JP2008136791A - 経鼻型の気道確保器具 - Google Patents

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Abstract

【課題】LMAと経鼻気管内挿管の両者の利点を持ち合わせた経鼻型の気道確保器具を提供する。
【解決手段】経鼻型の気道確保器具1は、鼻孔挿入管2の先端部3に、該先端部3の開口を囲むように環状に膨らむ膨張性カフ5を設け、該膨張性カフ5に連繋した空気管の基端部に、空気注入具7との接続部8を設けた。また、前記膨張性カフ5が、ポリウレタンフィルムとし、前記空気管の基端部に設けた接続部8に逆流防止弁を13備えてある。
【選択図】図1

Description

本発明は、経鼻型の気道確保器具に関するものである。
従来、気道確保器具(LMA=ラリンゲルマスク)は、英国医師(Dr.Brain)により1981年に発明されたもので、本邦では1989年に雑誌「麻酔」に報告されて以来、爆発的に普及するようになった。このLMAは自発呼吸残存の挿入が可能であり、気管内挿嵌と同程度の気道確保能力(陽圧換気も可能)及び簡便な操作性などが評価された。主に、体幹部手術や低侵襲手術の全身麻酔気道確保(日帰り麻酔を含む)、救命救急処置における気道確保(救命救急士を含む)などにおいて汎用されている。
近年、特表2006−514866として開示されている気道確保器具(LMA)は、患者の口を通して体内の挿入位置まで挿入し、膨張させることにより患者の声帯開口部を囲む膨張性カフと、剛体又は剛体に準ずる材質で自然な形状に曲げられて作られているエアウエイチューブとを含むものが存在する。
特表2006−514866号公報
しかしながら、上記LMAの挿入路は、特表2006−514866を含めて経口路のアプローチのみであり、その形状から開口障害の患者並びに頭頚部や口腔手術患者では使用困難である。一方、これらの気道確保法として、古くは、経鼻気管内挿管が施行されていたが、この方法では、筋弛緩の必要性(筋弛緩薬投与に対する術前術後の管理が必要/麻酔管理時間の遷延)、鼻腔や気道損傷の可能性(侵襲的)、煩雑な挿嵌操作(気管支ファイバー/盲目的挿嵌)など、LMAと相反する問題点を有していた。
そこで、本発明は、上記課題を解消するために、上記LMAと経鼻気管内挿管の両者の利点を持ち合わせた経鼻型の気道確保器具を提供することを目的としている。
上記目的を達成するため、本発明に係る経鼻型の気道確保器具は、鼻孔挿入管の先端部に、該先端部の開口を囲むように環状に膨らむ膨張性カフを設け、該膨張性カフに連繋した空気管の基端部に、空気注入具との接続部を設けたことを特徴とし、開口障害の患者並びに頭頚部や口腔手術患者などの気道確保に有効なように構成した。
また、請求項2に記載の発明に係る経鼻型の気道確保器具は、前記膨張性カフが、ポリウレタンフィルムで形成されていることを特徴とし、薄くて堅牢であり、鼻孔からの挿入時には小さく丸められ、膨張時には必要な大きさになり、医学的にも障害がないように構成した。
さらに、請求項3に記載の発明に係る経鼻型の気道確保器具は、前記空気管の基端部に設けた接続部が空気注入具から注入した気体の逆流防止弁を備えていることを特徴とし、空気注入具からの空気の注入後、鉗子などで止める面倒がないように構成した。
本発明によれば、筋弛緩による不動化を必要としない全身麻酔手術の気道確保、開口障害の患者並びに頭頚部や口腔手術患者などの気道確保、鼻腔や気道損傷の軽減、経鼻エアウエイ並の簡便操作が可能となる。
特に、本発明に係る経鼻型の気道確保器具の導入による麻酔時間の短縮は心身障害者歯科治療において有効である。すなわち、心身障害者歯科治療では、安全管理上、治療完了までに反復的全身麻酔下の治療が必須であり、筋弛緩薬使用が必要である経鼻気管内挿嵌下の全身麻酔や挿嵌を行わず不安定な気道管理下での治療が行われている。1回実質30分程度の歯科治療に麻酔時間が約2時間程度を要する。また、彼らの治療を受け入れる施設も不足していることから、治療を必要とする患者が順番待ちとなり、数ヶ月待たされることも珍しくない。そのために症状が重症化したり、治療を諦める患者の多いのが現状である。本発明に係る経鼻型の気道確保器具の導入は、これらの患者の治療機会を増やすことが可能になると推察できる。同時に簡便・確実な操作性から経口気道確保困難患者の救急、集中治療領域での気道確保法の一法としてその効果が期待され、患者と医師双方に大きな利点が享受されることとなる。
また、請求項2に記載の発明によれば、前記膨張性カフが、ポリウレタンフィルムで形成されていることを特徴としているから、材質的に薄くて堅牢であり、鼻孔からの挿入時には小さく丸められる上に、膨張時には必要な大きさに確実に膨らみ、医学的にも人体に障害を与えることがないという利点がある。
さらに、請求項3に記載の発明によれば、前記鼻孔挿入管の基端部の近傍まで延出された空気管外端に空気注入具との接続部に、逆流防止弁を備えていることから、接続部に空気注入具を結合し、空気注入後、直ちに空気注入具を抜き出しても空気を漏らすことがなく、鉗子などで止める面倒がないなどの利点を有する。
次に、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。図1は本願気道確保器具の膨張性カフを膨らました状態の側面図、図2は同状態の平面図、図3の(a)は膨張性カフを空気により膨らました状態、同(b)は膨張性カフから空気を抜いて扁平にした状態をそれぞれ示す断面図、図4は鼻孔からの挿入時に膨張性カフを丸めたときの平面図、図5は鼻孔から挿入後、膨張性カフを膨らまして気道を確保した状態の人体の断面図である。
本願気道確保器具1は、図1及び図2の如く、鼻孔挿入管(エアウエイチューブ)2の先端部3に、該先端部3の開口4を囲むように環状に膨らむ膨張性カフ5を設けてなる。この膨張性カフ5は、底部とその周囲に袋部を設け、底部は前記先端部3の開口4の周囲に設けた扁平部に、二重にして接着剤にて接着されている。この二重の底部には袋部を満たした後の空気が薄膜状に入るようにし、底部の形状を安定化させている。また、袋部には空気管6の先端が連繋(接着剤接着)し、該空気管6の基端部には空気注入具(例えば注射器)7を接続するための接続部8を有している。前記先端部3は、図3の如く、先細の楔状に形成し、その一側面(上面)の扁平面に開口4を設けている。もちろん、開口4は鼻孔挿入管の管端を利用してもよい。
前記鼻孔挿入管2は、人体の鼻孔10を通過できる太さで形成され、鼻孔10から気道11の入り口までの挿入形状に合わせて自然に曲げられている。この鼻孔挿入管2は挿入中に潰されたりねじれると言った不具合をなくすため、ある程度の剛体又は剛体に準ずる材質で構成されている。これは鼻孔挿入管2の内部の気道路の容量を計算どうりに確保して流れの抵抗を少なくする意味において重要である。ちなみに、鼻孔10の奥側(鼻腔)は比較的広い空間になって気道に繋がっている。
前記鼻孔挿入管2の基端部には、気管内に空気を注入するための換気手段(図示せず)の出力端に適合できる接続部材9が設けられている。この接続部材9は、前記鼻孔挿入管2より更に剛体の高い材質で構成し、前記換気手段の出力端との接続をより的確に行われるようになっている。
前記膨張性カフ5は、人体に医学的に障害を与えることのない素材、例えばポリウレタン(又はその同効物)で構成するとよい。勿論、シリコーンその他のゴム質のものであっても良い。前記ポリウレタンは、材質的に薄くて堅牢であり、図3(a)の如く空気の注入Aにより必要な大きさに確実に膨らみ、図3(b)の如く空気の排出Bにより扁平化する。
前述の如く扁平化した膨張性カフ5は、図4の如く鼻孔挿入管2の先端部3に小さく丸める(管の太さをあまり拡大しない)ことができる。したがって、人体の鼻孔への挿入時にもこれを容易に通過させることが可能となる。
前記膨張性カフ5を膨張させるタイミングは、鼻孔挿入管2の先端部3に丸めたられた膨張性カフ5が、開いた口から喉を通して視認できた時点が良い。すなわち、このタイミングで膨らんだ膨張性カフ5は、図5の如く、気道11の入り口にて確実に止められ、前記鼻孔挿入管2の先端部3の一側面に設けた開口4を気道11に指向させた状態で、食道12を確実に閉塞できるようになっている。
前記空気管6は、図示の例では、鼻孔挿入管2の内部に沿って設けられ、膨張性カフ5に連繋した先端側と、空気注入具7との接続部8を有する基端側で鼻孔挿入管2より外出している。この空気管6の外径分だけ鼻孔挿入管2の内部を狭くすることとなるが、容量の確保と流れの抵抗に支障をきたすことがないものである。
前記接続部8には、逆流防止弁13を備えている。この逆流防止弁13は、前記空気注入具7を結合し、空気の注入後、直ちに空気注入具7を抜き出しても、膨張させた前記膨張性カフ5の空気を逆流(漏らす)ことがなく、鉗子などで空気管6の一部をいちいち止める面倒がない。
前記逆流防止弁13の具体的な形状は示していないが、膨張性カフ5を膨らます空気の通過時に弁座を開口し、逆方向には弁座を閉じる弁体でも、また、膨張性カフ5を膨らます方向にはスリットが開き、逆方向にはスリットが閉じる弁体でも、その他でもよい。いずれにしても、前記接続部8の外側からピンなどの棒状物を差し込むと逆流防止解除ができる構造のものがよい。
次に、本発明の作用について説明する。
いま、体幹部手術や低侵襲手術での全身麻酔による気道確保をはかるため、患者を仰臥させ、静脈麻酔薬又は吸入麻酔薬を用い、全身麻酔をかける。必要に応じて筋弛緩薬を併用することもある。
前記本願気道確保器具1は、予め、患者の気管内に空気を注入するための換気手段(図示せず)の出力端に接続部材9を接続しておくが、前記鼻孔挿入管2の先端部に設けた扁平化した膨張性カフ5を、図4の如く、丸めて、患者の鼻孔10へ挿入する。この挿入には人体に無害な滑り剤を用いることもある。
扁平化した膨張性カフ5を丸めた鼻孔挿入管2の先端部3が、開いた口から喉を通して視認できたタイミングで、空気注入具7の先端を空気管6の基端の接続部8に結合して空気を注入する。これにより膨張性カフ5が先端部3の開口4を囲むように環状に膨らんで気道11の入り口にて止められ、前記鼻孔挿入管2の先端部3の一側面に設けた開口4を気道11に指向させた状態で、食道12を確実に閉塞できるようになる。
前記空気注入具7により空気管6を通して膨張性カフ5を膨張させた後、空気注入具7を前記接続部8から抜いても、該接続部8に逆流防止弁13が備えている限り、膨張させた膨張性カフ5の空気は確保され、膨張した状態が保たれる。しかる後、前記換気手段を作動させつつ患者に対する必要な処置が行われる。
前記本願気道確保器具1による気道確保が行われ、かつ、患者に対する必要な処置の終了後、本願気道確保器具1を患者より抜き取るときは、空気注入具7により空気管6を通して膨張性カフ5内の空気を吸引し、膨張性カフ5を偏平化させれば、容易に抜き取ることが可能となる。
本願気道確保器具1は、LMA(ラリンゲルマスク)と経鼻気管内挿管の両者の利点を持ち合わせた経鼻型の気道確保器具であり、筋弛緩による不動化を必要としない全身麻酔手術の気道確保、開口障害の患者並びに頭頚部や口腔手術患者などの気道確保、鼻腔や気道損傷の軽減、経鼻エアウエイ並の簡便操作に極めて有効なものである。
本願気道確保器具の膨張性カフを膨らました状態の側面図である。 同状態の平面図である。 (a)は膨張性カフを空気により膨らました状態、(b)は膨張性カフから空気を抜いて扁平にした状態をそれぞれ示す断面図である。 鼻孔からの挿入時に膨張性カフを丸めたときの平面図である。 鼻孔から挿入後、膨張性カフを膨らまして気道を確保した状態の人体の断面図である。
符号の説明
1 本願気道確保器具
2 鼻孔挿入管(エアウエイチューブ)
3 先端部
4 開口
5 膨張性カフ
6 空気管
7 空気注入具(注射器)
8 接続部
9 接続部材
10 鼻孔
11 気道
13 逆流防止弁
A 空気の注入
B 空気の排出

Claims (3)

  1. 鼻孔挿入管の先端部に、該先端部の開口を囲むように環状に膨らむ膨張性カフを設け、該膨張性カフに連繋した空気管の基端部に、空気注入具との接続部を設けたことを特徴とする経鼻型の気道確保器具。
  2. 前記膨張性カフが、ポリウレタンフィルムで形成されていることを特徴とする請求項1記載の経鼻型の気道確保器具。
  3. 前記空気管の基端部に設けた接続部が、空気注入具から注入した気体の逆流防止弁を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の経鼻型の気道確保器具。
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