JP2008189569A - 共役ジエン化合物の重合抑制剤組成物および重合抑制方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 共役ジエン化合物の製造、精製、貯蔵あるいは輸送工程において、共役ジエン化合物の重合物の生成を抑え、汚れの発生とその付着を防止する共役ジエン化合物の重合抑制剤組成物および共役ジエン化合物の重合抑制方法を提供することにある。
【解決手段】 (A)N−ニトロソ化合物と、(B)2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル化合物を有効成分として含有する共役ジエン化合物の重合抑制剤組成物及び共役ジエン化合物の製造、精製、貯蔵あるいは輸送工程において、共役ジエン化合物を含む流体物に特定の(A)N−ニトロソ化合物と、(B)2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル化合物を添加することを特徴とする共役ジエン化合物の重合抑制方法。
【選択図】 なし
【解決手段】 (A)N−ニトロソ化合物と、(B)2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル化合物を有効成分として含有する共役ジエン化合物の重合抑制剤組成物及び共役ジエン化合物の製造、精製、貯蔵あるいは輸送工程において、共役ジエン化合物を含む流体物に特定の(A)N−ニトロソ化合物と、(B)2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル化合物を添加することを特徴とする共役ジエン化合物の重合抑制方法。
【選択図】 なし
Description
本発明は、共役ジエン化合物の製造、精製、貯蔵あるいは輸送工程において、共役ジエンの重合物の生成を抑え、汚れの発生とその付着を防止する重合抑制剤組成物および共役ジエンの重合抑制方法に関するものである。
ブタジエン、イソプレン、クロロプレンなどの共役ジエンは、多孔質不溶性の重合物、いわゆるポップコーン重合物を生じやすい。特に工業的蒸留において、加熱して蒸留操作を行っていること、共役ジエン化合物の純度が高いこと、水分の混入および鉄錆が存在すること等により、ポップコーン重合を起こしやすいことが知られている。このポップコーン重合が一旦開始されると、装置内が重合物により急速に閉塞する場合がある。この重合物は通常の溶媒に不溶であるため、これを除去するためには機械的手段によってクリーニングを行う以外に良い方法が無い。しかし、クリーニングのために操業を一時停止する必要があり、経済的損失を招くという問題があった。しかも機械的なクリーニングでは、重合物の除去が完全に行えないので、操業を再開すると、除去しきれなかった微量の重合物を核として再びポップコーン重合が始まるという問題があった。そこで、共役ジエンの重合を防止する方法として、ジ低級アルキルヒドロキシルアミンを蒸留時に存在させて重合を防止する方法(特許文献1参照)、共役ジエンの抽出蒸留の際に抽出溶媒に重合防止剤あるいは重合連鎖移動剤を添加する方法(特許文献2、特許文献3参照)、重合防止剤としてフルフラール及びフルフラール縮合体を溶媒中に存在させて重合を防止する方法(特許文献4、特許文献5参照)、蒸留プロセスにおいて配管、蒸留塔・精留塔または熱交換器の死空間に重合禁止剤としてN−オキシル化合物を注入して抽出蒸留を行う方法(特許文献6参照)、石油留分中の酸素濃度と抽出溶媒中の酸素濃度とを測定し、抽出蒸留塔に供給する重合禁止剤の量を酸素濃度の各測定値と石油留分および、抽出溶媒の供給量とから酸素流入量に換算し、この酸素流入重量の値に比例させてヒドロキシルアミンなどの重合禁止剤の供給量を制御させる方法(特許文献7参照)が開示されている。
しかしながらこれらの方法では、未だに重合物の生成を長期間にわたって防止することはできず、配管の詰りの発生、凝縮あるいは蒸発の熱効率の低下が見られ、十分に満足しうる効果を発揮するには至っていない。
本発明の目的は、共役ジエン化合物の製造、精製、貯蔵あるいは輸送工程において、共役ジエン化合物の重合物の生成を抑え、汚れの発生とその付着を防止する共役ジエン化合物の重合抑制剤組成物および共役ジエン化合物の重合抑制方法を提供することにある。
本発明者らは、共役ジエン化合物の重合抑制について鋭意研究を行った結果、特定のピペリジン−1−オキシル化合物と特定のN−ニトロソ化合物を併用することにより、共役ジエン化合物の初期の重合だけでなく、長期間に渡る重合抑制効果が得られることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、請求項1に係る発明は、(A)一般式(1)(式中、R1は炭素数4〜10の3級アルキル基、炭素数5〜10のシクロアルキル基、Arは炭素数6〜14のアリール基を示す。)で表されるN−ニトロソ化合物と、(B)一般式(2)(式中、R2は、水素原子、酸素原子、水酸基、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、炭素数1〜3のカルボン酸基、炭素数1〜3のアミド基を示す。)で表される2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル化合物を有効成分として含有する共役ジエン化合物の重合抑制剤組成物である。
即ち、請求項1に係る発明は、(A)一般式(1)(式中、R1は炭素数4〜10の3級アルキル基、炭素数5〜10のシクロアルキル基、Arは炭素数6〜14のアリール基を示す。)で表されるN−ニトロソ化合物と、(B)一般式(2)(式中、R2は、水素原子、酸素原子、水酸基、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、炭素数1〜3のカルボン酸基、炭素数1〜3のアミド基を示す。)で表される2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル化合物を有効成分として含有する共役ジエン化合物の重合抑制剤組成物である。
請求項2に係る発明は、請求項1記載の共役ジエン化合物の重合抑制剤組成物であり、共役ジエン化合物がイソプレンおよび/又はブタジエンであることを特徴としている。
請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2記載の共役ジエン化合物の重合抑制剤組成物であり、(A)N−ニトロソ化合物が、N−ニトロソ−N−シクロヘキシルアニリン及び/又はN−ニトロソ−N−(tert−ブチル)アニリンあることを特徴としている。
請求項4に係る発明は、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の共役ジエン化合物の重合抑制剤組成物であり、(B)2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル化合物が2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル及び4−オキソ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルから選ばれた1種以上であることを特徴としている。
請求項5に係る発明は、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の共役ジエン化合物の重合抑制剤組成物であり、(A)N−ニトロソ化合物と(B)2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル化合物を重量比で98:2〜30:70で含むことを特徴としている。
請求項6に係る発明は、共役ジエン化合物の製造、精製、貯蔵あるいは輸送工程において、共役ジエン化合物を含む流体物に(A)一般式(1)(式中、R1は炭素数4〜10の3級アルキル基、炭素数5〜10のシクロアルキル基、Arは炭素数6〜14のアリール基を示す。)で表されるN−ニトロソ化合物と、(B)一般式(2)(式中、R2は、水素原子、酸素原子、水酸基、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、炭素数1〜3のカルボン酸基、炭素数1〜3のアミド基を示す。)で表される2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル化合物を添加することを特徴とする共役ジエン化合物の重合抑制方法である。
請求項7に係る発明は、請求項6記載の共役ジエン化合物の重合抑制方法であり、共役ジエン化合物がイソプレンおよび/又はブタジエンであることを特徴とする。
請求項8に係る発明は、請求項6又は請求項7記載の共役ジエン化合物の重合抑制方法であり、(A)N−ニトロソ化合物が、N−ニトロソ−N−シクロヘキシルアニリン及び/又はN−ニトロソ−N−(tert−ブチル)アニリンあることを特徴とする。
請求項9に係る発明は、請求項6乃至請求項8のいずれかに記載の共役ジエン化合物の重合抑制方法であり、(B)2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル化合物が2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル及び4−オキソ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルから選ばれた1種以上であることを特徴とする。
請求項10に係る発明は、請求項6乃至請求項9のいずれかに記載の共役ジエン化合物の重合抑制方法であり、(A)N−ニトロソ化合物と(B)2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル化合物を重量比で98:2〜30:70で添加することを特徴とする。
共役ジエン化合物の製造、精製、貯蔵あるいは輸送工程において、ピペリジン−1−オキシル化合物と、N−ニトロソ化合物を組み合わせて用いることによって、共役ジエン化合物あるいはこれを含有するプロセス流体の重合を抑制し、かつ、その効果が長く持続し、関連装置内のファウリング(汚れ)発生量を少なくすることができる。これは、関連設備の長期安定運転を可能にし、安全運転にも寄与するものである。
本発明は、特定の(A)N−ニトロソ化合物と、特定の(B)ピペリジン−1−オキシル化合物を有効成分として含む共役ジエン化合物の重合抑制剤組成物であり、共役ジエン化合物の製造、精製、貯蔵あるいは輸送工程において、共役ジエン化合物及び共役ジエン化合物を含む流体物に特定の(A)N−ニトロソ化合物と(B)ピペリジン−1−オキシル化合物を添加する共役ジエン化合物の重合抑制方法である。
本発明の重合抑制剤組成物を適用する対象箇所および重合抑制方法を実施する対象箇所は、共役ジエン化合物を製造、精製、貯蔵、あるいは輸送する工程およびこれらの工程に付帯する移送配管、ポンプ、熱交換器等の付帯設備、さらには共役ジエン化合物を含む流体物が接するこれらの工程および付帯設備である。
本発明で対象となる共役ジエン化合物は、重合反応性のある共役二重結合を有するジエン化合物であり、具体的にはイソプレン、1,3−ブタジエンおよびその誘導体である。イソプレンは特に限定されるものではなく、例えば分解ガソリンやナフサの熱分解の副生成物である炭素数5の留分(C5留分)からジメチルホルムアミド(DMF)等の抽出溶剤を用いて抽出蒸留するプロセスから得られるイソプレン、C5留分よりTert−アミレンを抽出した後に脱水素反応により得られたイソプレン、炭素数4(C4)の留分を原料としてホルムアルデヒドやメチラールを反応させて得られたイソプレンに適用することができる。また、それらの工程内のイソプレンを含む流体物、さらにはプロセス内には未反応物質や副生成物を含む混合物から純粋なイソプレンを精製する蒸留プロセスを有しており、この蒸留プロセスに対しても適用することができる。
1,3−ブタジエンは特に限定されるものではなく、通常のナフサクラッキングのC5留分からN−メチルピロリドン、DMF、アセトニトリル、フルフラール等の抽出溶媒を用いて抽出するプロセスから得られるブタジエンである。また、誘導体としては1、3−ペンタジエン、クロロプレンなどがある。中でもイソプレン、1,3−ブタジエンに好適である。
本発明に用いられるN−ニトロソ化合物(以下「N−ニトロソ化合物」とする)は、一般式(1)で示されるN−ニトロソ化合物である。式中、R1は炭素数4〜10の立体障害性の3級アルキル基、炭素数5〜10の立体障害性のシクロアルキル基であり、具体的にはtert−ブチル基、1,1−ジメチルプロピル基、1,1−ジメチルブチル基、シクロペンチル基、2−メチルシクロペンチル基、2−エチルシクロペンチル基、シクロヘキシル基、2−メチルシクロヘキシル基、2−エチルシクロヘキシル基、シクロヘプチル基、2−メチルシクロヘプチル基、2−エチルシクロヘプチル基、シクロオクチル基、2−メチルシクロオクチル基、2−エチルシクロオクチル基があり、好ましくはtert−ブチル基、シクロヘキシル基である。Arは炭素数6〜14のアリール基であり、具体的にはフェニル基、トリル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、クメニル基、ブチルフェニル基、オクチルフェニル基、ナフチル基、メチルナフチル基等である。
N−ニトロソ化合物は、N−アルキルアニリンもしくはジフェニルアミンを原料とし、亜硝酸ナトリウム等のニトロソ化剤との反応で合成される。具体的なN−ニトロソ化合物としては、N−ニトロソ−N−メチルアニリン、N−ニトロソ−N−シクロヘキシルアニリン、N−ニトロソ−ジフェニルアミン、N−ニトロソ−N−(tert−ブチル)アニリン等が挙げられ、これらを単独あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
本発明に用いられるピペリジン−1−オキシル化合物(以下「ピペリジン−1−オキシル化合物」とする)は、一般式(2)で示される2、2、6、6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル化合物である。式中、R2は水素原子、酸素原子、水酸基、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、炭素数1〜3のカルボン酸基、炭素数1〜3のアミド基である。炭素数1〜3のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基があり、炭素数1〜3のアルコキシ基としてはメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基があり、炭素数1〜3のカルボン酸基としては蟻酸基、酢酸基、プロピオン酸基があり、炭素数1〜3のアミド基としてはギ酸アミド基、酢酸アミド基、プロピオン酸アミド基がある。具体的には、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−オキソ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−エトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−カルボキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−カルバモイル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル等が挙げられ、好ましくは2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−オキソ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルである。これらを単独あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
ピペリジン−1−オキシル化合物は、α−位に水素の存在しないジ−アルキルアミンを出発原料として合成され、合成されたピペリジン−1−オキシル化合物中には出発原料のジ−アルキルアミンを0.1〜1%含む場合もあるが、本発明の効果には何ら影響を及ぼすことはない。
実際の重合抑制剤を厳密に区分することはできないが、概ね重合抑制剤は重合の進行速度を遅くする重合抑制型と、重合が開始する迄の時間を遅らせる重合禁止型に分類される。共役ジエン化合物を扱う工程では工程内での滞留時間の長い個所が存在するので、一般的には重合禁止型よりも重合抑制型が好ましい。一般にN−ニトロソ化合物は重合抑制型の傾向が強く、重合禁止効果を付与することでより効果的に使用できる。
本発明の重合抑制剤組成物(以下「重合抑制剤組成物」とする)は、N−ニトロソ化合物とピペリジン−1−オキシル化合物を有効成分として含む重合抑制剤組成物であり、これらの両者を組み合わせて用いることにより、従来技術では予想し得なかったような初期の重合抑制効果と長期間にわたる一定レベルでの重合抑制効果を併せ持つような相乗効果を発揮する重合抑制剤組成物である。
重合抑制剤組成物は、通常、N−ニトロソ化合物、ピペリジン−1−オキシル化合物を溶解し得る有機溶剤、例えば芳香族系有機溶剤に溶解して使用される。具体的な有機溶剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等が有り、これらの1種以上が用いられる。重合抑制剤組成物中のN−ニトロソ化合物、ピペリジン−1−オキシル化合物の濃度は、N−ニトロソ化合物、ピペリジン−1−オキシル化合物の溶解度や溶解安定性を考慮して適宜決定されれば良いが、一般にはそれぞれ1〜20重量%で含まれる。また、N−ニトロソ化合物、ピペリジン−1−オキシル化合物の溶解度や溶解安定性を改善するためにアルコール類(例えば、エチレングリコール、ブチルグリコール等)を配合しても何ら差し支えない。本発明の効果を妨げない範囲において、従来から使用されてきた重合抑制剤を配合してもよい。
また、N−ニトロソ化合物とピペリジン−1−オキシル化合物の配合比は、重量比でN−ニトロソ化合物とピペリジン−1−オキシル化合物を98:2〜30:70、好ましくは95:5〜50:50である。この範囲外では本発明の効果を十分に得ることはできない。
本発明の重合抑制方法(以下「重合抑制方法」とする)は、共役ジエン化合物を製造、精製、貯蔵、あるいは輸送する工程およびこれらの工程に付帯する移送配管、ポンプ、熱交換器等の付帯設備、さらには共役ジエン化合物を含む流体物が接するこれらの工程および付帯設備にN−ニトロソ化合物とピペリジン−1−オキシル化合物を添加して、共役ジエン化合物の重合を抑制する方法である。
N−ニトロソ化合物は、ピペリジン−1−オキシル化合物に比べて初期の重合抑制効果に劣るが、比較的長時間にわたり一定レベルでの重合を抑制することができる。一方、ピペリジン−1−オキシル化合物は、初期の重合抑制に優れるが、時間を経るにつれて系内のラジカルと反応して消耗すると、それ以降は重合抑制効果を示さなくなる。本発明の重合抑制方法は、これらの両者を組み合わせて用いることにより、初期の重合抑制効果と長期間にわたる一定レベルでの重合抑制効果を併せ持ち、従来技術では予想し得なかった相乗効果を発揮する優れた重合抑制方法である。
N−ニトロソ化合物とピペリジン−1−オキシル化合物の添加量は、前記の対象とする箇所の製造、精製、貯蔵あるいは輸送工程のプロセスの圧力、温度などの運転条件ならびに重合を促進する過酸化物等の不純物の量によって適宜決定されればよいが、N−ニトロソ化合物とピペリジン−1−オキシル化合物の添加量の比を重量比で98:2〜30:70、好ましくは95:5〜50:50とし、かつ、N−ニトロソ化合物及びピペリジン−1−オキシル化合物の添加量はそれぞれ共役ジエン化合物あるいはこれを含むプロセス流体に対して1〜2、000ppm、好ましくは5〜1、000ppmである。N−ニトロソ化合物とピペリジン−1−オキシル化合物の添加量の比が、この範囲外では本発明の効果を十分に得ることはできない。また、N−ニトロソ化合物とピペリジン−1−オキシル化合物の添加量が、それぞれこの範囲よりも少ないと効果が十分でないことが多く、また、この範囲より多くとも工程上は大きな問題はないが、添加量の増加に見合うだけの効果の増大が得られず、むしろ経済的に好ましくないことが多い。
N−ニトロソ化合物及びピペリジン−1−オキシル化合物の添加場所は、特に限定されるものではないが、通常、共役ジエン化合物が重合し、汚れとして問題化する箇所より上流のプロセスに添加する。例えば、イソプレンは分解ガソリンやナフサの熱分解の副生成物である炭素数5の留分(C5留分)からジメチルホルムアミド(DMF)等の抽出溶剤を用いて抽出蒸留するプロセスでは、当該プロセスあるいはその前段に添加する。
添加方法は特に限定されるものではないが、通常、それぞれ薬注ポンプを用いて、ある特定箇所に一括添加するか、あるいはいくつかの箇所に分けて添加するなどの方法が適宜選択される。また、添加は連続添加する方法、間歇添加する方法があり、適宜選択される。N−ニトロソ化合物、ピペリジン−1−オキシル化合物の添加は、それぞれをそのまま添加する方法、予めプロセス流体と同じ液体、例えばイソプレンの場合にはイソプレンや炭素数5の留分(C5留分)に溶解して添加する方法などがあり、いずれを用いても良い。N−ニトロソ化合物、ピペリジン−1−オキシル化合物の添加方法に関して、例えば定期的に蒸留塔塔底のプロセス液サンプルを抜き出して、残留しているN−ニトロソ化合物、ピペリジン−1−オキシル化合物の濃度を測定し、適正な濃度が検出されるようにN−ニトロソ化合物、ピペリジン−1−オキシル化合物の添加を管理することが好ましい。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(N―ニトロソ化合物)
N−1:N−ニトロソ−N−シクロヘキシルアニリン〔「H−2」(商品名)、大内新興株式会社製〕
N−2:N−ニトロソジフェニルアミン〔「スコノック」(商品名)、大内新興株式会社〕
N−1:N−ニトロソ−N−シクロヘキシルアニリン〔「H−2」(商品名)、大内新興株式会社製〕
N−2:N−ニトロソジフェニルアミン〔「スコノック」(商品名)、大内新興株式会社〕
(ピペリジン−1−オキシル化合物)
O−1:4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(伯東株式会社製)
O−2:4−オキソ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(試薬、東京化成工業(株)製)
O−3:2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(試薬、東京化成工業(株)製)
O−4:4−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(試薬、東京化成工業(株)製)
O−5:4−カルボキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(試薬、東京化成工業(株)製)
O−1:4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(伯東株式会社製)
O−2:4−オキソ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(試薬、東京化成工業(株)製)
O−3:2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(試薬、東京化成工業(株)製)
O−4:4−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(試薬、東京化成工業(株)製)
O−5:4−カルボキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(試薬、東京化成工業(株)製)
(重合抑制試験)
蒸留精製により重合禁止剤である4−tert−ブチルカテコールを除いたイソプレンを撹拌装置、気体抜き出しライン、サンプル抜き出しライン、温調設備付きマントルヒーターを備えた300mlのSUS316製オートクレーブに100g(約146ml)を入れ、所定量のN−ニトロソ化合物とピペリジン−1−オキシル化合物を添加した。オートクレーブの蓋を閉め、撹拌しながらオートクレーブと高純度窒素ボンベを連結し、オートクレーブ内を窒素により1MPaに加圧した。加圧した後、気体抜き出しラインより窒素を放出させて内圧を大気圧まで開放し、再び窒素により1MPaに加圧し、同様に窒素を放出させて大気圧まで開放した。この操作を3回行って系内の酸素を除き、試験液とした。次にマントルヒーターでオートクレーブを加熱し、試験液が110℃になるように制御した。試験液は約25分で110℃に到達し、オートクレーブの内圧は約0.7MPaに達した。その後、オートクレーブを110℃に静置して定期的に試験液の一部をサンプル抜き出しラインから抜き出して重量を測定し、その後、メタノールを加えて生成したポリマーを析出させ、孔径1μmのPTFE製メンブレンフィルターでポリマーを分離してポリマー重量を測定した。測定したポリマー重量からサンプリング時の試験液中のポリマー濃度を算出した。結果を表1に示した。なお、時間はヒーターの通電を開始した時点が0時間である。
蒸留精製により重合禁止剤である4−tert−ブチルカテコールを除いたイソプレンを撹拌装置、気体抜き出しライン、サンプル抜き出しライン、温調設備付きマントルヒーターを備えた300mlのSUS316製オートクレーブに100g(約146ml)を入れ、所定量のN−ニトロソ化合物とピペリジン−1−オキシル化合物を添加した。オートクレーブの蓋を閉め、撹拌しながらオートクレーブと高純度窒素ボンベを連結し、オートクレーブ内を窒素により1MPaに加圧した。加圧した後、気体抜き出しラインより窒素を放出させて内圧を大気圧まで開放し、再び窒素により1MPaに加圧し、同様に窒素を放出させて大気圧まで開放した。この操作を3回行って系内の酸素を除き、試験液とした。次にマントルヒーターでオートクレーブを加熱し、試験液が110℃になるように制御した。試験液は約25分で110℃に到達し、オートクレーブの内圧は約0.7MPaに達した。その後、オートクレーブを110℃に静置して定期的に試験液の一部をサンプル抜き出しラインから抜き出して重量を測定し、その後、メタノールを加えて生成したポリマーを析出させ、孔径1μmのPTFE製メンブレンフィルターでポリマーを分離してポリマー重量を測定した。測定したポリマー重量からサンプリング時の試験液中のポリマー濃度を算出した。結果を表1に示した。なお、時間はヒーターの通電を開始した時点が0時間である。
本発明のN−ニトロソ化合物とピペリジン−1−オキシル化合物の併用により、共役ジエン化合物であるイソプレンの重合物の発生を効果的に抑制していることが分かる。
Claims (10)
- 共役ジエン化合物がイソプレンおよび/又はブタジエンである請求項1記載の共役ジエン化合物の重合抑制剤組成物。
- (A)N−ニトロソ化合物が、N−ニトロソ−N−シクロヘキシルアニリン及び/又はN−ニトロソ−N−(tert−ブチル)アニリンある請求項1又は請求項2記載の共役ジエン化合物の重合抑制剤組成物。
- (B)2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル化合物が2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル及び4−オキソ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルから選ばれた1種以上である請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の共役ジエン化合物の重合抑制剤組成物。
- (A)N−ニトロソ化合物と(B)2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル化合物を重量比で98:2〜30:70で含む請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の共役ジエン化合物の重合抑制剤組成物。
- 共役ジエン化合物の製造、精製、貯蔵あるいは輸送工程において、共役ジエン化合物を含む流体物に(A)一般式(1)(式中、R1は炭素数4〜10の3級アルキル基、炭素数5〜10のシクロアルキル基、Arは炭素数6〜14のアリール基を示す。)で表されるN−ニトロソ化合物と、(B)一般式(2)(式中、R2は、水素原子、酸素原子、水酸基、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、炭素数1〜3のカルボン酸基、炭素数1〜3のアミド基を示す。)で表される2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル化合物を添加することを特徴とする共役ジエン化合物の重合抑制方法。
- 共役ジエン化合物がイソプレンおよび/又はブタジエンである請求項6記載の共役ジエン化合物の重合抑制方法。
- (A)N−ニトロソ化合物が、N−ニトロソ−N−シクロヘキシルアニリン及び/又はN−ニトロソ−N−(tert−ブチル)アニリンある請求項6又は請求項7記載の共役ジエン化合物の重合抑制方法。
- (B)2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル化合物が2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル及び4−オキソ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルから選ばれた1種以上である請求項6乃至請求項8のいずれかに記載の共役ジエン化合物の重合抑制方法。
- (A)N−ニトロソ化合物と(B)2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル化合物を重量比で98:2〜30:70で添加する請求項6乃至請求項9のいずれかに記載の共役ジエン化合物の重合抑制方法。
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