JP2008184661A - 合金化溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 鋼板の表面に合金化溶融亜鉛めっき層を備える合金化溶融亜鉛めっき鋼板であって、前記鋼板が、質量%で、C:0.0040%以下、Si:0.05%以下、Mn:0.5%以下、P:0.04%以下、S:0.02%以下、N:0.004%以下、Al:0.01%以上0.08%以下、Ti:0.005%以上0.06%以下およびNb:0.005%以上0.02%以下を含有し、残部がFeおよび不純物からなる化学組成を有し、前記鋼板と前記合金化溶融亜鉛めっき層との界面における前記鋼板の結晶粒の長径の最大値D1(μm)と最小値D2(μm)とがD1≦70およびD1/D2≦2.0を満足する。
【選択図】 図1
Description
特許文献1には、すじ模様欠陥の発生にはめっき前鋼板の未再結晶が大きく関わっており、これを抑制するには鋼板表層部を一様に完全再結晶させて未再結晶をなくす必要があるとの見地から、熱間圧延工程におけるスラブ加熱を1000℃〜1100℃未満の低温で1000℃以上の在炉時間を3時間以下の短時間とすることでスラブ表面からの侵窒を抑制して、再結晶温度を上昇させるTiNの析出を抑制する方法が提案されている。
まず、特許文献1に記載された方法では、スラブ加熱温度が低すぎるため、その後の粗熱間圧延、仕上げ圧延でAr3変態点を確保できず、α域圧延となる場合がある。このため、表層組織の不均一性を招いて却ってすじ模様欠陥の発生を助長する可能性がある。
すなわち、鋳造されたスラブ内でTi系析出物(TiN、TiC、Ti4C2S2)が微細に分散析出している。熱間圧延に供するためにスラブの再加熱を行なうと、このTi系析出物は微細な析出物から固溶し、また固溶しきれない温度では互いの距離が近い場合には拡散により粗大化する。この再加熱工程において加熱ムラが存在すると、場所によっては析出物が固溶しなかったり、粗大化しなかったりするため、析出物の分布にムラが生じる。
<1>鋼板の表面に合金化溶融亜鉛めっき層を備える合金化溶融亜鉛めっき鋼板であって、前記鋼板が、質量%で、C:0.0040%以下、Si:0.05%以下、Mn:0.5%以下、P:0.04%以下、S:0.02%以下、N:0.004%以下、Al:0.01%以上0.08%以下、Ti:0.005%以上0.06%以下およびNb:0.005%以上0.02%以下を含有し、残部がFeおよび不純物からなる化学組成を有し、前記鋼板と前記合金化溶融亜鉛めっき層との界面における前記鋼板の結晶粒の長径の最大値D1(μm)と最小値D2(μm)とが下記式(1)および(2)を満足することを特徴とする合金化溶融亜鉛めっき鋼板。
D1≦70 (1)
D1/D2≦2.0 (2)
D1≦50 (3)
D1/D2≦5.0 (4)
<4>下記工程(A)〜(F)を備えることを特徴とする合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法:
(A)上記<1>または<3>に記載の化学組成を有するスラブに表面凹凸差を3mm以内とする溶削および/または研削を施すスラブ手入れ工程;
(B)前記スラブ手入れ工程により得られたスラブを1100〜1270℃の温度に加熱してから熱間圧延を施し、Ar3点〜960℃の温度域で熱間圧延を完了し、400〜700℃の温度域で巻き取って熱間圧延鋼板とする熱間圧延工程;
(C)前記熱間圧延鋼板に酸洗を施して酸洗鋼板とする酸洗工程;
(D)前記酸洗鋼板に70%以上の圧下率で冷間圧延を施して冷間圧延鋼板とする冷間圧延工程;
(E)前記冷間圧延鋼板に再結晶温度以上Ac3点以下の温度域で焼鈍を施して焼鈍鋼板とする焼鈍工程;および
(F)前記焼鈍鋼板に溶融亜鉛めっきおよび合金化処理を施す合金化溶融亜鉛めっき工程。
<5>下記工程(a)〜(f)を備えることを特徴とする合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法:
(a)上記<2>または<3>に記載の化学組成を有するスラブに溶削および/または研削を施すスラブ手入れ工程;
(b)前記スラブ手入れ工程により得られたスラブを1100〜1270℃の温度に加熱してから熱間圧延を施し、Ar3点〜960℃の温度域で熱間圧延を完了し、400〜600℃の温度域で巻き取って熱間圧延鋼板とする熱間圧延工程;
(c)前記熱間圧延鋼板に酸洗を施して酸洗鋼板とする酸洗工程;
(d)前記酸洗鋼板に70%以上の圧下率で冷間圧延を施して冷間圧延鋼板とする冷間圧延工程;
(e)前記冷間圧延鋼板に(再結晶温度−10℃)以上(再結晶温度+30℃)以下の温度域で焼鈍を施して焼鈍鋼板とする焼鈍工程;および
(f)前記焼鈍鋼板に溶融亜鉛めっきおよび合金化処理を施す合金化溶融亜鉛めっき工程。
C:0.0040%以下
C含有量が0.0040%を超えると伸びが低下して、成形性、特にr値が低下する。したがって、C含有量を0.0040%以下とする。プレス成形性の観点からC含有量はできるだけ少ない方が好ましいので下限は特に限定しないが、C含有量を0.0005%未満とすると耐二次加工脆性が劣化する傾向が見られる場合があり、さらに溶鋼を脱炭するコストが著しく嵩むことから、C含有量は0.0005%以上とすることが好ましい。
Siは、不純物として含有される元素であるが、固溶強化により鋼板を高強度化する作用を有する。しかしながら、Si含有量が0.05%を超えるとめっきとの濡れ性が不足し、不めっき等が発生して品質が悪くなる。このため、Si含有量は0.05%以下とする。Siによる固溶強化を目的としない場合等には0.02%以下とすることが好ましい。
Mnは、固溶強化により鋼板を高強度化する作用を有するが、Mn含有量が0.5%超では降伏応力が上昇し、伸びが劣化して加工時にしわや割れが生じやすくなる。このためMn含有量を0.5%以下とする。成形性をさらに良好にするためには、Mn含有量を0.3%以下とすることが好ましい。
Pは、不純物として含有される元素であるが、r値の低下を抑えながら固溶強化により鋼板を高強度化する作用を有するので、強度向上を目的として含有させることができる。ただし、P含有量が0.04%を超えると、合金化処理性を低下させてめっき密着性を低下させたり、めっき表面にP偏析に起因するすじ模様を呈したりする場合がある。このため、P含有量を0.04%以下とする。下限については特に限定しないが、含有量を著しく低下させようとするとコストアップ要因となるので0.005%以上とすることが好ましい。
Sは、不純物として鋼板中に存在するが、その含有量が多いと鋳込み段階でピンホール欠陥を生成しやすくなり、製品においてヘゲ疵などの欠陥を発生しやすくなる。そのため、S含有量は0.02%以下とする。好ましくは0.015%以下である。
Nは、不純物元素であり、本発明が対象とするTi添加鋼においてはTiNの析出物を形成する。熱間圧延のスラブ加熱の段階で温度ムラ等が発生するとこのTiNの析出ムラを誘発し、このムラは冷間圧延および焼鈍後に再結晶を不均一化する要因となる。不均一な再結晶に由来する結晶粒径のムラにより合金化処理性に差が生じ、結果としてすじ模様欠陥が発生する。また、過剰に含有すると降伏応力が上昇して面歪みが生じやすくなったり、鋼中に固溶してストレッチャーストレインなどの表面欠陥を発生させる原因となったりする。このため、N含有量を0.004%以下とする。好ましくは0.003%以下である。
Alは脱酸のため添加する。0.01%以下では脱酸能力が不足する。一方、Alによる脱酸効果は0.08%の含有量で飽和するとともに、それを超える場合には介在物欠陥が増加する。したがって、Al含有量を0.01〜0.08%とする。
Tiは、高r値を得るために必要な元素である。CやNを固定することで再結晶を促進する効果が得られる。また、TiNとして析出してNを固定することでNによるストレッチャーストレインや降伏応力の上昇を抑制して加工時の面歪みを生じ難くする。そのため、Ti含有量を0.005%以上とする。
Bは、二次加工脆化を防止する作用を有するので含有させることができる。B含有量が0.0001%未満では前記効果が小さく、0.0020%を超えるとr値が顕著に低下するため、含有させる場合のB含有量は0.0001〜0.0020%とする。好ましくは0.0003〜0.0010%である。
Nbは、本発明における重要な元素である。Tiと同様にCと結合して微細なNbCの析出物を生成し、機械的特性、特にr値を向上させる。Nb含有量が0.005%以下であると、NbCの析出量が不足して固溶Cを固定できず、ストレッチャーストレインなどの表面欠陥が発生しやすくなる場合がある。一方、Nb含有量が0.06%以上であると、Cに比してNbが過剰となるために、固溶Nbにより、降伏応力が上昇し伸びが低下して加工時にしわが生じやすくなる。また、45°方向のr値が増大するため、異方性が大きくなる。このためNb含有量を0.005〜0.06%とする。
まず、Nb:0.005%以上0.02%以下の場合には、NbCの析出により焼鈍後の結晶粒径が微細となり、結晶粒径の差が小さくなって合金化速度が均一化し、結果としてすじ模様欠陥の生成が軽減される。
D1/D2≦2.0 (2)
ここで、最大粒径D1が70μmを超えると、清浄度の高い粒界でアウトバースト反応と呼ばれる急激な合金化反応が発生するため、D1/D2が2.0以下の均一な組織としても、粒界と粒内との差が明確となってめっきムラを生じやすくなり、すじ模様欠陥が顕在化してしまう。
一方、Nb:0.02%超0.06%以下の場合には、0.005以上0.02%以下の場合よりもすじ模様欠陥の改善効果が安定的に得られる。
D1/D2≦5.0 (4)
D1が50μmを超えたり、D1/D2が5.0を超えたりすると、清浄度の高い粒界でアウトバースト反応と呼ばれる急激な合金化反応が発生しやすくなり、その結果、粒界と粒内との差が大きくなってめっきムラを生じてしまう。また、粒界サイズのムラが大きいため、すじ模様欠陥が顕在化してしまう。
(1)熱間圧延工程
スラブ加熱温度:1100〜1270℃
上述した化学組成を備える手入れ後のスラブを再加熱温度1100〜1270℃とした後に熱間圧延を施すことが好ましい。
熱間圧延完了温度がAr3点未満の場合には、表層がフェライト化して熱延組織が粗大化するため製品段階におけるr値が低下して加工時に割れが生じたり、冷間圧延および焼鈍後の結晶粒径差を生じてめっき表面にすじ模様欠陥を呈したりする。一方、熱間圧延完了温度が960℃を超える場合には、スケールにより表面性状が劣化する場合がある。したがって、熱間圧延完了温度をAr3点〜960℃とすることが好ましい。さらに好ましい温度は、Ar3点〜930℃である。
巻取温度が400℃未満では、巻取り後における炭窒化物、特にNbCの生成が不十分となり、本発明が目的とするNbCの効果を十分に享受することができずにすじ模様欠陥を発生する場合がある。一方、巻取温度が700℃超の場合には、スケールが過剰に生成して表面性状を劣化させたり強度低下を招いたりする場合がある。
熱間圧延により得られる熱間圧延鋼板は、酸洗により脱スケールされ、冷間圧延が施された後に再結晶焼鈍が施される。さらに溶融亜鉛めっきが施され、合金化処理が施される。この酸洗は常法に基づいて実施すればよい。冷間圧延は、再結晶焼鈍によって絞り性に好ましいr値が高くなる再結晶集合組織を発達させるために圧下率を70%以上とすることが好ましい。
本発明の効果を確認するため、各種の試験条件にて溶製した溶鋼を用いて連続鋳造を行い、薄板製品にてその結果を評価した。
転炉およびRH式真空脱ガス装置を用いて、それぞれ1ヒート約270tの容量で溶製した。1ストランドを有する垂直曲げ型連続鋳造機に上記の方法で溶製した溶鋼を供給し、厚さ250mm、幅1500mmの鋳片に鋳造した。
機械特性は、連続焼鈍後の薄鋼板からJIS5号試験片を採取し、圧延方向に対する角度が0°方向におけるYS、TS、EL、YPE、r値(平均値)を測定した。
また、鋼板と合金化溶融亜鉛めっき層との境界における鋼板の結晶粒の長径の最大値D1(μm)と最小値D2(μm)とを、100×100μmの観察領域において求め、最大値D1と最小値D2との比(D1/D2)を算出した。
鋼の成分、製造条件および機械的特性、結晶粒の最大値D1、および最小値D2との比(D1/D2)、すじ模様欠陥の発生状況を調査した結果を表1に示す。
鋼板No.1〜13は、Nbの含有量が0.005%以上0.02%以下の鋼板を用いた結果であり、第一の発明に関するものである。D1≦70かつD1/D2≦2.0を満たす場合にはすじ模様が観察されず好適なめっき鋼板が得られた。以下に詳しく説明する。
鋼板No.14〜27はNbの含有量が0.02%超0.06%以下であり、二つ目の発明に関するものである。この含有量の場合には、スラブ手入れ後の表面凹凸が3mm以上であっても、その後の処理条件を適切な範囲とすれば、D1≦50かつD1/D2≦5.0を満たし、外観が良好なめっき鋼板が得られた。
Claims (5)
- 鋼板の表面に合金化溶融亜鉛めっき層を備える合金化溶融亜鉛めっき鋼板であって、前記鋼板が、質量%で、C:0.0040%以下、Si:0.05%以下、Mn:0.5%以下、P:0.04%以下、S:0.02%以下、N:0.004%以下、Al:0.01%以上0.08%以下、Ti:0.005%以上0.06%以下およびNb:0.005%以上0.02%以下を含有し、残部がFeおよび不純物からなる化学組成を有し、前記鋼板と前記合金化溶融亜鉛めっき層との界面における前記鋼板の結晶粒の長径の最大値D1(μm)と最小値D2(μm)とが下記式(1)および(2)を満足することを特徴とする合金化溶融亜鉛めっき鋼板。
D1≦70 (1)
D1/D2≦2.0 (2) - 鋼板の表面に合金化溶融亜鉛めっき層を備える合金化溶融亜鉛めっき鋼板であって、前記鋼板が、質量%で、C:0.0040%以下、Si:0.05%以下、Mn:0.5%以下、P:0.04%以下、S:0.02%以下、N:0.004%以下、Al:0.01%以上0.08%以下、Ti:0.005%以上0.06%以下およびNb:0.02%超0.06%以下を含有し、残部がFeおよび不純物からなる化学組成を有し、前記鋼板と前記合金化溶融亜鉛めっき層との界面における前記鋼板の結晶粒の長径の最大値D1(μm)と最小値D2(μm)とが下記式(3)および(4)を満足することを特徴とする合金化溶融亜鉛めっき鋼板。
D1≦50 (3)
D1/D2≦5.0 (4) - 前記化学組成が、前記Feの一部に代えて、質量%で、B:0.0001%以上0.0020%以下を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の合金化溶融亜鉛めっき鋼板。
- 下記工程(A)〜(F)を備えることを特徴とする合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法:
(A)請求項1または3に記載の化学組成を有するスラブに表面凹凸差を3mm以内とする溶削および/または研削を施すスラブ手入れ工程;
(B)前記スラブ手入れ工程により得られたスラブを1100〜1270℃の温度に加熱してから熱間圧延を施し、Ar3点〜960℃の温度域で熱間圧延を完了し、400〜700℃の温度域で巻き取って熱間圧延鋼板とする熱間圧延工程;
(C)前記熱間圧延鋼板に酸洗を施して酸洗鋼板とする酸洗工程;
(D)前記酸洗鋼板に70%以上の圧下率で冷間圧延を施して冷間圧延鋼板とする冷間圧延工程;
(E)前記冷間圧延鋼板に再結晶温度以上Ac3点以下の温度域で焼鈍を施して焼鈍鋼板とする焼鈍工程;および
(F)前記焼鈍鋼板に溶融亜鉛めっきおよび合金化処理を施す合金化溶融亜鉛めっき工程。 - 下記工程(a)〜(f)を備えることを特徴とする合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法:
(a)請求項2または3に記載の化学組成を有するスラブに溶削および/または研削を施すスラブ手入れ工程;
(b)前記スラブ手入れ工程により得られたスラブを1100〜1270℃の温度に加熱してから熱間圧延を施し、Ar3点〜960℃の温度域で熱間圧延を完了し、400〜600℃の温度域で巻き取って熱間圧延鋼板とする熱間圧延工程;
(c)前記熱間圧延鋼板に酸洗を施して酸洗鋼板とする酸洗工程;
(d)前記酸洗鋼板に70%以上の圧下率で冷間圧延を施して冷間圧延鋼板とする冷間圧延工程;
(e)前記冷間圧延鋼板に(再結晶温度−10℃)以上(再結晶温度+30℃)以下の温度域で焼鈍を施して焼鈍鋼板とする焼鈍工程;および
(f)前記焼鈍鋼板に溶融亜鉛めっきおよび合金化処理を施す合金化溶融亜鉛めっき工程。
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