JP2008092274A - オーディオ再生装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】右音信号Rinの特性を変更して、右スピーカ11からリスナー1の左耳に漏れ込む音の抑圧に用いる右キャンセル信号RCoutを生成し、右キャンセル信号RCoutをリスナー1の正面位置に対して右スピーカ11と非対称に配置されている右キャンセル用スピーカ12のアンプ22に出力する。また、左音信号Linの特性を変更して、左スピーカ13からリスナー1の右耳に漏れ込む音の抑圧に用いる左キャンセル信号LCoutを生成し、左キャンセル信号LCoutをリスナー1の正面位置に対して左スピーカ13と非対称に配置されている左キャンセル用スピーカ14のアンプ24に出力する。
【選択図】図1
Description
仮想音像定位技術では、ある空間の任意の位置から、同じ空間内の任意の位置にいる人間の両耳までの伝達特性を測定(あるいは、推定)しておき、その伝達特性を入力音源に畳み込むことにより、その人間の両耳に到達すると考えられる信号を生成する。
このような信号は、バイノーラル信号と呼ばれ、例えば、ヘッドホンなどの再生機器を用いて、バイノーラル信号を両耳に提示することにより、任意の位置に音源があるかのようにリスナーに錯覚させることができる。
再生機器がスピーカである場合、片方の耳に提示するバイノーラル信号を片方のスピーカでそのまま再生すると、反対側の耳にも音が到達するクロストークが発生するため、バイノーラル信号を正しく両耳に提示することができない。
バイノーラル信号を正しく両耳に提示することができない場合、想定している位置に音像が定位しなくなる問題が発生する。
図10は以下の非特許文献1に開示されているクロストークキャンセラを示す構成図である。
図10のクロストークキャンセラでは、リスナーの前方左側に配置されている左スピーカからリスナーの左耳に到達する伝達関数がHLL、左スピーカからリスナーの右耳に到達する伝達関数がHLR、リスナーの前方右側に配置されている右スピーカからリスナーの右耳に到達する伝達関数がHRR、右スピーカからリスナーの左耳に到達する伝達関数がHRLに設定されている。
ただし、クロストークキャンセル処理は、想定している再生系と実環境が完全に一致するときには良好に働くが、想定している再生系と実環境が異なる場合、例えば、リスナーの位置が想定している位置からずれている場合には、クロストークの抑圧性能が大幅に劣化する。
リスナーの位置が想定している位置からずれることは、実環境でしばしば起こることである。
ただし、この許容範囲は、リスナーの片側の耳に到達する音圧と、反対側の耳に漏れてしまうクロストークとの音圧の比が−3dB以下となる範囲としている。
この実験では、頭部の反射/回折を無視し、自由空間上で18cm離れている2点をリスナーの両耳の位置に想定している(人間の頭幅を18cmと仮定している)。
なお、この実験のように、頭部の反射/回折を無視しているモデルにおいても、実環境と傾向が似ていることが、以下の非特許文献2で示唆されている。
リスナーの頭部の中央を原点とする2次元座標を想定し、リスナーの視線方向(正面方向)をY軸(リスナーよりも前方がプラス)、左右方向をX軸(原点よりも右側がプラス)とする。
このとき、左スピーカの位置は(−100cm,173cm)であり、右スピーカの位置は(100cm,173cm)である。
また、スピーカを点音源と仮定して、500Hzの正弦波を再生することを想定している。
即ち、良好な仮想音像定位効果を得るためには、リスナーがスピーカの中央付近に頭を保持し続けることが強要され、極めて限定的で不便を伴うことになる。
また、よくある試聴環境として、複数のリスナーが横に並んで同時に試聴する環境が考えられるが、このような試聴環境では、良好なクロストークキャンセル効果が得られなくなる。
なお、以下の特許文献1には、クロストークキャンセル処理におけるリスナーの位置ずれの許容範囲であるスイー卜スポットを広げる技術が開示されているが、この技術を利用しても、僅かに15cm程度の位置ずれを許容できるに過ぎず、複数のリスナーが横に並んで同時に試聴することは極めて困難である。
図1はこの発明の実施の形態1によるオーディオ再生装置を示す構成図であり、図において、聴取者(以下、リスナーと称する)1はオーディオ再生装置により空間に生成される仮想的な音像を聴取する。
右スピーカ11はリスナー1の前方右側に配置されているメインスピーカである。
右キャンセル用スピーカ12は右スピーカ11からリスナー1の左耳に漏れ込む音を抑圧するために設けられているクロストークキャンセル専用のスピーカであり、右キャンセル用スピーカ12は右スピーカ11よりもリスナー1の近くに配置されている。また、右キャンセル用スピーカ12はリスナー1の正面位置に対して右スピーカ11と非対称に配置されている。
図1の例では、右スピーカ11と右キャンセル用スピーカ12の見開き角度が0度から20度の範囲内になるように、右スピーカ11と右キャンセル用スピーカ12が配置されている。
左キャンセル用スピーカ14は左スピーカ13からリスナー1の右耳に漏れ込む音を抑圧するために設けられているクロストークキャンセル専用のスピーカであり、左キャンセル用スピーカ14は左スピーカ13よりもリスナー1の近くに配置されている。また、左キャンセル用スピーカ14はリスナー1の正面位置に対して左スピーカ13と非対称に配置されている。
図1の例では、左スピーカ13と左キャンセル用スピーカ14の見開き角度が0度から20度の範囲内になるように、左スピーカ13と左キャンセル用スピーカ14が配置されている。
アンプ22はオーディオ再生装置から出力される右キャンセル信号RCoutにしたがって右キャンセル用スピーカ12を駆動する。
アンプ23はオーディオ再生装置から出力される左音信号Loutにしたがって左スピーカ13を駆動する。
アンプ24はオーディオ再生装置から出力される左キャンセル信号LCoutにしたがって左キャンセル用スピーカ14を駆動する。
因みに、右音信号分岐部31が入力する右音信号Rinはバイノーラル信号であることが好ましいが、例えば、音楽CDなどに収録されている通常のステレオ信号でもよく、良好な広がり感を得ることができる。バイノーラル信号の場合には、バイノーラル信号の生成の際に想定された位置に仮想音像定位を実現することができる。
右音信号出力部32は右音信号分岐部31により分岐された一方の右音信号Rinを右音信号Routとして右スピーカ11のアンプ21に出力する。なお、右音信号出力部32は右スピーカ駆動手段を構成している。
即ち、右キャンセル信号生成部33は右スピーカ11からリスナー1の左耳に到達する伝達関数がHR1L(=第1伝達関数)、右キャンセル用スピーカ12からリスナー1の左耳に到達する伝達関数がHR2L(=第2伝達関数)であるとき、(−HR1L/HR2L)の特性を右音信号Rinに付与して、右スピーカ11からリスナー1の左耳に漏れ込む音の抑圧に用いる右キャンセル信号RCoutを生成する。
右キャンセル信号出力部34は右キャンセル信号生成部33により生成された右キャンセル信号RCoutを右キャンセル用スピーカ12のアンプ22に出力する。
なお、右キャンセル信号生成部33及び右キャンセル信号出力部34から右キャンセル用スピーカ駆動手段が構成されている。
因みに、左音信号分岐部35が入力する左音信号Linはバイノーラル信号であることが好ましいが、例えば、音楽CDなどに収録されている通常のステレオ信号でもよく、良好な広がり感を得ることができる。バイノーラル信号の場合には、バイノーラル信号の生成の際に想定された位置に仮想音像定位を実現することができる。
左音信号出力部36は左音信号分岐部35により分岐された一方の左音信号Linを左音信号Loutとして左スピーカ13のアンプ23に出力する。なお、左音信号出力部36は左スピーカ駆動手段を構成している。
即ち、左キャンセル信号生成部37は左スピーカ13からリスナー1の右耳に到達する伝達関数がHL1R(=第3伝達関数)、左キャンセル用スピーカ14からリスナー1の右耳に到達する伝達関数がHL2R(=第4伝達関数)であるとき、(−HL1R/HL2R)の特性を左音信号Linに付与して、左スピーカ13からリスナー1の右耳に漏れ込む音の抑圧に用いる左キャンセル信号LCoutを生成する。
左キャンセル信号出力部38は左キャンセル信号生成部37により生成された左キャンセル信号LCoutを左キャンセル用スピーカ14のアンプ24に出力する。
なお、左キャンセル信号生成部37及び左キャンセル信号出力部38から左キャンセル用スピーカ駆動手段が構成されている。
この実施の形態1では、従来通りの左右2本のメインスピーカ(右スピーカ11、左スピーカ13)に加えて、クロストークキャンセル用スピーカ(右キャンセル用スピーカ12、左キャンセル用スピーカ14)を2本設けるようにしている。
2本のメインスピーカ(右スピーカ11、左スピーカ13)と、2本のクロストークキャンセル用スピーカ(右キャンセル用スピーカ12、左キャンセル用スピーカ14)の配置は、以下に示す配置であることが好ましい。
また、左スピーカ13と左キャンセル用スピーカ14の配置関係においては、左キャンセル用スピーカ14が左スピーカ13よりもリスナー1の近くに配置される。
第二に、右スピーカ11の位置がR1、右キャンセル用スピーカ12の位置がR2、左スピーカ13の位置がL1、左キャンセル用スピーカ14の位置がL2、リスナー1の頭部の中央点がOであるとするとき、右スピーカ11と右キャンセル用スピーカ12の見開き角度である∠R1OR2が0〜20度の範囲内になるように、右スピーカ11と右キャンセル用スピーカ12が配置される。
また、左スピーカ13と左キャンセル用スピーカ14の見開き角度である∠L1OL2が0〜20度の範囲内になるように、左スピーカ13と左キャンセル用スピーカ14が配置される。
また、オーディオ再生装置の左音信号分岐部35は、左スピーカ13の駆動に用いる左音信号Linを入力すると、その左音信号Linを2つに分岐して、一方の左音信号Linを左音信号出力部36に出力し、他方の左音信号Linを左キャンセル信号生成部37に出力する。
アンプ21は、オーディオ再生装置の右音信号出力部32から右音信号Routを受けると、その右音信号Routにしたがって右スピーカ11を駆動することにより、リスナー1の右耳に音が到達する。
即ち、右キャンセル信号生成部33は、右スピーカ11からリスナー1の左耳に到達する伝達関数がHR1L、右キャンセル用スピーカ12からリスナー1の左耳に到達する伝達関数がHR2Lであるとき、(−HR1L/HR2L)の特性を右音信号Rinに付与して、右スピーカ11からリスナー1の左耳に漏れ込む音の抑圧に用いる右キャンセル信号RCoutを生成する。
アンプ22は、オーディオ再生装置の右キャンセル信号出力部34から右キャンセル信号RCoutを受けると、その右キャンセル信号RCoutにしたがって右キャンセル用スピーカ12を駆動することにより、右スピーカ11からリスナー1の左耳に漏れ込む音を抑圧する。
アンプ23は、オーディオ再生装置の左音信号出力部36から左音信号Loutを受けると、その左音信号Loutにしたがって左スピーカ13を駆動することにより、リスナー1の左耳に音が到達する。
即ち、左キャンセル信号生成部37は、左スピーカ13からリスナー1の右耳に到達する伝達関数がHL1R、左キャンセル用スピーカ14からリスナー1の右耳に到達する伝達関数がHL2Rであるとき、(−HL1R/HL2R)の特性を左音信号Linに付与して、左スピーカ13からリスナー1の右耳に漏れ込む音の抑圧に用いる左キャンセル信号LCoutを生成する。
アンプ24は、オーディオ再生装置の左キャンセル信号出力部38から左キャンセル信号LCoutを受けると、その左キャンセル信号LCoutにしたがって左キャンセル用スピーカ14を駆動することにより、左スピーカ13からリスナー1の右耳に漏れ込む音を抑圧する。
逆に、メインスピーカ(右スピーカ11、左スピーカ13)が、クロストークキャンセル用スピーカ(右キャンセル用スピーカ12、左キャンセル用スピーカ14)よりもリスナー1に近い位置に配置されている場合、(−HR1L/HR2L)及び(−HL1R/HL2R)の特性が因果性を満足せず、これらの特性の実現が不可能になる。
ただし、この配置の場合でも、入力信号である右音信号Rin及び左音信号Linを一定時間以上遅延させれば、実質的に因果性を満足するように、(−HR1L/HR2L)及び(−HL1R/HL2R)の特性を実現することが可能になる。
しかし、この配置の場合には、より多くのオーディオ信号の遅延を生じるため、特にDVDコンテンツなどの画像と同期しているオーディオ再生システムにおいては、リップシンクがずれる問題が発生するため、好ましくない。
逆に、メインスピーカ(右スピーカ11、左スピーカ13)が、クロストークキャンセル用スピーカ(右キャンセル用スピーカ12、左キャンセル用スピーカ14)よりもリスナー1に近い位置に配置されていると、(−HR1L/HR2L)及び(−HL1R/HL2R)の特性のゲインが“1”を超える。このため、クロストークキャンセル用スピーカ(右キャンセル用スピーカ12、左キャンセル用スピーカ14)を駆動する信号の方が、メインスピーカ(右スピーカ11、左スピーカ13)を駆動する信号よりも大きな音量となるため、消費電力が多くなって不経済になる。
同様に、左スピーカ13からリスナー1の左耳に到達する伝達関数HL1Lの振幅特性と、左キャンセル用スピーカ14からリスナー1の左耳に到達する伝達関数HL2Lの振幅特性とが極めて似た特性になる。
また、クロストークキャンセル用スピーカ(右キャンセル用スピーカ12、左キャンセル用スピーカ14)が、メインスピーカ(右スピーカ11、左スピーカ13)よりもリスナー1に近い位置に配置されている場合、下記の近似式(1)が成立する。
z-aHR1R=HR2R
z-bHR1L=HR2L
z-cHL1L=HL2L
z-dHL1R=HL2R (1)
したがって、右キャンセル信号生成部33が(−HR1L/HR2L)の特性を右音信号Rinに付与する処理は、bサンプルの遅延処理と右音信号Rinの位相反転で代用することができる。
同様に、左キャンセル信号生成部37が(−HL1R/HL2R)の特性を左音信号Linに付与する処理は、dサンプルの遅延処理と左音信号Linの位相反転で代用することができる。
ER
=RinHR1R−RinHR1LHR2R/HR2L+LinHL1R−LinHL1RHL2R/HL2R
=Rin(HR1R−HR1LHR2R/HR2L)
EL
=LinHL1L−LinHL1RHL2L/HL2R+RinHR1L−RinHR1LHR2L/HR2L
=Lin(HL1L−HLIRHL2L/HL2R) (2)
図1のオーディオ再生装置では、メインスピーカ(右スピーカ11、左スピーカ13)と、クロストークキャンセル用スピーカ(右キャンセル用スピーカ12、左キャンセル用スピーカ14)との角度が狭く、さらに、メインスピーカ(右スピーカ11、左スピーカ13)と、クロストークキャンセル用スピーカ(右キャンセル用スピーカ12、左キャンセル用スピーカ14)とがリスナー1の正面位置(Y軸)に対して非対称に配置されているため、リスナー1の左右のずれが比較的大きくなっても、リスナー1から見たメインスピーカ(右スピーカ11、左スピーカ13)と、クロストークキャンセル用スピーカ(右キャンセル用スピーカ12、左キャンセル用スピーカ14)との相対的な位置関係が大きく崩れることがない。
ここで、相対的な位置関係とは、リスナー1と、メインスピーカ(右スピーカ11、左スピーカ13)とクロストークキャンセル用スピーカ(右キャンセル用スピーカ12、左キャンセル用スピーカ14)とのなす角度(∠R1OR2、∠L1OL2)、および、これらのスピーカ11〜14と左右の耳との距離の相対関係である。
一方、右スピーカ11からリスナー1までの距離は短くなるが、右キャンセル用スピーカ12からリスナー1までの距離もほぼ同じ程度の長さだけ短くなる。
スピーカの角度については、なす角度∠R1OR2、∠L1OL2の変化分がほとんどない。
このため、リスナー1の左右のずれに対して極めて頑健となり、スイートスポットが大幅に広がることが理解される。
なお、リスナー1が左側にずれた場合も同様である。
図11と同様に、リスナー1の頭部の中央を原点とする2次元座標において、左スピーカ13の位置は(−100cm,173cm)であり、右スピーカ11の位置は(100cm,173cm)である。
また、左キャンセル用スピーカ14の位置は(−90cm,163cm)、右キャンセル用スピーカ12の位置は(90cm,163cm)である。
すべてのスピーカ11〜14を点音源と仮定して、図2では500Hzの正弦波、図3では1000Hzの正弦波、図4では4000Hzの正弦波を使用している。
上記実施の形態1では、オーディオ再生装置が極めて広いスイートスポットを実現するものについて示したが、式(2)から明らかなように、リスナー1の両耳に到達する信号ER,ELが変形されてしまうことになる。即ち、リスナー1の右耳に到達する信号ERには、(HR1R−HR1LHR2R/HR2L)の特性が付与され、リスナー1の左耳に到達する信号ELには、(HL1L−HLIRHL2L/HL2R)の特性が付与される。
ER
=Rin(HR1R−HR1LHR2R/HR2L)
=Rin(HR1R−HR1Lz-aHR1R/z-bHR1L)
=RinHR1R(1−z-a+b)
EL
=Lin(HL1L−HLIRHL2L/HL2R)
=Lin(HL1L−HLIRz-cHL1L/z-dHL1R)
=LinHL1L(1−z-c+d) (3)
信号の周波数が低くなる程、遅延処理を施しても信号の位相変化量が少ないため、これらを逆相で加算すると、大幅な振幅の減衰を生じることになる。
また、遅延量nの時間で音波が進行する距離をLとするとき、Lの整数分の1の波長となる周波数ではディップが発生するため、振幅特性がフラットでなくなる。
図5は(1−z-n)の周波数―振幅特性を示す説明図である。図5では、遅延量は0.125msec、音速は340m/secにしてある。このときの距離Lは4.25cmであり、8000Hzの波長に相当する。
図5は一例であり、スピーカ11〜14の配置によって周波数特性が異なってくるが、本発明の好適なスピーカ11〜14の配置では同様の傾向を示すことになる。
このような振幅特性の変形は音質の劣化につながるため、音質を重視するリスナー1においては大きな問題となり得る。
周波数特性補正処理部39は右音信号Rinの周波数特性を補正して、補正後の右音信号Rinを右音信号分岐部31に出力する。
周波数特性補正処理部40は左音信号Linの周波数特性を補正して、補正後の左音信号Linを左音信号分岐部35に出力する。
なお、周波数特性補正処理部39及び周波数特性補正処理部40から周波数特性補正手段が構成されている。
周波数特性補正処理部39は、右音信号Rinを入力すると、右耳に到達する信号ERを出来る限りフラットな周波数特性に修正する補正処理を実施する。
この補正処理には、例えば、右音信号Rinの低域を増幅する低域増幅処理や、図5に示すディップを潰す処理(例えば、1/(HR1R−HR1LHR2R/HR2L)の特性を右音信号Rinに付与する処理)などが含まれている。
周波数特性補正処理部39による補正後の右音信号Rinは、右音信号分岐部31に出力され、以後、上記実施の形態1と同様の処理が行われる。
この補正処理には、例えば、左音信号Linの低域を増幅する低域増幅処理や、図5に示すディップを潰す処理(例えば、1/(HL1L−HLIRHL2L/HL2R)の特性を左音信号Linに付与する処理)などが含まれている。
周波数特性補正処理部40による補正後の左音信号Linは、左音信号分岐部35に出力され、以後、上記実施の形態1と同様の処理が行われる。
図7はこの発明の実施の形態3によるオーディオ再生装置を示す構成図であり、図において、図1と同一符号は同一または相当部分を示すので説明を省略する。
右帰還信号生成部41は右キャンセル信号生成部33により生成された右キャンセル信号RCoutの特性を変更する。
即ち、右帰還信号生成部41は右スピーカ11からリスナー1の右耳に到達する伝達関数をHR1R(=第5伝達関数)、右キャンセル用スピーカ12からリスナー1の右耳に到達する伝達関数をHR2R(=第6伝達関数)とするとき、(−HR2R/HR1R)の特性を右キャンセル信号RCoutに付与することによって右キャンセル信号RCoutの特性を変更する。
右加算器42は右帰還信号生成部41による特性変更後の右キャンセル信号RCoutを右音信号Rinに加算する。
なお、右帰還信号生成部41及び右加算器42から右帰還手段が構成されている。
即ち、左帰還信号生成部43は左スピーカ13からリスナー1の左耳に到達する伝達関数をHL1L(=第7伝達関数)、左キャンセル用スピーカ14からリスナー1の左耳に到達する伝達関数をHL2L(=第8伝達関数)とするとき、(−HL2L/HL1L)の特性を左キャンセル信号LCoutに付与することによって左キャンセル信号LCoutの特性を変更する。
左加算器44は左帰還信号生成部43による特性変更後の左キャンセル信号LCoutを左音信号Linに加算する。
なお、左帰還信号生成部43及び左加算器44から左帰還手段が構成されている。
また、フィルタを設計することができたとしても、大幅に低域を増幅するような特性となるため、フィルタ処理において、出力信号が飽和してしまう可能性がある。
出力信号の飽和は、クロストークの抑圧効果の低減や音質劣化を引き起こす原因となり得る。
そこで、この実施の形態3では、周波数特性補正処理部39,40を実装することなく、音質の劣化を防止することができるようにしている。
具体的には、以下の通りである。
即ち、右帰還信号生成部41は、右スピーカ11からリスナー1の右耳に到達する伝達関数をHR1R、右キャンセル用スピーカ12からリスナー1の右耳に到達する伝達関数をHR2Rとするとき、(−HR2R/HR1R)の特性を右キャンセル信号RCoutに付与することによって右キャンセル信号RCoutの特性を変更する。
右加算器42は、右帰還信号生成部41から特性変更後の右キャンセル信号RCoutを受けると、特性変更後の右キャンセル信号RCoutを右音信号Rinに加算し、その加算信号R1を右音信号分岐部31に出力する。
即ち、左帰還信号生成部43は、左スピーカ13からリスナー1の左耳に到達する伝達関数をHL1L、左キャンセル用スピーカ14からリスナー1の左耳に到達する伝達関数をHL2Lとするとき、(−HL2L/HL1L)の特性を左キャンセル信号LCoutに付与することによって左キャンセル信号LCoutの特性を変更する。
左加算器44は、左帰還信号生成部43から特性変更後の左キャンセル信号LCoutを受けると、特性変更後の左キャンセル信号LCoutを左音信号Linに加算し、その加算信号L1を左音信号分岐部35に出力する。
その他の処理は、上記実施の形態1と同様であるため説明を省略する。
同様に、左帰還信号生成部43が(−HL2L/HL1L)の特性を左キャンセル信号LCoutに付与する処理は、cサンプルの遅延処理と左キャンセル信号LCoutの位相反転で代用することができる。
ER
=R1HR1R−R1HR1LHR2R/HR2L+L1HL1R−L1HL1RHL2R/HL2R
=R1(HR1R−HR1LHR2R/HR2L)
=R1HR1R(1−HR1LHR2R/HR1RHR2L)
EL
=L1HL1L−L1HL1RHL2L/HL2R+R1HR1L−R1HR1LHR2L/HR2L
=L1(HL1L−HLIRHL2L/HL2R)
=L1HL1L(1−HLIRHL2L/HL1LHL2R) (4)
R1
=Rin+R1(HR1LHR2R/HR2LHR1R)
=Rin(1−HR1LHR2R/HR2LHR1R)-1
L1
=Lin+L1(HL1RHL2L/HL2RHL1L)
=Lin(1−HL1RHL2L/HL2RHL1L)-1 (5)
ER
=R1HR1R(1−HR1LHR2R/HR1RHR2L)
=Rin(1−HR1LHR2R/HR2LHR1R)-1HR1R(1−HR1LHR2R/HR1RHR2L)
=RinHR1R
EL
=L1HL1L(1−HLIRHL2L/HL1LHL2R)
=Lin(1−HL1RHL2L/HL2RHL1L)-1HL1L(1−HLIRHL2L/HL1LHL2R)
=LinHL1L (6)
HR1Rは右スピーカ11から右耳に到達する特性、HL1Lは左スピーカ13から左耳に到達する特性であるため、通常のステレオスピーカにより再生されたときに付加される特性と同様の特性である。
したがって、図7のオーディオ再生装置では、極めて自然な音質を実現することができる。
ただし、HR1RとHL1Lの特性の付加も無くしたい場合には、図8に示すように、1/HR1Rの特性を右音信号Rinに付与する特性補正部45を右加算器42の前段に実装し、1/HL1Lの特性を左音信号Linに付与する特性補正部46を左加算器44の前段に実装するようにすればよい。
同様に、左スピーカ13からリスナー1の左耳への経路と、左キャンセル用スピーカ14からリスナー1の左耳への経路とを比較すると、左スピーカ13からリスナー1の左耳への経路の方が長い。
したがって、(−HR2R/HR1R)と(−HL2L/HL1L)の特性は因果性を満足しないことになる。
これについては、図9に示すように、先読み用遅延バッファ47,48を設けることにより、実質的に因果性を満足するように実現することができる。
このとき、オーディオ再生装置の先読み用遅延バッファ47では、右音信号Rinが入力されると、右音信号Rinをnサンプル以上遅延させ、右加算器42にむけて遅延信号を出力する。
先読み用遅延バッファ47では、さらに、遅延量と同じ分だけ音信号データを保持する。保持の方法は先入れ先出しに従う。また、処理すべき音信号の時刻位置を示すポインタをnサンプル分だけ過去にシフトする。先読み用遅延バッファ47では、nサンプル以上の音信号データを蓄積しているため、時刻位置を示すポインタをnサンプル過去にシフトすることが可能であり、これによって、等価的にnサンプルの先読みが可能となる。
右加算器42では、先読み用遅延バッファ47にて遅延された右音信号Rinと、右帰還信号生成部41から出力された信号とを加算し、右音信号分岐部31に向けて、加算信号を出力し、他方を右キャンセル信号生成部33に向けて出力する。右キャンセル信号生成部33では、上記実施の形態1と同様に右キャンセル信号RCoutを生成する。右キャンセル信号RCoutは、右先読み処理部49に渡される。
右先読み処理部49では、nサンプルの先読み処理を実施する。ここで、先読み用遅延バッファ47を設けたことにより、右先読み処理部49にて、
処理すべき音信号の時刻位置を示すポインタをnサンプル進めるだけで先読みが可能となる。右先読み処理部49では、先読み処理が施された信号を右帰還信号生成部41に向けて出力する。
また、オーディオ再生装置の先読み用遅延バッファ48では、左音信号Linが入力されると、左音信号Linをmサンプル以上遅延させ、左加算器44にむけて遅延信号を出力する。
先読み用遅延バッファ48では、さらに、遅延量と同じ分だけ音信号データを保持する。保持の方法は先入れ先出しに従う。また、処理すべき音信号の時刻位置を示すポインタをmサンプル分だけ過去にシフトする。先読み用遅延バッファ48では、mサンプル以上の音信号データを蓄積しているため、時刻位置を示すポインタをmサンプル過去にシフトすることが可能であり、これによって、等価的にmサンプルの先読みが可能となる。
左加算器44では、先読み用遅延バッファ48にて遅延された左音信号Linと、左帰還信号生成部43から出力された信号とを加算し、左信号分岐部35に向けて、加算信号を出力する。左音信号分岐部35では、信号を分岐し、一方を左音信号出力部36へ向けて、加算信号を出力し、他方を左キャンセル信号生成部37に向けて出力する。左キャンセル信号生成部37では、上記実施の形態1と同様に左キャンセル信号LCoutを生成する。左キャンセル信号LCoutは、左先読み処理部50に渡される。
左先読み処理部50では、mサンプルの先読み処理を実施する。ここで、先読み用遅延バッファ48を設けたことにより、左先読み処理部50にて、
処理すべき音信号の時刻位置を示すポインタをmサンプル進めるだけで先読みが可能となる。左先読み処理部50では、先読み処理が施された信号を左帰還信号生成部43に向けて出力する。
以後の動作は図7と同様なので説明を省略する。
なお、−z-xは、xサンプルの遅延処理を表すものである。
上記実施の形態1〜3では、メインスピーカ(右スピーカ11、左スピーカ13)と、クロストークキャンセル用スピーカ(右キャンセル用スピーカ12、左キャンセル用スピーカ14)とが一対一の関係にあるものについて示している。即ち、右スピーカ11で発生するクロストークをキャンセルする信号を再生するスピーカが右キャンセル用スピーカ12であり、左スピーカ13で発生するクロストークをキャンセルする信号を再生するスピーカが左キャンセル用スピーカ14であるものについて示している。
しかしながら、メインスピーカとクロストークキャンセル用スピーカが一対一の関係にあるものに限るものではなく、クロストークキャンセル用の信号を他の複数のスピーカで再生するようにしてもよい。
あるいは、残り3つのスピーカの他に、新たなスピーカを追加して使用するようにしてもよい。
同様に、左スピーカ13で発生するクロストークをキャンセルする信号を再生するスピーカとして、残り3つのスピーカ(右スピーカ11、右キャンセル用スピーカ12、左キャンセル用スピーカ14)のうちの全てのスピーカ、あるいは、いずれかのスピーカを用いるようにしてもよい。
あるいは、残り3つのスピーカの他に、新たなスピーカを追加して使用するようにしてもよい。
したがって、クロストークキャンセル用スピーカとして、上記実施の形態1〜3におけるスピーカよりも近い位置にあるスピーカも併せて使用することで、クロストークキャンセル用の音響エネルギーを低減させることができ、消費電力を削減することができるようになる。
Claims (11)
- 聴取者の前方右側に配置されている右スピーカの駆動に用いる右音信号を分岐する右音信号分岐手段と、上記右音信号分岐手段により分岐された一方の右音信号を上記右スピーカのアンプに出力する右スピーカ駆動手段と、上記右音信号分岐手段により分岐された他方の右音信号の特性を変更して、上記右スピーカから聴取者の左耳に漏れ込む音の抑圧に用いる右キャンセル信号を生成し、上記右キャンセル信号を聴取者の正面位置に対して上記右スピーカと非対称に配置されている右キャンセル用スピーカのアンプに出力する右キャンセル用スピーカ駆動手段と、聴取者の前方左側に配置されている左スピーカの駆動に用いる左音信号を分岐する左音信号分岐手段と、上記左音信号分岐手段により分岐された一方の左音信号を上記左スピーカのアンプに出力する左スピーカ駆動手段と、上記左音信号分岐手段により分岐された他方の左音信号の特性を変更して、上記左スピーカから聴取者の右耳に漏れ込む音の抑圧に用いる左キャンセル信号を生成し、上記左キャンセル信号を聴取者の正面位置に対して上記左スピーカと非対称に配置されている左キャンセル用スピーカのアンプに出力する左キャンセル用スピーカ駆動手段とを備えたオーディオ再生装置。
- 右スピーカと右キャンセル用スピーカの見開き角度が0度から20度の範囲内になるように、上記右スピーカと上記右キャンセル用スピーカが配置され、左スピーカと左キャンセル用スピーカの見開き角度が0度から20度の範囲内になるように、上記左スピーカと上記左キャンセル用スピーカが配置されていることを特徴とする請求項1記載のオーディオ再生装置。
- 右キャンセル用スピーカが右スピーカよりも聴取者の近くに配置され、左キャンセル用スピーカが左スピーカよりも聴取者の近くに配置されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載のオーディオ再生装置。
- 右キャンセル用スピーカ駆動手段は、右スピーカから聴取者の左耳に到達する伝達関数が第1伝達関数、右キャンセル用スピーカから聴取者の左耳に到達する伝達関数が第2伝達関数であるとき、(−第1伝達関数/第2伝達関数)の特性を右音信号に付与して、上記右スピーカから聴取者の左耳に漏れ込む音の抑圧に用いる右キャンセル信号を生成し、左キャンセル用スピーカ駆動手段は、左スピーカから聴取者の右耳に到達する伝達関数が第3伝達関数、左キャンセル用スピーカから聴取者の右耳に到達する伝達関数が第4伝達関数であるとき、(−第3伝達関数/第4伝達関数)の特性を左音信号に付与して、上記左スピーカから聴取者の右耳に漏れ込む音の抑圧に用いる左キャンセル信号を生成することを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれか1項記載のオーディオ再生装置。
- 右音信号の周波数特性を補正して、補正後の右音信号を右音信号分岐手段に出力するとともに、左音信号の周波数特性を補正して、補正後の左音信号を左音信号分岐手段に出力する周波数特性補正手段を設けたことを特徴とする請求項1から請求項4のうちのいずれか1項記載のオーディオ再生装置。
- 右キャンセル用スピーカ駆動手段により生成された右キャンセル信号の特性を変更し、特性変更後の右キャンセル信号を右音信号に帰還させる右帰還手段と、左キャンセル用スピーカ駆動手段により生成された左キャンセル信号の特性を変更し、特性変更後の左キャンセル信号を左音信号に帰還させる左帰還手段とを設けたことを特徴とする請求項1から請求項4のうちのいずれか1項記載のオーディオ再生装置。
- 右帰還手段は、右スピーカから聴取者の右耳に到達する伝達関数が第5伝達関数、右キャンセル用スピーカから聴取者の右耳に到達する伝達関数が第6伝達関数であるとき、(−第6伝達関数/第5伝達関数)の特性を右キャンセル信号に付与することによって上記右キャンセル信号の特性を変更し、左帰還手段は、左スピーカから聴取者の左耳に到達する伝達関数が第7伝達関数、左キャンセル用スピーカから聴取者の左耳に到達する伝達関数が第8伝達関数であるとき、(−第8伝達関数/第7伝達関数)の特性を左キャンセル信号に付与することによって上記左キャンセル信号の特性を変更することを特徴とする請求項6記載のオーディオ再生装置。
- 右帰還手段が1/第5伝達関数の特性を右音信号に付与し、左帰還手段が1/第7伝達関数の特性を左音信号に付与することを特徴とする請求項7記載のオーディオ再生装置。
- 右帰還手段が右キャンセル信号を第1の先読み時間だけ先読みし、先読みした右キャンセル信号の特性を変更し、特性変更後の右キャンセル信号を右音信号に帰還させ、左帰還手段が左キャンセル信号を第2の先読み時間だけ先読みし、先読みした左キャンセル信号の特性を変更し、特性変更後の左キャンセル信号を左音信号に帰還させることを特徴とする請求項6から請求項8のうちのいずれか1項記載のオーディオ再生装置。
- 右キャンセル用スピーカ駆動手段は、右音信号に対する(−第1伝達関数/第2伝達関数)の特性の付与を、上記右音信号に対する信号遅延と位相反転で代用し、左キャンセル用スピーカ駆動手段は、左音信号に対する(−第3伝達関数/第4伝達関数)の特性の付与を、上記左音信号に対する信号遅延と位相反転で代用することを特徴とする請求項4から請求項9のうちのいずれか1項記載のオーディオ再生装置。
- 右帰還手段は、右キャンセル信号に対する(−第6伝達関数/第5伝達関数)の特性の付与を、上記右キャンセル信号に対する信号遅延と位相反転で代用し、左帰還手段は、左キャンセル信号に対する(−第8伝達関数/第7伝達関数)の特性の付与を、上記左キャンセル信号に対する信号遅延と位相反転で代用することを特徴とする請求項7から請求項10のうちのいずれか1項記載のオーディオ再生装置。
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