JP2008170155A - 塗膜構造体の日射反射率計算方法、装置、プログラム、及び、熱量予測計算方法、装置、プログラム、並びに、遮熱効果の定量評価方法、カラーデザイン方法 - Google Patents

塗膜構造体の日射反射率計算方法、装置、プログラム、及び、熱量予測計算方法、装置、プログラム、並びに、遮熱効果の定量評価方法、カラーデザイン方法 Download PDF

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Abstract

【課題】塗膜構造体の日射反射率計算方法、装置、プログラム、及び、熱量予測計算方法、装置、プログラム、並びに、遮熱効果の定量評価方法、カラーデザイン方法を提供する。
【解決手段】目標とする塗膜色を呈する塗膜構造体の日射反射率予測計算方法であって、目標とする塗膜色を入力する入力手順と、入力手順で入力された目標とする塗膜色を得るための原色塗料の配合を取得する塗料配合取得手順と、目標とする塗膜色の塗料が塗布される下地と塗料配合取得手順で取得された原色塗料の塗膜とからなる塗膜構造体の可視光波長域及びそれに隣接する非可視光波長域での波長λでの分光反射率を算出し、算出した分光反射率に基づいて日射反射率RSを算出する日射反射率算出手順とを有することを特徴とする。
【選択図】図5

Description

本発明は、塗膜構造体の日射反射率計算方法、装置、プログラム、及び、熱量予測計算方法、装置、プログラム、並びに、遮熱効果の定量評価方法、カラーデザイン方法に係り、特に、目標とする塗膜色を呈する塗膜構造体の日射反射率計算方法、装置、プログラム、及び、熱量予測計算方法、装置、プログラム、並びに、遮熱効果の定量評価方法、カラーデザイン方法に関する。
近年、省エネルギーの観点から、建築物などの屋根や外壁などに太陽熱高反射塗装が多く用いられているようになってきている。
太陽熱高反射塗料(遮熱塗料)は、高い日射反射率を有する塗料である。高日射反射率塗膜を構成・保持するための技術は多数報告されており、それらの技術を用いて遮熱塗料配合設計、日射反射率最適化積層仕様等が考えられるようになっている(特許文献1〜7参照)。このような、太陽熱高反射塗料を、日射の当たる建築物の屋根・壁面、或いは、道路面、車両、船舶等、日射による熱負荷の軽減が望まれる構造物表面に適用することによって、日射エネルギーを反射させ、温度上昇の緩和、空調負荷の低減が可能となる。
しかし、実際に遮熱塗料を適用する場合には、被塗物の用途、ユーザ(塗膜購入者)の希望に合わせ、塗膜色を調色して提供する必要がある。このため、遮熱塗料の原色を複数色用意し、その混色によって望む塗膜色を調色することが一般的である。
遮熱塗料では、「日射反射率RS」の高低がその機能の優劣を支配する重要な指標であるため、調色した遮熱塗料についての「日射反射率RS」を予めユーザに提示する必要がある。従来、日射反射率RSを計算により予測することは困難であり、実際に調色を実施し、塗膜を作成したのち分光光度計を用いて実測し、日射反射率RSを計算していた。
日射反射率RSの予測が困難である2つの理由を以下の実測例を用いて説明する。
図1は遮熱塗料の原色群からホワイト原色とブルー原色との混色による実測例を説明するための図を示す。
図1は、塗膜構造体の塗膜色について、可視光波長域(380〜780nm)における塗膜構造体の分光反射率ρ(λ)の実測値を用いて、
JIS Z 8722 (2000) 色の測定方法−反射及び透過物体色
JIS Z 8729 (2004) 色の表示方法−L*a*b*表色系及びL*u*v*表色系(CIELAB表示系)
JIS Z 8721 (1993) 色の表示方法−三属性による表示(マンセル表示系)
に準じて計算した値と、塗膜構造体の日射反射率RSについて、日射波長域(300〜2100nm)における塗膜構造体の分光反射率ρ(λ)の実測値を用いて、JIS R 3106 (1998) 板ガラス類の透過率・反射率・放射率・日射取得率の試験方法に準じて計算した値を示している。なお、試験片は、塗装下地としてJIS K 5600 (1999) 4.1.2に規定されている隠蔽率試験紙の白地部分を用い、上記塗料を6mil塗布した塗膜構造体を使用している。
一般に、塗膜色、分光反射率ρ(λ)の測定は、図2に示すような測定システム10により行われる。
測定システム10は、積分球11の透過側開口部12に光を入射し、反射側開口部13に配置された試験片14に光を照射し、試験片14で反射された光を積分球11により検出器15に集光して、検出器15によって試験片14の分光反射率ρ(λ)を測定する。
このような測定システムとして、島津紫外・可視・近赤外分光光度計UV-3600(島津製作所製)に、UV-3600/3100シリーズ用積分球付属装置ISR-3100(島津製作所製)を設置した測定システムがあり、本明細書中の実測値はこの測定システムを用いたものである。
また、試験片14の測定面に対する入射光の入射角については、JIS R 3106に、「15°を超えない入射角」との規定があるのでそれに準じる入射角8°で測定した。
第1の理由については、遮熱塗料の原色群から、図1(A)に示すようなホワイト原色と、図1(B)に示すようなブルー原色との混色による実測例を用いて説明する。
この2原色を質量比50:50(等量混色)で混色すると図1(C)に示すような混色塗膜構造体を得る。
上記の図1に示す実測例のように、塗膜構造体の日射反射率RSが90.2%であるホワイト原色と、日射反射率RSが29.3%であるブルー原色を等量混色した場合に、その混色塗膜構造体の日射反射率RSは、
90.2%×0.5 + 29.3%×0.5 = 59.75%
とはならず、それよりも17.55ポイント低い42.2%となっている。
これは、「日射反射率RSには加法性が成立しない」ことを示しており、日射反射率RSが解っている原色同士の混色であっても、その結果は単純な足し算では予測できないことを示している。
第2の理由を、図1(A)に示したホワイト原色を、隠蔽率試験紙(黒地)の上に4、6、8、10milの厚さで塗布した塗膜構造体についての実測例を用いて説明する。
この場合の各塗膜構造体についての日射反射率RSの推移を図3に示す。ここで、隠蔽率試験紙(黒地)の日射反射率RSは、5.3%であり、図3に示すように塗膜の日射反射率RSが、下地の影響を受け、塗布厚さの増加と共に、変化していくことが解る。
つまり、同じ塗料を用いても、塗膜構造体の日射反射率RSは、その下地の種類、塗布厚さによって異なるため、塗膜単独での日射反射率RSを考えることには現実的な意味が希薄である。よって、より現実的な日射反射率RSを考えるために被塗物となる下地、下塗り/中塗り/上塗り等の塗装仕様、及び、塗布量を総合的に勘案した塗膜構造体についての値である必要がある。
このような、太陽熱高反射塗料(遮熱塗料)を実際に適用する場合には、周囲環境、あるいは、好みに応じて調色する必要がある。
表1は、遮熱塗料用調色原色塗料の日射反射率、塗膜色、相対単価を示している。
Figure 2008170155
例えば、総原色塗料数が4色以上である場合、ターゲット色を出すための調色配合は複数存在する。表1では、例として、白色遮熱塗料に対して、総原色数6色が用意された場合の調色原色塗料組合せをあげている。
遮熱塗料用調色原色塗料6色から3色を選んで調色する3原色塗料調色系の原色塗料組合せは、実務的には、色相の離れた色が選ばれるので赤系、青系、黄系から1色ずつで3×1×2=6通りの中から選ばれることが多いが、原理的には、式(1)のように表され、20通りの選び方が存在する。
Figure 2008170155
3原色塗料調色系が、全ての調色系の基本となるが、調色可能色域を広げるため4原色塗料調色系、或いはそれ以上の原色塗料を用いる調色系で調色を実施することも行われており、また、総原色塗料数が更に多数用意された場合には、原色塗料組合せはさらに増加することとなる。
なお、参考に、総原色数n色が用意され、使用原色数をk色とした場合の原色塗料組合せの総数を表2にまとめる。
Figure 2008170155
次に、表1で例示した調色原色塗料を用いて得られる調色塗膜の日射反射率、及び、調色塗料単価がどのように変化するかを考察する。
ここでは、例として、日本塗料工業会塗料用標準色見本帳から、マンセル明度4、及び、7に相当するグレーCN-40、CN-70を選び、その色票をターゲットとして比較することとする。
以下の3通りの3原色調色系を用いて調色を実施した結果を表3、表4に示す。
3原色調色系I:原色塗料組合せ(Rd(1)‐Bl(1)‐Yl(1))を使用した3原色調色系
3原色調色系II:原色塗料組合せ(Rd(1)‐Bl(1)‐Rd(2))を使用した3原色調色系
3原色調色系III:原色塗料組合せ(Rd(1)‐Bl(1)‐Rd(3))を使用した3原色調色系
なお、表3はCN-40近似調色の例、表4はCN-70近似調色結果の例を示している。
Figure 2008170155
Figure 2008170155
表1に例示した遮熱塗料用調色原色は、6色中に赤系原色塗料を3種含んでいるが、上記の3通りの3原色調色系での調色結果を比較することにより、赤系原色3種の使い方で日射反射率、及び、単価がどのように変化していくかを確認することができる。
表3の結果を見ると、3原色調色系I〜IIIのうち日射反射率を極大化できるのは3原色調色系Iである。
なお、例えば、CN-40の色票の日射反射率は12.3%であったので、これを基準に考えると、3原色調色系Iによる調色塗膜の日射反射率44.9%は44.9%−12.3%=32.6%の日射反射率の向上が実現されたことになるが、相対単価は1.54と高価になることが解る。
また、単価を極小化できるのは3原色調色系IIIであるが、この場合日射反射率は40.4%と3原色調色系I〜IIIのうち最も低い値となり、3原色調色系IIは中間に位置し、日射反射率は僅差でIに及ばないが、単価はIよりも低くなることが解る。
表4に示すCN-70近似調色の結果でも、表3に示すCN-40近似調色の結果に見られるような3原色調色系I〜IIIによる日射反射率、及び、単価の変化は生じているが、その変化幅は小さくなっていることが解る。
従来の一般的なCCM(Computer Color Matching)では、目標とする塗膜色に対する原色塗料の配合を計算することは可能であったが(例えば、特許文献8、9、10参照)、目標とする塗膜色に対する原色塗料の配合を計算するのみであった。しかしながら、同じターゲット色(目標とする塗膜色)への近似調色であっても、表2のように複数存在する調色系のどれを選択するかで、日射反射率、及び、単価は、表3、表4のように変化し、また、その変化の大きさは、ターゲット色の色相・明度・彩度によってまちまちであり、一般CCMのように単に、目標とする塗膜色に対する原色塗料の配合を計算するのみでは、一概に簡易的処方を決定することはできなかった。
また、日射反射率がわかったとしてもこの値からどれだけの遮熱効果が得られるのか定量的に予測することはできなかった。
遮熱効果の評価項目については冷房費の削減や、室温上昇の緩和等いくつかの視点が考えられるが、これらの基礎となる室内に流出入する熱量を予測する方法としては、簡易的には建築環境工学などで用いられる定常計算方法によるものがある。
なお、日射反射率を測定し、測定した日射反射率から日射吸収率を算出し、算出した日射吸収率をもとに相当外気温を算出し、算出された相当外気温から貫流熱量を算出することにより、定常計算方法を用いることにより遮熱塗装の効果を測定する方法が提案されている(例えば特許文献11参照)。
しかし、建築環境工学などで用いられる定常計算方法はそのままでは、定常的な熱量を計算することしかできず、熱容量、気象条件の変化を勘案した予測計算を行なうことはできなかった。熱容量、気象条件の変化を勘案した非定常的な熱量を計算する場合には、大型コンピュータを用いた熱負荷計算用シミュレーションプログラムを用いる必要があり、容易に活用することができない。また、コストが高くなるなどの問題点があった。
特公平6−19061号 特許第3484164号 特許第2593968号 特開2000−212475号公報 特開2002−12825号公報 特開2004−10853号公報 特開2004−27241号公報 特開平11−228877号公報 特開平11−228878号公報 特開昭63−153677号公報 特開2002−39977号公報
このように、遮熱塗料用調色原色塗料は、一般的な塗料とは異なる顔料を用いることがあり、その場合、それら原色塗料を用いて調色することのできる調色可能色域も大きく変化し、そのため、従来の一般的な塗料の調色で培った経験が生かされにくく、実務的には「調色しにくい」と評価される一因となっていた。
そして、目標とする塗膜色(ターゲット色)を呈する遮熱塗料の日射反射率は予測できず、また、日射反射率がもたらす遮熱効果についても予測困難であった。
本発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、目標とする塗膜色を呈する塗膜構造体の日射反射率、塗膜構造体が適用される対象の熱量、及び、遮熱効果を定量評価できる塗膜構造体の日射反射率計算方法、装置、プログラム、及び、熱量予測計算方法、装置、プログラム、並びに、遮熱効果の定量評価方法、カラーデザイン方法を提供することを目的とする。
本発明は、目標とする塗膜色を呈する塗膜構造体の日射反射率予測計算方法であって、目標とする塗膜色を入力する入力手順と、入力手順で入力された目標とする塗膜色を得るための原色塗料の配合を取得する塗料配合取得手順と、目標とする塗膜色の塗料が塗布される下地と塗料配合取得手順で取得された原色塗料の塗膜とからなる塗膜構造体の可視光波長域及びそれに隣接する非可視光波長域での波長λでの分光反射率を算出し、算出した分光反射率に基づいて日射反射率RSを算出する日射反射率算出手順とを有することを特徴とする。
また、本発明の日射反射率算出手順は、可視光波長域及びそれに隣接する非可視光波長域での波長λについて下地の分光反射率ρg(λ)を算出し、算出した下地の分光反射率ρg(λ)に基づいて下地の反射率Rg(λ)を算出する下地反射率算出手順と、下地に積層される塗膜の各原色についての単位厚さ当たりの吸収係数及び散乱係数、原色配合比、膜厚を取得する塗膜データ取得手順と、下地反射率算出手順で取得した下地の反射率Rg(λ)、及び、塗膜データ取得手順で取得された塗膜の各原色についての単位厚さ当たりの吸収係数及び散乱係数、原色配合比、膜厚に基づいて塗膜構造体の反射率R(λ)を算出し、これに基づいて塗膜構造体の分光反射率ρ(λ)を算出する塗膜構造体分光反射率算出手順とを有することを特徴とする。
さらに、本発明は、塗膜構造体分光反射率算出手順で算出された分光反射率ρ(λ)を下地の分光反射率ρg(λ)に設定し、下地反射率算出手順及び塗膜データ取得手順、並びに、塗膜構造体分光反射率算出手順を順次に繰り返すことにより、二種以上の塗料種積層によってなる塗膜構造体の分光反射率ρ(λ)を算出することを特徴とする。
本発明の塗料配合取得手順は原色塗料の配合から目標とする塗膜色に近似する原色塗料の配合の候補を取得し、日射反射率算出手順は塗料配合取得手順で取得した原色塗料の配合の候補に対して日射反射率を算出することを特徴とする。
また、本発明の塗料配合取得手順は、原色塗料の配合から目標とする塗膜色に近似する原色塗料の配合を取得し、日射反射率算出手順は塗料配合取得手順で取得した原色塗料の配合に対して逐次、日射反射率を算出することを特徴とする。
また、本発明は、目標とする塗膜色を呈する塗膜構造体を有する被測定対象の熱量を予測計算する熱量予測計算方法であって、被測定対象の構造に基づいて熱回路を設定する熱回路設定手順と、熱回路設定手順で設定すべき熱回路に関するパラメータ及び被測定対象の有する塗膜構造体に対応する日射反射率を含むパラメータを熱回路に設定するパラメータ設定手順と、パラメータ設定手順で設定されたパラメータ及び日射反射率に基づいて熱回路を解くことにより、被測定対象に流出入する熱量を予測する熱量予測計算手順とを有し、被測定対象に塗布される目標の塗膜色の塗膜構造体に対応する日射反射率は、上記で述べた日射反射率測定方法により算出されることを特徴とする。
さらに、本発明は、目標とする塗膜色を呈する塗膜構造体の日射反射率予測計算装置であって、目標とする塗膜色を入力する入力手段と、入力手段で入力された目標とする塗膜色を得るための原色塗料の配合を取得する塗料配合取得手段と、目標とする塗膜色の塗料が塗布される下地と塗料配合取得手段で取得された原色塗料の塗膜とからなる塗膜構造体の可視光波長域及びそれに隣接する非可視光波長域での波長λでの分光反射率を算出し、算出した分光反射率に基づいて日射反射率RSを算出する日射反射率算出手段とを有することを特徴とする。
本発明の塗料配合取得手段は、原色塗料の配合から目標とする塗膜色に近似する原色塗料の配合の候補を取得し、日射反射率算出手段は、塗料配合取得手段で取得した原色塗料の配合の候補に対して日射反射率を算出することを特徴とする。
本発明の塗料配合取得手段は原色塗料の配合から目標とする塗膜色に近似する原色塗料の配合を取得し、日射反射率算出手段は塗料配合取得手段で取得した原色塗料の配合に対して逐次前記日射反射率を算出することを特徴とする。
また、本発明は、目標とする塗膜色を呈する塗膜構造体を有する被測定対象の熱量を予測計算する熱量予測計算装置であって、被測定対象の構造に基づいて熱回路を設定する熱回路設定手段と、熱回路設定手段で設定された熱回路に関するパラメータ及び被測定対象の有する目標の塗膜色を呈する塗膜構造体に対応する日射反射率を前記熱回路に設定するパラメータ設定手段と、パラメータ設定手段で設定されたパラメータ及び日射反射率に基づいて熱回路を解くことにより、被測定対象に流出入する熱量を予測する熱量予測計算手段とを有し、被測定対象に塗布される目標の塗膜色を呈する塗膜構造体に対応する日射反射率は、上記で述べた日射反射率測定方法により算出されることを特徴とする。
また、本発明の塗膜構造体の日射反射率予測計算プログラムは、コンピュータに、目標とする塗膜色を入力する入力手順と、入力手順で入力された目標とする塗膜色を得るための原色塗料の配合を取得する塗料配合取得手順と、目標とする塗膜色の塗料が塗布される下地と塗料配合取得手順で取得された原色塗料の塗膜とからなる塗膜構造体の可視光波長域及びそれに隣接する非可視光波長域での波長λでの分光反射率を算出し、算出した分光反射率に基づいて日射反射率RSを算出する日射反射率算出手順とを実行させることを特徴とする。
本発明の塗膜構造体の日射反射率予測計算プログラムの日射反射率算出手順は、可視光波長域及びそれに隣接する非可視光波長域での波長λについて前記下地の分光反射率ρg(λ)を算出し、算出した前記下地の分光反射率ρg(λ)に基づいて下地の反射率Rg(λ)を算出する下地反射率算出手順と、下地に積層される塗膜の各原色についての単位厚さ当たりの吸収係数及び散乱係数、原色配合比、膜厚を取得する塗膜データ取得手順と、下地反射率算出手順で取得した下地の反射率Rg(λ)、及び、塗膜データ取得手順で取得された塗膜の各原色についての単位厚さ当たりの吸収係数及び散乱係数、原色配合比、膜厚に基づいて塗膜構造体の反射率R(λ)を算出し、これに基づいて塗膜構造体の分光反射率ρ(λ)を算出する塗膜構造体分光反射率算出手順とを有することを特徴とする。
本発明の塗膜構造体の日射反射率予測計算プログラムは、塗膜構造体分光反射率算出手順で算出された分光反射率ρ(λ)を前記下地の分光反射率ρg(λ)に設定し、下地反射率算出手順及び塗膜データ取得手順並びに塗膜構造体分光反射率算出手順を順次に繰り返すことにより、二種以上の塗料種積層によってなる塗膜構造体の分光反射率ρ(λ)を算出することを特徴とする。
本発明の塗膜構造体の日射反射率予測計算プログラムの塗料配合取得手順は原色塗料の配合から目標とする塗膜色に近似する原色塗料の配合の候補を取得し、日射反射率算出手順は塗料配合取得手順で取得した原色塗料の配合の候補に対して日射反射率を算出することを特徴とする。
本発明の塗膜構造体の日射反射率予測計算プログラムの塗料配合取得手順は、原色塗料の配合から目標とする塗膜色に近似する原色塗料の配合を取得し、日射反射率算出手順は塗料配合取得手順で取得した原色塗料の配合に対して逐次日射反射率を算出することを特徴とする。
本発明の熱量予測計算プログラムは、コンピュータに、被測定対象の構造に基づいて熱回路を設定する熱回路設定手順と、熱回路設定手順で設定された前記熱回路に関するパラメータ及び被測定対象に塗布される目標の塗膜色を呈する塗膜構造体に対応する日射反射率を熱回路に設定するパラメータ設定手順と、パラメータ設定手順で設定されたパラメータ及び日射反射率に基づいて熱回路を解くことにより、被測定対象に流出入する熱量を予測する熱量予測計算手順とを実行させ、被測定対象の有する目標の塗膜色を呈する前記塗膜構造体に対応する日射反射率は、上記で述べた日射反射率測定プログラムにより算出させることを特徴とする。
また、本発明の遮熱効果の定量評価方法は、上記で述べた熱量予測計算方法によって算出された被測定対象に流出入する熱量に基づいて被測定対象の遮熱効果を定量的に提示し、評価可能とすることを特徴とする。
また、本発明のカラーデザイン方法は、色彩を提示し、決定する色彩決定手順と、色彩決定手順で決定された色彩に対応する原色塗料の配合を算出する候補算出手順と、候補算出手順で算出された原色塗料配合候補に対して日射反射率を算出する日射反射率予測計算手順と、日射反射率予測計算手順で算出された日射反射率に基づいて被測定対象に流出入する熱量の計算を行う熱量予測計算手順と、熱量予測計算処理手順で算出された熱量に基づいて被測定対象の遮熱効果を定量的に評価する定量評価手順と、色彩を前記被測定対象に適用したときの遮熱効果を定量的に提示する提示手順とを有することを特徴とする。
本発明によれば、目標とする塗膜色を入力し、目標とする色を得るための原色塗料の配合を取得し、下地の分光反射率及びその上に塗布される塗膜を有する塗膜構造体の日射反射率RSを算出することにより、目標とする塗膜色の日射反射率を容易に予測でき、予測された日射反射率から所望の塗膜色の遮熱機能を容易に予測することが可能となる。
また、本発明によれば、予測計算された日射反射率から日射吸収率を求め、これを熱量予測対象に適用することにより、被測定対象に流入する熱量を算出することができる。さらに、算出した熱量予測対象の熱量に基づいて空調負荷、体感温度などの熱量予測対象の環境を定量的に示すことができる。
図4は本発明の一実施例のブロック構成図を示す。
本実施例が適用されるシステム100は、入力装置101、処理装置102、メモリ103、表示装置104、出力装置105、プログラムファイル106、原色塗料組合データベース107、調色配合量組合データベース108、原色塗料単価データベース110、下地情報データベース110、塗料情報データベース111、計算結果出力ファイル112を含む、コンピュータシステムから構成されており、目標とする塗膜色の塗膜構造体に対して可視光波長域及びそれに隣接する非可視光波長域での波長λにおける日射反射率を計算し、計算した日射反射率に基づいて建物に流出入する熱量を計算し、さらに、計算した熱量に基づいて建物の遮熱効果を定量的に評価する処理を行う。
なお、塗膜構造体は、下地及び目標色が得られるように原色塗料を配合した塗料から形成される塗膜とからなる構造体である。さらに、波長λは、可視光波長域及び少なくとも紫外光領域及び赤外光領域を含む、可視光波長域に隣接する非可視光波長域を含む波長である。
入力装置101は、キーボード、マウスなどから構成されており、ユーザによって操作され、目標とする塗膜色などのデータやコマンド入力の入力が行われる。
処理装置102は、CPUなどから構成されており、プログラムファイル106にインストールされたプログラムに基づいてデータを処理する。メモリ103は、RAMなどの揮発性記憶装置から構成され、処理装置102の作業用記憶領域として用いられる。
表示装置104は、CRT、LCDなどから構成されており、処理装置102での塗料調色プログラムの処理により取得される分光反射率などの結果などを表示する。出力装置105は、例えば、プリンタであり、処理装置102での塗料調色プログラムの処理により取得される日射反射率予測結果などをプリントアウトする。
プログラムファイル106、原色塗料組合データベース107、調色配合量組合データベース108、原色塗料単価データベース109、下地情報データベース110、塗料情報データベース111、計算結果出力ファイル112は、ハードディスクドライブなどの記憶装置に設定される。
プログラムファイル106は、各種プログラムがインストールされたファイルである。
原色塗料組合データベース107は、代表的な総原色塗料数n、使用原色塗料数kについて作成した数表が格納されている。
調色配合量組合データベース108は、原色塗料の配合量の組合せが予め記憶されたデータベースである。
原色塗料単価データベース109は、原色塗料の単価が予め記憶されたデータベースである。
下地情報データベース110は、各種下地の分光反射率ρ(λ)、及びそれぞれのサンダーソン補正係数がデータベース化されたものであり、予め実測した鉄鋼、亜鉛メッキ鋼板等の各種鋼板素材や、モルタル、ALC等の各種コンクリート素材、或いは、木質外装材、アスファルトコンクリート等の基材や、既になんらかの塗装が施されている建築物の屋根・壁面、道路面、或いは、車両、船舶等、日射による熱負荷の軽減が望まれる構造物表面の分光反射率ρg(λ)の測定値が予め入力されている。
塗料情報データベース111は、各塗料各原色の散乱係数S、及び、吸収係数K、サンダーソン補正係数、並びに、膜厚換算係数がデータベース化されたものである。
計算結果出力ファイル112は、プログラムの計算結果、例えば、原色塗料組合、その配合量、使用塗料価格、分光反射率などの計算結果が記憶される。
また、計算された分光反射率ρ(λ)を下地情報データベース110、又は、塗料情報データベース111に再入力しておけば、この塗り替え時の塗装仕様における下地の反射率ρg(λ)として利用できる。
なお、システム100は、プログラムファイル106に本発明の日射反射率予測計算プログラムがインストールされており、本発明の日射反射率予測計算装置を構成する。
システムにインストールされる日射反射率計算プログラムは、目標とする塗膜色を呈する塗膜構造体の日射反射率予測計算方法を、コンピュータを用いて実行する。
目標とする塗膜色を呈する塗膜構造体の日射反射率予測計算方法は、目標とする塗膜色を入力する入力手順と、入力手順で入力された目標とする塗膜色を得るための原色塗料の配合を取得する塗料配合取得手順と、目標とする塗膜色の塗料が塗布される下地と塗料配合取得手順で取得された原色塗料の塗膜とからなる塗膜構造体の可視光波長域及びそれに隣接する非可視光波長域での波長λでの分光反射率を算出し、算出した分光反射率に基づいて日射反射率RSを算出する日射反射率算出手順とを有する。
また、上記日射反射率算出手順は、可視光波長域及びそれに隣接する非可視光波長域での波長λについて下地の分光反射率ρg(λ)を算出し、算出した下地の分光反射率ρg(λ)に基づいて下地の反射率Rg(λ)を算出する下地反射率算出手順と、下地に積層される塗膜の各原色についての単位厚さ当たりの吸収係数及び散乱係数、原色配合比、膜厚を取得する塗膜データ取得手順と、下地反射率算出手順で取得した下地の反射率Rg(λ)、及び、塗膜データ取得手順で取得された塗膜の各原色についての単位厚さ当たりの吸収係数及び散乱係数、原色配合比、膜厚に基づいて塗膜構造体の反射率R(λ)を算出し、これに基づいて塗膜構造体の分光反射率ρ(λ)を算出する塗膜構造体分光反射率算出手順とを有する。
さらに、塗膜構造体分光反射率算出手順で算出された分光反射率ρ(λ)を下地の分光反射率ρg(λ)に設定し、下地反射率算出手順、及び、塗膜データ取得手順、並びに、塗膜構造体分光反射率算出手順を順次に繰り返すことにより、二種以上の塗料種積層によってなる塗膜構造体の分光反射率ρ(λ)を算出する。
塗料配合取得手順は原色塗料の配合から目標とする塗膜色に近似する原色塗料の配合の候補を取得し、日射反射率算出手順は塗料配合取得手順で取得した原色塗料の配合の候補に対して日射反射率を算出することを特徴とする。
本実施例の日射反射率予測計算プログラムの処理動作をより具体的に説明する。
本実施例の日射反射率予測計算プログラムは、目標とする塗膜色を呈する塗膜構造体の日射反射率を予測するプログラムであり、主に、目標とする塗膜色を入力する入力手順と、入力手順で入力された目標とする塗膜色を得るための原色塗料の配合を取得する塗料配合取得手順と、目標とする塗膜色の塗料が塗布される下地と塗料配合取得手順で取得された原色塗料の塗膜とからなる塗膜構造体の可視光波長域及びそれに隣接する非可視光波長域での波長λでの分光反射率を算出し、算出した分光反射率に基づいて日射反射率RSを算出する日射反射率算出手順とを有する。
以下に、日射反射率予測計算プログラムの処理を図面とともに説明する。
図5は日射反射率予測計算プログラムの処理フローチャートを示す。
なお、図5において、
C0は、ターゲット色 L*0, a*0, b*0である。
G1,G2,・・・,Gnは、総原色塗料数nの各原色塗料名である。
kは、使用原色数である。
sは調色配合ステップ数である。
最小配合単位はΔg=100/s(%)で表される。
ΔEmaxは、色差の許容値であり、計算上の色差がこの値以下となれば調色配合計算は終了する。
nCkは原色塗料組み合わせ総数であり、総原色塗料数nの中から任意の使用原色塗料k色を選ぶ組み合わせの総数である。
Nは調色配合量組み合わせ総数であり、使用原色塗料各色の配合量をΔgずつ変化させたときの調色配合量組み合わせの総数である。
Ccalは計算された調色配合量での塗膜色L*c, a*c, b*cである。
g1,g2,・・・,gkは、計算された使用原色塗料G1,G2,・・・,Gkのそれぞれの調色配合量(%)である。
Rsは、計算された調色配合量での塗膜を指定された塗布量で下地上に塗布した場合の塗膜構造体の日射反射率である。
ΔE(Ccal-C0)は、計算された塗膜色Ccalとターゲット色(目標とする塗膜色)C0との色差である。
Costは、計算された調色配合量での調色塗料単価である。
処理装置102はユーザによる入力装置101の操作により、塗料調色プログラムを起動させる。処理装置102は塗料調色プログラムがスタートされると、ターゲット色C0、下地の種類及びその塗布量並びに使用する原色塗料名G1〜Gn、使用原色塗料数k、配合ステップ数s、許容誤差ΔEmaxの入力を要求する。
処理装置102はステップS11−1〜S11−3でユーザからターゲット色C0が入力されると、ステップS11−4で原色塗料組み合わせ総数nCk、及び、調色配合組み合わせ総数Nを計算する。
原色塗料組み合わせ総数nCkは、総原色塗料の数n色の中から任意の使用原色塗料の数k色を選ぶ組み合わせの総数であり、下記の式(1−1)により算出される。
Figure 2008170155
原色塗料組み合わせデータベース107は、例えば、表5に示すようなデータ構造とされており、代表的な総原色塗料数n、使用原色塗料数kについて計算し、その結果を順次、表5に示すような数表に格納することにより作成される。処理装置102は、ステップS11−5で原色塗料組み合わせ番号をj=1に設定し、ステップS11−6〜S11−14において、j=1〜nCkまで日射反射率予測計算処理、及び調色配合塗料単価計算処理を繰り返し行うことによって指定した全ての原色塗料組み合わせについて調色配合量を計算する。
Figure 2008170155
また、調色配合組み合わせ総数は、使用原色塗料の数のk色の配合量をΔg=100/sづつ変化させたときの調色配合量の組み合わせの総数であり、下記の式(1−2)で算出される。
Figure 2008170155
例えば、3原色塗料調色系で、配合ステップ数を100(最小配合単位Δg=1%)とするとk=3、s=100となるので、上式よりN=176851通りの調色配合量の組合せが存在することになる。
調色配合量をΔgの倍数で表した配合単位倍数の組合せの具体例を表6〜8に示す。
Figure 2008170155
Figure 2008170155
Figure 2008170155
表6、7、8に示すようにMksにはM(k-1)1、M(k-1)2、M(k-1)3、・・・、M(k-1)sが順に現れる「入れ子構造」になっている。表6の実線で囲んだ部分と表7の実線で囲んだ部分とが同じデータ構造となっており、表6の破線で囲んだ部分と表7の破線で囲んだ部分とが同じデータ構造となっている。また、表6の一点鎖線で囲んだ部分と表7の一点鎖線で囲んだ部分とが同じデータ構造となっており、表6の二点鎖線で囲んだ部分と表7の二点鎖線で囲んだ部分とが同じデータ構造となっている。
さらに、表7の実線太線で囲んだ部分と表8の実線太線で囲んだ部分とが同じデータ構造となっており、表7の破線太線で囲んだ部分と表8の破線太線で囲んだ部分とが同じデータ構造となっている。また、表7の一点鎖線太線で囲んだ部分と表8の一点鎖線太線で囲んだ部分とが同じデータ構造となっており、表7の二点鎖線太線で囲んだ部分と表8の二点鎖線太線で囲んだ部分とが同じデータ構造となっている。
このような「入れ子構造」を利用して、計算を繰り返すことによって、任意の使用原色塗料数k、配合ステップ数sのときの配合単位倍数組合せのマトリクスMksを算出し、その個々の配合単位倍数に最小配合単位Δg(%)をかけることによって、それぞれの調色配合量を求めることができる。
これによって、調色配合量組み合わせの算出を簡略化することが可能となる。
調色配合量組み合わせデータベース108は、例えば、表6、表7、表8に示すようなデータ構造とされ、代表的な使用原色塗料数k、調色配合ステップ数sについて調色の配合の組み合わせを計算し、その結果を順次、数表に格納することにより作成される。処理装置102は、ステップS11−6で調色配合組み合わせ番号i=1に設定し、ステップS11−7〜S11−10において、iについて、i=1〜Nまで繰り返し後述する日射反射率予測計算を行うことによって、ターゲット色に許容色差ΔEmax以内で近似する調色配合量を計算する。
ステップS11−7で行われる日射反射率予測計算処理は、原色塗料、各色の塗膜の吸収係数K、散乱係数Sと、調色配合からダンカンの混色理論を用いて合成することで、調色塗膜の吸収係数K、散乱係数Sの値を算出し、これと、下地の分光反射率、及び、その上に塗布される調色塗膜の膜厚から、クベルカ‐ムンク理論を用いて、調色塗膜の分光反射率を計算し、この分光反射率算出をJIS R 3106記載の各波長λで実施することによって日射反射率を予測計算し、また、可視光波長域での分光反射率算出結果を用いて塗膜色の予測を行うものである。
なお、処理装置102は、ステップS11−8で、ステップS11−7で調色配合組み合わせ番号iについて算出した、日射反射率Rs、原色塗料名G1〜Gk、調色配合量g1〜gk、塗膜色Ccalを計算結果ファイル112に蓄積する。なお、処理装置102はステップS11−9では調色配合組み合わせを終了するための条件、(ΔE(Ccal-C0)>ΔEmax)、及び、(i<N+1)の条件の判定を行っている。すなわち、ステップS11−9では、調色配合された塗膜色の色Ccalとターゲット色C0との色差ΔE(Ccal-C0)が予め設定された許容色差ΔEmaxより大きいか否か、及び、調色配合組み合わせ番号iが調色組み合わせ総数(N+1)未満か否かの判定を行っている。処理装置102は、ステップS11−9で終了条件となったとき、すなわち、色差ΔE(Ccal-C0)が許容色差ΔEmaxより大きく、かつ、調色配合組み合わせ番号iが調色組み合わせ総数N+1未満のときには、ステップS11−10で調色組み合わせ番号i=i+1として、次の調色配合組み合わせについて日射反射率予測計算を実行する。
また、処理装置102は、ステップS11−9で終了条件となったとき、すなわち、色差ΔE(Ccal-C0)が許容色差ΔEmax以内となったとき、あるいは、調色配合組み合わせ番号iが調色組み合わせ総数N+1に達すると、ステップS11−11で色調配合塗料単価計算処理を実行する。
処理装置102は、ステップS11−12で、ステップS11−11での色調配合塗料単価計算処理結果を含む計算結果、原色塗料名G1〜G、調色配合量g1〜gk、日射反射率Rs、ターゲット色との色差ΔE(Ccal-C0)、調色塗料単価Costを、計算結果出力ファイル112に蓄積する。
処理装置102は、ステップS11−13で原色塗料組み合わせ番号jが原色塗料組み合わせ総数nCk未満か否かを判定している。処理装置102は、ステップS11−13で原色塗料組み合わせ番号jが原色塗料組み合わせ総数nCk未満の場合には、ステップS11−14で原色塗料組み合わせ番号j=(j+1)して、ステップS11−6に戻って次の原色塗料組み合わせについて、調色配合量を変化させつつ、日射反射率Rsを計算する。
また、処理装置102は、ステップS11−13で原色塗料組み合わせ番号jが原色塗料組み合わせ総数nCkに達すると、処理を終了する。
ユーザは、計算結果出力ファイル112に記憶された塗膜色Ccal、日射反射率Rs、調色塗料単価Costなどを提示することが可能となる。
なお、本実施例では、遮熱白色原色の調色配合量が100%から順次、各原色塗料の配合量を増加させていき、ターゲット色に近似できた時点で計算を終了する計算方法を用いたが、調色配合決定アルゴリズムは、この他にも多数考えられそのいずれを用いても同様な結果を得ることができる。
例えば、ターゲット色C0のデータから、計算の初期値を変化させて計算負荷を減らす方法や、調色配合ステップ数sを小さな値からスタートさせ、配合領域を狭めながら順次、調色配合ステップ数sを大きくして計算精度を向上させる方法等が考えられる。また、本実施例によれば、明度最大となる調色配合量が遮熱白色原色100%を起点に網羅的な計算を行うため、ターゲット色C0を明度最小であるL*=0、a*=0、b*=0の純粋な黒とすると、L*a*b*空間における各調色系での調色可能色域を示す色立体データをファイルに出力することができる。
なお、本実施例では、原色塗料、及び、その調色配合量を変化させつつ、順次に日射反射率を算出するようにしたが、使用原色塗料の組み合わせ、及び、その調色配合量の組み合わせのうち予めターゲット色に近似した上位の組み合わせを、一般CCMなどを用いて取得した後、日射反射率予測計算処理を実行し、使用原色塗料、その調色配合量、及び、日射反射率などを取得するようにしてもよい。
図6は塗料調色プログラムの変形例の処理フローチャートを示す。
本変形例の塗料調色プログラムでは、処理装置102は、ユーザによる入力装置101の操作により、塗料調色プログラムを起動させる。処理装置102は塗料調色プログラムがスタートすると、ターゲット色C0、及び、使用原色塗料名G1〜Gn、使用原色塗料数k、配合ステップ数s、許容色差ΔEmaxなどの入力を要求する。
処理装置102は、ターゲット色C0、及び、使用原色塗料名G1〜Gn、使用原色塗料数k、配合ステップ数s、許容色差ΔEmaxなどが入力されると、ステップS12−1で一般CCMを用いて入力された配合ステップ数s毎に使用原色塗料及びその配合量を変えて、許容色差ΔEmax以内となるように調色処理を実行する。
処理装置102は、ステップS12−2で、ステップS12−1の一般CCM処理により求められた使用原色塗料名G1〜Gk、その調色配合量g1〜gk、ターゲット色との色差ΔE(Ccal-C0)のうち、例えば、色差ΔE(Ccal-C0)が小さい上位3種類の使用原色塗料名G1〜Gk、その調色配合量g1〜gk、ターゲット色との色差ΔE(Ccal-C0)を計算結果出力ファイル112に蓄積する。
次に処理装置102は、日射反射率予測計算処理で用いられる下地種類及び塗布量の入力を求め、ステップS12−3で下地種類及び塗布量が入力されると、ステップS12−4で、ステップS12−1の一般CCM処理で求められた使用原色塗料名G1〜Gk、その調色配合量g1〜gk及びステップS12−3で入力された下地種類及び塗布量に基づいて日射反射率予測計算を行う。
次に処理装置102は、ステップS12−5で原色塗料単価データベース109から使用原色塗料の単価を取得し、調色配合量に適用して、調色配合単価を計算する。次に処理装置102は、ステップS12−6で使用原色塗料名G1〜Gk、調色配合量g1〜gk、日射反射率Rs、ターゲット色との色差ΔE(Ccal-C0)、調色塗料単価Costを計算結果出力ファイル112に蓄積する。
ユーザは、計算結果出力ファイル112に記憶された使用原色塗料名G1〜Gk、調色配合量g1〜gk、日射反射率Rs、ターゲット色との色差ΔE(Ccal-C0)、調色塗料単価Costなどを提示することが可能となる。
また、算出された日射反射率Rsから被測定対象の有する塗膜構造体の日射吸収率(1−Rs)を求め、求められた日射吸収率(1−Rs)を熱量予測処理のためのパラメータの一つとして設定することにより塗膜構造体の熱量予測計算を行うことが可能となる。ここで、塗膜構造体とは、目標とする塗膜色を呈する塗膜が塗布されるべき下地、及び、下地に塗布された塗膜とからなる構造体を指している。また、被測定対象とは、塗膜構造体が適用される対象物を指しており、例えば、建築物、自動車などである。
〔遮熱日射反射率予測計算処理〕
次にステップS11−7、ステップS12−4の日射反射率予測計算処理について詳細に説明する。
〔原理〕
まず、日射反射率予測計算処理の原理について説明する。
〔日射反射率RS
塗膜の日射反射率RSは、JIS R 3106 (1998)「板ガラス類の透過率・反射率・放射率・日射取得率の試験方法」の「6.日射透過率・日射反射率及び日射吸収率の算定」に記載された計算方法に準じ計算することができる。
その理論的な基礎式は以下のように表される。
Figure 2008170155
実際の計算上は、積分では煩雑なため、式(2)を用いる。
Figure 2008170155
Eλ・Δλの値については、上述のJIS R 3106の付表2「日射透過率、日射反射率及び日射吸収率を計算するための重価係数」に記載されている。
図7は日射透過率、日射反射率及び日射吸収率を計算するための重価係数を説明するための図を示す。
図7には、波長300〜2500nmまでの重価係数が記載されているが、300〜2100nmまでを用いることを標準と規定しており、2100〜2500までの値も含めて計算に使用する場合には、「その旨を報告の数値に附記する」ことと規定している。
図8は、JIS R 3106に基づいて求められた直達日射相対値の標準スペクトル分布を示している。
図8において、
紫外線波長域:波長300〜380nm
可視光波長域:波長380〜780nm
赤外線波長域:波長780〜2100nm
と区分することが一般的であり、通常、この波長域300〜2100nmについて式(2)の計算を実施し、日射反射率RSを求めることとなる。
ここで、上記の波長域それぞれについて
Figure 2008170155
を計算すると、その比は
紫外線波長域:1.7%
可視光波長域:50.2%
赤外線波長域:48.1%
となり、この比が日射エネルギーの波長域別構成を表している。つまり、日射エネルギーの約半分は、赤外線波長域にあり、これを如何に反射するかによって日射反射率の高低が大きく変化することが解る。
また、可視光波長域の反射率は、塗膜色と密接な関係にあるため、その自由な変更が極めて困難であるのに対し、赤外線波長域は、目に見えないが故に、その高低は、塗膜色とは無縁であり、塗料設計上の自由度が大きく確保できるという利点となり、日射反射率RSを考える上ではとりわけ重要な波長域である。
また、日射反射率RSの算出方法については、上述のJIS R 3106以外にも、JIS A 5759(1998)「建築窓ガラス用フィルム」等にも規定があるが、いずれの規定においても重価係数の扱いが若干異なる程度であり、同様に計算することができる。
〔日射反射率RSの計算例〕
図9は、分光反射率ρ(λ)の実測例を示す図である。
図9では、遮熱塗料の原色群から、レッド、ブルー、エローの3原色について、図2に示すような測定システム100を用いて、波長300〜2500nmの波長域で塗膜構造体の分光反射率ρ(λ)を測定した実測例を示している。
なお、試験片は、塗装下地としてJIS K 5600 (1999) 4.1.2に規定されている隠蔽率試験紙の白地部分を用い、上記3原色塗料をそれぞれ6mil塗布した塗膜構造体を使用している。
以上のような測定で得られた分光反射率ρ(λ)と、図7に示すJIS R 3106の付表2「日射透過率、日射反射率RS及び日射吸収率を計算するための重価係数」に記載のEλ・Δλの数表を用いて、式(2)の計算を実施することによって、日射反射率RSを求めることができる。
図10は3原色の分光反射率ρ(λ)の測定値を用いて日射反射率RSの計算を行った結果を示す図である。
本実施例のように、塗膜構造体の日射反射率RSは、塗膜構造体の分光反射率ρ(λ)の測定値から計算される。
次に、塗膜構造体の分光反射率ρ(λ)の予測計算方法について説明する。
まず、紫外線〜可視光〜赤外線(300〜2100nm)に亘る波長域において、任意の下地上に、任意の調色配合塗料を1層塗布した場合の、塗膜構造体の分光反射率ρ(λ)の予測計算方法について説明する。
〔クベルカ−ムンク理論〕
このような塗膜構造体の分光反射率ρ(λ)についての研究としては、例えば、P.KubelkaとF.Munkが1931年に報告した塗膜層の光学的性質についての理論的な解析結果が知られており、一般に「クベルカ−ムンク理論」と呼ばれている。(P.Kubelka , F.Munk , Z.tech.Phys. , 12 , 593 (1931))。
図11はクベルカ−ムンク理論の概念図を示す。
この「クベルカ−ムンク理論」は、ある散乱係数Sと吸収係数Kを持った膜厚Xである均質な塗膜層が、反射率Rgである下地に上に密着(Optical Contact)して置かれたときの反射率Rを求めるものである。
〔ダンカンの混色理論〕
また、複数の原色を混色することによってなる調色塗膜の散乱係数Sと吸収係数Kについては、1962年にD.R.Duncanによって次のような報告がなされている。
ここで、原色1〜nのn種の原色を、配合比Cで混色することによって得られる調色塗膜の散乱係数Sと吸収係数Kは以下のように表すことができる。
Figure 2008170155
これは、散乱係数Sと吸収係数Kには加法則が成り立つということを示しており、調色塗膜のK/Sは次の式で表される。
Figure 2008170155
この結果は、「ダンカンの混色理論」として知られている(D.R.Duncan, J. Oil.Colour.Chem.Assoc, 45 , 300 (1962))。
〔日射反射率計算手法〕
本実施例では、「クベルカ−ムンク理論」、及び、「ダンカンの混色理論」を基礎として、日射反射率を計算している。
このとき、本実施例では、分光反射率ρ(λ)の実測値と、「クベルカ−ムンク理論」での反射率Rを関係付ける補正を行っている。
図12は分光反射率ρ(λ)の実測値とクベルカ−ムンク理論での反射率Rを関係付ける補正を説明するための図を示す。
クベルカ−ムンク理論で扱う反射率R(λ)は、図12(A)に示すように均質な塗膜層131による理想状態での反射であるが、実測上は、図12(B)に示すように空気132と接するある屈折率を持つ塗膜層131での界面、或いは、塗膜層131と下地133との界面で、屈折率の差に起因する反射が生じる。
実測で得られる分光反射率ρ(λ)は、これら界面で生じる反射の影響を含む反射光全体についての値となるため、計算で得られる反射率R(λ)を実測状態での分光反射率ρ(λ)へ補正する必要がある。
このような補正を行う方法としては、1942年にJ.L.Saundersonが報告した「サンダーソン補正式」と呼ばれる補正式が知られている(J.L.Saunderson , J.Opt. Soc. Am. , 32 , 727 (1942))。
サンダーソン補正式は、
Figure 2008170155
で表される。
式(8)においてk1は、フレスネル反射係数である。
フレスネル反射係数k1は、塗膜面に垂直な入射光に対しては、
Figure 2008170155
で表せる。
式(9)において、n0=1.0003であるから、n1=1.5程度の樹脂では、k1=0.04程度と予想される。実際には、表面状態等の影響も受けるため、実験的に求めることとなるが、0.00〜0.05の値を用いることが多い。
また、式(8)において、k2は、内部拡散反射係数である。
内部拡散反射係数k2は、以下のような予測式が、数多く報告されているが、これについても、実際には、実験的に求めることが多く、0.3〜0.8の値を用いることが多い。
Figure 2008170155
なお、k1、k2の値を求める方法の詳細については、例えば、「E.L.Cairns , D.A.Holtzen , D.L.Spooner Color Res. and Application , 1 , No.4 , 174 (1976)に記載がある。
さらに、式(8)において、klinは光学系に関する正反射成分であり、理論的には、正反射光を完全に含む測定の場合
lin=k1
正反射光を完全に含まない測定の場合
lin=0.0
と考えることができる。しかしながら、光学系・試験片の表面性状の影響を強く受けるため、これについても実験的に求めることが多く、0.00〜0.05の値を用いることが多い。
また、式(8)は、R(λ)をρ(λ)に補正する式となるが、この逆補正として分光反射率ρ(λ)を反射率R(λ)に補正する式(サンダーソン逆補正式)は以下のように表せる。
Figure 2008170155
〔クベルカ−ムンク理論〕
次に、クベルカ−ムンク理論について説明する。
図13はクベルカ−ムンク理論のモデル図を示す。
図13に示すように均質な塗膜層131の中に微小厚さdxの層134を想定し、この層134の下方、上方から来る光束i、jを考える。
まず、下方に向かって通過する光束については、上方から来る光束iの変化量diは、微小層dxの吸収によってiKdx減少し、微小層dxの散乱によってiSdxだけ減少し、下方から来る光束jの微小層dxによる散乱によってjSdxだけ増加する。
また、上方に向かって通過する光束については、下方から来る光束jの変化量djは、微小層dxの吸収によってjKdxだけ減少し、微小層dxの散乱によってjSdxだけ減少し、上方から来る光束iの微小層dxによる散乱によってiSdxだけ増加する。
この様子を上方への変化を+の方向として微分方程式に纏めると次のように表すことができる。
Figure 2008170155
式(12)、式(13)に示される微分方程式は以下のように解くことができる。
式(12)、式(13)の両辺をそれぞれi、jで割り辺々足し合わせると、
Figure 2008170155
ここで、j/i=rとおき、両辺にr/Sを乗じて整理すると、
Figure 2008170155
さらに、
Figure 2008170155
とおき、両辺にSを乗じて整理すると、
Figure 2008170155
式(18)は積分することができて、その一般解は積分定数をCとして、
Figure 2008170155
ここで、図13に示すモデルより、塗膜層131の厚さx=0のときr=j/i=RSであり、塗膜層131の厚さx=Xのときr=Rであると考えられるからその範囲で、式(18)を積分すると、
Figure 2008170155
となる。よって、図13に示すモデルの一般解は次式のように表記できる。
Figure 2008170155
次に、塗膜層131の厚さが任意のXであったときの反射率Rを求める式を導出する。
式(22)でX=∞とすると、右辺は∞となる。このときの左辺が∞となるためには、RS=0と考えてよいため、
Figure 2008170155
に収束することになる。
したがって、X=∞のときの反射率RをRと表記することとすると、
Figure 2008170155
で表せる。また、その逆数をとると、
Figure 2008170155
で表せる。
これらを用いて式(22)の一般解を書き換えると、
Figure 2008170155
で表せる。
この式(27)によって、
下地133の反射率Rg、厚さX=∞のときの(完全隠蔽のときの)反射率R、塗膜層131の散乱係数Sが既知であれば、任意の厚さXのときの反射率Rを求めることができる。
また、式(27)は、式(16)より、
Figure 2008170155
であるから、
式(27)と式(28)より、塗膜層131の散乱係数S、及び、吸収係数Kが既知であれば、反射率Rgの下地133の上に、この塗膜層131を任意の厚さXで密着させたときの反射率Rを求めることができることとなる。
このようにして導出された反射率R(λ)から、式(8)のサンダーソン補正を用いてρ(λ)を求め、これを式(2)に代入することにより日射反射率RSを計算することができる。
式(22)の一般解は式(27)以外の形にも書き下すことができる。
例えば、
Figure 2008170155
とおき、以下のような双曲線関数(hyperbolic cotangent)を用いると、
Figure 2008170155
で表せる。
また、式(22)より、
Figure 2008170155
で表せる。
この式(32)を用いても、式(27)と式(28)同様、
塗膜層131の散乱係数S、及び、吸収係数Kが既知であれば、反射率RSの下地133の上に、この塗膜層131を任意の厚さXで密着させたときの反射率Rを求めることができる。
また、式(24)は、
Figure 2008170155
で表せる。
この式は、下地133の反射率Rgの影響を受けない無限大膜厚(完全隠蔽膜厚)のときの反射率Rについての、クベルカ−ムンク理論の帰結としてよく知られている公式である。
しかし、前述のように、日射反射率予測計算は、下地133の反射率Rgの影響を前提としているため、式(33)から日射反射率を求めることは困難である(参考文献:財団法人日本色材研究所編 カラーマッチングの基礎と応用 日刊工業新聞社 (1991)/村田幸男 色彩技術ハンドブック 株式会社総合技術センター (1990))。
〔多層積層への展開〕
次に多層積層への展開方法について説明する。
図14は多重積層系の計算手順を説明するための図を示す。
前出の図13に示すように、クベルカ−ムンク理論は、反射率Rgである下地133の上に、1層の塗膜層131が密着(Optical Contact)して置かれたときの反射率Rを求めるものである。
しかし、実際の塗装系においては、鋼板、コンクリート等の様々な素材よりなる基材の上に、下塗り/中塗り/上塗り/クリヤー等の塗料を塗り重ねる場合や、既に何らかの塗装系が施工してある被塗物を、さらに、何らかの塗装系で塗り替える場合など、複数の色材による多層積層系となることが一般的である。
このような多層積層系となる場合であっても、図14に示すように下層より順を追って反射率Rを計算し、次に、この計算された反射率Rを下地の反射率Rgとして上層へ計算を進めていくことにより、反射率の計算は可能となる。
〔散乱係数S、及び、吸収係数K〕
次に、本本実施例の日射反射率予測計算処理での用いられる基礎的なパラメータのうちの塗膜の単位厚さ当たりの散乱係数S、及び、吸収係数Kの求め方について説明する。
ここで、未知数は、塗膜層131の散乱係数S、及び、吸収係数Kの2つのみであるから、2種類の反射率の異なる下地133上に、塗膜層131を密着させて、2通りの反射率Rを測定することにより、式(27)を用いて連立二元方程式として解くことは可能である。
このような解法のうち、簡便な方法の一例として、「湊の方法」(湊 , 千葉大学工学部研究報告 19 , No.36 , 203 (1968))が知られている。
式(27)をSについて纏めると、
Figure 2008170155
で表せる。
ここで、白い下地と、黒い下地の2種類の下地を用い、同一塗料で同一膜厚の塗膜層を作成すると、この2つの試験片から計算される散乱係数Sは同じ値となるはずなので、
Figure 2008170155
で表せる。
この式の第2辺と第3辺をみると、Rg1、Rg2、R1、R2は実測できるから、この方程式での未知数はRのみとなる。
よって、式(35)より、以下のようにRを求めることができ、
Figure 2008170155
で表せる。
ここで、
Figure 2008170155
である。
こうしてRが求まったならば、式(35)に、Rと、(Rg1、R1)または、(Rg2、R2)の何れかを代入して散乱係数Sを求めることができる。
吸収係数Kについては、式(33)を用いて
Figure 2008170155
として求められる。
このように求められた散乱係数S、及び、吸収係数Kは、塗膜層131の単位厚さに対応する値となっており、これらの数値を用いて、上述の日射反射率の予測計算を実施することができる。
なお、下地133の影響を無視できる場合については、Rについて計算することが目的となるが、このときは、式(26)に示したように、散乱係数S、及び、吸収係数Kの比(K/S)がパラメータとなるので、散乱係数S、及び、吸収係数Kの単位厚さ当たりの値は必要ではなく、相対値でも計算可能となる。これに対し、下地133の影響を考慮する必要がある場合には、上述のように、塗膜層131の単位厚さに対応する絶対値として散乱係数S、及び、吸収係数Kを求めることが必須となる。
〔透過率の計算方法〕
また、多層積層系塗膜における日射反射率予測計算を行う際、下層の反射率の全体の日射反射率への影響度を考慮するため、各単一塗膜層の透過率を算出する必要がある。
なお、クベルカ−ムンク理論では、塗膜層131の散乱係数S、及び、吸収係数Kが既知であれば、塗膜層131によって形成される厚さXの単一塗膜層の反射率、及び、透過率について計算することができる。ここで、単一塗膜層とは、下地上に形成されていない、いわゆる、フリーフィルム状態を意味する。
透過率を実測する場合には単一塗膜層の透過率を測定することとなるので、実測される分光透過率をτFF(λ)、理論的に計算される透過率を透過率TFF(λ)、及び、実測される分光反射率をρFF(λ)、理論的に計算される反射率を反射率RFF(λ)としたとき、クベルカ−ムンク理論からは、厚さXである単一塗膜層の透過率、及び、反射率について以下のように表記される。
Figure 2008170155
式(39)は、hyperbolic sin関数、及び、hyperbolic cos関数を用いて以下のように表すこともできる。
Figure 2008170155
ここで、a、bについては式(16)、式(29)と同様で、
Figure 2008170155
である。
なお、単一塗膜層の分光透過率測定についても、理想状態の透過率TFF(λ)から実測状態の分光透過率τFF(λ)への補正が必要となる。このため、サンダーソン補正のときと同様にk1、k2を用いて、以下のように補正(Allen補正と呼ぶこととする)することができる。
この補正では、単一塗膜層の分光透過率τFF(λ)と、分光反射率ρFF(λ)を一組で補正することとなる。
Figure 2008170155
E.Allen , Color Res and Appl. , 12 , 106 (1987)参照。
散乱係数S、及び、吸収係数Kを求める場合に、下地の反射率を変えたときの分光反射率ρ(λ)の測定値を用いて求める方法(湊の方法)を前段で紹介したが、この方法とは別に「透過率」を測定する方法でもあっても同様に散乱係数S、及び、吸収係数Kを求めることができる。
このような方法として、式(45)で表される透過率を厚さの異なる2枚の薄膜について測定し、未知数である散乱係数S、及び、吸収係数Kを求める、いわゆる、「Caldwellの方法」(B.P.Caldwell , J. Opt. Soc. Am. , 58 , 755 (1968))が知られている。
〔散乱係数S、及び、吸収係数Kの計算結果〕
ここで、散乱係数S、及び、吸収係数Kの計算例について説明する。
図15は散乱係数S及び吸収係数Kの計算結果の一例を示す図である。
図15は、ある遮熱塗料の原色群から、ホワイト原色について上述の「湊の方法」で得られた、散乱係数S、及び、吸収係数Kの計算結果を示しており、散乱係数S、及び、吸収係数Kは、塗膜の単位膜厚(μm)に対する値として計算した結果である。
試験片作成上は、均一膜厚を得るために、アプリケータ(厚さ単位はmilが一般的)を用いているが、通常の塗料施工の場合、塗布量m(塗布時の単位面積当たりの塗布重量:kg/m2)で管理することが多いため、これと、乾燥状態での膜厚である膜厚X(μm)との関係は予め実測してある。
この換算係数を膜厚換算係数(γ)とすると、
Figure 2008170155
と表され、測定に用いた遮熱塗料の場合は、
γ≒383
となる。
また、塗布量m(kg/m2)≒0.0164×塗布厚(mil)
膜厚X(μm)≒383×塗布量(kg/m2
とした。
なお、計算は、JIS R 3106の日射反射率計算に必要な波長のみで実施している。
図15に示すように赤外線波長域では、ホワイト原色であっても、散乱係数Sは、長波長になるに連れて減少し、吸収係数Kは、ホワイト原色のバインダーとして用いられている有機樹脂による赤外線吸収帯の影響を受ける様子が確認できる。
〔日射反射率予測計算処理結果〕
次に、日射反射率予測計算処理結果について説明する。
前段のように各原色の散乱係数S、及び、吸収係数Kを求めると、これら原色の任意の混色によって得られる混色塗膜について、分光反射率ρg(λ)を持つ基材上に、任意の塗布厚さで塗布した場合の、積層塗膜構造体の分光反射率ρ(λ)が求められることとなる。
そして、分光反射率ρ(λ)を用いて、JIS R 3106より日射反射率RSが計算される。
日射反射率の予測が困難である理由として、以下の2点を指摘したが、ここでは、この2点を考慮した場合について、日射反射率の計算予測値と実測値を比較することとする。
予測困難な理由:1.加法性が成立しない。2.塗布厚さによる変化が大きく、下地の影響を受ける。
図16はある遮熱塗料の原色のホワイト原色とブルー原色との混色による計算予測値と実測値との比較結果を示す図である。
なお、実測に用いた試験片は、隠蔽率試験紙の白地部分に上記塗料を6mil塗布したものを使用し、この条件に従って計算予測を実施した。6mil塗布は、塗布量0.98kg/m2に相当し、このときの膜厚は、約38μmとなる。
図16に示されるようにホワイト原色、及び、ブルー原色の分光反射率ρ(λ)の計算予測値が、実測値を再現しているのみならず、その2原色の等量混色についても精度よく計算されていることが解る。
日射反射率は、ここで計算された分光反射率ρ(λ)の計算予測値を用いて計算することができる。なお、図17にホワイト/ブルー原色混色での日射反射率の比較結果を示す図を示す。
図18、図19は原色のホワイト原色を、隠蔽率試験紙の白地部分、黒地部分の2種類の下地の上に塗布したときの計算予測値と実測値との比較結果を示す図である。図18はある遮熱塗料の原色のホワイト原色を、隠蔽率試験紙の白地部分、黒地部分の2種類の下地の上に4milの膜厚で塗布した条件での計算予測値と実測値との比較結果を示している。図19は10milの膜厚で塗布した条件での計算予測値と実測値との比較結果を示している。
なお、4mil塗布は、塗布量0.07kg/m2に相当し、このときの膜厚は、約25μmとなる。10mil塗布は、塗布量0.16kg/m2に相当し、このときの膜厚は、約63μmとなる。
図18、図19に示されるようにホワイト原色の分光反射率ρ(λ)の膜厚による変化、及び、下地の影響による変化が、計算によって再現されていることが解り、この例でも日射反射率は下表のように計算することができる。
図20はホワイト原色の膜厚/下地による日射反射率の計算結果を示す図である。
顧客への日射反射率提示における要求精度については、公的な規定等は無いが、市場での実務上は±5points(最大目盛の5%)程度であればよいと考えられる。
この要求精度を鑑み、上記の計算結果と実測値との比較を見ると、日射反射率の計算予測は充分良好に行うことができると判断できる。
なお、予測計算においては、サンダーソン補正係数k1=0.00、k2=0.60、klin=0.03を用いている。
〔塗膜色予測計算処理〕
次に、塗膜色予測計算処理の理論について説明する。
ここでは、日射反射率とは別に、分光反射率ρ(λ)から計算可能である「塗膜色」について説明する。
日射反射率計算の場合は、日射に含まれる波長域全体について計算する必要があるために、紫外線〜可視光〜赤外線に亘る300〜2100nmの波長域における分光反射率ρ(λ)を考慮したが、塗膜色計算は、可視光についてのみ計算すればよいため、上記の計算によって求めた分光反射率ρ(λ)のうち、380〜780nmのみの値を用いる。
分光反射率ρ(λ)から、塗膜色を計算する方法については、JIS Z 8722 (2000)「色の測定方法−反射及び透過物体色」に規定があり、これは、分光反射率ρ(λ)から、XYZ表色系の三刺激値X、Y、Zを計算するものである。
そのための基礎式は、
Figure 2008170155
で与えられている。
標準イルミナント、補助イルミナント及び代表的な蛍光ランプの下での三刺激値計算の場合の重価係数
Figure 2008170155
の値は、JIS Z 8722 (2000)「色の測定方法−反射及び透過物体色」の付表1に観測者の視野及び波長間隔に応じた数表として記載されている。
図21は観測者の視野及び波長間隔に応じた数表を示す図であり、建築物外装用塗膜の測色条件として比較的一般的な、C光源、2°視野の波長間隔5nmの数表を例示している。
なお、測定は図2に示す測定システム100によって行われ、測定条件はJIS Z 8722で分類されている「照明及び受光の幾何学的条件」での条件d(n-D)[0/d]に相当するものを用いている。
つまり、ρ(λ)の値が解れば、式(47)、式(48)より三刺激値X、Y、Zが計算されることとなる。
このようにして得られた三刺激値X、Y、Zで塗膜色の表記はなされたことになるのであるが、実際的には、このXYZ表色系から、L***表色系、或いは、三属性(色相H、明度V、及び、彩度C)のいわゆる、マンセル表示に変換した値を用いて塗膜色を表すことが行われている。
***表色系への変換については、JIS Z 8729 (2004) 色の表示方法−L***表色系及びL*u**表色系にその方法が規定されており、三属性(色相H、明度V、及び、彩度C)への変換については、JIS Z 8721 (1993) 色の表示方法−三属性による表示 に規定がある。
ここでは、塗膜色の管理に多く用いられるL***表色系への変換について説明する。
これは物体色を、国際照明委員会(略称CIE)が1976年に推奨した3次元の近似的な均等色空間であるCIE(1976) L***空間(略記CIELAB)で表示しようとするものである。
この変換式は、以下のように規定されている。
CIE1976明度L*については、Y/Yn>0.008856のとき、
Figure 2008170155
となり、Y/Yn≦0.008856のとき、
Figure 2008170155
となる。
また、L***表色系の色座標a*、b*については、
Figure 2008170155
となる。
さらに、Xn、Yn、Znの値については、「JIS Z 8729 付表3 完全拡散反射体の標準イルミナント及び補助標準イルミナントによる三刺激値並びに色度座標」に記載されている数表3のようになる。図22は完全拡散反射体の標準イルミナント及び補助標準イルミナントによる三刺激値並びに色度座標の数表を示す図である。
〔塗膜色予測計算結果〕
次に、塗膜色の予測計算結果について説明する。
前段では、クベルカ−ムンク理論から予測計算された分光反射率ρ(λ)の可視光波長域380〜780nmの値を用いて、塗膜色をL***表色系で表示できることを述べたが、ここでは、このように予測計算されたL***の値と実測値とを比較する。
図23、図24は、塗膜色の実測値と予測計算との比較結果を示す図である。なお、図23、図24は上述の日射反射率の予測計算の例示として用いた条件について上述の塗膜色の予測計算結果を示している。また、色差は、JIS Z 8730 (2002) 色の表示方法−物体色の色差に準じて以下の式で計算した。
Figure 2008170155
なお、C光源2°視野での計算値である。
また、建築物外装等での色差管理基準は、ΔE* ab≦0.5程度とする場合が一般的であり、これを鑑みると上記の塗膜色の予測計算は、良好に行うことができると判断できる。
次に本実施例で適用される分光反射率予測計算プログラムについて説明する。
本実施例の分光反射率予測計算プログラムで計算された多層積層系の分光反射率ρ(λ)を下地情報データベース217、又は、塗料情報データベース218に再入力しておけば、この塗り替え時の塗装仕様における下地の反射率ρg(λ)として利用できる。
図25は分光反射率予測計算プログラムの処理フローチャートを示す。
まず、処理装置102において、ステップS1−1で下地反射率算出処理が実行される。
図26は下地反射率算出処理の処理フローチャートを示す。
処理装置102はステップS2−1でユーザによって下地の種類:jが指定されると、ステップS2−2で指定された下地をキーとして下地情報データベース217が参照されて、下地情報データベース217から指定された下地の分光反射率ρgj、サンダーソン補正係数k1、k2、k1inが読み出され、ステップS2−3でこのうち指定された下地の分光反射率ρgjが計算結果ファイル112に出力される。
また、処理装置102は、ステップS2−4で分光反射率ρgj及びサンダーソン補正係数k1、k2、k1inを用いて式(11)に示すサンダーソン逆補正により下地の反射率Rgjを計算し、ステップS2−5で計算した下地の反射率RgjをRgとおく。
以上により下地反射率算出処理は終了し、下地の分光反射率ρgjを取得することができる。
次に、処理装置102は、ステップS1−2で分光反射率算出処理を実行する。分光反射率算出処理は、塗膜データ取得処理S1−2−1及び塗膜構造体分光反射率算出処理S1−2−2を含む処理である。
図27は分光反射率算出処理の処理フローチャートを示す。
処理装置102は、ステップS3−1でユーザによって下地に積層されるn層の塗料p1〜pn、各層の塗料の原色配合比(例えば、塗料p1の原色数qであるときの原色配合比)c11〜c1q)、塗布量m1〜mqが入力されると、ステップS3−2で計算を実施する層iを1に設定する。なお、ステップS3−1は図25に示すステップS1−2−1の塗膜データ取得処理に相当する。処理装置102は、ステップS3−3でiが(n+1)層になるまで、ステップS3−4〜S3−13を繰り返す。なお、ステップS3−4〜S3−12は、図25に示すステップS1−2−2の塗膜構造体分光反射率算出処理に相当する。
処理装置102は、まず、ステップS3−4で第i層の塗料の散乱係数S及び吸収係数Kを式(4)〜(6)に基づいて合成し、合成した散乱係数Spi、吸収係数Kpiを算出する。
次に処理装置102は、ステップS3−5で式(46)に基づいて第i層の塗料の塗布量miから膜厚Xiを換算する。さらに、ステップS3−6で式(27)、(28)に散乱係数Spi、吸収係数Kpi、膜厚Xiを代入し、第1〜第i層までの反射率Riを計算する。
次に処理装置102は、ステップS3−7で式(8)に反射率Riを代入することにより第1層〜第i層までの分光反射率ρiを計算する。
処理装置102は、ステップS3−8で第1〜第i層までの分光反射率ρiを計算結果ファイル112に出力する。
次に処理装置102は、ステップS3−9で、各層の散乱係数Spi及び吸収係数Kpi、膜厚Xiから式(39)〜(41)に基づいて第i層の透過率TFFi、及び、反射率RFFiを求める。次に処理装置102は、ステップS3−10で第i層の透過率TFFi、及び、反射率RFFiから式(45)を用いて第i層の分光透過率τFFi、及び、分光反射率ρFFiを算出する。
処理装置102は、ステップS3−11で第i層の分光透過率τFFi、及び、分光反射率ρFFiを計算結果ファイル112に出力し、ステップS3−12で第1〜第n層までの反射率Riを次の塗膜の下地の反射率Rgとして設定し、ステップS3−13で(i+1)をiとしてステップS3−3に戻って処理を続ける。
上記処理により、第n層までの塗膜の分光反射率ρi、各塗膜の分光透過率τFFi、分光反射率ρFFiを取得することができる。
次に処理装置102は、ステップS1−3で日射反射率算出処理を実行する。
図28は日射反射率算出計算処理の処理フローチャートを示す。
処理装置102は、まず、ステップS4−1で下地の反射率Rgから式(8)を用いて下地の分光反射率ρを計算する。次に処理装置102は、ステップS4−2で分光反射率ρから式(2)を用いて日射反射率RSを算出し、ステップS4−3で算出した日射反射率RSを計算結果出力ファイル219に出力する。
次に処理装置102は、ステップS4−4で各層の分光透過率τFFi、分光反射率ρFFiから下記の式(55)、(56)を用いて各層の日射透過率TSFFi、日射反射率RSFFiを計算するとともに、計算された日射透過率TSFFi、日射反射率RSFFiから下記の式(57)を用いて各層の日射吸収率ASFFiを計算し、ステップS4−5で計算された各層の日射透過率TSFFi、及び、日射反射率RSFFi、並びに、日射吸収率ASFFiを計算結果出力ファイル219に出力する。
Figure 2008170155
Figure 2008170155
Figure 2008170155
処理装置102は、ステップS1−4で塗膜色計算処理を実行する。
図29は塗膜色算出処理の処理フローチャートを示す。
処理装置102は、ステップS5−1でユーザにより光源種及び視野が入力されると、ステップS5−2で第n層までの分光反射率ρから式(47)、(48)を用いて三刺激値XYZを求める。
次に処理装置102は、ステップS5−3で三刺激値XYZから式(49)、(51)、(52)を用いてL***値を計算する。処理装置102は、ステップS5−4で第n層までの塗膜色を計算結果ファイル112に出力する。
処理装置102は、ステップS1−5で計算結果ファイル112に保持された第1〜第n層までの日射反射率RS、三刺激値XYZ、L***値、及び、各層の日射反射率RSFFi、日射透過率TSFFi、日射吸収率ASFFiを出力装置215によりプリントアウトする。
以上により、多層の日射反射率RS、及び、塗膜色を実測値に極めて近い値で算出できる。なお、図30に吸収係数K、散乱係数Sのデータを合成して求められた分光反射率ρ(λ)の数値計算結果の抜粋を示す図を示す。
なお、上記実施例では、本発明の分光反射率予測計算方法をコンピュータシステムにインストールされた分光反射率予測計算プログラムよって実現した例について説明したが、これに限定されるものではない。
〔熱量予測計算処理〕
所望の塗膜色を呈する塗膜構造体を有する被測定対象の熱量を計算するための熱量予測計算処理について説明する。
分光反射率予測計算処理で求められた日射反射率Rから日射吸収率(1−Rs)を求めて、求められた日射吸収率(1−Rs)にを熱回路のパラメータとして設定することによって熱量予測計算処理が実行される。
本実施例の熱量予測計算方法は、目標とする塗膜色を呈する塗膜構造体を有する被測定対象の熱量を予測計算する熱量予測計算方法であって、被測定対象の構造に基づいて熱回路を設定する熱回路設定手順と、熱回路設定手順で設定すべき熱回路に関するパラメータ及び被測定対象の有する塗膜構造体に対応する日射反射率を含むパラメータを熱回路に設定するパラメータ設定手順と、パラメータ設定手順で設定されたパラメータ及び日射反射率に基づいて熱回路を解くことにより、被測定対象に流出入する熱量を予測する熱量予測計算手順とを有し、被測定対象に塗布される目標の塗膜色の塗膜構造体に対応する日射反射率は上記日射反射率予測計算方法により算出される。この熱量予測計算方法は、熱量予測計算プログラムがインストールされたコンピュータシステムによって構成される熱量予測計算装置によって具現化される。
次に、熱量予測計算処理の具体例について説明する。
図31は熱量予測計算処理の処理フローチャートを示す。
処理装置102はステップS41−1で熱量予測計算プログラムが起動されると、ステップS41−2で起動された熱量予測計算プログラムにより被測定対象の所在地を要求する画面を表示する。
次に処理装置102はステップS41−3でユーザにより被測定対象が建物である場合、その建築物の所在地情報が入力されると、ステップS41−4で被測定対象の気象庁データベースから気象情報を取得する。
次に、処理装置102は、ステップS41−5で被測定対象の方角、および、サイズを要求するサイズ要求画面を表示する。処理装置102はステップS41−6でユーザにより被測定対象の方角、及び、サイズなどが入力されると、ステップS41−7で被測定対象の方角、及び、サイズなどを取得する。
次に、処理装置102は、ステップS41−8で被測定対象の内部温度などの条件を示す内部情報を要求する内部情報要求画面を表示する。処理装置102は、ステップS41−9で内部情報が入力されると、ステップS41−10で内部情報を取得する。
次に処理装置102は、ステップS41−10で取得した所在地情報から日射量、被測定対象のサイズ情報から被測定対象の表面積、内部情報から熱量など、熱量予測計算に必要なパラメータを算出する。パラメータは、建築環境工学などの分野で一般に用いられている日射量などを求めるための式から算出されるものであり、例えば、「環境工学教科書 第二版 環境工学教科書研究会編著 彰国社」に記載されているもので、すべて定常計算により取得できる。よって、計算が容易である。
図32は熱量予測計算に必要なパラメータを示す図である。
気象情報から取得されるパラメータは、外気温Tex〔℃〕、屋根面日射強度I〔W/m2〕、壁面日射強度Iw〔W/m2〕、風速v〔m/s〕である。外気温Tex〔℃〕は、所在地情報から近接する気象庁測候所を抽出し、抽出した気象台あるいは、測候所の気象データを気象庁などのデータベースから取得する。気象データは、通信装置116によりインターネットを介して気象庁あるいは気象情報提供会社などにアクセスすることにより取得することができる。
屋根面日射強度I〔W/m2〕、及び、壁面日射強度Iw〔W/m2〕は、所在地情報から近接する気象台、あるいは、測候所を抽出し、抽出した気象台、あるいは、測候所のデータから平均大気透過率、及び、抽出された気象庁測候所の緯度、経度、並びに、日照時間データから算出する。
例えば、太陽定数をJ0=1.37〔kW/m2〕、太陽高度をh〔度〕、大気透過率をPとすると、法線面直達日射量JDは、ブーガの式より、
D=0.5×J0×P^cosec(h) ・・・(2−1)
で求められる。また、水平面天空日射量Jsは、
s=0.5×J0×sin(h)・(1−P^cosec(h))/(1−1.4×ln(P))
・・・(2−2)
で求められる。
ここで、被測定対象である建物の屋根や屋上に直達する日射量である水平面直達日射量IHは、
H=JD×sin(h) ・・・(2−3)
で求められる。
さらに、被測定対象である建物の壁面に直達する日射量である鉛直面直達日射量Ivは、
v=JD×cos(h)×cos(α−Av) ・・・(2−4)
で求められる。なお、ここで、Avは、壁面方位角であり、単位は、〔度〕である。
水平面直達日射量と日照時間に基づいて水平面実照日射強度が算出され、鉛直面直達日射量と日照時間に基づいて鉛直面実照日射強度が算出される。なお、日照時間は、近接気象台あるいは測候所データより取得できる。
水平面実照日射強度は屋根面日射強度I〔W/m2〕に相当し、鉛直面実照日射強度は壁面日射強度Iw〔W/m2〕に相当する。
風速v〔m/s〕は、気象台、あるいは、測候所データより取得できる。
被測定対象を建物とした場合、建物条件から得られるパラメータは、屋根表面日射吸収率ar〔%〕、屋根面積Sr〔m2〕、屋根熱伝達抵抗rrex〔m2k/W〕、屋根構造熱抵抗Rrc〔m2k/W〕、天井熱伝達抵抗rrin〔m2k/W〕、及び、壁表面日射吸収率aw〔%〕、外壁熱伝達抵抗rwex〔m2k/W〕、壁構造熱抵抗Rwc〔m2k/W〕、内壁熱伝達抵抗rwin〔m2k/W〕である。
屋根表面日射吸収率ar〔%〕は、前述の方法により被測定対象の屋根面を構成する塗膜構造体の日射反射率から決定される。屋根面積Sr〔m2〕は、被測定対象のサイズ情報から求められる。
屋根熱伝達抵抗rrex〔m2k/W〕は、風速v〔m/s〕より算出される。
屋根構造熱抵抗Rrc〔m2k/W〕は、被測定対象の屋根構造、各部位の熱伝導率、厚さより算出される。
天井熱伝達抵抗rrin〔m2k/W〕は、空調工学の常用値が採用される。
壁表面日射吸収率aw〔%〕は、前述の方法により被測定対象の壁面を構成する塗膜構造体の日射反射率から決定される。
外壁熱伝達抵抗rwex〔m2k/W〕は、空調工学の常用値を採用する。
壁構造熱抵抗Rwc〔m2k/W〕は、被測定対象の壁構造、各部位の熱伝導率、厚さより算出される。
内壁熱伝達抵抗rwin〔m2k/W〕は、空調工学の常用値を採用する。
また、室内条件から取得されるパラメータは、室温Tin〔℃〕、室内空気体積Vair〔m3〕、室内空気容積熱容量Cair〔Wh/mk〕、換気回数N〔回数/h〕、内部熱源H〔W〕などがある。
室温Tin〔℃〕は、空調設定温度(目標温度)として固定値に設定する。
室内空気体積Vair〔m3〕は、建物の内容量から算出する。
室内空気容積熱容量Cair〔Wh/m3k〕は、空気の物性値を設定する。
換気回数N〔回数/h〕は、ユーザが室内使用状況から推定した値を設定する。
内部熱源H〔W〕は、ユーザが室内機器の消費電力量、在室人数などから推定した値を設定する。
上記パラメータは、すべて推定値、あるいは、規定値をユーザが入力、あるいは、データファイルなどからメモリ103に予めインストールしておくことにより、取得できる。
処理装置102は、ステップS41−12で上記のパラメータを熱回路に設定し、熱回路を定常計算により解き、熱量を算出し、ステップS41−13で計算結果を表示する。
〔熱量予測計算〕
図33は建物の簡易熱量予測を行なうときの計算方法を説明するための図を示す。
まず、被測定対象は、屋根部分が屋根基材211、塗膜212、天井構造断熱材213から構成され、壁部分が壁基材221、塗膜222、壁構造断熱材223から構成されている。
上記構造の被測定対象において屋根部分は外気温Texと室温Tinとの間に屋根熱伝達抵抗rrex、屋根構造熱抵抗Rrc、天井熱伝達抵抗rrinを直列に接続した熱回路が構成されている。ここで、屋根熱伝達抵抗rrexと屋根構造熱抵抗Rrcとの接続点には、屋根面日射強度Irに屋根表面日射吸収率arを掛けた熱流(ar×Ir)が流入する。上記熱回路の定常解は、キルヒホッフの法則を用いて任意の熱流を求めることができる。
ここで、外気温Texと室温Tinとの温度差(Tex−Tin)は、
室内に流れ込む熱流をirとすると、室外に流れだす熱流は、
{(ar×Ir)−ir} ・・・(2−5)
で表せる。
よって、
(Tex−Tin)=ir×(Rrc+rin)−{(ar×Ir)−ir}rrex
=ir×(Rrc+rin+rrex)−(ar×Ir×rrex)・・・(2−6)
よって、
(Tex−Tin)+(ar×Ir×rrex)=ir×(Rrc+rin+rrex)・・・(2−7)
となる。したがって、室内に流れ込む熱流irは、
r={(ar×Ir×rrex)+(Tex−Tin)}/(Rrc+rin+rrex)・・・(2−8)
で求めることができる。
また、屋根の表面温度Trsは、上記熱流irを用いることにより、
rs=Tin+ir×(Rrc+rin) ・・・(2−9)
で求めることができる。
また、天井温度Trcは、同様に熱流irを用いることにより、
rc=Tin+ir×rrin ・・・(2−10)
で求めることができる。
なお、壁面については外気温Texと室温Tinとの間に外壁熱伝達抵抗rwex、壁構造熱抵抗Rwc、内壁熱伝達抵抗rwinを直列に接続した熱回路が構成されている。ここで、外壁熱伝達抵抗rwexと壁構造熱抵抗Rwcとの接続点には、壁面日射強度Iwに壁面日射吸収率awを掛けた熱流(aw×Iw)が流入する。上記熱回路の定常解を求めることにより、屋根と同様にキルヒホッフの法則を用いて壁面の熱流iwを求めることができる。
なお、上記熱流ir、iwは単位面積当たりの熱流であり、屋根及び東西南北の壁の各々について独立して計算することが可能である。屋根の単面積当りの熱流をir、東壁面の単位面積当りの熱流をiwE、西壁面の単位面積当りの熱流をiwW、南壁面の単位面積当りの熱流をiwS、北壁面の単位面積当りの熱流をiwNとし、屋根面積をSr、東壁面の面積をSwE、西壁面の面積をSwW、南壁面の面積をSwS、北壁面の面積をSwNとすると、屋根全体の熱流は
r×Sr ・・・(2−11)
東壁面の熱流は
wE×SwE ・・・(2−12)
西壁面の熱流は
wW×SwW ・・・(2−13)
南壁面の熱流は
wS×SwS ・・・(2−14)
北壁面の熱流は
wN×SwN ・・・(2−15)
で求められる。
ここで、換気による熱の流出入量Qairは、一般に前出のパラメータを用いて、
air=Cair・Vair・(Tex−Tin)・N ・・・(2−16)
で求められる。
さらに、内部熱源による発熱量は、Hである。
したがって、室内へ流入する熱量Iは、式(2−11)〜(2−15)に換気による熱の流出入量Qair及び内部熱源による発熱量Hを加算したものとなるので、
I=(ir×Sr)+(iwE×SwE)+(iwW×SwW)+(iwS×SwS
+(iwN×SwN)+Qair+H ・・・(2−17)
で求められる。
上記式(2−17)により室内へ流入する熱量Iを求めることができる。このとき、上記パラメータ及び熱回路は、定常計算法により算出できるため、計算が簡単である。
次に、上記の式を用いて、熱流が0となるような室温Tinを求める場合について考えてみる。
室温Tinは、式(2−8)より
in=Tex+(ar×Ir×rrex)−ir・(Rrc+rin+rrex
で表される。
ここで、内部熱源H、換気による熱流を考慮すると、時刻jの室温Tin(j)は、
in(j)=Tex(j)
+〔H(j)+Σ{Si・ai・Ii(j)・riex/(rex+Ric+riin)}〕
/〔Cair・Vair・N(j)+Σ{Si/(riex+Ric+riin)}〕
・・・(2−18)
で表せる。なお、Σは、屋根、東西南北壁面について各々Σ以降の計算を行なった結果を加算したものである。
なお、式(21)は被測定対象の熱容量を考慮していない。精度を上げるために、被測定対象の熱容量を考慮する必要がある。
建物の熱容量Ctは、屋根構造の熱容量をCr、壁構造の熱容量をCw、室内空気の熱容量をCair、室内什器の熱容量をCfとすると、一般に
t={(Cr+Cw)/2}+Cair+Cf ・・・(2−19)
で表される。
時刻jで室温をTin(j)、外気温をTex(j)、屋根面日射強度をIr(j)とすると、屋根面から室内に流入する熱流ir(j)は、式(2−8)より
r(j)={(ar×Ir(j)×rrex)+(Tex(j)−Tin(j))}/(Rrc+rin+rrex
・・・(2−20)
で表される。
ここで、式を簡略化するために、
rex+Rrc+rrin=1/kr ・・・(2−21)
とおくと、式(2−20)は、
r(j)=kr×{(ar×Ir(j)×rrex)+(Tex(j)−Tin(j))}
・・・(2−22)
で表される。
なお、時刻jにおける東西南北壁面の熱流iwE(j)、iwW(j)、iwS(j)、iwN(j)についても同様に独立して算出することができる。
また、時刻jにおける換気による熱流出入量Qair(j)は、換気回数をN(j)とすると、
air(j)=Cair(Tex(j)−Tin(j))・N(j) ・・・(2−23)
で求められる。
時刻jに室内に流入する熱流I(j)は、式(2−17)より
(j)=(ir(j)×Sr)+(iwE(j)×SwE)+(iwW(j)×SwW)+(iwS(j)×SwS
+(iwN(j)×SwN)+Qair(j)+H(j)
・・・(2−24)
で表される。
式(2−24)において、式を簡略化するために、
(ir(j)×Sr)+(iwE(j)×SwE)+(iwW(j)×SwW)+(iwS(j)×SwS)
+(iwN(j)×SwN)=Σ(ii(j)×Si)
とおくと、式(2−24)は、
(j)=Σ(ii(j)×Si)+Qair(j)+H(j) ・・・(2−25)
で表される。
式(2−25)は式(2−22)及び式(2−23)より、
(j)=Σ〔ki×Si×{(ai×Ii(j)×riex)+(Tex(j)−Tin(j))}〕
+{Cair(Tex(j)−Tin(j))・N(j)}+H(j) ・・・(2−26)
で表せる。
ここで、外気温Tex、及び、各面への日射強度Iiは、時刻jから時刻j+1の間に連続的に変化する気象条件となるが、時刻jと、時刻jに近似した時刻(j+1)とでは、外気温Tex及び熱流Iは近似しており、略等しい、すなわち、
ex(j)=Tex(j+1)
i(j)=Ii(j+1)
と仮定すると、
時刻jから時刻j+Δt(0<Δt<1)における室温の上昇ΔTin(j)は、建物の熱容量をCtとすると、
t・ΔTin(j)=[Σ〔ki×Si×{(ai×Ii(j)×riex)+(Tex(j)−Tin(j))}〕
+{Cair(Tex(j)−Tin(j))・N(j)}+H(j)]・Δt
・・・(2−27)
で表せる。
次に、式(2−27)を微分方程式と見て、さらに、(Tex(j)−Tin(j))をxに置き換えると、式(2−27)は、
{Σki×Si×ai×Ii(j)×riex+H(j)}−{Σki×Si+Cair×N(j)}×x
=Ct・(dx/dt) ・・・(2−28)
で表せる。
ここで、式を簡略化するために
Σki×Si×ai×Ii(j)×riex+H(j)=H(j)' ・・・(2−29)
Σki×Si+Cair×N(j)=KS(j) ・・・(2−30)
とすると、式(2−29)は、
(j)'+KS(j)×x=Ct・(dx/dt) ・・・(2−31)
となる。式(2−31)を変形すると、
dx/{H(j)'+KS(j)×x}=1/Ct・dt ・・・(2−32)
両辺にKS(j)をかけると、式(2−31)は、
dx/{H(j)'/KS(j)+x}=KS(j)/C・dt ・・・(2−33)
さらに、式(2−33)は、
dx/{−(H(j)'/KS(j))−x}=−(KS(j)/C)・dt
・・・(2−34)
ここで、積分公式
∫{dx/(a−x)}=−{ln(a−x)+lnC}(Cは積分定数)
・・・(2−35)
を用いて式(2−34)の両辺を積分し、Δt=0のとき、Tin(j)=Tin(j+Δt)となるように積分定数Cを決めると、
in(j+Δt)=Tex(j)+H(j)'/KS(j)
−(Tex(j)+H(j)'/KS(j)−Tin(j))exp(−KS(j)/Ct・Δt)
・・・(2−36)
が得られる。
ここで、Δt=1とすると、式(2−36)は
in(j+1)=Tex(j)+H(j)'/KS(j)
−(Tex(j)+H(j)'/KS(j)−Tin(j))exp(−KS(j)/Ct)
・・・(2−37)
で表される。
上式(2−37)により、室温Tinの初期値として適当な数値を代入することにより、その後の室温変化をシミュレートすることが可能となる。なお、このとき、時刻jと次の時刻(j+1)との間の時間を例えば、10分〜1時間に設定すると、良好な結果が得られる。
また、被測定対象の熱容量Ctを考慮しない場合には、式(2−18)を式(2−21)、(2−29)、(2−30)を用いて書き換えた式、
in(j)=Tex(j)+H(j)'/KS(j) ・・・(2−38)
を用いることにより室温Tinのシミュレートが行なえる。
また、屋根表面温度Trsの変化については、式(2−9)を用いた式、
rs(j)=Tin(j)+ir(j)×(Rrc+rrin) ・・・(2−39)
によりシミュレートできる。
天井表面温度Trcの変化については、式(2−10)を用いた式、
rc(j)=Tin(j)+ir(j)×rrin ・・・(2−40)
によりシミュレートできる。
〔処理手順〕
次に実際の熱量予測計算処理の処理手順について説明する。
図34は熱量予測計算処理の処理フローチャートを示す。
処理装置102は、ステップS51−1で取得したパラメータを用いて熱抵抗を合成した係数(1/ki)を合成する。熱抵抗は、式(2−21)に取得したパラメータである熱抵抗riex、Ric、riinを代入することにより、熱抵抗を合成した係数(1/ki)を算出する。なお、iは屋根面を示す「r」、東壁面を示す「wE」、西壁面を示す「wW」、南壁面を示す「wS」、北壁面を示す「wN」に相当する。
次に、処理装置102はステップS51−2で取得したパラメータを用いて熱容量Ctを合成する。熱容量は、式(2−19)に取得されたパラメータである熱容量Cr、Cw、Cfを代入することにより合成熱容量Ctを算出する。
次に、処理装置102は、ステップS51−3で熱抵抗を合成した係数(1/ki)及び合成熱容量Ctを式(2−29)、(2−30)に代入することにより、熱抵抗を合成した係数(1/ki)及び合成熱容量Ctを含むパラメータをまとめる。
次に処理装置102は、ステップS51−4で時刻jを0にリセットする。
次に、処理装置102は、ステップS51−5で時刻jのパラメータを取得し、ステップS51−6で式(2−37)に取得したパラメータをセットして、時刻jにおける室温Tin(j)を算出する。
処理装置102は、ステップS51−7で全計算が終了するまで、ステップS51−8でjを順次に増加させ、室温Tin(j)を算出する。処理装置102は、ステップS51−7で室温Tin(j)すべての算出が終わると、算出結果を整理し、表示する。
〔シミュレーション結果〕
ここで、上記の熱量予測計算処理により行なったシミュレーションの具体例について説明する。
図35はシミュレーション対象の建物条件を示す図、図36はシミュレーション対象の室内条件を示す図、図37はシミュレーション対象が存在する場所の気象条件を示す図、図38はシミュレーションの計算手順を示す図、図39は室温シミュレーション結果を示す図を示す。
なお、シミュレーション対象建物は郡山の倉庫であり、初期条件として6月13日24時の実測室温18.5℃を用いる。
まず、図35に示す建物条件を図38(A)に示す式に代入することにより熱抵抗を合成したパラメータ(1/K)を求める。
また、図39に示す室内条件を図38(B)に示す式に代入することより熱容量を合成した熱容量Cを求める。
次に、時刻j=0におけるパラメータを図38(C)に示すように式(2−29)、(2−30)に代入して、パラメータH(j=0)'、及び、KS(j=0)を求める。
次に、初期条件である外気温Tex(j=0)=18.5℃、及び、図38(C)で求められたパラメータH(j=0)'、並びに、KS(j=0)を図38(D)に示す式、すなわち、式(2−37)に代入することにより時刻j=0からΔt時間=1時間経過した後の室温Tin(j=1)を求める。これにより、時刻j=0である6月13日24時におけるパラメータから時刻j=1である6月14日1時における室温Tin(j=1)を予測することができる。
同様に、図38(E)に示すように、式(2−37)に相当する式に時刻j=1におけるパラメータを代入することにより時刻j=j+1=2における室温Tin(j=2)を予測することができる。同様にして、時刻jにおける室温Tin(j)を順次にシミュレートすることが可能となる。
上記予測結果を1時間毎に順次にプロットすることにより図39に○で示すようなシミュレーション結果が得られる。
本実施例の室温シミュレーションの結果は、図39に●で示す実測室温と略同じ変化を示しており、正確な室温シミュレーションを行なうことが可能であることがわかる。また、△は建物の熱容量を勘案しない場合の実測室温の推移を示しており、室温を的確にシミュレートできないことがわかる。シミュレートを行なうには、本実施例の如く、気象条件、建物の熱容量など前述のパラメータを総合的に勘案する必要がある。なお、実線は、外気温Texの遷移を示している。
室温Tinの推移を予測することにより塗膜212、222の評価を行なうことが可能となる。
このように、上記のように熱回路を用いて、定常計算方法により計算を行うことにより、屋根面からの熱貫流、東・南・西・北壁面からの熱貫流、換気による熱流出入量、内部発熱による熱流量を各々独立して計算することが可能となり、独立して計算した各熱貫流、熱流出入量の総和を被測定対象全体の熱負荷として算出するので、熱流量計算を定常計算式により容易に求めることができる。
なお、本実施例では、室温Tinをシミュレーションする場合について説明したが、熱回路により求めることができる天井温度、壁面温度などをシミュレーションすることも可能である。また、熱流シミュレーション結果から空調の電力消費などを算出することも可能である。
なお、上記実施例では、被測定対象として建築物の熱負荷を簡易計算する方法について説明したが、被測定対象は建築物に限定されるものではなく、道路など他の構造物にも適用可能である。
図40は道路の簡易熱量予測を行なうときの計算方法を説明するための図を示す。
道路は、土壤311の上に路床・路体312が積層され、さらに、路床・路体312上に路盤313が積層され、路盤313上に基層舗装体314及び表層舗装体315が積層され、さらに、塗膜316が形成された構造とされている。
この場合の熱回路は、図40に示すように土壌311の熱抵抗である土壌熱抵抗Rr1、路床・路体構造熱抵抗Rr2、路盤313の熱抵抗である路盤熱抵抗Rr3、舗装体構造熱抵抗Rr4、表面熱伝達抵抗rrexを外気温Texと地中温度Tinとの間に直列に接続した構成とされている。これによって、建物と同様に道路の熱流を推測することが可能となる。道路の熱流を推測することにより、塗膜316の評価を行なうことが可能となる。
このように、建物だけでなく、道路など他の被測定対象にも温度、熱流などの予測が可能となる。
次に、被測定対象の環境を定量的に評価することによって、被測定対象の具体的な「遮熱効果」を定量評価する方法について説明する。
また、本発明の遮熱効果の定量評価方法は、熱量予測計算方法によって算出された被測定対象に流出入する熱量に基づいて被測定対象の遮熱効果を定量的に提示し、評価可能とするものである。
本発明の遮熱効果定量評価方法について、以下に、更に具体的に説明する。
図41は遮熱効果評価方法を説明するための図を示す。
遮熱塗料の特徴はその塗膜の日射反射率の高さにあり、それによって日射による受熱量を低減し、図41に示すような遮熱効果を発揮する。
以下に、図41に示した効果を定量化する方法について説明する。
建造物の屋根(屋上防水層)や、外壁材、または、自動車・車両や船舶等の屋外で用いられる移動体の外装部を形成する構造材の劣化は、日射の紫外線による化学的な劣化や、衝撃等による物理的な劣化等さまざまな要因が複合して発生するが、その要因のひとつとして、日射受熱による熱劣化も大きな影響も与えていると考えられる。
そのため、それら外表面への遮熱塗料の適用は、日射下での温度上昇を緩和し、構造材の寿命延長に役立つことが予想されるが、その効果の定量化は上記のように複合要因であることから一般に困難である。
熱量予測計算処理では、外表面温度の推移が計算可能であるので、遮熱塗料を施工した場合と、しなかった場合での外表面温度推移を比較計算し、参考データとして供することができる。
外表面温度推移は個々の案件の条件を入力して計算することとなるが、夏季快晴の気象条件下(日射1000W/m2)での目安としては、日射反射率10points向上で、表面温度は最大4〜5℃低下する場合が多い。
また、夏季快晴時のアスファルト舗装の道路表面温度については、以下の文献に示されるようにその最高温度は60℃を超え、遮熱塗料を施工すると50℃程度に抑えられることが知られている。このことは、例えば、特開2004-251108号公報、特開2005-61042号公報などに記載ある。
一般的な舗装用のアスファルトの軟化点は50〜60℃程度のものが使用されることが多いため、遮熱塗料をアスファルト舗装面に施工することによって軟化点を越える時間を大きく縮小できることが予想される。
これにより、アスファルト舗装面の「わだち掘れ防止」が可能となると示唆され、遮熱塗料を施工した場合としなかった場合について、熱量予測計算処理で計算したそれぞれの外表面温度推移の差から、熱劣化の低減効果を捉えることができる。
昨今、大都市圏で大きな問題として取り上げられているヒートアイランド現象の原因として、コンクリート、アスファルト舗装等の比較的日射反射率の低い人工被覆面が増加し、日射受熱量が増大したこと(原因(1))、空調機器が普及し、その室外機からの人工排熱が増加したこと(原因(2))等があげられているが、これらの原因については、太陽熱高反射塗料(遮熱塗料)の適用によって、その影響が緩和されることが期待される。
上記の原因(1)について、図33に示す熱回路図を用いて説明する。
屋根面に注目すると、日射受熱によって屋根表面温度が上昇し、外気温<屋根表面温度となった場合に屋根表面から外気への熱放出が生じ、ヒートアイランドの原因となるのであるが、この熱放出量は、図中の屋根熱放出強度arIr-irで表される。
屋根面の日射反射率が低い(屋根面日射吸収率arが高い)場合、屋根面日射強度Irが大きい日中には屋根熱放出強度が増大し、また、屋根面日射強度Irが0になる夜間であっても、日中の日射受熱によって室温Tinが過度に上昇するため、室温>外気温の状態が長く続き、屋根熱流強度irが負の値となるため屋根からの熱放出が生じる。
同様の現象が、壁面についても、また、図40に示す道路面についても生じ、これらの総和が原因(1)である。
前述の熱量予測計算処理では、各部位での熱放出強度の推移が計算可能であり、ヒートアイランド現象(夜間については熱帯夜)の原因(1)に対して定量的な評価が可能である。
原因(2)については、後述の空調使用電力量の低減量から室外機からの人工排熱量を見積もることができるが、この排熱は、室外機の冷却方式によって大きく異なるため、その定量的評価は困難である。
つまり、室外機が空冷式の場合は、空調機器が消費する電力量が最終的には室外機から顕熱として放熱され、ヒートアイランド現象を引き起こすと考えることができるが、水冷式の場合、冷却水の蒸発潜熱として排熱される熱と、顕熱として排熱される熱があり、潜熱排熱では外気を温める作用は無いため、直接的にはヒートアイランド現象を引き起こさない。
建築物等の室内で空調冷房を使用する場合には、遮熱塗料の適用によって、冷房費の削減、また、それに伴うCO2排出量の削減が可能となると考えられるが、本報では、電力駆動の空調機器を用いている場合を例に、その定量的評価方法について説明する。
まず、電気料金体系について簡単に説明する。
詳細については、電気事業法に基づく「電気供給約款」に記載されているが、ここでは、「従量電灯制」と「実量制」に大別して説明する。
〔従量電灯制について〕
各家庭のような個人契約に多い契約方式であり、例えば、「従量電灯B」での契約では、図42に示すように、契約時に決定される受電の電流(A)によって基本料金(円/1契約)が定められ、1ヶ月間に実際に使用した電力量に応じた電力量料金(円/kWh)が加算される計算方式になっている。
〔実量制について〕
工場等の事業所で多い契約方式であり、例えば「高圧電力A」での場合は、図42に示すように、基本料金が契約電力によって変動するという特徴がある。
これは、実量制での契約電力が、当月を含む過去1年間の各月の使用電力を30分毎に計量し、そのうちの最も大きい値が最大需要電力として定められるためであり、夏季に過大な電力を使用すると、通年で基本料金が上昇することになる。
つまり、遮熱塗料適用による冷房費の削減は、第1には、空調使用電力量削減による電力量料金の削減であるが、実量制による契約をしている場合には、以下の2点から考える必要がある。
1.空調使用電力量削減による電力量料金の削減
2.夏季日中の最大需要電力の低減による通年での基本料金の削減
また、CO2排出量削減については、空調使用電力量削減から換算することができる。換算係数については、環境省報道発表資料等で公表されており、一般的な数値としては、0.555kg-CO2/kWhを用いることができる。例えば、環境省報道発表資料(平成18年3月23日)「地球温暖化対策の推進に関する法律施行令の一部を改正する政令」について(http://www.env.go.jp/press)などである。
上述の効果を定量評価するための計算処理について説明する。
図43は、定量評価処理の処理フローチャートを示す。
図43に示す定量評価処理は、計算対象日、1日についての空調使用電力量を計算するものである。
処理装置102は、ステップS61−1で使用機器の空調能力(kW)、その成績係数(COP)、稼働時間(時刻s〜e)、電力量料金単価(円/kWh)が入力される。
処理装置102は、ステップS61−2で時刻jに稼働開始時刻sを設定し、ステップS61−3で時刻jにおける空調機器の出力(%)を計算し、ステップS61−4で時刻jにおける空調使用電力(kW)を計算する。処理装置102は、ステップS61−5で時刻jにおける空調の出力及び空調使用電力を計算結果出力ファイル112に蓄積し、ステップS61−6で時刻j=j+1とし、ステップS61−7で時刻jが稼働終了時刻eに達したか否かを判定する。処理装置102は、ステップS61−7で時刻jが稼働終了時刻eとなるまで、ステップS61−3〜S61−6の処理を実行する。
処理装置102は時刻jが稼働終了時刻eになると、ステップS61−8で日空調使用最大需要電力(kW)を計算し、ステップS61−9で日積算空調使用電力量(kW/日)を計算し、ステップS61−10で1日当の空調使用電力料金(円/日)を計算し、ステップS61−11で1日当の二酸化炭素CO2の排出量(kg/日)を計算する。
処理装置102は、ステップS61−12で上記ステップS61−8〜S61−11の計算結果を出力する。
また、建築物等の空調による室内設定温度を一定とした場合の、ある時刻jに室内に流入する熱量I(j)を、式(2−23)を用いて直接計算することができる。ここで、室温が設定温度に保たれていると仮定しているので、計算された熱量I(j)は空調負荷熱量と考えることができる。
次に、空調負荷予測処理の各計算について説明する。
まず、ステップS61−3の時刻jにおける空調機器の出力(%)の計算について説明する。
空調機器の時刻毎の出力は、空調機器が処理できる熱量の定格値である空調能力(kW)を用いて、以下の式(3−1)で表される。
〔時刻jにおける空調機器の出力(%)〕=
〔時刻jに室内に流入する熱量I(j)〕/〔空調能力(kW)〕×100
(ただし、上限は100%)
・・・(3−1)
当然ながら空調機器の出力の上限は100%であり、つまり、式(3−1)で、
〔ある時刻jに室内に流入する熱量I(j)〕>〔空調能力(kW)〕
となる時間帯には、空調機器は最大出力の100%稼動をするが、空調能力以上の熱量が室内に流入するため、室温を設定温度に保持することができなくなることが解る。
計算結果として、時刻毎の空調機器の出力推移がアウトプットされるが、これにより、空調能力の過不足を考えることができる。
次にステップS61−4の時刻jにおける空調使用電力(kW)の計算について説明する。
空調機器の時刻毎の使用電力(kW)は、上記の空調出力(%)の計算結果と、空調機器の効率を表す成績係数(COP)を用いて、以下の式で表される。
〔時刻jにおける空調使用電力(kW)〕=
〔時刻jにおける空調機器の出力(%)〕/100
×〔空調能力(kW)/空調機器の成績係数(COP)〕 ・・・(3−2)
で表せる。
なお、空調機器の成績係数(COP)は、
(空調機器が処理する熱量(kW))/(空調機器が使用する電力(kW))
であり、空調機器のエネルギー効率を評価する指標である。
実際の冷房空調機器の空調能力は、夏季全体での平均空調出力が50%程度になるように計画されているものが多く、そのような場合、盛夏快晴日等の空調稼動状況では、
〔ある時刻jに室内に流入する熱量I(j)〕>〔空調能力(kW)〕
・・・(3−3)
となる時間帯が発生することが多いが、このような場合には、遮熱塗料を施工することによって時刻jに室内に流入する熱量I(j)の低減に成功しても、式(3−3)の大小関係が逆転しない限り空調使用電力の削減は生じないが、時刻毎の空調機器の出力推移の計算結果から、空調能力が不足する時間帯が縮減される効果を評価することができる。
ステップS61−8で計算される日最大需要電力(kW)は、前記の時刻jにおける空調使用電力(kW)の計算結果から、日最大値を選び出す計算である。前述の電気料金体系のうち、実量制による契約をしている場合については、基本料金算定のために最大需要電力が必要となる。
ステップS61−9で計算される日積算空調使用電力量(kWh)の計算について説明する。
ここでは、計算された時刻jにおける空調使用電力(kW)からステップS61−10で日積算空調使用電力量(kWh)を計算する。空調稼動時間は、時刻sから時刻eまでとすると、計算式は式(3−4)で表される。
Figure 2008170155
また、1日あたりの空調使用電力量料金(円/日)の計算は、日積算空調使用電力量(kWh)と電力量料金単価(円/kWh)を用いて、下記の式(3−5)で計算される。
1日あたりの空調使用電力量料金(円/日)=
日積算空調使用電力量(kWh/日)×電力量料金単価(円/kWh)
・・・(3−5)
さらに、1日あたりのCO2排出量の計算(kg/日)は、日積算空調使用電力量(kWh)と、電気の使用に係る二酸化炭素の排出係数(kg-CO2/kWh)を用いて、式(3−6)で計算される。
〔1日あたりのCO2排出量の計算(kg/日)〕=
〔日積算空調使用電力量(kWh/日)〕
×〔電気の使用に係る二酸化炭素の排出係数(kg-CO2/kWh)〕
・・・(3−6)
以上の計算で、1日あたりの空調使用電力量料金・CO2排出量の定量的評価を実施することができ、この計算を各月の各日について行うことによって、月別の空調使用電力量料金・CO2排出量の定量的評価が可能となる。
なお、一般的な工場等では実量制による契約をしている場合が多く、また、夏季に電力使用のピークを迎えることが知られているが、上述の計算を夏季期間全日について実施し、計算された日空調使用最大需要電力(kW)の中からさらに最大値を選び出すことによって、空調使用最大需要電力(kW)を算定することができる。
これが、図42に示した電気料金基本料金を決める契約電力(kW)のうち空調使用に用いられる部分であり、これにより、基本料金、電力量料金を考慮した冷房費を定量的に評価することができる。
また、図43に示した処理フローは、冬季の暖房費についても同様に使用することができるため、通年での評価も可能である。
ここでは、さらに、温熱環境評価指標(SET*、及び、PMV)を用いた体感温度の改善の定量的評価について説明する。
なお、SET*(Standerd Effective Temperature)はアメリカ空調学会(ASHRAE)が定め、計算プログラムを公開している指標であり、計算結果が温度単位で表される所謂体感温度である。また、PMV(Predictid Mean Vote)は、ISO-7730に規定された指標であり、計算結果は、かなり暑い(+3)、暑い(+2)、やや暑い(+1)、中立(0)、やや寒い(-1)、寒い(-2)、かなり寒い(-3)の7段階評価で表される。
これらの計算方法は、詳細についてはそれぞれの規格に記載されているので、その概要については省略し、入力条件のみを説明する。
これらの熱的快適性を考える上で、重要な4要素は、以下の項目である。
(1)室温(℃)
(2)相対湿度(%)
(3)輻射(平均放射温度 ℃)
(4)気流(風速 m/s)
この他に、その環境にいる人体側の要素として、
(5)代謝量(人の作業活動による産熱量 単位:met)
(6)着衣量(単位::clo)
が考慮され、以上の6要素を入力条件として、温熱環境評価指標(SET*、及び、PMV)は構成されている。
なお、熱量予測計算処理で計算結果を用いて、SET*、及び、PMVを計算するためには、(1)室温については直接計算可能であり、(2)湿度、(4)気流、(5)代謝量、及び、(6)着衣量については、計算対象の調査によって推定が可能であるから、(3)輻射を計算すればよいことになる。
ここで、(3)の輻射は、室内各面からそれぞれの温度に応じて放射される長波放射であり、これを温度単位で表したものが平均放射温度である。
黒球温度計(グローブ温度計)を用いて実測評価する方法が一般的であるが、平均放射温度≒平均壁面温度(℃)であるため、熱量予測処理で計算することが可能である。
つまり、室内各内面の温度を各面の面積で加重平均を計算することによって、(3)の輻射についても推移を算定する事ができる。
なお、例えば、天井面については、熱量予測計算処理の式(2−39)により直接算出することができる。また、他の面についても同様に算出することができる。
次に上記体感温度予測処理の処理ステップについて説明する。
図44は体感温度予測処理の処理フローチャートを示す。
処理装置102は、ステップS71−1で室内の相対湿度(%)、気流(m/s)、在室中の人の代謝量(met)、着衣量(clo)などが入力されると、ステップS71−2で時刻jを1に設定し、ステップS71−3で時刻jにおける平均放射湿度を計算する。
平均放射温度は、
平均放射温度≒Σ{(室内各内面の温度×各内面の面積)/内面積の和}・・・(3−8)
により計算される。
次に、処理装置102は、ステップS71−4で時刻jにおけるSET*を計算し、ステップS71−5でPMVを計算し、ステップS71−5で時刻jにおけるSET*、PMVを計算結果出力ファイル112に蓄積する。
処理装置102は、ステップS71−7で時刻j=j+1とし、ステップS71−8で時刻j>24となるまで上記ステップS61−3〜61−7の処理を繰り返す。これにより、計算対象日の1時から24時までの温熱環境評価指標(SET*、及び、PMV)の推移を計算することができる。
処理装置102は、ステップS71−9で時刻毎のSET*及びPMVを出力する。
このような体感温度予測処理による温熱環境評価指標による評価では、室温とともに、平均放射温度が考慮されるため、例えば、比較的オープンな構造で換気回数が多く、室温上昇の緩和としての遮熱効果が実測しにくい場合であっても、遮熱効果として天井面等の内表面温度が低下していれば、体感温度改善が定量的に評価できるという利点がある。
また、冷房使用で室温設定温度に保持されている場合であっても、遮熱塗料施工により、著しく天井面等の内表面温度が低下していれば、体感温度は低下するため、設定温度を上げて空調負荷熱量を低減させても体感温度としては変化しない場合も考えられ、この場合には、冷房費削減に繋がる効果と評価することもできる。
このように、遮熱効果として、図41に示す
効果(1)の構造材の熱劣化の低減、
効果(2)のヒートアイランド現象の緩和、
効果(3)の冷房費削減、CO2排出量削減、
効果(4):体感温度の改善、暑熱環境の改善
の4つの効果を提示することができる。
以上のように上記プログラムを用いることにより、目標とする塗膜色を呈する遮熱塗料にしたときの室温、空調電力などを定量的に提示することが可能となる。
〔カラーデザインシステム〕
また、本発明のカラーデザイン方法は、主に、色彩を提示し、決定する色彩決定手順と、色彩決定手順で決定された色彩に対応する原色塗料の配合を算出する候補算出手順と、候補算出手順で算出された原色塗料配合候補に対して日射反射率を算出する日射反射率予測計算手順と、日射反射率予測計算手順で算出された日射反射率に基づいて被測定対象に流出入する熱量の計算を行う熱量予測計算手順と、熱量予測計算処理手順で算出された熱量に基づいて被測定対象の遮熱効果を定量的に評価する定量評価手順と、色彩を前記被測定対象に適用したときの遮熱効果を定量的に提示する提示手順とからなり、上記システム100にインストールされたカラーデザインプログラムによって具現化される。本発明のカラーデザイン方法を用いることにより、顧客などに塗料の色彩とその効果などを具体的に提供することができる。
図45はカラーデザインシステムの処理フローチャートを示す。
まず、処理装置102は、ステップS81−1で顧客の要望、イメージ、色彩の系統などの入力に基づいて色彩を提示する。処理装置102は、ステップS81−1で目標色が決定すると、ステップS81−2で例えば、CCMなどを用いて目標色を実現するための原色塗料の配合を求め、近似する配合の候補を算出する。なお、目標とする塗膜色を実現するための原色塗料の配合を求める方法としては、キーワード、コラージュなどを含むカラーイメージとCADデータとが入力されたカラー3次元画像を用いた方法(例えば、特開2006−99796号公報参照)や色材及び光輝材を含む構成材料の量と反射率などから所望の反射率による塗装色を再現する方法(例えば、特開平7−150081号公報参照)、あるいは、建造物などの使用目的や形態、機能、立地環境などに基づいて予め外装色を分類しておき、分類に基づいて色を1又はそれ以上選定し、選定した色又は選定された色を組み合わせることによって塗装色を決定する方法(例えば、特許第2948590号公報参照)などの方法などがある。なお、なお、色彩決定方法は、上記以外の他の色彩決定方法であってもよく、これらに限定されるものではない。
次に処理装置102は、ステップS81−2で目標色(目標とする塗膜色に相当)を実現する原色塗料の配合が算出されると、ステップS81−3で前出の日射反射率予測計算処理を実行し、日射反射率を算出する。
次に処理装置102は、ステップS81−4で、ステップS81−3で算出した日射反射率から日射吸収率を求め、前出の熱量予測計算処理を実行し、熱量を算出する。
次に処理装置102は、ステップS81−5で、ステップS81−4で算出した熱量に基づいて前出の定量評価処理を実行し、空調負荷計算処理を実行する。さらに、ステップS81−6で、ステップS81−4で算出した室内各内部の温度に基づいて体感温度予測計算処理を実行し、体感温度などを算出し、表示装置104に表示して、提示する。
上記ステップS81−2〜S81−6の処理として上述の上記日射反射率予測計算処理、熱量予測計算処理、体感温度予測処理、空調負荷予測処理を用いることができる。
次に、処理装置102は、ステップS81−7で画像処理ソフトなどにより、目標色などを塗装対象に貼り付け、いわゆる、カラープレゼンテーションを行うことができる。
このように本実施例のカラーデザイン方法では、顧客に色彩を提示し、色彩が決定されると、決定された色彩に対応する原色塗料の配合を算出し、算出された原色塗料配合候補に対して日射反射率を算出し、算出された日射反射率に基づいて被測定対象に流出入する熱量の計算を行い、算出された熱量に基づいて被測定対象の遮熱効果を定量的に評価できる評価値を求め、求めた評価値を、決定された色彩を被測定対象に適用したときの遮熱効果を定量的に提示することができる。これによって、被測定対象に目標とする色彩を施したCG画像などとともに、コスト、及び、その遮熱効果、例えば、電力消費量、電気代、内部の体感温度などを定量的に表示することができる。したがって、顧客に具体的に遮熱塗料による遮熱効果、被測定対象の見栄えなどを提示できる。以上により、決定した色彩に基づいてその空調負荷、体感温度などの具体的な指標を表示装置104に表示することによって提示するとともに、更に具体的にカラープレゼンテーションを行うことができ、顧客の満足度を向上させることができる
また、処理装置102は、ステップS81−8で色彩が決定されない場合、すなわち、提示した目標色、及び、それに対応する空調負荷、体感温度が満足できない場合には、ステップステップS81−1に戻って再び、色彩を決定し、その空調負荷、体感温度などの具体的な指標を表示装置104に表示することによって提示する処理を実行する。
なお、ステップS81−1の色彩の提示、決定方法については、感性、イメージ、審美性、記号性、視認性、サイン性、記憶性などのキーワードを入力することにより、色彩を自動抽出したり、色調などを指定することにより色彩を自動抽出するようにしたりしてもよい。
また、ステップS81−2のCCMについては、市販されているCCMシステムなどをそのまま用いても良い。
システム100には、上記に説明した塗膜構造体の日射反射率計算処理プログラム、熱量予測計算処理プログラム、遮熱効果の定量評価プログラム、カラープレゼンテーションを行うためのプログラムがプログラムファイル106に予めインストールされており、入力装置101の指示によって実行される。
なお、本実施例では、図4に示すようなコンピュータシステムで上記処理実現したが、ネットワークを介して端末とサーバとの間で、コマンド、及び、データのやり取りをして、上記処理を実現するようにしてもよい。
図46は本発明の適用例のブロック構成図を示す。
本適用例は、上記日射反射率予測計算処理、熱量予測計算処理、体感温度予測処理、空調負荷予測処理プログラムを、ネットワークを介して提供する例を示す。
本適用例のシステム500は、サーバ511と端末512とがネットワーク513を介して通信可能とされた構成とされている。
サーバ511は、コンピュータシステムから構成されており、ハードディスクドライブなどに上記図29〜図33、図34〜46を用いて説明した日射反射率予測計算処理及び熱量予測計算処理、空調負荷予測処理、体感温度予測処理プログラムが予めインストールされており、端末512により指定された各種データに基づいてインストールされたプログラムを実行し、計算結果を端末512に送信する。
端末512は、コンピュータシステムから構成されており、ネットワーク513を介してサーバ511に対して計算に必要な各種データを指定するとともに、サーバ511からその計算結果を受信してディスプレイ上に表示する。なお、ネットワーク513は、LAN、無線LAN、インターネット、携帯電話網、電話回線網などを含むものである。
また、本実施例では、サーバ511で塗膜調色プログラムを実行したが、これに限定されるものではなく、サーバ511から端末512に所定の条件に従ってプログラム自体を提供して端末512でプログラムを実行するようにしてもよい。
また端末512がプログラムを実行し、データベースをサーバ511に持つようにしてもよい。
なお、本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で各種の変形例が可能である。
遮熱塗料の原色群からホワイト原色とブルー原色との混色による実測例を説明するための図である。 測定装置のブロック構成図である。 ホワイト原色を直接、隠蔽率試験紙(黒地)の上に4、6、8、10milの厚さで塗布した試験片の日射反射率の推移を示す図である。 本発明の日射反射率予測計算システムの一実施例のブロック構成図である。 日射反射率予測計算プログラムの処理フローチャートである。 日射反射率予測計算プログラムの変形例の処理フローチャートである。 日射透過率、日射反射率及び日射吸収率を計算するための重価係数を説明するための図である。 直達日射相対値の標準スペクトル分布図である。 分光反射率の実測例を示す図である。 3原色の分光反射率スペクトルを用いて日射反射率計算を行った結果を示す図である。 クベルカ−ムンク理論の概念図を示す。 分光反射率ρ(λ)の実測値とクベルカ−ムンク理論での反射率Rを関係付ける補正を説明するための図である。 クベルカ−ムンク理論のモデル図である。 多重積層系の計算手順を説明するための図である。 散乱係数S及び吸収係数Kの計算結果の一例を示す図である。 ある遮熱塗料の原色のホワイト原色とブルー原色との混色による計算予測値と実測値との比較結果を示す図である。 ホワイト/ブルー原色混色での日射反射率RSの比較結果を示す図である。 原色のホワイト原色を、隠蔽率試験紙の白地部分、黒地部分の2種類の下地の上に塗布したときの計算予測値と実測値との比較結果を示す図である。 原色のホワイト原色を、隠蔽率試験紙の白地部分、黒地部分の2種類の下地の上に塗布したときの計算予測値と実測値との比較結果を示す図である。 ホワイト原色の膜厚/下地による日射反射率の計算結果を示す図である。 観測者の視野及び波長間隔に応じた数表を示す図である。 完全拡散反射体の標準イルミナント及び補助標準イルミナントによる三刺激値並びに色度座標の数表を示す図である。 塗膜色の実測値と予測計算との比較結果を示す図である 塗膜色の実測値と予測計算との比較結果を示す図である。 分光反射率予測計算プログラムの処理フローチャートである。 下地反射率算出処理の処理フローチャートである。 分光反射率算出処理の処理フローチャートである。 日射反射率算出処理の処理フローチャートである。 塗膜色算出処理の処理フローチャートである。 吸収係数K、散乱係数Sのデータを合成して求められた分光反射率ρ(λ)の数値計算結果を示す図である。 熱量予測計算処理の処理フローチャートである。 熱量予測に必要なパラメータを示す図である。 建物の簡易熱量予測を行なうときの計算方法を説明するための図である。 熱量予測計算処理の処理フローチャートである。 シミュレーション対象の建物条件を示す図である。 シミュレーション対象の室内条件を示す図である。 シミュレーション対象が存在する場所の気象条件を示す図である。 シミュレーションの計算手順を示す図である。 室温シミュレーション結果を示す図である。 道路の簡易熱量予測を行なうときの計算方法を説明するための図である。 遮熱効果評価方法を説明するための図である。 従量電灯制及び実量制電気料金の説明図である。 定量評価処理の処理フローチャートである。 体感温度予測処理の処理フローチャートである。 カラーデザインシステムの処理フローチャートである。 本発明の適用例のブロック構成図である。
符号の説明
10 測定システム、11 積分球、12 透過側開口部、13 反射側開口部
14 試験片、15 検出器
100 塗料調色システム、101 入力装置、102 処理装置、103 メモリ
104 表示装置、105 出力装置、106 プログラムファイル
107 原色塗料組合データベース、108 調色配合量組合データベース
109 原色塗料単価データベース、110 下地情報データベース
111 塗料情報データベース、112 計算結果出力ファイル
121 透過側開口部、122 反射側開口部
131 塗膜層、132 空気、133 下地
500 システム
511 サーバ、512 端末、513 ネットワーク

Claims (18)

  1. 目標とする塗膜色を呈する塗膜構造体の日射反射率予測計算方法であって、
    目標とする塗膜色を入力する入力手順と、
    前記入力手順で入力された目標とする塗膜色を得るための原色塗料の配合を取得する塗料配合取得手順と、
    前記目標とする塗膜色の塗料が塗布される下地と前記塗料配合取得手順で取得された原色塗料の塗膜とからなる塗膜構造体の可視光波長域及びそれに隣接する非可視光波長域での波長λでの分光反射率を算出し、算出した分光反射率に基づいて日射反射率RSを算出する日射反射率算出手順とを有することを特徴とする塗膜構造体の日射反射率予測計算方法。
  2. 前記日射反射率算出手順は、
    可視光波長域及びそれに隣接する非可視光波長域での波長λについて前記下地の分光反射率ρg(λ)を算出し、算出した前記下地の分光反射率ρg(λ)に基づいて前記下地の反射率Rg(λ)を算出する下地反射率算出手順と、
    前記下地に積層される塗膜の各原色についての単位厚さ当たりの吸収係数及び散乱係数、原色配合比、膜厚を取得する塗膜データ取得手順と、
    前記下地反射率算出手順で取得した前記下地の反射率Rg(λ)、及び、前記塗膜データ取得手順で取得された前記塗膜の各原色についての単位厚さ当たりの吸収係数及び散乱係数、原色配合比、膜厚に基づいて塗膜構造体の反射率R(λ)を算出し、これに基づいて塗膜構造体の分光反射率ρ(λ)を算出する塗膜構造体分光反射率算出手順とを有することを特徴とする請求項1記載の塗膜構造体の日射反射率予測計算方法。
  3. 前記塗膜構造体分光反射率算出手順で算出された前記分光反射率ρ(λ)を前記下地の分光反射率ρg(λ)に設定し、
    前記下地反射率算出手順、及び、前記塗膜データ取得手順、並びに、前記塗膜構造体分光反射率算出手順を順次に繰り返すことにより、二種以上の塗料種積層によってなる塗膜構造体の分光反射率ρ(λ)を算出することを特徴とする請求項2記載の塗膜構造体の日射反射率予測計算方法。
  4. 前記塗料配合取得手順は、原色塗料の配合から目標とする塗膜色に近似する原色塗料の配合の候補を取得し、
    前記日射反射率算出手順は、前記塗料配合取得手順で取得した原色塗料の配合の候補に対して前記日射反射率を算出することを特徴とする請求項1記載の日射反射率予測計算方法。
  5. 前記塗料配合取得手順は、原色塗料の配合から目標とする塗膜色に近似する原色塗料の配合を取得し、
    前記日射反射率算出手順は、前記塗料配合取得手順で取得した原色塗料の配合に対して逐次前記日射反射率を算出することを特徴とする請求項1記載の日射反射率予測計算方法。
  6. 目標とする塗膜色を呈する塗膜構造体を有する被測定対象の熱量を予測計算する熱量予測計算方法であって、
    前記被測定対象の構造に基づいて熱回路を設定する熱回路設定手順と、
    前記熱回路設定手順で設定すべき前記熱回路に関するパラメータ及び前記被測定対象の有する前記塗膜構造体に対応する日射反射率を含むパラメータを前記熱回路に設定するパラメータ設定手順と、
    前記パラメータ設定手順で設定された前記パラメータ及び前記日射反射率に基づいて前記熱回路を解くことにより、前記被測定対象に流出入する熱量を予測する熱量予測計算手順とを有し、
    前記被測定対象に塗布される目標の塗膜色の塗膜構造体に対応する日射反射率は、請求項1乃至5のいずれか一項記載の日射反射率予測計算方法により算出されることを特徴とする熱量予測計算方法。
  7. 目標とする塗膜色を呈する塗膜構造体の日射反射率予測計算装置であって、
    目標とする塗膜色を入力する入力手段と、
    前記入力手段で入力された目標とする塗膜色を得るための原色塗料の配合を取得する塗料配合取得手段と、
    前記目標とする塗膜色の塗料が塗布される下地と前記塗料配合取得手段で取得された原色塗料の塗膜とからなる塗膜構造体の可視光波長域及びそれに隣接する非可視光波長域での波長λでの分光反射率を算出し、算出した分光反射率に基づいて日射反射率RSを算出する日射反射率算出手段とを有することを特徴とする塗膜構造体の日射反射率予測計算装置。
  8. 前記塗料配合取得手段は、原色塗料の配合から前記目標とする塗膜色に近似する原色塗料の配合の候補を取得し、
    前記日射反射率算出手段は、前記塗料配合取得手段で取得した原色塗料の配合の候補に対して前記日射反射率を算出することを特徴とする請求項7記載の日射反射率予測計算装置。
  9. 前記塗料配合取得手段は、原色塗料の配合から目標とする塗膜色に近似する原色塗料の配合を取得し、
    前記日射反射率算出手段は、前記塗料配合取得手段で取得した原色塗料の配合に対して逐次前記日射反射率を算出することを特徴とする請求項7記載の日射反射率予測計算装置。
  10. 目標とする塗膜色を呈する塗膜構造体を有する被測定対象の熱量を予測計算する熱量予測計算装置であって、
    前記被測定対象の構造に基づいて熱回路を設定する熱回路設定手段と、
    前記熱回路設定手段で設定された前記熱回路に関するパラメータ及び前記被測定対象の有する目標の塗膜色を呈する前記塗膜構造体に対応する日射反射率を前記熱回路に設定するパラメータ設定手段と、
    前記パラメータ設定手段で設定された前記パラメータ及び前記日射反射率に基づいて前記熱回路を解くことにより、前記被測定対象に流出入する熱量を予測する熱量予測計算手段とを有し、
    前記被測定対象に塗布される目標の塗膜色を呈する前記塗膜構造体に対応する日射反射率は、請求項1乃至5のいずれか一項記載の日射反射率測定方法により算出されることを特徴とする熱量予測計算装置。
  11. コンピュータに、
    目標とする塗膜色を入力する入力手順と、
    前記入力手順で入力された目標とする塗膜色を得るための原色塗料の配合を取得する塗料配合取得手順と、
    前記目標とする塗膜色の塗料が塗布される下地と前記塗料配合取得手順で取得された原色塗料の塗膜とからなる塗膜構造体の可視光波長域及びそれに隣接する非可視光波長域での波長λでの分光反射率を算出し、算出した分光反射率に基づいて日射反射率RSを算出する日射反射率算出手順とを実行させるコンピュータ読み取り可能な塗膜構造体の日射反射率予測計算プログラム。
  12. 前記日射反射率算出手順は、
    可視光波長域及びそれに隣接する非可視光波長域での波長λについて前記下地の分光反射率ρg(λ)を算出し、算出した前記下地の分光反射率ρg(λ)に基づいて前記下地の反射率Rg(λ)を算出する下地反射率算出手順と、
    前記下地に積層される塗膜の各原色についての単位厚さ当たりの吸収係数及び散乱係数、原色配合比、膜厚を取得する塗膜データ取得手順と、
    前記下地反射率算出手順で取得した前記下地の反射率Rg(λ)、及び、前記塗膜データ取得手順で取得された前記塗膜の各原色についての単位厚さ当たりの吸収係数及び散乱係数、原色配合比、膜厚に基づいて塗膜構造体の反射率R(λ)を算出し、これに基づいて塗膜構造体の分光反射率ρ(λ)を算出する塗膜構造体分光反射率算出手順とを有することを特徴とする請求項11記載の塗膜構造体の日射反射率予測計算プログラム。
  13. 前記塗膜構造体分光反射率算出手順で算出された前記分光反射率ρ(λ)を前記下地の分光反射率ρg(λ)に設定し、
    前記下地反射率算出手順、及び、前記塗膜データ取得手順、並びに、前記塗膜構造体分光反射率算出手順を順次に繰り返すことにより、二種以上の塗料種積層によってなる塗膜構造体の分光反射率ρ(λ)を算出することを特徴とする請求項11記載の塗膜構造体の日射反射率予測計算プログラム。
  14. 前記塗料配合取得手順は、原色塗料の配合から目標とする塗膜色に近似する原色塗料の配合の候補を取得し、
    前記日射反射率算出手順は、前記塗料配合取得手順で取得した原色塗料の配合の候補に対して前記日射反射率を算出することを特徴とする請求項11記載の日射反射率予測計算プログラム。
  15. 前記塗料配合取得手順は、原色塗料の配合から目標とする塗膜色に近似する原色塗料の配合を取得し、
    前記日射反射率算出手順は、前記塗料配合取得手順で取得した原色塗料の配合に対して逐次前記日射反射率を算出することを特徴とする請求項11記載の日射反射率予測計算プログラム。
  16. コンピュータに、
    前記被測定対象の構造に基づいて熱回路を設定する熱回路設定手順と、
    前記熱回路設定手順で設定された前記熱回路に関するパラメータ及び前記被測定対象に塗布される目標の塗膜色を呈する塗膜構造体に対応する日射反射率を前記熱回路に設定するパラメータ設定手順と、
    前記パラメータ設定手順で設定された前記パラメータ及び前記日射反射率に基づいて前記熱回路を解くことにより、前記被測定対象に流出入する熱量を予測する熱量予測計算手順とを実行させ、
    前記被測定対象の有する目標の塗膜色を呈する前記塗膜構造体に対応する日射反射率は、請求項11乃至15のいずれか一項記載の日射反射率測定プログラムにより算出させることを特徴とするコンピュータ読み取り可能な熱量予測計算プログラム。
  17. 請求項6に記載の熱量予測計算方法によって算出された前記被測定対象に流出入する熱量に基づいて前記被測定対象の遮熱効果を定量的に提示し、評価可能とすることを特徴とする遮熱効果の定量評価方法。
  18. 色彩を提示し、決定する色彩決定手順と、
    前記色彩決定手順で決定された色彩に対応する原色塗料の配合を算出する候補算出手順と、
    前記候補算出手順で算出された原色塗料配合候補に対して日射反射率を算出する日射反射率予測計算手順と、
    前記日射反射率予測計算手順で算出された日射反射率に基づいて被測定対象に流出入する熱量の計算を行う熱量予測計算手順と、
    前記熱量予測計算処理手順で算出された熱量に基づいて被測定対象の遮熱効果を定量的に評価する定量評価手順と、
    前記色彩を前記被測定対象に適用したときの遮熱効果を定量的に提示する提示手順とを有することを特徴とするカラーデザイン方法。
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