JP2008150630A - 微粒子コロイド製造方法とそれを実施するための装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】減圧した雰囲気中あるいは真空中で、無機材料を蒸発させ、その蒸気を移動する膜状液体媒質に付着させ、コロイド状にする工程において、前記膜状液体媒質の移動速度を調節する、微粒子コロイド製造方法、及び、上記方法に使用する真空槽2を中心軸19又はそれに平行な中心線周りに回転させる可変回転機構を持つ製造装置。
【選択図】図1
Description
そこでは粒子の形状はおおざっぱに球形あるいは球形に近いものとして扱われ、現実には特別な場合を除いて球状粒子が多用されてきた。
しかしながら、粒子のサイズは粒子の形状が決まった上で定義できる量なので、粒子の形状を制御することが粒子のサイズを制御する以前に重要な技術であることは言うまでもない。
金属・合金等の無機材料の微粒子を製造する有力な方法として発明者により構成された活性液面連続真空蒸着法が知られている(特許文献1〜2)。
活性液面連続真空蒸着法は金属・合金の固体原料を真空中で加熱し、蒸発させ、原料の原子状の蒸気を界面活性剤を含んだ液体媒質表面に吸着させ、液体媒質表面で微粒子を発生させることを基本的な原理としたものである。
発生した金属微粒子はその場で界面活性剤で表面が覆われ、液体媒質中に安定に分散した形で取り込まれ、移動する一方、新しい液体媒質が準備されるという過程を連続的に行い、結果として高濃度に分散した微粒子コロイドを製造する方法である。
この方法は最も小さく、均一なサイズと均一な形状の金属・合金微粒子コロイドが比較的簡単な装置で得られ、かつ多くの種類の金属・合金に適用できることが公知である。
具体的には、真空槽内で無機材料を蒸気化し、当該真空槽内面に沿って流動する膜状の液体媒質に前記蒸気を吸着させ回収することにより、無機材料の微粒子を得るもので、
このことが活性液面蒸着法と呼ばれる理由である。
元素金属ではAg、Au、Bi、Co、Cr、Co、Fe、Ge、In、Ni、Pd、Sb、Si、SnTe、Tiの微粒子コロイド、合金ではCr−Ni、Fe−Si、Fe−Ni、Co−Ni、Fe−co、Cu−Sn、Cu−Si、Ag−In、Au−Ge、Au−Sn、Au−Pd、Fe−Pd、Co−Pd、Ni−Pdの微粒子コロイド、酸化物ではSiOx、WO3、MoO3In2O3、SnO2の微粒子コロイドが公知である。
これらの微粒子においてその形状は金属の種類と製造に用いる界面活性剤の種類に依存し、球状に近い不定形、屈曲した数珠状、棒状、繊維状など様々な形態で常に一定の形のものが生成され、また同様に微粒子の大きさも一定であった。
得られる金属ナノ粒子コロイドの形状、サイズが一定であることは製造過程ごとのばらつきが小さいという意味で品質管理において好都合と考えられていた。
このことは与えられた無機材料において、形状や大きさを調節してそれらの微粒子コロイドを合成するということが困難であることを意味している。
また、材料の種類によって不可非的に得られる屈曲した数珠状形態や繊維状形態は一種の凝集体であり、このような凝集体を含むコロイドは重力による沈殿的傾向を示し、分散安定性が乏しいという欠点を有していた。
この傾向は例えばCuやAuにおいて著しいものであった。
本発明はこのような問題を解決するために構成されたもので、得られる微粒子の形態、大きさを所望のものにして回収することができるようにすることを目的とする。具体的にはコロイドの分散安定性を高め、微粒子の形態を球状あるいは球状に近いものとし、必要により形状を棒状、あるいは線状に制御し、その上で微粒子のサイズを制御することを目的としている。
このようにして本発明は微粒子コロイドの用途に対して適切な形状とサイズを調節できる合理的な製造法を提供することを目的としている。
つまり、上記目的を達成するために、発明1の微粒子コロイド製造方法は、回収する微粒子の形状・大きさを所望のものにするために、前記膜状液体媒質の移動速度を調節することを特徴とする。
研究の結果、蒸発させる無機材料の種類と液体媒質の成分によって、膜状液体媒質の移動速度と形状との関係は必ずしも一定するものではないが、蒸発源の蒸発速度とそれを受ける膜状液体媒質の移動速度vのバランスは発生する微粒子の形状と大きさを大いに左右することが分かった。
すなわち、一定の蒸発速度に対して膜状液体媒質の移動速度が十分大きいとき、粒子(11)は球状または球状に近い不定形の形状をとって液体中に一様に分散し、膜状液体媒質(9)の移動速度が遅くなるのに伴い、発生する球状微粒子の大きさはしだいに大きくなり、さらに形状は球から一方向に伸びた細長い形態をとるように変化することが分かった。
また、膜状液体媒質の移動速度が遅くなったとき、一次元的に伸びた細長い形態はさらに長く伸びるとともに、お互いに絡まり合った繊維状凝集体を作るようになる。
材料の種類により、あるいは液体媒質に添加する界面活性剤の種類の違いより程度の差はあるが、一般に共通した傾向を示す。
膜状液体媒質(9)の移動速度は例えば図2に示す回転真空槽(2)の回転速度を調節することにより調節することができ、上記原理を技術的に的確に具体化することが可能となる。
すなわち、回転真空槽(2)の内径をd(mm)、回転速度をf(rpm)とすると、膜状の液体媒質(9)の移動速度v(mm/s)は次のように与えられる。
v=2πdf/60 (1)
その結果、界面活性剤を含んだ膜状液体媒質(9)の移動速度を無段階連続可変となる。
回転真空槽(2)を低速から高速まで回転させるのに際して、その底部に装填した液体媒質(3)は波立ったり、飛沫を生じたりすることはなく、また、回転真空槽(2)の内面に膜状液体媒質(9)は破れることなく、安定に形成される。
この意味において、真空槽(2)の形状は円筒状であり、その中心軸周りに回転するのが理想的であるが、前記機能を有する範囲であれば、多角筒状であったり、中心軸からずれた回転中心を有していたりしても同様な機能を発揮し得るものである。
そのとき、膜状液体媒質(9)の移動速度が100mm/sを超えて速いほど、粒子径はより小さくなる傾向がある。
膜状液体媒質(9)の移動速度が190mm/sで、金属固体が固体として存在し得る限界径の2nmに達し、微粒子径を2nmより小さくすることは原理的にできないので、 膜状液体媒質(9)の移動速度を190mm/s以上にすることは機械技術的には可能であっても、ナノ粒子分散コロイドを製造するという目的において材料技術的には意味をなさない。
以上の傾向は金属の種類を問わない一般的な傾向であるが、金属の種類により詳細諸条件は多様である。
一方、膜状液体媒質(9)の移動速度が100mm/s未満になるように回転真空槽(2)の回転速度を設定したとき、一般的にこれら微粒子の形状は等方的な球状から外れ薄片状、球状微粒子が数珠状につながった屈曲した線状、直線的な棒状、あるいは繊維状、菊花状の凝集体など金属の種類により様々な形態の異方的形状の微粒子が混在したり、それらが支配的に現れるようになる。
膜状液体媒質(9)の移動速度が100mm/s未満で遅いほど、異方的形態は強く現れるようになり、サイズもしだいに大きくなる。
さらに、膜状液体媒質(9)の移動速度が12mm/s未満の条件では繊維状粒子が絡み合った大きな凝集体、あるいは菊花状の大きな凝集体が支配的になり、コロイドが安定性を失い、沈殿的傾向を示すようになる。
このように、膜状液体媒質(9)の移動速度を12mm/s未満にすることは機械技術的には可能であっても、ナノ粒子分散コロイドを製造するという目的の材料技術的な意味をなさない。
以上が本発明の特許請求項3において請求範囲を限定した理由である。
以上の傾向は金属の種類を問わない一般的な傾向であるが、金属の種類により詳細諸条件は多様である。
以上のとおり、本発明によると、微粒子を球状に整えたり、その大きさを制御したり、また種々のアスペクト比をもつ棒状、あるいは線状、さらに繊維状の微粒子分散系を、安価な方法で、特に専門的熟練を要しない容易な手段により製造することができる。
また、本発明を用いることにより、それを利用する多様な用途に適合した形態をもつ金属ナノ粒子コロイドを提供することが可能となり、その経済的作用効果は絶大である。
中空のセンター軸(19)の両端に真空排気管を兼ねた中空固定軸(1)と中実の固定軸(21)とを同心状に連結した固定軸を中心に、円筒状の回転真空槽(2)を同心状にして回転自在に支えてある。
この固定軸と回転真空槽(2)は、高密閉性の軸受け(22)(22)にて結合されており、前記中空固定軸(1)からの排気により前記真空槽(2)の内部を真空又は減圧状態に維持するようにしてある。
なお、固定軸の支え構造は及び前記軸受け(22)の内部の詳細構造は従来周知なものであり、本説明により明らかなので図示を省略してある。
前記回転真空槽(2)は、その一側に従動プーリ(14)が固定されていて、モータ(20)と無段変速機を(17)を介して連動されている駆動プーリ(16)にエンドレスベルト(15)を介して連動連結してある。このようにして、前記無段変速機を(17)の調整により、決められた回転速度で前記回転真空槽(2)を回転するようにしてある。
前記真空槽(2)の底部に油に界面活性剤を添加した液体媒質が貯められている。
前記液体媒質(3)は金属微粒子コロイドの溶媒となる液体であり、界面活性剤は金属微粒子を油に分散させる分散剤の役割を担っている。
なお、界面活性剤は使用する油にミセルを作ることなく一様に溶解するものでなくてはならない。
前記蒸発源(5)は金属原料塊(4)を蒸発するのに十分な高い温度まで加熱することができるものであれば何であってもよく、例えば、図2にあるような原料金属を入れた耐熱性るつぼにタングステン抵抗線を巻き付けた蒸発源が最も効率的である。
なお、高温に熱せられた蒸発源から放射される輻射熱から、周囲の油を守るために蒸発源の周囲は輻射断熱板(6)で遮蔽されている。
また、熱除去のために、回転真空槽全体(2)を冷却水流(7)で冷却するために、その上方にシャワー配管(18)を配置してある。このようにして、液体媒質(3)及び前記回転真空槽(2)の内面に付着して膜状となった液体媒質(9)の温度を室温等の所望の温度に保持できるようにしてある。
前記回転真空槽(2)内に配置した熱電対(8)は真空蒸着時の膜状液体媒質(9)の温度を監視するために設けられていて、測定結果に基づきシャワー配管(18)からの冷却水の水量を調整して、所望の温度に出来るようにしてある。
この液体媒質(9)は界面活性剤を含んでおり、界面活性剤分子は分子の一端が油を嫌う性質の親水基になっているので、回転真空槽(2)の内面に展開した膜状液体媒質(9)の表面に親水基を内側に向けて集まる傾向がある。
その結果、膜状液体媒質(9)の表面は付着性に富んだ表面に改質されることになる。
そのため金属蒸発源(5)から蒸発する金属蒸気(10)は膜状液体媒質(9)に効率よく付着し、そこで金属微粒子(11)を形成する。
このようにして回転真空槽(2)の上部内壁面で形成された金属微粒子(11)は、その場で界面活性剤分子で覆われ、油になじむ形態になって、回転真空槽(2)の回転に乗って底部に輸送される。
それと同時に新しい油膜(6)が回転真空槽(2)の底部から上部に供給される。
この過程を連続的に行うことにより、底部に予め入れてある液体媒質(3)は金属微粒子が高濃度に分散した安定なコロイド状態(12)に変化する。
この活性液面連続真空蒸着法は広く多種類の金属、合金、及び酸化物の微粒子コロイドの製造が可能である。
両プーリ(14)(16)及びベルト(15)の組み合わせは、トルク伝達を確実にするためにタイミングプーリとタイミングベルトを用いるのが好適である。
しかしながら、回転真空槽(2)を回転する機構であれば何であってもよく、ベルトとプーリの機構に限定されるものではなく、歯車機構でトルクを伝達する方式であっても、回転真空槽(2)全体をローラーで支えながらローラーで駆動する方式であっても作用効果は同一である。
回転真空槽(2)の回転速度、すなわち膜移動速度が異なる3種類の条件で金微粒子コロイドを作製した。
それら3種類の試料の製造に際して、何れも回転真空槽内底部に液体媒質となる界面活性剤ポリブテニルコハク酸テトラミンイミドの7.1%アルキルナフタリン溶液120gを装填し、抵抗加熱蒸発源に原料としての12.5gの塊状金を装填した。
回転真空槽を所定の回転数で回転させながら、真空排気し、3x10−4 Torrの真空中で、蒸発源を加熱し、金蒸気を約0.15g/minの割合で蒸発させた。
なお、金蒸気の蒸発速度は蒸発源に供給する電力により制御した。
以上の諸条件は3種類の試料の作製に関して一定とする一方、回転真空槽の回転速度は3種類の試料に対して、膜の移動速度がそれぞれ(a)18mm/s、(b)33mm/s、(c)81mm/s、(d)100mm/sになるように設定した。
以上の条件下で約80分間運転操作を行うことにより、原料はほぼ消滅し、回転真空槽底部に目的とする金微粒子コロイドが生成した。
得られた4種類の金微粒子コロイドは何れも滑らかな流動性をもち、濃い黒紫色を呈し、目視では差異は認められなかった。
粒子形状、及び粒子サイズに着目して行った電子顕微鏡による観察行った結果を図3、図4、図5、及び図6に示す。
写真はそれぞれ膜移動速度が(a)18mm/s、(b)33mm/s、(c)100mm/sに対応した試料の電子顕微鏡像である。
膜移動速度が18mm/sの条件で製造した金微粒子(図3)は、その大多数が長く伸びた繊維状の形態をもち、線幅は約2−3nm、長さは100nmに及んでいる。
膜移動速度が33mm/s(図4)とき、金微粒子の長さはより短くなり、30〜70nmの範囲に分布している。
また、球状、あるいは楕円状の形状をもつ粒子の混在も認められる。
さらに膜移動速度が81mm/sの条件で製造した金微粒子(図5)は、線状の形態をもつ粒子の頻度は小さくなり、5−7nmの球状粒子の存在が支配的となる。
次に、膜移動速度を100mm/sとしたとき(図6)、金粒子のすべてが球状の形態をとり、そのサイズはいくつかの粒子を除いて、そのほとんどが2−5nmの範囲に分布していることが理解される。
このように膜移動速度を調節することにより金粒子の形状、並びに粒子サイズを制御できることが例示される。
なお、膜移動速度を100mm/sを超えて、190mm/sまで増大させたとき、粒子サイズは2nmに収束し、190mm/sを超えて増大させても、それ以上の作用効果は認められなかった。
一方、膜移動速度を18mm/s を超えて減少させると、繊維状形態は一層顕著になり、さらに12mm/sを超えて減少させたとき、繊維状の金粒子は相互に絡まり、コロイド全体が沈殿的傾向を示し、安定に分散したコロイドにはならなかった。
種々の異なる回転真空槽の回転速度、すなわち12〜190mm/sの範囲の種々の異なる膜移動速度の条件で銅微粒子コロイドを作製した。
それら試料の製造に際して、何れも回転真空槽内底部に液体媒質となる界面活性剤ポリブテニルコハク酸テトラミンイミドの3.4%アルキルナフタリン溶液120gを装填し、抵抗加熱蒸発源に原料としての25gの塊状金を装填した。
回転真空槽を種々の異なる速度で回転させながら、銅原料を0.3g/minの割合で蒸発させ、下地液面に吸着させた。
なお、それ以外の諸条件は先の実施例1に述べた金微粒子コロイド製造の条件と同一とした。
膜移動速度だけが異なる条件で合成した8種類の銅微粒子コロイドに対して電子顕微鏡を用いて微粒子の形態、及び微粒子サイズを観察した結果をまとめると以下のとおりである。
膜移動速度が(e)19mm/sのとき、銅粒子は図7に示すとおり幅10nm、長さ350nm程度の繊維状の形態をもち、それらが樹枝状に会合した大きな凝集体を形成する。
一方、膜移動速度が(f)74mm/sでは、図8に示すとおり、銅粒子はやはり樹枝状の形態を示すが、樹枝の形態は細かく、樹枝長さは30〜50nmとなる。
さらに、膜移動速度が(g)127mm/sでは、図9のように、銅微粒子はさらに細かくなり、おおむね三角形の外形をもつ粒子状の形態をとるようになる。
また、写真には例示しなかったが、膜移動速度が19mm/sより小さいとき、樹枝状凝集体のサイズはさらに大きくなり、特に12mm/s未満では、発生する銅粒子は電子顕微鏡的サイズを超えた大きな樹枝状凝集体を形成し、コロイドは沈殿的傾向を示し、安定な分散状態を保つことはできなかった。
一方、膜移動速度を127mm/sを超えて増大させたとき、膜移動速度が190mm/sにおいて、発生する銅微粒子のサイズは2nmに収束する傾向が見られた。
このように回転真空槽の回転速度を可変にする手段を用いて、膜移動速度を12〜190mm/sの範囲で適正に調節することにより、発生する銅微粒子の形態、並びにサイズを制御することが可能となる。
v=2πdf/60 (1)
そのとき、膜状液体媒質(9)の移動速度が100mm/sを超えて速いほど、粒子径はより小さくなる傾向がある。
膜状液体媒質(9)の移動速度が190mm/sで、金属固体が固体として存在し得る限界径の2nmに達し、微粒子径を2nmより小さくすることは原理的にできないので、膜状液体媒質(9)の移動速度を190mm/s以上にすることは機械技術的には可能であっても、ナノ粒子分散コロイドを製造するという目的において材料技術的には意味をなさない。
以上の傾向は金属の種類を問わない一般的な傾向であるが、金属の種類により詳細諸条件は多様である。
一方、膜状液体媒質(9)の移動速度が100mm/s未満になるように回転真空槽(2)の回転速度を設定したとき、一般的にこれら微粒子の形状は等方的な球状から外れ薄片状、球状微粒子が数珠状につながった屈曲した線状、直線的な棒状、あるいは繊維状、菊花状の凝集体など金属の種類により様々な形態の異方的形状の微粒子が混在したり、それらが支配的に現れるようになる。
膜状液体媒質(9)の移動速度が100mm/s未満で遅いほど、異方的形態は強く現れるようになり、サイズもしだいに大きくなる。
さらに、膜状液体媒質(9)の移動速度が12mm/s未満の条件では繊維状粒子が絡み合った大きな凝集体、あるいは菊花状の大きな凝集体が支配的になり、コロイドが安定性を失い、沈殿的傾向を示すようになる。
このように、膜状液体媒質(9)の移動速度を12mm/s未満にすることは機械技術的には可能であっても、ナノ粒子分散コロイドを製造するという目的の材料技術的な意味をなさない。
以上が本発明の特許請求項3において請求範囲を限定した理由である。
以上の傾向は金属の種類を問わない一般的な傾向であるが、金属の種類により詳細諸条件は多様である。
図12は、回転真空槽(102)を、左右両端を中央よりも短径にした円筒状の例を示す。
図13は、回転真空槽(202)を、多角筒状にした例を示す。
これらは何れも、円筒状のものに比べ、液体媒質(3)が波立ったり、飛沫が生じたりすることなく回転させるために、最高速度に制限を受けるが、その範囲内であれば、上記実施例と同様に微粒子の形状・大きさを調整することができるものである。
さらに詳しくは、本発明は微粒子の形を球状、あるいは等方的にそろえて製造する目的で、さらに棒状粒子、線状粒子、すなわち、太さに対する長さの比(以下でアスペクト比という)を1から20の範囲で形状を制御して製造する目的で利用され、さらにそれらの大きさもそろえて製造する場合に利用される。
セラミックス微粒子は以下に述べる様々な産業分野で利用される。
等方的な形状、あるいは球状の微粒子が分散したコロイドは 磁性流体、高密度ハードディスクパターン媒体、導電インク、潤滑剤、炭素繊維やカーボンナノチューブを製造するための触媒、透明電極、光学フィルター、ナノ粒子標準試料、抗菌剤や消臭剤、電池電極材料、食品添加剤などに利用される。
分散した粒子の形状が球形のとき、粘度が低くなるのでそれを磁性流体軸受けに利用した場合回転抵抗が低くなる。
また、導電インクでは、それをインクジェットプリンターで用いるとき、より微小な液滴を高速度で打ち出すのに好都合である。
パターン媒体は自己組織化の作用を用いて磁性体ナノ粒子を基板面で規則的に配列させ固定するものであるが、各粒子が均一な大きさと正確な球形をもつとき、自己組織化の配列組織は最も安定的に得られる。
炭素繊維やカーボンナノチューブ製造触媒では、育成される繊維の形状や形態が触媒粒子の外形に依存するので、主として球形の微粒子が用いられる。
透明電極や光学フィルターではそれらを基板にスピンコータなどを用いて塗布するとき、球形で低粘度のコロイドが塗布厚さの制御性が優れている。
最も球形に近いことが必要とされる分野はナノ粒子標準試料である。
一方、金属・合金強磁性体金属・合金の針状微粒子、あるいは強磁性酸化物の針状微粒子は磁気ディスクやビデオテープなどの塗布型磁気記録媒体として用いられる。
強磁性体を針状にすることで、記録密度が向上するためである。
また、強磁性体合金の針状粒子を非磁性体のマトリックス中に軸をそろえて充填したものはESD磁石と呼ばれ、永久磁石材料として用いられる。
さらに、金、あるいは銀のナノメーターサイズの棒状粒子は、その軸比の違いにより、異なった吸収色と異なった反射色を呈するので、色調を調節した顔料として利用される。
特に黒色顔料は遮光フィルターとして、液晶パネルディスプレー装置をはじめとして、プラズマパネルディスプレーや有機電界発光ディスプレー装置に多用される。
また、電気伝導性が高い銀、銅の棒状微粒子が分散したコロイドは球状粒子の場合よりも優れた電気伝導性をもつ導電性インクとして用いられ、印刷法によるプリント回路基板の製造、積層コンデンサー、チップ型抵抗器などの電極の形成に用いられる。
また棒状、針状など異方的形状をもった金属微粒子を異方性導電シートの製造に利用した場合は球状粒子を用いた場合よりも強い異方性が発現する。
鉄属遷移金属を含んだ強磁性金属・合金の微粒子コロイドは磁性流体の性質を示すが、特に棒状の強磁性粒子からなる磁性流体は、透磁率が高いので、磁性流体が応用される種々の機器、すなわち真空回転軸受けの真空シール、音を忠実に再現するハイファイ(Hi−Fi)スピーカ、回転軸の防塵シールなどに利用したとき、弱い磁界で高い性能を発揮する。
すなわち、メタン(CH4)やその他炭化水素から水蒸気改質法による水素(H2)の製造やアンモニア(NH3)の分解反応などの脱水素反応の触媒、不飽和脂肪酸から飽和脂肪酸への転換、不飽和の液状食用油からマーガリンや石けんなどの硬化油の製造、オレフィンからパラフィンへの転換など水素添加反応の触媒、クラッキングによる重質油からガソリンへの転換、石油ナフサからハイオクタンガソリンの製造などの合成燃料の製造用触媒、エンジン排気ガスに対する大気汚染防止用触媒として利用される。
また、活性炭などの導電性物質に担持させたPdを含む合金微粒子は化学エネルギーを電気エネルギーに変換する燃料電池の陽極及び陰極活物質として利用される。
このとき、触媒活性は粒子の大きさとともに粒子の形状に大いに依存するので、様々な軸比と形状をもつ触媒微粒子は触媒性能において多面性と多様性を与える。
2 回転真空槽
3 油に界面活性剤を混合した液体媒質
4 金属・合金原料
5 抵抗加熱蒸発源
6 輻射断熱板
7 冷却水流
8 熱電対
9 膜状液体媒質
10 蒸発蒸気束
11 微粒子
12 液体に分散した微粒子
14 従動軸プーリ
15 エンドレスベルト
16 駆動軸プーリ
17 無段変速機
18 シャワー配管
19 センター軸
20 モータ
21 固定軸
22 軸受け
Claims (5)
- 減圧した雰囲気中あるいは真空中で無機材料を蒸発させ、この蒸気を移動する膜状液体媒質に付着させ、コロイド状にして回収する微粒子コロイドの製造方法であって、回収する微粒子の形状・大きさを所望のものにするために、前記膜状液体媒質の移動速度を調節することを特徴とする微粒子コロイド製造方法。
- 請求項1に記載の微粒子コロイド製造方法を実施する装置において、その内面に膜状となって移動する液体媒質を下部に貯留する真空槽と、当該真空槽の内部に配置した前記無機材料の蒸発構造と、前記真空槽が中心軸を水平にした筒状であって、当該真空槽を前記中心軸またはそれに平行な中心線周りに回転させる可変速回転機構とにより構成されてなることを特徴とする微粒子コロイド製造装置。
- 請求項2に記載の微粒子コロイド製造装置において、前記真空槽は円筒状であることを特徴とする微粒子コロイド製造装置。
- 請求項2に記載の微粒子コロイド製造装置において、前記真空槽は多角筒状であることを特徴とする微粒子コロイド製造装置。
- 請求項2から4のいずれかに記載の微粒子コロイド製造装置において、前記液体媒質の移動速度を12〜190mm/sの範囲で可変とするようにしてあることを特徴とする微粒子コロイド製造装置。
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