ところで、管体(ダクト)内を流れる気体によって発生する導通音(騒音)を効果的に消音または低減するには、一般的に、消音器(レゾネータ)の容量を大きくする方法が採用される。すなわち、容量の大きな消音器(レゾネータ)を採用することにより、管体(ダクト)内を伝播する導通音(騒音)を良好に拡大することができ、その結果、導通音(騒音)を効果的に減衰させることができる。したがって、管体(ダクト)内を流れる気体によって発生する導通音(騒音)を効果的に消音または低減することができる。
しかしながら、特に、車両においては、エンジンルーム内のスペースが限られていることに加え、近年エンジンルーム内に組み付けられる補器類等のユニット化が進み、吸気ダクトや空調ダクトなどの気体導通管はこれらユニット間に生じる狭いスペースを利用して組み付けられることが多い。このため、大容量の消音器(レゾネータ)を設けるためのスペースを確保することが難しくなっている。したがって、気体導通管には、管体(ダクト)内を流れる導通音(騒音)を効果的に消音または低減する機能を備えつつ、限られたスペースを有効に利用できることが望まれている。
本発明は、上記した課題を解決するためになされたものであり、その目的は、狭い組み付けスペースを有効に利用して、気体の導通に伴って発生する導通音を効果的に消音または低減することができる気体導通管を提供することにある。
本発明の特徴は、気体を導入する導入管と、同導入した気体を導出する導出管とを備えた気体導通管において、前記導入管と前記導出管とを互いに連結して同導入管から同導出管に向けて流れる気体の導通に伴って発生する導通音を低減する消音器であって、前記導入管および前記導出管と連通する中空部分を有し、前記導入管が接続される導入側接続面または前記導出管が接続される導出側接続面に平行な断面における前記中空部分を含む断面積を表す平行断面積に対して、前記平行な断面に垂直な断面における前記中空部分を含む断面積を表す垂直断面積のうちの最大の垂直断面積が小さい扁平形状の消音器を備えたことにある。
これによれば、中空部分を有して扁平形状に形成された消音器が気体(例えば、空気など)を導入する導入管と気体を導出する導出管とを連結することができる。そして、導入管から導出管に向けて導通する気体が扁平形状の消音器を通過することにより導通音を効果的に低減することができる。ここで、扁平形状の消音器とは、導入管が接続される導入側接続面または導出管が接続される導出側接続面に平行な断面における中空部分を含む断面積すなわち平行断面積に対して、この平行な断面に垂直な断面における中空部分を含む断面積すなわち垂直断面積のうちの最大の垂直断面積が小さい形状、言い換えれば、厚みの薄い形状を有する消音器をいう。
このように、厚みの薄い消音器を採用することにより、導通した気体が導入管から導出管に向けて通過する際には、発生した導通音は、消音器内に形成された厚みの薄い中空部分内に伝播する。このとき、伝播した導通音に起因する気体の振動は、広い断面積を有する導入側接続面および導出側接続面に優先的に伝達される。これにより、導通音に起因する気体の振動と消音器を形成する各壁面とが互いに共鳴し、気体の導通に伴う導通音を効果的に低減することができる。また、消音器を厚みの薄い扁平形状とすることにより、狭いスペースに消音器を配置することができるとともに、導入管、導出管および消音器からなる気体導通管の全長を短くすることができて導入管および導出管の配置形状(すなわち曲げ形状など)の自由度を良好に確保することができる。したがって、組み付けスペースが狭い場合であっても、このスペースを有効に利用することができる。
また、この場合、前記消音器の最大の垂直断面積に対する前記消音器の平行断面積の比が、例えば、2〜30であるとよい。このように、消音器の最大の垂直断面積に対して平行断面積の比が、例えば、2〜30となるように消音器を扁平形状に成形することにより、導入側接続面および導出側接続面をより適切に共鳴させることができる断面積を設定することができる。これにより、導通音に起因する気体の振動と共鳴する消音器の共鳴周波数を適宜変更することができる。その結果、所望の周波数を有する導通音を選択的に低減することができる。
また、この場合、前記導入管の前記中空部分に連通する接続側開口と、前記導出管の前記中空部分に連通する接続側開口とを互いに対置させるとよい。これによれば、導入管から導入した気体を、中空部分を介して、導出管に対してスムーズに流すことができて、例えば、導通に伴う圧力損失を大幅に低減することができる。
また、この場合、前記導入管の前記中空部分に面する接続側端面と前記導入側接続面が前記中空部分を形成する側の面とが略面一であり、前記導出管の前記中空部分に面する接続側端面と前記導出側接続面が前記中空部分を形成する側の面とが略面一であるとよい。これによれば、導入管の接続側端面と導出管の接続側端面との対面方向の間隔を中空部分の厚み寸法と略一致させることができる。これにより、気体の導通音を効率よく消音器の中空部分内に伝播させることができ、その結果、導通音を良好に低減することができる。
さらに、この場合、前記導入管、前記消音器および前記導出管を一体的に成形するとよい。これにより、気体導通管が、例えば、樹脂材料から形成される場合には、ブロー成形法などにより、容易に一体的に成形することができる。このため、気体導通管を構成する部品点数を低減することができて、良好な組み付け性を確保することができるとともに、成形コストを低減することができる。
また、本発明の他の特徴は、上述した気体導通管の前記導入管が外気を前記消音器に向けて導通し、前記導出管が前記消音器を通過した外気を車両のエンジンに向けて導出するようにして、気体導通管を車両の吸気系に適用することにもある。これにより、車両のエンジンルームのように、十分な組み付けスペースの確保が難しい環境であっても、狭いスペースを有効に利用して十分な消音または低減効果を有する消音器を極めて容易に組み付けることができる。
そして、気体導通管を車両の吸気系に適用する場合には、前記消音器の垂直断面積に対する前記消音器の平行断面積との比が、例えば、20〜30であるとよい。これによれば、車両のエンジンが外気を吸入する際に発生する導通音すなわち吸気音に関し、車両に乗車した乗員が不快な音として認識する100Hz近傍の音(所謂、こもり音)を効果的に低減することができる。
また、この場合、前記消音器が、車両のエンジンルーム内に設置された他の部品の一部または全部を形成するとよい。この場合、具体的には、前記消音器が、例えば、車両に搭載されたバッテリを支持するバッテリトレーの一部または全部を形成するとよく、また、前記消音器が、例えば、前記車両のエンジンを覆うエンジンカバーの一部または全部を形成するとよい。これらによれば、従来、別部品としてエンジンルーム内に組み付けられる部品(例えば、バッテリトレーやエンジンカバーなど)を扁平略板形状に成形した消音器を用いて形成することができる。これにより、エンジンルーム内に組み付ける部品点数を低減することができるとともに、消音器を配置するために別途スペースを確保する必要がない。したがって、十分な組み付けスペースが確保しにくい環境であっても、極めて容易に車両の吸気系を構築することができて狭いスペースを有効に利用することができる。
以下、本発明に係る実施形態を図面を用いて説明する。図1は、本発明の実施形態に係る気体導通管10を概略的に示したものである。気体導通管10は、図1に示すように、気体を外部から導入するための導入管11と、導入した気体を導出するための導出管12と、導入管11および導出管12を連結するとともに導入した気体の導通に伴って発生する導通音を消音または低減する消音器13とを備えている。そして、気体導通管10を構成する導入管11、導出管12および消音器13は、所定の樹脂材料(例えば、ポリプロピレンなど)を用いて、例えば、ブロー成形方法などによって一体的に形成されている。なお、導入管11、導出管12および消音器13の形成材料に関しては、同一材料に限定されるものではない。また、形成材料は、樹脂材料に限定されるものでもなく、他の材料、例えば、金属製の薄板などから形成可能であることはいうまでもない。
導入管11および導出管12は、図1および図2に示すように、所定の内径および所定の肉厚を有する略円筒状に形成されていて、消音器13を介して、導入管11側から導出管12方向に気体を導通するようになっている。また、導入管11の消音器13に対する接続側開口と導出管12の消音器13に対する接続側開口とは、図2に示すように、互いに対置させた状態とし、この状態で消音器13によって連結されている。
消音器13は、図1および図2に示すように、導入管11が接続される導入側接続面13aと導出管12が接続される導出側接続面13bとを有しており、導入側接続面13aと導出側接続面13bとの面間隔すなわち厚みが薄い扁平形状に成形されている。そして、消音器13は、図2および図3に示すように、気体の導通に伴って発生する導通音を消音または低減するために、内部にて導入管11および導出管12と連通する中空部分が所定の板厚(例えば、5mm程度)を有する各壁面によって形成されている。
ここで、消音器13の扁平形状について説明する。消音器13は、上述したように、気体の導通に伴って発生する導通音を消音または低減する機能を有する。この機能は、導入管11または導出管12内で発生した導通音を消音器13の中空部分(以下、この中空部分を減衰空間ともいう)に伝播させ、伝播した導通音、言い換えれば、気体の振動を減衰させることにより実現される。
より具体的には、消音器13に形成された減衰空間内に気体の振動が伝播すると、この伝播した気体の振動は減衰空間を形成する各壁面、特に、導入側接続面13aおよび導出側接続面13bに対して優先的に伝達される。そして、気体の振動が伝達された各壁面においては、その固有振動数に基づいて、特定の振動周波数を有する気体の振動と共鳴し、この各壁面の共鳴により気体の振動を減衰させることができる。なお、以下の説明において、壁面が共鳴するときの振動数を共鳴振動数という。
このような導通音を消音または低減するための機能を確保しつつ厚みの薄い扁平形状の消音器13の形状を決定するにあたり、本願発明者等は、種々の実験を行い、扁平形状を決定した。このことを具体的に説明する。
まず、消音器13の扁平形状を決定するために、本願発明者等は、扁平形状を次のように定義した。すなわち、消音器13の扁平形状は、導入側接続面13aまたは導出側接続面13bに平行な断面における断面積、すなわち、図3に示す中空部分を含む断面積(以下、この断面積を平行断面積という)に対して、この平行な断面に垂直な断面における断面積、すなわち、図2に示す中空部分を含む断面積(以下、この断面積を垂直断面積という)のうちの最大の垂直断面積が小さい形状をいう。ここで、最大の垂直断面積については、例えば、図2において、略正方形に形成された導入側接続面(または導出側接続面)における対角線を含む断面積が最大の垂直断面積となる。
この定義によれば、平行断面積に対して最大の垂直断面積が大きいとき、すなわち、最大の垂直断面積に対する平行断面積の比(以下、この比を単に断面積比という)が「1」よりも小さくなるほど、消音器13の形状が分厚い形状すなわち導入管11と導出管12の配置方向にて長辺を有する直方体形状となる。したがって、導入管11と導出管12の配置方向における厚みが薄い扁平形状は、断面積比が少なくとも「1」よりも大きい場合に限られる。
そして、本願発明者等は、図1に示すような、消音器13の断面積比が「1」よりも大きくなる種々の評価用サンプルを作製し、断面積比と共鳴周波数との間の関係を実験により確認した。ここで、断面積比と共鳴周波数との間の関係を確認するにあたり、本願発明者等は、図4に概略的に示す実験装置を用いた。具体的に説明すると、各評価サンプルの予め設定された所定の長さに成形された導出管12の開口端部に対して、周波数を連続的に変更して基準音(ホワイトノイズ)を発生するスピーカを組み付ける。一方、予め設定された所定の長さに成形された導入管11の開口端部の近傍に、導出管12から消音器13を通過した後に放射される放射音を集音する集音マイクを配置する。
そして、本願発明者等は、この実験装置を用いて、導出管12に設けたスピーカから周波数を連続的に変更した基準音(ホワイトノイズ)を発生させるとともに消音器13を介して導入管11の開口端部から放射音を集音マイクによって集音し、基準音(ホワイトノイズ)の音圧レベルに対する集音した音の音圧レベルの比(以下、この比を単に音圧レベル比という)を測定した。なお、この測定においては、比較対象として、消音器13を設けない比較サンプルすなわち導入管11と導出管12を直接的に連結した比較サンプルについても放射音の音圧レベル比を測定した。
図5は、上述した測定結果の一例であり、スピーカから発せられる基準音(ホワイトノイズ)の周波数変化に対する音圧レベル比の変化を概略的に示している。なお、図5において、消音器13を設けた評価サンプルの音圧レベル比の変化を実線で示し、消音器13を設けない比較サンプルの音圧レベル比の変化を破線で示す。そして、図5からも明らかなように、基準音(ホワイトノイズ)の周波数変化に対して、破線で示す比較サンプルにおける音圧レベル比が大きいすなわち基準音(ホワイトノイズ)が低減されていないのに対して、実線で示す評価サンプルにおける音圧レベル比は小さくなるすなわち基準音(ホワイトノイズ)が低減されていることが理解できる。
また、評価サンプルにおいて、基準音(ホワイトノイズ)の周波数を連続的に変更していくと、ある基準音(ホワイトノイズ)の周波数に対して音圧レベル比が極小となる周波数が存在することが理解できる。ところで、音圧レベル比が極小となる周波数においては、基準音(ホワイトノイズ)がより大きく低減される、言い換えれば、基準音(ホワイトノイズ)の発生に伴う空気の振動がより大きく減衰されている。このことは、スピーカから発せられた基準音(ホワイトノイズ)が消音器13の減衰空間内に伝播し、減衰空間を形成する壁面(特に、導入側接続面13aおよび導出側接続面13b)が共鳴することにより、基準音(ホワイトノイズ)の発生に伴う空気の振動が大きく減衰されていることを意味する。すなわち、音圧レベル比が極小となる基準音(ホワイトノイズ)の周波数は、減衰空間を形成する壁面の共鳴周波数であることを意味する。
このことに基づき、各評価サンプルについて、共鳴周波数と断面積比との関係を表すと図6に示すようになる。図6によれば、共鳴周波数が低周波数側になるほど断面積比が大きな値となり、共鳴周波数が高周波数側になるほど断面積比が小さな値となる。すなわち、消音器13は、その厚みが薄いほど共鳴周波数が低周波側に移動して低周波音を効果的に消音または低減し、厚みが厚いほど共鳴周波数が高周波側に移動して高周波音を効果的に消音または低減する消音特性を有するようになる。
このような消音特性に基づき、一般的に、人間が知覚し得る気体の導通に伴う導通音を低減するために、気体導通管10を形成する消音器13の扁平形状として、その断面積比が2〜30の範囲となる扁平形状を採用する。すなわち、断面積比を2〜30の範囲内で設定することにより、気体が気体導通管10を導通する際に発生する導通音の有する周波数のうち、特に、人間が導通音として知覚しやすい約70Hz〜450Hzの周波数範囲を選択的に消音または低減することができる。
このように、気体導通に伴う導通音を効果的に低減するとともに、扁平形状の消音器13を備えた気体導通管10は、組み付けスペースの確保が難しい車両のエンジンルーム内に組み付けられて、例えば、車両の吸気管を構築することができる。以下、気体導通管10を車両に適用した場合を説明する。
図7は、気体導通管10がエンジンルーム20内にてエンジン30に組み付けられて、車両の吸気管Kを構成した状態を概略的に示している。吸気管Kは、気体導通管10が形成された吸気ダクト14、エアクリーナ15およびエアクリーナホース16を備えて構成されている。なお、この場合、エアクリーナホース16に気体導通管10を形成して実施することも可能である。
吸気ダクト14は、エンジン30によって吸入される外気(空気)を導通するものであり、その略中間部分に気体導通管10が一体的に形成されている。このため、吸気ダクト14に形成される気体導通管10においては、導入管11が空気を消音器13に向けて導通し、導出管12が消音器13を通過した空気をエンジン30に向けて導出、より具体的には、エアクリーナ15およびエアクリーナホース16を介してエンジン30に向けて導出する。なお、吸気ダクト14の吸入口14aは、車両前部に向けて配置されており、吸入空気の流動抵抗を少なくするために、吸気ダクト14(導入管11および導出管12)の一般部分の外形寸法よりも拡管されて形成されている。
エアクリーナ15は、吸気ダクト14、より詳しくは、気体導通管10の導出管12に接続されている。そして、エアクリーナ15は、内部にエアクリーナエレメント15aを内包していて、吸気ダクト14によって導入された空気を濾過する。なお、エアクリーナ15の配置に関しては、気体導通管10の消音器13よりも上流側、すなわち、吸気ダクト14に形成された気体導通管10の導入管11側に設けることも可能である。
エアクリーナホース16は、エアクリーナ15とエンジン30との間に設けられている。そして、エアクリーナホース16は、エアクリーナ15のエアクリーナエレメント15aによって濾過された空気を、スロットルボデー31を介してエンジン30に供給する。
次に、気体導通管10を用いて構成した吸気管Kの作動について説明する。車両の図示しないイグニッションスイッチがオン状態とされると、エンジン30は、スロットルボデー31の開度に応じて、吸気管Kを介して空気を吸入し、作動を開始する。このとき、エンジン30は、各作動工程(吸入、圧縮、爆発、排出)を順次繰り返すため、吸気管K内の全体に空気の振動すなわち脈動が発生する。したがって、発生する脈動の振動周波数は、エンジン30の回転数に応じて変化する。このように発生した脈動が吸気ダクト14に達する際には、消音器13によって脈動が減衰されるため、吸気ダクト14から放射される空気の導通音(所謂、吸気騒音)の音圧レベルが低減される。
すなわち、消音器13に達した脈動は、消音器13の内部に形成された中空部分内に伝播し、上述したように、消音器13の各壁面と共鳴することにより減衰する。このため、エンジン30の回転数に応じて変化する振動周波数を有する脈動を効果的に減衰させるために、消音器13の断面積比を適宜設定する。これにより、車両の走行時に吸気管K内において発生する導通音すなわち吸気騒音の音圧レベルを効果的に低減することができる。
より具体的に説明すると、一般的に、車両の乗員は、エンジンルームから侵入する吸気騒音のうち、100Hz近傍の振動周波数を有する吸気騒音を不快な音(すなわちこもり音)として認識する。このため、この振動周波数を有するこもり音を低減するために、図6に示したように、断面積比が20〜30の範囲となるようにする。これにより、上述したように、消音器13の各壁が空気の振動周波数と共鳴して、こもり音の放射を効果的に低減することができる。
ところで、吸気管Kを構成する気体導通管10の消音器13は、例えば、図7および図8に示すように、車両に搭載されたバッテリ40を支持するためのバッテリトレー41の一部を形成するようになっている。すなわち、吸気管Kを構成する消音器13は、板状の平面部が車両の水平方向と一致するように、言い換えれば、導入管11と導出管12とが車両の上下方向と一致するように組み付けられる。これにより、従来、バッテリ40を車両に組み付ける際に必要なバッテリトレーのために確保された組み付けスペースに対して、消音器13を用いて形成したバッテリトレー41を配置することができる。
したがって、十分な組み付けスペースを確保することの難しい車両のエンジンルーム内であっても、扁平略板形状の消音器13を配置するために別途組み付けスペースを確保する必要がなく、狭いスペースを極めて有効に利用することができる。なお、この実施形態においては、消音器13がバッテリトレー41の一部を形成するように実施したが、断面積比が20〜30の範囲を確保した状態であれば、バッテリトレー41の全体を消音器13が形成するようにしてもよい。
以上の説明からも理解できるように、上記実施形態によれば、厚みの薄い消音器13を用いて気体導通管10を形成することができる。そして、消音器13内に形成される中空部分を含む断面積比を2〜30の範囲内となるように設定することにより、気体導通に伴う導通音を効果的に消音または低減することができる。また、消音器13を厚みの薄い扁平形状とすることにより、狭い組み付けスペースであっても容易に組み付けることができる。
このため、気体導通管10を車両の吸気管Kに適用することにより、組み付けスペースの確保の難しいエンジンルーム内であっても容易に組み付けることができる。すなわち、従来の吸気管においては、吸気騒音を低減するために略直方体形状のレゾネータを設ける必要があるのに比して、本実施形態においては、厚みの薄い扁平形状の消音器13を用いることができる。これにより、エンジンルーム内の狭い組み付けスペースを有効に利用して、吸気管Kを組み付けることができる。
また、消音器13を厚みの薄い扁平形状とすることにより、従来の吸気管に比して、例えば、消音器13とエアクリーナ15との間の配置間隔を広く確保することができる。これにより、作業スペースを十分に確保した状態で、作業者が消音器13やエアクリーナ15を組み付けることができる。したがって、作業性を大幅に向上させることもできる。
また、車両に気体導通管10を適用する場合には、断面積比を20〜30に設定することにより、車両における100Hz近傍の吸気騒音を効果的に消音または低減することができる。したがって、車両のエンジンルームのような狭いスペースへの容易な組み付け性を確保できるとともに、良好な消音特性を確保することができる。
さらに、導入管11の消音器13への接続側開口と、導出管12の接続側開口とを対置させて吸気管Kを構成することができる。これにより、吸気ダクト14からエアクリーナ15およびエアクリーナホース16に向けて空気が導通する際における流通抵抗(圧力損失)を大幅に低減することができる。したがって、空気をエンジン30に効率よく供給するという、吸気管Kに本来的に要求される機能を十分に発揮することができる。
本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変更により実施することが可能である。
例えば、上記実施形態においては、導入管11、導出管12および消音器13を一体的に成形して気体導通管10を形成するように実施した。しかし、導入管11、導出管12および消音器13をそれぞれ別個に成形しておき、これらを一体的に組み付けて実施することも可能である。
そして、この場合においては、導入管11の接続側端面および導出管12の接続側端面が消音器13の中空部分内に突出しないように、言い換えれば、導入側接続面13aおよび導出側接続面13bの内表面から突出しないように組み付けるとよい。これにより、導入管11の接続側端面と導出管12の接続側端面との対面方向の間隔を中空部分の厚み寸法と略一致させることができる。したがって、気体の導通音を効率よく消音器13の中空部分内に伝播させることができ、その結果、導通音を良好に低減することができる。
また、上記実施形態においては、気体導通管10を車両の吸気管Kに適用して実施した。しかし、例えば、車両の空調ダクトに適用して実施することも可能である。また、例えば、建物の排気ダクトや換気ダクトに気体導通管10を適用して実施することも可能である。この場合においても、気体導通管10の消音器13が扁平形状に成形されているため、例えば、壁などに埋め込んで排気ダクトや換気ダクトを形成することができる。したがって、美観を損なうことなく気体の導通に伴う導通音を消音または低減することができて、好適である。
また、上記実施形態においては、車両の吸気管に適用した気体導通管10の消音器13がバッテリトレー41の一部または全部を形成するように実施した。しかし、図9に概略的に示すように、エンジンルーム内で比較的容易に組み付けスペースが確保できるエンジンカバー50の一部または全部を形成するように実施することも可能である。この場合においても、上記実施形態と同様に、狭いスペースを有効に利用するとともに、気体の導通に伴って発生する導通音を消音または低減することができる。
また、上記実施形態においては、気体導通管10を形成する導入管11および導出管12の各軸線が、消音器13の導入側接続面13aまたは導出側接続面13bに対して、直交するように実施した。この場合、例えば、車両搭載上の制約から導入側接続面13aまたは導出側接続面13bに対して、各軸線が所定の角度を有するように導入管11および導出管12を接続して実施することも可能である。この場合においては、エンジンルーム内に配置される他の機器との干渉を容易に解消することができるため、より有効に狭いスペースを利用することができる。
また、上記実施形態においては、気体導通管10を形成する消音器13が厚みの薄い方形状を有するものとして実施した。しかし、導入管11が接続される導入側接続面または導出管12が接続される導出側接続面が、例えば、円形状であったり、気体導通方向に対して湾曲した面として実施することも可能である。この場合においても、消音器13が中空部分を有するとともに垂直断面積と平行断面積との比が2〜30の範囲で確保される限り、上記実施形態と同様の効果が期待できる。
10…気体導通管、11…導入管、12…導出管、13…消音器、13a…導入側接続面、13b…導出側接続面、14…吸気ダクト、15…エアクリーナ、16…エアクリーナホース、20…エンジンルーム、30…エンジン、31…スロットルボデー、40…バッテリ、41…バッテリトレー、50…エンジンカバー