名(中欄)、および血清型(右欄)を列挙する。各セグメントの配列全体を、イントロンを除外して、整列および比較した。5’非翻訳領域および3’非翻訳領域が、含まれた。整列した株組は、異なるセグメントに関して異なったが、各組は、1934年と2004年との間にわたる種々の年において単離された少なくとも19種の株を含んだ。それらの株は、全て、ヒトにおいて流行することが公知であるHA型およびNA型を含んだ(Hl、H2、H3、H5、H9、N1、N2)。
(表15A:インフルエンザAウイルスNPセグメント(ヒトから単離された株))
Figure 2008533990
(表15B:インフルエンザAウイルスPA転写物(ヒトから単離された株))
Figure 2008533990
(表15C:インフルエンザAウイルスPB1転写物(ヒトから単離された株))
Figure 2008533990
(表15D:インフルエンザAウイルスPB2転写物(ヒトから単離された株))
Figure 2008533990
(表15E:インフルエンザAウイルスM転写物(ヒトから単離された株))
Figure 2008533990
(表15F:インフルエンザAウイルスNS転写物(ヒトから単離された株))
Figure 2008533990
(表15G:インフルエンザAウイルスNA転写物(ヒトから単離された株))
Figure 2008533990
(表15H:インフルエンザAウイルスHA転写物(ヒトから単離された株))
Figure 2008533990
広いインフルエンザAウイルス株組の間の好ましい標的部分組を同定するために、本発明者らは、基本配列としてPR8株の配列を選択した。本発明者らは、イントロンを除外して各セグメントの配列全体を使用した。それらの配列を、図32A〜32J(配列番号383〜392)に示す。これらの配列を、以下の順序で連鎖させて単一の長い配列を形成した:NP、PB2、PB1、PA、Ml、M2、NSl、NS2、HA、NA。19ヌクレオチドの長さを有する配列の部分を、5’末端にて始める、19ヌクレオチド「窓」を適用して第1の可能性のある標的部分を選択し、次いで次の可能性のある標的部分を選択するためにその窓を3’方向に1回に1ヌクレオチドシフトさせることによって同定した。このプロセスを、転写物の3’末端に到達するまで続けた。各19ヌクレオチド領域は、可能性のある標的部分を示すと見なされたが、それは、より短い標的部分またはより長い標的部分もまた選択されたと認識された。2つの異なる転写物の部分を含んだ領域を、除外した。このプロセスから生じた13,472種の可能な標的部分の配列が、図32の配列番号383〜392を参照することによって容易に決定され得る。その標的部分は、例えば、各配列において1〜19位、2〜20位、3〜21位、4〜22位、5〜23位、6〜24位などに伸びる。NP転写物(配列番号383)において、その標的部分は、1〜19、2〜20、3〜21、4〜22...1547〜1565である。PB2(配列番号384)転写物において、その標的部分は、1〜19、2〜20、3〜21、4〜22...2323〜2341である。PB1転写物(配列番号385)において、その標的部分は、1〜19、2〜20、3〜21、4〜22...2323〜2341である。PA転写物(配列番号386)において、その標的部分は、1〜19、2〜20、3〜21、4〜22...2215〜2233である。M1転写物(配列番号387)において、その標的部分は、1〜19、2〜20、3〜21、4〜22...1009〜1027である。M2転写物(配列番号388)において、その標的部分は、1〜19、2〜20、3〜21、4〜22...321〜339である。NS1転写物(配列番号389)において、その標的部分は、1〜19、2〜20、3〜21、4〜22...872〜890である。NS2転写物(配列番号390)において、その標的部分は、1〜19、2〜20、3〜21、4〜22...400〜418である。HA転写物(配列番号391)において、その標的部分は、1〜19、2〜20、3〜21、4〜22...1767〜1775である。NA転写物において、その標的部分は、1〜19、2〜20、3〜21、4〜22...1395〜1413(配列番号392)である。例示目的のために、NP転写物の最初の6個の標的部分を、表16に列挙する。
(表16:NP遺伝子中の標的部分)
Figure 2008533990
可能性のある標的部分を、RNAi誘導性物質による阻害についての好ましい特徴を有する標的部分を同定するために選択工程に供した。選択工程に適用した判定基準は、GC含量に基づくフィルター、および連続して伸びるGヌクレオチドまたはCヌクレオチドの存在または非存在に基づくフィルターを含んだ。例えば、好ましいRNAi誘導性物質の阻害性領域は、好ましくは、70%未満のGヌクレオチドまたはCヌクレオチドを含み、そして好ましくは、3個より多いGヌクレオチド3個の連続的なストレッチまたはより多いCヌクレオチドの連続的なストレッチを含まない。したがって、好ましい標的部分は、70%未満のGヌクレオチドまたはCヌクレオチドを含み、そして好ましくは、3個より多いGヌクレオチド3個の連続的なストレッチまたはより多いCヌクレオチドの連続的なストレッチを含まない。そのフィルターの適用後に残った標的部分は、「機能性標的部分」と称される。2,244種の機能性標的部分を、表17に列挙する。
PR8由来の機能性標的部分の配列を、表15A〜15Hに記載した他の株の対応する標的部分の配列と比較した。他の株中の対応する標的部分を、一般に、PR8中の標的部分と実質的に同一であった、そのセグメント中のそれらの位置およびそれらの配列に基づいて容易に同定した。
本発明者らは、「ウォッブル則」に従ってGU塩基対形成が生じ得ることを、認識した。本発明者らはまた、アンチセンス鎖と標的との間の相補性を維持することの重要性が、異なる位置において異なることを認識した。したがって、本発明者らは、PR8中の標的部分を、その株中の対応する標的部分と比較した(両方とも5’から3’の方向に整列した)場合に、その株の少なくとも80%がPR8と比較して以下の判定基準を満たした標的部分を同定した:(1)PR8配列と対応する配列との間のAからGへの変化またはCからUへの変化が、任意の位置で許容される;(2)PR8配列と対応する配列との間のGからAへの変化またはCからAへの変化が、1位、18位、および19位の1つ以上においてのみ許容される;(3)1位と9位との間でのPR8配列と対応する配列との間に0、1、2、または3個の違いが存在する;(4)PR8配列と対応する配列との間の2つ以下の連続した変化が存在する;ならびに(5)11位と17位との間でのPR8配列と対応する配列との間に最大で1つの変化が存在する。
上述の判定基準を満たす標的部分を、「好ましく保存された標的部分」と称する。ヒトに由来するインフルエンザ株の間で好ましく保存される220種の標的部分の配列を、表18に列挙する。それらの標的部分は、転写物NP、PB2、PB1、PA、M、NS、およびHA由来である。これらの好ましく保存された標的部分は、複数種の異なるヒト由来インフルエンザAウイルス株の阻害のための本発明のRNAi誘導性物質に対して好ましい標的であり、そして特定の好ましいアンチセンス鎖の阻害性領域と完全に相補的である。
上記好ましく保存された標的部分の選択後、鳥類(アヒル、ニワトリ、カモメ、コガモ、アジサシ、ウズラ、キジ、シチメンチョウ、ガン、ハト、タカ、および種々の他のトリ)から単離されたインフルエンザAウイルス株由来の対応する標的部分、または環境から単離されたインフルエンザAウイルス株(鳥類起源であると推定される)由来の対応する標的部分を、ヒト由来株から同定した標的部分と整列および比較した。それらの株は、実施例1に列挙したものに加えて多くの株を含んだ。表19A〜19Hは、好ましく保存された領域を同定するために使用(+センス形態で)したインフルエンザAウイルスゲノムセグメントのGenbankアクセッション番号(左欄)、株名(中欄)、および血清型(右欄)を列挙する。整列した株組は、異なるセグメントに関して異なったが、各組は、1934年と2004年とのにわたる種々の年において単離された少なくとも30種の株を含んだ。ヒト由来株からの好ましく保存された標的部分の同定に使用した同じ選択判定基準を、適用した。この結果は、ヒト由来株および鳥類由来株の両方の間で好ましく保存される138種の標的部分であった。その標的部分は、転写物NP、PB2、PB1、PA、M、およびNS由来であった。これらの標的部分は、複数種の異なるヒト由来インフルエンザAウイルス株および鳥類由来インフルエンザAウイルス株の阻害のための本発明のRNAi誘導性物質に対する好ましい標的であり、そして本発明のRNAi誘導性物質特定の好ましいアンチセンス鎖の阻害性領域と完全に相補的である。
(表19A:インフルエンザAウイルスPA転写物(鳥類から単離された株))
Figure 2008533990
(表19B:インフルエンザAウイルスPB1転写物(鳥類から単離された株))
Figure 2008533990
(表19C:インフルエンザAウイルスPB2転写物(鳥類から単離された株))
Figure 2008533990
(表19D:インフルエンザAウイルスM転写物(鳥類から単離された株))
Figure 2008533990
(表19E:インフルエンザAウイルスNS転写物(鳥類から単離された株))
Figure 2008533990
(表19F:インフルエンザAウイルスNP転写物(鳥類から単離された株))
Figure 2008533990
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(実施例18:非常に有効なsiRNAを同定するためのハイスループットクスリーニング)
細胞培養。ヒト肺上皮細胞A−549(ATCC)を、10%熱不活化ウシ胎仔血清(FCS)、2mM L−グルタミン、100単位/mlペニシリンおよび100ug/mlストレプトマイシンを含むDMEM培地中で増殖させた。気道に由来する他の細胞株(例えば、Calu−3細胞またはHBE細胞(ATCC))、または他の細胞株をまた、使用し得た。細胞を、加湿式インキュベーター中で37℃にて5% COで増殖させた。
siRNA。表16に列挙した高度に保存された標的部分と完全に相補的な19ヌクレオチド阻害性領域を有するアンチセンス鎖およびそのアンチセンス鎖と相補的なセンス鎖を各々が含む種々のsiRNAを、設計および合成した。それらのsiRNAは、両鎖上に3’dTdT突出部を含んだ。全てのsiRNAは、2’ACE保護化学を使用してDharmacon Research(Lafayette、CO)によって合成された。それらのsiRNAは、製造業者によって脱保護され、脱塩され、そしてアニーリングされた。
非常に有効なsiRNAを同定するための二重ルシフェラーゼアッセイ。関連するインフルエンザウイルス転写物(すなわち、PR8ウイルス由来のNP遺伝子、PA遺伝子、PB1遺伝子、PB2遺伝子、M遺伝子、NS遺伝子、NA遺伝子またはHA遺伝子由来)に対応する完全長cDNAを、製造業者の指示書(Promega Technical Bulletin No.329(www.promega.com/tbs/tb329/tb329.pdfにて入手可能)を参照のこと)に従ってpsiCHECKTM−2ベクター(カタログ番号C8021、Promega、Madison、WI)にクローニングした。それらのcDNAを、哺乳動物細胞中の発現について最適化された合成Renillaルシフェラーゼ遺伝子(hLuc)の3’UTRに挿入した。cDNA挿入物(または非特異的sicontrol、Dharmacon)にターゲティングされるDNAおよびsiRNAを、製造業者の説明書に従ってリポフェクタミン2000(Invitrogen)を使用してA−549細胞に同時トランスフェクトした。トランスフェクション後、Renilla遺伝子とインフルエンザウイルス遺伝子との融合体を、転写した。ルシフェラーゼ活性を、トランスフェクションの24時間後に各siRNAの量の関数として測定した。このアッセイにおいて、融合転写物のターゲティング部分(すなわち、その融合転写物のインフルエンザ特異的部分)にハイブリッド形成するsiRNAまたはshRNAによって媒介されるRNAiは、減少したルシフェラーゼシグナルを生じる融合したRenilla:インフルエンザウイルス遺伝子転写物の分解を引き起こす。同じベクターから発現されるホタルルシフェラーゼを、Promega Technical Bulletin 329に記載されるように、トランスフェクションコントロールおよび特異性コントロールとして使用した。具体的に、トランスフェクションの24時間後、溶解緩衝液および基質緩衝液(Dual−Glo Luciferase Assay System)を、細胞に添加し、そしてルシフェラーゼ活性を、読み取った。10分後、RenillaについてのStopおよびGloを添加し、そしてRenillaルシフェラーゼ活性を読み取った。三つ組の各サンプルを、行なった。各ウェルからのホタルルシフェラーゼ活性を、同じウェルにおいてrenilla対するトランスフェクションコントロールとして使用した。Renilla/ホタルルシフェラーゼ活性の比を、各ウェルからのルシフェラーゼ活性の最終値として使用した。インフルエンザsiRNAの三つ組からの比の平均を、の三つ組の比の平均と比較した。サイレンシング%を、100×(1−インフルエンザsiRNA/sicontrol)として計算した。
表26は、上記スクリーニングにおいて同定された多くの非常に有効なsiRNAについてのデータを提示する。この表は、標的遺伝子(NP、PA、PB1、PB2)、siRNA濃度、またはsiRNAのID番号を列挙する。試験した各濃度における平均サイレンシング%を、siRNA IDの下に列挙する。空白は、実験を行なわなかったことを示す。この結果は、多くのsiRNAが、0.6nM程低い濃度にて、転写物発現を少なくとも80%もサイレンシングした。
(表26)
Figure 2008533990
上記のスクリーニングを使用して非常に有効であるとして同定した特定のsiRNAおよび/またはshRNAを、実施例19に記載したような組織培養物および/または本明細書中の他の場所に記載したような動物モデルにおいてインフルエンザウイルスに対してさらに試験した。
(実施例19:ウイルス複製を阻害する非常に有効なsiRNAを同定するためのスクリーニング)
細胞培養。ベロ細胞(ATCC)を、10%熱不活化ウシ胎仔血清(FCS)、2mM L−グルタミン、100単位/mlペニシリンおよび100ug/mlストレプトマイシンを含むDMEM培地中で増殖させた。細胞を、加湿式インキュベーター中で37℃にて5% COで増殖させた。ウイルス感染を、0.3%ウシ血清アルブミン(BSA、Sigma、St.Louis、MO)、10mM HEPES、100単位/mlペニシリン、および100μg/mlストレプトマイシンを含むDMEM中で行なった。
siRNA。表18に列挙した高度に保存された標的部分の各々と完全に相補的な19ヌクレオチド阻害性領域を有するアンチセンス鎖およびそのアンチセンス鎖と相補的なセンス鎖を各々が含む種々のsiRNAを、設計および合成した。それらのsiRNAは、両鎖上に3’dTdT突出部を含んだ。全てのsiRNAは、2’ACE保護化学を使用してDharmacon Research(Lafayette、CO)によって合成された。それらのsiRNAは、製造業者によって脱保護され、脱塩され、そしてアニーリングされた。
siRNAトランスフェクション。ベロ細胞の対数期培養物を、トリプシン処理し、洗浄し、そして96ウェルプレートに1ウェルあたり20,000個の細胞にて播種し、そして加湿式インキュベーター中で37℃にて5% COで一晩インキュベートした。第1のスクリーニングに関して、10pmolのsiRNA(dTdT3’突出部を有する19bpの二重鎖領域)を、25μlのOpti−MEM I(Invitrogen)に添加した。0.75μlのLipofectamine 2000(Invitrogen)および0.19μlのSuperRNAsin(Ambion)を、25μlのOpti−MEM I中に希釈し、そして穏やかに混合した。希釈した脂質を、その希釈したsiRNAと合わせ(総量は、50μlである)、そしてその混合物を、室温にて20分間インキュベートして、siRNA−リポフェクタミン2000複合体を形成させた。インキュベーションの終わりおいて、50μlのトランスフェクション複合体を、細胞および10% FCSを含む50μl DMEM培地を含む各ウェルにピペットで添加した。各siRNAの最終濃度は、100nMであった。各siRNAを三つ組で試験し、そして結果を平均した。NP−1496(100nM)およびsicontrol(Dharmacon)は、それぞれ、ポジティブコントロールおよびネガティブコントロールとして機能した。siRNAトランスフェクションを、1nM siRNAの濃度を使用したことを除いて同じ方法で、第2のスクリーニングについて行なった。
ウイルス感染。加湿式インキュベーター中で37℃にて5% COで6時間のインキュベーション後、その上清を除去し、そして各ウェル中の細胞に、0.3% BSAを含む25μlのPBS中でPR8ウイルスを感染させた。感染を、第1のスクリーニングおよび第2のスクリーニングについて0.1のMOIにて行なった。そのプレートを、室温にて1時間穏やかに振動させ、その後、10.3% BSA、4μgトリプシン、10mM HEPESを含む75μlのDMEMを、各ウェルに添加した。次いでそのプレートを、加湿式インキュベーター中で37℃にて5% COでインキュベートした。
ウイルス力価の測定。上清を、感染の24時間後に回収した。ウイルス力価を、上で記載したように測定した。
(結果)
インフルエンザゲノムの高度に保存された標的部分にターゲティングされる215種の選択したsiRNA組の間から、より高い活性を有するsiRNAを同定するために、本発明者らは、一連のハイスループットスクリーニング(HTS)を行なった。上記siRNAがその特定の標的遺伝子の発現を抑制し得るか否かを直接試験するよりもむしろ、本発明者らは、細胞におけるインフルエンザウイルス産生を阻害するsiRNAの能力の評価に集中することを決定した。したがって、本発明者らは、読み出しとしてウイルス力価を使用した一方で、ウイルス力価を有意に減少させることができない特定のsiRNAが、標的mRNAを分解する能力を依然として有し、したがって特定の目的のために使用され得ることを、認識する。
第1のHTSにおいて試験した215種のsiRNAの間で、90種が、未処理(NT)またはsicontrolのいずれかと比較して、ベロ細胞培養物におけるPR8ウイルス力価の少なくとも4倍の減少を示した。非特異的阻害は、ベロ細胞を100nMのsicontrolによってトランスフェクトした場合に見られなかった。そのトランスフェクション効率は、約80%であった。結果を、表21に要約し、そしてウイルス力価のフォールド(fold)阻害に関して表す。阻害の正確な程度は、その表に提示されるよりも大きいようである。
(表21:ハイスループットスクリーニング#1の結果)
Figure 2008533990
本発明者らは、第1のHTSにおいてウイルス力価の少なくとも4倍の減少を示したsiRNAの間から非常に有効なsiRNAをより正確に同定するために、より低い濃度のsiRNA(1nM)を使用して、第2のハイスループットスクリーニングを行なった。30種のsiRNAは、このより低い濃度にて試験した場合、ベロ細胞培養物においてPR8ウイルス力価の約3倍〜4倍の減少を示した。第2のHTSの結果を、表22に提示する。
(表22:ハイスループットスクリーニング#2の結果)
Figure 2008533990
(実施例20:確認siRNAスクリーニング)
(材料および方法)
上記第2のHTSから選択した30種のsiRNAおよび上記第1のHTSからのいくつかのsiRNAを、MDCK細胞において試験してその結果を確認した。無血清RPMI 1640培地中の1000万個のMDCK細胞を、100nMの最終濃度にてsiRNAと混合し、そして400Vおよび975μFにてGene Pulser装置(Bio−Rad)を使用してエレクトロポレーションした。エレクトロポレーションした細胞を、6ウェルプレートの3個のウェルに分け、そして10%ウシ胎仔血清を含むDMEMにおいて6時間培養した。次いでその培養培地を除去し、そしてDMEM、0.3% BSA、10mM Hepes、100単位/mlペニシリンおよび100μg/mlストレプトマイシンから構成される感染培地中の100マイクロリットルのPR8ウイルスを、各ウェルに添加した。感染を、その3個のウェルについて、それぞれ、0.2、0.02および0.002のMOIにて行った。室温にて1時間のインキュベーション後、4μg/mlトリプシンを含む2mlの感染培地を、各ウェルに添加し、そしてその細胞を、5% COの下で37℃にて培養した。感染後の種々の時間において、上清を、感染した培養物から回収し、そしてそのウイルス力価を、血球凝集素アッセイによって決定した。
(結果)
上記第1および第2のスクリーニングにおいて同定した非常に有効なsiRNAのインフルエンザウイルス産生を阻害する能力を確認するために、第3のスクリーニングを、MDCK細胞において行った。MDCK細胞は、インフルエンザウイルスの実験室株によるさらに小さい量の感染に対して、ベロ細胞よりも感受性である。そのビリオンは、ベロ細胞よりもMDCK細胞においてずっと速く複製する。MDCK細胞におけるこの第3のスクリーニングは、ウイルス阻害におけるsiRNAの効率をさらに比較し、そして約85〜90%の精度で上記最初の2つのスクリーニングの結果を確認した。
MOI=0.2において、3種のNP siRNAは、感染の24時間後にウイルス力価を少なくとも16倍減少させた。4種のNP siRNA(上記の3種のNPを含む)、2種のPB2 siRNA、3種のPB1 siRNA および4種のPA siRNAsは、ウイルス力価を少なくとも8倍減少させた。以下のsiRNAは、試験した13種の最も有効なsiRNAを示す:154、758、1121、1313、2327、3276、4276、5018、5457、7736、7803、8282、および8286。MOI=0.02において、8種のNP siRNA、2種のPB2 siRNA、3種のPB1 siRNAおよび8種のPA siRNA(MOI=O.2にて有効であった上記siRNAを含む)は、感染の24時間後にウイルス力価を少なくとも8倍減少させた。MOI=0.002において、10種のNP siRNA、8種のPB2 siRNA、11種のPB1 siRNA、10種のPA siRNA(MOI=0.02にて有効である上記有効なsiRNAを含む)は、感染の24時間後にウイルス力価を少なくとも4倍減少させる。ウイルス阻害は、sicontrol siRNAによっては観察されなかった。
上記スクリーニングの結果を、表23に提示する。その欄は、それぞれ、MOI=0.2/0.02/0.002における、感染の24時間後、36時間後、48時間後、およびいくつかの場合において60時間後でのHA単位を示す。プレートを、組で試験し、そしてsicontrolは、各組によって試験したコントロールsiRNAを示す。NT=未処理。最も有効なsiRNAを、太線で示す。
(表23:ハイスループットスクリーニング#3の結果)
Figure 2008533990
(実施例21;siRNA用量反応試験)
(材料および方法)
上記第3のHTSから選択した13種のsiRNAおよび上記第2のHTSからのいくつかのsiRNAを、MDCK細胞において用量反応について試験した。無血清RPMI 1640培地中の1000万個のMDCK細胞を、0.8nM〜100nMの範囲の種々のsiRNA濃度にてsiRNAと混合した。siRNAを、400Vおよび975μFにてGene Pulser装置(Bio−Rad)を使用することによって細胞にエレクトロポレーションした。エレクトロポレーションした細胞を、6ウェルプレートの3個のウェルに分け、そして10%ウシ胎仔血清を含むDMEMにおいて6時間培養した。次いでその培養培地を除去し、そしてDMEM、0.3% BSA、10mM Hepes、100単位/mlペニシリンおよび100μg/mlストレプトマイシンから構成される感染培地中の100マイクロリットルのPR8ウイルスを、3個のウェルの各々に対して0.2、0.02および0.002のMOIを達成するように各ウェルに添加した。室温にて1時間のインキュベーション後、4μg/mlトリプシンを含む2mlの感染培地を、各ウェルに添加し、そしてその細胞を、5% COの下で37℃にて培養した。感染後の異なる時間において、上清を、感染した培養物から回収し、そしてそのウイルス力価を、上に記載したように、血球凝集素アッセイによって決定した。
結果:MOI=0.2およびMOI=0.02において、感染の24時間後にウイルス産生を2分の1に阻害するsiRNAの最小濃度は、以下の通りであり、アスタリスクは、実施例1に記載したように同定したsiRNAを示す。
Figure 2008533990
結果を、種々のsiRNA濃度に対する0.2/0.02/0.002のMOIにおける、感染の24時間後、36時間後、または48時間後でのHA単位に関して表24に示す。
(表24:用量反応スクリーニングの結果)
Figure 2008533990
Figure 2008533990
(実施例22:siRNAの組み合わせを使用したインフルエンザウイルスの有効な阻害)
上記第3のHTSから選択した特定のsiRNAおよび上記第2のHTSからのいくつかのsiRNAを、組み合わせにおけるそれらの抗インフルエンザ効果について試験した。トランスフェクション、感染、およびウイルス力価試験を、実施例21に記載したように行った。1499と4276との同時のトランスフェクション(各siRNAを12.5nMで含む)は、25nMの1499または4276のいずれか単独よりもわずかに有効にウイルス産生を抑制する。
(表25:組み合わせにおけるsiRNAの効果)
Figure 2008533990
(実施例23:呼吸系に対するむき出しのsiRNAの直接送達によるインフルエンザウイルスの阻害)
(材料および方法)
siRNAの調製、ウイルスの感染、肺の回収、およびインフルエンザウイルス力価アッセイを、実施例12に記載したように行った。マウスを、イソフルオラン(吸入によって投与した)を使用して麻酔した。siRNAを、点鼻によって50μlの容量で送達し、p値を、スチューデントt検定を使用して計算した。
(結果)
リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)中のsiRNA(NP−1496)を、マウスの群(1群あたり5匹のマウス)に投与した。マウスに、siRNA投与の3時間後にインフルエンザウイルス(2000PFU)を感染させた。肺を感染の24時間後に回収し、そしてウイルス力価を測定した。予備実験において、マウスを、アバーティン(avertin)によって麻酔し、そして2mg/kg siRNAを、点鼻によって投与した。コントロールに対するウイルス力価の減少を観察したが、統計的有意性に到達しなかった(データ示さず)。
第2の実験において、Black Swissマウスを、イソフルオラン/Oを使用して麻酔した。PBS中の種々の量のsiRNAを、マウスに対して鼻腔内に投与した(各マウスにつき50ul)。3つの異なる群(1群あたり5匹のマウス)は、PBS中の2mg/kg、4mg/kg、または10mg/kgの用量のsiRNAを点鼻によって受容した。PBSのみを受容した第4の群は、コントロールとして機能した。3時間後、そのマウスを、イソフルオラン/Oを使用して再び麻酔した、30ulのPR8ウイルス(2000pfu=4×致死量)を、マウスに対して鼻腔内に投与した。感染の24時間後、そのマウスの肺を、回収し、ホモジネートし、そしてウイルス力価を、上に記載したように、TCID50の評価によって測定した。10倍希釈よりもむしろ、肺ホモジネートの連続5倍希釈を、行った。
ウイルス力価における有意かつ用量依存性の変化を、3つの処理群の各々およびコントロールにおいてマウスの間で見た。コントロールに対するウイルス力価の減少は、2mg/kg、4mg/kg、および10mg/kgの用量を受容した群において、それぞれ、3.45倍(p=0.0125)、4.16倍(p=0.0063)、および4.62倍(p=0.0057)であった。個々のマウスについてのデータ(TCID50)を、表27に提示し、そして図31Aに示す。
まとめると、これらの結果は、送達を増強する特定の因子の非存在下で水性媒体において呼吸系に送達したsiRNAの効力を示した。
(表27:むき出しのsiRNAの鼻腔内送達は、インフルエンザウイルス産生を阻害する)
Figure 2008533990
実施例24:呼吸系に対するむき出しのsiRNAの直接送達によるマウスにおけるインフルエンザウイルス産生の阻害)
この実施例は、実施例23の結果を確認し、そして送達増強性因子の非存在下で水性媒体における呼吸系へのNPにターゲティングされるsiRNAの投与による肺におけるインフルエンザウイルス産生の阻害を示す。PBS中の6μg、15μg、30μg、および60μgのNP−1496 siRNAまたはPBS中の60μgのGFP−949 siRNAを、マウスにsiRNA送達の2時間後にPR8ウイルス(マウス1匹あたり1000pfu)を鼻腔内に感染させたことを除いて本質的に実施例23に記載したように、マウスに対して鼻腔内に点滴注入した。肺を、感染の24時間後に回収した。表28および図31Bに示すように、NP特異的siRNAは、送達増強性因子の非存在下で水性媒体における鼻腔内点滴注入法によって投与した場合、インフルエンザウイルスの阻害について有効であった。ウイルス力価における有意かつ用量依存性の変化を、3つの処理群の各々およびコントロールにおいてマウスの間で見た。
(表28:むき出しのsiRNAを使用した肺におけるインフルエンザウイルス産生の阻害)
Figure 2008533990
(実施例25:インフルエンザウイルス転写物にターゲティングされるsiRNAは、標的領域中にミスマッチを許容する)
この実施例は、アンチセンス鎖がその阻害性領域内(例えば、その標的転写物と相補的である19塩基対領域内)においてターゲティングされる転写物と100%未満相補的であるsiRNAが、有効なサイレンシングを媒介するを示す。その結果は、本明細書中に記載したRNAi物質が、配列が標的部分内においてPR8の配列とは異なる広範なインフルエンザ株を有効に阻害することを示す。
(材料および方法)
実施例18に記載したように、二重ルシフェラーゼアッセイを、19ヌクレオチドの阻害性領域内においてsiRNAのアンチセンス鎖と100%相補的ではないインフルエンザ遺伝子の発現を阻害する、siRNAの能力を評価するために使用した。ヒトインフルエンザウイルス株と鳥類インフルエンザウイルス株(PR8を標準として使用する)とのアライメントから得られるミスマッチを、位置指定変異誘発キット(Stratagene)を使用してDNAベクター(psiCHECK)に導入した(すなわち、そのインフルエンザ標的部位を、PR8配列に対して1個または2個のいずれかの違いを含むように、表15に列挙したヒトインフルエンザ株または鳥類インフルエンザ株の1つ以上において見出される違いに対応する特定の違いによって改変した)。
表29は、ウイルスNP標的(NP−1496に対する標的)におけるバリエーションがRNAi活性を実質的に減少させないことを実証する実験の結果を示す(示されるデータは、三つ組の平均である)。アンチセンス鎖の5’末端または3’末端に近い位置、あるいは中央に近い位置におけるミスマッチを、試験した。
(表29:NP−1496によるサイレンシングに対するアンチセンス鎖と標的領域との間のミスマッチの効果)
Figure 2008533990
表30は、ウイルスPA標的(PA−2087またはPA−8242に対する標的)におけるバリエーションがRNAi活性を実質的に減少させないことを実証する実験の結果を示す(示されるデータは、三つ組の平均である)。しかし、157種のヒトインフルエンザ株の間の7種において見出されたG18からA18への変異は、RNA干渉活性に実質的に影響した(示されるデータは、三つ組の平均である)。アンチセンス鎖の5’末端または3’末端に近い位置、あるいは中央に近い位置におけるミスマッチを、試験した。アンチセンス鎖阻害性領域と標的との間の2個のミスマッチの存在は、そのサイレンシングを約70〜75%を減少させたが、有効な程度のサイレンシングが、依然として観察された。
(表30:PA−2087またはPA−8242によるサイレンシングに対するアンチセンス鎖と標的領域との間のミスマッチの効果)
Figure 2008533990
表31は、ウイルスPB2標的(PB2−3817に対する標的)におけるバリエーションがRNAi活性を実質的に減少させないことを実証する実験の結果を示す(示されるデータは、三つ組の平均である)。アンチセンス鎖の5’末端または3’末端に近い位置、あるいは中央に近い位置におけるミスマッチを、試験した。
(表31:PB2−3817によるサイレンシングに対するアンチセンス鎖と標的領域との間のミスマッチの効果)
Figure 2008533990
表32Aは、ウイルスPB1標的(PB1−6124に対する標的)におけるバリエーションがRNAi活性を実質的に減少させないことを実証する実験の結果を示す(示されるデータは、三つ組の平均である)。アンチセンス鎖の5’末端または3’末端に近い位置、あるいは中央に近い位置におけるミスマッチを、試験した。アンチセンス鎖阻害性領域と標的との間の2個のミスマッチの存在は、そのサイレンシングを約70〜75%減少させたが、有効な程度のサイレンシングが、依然として観察された。
(表32A:PB1−6124によるサイレンシングに対するアンチセンス鎖と標的領域との間のミスマッチの効果)
Figure 2008533990
表32Bは、ウイルスPB1標的(PB1−6124に対する標的)におけるバリエーションがRNAi活性を実質的に減少させないことを実証するさらなる実験の結果を示す(示されるデータは、三つ組の平均である)。アンチセンス鎖の5’末端または3’末端に近い位置におけるミスマッチを、試験した。アンチセンス鎖阻害性領域と標的との間の2個のミスマッチの存在は、RNAi活性を実質的に減少させなかった。
(表32B:PB1−6124によるサイレンシングに対するアンチセンス鎖と標的領域との間のミスマッチの効果)
Figure 2008533990
表32Cは、ウイルスPB1標的(PB1−6129に対する標的)におけるバリエーションがRNAi活性を実質的に減少させないことを実証する実験の結果を示す(示されるデータは、三つ組の平均である)。アンチセンス鎖の5’末端または3’末端に近い位置、あるいは中央に近い位置におけるミスマッチを、試験した。10位におけるAミスマッチ(G:Uウォッブル)は、サイレンシングに対して比較的小さい効果のみを有し、これは、10位におけるこのようなミスマッチがこの状況(context)においてRNAi活性を実質的に減少させないことを示した。アンチセンス鎖阻害性領域と標的との間の2個のミスマッチの存在は、そのサイレンシングを中程度に減少させたが、オリジナルのサイレンシング効果の約60〜70%が、依然として観察された。
(表32C:PB1−6129によるサイレンシングに対するアンチセンス鎖と標的領域との間のミスマッチの効果)
Figure 2008533990
(実施例26:改変SiRNAは、有効なサイレンシングを媒介する)
改変ヌクレオチドを含むsiRNAの潜在的なサイレンシングを探索するために、各鎖中の代替のリボヌクレオチドにおいて2’−O−メチル改変を有するセンス鎖およびアンチセンス鎖を含むNP−1496 siRNAを、合成し、そして未改変NP−1496 siRNAと比較して試験した。2’−O−メチル改変NP 1496 siRNA配列は、以下の通りである:(2’−O−メチルは、改変ヌクレオチドの前に「m」として示される):
Figure 2008533990
2’−O−メチル改変NP1496 siRNAおよび未改変NP1496 siRNAを、製造業者の説明書に従ってリポフェクタミン2000(Invitrogen)を使用して24ウェルプレートにおいてベロ細胞にトランスフェクトした。トランスフェクションの6時間後、その培養培地を、吸引した。その細胞を、0.1のMOIにおいて200ulのPR8ウイルスによって接種した。その培養上清を、感染の24時間後、3624時間後および4824時間後にて収集した。ウイルス力価を、上に記載したように決定した。2’−O−メチル改変NP 1496は、未改変NP 1496よりもウイルス増殖のわずかに大きい阻害を示した。結果を、表33に示す。
(表33:改変siRNAを使用したインフルエンザウイルス産生の有効な阻害
Figure 2008533990
(実施例27:非常に有効なsiRNAを同定するためのスクリーニングおよび試験の要約)
上に記載したスクリーニングならびにインビトロおよびインビボでの試験の結果を、収集し、そして組み合わせて、双方で高度に保存され、非常に強力なsiRNAの標的であるインフルエンザウイルス配列の総合的な一覧を作成した。標的部分の一覧を、表34に提示する。これらの配列はまた、特定の非常に有効なRNAi誘導性物質(例えば、siRNA)のアンチセンス鎖の阻害性領域の相補体を示す。
(表34:非常に有効なRNAi誘導性実体に対する標的である高度に保存されたインフルエンザウイルス配列
Figure 2008533990
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(等価物)
当業者は、慣用実験にすぎないものを用いて、本明細書中に記載の本発明の特定の実施形態の多数の等価物を認識するか、または確認することができる。本発明の範囲は、上記説明に制限されることを意図せず、むしろ添付の特許請求の範囲に記載されている。
(参考文献)
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図1A(Julkunen,I.ら(前出)を適用)は、インフルエンザウイルスの略図を示す。 図1B(Fields’Virology(前出)を適用)は、インフルエンザウイルスのゲノム構造およびインフルエンザゲノム由来の転写物を示す。mRNAの5’末端および3’末端の細線は、非翻訳領域を示す。影をつけた領域または斜線の領域は、それぞれ0または+1読み取り枠中のコード領域を示す。V型の線はイントロンを示す。mRNAの5’末端の小さな四角は、ウイルス核酸に共有結合した異種細胞RNAを示す。A(n)は、ポリAテールを示す。 図2(Julkunen,I.ら(前出)を適用)は、インフルエンザウイルス複製サイクルを示す。 図3は、ドロソフィラ系で認められるsiRNAの構造を示す。 図4は、ドロソフィラにおけるRNA干渉に関与する工程の略図を示す。 図5は、本発明で有用なsiRNAおよびshRNA構造の種々の例を示す。 図6は、DICER酵素がステム中の塩基ミスマッチを有する基質を切断して標的転写物の3’UTRに結合して翻訳を阻害する阻害産物を作製する別の阻害経路の図を示す。 図7は、本発明のsiRNAの両方の鎖の転写を指示するために使用することができる構築物の一例を示す。 図8は、ハイブリッド形成して本発明のshRNAを形成する1つのRNA分子の転写を指示するために使用することができる構築物の一例を示す。 図9は、ヒト宿主起源のインフルエンザウイルスAの6つの株の間の配列比較を示す。濃く影をつけた領域を使用して、siRNAを設計し、実施例2に記載のように試験した。基本配列は、A/Puerto Rico/8/34株の配列である。薄く影をつけた文字は、基本配列と異なるヌクレオチドを示す。 図9は、ヒト宿主起源のインフルエンザウイルスAの6つの株の間の配列比較を示す。濃く影をつけた領域を使用して、siRNAを設計し、実施例2に記載のように試験した。基本配列は、A/Puerto Rico/8/34株の配列である。薄く影をつけた文字は、基本配列と異なるヌクレオチドを示す。 図9は、ヒト宿主起源のインフルエンザウイルスAの6つの株の間の配列比較を示す。濃く影をつけた領域を使用して、siRNAを設計し、実施例2に記載のように試験した。基本配列は、A/Puerto Rico/8/34株の配列である。薄く影をつけた文字は、基本配列と異なるヌクレオチドを示す。 図9は、ヒト宿主起源のインフルエンザウイルスAの6つの株の間の配列比較を示す。濃く影をつけた領域を使用して、siRNAを設計し、実施例2に記載のように試験した。基本配列は、A/Puerto Rico/8/34株の配列である。薄く影をつけた文字は、基本配列と異なるヌクレオチドを示す。 図9は、ヒト宿主起源のインフルエンザウイルスAの6つの株の間の配列比較を示す。濃く影をつけた領域を使用して、siRNAを設計し、実施例2に記載のように試験した。基本配列は、A/Puerto Rico/8/34株の配列である。薄く影をつけた文字は、基本配列と異なるヌクレオチドを示す。 図9は、ヒト宿主起源のインフルエンザウイルスAの6つの株の間の配列比較を示す。濃く影をつけた領域を使用して、siRNAを設計し、実施例2に記載のように試験した。基本配列は、A/Puerto Rico/8/34株の配列である。薄く影をつけた文字は、基本配列と異なるヌクレオチドを示す。 図9は、ヒト宿主起源のインフルエンザウイルスAの6つの株の間の配列比較を示す。濃く影をつけた領域を使用して、siRNAを設計し、実施例2に記載のように試験した。基本配列は、A/Puerto Rico/8/34株の配列である。薄く影をつけた文字は、基本配列と異なるヌクレオチドを示す。 図9は、ヒト宿主起源のインフルエンザウイルスAの6つの株の間の配列比較を示す。濃く影をつけた領域を使用して、siRNAを設計し、実施例2に記載のように試験した。基本配列は、A/Puerto Rico/8/34株の配列である。薄く影をつけた文字は、基本配列と異なるヌクレオチドを示す。 図10は、ヒト宿主起源のインフルエンザウイルスAの2つの株および動物宿主起源のインフルエンザウイルスAの5つの株の間の配列比較を示す。濃く影をつけた領域を使用して、siRNAを設計し、実施例2に記載のように試験した。基本配列は、A/Puerto Rico/8/34株の配列である。薄く影をつけた文字は、基本配列と異なるヌクレオチドを示す。 図10は、ヒト宿主起源のインフルエンザウイルスAの2つの株および動物宿主起源のインフルエンザウイルスAの5つの株の間の配列比較を示す。濃く影をつけた領域を使用して、siRNAを設計し、実施例2に記載のように試験した。基本配列は、A/Puerto Rico/8/34株の配列である。薄く影をつけた文字は、基本配列と異なるヌクレオチドを示す。 図10は、ヒト宿主起源のインフルエンザウイルスAの2つの株および動物宿主起源のインフルエンザウイルスAの5つの株の間の配列比較を示す。濃く影をつけた領域を使用して、siRNAを設計し、実施例2に記載のように試験した。基本配列は、A/Puerto Rico/8/34株の配列である。薄く影をつけた文字は、基本配列と異なるヌクレオチドを示す。 図10は、ヒト宿主起源のインフルエンザウイルスAの2つの株および動物宿主起源のインフルエンザウイルスAの5つの株の間の配列比較を示す。濃く影をつけた領域を使用して、siRNAを設計し、実施例2に記載のように試験した。基本配列は、A/Puerto Rico/8/34株の配列である。薄く影をつけた文字は、基本配列と異なるヌクレオチドを示す。 図10は、ヒト宿主起源のインフルエンザウイルスAの2つの株および動物宿主起源のインフルエンザウイルスAの5つの株の間の配列比較を示す。濃く影をつけた領域を使用して、siRNAを設計し、実施例2に記載のように試験した。基本配列は、A/Puerto Rico/8/34株の配列である。薄く影をつけた文字は、基本配列と異なるヌクレオチドを示す。 図10は、ヒト宿主起源のインフルエンザウイルスAの2つの株および動物宿主起源のインフルエンザウイルスAの5つの株の間の配列比較を示す。濃く影をつけた領域を使用して、siRNAを設計し、実施例2に記載のように試験した。基本配列は、A/Puerto Rico/8/34株の配列である。薄く影をつけた文字は、基本配列と異なるヌクレオチドを示す。 図10は、ヒト宿主起源のインフルエンザウイルスAの2つの株および動物宿主起源のインフルエンザウイルスAの5つの株の間の配列比較を示す。濃く影をつけた領域を使用して、siRNAを設計し、実施例2に記載のように試験した。基本配列は、A/Puerto Rico/8/34株の配列である。薄く影をつけた文字は、基本配列と異なるヌクレオチドを示す。 図10は、ヒト宿主起源のインフルエンザウイルスAの2つの株および動物宿主起源のインフルエンザウイルスAの5つの株の間の配列比較を示す。濃く影をつけた領域を使用して、siRNAを設計し、実施例2に記載のように試験した。基本配列は、A/Puerto Rico/8/34株の配列である。薄く影をつけた文字は、基本配列と異なるヌクレオチドを示す。 図10は、ヒト宿主起源のインフルエンザウイルスAの2つの株および動物宿主起源のインフルエンザウイルスAの5つの株の間の配列比較を示す。濃く影をつけた領域を使用して、siRNAを設計し、実施例2に記載のように試験した。基本配列は、A/Puerto Rico/8/34株の配列である。薄く影をつけた文字は、基本配列と異なるヌクレオチドを示す。 図11A〜11Eは、siRNAがMDCK細胞におけるインフルエンザウイルス産生を阻害することを示す実験結果を示す。種々のウイルス転写物をターゲティングする6つの異なるsiRNAをエレクトロポレーションによってMDCK細胞に移入し、その後8時間細胞にウイルスを感染させた。図11Aは、種々のsiRNAまたはコントロールsiRNAの存在下または非存在下で0.01の感染多重度(MOI)でウイルス株A/PR/8/34(H1N1)(PR8)による感染後の種々の時間での血球凝集素アッセイによって測定した培養上清中のウイルス力価を示す経時変化である。 図11A〜11Eは、siRNAがMDCK細胞におけるインフルエンザウイルス産生を阻害することを示す実験結果を示す。種々のウイルス転写物をターゲティングする6つの異なるsiRNAをエレクトロポレーションによってMDCK細胞に移入し、その後8時間細胞にウイルスを感染させた。図11Bは、種々のsiRNAまたはコントロールsiRNAの存在下または非存在下で0.01のMOIでインフルエンザウイルス株A/WSN/33(H1N1)(WSN)での感染後の種々の時間での血球凝集素アッセイによって測定した培養上清中のウイルス力価を示す経時変化である。 図11A〜11Eは、siRNAがMDCK細胞におけるインフルエンザウイルス産生を阻害することを示す実験結果を示す。種々のウイルス転写物をターゲティングする6つの異なるsiRNAをエレクトロポレーションによってMDCK細胞に移入し、その後8時間細胞にウイルスを感染させた。図11Cは、偽トランスフェクトするかsiRNA NP−1496でトランスフェクトしたウイルス感染細胞由来の培養上清中のウイルス力価を示すプラークアッセイを示す。 図11A〜11Eは、siRNAがMDCK細胞におけるインフルエンザウイルス産生を阻害することを示す実験結果を示す。種々のウイルス転写物をターゲティングする6つの異なるsiRNAをエレクトロポレーションによってMDCK細胞に移入し、その後8時間細胞にウイルスを感染させた。図11Dは、異なる用量のsiRNAでのインフルエンザウイルス産生阻害を示す。MDCK細胞を、表示量のNP−1496 siRNAでトランスフェクトし、その後0.01のMOIでPR8ウイルスを感染させた。感染から48時間後にウイルス力価を測定した。2つの実験のうちの1つに由来の代表的なデータを示す。 図11A〜11Eは、siRNAがMDCK細胞におけるインフルエンザウイルス産生を阻害することを示す実験結果を示す。種々のウイルス転写物をターゲティングする6つの異なるsiRNAをエレクトロポレーションによってMDCK細胞に移入し、その後8時間細胞にウイルスを感染させた。図11Eは、ウイルス感染後に投与したsiRNAによるインフルエンザウイルス産生阻害を示す。MDCK細胞に0.01のMOIのPR8ウイルスを2時間感染させ、その後NP−1496(2.5nmol)でトランスフェクトした。感染後の表示の時間でウイルス力価を測定した。2つの実験のうちの1つに由来の代表的なデータを示す。 図12は、ヒトまたは動物宿主起源の12種のインフルエンザAウイルスのサブタイプまたは単離物の間のNP配列の3’領域部分の間の配列比較を示す。影をつけた領域を使用して、siRNAを設計し、実施例2および3に記載のように試験した。基本配列は、A/Puerto Rico/8/34株の配列である。影をつけた文字は、基本配列と異なるヌクレオチドを示す。 図13は、インフルエンザウイルス阻害の有効性と相関付けた、インフルエンザウイルス遺伝子セグメントと比較した種々のsiRNAの位置を示す。 図14Aは、siRNAおよびsiRNA/送達因子組成物の注射領域を示す発生中のニワトリ胚の略図である。 図14Bは、種々のsiRNAの発生中のニワトリ胚におけるインフルエンザウイルス産生を阻害する能力を示す。 図15は、核タンパク質のウイルスRNA分子との相互作用を示す略図である。 図16Aおよび16Bは、インフルエンザウイルスのvRNAと、mRNAと、cRNA(テンプレートRNA)との間の相違およびこれらの間の関係を示す略図を示す。各インフルエンザAウイルスvRNAセグメントの3’末端の保存された12個のヌクレオチドおよび5’末端の13個のヌクレオチドを図16Bに示す。mRNAは、GpppNキャップ構造および宿主細胞RNAのサブセット由来の平均して10〜13個のヌクレオチドを含む。vRNAセグメントの5’末端から15〜22ヌクレオチド前の位置に対応するmRNA中の部位でmRNAのポリアデニル化が起こる。矢印は、各RNA種に特異的なプライマーの位置を示す(引用文献(1)の適用)。 図17は、感染の6〜8時間前に偽トランスフェクトするかsiRNA NP−1496でトランスフェクトした細胞におけるウイルス感染後の種々の時間でのウイルスのNP RNA種およびNS RNA種の量を示す。 図18Aは、インフルエンザウイルス産生の阻害には二重鎖siRNA中に野生型(wt)アンチセンス鎖が必要であることを示す。MDCK細胞を、最初にwt鎖および改変(m)鎖から形成されたsiRNAでトランスフェクトし、8時間後に0.1MOIのPR8ウイルスを感染させた。感染から24時間後に培養上清のウイルス力価をアッセイした。2つの実験のうちの1つに由来の代表的なデータを示す。図18Bは、M特異的siRNAが特異的mRNAの蓄積を阻害することを示す。MDCK細胞をM−37でトランスフェクトし、0.01のMOIのPR8を感染させ、感染から1時間、2時間、および3時間後にRNA単離物を回収した。M特異的mRNA、cRNA、およびvRNAのレベルを、RNA特異的プライマーを使用した逆転写およびその後のリアルタイムPCRによって測定した。各ウイルスRNA種のレベルを、同一サンプル中のγ−アクチンmRNA(下のパネル)のレベルに正規化する。RNAの相対レベルを、平均±S.D.として示す。2つの実験のうちの1つに由来の代表的なデータを示す。 図19A〜Dは、NP特異的siRNAがNPだけでなく、MおよびNS特異的mRNA、vRNA、およびcRNAの蓄積も阻害することを示す。MDCK(A〜C)細胞およびベロ(D)細胞を、NP−1496でトランスフェクトし、0.1のMOIのPR8ウイルスを感染させ、感染から1時間、2時間、および3時間後にRNA単離物を回収した。NP、M、およびNSに特異的なmRNA、cRNA、およびvRNAのレベルを、RNA特異的プライマーを使用した逆転写およびその後のリアルタイムPCRによって測定した。各ウイルスRNA種のレベルを、同一サンプル中のγ−アクチンmRNAレベル(示さず)に正規化する。RNAの相対レベルを示す。3つの実験のうちの1つに由来の代表的なデータを示す。 図19A〜Dは、NP特異的siRNAがNPだけでなく、MおよびNS特異的mRNA、vRNA、およびcRNAの蓄積も阻害することを示す。MDCK(A〜C)細胞およびベロ(D)細胞を、NP−1496でトランスフェクトし、0.1のMOIのPR8ウイルスを感染させ、感染から1時間、2時間、および3時間後にRNA単離物を回収した。NP、M、およびNSに特異的なmRNA、cRNA、およびvRNAのレベルを、RNA特異的プライマーを使用した逆転写およびその後のリアルタイムPCRによって測定した。各ウイルスRNA種のレベルを、同一サンプル中のγ−アクチンmRNAレベル(示さず)に正規化する。RNAの相対レベルを示す。3つの実験のうちの1つに由来の代表的なデータを示す。 図19A〜Dは、NP特異的siRNAがNPだけでなく、MおよびNS特異的mRNA、vRNA、およびcRNAの蓄積も阻害することを示す。MDCK(A〜C)細胞およびベロ(D)細胞を、NP−1496でトランスフェクトし、0.1のMOIのPR8ウイルスを感染させ、感染から1時間、2時間、および3時間後にRNA単離物を回収した。NP、M、およびNSに特異的なmRNA、cRNA、およびvRNAのレベルを、RNA特異的プライマーを使用した逆転写およびその後のリアルタイムPCRによって測定した。各ウイルスRNA種のレベルを、同一サンプル中のγ−アクチンmRNAレベル(示さず)に正規化する。RNAの相対レベルを示す。3つの実験のうちの1つに由来の代表的なデータを示す。 図19A〜Dは、NP特異的siRNAがNPだけでなく、MおよびNS特異的mRNA、vRNA、およびcRNAの蓄積も阻害することを示す。MDCK(A〜C)細胞およびベロ(D)細胞を、NP−1496でトランスフェクトし、0.1のMOIのPR8ウイルスを感染させ、感染から1時間、2時間、および3時間後にRNA単離物を回収した。NP、M、およびNSに特異的なmRNA、cRNA、およびvRNAのレベルを、RNA特異的プライマーを使用した逆転写およびその後のリアルタイムPCRによって測定した。各ウイルスRNA種のレベルを、同一サンプル中のγ−アクチンmRNAレベル(示さず)に正規化する。RNAの相対レベルを示す。3つの実験のうちの1つに由来の代表的なデータを示す。 図19E〜G(各図の右側)は、PA特異的siRNAがPAだけでなく、MおよびNS特異的mRNA、vRNA、およびcRNAの蓄積も阻害することを示す。MDCK細胞を、PA−1496でトランスフェクトし、0.1のMOIのPR8ウイルスを感染させ、感染から1時間、2時間、および3時間後にRNA単離物を回収した。PA、M、およびNSに特異的なmRNA、cRNA、およびvRNAのレベルを、RNA特異的プライマーを使用した逆転写およびその後のリアルタイムPCRによって測定した。各ウイルスRNA種のレベルを、同一サンプル中のγ−アクチンmRNAレベル(示さず)に正規化する。RNAの相対レベルを示す。 図19G〜E(各図の右側)は、PA特異的siRNAがPAだけでなく、MおよびNS特異的mRNA、vRNA、およびcRNAの蓄積も阻害することを示す。MDCK細胞を、PA−1496でトランスフェクトし、0.1のMOIのPR8ウイルスを感染させ、感染から1時間、2時間、および3時間後にRNA単離物を回収した。PA、M、およびNSに特異的なmRNA、cRNA、およびvRNAのレベルを、RNA特異的プライマーを使用した逆転写およびその後のリアルタイムPCRによって測定した。各ウイルスRNA種のレベルを、同一サンプル中のγ−アクチンmRNAレベル(示さず)に正規化する。RNAの相対レベルを示す。 図19G〜E(各図の右側)は、PA特異的siRNAがPAだけでなく、MおよびNS特異的mRNA、vRNA、およびcRNAの蓄積も阻害することを示す。MDCK細胞を、PA−1496でトランスフェクトし、0.1のMOIのPR8ウイルスを感染させ、感染から1時間、2時間、および3時間後にRNA単離物を回収した。PA、M、およびNSに特異的なmRNA、cRNA、およびvRNAのレベルを、RNA特異的プライマーを使用した逆転写およびその後のリアルタイムPCRによって測定した。各ウイルスRNA種のレベルを、同一サンプル中のγ−アクチンmRNAレベル(示さず)に正規化する。RNAの相対レベルを示す。 図19Hは、NP特異的siRNAがPB1(上のパネル)、PB2(中央のパネル)、およびPA(下のパネル)特異的mRNAの蓄積を阻害することを示す。MDCK細胞を、NP−1496でトランスフェクトし、0.1のMOIのPR8ウイルスを感染させ、感染から1時間、2時間、および3時間後にRNA単離物を回収した。PB1、PB2、およびPAのmRNAに特異的なmRNAのレベルを、RNA特異的プライマーを使用した逆転写およびその後のリアルタイムPCRによって測定した。各ウイルスRNA種のレベルを、同一サンプル中のγ−アクチンmRNAレベル(示さず)に正規化する。RNAの相対レベルを示す。 図20Aは、siRNA CD8−61およびそのヘアピン誘導性CD8−61Fの配列を示す。図20Bは、CD8−61およびCD8−61FによるCD8α発現の阻害を示す。CD8CD4T細胞株を、エレクトロポレーションによってCD8−61またはCD8−61Fのいずれかでトランスフェクトした。CD8α発現を、48時間後のフローサイトメトリーによってアッセイした。印をつけていない線は偽トランスフェクションを示す。図20Cは、CD8−61FヘアピンRNAの発現がH1RNApolIIIプロモーターによって駆動される、pSLOOPIIIベクターの略図を示す。Terminatorはシグナル配列の終結を示す。図20Dは、pSLOOPIIIを使用したHeLa細胞中でのCD8αのサイレンシングを示すプロットを示す。非トランスフェクト細胞は、CD8αを発現しなかった。細胞をCD8α発現ベクターおよび無プロモーターpSLOOPIII−CD8−61F構築物、合成siRNA、またはプロモーターを含むpSLOOPIII−CD8−61Fのいずれかでトランスフェクトした。 図21Aは、NP−1496およびGFP−949のsiRNAならびにそのヘアピン誘導体/前駆体の略図を示す。図21Bは、2つの異なる順番でのNP−1496HおよびGFP−949Hのタンデムアレイを示す。図21Cは、pSLOOPIII発現ベクターを示す。siRNAのヘアピン前駆体を、pSLOOPIIIベクターのみ(上)か、タンデムアレイ(中央)でか、または独立プロモーターおよび終結配列(下)と同時にクローニングする。 図21Aは、NP−1496およびGFP−949のsiRNAならびにそのヘアピン誘導体/前駆体の略図を示す。図21Bは、2つの異なる順番でのNP−1496HおよびGFP−949Hのタンデムアレイを示す。図21Cは、pSLOOPIII発現ベクターを示す。siRNAのヘアピン前駆体を、pSLOOPIIIベクターのみ(上)か、タンデムアレイ(中央)でか、または独立プロモーターおよび終結配列(下)と同時にクローニングする。 図21Aは、NP−1496およびGFP−949のsiRNAならびにそのヘアピン誘導体/前駆体の略図を示す。図21Bは、2つの異なる順番でのNP−1496HおよびGFP−949Hのタンデムアレイを示す。図21Cは、pSLOOPIII発現ベクターを示す。siRNAのヘアピン前駆体を、pSLOOPIIIベクターのみ(上)か、タンデムアレイ(中央)でか、または独立プロモーターおよび終結配列(下)と同時にクローニングする。 図22Aは、インフルエンザウイルスでの感染前にカチオン性ポリマーPEIと共に投与した場合にsiRNAがマウスにおけるインフルエンザウイルス産生を阻害することを示すプロットである。黒塗りの四角(未処理)、白抜きの四角(GFPsiRNA)、白抜きの円(30μgNPsiRNA)、黒塗りの円(60μgNPsiRNA)。各印は、各動物を示す。異なる群の間のp値を示す。 図22Bは、インフルエンザウイルスでの感染前にカチオン性ポリマーPLLと共に投与した場合にsiRNAがマウスにおけるインフルエンザウイルス産生を阻害することを示すプロットである。黒塗りの四角(未処理)、白抜きの四角(GFP siRNA)、黒塗りの円(60μgNP siRNA)。各印は、各動物を示す。異なる群の間のp値を示す。 図22Cは、インフルエンザウイルスでの感染前にカチオン性ポリマーjetPEIと共に投与した場合に、PBS中で投与した場合よりも有意により有効にsiRNAがマウスにおけるインフルエンザウイルス産生を阻害することを示すプロットである。白抜きの四角(未処理)、白抜きの三角(PBS中のGFP siRNA)、黒塗りの三角(PBS中のNP siRNA)、白抜きの円(jetPEIを含むGFP siRNA)、黒塗りの円(jetPEIを含むNP siRNA)。各印は、各動物を示す。異なる群の間のp値を示す。 図22Dは、カチオン性ポリ(βアミノエステル)(J28)と一緒に静脈内に投与した場合に、NPにターゲティングされるsiRNAがマウスにおけるインフルエンザウイルス産生を阻害することを示すプロットである。白抜きの円(未処理)、黒塗りの四角(J28を含むNP siRNA)。各印は、各動物を示す。異なる群の間のp値を示す。 図22Eは、カチオン性ポリ(βアミノエステル)(J28またはC32)と一緒に腹腔内に投与した場合に、NPにターゲティングされるsiRNAがマウスにおけるインフルエンザウイルス産生を阻害する一方で、コントロールRNA(GFP)が有意な効果を有さないことを示すプロットである。白抜きの円(未処理)、白抜きの四角(J28を含むGFP siRNA)、黒塗りの四角(J28を含むNP siRNA)、白抜きの三角(J28を含むGFP siRNA)、黒塗りの三角(C32を含むNP siRNA)。コントロール群と処理群との間のp値を示す。 図23は、インフルエンザウイルスでの感染前に共に投与した場合にインフルエンザウイルスのNP転写物およびPA転写物にターゲティングされるsiRNAがさらなる効果を示すことを示すプロットである。黒塗りの四角(未処理)、白抜きの円(60μgNP siRNA)、白抜きの三角(60μgPA siRNA)、黒塗りの円(60μgNP siRNA+60μgPA siRNA)。各印は、各動物を示す。異なる群の間のp値を示す。 図24は、インフルエンザウイルスでの感染後に投与した場合にsiRNAがマウスにおけるインフルエンザウイルス産生を阻害することを示すプロットである。黒塗りの四角(未処理)、白抜きの四角(60μgGFP siRNA)、白抜きの三角(60μgPA siRNA)、白抜きの円(60μgNP siRNA)、黒塗りの円(60μgNP+60μgPA siRNA)。各印は、各動物を示す。異なる群の間のp値を示す。 図25Aは、shRNAを発現するレンチウイルスベクターの略図である。shRNAの転写は、U6プロモーターによって駆動される。EGFP発現は、CMVプロモーターによって駆動される。SIN−LTR、Ψ、cPPT、およびWREは、レンチウイルス構成要素である。NP−1496shRNAの配列を示す。図25Bは、図25Bに示すレンチウイルスに感染したベロ細胞が用量依存的にEGFPを発現することを証明するフローサイトメトリーの結果のプロットを示す。NP−1496a shRNAをコードするDNAベクターおよびパッケージングベクターの293T細胞への同時トランスフェクションによってレンチウイルスを産生した。培養上清(0.25mlまたは1.0ml)を使用して、ベロ細胞を感染させた。得られたベロ細胞株(ベロ−NP−0.25およびベロ−NP−1.0)ならびにコントロール(非感染)ベロ細胞を、フローサイトメトリーによってGFP発現について分析した。ベロ−NP−0.25(図の上部)およびベロ−NP−1.0(図の下部)細胞の平均蛍光強度を示す。影をつけた曲線は、コントロール(非感染)ベロ細胞の平均蛍光強度を示す。図25Cは、NP−1496shRNAを発現するベロ細胞におけるインフルエンザウイルス産生の阻害を示すプロットである。親ベロ細胞およびNP−1496 shRNA発現ベロ細胞に、0.04、0.2、および1のMOIのPR8ウイルスを感染させた。上清中のウイルス力価を、感染から48時間後に血球凝集素(HA)アッセイによって判定した。 図26は、インフルエンザウイルス転写物にターゲティングされるsiRNAを発現するDNAベクターの投与によってマウスにおけるインフルエンザウイルス産生が阻害されることを示すプロットである。60μgのRSV、NP−1496(NP)、またはPB1−2257(PB1)shRNAをコードするDNAを、40μlのInfasurfと混合し、点滴注入法によってマウスに投与した。未処理(NT)群について、マウスに60μlの5%グルコースを点滴した。13時間後、マウスにPR8ウイルスを12000pfu/マウスで鼻腔内感染させた。感染24時間後にMDCK/血球凝集素アッセイによって肺のウイルス力価を測定した。各データポイントは1匹のマウスを示す。群間のp値を示す。 図27Aは、siRNAとポリ−L−リジン(PLL)との間の複合体形成を検出するための電気泳動移動度シフトアッセイの結果を示す。150ngのNP−1496 siRNAと漸増量のポリマー(0〜1200ng)との室温で30分間の混合によって、siRNA−ポリマー複合体を形成させた。次いで、反応混合物を、4%アガロースゲルで泳動し、siRNAを臭化エチジウム染色を使用して視覚化した。 図27Bは、siRNAとポリ−L−アルギニン(PLA)との間の複合体形成を検出するための電気泳動移動度シフトアッセイの結果を示す。150ngのNP−1496 siRNAと漸増量のポリマー(0〜1200ng)との室温で30分間の混合によって、siRNA−ポリマー複合体を形成させた。次いで、反応混合物を、4%アガロースゲルで泳動し、siRNAを臭化エチジウム染色を使用して視覚化した。 図28Aは、siRNA/PLL複合体の細胞傷害性を示すプロットである。96ウェルプレート中のベロ細胞を、siRNA(400pmol)/ポリマー複合体で6時間処理した。次いで、ポリマー含有培地を、DMEM−10%FCSと交換した。24時間後にMTTアッセイの使用によって細胞の代謝活性を測定した。四角=PLL(分子量約8K)、円=PLL(分子量約42K)、黒塗りの四角=25%、白抜きの三角=50%、黒塗りの三角=75%、X=95%。三つ組の平均としてデータを示す。図28Bは、siRNA/PLA複合体の細胞傷害性を示すプロットである。96ウェルプレート中のベロ細胞を、siRNA(400pmol)/ポリマー複合体で6時間処理した。次いで、ポリマー含有培地を、DMEM−10%FCSと交換した。24時間後にMTTアッセイの使用によって細胞の代謝活性を測定した。三つ組の平均としてデータを示す。 図29Aは、PLLがsiRNAの細胞取り込みを刺激することを示すプロットである。24ウェルプレート中のベロ細胞を、リポフェクタミン+siRNA(400pmol)またはsiRNA(400pmol)/ポリマー複合体と6時間インキュベートした。次いで、細胞を洗浄し、0.04のMOIのPR8ウイルスを感染させた。感染後、異なる時点での培養上清中のウイルス力価を、HAアッセイによって測定した。ポリマー:siRNA比を示す。白抜きの円=未処理、黒塗りの四角=リポフェクタミン、黒塗りの三角=PLL(分子量約42K)、白抜きの三角=PLL(分子量約8K)。図29Bは、ポリ−L−アルギニンがsiRNAの細胞取り込みを刺激することを示すプロットである。24ウェルプレート中のベロ細胞を、siRNA(400pmol)/ポリマー複合体と6時間インキュベートした。次いで、細胞を洗浄し、0.04のMOIのPR8ウイルスを感染させた。感染後、異なる時点での培養上清中のウイルス力価を、HAアッセイによって測定した。ポリマー:siRNA比を示す。0,25%、50%、75%、および95%は、イミダゾールアセチル基に置換したPLL上のε−アミノ基の割合をいう。黒塗りの円=非トランスフェクション、白抜きの円=リポフェクタミン、白抜きおよび黒塗りの四角=0%および25%(0%と25%のデータポイントは同一であることに留意のこと)、黒塗りの三角=50%、白抜きの三角=75%、X=95%。 図30Aは、PEIが静脈内注射後に肺においてDNAトランスフェクションを媒介することを示す棒グラフである。4日間にわたる異なる器官における0.5mgのタンパク質の相対光単位でのLuc活性を示す。データは、2つの実験のうちの1つに由来する。図30Bは、PEIが気管内投与後に肺においてDNAトランスフェクションを媒介することを示す棒グラフである。この図は、DNA投与の24時間後における1群あたり3匹のマウスの表示の器官における0.5mgのタンパク質の相対光単位での平均Luc活性を示す。エラーバーは、標準偏差を示す。 図30Cは、siRNAの静脈内送達による肺におけるルシフェラーゼ活性の阻害を示す棒グラフである。この図は、ルシフェラーゼ構築物の投与の24時間後における1群あたり3匹のマウスの表示の器官における0.5mgのタンパク質の相対光単位での平均Luc活性を示す。エラーバーは、標準偏差を示す。図30Dは、siRNAの吸入送達による肺におけるルシフェラーゼ活性の阻害を示す棒グラフである。この図は、ルシフェラーゼ構築物の投与の24時間後におけるマウスの肺における0.5mgのタンパク質の相対光単位での平均Luc活性を示す。エラーバーは、標準偏差を示す。実験を、1群あたり3匹のマウスをを使用して二つ組で行い、そして同様の結果を得た。この実験のうちの1つの結果をここに示す。 図31Aおよび31Bは、送達因子を伴わないsiRNAの投与がマウスにおけるインフルエンザウイルス産生を阻害することを示すプロットである。 図31Aおよび31Bは、送達因子を伴わないsiRNAの投与がマウスにおけるインフルエンザウイルス産生を阻害することを示すプロットである。 図32A〜32Jは、RNAiのための標的部分の選択に使用したインフルエンザウイルス株PR8転写物の配列を示す。 図32A〜32Jは、RNAiのための標的部分の選択に使用したインフルエンザウイルス株PR8転写物の配列を示す。 図32A〜32Jは、RNAiのための標的部分の選択に使用したインフルエンザウイルス株PR8転写物の配列を示す。 図32A〜32Jは、RNAiのための標的部分の選択に使用したインフルエンザウイルス株PR8転写物の配列を示す。 図32A〜32Jは、RNAiのための標的部分の選択に使用したインフルエンザウイルス株PR8転写物の配列を示す。 図32A〜32Jは、RNAiのための標的部分の選択に使用したインフルエンザウイルス株PR8転写物の配列を示す。 図32A〜32Jは、RNAiのための標的部分の選択に使用したインフルエンザウイルス株PR8転写物の配列を示す。 図32A〜32Jは、RNAiのための標的部分の選択に使用したインフルエンザウイルス株PR8転写物の配列を示す。 図32A〜32Jは、RNAiのための標的部分の選択に使用したインフルエンザウイルス株PR8転写物の配列を示す。 図32A〜32Jは、RNAiのための標的部分の選択に使用したインフルエンザウイルス株PR8転写物の配列を示す。 図33は、インフルエンザウイルスを阻害するRNAiのための機能性標的部分の配列を示す表17である。 図33は、インフルエンザウイルスを阻害するRNAiのための機能性標的部分の配列を示す表17である。 図33は、インフルエンザウイルスを阻害するRNAiのための機能性標的部分の配列を示す表17である。 図33は、インフルエンザウイルスを阻害するRNAiのための機能性標的部分の配列を示す表17である。 図33は、インフルエンザウイルスを阻害するRNAiのための機能性標的部分の配列を示す表17である。 図33は、インフルエンザウイルスを阻害するRNAiのための機能性標的部分の配列を示す表17である。 図33は、インフルエンザウイルスを阻害するRNAiのための機能性標的部分の配列を示す表17である。 図33は、インフルエンザウイルスを阻害するRNAiのための機能性標的部分の配列を示す表17である。 図33は、インフルエンザウイルスを阻害するRNAiのための機能性標的部分の配列を示す表17である。 図33は、インフルエンザウイルスを阻害するRNAiのための機能性標的部分の配列を示す表17である。 図33は、インフルエンザウイルスを阻害するRNAiのための機能性標的部分の配列を示す表17である。 図33は、インフルエンザウイルスを阻害するRNAiのための機能性標的部分の配列を示す表17である。 図33は、インフルエンザウイルスを阻害するRNAiのための機能性標的部分の配列を示す表17である。 図33は、インフルエンザウイルスを阻害するRNAiのための機能性標的部分の配列を示す表17である。 図33は、インフルエンザウイルスを阻害するRNAiのための機能性標的部分の配列を示す表17である。 図33は、インフルエンザウイルスを阻害するRNAiのための機能性標的部分の配列を示す表17である。 図33は、インフルエンザウイルスを阻害するRNAiのための機能性標的部分の配列を示す表17である。 図33は、インフルエンザウイルスを阻害するRNAiのための機能性標的部分の配列を示す表17である。 図33は、インフルエンザウイルスを阻害するRNAiのための機能性標的部分の配列を示す表17である。 図33は、インフルエンザウイルスを阻害するRNAiのための機能性標的部分の配列を示す表17である。 図33は、インフルエンザウイルスを阻害するRNAiのための機能性標的部分の配列を示す表17である。 図33は、インフルエンザウイルスを阻害するRNAiのための機能性標的部分の配列を示す表17である。 図33は、インフルエンザウイルスを阻害するRNAiのための機能性標的部分の配列を示す表17である。 図33は、インフルエンザウイルスを阻害するRNAiのための機能性標的部分の配列を示す表17である。 図33は、インフルエンザウイルスを阻害するRNAiのための機能性標的部分の配列を示す表17である。 図33は、インフルエンザウイルスを阻害するRNAiのための機能性標的部分の配列を示す表17である。 図33は、インフルエンザウイルスを阻害するRNAiのための機能性標的部分の配列を示す表17である。 図33は、インフルエンザウイルスを阻害するRNAiのための機能性標的部分の配列を示す表17である。 図33は、インフルエンザウイルスを阻害するRNAiのための機能性標的部分の配列を示す表17である。 図33は、インフルエンザウイルスを阻害するRNAiのための機能性標的部分の配列を示す表17である。 図33は、インフルエンザウイルスを阻害するRNAiのための機能性標的部分の配列を示す表17である。 図33は、インフルエンザウイルスを阻害するRNAiのための機能性標的部分の配列を示す表17である。 図33は、インフルエンザウイルスを阻害するRNAiのための機能性標的部分の配列を示す表17である。 図33は、インフルエンザウイルスを阻害するRNAiのための機能性標的部分の配列を示す表17である。 図33は、インフルエンザウイルスを阻害するRNAiのための機能性標的部分の配列を示す表17である。 図33は、インフルエンザウイルスを阻害するRNAiのための機能性標的部分の配列を示す表17である。 図33は、インフルエンザウイルスを阻害するRNAiのための機能性標的部分の配列を示す表17である。 図33は、インフルエンザウイルスを阻害するRNAiのための機能性標的部分の配列を示す表17である。 図33は、インフルエンザウイルスを阻害するRNAiのための機能性標的部分の配列を示す表17である。 図33は、インフルエンザウイルスを阻害するRNAiのための機能性標的部分の配列を示す表17である。 図33は、インフルエンザウイルスを阻害するRNAiのための機能性標的部分の配列を示す表17である。 図33は、インフルエンザウイルスを阻害するRNAiのための機能性標的部分の配列を示す表17である。 図33は、インフルエンザウイルスを阻害するRNAiのための機能性標的部分の配列を示す表17である。 図33は、インフルエンザウイルスを阻害するRNAiのための機能性標的部分の配列を示す表17である。 図33は、インフルエンザウイルスを阻害するRNAiのための機能性標的部分の配列を示す表17である。 図33は、インフルエンザウイルスを阻害するRNAiのための機能性標的部分の配列を示す表17である。 図34は、ヒトに由来するインフルエンザウイルス株の間でRNAiのための好ましく保存されたインフルエンザウイルス標的部分の配列を示す表18である。 図34は、ヒトに由来するインフルエンザウイルス株の間でRNAiのための好ましく保存されたインフルエンザウイルス標的部分の配列を示す表18である。 図34は、ヒトに由来するインフルエンザウイルス株の間でRNAiのための好ましく保存されたインフルエンザウイルス標的部分の配列を示す表18である。 図34は、ヒトに由来するインフルエンザウイルス株の間でRNAiのための好ましく保存されたインフルエンザウイルス標的部分の配列を示す表18である。 図34は、ヒトに由来するインフルエンザウイルス株の間でRNAiのための好ましく保存されたインフルエンザウイルス標的部分の配列を示す表18である。 図35は、ヒトおよび鳥類に由来するインフルエンザウイルス株の間でRNAiのための好ましく保存されたインフルエンザウイルス標的部分の配列を示す表20である。 図35は、ヒトおよび鳥類に由来するインフルエンザウイルス株の間でRNAiのための好ましく保存されたインフルエンザウイルス標的部分の配列を示す表20である。 図35は、ヒトおよび鳥類に由来するインフルエンザウイルス株の間でRNAiのための好ましく保存されたインフルエンザウイルス標的部分の配列を示す表20である。

Claims (105)

  1. インフルエンザウイルス転写物にターゲティングされるRNAi誘導性物質であって、該RNAi誘導性物質は、その配列が配列番号272〜380、その相補体、または少なくとも15ヌクレオチドの長さを有するそれらいずれかのフラグメントからなる群より選択される配列を含む核酸部分を含む、RNAi誘導性物質。
  2. 前記配列が、配列番号274、配列番号286、配列番号287、配列番号292、配列番号297、配列番号298、配列番号304、配列番号305、配列番号309、配列番号310、配列番号311、配列番号319、配列番号324、配列番号327、配列番号334、配列番号346、配列番号347、配列番号360、配列番号361、配列番号364、および配列番号366、その相補体、または少なくとも15ヌクレオチドを有するそれらいずれかのフラグメントからなる群より選択される、請求項1に記載のRNAi誘導性物質。
  3. 前記配列は、配列番号297、配列番号309、配列番号310、配列番号311、配列番号346、配列番号347、配列番号364、および配列番号366、その相補体、または少なくとも15ヌクレオチドの長さを有するそれらいずれかのフラグメントからなる群より選択される、請求項1に記載のRNAi誘導性物質。
  4. 請求項1に記載のRNAi誘導性物質であって、個々の核酸鎖を含み、その一方または両方が3’に位置する一本鎖突出部を含むsiRNAである、RNAi誘導性物質。
  5. 請求項1に記載のRNAi誘導性物質であって、二重鎖を形成する単一核酸の第1の核酸部分と第2の核酸部分とを含むshRNAであり、該第1の核酸部分および第2の核酸部分は、一本鎖核酸部分によって一緒に連結され、そして該二重鎖は、一本鎖突出部をさらに含む、RNAi誘導性物質。
  6. 前記核酸部分の配列が前記RNAi誘導性物質の核酸部分に関して1個または2個の位置で異なることを除いて請求項1に記載のRNAi誘導性物質と同一である、RNAi誘導性物質。
  7. 請求項1に記載のRNAi誘導性物質の転写のためのテンプレートを含むベクターであって、該テンプレートが、プロモーターに作動可能に連結される、ベクター。
  8. インフルエンザウイルス感染を処置または予防する方法であって、インフルエンザウイルス感染を処置または予防する必要がある被験体に請求項7に記載のRNAi誘導性物質を投与する工程を包含する、方法。
  9. 請求項1に記載のRNAi誘導性物質および送達因子を含む、組成物。
  10. 前記送達因子は、カチオン性ポリマーである、請求項9に記載の組成物。
  11. 前記カチオン性ポリマーは、PEI、PLL、PLA、およびポリ(β)アミノエステルからなる群より選択される、請求項10に記載の組成物。
  12. インフルエンザウイルス感染を処置または予防する方法であって、インフルエンザウイルス感染を処置または予防する必要がある被験体に請求項1に記載のRNAi誘導性物質を投与する工程を包含する、方法。
  13. インフルエンザの診断のための方法であって、被験体が請求項1に記載のRNAi誘導性物質による阻害に感受性であるインフルエンザウイルスに感染しているか否かを決定する工程を包含する、方法。
  14. 前記RNAi誘導性物質を前記被験体に投与する工程をさらに包含する、請求項13に記載の方法。
  15. ポリメラーゼタンパク質PB1遺伝子、ポリメラーゼタンパク質PB2遺伝子、ポリメラーゼタンパク質PA遺伝子、および核タンパク質NP遺伝子からなる群より選択されるインフルエンザウイルス遺伝子にターゲティングされる、RNAi誘導性物質。
  16. 前記遺伝子は、PB1である、請求項15に記載のRNAi誘導性物質。
  17. 前記遺伝子は、PB2である、請求項15に記載のRNAi誘導性物質。
  18. 前記遺伝子は、PAである、請求項15に記載のRNAi誘導性物質。
  19. 前記遺伝子は、NPである、請求項15に記載のRNAi誘導性物質。
  20. 前記物質は、RNAiのための機能的に好ましい標的部分である遺伝子の標的部分にターゲティングされる、請求項15に記載のRNAi誘導性物質。
  21. 前記物質は、前記遺伝子の好ましく保存された標的部分にターゲティングされる、請求項15に記載のRNAi誘導性物質。
  22. 前記物質は、前記遺伝子の高度に保存された標的部分にターゲティングされる、請求項15に記載のRNAi誘導性物質。
  23. 前記RNAi誘導性物質は、少なくとも15個を上回る連続したヌクレオチドのインフルエンザウイルス遺伝子の標的部分に100%相補的である核酸部分を含み、該標的部分は、RNAのための機能的に好ましい標的である、請求項15に記載のRNAi誘導性物質。
  24. 前記核酸部分が前記RNAi誘導性物質の核酸部分に関して1個または2個の位置で異なることを除いて請求項23に記載のRNAi誘導性物質と同一である、RNAi誘導性物質。
  25. 請求項15に記載のRNAi誘導性物質の転写のためのテンプレートを含む、ベクター。
  26. 単離された核酸またはその相補体であって、その配列が、配列番号272〜380からなる群より選択される配列を含むか、または少なくとも16ヌクレオチドの長さを有する配列番号272〜380からなる群より選択される配列のフラグメントを含み、該核酸が、100ヌクレオチド以下の長さを有する、単離された核酸またはその相補体。
  27. 前記配列は、配列番号274、配列番号286、配列番号287、配列番号292、配列番号297、配列番号298、配列番号304、配列番号305、配列番号309、配列番号310、配列番号311、配列番号319、配列番号324、配列番号327、配列番号334、配列番号346、配列番号347、配列番号360、配列番号361、配列番号364、および配列番号366からなる群より選択される配列を含むか、または少なくとも16ヌクレオチドの長さを有する配列番号274、配列番号286、配列番号287、配列番号292、配列番号297、配列番号298、配列番号304、配列番号305、配列番号310、配列番号311、配列番号319、配列番号324、配列番号327、配列番号334、配列番号346、配列番号347、配列番号360、配列番号361、配列番号364、および配列番号366からなる群より選択される配列のフラグメントを含み、該核酸は、100ヌクレオチド以下の長さを有する、請求項26に記載の核酸。
  28. 前記配列は、配列番号297、配列番号309、配列番号310、配列番号311、配列番号346、配列番号347、配列番号364、および配列番号366からなる群より選択される配列を含むか、または少なくとも16ヌクレオチドの長さを有する配列番号297、配列番号310、配列番号311、配列番号346、配列番号347、配列番号364、および配列番号366からなる群より選択される配列のフラグメントを含み、該核酸は、100ヌクレオチド以下の長さを有する、請求項26に記載の核酸。
  29. 前記配列は、配列番号272〜配列番号380からなる群より選択される配列を含む、請求項26に記載の核酸。
  30. 前記核酸に結合する検出可能な部分をさらに含む、請求項26に記載の単離された核酸。
  31. 請求項26に記載の核酸を含む、RNAi誘導性物質。
  32. 請求項26に記載のRNAi誘導性物質の転写のためのテンプレートを含む、ベクター。
  33. 配列n1−n2−n3−n4−n5−n6−n7−n8−n9−n10−n11−n12−n13−n14−n15−n16−n17−n18−n19(N19)を有する単離された核酸であって、該配列は、ポリメラーゼタンパク質PB1遺伝子、ポリメラーゼタンパク質PB2遺伝子、ポリメラーゼタンパク質PA遺伝子、および核タンパク質NP遺伝子からなる群より選択されるインフルエンザウイルス遺伝子の一部と同一であるか、または、
    AからGへの変化またはCからUへの変化が、任意の位置において許容され;GからAへの変化またはCからAへの変化が、位置n1、n18においてのみ許容され、そして/またはN19と前記インフルエンザとの間に0個、1個、2個、もしくは3個の変化が存在し、かつ2個より多く連続した変化が存在せず;そしてN19と前記インフルエンザウイルスとの間に多くとも1個の変化が存在する;
    という点で異なる、単離された核酸。
  34. 請求項33に記載の核酸にターゲティングされる、RNAi誘導性物質。
  35. 請求項33に記載の核酸を含む、RNAi誘導性物質。
  36. 請求項33に記載のRNAi誘導性物質の転写のためのテンプレートを含む、ベクター。
  37. 被験体においてインフルエンザを診断する方法であって、該被験体がRNAi誘導性実体による阻害に感受性であるインフルエンザウイルス株に感染しているか否かを決定する工程を包含する、方法。
  38. 前記RNAi誘導性実体を前記被験体に投与する工程をさらに包含する、請求項37に記載の方法。
  39. 前記決定する工程は、核酸ベースの診断アッセイを行なう工程を包含する、請求項37に記載の方法。
  40. RNAiのための好ましく保存された標的部分である標的部分の少なくとも一部にわたってインフルエンザウイルス遺伝子を検出するプライマーまたはプローブを備える、診断キット。
  41. 前記好ましく保存された標的部分は、配列番号272〜配列番号380からなる群より選択される配列を含む、請求項40に記載の診断キット。
  42. 哺乳動物被験体の組織または器官における遺伝子の発現を阻害する方法であって、該遺伝子にターゲティングされるRNAi誘導性物質の有効量を含む組成物をハイドロダイナミックトランスフェクション技術を使用せずに該被験体の脈管系に対して直接的に導入する工程を包含する、方法。
  43. 前記器官は、肺である、請求項42に記載の方法。
  44. 前記組成物は、カチオン性ポリマーを含む、請求項42に記載の方法。
  45. 前記遺伝子は、気道上皮細胞に感染するウイルスの遺伝子である、請求項42に記載の方法。
  46. 前記ウイルスは、インフルエンザウイルスである、請求項45に記載の方法。
  47. 前記有効量は、前記被験体の体重1kgあたり約0.1mgと5mgとの間である、請求項42に記載の方法。
  48. 前記有効量は、前記遺伝子の発現を少なくとも1/2に減少させる、請求項42に記載の方法。
  49. 哺乳動物被験体の呼吸系においてウイルスの産生を阻害する方法であって、該ウイルスは、気道上皮細胞に感染し、該方法が、該ウイルスの遺伝子にターゲティングされるRNAi誘導性物質の有効量を含む組成物を、ハイドロダイナミックトランスフェクション技術を使用せずに注射によって該被験体の脈管系に導入する工程を包含する、方法。
  50. 前記組成物は、カチオン性ポリマーを含む、請求項49に記載の方法。
  51. 前記ウイルスは、インフルエンザウイルスである、請求項49に記載の方法。
  52. 前記有効量は、前記被験体の体重1kgあたり約0.1mgと5mgとの間である、請求項49に記載の方法。
  53. 前記組成物は、前記ウイルスに感染していない被験体に対して、該被験体の感染前に投与され、そして該組成物は、該被験体がその後に感染した場合、該ウイルスの産生を阻害するのに有効である、請求項49に記載の方法。
  54. 哺乳動物被験体の肺において遺伝子の発現を阻害する方法であって、該遺伝子にターゲティングされるRNAi誘導性物質の有効量および送達因子を含む組成物を、該被験体の呼吸系に対して直接的に導入する工程を包含する、方法。
  55. 前記組成物は、鼻腔内に投与される、請求項54に記載の方法。
  56. 前記組成物は、吸入によって投与される、請求項54に記載の方法。
  57. 前記組成物は、カチオン性ポリマーを含む、請求項54に記載の方法。
  58. 前記遺伝子は、気道上皮細胞に感染するウイルスの遺伝子である、請求項54に記載の方法。
  59. 前記ウイルスは、インフルエンザウイルスである、請求項58に記載の方法。
  60. 前記有効量は、前記被験体の体重1kgあたり約0.1mgと5mgとの間である、請求項54に記載の方法。
  61. 前記有効量は、前記遺伝子の発現を少なくとも1/2に減少させる、請求項54に記載の方法。
  62. 前記組成物は、送達増強性ポリマーおよび脂質を本質的に含まない、請求項54に記載の方法。
  63. 哺乳動物被験体の呼吸系においてウイルスの産生を阻害する方法であって、該ウイルスは、気道上皮細胞に感染し、該方法は、該ウイルスの遺伝子にターゲティングされるRNAi誘導性物質の有効量を含む組成物を、該被験体の呼吸系に対して直接的に導入する工程を包含する、方法。
  64. 前記ウイルスは、インフルエンザウイルスである、請求項63に記載の方法。
  65. 前記組成物は、鼻腔内に投与される、請求項63に記載の方法。
  66. 前記組成物は、吸入によって投与される、請求項63に記載の方法。
  67. 前記組成物は、カチオン性ポリマーを含む、請求項63に記載の方法。
  68. 前記有効量は、前記被験体の体重1kgあたり約0.1mgと5mgとの間である、請求項63に記載の方法。
  69. 前記有効量は、前記ウイルスの産生を少なくとも25%減少させる、請求項63に記載の方法。
  70. 前記組成物は、送達増強性ポリマーおよび脂質を本質的に含まない、請求項63に記載の方法。
  71. 前記組成物は、前記ウイルスに感染していない被験体に対して、該被験体の感染前に投与され、そして該組成物は、該被験体がその後に感染した場合、該ウイルスの産生を阻害するのに有効である、請求項63に記載の方法。
  72. インフルエンザウイルス転写物にターゲティングされるRNAi誘導性物質を発現する、トランスジェニック非ヒト動物。
  73. 前記動物は、鳥類である、請求項72に記載のトランスジェニック非ヒト動物。
  74. インフルエンザウイルス感染を処置または予防するための医薬の製造におけるRNAi誘導性物質の使用であって、インフルエンザウイルス感染を処置または予防する必要がある被験体に、該RNAi誘導性物質を投与する工程を包含し、該RNAi誘導性物質は、配列番号272〜配列番号380、その相補体、または少なくとも15ヌクレオチドの長さを有するそれらいずれかのフラグメントからなる群より選択される配列を含む核酸部分を含み、そしてテンプレートは、プロモーターに作動可能に連結される、使用。
  75. インフルエンザウイルス感染を処置または予防するための医薬の製造におけるRNAi誘導性物質の使用であって、インフルエンザウイルス感染を処置または予防する必要がある被験体に、該RNAi誘導性物質を投与する工程を包含し、該RNAi誘導性物質は、配列番号272〜配列番号380、その相補体、または少なくとも15ヌクレオチドの長さを有するそれらいずれかのフラグメントからなる群より選択される配列を含む核酸部分を含む、使用。
  76. 哺乳動物被験体の組織または器官において遺伝子の発現を阻害するための医薬の製造におけるRNAi誘導性物質の使用であって、該遺伝子にターゲティングされるRNAi誘導性物質の有効量を含む組成物をハイドロダイナミックトランスフェクション技術を使用せずに該被験体の脈管系に対して直接的に導入する工程を包含する、使用。
  77. 前記器官は、肺である、請求項76に記載のRNAi誘導性物質の使用。
  78. 前記組成物は、カチオン性ポリマーを含む、請求項76に記載のRNAi誘導性物質の使用。
  79. 前記遺伝子は、気道上皮細胞に感染するウイルスの遺伝子である、請求項76に記載のRNAi誘導性物質の使用。
  80. 前記ウイルスは、インフルエンザウイルスである、請求項76に記載のRNAi誘導性物質の使用。
  81. 前記有効量は、前記被験体の体重1kgあたり約0.1mgと5mgとの間である、請求項76に記載のRNAi誘導性物質の使用。
  82. 前記有効量は、前記遺伝子の発現を少なくとも1/2に減少させる、請求項76に記載のRNAi誘導性物質の使用。
  83. 哺乳動物被験体の呼吸系においてウイルスの産生を阻害するための医薬の製造におけるRNAi誘導性物質の使用であって、該ウイルスは、気道上皮細胞に感染し、該使用が、該ウイルスの遺伝子にターゲティングされるRNAi誘導性物質の有効量を含む組成物をハイドロダイナミックトランスフェクション技術を使用せずに注射によって該被験体の脈管系に導入する工程を包含する、使用。
  84. 前記組成物は、カチオン性ポリマーを含む、請求項83に記載のRNAi誘導性物質の使用。
  85. 前記ウイルスは、インフルエンザウイルスである、請求項83に記載のRNAi誘導性物質の使用。
  86. 前記有効量は、前記被験体の体重1kgあたり約0.1mgと5mgとの間である、請求項83に記載のRNAi誘導性物質の使用。
  87. 前記組成物は、前記ウイルスに感染していない被験体に対して、該被験体の感染前に投与され、そして該組成物は、該被験体がその後に感染した場合、該ウイルスの産生を阻害するのに有効である、請求項83に記載のRNAi誘導性物質の使用。
  88. 哺乳動物被験体の肺において遺伝子の発現を阻害するための医薬の製造におけるRNAi誘導性物質の使用であって、該遺伝子にターゲティングされるRNAi誘導性物質の有効量および送達因子を含む組成物を、該被験体の呼吸系に対して直接的に導入する工程を包含する、使用。
  89. 前記組成物は、鼻腔内に投与される、請求項88に記載のRNAi誘導性物質の使用。
  90. 前記組成物は、吸入によって投与される、請求項88に記載のRNAi誘導性物質の使用。
  91. 前記組成物は、カチオン性ポリマーを含む、請求項88に記載のRNAi誘導性物質の使用。
  92. 前記遺伝子は、気道上皮細胞に感染するウイルスの遺伝子である、請求項88に記載のRNAi誘導性物質の使用。
  93. 前記ウイルスは、インフルエンザウイルスである、請求項92に記載のRNAi誘導性物質の使用。
  94. 前記有効量は、前記被験体の体重1kgあたり約0.1mgと5mgとの間である、請求項88に記載のRNAi誘導性物質の使用。
  95. 前記有効量は、前記遺伝子の発現を少なくとも1/2に減少させる、請求項88に記載のRNAi誘導性物質の使用。
  96. 前記組成物は、送達増強性ポリマーおよび脂質を本質的に含まない、請求項88に記載のRNAi誘導性物質の使用。
  97. 哺乳動物被験体の呼吸系においてウイルスの産生を阻害するための医薬の製造におけるRNAi誘導性物質の使用であって、該ウイルスは、気道上皮細胞に感染し、該使用が、該ウイルスの遺伝子にターゲティングされるRNAi誘導性物質の有効量を該被験体の呼吸系に対して直接的に導入する工程を包含する、使用。
  98. 前記ウイルスは、インフルエンザウイルスである、請求項97に記載のRNAi誘導性物質の使用。
  99. 前記組成物は、鼻腔内に投与される、請求項97に記載のRNAi誘導性物質の使用。
  100. 前記組成物は、吸入によって投与される、請求項97に記載のRNAi誘導性物質の使用。
  101. 前記組成物は、カチオン性ポリマーを含む、請求項97に記載の使用。
  102. 前記有効量は、前記被験体の体重1kgあたり約0.1mgと5mgとの間である、請求項97に記載の使用。
  103. 前記有効量は、前記ウイルスの産生を少なくとも25%減少させる、請求項97に記載の使用。
  104. 前記組成物は、送達増強性ポリマーおよび脂質を本質的に含まない、請求項97に記載の使用。
  105. 前記組成物は、前記ウイルスに感染していない被験体に対して、該被験体の感染前に投与され、そして該組成物は、該被験体がその後に感染した場合、該ウイルスの産生を阻害するのに有効である、請求項97に記載の使用。
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