JP2008240232A - サイクリングパンツ用の保護シートとその製造方法 - Google Patents

Abstract

【課題】サイクリングパンツ用の保護シートと、その製造方法を提供する。
【解決手段】
解剖学的な凹状のシェル形である前半部分（１６、１１６）、好ましくは同様の後半部分（１１８）をも備えるサイクリングパンツ（１２）の股間部（１４）用の保護シート（１０、１１０）であって、保護シートの前半部分と後半部分に設けたＶ字形の切り込みを接合することによって、上述の凹状のシェル形部分を得る。
【選択図】 図５

Description

本発明は、広い意味では、体に密着するスポーツウェアや、サイクリング用のパンツの技術分野に関する。特に本発明は、サイクリングパンツの保護シートと、その製造方法に関する。

本明細書において、「サイクリングパンツ」の用語は、サイクリングで用いられる任意の衣類、例えばショートパンツ、ロングパンツ、オーバーオール、密着型ボディスーツ、その他を含むものである。「保護シート」なる用語は、サイクリングパンツに取付けたり、サイクリングパンツの内部に組み込んで、自転車のサドルと接触する使用者の会陰部を保護するために用いられる、整形された保護シートを指す。

サイクリングパンツの分野において、保護シートは、自転車のサドルに接触し、激しく走行すると痛くなりやすい使用者の会陰部、または坐骨を保護する重要な要素である。

従来、保護シートは、一般的に、振動や疲れや緊張をやわらげる軟質の材料からなる複数の層と、肌に触れる生地の層とからなっている。

従来の保護シートは、サイクリングパンツの股間部に結着される前半部分の陰部保護部と、後半部分の会陰部−坐骨部分保護部とからなっている。上述の前半部分は、上述の保護シートを結着したサイクリングパンツの着用者の陰部を保護するためのものであり、後半部分は、着用者の会陰部と坐骨部分とを保護するためのものである。

現在使用されている保護シートは、いくつかの点において有利ではあるものの、特にデリケートな人体の各部分を、充分に保護することはできす、全般的な快適さを充分に提供していない。これらの欠点は、動きと筋肉の緊張が対称的ではなく、ペダリング運動の位相が、１８０°ずれていることにもよる。

特許文献１には、保護シート付き、または保護シートが差し込めるサイクリングパンツが開示されている。差込式の保護シートには、切り込みがあり、サイクリングパンツに挿入して縫い付けると、保護シートは、着用者の身体を抱え込む３次元形状を呈するようになっている。
ヨーロッパ特許第７７６６１５号

本発明の基礎をなす課題は、上述の欠点を克服しうる、構造的、および機能的な特徴を備える、サイクリングパンツ用の保護シートを提供することである。特に本発明の根底にある課題は、既存のサイクリングパンツを改良して、着用時に、よりよい快適さと、身体のデリケートな部分が保護されるようにすることである。

上述の課題は、本発明によるサイクリングパンツの股間部の保護シートにより解決される。この保護シートは、前半部分の陰部保護部と、後半部分の会陰部−坐骨保護部とからなる１枚の部材であり、その少なくとも前半部分は、凹状のシェル形に形成されている。

本発明のさらなる局面として、前半部分と後半部分の両方とも、凹状のシェル形に形成することもある。

好ましい実施形態においては、前半部分の凹状のシェル形と、後半部分の凹状のシェル形は、保護シートの長手方向の中央部上の切り込みを結合することによって得られている。それらの結合部分の長さは、好ましくは、保護シートの全長の約１／４と約１／３の間である。

本発明の別の局面によると、保護シートの前半部分は、サイクリングパンツの着用者の男性器の、少なくとも一部を覆う形状と大きさを備えている。この保護シートの前半部分は、男性器、特にこう丸を覆って保護するように、解剖学的に成形されるのが好ましい。ある好ましい実施形態では、凹状の前半部分は、保護シートの前半と同じ大きさであり、ペダリングの動きにより張力を受けることはない。

凹状のシェル形となっている後半部分は、サイクリングパンツ全体を、身体により良くフィットして着用しうるようになっており、そのため、サドルにより快適に座れるようになる。

好ましい実施形態においては、保護シートの後方部分に、最低１組の成形パッドが、等しい間隔をもって、かつ互いに鏡像となるように、すなわち、保護シートの長手方向の中間線で左右対称となるように装着されている。

本発明は、サイクリングパンツ用保護シートの製造方法、および予備形成する方法をも目的としており、最低限、次のステップを有している。
−前半部分と後半部分を有する保護シートを形成する。
−保護シートの前半部分の、長手方向の中央部に、ほぼＶ字形の開口を有する切り込みを設けることにより、２つの対向する縁片を形成する。
−上述の切り込みの、対向する縁片の少なくとも一部を接合することにより、前半部分を長手方向に接合し、保護シートの前半部分に、シェル形の凹状部を形成する。

この工程には、さらに、保護シートの後半部分の、長手方向の中央部に、Ｖ字形の開口がある切り込みを設けて、２つの対向する縁片を形成し、この縁片の少なくとも一部を接合することによって、後半部分を長手方向に接合し、かつ保護シートの後半部分にも、シェル形の凹状部を形成する手順を含めてもよい。

Ｖ字形の切り込みは、保護シートの前半部分、または後半部分の各々から、三角形の一片を切除することにより設けるのが好ましい。ある実施形態では、Ｖ字形の切り込みの縁片は、直線状である。別の実施形態では、Ｖ字形の切り込みの縁片は、曲線状であり、内端に向かうにつれて近接し、かつ開口部に向かうにつれて離間している。

本発明の他の局面によると、サイクリングパンツは、上述のようにして準備された、少なくとも前半部分に、好ましくは後半部分にも、凹状部がある保護シートを、（例えば縫合により）結着して作られる。

本発明の保護シートは、前半部分と後半部分が、予備成形されているので有利である。Ｖ字形の切り込みの縁片を接合すると、保護シートの関連する部分は、解剖学的な凹状の形状になり、その形状が保持される。

そのため、サイクリストパンツの形状や、保護シートをサイクリストパンツに結着するのための手段の如何にかかわらず、保護シートの使用者の会陰部に接触する、解剖学的な構造が得られる。

製造上の観点からは、保護シート自体が、あらかじめ解剖学的に望ましい形状になっているので、異なる形状のサイクリングパンツに結着する際に有利である。他の目的用、例えば男性用、女性用、多少とも激しい使用のため等の、複数の別のサイクリングパンツを用意する際にも有利である。

本発明の特徴は、添付図を参照しながら、下記の好ましい実施形態の説明を読めば、明らかになると思う。なお添付図は、単なる例示のためのものであり、本発明を限定するものではない。

図１は、本発明の第1の実施形態であって、前半部分１６と、パッド２０を備える後半部分１８とからなる保護シート１０を示す。

前半部分１６は、前半部分１６にあらかじめ設けてある２枚の縁片２６を接合して接合部２８とすることにより、図示するような凹状部３０を有するものに形成される。

前半部分１６は、男性器、詳しくはこう丸付近を覆うのに適した解剖学的な形状と大きさとなっており、ペダリング運動からくる張力の影響を受けないようになっている。

図２から図４は、保護シート１０の、好ましい製造方法を示す。この製造方法は、基本的に次の手順からなっている。
−保護シート１０を整形して、上述の前半部分１６と後半部分１８を形成する。（図２）
−上述の前半部分１６の中央の長手方向に、ほぼＶ字形の開口を有する切り込み２４を設けて、対向する２つの縁片２６を形成する。
−上述の縁片２６の少なくとも一部を接合して、接合部２８とすることにより、上述の凹状部３０を前半部分１６に形成する。

この製造方法は、さらに、整形されたパッド２０を、例えば縫合、熱溶着、または接着のような公知の手段で、後半部分１８に結着する手順を含んでいる。

切り込み２４、および縁片２６を設ける前、あるいは後に、パッド２０を、縫合または他の方法で、保護シート１０に結着する。パッド２０は、保護シート１０の中心線２２に対して左右対称であるのが好ましい。

図５に示すさらに別の実施形態においては、本発明の保護シート１１０は、いずれも伸縮性の天然または合成材料の生地でできた上層１１１と下層１１２を有し、その中間には、軟質の材料からなる中間層１１３が設けられている。

保護シート１１０は、前半部分１１６と後半部分１１８を有し、それぞれが、サイクリストの前面の陰部と、会陰部−坐骨部分を保護するようになっている。上述の前半部分１１６と後半部分１１８の両方は、凹状のシェル形に成形されている。

図５によって理解しうるように、保護シート１１０は、総体的にシェル形をなし、大まかには２つのくぼみ１３０と１３１を有し、前半部分と後半部分は、保護シートの中心線１２２に沿って、１列に並んでいる。上述のくぼみ１３０と１３１の側壁は、次第に高くなっている。

前半部分１１６と後半部分１１８の凹状のシェル形は、好ましくは、前半部分と後半部分に設けられた切り込みの縁片同士を接合して作られた、中心線上の接合部１２８と１２９により得られている。これについては、後で例をもって明快にする。

前半部分１１６は、好ましくは解剖学的形状であって、男性器、詳しくはこう丸付近を覆うのに適した大きさであり、保護シート１１０の前の、ペダリング運動による緊張を受けない部分に限定されている。

後半部分１１８には、整形された１対のパッド１２０が装着されている。このパッド１２０は、保護シート１１０における、上述の中心線１２２に対して、左右対称となっているのが好ましい。

図６から図８は、保護シート１１０の製造方法の概略を示す。
−保護シート１１０を整形して、上述の前半部分１１６と、後半部分１１８を形成する。（図６）
−上述の前半部分１１６の、長手方向の中央に、ほぼＶ字形の開口を有する第１の切り込み１２４を設けて、対向する２つの縁片１２６を形成する。後半部分１１８の長手方向の中央に、ほぼＶ字形の開口を有する第２の切り込み１２５を設けて、対向する２つの縁片１２７を形成する。
−上述の縁片１２６と１２７の、少なくとも一部を接合すると、前半部分と後半部分の各々に、接合部１２８と１２９が形成され、それによって、保護シート１１０の前半部分と後半部分は凹状となる。

この製造方法は、さらに、整形されたパッド１２０を、例えば縫合、熱溶着、または接着といった一般的な手段で、後半部分１１８に結着する手順を含んでいるのが好ましい。

パッド１２０は、切り込み１２４と１２５、および接合部１２８と１２９の形成の前か後かに関係なく、縫合、または他の方法で、保護シート１１０に結着される。

次に、本発明の好ましい実施形態における、接合部１２８と１２９の詳細と製造工程について述べる。これらの詳細は、図１の保護シート１０の接合部２８に適用しうるものである。

中心線上の切り込み１２４と１２５は、上層１１１と下層１１２、および中間層１１３の切り込み、すなわち、保護シート１１０から、三角形の切片を切除してできたもので、これにより、縁片１２６と１２７が形成される。

ある実施形態においては、縁片１２６と１２７は、直線状である。別の実施形態においては、縁片１２６と１２７は、漸次広がる開口を形成している。

図９は、ある実施形態において、１０〜１５°か、それ以下の小さな角度で交わるタンジェントアーク形の２線である、近接した狭窄部両側縁１４０と、その反対側の、漸次広がり、開口部ではより大きな、例えば６０°の角度のタンジェントアーク形の２線となっている開口部両側縁１４１とからなる切り込み１２４を示す。このことは、切り込み１２５にも適用しうるものである。

接合部１２８と１２９は、各々の切り込みの全体、すなわち、縁片の全長にわたって接合されるのがよい。

切り込み１２４と１２５の長さ、および接合部１２８と１２９の長さは、保護シートの全長の約１／４と約１／３の間であるのがよい。

例えば、保護シート１１０の中心線１２２の長さが、約４０ｃｍの時、前部のＶ字形切り込み１２４は、１０〜１２ｃｍであり、後部のＶ字形切り込み１２５は、同様に１０〜１２ｃｍであるのがよい。当然ながら、これらの値は限定的なものではない。

接合部１２８と１２９は、保護シート１１０の前半部分１１６と後半部分１１８の凹状部の形成に寄与している。材料の一部を切除して、切り込み１２４と１２５を設け、縁片１２６と１２７を接合すると、保護シートの表面は、平面を維持することができず、湾曲して凹状のシェル形となる。接合部１２８と１２９は、例えば縫合、熱溶着、または接着といった一般的な手段で接合される。

図１０と図１１は、保護シート１１０を結着した、身体密着型のスポーツウェア、またはサイクリングパンツ１２の例を示す。保護シート１１０は、上述のサイクリングパンツ１２の股間部１４に配置されている。保護シート１１０は、サイクリングパンツ１２に結着しているか、その一部をもって構成され、乗車中に自転車のサドルに触れる着用者の、会陰部と坐骨部分を保護するようになっている。

同様のサイクリングパンツ１２に、図１の実施形態における保護シート１０を設けることができる。

接合部１２８と１２９は、保護シート１１０がサイクリングパンツ１２に縫合される前に設けなくてはならない。言いかえれば、完成品としての保護シート自体は、前半部分１６、または前半部分１１６、および後半部分１１８の、解剖学的形状の凹状部を備えている。

上述の説明により、本発明によるサイクリングパンツ用の保護シートは、技術的な問題を解決し、かつ比類のない良好な着具合も含む、多くの利点を提供することが分かると思う。

前半部分１６または１１６のシェル形の凹状部により、特に男性サイクリストは、よりよいフィット感を得られる。

シェル形の前半部分は、保護シートの前半だけにあるので、ペダリング運動による張力を受けることがなく、また着用中はほぼ静止しているため、こう丸付近を圧迫せず、非常に快適である。男性サイクリストにとってさらに有利なことは、シェル形の保護シートの前半部分は、男性器を保護し、保持することである。

ペダリング運動中には、保護シートのこう丸付近の圧迫が大きく減少するので、きわめて快適となる。実際問題として、これは、保護シートの前半部分を、後半部分から独立させることにより、すなわち、男性器に触れる部分を、臀部に触れる部分から独立させることにより得られるもので、このようにすることにより、ペダリング中の動きを、最小限にすることができる。

後半部分の、凹状のシェル形によって、身体への密着度とフィット感が、さらに良好となる。

当然ながら、当技術分野の技術者であれば、特定の、または任意の要求を満たすために、上述した実施形態に、多くの改良や変形を施すことが可能である。それらは、添付の特許請求の範囲に定義されている本発明の範囲に含まれる。

本発明のサイクリングパンツ用保護シートの一実施形態の側面図である。 図１に示した本発明の保護シートの製造過程を、上方から見た概略平面図である。 図２の次の製造過程における、図１に示した本発明の保護シートを、上方から見た概略平面図である。 図３の次の製造過程における、図１に示した本発明の保護シートを、上方から見た概略平面図である。 本発明の別の好ましい保護シートの実施形態の斜視図である。 製造過程における、図５に示した保護シートを、上方から見た概略平面図である。 図６の次の製造過程における、図５に示した保護シートを、上方から見た概略平面図である。 図７の次の製造過程における、図５に示した保護シートを、上方から見た概略平面図である。 ある実施形態における、図３に示したシートのＶ字形の切り込みの拡大図である。 図５に示したシートを結着したサイクリングパンツの正面図である。 図１０に示したサイクリングパンツの背面図である。

符号の説明

１０ 保護シート
１２ サイクリングパンツ
１４ 股間部
１６ 前半部分
１８ 後半部分
２０ パッド
２２ 中心線
２４ 切り込み
２６ 縁片
２８ 接合部
３０ 凹状部
１１０ 保護シート
１１１ 上層
１１２ 下層
１１３ 中間層
１１６ 前半部分
１１８ 後半部分
１２０ パッド
１２２ 中心線
１２４ 切り込み
１２５ 切り込み
１２６ 縁片
１２７ 縁片
１２８ 接合部
１２９ 接合部
１３０ くぼみ
１３１ くぼみ
１４０ 狭窄部両側縁
１４１ 開口部両側縁

Claims (13)

1. １枚のシートに、前半部分である陰部保護部（１６、１１６）と、後半部分である会陰部-坐骨保護部（１８、１１８）とを設けてなり、上述の前半部分（１６、１１６）は、凹状のシェル形に形成されていることを特徴とする、サイクリングパンツ（１２）の股間部（１４）用の保護シート（１０、１１０）。
2. 上述の後半部分（１１８）も、凹状のシェル形となっている、請求項１に記載の保護シート。
3. 上述の凹状のシェル形は、保護シートの前半部分（１６、１１６）に設けた長手方向の中央部のＶ字形切り込み（２４、１２４）よりなる接合部（２８、１２８）によって形成されている、請求項１に記載の保護シート。
4. 上述の凹状のシェル形は、保護シートの前半部分（１１６）と後半部分（１１８）にそれぞれ設けられた、長手方向中央部上の切り込み（１２４、１２５）からなる接合部（１２８、１２９）によって形成されている、請求項２に記載の保護シート。
5. 上述の接合部（２８、１２８、１２９）の長さは、保護シート（１０、１１０）の全長の１／４から１／３の間である、請求項３または４に記載の保護シート。
6. 上述の前半部分（１６、１１６）は、男性器を覆い、保護し、保持するのに適した解剖学的形状になっている、請求項１〜５のいずれかに記載の保護シート。
7. 上述の前半部分（１６、１１６）の凹状のシェル形となっている箇所は、保護シートの、ペダリング運動による緊張を受けない部分のみに限定されている、請求項１〜６のいずれかに記載の保護シート。
8. 後半部分（１８、１１８）に、最低１組の、保護シート（１０、１１０）の中心線（２２、１２２）から等しく離間させて配置され、線対称形となっている、整形されたパッド（２０、１２０）を備える、請求項１〜７のいずれかに記載の保護シート。
9. 上記の１〜８のいずれかの請求項に記載の保護シート（１０、１１０）を備えることを特徴とするサイクリングパンツ（１２）。
10. 下記のいずれかの工程を有することを特徴とする、サイクリングパンツ（１２）用の保護シート（１０、１１０）の製造方法。
    −前半部分（１６、１１６）、および後半部分（１８、１１８）を有する保護シート（１０、１１０）を形成する。
    −上述の前半部分（１６、１１６）の長手方向のほぼ中央部に、端部が開口するＶ字形の切り込み（２４、１２４）を設けることにより、対向する２つの縁片（２６、１２６）を形成する。
    −上述の対向する縁片（２６、１２６）の、少なくとも一部を接合して、前部長手方向の接合部（２８、１２８）とし、保護シートの前半部分（１６、１１６）に、シェル形の凹状部（３０）を形成する。
11. 下記のいずれかの工程を有することを特徴とする、請求項１０に記載のサイクリングパンツ（１２）用の保護シート（１１０）の製造方法。
    −保護シート（１１０）の後半部分（１１８）の長手方向のほぼ中央部に、Ｖ字形の開口付き切り込み（１２５）を設けることにより、対向する２つの縁片（１２７）を形成する。
    −上述の対向する縁片（１２７）の少なくとも一部を接合して、後半部分の接合部（１２９）とすることにより、保護シート（１１０）の後半部分（１１８）に、シェル形の凹状部を形成する。
12. 上述のＶ字形切り込み（１２４、１２５）を、保護シートの前半部分、または後半部分の各々から、三角形の切片として切除することによって設け、直線状の縁片（１２６、１２７）を形成することを特徴とする、請求項１０または１１に記載の製造方法。
13. 上述のＶ字形切り込みの縁片は曲線状であって、近接した狭窄部両側縁（１４０）と、漸次広がる開口部両側縁（１４１）を有する、請求項１０または１１に記載の製造方法。

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