ところで、上記の内燃機関の可変動弁機構においては、仲介駆動機構の入力部と出力部とを回転カムと異なる軸において同軸上に構成することで、長く複雑なリンク機構を設けることなく、確実な作動と信頼性とを実現している。しかし、この構成では回転カムに対する該入力部の位相は常に一定であるため、上記可変動弁機構によって開閉される吸排気バルブのリフト量及び作用角の調整は可能であるが、バルブタイミングの調整を任意で行うことは困難である。従って、必要なバルブタイミングを得るために、前記仲介駆動機構でリフト量及び作用角を調整するとともに、別途バルブタイミングを調整可能とするバルブ位相可変機構が必要となり、内燃機関の可変動弁機構のシステムが複雑になる。
そこで本発明は、上記したような問題点に鑑みてなされたものであり、バルブのリフト量及びバルブタイミングを、一つの駆動装置(アクチュエータ)によって調整可能とすることで、内燃機関の可変動弁機構のシステムを簡便なものとすることを目的とする。
本発明は、上記した課題を解決するために以下のような手段を採用した。即ち、回転駆動される回転カムと当接する入力部と、吸排気バルブの開閉を行う出力部とを有する四節リンク機構によって吸排気バルブの開閉を行う内燃機関の可変動弁機構であって、該四節リンク機構の姿勢を制御し、該回転カムと該入力部との相対位置を変更することで、吸排気バルブの開閉特性を制御する手段である。具体的には、回転駆動される回転カムを備え、前記回転カムによって開閉される吸気バルブ又は排気バルブの少なくとも一方のバルブの開閉特性を可変動弁伝達機構により可変とする内燃機関の可変動弁機構であって、前記可変動弁伝達機構は、前記回転カムに当接する入力部を有する入力アームと、前記入力アームに揺動可能に連結される伝達アームと、前記伝達アームと揺動可能に連結されるとともに回転制御軸周りに揺動可能とされ、前記回転カムから伝達される駆動力を前記バルブの開閉を行う出力部へ伝達する揺動アームと、前記回転制御軸を回転中心として回転駆動するとともに、前記入力アームと揺動可能に連結されるコントロールアームと、から構成される四節リンク機構を備え、前記四節リンク機構の姿勢を制御し、前記回転カムと前記入力部との相対位置を変更することで、前記バルブの開閉特性を制御するバルブ開閉制御手段を有することを特徴とする。
上記のように構成される内燃機関の可変動弁機構においては、前記可変動弁伝達機構は、入力アーム、伝達アーム、揺動アーム及びコントロールアームによって構成される四節リンク機構となり、入力アームに設けられた入力部が、回転カムによって駆動され、前記可変動弁伝達機構を介して出力部が駆動されることとなり、以てバルブの開閉が行われる。即ち、コントロールアームを固定した状態において、入力部が回転カムによって駆動されると、伝達アーム、揺動アームを介して、出力部が揺動し、バルブの開閉制御が行われる。更に、この内燃機関の可変動弁機構においては、バルブ開閉制御手段によって、入力部と回転カムとの相対位置を変更することを可能とし、バルブの開閉特性を制御する。即ち、入力部と回転カムとの相対位置を変更することで、回転カムに対する入力部の位相が相対的に変更することとなり、以て該可変動弁機構によって開閉されるバルブのバルブタイミングを調整することが可能となる。
一方で、入力部と回転カムとの相対位置を変更することで、入力アーム、伝達アーム、揺動アーム及びコントロールアームによって構成されるリンク機構の姿勢が変更される。それに伴い、バルブの開閉を行う出力部の変位量も連動して変動し、以てバルブのリフト量も変動することとなる。以上より、入力部と回転カムとの相対位置を変更することによって可変動弁機構における四節リンク機構の姿勢を制御することにより、バルブの開閉特性であるバルブタイミング位相及びバルブのリフト量を同時に制御することが可能となる。また四節リンク機構の姿勢を一つの駆動装置(アクチュエータ)で制御することによって、バルブの開閉特性であるバルブタイミング位相及びバルブのリフト量を一つのアクチュエータで制御することとなる。
尚、バルブタイミング位相及びバルブのリフト量の制御量は、四節リンク機構を構成する入力アーム、伝達アーム、揺動アーム及びコントロールアームの寸法に影響されるため、内燃機関に必要なバルブタイミング及びバルブのリフト量に応じた寸法にてリンク機構を構成するのが望ましい。
また本発明に係る内燃機関の可変動弁機構は、内燃機関における吸気バルブ及び排気バルブの何れにも適用可能であり、また両バルブ同時に適用することも可能である。また、吸気バルブ及び排気バルブの何れかのバルブにおいて、そのバルブが複数のバルブで構成される場合、全ての複数のバルブに適用するだけでなく、その一部のバルブに適用することも可能である。
上記のように、本発明に係る内燃機関の可変動弁機構によって開閉されるバルブの開閉特性を制御するために、入力部と回転カムとの相対位置が変更されるが、その手段として、前記コントロールアームは、前記回転制御軸に固定され、前記バルブ開閉制御手段は、前記回転制御軸を回転駆動させることで前記コントロールアームを回転駆動させることにより、前記入力部と前記回転カムとの相対位置を変更する手段が考えられる。
即ち、前記回転制御軸と前記コントロールアームとが一体となって回転駆動すべく、前記コントロールアームと前記回転制御軸とが固定され、前記回転制御軸を回転駆動することで、前記コントロールアームが前記回転制御軸を回転中心として回転駆動する。更に、前記コントロールアームと揺動可能にて連結されている前記入力アームが揺動することで、前記入力部が移動し、以て入力部と回転カムとの相対位置が変更する。尚、前記回転制御軸を回転駆動するには、ステッピングモータやサーボモータ等の電動機が好適に利用できる。
また、入力部と回転カムとの相対位置が変更される別の手段として、前記回転制御軸は、軸方向に沿って螺旋状のスプラインを有し、前記コントロールアームは、前記回転制御軸のスプラインに噛み合うギア部を有し、前記バルブ開閉制御手段は、前記回転制御軸を軸方向に移動させることにより前記コントロールアームを回転駆動させることにより、前記入力部と前記回転カムとの相対位置を変更する手段が考えられる。
即ち、前記回転制御軸と前記コントロールアームは、前記回転制御軸の軸方向に螺旋状のスプラインを介して互いに噛み合っている。従って、前記回転制御軸が軸方向に移動することによって、前記コントロールアームが前記回転制御軸を回転中心として回転駆動する。一方、前記回転制御軸の軸方向への移動が禁止されると、前記コントロールアームの前記回転制御軸を中心とする回転駆動も禁止される。このように構成することにより、前記コントロールアームが前記回転制御軸の移動に従って回転駆動する。更に、前記コントロールアームと揺動可能にて連結されている前記入力アームが揺動することで、前記入力部が移動し、以て入力部と回転カムとの相対位置が変更する。尚、前記回転制御軸の移動には、油圧式アクチュエータや電歪素子アクチュエータ等が好適に利用できる。
ここで、前記入力部と前記回転カムとの相対位置を変更することによってバルブの開閉制御を行う上記の内燃機関の可変動弁機構において、前記回転制御軸の変位量とバルブのバルブタイミング位相との関係において、概線形性が存することを特徴とする内燃機関の可変動弁機構が考えられる。このような内燃機関の可変動弁機構においては、最終的な制御対象であるバルブとアクチュエータによって直接に制御される回転制御軸の変位量との関係において概ね線形性が存在することによって、バルブのバルブタイミング制御が容易となる。即ち、線形性によりバルブのリフト量と前記相対角との相互関係を簡便な関係式で表すことが可能となり、以って前記回転制御軸の変位量を制御パラメータとしたバルブの開閉制御を容易に行うことができる。
尚、回転制御軸を回転駆動させることによって前記入力部と前記回転カムとの相対位置を変更する場合は、回転制御軸の変位量とは、前記アクチュエータによって回転制御軸が回転した回転角をいう。また、螺旋状のスプラインを介して前記入力部と前記回転カムとの相対位置を変更する場合は、前記アクチュエータによって回転制御軸が軸方向に移動した移動量をいう。
更に、上記した課題を解決するための手段として、以下に示す手段も採用することができる。即ち、回転駆動される回転カムを備え、前記回転カムによって開閉される吸気バルブ又は排気バルブの少なくとも一方のバルブの開閉特性を可変動弁伝達機構により可変とする内燃機関の可変動弁機構であって、前記可変動弁伝達機構は、前記回転カムに当接す
る入力部を有するとともに入力支持部において揺動可能に支持される入力アームと、前記入力アームに揺動可能に連結される伝達アームと、前記伝達アームに揺動可能に連結されるとともに揺動支持部において揺動可能に支持され、前記回転カムから伝達される駆動力を前記バルブの開閉を行う出力部へ伝達する揺動アームと、から構成される四節リンク機構を備え、前記四節リンク機構の姿勢を制御し、前記回転カムと前記入力部との相対位置を変更することで、前記バルブの開閉特性を制御するバルブ開閉制御手段を有することを特徴とする。
上記のように構成される内燃機関の可変動弁機構においては、前記可変動弁伝達機構は、入力アーム、伝達アーム、揺動アームによって構成され、前記入力アームは入力支持部において揺動可能に支持され、前記揺動アームは揺動支持部において揺動可能に支持される四節リンク機構となり、入力アームに設けられた入力部が、回転カムによって駆動され、前記可変動弁伝達機構を介して、出力部が駆動されることとなり、以ってバルブの開閉が行われる。即ち、入力支持部を固定した状態において、入力部が回転カムによって駆動されると、伝達アーム、揺動アームを介して、出力部が揺動し、バルブの開閉制御が行われる。更に、この内燃機関の可変動弁機構においては、バルブ開閉制御手段によって、入力部と回転カムとの相対位置を変更することを可能とし、バルブの開閉特性を制御する。即ち、入力部と回転カムとの相対位置を変更することで、回転カムに対する入力部の位相が相対的に変更することにより、以て該可変動弁機構によって開閉されるバルブのバルブタイミングを調整することが可能となる。
一方で、入力部と回転カムとの相対位置を変更することで、入力アーム、伝達アーム及び揺動アームによって構成されるリンク機構の姿勢が変更される。それに伴い、バルブの開閉を行う出力部の変位量も連動して変動し、以てバルブのリフト量も変動することとなる。以上より、入力部と回転カムとの相対位置を変更することによって可変動弁機構における四節リンク機構の姿勢を制御することにより、バルブの開閉特性であるバルブタイミング位相及びバルブのリフト量を同時に制御することが可能となる。また四節リンク機構の姿勢を一つの駆動装置(アクチュエータ)で制御することによって、バルブの開閉特性であるバルブタイミング位相及びバルブのリフト量を一つのアクチュエータで制御することとなる。
尚、バルブタイミング位相及びバルブのリフト量の制御量は、四節リンク機構を構成する入力アーム、伝達アーム及び揺動アームの寸法に影響されるため、内燃機関に必要なバルブタイミング及びバルブのリフト量に応じた寸法にてリンク機構を構成するのが望ましい。上記のように、本発明に係る内燃機関の可変動弁機構によって開閉されるバルブの開閉特性を制御するために、入力部と回転カムとの相対位置が変更されるが、その手段として、ラックピニオン機構等を利用して電動機等のアクチュエータの回転運動を直線運動へ変換し、以て入力アームを移動させる手段等が考えられる。
また本発明に係る内燃機関の可変動弁機構は、内燃機関における吸気バルブ及び排気バルブの何れにも適用可能であり、また両バルブ同時に適用することも可能である。また、吸気バルブ及び排気バルブの何れかのバルブにおいて、そのバルブが複数のバルブで構成される場合、全ての複数のバルブに適用するだけでなく、その一部のバルブに適用することも可能である。
ここで、バルブ開閉制御手段が前記入力アームにおいて作用する位置、即ち前記アクチュエータが入力アームに作用する位置を制御点としたとき、前記入力部と前記回転カムとの相対位置を変更することによってバルブの開閉制御を行う上記の内燃機関の可変動弁機構において、制御点の変位量とバルブのバルブタイミング位相との関係において、概線形性が存することを特徴とする内燃機関の可変動弁機構が考えられる。このような内燃機関
の可変動弁機構においては、最終的な制御対象であるバルブとアクチュエータによって直接に制御される入力アームにおける制御点の変位量との関係において概ね線形性が存在することによって、バルブのバルブタイミング制御が容易となる。即ち、線形性によりバルブのリフト量と前記相対角との相互関係を簡便な関係式で表すことが可能となり、以って制御点の変位量を制御パラメータとしたバルブの開閉制御を容易に行うことができる。
また、吸気バルブ及び排気バルブの何れかが複数のバルブで構成されている内燃機関において上記した課題を解決するために、以下に示す手段を採用することができる。即ち、本発明に係る内燃機関の可変動弁機構は、回転駆動される第一回転カムと第二回転カムとを備え、前記内燃機関の同一気筒における吸気側又は排気側の少なくとも一方が、少なくとも前記第一回転カムによって開閉される第一バルブと前記第二回転カムによって開閉される第二バルブの二つのバルブで構成される内燃機関において、少なくとも前記第一バルブ及び前記第二バルブの開閉特性をそれぞれ第一可変動弁伝達機構及び第二可変動弁伝達機構により可変とする内燃機関の可変動弁機構であって、前記第一可変動弁伝達機構は、前記第一回転カムに当接する第一入力部を有する第一入力アームと、前記第一入力アームに揺動可能に連結される第一伝達アームと、前記第一伝達アームと揺動可能に連結されるとともに回転制御軸周りに揺動可能とされ、前記第一回転カムから伝達される駆動力を前記第一バルブの開閉を行う第一出力部へ伝達する第一揺動アームと、前記第一入力アームと前記第一揺動アームとを連結する第一コントロールアームと、から構成される四節リンク機構を備え、前記第二可変動弁伝達機構は、前記第二回転カムに当接する第二入力部を有する第二入力アームと、前記第二入力アームに揺動可能に連結される第二伝達アームと、前記第二伝達アームと揺動可能に連結されるとともに回転制御軸周りにも揺動可能とされ、前記第二回転カムから伝達される駆動力を前記第二バルブの開閉を行う第二出力部へ伝達する第二揺動アームと、前記第二入力アームと前記第二揺動アームとを連結する第二コントロールアームと、から構成される四節リンク機構を備え、前記第一可変動弁伝達機構における四節リンク機構の姿勢と前記第二可変動弁伝達機構における四節リンク機構の姿勢とを異ならしめることにより、前記第一バルブの開閉特性と前記第二バルブの開閉特性とを異ならしめるバルブ特性制御手段を有することを特徴とする。
このように構成される内燃機関の可変動弁機構においては、第一バルブと第二バルブの開閉をそれぞれ制御する第一回転カムおよび第一可変動弁伝達機構と、第二回転カムおよび第二可変動弁伝達機構とを有するとともに、前記第一バルブの開閉特性と前記第二バルブの開閉特性とを異ならしめるバルブ特性制御手段とを有する。ここで、第一可変動弁伝達機構および第二可変動弁伝達機構は、それぞれの入力アーム、伝達アーム、揺動アーム及びコントロールアームによって構成される四節リンク機構となり、入力アームに設けられた入力部が、回転カムによって駆動され、各々の可変動弁伝達機構を介して、出力部が駆動されることとなり、以てバルブの開閉が行われる。
更に、この内燃機関の可変動弁機構においては、バルブ特性制御手段によって、第一可変動弁伝達機構における四節リンク機構の姿勢と第二可変動弁伝達機構における四節リンク機構の姿勢とを異ならしめることで、第一バルブ及び第二バルブのバルブ開閉特性に差を設けることが可能である。各可変動弁伝達機構における四節リンク機構の姿勢を変更することにより各入力部と各回転カムとの相対位置を変更することで、バルブ開閉特性であるバルブタイミング位相やバルブのリフト量を変更することができるのは先述までの通りである。ここで、第一バルブと第二バルブとにおいて、そのバルブ開閉特性に差が設けられることによって、バルブを介して行われる吸排気を制御することができる。特に、吸気バルブの第一バルブと第二バルブにおいて、そのバルブ特性の一つであるバルブのリフト量を変更することによって、第一バルブを介して燃焼室へ流れ込む空気流量と第二バルブを介して燃焼室へ流れ込む空気流量とが相違することなり、結果として燃焼室内において旋回流を発生させることが可能となる。燃焼室内において旋回流が発生することにより、
燃焼室内における燃料の拡散が進み、燃焼の安定性が向上する。
ここで、旋回流の強さは、燃焼室内に流れ込む空気流量と、第一バルブと第二バルブとのリフト量差に起因するため、所定の空気流量における必要な旋回流を得るべく、第一可変動弁伝達機構及び第二可変動弁伝達機構を構成するリンクの寸法を決定するのが望ましい。
また、本発明に係る内燃機関の可変動弁機構は、吸気バルブ又は排気バルブの何れか一方に、若しくは吸排気バルブの両方に適用することが可能である。更に、適用される吸気バルブもしくは排気バルブが複数のバルブで構成されている場合、その構成バルブの内、任意の二つのバルブに対して適用が可能である。
更に、吸気バルブ及び排気バルブの何れかが複数のバルブで構成されている内燃機関において上記した課題を解決するために、以下に示す別の手段を採用することもできる。即ち、本発明に係る内燃機関の可変動弁機構は、回転駆動される第一回転カムと第二回転カムとを備え、前記内燃機関の同一気筒における吸気側又は排気側の少なくとも一方が、少なくとも前記第一回転カムによって開閉される第一バルブと前記第二回転カムによって開閉される第二バルブの二つのバルブで構成される内燃機関において、少なくとも前記第一バルブ及び前記第二バルブの開閉特性をそれぞれ第一可変動弁伝達機構及び第二可変動弁伝達機構により可変とする内燃機関の可変動弁機構であって、前記第一可変動弁伝達機構は、前記第一回転カムに当接する第一入力部を有するとともに第一入力支持部において揺動可能に支持される第一入力アームと、前記第一入力アームに揺動可能に連結される第一伝達アームと、前記第一伝達アームに揺動可能に連結されるとともに第一揺動支持部において揺動可能に支持され、前記第一回転カムから伝達される駆動力を前記第一バルブの開閉を行う第一出力部へ伝達する第一揺動アームと、から構成される四節リンク機構を備え、前記第二可変動弁伝達機構は、前記第二回転カムに当接する第二入力部を有するとともに第二入力支持部において揺動可能に支持される第二入力アームと、前記第二入力アームに揺動可能に連結される第二伝達アームと、前記第二伝達アームに揺動可能に連結されるとともに第二揺動支持部において揺動可能に支持され、前記第二回転カムから伝達される駆動力を前記第二バルブの開閉を行う第二出力部へ伝達する第二揺動アームと、から構成される四節リンク機構を備え、前記第一可変動弁伝達機構における四節リンク機構の姿勢と前記第二可変動弁伝達機構における四節リンク機構の姿勢とを異ならしめることにより、前記第一バルブの開閉特性と前記第二バルブの開閉特性とを異ならしめるバルブ特性制御手段を有することを特徴とする。
このように構成される内燃機関の可変動弁機構においては、第一バルブと第二バルブの開閉をそれぞれ制御する第一回転カムおよび第一可変動弁伝達機構と、第二回転カムおよび第二可変動弁伝達機構とを有するとともに、前記第一バルブの開閉特性と前記第二バルブの開閉特性とを異ならしめるバルブ特性制御手段とを有する。ここで、第一可変動弁伝達機構および第二可変動弁伝達機構は、それぞれの入力アーム、伝達アーム及び揺動アームによって構成されるリンク機構であり、入力アームに設けられた入力部が、回転カムによって駆動されることによって、各々の可変動弁伝達機構を介して、出力部が駆動され、以てバルブの開閉が行われる。
更に、この内燃機関の可変動弁機構においては、バルブ特性制御手段によって、第一可変動弁伝達機構における四節リンク機構の姿勢と第二可変動弁伝達機構における四節リンク機構の姿勢とを異ならしめることで、第一バルブ及び第二バルブのバルブ開閉特性に差を設けることが可能である。各可変動弁伝達機構における四節リンク機構の姿勢を変更することにより各入力部と各回転カムとの相対位置を変更することで、バルブ開閉特性であるバルブタイミング位相やバルブのリフト量を変更することができるのは先述までの通り
である。ここで、第一バルブと第二バルブとにおいて、そのバルブ開閉特性に差が設けられることによって、バルブを介して行われる吸排気を制御することができる。特に、吸気バルブの第一バルブと第二バルブにおいて、そのバルブ特性の一つであるバルブのリフト量を変更することによって、第一バルブを介して燃焼室へ流れ込む空気流量と第二バルブを介して燃焼室へ流れ込む空気流量とが相違することなり、結果として燃焼室内において旋回流を発生させることが可能となる。燃焼室内において旋回流が発生することにより、燃焼室内における燃料の拡散が進み、燃焼の安定性が向上する。
ここで、旋回流の強さは、燃焼室内に流れ込む空気流量と、第一バルブと第二バルブとのリフト量差に起因するため、所定の空気流量における必要な旋回流を得るべく、第一可変動弁伝達機構及び第二可変動弁伝達機構を構成するリンクの寸法を決定するのが望ましい。
また、本発明に係る内燃機関の可変動弁機構は、吸気バルブ又は排気バルブの何れか一方に、若しくは吸排気バルブの両方に適用することが可能である。更に、適用される吸気バルブもしくは排気バルブが複数のバルブで構成されている場合、その構成バルブの内、任意の二つのバルブに対して適用が可能である。
ここで、上述の四節リンク機構が入力アーム、伝達アーム、揺動アームおよびコントロールアームの四本のアームによって構成される場合のバルブ特性制御手段として以下のような手段が考えうる。即ち、更に前記第一可変動弁伝達機構と前記第二可変動弁伝達機構とを連結する連結機構を有し、前記第一コントロールアームは、前記回転制御軸を回転中心として回転駆動するとともに前記第一入力アームと揺動可能に連結され、前記第二コントロールアームは、前記回転制御軸と揺動可能に連結されるとともに前記第二入力アームと揺動可能に連結されている状態において、前記バルブ特性制御手段は、第一バルブの開閉特性と第二バルブの開閉特性とを同一とするときは、前記連結機構により前記第一可変動弁伝達機構と前記第二可変動弁伝達機構とを連結することにより、前記第一可変動弁伝達機構における四節リンク機構の姿勢と前記第二可変動弁伝達機構における四節リンク機構の姿勢とを同一とし、前記第一バルブの開閉特性と前記第二バルブの開閉特性とを異ならしめるときは、前記連結機構による前記第一可変動弁伝達機構と前記第二可変動弁伝達機構との連結を解除するとともに、前記第一可変動弁伝達機構における四節リンク機構の姿勢を変更することにより、前記第一可変動弁伝達機構における四節リンク機構の姿勢と前記第二可変動弁伝達機構における四節リンク機構の姿勢とを異ならしめることを特徴とする。
このように構成されるバルブ特性制御手段を有する内燃機関の可変動弁機構においては、第一コントロールアームは回転制御軸を回転中心として回転駆動する一方で、第二コントロールアームは回転制御軸を中心として揺動する。従って、第一可変動弁伝達機構における四節リンク機構の姿勢を制御するアクチュエータによって、第一コントロールアームが回転制御軸を中心として、直接回転駆動される。ここで、連結機構により第一可変動弁伝達機構と第二可変動弁伝達機構とを連結することで、第一可変動弁伝達機構における四節リンク機構の姿勢と第二可変動弁伝達機構における四節リンク機構の姿勢とを同一とすることができ、以て第一バルブと第二バルブの開閉特性を同一のものとすることが可能である。また、第一可変伝達機構における四節リンク機構、および前記連結機構を介して第二可変動弁伝達機構における四節リンク機構を同時に変更することが可能となり、以て第一バルブと第二バルブの開閉特性を同時に変更できる。
一方で、連結機構による連結を解除することで、第一可変動弁伝達機構と第二可変動弁伝達機構が互いに独立した四節リンク機構となる。従って、第二可変動弁伝達機構においては、連結が解除された時点における第二入力部と第二回転カムとの相対位置が保持され
、その相対位置に基づいた第二バルブの開閉特性となる。第一可変動弁伝達機構においては、四節リンク機構の姿勢を制御するアクチュエータによって、第一入力部と第一回転カムとの相対位置を変更し、第一バルブの開閉特性を変更することが可能となる。即ち、第一バルブと第二バルブとの開閉特性を相違させることが可能である。従って、連結機構を備えることにより、バルブ開閉制御手段における一のアクチュエータによって、第一バルブと第二バルブの開閉特性を同一特性又は相違する特性の何れかとすることができる。ここで、連結機構としては、第一可変動弁伝達機構におけるある部位とその部位に対応する第二可変動弁伝達機構におけるある部位とを機械的に連結することが考えられる。機械的な連結手段としては、ピンの挿入等が考えられる。
ここで、上述の四節リンク機構が入力アーム、伝達アームおよび揺動アームの三本のアームによって構成される場合のバルブ特性制御手段として以下のような手段が考えうる。即ち、更に前記第一可変動弁伝達機構と前記第二可変動弁伝達機構とを連結する連結機構を有し、前記バルブ特性制御手段は、第一バルブの開閉特性と第二バルブの開閉特性とを同一とするときは、前記連結機構により前記第一可変動弁伝達機構と前記第二可変動弁伝達機構とを連結することにより、前記第一可変動弁伝達機構における四節リンク機構の姿勢と前記第二可変動弁伝達機構における四節リンク機構の姿勢とを同一とし、前記第一バルブの開閉特性と前記第二バルブの開閉特性とを異ならしめるときは、前記連結機構による前記第一可変動弁伝達機構と前記第二可変動弁伝達機構との連結を解除するとともに、前記回転制御軸を介して前記第一可変動弁伝達機構における四節リンク機構の姿勢を変更することにより、前記第一可変動弁伝達機構における四節リンク機構の姿勢と前記第二可変動弁伝達機構における四節リンク機構の姿勢とを異ならしめることを特徴とする。
このように構成されるバルブ特性制御手段を有する内燃機関の可変動弁機構においては、連結機構により第一可変動弁伝達機構と第二可変動弁伝達機構とを連結することで、第一可変動弁伝達機構における四節リンク機構の姿勢と第二可変動弁伝達機構における四節リンク機構の姿勢とを同一とすることができ、以て第一バルブと第二バルブの開閉特性を同一のものとすることが可能である。また、第一可変伝達機構における四節リンク機構、および前記連結機構を介して第二可変動弁伝達機構における四節リンク機構を同時に変更することが可能となり、以て第一バルブと第二バルブの開閉特性を同時に変更できる。
一方で、連結機構による連結を解除することで、第一可変動弁伝達機構と第二可変動弁伝達機構が互いに独立した四節リンク機構となる。従って、第二可変動弁伝達機構においては、連結が解除された時点における第二入力部と第二回転カムとの相対位置が保持され、その相対位置に基づいた第二バルブの開閉特性となる。第一可変動弁伝達機構においては、四節リンク機構の姿勢を制御するアクチュエータによって、第一入力部と第一回転カムとの相対位置を変更し、第一バルブの開閉特性を変更することが可能となる。即ち、第一バルブと第二バルブとの開閉特性を相違させることが可能である。従って、連結機構を備えることにより、バルブ開閉制御手段における一のアクチュエータによって、第一バルブと第二バルブの開閉特性を同一特性又は相違する特性の何れかとすることができる。ここで、連結機構としては、第一可変動弁伝達機構におけるある部位とその部位に対応する第二可変動弁伝達機構におけるある部位とを機械的に連結することが考えられる。機械的な連結手段としては、ピンの挿入等が考えられる。
更に、前記バルブ特性制御手段において、第一バルブの開閉特性と第二バルブの開閉特性を異ならしめるときにおいて、第二バルブの作用角が極値となるべく第二可変動弁伝達機構における四節リンク機構の姿勢が保持されていることを特徴とする。このように構成されるバルブ特性制御手段を有する内燃機関の可変動弁機構においては、前記の連結機構の解除によって第一可変動弁伝達機構と第二可変動弁伝達機構との連結を解除したとき、第二バルブの作用角が極値となるべく第二可変動弁伝達機構における四節リンク機構の姿
勢が保持される。ここで、極値とは、第二バルブのリフト量が極大値もしくは極小値であることをいう。従って、本発明に係る内燃機関の可変動弁機構においては、第一バルブの開閉特性と第二バルブの開閉特性を異ならしめるときに、第二バルブのリフト量が常に極値となるため、バルブ開閉制御手段によって第一バルブを制御することで、二つのバルブのリフト量の相違をより大きく設定しやすくなり、以て燃焼室において発生する旋回流の強さが大きくなる。
また、上述までの可変動弁伝達機構における四節リンク機構は、バルブの開閉特性であるバルブタイミング位相を調整することができる。即ち、四節リンク機構を含む可変動弁機構を介して開閉が行われるバルブのリフト量が小さくなるに従い該バルブの位相が進角側もしくは遅角側へ移行する手段であることを特徴とする。特に、吸気バルブの開閉を行うときは、バルブのリフト量が小さくなるに従いバルブタイミング位相が進角側へ移行することによって、バルブの開弁時期をほぼ同一時期に保ちながらバルブのリフト量を小さくすることが可能となる。更に、バルブ排気バルブの開閉を行うときは、バルブのリフト量が小さくなるに従いバルブの位相が遅角側へ移行することによって、バルブの閉弁時期をほぼ同一時期に保ちながらバルブのリフト量を小さくすることが可能となる。
更に、上述までの可変動弁伝達機構における四節リンク機構は、前記内燃機関の負荷に基づいて該四節リンク機構の姿勢を変更することで、吸気バルブの開弁による作用角と排気バルブの開弁による作用角との重複作用角であるオーバーラップ量を制御することができる。即ち、アイドル領域、軽負荷領域、中負荷領域、高負荷低中速回転領域、高負荷高速回転領域等の内燃機関における負荷状況によって、燃焼の安定性や体積効率の向上等を目的として、本発明に係る内燃機関の可変動弁機構は有用である。
また、上述までの出力部、第一出力部及び第二出力部においては、各出力部が揺動アームと当接するとともに揺動アームに従って揺動することによってバルブの開閉を行うロッカーアームを有することを特徴とする。このように、構成される内燃機関の可変動弁機構においては、揺動アームの揺動を、ロッカーアームを介してバルブに伝達することができる。従って、ロッカーアームの揺動中心と該揺動中心からバルブまでの距離を調整することにより、揺動アームの揺動を減速を調整することができる。
本発明に係る内燃機関の可変動弁機構は、回転駆動される回転カムを備える内燃機関において、その吸気バルブ又は排気バルブの少なくとも一方のバルブの開閉特性を可変動弁伝達機構により可変とする内燃機関の可変動弁機構であって、前記可変動弁伝達機構は、前記回転カムに当接する入力部を備える入力アームを有する四節リンク機構から構成され、更に四節リンク機構の姿勢を制御し、前記回転カムと前記入力部との相対位置を変更することで、前記バルブの開閉特性を制御する。
本発明によれば、前記四節リンク機構の姿勢の制御は、一台のアクチュエータで行われる。従って、一台のアクチュエータにより、前記回転カムと前記入力部との相対位置を変更し、吸気バルブ又は排気バルブの開閉特性を調整することが可能となる。その結果、内燃機関の可変動弁機構を簡便なものとすることができる。
<第1の実施例>
以下、本発明に係る内燃機関の可変動弁機構の実施の形態について図面に基づいて説明する。図1は、上述した発明が適用された内燃機関1およびその制御系統の概略構成を表すブロック図である。また図2は内燃機関1における気筒2のシリンダヘッド近傍の概略構成を示す図である。
内燃機関1は、各気筒2の吸気ポートに燃料を噴射する燃料噴射弁3を備えている。各燃料噴射弁3は、燃料を所定圧に蓄圧する蓄圧室4と接続されている。蓄圧室4は、燃料供給管5を介して燃料ポンプ6と連通している。この燃料ポンプ6は、内燃機関1の出力軸(クランクシャフト)の回転トルクを駆動源として作動するポンプであり、該燃料ポンプ6の入力軸に取り付けられたポンププーリ6aが内燃機関1の出力軸(クランクシャフト)に取り付けられたクランクプーリ1aとベルト7を介して連結されている。このように構成された燃料噴射系では、クランクシャフトの回転トルクが燃料ポンプ6の入力軸へ伝達されると、燃料ポンプ6は、クランクシャフトから該燃料ポンプ6の入力軸へ伝達された回転トルクにより燃料を加圧し、吐出する。応じた圧力で燃料を吐出する。前記燃料ポンプ6から吐出された燃料は、燃料供給管5を介して蓄圧室4へ供給され、蓄圧室4にて所定圧に蓄圧されて各気筒2の燃料噴射弁3へ分配される。そして、燃料噴射弁3に駆動電流が印加されると、燃料噴射弁3が開弁し、その結果、燃料噴射弁3から燃料が噴射される。
そして各気筒2における燃焼室301には、それぞれ第1吸気バルブ201a、第2吸気バルブ201b、第1排気バルブ203aおよび第2排気バルブ203bが配置されている。この内、第1吸気バルブ201aは第1吸気ポート202aを開閉し、第2吸気バルブ201bは第2吸気ポート202bを開閉し、第1排気バルブ203aは第1排気ポート204aを開閉し、第2排気バルブ203bは第2排気ポート204bを開閉するように配置されている。
ここで、内燃機関1には、吸気枝管8が接続されており、吸気枝管8の各枝管は、各気筒2の燃焼室301と吸気ポート202a及び202bを介して連通している。前記吸気枝管8は吸気管9に接続されている。吸気管9には、該吸気管9内を流通する吸気の質量に対応した電気信号を出力するエアフローメータ10が取り付けられている。前記吸気管9における吸気枝管8の直上流に位置する部位には、該吸気管9内を流通する吸気の流量を調節する吸気絞り弁11が設けられている。この吸気絞り弁11には、ステップモータ等で構成されて該吸気絞り弁11を開閉駆動する吸気絞り用アクチュエータ12が取り付けられている。
一方、内燃機関1には、排気枝管13が接続され、排気枝管13の各枝管が排気ポート204a及び204bを介して各気筒2の燃焼室301と連通している。前記排気枝管13は排気管14と接続され、この排気管14は、下流にてマフラー(図示省略)に接続されている。更に、排気管14の途中には、内燃機関1から排出される排気に含有される有害成分を浄化する排気浄化触媒17が設けられている。
前記排気浄化触媒17の下流に位置する排気管14には、該排気管14内を流通する排気の流量を調節する排気絞り弁15が設けられている。この排気絞り弁15には、ステップモータ等で構成されて該排気絞り弁15を開閉駆動する排気絞り用アクチュエータ16が取り付けられている。
このように構成される内燃機関1の燃焼室301における吸排気について、図3に基づいて説明する。図3は内燃機関1の気筒2において、吸気ポート202a及び排気ポート204aを含む断面における縦断面図を示している。ここで、アクセルペダルの開度センサ20からの信号や内燃機関1の機関回転数Neに応じて、吸気絞り用アクチュエータ12が作動することにより吸気絞り弁11が開くとともに、燃料噴射弁3に通電されることで、必要量の空気と燃料が吸気ポート202aへと流入する。更に、吸気バルブ201aのリフト量に応じた量の、空気と燃料が燃焼室301内へと流入する。このとき、吸気バルブ201aの開閉は、内燃機関1の回転に伴う吸気カムシャフト306に設けられた吸
気カム305の回転により、揺動アーム401、コントロールアーム402、伝達アーム403、入力アーム404で構成される四節リンク等を介して行われる。
尚、内燃機関1の電子制御装置であるECU23が、オイルコントロールバルブ(OCV)22を介して、可変動弁伝達機構アクチュエータ21を駆動することで回転制御軸408を回転駆動させ、可変動弁伝達機構の四節リンクの姿勢を変更する。可変動弁伝達機構の詳細な動作については後述する。
更に、気筒2の第一排気ポート204aを開閉している第一排気バルブ203aは、内燃機関1の回転に伴う排気カムシャフト309に設けられた排気カム308の回転により、ロッカーアーム310を介して一定のリフト量で開閉されている。
再び図1に戻り、内燃機関1の制御系等の説明を行う。ECU23は、デジタルコンピュータからなり、双方向性バス27を介して相互に接続されたRAM(ランダムアクセスメモリ)30、ROM(リードオンリメモリ)29、CPU(マイクロプロセッサ)28、入力ポート25および出力ポート26を備えている。更に、ECU23の外部から入力されるアナログ信号をデジタル変換して入力ポート25へ入力するA/D変換器24が入力ポート25に接続されている。
このECU23に対して、アクセルペダルの踏み込み量に比例した電圧を出力するアクセル開度センサ20が、AD変換器24を介して入力ポート25に入力している。クランクポジションセンサ19は、例えばクランクシャフトが30°回転する毎に出力パルスを発生し、この出力パルスが入力ポート25に入力される。CPU23ではクランクポジションセンサ19の出力パルス等を基に、内燃機関1の機関回転数Neが計算される。
更に、可変動弁伝達機構アクチュエータ21により移動する回転制御軸408の軸方向変位を検出する軸位置センサ18が軸方向変位に応じた出力電圧をAD変換器24を介して入力ポート25に入力している。なお、これ以外に入力ポート25には、各種の信号が入力されているが、本実施の形態では説明上重要ではないので図示省略している。
出力ポート26は、各気筒2の燃料噴射弁3に電気的に接続され、ECU23は内燃機関1の運転状態に応じて各燃料噴射弁3の開弁制御を行い、燃料噴射時期制御や燃料噴射量制御を実行している。更に、出力ポート26はオイルコントロールバルブ22に接続され、ECU23は要求される吸気量等の内燃機関1の運転状態に応じて、オイルコントロールバルブ22を介して可変動弁伝達機構アクチュエータ21を制御している。これにより、吸気バルブ201aのリフト量とバルブタイミングとがECU23により制御されて吸入空気量制御およびその他の制御(例えば、体積効率向上や内部EGR量の制御等)が実行される。
ここで、吸気バルブ201aに吸気カム305の駆動力を伝え、その開閉を行う可変動弁伝達機構の説明をする。図4および図5は、吸気バルブ201aの開閉を制御する可変動弁伝達機構を構成する四節リンク機構の要部詳細図、図6は四節リンク機構を構成するコントロールアーム402の詳細図、図7は前記コントロールアームを回転駆動する回転制御軸408の詳細図、図8は回転制御軸を軸方向に移動させる可変動弁伝達機構アクチュエータ21の詳細図である。
ここで、図6および図7に基づいて、コントロールアーム402と回転制御軸408の構成について説明する。コントロールアーム402は、回転制御軸408を駆動することによって回転駆動されるアームであ。図6に示すように、コントロールアーム402は、アーム部402a、ベース部402bから構成され、アーム部402aの先端部には、入
力アーム404と連結をし、関節J1を形成するための貫通穴402cが設けられている。更に、ベース部402bは中空となっており、その内壁面にはベース部402bの中心軸方向に螺旋状のスプライン部402dが設けられている。
一方、図7に示される回転制御軸408は、軸部408bと軸方向に設けられた螺旋状のスプライン部408aで構成される。コントロールアーム402のスプライン部402dと回転制御軸408のスプライン部408aは互いに噛み合うように構成されている。ここで、回転制御軸408がその軸方向に移動することによってコントロールアーム402が螺旋状のスプラインに従い、回転制御軸408を中心として回転する。一方で、回転制御軸408の軸方向への移動を禁止することで、コントロールアーム402の回転制御軸408を中心とした回転も禁止される。
次に、先述した回転制御軸408の移動を行う可変動弁伝達機構アクチュエータ21の説明を、図8に基づいて行う。可変動弁伝達機構アクチュエータ21は、筒状をなすシリンダチューブ21aと、シリンダチューブ21a内に設けられたピストン21bと、シリンダチューブ21aの両端開口部を塞ぐように設けられた一対のエンドカバー21c,21dと、回転制御軸8の反対側に位置するエンドカバー21cとピストン21bとの間に配置された圧縮状態のコイルスプリング21eとから構成されている。また内側のエンドカバー21dは、内燃機関1の外壁1bに固定されている。
ピストン21bには内側のエンドカバー21dおよび内燃機関1の外壁1bを貫通した回転制御軸408の一端が連結されている。したがってピストン21bに回転制御軸408は連動することになる。ここで、シリンダチューブ21a内は、ピストン21bにより第一圧力室21fおよび第二圧力室21gに区画されている。第一圧力室21fには、一方のエンドカバー21dに形成された第一給排通路21hが接続され、第二圧力室21gには、他方のエンドカバー21cに形成された第二給排通路21iが接続されている。
第一給排通路21hまたは第二給排通路21iを介して、第一圧力室21fと第二圧力室21gとに対し選択的に作動油を供給すると、ピストン21bは回転制御軸408の軸方向(矢印S方向)に移動する。このピストン21bの移動に伴い、回転制御軸408も軸方向へ移動することになる。
第一給排通路21hおよび第二給排通路21iは、オイルコントロールバルブ22に接続されている。オイルコントロールバルブ22はECU23からの指令に従い、可変動弁伝達機構アクチュエータ21における第一圧力室21fまたは第二圧力室21gへ、第一給排通路21h又は第二給排通路21iを介して作動油を供給する装置である。
このように構成されるコントロールアーム402、回転制御軸408および可変動弁伝達機構アクチュエータ21は、ECU23からの指令に従いオイルコントロールバルブ22が可変動弁伝達機構アクチュエータ21へ作動油を供給することで、回転制御軸408がその軸方向へ移動する。それにともないコントロールアーム402が回転制御軸408を中心として回転移動し、コントロールアーム402に揺動可能に連結されている入力アーム404が移動することで、入力アーム404上に設けられている入力ローラー405と入力ローラー405に当接する吸気カム305との相対位置が変更される。一方で、オイルコントロールバルブ22への作動油の供給を禁止すると、回転制御軸408はその軸方向に移動することが禁止され、コントロールアーム402の回転制御軸408を中心とした回転も禁止される。
また、コントロールアーム402、回転制御軸408および可変動弁伝達機構アクチュエータ21の構成に関して、別の実施形態を図9に示す。図9に示す実施形態においては
、可変動弁伝達機構21がステッピングモータ等の電動機である。ここで、可変動弁伝達機構アクチュエータ21は、アダプタ422を介して内燃機関1の外壁1bに設置されており、更に可変動弁伝達機構アクチュエータ21の回転シャフト420は、カップリング421を介して回転制御軸408と連結されている。回転制御軸408は、内燃機関1の外壁1bを貫通するとともに、コントロールアーム402と固定されている。従って、可変動弁伝達機構アクチュエータ21の回転出力によってコントロールアーム402が直接回転される。
このように構成されるコントロールアーム402、回転制御軸408および可変動弁伝達機構アクチュエータ21は、ECU23からの指令に従い回転制御軸408を回転させる。それにともないコントロールアーム402が回転制御軸と一体となって回転し、コントロールアーム402に揺動可能に連結されている入力アーム404が移動することで、入力アーム404上に設けられている入力ローラー405と入力ローラー405に当接する吸気カム305との相対位置が変更される。一方で、可変動弁伝達機構アクチュエータ21が停止することによって、回転制御軸408の回転が禁止される。尚、図9に示す実施例においては、回転シャフト420と回転制御軸408とを、カップリングを介して直接に連結しているが、その間に減速器を介して連結してもよい。そうすることにより、電動機である可変動弁伝達機構アクチュエータ21の容量を下げることが可能となる。
ここで、図4および図5に基づいて、可変動弁伝達機構を構成する四節リンクの動作について説明する。図4は、コントロールアーム402が図面中において水平の姿勢を維持している場合の四節リンクの動作を表す図である。また、図5はコントロールアーム402が図4の位置よりφ1だけ右下傾となっている場合の四節リンクの動作を表す図である。図4および図5の各図において(A)図は、吸気カム305の最小半径部位が入力ローラー405に当接している場合の四節リンクの動作図であり、(B)図は、吸気カム305の最大半径部位が入力ローラー405に当接している場合の四節リンクの動作図である。
先ず、図4における四節リンクの動作を説明する。内燃機関1のクランクシャフトによって駆動される吸気シャフト306に設けられた吸気カム305に、入力部である入力ローラー405が、当接点P1(P1は吸気カム上の点)で当接している。なお、入力ローラー405は、入力アーム404に設けられており、入力アーム404は図4においては図示されてはいないが、図3において図示されるバネ307によって、入力ローラー405が吸気カム305に常に当接するように付勢されている。従って、吸気カム305が回転駆動することで、吸気カム305の輪郭に追従して入力ローラー405が駆動され、それとともに四節リンク等を介して、吸気バルブ201aの開閉が行われる。
吸気カム305の回転駆動によって最終的に吸気バルブ201aの開閉を行うときは、コントロールアーム402の姿勢は原則として保持された状態である。コントロールアーム402の姿勢の保持にあたっては、可変動弁伝達機構アクチュエータ21が図8に示す装置である場合は、先述したオイルコントロールバルブ22からの作動油の供給を停止すればよい。また、可変動弁伝達機構アクチュエータ21が電動機である場合は、電動機に対して励磁指令を送り続けることで電動機を停止させるか、電動機の内部又は外部に設けられた図示されないブレーキ機構によって回転制御軸408の回転を禁止すればよい。
コントロールアーム402が、その姿勢を保持している状態において、吸気カム305が回転駆動する。吸気カムの最大半径部が入力ローラー405に接触しているときは(図4(B)の状態)、入力ローラー405が押しこまれ、吸気カムの最小半径部が接触しているときは(図4(A)の状態)、入力ローラー405の押し込み量がもっとも少ない。また吸気カム305と入力ローラー405とはバネ307の付勢力によって常に当接関係
が保たれている。入力ローラー405が吸気カム305に押し付けられることによって、入力ローラー405が設置されている入力アーム404に吸気カム305からの駆動力が伝達される。ここで、入力アーム404は、四節リンク機構の関節であるJ1において、コントロールアーム402と揺動可能に連結されている。従って、入力アーム404は、関節J1を中心として揺動する。
更に、入力アーム404は、四節リンク機構の関節であるJ2において、伝達アーム403と揺動可能に連結されている。従って、入力アーム404が、関節J1を中心として揺動することに伴い、伝達アーム403は関節J2を中心として揺動する。
更に、伝達アーム403は、揺動アーム401の一端であって、四節リンク機構の関節J3において、揺動アーム401と揺動可能に連結されている。従って、伝達アーム403が関節J2を中心として揺動すると、関節J3を介して揺動アーム401へ吸気カムからの駆動力が伝達される。揺動アーム401は、回転制御軸408に揺動可能に連結されおり、更に回転制御軸408は移動が禁止されている。従って、揺動アーム401は、前記駆動力により回転制御軸408を中心として揺動することになる。
揺動アーム401は、突出部であるノーズ401bを有しており、揺動アーム401の回転制御軸408を中心とした揺動に従って、ノーズ401bも揺動する。更に、ノーズ401bへと伝達された吸気カム305からの駆動力を吸気弁201aへ伝達する出力部は、ロッカーアームローラー406、ロッカーアーム407およびアジャスタ304で構成される。
ここで、ノーズ401bは、揺動アーム401の姿勢によって、ロッカーアームローラー406と当接する。即ち、ノーズ401bの傾きが小さい場合は、ロッカーアームローラー406は、揺動アーム401の円周外部401cと当接しており、ノーズ401bの傾きが大きくなると、ロッカーアームローラー406は、ノーズ401bと当接することになる。
ロッカーアームローラー406は、ロッカーアーム407上に設けられており、更にロッカーアーム407は、基端部においてアジャスタ304によって支持されており、基端部とは反対側に位置する先端部においてステムエンド303を介して吸気バルブ201aと連結している。従って、ノーズ401bの傾きが小さく、ロッカーアームローラー406が円周外部401cと当接している限りは、ロッカーアームローラー406は押し下げられないが、ノーズ401bの傾きが大きくなることでノーズ401bがロッカーアームローラー406に当接するようになると、ロッカーアームローラー406が押し下げられ、ロッカーアーム407が基端部を中心として揺動しステムエンド303が下降する。ステムエンド303の下降により、吸気バルブ201aが押し下げられることで、吸気バルブ201aが開弁することとなる。この吸気バルブ201aの押し下げられる量がバルブのリフト量であり、リフト量に連動して吸入バルブから燃焼室へと流れ込む空気流量が増減する。
図4(A)においては、吸気カム305の最小半径部が、入力ローラー405に当接しており、このときノーズ401bとロッカーアームローラー406とは当接していないため、吸気バルブ201aは開弁していない。一方、図4(B)においては、吸気カム305の最大半径部が、入力ローラー405に当接しており、このときノーズ401bとロッカーアームローラー406とは当接しており、更にノーズ401bの傾斜角が最大傾斜角φ2となるため、吸気バルブ201aのリフト量も最大となる。
次に、図5は図4におけるコントロールアーム402をφ1傾けた四節リンク機構を示
している。コントロールアーム402を傾けるには、可変動弁伝達機構アクチュエータ21が図8に示す装置である場合は、オイルコントロールバルブ22によって第一油圧室21fに作動油を供給することで、ピストン21bを左側へ移動させればよい。また可変動弁伝達アクチュエータ21が電動機である場合は、電動機を回転させることで、回転制御軸に固定されているコントロールアーム402を回転させればよい。
コントロールアーム402が、回転制御軸408の軸を中心として回転されることによって、吸気カム305と入力ローラー405との相対位置が変動する。具体的には、図4(A)と図5(A)において、吸気カム305の吸気シャフト306に対する回転位相は同一であるが、吸気カム305と入力ローラー405とが当接する当接点が、図4(A)ではP1であったものが図5(A)においてはP2へと移動することになる。これによって、吸気カム305の輪郭に対する吸気バルブ201aの開閉タイミング位相が、当接点P1と当接P2との間の位相差θ分だけ移動することになる。
一方で、コントロールアーム402が回転移動することによって、図5に示される四節リンク機構のリンク姿勢と、図4に示されるリンク姿勢とは異なったものとなる。具体的には、吸気カム305の最小半径部が入力ローラー405と当接している場合において、コントロールアーム402が角度φ1だけ右回転方向に傾くことにより、図5におけるノーズ401bの傾斜角が図4の傾斜角と比べ、右回転方向に角度φ1に対応する角度分移動することになる。従って、吸気カム305の最大半径部が入力ローラー405と当接する場合、吸気バルブ201aのリフト量が最大となる場合におけるノーズ401bの傾斜角φ3は、φ2より小さくなる。即ち、図5における吸気バルブ201aのリフト量は、図4における吸気バルブ201aのリフト量より小さくなる。
次に、本発明に係る可変動弁機構による吸気バルブの開閉特性を図10に示す。図10には、コントロールアーム402が図4に示す姿勢の場合と図5に示す姿勢の場合における吸気バルブ201aと排気バルブ203aの開閉特性が表されている。図10は、横軸には燃焼サイクルにおける時間軸を、縦軸には吸気バルブ201aおよび排気バルブ203aの各リフト量を示している。曲線501は排気バルブ203aの排気特性を、曲線502および曲線503は吸気バルブ201aの吸気特性を表している。ここで、曲線502は図4に示す可変動弁伝達機構における吸気特性であり、曲線503は図5に示す可変動弁伝達機構における吸気特性である。即ち、コントロールアーム402を図4の状態から図5の状態へ回転駆動することにより、吸気特性が曲線502の状態から曲線503の状態へと移行する。
ここで、先述のように吸気カム305と入力ローラー405との当接点がP1からP2へと移行することにより、両者の相対位置が変更され、以って吸気カム305の輪郭に対する吸気バルブ201aのバルブタイミング位相がずれることになる。本実施例においては、当接点P1とP2との位相差が図10におけるθと対応する。図10におけるθは、曲線502で表される吸気作用角の中心位相と、曲線503で現される吸気作用角の中心位相との差分である。即ち、本実施例においては、吸気カム305と入力ローラー405との相対位置を変更することで、吸気バルブ201aのバルブタイミング位相を進角側へ移行させる。一方で、ノーズ401bの傾斜角がφ2からφ3へと減少することにより、吸気バルブ201aのリフト量が減少する。そのリフト量の減少が図10にΔLで示される。ΔLは曲線502で表される吸気作用角の中心位相におけるリフト量と曲線503で表される吸気作用角の中心位相におけるリフト量との差分である。
本実施例のように、可変動弁伝達機構における四節リンク機構を、吸気バルブ201aのリフト量が減少するに従い、バルブタイミング位相が進角側へと進むように構成することで、吸気バルブ201aのリフト量を可変としても、その開弁時期をほぼ同一時期とす
ることが可能となり、排気バルブ203aの作用角と吸気バルブ201aの作用角とのオーバーラップ量をほぼ同一とすることが可能となる。
以上より、本実施例における内燃機関の可変動弁機構は、一つのアクチュエータにより吸気バルブにおける開閉特性である吸気バルブのリフト量とバルブタイミング位相を同時に可変とすることが可能である。
また、先の実施例においては、吸気バルブ201aの開閉を、本発明に係る内燃機関の可変動弁機構によって開閉制御したが、同様に排気バルブ203aにも適用可能であり、更に吸気バルブ201aおよび排気バルブ203aの両バルブに適用することも可能である。図11には、吸排気両バルブに本発明に係る内燃機関の可変動弁機構を適用した場合におけるバルブの開閉特性が示されている。曲線504および曲線505は排気バルブの開閉特性を、曲線506および曲線507は吸気バルブの開閉特性を示している。また曲線504および曲線506は、両バルブにおけるリフト量が最大値となる場合の開閉特性、曲線505および曲線507は、両バルブにおけるリフト量が最小値となる場合の開閉特性を表す。ここで、先述のように、吸気バルブの開閉特性はリフト量の減少とともにバルブタイミング位相を進角側へ進める。一方で、排気バルブについては、リフト量の減少とともにバルブタイミング位相を遅角側へ進める。このように可変動弁伝達機構の四節リンク機構を構成することで、吸気特性における作用角と排気特性における作用角とのオーバーラップ量をほぼ同一としながら、各バルブのリフト量を変更することができる。
更に、吸気バルブおよび排気バルブに本発明に係る内燃機関の可変動弁機構を適用することによって、両バルブのバルブタイミング位相を進角側、遅角側へと移行させることができるため、吸気特性における作用角と排気特性における作用角とのオーバーラップ量を制御することが可能となる。
内燃機関の負荷領域には、図12に示すように、アイドル領域、軽負荷領域、中負荷領域、高負荷低中速回転領域、高速高負荷回転領域に分類できる。アイドル領域では、オーバーラップ量を無くして、排気の吹き返しを防止し燃焼を安定させ、エンジン回転の安定化を図る。軽負荷領域では、オーバーラップ量を最小として、排気の吹き返しを抑制し燃焼を安定させ、エンジン回転の安定化を図る。中負荷領域では、ややオーバーラップ量を大きくして、内部EGR率を高めて、ポンピングロスを少なくする。高負荷低中速回転領域では、オーバーラップ量を最大として、体積効率を向上させてトルクを大きくする。高負荷高速回転領域では、オーバーラップ量を中程度以上として、体積効率の向上を図る。
ここで、図13に内燃機関の負荷状況に応じたオーバーラップ量の制御を行った場合のバルブ開閉特性の一例が示されている。図13における実施例では、内燃機関の負荷状況を(a)アイドル領域、(b)軽負荷領域および中負荷領域、(c)高負荷低中速回転領域および高負荷高速回転領域に分類している。(a)アイドル領域においては、吸排気バルブのリフト量を下げるとともに、各バルブのバルブタイミング位相を移行させてオーバーラップ量を無くし、(b)軽負荷領域および中負荷領域では、吸排気バルブのリフト量を中程度に上げるとともに、各バルブのバルブタイミング位相を移行させてオーバーラップ量を少量程度としている。更に、(c)高負荷低中速回転領域および高負荷高速回転領域では、吸排気バルブのリフト量を大きく上げるとともに、各バルブのバルブタイミング位相を移行させて、オーバーラップ量を大きく設定している。このように、本発明に係る内燃機関の可変動弁機構では、内燃機関の負荷状況に応じたオーバーラップ量の調整を行うことが可能となる。尚、本実施例では、吸排気バルブの両バルブに本発明に係る内燃機関の可変動弁機構を適用しているが、何れか一方のバルブに適用することで、オーバーラップ量を調整してもよい。
ここで、図4および図5に示す可変動弁伝達機構において、回転制御軸408によって回転制御軸408を中心として回転駆動するコントロールアーム402の回転角量に対する、吸気バルブ201aのバルブタイミング位相の進角量と、ノーズ401bの傾斜角との関係を図14に示す。図14の横軸は、コントロールアーム402の回転角量を、縦軸は角度を表す。ここで、グラフ508は、コントロールアーム402の回転角量に対する、吸気バルブ201aのバルブタイミング位相の進角量の関係を表すグラフである。また、グラフ509は、コントロールアーム402の回転角量に対する、ノーズ401bの傾斜角との関係を表すグラフである。
本実施例において、グラフ508は、ほぼ直線であり、コントロールアーム402の回転角量とバルブタイミング位相の進角量との間には、ほぼ線形性がある。このような場合、バルブタイミング位相を制御するにあたり、その線形性によりバルブタイミング位相の制御が簡便なものとなる。また、グラフ509も、ほぼ直線であり、コントロールアーム402の回転角量とノーズ401bの傾斜角との間にも、ほぼ線形性がある。吸気バルブ201aのバルブリフト量はノーズ401bの傾斜角によって決定されるため、この線形性によりバルブリフト量の制御が簡便なものとなる。
<第2の実施例>
次に、内燃機関の吸気バルブが第一バルブと第二バルブの二つのバルブで構成される内燃機関における本願発明である可変動弁機構の実施例を、図15に基づいて説明する。図15に示される可変動弁機構は、第一バルブおよび第二バルブのそれぞれのバルブに対して、四節リンクで構成される可変動弁伝達機構が適用されているとともに、その二つの可変動弁伝達機構を連結する連結機構が備えられている。以下に、その詳細を説明する。
内燃機関のクランクシャフトによって駆動される吸気シャフト600に設けられた吸気カム606aおよび606bに、入力部である入力ローラー605aおよび605bがそれぞれ当接している。なお、入力ローラー605aは入力アーム604aに、入力ローラー605bは入力アーム604bにそれぞれ設けられており、入力アーム604aはバネ613aによって、入力アーム604bは図示されていないバネ613bによって、各入力ローラーが各吸気カムに常に当接するように付勢されている。従って、吸気カム606aおよび606bが回転駆動することで、各吸気カムの輪郭に追従して入力ローラー605aおよび605bが駆動され、それとともに各吸気バルブの開閉を行う。
吸気カム606aおよび606bの回転駆動によって最終的に各吸気バルブの開閉を行うときは、コントロールアーム602aおよび602bの姿勢は原則として保持された状態である。ここで、入力アーム604aおよび604bは、四節リンク機構の関節であるJ1aおよび図示されないJ1bにおいて、コントロールアーム602aおよび602bと揺動可能に連結されている。従って、入力アーム604aおよび604bは、関節J1aおよびJ1bを中心として揺動する。
更に、入力アーム604aおよび604bは、四節リンク機構の関節であるJ2aおよびJ2bにおいて、伝達アーム603aおよび603bと揺動可能に連結されている。従って、入力アーム604aおよび604bが、関節J1aおよびJ1bを中心として揺動することに伴い、伝達アーム603aおよび603bは関節J2aおよびJ2bを中心として揺動する。
更に、伝達アーム603aおよび603bは、揺動アーム601aおよび601bの一端であって、四節リンク機構の関節J3aおよび図示されない関節J3bにおいて、揺動アーム601aおよび601bと揺動可能に連結されている。従って、伝達アーム603aおよび603bが関節J2aおよびJ2bを中心として揺動すると、関節J3aおよび
J3bを介して揺動アーム601aおよび601bへ各吸気カムからの駆動力が伝達される。揺動アーム601aおよび601bは、回転制御軸608に揺動可能に連結されている。従って、揺動アーム601aおよび601bは、前記駆動力により回転制御軸608を中心として揺動することになる。
また、揺動アーム601aおよび601bは、突出部であるノーズ607aおよび607bを有しており、各揺動アームの回転制御軸608を中心とした揺動に従って、ノーズ607aおよび607bも揺動する。更に、ノーズ607aおよび607bへと伝達された各吸気カムからの駆動力を各吸気弁へ伝達する出力部は、ロッカーアームローラー609aおよび609b、ロッカーアーム610aおよび610b、アジャスタ611aおよび図示されない611bで構成される。
ここで、ノーズ607aおよび607bは、揺動アーム601aおよび601bの姿勢によって、ロッカーアームローラー609aおよび609bと当接する。即ち、各ノーズの傾きが小さい場合は、各ロッカーアームローラーは、各揺動アームの円周外部と当接し、各ノーズの傾きが大きくなると、ロッカーアームローラー609aおよび609bは、ノーズ607aおよび607bと当接することになる。
ロッカーアームローラー609aおよび609bは、ロッカーアーム610aおよび610b上にそれぞれ設けられており、更にロッカーアーム610aおよび610bは、その基端部においてアジャスタ611aおよび611bによって支持されており、基端部とは反対側に位置する先端部においてステムエンド612aおよび612bを介して各吸気バルブと連結している。従って、各ノーズの傾きが小さく、各ロッカーアームローラーが各揺動アームの円周外部と当接している限りは、各ロッカーアームローラーは押し下げられないが、各ノーズの傾きが大きくなることで各ノーズが各ロッカーアームローラーに当接するようになると、各ロッカーアームローラーが押し下げられ、各ロッカーアームが基端部を中心として揺動し各ステムエンドが下降する。各ステムエンドの下降により、各吸気バルブが押し下げられることで、各吸気バルブが開弁することとなる。この各吸気バルブの押し下げられる量がバルブのリフト量であり、リフト量に連動して吸入バルブから燃焼室へと流れ込む空気流量が増減する。
ここで、本実施例における内燃機関の可変動弁機構においては、上記第一吸気バルブの開閉駆動を担う可変動弁伝達機構と、上記第二吸気バルブの開閉駆動を担う可変動弁伝達機構とを連結する連結機構を有する。図16および図17に、その連結機構と、連結機構が設置されるコントロールアーム602aおよび602bの構成の概略図を示し、その動作について説明をする。
先ず、図16において、可変動弁伝達機構アクチュエータ21によって回転制御軸608が駆動される。ここで、可変動弁伝達機構アクチュエータ21には、先述のように、コントロールアームと回転制御軸608との連結の態様によって、例えば図8に示す装置や、電動機などが考えられるが、本実施例では、可変動弁伝達機構アクチュエータ21は電動機とする。可変動弁伝達機構アクチュエータ21は、内燃機関の外壁1bに設置され、その出力軸は回転制御軸608に連結されている。また回転制御軸608と同心の円筒外壁608bが、回転制御軸608を軸方向に包含している。また円筒外壁608bは内燃機関の外壁1bへと固定されている。このとき、円筒外壁608bは内燃機関の外壁1bに固定されているため、回転運動は行わず、その内部において可変動弁伝達機構アクチュエータ21の回転により、回転制御軸608のみが回転する。
さらに、回転制御軸608には、第一吸気バルブ側のリンク機構を構成するコントロールアーム602aが連結されており、回転制御軸608の回転とともに回転駆動される。
一方で、第二吸気バルブ側のリンク機構を構成するコントロールアーム602bは、円筒外壁608bに対して揺動可能な状態で連結されている。従って、回転制御軸608の回転によって、コントロールアーム602bは直接に回転駆動されない。また、円筒外壁608b上に固定プレート614が設けられている。
ここで、コントロールアーム602a、602bおよび固定プレート614において、貫通穴がそれぞれ616a、616b、616cとして設けられており、これらの貫通穴を移動しコントロールアーム602aと602b、又はコントロールアーム602bと固定プレート614とを連結する連結ピン615が備えられている。ここで、図16(a)に示すように、連結ピン615が貫通穴616aと616bとの間にある場合、コントロールアーム602aと602bは連結される。従って、回転制御軸608の回転動作がコントロールアーム602aを介してコントロールアーム602bへ伝達される。その結果、第一吸気バルブ側のリンク機構と第二吸気バルブ側のリンク機構とが同じ姿勢となるため、第一吸気カムと第一入力ローラーとの相対位置と、第二吸気カムと第二入力ローラーとの相対位置とが同じ状態となる。よって、第一吸気バルブと第二吸気バルブの開閉特性が同一のものとなる。
更に、図16(b)に示すように、連結ピン615が貫通穴616bと616cとの間にある場合、コントロールアーム602bと固定プレート614とは連結される。一方でコントロールアーム602aと602bとの連結は解除される。従って、回転制御軸608の回転動作によってコントロールアーム602aは回転駆動されるが、コントロールアーム602bは固定プレート614に固定されているため回転駆動されることはない。よって、回転制御軸608を回転駆動することによって第一吸気バルブの開閉特性を変更することができる一方で、第二吸気バルブの開閉特性は一定のものに維持することができる。
このように構成される内燃機関の可変動弁機構では、第一吸気バルブと第二吸気バルブの開閉特性を同一とする場合と、第一吸気バルブと第二吸気バルブの開閉特性を相違させる場合とを選択的に実行することができる。このように構成することで、第一吸気バルブと第二吸気バルブとの開閉特性、特に各バルブのリフト量を相違させることによって、吸入流量を相違させ、燃焼室内において旋回流を発生させることが可能となる。その結果、燃焼室内における燃焼の安定化を図ることが可能となる。また、旋回流を発生させる必要がない場合は、両吸気バルブの開閉特性が同一となるようにすればよい。
また、本実施例において、第二コントロールアーム602bを固定プレート614に固定するときに、第二吸気バルブの作用角が最大値もしくは最小値となるリンク機構の姿勢とすべくコントロールアーム602bを固定プレート614に固定することができる。このようにすることで、以て第一吸気バルブと第二吸気バルブとの吸入量の差を可能な限り大きく設定することができ、燃焼室内における旋回流の強さを大きくし、燃焼室内の燃焼の安定性を効率よく図ることができる。特に、第二吸気バルブの作用角が最大値となるリンク機構の姿勢とすべくコントロールアーム602bを固定プレート614に固定する場合は、多量の吸入排気量が要求される場合への対応が容易となるため、より好適である。
また、上記連結機構の別の実施例を図17に示す。図17において、可変動弁伝達機構アクチュエータ21は、内燃機関の外壁1bに設置され、その出力軸は回転制御軸608に連結されている。尚、可変動弁伝達機構アクチュエータ21は、先述の実施例と同様、電動機として説明を行う。さらに、回転制御軸608には、第一吸気バルブ側のリンク機構を構成するコントロールアーム602aが連結されており、回転制御軸608の回転とともに回転駆動される。一方で、第二吸気バルブ側のリンク機構を構成するコントロールアーム602bは、回転制御軸608に対して揺動可能な状態で連結されている。従って
、回転制御軸608の回転によって、コントロールアーム602bは直接に回転駆動されない。また、回転制御軸608上に固定プレート614が設けられている。
ここで、コントロールアーム602a及び602bにおいて、貫通穴がそれぞれ616a、616bとして設けられており、固定プレート614には複数の貫通穴616cが設けられている。更に、これらの貫通穴を移動しコントロールアーム602aと602b、又はコントロールアーム602bと固定プレート614とを連結する連結ピン615が備えられている。ここで、図17(a)に示すように、連結ピン615が貫通穴616aと616bとの間にある場合、コントロールアーム602aと602bは連結される。従って、回転制御軸608の回転動作がコントロールアーム602aを介してコントロールアーム602bへ伝達される。その結果、第一吸気バルブ側のリンク機構と第二吸気バルブ側のリンク機構とが同じ姿勢となるため、第一吸気カムと第一入力ローラーとの相対位置と、第二吸気カムと第二入力ローラーとの相対位置とが同じ状態となる。よって、第一吸気バルブと第二吸気バルブの開閉特性が同一のものとなる。
更に、図16(b)に示すように、連結ピン615がコントロールアーム602bのみに位置する場合、回転制御軸608の回転によって、コントロールアーム602aのみが回転駆動され、コントロールアーム602bはその姿勢を維持し続ける。また、図16(c)に示すように、連結ピン615がコントロールアーム602bと固定プレート614との間に架かっている場合は、回転制御軸608が回転駆動すると、コントロールアーム602bは固定プレート614とともに回転駆動することになるが、回転制御軸608が停止している限りは、コントロールアーム602bの姿勢は保持され、以って第一吸気バルブの開閉特性が変動することはない。
このように構成される連結機構およびリンク機構における各コントロールアームにおいては、第一吸気バルブと第二吸気バルブの開閉特性を同一のものとする場合は、図17(a)に示すように連結ピン615を配置すればよい。次に、第一吸気バルブと第二吸気バルブの開閉特性を異ならしめるには、まず図17(b)のように連結ピン615によるコントロールアーム602aと602bとの連結を解除する。次に、コントロールアーム602bと、固定プレート614に設けられた複数の貫通穴616cのうちの一つと位置を合わせるべく回転制御軸608を回転駆動させた後、連結ピン615によって固定プレート614とコントロールアーム602bとを連結する。このとき、コントロールアーム602aを含むリンク機構とコントロールアーム602bを含むリンク機構の姿勢は異なっており、その相違は、コントロールアーム602bと固定プレート614との連結において選択される貫通穴616cによって、段階的に調整することが可能である。
このように構成される内燃機関の可変動弁機構では、第一吸気バルブと第二吸気バルブの開閉特性を同一とする場合と、第一吸気バルブと第二吸気バルブの開閉特性を相違させる場合とを選択的に実行することができる。このように構成することで、第一吸気バルブと第二吸気バルブとの開閉特性、特に各バルブのリフト量を相違させることによって、吸入流量を相違させ、燃焼室内において旋回流を発生させることが可能となる。その結果、燃焼室内における燃焼の安定化を図ることが可能となる。また、旋回流を発生させる必要がない場合は、両吸気バルブの開閉特性が同一となるようにすればよい。
<第3の実施例>
図18は、図3における内燃機関の可変動弁機構の別の実施態様を示したものである。図18は内燃機関1の気筒2において、吸気ポート202a及び排気ポート204aを含む断面における縦断面図を示している。
アクセルペダルの開度センサ20からの信号や内燃機関1の機関回転数Neに応じて、吸気絞り用アクチュエータ12が作動することにより吸気絞りバルブ11が開くとともに、
燃料噴射弁3に通電されることで、必要量の空気と燃料が吸気ポート202aへと流入する。更に、吸気バルブ201aのリフト量に応じた量の、空気と燃料が燃焼室701内へと流入する。このとき、吸気バルブ201aの開閉は、内燃機関1の回転に伴う吸気カムシャフト706に設けられた吸気カム705の回転により、揺動アーム801、伝達アーム803、入力アーム804で構成される四節リンク等を介して開閉が行われる。
上記のリンク機構から構成されるか可変動弁伝達機構においては、入力アーム804の姿勢を制御することで、リンク機構全体の姿勢を変更することができる。例えば、電動機の回転動作をラックピニオン機構等によって直線動作へと変換し、そのラックの直線動作を、入力アーム804に伝えることで、入力アームの姿勢を制御することが可能となる。尚、リンク機構の動作については後述する。
更に、気筒2の第一排気ポート204aを開閉している第一排気バルブ203aは、内燃機関1の回転に伴う排気カムシャフト709に設けられた排気カム708の回転により、ロッカーアーム710を介して一定のリフト量で開閉されている。
ここで、吸気バルブ201aに吸気カム705の駆動力を伝え、その開閉を行う可変動弁伝達機構の説明をする。図19および図20は可変動弁伝達機構および可変動弁伝達機構によって開閉制御される吸気バルブ201aの要部詳細図である。
ここで、図19および図20に基づいて、可変動弁伝達機構を構成する四節リンク機構の動作について説明する。図19は、四節リンクにおける関節J4とJ7が、図中において水平に位置している場合の四節リンクの動作を表す図である。また、図20は関節J4が図19の位置よりφ4だけ右下傾となっている場合の四節リンクの動作を表す図である。図19および図20の各図において(A)図は、吸気カム705の最小半径部位が入力ローラー805に当接している場合の四節リンクの動作図であり、(B)図は、吸気カム705の最大半径部位が入力ローラー805に当接している場合の四節リンクの動作図である。
先ず、図19における四節リンクの動作を説明する。内燃機関1のクランクシャフトによって駆動される吸気シャフト706に設けられた吸気カム705に、入力部である入力ローラー805が、当接点P3(P3は吸気カム上の点)で当接している。なお、入力ローラー805は、入力アーム804に設けられており、入力ローラー805が吸気カム705に常に当接するよう付勢されている。従って、吸気カム705が回転駆動することで、吸気カム705の輪郭に追従して入力ローラー805が駆動され、それとともに四節リンクを介して、吸気バルブ201aの開閉が行われる。
吸気カム705の回転駆動によって最終的に吸気バルブ201aの開閉を行うときは、四節リンク機構の関節J4の位置は保持されている。関節J4の保持にあたっては、電動機に対して励磁指令を送り続けることで電動機を停止させるか、電動機の内部又は外部に設けられた図示されないブレーキ機構によってラックピニオン機構712におけるピニオンの回転を停止すればよい。
四節リンク機構の関節J4の位置が保持されている状態において、吸気カム705が回転駆動する。吸気カムの最大半径部が入力ローラー805に接触しているときは(図19(B)の状態)、入力ローラー805が押しこまれ、吸気カムの最小半径部が接触しているときは(図19(A)の状態)、入力ローラー705の押し込み量がもっとも少ない。このように吸気カム705と入力ローラー805とは、バネ707の付勢力によって常に当接関係が保たれている。入力ローラー805が吸気カム705に押し付けられることによって、入力ローラー805が設置されている入力アーム804に吸気カム705からの
駆動力が伝達される。ここで、入力アーム804は、四節リンク機構の関節であるJ4において、揺動可能に支持されている。従って、入力アーム804は、関節J4を中心として揺動する。
更に、入力アーム804は、四節リンク機構の関節であるJ5において、伝達アーム803と揺動可能に連結されている。従って、入力アーム804が、関節J4を中心として揺動することに伴い、伝達アーム803は関節J5を中心として揺動する。
更に、伝達アーム803は、揺動アーム801の一端であって、四節リンク機構の関節J6において、揺動アーム801と揺動可能に連結されている。従って、伝達アーム803が関節J5を中心として揺動すると、関節J6を介して揺動アーム801へ吸気カムからの駆動力が伝達される。揺動アーム801は、関節J7において揺動可能に支持されている。従って、揺動アーム801は、前記駆動力により関節J7を中心として揺動することになる。
揺動アーム801は、突出部であるノーズ801bを有しており、揺動アーム801の関節J7を中心とした揺動に従って、ノーズ801bも揺動する。更に、ノーズ801bへと伝達された吸気カム705からの駆動力を吸気弁201aへ伝達する出力部は、ロッカーアームローラー806、ロッカーアーム807およびアジャスタ704で構成される。
ここで、ノーズ801bは、揺動アーム801の姿勢によって、ロッカーアームローラー806と当接する。即ち、ノーズ801bの傾きが小さい場合は、ロッカーアームローラー806は、揺動アームの円周外部801cと当接しており、ノーズ801bの傾きが大きくなると、ロッカーアームローラー806は、ノーズ801bと当接することになる。
ロッカーアームローラー806は、ロッカーアーム807上に設けられており、更にロッカーアーム807は、その基端部においてアジャスタ704によって支持されており、基端部とは反対側に位置する先端部においてステムエンド703を介して吸気バルブ201aと連結している。従って、ノーズ801bの傾きが小さく、ロッカーアームローラー806が円周外部801cと当接している限りは、ロッカーアームローラー806は押し下げられないが、ノーズ801bの傾きが大きくなることでノーズ801bがロッカーアームローラー806に当接するようになると、ロッカーアームローラー806が押し下げられ、ロッカーアーム807が基端部を中心として揺動しステムエンド703が下降する。ステムエンド703の下降により、吸気バルブ201aが押し下げられることで、吸気バルブ201aが開弁することとなる。この吸気バルブ201aの押し下げられる量がバルブのリフト量であり、リフト量に連動して吸入バルブから燃焼室へと流れ込む空気流量が増減する。
図19(A)においては、吸気カム705の最小半径部が、入力ローラー805に当接しており、このときノーズ801bとロッカーアームローラー806とは当接していないため、吸気バルブ201aは開弁していない。一方、図19(B)においては、吸気カム705の最大半径部が、入力ローラー805に当接しており、このときノーズ801bとロッカーアームローラー806とは当接しており、更にノーズ801bの傾斜角が最大傾斜角φ5となるため、吸気バルブ201aのリフト量も最大となる。
次に、図20は図19における関節J4の位置を、図19の位置より関節J7を中心としてφ4傾けた四節リンク機構を示している。関節J4の位置を変更するには、可変動弁伝達機構アクチュエータ21によって、入力アーム804の姿勢を変えればよい。ここで
入力アーム804の姿勢が変更することによって、吸気カム705と入力ローラー805との相対位置が変動する。具体的には、図19(A)と図20(A)において、吸気カム705の吸気シャフト706に対する回転位相は同一であるが、吸気カム705と入力ローラー805とが当接する当接点が、図19(A)ではP3であったものが図20(A)においてはP4へと移動することになる。これによって、吸気カム705の輪郭に対する吸気バルブ201aの開閉タイミング位相が、当接点P3と当接P4との間の位相差θ分だけ移動することになる。
一方で、入力アーム804の姿勢を変更することによって、図20に示される四節リンク機構のリンク姿勢と、図19に示されるリンク姿勢とは異なったものとなる。具体的には、吸気カム705の最小半径部が入力ローラー805と当接している場合において、関節J4の位置が関節J7を中心として角度φ4だけ右回転方向に傾くことにより、図20におけるノーズ801bの傾斜角が図19の傾斜角と比べ、右回転方向に角度φ4に対応する角度分移動することになる。従って、吸気カム705の最大半径部が入力ローラー805と当接する場合、吸気バルブ201aのリフト量が最大となる場合におけるノーズ801bの傾斜角φ6は、φ5より小さくなる。即ち、図20における吸気バルブ201aのリフト量は、図19における吸気バルブ201aのリフト量より小さくなる。
以上より、本実施例における内燃機関の可変動弁機構は、吸気バルブにおける開閉特性である吸気バルブのリフト量とバルブタイミング位相を同時に可変とすることが可能である。
更に、本実施例においては、可変動弁伝達機構アクチュエータ21が入力アーム804に作用する点を制御点としたときに、制御点の変位量とバルブタイミング位相の進角量との間に、ほぼ線形性を有するべく四節リンク機構を構成することが可能である。このような場合、バルブタイミング位相を制御するにあたり、その線形性によりバルブタイミング位相の制御が簡便なものとなる。また、制御点の変位量とノーズ801bの傾斜角との間にも、ほぼ線形性を有するべく四節リンク機構を構成することが可能である。吸気バルブ201aのバルブリフト量はノーズ801bの傾斜角によって決定されるため、この線形性によりバルブリフト量の制御が簡便なものとなる。
<第4の実施例>
図21は、図15における内燃機関の可変動弁機構の別の実施態様を示したものである。図21は、第一バルブおよび第二バルブのそれぞれのバルブに対して、四節リンクで構成される可変動弁伝達機構が適用されているとともに、その二つの可変動弁伝達機構を連結する連結機構が備えられている可変動弁機構を示している。以下に、その詳細を説明する。
内燃機関のクランクシャフトによって駆動される吸気シャフト900に設けられた吸気カム906aおよび906bに、可変動弁伝達機構の入力部である入力ローラー905aおよび905bがそれぞれ当接している。なお、入力ローラー905aは入力アーム904aに、入力ローラー905bは入力アーム904bにそれぞれ設けられており、入力アーム904aおよび904bは、図示されないバネ907aおよび907bによって、各入力ローラーが各吸気カムに常に当接するように付勢されている。従って、吸気カム906aおよび906bが回転駆動することで、各吸気カムの輪郭に追従して入力ローラー905aおよび905bが揺動し、その揺動を各可変動弁伝達機構がステムエンド912aおよび912bに伝達し、各吸気バルブの開閉を行う。
吸気カム906aおよび906bの回転駆動によって最終的に各吸気バルブの開閉を行うときは、関節J4aおよび図示されないJ4bの位置は原則として保持された状態である。ここで、入力アーム904aおよび904bは、四節リンク機構の関節であるJ4a
およびJ4bにおいて、揺動可能に支持されている。従って、入力アーム904aおよび904bは、関節J4aおよびJ4bを中心として揺動する。
ここで、入力アーム904aおよび904bは、四節リンク機構の関節であるJ5aおよびJ5bにおいて、伝達アーム903aおよび903bと揺動可能に連結されている。従って、入力アーム904aおよび904bが、関節J4aおよびJ4bを中心として回転駆動することによって、伝達アーム903aおよび903bは関節J5aおよびJ5bを中心として揺動する。
更に、伝達アーム903aおよび903bは、揺動アーム901aおよび901bの一端において、四節リンク機構の関節J6aおよびJ6bで、揺動アーム901aおよび901bと揺動可能に連結されている。従って、伝達アーム903aおよび903bが関節J5aおよびJ5bを中心として揺動すると、関節J6を介して揺動アーム901aおよび901bへ各吸気カムからの駆動力が伝達される。揺動アーム901aおよび901bは、関節J7において揺動可能に支持されている。従って、揺動アーム901aおよび901bは、前記駆動力により関節J7を中心として揺動することになる。
また、揺動アーム901aおよび901bは、突出部であるノーズ907aおよび907bを有しており、各揺動アームの関節J7aおよびJ7bを中心とした揺動に従って、ノーズ907aおよび907bも揺動する。更に、ノーズ907aおよび907bへと伝達された各吸気カムからの駆動力を各吸気弁へ伝達する出力部は、ロッカーアームローラー909aおよび909b、ロッカーアーム910aおよび910b、アジャスタ911aおよび図示されない911bで構成される。
ここで、ノーズ907aおよび907bは、揺動アーム901aおよび901bの姿勢によって、ロッカーアームローラー909aおよび909bと当接する。即ち、各ノーズの傾きが小さい場合は、各ロッカーアームローラーは、各揺動アームの円周外部と当接し、各ノーズの傾きが大きくなると、ノーズ907aおよび907bと当接することになる。
ロッカーアームローラー909aおよび909bは、ロッカーアーム910aおよび910b上にそれぞれ設けられており、更にロッカーアーム910aおよび910bは、その基端部においてアジャスタ911aおよび911bによって支持されており、基端部とは反対側に位置する先端部においてステムエンド912aおよび912bを介して各吸気バルブと連結している。従って、各ノーズの傾きが小さく、各ロッカーアームローラーが各揺動アームの円周外部と当接している限りは、各ロッカーアームローラーは押し下げられないが、各ノーズの傾きが大きくなることで各ノーズが各ロッカーアームローラーに当接するようになると、各ロッカーアームローラーが押し下げられ、各ロッカーアームが基端部を中心として揺動し各ステムエンドが下降する。各ステムエンドの下降により、各吸気バルブが押し下げられることで、各吸気バルブが開弁することとなる。この各吸気バルブの押し下げられる量がバルブのリフト量であり、リフト量に連動して吸入バルブから燃焼室へと流れ込む空気流量が増減する。
ここで、本実施例における内燃機関の可変動弁機構においては、上記第一吸気バルブの開閉駆動を担う可変動弁伝達機構と、上記第二吸気バルブの開閉駆動を担う可変動弁伝達機構とを連結する連結機構を有する。図22に、その連結機構と入力アーム904aおよび904bの構成の概略図を示し、その動作について説明をする。
図22において、可変動弁伝達機構アクチュエータ21の出力軸先端には、ピニオンギア712aが設置されており、そのピニオンギア712aに噛み合うラック712bが連
結部材920を介して、第一入力アーム904aと連結している。また連結部材920が第一入力アーム904aと連結している箇所に、第一吸気バルブ側のリンク機構における関節J4aが設けられている。本実施例では、可変動弁伝達機構アクチュエータ21は電動機とする。可変動弁伝達機構アクチュエータ21の回転により、ラック712bが直線移動する。更に連結部材920によって、入力アーム904aは、常にラック712bに従って直線移動する。また入力アーム904aと並列して、第二吸気バルブ側の入力アーム905bと固定プレート914が設けられている。固定プレート914は、第一吸気バルブ側のリンク機構および第二吸気バルブ側のリンク機構とは独立する部材であり、各リンク機構の要素の姿勢にかかわらず固定されているものである。
ここで、入力アーム904a、904bおよび固定プレート914において、貫通穴がそれぞれ916a、916b、916cとして設けられており、これらの貫通穴を移動し入力アーム904aと904b、又は入力アーム904aと固定プレート914とを連結する連結ピン915が備えられている。ここで、図22(a)に示すように、連結ピン915が貫通穴916aと916bとの間にある場合、入力アーム904aと904bは連結される。従って、ラック712bの直線動作が入力アーム904aを介して入力アーム904bへ伝達される。その結果、第一吸気バルブ側のリンク機構と第二吸気バルブ側のリンク機構とが同じ姿勢となるため、第一吸気カムと第一入力ローラーとの相対位置と、第二吸気カムと第二入力ローラーとの相対位置とが同じ状態となる。よって、第一吸気バルブと第二吸気バルブの開閉特性が同一のものとなる。
更に、図22(b)に示すように、連結ピン915が貫通穴916bと916cとの間にある場合、入力アーム904bと固定プレート914とは連結される。一方でコントロールアーム904aと904bとの連結は解除される。従って、ラック712bの直線動作によって入力アーム904aは直線駆動されるが、入力アーム904bは固定プレート914に固定されているため直線駆動されることはない。よって、ラック712bを直線駆動することによって第一吸気バルブの開閉特性を変更することができる一方で、第二吸気バルブの開閉特性は一定のものに維持することができる。
このように構成される内燃機関の可変動弁機構では、第一吸気バルブと第二吸気バルブの開閉特性を同一とする場合と、第一吸気バルブと第二吸気バルブの開閉特性を相違させる場合とを選択的に実行することができる。このように構成することで、第一吸気バルブと第二吸気バルブとの開閉特性、特に各バルブのリフト量を相違させることによって、吸入流量を相違させ、燃焼室内において旋回流を発生させることが可能となる。その結果、燃焼室内における燃焼の安定化を図ることが可能となる。また、旋回流を発生させる必要がない場合は、両吸気バルブの開閉特性が同一となるようにすればよい。
また、本実施例において、第二入力アーム904bを固定プレート914に固定するときに、第二吸気バルブの作用角が最大値もしくは最小値となるリンク機構の姿勢とすべく入力アーム904bを固定プレート914に固定することができる。このようにすることで、第一吸気バルブと第二吸気バルブとの吸入量の差を可能な限り大きく設定することができ、燃焼室内における旋回流の強さを大きくすることができ、燃焼室内の燃焼の安定性を効率よく図ることができる。特に、第一吸気バルブの作用角が最大値となるリンク機構の姿勢とすべく入力アーム904bを固定プレート914に固定する場合は、多量の吸入排気量が要求される場合に対応するのが容易となるため、より好適である。
<第5の実施例>
図23には、図3に示す本願発明に係る内燃機関の可変動弁機構についての、別の実施態様が示されている。上述までの実施例においては、回転カムからの駆動力をバルブに伝達し、バルブの開閉を行う出力部は、ロッカーアームローラー406、ロッカーアーム4
07およびアジャスタ304で構成されるが、図23に示す実施例では、揺動アームの一部であるノーズの揺動を直接にバルブに伝達することで、バルブの開閉を行うものである。図23に示す構成においても、先述の内燃機関の可変動弁機構と同様に、バルブのリフト量やバルブタイミング位相等の開閉特性を変更することが可能となる。