JP2008112648A - 膜電極接合体、およびその製造方法、並びに燃料電池 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明の膜電極接合体は、高分子電解質膜、およびその両側に配置された電極を含む膜電極接合体であって、前記高分子電解質膜に含まれる高分子化合物の軟化点のうち最も低い温度を最低軟化点としたときに、最低軟化点−30℃以上、最低軟化点+10℃以下の加熱温度で、前記高分子電解質膜と前記電極とが加熱圧接された膜電極接合体であり、前記高分子電解質膜と前記電極との間に優れた接着力が生じており、また、前記高分子電解質膜の物性が劣化することが抑制されているので、高性能の膜電極接合体となる。
【選択図】 なし
Description
特に、このようなプロトン伝導性電解質膜においては、芳香族単位を有する高分子化合物部分にスルホン酸基などのプロトン伝導性基が導入されて、その部分がプロトン伝導性基を含む高分子電解質となる一方で、芳香族単位がない高分子化合物部分にはプロトン伝導性基が導入されない。従って、このような電解質膜は、全体に亘ってスルホン酸基などの親水性のプロトン伝導性基が導入されている高分子電解質を含むにも関わらず、その骨格部分はプロトン伝導性基が導入されていない部分となるので、水やメタノール水溶液に対して膨潤しにくい構成となり、高いメタノール遮断性を有する電解質膜となる。
また、ここで、前記芳香族単位が無い高分子化合物が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、及びそれらの誘導体からなる群から選択される1種類以上の高分子化合物を含むことが好ましく、工業的に入手し易く、得られる高分子フィルムは機械的特性やハンドリング性に優れ、得られる電解質膜はプロトン伝導性やメタノール遮断性、化学的安定性などに優れる。
本願で言うプロトン伝導性高分子電解質膜とは、少なくともプロトン伝導性基を含む高分子電解質をその膜中に含む膜であり、優れたプロトン伝導性および高いメタノール遮断性を両立した膜とするために、異なる材料を組み合わせて構成することがより好ましい。電子線、γ線、イオンビーム等の放射線を照射することで、高分子電解質膜中に架橋構造を導入して、さらにメタノール遮断性を向上させても良い。
プロトン伝導性基を含む高分子電解質としては、フッ素系、及び非フッ素系の炭化水素系高分子電解質に大別されるが、この内、非フッ素系炭化水素系高分子電解質である炭化水素系高分子電解質は、メタノールの耐久に優れており、また、安価であり好ましい。このような炭化水素系電解質は、文字通り、当業者にとって従来公知の炭化水素系電解質であればよく、例えば、芳香族単位を有する高分子化合物に、プロトン伝導性基が導入されてなる炭化水素系電解質が例示できる。
このような芳香族単位を有する高分子化合物とは、文字通り、当業者にとって従来公知の芳香族単位を有する高分子化合物であればよく、例えば、ポリアリールエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリスルホン、ポリパラフェニレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルホキシド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリフェニレンスルホン、ポリベンズイミダゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾチアゾール、ポリスチレン、シンジオタクチックポリスチレン、ポリエーテルスルホン、スチレン−(エチレン−ブチレン)スチレン共重合体、スチレン−(ポリイソブチレン)−スチレン共重合体、ポリ1,4−ビフェニレンエーテルエーテルスルホン、ポリアリーレンエーテルスルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、シアン酸エステル樹脂、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレン−ポリスチレングラフト共重合体、ポリエチレン−ポリスチレンブロック共重合体、ポリプロピレン−ポリスチレングラフト共重合体、(エチレン−グリシジルメタクリレート)−ポリスチレングラフト共重合体、(エチレン−エチルアクリレート)−ポリスチレングラフト共重合体、ポリプロピレン−(アクリロニトリル−スチレン)グラフト共重合体、ポリカーボネート−ポリスチレングラフト共重合体、ポリカーボネート−(アクリロニトリル−スチレン)グラフト共重合体、酢酸ビニル樹脂−ポリスチレンブロック共重合体、アクリル樹脂−ポリスチレンブロック共重合体、モディパーシリーズ(日本油脂株式会社製、登録商標)、エポフレンドシリーズ(ダイセル化学株式会社製)などが例示される。
(高分子フィルムにプロトン伝導性基を導入)
さらに、高分子フィルムにプロトン伝導性基を導入することで、プロトン伝導性基を含む高分子電解質をその膜中に形成し、プロトン伝導性高分子電解質膜とすることが、簡便かつ生産性が高いので好ましい。その導入方法としては、公知の方法を使用できるが、高分子フィルムとプロトン伝導性基導入剤とを接触させる方法、特に、高分子フィルムを有機溶媒存在下でプロトン伝導性基導入剤と接触させる方法が、優れたプロトン伝導性及び高いメタノール遮断性を両立する高分子電解質膜が得られることから好ましい。
具体的には、芳香族単位を有する高分子化合物と、芳香族単位がない高分子化合物と、を含む高分子フィルムに、プロトン伝導性基を導入することでプロトン伝導性基を含む高分子電解質をその膜中に形成し、プロトン伝導性電解質膜を形成することが好ましい。このようなプロトン伝導性電解質膜においては、芳香族単位を有する高分子化合物部分にスルホン酸基などのプロトン伝導性基が導入されて、その部分がプロトン伝導性基を含む高分子電解質となる一方で、芳香族単位がない高分子化合物部分にはプロトン伝導性基が導入されない。従って、このような電解質膜は、全体に亘ってスルホン酸基などの親水性のプロトン伝導性基が導入されている高分子電解質を含むにも関わらず、その骨格部分はプロトン伝導性基が導入されていない部分となるので、水やメタノール水溶液に対して膨潤しにくい構成となり、高いメタノール遮断性を有する電解質膜となる。
前記芳香族単位を有しない高分子化合物とは、文字通り構造中に芳香族単位を一切有しない化合物のことを意味し、高分子化合物中に芳香族単位が含まれているか否かは、NMR等の公知の方法により容易に確認することができるために、「芳香族単位がない高分子化合物」および「芳香族単位を有する高分子化合物」を当業者は容易に理解し得る。
さらに、工業的入手の容易さや、得られる高分子フィルムの機械的特性やハンドリング性、得られる電解質膜のプロトン伝導性やメタノール遮断性、化学的安定性などを考慮すると、前記芳香族単位がない高分子化合物は、ポリエチレンおよび/またはポリプロピレンおよび/またはポリメチルペンテンを含むことが好ましい。また高分子フィルムの製造に通常用いられる、各種添加剤、例えば相溶性向上のための相溶化剤、樹脂劣化防止のための酸化防止剤、フィルムとしての成型加工における取り扱いを向上するための帯電防止剤や滑剤などは、電解質膜への加工性や性能に影響を及さない限りにおいて、適宜用いられ得る。特に異なる材料を組み合わせて高分子樹脂フィルムを製造する場合には、互いの相溶性を上げるために相溶化剤を用いることが好ましい。
前記触媒層に含まれる触媒としては、燃料電池の電極反応に活性なものが好ましく、その場合に必要な機能としては、カソード側では酸化剤(酸素や空気など)の還元能、アノード側では、燃料(メタノールや水素など)の酸化能であり、具体的には、カーボンブラック、ケッチェンブラック、活性炭、カーボンナノホーン、カーボンナノチューブなどの高表面積の導電性材料に、白金などの貴金属触媒が担持されたもの、あるいは白金ブラックなどの貴金属触媒そのものが使用される。また、カソード側触媒は、還元能の向上、触媒金属の安定化、あるいは長寿命化のために白金と鉄、錫、希土類元素等の金属などからなる複合あるいは合金触媒とすることもできる。さらに、アノード側触媒は、燃料酸化時の副生成物である一酸化炭素、アルデヒド類、カルボン酸類などによる触媒被毒を抑制するため、白金の代わりに、白金とルテニウムなどからなる複合あるいは合金触媒、あるいは、安定化や長寿命化のために、鉄、錫、希土類元素等を含めた多元系触媒とすることもできる。
上述した高分子フィルムの製造方法としては、公知の方法が適宜使用され得るが、例えば、インフレーション法、Tダイ法などの溶融押出成形、カレンダー法、キャスト法、切削法、エマルション法、ホットプレス法、などが例示される。これらの方法の中でも、生産性や、得られる高分子フィルムの機械的特性、フィルムの厚み制御のし易さ、種々の樹脂への適用性、環境への負荷などを考慮すると、溶融押出成形が好ましい。
製造される高分子フィルムの厚さは、用途に応じて任意の厚さを選択することができる。例えば、高分子フィルムから得られる高分子電解質膜の内部抵抗を低減することを考慮した場合、高分子フィルムの厚みは薄い程よい。一方、得られた高分子電解質膜のメタノール遮断性やハンドリング性を考慮すると、高分子フィルムの厚みは薄すぎると好ましくない場合がある。これらを考慮すると、高分子フィルムの厚みは、1.2μm以上350μm以下であることが好ましい。前記高分子フィルムの厚さが前記数値の範囲内であれば、フィルム化が容易であり、かつプロトン伝導性基を導入する際の加工時や乾燥時にもシワが発生しにくい。また、破損が生じ難いなどハンドリング性が向上する。また、得られた高分子電解質膜のプロトン伝導性も所望の範囲で発現させることができる。
プロトン伝導性高分子電解質膜に含まれる高分子電解質の前記プロトン伝導性基の含有に由来するイオン交換容量は、好ましくは0.3ミリ当量/g以上であり、より好ましくは0.5ミリ当量/g以上である。前記イオン交換容量が0.3ミリ当量/g以上であれば、この高分子電解質を含む高分子電解質膜は好ましいプロトン伝導性を発現し易くなる。
プロトン伝導性基の導入に用いられるプロトン伝導性基導入剤としては、スルホン化剤が好ましく利用され得る。有機溶媒存在下で高分子フィルムとプロトン伝導性基導入剤とを接触させることで、プロトン伝導性基導入剤が高分子フィルムと直接接触し過度の反応が生じてフィルムが劣化するのを抑制しつつ、所望量のスルホン酸基を導入することが可能となる。
前述した高分子フィルムをプロトン伝導性基導入剤と接触する際に用いる有機溶媒としては、例えば、プロトン伝導性基導入剤であるスルホン化剤を分解することなく、芳香族単位へのスルホン酸基導入を阻害せずに、高分子フィルム中の熱可塑性高分子や酸化防止剤の分解などの劣化を引き起こさないようなものであれば使用可能である。有機溶媒を使用することによって、高分子フィルムが膨潤しやすくなり、フィルム内部までプロトン伝導性基導入剤を拡散させることができる。
このようなスルホン化剤の使用量としては、高分子フィルムに対して、0.1倍量以上100倍量以下(重量比)、さらには0.5重量以上50倍量以下(重量比)であることが好まし、良好な特性の高分子電解質膜が作成できる。すなわち、スルホン酸基を好適な範囲で導入できるので、充分なプロトン伝導性、親水性を高分子電解質膜に付与しつつ、高分子フィルムそのものが化学的に劣化することを防止できので、メタノール遮断性を維持しつつ、機械的強度の低下が防止されハンドリングが容易な、実用的な特性を有する高分子電解質膜を作成できる。
高分子フィルムとスルホン化剤とを接触させる際の反応温度は、0℃以上100℃以下が好ましく、10℃以上30℃以下がさらに好ましい。反応温度が、0℃以上であれば、設備上冷却等の措置が必要でなく、反応に必要以上の時間がかかることを防止できる。また100℃以下であれば、反応を適切に調節することができ、副反応の発生を防止でき、膜の特性を低下させる問題を回避できる。さらに、高分子フィルムとスルホン化剤とを接触させる際の反応温度は、使用する有機溶媒の沸点以下であることが、耐圧容器を用いる必要がないために好ましい。
前述した触媒層形成材料は、少なくとも前記高分子電解質と前記燃料電池用触媒とを含む混合物であり、また、これら相互の分散状態を向上させるために分散剤が、さらに、最終的に燃料電池の性能を向上させるために、撥水剤が、含まれていてもよい。その形態は、特に限定されず、固体の混合物、あるいは混合分散液であってもよいし混合溶液であってもよい。とくに、混合分散液あるいは混合溶液の場合は、取り扱いが容易であることから好ましい。このような触媒層形成材料である混合分散液あるいは混合溶液中の高分子電解質の濃度としては、触媒層形成材料としての取り扱いが容易であることから、1wt%以上、90wt%以下であることが好ましく、より好ましくは1wt%以上、75wt%以下、特に好ましくは1wt%以上、50wt%以下である。1wt%未満では、触媒層形成材料の粘度が小さくなるので、触媒層自体の形成が困難であり、90wt%より大きい場合では、触媒層形成材料の粘度が大きくなるので、触媒層を均一にの形成することが困難になるである傾向がある。
触媒層の製造方法としては、前記触媒層形成材料をドクターブレードやロールコーター、スクリーン印刷、スプレーなどでポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルム等の剥離フィルムあるいは前記拡散層上に堆積させ、乾燥して溶媒と水を除去する方法が用いられる。形成した触媒層のひび割れを防ぐため、塗布、溶媒の除去作業は数回に繰り返して行うことが有効である場合がある。
このような拡散層としては、導電性を有するカーボン繊維の不織布であるカーボンペーパー、カーボンフェルト、カーボンクロス等を用いることができ、燃料あるいは酸化剤の拡散性を制御するために、その表面に撥水剤を備えていることが好ましく、カーボンと撥水剤とを含む粒子層を備えていることがさらに好ましい。
膜電極接合体の製造方法としては、たとえば、触媒層が形成された剥離フィルムを高分子電解質膜の両面に配置し、ホットプレス機やロールプレス機などのプレス機を使用して加熱圧接したのちに剥離フィルムを取り除き、前記触媒層上に拡散層を配置させる方法、あるいは、触媒層が形成された拡散層をプロトン伝導性高分子膜の両面に配置し、ホットプレス機やロールプレス機などのプレス機を使用して加熱圧接する方法が好ましい。
なお、上述した前記高分子電解質膜を構成する各高分子化合物の軟化点は、一般的な熱分析から測定することができ、たとえば、動的粘弾性の貯蔵弾性率、および損失弾性率の変曲点、あるいは動的粘弾性の損失正接の極大値から求めることができる。
このようにして作製した前記膜電極接合体を、燃料を送り込むための流路が形成されたセパレーターなどの部材と、酸化剤を送り込むための流路が形成されたセパレーターなどの部材と、の2個一対の部材の間に挿入することにより燃料電池を形成することができる。前記セパレーターとしては、特に限定されず、例えばカーボングラファイトやステンレス鋼の導電性材料のものが使用できる。なお、ステンレス鋼などの金属製材料をセパレーターとして使用する場合には、耐腐食性の処理を施していることが好ましい。そして、燃料を供給した側の電極がアノード側電極として機能し、その燃料としては、例えば、液体のメタノールなどを用いることができ、酸化剤を供給した側の電極がカソード側電極として機能し、その酸化剤としては、酸素あるいは空気などを用いることができる。前記カソード側に供給される酸化剤としては、水で加湿されていても良いが、カソードのフラッディング現象を抑制できることから無加湿の酸化剤を用いることが好ましい。
このようにして作製した燃料電池の開回路電位を測定することで、用いた膜電極接合体の特性が評価ができる。具体的には、作製した燃料電池の単セルでの燃料を供給した電極の電位に対する酸化剤を供給した電極の電位の電位差を、100℃以下で、無負荷で、アノードに燃料としてメタノール、カソードに酸化剤として酸素あるいは空気を供給した後に、それぞれが充分にいき渡るように1分以上放置した後、測定することで開回路電位を測定することができる。
前記開回路電位の測定において、アノードに供給するメタノールの濃度を、例えば、1mol/L、5mol/L、および10mol/Lとして順次測定し、つぎにx軸にメタノール濃度、y軸に開回路電位をプロットし、最後に、例えば、最小自二乗法で傾きを算出することによって開回路電位のメタノール濃度依存性を求めることができる。
<電解質膜の作製>
まず、前記芳香族単位を有する高分子化合物としてポリフェニレンサルファイド(大日本インキ化学工業株式会社製、LD10p11)を、前記芳香族単位がない高分子化合物として高密度ポリエチレン(三井化学株式会社製、HI−ZEX 3300F)を使用し、高分子フィルムを作製した。
高分子電解質膜の軟化点を、以下の手順にて動的粘弾性の貯蔵弾性率を測定することによって求めた。まず、前記膜を動的粘弾性測定装置(RSA3、ティー・エイ・インスツルメント株式会社製)に設置し、つぎに、測定条件(25℃から3℃/min.の加熱、周波数:1Hz、ひずみ量:0.15%)で、動的粘弾性の貯蔵弾性率を測定し、最後に、最初に現れた貯蔵弾性率の変曲点から軟化点を求めた。実施例1で作製した高分子電解質膜の軟化点は、120℃であった。
まず、純水4.630gに白金−ルテニウム触媒担持カーボン粉末(TEC61E54、田中貴金属工業株式会社、モル比(白金:ルテニウム=1:1.5)、触媒担持量54重量%)0.463g、および電解質溶液としてナフィオンのアルコール溶液(DE521、5wt%、デュポン社製)4.123gを加えた後に、マグネチックスターラーを用いて30分撹拌することによってアノード触媒インクを作製した。つぎに、このアノード触媒インクをエアブラシで、カーボンペーパー製拡散層(SGL24BA、SGLカーボンジャパン株式会社製、50mm×50mm)に白金担持量1.0mg/cm2になるまで吹き付けた。最後に、それを150℃、1時間真空乾燥させたのちに、22mm×22mmの大きさに裁断することによって、白金担持量1.0mg/cm2のアノード触媒層形成拡散層を得た。
まず、純水2.500gに白金触媒担持カーボン粉末(TEC10E50E、田中貴金属工業株式会社、触媒担持量50重量%)0.250g、および電解質溶液としてナフィオンのアルコール溶液(DE521、5wt%、デュポン社製)1.840gを加えた後に、マグネチックスターラーを用いて30分撹拌することによってカソード触媒インクを作製した。つぎに、このカソード触媒インクをエアブラシで、カーボンペーパー製拡散層(SGL24BA、SGLカーボンジャパン株式会社製、50mm×50mm)に白金担持量1.0mg/cm2になるまで吹き付けた。最後に、それを50℃で乾燥させたのちに、22mm×22mmの大きさに裁断することによって、白金担持量1.0mg/cm2のカソード触媒層形成拡散層を得た。
膜電極接合体を、加熱圧接機(テスター産業株式会社製)を用いて次の手順で作製した。SUS板、ポリテトラフルオロエチレンシート(100mm×100mm×0.05mm)、前記アノード触媒層形成拡散層(22mm×22mm)、前記高分子電解質膜、前記カソード触媒層形成拡散層(22mm×22mm)、ポリテトラフルオロエチレンシート(100mm×100mm×0.05mm)およびSUS板の順に積層した積層物を110℃に加熱した加圧板に設置し、9.8MPa、5分間保持の条件で加熱圧接することによって、膜電極接合体を得た。
市販のPEFC用単セル(エレクトロケム社製)に、前記膜電極接合体を設置して燃料電池セルを組み立てた。まず、アノード側エンドプレート(集電体)、ガスフロープレート(カーボンセパレーター)、ポリテトラフルオロエチレンガスケット(0.15mm)、膜電極接合体、ポリテトラフルオロエチレンガスケット(0.15mm)、ガスフロープレート(カーボンセパレーター)、カソード側エンドプレート(集電体)の順に積層した。次いで、M3のボルトを用いて2Nmで締め付けることによって、燃料電池セルを作製した。
このようにして作製した燃料電池の開回路電位、及び発電特性を、セル温度60℃にて、アノード側にメタノール水溶液、カソード側に無加湿の空気を供給しながら測定した。
高分子電解質膜として膜厚150μmのナフィオン115を用いたこと以外は、実施例1と同様にして比較例1の膜電極接合体を作成し、また、実施例1と同様にしてその膜電極接合体を用いた直接メタノール型燃料電池を作成し、メタノール濃度増加に伴う開回路電位低下率、及び発電特性を測定した。結果を表1、及び図1に示す。
加熱圧接の温度を150℃にしたこと以外は、実施例1と同様にして比較例2の膜電極接合体を作成し、また、直接メタノール型燃料電池のメタノール濃度増加に伴う開回路電位低下率、及び発電特性を測定した。しかし、この比較例2の膜電極接合体を用いた直接メタノール型燃料電池では、開回路電位自体の値が小さく、その低下率として意味のある値は得られず、また、発電特性も非常に悪い結果であった。
Claims (10)
- 高分子電解質膜、およびその両側に配置された電極を含む膜電極接合体であって、該高分子電解質膜に含まれる高分子化合物の軟化点のうち最も低い温度を最低軟化点としたときに、最低軟化点−30℃以上、最低軟化点+10℃以下の加熱温度で、該高分子電解質膜と該電極とが加熱圧接されたものであることを特徴とする膜電極接合体。
- 請求項1に記載の膜電極接合体であって、それを備える直接メタノール型燃料電池の単セルの開回路電位が、燃料として用いるメタノール濃度の増大にともなって、0.00V/(mol/L)以上、0.02V/(mol/L)以下の範囲で低下するものであることを特徴とする膜電極接合体。
- 前記高分子電解質膜が、少なくとも、芳香族単位を有する高分子化合物と芳香族単位がない高分子化合物とを含む高分子フィルムに、プロトン伝導性基が導入されてなることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の膜電極接合体。
- 前記芳香族単位を有する高分子化合物が、ポリスチレン、シンジオタクチックポリスチレン、ポリフェニレンエーテル、変性ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド及び、それらの誘導体からなる群から選択される1種類以上の高分子化合物を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の膜電極接合体。
- 前記芳香族単位が無い高分子化合物が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、及びそれらの誘導体からなる群から選択される1種類以上の高分子化合物を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の膜電極接合体。
- 前記プロトン伝導性基がスルホン酸基を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の膜電極接合体。
- 高分子電解質膜、およびその両側に配置された電極を含む膜電極接合体の製造方法であって、該高分子電解質膜に含まれる高分子化合物の軟化点のうち最も低い温度を最低軟化点としたときに、最低軟化点−30℃以上、最低軟化点+10℃以下の加熱温度で、該高分子電解質膜と該電極とを加熱圧接することを特徴とする膜電極接合体の製造方法。
- 請求項1〜7のいずれか1項に記載の膜電極接合体の製造方法であって、前記高分子電解質膜を溶融成型を含む工程により製造する方法を含むことを特徴とする膜電極接合体の製造方法。
- 請求項1〜9のいずれか1項に記載の膜電極接合体を含むことを特徴とする燃料電池。
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