JP2008101142A - 黒色系複合粉体及びその製造方法、樹脂組成物、石目調成形品、積層品並びに塗料 - Google Patents

黒色系複合粉体及びその製造方法、樹脂組成物、石目調成形品、積層品並びに塗料 Download PDF

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Abstract

【課題】その表面における低蓄熱性に優れ且つ鮮明な石目調外観を有する成形品、塗装皮膜等を得ることができる黒色系複合粉体及びその製造方法、樹脂組成物、石目調成形品、積層品並びに塗料を提供する。
【解決手段】本発明の黒色系複合粉体は、雲母粉〔A〕と、下記条件においてΔT≦73℃である黒色系無機顔料粉体〔B〕と、が接着層を介して複合化している。
〔試験条件〕100質量部のABS樹脂と、5質量部の上記黒色系無機顔料粉体〔B〕とよりなる混合物を用いて、80mm×55mm×2.5mmの成形品を作製し、この成形品を、温度25±2℃及び湿度50±5%RHの環境下で状態調節した後、成形品の表面に赤外線(ランプ出力100W、ランプと成形品との距離200mm)を60分間照射し、成形品の表面温度について赤外線照射前後の温度変化(上昇温度)ΔTを求める。
【選択図】なし

Description

本発明は、黒色系複合粉体及びその製造方法、樹脂組成物、石目調成形品、積層品並びに塗料に関し、更に詳しくは、その表面における低蓄熱性に優れ且つ鮮明な石目調模様を有する成形品、塗装皮膜等を得ることができる黒色系複合粉体及びその製造方法、樹脂組成物、石目調成形品、積層品並びに塗料に関する。
従来、成形品及び塗装皮膜の表面に、石目調模様を形成させるために、着色した熱可塑性樹脂と、無機粒子とからなる複合体、着色された繊維等の模様材を配合した成形材料、塗料等が用いられている。このような模様材は、通常、暗色系の色の材料が用いられている。例えば、黒色の無機複合粒子としては、ムライト等からなる無機粒子に、バインダーを用いて黒鉛を被覆してなるものが知られている(例えば、特許文献1等)。
また、雲母に、金属酸化物を被覆してなる光輝性を有する複合物も知られている(例えば、特許文献2等)。
特開2002−263782号 特開2001−279128号
本発明の目的は、その表面における低蓄熱性に優れ且つ鮮明な石目調模様を有する成形品、塗装皮膜等を得ることができる黒色系複合粉体及びその製造方法、樹脂組成物、石目調成形品、積層品並びに塗料を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意研究した結果、雲母粉と、特定の黒色系無機顔料粉体と、が接着剤を介して複合化された黒色系複合粉体を用いて、成形材料、塗料等とした場合に、石目調模様を鮮明に形成することができ、蓄熱の少ない成形品、皮膜等とすることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、以下に示される。
1.雲母粉〔A〕と、下記条件による測定においてΔT≦73℃である黒色系無機顔料粉体〔B〕と、が接着層を介して複合化していることを特徴とする黒色系複合粉体。
[試験条件]
100質量部のABS樹脂(商品名「テクノABS 110」、テクノポリマー社製)と、5質量部の上記黒色系無機顔料粉体〔B〕とよりなる混合物を用いて、長さ80mm、幅55mm及び厚さ2.5mmの成形品を作製し、この成形品を、温度25±2℃及び湿度50±5%RHの環境下で状態調節した後、成形品の表面に赤外線(ランプ出力100W、ランプと成形品との距離200mm)を60分間照射し、成形品の表面温度について赤外線照射前後の温度変化(上昇温度)ΔTを求める。
2.上記黒色系無機顔料が、Fe、Cr、Mn、Cu、Co及びNiから選ばれる少なくとも1種の元素を含む化合物である上記1に記載の黒色系複合粉体。
3.上記黒色系無機顔料が、Fe、Cr及びMnから選ばれる少なくとも2種の元素を含む酸化物である上記2に記載の黒色系複合粉体。
4.上記黒色系無機顔料が、Co元素及びNi元素を含む酸化物であり、該酸化物中のCo元素及びNi元素の含有量の比Co/Niが5/95〜95/5である上記2に記載の黒色系複合粉体。
5.上記黒色系無機顔料粉体〔B〕の含有割合が、上記雲母粉〔A〕100質量部に対して0.05〜20質量部である上記1乃至4のいずれかに記載の黒色系複合粉体。
6.更に、着色剤〔D〕を備え、且つ、該着色剤〔D〕の含有割合が、上記黒色系無機顔料粉体〔B〕及び該着色剤〔D〕の合計を100質量%とした場合に、0.08〜30質量%である上記1乃至5のいずれかに記載の黒色系複合粉体。
7.雲母粉〔A〕と、下記条件による測定においてΔT≦73℃である黒色系無機顔料粉体〔B〕と、接着剤〔C〕と、必要に応じて着色剤〔D〕とを混合する工程を備えることを特徴とする黒色系複合粉体の製造方法。
[試験条件]
100質量部のABS樹脂(商品名「テクノABS 110」、テクノポリマー社製)と、5質量部の上記黒色系無機顔料粉体〔B〕とよりなる混合物を用いて、長さ80mm、幅55mm及び厚さ2.5mmの成形品を作製し、この成形品を、温度25±2℃及び湿度50±5%RHの環境下で状態調節した後、成形品の表面に赤外線(ランプ出力100W、ランプと成形品との距離200mm)を60分間照射し、成形品の表面温度について赤外線照射前後の温度変化(上昇温度)ΔTを求める。
8.上記1乃至6のいずれかに記載の黒色系複合粉体と、樹脂とを含有することを特徴とする樹脂組成物。
9.下記条件による測定においてΔT≦73℃である上記8に記載の樹脂組成物。
[試験条件]
上記樹脂組成物を用いて、長さ80mm、幅55mm及び厚さ2.5mmの成形品を作製し、この成形品を、温度25±2℃及び湿度50±5%RHの環境下で状態調節した後、成形品の表面に赤外線(ランプ出力100W、ランプと成形品との距離200mm)を60分間照射し、成形品の表面温度について赤外線照射前後の温度変化(上昇温度)ΔTを求める。
10.上記8又は9に記載の樹脂組成物を成形してなることを特徴とする石目調成形品。
11.上記石目調成形品がフィルム又はシートである上記10に記載の石目調成形品。
12.上記8又は9に記載の樹脂組成物を成形してなる層と、他の樹脂組成物を成形してなる層とが積層されていることを特徴とする積層品。
13.上記1乃至6のいずれかに記載の黒色系複合粉体を含有することを特徴とする塗料。
本発明の黒色系複合粉体によれば、成形材料、塗料等の組成物中に含有させ、これを用いた場合に、石目調模様を鮮明に形成することができ、太陽光等による、表面における蓄熱の少ない、耐熱性に優れた成形品、皮膜等とすることができる。
上記黒色系無機顔料が、Fe、Cr、Mn、Cu、Co及びNiから選ばれる少なくとも1種の元素を含む化合物である場合には、成形品、皮膜等の表面における低蓄熱性に優れる。
上記黒色系無機顔料が、Fe、Cr及びMnから選ばれる少なくとも2種の元素を含む酸化物である場合、並びに、Co元素及びNi元素を含む酸化物であり、この酸化物中のCo元素及びNi元素の含有量の比Co/Niが5/95〜95/5である場合には、特に低蓄熱性に優れる。
本発明の黒色系複合粉体が、着色剤〔D〕、例えば、酸化チタン等からなる粉体を更に備える場合には、上記の雲母粉〔A〕及び黒色系無機顔料粉体〔B〕の混合色に由来する色及び/又はその濃度を変化させることができ、様々な用途に適用することができる。
本発明の黒色系複合粉体の製造方法によれば、雲母粉〔A〕と、黒色系無機顔料粉体〔B〕とが接着剤〔C〕により一体化した複合粉体を効率よく製造することができる。
本発明の樹脂組成物によれば、石目調模様が鮮明に形成された、低蓄熱性及び耐熱性に優れる成形品を容易に得ることができる。
本発明の石目調成形品及び積層品によれば、上記本発明の樹脂組成物を含む表面においては、石目調模様が鮮明であるだけでなく、低蓄熱性及び耐熱性に優れる。蓄熱が少ないことにより、成形品が屋外で用いられた場合に、太陽光による変形を抑制することができる。また、人体に触れてやけど等の発症を抑制することもできる。
本発明の塗料によれば、石目調模様を鮮明に形成でき、低蓄熱性に優れ、被塗装物への密着性に優れる。
以下、本発明を詳しく説明する。
本発明において、「(共)重合」とは、単独重合及び共重合を意味し、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及びメタクリルを意味する。
1.黒色系複合粉体及びその製造方法
1−1.黒色系複合粉体
本発明の黒色系複合粉体は、雲母粉〔A〕と、下記試験条件1による測定においてΔT≦73℃である黒色系無機顔料粉体〔B〕と、が接着層を介して複合化していることを特徴とする。
[試験条件1]
100質量部のABS樹脂(商品名「テクノABS 110」、テクノポリマー社製)と、5質量部の上記黒色系無機顔料粉体〔B〕とよりなる混合物を用いて、長さ80mm、幅55mm及び厚さ2.5mmの成形品を作製し、この成形品を、温度25±2℃及び湿度50±5%RHの環境下で状態調節した後、成形品の表面に赤外線(ランプ出力100W、ランプと成形品との距離200mm)を60分間照射し、成形品の表面温度について赤外線照射前後の温度変化ΔTを求める。このΔTは、赤外線照射によって上昇した温度であり、以下、「蓄熱温度」ともいう。
上記試験条件1の具体的な操作は、後述する〔実施例〕において説明する。
上記雲母粉〔A〕としては、通常、人造及び/又は天然の黒雲母の粉体が用いられる。この雲母粉〔A〕の形状は、特に限定されないが、通常、平板状である。また、平均粒径(最大長さの平均値)は、好ましくは0.025〜5mm、より好ましくは0.05〜3mm、更に好ましくは0.10〜2mmである。上記平均粒径が小さすぎると、石目調の発現が劣る傾向にあり、一方、大きすぎると、表面外観性が劣る傾向にある。また、厚さは、好ましくは2.5〜500μm、より好ましくは5〜300μmである。
上記黒色系無機顔料粉体〔B〕としては、黒色系(暗色系)の色を有し、上記試験条件1による測定において、ΔT≦73℃を満たす化合物からなるものであれば、特に限定されない。好ましくはΔT≦71℃を満たす化合物であり、より好ましくはΔT≦69℃を満たす化合物である。尚、ΔT>73℃の黒色系無機顔料粉体を用いると、低蓄熱性効果が十分でない傾向にある。
上記黒色系無機顔料粉体〔B〕の構成材料としては、Fe、Cr、Mn、Cu、Co及びNiから選ばれる元素を含む化合物が好ましい。特に、上記元素の酸化物、複合酸化物等が好ましく、具体的には、FeO、FeO(OH)、Fe、CrO、Cr、Cr・2HO、MnO、Mn、MnO、CuO、CuO、CoO、CoO・Al、Fe(Fe,Cr)、(Co,Fe)(Fe,Cr)、Cu(Cr,Mn)、(Cu,Fe,Mn)(Fe,Cr,Mn)、(Fe,Zn)(Fe,Cr)、(Fe,Zn)Fe、CoAl、Co(Al,Cr)、Cr:Fe、(Ni,Co,Fe)(Fe,Cr)等が挙げられる。これらのうち、Cr:Fe、(Cu,Fe,Mn)(Fe,Cr,Mn)、Fe(Fe,Cr)、(Co,Fe)(Fe,Cr)、Cu(Cr,Mn)、(Ni,Co,Fe)(Fe,Cr)が好ましい。また、上記例示した酸化物及び複合酸化物は、それぞれ1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
尚、上記例示した中で、CoOを単独で用いた場合、その成形品は、太陽光を受光したときに赤外線の強度等によって成形品の表面に白化が発生したり、紫外線によって揮散したりすることがあるため、CoOを用いる場合は、他の化合物と組み合わせて用いることが好ましい。
本発明においては、黒系、深緑系等の暗色系の色の成形品を得るために、上記黒色系無機顔料粉体〔B〕として、Fe、Cr及びMnから選ばれる少なくとも2種の元素を含む酸化物からなる粉体を用いることが好ましい。その例としては、Fe(Fe,Cr)、(Co,Fe)(Fe,Cr)、Cu(Cr,Mn)、(Cu,Fe,Mn)(Fe,Cr,Mn)、(Fe,Zn)(Fe,Cr)、Cr:Fe等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。上記酸化物からなる黒色系無機顔料粉体〔B〕を含有する成形材料、塗料等とすることによって、太陽光等による蓄熱の少ない成形品、皮膜等を形成することができる。
また、上記黒色系無機顔料粉体〔B〕として、Co元素及びNi元素を含む酸化物、例えば、(Ni,Co,Fe)(Fe,Cr)等からなる粉体を用いる場合、この酸化物中のCo元素及びNi元素の含有量の比Co/Niは、好ましくは5/95〜95/5であり、より好ましくは10/90〜90/10、更に好ましくは15/85〜85/15である。上記範囲とした黒色系無機顔料粉体〔B〕を含有する成形材料、塗料等とすることによって、太陽光等による蓄熱の少ない成形品、皮膜等を形成することができる。
上記黒色系無機顔料粉体〔B〕の平均粒径は、好ましくは5nm〜40μm、より好ましくは15nm〜30μmである。上記平均粒径が大きすぎると、黒色系複合粉体の形状安定性が十分でない場合がある。
本発明の黒色系複合粉体において、上記黒色系無機顔料粉体〔B〕の含有割合は、上記雲母粉〔A〕の含有量を100質量部とした場合、好ましくは0.05〜20質量部であり、より好ましくは0.1〜20質量部、更に好ましくは0.5〜15質量部である。上記黒色系無機顔料粉体〔B〕の含有量が上記範囲にあれば、成形品、塗装皮膜等とした場合に、その表面における低蓄熱性及び石目調模様の外観性に優れる。
本発明の黒色系複合粉体は、更に着色剤〔D〕を備え、上記の雲母粉〔A〕と、黒色系無機顔料粉体〔B〕と、この着色剤〔D〕とが、接着層を介して複合化したものとすることができる。この着色剤〔D〕を備えることにより、上記の雲母粉〔A〕及び黒色系無機顔料粉体〔B〕の混合色に由来する色及び/又はその濃度を変化させることができ、様々な用途に適用することができる。
上記着色剤〔D〕としては、上記黒色系無機顔料粉体〔B〕以外の顔料、及び/又は、染料を用いることができる。この着色剤〔D〕は、暗色系の色でも明色系の色でもよく、また、有彩色であってもよい。更に、上記黒色系無機顔料粉体〔B〕をこの着色剤〔D〕に置き換えて上記試験条件1による測定を行った場合に、ΔT≦73℃を満たす化合物からなるものであってよいし、満たさないものであってもよい。
上記着色剤〔D〕が上記黒色系無機顔料粉体〔B〕以外の顔料である場合、無機化合物でも有機化合物でもよいが、好ましくは、無機化合物であり、例えば、酸化物、炭化物、窒化物、炭酸塩、ケイ酸塩等が挙げられる。酸化物としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、シリカ、酸化セリウム、酸化ジルコニウム等が挙げられる。炭化物としては、炭化珪素等が挙げられる。窒化物としては、窒化ホウ素、窒化珪素等が挙げられる。炭酸塩としては、炭酸カルシウム、炭酸バリウム等が挙げられる。ケイ酸塩としては、タルク、カオリン等が挙げられる。
また、上記着色剤〔D〕が染料である場合、例えば、アントラキノン系染料、ペリレン系染料、ペリノン系染料、キノリン系染料、ニトロ系染料、ニトロソ系染料、アゾ系染料、トリフェニル系染料、チアゾール系染料、メチン系染料、オキサジン系染料、インドフェノール系染料、ケトン系染料、チアジン系染料、インジゴ系染料等が挙げられる。
本発明において、上記着色剤〔D〕としては、上記黒色系無機顔料粉体〔B〕以外の顔料であることが好ましく、特に、上記試験条件1による測定を行った場合に、ΔT≦73℃を満たし、且つ、上記の雲母粉〔A〕及び黒色系無機顔料粉体〔B〕の混合色に由来する色の濃度を変化させることが容易な、酸化チタンからなる粉体が好ましい。
上記着色剤〔D〕の平均粒径は、好ましくは5nm〜40μm、より好ましくは15nm〜30μmである。上記平均粒径が大きすぎると、石目調外観性が劣る場合がある。
本発明の黒色系複合粉体が、上記着色剤〔D〕を備える場合、その含有割合は、上記黒色系無機顔料粉体〔B〕及び上記着色剤〔D〕の合計を100質量%とした場合に、好ましくは0.08〜30質量%、より好ましくは0.3〜25質量%、更に好ましくは0.8〜20質量%である。上記着色剤〔D〕の含有割合が上記範囲にある場合、所望の色への調整が可能であり、この黒色系複合粉体を含む成形品及び皮膜の用途の多様化を図ることができる。
本発明の黒色系複合粉体は、上記の雲母粉〔A〕と、黒色系無機顔料粉体〔B〕とが、接着層を介して一体化したものである。また、上記着色剤〔D〕が用いられた場合には、本発明の黒色系複合粉体は、上記の雲母粉〔A〕と、黒色系無機顔料粉体〔B〕及び着色剤〔D〕とが、接着層を介して一体化したものである。この接着層の構成材料は、通常、高分子材料を含み、例えば、フェノール樹脂、フラン樹脂、アクリル系樹脂、アクリルシリコン系樹脂、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、酢酸ビニル系樹脂等の硬化樹脂又は未硬化樹脂を含む組成物が挙げられる。
本発明の黒色系複合粉体において、上記接着層の構成材料の含有割合は、上記の雲母粉〔A〕及び黒色系無機顔料粉体〔B〕の合計、又は、上記の雲母粉〔A〕、黒色系無機顔料粉体〔B〕及び着色剤〔D〕の合計を100質量部とした場合、いずれも、好ましくは1〜20質量部、より好ましくは2〜15質量部である。上記範囲であれば、石目調外観性に優れる。
本発明の黒色系複合粉体は、通常、雲母粉〔A〕の表面に、黒色系無機顔料粉体〔B〕、又は、黒色系無機顔料粉体〔B〕及び着色剤〔D〕が接着層を介して接合した構造を有するが、上記黒色系無機顔料粉体〔B〕等が、上記雲母粉〔A〕の表面を完全被覆している場合と、部分被覆している場合とがある。また、形状は、通常、上記雲母粉〔A〕に準じた形状、即ち、平板状である。尚、本発明の黒色系複合粉体は、全体として、狭い粒径分布を有するものであってよいし、広い粒径分布を有するものであってもよい。従って、本発明の黒色系複合粉体の平均粒径は、例えば、0.030〜5.2mmの範囲にある。
1−2.黒色系複合粉体の製造方法
本発明の黒色系複合粉体の製造方法は、雲母粉〔A〕と、上記試験条件1による測定においてΔT≦73℃である黒色系無機顔料粉体〔B〕と、接着剤〔C〕と、必要に応じて着色剤〔D〕とを混合する工程(以下、「混合工程」という。)を備えることを特徴とする。
上記混合工程において用いる原料は、上記の雲母粉〔A〕と黒色系無機顔料粉体〔B〕と、接着剤〔C〕と、必要に応じて用いられる、着色剤〔D〕である。
上記接着剤〔C〕としては、フェノール樹脂、アクリル系樹脂、アクリルシリコン系樹脂、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、フラン樹脂、酢酸ビニル系樹脂等の硬化樹脂又は未硬化樹脂を含む組成物を形成することができるプレポリマーを含む組成物(以下、「プレポリマー組成物」という。)を用いることができる。このプレポリマー組成物は、水系であってよいし、溶剤系であってもよい。また、媒体を含まない組成物であってもよい。更に、重合開始剤、架橋剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線防止剤等を含んでもよい。尚、上記樹脂のうち、フェノール樹脂、アクリル系樹脂等が好ましい。
上記混合工程においては、上記の雲母粉〔A〕と黒色系無機顔料粉体〔B〕と、接着剤〔C〕と、必要に応じて着色剤〔D〕とを混合する。各原料の使用量は、以下の通りである。
上記の雲母粉〔A〕及び黒色系無機顔料粉体〔B〕の各使用量について、上記雲母粉〔A〕を100質量部とした場合、上記黒色系無機顔料粉体〔B〕の使用量は、好ましくは0.05〜20質量部であり、より好ましくは0.1〜20質量部、更に好ましくは0.5〜15質量部である。
また、上記着色剤〔D〕を使用する場合の使用量は、上記の黒色系無機顔料粉体〔B〕及び着色剤〔D〕の合計を100質量%とした場合に、好ましくは0.08〜30質量%、より好ましくは0.3〜25質量%、更に好ましくは0.8〜20質量%である。
更に、上記接着剤〔C〕は、本発明の黒色系複合粉体を製造した際において、形成された接着層の質量が、上記の雲母粉〔A〕及び黒色系無機顔料粉体〔B〕の合計、又は、上記の雲母粉〔A〕、黒色系無機顔料粉体〔B〕及び着色剤〔D〕の合計を100質量部とした場合、いずれも、好ましくは1〜20質量部、より好ましくは2〜15質量部となるように調整して用いられる。即ち、上記接着剤〔C〕として、上記プレポリマー組成物を用い、水系又は溶剤系の組成物である場合には、固形分濃度等を考慮して使用量が決定される。
上記混合工程において、上記原料の混合は、ヘンシェルミキサー等の公知の撹拌装置を用いて行うことができるが、混合方法は、特に限定されない。尚、接着剤〔C〕の種類によっては、加熱しながら、又は、(発熱を抑制する等の目的で)冷却しながら混合してもよい。
混合方法の具体例は、以下の通りである。
(1)各原料を一括して混合用容器へ投入した後、撹拌等を行う方法。
(2)接着剤〔C〕の存在下(攪拌下)に、他の原料を一括して投入し、撹拌等を行う方法。
(3)接着剤〔C〕の存在下(攪拌下)に、他の原料を連続して又は分割して投入しながら撹拌等を行う方法。
(4)雲母粉〔A〕及び接着剤〔C〕を混合した後、他の原料を一括して投入し、撹拌等を行う方法。
(5)雲母粉〔A〕及び接着剤〔C〕を混合した後、他の原料を連続して又は分割して投入しながら撹拌等を行う方法。
(6)接着剤〔C〕以外の原料成分を混合した後、接着剤〔C〕を一括して投入し、撹拌等を行う方法。
(7)接着剤〔C〕以外の原料成分を混合した後、接着剤〔C〕を連続して又は分割して投入しながら撹拌等を行う方法。
本発明において、上記混合工程により得られた混合物に対し、必要に応じて、熱処理(以下、「熱処理工程」という。)を行ってもよい。
上記熱処理工程における具体的な方法は、上記プレポリマー組成物の組成により選択されるが、通常、大気、窒素ガス等の雰囲気下、好ましくは80〜200℃で加熱される。加熱時間は、通常、1〜60分間である。尚、この熱処理は、撹拌しながら行ってもよい。また、減圧下で行ってもよい。
2.樹脂組成物
本発明の樹脂組成物(以下、「本発明の組成物」ともいう。)は、上記本発明の黒色系無機顔料粉体と、樹脂とを含有することを特徴とする。
上記樹脂は、熱可塑性樹脂及び硬化性(熱硬化性、光硬化性、電子線硬化性、室温硬化性等)樹脂のいずれでもよく、前者の場合、本発明の組成物は、熱可塑性樹脂組成物であり、後者の場合は、硬化性樹脂組成物である。好ましくは熱可塑性樹脂である。
本発明の組成物は、下記試験条件2による測定において、好ましくはΔT≦73℃、より好ましくはΔT≦71℃、更に好ましくはΔT≦69℃である。尚、ΔT>73℃であると、低蓄熱性効果が十分でない傾向にある。
[試験条件2]
本発明の組成物を用いて、長さ80mm、幅55mm及び厚さ2.5mmの成形品を作製し、この成形品を、温度25±2℃及び湿度50±5%RHの環境下で状態調節した後、成形品の表面に赤外線(ランプ出力100W、ランプと成形品との距離200mm)を60分間照射し、成形品の表面温度について赤外線照射前後の温度変化(上昇温度)ΔTを求める。このΔTも、上記ΔTと同様、蓄熱温度を意味する。上記試験条件2の具体的な操作は、後述する〔実施例〕において説明する。
従って、本発明の組成物における、上記樹脂と、上記本発明の黒色系無機顔料粉体との含有割合については、上記ΔTの条件が満たされるように選択され、樹脂100質量部に対して、黒色系無機顔料粉体の含有量の上限が、好ましくは20質量部、より好ましくは15質量部、更に好ましくは10質量部である。但し、下限は、通常、0.5質量部である。上記範囲の含有割合であれば、耐衝撃性及び石目調外観性に優れる。
2−1.熱可塑性樹脂
この熱可塑性樹脂としては、熱可塑性を有する重合体を含むものであれば、特に限定されず、ABS樹脂、ASA樹脂、AES樹脂等のゴム強化樹脂;ポリスチレン、スチレン・アクリロニトリル共重合体、スチレン・無水マレイン酸共重合体、(メタ)アクリル酸エステル・スチレン共重合体等のスチレン系(共)重合体;ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂;ポリエステル系樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリアリレート樹脂;ポリアセタール樹脂;ポリ塩化ビニル、エチレン・塩化ビニル重合体、ポリ塩化ビニリデン等の塩化ビニル系樹脂;ポリメタクリル酸メチル(PMMA)等の(メタ)アクリル酸エステルの1種以上を用いた(共)重合体等のアクリル系樹脂;ポリフェニレンエーテル;ポリフェニレンサルファイド;ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素樹脂;液晶ポリマー;ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド等のイミド系樹脂;ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン等のケトン系樹脂;ポリスルホン、ポリエーテルスルホン等のスルホン系樹脂;ウレタン系樹脂;ポリ酢酸ビニル;ポリエチレンオキシド;ポリビニルアルコール;ポリビニルエーテル;ポリビニルブチラール;フェノキシ樹脂;感光性樹脂;生分解性プラスチック等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらのうち、ゴム強化樹脂;オレフィン系樹脂;ポリエステル系樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリエステル系樹脂及びポリカーボネート樹脂のアロイ;ポリエステル系樹脂、ゴム強化樹脂及びポリカーボネート樹脂のアロイが好ましい。
2−1−1.ゴム強化樹脂
このゴム強化樹脂は、ゴム質重合体(以下、「ゴム質重合体(a)」という。)の存在下に、芳香族ビニル化合物を含むビニル系単量体(以下、「ビニル系単量体(b)」という。)を重合して得られるゴム強化ビニル系樹脂(以下、「ゴム強化ビニル系樹脂(A1)」という。)、又は、該ゴム強化ビニル系樹脂(A1)及びビニル系単量体の(共)重合体(以下、「(共)重合体(A2)」という。)の混合物、からなるものである。
上記ゴム質重合体(a)は、単独重合体であってよいし、共重合体であってもよいが、ジエン系重合体及び非ジエン系重合体が挙げられる。また、これらは、単独で用いてよいし、組み合わせて用いてもよい。更に、このゴム質重合体(a)は、非架橋重合体であってよいし、架橋重合体であってもよい。
上記ジエン系重合体としては、ポリブタジエン、ポリイソプレン等の単独重合体;スチレン・ブタジエン共重合体、スチレン・ブタジエン・スチレン共重合体、アクリロニトリル・スチレン・ブタジエン共重合体等のスチレン・ブタジエン系共重合体;スチレン・イソプレン共重合体、スチレン・イソプレン・スチレン共重合体、アクリロニトリル・スチレン・イソプレン共重合体等のスチレン・イソプレン系共重合体;上記各(共)重合体の水素化物等が挙げられる。
また、上記非ジエン系重合体としては、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・ブテン−1共重合体等のエチレン・α−オレフィン共重合体;エチレン・プロピレン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体、エチレン・ブテン−1・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体等のエチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体;ウレタン系ゴム;アクリル系ゴム;シリコーンゴム;シリコーン・アクリル系IPNゴム等が挙げられる。
尚、上記各共重合体は、ブロック共重合体でもよいし、ランダム共重合体でもよい。
上記ゴム質重合体(a)の大きさ及び形状は、特に限定されないが、粒子状であることが好ましく、その重量平均粒子径は、好ましくは30〜2000nmであり、より好ましくは100〜1500nm、更に好ましくは200〜1000nmである。重量平均粒子径が30nm未満では、成形品の耐衝撃性が劣る傾向にあり、2000nmを超えると、成形加工性、成形品の表面外観性が劣る傾向にある。上記重量平均粒子径は、レーザー回折散乱法、動的光散乱法等により測定することができる。
上記ゴム質重合体(a)は、その重量平均粒子径が上記範囲内にあるものであれば、例えば、特開昭61−233010号公報、特開昭59−93701号公報、特開昭56−167704号公報等に記載されている方法等の公知の方法により肥大化したものを用いることもできる。
上記ゴム質重合体(a)を製造する方法としては、乳化重合、溶液重合等が挙げられる。これらのうち、平均粒子径の調整等が容易であることから、乳化重合が好ましい。この場合、平均粒子径は、乳化剤の種類及びその使用量、開始剤の種類及びその使用量、重合時間、重合温度、攪拌条件等の製造条件を選択することにより調整することができる。上記平均粒子径(粒子径分布)の他の調整方法としては、異なる粒子径を有するゴム質重合体(a)の2種類以上をブレンドする方法でもよい。乳化重合により製造して得られたゴム質重合体(a)は、ゴム強化ビニル系樹脂(A1)を乳化重合により製造するのに好適である。
また、溶液重合等によりゴム質重合体(a)を製造した場合には、再乳化等の方法により、所定の平均粒子径を有する重合体とさせることができる。再乳化により得られたゴム質重合体(a)の分散液も、ゴム強化ビニル系樹脂(A1)を乳化重合により製造するのに好適である。
上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)の形成に用いられるビニル系単量体(b)は、芳香族ビニル化合物(以下、「芳香族ビニル化合物(b1)」ともいう。)のみでもよいし、該芳香族ビニル化合物(b1)と、例えば、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物、マレイミド系化合物、酸無水物等の該芳香族ビニル化合物と共重合可能な化合物とを、それぞれ、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
従って、上記ビニル系単量体(b)としては、芳香族ビニル化合物(b1)の1種以上、あるいは、芳香族ビニル化合物の1種以上と、該芳香族ビニル化合物と共重合可能な化合物の1種以上とを組み合わせた単量体を用いることができる。
上記芳香族ビニル化合物(b1)としては、少なくとも1つのビニル結合と、少なくとも1つの芳香族環とを有する化合物であれば、特に限定されることなく用いることができる。その例としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルトルエン、β−メチルスチレン、エチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、ビニルキシレン、ビニルナフタレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、モノブロモスチレン、ジブロモスチレン、フルオロスチレン等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらのうち、スチレン及びα−メチルスチレンが好ましい。
上記シアン化ビニル化合物としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。これらのうち、アクリロニトリルが好ましい。また、これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸tert−ブチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸tert−ブチル等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記マレイミド系化合物としては、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−(2−メチルフェニル)マレイミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)マレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。尚、マレイミド系化合物からなる単位を導入する他の方法としては、例えば、無水マレイン酸を共重合し、その後イミド化する方法でもよい。
上記酸無水物としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、上記化合物以外に、必要に応じて、ヒドロキシル基、アミノ基、エポキシ基、アミド基、カルボキシル基、オキサゾリン基等の官能基を有するビニル系化合物を用いることができる。例えば、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、ヒドロキシスチレン、メタクリル酸N,N−ジメチルアミノメチル、アクリル酸N,N−ジメチルアミノメチル、N,N−ジエチル−p−アミノメチルスチレン、メタクリル酸グリシジル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸3,4−オキシシクロヘキシル、アクリル酸3,4−オキシシクロヘキシル、ビニルグリシジルエーテル、メタリルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、メタクリルアミド、アクリルアミド、メタクリル酸、アクリル酸、ビニルオキサゾリン等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)の形成に用いるビニル系単量体(b)としては、下記の組み合わせで用いることが好ましい。シアン化ビニル化合物を用いることにより、耐薬品性及び耐変色性の物性バランスが向上する。
(1)芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物。
(2)芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物及び他の化合物。
上記ビニル系単量体(b)として、芳香族ビニル化合物(b1)と他のビニル系単量体(以下、「ビニル系単量体(b2)」ともいう。)とを併用する場合、芳香族ビニル化合物(b1)と、ビニル系単量体(b2)との重合割合(b1)/(b2)は、これらの合計を100質量%とした場合、好ましくは(2〜95)質量%/(98〜5)質量%、より好ましくは(10〜90)質量%/(90〜10)質量%である。芳香族ビニル化合物(b1)の使用量が少なすぎると、成形加工性が劣る傾向にあり、多すぎると、本発明の組成物及びそれを含む成形品の耐薬品性、耐熱性等が十分でない場合がある。
上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)は、ゴム質重合体(a)の存在下に、ビニル系単量体(b)を重合して得られたものである。このゴム強化ビニル系樹脂(A1)は、ビニル系単量体(b)として芳香族ビニル化合物のみを用いて得られたゴム強化ビニル系樹脂(i)の1種以上であってよいし、ビニル系単量体(b)として上記(1)の単量体を用いて得られたゴム強化ビニル系樹脂(ii)の1種以上であってよいし、ビニル系単量体(b)として上記(2)の単量体を用いて得られたゴム強化ビニル系樹脂(iii)の1種以上であってもよい。更には、これらを適宜、組み合わせたものであってもよい。
尚、前述のように、上記成分〔A〕としてゴム強化樹脂を用いる場合には、該ゴム強化樹脂が、ゴム強化ビニル系樹脂(A1)のみであってもよく、ゴム強化ビニル系樹脂(A1)と、ビニル系単量体の重合によって得られた(共)重合体(A2)とからなる混合物であってもよい。このビニル系単量体としては、上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)の形成に用いた化合物、即ち、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物、マレイミド系化合物、酸無水物及び官能基を有する化合物から選ばれる1種以上を用いることができる。従って、上記(共)重合体(A2)は、上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)の形成に用いたビニル系単量体(b)と全く同じ組成の成分を重合して得られる重合体であってもよいし、異なる組成で同じ種類の単量体を重合して得られる重合体であってもよいし、更には、異なる組成で異なる種類の単量体を重合して得られる重合体であってもよい。これらの各重合体が2種以上含まれるものであってもよい。
上記(共)重合体(A2)としては、下記(3)〜(8)に例示される。尚、各単量体は、上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)の形成に用いられる化合物を適用でき、好ましい化合物も同様である。
(3)芳香族ビニル化合物のみを重合して得られた(共)重合体の1種以上。
(4)(メタ)アクリル酸エステル化合物のみを重合して得られた(共)重合体の1種以上。
(5)芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物を重合して得られた共重合体の1種以上。
(6)芳香族ビニル化合物及び(メタ)アクリル酸エステル化合物を重合して得られた共重合体の1種以上。
(7)芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物及び他の化合物を重合して得られた共重合体の1種以上。
(8)芳香族ビニル化合物と、シアン化ビニル化合物を除く他の化合物とを重合して得られた共重合体の1種以上。
これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
従って、上記(共)重合体(A2)の具体例としては、アクリロニトリル・スチレン共重合体、アクリロニトリル・α−メチルスチレン共重合体、アクリロニトリル・スチレン・メタクリル酸メチル共重合体、スチレン・メタクリル酸メチル共重合体、アクリロニトリル・スチレン・N−フェニルマレイミド共重合体等が挙げられる。
次に、上記のゴム強化ビニル系樹脂(A1)及び(共)重合体(A2)の製造方法について説明する。
上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)は、ゴム質重合体(a)の存在下に、ビニル系単量体(b)を、好ましくは乳化重合、溶液重合、塊状重合することにより、製造することができる。
尚、ゴム強化ビニル系樹脂(A1)の製造の際には、ゴム質重合体(a)及びビニル系単量体(b)は、反応系において、ゴム質重合体(a)全量の存在下に、ビニル系単量体(b)を一括添加してもよいし、分割又は連続添加してもよい。また、これらを組み合わせた方法でもよい。更に、ゴム質重合体(a)の全量又は一部を、重合途中で添加して重合してもよい。
ゴム強化ビニル系樹脂(A1)を100質量部製造する場合、ゴム質重合体(a)の使用量は、好ましくは5〜80質量部、より好ましくは10〜70質量部、更に好ましくは15〜60質量部である。
乳化重合によりゴム強化ビニル系樹脂(A1)を製造する場合には、重合開始剤、連鎖移動剤(分子量調節剤)、乳化剤、水等が用いられる。
上記重合開始剤としては、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物と、含糖ピロリン酸処方、スルホキシレート処方等の還元剤とを組み合わせたレドックス系開始剤;過硫酸カリウム等の過硫酸塩;ベンゾイルパーオキサイド(BPO)、ラウロイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシラウレイト、tert−ブチルパーオキシモノカーボネート等の過酸化物等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。更に、上記重合開始剤は、反応系に一括して又は連続的に添加することができる。また、上記重合開始剤の使用量は、上記ビニル系単量体(b)全量に対し、通常、0.1〜1.5質量%である。
上記連鎖移動剤としては、オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン、n−ヘキシルメルカプタン、n−ヘキサデシルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、tert−テトラデシルメルカプタン等のメルカプタン類、ターピノーレン、α−メチルスチレンのダイマー等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。上記連鎖移動剤の使用量は、上記ビニル系単量体(b)全量に対して、通常、0.05〜2.0質量%である。
乳化重合の場合に使用する乳化剤としては、高級アルコールの硫酸エステル、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム等の脂肪族スルホン酸塩、高級脂肪族カルボン酸塩、リン酸系等のアニオン性界面活性剤;ポリエチレングリコールのアルキルエステル型、アルキルエーテル型等のノニオン系界面活性剤等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。上記乳化剤の使用量は、上記ビニル系単量体(b)全量に対して、通常、0.3〜5.0質量%である。
乳化重合により得られたラテックスは、通常、凝固剤により凝固させ、重合体成分を粉末状とし、その後、これを水洗、乾燥することによって精製される。この凝固剤としては、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、塩化ナトリウム等の無機塩;硫酸、塩酸等の無機酸;酢酸、乳酸等の有機酸等が用いられる。
尚、複数のゴム強化ビニル系樹脂(A1)を併用する場合には、単離した後、混合してもよいが、他の方法として、各樹脂を各々含むラテックスを製造してから混合し、その後、凝固する等により、混合されたゴム強化ビニル系樹脂(A1)とすることができる。
溶液重合及び塊状重合によるゴム強化ビニル系樹脂(A1)の製造方法は、公知の方法を適用することができる。溶液重合及び塊状重合によりゴム強化ビニル系樹脂(A1)を製造する場合には、どの方法により得られたゴム質重合体(a)を用いてもよい。即ち、乳化重合により得られたラテックス(ゴム質重合体(a)の粒子を含む)をそのまま用いてよいし、その媒体を除去してなるゴム質重合体(a)を用いてもよい。また、溶液重合により得られたゴム質重合体(a)をそのまま用いてよいし、その再乳化液を用いてもよい。
上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)のグラフト率は、好ましくは10〜200質量%、より好ましくは15〜150質量%、更に好ましくは20〜150質量%である。上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)のグラフト率が10質量%未満では、本発明の組成物及びそれを含む成形品の表面外観性及び耐衝撃性が低下することがある。また、200%を超えると、成形加工性が劣る。
ここで、グラフト率とは、上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)1グラム中のゴム成分をxグラム、上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)1グラムをアセトン(但し、ゴム質重合体(a)がアクリル系ゴムである場合には、アセトニトリルを使用。)に溶解させた際の不溶分をyグラムとしたときに、次式により求められる値である。
グラフト率(質量%)={(y−x)/x}×100
また、上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)のアセトン(但し、ゴム質重合体(a)がアクリル系ゴムである場合には、アセトニトリルを使用。)による可溶成分の極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃で測定)は、好ましくは0.1〜1.0dl/g、より好ましくは0.2〜0.9dl/g、更に好ましくは0.3〜0.8dl/gである。この範囲とすることにより、本発明の組成物の成形加工性に優れ、本発明の組成物及びそれを含む成形品の耐衝撃性にも優れる。
尚、上記グラフト率及び極限粘度[η]は、上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)を製造するときの、重合開始剤、連鎖移動剤、乳化剤、溶剤等の種類や量、更には重合時間、重合温度等を変えることにより、容易に制御することができる。
上記(共)重合体(A2)は、上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)の製造に適用される重合開始剤等を用いて、単量体成分を、溶液重合、塊状重合、乳化重合、懸濁重合等で重合することにより、あるいは、重合開始剤を用いない熱重合により、製造することができる。また、これらの重合方法を組み合わせてもよい。
上記(共)重合体(A2)の極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃で測定)は、好ましくは0.1〜1.0dl/g、より好ましくは0.15〜0.8dl/gである。極限粘度[η]が上記範囲内であると、成形加工性及び耐衝撃性の物性バランスに優れる。尚、この(共)重合体(A2)の極限粘度[η]は、上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)の場合と同様、製造条件を調整することにより制御することができる。
上記ゴム強化樹脂のアセトン(但し、ゴム質重合体(a)がアクリル系ゴムである場合には、アセトニトリルを使用。)による可溶成分の極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃で測定)は、好ましくは0.2〜0.9dl/g、より好ましくは0.2〜0.8dl/gである。極限粘度[η]が上記範囲内であると、成形加工性と耐衝撃性との物性バランスに優れる。
ここで、上記ゴム強化樹脂が、ゴム強化ビニル系樹脂(A1)である場合、及び、ゴム強化ビニル系樹脂(A1)と、ビニル系単量体の重合によって得られた(共)重合体(A2)とよりなる混合物である場合のいずれにおいても、本発明の組成物中のゴム質重合体(a)の含有量は、好ましくは5〜35質量%、より好ましくは6〜35質量%、更に好ましくは6〜34質量%である。上記ゴム質重合体(a)の含有量が少なすぎると、本発明の組成物及びそれを含む成形品の耐衝撃性が劣る傾向にあり、多すぎると、成形加工性、成形品の表面外観性、剛性、耐熱性等が劣る傾向にある。
2−1−2.オレフィン系樹脂
このオレフィン系樹脂は、炭素数が2以上のα−オレフィンからなる単量体単位を含む重合体であれば、特に限定されない。好ましいオレフィン系樹脂は、炭素数2〜10のα−オレフィンからなる単量体単位を含む重合体である。従って、炭素数2〜10のα−オレフィンからなる単量体単位の1種以上を主として含む(共)重合体;炭素数2〜10のα−オレフィンからなる単量体単位の1種以上と、このα−オレフィンと共重合可能な化合物からなる単量体単位の1種以上とを主として含む共重合体等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記α−オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、3−メチルブテン−1、4−メチルペンテン−1、3−メチルヘキセン−1等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらのうち、エチレン、プロピレン、ブテン−1、3−メチルブテン−1及び4−メチルペンテン−1が好ましい。
また、上記オレフィン系樹脂を構成する他の単量体単位の形成に用いられる化合物としては、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、1,9−デカジエン等の非共役ジエンが挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記オレフィン系樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体、ポリブテン−1、エチレン・ブテン−1共重合体等が挙げられる。これらのうち、ポリエチレン、ポリプロピレン、プロピレン・エチレン共重合体が好ましく、プロピレン単位を全単量体単位に対して、50質量%以上含む重合体、即ち、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体がより好ましい。尚、上記エチレン・プロピレン共重合体としては、ランダム共重合体、ブロック共重合体等があるが、ランダム共重合体が特に好ましい。
上記オレフィン系樹脂は、結晶性であってよいし、非晶性であってもよい。好ましくは、室温下、X線回折により、20%以上の結晶化度を有するものである。
上記オレフィン系樹脂の融点(JIS K7121に準拠)は、好ましくは40℃以上である。
また、上記オレフィン系樹脂の分子量は特に限定されないが、成形性の観点から、メルトフローレート(JIS K7210に準拠。以下、「MFR」ともいう。)は、好ましくは0.01〜500g/10分、より好ましくは0.05〜100g/10分であり、各値に相当する分子量を有するものが好ましい。
上記オレフィン系樹脂としては、アイオノマー、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体、環状オレフィン共重合体、塩素化ポリエチレン等を用いることもできる。
2−1−3.ポリエステル系樹脂
このポリエステル系樹脂は、分子の主鎖中にエステル結合を有する樹脂であれば、特に限定されず、飽和ポリエステル樹脂であってよいし、不飽和ポリエステル樹脂であってもよい。これらのうち、飽和ポリエステル樹脂が好ましい。また、単独重合ポリエステルであってよいし、共重合ポリエステルであってもよい。更に、結晶性樹脂であってよいし、非晶性樹脂であってもよい。
上記ポリエステル系樹脂は、例えば、ジカルボン酸成分とジヒドロキシ成分との重縮合、オキシカルボン酸成分又はラクトン成分の重縮合等により得られたものを用いることができる。
上記ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸(2,6−ナフタレンジカルボン酸等)、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルメタンジカルボン酸、ジフェニルエタンジカルボン酸、ジフェニルケトンジカルボン酸等の炭素数8〜16程度の芳香族ジカルボン酸又はその誘導体等、シクロヘキサンジカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ハイミック酸等の炭素数8〜12程度の脂環式ジカルボン酸又はその誘導体等、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、ヘキサデカンジカルボン酸、ダイマー酸等の炭素数2〜40程度の脂肪族ジカルボン酸又はその誘導体等が挙げられる。
尚、上記誘導体には、エステル形成可能な誘導体、例えば、ジメチルエステル等の低級アルキルエステル、酸無水物、酸クロライド等の酸ハライド等が含まれる。
これらジカルボン酸成分は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、上記ジヒドロキシ成分としては、エチレングリコール、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、デカンジオール等の直鎖状又は分岐鎖状の炭素数2〜12程度のアルキレンジオール等の脂肪族アルキレンジオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールA等の脂環族ジオール、ハイドロキノン、レゾルシン、ジヒドロキシフェニル、ナフタレンジオール、ジヒドロキシジフェニルエーテル、ビスフェノールA、ビスフェノールAに対してエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドが付加した付加体(ジエトキシ化ビスフェノールA等)等の芳香族ジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリオキシエチレングリコール、ジテトラメチレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等のポリオキシアルキレングリコール等が挙げられる。
尚、上記ジヒドロキシ成分は、例えば、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン等の置換体であってもよい。
これらジヒドロキシ成分は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記オキシカルボン酸成分としては、オキシ安息香酸、オキシナフトエ酸、ジフェニレンオキシカルボン酸等のオキシカルボン酸及びその誘導体等が挙げられる。
これらオキシカルボン酸成分は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記ラクトン成分としては、プロピオラクトン、ブチロラクトン、バレロラクトン、ε−カプロラクトン等が挙げられる。
これらラクトン酸成分は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、上記ポリエステル系樹脂が共重合ポリエステルである場合、その形成に用いられる共重合可能な単量体としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール等の直鎖状アルキレングリコール等のアルキレングリコール、ジエチレングリコール等のポリ(オキシ−アルキレン)単位を含み、繰り返し数が2〜4程度のオキシアルキレン単位を有するポリオキシアルキレングリコール、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸等の非対称構造の芳香族ジカルボン酸等が挙げられる。
更に、上記化合物以外に、必要に応じて、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸等の多価カルボン酸、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコール等の多官能性単量体を併用してもよい。
上記ポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレンテレフタレート(PPT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリヘキサメチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサン−1,4−ジメチルテレフタレート、ポリネオペンチルテレフタレート等のポリアルキレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリヘキサメチレンナフタレート等のポリアルキレンナフタレート等の単独重合ポリエステル、アルキレンテレフタレート単位及び/又はアルキレンナフタレート単位を主として含有する共重合ポリエステル、液晶ポリエステル等が挙げられる。これらのうち、ポリブチレンテレフタレートが好ましい。また、これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
2−1−4.ポリカーボネート樹脂
このポリカーボネート樹脂は、主鎖にカーボネート結合を有するものであれば、特に限定されず、芳香族ポリカーボネートでよいし、脂肪族ポリカーボネートでもよい。また、これらを組み合わせて用いてもよい。本発明においては、耐衝撃性、耐熱性等の観点から、芳香族ポリカーボネートが好ましい。尚、このポリカーボネート樹脂は、末端が、R−CO−基、R’−O−CO−基(R及びR’は、いずれも有機基を示す。)に変性されたものであってもよい。このポリカーボネート樹脂は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記芳香族ポリカーボネートとしては、芳香族ジヒドロキシ化合物及び炭酸ジエステルを溶融によりエステル交換(エステル交換反応)して得られたもの、ホスゲンを用いた界面重縮合法により得られたもの、ピリジンとホスゲンとの反応生成物を用いたピリジン法により得られたもの等を用いることができる。
芳香族ジヒドロキシ化合物としては、分子内にヒドロキシル基を2つ有する化合物であればよく、ヒドロキノン、レゾルシノール等のジヒドロキシベンゼン、4,4’−ビフェノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、「ビスフェノールA」という。)、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3、5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)−4−イソプロピルシクロヘキサン、1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、9,9−ビス(p−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(p−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、ビス(p−ヒドロキシフェニル)オキシド、ビス(p−ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)エステル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(p−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)スルフィド、ビス(p−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)スルホキシド等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記芳香族ジヒドロキシ化合物のうち、2つのベンゼン環の間に炭化水素基を有する化合物が好ましい。尚、この化合物において、炭化水素基は、ハロゲン置換された炭化水素基であってもよい。また、ベンゼン環は、そのベンゼン環に含まれる水素原子がハロゲン原子に置換されたものであってもよい。従って、上記化合物としては、ビスフェノールA、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3、5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)ブタン等が挙げられる。これらのうち、特に、ビスフェノールAが好ましい。
芳香族ポリカーボネートをエステル交換反応により得るために用いる炭酸ジエステルとしては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−tert−ブチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は、溶媒として塩化メチレンを用い、温度20℃で測定された溶液粘度より換算した場合、好ましくは12,000〜40,000、より好ましくは14,000〜30,000、特に好ましくは16,000〜26,000である。この粘度平均分子量が高すぎると、流動性が十分でなく、成形加工性が低下する場合がある。一方、低すぎると、耐衝撃性、靭性及び耐薬品性が十分でない場合がある。
上記ポリカーボネート樹脂は、全体としての粘度平均分子量が上記範囲に入るものであれば、異なる粘度平均分子量を有するポリカーボネート樹脂の2種以上を混合して用いてもよい。
上記ポリカーボネート樹脂は、上述のように、ポリエステル系樹脂と、あるいは、ゴム強化樹脂及びポリエステル系樹脂と組み合わせて、アロイとして用いることもできる。
2−1−5.ポリアミド系樹脂
このポリアミド系樹脂は、主鎖に酸アミド結合(−CO−NH−)を有する樹脂であれば、特に限定されない。上記ポリアミド系樹脂は、通常、環構造のラクタム又はアミノ酸の重合、あるいは、ジカルボン酸及びジアミンの縮重合により製造される。従って、このポリアミド系樹脂としては、ホモポリアミド、コポリアミド等を用いることができる。単独で重合可能な単量体としては、ε−カプロラクタム、アミノカプロン酸、エナントラクタム、7−アミノヘプタン酸、11−アミノウンデカン酸、9−アミノノナン酸、ピペリドン等が挙げられる。
また、ジカルボン酸及びジアミンを縮重合させる場合のジカルボン酸としては、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、グルタル酸、テレフタル酸、2−メチルテレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等が挙げられる。ジアミンとしては、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、パラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン等が挙げられる。
上記ポリアミド系樹脂としては、ナイロン4、6、7、8、11、12、6.6、6.9、6.10、6.11、6.12、6T、6/6.6、6/12、6/6T、6T/6I等が挙げられる。
尚、ポリアミド系樹脂の末端は、カルボン酸、アミン等で封止されていてもよい。カルボン酸としては、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸等の脂肪族モノカルボン酸が挙げられる。また、アミンとしては、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ラウリルアミン、ミリスチルアミン、パルミチルアミン、ステアリルアミン、ベヘニルアミン等の脂肪族第1級アミン等が挙げられる。
上記ポリアミド系樹脂は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
2−2.硬化性樹脂
この硬化性樹脂としては、それ自身で、又は、硬化剤等により硬化樹脂を生成する重合体を含むものであれば、特に限定されず、アクリル系樹脂、エポキシ樹脂、フェノール系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、アルキド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン系樹脂、尿素樹脂、シリコーン樹脂、ポリサルファイド樹脂、ポリイミド樹脂、ビスマレイミド・トリアジン樹脂、フラン樹脂、キシレン樹脂、グアナミン樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
2−3.添加剤
本発明の組成物は、目的、用途等に応じて、添加剤を含有したものとすることができる。この添加剤としては、充填剤、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線防止剤、難燃剤、老化防止剤、可塑剤、抗菌剤、着色剤等が挙げられる。
尚、上記樹脂が、硬化性樹脂である場合には、硬化性樹脂組成物が、更に、重合性単量体、重合開始剤、硬化剤、硬化促進剤、増感剤、カップリング剤、有機溶剤等を含むものであってもよい。
上記充填剤としては、重質炭酸カルシウム、軽微性炭酸カルシウム、極微細活性化炭酸カルシウム、特殊炭酸カルシウム、塩基性炭酸マグネシウム、カオリンクレー、焼成クレー、パイロフィライトクレー、シラン処理クレー、合成ケイ酸カルシウム、合成ケイ酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、カオリン、セリサイト、タルク、微粉タルク、ウォラスナイト、ゼオライト、ゾノトライト、アスベスト、PMF(Processed Mineral Fiber)、胡粉、セピオライト、チタン酸カリウム、エレスタダイト、石膏繊維、ガラスバルン、シリカバルン、ハイドロタルサイト、フライアシュバルン、シラスバルン、カーボン系バルン、硫酸バリウム、硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、二硫化モリブデン等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記充填剤の含有量は、上記樹脂100質量部に対して、通常、5〜50質量部である。
上記熱安定剤としては、ホスファイト類、ヒンダードフェノール類、チオエーテル類等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記熱安定剤の含有量は、上記樹脂100質量部に対して、通常、0.1〜5.0質量部である。
上記酸化防止剤としては、ヒンダードアミン類、ハイドロキノン類、ヒンダードフェノール類、硫黄含有化合物等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記酸化防止剤の含有量は、上記樹脂100質量部に対して、通常、0.1〜5.0質量部である。
上記紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン類、ベンゾトリアゾール類、サリチル酸エステル類、金属錯塩類等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記紫外線吸収剤の含有量は、上記樹脂100質量部に対して、通常、0.05〜5.0質量部である。
上記難燃剤としては、有機系難燃剤、無機系難燃剤、反応系難燃剤等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
有機系難燃剤としては、臭素化エポキシ系化合物、臭素化アルキルトリアジン化合物、臭素化ビスフェノール系エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノール系フェノキシ樹脂、臭素化ビスフェノール系ポリカーボネート樹脂、臭素化ポリスチレン樹脂、臭素化架橋ポリスチレン樹脂、臭素化ビスフェノールシアヌレート樹脂、臭素化ポリフェニレンエーテル、デカブロモジフェニルオキサイド、テトラブロモビスフェノールA及びそのオリゴマー等のハロゲン系難燃剤;トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリプロピルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリペンチルホスフェート、トリヘキシルホスフェート、トリシクロヘキシルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、ジクレジルフェニルホスフェート、ジメチルエチルホスフェート、メチルジブチルホスフェート、エチルジプロピルホスフェート、ヒドロキシフェニルジフェニルホスフェート等のリン酸エステルやこれらを各種置換基で変性した化合物、各種の縮合型のリン酸エステル化合物、リン元素及び窒素元素を含むホスファゼン誘導体等のリン系難燃剤;ポリテトラフルオロエチレン等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
無機系難燃剤としては、水酸化アルミニウム、酸化アンチモン、水酸化マグネシウム、ホウ酸亜鉛、ジルコニウム系、モリブデン系、スズ酸亜鉛、グアニジン塩、シリコーン系、ホスファゼン系化合物等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
反応系難燃剤としては、テトラブロモビスフェノールA、ジブロモフェノールグリシジルエーテル、臭素化芳香族トリアジン、トリブロモフェノール、テトラブロモフタレート、テトラクロロ無水フタル酸、ジブロモネオペンチルグリコール、ポリ(ペンタブロモベンジルポリアクリレート)、クロレンド酸(ヘット酸)、無水クロレンド酸(無水ヘット酸)、臭素化フェノールグリシジルエーテル、ジブロモクレジルグリシジルエーテル等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記難燃剤の含有量は、上記樹脂100質量部に対して、通常、3〜40質量部である。
尚、本発明の組成物に難燃剤を含有させる場合には、難燃助剤を用いることが好ましい。この難燃助剤としては、三酸化二アンチモン、四酸化二アンチモン、五酸化二アンチモン、アンチモン酸ナトリウム、酒石酸アンチモン等のアンチモン化合物や、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、水和アルミナ、酸化ジルコニウム、ポリリン酸アンモニウム、酸化スズ、酸化鉄等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記老化防止剤としては、例えば、ナフチルアミン系化合物、ジフェニルアミン系化合物、p−フェニレンジアミン系化合物、キノリン系化合物、ヒドロキノン誘導体系化合物、モノフェノール系化合物、ビスフェノール系化合物、トリスフェノール系化合物、ポリフェノール系化合物、チオビスフェノール系化合物、ヒンダードフェノール系化合物、亜リン酸エステル系化合物、イミダゾール系化合物、ジチオカルバミン酸ニッケル塩系化合物、リン酸系化合物等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記老化防止剤の含有量は、上記樹脂100質量部に対して、通常、0.1〜5.0質量部である。
上記可塑剤としては、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジイソブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ブチルオクチルフタレート、ジ−(2−エチルヘキシル)フタレート、ジイソオクチルフタレート、ジイソデシルフタレート等のフタル酸エステル類;ジメチルアジペート、ジイソブチルアジペート、ジ−(2−エチルヘキシル)アジペート、ジイソオクチルアジペート、ジイソデシルアジペート、オクチルデシルアジペート、ジ−(2−エチルヘキシル)アゼレート、ジイソオクチルアゼレート、ジイソブチルアゼレート、ジブチルセバケート、ジ−(2−エチルヘキシル)セバケート、ジイソオクチルセバケート等の脂肪酸エステル類;トリメリット酸イソデシルエステル、トリメリット酸オクチルエステル、トリメリット酸n−オクチルエステル、トリメリット酸系イソノニルエステル等のトリメリット酸エステル類;ジ−(2−エチルヘキシル)フマレート、ジエチレングリコールモノオレート、グリセリルモノリシノレート、トリラウリルホスフェート、トリステアリルホスフェート、トリ−(2−エチルヘキシル)ホスフェート、エポキシ化大豆油、ポリエーテルエステル等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記可塑剤の含有量は、上記樹脂100質量部に対して、通常、0.5〜10質量部である。
上記抗菌剤としては、銀系ゼオライト、銀−亜鉛系ゼオライト等のゼオライト系抗菌剤、錯体化銀−シリカゲル等のシリカゲル系抗菌剤、ガラス系抗菌剤、リン酸カルシウム系抗菌剤、リン酸ジルコニウム系抗菌剤、銀−ケイ酸アルミン酸マグネシウム等のケイ酸塩系抗菌剤、酸化チタン系抗菌剤、セラミック系抗菌剤、ウィスカー系抗菌剤等の無機系抗菌剤;ホルムアルデヒド放出剤、ハロゲン化芳香族化合物、ロードプロパルギル誘導体、チオシアナト化合物、イソチアゾリノン誘導体、トリハロメチルチオ化合物、第四アンモニウム塩、ビグアニド化合物、アルデヒド類、フェノール類、ピリジンオキシド、カルバニリド、ジフェニルエーテル、カルボン酸、有機金属化合物等の有機系抗菌剤;無機・有機ハイブリッド抗菌剤;天然抗菌剤等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記抗菌剤の含有量は、上記樹脂100質量部に対して、通常、0.05〜5.0質量部である。
上記着色剤としては、例えば、上記本発明の黒色系複合粉体の形成に用いられる着色剤〔D〕を用いることができる。
上記着色剤の含有量は、上記樹脂100質量部に対して、通常、0.1〜10質量部である。
2−4.組成物の形態
本発明の組成物が、熱可塑性樹脂組成物である場合、原料成分を、押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール、フィーダールーダー等に供給し、混練することにより製造することができる。原料成分の供給方法は特に限定されず、各々の成分を一括配合して混練してもよく、多段、分割配合して混練してもよい。尚、混練温度は、熱可塑性樹脂の種類により選択されるが、例えば、熱可塑性樹脂が、ゴム強化樹脂である場合、混練温度は、通常、200〜280℃、好ましくは210〜270℃である。
本発明の組成物が、硬化性樹脂組成物である場合、一液型組成物であってよいし、二液型組成物であってもよい。
尚、硬化性樹脂組成物は、通常、原料成分を、チェンジ缶式ミキサー、プラネタリーミキサー、ディスパー、ヘンシェルミキサー、ニーダー、インクロール、押出機、3本ロールミル、サンドミル等の攪拌装置を用いて混合し、均一に分散させることにより調製される。このとき、撹拌条件等によっては、摩擦熱により、例えば、重合開始剤が活性化される等の不具合を生じることがあるため、40℃以下等低い温度に保つべく冷却しながら混合することが好ましい。
3.石目調成形品
本発明の石目調成形品は、上記本発明の組成物を成形してなることを特徴とする。上記本発明の組成物が、熱可塑性樹脂組成物である場合には、射出成形、シート押出成形、異形押出成形、真空成形、カレンダー成形、Tダイ成形、インフレーション成形、発泡成形等の公知の成形法により、目的、用途に応じた形状を有する成形品とすることができる。即ち、本発明の成形品は、上記本発明の組成物(熱可塑性樹脂組成物)を含む。
また、上記本発明の組成物が、硬化性樹脂組成物である場合には、例えば、金型に注入し、必要に応じて、静置、加熱、光照射又は電子線照射することにより、目的、用途に応じた形状を有する成形品とすることができる。
本発明の石目調成形品は、フィルム、シート、筒状物等の薄肉体、薄肉体より厚みのある肉厚成形体、後述する他の成形品である。石目調成形品の好ましい成形材料は、上記本発明の黒色系複合粉体を含有する熱可塑性樹脂組成物である。また、石目調成形品が薄肉体である場合、この薄肉体を最終製品としてよいし、薄肉体と他の部材とからなる積層体等を最終製品としてもよい。
上記薄肉体の厚さは、通常、0.05〜5mmである。また、上記薄肉体は、その厚さに関係なく、更に、不定形状の、例えば、角部を有する物体に巻き付けたときの折り曲げ部周辺における、石目調模様も鮮明となる。
上記薄肉体、肉厚成形体等の石目調成形品に、印刷適性;粘着剤又は接着剤との密着性あるいは粘着性;プライマー層等を配設する場合に、この層等との接着性等を向上させるために、この薄肉体の表面には、必要に応じて、コロナ放電処理、火炎処理、酸化処理、プラズマ処理、UV処理、イオンボンバード処理、電子線処理、溶剤処理、アンカーコート処理等の処理がなされていてもよい。
また、上記薄肉体、肉厚成形体等の石目調成形品に、意匠性を付与するために、必要に応じて、グラビア法、フレキソグラフ法、シルクスクリーン法等による印刷を行い、印刷体等として使用することができる。
本発明の石目調成形品は、化粧材用の被覆材;壁、床、階段、パネル等に用いられる部材(平板、曲板等);化粧材;家電製品等のハウジング;容器;テーブル、椅子、デッキ、雨どい、覆い(エアーコンディショナーのダクトカバー等)、雑貨、浴室カウンター、樹脂サッシ、複合サッシ、カーポート等に好適である。
上記用途においては、本発明の石目調成形品として、積層体等の複合体を用いる場合、他の部材を構成する材料としては、重合体(樹脂、ゴム等)、木材、金属、合金、無機化合物等が挙げられる。
また、上記用途において、特に、屋外で用いられ且つ人体に触れる成形品の場合には、抗菌剤を含有することにより、その効果をも併せ持つこととなり、例えば、光触媒作用を有する酸化チタン系材料を含有することにより、防汚性、親水性等を付与することもできる。
4.積層品
本発明の積層品は、上記本発明の組成物を成形してなる層(以下、「X層」という。)と、他の樹脂組成物を成形してなる層(以下、「Y層」という。)とが積層されていることを特徴とする。X層及びY層の厚さは、特に限定されず、シート、フィルム等の薄肉体、肉厚成形体が挙げられる。X層は、好ましくは薄肉体である。X層及びY層の厚さは、同一であってよいし、部分的又は全体的に異なってもよい。従って、本発明の積層品も、全体として均一の厚さであってよいし、部分的に異なる厚さであってもよい。
本発明の積層品の層構成は、特に限定されず、X層及びY層がともに少なくとも1層から構成される。好ましい層構成は、外面がX層/内面がY層、外面がY層/内面がX層、外面がX層/中間がY層/内面がX層であり、特に好ましい層構成は、外面がX層/内面がY層である。
上記外面がX層/内面がY層の積層品の有用性について、下記に示す。
塩化ビニル系樹脂は、安価であり、そして、成形加工性に優れることから、広く使用されている。石目調等の黒色系顔料含有組成物で成形された成形品を屋外で使用すると、太陽光吸収蓄熱で製品の温度が上昇し、その結果、耐熱性の低い塩化ビニル系樹脂等の製品は、変形し使用できない。しかし、上記外面がX層/内面がY層の積層品において、Y層を形成する他の樹脂組成物が耐熱性の低い塩化ビニル系樹脂等であっても、X層が低蓄熱性であることから、Y層の温度上昇が抑制され、使用に耐える。従って、Y層を形成する他の樹脂組成物として、熱変形温度(ASTM D648,18.5kg/cm)が85℃以下、好ましくは80℃以下、より好ましくは75℃以下の熱可塑性樹脂又は熱可塑性樹脂組成物を使用することにより、優れた効果を発揮する。
上記Y層を形成する他の樹脂組成物としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等の塩化ビニル系樹脂;ポリカーボネート樹脂;ABS樹脂、AES樹脂、ASA樹脂、HIPS樹脂等のゴム強化樹脂;ポリスチレン、ポリスルホン等の熱可塑性樹脂又はこれらを含む熱可塑性組成物が挙げられる。尚、上記Y層は着色されていてもよい。尚、この場合のX層及びY層の好ましい厚さは、それぞれ、0.01〜10mm、及び、0.1〜30mmである。
本発明の積層品の製造方法は、Y層を形成する他の樹脂組成物の種類により、適宜、選択される。以下に製造方法を例示するが、方法(3)が好ましい。
(1)X層用成形体と、Y層用成形体とを、接着剤を用いて接着積層する方法
(2)X層用成形体と、Y層用成形体とを、常温又は加熱下で圧着する方法
(3)上記本発明の組成物と、他の樹脂組成物とを共押出する方法
5.塗料
本発明の塗料(以下、「本発明の塗料組成物」という。)は、上記本発明の黒色系複合粉体を含有することを特徴とする。本発明の塗料組成物は、低蓄熱性の黒色系塗料として極めて有用である。
本発明の塗料組成物は、水分散系塗料、非水分散系塗料及び粉体塗料のいずれでもよいが、水分散系塗料組成物であることが好ましい。
本発明の塗料組成物が、水分散系塗料組成物である場合、通常、黒色系複合粉体と、被膜形成用ポリマーと、分散媒とを含有する。
上記被膜形成用ポリマーとしては、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、カゼイン、スチレンマレイン酸共重合体のアルカリ塩等の水溶性樹脂;アクリル系重合体、ポリエステル、スチレン・ブタジエン系共重合体、ポリウレタン樹脂、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体等の水分散性樹脂等を用いることができる。
上記分散媒としては、水単独であってよいし、水と、水溶性有機溶剤との混合物であってもよい。後者の場合、水溶性有機溶剤の含有割合は、水100質量部に対して、通常、1〜50質量部である。
尚、上記水溶性有機溶剤としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール等の1価アルコール;エチレングリコール、プロピレングリコール等の2価アルコール;グリセリン等の3価アルコール;ブチルセロソルブ等の多価アルコールのアルキルエーテル等が挙げられる。これらは、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の塗料組成物において、上記黒色系複合粉体の含有量は、上記被膜形成用ポリマー及び上記黒色系複合粉体の合計100質量部に対して、通常、0.1〜70質量部であり、好ましくは、0.5〜50質量部である。
尚、本発明の塗料組成物において、上記黒色系複合粉体は、着色剤として作用するが、他の顔料、染料等からなる他の着色剤を更に配合してもよく、その場合、他の着色剤の含有量は、上記黒色系複合粉体100質量部に対して、通常、1〜50質量部である。
本発明の塗料組成物は、目的、用途等に応じて、各種添加剤を含有したものとすることができる。添加剤としては、分散剤、消泡剤、可塑剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、レベリング剤、湿潤剤、増粘剤、pH調整剤、防腐剤、防錆剤、帯電防止剤、抗菌剤、成膜助剤等が挙げられる。
本発明の塗料組成物は、黒色系複合粉体を含有することから、通常、塗膜は、黒色系の色を呈する。本発明の塗料組成物は、最表面が黒色系の色である塗膜を形成するために用いてよいし、黒色系の色を呈した下塗り層を形成するために用いてもよい。
本発明の塗料組成物を用いた塗工方法は、特に限定されないが、従来、公知の塗工方法である、スプレーコーティング、ブレードコーティング、エアナイフコーティング、バーコーティング、ロッドブレードコーティング、カーテンコーティング、スロットダイコーティング等が挙げられる。
尚、被塗装物としては、一般の建造物のほか、各種部材等が挙げられる。
以下に、実施例を挙げ、本発明を更に詳細に説明するが、本発明の主旨を超えない限り、本発明はかかる実施例に限定されるものではない、尚、下記において、部及び%は、特に断らない限り、質量基準である。
1.評価項目及びその測定方法
1−1.蓄熱温度(赤外線照射前後の温度変化ΔT又はΔT
温度25±2℃及び湿度50±5%RHに調節された室に、5部の下記の黒色系無機顔料粉体〔B〕と、100部のABS樹脂(商品名「テクノABS 110」、テクノポリマー社製)とよりなる樹脂組成物を用いて得られた、長さ80mm、幅55mm及び厚さ2.5mmの板状成形品(P)、並びに、下記の実施例あるいは比較例により製造された複合粉体又は混合粉体と、各樹脂成分とよりなる樹脂組成物を用いて得られた、長さ80mm、幅55mm及び厚さ2.5mmの板状成形品(Q)、を5時間静置した。その後、上記板状成形品(P)及び(Q)の表面に、それぞれ、赤外線(ランプ出力100W、ランプと各成形品との距離200mm)を60分間照射して、照射後の表面温度を、表面温度計を用いて測定し、赤外線照射前後の温度変化(上昇温度)ΔT及びΔT求めた。
1−2.雲母粉の厚さ
電子顕微鏡により、100個の粒子を観察し、平均値を求めた。
1−3.複合粉体の平均粒径(mm)
日機装社製マイクロトラック粒度分布計(レーザー回折法)により測定した。
1−4.成形外観性
上記1−1にて得られた板状成形品(Q)の表面を目視観察した。判定基準は、以下の通りである。
○;石目調模様が鮮明である。
×;石目調模様が不鮮明である。
1−5.耐熱変形性
後述(実施例2−1等)の積層板(長さ80mm、幅55mm及び厚さ2.6mm)の石目調模様を有する面に、赤外線(ランプ出力100W、ランプと各成形品との距離200mm)を60分間照射して、積層板の変形の程度を目視観察した。判定基準は、以下の通りである。尚、この積層板の下層(厚さ2.3mm)を構成する塩化ビニル樹脂組成物のみに対し、同条件で赤外線を照射した場合、変形が全くないことを確認した。
○;変形が全くなかった。
×;実用で問題となる変形が見られた。
2.黒色系複合粉体、樹脂組成物等の原料成分
2−1.雲母粉〔A〕
(1)A1;平均粒径0.1mm及び厚さ10μmの雲母
(2)A2;平均粒径0.3mm及び厚さ30μmの雲母
(3)A3;平均粒径1mm及び厚さ100μmの雲母
(4)A4;平均粒径5mm及び厚さ500μmの雲母
2−2.黒色系無機顔料粉体〔B〕
(1)B1;商品名「フェローカラー42−703A」、日本フェロー社製、Fe及びCrの複合酸化物(化学組成は、Cr;88〜91%、Fe;7〜10%であり、色は黒色である。ΔTは、50℃であり、平均粒径は、1〜5μmである。)
(2)B2;商品名「フェローカラー42−350A」、日本フェロー社製、Fe及びMnの複合酸化物(色は黒色である。ΔTは、46℃であり、平均粒径は、1〜5μmである。)
(3)B3;商品名「フェローカラー42−303B」、日本フェロー社製、Cu、Cr及びMnの複合酸化物(色は黒色である。ΔTは、47℃であり、平均粒径は、1〜5μmである。)
(4)B4;商品名「AE801ブラック」、川村化学社製、Ni、Co、Fe及びCrの複合酸化物(Ni/Co=50/50であり、色は黒色である。ΔTは、50℃であり、平均粒径は、1〜5μmである。)
(5)B5;商品名「AG235ブラック」、川村化学社製、Ni、Co、Fe及びCrの複合酸化物(Ni/Co=70/30であり、色は黒色である。ΔTは、50℃であり、平均粒径は、1〜5μmである。)
2−3.着色剤
(1)酸化チタン
商品名「CR−60−2」、石原産業社製(ΔTは、40℃である。)
(2)カーボンブラック
商品名「三菱カーボン#45」、三菱化学社製(ΔTは、85℃である。)
2−4.接着剤〔C〕
レゾールタイプの液状フェノール樹脂(商品名「PR−51708」、住友デュレス社製)を用いた。
2−5.樹脂(R1)
体積平均粒子径100nmのアクリル系ゴム(乳化重合によるアクリル酸n−ブチル99部及びメタクリル酸アリル1部の共重合体)の存在下に、スチレン及びアクリロニトリルを乳化重合して得られた共重合樹脂であって、アクリル系ゴム/スチレン/アクリロニトリル=50/37/13(%)であり、グラフト率が60%であり、アセトニトリル可溶分の極限粘度(メチルエチルケトン中、30℃)が0.46dl/gである、ゴム強化ビニル系樹脂と、スチレン/アクリロニトリル=76/24(%)であり、極限粘度(メチルエチルケトン中、30℃)が0.5dl/gである、アクリロニトリル・スチレン共重合体とを、40/60(%)で混練してなるゴム強化樹脂を用いた。
3.黒色系複合粉体の製造及び評価
実施例1−1
上記雲母粉A2と、上記黒色系無機顔料粉体B1と、上記接着剤とを、表1に示す割合でヘンシェルミキサーに投入し、ジャケット温度を50℃に調整し、1000rpmで5分間混合した。その後、この混合物を、乾燥浴槽内が窒素ガスで置換されているギヤーオーブン内に静置し、120℃で12時間加熱した。
次いで、この加熱処理物を、ヘンシェルミキサーに投入し、ジャケット温度を20℃に調整し、500rpmで2分間混合することにより、黒色系複合粉体CP1を得た。この黒色系複合粉体CP1の色は、黒色であり、平均粒径は、0.31mmであった。
実施例1−2〜1−12及び比較例1−1〜1−2
表1に示す配合処方で処理した以外は、実施例1−1と同様にして黒色系複合粉体CP2〜CP14を得た。各粉体の色及び平均粒径は表1に併記した。
比較例1−3〜1−4
表1に示す配合処方で、実施例1−1と同様の操作を行い、黒色系混合粉体CP15〜CP16を得た。
Figure 2008101142
4.樹脂組成物の製造及び評価
実施例2−1
上記樹脂R1と、上記黒色系複合粉体CP1とを、表2に示す割合で混合した後、シリンダー設定温度210℃で溶融混練し、樹脂組成物を得た。次いで、射出成形により、長さ80mm、幅55mm及び厚さ2.5mmの板状成形品を得た。この板状成形品について、ΔT(℃)及び成形外観性の評価を行った。
また、上記樹脂組成物からなるペレット、及び、下記の塩化ビニル樹脂組成物からなるペレットを、それぞれ、20mmφ押出機(シリンダー設定温度200℃)及び40mmφ押出機(シリンダー設定温度170℃)に供給して、各押出機にてスクリュー回転数及び引き取り速度を適宜、調節しながら共押出し、厚さが、それぞれ、0.3mm及び2.3mmである積層板(長さ80mm、幅55mm)を得た。この積層板について、耐熱変形性の評価を行った。
以上の結果を表2に併記した。
<塩化ビニル樹脂組成物の組成>(単位;部)
ポリ塩化ビニル(分子量1000) 100
ポリメタクリル酸メチル(分子量200万) 2
強化剤(アクリル系ゴム) 4
炭酸カルシウム 10
安定剤(Ca/Zn、ワンパック品) 4.2
実施例2−2〜実施例2−12及び比較例2−1〜2−4
表2に示す割合で、樹脂、複合粉体等を用い、実施例2−1と同様にして、板状成形品及び積層板を作製し、評価を行った。その結果を表2に示した。
Figure 2008101142
表2から明らかなように、比較例2−1及び2−2は、本発明に係る黒色系無機顔料粉体〔B〕を用いずに作製した複合粉体を含有する例であり、成形外観性は良好であったが、ΔT及び耐熱変形性に劣っていた。比較例2−3及び2−4は、本発明に係る黒色系無機顔料粉体〔B〕を含有しているが、複合粉体として含有されていないため、比較例2−3は、石目調模様が発現せず、成形外観性に劣っていた。また、比較例2−4は、石目調模様が発現せず、耐熱変形性も劣っていた。尚、比較例2−4は、カーボンブラックを含有するため、ΔTが82℃と高かった。一方、実施例2−1〜2−12は、本発明に係る黒色系無機顔料粉体〔B〕を用いて作製した複合粉体を含有する例であり、いずれも、ΔT、成形外観性及び耐熱変形性に優れていた。
5.積層品の製造及び評価
実施例3
上記実施例2−1で得られた樹脂組成物と、上記塩化ビニル樹脂組成物とを、Tダイ付き押出機に供給し、上記実施例2−1の共押出条件で共押出することにより、各層の厚さが、それぞれ、0.5mm及び1mmである2層型積層シートを製造した。
得られた2層型積層シートは、密着性に優れ、鮮明な石目調模様を確認することができた。
6.塗料組成物の製造及び評価
実施例4
重量平均粒子径が150nmであるアクリル系重合体粒子(アクリル酸n−ブチル・メタクリル酸n−ブチル共重合体)を含むエマルション30部と、上記実施例1−9で得られた複合粉体CP9を50部と、ブチルベンジルフタレート(可塑剤)0.1部と、水とを、分散用の容器に入れ、ディスパーにて5分間攪拌し、塗料組成物(固形分濃度45%)を得た。
その後、得られた塗料組成物を、ABS樹脂からなる平板上にアプリケーターを用いて塗布し(被膜厚さ30μm)、30℃で乾燥した。皮膜の外観性を目視観察したところ、鮮明な石目調模様が確認された。
本発明の黒色系複合粉体は、構造安定性に優れるため、雲母粉が広い範囲の平均粒径を有していても、得られる黒色系複合粉体の大きさについて、選択性が高い。従って、この黒色系複合粉体を含有する成形材料(樹脂組成物)、塗料等とした場合に、鮮明な石目調模様を有し、且つ、表面において蓄熱の少ない成形品(積層品)、皮膜等を得ることができる。このような成形品(積層品)としては、化粧材用のフィルム又はシート;壁、床、階段、パネル等に用いられる部材(平板、曲板等);化粧材;家電製品等のハウジング;容器;テーブル、椅子、デッキ、雨どい、覆い(エアーコンディショナーのダクトカバー等)、雑貨、浴室カウンター、樹脂サッシ、複合サッシ、カーポート等に好適である。

Claims (13)

  1. 雲母粉〔A〕と、下記条件による測定においてΔT≦73℃である黒色系無機顔料粉体〔B〕と、が接着層を介して複合化していることを特徴とする黒色系複合粉体。
    [試験条件]
    100質量部のABS樹脂(商品名「テクノABS 110」、テクノポリマー社製)と、5質量部の上記黒色系無機顔料粉体〔B〕とよりなる混合物を用いて、長さ80mm、幅55mm及び厚さ2.5mmの成形品を作製し、この成形品を、温度25±2℃及び湿度50±5%RHの環境下で状態調節した後、成形品の表面に赤外線(ランプ出力100W、ランプと成形品との距離200mm)を60分間照射し、成形品の表面温度について赤外線照射前後の温度変化(上昇温度)ΔTを求める。
  2. 上記黒色系無機顔料が、Fe、Cr、Mn、Cu、Co及びNiから選ばれる少なくとも1種の元素を含む化合物である請求項1に記載の黒色系複合粉体。
  3. 上記黒色系無機顔料が、Fe、Cr及びMnから選ばれる少なくとも2種の元素を含む酸化物である請求項2に記載の黒色系複合粉体。
  4. 上記黒色系無機顔料が、Co元素及びNi元素を含む酸化物であり、該酸化物中のCo元素及びNi元素の含有量の比Co/Niが5/95〜95/5である請求項2に記載の黒色系複合粉体。
  5. 上記黒色系無機顔料粉体〔B〕の含有割合が、上記雲母粉〔A〕100質量部に対して0.05〜20質量部である請求項1乃至4のいずれかに記載の黒色系複合粉体。
  6. 更に、着色剤〔D〕を備え、且つ、該着色剤〔D〕の含有割合が、上記黒色系無機顔料粉体〔B〕及び該着色剤〔D〕の合計を100質量%とした場合に、0.08〜30質量%である請求項1乃至5のいずれかに記載の黒色系複合粉体。
  7. 雲母粉〔A〕と、下記条件による測定においてΔT≦73℃である黒色系無機顔料粉体〔B〕と、接着剤〔C〕と、必要に応じて着色剤〔D〕とを混合する混合工程を備えることを特徴とする黒色系複合粉体の製造方法。
    [試験条件]
    100質量部のABS樹脂(商品名「テクノABS 110」、テクノポリマー社製)と、5質量部の上記黒色系無機顔料粉体〔B〕とよりなる混合物を用いて、長さ80mm、幅55mm及び厚さ2.5mmの成形品を作製し、この成形品を、温度25±2℃及び湿度50±5%RHの環境下で状態調節した後、成形品の表面に赤外線(ランプ出力100W、ランプと成形品との距離200mm)を60分間照射し、成形品の表面温度について赤外線照射前後の温度変化(上昇温度)ΔTを求める。
  8. 請求項1乃至6のいずれかに記載の黒色系複合粉体と、樹脂とを含有することを特徴とする樹脂組成物。
  9. 下記条件による測定においてΔT≦73℃である請求項8に記載の樹脂組成物。
    [試験条件]
    上記樹脂組成物を用いて、長さ80mm、幅55mm及び厚さ2.5mmの成形品を作製し、この成形品を、温度25±2℃及び湿度50±5%RHの環境下で状態調節した後、成形品の表面に赤外線(ランプ出力100W、ランプと成形品との距離200mm)を60分間照射し、成形品の表面温度について赤外線照射前後の温度変化(上昇温度)ΔTを求める。
  10. 請求項8又は9に記載の樹脂組成物を成形してなることを特徴とする石目調成形品。
  11. 上記石目調成形品がフィルム又はシートである請求項10に記載の石目調成形品。
  12. 請求項8又は9に記載の樹脂組成物を成形してなる層と、他の樹脂組成物を成形してなる層とが積層されていることを特徴とする積層品。
  13. 請求項1乃至6のいずれかに記載の黒色系複合粉体を含有することを特徴とする塗料。
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