JP2008297617A - Cu−Be系銅合金板材およびその製造法 - Google Patents

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Abstract

【課題】高強度と、優れた曲げ加工性、耐応力緩和性とを同時に具備し、かつ熱変形およびスプリングバックについても改善したCu−Be系銅合金板材を提供する。
【解決手段】質量%で、Be:0.1〜2.2%を含有し、好ましくはCo:3.0%以下およびNi:2.5%以下の1種または2種を含有し、Co、Niの少なくとも1種は0.1%以上の含有量が確保され、必要に応じてFe、Ti、Zr、Sn、Zn、Mg、Si、B、Cr、Mn、V、Al、Pの1種以上を含み、残部Cuおよび不可避的不純物からなる組成を有し、下記(1)式を満たし、好ましくはさらに下記(2)式を満たす結晶配向を有し、平均結晶粒径が10〜60μmであるCu−Be系銅合金板材。
I{420}/I0{420}>1.0 ……(1)
I{220}/I0{220}≦3.0 ……(2)
【選択図】図1

Description

本発明は、コネクター、リードフレーム、リレー、スイッチなどの電気・電子部品に適したCu−Be系銅合金板材であって、特に高強度および高導電性を維持しながら、優れた曲げ加工性と耐応力緩和性を呈する銅合金板材、およびその製造法に関する。
電気・電子部品を構成するコネクター、リードフレーム、リレー、スイッチなどの通電部品に使用される材料には、通電によるジュール熱の発生を抑制するために良好な「導電性」が要求されるとともに、電気・電子機器の組立時や作動時に付与される応力に耐え得る高い「強度」が要求される。また、電気・電子部品は一般に曲げ加工により成形されることから優れた「曲げ加工性」が要求される。さらに、電気・電子部品間の接触信頼性を確保するために、接触圧力が時間とともに低下する現象(応力緩和)に対する耐久性、すなわち「耐応力緩和性」に優れることも要求される。
特に近年、電気・電子部品は高集積化、小型化および軽量化が進む傾向にあり、それに伴って素材である銅および銅合金には薄肉化の要求が高まっている。そのため、素材に要求される「強度」のレベルは一層厳しいものとなっている。具体的には引張強さ800MPa以上、好ましくは900MPa以上、さらに好ましくは1000MPa以上の強度レベルが望まれる。
また、電気・電子部品の小型化、形状の複雑化に対応するには曲げ加工品の形状・寸法精度を向上させることが強く求められる。「曲げ加工性」に対する要求は曲げ部に割れが生じないだけではなく、曲げ加工品の形状・寸法精度を確保できることも重要である。曲げ加工において多かれ少なかれ現れる面倒な問題としてスプリングバックが挙げられる。スプリングバックは、材料を加工後に金型から取り出したときに弾性的な変形の回復が起こり、金型の中で加工されていたときの形状とは一致しなくなる現象である。
素材に要求される強度レベルが一層厳しくなるに伴い、スプリングバックの問題は顕在化しやすくなる。そのために最近では、素材の曲げ加工を施す部位にノッチを付ける加工(ノッチング)を施し、その後、そのノッチに沿って曲げ加工を行う加工法(以下「ノッチング後の曲げ加工法」という)を適用することが多くなっている。しかし、この加工法は、ノッチングによってノッチ部近傍が加工硬化することから、その後の曲げ加工において割れを生じやすい。したがって、「ノッチング後の曲げ加工法」は材料にとって非常に厳しい曲げ加工であると言える。
さらに、電気・電子部品が過酷な環境で使用される用途の増加に伴い「耐応力緩和性」に対する要求も厳しくなっている。例えば、自動車用コネクターのように高温に曝される環境下で使用される場合は「耐応力緩和性」が特に重要となる。応力緩和とは、電気・電子部品を構成する素材のばね部の接触圧力が、常温では一定の状態に維持されても、比較的高温(例えば100〜200℃)の環境下では時間とともに低下するという、一種のクリープ現象である。すなわち、金属材料に応力が付与されている状態において、マトリックスを構成する原子の自己拡散や固溶原子の拡散によって転位が移動して、塑性変形が生じることにより、付与されている応力が緩和される現象である。
しかしながら、「強度」と「曲げ加工性」、あるいは「曲げ加工性」と「耐応力緩和性」の間にはトレードオフの関係がある。従来、このような通電部品には、用途に応じて「強度」、「曲げ加工性」あるいは「耐応力緩和性」の良好な材料が適宜選択されて使用されている。
強度と導電性のバランスに優れた銅合金としてCu−Be系合金(いわゆるベリリウム銅)が屈指されている。この系の銅合金では比較的高い導電率(20〜55%IACS)を維持しながら、銅合金中最高の強度を備えている。しかし、Cu−Be系合金は「強度」と「曲げ加工性」の両立が極めて難しい合金系であることが一般に知られている。
したがって、Cu−Be系合金の板材から部品を製造する際には、まず熱間圧延、冷間圧延などの工程を経て時効処理を施していない板材(以下「未時効処理材」という)を作り、その比較的軟質な状態の板材を曲げ・プレス成形などにより部品形状に加工し、その後、時効処理を施して硬化させる手順が一般的に採用される。しかし、曲げ・プレス成形後に時効処理を行う手法は、油の付着による変色が生じやすく、また専用熱処理炉が必要になる場合が多いことなどから、生産性向上とコスト低減には不利である。特に、Cu−Be系合金は熱変形しやすい合金系であることから、時効処理中に曲げ加工品の形状・寸法精度が変化しやすく、強度レベルが高くても電気・電子部品として使用できなくなる場合がある。
そのため、Cu−Be系銅合金の板材としては、曲げ・プレス成形後に時効処理を必要としない部品用途を中心として、亜時効処理材(いわゆる、ミルハードン材)の市場ニーズが近年増えている。このミルハードン材は、最大硬度には届かないレベルの比較的軽度な時効処理を施した板材であり、これを用いると、最高強度レベルまでは要求されない多くの用途において部品加工後の時効処理を省略できるメリットがある。しかしながら、前記の時効処理は比較的軽度であるものの、成形性の低下が生じていることは否めない。このため、ミルハードン材は一般的に曲げ・プレス成形を施す部品用途にはあまり適しておらず、特に、引張強さが900MPa以上のものでは、平板またはそれに近い形状の部品用途にしか使えないのが現状である。
また、「曲げ加工性」を改善するためには一般的に結晶粒を微細化する手法が有効であり、Cu−Be系合金でも同様である。そのためCu−Be系合金の溶体化処理は、すべての析出物(または晶出物)が固溶する高温域ではなく、再結晶粒の成長をピンニングさせるための一部の析出物(または晶出物)が残留するような比較低温域で行われることが多い。しかしその場合、結晶粒の微細化は実現できても、Beなどの固溶量が少なくなるので時効処理後に最高強度レベルを実現することは困難となる。また、上記の手法による「曲げ加工性」の改善効果は必ずしも満足できるものではない。
さらに、結晶粒径が小さいほど単位体積当たりに存在する結晶粒界の面積が大きくなる。このため、結晶粒微細化はクリープ現象の一種である応力緩和を助長する要因となってしまう。比較的高温環境で使用される用途では、原子の粒界に沿う拡散速度が粒内より著しく速いので、結晶粒微細化による「耐応力緩和性」の低下は重大な問題となる。
国際公開第95/18873号パンフレット(再表95/18873号公報) 特開平9−87780号公報 特開平9−263859号公報 特開2000−160312号公報
前述のように、Cu−Be系合金板材の出荷形態としては、一般に「未時効処理材(ノンミルハードン材と呼ばれることもある)」と「ミルハードン材」がある。
「未時効処理材」は、まだ時効処理を受けていない段階の材料であり、主として溶体化処理後の最も柔らかい状態のもの(一般にO材と呼ばれる)、および溶体化処理後に仕上げ冷間圧延を受けた状態のもの(圧延率により1/4H材、1/2H材とH材などと呼ばれる)が挙げられる。この材料を用いると曲げ加工による部品成形が可能であり、その後に適切な条件で時効処理を施すことにより最高の強度レベルを実現することができる。しかしながら、Cu−Be系合金は、時効処理過程中にBeおよびその化合物の析出に伴って体積が減少する傾向があるので、曲げ加工品の形状が変化して部品の寸法精度が低下しやすい。つまり、「熱変形」が生じやすいという弱点がある。
一方、「ミルハードン材」は、前述のように最大硬度には届かないレベルの比較的軽度の時効処理を施した「亜時効処理材」である。部品成形後に時効処理を省略できるが、成形性はあまり良好ではなく、特に曲げ加工を施した場合には「スプリングバック」により形状が変化しやすく、寸法精度の点で問題が生じやすい。
未時効処理材からプレス成形した部品において、その後に行う時効処理中での「熱変形」を抑制するには、治具に挟んで固定するか、複雑な形状なら銅粉に埋めて圧力をかける方法が有効であるが、このような方法は大量生産に適さない。一方、ミルハードン材から部品を成形加工する際の「スプリングバック」を軽減するためには、一般に素材の品種・質別に応じて、金型の形状を微調整する手法が有効である。しかし、そのような金型の設計には試行錯誤を伴い、また、素材の種類ごとに適正な金型を準備する必要が生じるため、この手法は大幅なコスト増大を招く。
前述の「ノッチング後の曲げ加工法」を採用すると、上記の「熱変形」や「スプリングバック」を顕著に抑制することができる。すなわち、曲げ加工後の部品を時効処理したときの熱変形はノッチ部に吸収されやすく、また曲げ加工時には材料変形がノッチ部近傍に集中するのでスプリングバックは格段に改善される。しかし、上述のように、この加工法ではノッチングによってノッチ部近傍が加工硬化することから、その後の曲げ加工において割れを生じやすい。Cu−Be系合金板材では、ミルハードン材だけでなく、仕上げ冷間圧延を施した未時効処理材(1/4H材、1/2H材、H材)についても「ノッチング後の曲げ加工法」の採用は困難である。
さらに、上述のように結晶粒微細化は曲げ加工性の向上にはある程度有効である反面、クリープ現象の一種である応力緩和の克服にはマイナス要因となる。このようなことから、「曲げ加工性」だけをとってみても、その高度な改善は難しい状況下で、さらに「耐応力緩和性」を改善することは、Cu−Be系合金にとって極めて困難である。
本発明はこのような現状において、「高強度」を維持しながら、「ノッチング後の曲げ加工法」において要求されるような厳しい「曲げ加工性」と、車載用コネクター等の過酷な使用環境での信頼性を担う「耐応力緩和性」とを同時に改善し、かつ「熱変形」および「スプリングバック」についても改善できるCu−Be系銅合金板材を提供することを目的とする。
発明者らは詳細な検討の結果、圧延板の板面に対して垂直な方向をNDと表すとき、NDに変形しやすく、かつ、板面内で互いに直交する2つの方向にも変形しやすいような方位関係を持つ結晶方位が存在することを見出した。そして、このような特有の方位関係にある結晶粒を主体とした集合組織を得ることのできる合金組成範囲と製造条件を特定するに至った。本発明はこのような知見に基づいて完成したものである。
すなわち本発明では、質量%で、Be:0.1〜2.2%を含有し、好ましくはCo:3.0%以下およびNi:2.5%以下の1種または2種を含有し、必要に応じてFe:0.5%以下を含有し、残部Cuおよび不可避的不純物からなる組成を有し、下記(1)式を満たし、好ましくはさらに下記(2)式を満たす結晶配向を有する銅合金板材が提供される。Feを含有する場合は、Co、Ni、Feの合計含有量を3.5%以下とする。平均結晶粒径は10〜60μmに調整されている。
I{420}/I0{420}>1.0 ……(1)
I{220}/I0{220}≦3.0 ……(2)
ここで、I{420}は当該銅合金板材の板面における{420}結晶面のX線回折強度、I0{420}は純銅標準粉末の{420}結晶面のX線回折強度である。同様に、I{220}は当該銅合金板材の板面における{220}結晶面のX線回折強度、I0{220}は純銅標準粉末の{220}結晶面のX線回折強度である。I{420}とI0{420}は同一測定条件で測定され、I{220}とI0{220}も同一測定条件で測定される。平均結晶粒径は、板面(圧延面)を研磨したのちエッチングし、その面を顕微鏡観察して、JIS H0501の切断法にて求めることができる。
上記組成において、さらに、Ti:1.0%以下、Zr:1.0%以下、Sn:1.2%以下、Zn:2.0%以下、Mg:1.0%以下、Si:1.0%以下、B:0.05%以下の1種以上を含有するものや、Cr、Mn、V、Al、Pの1種以上を合計3%以下の範囲で含有するものが提供される。
このような銅合金板材のうち、時効処理を施していない状態で仕上げた板材(未時効処理材)は、例えば、JIS H3110に準拠した90°W曲げ試験において割れが発生しない最小曲げ半径Rと板厚tとの比R/tの値がLD(圧延方向)、TD(圧延方向と板厚方向に対し直角方向)とも1.0以下であり、時効処理に供することよりLDの引張強さを1000MPa以上とすることができる性質を有するものである。本明細書では、このJIS H3110に準拠した90°W曲げ試験で評価される曲げ加工性を「通常の曲げ加工性」と呼び、後述の「ノッチング後の曲げ加工性」とは区別している。
また、最大硬度には届かない範囲で時効処理されている板材として、LDの引張強さが800MPa以上、上記「通常の曲げ加工性」についてR/tの値がLD、TDとも1.0以下であり、そのR/tの値を得たときの曲げ試験片における曲げ加工部(3箇所のうち中央部)の実際の曲げ変形角度をθ(°)とするとき、スプリングバック量を示すθ−90°の値がLD、TDとも5°以下となる曲げ加工性を有する銅合金板材が提供される。このような板材としては前述のミルハードン材が挙げられる。「最大硬度には届かない範囲で時効処理されている」とは、更なる時効処理に供したときに析出が進行して硬度上昇が生じる余地がある状態を意味する。なお、既にある程度の時効析出が進行しているので、時効析出物が存在する組織状態を呈することは言うまでもない。
上記の銅合金板材の製造法として、400℃以上での熱間圧延、圧延率80%以上の冷間圧延、700〜850℃での溶体化処理、圧延率0〜50%の仕上げ冷間圧延、ミルハードン材ではさらに250〜550℃の時効処理を、順次施す工程で銅合金板材を製造するに際し、熱間圧延工程において、700℃以上の温度域で最初の圧延パスを実施して好ましくは700℃以上の温度域での圧延率を60%以上とし、かつ700℃未満〜400℃の温度域で圧延率40%以上の圧延を行う銅合金板材の製造法が提供される。溶体化処理工程においては、溶体化処理後の平均結晶粒径が10〜60μmとなるように、700〜850℃域の保持時間および到達温度を設定して熱処理を実施することが好ましい。
上記仕上げ冷間圧延の「圧延率0%」は、当該圧延を行わない場合を意味する。すなわち、冷間圧延を省略することができる。ある温度域での圧延率ε(%)は、当該温度域で行う連続する圧延パスのうち、最初の圧延パスに供する前の板厚をt0(mm)、最後の圧延パス終了後の板厚をt1(mm)とするとき、下記(3)式によって定まる。
ε=(t0−t1)/t0×100 ……(3)
ミルハードン材を得るための前記時効処理工程においては、当該時効処理後のLDの引張強さが800MPa以上となり、かつ最大硬度に届かない範囲で時効処理温度および時間を設定して熱処理を実施することが好ましい。その際、温度は最大硬度を達成できる温度±20℃とし、時間を最大硬度に達するより短く調整することがより好ましい。合金組成によって最大強度が得られる時効温度は若干変動するが、予備実験により組成に応じて最大強度が得られる時効温度を把握することができる。時効処理後の強度を制御するには、例えば最大強度が得られる時効温度にて、時効時間を調整する手法が採用できる。最大強度に達するよりも短時間で時効を終了させることにより所望の強度レベルが得られる。
本発明によれば、コネクター、リードフレーム、リレー、スイッチなどの電気・電子部品に必要な基本特性を具備するCu−Be系銅合金の板材において、引張強さ800MPa以上、あるいは更に1000MPa以上の高強度を有し、かつ優れた成形性(特に曲げ加工性)と耐応力緩和性を同時に有するものが提供された。このような高強度レベルを維持しながら曲げ加工性と耐応力緩和性を安定して顕著に向上させることは、従来のCu−Be系銅合金製造技術では困難であった。それに加え、部品加工後に行われる時効処理での「熱変形」が顕著に軽減され、またミルハードン材では加工時の「スプリングバック」が顕著に軽減された。このため、Cu−Be系銅合金板材からの加工部品において、寸法精度を向上させることが容易となった。本発明は、今後ますます進展が予想される電気・電子部品の小型化、薄肉化のニーズに対応し得るものである。
本発明では、主として銅合金板材の組織状態を、ある特異な結晶配向をもつ集合組織にコントロールすることによって、「強度」、「曲げ加工性」、「耐応力緩和性」の同時改善および「熱変形」と「スプリングバック」の軽減を可能にしたものである。以下、本発明を特定するための事項について説明する。
《集合組織》
Cu−Be系銅合金の板面(圧延面)からのX線回折パターンは、一般に{111}、{200}、{220}、{311}の4つの結晶面の回折ピークで構成され、他の結晶面からのX線回折強度はこれらの結晶面からのものに比べ非常に小さい。{420}面の回折強度についても、通常の製造工程で得られたCu−Be系銅合金の板材では無視される程度に弱くなる。ところが、発明者らの詳細な検討によれば、後述する製造条件に従うと{420}を主方位成分とする集合組織を持つCu−Be系銅合金板材が得られることがわかった。そして発明者らは、この集合組織が強く発達しているほど、曲げ加工性の改善に有利となることを見出した。その曲げ加工性改善のメカニズムについて、現時点では以下のように考えている。
結晶のある方向に外力が加えられたときの塑性変形(すべり)の生じやすさを示す指標としてシュミット因子がある。結晶に加えられる外力の方向と、すべり面の法線とのなす角度をφ、結晶に加えられる外力の方向と、すべり方向とのなす角度をλとするとき、シュミット因子はcosφ・cosλで表され、その値は0.5以下の範囲をとる。シュミット因子が大きいほど(すなわち0.5に近いほど)すべり方向へのせん断応力が大きいことを意味する。したがって、ある結晶にある方向から外力を付与したとき、シュミット因子が大きいほど(すなわち0.5に近いほど)、その結晶は変形しやすいことになる。Cu−Be系銅合金の結晶構造は面心立方(fcc)である。面心立方晶のすべり系は、すべり面{111}、すべり方向<110>であり、実際の結晶においてもシュミット因子が大きいほど変形しやすく加工硬化も小さくなることが知られている。
図1に、面心立方晶のシュミット因子の分布を表した標準逆極点図を示す。<120>方向のシュミット因子は0.490であり、0.5に近い。すなわち、<120>方向に外力が付与された場合、面心立方晶は非常に変形しやすい。その他の方向のシュミット因子は、<100>方向が0.408、<113>方向が0.445、<110>方向が0.408、<112>方向が0.408、<111>方向が0.272である。
{420}を主方位成分とする集合組織は、{420}面すなわち{210}面が板面(圧延面)とほぼ平行である結晶の存在割合が多い集合組織を意味する。主方位面が{210}面である結晶では、板面に垂直な方向(ND)が<120>方向であり、そのシュミット因子は0.5に近いから、NDへの変形は非常に容易であり加工硬化も小さい。一方、Cu−Be系合金の一般的な圧延集合組織は{220}を主方位成分とするものであり、この場合、{220}面すなわち{110}面が板面(圧延面)とほぼ平行である結晶の存在割合が多い。主方位面が{110}面である結晶は、NDが<110>方向であり、そのシュミット因子は0.4程度であるから、主方位面が{210}面である結晶と比較してNDへの変形に伴う加工硬化が大きくなる。また、Cu−Be系合金の一般的な再結晶集合組織は{311}を主方位成分とするものである。主方位面が{311}面である結晶は、NDが<113>方向であり、そのシュミット因子は0.45程度であるから、主方位面が{210}面である結晶と比較するとやはりNDへの変形に伴う加工硬化が大きくなる。
「ノッチング後の曲げ加工法」においては、板面に垂直な方向(ND)への変形に際しての加工硬化の程度が極めて重要である。ノッチングはまさにNDへの変形であり、ノッチングによって板厚が減少した部分の加工硬化の程度が、その後、ノッチに沿って曲げた場合の曲げ加工性を大きく支配するからである。(1)式を満たすような{420}を主方位成分とする集合組織の場合、従来のCu−Be系合金の圧延集合組織あるいは再結晶集合組織と比べて、ノッチングによる加工硬化が小さくなり、これが「ノッチング後の曲げ加工法」における曲げ加工性を顕著に向上させる要因となっていると考えられる。
さらに、(1)式を満たすような{420}を主方位成分とする集合組織の場合、主方位面が{210}面である結晶において、板面内つまり{210}面内に、別の<120>方向と<100>方向があり、これらは互いに直交する。実際には、圧延方向(LD)が<100>方向、圧延方向に対して直角方向(TD)が<120>方向であることが確かめられている。具体的な結晶方向で例示すると、例えば主方位面が(120)面である結晶では、LDが[001]方向、TDが[−2,1,0]方向である。このような結晶のシュミット因子は、LDが0.408、TDが0.490である。これに対し、Cu−Be系合金の一般的な圧延集合組織では主方位面が{110}面、LDが<112>方向、TDが<111>方向であり、板面内のシュミット因子は、LDが0.408、TDが0.272となる。また、Cu−Be系合金の一般的な再結晶集合組織では主方位面が{113}面、LDが<112>方向、TDが<110>方向であり、板面内のシュミット因子は、LDが0.408、TDが0.408となる。このように、LDおよびTDのシュミット因子を見ると、{420}を主方位成分とする集合組織の場合、従来のCu−Be系合金の圧延集合組織あるいは再結晶集合組織と比べて、板面内における変形が容易であると言える。この点も、ノッチング後の曲げ加工における割れを防止する上で有利に作用していると考えられる。
金属板の曲げ加工においては、各結晶粒の結晶方位は異なるので、一様に変形するのではなく、曲げ加工時に変形しやすい結晶粒と変形しにくい結晶粒が存在する。曲げ加工の程度が増大するに伴って、変形しやすい結晶粒がますます優先的に変形し、板の曲げ部表面には結晶粒間での変形不均一に起因してミクロ的な凹凸が生じ、これがしわに発展し、場合によっては割れ(破壊)に至る。上述のように(1)式を満たすような集合組織を持つ金属板は、従来のものと比べ、各結晶粒がNDに変形しやすく、かつ板面内にも変形しやすくなっている。このことが、結晶粒を特段に微細化しなくても、ノッチング後の曲げ加工性および通常の曲げ加工性の顕著な向上をもたらしているものと推察される。
発明者らの検討によれば、このような結晶配向は下記(1)式によって特定できる。
I{420}/I0{420}>1.0 ……(1)
ここで、I{420}は当該銅合金板材の板面における{420}結晶面のX線回折強度、I0{420}は純銅標準粉末の{420}結晶面のX線回折強度である。面心立方晶のX線回折パターンでは{420}面の反射は生じるが{210}面の反射は生じないので、{210}面の結晶配向は{420}面の反射によって評価される。下記(1)’式を満たすものが一層好ましい。
I{420}/I0{420}>1.5 ……(1)’
{420}を主方位成分とする集合組織は後述の溶体化処理による再結晶集合組織として形成される。ただし、銅合金板材を高強度化するためには、溶体化処理後に冷間圧延することが極めて有効である。この冷間圧延率が増加するに伴い{220}を主方位成分とする圧延集合組織が発達していく。{220}方位密度の増大に伴い{420}方位密度は減少するが、前記(1)式好ましくは(1)’式が維持されるように圧延率を調整すればよい。ただし、あまり{220}を主方位成分とする集合組織が発達しすぎると加工性低下を招く場合があるので、下記(2)式を満たすことが好ましい。また、「強度」と「曲げ加工性」を高いレベルでバランス良く両立させる意味では、下記(2)’式を満たすことが一層好ましい。
I{220}/I0{220}≦3.0 ……(2)
0.5≦I{220}/I0{220}≦3.0 ……(2)’
ここで、I{220}は当該銅合金板材の板面における{220}結晶面のX線回折強度、I0{220}は純銅標準粉末の{220}結晶面のX線回折強度である。
後述の実施例で示すように、このような特異な結晶配向を有する板材においては、当該合金に特有な「高強度」が維持される。また、このような結晶配向によって「熱変形」や「スプリングバック」も改善される。さらに、曲げ加工性の改善のために結晶粒を極度に微細化する必要がなくなり、Beの添加等による「耐応力緩和性」の向上作用を十分に発揮させることが可能になった。
《平均結晶粒径》
前述のように、平均結晶粒径が小さいほど曲げ加工性の向上に有利であるが、小さすぎると耐応力緩和性が悪くなりやすい。種々検討の結果、最終的に平均結晶粒径が10μm以上の値、好ましくは10μmを超える値であれば、車載用コネクターの用途でも満足できるレベルの耐応力緩和性を確保しやすく、好適である。15μm以上であることがより好ましい。ただし、あまり平均結晶粒径が大きくなりすぎると曲げ部表面の肌荒を起こりやすく、曲げ加工性の低下を招く場合があるので、60μm以下の範囲とすることが望ましく、40μm以下、あるいは30μm以下の範囲に調整することがより好ましい。最終的な平均結晶粒径は、溶体化処理後の段階における結晶粒径によってほぼ決まってくる。したがって、平均結晶粒径のコントロールは後述の溶体化処理条件によって行うことができる。
《合金組成》
本発明ではCu−Beの2元系基本成分に、必要に応じてCo、Ni等、あるいはその他の合金元素を配合したCu−Be系銅合金を採用する。
Beは、Cuマトリックスにおいて析出強化効果が最も高い元素で、強度上昇および耐応力緩和性向上に寄与する。Be含有量が0.1質量%未満では、上記効果を有効に引き出すことが難しい。一方、Be含有量が過剰である場合は脆いβ相(BeCu3)が生成しやすく、熱間加工や冷間加工が困難になる。このためBe含有量は2.2質量%以下に制限される。このためBe含有量は0.1〜2.2質量%とするが、0.2〜2.0質量%の範囲に調整することが一層好ましい。
Coは、Beの粒界反応型析出(過時効による特性低下の主因)を抑制する作用があり、またCoBe系金属間化合物を形成して強度の向上に寄与する元素である。これらの作用を十分に発揮させるには0.1質量%以上のCo含有量を確保することが望ましい。ただし、Coは高価な元素であることから、過剰添加はコスト増大を招きやすい。このため、Coを含有させる場合は3.0質量%以下の範囲で行う。Co含有量は0.1〜3.0質量%とすることが好ましく、0.2〜2.6質量%の範囲に調整することが一層好ましい。
Niは、Coと同様にBeの粒界反応型析出の抑制作用と、NiBe系金属間化合物の形成による強度向上作用を有する。上記作用を十分に発揮させるには0.1質量%以上のNi含有量を確保することが望ましい。ただし、Niの過剰添加は導電率低下を招きやすい。このため、Niを含有させる場合は2.5質量%以下の範囲で行う。Ni含有量は0.1〜2.5質量%とすることが好ましく、0.2〜2.0質量%の範囲に調整することが一層好ましい。なお、CoおよびNiの1種または2種を含有させることがより好ましい。その場合、Co、Niの少なくとも一方は0.1質量%以上の含有量を確保することがより効果的である。
Feは、Co、Niと同様にBeの粒界反応型析出の抑制作用と、鋳造組織の微細化作用を有するので、必要に応じて添加される。その作用を十分に発揮させるには0.02質量%以上のFe含有量を確保することがより効果的であるが、それより少量であっても弊害はない。ただし、過剰のFe含有は鋳造組織の微細化には有効であっても、Feを含む化合物が粗大化しやすく、逆に熱間加工性の低下を招くので、Feを添加する場合はFe含有量を0.5質量%以下の範囲とし、かつ、Co+Ni+Feの合計含有量を3.5質量%以下、好ましくは2.7質量%以下とする。
Snは、固溶強化作用と耐応力緩和性の向上作用を有する。これらの作用を十分に発揮させるには、0.1質量%以上のSn含有量が好ましい。ただし、Sn含有量が1.2質量%を超えると導電率が著しく低下してしまう。このため、Snを含有させる場合は1.2質量%以下の含有量とする必要がある。Sn含有量は0.1〜1.2質量%とすることがより好ましく、0.2〜0.7質量%の範囲に調整することが一層好ましい。
その他の元素として、必要に応じてTi:1.0質量%以下、Zr:1.0質量%以下、Zn:2.0質量%以下、Mg:1.0質量%以下、Si:1.0質量%以下、B:0.05質量%以下の1種以上を含有させることができる。また、Cr、Mn、V、Al、Pの1種以上を合計3質量%以下好ましくは1.0質量%以下の範囲で含有させることができる。
Ti、Zr、Mg、Cr、Mn、V、Alは合金強度をさらに高め、かつ応力緩和を小さくする作用を有する。また、Ti、Zr、Cr、Mn、Vは不可避的不純物として存在するS、Pbなどと高融点化合物を形成しやすく、熱間加工性の改善に寄与しうる。
溶解・鋳造工程において、Znは溶湯の流動性向上、P、MgとSiは脱酸の効果、B、Zr、Tiは鋳造組織の微細化効果を有する。ただし、多量に含有させると、熱間または冷間加工性に悪い影響を与え、かつコスト的にも不利となる。
《特性》
Cu−Be系銅合金を用いて電気・電子部品の更なる小型化、薄肉化に対応するには、最終的に引張強さ800MPa以上、好ましくは900MPa以上、さらに好ましくは1000MPa以上の強度レベルが得られることが望まれる。未時効処理材として出荷されるCu−Be系合金板材は加工後に時効処理を施すことによって高強度化される。この場合、時効処理後にLDの引張強さが1000MPa以上となる性質を備えていることが望まれる。上記化学組成を満たす合金に後述の製造条件を適用することによってこの強度特性を具備させることが可能である。一方、ミルハードン材では通常、加工後の時効処理が省略されるので、板材として出荷される段階で、LDの引張強さが800MPa以上の強度レベルを有していることが望ましい。
「通常の曲げ加工性」(前述)については、未時効処理材、ミルハードン材とも、曲げ加工性はLD、TDいずれにおいても90°W曲げ試験における最小曲げ半径Rと板厚tの比R/tが1.0以下であることが好ましい。また、曲げ加工品の形状・寸法精度を向上させるうえで、後述する「ノッチング後の曲げ加工性」についてはR/tが0であること、つまり、後述のLDのノッチング曲げ加工性評価方法において割れが認められない特性を有していることが望ましい。なお、「LDの曲げ加工性」とはLDが長手方向となるように切り出した曲げ加工試験片で評価される曲げ加工性(ノッチング後の曲げ加工性においても同じ)であり、その試験における曲げ軸はTDとなる。同様に「TDの曲げ加工性」とはTDが長手方向となるように切り出した曲げ加工試験片で評価される曲げ加工性であり、その試験における曲げ軸はLDとなる。
耐応力緩和性は、車載用コネクターなどの用途ではTDの値が特に重要であるため、長手方向がTDである試験片を用いた応力緩和率で応力緩和特性を評価することが望ましい。後述の応力緩和特性の評価方法において、150℃で1000時間保持した場合の応力緩和率が5%以下であることが好ましく、4%以下であることがより好ましく、3%以下であることが一層好ましい。
時効処理時の「熱変形」については、部品に成形した後に時効処理が実施される未時効処理材において特に重要となる。「通常の曲げ加工性」の評価するための90°W曲げ試験を実施してR/tが1.0以下となった試験片に対して、最大硬度レベルが得られる時効処理を施したときに、時効処理による曲げ加工部の角度変化がLD、TDとも2°以内であれば、その材料はCu−Be系合金として非常に良好な耐「熱変形」特性を有していると評価される。また、後述の「ノッチング後の曲げ加工性」の評価試験を施したLDの試験片に対して、最大強度レベルが得られる時効処理条件で時効処理を施した場合には、その時効処理による曲げ加工部の角度変化は1°以内であることが望ましい。
曲げ加工時の「スプリングバック」については、既に硬化処理(比較的軽度の時効処理)を受けているミルハードン材において特に重要となる。「通常の曲げ加工性」の評価試験を行った後のW曲げ試験片のうち、R/tが1.0以下となった試験片(具体的には割れが発生しない最小曲げ半径Rが得られた試験片)における曲げ加工部(3箇所のうち中央部)の実際の曲げ変形角度をθ(°)とするとき、スプリングバック量を示すθ−90°の値がLD、TDとも5°以下であれば、その材料はCu−Be系合金として非常に良好な耐「スプリングバック」特性を有していると評価され、4°以下であることがより好ましい。また、後述の「ノッチング曲げ加工性」の評価試験を施したLDの試験片については、上記と同様のθ−90°の値が2°以内であることが望ましい。
《製造法》
以上のような本発明の銅合金板材は、例えば以下のような製造工程により作ることができる。
「溶解・鋳造→熱間圧延→冷間圧延→溶体化処理→仕上冷間圧延→(時効処理)」
ただし、後述のようにいくつかの工程での製造条件を工夫することが重要である。なお、上記工程中には記載していないが、熱間圧延後には必要に応じて面削が行われ、各熱処理後には必要に応じて酸洗、研磨、あるいはさらに脱脂が行われる。以下、各工程について説明する。
〔溶解・鋳造〕
一般的な銅合金の溶製方法に従うことができる。連続鋳造、半連続鋳造等により鋳片を製造すればよい。雰囲気は大気雰囲気でよいが、不活性ガスでシ−ルした方または真空溶解炉を使う場合が酸化防止の面から好ましい。
〔熱間圧延〕
通常、Cu−Be系銅合金の熱間圧延は、圧延途中に析出物を生成させないようにするため、700℃以上、あるいは750℃以上の高温域で圧延し、圧延終了後に急冷する手法で行われる。しかしながら、このような常識的な熱間圧延条件では本発明の特異な集合組織を有する銅合金板材を製造することは困難である。すなわち、発明者らの調査によると、このような熱間圧延条件を採用した場合は、後工程の条件を広範囲に変化させても{420}を主方位方向に持つ銅合金板材を再現性良く製造できる条件を見つけることはできなかった。そこで発明者らは更なる詳細な検討を行った。その結果、700℃以上の温度域で最初の圧延パスを実施し、かつ700℃未満〜400℃の温度域で圧延率40%以上の圧延を行うという熱間圧延条件を見出すに至った。
鋳片を熱間圧延する際、再結晶が発生しやすい700℃以上の高温域で最初の圧延パスを実施することによって、鋳造組織が破壊され、成分と組織の均一化を図ることができる。圧延温度の上限については、合金成分の偏析箇所など、融点が低下している箇所で割れが生じない温度域とする必要がある。具体的には、固相線温度より30℃以上低い温度域で最初の圧延パスを実施することが望ましい。本発明規定範囲内の合金であれば、通常、900℃以下の範囲で上限を設定することができる。固相線温度は成分組成によって多少変動するので、一律に上限温度を設定するならば、830℃程度を上限として管理しても構わない。Be含有量が低くなれば固相線温度は上昇するので、上限温度はさらに高温域まで許容される。熱間圧延工程中における完全再結晶の発生を確実に行うためには、700℃以上の温度域で圧延率60%以上の圧延を行うことが極めて有効である。これによって組織の均一化が一層促進される。ただし、1パスで60%を得るためには大きな圧延荷重が必要であるため、多パスに分けてトータル60%以上の圧延率を確保しても良い。また、本発明では圧延歪が生じやすい700℃未満〜400℃の温度域で40%以上の圧延率を確保することが重要である。これにより、一部の析出物を生成させ、後工程の「冷間圧延+溶体化処理」の組み合わせによって、{420}を主方位成分とする再結晶集合組織が形成されやすくなる。この際も、700℃未満〜400℃の温度域で数パスの圧延を行うことができる。熱間圧延の最終パス温度は600℃以下とすることがより効果的である。熱間圧延でのトータル圧延率は概ね80〜95%とすればよい。
ここで、それぞれの温度域での圧延率ε(%)は(3)式によって算出される。
ε=(t0−t1)/t0×100 ……(3)
例えば最初の圧延パスに供する鋳片の板厚が120mmであり、700℃以上の温度域で圧延を実施して(途中、炉に戻して再加熱しても構わない)、700℃以上の温度で実施された最後の圧延パス終了時に板厚が30mmになっており、引き続いて圧延を継続して、熱間圧延の最終パスを700℃未満〜400℃の範囲で行い、最終的に板厚10mmの熱間圧延材を得たとする。この場合、700℃以上の温度域で行われた圧延の圧延率は(3)式により、(120−30)/120×100=75(%)である。また、700℃未満〜400℃の温度域での圧延率は同じく(3)式により、(30−10)/30×100=66.7(%)である。
〔冷間圧延〕
上記熱延板を圧延するに際し、溶体化処理前に行う冷間圧延では圧延率を80%以上とすることが重要であり、90%以上とすることがより好ましい。このような高い圧延率で加工された材料に対し、次工程で溶体化処理を施すことにより、{420}を主方位成分とする再結晶集合組織の形成が可能になる。特に再結晶集合組織は再結晶前の冷間圧延率に大きく依存する。具体的には、{420}を主方位成分とする結晶配向は、冷間圧延率が60%以下ではほとんど生成せず、約60〜80%の領域では冷間圧延率の増加に伴って漸増し、冷間圧延率が約80%を超えると急激な増加に転じる。{420}方位が十分に優勢な結晶配向を得るには80%以上の冷間圧延率を確保する必要があり、更に90%以上が望ましい。なお、冷間圧延率の上限はミルパワー等により必然的に制約を受けるので、特に規定する必要はないが、エッジ割れなどを防止する観点から概ね98%以下で良好な結果が得られやすい。
なお、本発明では、熱間圧延後、溶体化処理前に、中間焼鈍を挟んで1回ないし複数回の冷間圧延を実施する工程は採用できるが、溶体化処理直前の冷間圧延率が80%以上の圧延率を確保する必要がある。溶体化処理直前の冷間圧延率が80%未満になると、溶体化処理によって形成される{420}を主方位成分とする再結晶集合組織が著しく弱化してしまう。
〔溶体化処理〕
従来の溶体化処理は「溶質元素のマトリックス中への再固溶」と「再結晶化」を主目的とするが、本発明では更に「{420}を主方位成分とする再結晶集合組織の形成」をも重要な目的とする。この溶体化処理は、700〜850℃の炉温で行うことが望ましい。温度が低すぎると再結晶が不完全で溶質元素の固溶も不十分となる。温度が高すぎると結晶粒が粗大化してしまう。これらいずれの場合も、最終的に曲げ加工性の優れた高強度材を得ることが困難となる。
また、この溶体化処理は、再結晶粒の平均粒径(双晶境界を結晶粒界とみなさない)が10〜60μmとなるように700〜850℃域の保持時間および到達温度を設定して熱処理を実施することが望ましく、15〜40μmとなるように調整することが一層好ましい。再結晶粒径が微細になりすぎると、{420}を主方位成分とする再結晶集合組織が弱くなる。また、耐応力緩和性を向上させる上でも不利となる。再結晶粒径が粗大になりすぎると、曲げ加工部の表面肌荒が発生し易い。再結晶粒径は、溶体化処理前の冷間圧延率や化学組成によって変動するが、予め実験によりそれぞれの合金について溶体化処理ヒートパターンと平均結晶粒径との関係を求めておくことにより、700〜850℃域の保持時間および到達温度を設定することができる。具体的には、本発明で規定する化学組成の合金では、700〜850℃の温度で10sec〜10min保持する加熱条件において適正条件を設定できる。
〔仕上冷間圧延〕
続いて50%以下の圧延率で仕上冷間圧延を行うことができる。この段階での冷間圧延はその後の時効処理中の析出を促進する効果があり、これにより必要な特性(導電率、硬さ)を引き出すための時効温度を低下させ、または時効時間を短くすることができる。これにより、時効過程中の熱変形を低減する効果がある。
この仕上冷間圧延によって{220}を主方位成分とする集合組織が発達していくが、50%以下の冷間圧延率の範囲では、まだ十分に{420}面が板面に平行な結晶粒も残存する。この段階の仕上冷間圧延は圧延率50%以下で行う必要があり、0〜35%とすることがより好ましい。圧延率が高すぎると前記(1)式を満たすような理想的な結晶配向が得られにくくなる。圧延率がゼロである場合は、溶体化処理後に仕上げ冷間圧延を行わず、直接時効硬化材の製品として出荷し、または時効処理に供することを意味する。本発明の銅合金板材は、生産性を向上するために、仕上冷間圧延工程を省略しても構わない。
〔時効処理〕
ミルハードン材の場合、続いて時効処理を施し、ある程度の硬化処理を行う。時効処理では、当該合金の導電性と強度の向上に有効な条件の中で、あまり温度を上げすぎないようにする。時効処理温度が高くなりすぎると溶体化処理によって発達させた{420}を優先方位とする結晶配向が弱められ、結果的に十分な曲げ加工性改善効果が得られない場合がある。具体的には材温が250〜550℃となる温度で行うことが望ましく、300〜500℃の範囲が一層好ましい。時効処理時間は概ね10〜300min程度で良好な結果が得られる。この時効処理後のLD方向の引張強さが800MPa以上となる条件を選ぶことが望まれるが、加工性を考慮すると、LDの引張強さが1030MPa以下となるように調整することがより好ましい。予め実験により所望の強度レベルとなる時効温度・時効時間を把握しておくことができる。また、時効処理中に表面酸化膜を極力抑制する場合には、水素、窒素またはアルゴン雰囲気を使うことができる。
表1、表2に示す銅合金を溶製し、縦型半連続鋳造機を用いて鋳造した。得られた鋳片(厚さ60mm)を固相線より30℃以上低い温度(合金組成により820〜900℃)に加熱したのち抽出して、熱間圧延を開始した。固相線温度は、各組成の合金について予備実験を行うことによって把握してある。熱間圧延に際しては、一部の比較例を除き、700℃以上の温度域での圧延率が60%以上となり、かつ700℃未満の温度域でも圧延が行われるようにパススケジュールを設定した。熱間圧延の最終パス温度は一部の比較例を除き600℃〜400℃の間にある。鋳片からのトータルの熱間圧延率は約90%である。熱間圧延後、表層の酸化層を機械研磨により除去(面削)した。次いで、種々の圧延率で冷間圧延を行った後、溶体化処理に供した。溶体化処理においては、一部の比較例を除いて、溶体化処理後の平均結晶粒径(双晶境界を結晶粒界とみなさない)が10〜40μmとなるように到達温度を合金組成に応じて700〜850℃の範囲内で調整し、700〜850℃の温度域での保持時間を10sec〜10mimの範囲で調整した。続いて、上記溶体化処理後の板材に対して、0〜50%の種々の圧延率で仕上冷間圧延を施した。なお、必要に応じて途中で面削を行い、板厚は0.2mmに揃えた。「未時効処理材」としての供試材にはこの段階の板材を使用した。
Figure 2008297617
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このようにして得られた板厚0.2mm板材について、予備実験として300〜500℃の温度範囲で最大5hまでの時効処理実験を行い、合金組成に応じて最大硬さとなる時効処理条件(その時効温度をTm(℃)、時効時間をtm(min)とする)を把握した。
表1に示した合金については、未時効処理材を出荷する場合を想定して、上記仕上冷間圧延後の供試材から試験片を採取して平均結晶粒径、集合組織、通常の曲げ加工性およびノッチング曲げ加工性を調べた。ただし、導電性、引張強さ、応力緩和特性については、最終的に時効処理が施された後の特性を評価する目的で、上記未時効処理材の板材を時効温度Tm、時効時間tmで時効処理して「時効硬化材」とした後に調べた。また、時効処理時の熱変形について、上記通常の「曲げ加工性」および「ノッチング後の曲げ加工性」の評価を行った試験片に対して時効温度Tm、時効時間tmの時効処理を施すことによって調べた。なお、表1中のNo.29は市販のCu−Be系銅合金C1720−1/2H材(未時効処理材、板厚0.2mm)を入手して供試材としたものである。
表2に示した合金については、ミルハードン材として出荷する場合を想定して、上記未時効処理材の板材に、最大硬度には到達しない程度の時効処理を施したものを供試材とした。その時効処理条件は時効温度Tm、時効時間0.1tm以上tm未満の範囲とした。この供試材(ミルハードン材)の板材から試験片を採取して平均結晶粒径、集合組織、導電性、引張強さ、通常の曲げ加工性、ノッチング曲げ加工性、応力緩和特性を調べた。また、曲げ加工時のスプリングバックについて、上記通常の曲げ加工性およびノッチング曲げ加工性の評価を行った試験片の形状を測定することによって求めた。なお、表2中のNo.62およびNo.63は、それぞれ市販のCu−Be系銅合金C1720−1/2HM(ミルハードン材、板厚0.2mm)およびC1751−HT(ミルハードン材、板厚0.2mm)を入手して供試材としたものである。
組織、特性の調査は以下の方法で行った。
〔平均結晶粒径〕
供試材の板面(圧延面)を研磨したのちエッチングし、その面を光学顕微鏡で観察し、平均結晶粒径をJIS H0501の切断法で測定した。
〔集合組織〕
供試材の板面(圧延面)を#1500耐水ペーパーで研磨仕上げとした試料を準備し、X線回折装置(XRD)を用いて、Mo−Kα線、管電圧20kV、管電流2mAの条件で、前記研磨仕上げ面について{420}面および{220}面の反射回折面強度を測定した。一方、上記と同じX線回折装置を用いて、上記と同じ測定条件で純銅標準粉末の{420}面および{220}面のX線回折強度を測定した。これらの測定値を用いて前記(1)式中に示されるX線回折強度比I{420}/I0{420}と、(2)式中に示されるX線回折強度比I{220}/I0{220}を求めた。
〔導電率〕
JIS H0505に従って各供試材の導電率を測定した。
〔引張強さ〕
各供試材からLDの引張試験片(JIS 5号)を採取し、n=3でJIS Z2241に準拠した引張試験行い、n=3の平均値によって引張強さを求めた。
〔応力緩和特性〕
各供試材から長手方向がTDの曲げ試験片(幅10mm)を採取し、試験片の長手方向における中央部の表面応力が0.2%耐力の80%の大きさとなるようにアーチ曲げした状態で固定した。上記表面応力は次式により定まる。
表面応力(MPa)=6Etδ/L0 2
ただし、
E:弾性係数(MPa)
t:試料の厚さ(mm)
δ:試料のたわみ高さ(mm)
この状態の試験片を大気中150℃の温度で1000時間保持した後の曲げ癖から次式を用いて応力緩和率を算出した。
応力緩和率(%)=(L1−L2)/(L1−L0)×100
ただし、
0:治具の長さ、すなわち試験中に固定されている試料端間の水平距離(mm)
1:試験開始時の試料長さ(mm)
2:試験後の試料端間の水平距離(mm)
この応力緩和率が5%以下のものは、車載用コネクターとして高い耐久性を有すると評価され、合格と判定した。
〔通常の曲げ加工性〕
供試材の板材から長手方向がLDの曲げ試験片およびTDの曲げ試験片(いずれも幅10mm)を採取し、JIS H3110に準拠した90°W曲げ試験を行った。試験後の試験片について曲げ加工部の表面および断面を光学顕微鏡にて100倍の倍率で観察することにより、割れが発生しない最小曲げ半径Rを求め、これを供試材の板厚tで除することによりLD、TDそれぞれのR/t値を求めた。各供試材のLD、TDともn=3で実施し、n=3のうち最も悪い結果となった試験片の成績を採用してR/t値を表示した。
〔ノッチング後の曲げ加工性〕
供試材の板材から長手方向がLDの短冊形試料(幅10mm)を採取し、図2に示す断面形状のノッチ形成治具(凸部先端のフラット面の幅0.1mm、両側面角度45°)を用いて、図3に示すように20kNの荷重を付与することにより試料幅いっぱいにノッチを形成した。ノッチの方向(すなわち溝に対して平行な方向)は、試料の長手方向に対して直角方向である。このようにして準備したノッチ付き曲げ試験片のノッチ深さを実測したところ、図4に模式的に示すノッチ深さδは板厚tの1/4〜1/6程度であった。
このノッチ付き曲げ試験片について、JIS H3110に準拠した90°W曲げ試験により曲げ試験を実施した。このとき、下型の中央突起部先端のRを0mmとした治具を用い、前記ノッチ付き曲げ試験片を、ノッチ形成面が下向きになり、前記下型の中央突起部先端がノッチ部分に合致するようにセットして90°W曲げ試験を行った。
試験後の試験片について曲げ加工部の表面および断面を光学顕微鏡にて100倍の倍率で観察することにより、割れの有無を判断し、割れが認められないものを「〇」、割れが認められたものを「×」と表示した。なお、曲げ加工部で破断したものは「破」と表示した。各供試材のn=3で実施し、n=3のうち最も悪い結果となった試験片の成績を採用して「○」、「×」、「破」の評価を行い、これが○評価のものを合格と判定した。
〔時効処理時の熱変形〕
最小曲げ半径で「通常の曲げ加工法」による曲げ加工を行った試験片、および「ノッチング後の曲げ加工法」による曲げ加工を行って割れが認められなかった試験片について、予め曲げ加工部(3箇所のうち中央部)の曲げ軸に垂直な断面を光学顕微鏡付きのデジタルマイクロスコープ(KEYENCE社製のVH−8000型)にて100倍の倍率で観察して、時効処理前の曲げ角度を測定した。その後、その試験片を最大硬さになる時効処理条件(時効温度Tm、時効時間tm)で時効処理し、時効処理後の曲げ角度を上記と同様の方法で測定した。そして、時効処理前・後の曲げ角度の差([時効処理後の曲げ角度]−[時効処理前の曲げ角度])を求めた。この曲げ角度の差を各供試材につきn=3で測定し、その平均値を熱変形量とした。
〔ミルハードン材のスプリングバック〕
最小曲げ半径で「通常の曲げ加工法」による曲げ加工を行った試験片、および「ノッチング後の曲げ加工法」による曲げ加工を行って割れが認められなかった試験片について、曲げ加工部(3箇所のうち中央部)の曲げ軸に垂直な断面を上記と同様の方法で観察して、曲げ角度θを測定した。図5に、90°W曲げ加工を受けた後の試験片について、曲げ加工部(3箇所のうち中央部)近傍の曲げ軸に垂直な断面の形状を模式的に示す。スプリングバックが生じると曲げ角度θは90°より大きくなる(図5では説明のためにθの大きさを現実より誇張して描いてある)。この実際の曲げ角度θが、金型(W曲げ試験治具)の90°に対して、どの程度ずれるかをスプリングバックの指標とした。すなわち、[実際の曲げ角度θ]−90°の値を各供試材につきn=3で測定し、その平均値をスプリングバック量とした。
これらの結果を表3、表4に示す。表3は未時効処理材の板材を対象としたものであり、表3中の時効処理条件は、この未時効処理材が時効処理後にどのような特性になるかを調べるために行った時効処理の条件を付記したものである。表4はミルハードン材の板材を対象としたものであり、表4中の時効処理条件は、当該ミルハードン材の供試材を得るために行った時効処理の条件である。表3、表4中に記載されるLDおよびTDは試験片の長手方向を意味する。
Figure 2008297617
Figure 2008297617
表3からわかるように、本発明例の未時効処理材はいずれも(1)式を満たす結晶配向を有し、R/t値がLD、TDとも1.0以下という優れた曲げ加工性を有する。また実用的に重要なLDのノッチング後の曲げ加工性は、90°W曲げ試験にてR/t=0での厳しい曲げを行ったにもかかわらず、割れが生じなかった。これらの未時効処理材の板材は、時効処理後に導電率が20%IACS以上、引張強さが1000MPa以上となり、さらに車載用コネクター等の用途において重要となるTDの応力緩和率が5%以下となる優れた性質を有している。時効処理における熱変形も良好に抑制されることが確かめられた。
これに対し、比較例No.21〜28は本発明例No.1〜8と同じ組成の合金について、通常の工程で製造したもの(熱間圧延最終パス温度を650℃以上または700℃以上としたものや、溶体化処理前の冷間圧延率を80%以下としたものや、溶体化処理条件が不適正であったものなど)である。これらはいずれも{420}結晶面のX線回折強度が弱いか、あるいは平均結晶粒径が大きいため、曲げ加工性と時効処理後の耐応力緩和性との間にトレードオフの関係が見られた。また、時効処理による熱変形も大きかった。なお、比較例No.29は高強度型Cu−Be系銅合金を代表するC1720−1/2H市販品であるが、ほぼ同様の組成を有する本発明例No.1と比較して{420}結晶面のX線回折強度が弱く、曲げ加工性と耐応力緩和性がともに劣る。
表4からわかるように、本発明例のミルハードン材はいずれも(1)式を満たす結晶配向を有し、導電率が20%IACS以上、引張強さが800MPa以上という高強度を呈するとともに、R/t値がLD、TDとも1.0以下という優れた曲げ加工性を有する。実用的に重要なLD方向のノッチング後の曲げ加工性についても90°W曲げ試験R/t=0での厳しい曲げを行ったにもかかわらず、割れが生じなかった。加工時のスプリングバックも小さく、さらに、車載用コネクター等の用途において重要となるTDの応力緩和率が5%以下という優れた耐応力緩和性を兼ね備えている。
これに対し、比較例No.51〜55は本発明例No.31〜35と同じ組成の合金について、通常の工程で製造したもの(熱間圧延最終パス温度を650℃以上または700℃以上としたものや、溶体化処理前の冷間圧延率を80%以下としたものや、溶体化条件が不適正であったものなど)である。これらはいずれも{420}結晶面のX線回折強度が弱く、強度と曲げ加工性、あるいは曲げ加工性と耐応力緩和性の間にトレードオフの関係が見られた。特に、ノッチング後の曲げ加工が不可能であり、最小曲げ半径を大きくせざるを得ないことからスプリングバックも大きくなった。
比較例No.56、57はBeの含有量が規定範囲外であることにより、良好な特性が得られなかった例である。このうちNo.56はBeの含有量が低すぎたことにより析出物の生成が少なかったので、強度レベルが低い。熱間圧延後の段階で析出物がほとんど生成されなかったので、その後の冷間圧延率を90%以上に高くしても{420}を主方位成分とする結晶配向が弱くなり、強度レベルが低かったにも関わらず、ノッチング後の曲げ加工性が改善されなかった。No.57はBeの含有量が高すぎたので、適正な熱延条件を取れず、熱間圧延途中に割れが発生し、評価できる板材を作れなかった。
比較例No.58〜60は溶体化処理条件が規定範囲外であったことにより、良好な特性が得られなかった例である。このうちNo.58は溶体化処理温度が900℃と高すぎたので結晶粒が粗大化し、良好な曲げ加工性が得られなかった。No.59は逆に溶体化処理温度が650℃と低すぎたので再結晶自体が十分進行せずに混粒組織となり、引張強さ、曲げ加工性、耐応力緩和性の全てが悪い結果となった。No.60は曲げ加工性の向上を図るべく溶体化時の保持温度を調整して平均結晶粒径を3μm程度の微細なものにした例である。この場合、通常の曲げ加工性は改善されたものの、{420}を主方位成分とする結晶配向が弱くなり、ノッチング後の曲げ加工性が改善されなかった。結晶粒が微細になったために耐応力緩和性は悪化してしまった。
比較例No.61は仕上圧延率が高すぎたので{420}を主方位成分とする結晶配向が弱くなり、強度は高いものの曲げ加工性が著しく悪くなった。
比較例No.62および63は、それぞれ高強度型および高導電型のCu−Be系銅合金を代表するC1720−1/2HMおよびC1751−1/2HT(いずれもミルハードン材)の市販品であるが、ほぼ同様の組成を有する本発明例No.31と38と比較して{420}結晶面のX線回折強度が弱く、曲げ加工性と耐応力緩和性がともに劣る。
面心立方晶のシュミット因子の分布を表した標準逆極点図。 ノッチ形成治具の断面形状を示した図。 ノッチングの方法を模式的に示した図。 ノッチ付き曲げ試験片のノッチ形成部付近の断面形状を模式的に示した図。 90°W曲げ加工を受けた後の試験片について、曲げ加工部(3箇所のうち中央部)近傍の曲げ軸に垂直な断面の形状を模式的に示した図。

Claims (13)

  1. 質量%で、Be:0.1〜2.2%、残部Cuおよび不可避的不純物からなる組成を有し、下記(1)式を満たす結晶配向を有し、平均結晶粒径が10〜60μmである銅合金板材。
    I{420}/I0{420}>1.0 ……(1)
    ここで、I{420}は当該銅合金板材の板面における{420}結晶面のX線回折強度、I0{420}は純銅標準粉末の{420}結晶面のX線回折強度である。
  2. さらに、Co:3.0%以下およびNi:2.5%以下の1種または2種を含有する組成を有する請求項1に記載の銅合金板材。
  3. さらに、Fe:0.5%以下を含有し、Co、Ni、Feの合計含有量が3.5%以下である組成を有する請求項1または2に記載の銅合金板材。
  4. さらに、Ti:1.0%以下、Zr:1.0%以下、Sn:1.2%以下、Zn:2.0%以下、Mg:1.0%以下、Si:1.0%以下、B:0.05%以下の1種以上を含有する組成を有する請求項1〜3のいずれかに記載の銅合金板材。
  5. さらに、Cr、Mn、V、Al、Pの1種以上を合計3%以下の範囲で含有する組成を有する請求項1〜4のいずれかに記載の銅合金板材。
  6. さらに下記(2)式を満たす結晶配向を有する請求項1〜5のいずれかに記載の銅合金板材。
    I{220}/I0{220}≦3.0 ……(2)
    ここで、I{220}は当該銅合金板材の板面における{220}結晶面のX線回折強度、I0{220}は純銅標準粉末の{220}結晶面のX線回折強度である。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の銅合金板材であって、JIS H3110に準拠した90°W曲げ試験において割れが発生しない最小曲げ半径Rと板厚tとの比R/tの値がLD(圧延方向)、TD(圧延方向と板厚方向に対し直角方向)とも1.0以下であり、時効処理後にLDの引張強さが1000MPa以上となる性質を備えた、未だ時効処理されていない銅合金板材。
  8. 請求項1〜6のいずれかに記載の銅合金板材であって、LD(圧延方向)の引張強さが800MPa以上、JIS H3110に準拠した90°W曲げ試験において割れが発生しない最小曲げ半径Rと板厚tとの比R/tの値がLD、TD(圧延方向と板厚方向に対し直角方向)とも1.0以下であり、上記R/tの値を得たときの曲げ試験片における曲げ加工部(3箇所のうち中央部)の実際の曲げ変形角度をθ(°)とするとき、スプリングバック量を示すθ−90°の値がLD、TDとも5°以下となる曲げ加工性を備えた、最大硬度には届かない範囲で時効処理されている銅合金板材。
  9. 400℃以上での熱間圧延、圧延率80%以上の冷間圧延、700〜850℃での溶体化処理、圧延率0〜50%の仕上げ冷間圧延を順次施す工程で銅合金板材を製造するに際し、熱間圧延工程において、700℃以上の温度域で最初の圧延パスを実施し、かつ700℃未満〜400℃の温度域で圧延率40%以上の圧延を行う請求項7に記載の銅合金板材の製造法。
  10. 400℃以上での熱間圧延、圧延率80%以上の冷間圧延、700〜850℃での溶体化処理、圧延率0〜50%の仕上げ冷間圧延、250〜550℃の時効処理を順次施す工程で銅合金板材を製造するに際し、熱間圧延工程において、700℃以上の温度域で最初の圧延パスを実施し、かつ700℃未満〜400℃の温度域で圧延率40%以上の圧延を行う請求項8に記載の銅合金板材の製造法。
  11. 時効処理工程において、当該時効処理後のLDの引張強さが800MPa以上となり、かつ最大硬度には届かない範囲で時効処理温度および時間を設定して熱処理を実施する請求項10に記載の銅合金板材の製造法。
  12. 熱間圧延工程において、700℃以上の温度域での圧延率を60%以上とする請求項9〜11のいずれかに記載の銅合金板材の製造法。
  13. 溶体化処理工程において、溶体化処理後の平均結晶粒径が10〜60μmとなるように、700〜850℃域の保持時間および到達温度を設定して熱処理を実施する請求項9〜12のいずれかに記載の銅合金板材の製造法。
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