JP2008061522A - 嫌気性超好熱菌用ろ過培養装置及び水素の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】嫌気性超好熱菌12を効率良く、かつ、高速に高密度化できる嫌気性超好熱菌用ろ過培養装置を提供する。また、水素の生産速度及び生産性が向上した水素の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の嫌気性超好熱菌用ろ過培養装置は、ろ過膜11を備える培養槽10と、前記培養槽10を加熱する加熱手段13と、前記培養槽10に培養液を供給する培養液供給手段20と、前記培養槽10から廃液を回収する廃液回収手段30と、前記培養槽10内のガスを回収分離するガス回収分離手段40と、前記培養槽10に不活性ガスを供給する不活性ガス供給手段50とを備え、前記ろ過膜11と前記廃液回収手段30が接続されている。本発明の水素の製造方法は、水素発生嫌気性超好熱菌をろ過培養することにより、水素を製造する。
【選択図】図1

Description

本発明は、嫌気性超好熱菌用ろ過培養装置及び水素の製造方法に関する。
嫌気性超好熱菌の中には、細胞分裂の過程で水素を産生する性質を有する水素発生嫌気性超好熱菌がある。このような水素発生嫌気性超好熱菌の例として、サーモコッカス コダカラエンシス(Thermococcus kodakaraensis;以下、「Tk」と略記することがある。)が挙げられる。このTkを培養して水素を生物学的に製造する技術が、従来から提案されている(例えば、特許文献1参照)。
なお、微生物名はイタリック体で表すべきであるが、本明細書においては通常の字体で表示する。また、本発明においては、「水素発生嫌気性超好熱菌」を、細胞分裂の過程で水素を産生する性質を有する嫌気性超好熱菌と定義する。
また、Tk以外の水素発生嫌気性超好熱菌を用いた水素供給設備が提案されている(例えば、特許文献2参照)。この特許文献2には、常温より高い温度の嫌気性雰囲気内で有機物を栄養源として水素発生嫌気性超好熱菌を培養する培養装置と、排熱源から排出させる80℃以上の排熱保有媒体から給熱されて前記培養装置を前記水素発生嫌気性超好熱菌の増殖に適した温度に維持する培養温度維持機構と、前記水素発生嫌気性超好熱菌の増殖に必要な前記有機物を前記培養装置内に供給する有機物供給機構と、前記水素発生嫌気性超熱菌の増殖により前記培養装置内で発生する水素を、前記培養装置から取り出して貯蔵する水素貯蔵器とを備え、前記水素貯蔵器から水素を取り出し可能に構成した水素供給設備が記載されている。また、前記水素発生嫌気性超好熱菌がピロコッカス フリオサス(Pyrococcus furiosus)またはサーモトガ マリティマ(Thermotoga maritima)であり、前記増殖に適した温度が80 〜 103℃であることが記載されている。
特開2003−116589号公報 特開平8−308587号公報
特許文献1に記載の水素の製造法及び製造装置は、回分培養法を行うものである。この回分培養法とはバッチ式の培養法であるため連続的に水素を製造できず、水素生産速度が遅く、水素の生産性が低いという問題があった。
特許文献2に記載の水素供給設備は連続培養法を行うものである。この連続培養法には、培養装置内の廃液を回収する際、菌体も同時に回収してしまうため、培養装置内の菌体を高密度化することが困難であるという問題があった。
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み、嫌気性超好熱菌を効率良く、かつ、高速に高密度化できる嫌気性超好熱菌用ろ過培養装置を提供することを目的とする。また、水素の生産速度及び生産性が向上した水素の製造方法を提供することを目的とする。
かかる課題を解決するため、
本発明の第1の態様は、ろ過膜を備える培養槽と、前記培養槽を加熱する加熱手段と、前記培養槽に培養液を供給する培養液供給手段と、前記培養槽から廃液を回収する廃液回収手段と、前記培養槽内のガスを回収分離するガス回収分離手段と、前記培養槽に不活性ガスを供給する不活性ガス供給手段とを備え、前記ろ過膜と前記廃液回収手段が接続されている嫌気性超好熱菌用ろ過培養装置である。
本発明の嫌気性超好熱菌用ろ過培養装置においては、前記ろ過膜の細孔径が0.01〜0.1μmであることが好ましい。また、前記ろ過膜が金属膜であることが好ましい。また、前記ろ過膜と前記不活性ガス供給手段が接続されていることが好ましい。また、前記ろ過膜と前記培養液供給手段が接続されていることが好ましい。また、前記培養槽に酸溶液及びアルカリ溶液を供給する酸溶液/アルカリ溶液供給手段をさらに備えることが好ましい。また、前記ろ過膜が2つであり、各ろ過膜が前記培養液供給手段及び前記廃液回収手段にそれぞれ1つずつ接続し、前記各ろ過膜と、前記培養液供給手段及び前記廃液回収手段との接続を切り替える切り替え手段をさらに備えることが好ましい。
本発明の嫌気性超好熱菌用ろ過培養装置は、嫌気性超好熱菌の1種である水素発生超好熱菌に好適であり、水素発生嫌気性超好熱菌用ろ過培養装置として使用可能である。水素発生嫌気性超好熱菌用ろ過培養装置においては、前記ガス回収分離手段によって回収分離した水素ガスを前記加熱手段のエネルギー源として利用することが好ましい。
本発明の嫌気性超好熱菌用ろ過培養装置は、嫌気性超好熱菌の1種であるサーモコッカス コダカラエンシスに好適であり、サーモコッカス コダカラエンシス用ろ過培養装置として使用可能である。サーモコッカス コダカラエンシス用ろ過培養装置においては、前記ガス回収分離手段によって回収分離した二酸化炭素ガスを前記培養槽に供給することが好ましい。また、前記培養液供給手段がアミノ酸源及び炭素源を含む培養液を供給することが好ましい。また、前記炭素源が、ピルビン酸、ビルビン酸塩、及びでんぷん系多糖類からなる群から選ばれる1種又は2種以上であることが好ましい。また、前記サーモコッカス コダカラエンシスが、サーモコッカス コダカラエンシス KOD1(寄託機関:独立行政法人理化学研究所バイオリソースセンター微生物材料開発室、受託番号:JCM 12380号、又は、寄託機関:American Type Culture Collection (ATCC)、受託番号:ATCC BAA-918)であることが好ましい。
本発明の第2の態様は、水素発生嫌気性超好熱菌をろ過培養することにより、水素を製造する水素の製造方法である。具体的には、嫌気性超好熱菌及び培養液をろ過培養装置の培養槽内に供給する工程と、該培養液中で嫌気性超好熱菌をろ過培養することにより水素を製造する工程とを含む水素の製造方法である。
本発明によれば、嫌気性超好熱菌のろ過培養を行うため、廃液の回収時に嫌気性超好熱菌を失うことなく、培養槽内の増殖阻害物質濃度を減少させると同時に、培養槽内の嫌気性超好熱菌を濃縮することができる。結果、嫌気性超好熱菌を効率良く高密度化することができる。また、嫌気性超好熱菌として水素発生嫌気性超好熱菌を用い、これをろ過培養することによって、水素の生産速度及び生産性を向上することができる。
また、ろ過膜の細孔径を0.01〜0.1μmにすることにより、嫌気性超好熱菌の透過を効果的に阻止するとともに、培養液及び増殖阻害物質の透過を確保することができる。嫌気性超好熱菌の成熟時の一般的な大きさは約1μm以上であるので、ろ過膜の細孔径を嫌気性超好熱菌の大きさの10分の1以下にすることにより、嫌気性超好熱菌の透過を効果的に阻止することができる。また、ろ過膜の細孔径を0.01μm以上にすることにより、培養液及び増殖阻害物質がろ過膜を自由に透過することができる。
また、高密度に培養された嫌気性超好熱菌から、DNA/RNAポリメラーゼ又はヒドロゲナーゼ等の有用な生体物質を多量に得ることができる。
また、ろ過膜として金属膜を用いた場合、加工及び機械的洗浄によるメンテナンスが容易で、滅菌処理並びに高温、酸性、又はアルカリ性環境下における長期培養に高い耐久性を有するろ過培養装置を構成することができる。
なお、本発明において、「酸溶液/アルカリ溶液」とは、酸溶液とアルカリ溶液の両方又はいずれか一方を意味する。また、「DNA/RNA」とは、DNAとRNAの両方又はいずれか一方を意味する。また、「水素発生嫌気性超好熱菌」とは、細胞分裂の過程で水素を産生する性質を有する嫌気性超好熱菌をいう。
以下、本発明の実施形態について、詳しく説明する。
本発明は、嫌気性超好熱菌(以下、単に「本菌体」ということがある。)を対象とする。この嫌気性超好熱菌の具体例としては、サーモコッカス コダカラエンシス(Tk)、ピロコッカス フリオサス、又はサーモトガ マリティマ等が挙げられる。
嫌気性超好熱菌の1種であるTkは、以下の特徴1)〜4)を有する。
1)培養温度が60〜105℃(最適生育温度:約85℃)であるため、他の菌の繁殖による汚染を回避できる。
2)水素産生量を温度変化により制御できる。
3)栄養源として有機性廃棄物を利用した場合、有機性廃棄物(特にデンプン系多糖類)の可溶化と水素生産反応を同時に進行させることができる。
4)産生された水素を燃料電池の水素源とする場合、高温の水素が得られるため、発電起電力が高くなる。
Tkとしては、サーモコッカス コダカラエンシス KOD1(以下、「KOD1株」と略記する。)、並びにKOD1株の遺伝子組換え体及び変異体が挙げられ、いずれも本発明の好適な対象である。その中でもKOD1株が特に好適である。その理由を以下に記載する。
KOD1株は、寄託機関:独立行政法人理化学研究所バイオリソースセンター微生物材料開発室(受託番号:JCM 12380号)、又は、寄託機関:American Type Culture Collection (ATCC)(受託番号:ATCC BAA-918)に寄託されているため、入手が容易である。また、KOD1株の全塩基配列は決定されているため、遺伝子組換え操作を行い易い。また、KOD1株の細胞抽出液には、ヒドロゲナーゼ(水素生産に関与する生体触媒)及びDNA/RNAポリメラーゼ等の有用な生体物質が存在することが判明している。また、KOD1株は、炭素源としてペプチド類やデンプンを利用できるため、有機性廃棄物を培養液に使用することができる。また、KOD1株の培養条件及び水素生産条件が既に判明している。また、KOD1株は野生株であるため、増殖能力が安定している。
(嫌気性超好熱菌用ろ過培養装置の第1の例)
図1に、本発明の嫌気性超好熱菌用ろ過培養装置の第1の例を示す。
培養槽10は本菌体12が培養されるところである。この培養槽10は、ろ過膜11、本菌体12、及び培養液を有する。ろ過膜11は培養液内に存在している。また、培養液の液面上には、不活性ガス等のガスが存在している。培養槽10の周囲(例えば側面及び底面)には、加熱手段13が設けられており、培養槽10内の温度を60〜105℃に制御可能になっている。加熱手段13の具体例としては、シリコンラバーヒーターやマントルヒーターが挙げられる。
培養槽10は、嫌気性超好熱菌12を培養することから、約100℃の温度に耐えられるものである必要がある。また、酸素が培養槽10内に侵入することを防ぐため、酸素透過率が小さいものである必要がある。また、培養槽10内に供給される培養液には高濃度の塩が使用されることがあり、かつ、嫌気性超好熱菌12の培養時に硫化水素が発生することがあるため、培養槽10は耐腐食性が高いものである必要がある。従って、培養槽10の材質としては、上記特性を有する、アルミニウム、ステンレス鋼、ハステロイなどの耐酸性金属が用いられる。前記ステンレス鋼の中では、安価であり、かつ、入手が容易であることから、オーステナイト系ステンレス鋼が好ましく、SUS316L、SUS304等が特に好ましい。
先に例示された材質には、樹脂をコーティング又はライニングしたものが好ましい。これにより、耐腐食性をさらに向上することができる。この樹脂としては、炭素と水素のみからなる樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン)が挙げられるが、耐熱性が高いことから、フッ素樹脂が好ましい。このフッ素樹脂の中でも、特にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)などが特に好ましい。
なお、培養槽10の形状は、培養に適したものであればよく、例えば円筒形が挙げられる。
ろ過膜11は本菌体12を透過させず、培養液及び本菌体12が排泄する酢酸等の増殖阻害物質を透過させるものである。本菌体12の成熟時の一般的な大きさは約1μmである。よって、ろ過膜11の細孔径は、0.1μm以下であることが好ましい。このように、ろ過膜11の細孔径を本菌体の大きさの10分の1以下にすることにより、本菌体12の透過を効果的に阻止することができる。
また、ろ過膜11の細孔径は、0.01μm以上であることが好ましい。これにより、培養液及び増殖阻害物質がろ過膜11を自由に透過することができる。
ろ過膜11の材質としては、金属、樹脂、又はガラス等が挙げられる。これらの材質は、滅菌処理並びに60℃以上の高温、酸性、又はアルカリ性環境下における長期培養に高い耐久性を有する。中でも、曲げ加工が可能であり、かつ機械的洗浄を行うのに十分な強度を有することから、金属膜が好ましい。
金属膜の材質としては、上述した培養槽10と同様の材質が好ましい。これにより、ろ過膜11は培養槽10と同様の性質を有することができる。また、この材質には、上記樹脂をコーティング又はライニングすることが好ましい。これにより、耐腐食性をさらに向上することができる。
ろ過膜11の形状は、培養に適したものであればよく、例えば円筒形が挙げられる。
培養槽10内には、攪拌翼14が設けられていることが好ましい。この攪拌翼14を用いて培養液を攪拌して均一化することにより、培養液内の本菌体12を均一に培養することができる。また、攪拌翼14は、防御網を装着することが好ましい。これにより、攪拌翼14による本菌体12への物理的影響(例えば、せん断応力)を防止することができる。攪拌翼14は本菌体12の培養条件においても安定なものである必要があるため、その材質は培養槽10と同じものであることが好ましい。
培養槽10には、培養液貯槽21と、該培養液貯槽21内の培養液を培養槽10に供給する第1及び第2の培養液供給管22,22aと、該第1及び第2の培養液供給管22,22aに設けられた第1及び第2の培養液供給用ポンプ23,23aとから構成される培養液供給手段20が設けられている。培養槽10と培養液貯槽21は第1及び第2の培養液供給管22,22aを介して接続されている。また、第1の培養液供給管22は培養槽10内の培養液に直接通じており、第2の培養液供給管22aは後述する廃液回収管32と接続してろ過膜11に通じている。これにより、培養液貯槽21内の培養液は、培養槽10内に直接又はろ過膜11を介して供給される。培養液の流量は、第1及び第2の培養液供給用ポンプ23,23aにより制御される。
なお、培養液を培養槽10内に供給する際には、予め培養液内の溶存酸素を窒素、アルゴン等の不活性ガスで置換させる。これにより、酸素によって培養が阻害されることを防止することができる。
本発明で用いられる培養液は、本菌体12の培養に一般に用いられるものであればよいが、アミノ酸源及び炭素源を含有することが好ましい。これにより、本菌体12に属するTkやピロコッカス フリオサス等を効率良く培養することができる。
アミノ酸源は、本菌体12の培養に一般に用いられるものであればよい。炭素源としては、ピルビン酸、ピルビン酸塩、及びデンプン系多糖類等が挙げられる。これらの炭素源は、単独で又は複数を組み合わせて用いられる。
ピルビン酸は酸性であるため、このピルビン酸を高濃度で用いると、培養液のpHが低下する。よって、炭素源としてピルビン酸を高濃度で用いる場合には、pH調整剤を用いて培養液のpHを5〜9に調整することが好ましい。これにより、本菌体12を良好に培養することができる。
なお、ピルビン酸の代わりにピルビン酸塩を用いると、培養液のpHが低下しないので、pH調整剤を用いる必要がなくなる。このピルビン酸塩としては、ピルビン酸ナトリウム等が挙げられる。このピルビン酸ナトリウムは、グルコースを原料として用いる発酵法により製造できる。また、化学合成によっても製造できる。
デンプン系多糖類としては、とうもろこしデンプン、馬鈴薯デンプン、甘藷デンプン、小麦デンプン、キャッサバデンプン、サゴデンプン、タピオカデンプン、米デンプン、豆デンプン、くずデンプン、わらびデンプン、はすデンプン、ひしデンプン等の生デンプン;α−デンプン、分別アミロース、湿熱処理デンプン等の物理的変性デンプン;加水分解デキストリン、酵素分解デキストリン、アミロース等の酵素変性デンプン;化学分解変性デンプン;化学変性デンプンなどが挙げられる。
デンプン系多糖類は、培養液に添加する際に可溶性であることが好ましいが、水と加熱することにより容易に可溶化するので、特に限定しなくてもよい。超好熱菌を用いて培養を行う場合には、約85℃の高温で培養することが多いので、常温で不溶性のデンプンであっても容易に可溶化できるという利点がある。デンプンは、周知のように、貯蔵用炭水化物として高等植物の種子、根茎等に多量に含まれる。
培養液におけるピルビン酸、ピルビン酸塩、及びデンプン系多糖類の濃度は、本菌体12の培養に適した値であればよく、例えば、0.01〜20重量%の範囲が挙げられる。なお、ピルビン酸塩の濃度に関しては、塩基の重量を無視して計算するものとする。
本発明で用いられる培養液は、上述したアミノ酸源及び炭素源の他に、必要に応じて、培養槽10内における培養液の液面を安定させる消泡剤や、ビタミン源である乾燥酵母エキス等の添加物を含有することが好ましい。なお、培養液を培養槽10内に供給する際には、予め培養液内の溶存酸素を窒素、アルゴン等の不活性ガスで置換させる。これにより、酸素によって培養が阻害されることを防止することができる。
なお、上述した培養液は、上記成分を人工的に調製してもよいが、アミノ酸源及び炭素源が豊富な、工場排水又は生活排水を、培養液の原料として利用してもよい。これにより、培養液の作製とともに廃棄物処理を同時に達成することができる。
培養槽10には、培養槽10内の培養液を廃液として回収可能な廃液回収管32と、該廃液回収管32に接続する廃液回収槽31と、廃液回収管32に設けられた廃液回収用ポンプ33とから構成される廃液回収手段30が設けられている。培養槽10内のろ過膜11と廃液回収槽31は廃液回収管32を介して接続されている。この廃液回収手段30により、培養槽10内において発生する廃液が回収される。また、培養槽10内の培養液はろ過膜11を透過し、その一部が廃液として回収される。このため、ろ過膜11を透過しない本菌体12が廃液とともに廃液回収手段30に回収されることが防止される。
なお、本発明において、「廃液」とは、アミノ酸源及び炭素源が本菌体12によって消費され、かつ本菌体12の排泄物を含む培養液をいう。
廃液回収管32には、pH電極34が取り付けられており、このpH電極34は、制御装置35と通信可能に接続されている。本菌体12は炭素源を代謝して酢酸等の酸を排泄するため、培養液のpHは通常低下している(酸性の度合いが強くなっている。)。そこで、pH電極34及び制御装置35を用いて廃液のpHを測定することにより、培養液の利用状況を評価することができる。
なお、回収した廃液はそのまま廃棄してもよい。また、pHの測定及び調整を行った後、培養槽10に再供給してもよい。このように廃液を再利用することにより、培養液の利用効率を向上することができる。
培養槽10には、培養槽10内のガスを回収可能なガス回収管42と、該ガス回収管42に接続するガス分離器41とから構成されるガス回収分離手段40が設けられている。培養槽10とガス分離器41はガス回収管42を介して接続されている。このガス回収分離手段40により、不活性ガス及び本菌体12の内の水素発生嫌気性超好熱菌が産生する水素ガス及び二酸化炭素ガス等の培養槽10内におけるガスが回収され、次いで各成分に分離される。ガス分離器の具体例としては、ガスを液化し、次いで蒸留することによって各成分に分離するガス液化分離装置、又は分離膜と吸収剤を組み合わせたハイブリット型分離回収装置が挙げられる。
なお、ガス回収分離手段40には、ガスクロマトグラフ分析計を取り付けてもよい。これにより、回収したガスの成分を測定することができる。
培養槽10には、不活性ガスタンク51と、該不活性ガスタンク51内の不活性ガスを培養槽10に供給する第1及び第2の不活性ガス供給管52,52aと、該第1及び第2の不活性ガス供給管52,52aに設けられた第1及び第2のマスフローコントローラー53,53aとから構成される不活性ガス供給手段50が設けられている。培養槽10と不活性ガスタンク51は第1及び第2の不活性ガス供給管52,52aを介して接続されている。また、第1の不活性ガス供給管52は培養槽10内の培養液に直接通じており、第2の不活性ガス供給管52aは上記廃液回収管32と接続してろ過膜11に通じている。これにより、不活性ガスタンク51内の不活性ガスは、培養槽10内に直接又はろ過膜11を介して供給される。不活性ガスの流量は、第1及び第2のマスフローコントローラー53,53aにより制御される。
この不活性ガス供給手段50を用いて不活性ガスを培養槽10に供給することにより、培養槽10内を嫌気性雰囲気下に保持することができる。また、不活性ガスの圧力により、本菌体12の内の水素発生嫌気性超好熱菌が増殖の過程で産生した水素をガス回収分離手段40に効率良く回収させることができる。不活性ガスとしては、窒素又はアルゴン等が挙げられる。中でも半導体用材料窒素等の工業用窒素が、入手が容易であるため好ましい。
培養槽10には、酸溶液/アルカリ溶液貯槽61と、該酸溶液/アルカリ溶液貯槽61内の酸溶液/アルカリ溶液を培養槽10に供給する酸溶液/アルカリ溶液供給管62と、該酸溶液/アルカリ溶液供給管62に設けられた酸溶液/アルカリ溶液供給用ポンプ63とから構成される酸溶液/アルカリ溶液供給手段60が設けられている。培養槽10と酸溶液/アルカリ溶液貯槽61は酸溶液/アルカリ溶液供給管62を介して接続されている。酸溶液/アルカリ溶液供給手段60は、酸溶液/アルカリ溶液を培養槽10に供給するものである。酸溶液は特に限定されず、例えば塩酸が挙げられる。アルカリ溶液は特に限定されず、例えば水酸化ナトリウム水溶液が挙げられる。
上述のように、本菌体12の代謝により培養液のpHが低下するので、培養液供給手段20からの培養液の供給及び廃液回収手段30への廃液の排出により、培養液のpHを高めて本菌体12の代謝を維持する必要がある。新規の培養液供給でもpHが好適な範囲を下回る場合には、酸溶液/アルカリ溶液供給手段60から酸溶液/アルカリ溶液を培養槽10に供給して、培養液のpHを調整する。
なお、酸溶液/アルカリ溶液を培養槽10内に供給する際には、予め各溶液内の溶存酸素を窒素、アルゴン等の不活性ガスで置換させる。これにより、酸素によって培養が阻害されることを防止することができる。
培養槽10には、培養槽10内の培養液を排出液として回収可能な液面制御用排出管72と、該液面制御用排出管に接続する排出液貯槽71と、液面制御用排出管72に設けられた液面制御用ポンプ73とから構成される液面制御手段70が設けられていることが好ましい。培養槽10と排出液貯槽71は液面制御用排出管72を介して接続されている。この液面制御手段70を用いて過剰な培養液を排出し、培養液の液面を制御することにより、培養液の量を一定に保持することができる。
なお、本発明において、「排出液」とは、液面制御のために排出される培養液をいう。また、液面制御用排出管72の培養槽10側の一端には、排出液用ろ過膜が設けられていることが好ましい。これにより、本菌体12が排出液とともに培養槽10から排出されることを防止することができる。
以下、本発明の嫌気性好熱菌用ろ過培養装置を用いた培養方法の一例を説明する。
先ず、本菌体12及び培養液を培養槽10内に導入する。導入方法としては、公知のものを用いることができる。例えば、予め滅菌処理を施した培養液を培養槽10内に供給し、次いで培養槽10内に本菌体12を添加してもよい。また、本菌体12を培養液に植菌して前培養し、この前培養した培養液を予め滅菌処理を施した培養液を有する培養槽10内に添加することにより、本培養を開始してもよい。
なお、本菌体12を培養槽10内に導入する際には、予め培養槽10内の空気を不活性ガスで置換させることが好ましい。この不活性ガスは、上述の不活性ガス供給手段50で用いられものと同様である。これにより、酸素によって培養が阻害されることを防止することができる。
次に、本菌体12をろ過培養する。具体的には、培養液供給手段20を用いて培養槽10に培養液を供給しながら、廃液回収手段30を用いて培養槽10から廃液をろ過膜11を介して回収する。本菌体12の培養中、廃液はろ過されながら回収されるため、廃液とともに本菌体12が廃液回収手段30に回収されることが防止される。
培養液の供給速度は特に限定されず、培養する本菌体12の量に応じて適宜設定すればよい。また、廃液の回収速度は、培養槽10内の培養液の量を一定に保持するため、培養液の供給速度と同じ速度に設定することが好ましい。なお、上記速度設定によっても、本菌体12の増殖による体積の増加、酸溶液/アルカリ溶液の供給等の理由により、培養槽10内の培養液の量が一定に保持されないときには、液面制御手段70を用いて、余分な培養液を排出する。
培養液内の本菌体12を均一に培養するため、攪拌翼14を用いて培養槽10内の培養液を攪拌してもよい。ただし、本菌体12の1種であるTkは細胞膜が弱いため、せん断応力に弱いという性質を有する。よって、攪拌翼14の攪拌速度は、攪拌のせん断応力による増殖阻害が発生しない程度である必要がある。具体的には、攪拌翼14の攪拌速度を50〜100rpmに設定することが好ましい。これにより、Tkを破壊せずに攪拌することができる。
培養温度は、本菌体12の培養に適した値であればよく、例えば、60〜105℃が挙げられる。Tkの最適生育温度は約85℃である。また、培養液のpHも、本菌体12の培養に適した値であればよく、例えば、6.0〜7.0が挙げられる。Tkの最適生育pHは6.4付近である。
新規の培養液供給でも、本菌体12の代謝によりpHが好適な範囲を逸脱する場合には、酸溶液/アルカリ溶液供給手段60から酸溶液/アルカリ溶液を培養槽10に供給して、培養液のpHを調整する。
ろ過培養が進行すると、培養槽10内の菌体濃度が増加し、栄養源の需要も増加する。そこで、培養槽10内の培養液の量、培養液の供給速度、及び供給する培養液の培地組成濃度を菌体濃度に応じて調整することが好ましい。これにより、本菌体12の増殖速度を最適に保持することができる。
なお、後述する実施例に記載の通り、炭素源及びアミノ酸源の濃度と、Tkの菌体濃度には比例関係がある。よって、本菌体12としてTkを使用する場合には、培地組成の成分のうち炭素源とアミノ酸源を、Tkの菌体濃度に応じて調整することが好ましい。
ろ過培養の進行中、本菌体12の内の水素発生嫌気性超好熱菌は水素ガス及び二酸化炭素ガスを産生する。水素ガスは燃料ガスとして産業上有用であるが、本菌体12の増殖を阻害する作用を有する。そこで、不活性ガス供給手段50により不活性ガスを培養槽10内に供給し、この不活性ガスの圧力を利用して、水素ガスを不活性ガスとともにガス回収分離手段40により回収することが好ましい。
不活性ガスの供給速度は、ガス供給のせん断応力による本菌体12の増殖阻害が発生しない程度である必要がある。例えば、培養槽10の単位体積当りの不活性ガス供給速度が以下の値になることが好ましい。
不活性ガス供給速度[l/hr]/培養槽体積[l]=3〜15[1/hr]
これにより、培養槽10内の水素濃度を低下し、本菌体12を効率良く培養することができる。
また、不活性ガス、水素ガス、又は二酸化炭素ガス等が充満することにより培養槽10内の圧力が高まると、本菌体12の増殖が阻害されることがある。よって、ガス回収分離手段40を用いて、培養槽10内の圧力を調節し、本菌体12の増殖を最適に維持することが好ましい。Tkの場合には、培養槽10内の圧力が0.2Kg/fcm以上になると、増殖が阻害される。よって、培養槽10内の圧力を0.2Kg/fcm以下に調節することが好ましく、これにより、Tkが効率的に増殖する。なお、培養槽10内の圧力の下限値は、本菌体12の培養に用いられる値であればよく、例えば大気圧が挙げられる。培養槽10内の圧力を大気圧以上にすることにより、培養槽10内に外気が進入することを防止することができる。
ガス回収分離手段40によって回収分離した水素ガスは、加熱手段13のエネルギー源として利用されることが好ましい。例えば、回収分離した水素ガスを燃料電池に燃料ガスとして供給することにより電力を得、この電力を用いて加熱手段13を作動する方法が挙げられる。また、水素ガスから得られた電力は、加熱手段13に限らず、本発明の嫌気性好熱菌用ろ過培養装置が備える各手段の作動に用いられてもよい。
本菌体12がTk又はピロコッカス フリオサスである場合、ガス回収分離手段40によって回収分離した二酸化炭素ガスは、培養槽10の培養液内に供給されることが好ましい。ピロコッカス フリオサスは、不活性ガス及び二酸化炭素ガスの雰囲気下で培養されると、増殖能力が向上することが報告されている(例えば、以下の文献を参照。"Effect of glucose,maltose,soluble starch ,and CO2 on the growth of the hyperthermophilic archaeon Pyrococcus furiosus", K. Biller, I.Kato, H.Markl, Extremophiles.,6:161-166 (2002) ")。また、Tkも、不活性ガス及び二酸化炭素ガスの雰囲気下で培養されると、増殖能力が向上することが、後述する実施例において明らかとなった(実施例1における(2−1)培地組成Aを参照。)。
この理由は完全には解明されていないが、Tkに属するKOD1株は、生体触媒であるリブロース−1,5−ビスホセフェート カルボキシラーゼを有し、二酸化炭素の固定化能力を有することが知られている。このような能力が、二酸化炭素ガスによる増殖能力の向上に関係しているものと推測される。
培養槽10内における二酸化炭素の濃度は1〜20%であることが好ましい。下限値以上にすることにより、Tk又はピロコッカス フリオサスの増殖能力を効果的に向上することができる。また、上限値以下にすることにより、培養液内が酸性化して本菌体12の培養に好適なpH範囲を逸脱することを防止することができる。好適なpH範囲を逸脱すると、多量の酸溶液/アルカリ溶液を供給することになり、培養液内の栄養源が希釈される問題が発生する。また、運転コストが増大する問題も発生する。
なお、Tkの最適生育二酸化炭素濃度は10%であるので、培養槽10内における二酸化炭素の濃度は5〜15%であることがより好ましい。
このように、ガス回収分離手段40によって回収分離した二酸化炭素ガスを培養槽10内に供給して、Tk又はピロコッカス フリオサスの増殖因子として利用することにより、ろ過培養装置全体における二酸化炭素の排出量を削減することができる。
ろ過膜11は、培養槽10内の菌体濃度の増加に従って、本菌体12によって付着される。結果、ろ過膜11が目詰まりを起こし、ろ過膜11における廃液の透過流速が低下する。この状態を放置すると、本菌体12が排泄した増殖阻害物質が培養槽10内の培養液に溜まり、本菌体12の増殖が阻害される。これを防止するため、ろ過膜11を逆洗浄する必要がある。
逆洗浄とは、培養液又は不活性ガスをろ過膜11の内側から供給することにより、ろ過膜11の外側に付着した本菌体12や多糖類等の副生産物を取り除くことをいう。具体的には、培養液供給弁24又は不活性ガス供給弁54を開き、廃液回収管32に設けられた弁を閉め、廃液回収用ポンプ33を停止することにより、培養液又は不活性ガスを廃液回収管32及びろ過膜11を介して培養槽10内に供給する。結果、ろ過膜11における付着物が、培養液又は不活性ガスの圧力により取り除かれる。逆洗浄に用いられる培養液の流量は、第2の培養液供給用ポンプ23aにより制御される。また、逆洗浄に用いられる不活性ガスの流量は、第2のマスフローコントローラー53aにより制御される。
なお、逆洗浄においては、培養液と不活性ガスの両方を使用することが好ましく、これにより、洗浄効果がより一層高まる。
液面制御用排出管72の培養槽10側の一端に排出液用ろ過膜を設けた場合には、この排出液用ろ過膜についても逆洗浄を行うことが、目詰まり防止のため好ましい。具体的には、第2の培養液供給管22a又は第2の不活性ガス供給管52aが液面制御用排出管72に接続するように本発明の嫌気性好熱菌用ろ過培養装置を構成し、培養液又は不活性ガスを液面制御用排出管72及び排出液用ろ過膜を介して培養槽10内に供給する。
逆洗浄の頻度は、ろ過膜11における廃液の透過流速に応じて設定すればよく、逆洗浄における培養液の供給速度及び供給時間も透過流速が初期値に回復するように設定すればよい。例えば、逆洗浄の頻度は0.5〜2.0時間に1回に設定される。培養液の供給速度及び供給時間は、使用するろ過膜11の細孔径及び形状(特に、ろ過膜11の内側における容積)により、設定される。
このように、本発明の嫌気性好熱菌用ろ過培養装置を用いてろ過培養を行うことにより、廃液の回収時に本菌体12を失うことなく、培養槽10内の増殖阻害物質濃度を減少させると同時に、培養槽10内の本菌体12を濃縮することができる。結果、本菌体12を効率良く高密度化することができる。また、本菌体12が有するDNA/RNAポリメラーゼ又はヒドロゲナーゼ等の有用な生体物質の生産性を向上することができる。
本発明の嫌気性好熱菌用ろ過培養装置は、本菌体12の1種である水素発生超好熱菌に好適であり、水素発生嫌気性超好熱菌用ろ過培養装置として使用可能である。水素発生嫌気性超好熱菌をろ過培養することによって、水素を製造することができる。また、連続培養法及び回分培養法を用いた水素の製造と比較して、水素の生産速度及び生産性を向上することができる。また、産生された水素ガス及び二酸化炭素ガスをガス回収分離手段により回収分離し、得られた水素ガスをろ過培養装置の運転に必要なエネルギー源として利用することにより、エネルギー自給型ろ過培養装置を構築することができる。
本発明の嫌気性超好熱菌用ろ過培養装置は、本菌体12の1種であるTkに好適であり、Tk用ろ過培養装置として使用可能である。Tkが産生する二酸化炭素ガスを、ガス回収分離手段によって回収して培養槽に供給することにより、Tkの増殖能力を効果的に向上することができる。
(嫌気性超好熱菌用ろ過培養装置の第2の例)
図2(A)、(B)に、本発明の嫌気性超好熱菌用ろ過培養装置の第2の例を示す。第2の例において第1の例と異なるところは、2つのろ過膜11a、11bを備える点と、これらろ過膜11a、11bと培養液供給手段20又は前記廃液回収手段30との接続を切り替える切り替え手段80を備える点である。
なお、図1に示されている上記以外の構成要素は、第2の例の特徴とは直接関係がないため、図2(A)、(B)においては省略されている。
切り替え手段80は、複数の切り替え弁82a、82b、82c、82dと切り替え管81を備えるものである。具体的には、第1の培養液供給管22が切り替え手段80内の切り替え管81と接続し、この切り替え管81が分岐してろ過膜11a、11bにそれぞれ接続している。また、切り替え管81における分岐点から各ろ過膜11a、11bに至る部分には、切り替え弁82a、82bがそれぞれ設けられており、この切り替え弁82a、82bの開閉を制御することにより、培養液をろ過膜11a、11bのいずれかに供給することができる。一方、廃液回収管32も切り替え手段80内の切り替え管81と接続し、この切り替え管81が分岐してろ過膜11a、11bにそれぞれ接続している。また、切り替え管81における分岐点から各ろ過膜11a、11bに至る部分には、切り替え弁82c、82dがそれぞれ設けられており、この切り替え弁82c、82dの開閉を制御することにより、廃液をろ過膜11a、11bのいずれかから回収することができる。
2つのろ過膜11a、11b及び切り替え手段80を備えることにより、第2の例の嫌気性超好熱菌用ろ過培養装置は、ろ過培養と逆洗浄を同時に行うことができる。例えば、図2(A)に示された第2の例においては、ろ過膜11aを介して廃液が回収されるとともに、ろ過膜11bを介して培養液が供給される。結果、ろ過膜11aを用いたろ過培養と、ろ過膜11bの逆洗浄が同時に行われる。
ろ過培養の進行により、ろ過膜11aにおける廃液の透過流速が低下した場合には、切り替え手段80を用いてろ過膜11a、11bと培養液供給手段20及び前記廃液回収手段30の接続を切り替える。これにより、図2(B)に示されるように、ろ過膜11bを介して廃液が回収されるとともに、ろ過膜11aを介して培養液が供給される。結果、ろ過膜11bを用いたろ過培養と、ろ過膜11aの逆洗浄が同時に行われる。
このように、ろ過膜11a、11bと培養液供給手段20及び前記廃液回収手段30の接続を定期的に切り替えることにより、ろ過培養を連続的に行うことができる。
なお、図2(A)、(B)に示された切り替え手段80における矢印線は、培養液又は廃液の流れの方向を示す。また、図2(A)、(B)には切り替え手段80の構成の一例を示したが、これ以外の構成であっても上述の機能を有していれば、切り替え手段80として採用できる。
(水素の製造方法)
以下、本発明の水素の製造方法について説明する。
本発明の水素の製造方法は、水素発生嫌気性超好熱菌及び培養液をろ過培養装置の培養槽内に供給する工程と、該培養液中で嫌気性超好熱菌をろ過培養することにより水素を製造する工程とを含む。上述のように、ろ過培養を行うことによって水素発生嫌気性超好熱菌を高密度化することができる。この高密度化された水素発生嫌気性超好熱菌をさらに培養すると、水素発生嫌気性超好熱菌は、高密度化される前と比較して多量の水素を産生する。よって、水素発生嫌気性超好熱菌による水素の生産性を向上することができる。
本発明の水素の製造方法における水素発生嫌気性超好熱菌の培養条件は、上述した本発明の嫌気性好熱菌用ろ過培養装置を用いた培養方法の一例に記載の条件と同様である。また、水素発生嫌気性超好熱菌のろ過培養を行う場合には、本発明の嫌気性超好熱菌用ろ過培養装置を好適に用いることができる。なお、得られた水素は、使用したろ過培養装置のエネルギー源として利用してもよく、燃料ガスとして別の用途に使用してもよい。
以下、実施例により、本発明をさらに詳しく説明する。本発明は、下記実施例に何ら制限されるものではない。
(実施例1)
実施例1では、本発明の嫌気性超好熱菌用ろ過培養装置の第1の例を用いて本菌体12のろ過培養を行った。
(1)嫌気性超好熱菌用ろ過培養装置の構造及び使用
(1−1)ろ過培養装置
ろ過培養装置として、大陽日酸株式会社製嫌気性好熱菌ろ過培養装置(型式:TSF−MF1)を使用した。このろ過培養装置は図1に示されたものと同様の構成を有する。また、このろ過培養装置に、大陽日酸株式会社製嫌気性好熱菌培養装置(型式:TSF100−10)の制御系を設けた。
(1−2)ろ過膜11
ろ過膜11として、日本精線株式会社製金属膜(品名:NASclean VENT TEL-1S、1/4インチ継手(SW)取付タイプ)を使用した。この金属膜は、以下の特徴を有する。
細孔径:0.03μm、ろ過有効面積:122cm程度、円筒直径:32mm、長さ154mm、材質:SUS316。
(1−3)培養槽10
上記ろ過培養装置が備える培養槽10は、以下の特徴を有する。
容量:2l(金属膜を取り外した状態)材質:ステンレス鋼(SUS316)製、形状:円筒形状(底板直径155mm、高さ488mm)。
培養槽10の概略上面図を図3(A)に、概略側面図を図3(B)に示す。図3(A)、(B)に示すように、培養槽10の上蓋には、以下の9つの口が設けられている。
廃液出口(逆洗浄口)101・・・SUSパイプ方式(材質:SUS304、外径:1/4インチ)、金属膜が取り付けられている。
培養液供給口102・・・SUSパイプ方式(材質:SUS304、外径:1/8インチ)
不活性ガス供給口103・・・SUSパイプ方式(材質:SUS304、外径:1/8インチ)
ガス出口104・・・SUSパイプ方式(材質:SUS304、外径:1/4インチ)
液面センサー(レベル電極)差込口105・・・袋ナット方式(外径:1/4インチ)
温度センサー(測温抵抗体)差込口106・・・袋ナット方式(外径:1/4インチ)
サンプリング口(植菌口及び菌体採取口)107・・・SUSパイプ方式(材質:SUS304、外径:1/8インチ)
培養液排出口108・・・SUSパイプ方式(材質:SUS304、外径:1/8インチ)、液面制御にて培養槽10内の培養液の量を一定にする。
酸溶液/アルカリ溶液供給口109・・・SUSパイプ方式(材質:SUS304、外径:1/8インチ)
なお、廃液出口(逆洗浄口)101には廃液回収管32が、培養液供給口102には第1の培養液供給管22が、不活性ガス供給口103には第1の不活性ガス供給管52が、ガス出口104にはガス回収管42が、液面センサー(レベル電極)差込口105には液面センサー91が、温度センサー(測温抵抗体)差込口106には温度センサー92が、サンプリング口(植菌口及び菌体採取口)107にはサンプリング管93が、培養液排出口108には液面制御用排出管72が、酸溶液/アルカリ溶液供給口109には、酸溶液/アルカリ溶液供給管62が差し込み可能となっている。
(1−4)ろ過培養装置の制御
培養槽10内の温度、pH、及び攪拌速度を、大陽日酸株式会社製嫌気性好熱菌培養装置(型式:TSF100−10)の制御系であるラボコントローラーMDL−6Cを用いて一括制御した。また、温度、pH、及び攪拌速度の各値を、上記制御系に表示した。培養槽10の液面レベルも同様に制御したが、表示はされなかった。各制御の説明を、以下に示す。
温度制御・・・培養槽10の底部のコントロールと側面ヒーター(補助)のON/OFF制御。温度は85℃に設定した。
攪拌制御・・・マグネット式攪拌機による制御。回転速度は30〜100rpm(安定攪拌領域)に設定した。
pH制御・・・酸/アルカリ用チュービングポンプ(SMP−1C型、酸溶液/アルカリ溶液供給用ポンプ63に相当)のON/OFF制御。調節範囲はpH2〜12である。pH電極34として、株式会社丸菱バイオエンジ製のpH電極(GST−5472C型、リード線付)を使用した。
液面制御・・・培養槽10に一定量の培養液をマスターフレックスデジタル送液ポンプ(7524−40型、ヤマト科学株式会社製、第1及び第2の培養液供給用ポンプ23,23aに相当)により連続的に供給し、液面センサー91が液面上限を検知することにより培養液排出用定量送液ポンプ(RP−1000型、東京理科化器械株式会社製、液面制御用ポンプ73に相当)が作動する。液面センサー91が液面から離れたら、培養液排出用定量送液ポンプが停止する。
(2)ろ過培養
(2−1)培地組成
培地組成Aは、マリンアートSF−1試験研究用人工海水(富田製薬株式会社製)30.4g/l(規定量の0.8倍希釈)、微生物培地用特製乾燥酵母エキス5g/l(ナカライテスク株式会社製)、微生物培地用特製トリプトン5g/l(ナカライテスク株式会社製)、ピルビン酸ナトリウム5g/l(ナカライテスク株式会社製)、1%アデカノール水溶液0.5ml/l−培養液、(原液はアデカノールLG−109、旭電化工業株式会社製)、及び水を有する。なお、1%アデカノール水溶液は消泡剤であり、培養時に培養液が泡立つことにより、液面制御手段70が誤作動することを防止する効果を有する。
なお、培地組成Aにおける炭素源(ピルビン酸ナトリウム)及びアミノ酸源(トリプトン)の濃度を2倍にした培養液を用いてKOD1株を従来の方法で連続培養したところ、培地組成Aの培養液と比較して、菌体濃度が28%、水素発生速度が56%向上した。また、培地組成Aにおける炭素源をマルトデキストリン5g/l(商品名:アミコールNo.3−L、日澱化学株式会社製)に変更した培地組成Bにおいて、炭素源(マルトデキストリン)及びアミノ酸源(トリプトン)の濃度を2倍にした培養液を用いてKOD1株を従来の方法で連続培養したところ、培地組成Bの培養液と比較して、菌体濃度が27%、水素発生速度が52%向上した。また、炭素源(マルトデキストリン)及びアミノ酸源(トリプトン)の濃度を3倍にした培養液を用いた場合には、培地組成Aの培養液と比較して、菌体濃度が40%、水素発生速度が83%向上した。この結果から、水素生産に関与するTkの必須成分は炭素源及びアミノ酸源であることが判明した。
一方、培地組成Bを用い、かつ、培養槽10内に二酸化炭素の濃度が10%、窒素の濃度が90%の混合ガスを供給してKOD1株を連続培養したところ、窒素ガスのみを供給した場合と比較して、菌体濃度が33%、水素発生速度が46%向上した。
(2−2)培養準備
培地組成Aの培養液1000mlをろ過培養装置の培養槽10に充填した。この培養槽10を高圧蒸気滅菌処理(121℃、20分)した。培養液中の溶存酸素を低減し、培養槽10内を嫌気性雰囲気下に保持するため、不活性ガス供給手段50の第1のマスフローコントローラー53(デジタルマスフローコントローラー、型式CMQ0002、株式会社山武製、図1ではMFCと記載)から培養液中に窒素を供給流量100ml/minにて通気した。窒素としては、工業用窒素(大陽日酸株式会社製)を使用した。培養液を均一化するためにろ過培養装置付属の攪拌翼14を用いて攪拌速度100rpmで攪拌した。植菌し易い環境にするために、ろ過培養装置付属の底面ヒーター、側面ヒーター(大科電器株式会社製、CL型ニッ割布製マントルヒーターを使用、加熱手段13に相当)、温度センサー92(側温抵抗体)を用いて培養槽10内の温度を85℃に制御した。
(2−3)前培養操作
前培養は、内容積約300mlの密閉ガラス容器内に培地組成Aの培養液100mlを充填し、高圧蒸気滅菌処理(121℃、20分)した。その後、嫌気性培養装置(型式:EAN−140、タバイエスペック社製)を用いた嫌気性雰囲気下で植菌量が1体積%になるようにKOD1株(種菌溶液を1.0ml)を添加し、次いで、乾燥機(プログラムオーブン、型式:MOV−212P、三洋電機株式会社製)で、85℃、20時間、回分培養を行った。
(2−4)回分培養操作
(2−3)の前培養した培養液100mlを(2−2)で準備した培地組成Aの培養液1000mlが充填した培養槽10中に植菌した(10体積%植菌を実施)。植菌後も(2−2)と同様の温度85℃、攪拌速度100rpm、窒素ガス流量100ml/minの培養条件下で回分培養を15時間行った。
回分培養の間、定期的にろ過培養装置付属のポンプを用いて培養槽10内の培養液を約5〜20mlサンプリングし、デジタル比色計簡易ODモニター(型式:mini photo 518R、タイテック株式会社製)を用いて、波長660nmの吸光度(absorbance)を測定した。これにより、培養液の菌体濃度を測定した。
菌体濃度は次式で求めた。
菌体濃度[g/l]=波長660nmの吸光度値[−]×0.35[g/l](培地組成Aの場合)
回分培養の間、定期的に培養槽10内を通過したガスの一部をガスクロマトグラフ分析計(GC−TCD熱伝導式検出器:GC−8A型、株式会社島津製作所製)に送り、その成分を測定した。
(2−5)ろ過培養操作
回分培養15時間後(菌体濃度が0.35g/l以上になった後)、連続培養を開始した。第1の培養液供給用ポンプ23を用いて高圧蒸気滅菌処理(121℃、20分)後の培地組成Aの培養液を培養槽10内に連続的に供給した。液面センサー91と液面制御用ポンプ73を用いて培養槽10内の培養液を1000mlに液面制御した。
連続培養開始と同時に、pH電極34及び酸溶液/アルカリ溶液供給手段60を用いて、酸溶液(0.2〜0.4N HCl水溶液を使用)供給、アルカリ溶液(0.2〜0.4mol/l NaOH水溶液を使用)供給を行い、pH6.4〜7.0に制御した。なお、HCl水溶液、NaOH水溶液は窒素ガスで脱気した。窒素としては、工業用窒素(大陽日酸株式会社製)を使用した。窒素ガスの供給流量は約50ml/minであった。
連続培養3時間後、ろ過培養を15時間行った。その後、再度、連続培養を4時間行った。これにより、連続培養に対するろ過培養の評価を行った。
従来の連続培養は、連続的に培養液供給を行い、液面制御にて培養液量を一定にし、系外に廃液を排出するといった液の出入り以外の負荷を本菌体12に与えないものである。ろ過膜11は使用されない。
連続培養及びろ過培養の間も、(2−4)の回分培養操作と同様に、定期的に菌体濃度とガス分析を行った。
培地組成Aの培養液は、デジタルマスフローコントローラー(型式CMQ0002、株式会社山武製)を用いて窒素ガスで脱気した。窒素ガスの供給流量は100ml/minであった。また、脱気と同時に培養液を混合した。
ろ過培養条件(連続培養条件も含む)としては、温度85℃、攪拌速度100rpm、pH6.4〜7.0、培養槽供給用窒素ガス流量100ml/minを選択した。
第1の培養液供給用ポンプ23及び廃液回収用ポンプ33としてはマスターフレックスデジタル送液ポンプ(7524−40型、ヤマト科学株式会社製)を用い、培養液供給速度及び廃液回収速度を同じに設定した。
ろ過培養の開始時においては、培地組成Aの培養液供給速度を3.7ml/minに設定した。この速度で2.0時間ろ過培養した後、本菌体12の増殖速度(菌体濃度)を高めると同時に水素発生速度を高めるために、培養液供給速度を7.5ml/minに変更し、ろ過培養を行った。
ろ過培養期間においては、1.5時間に1回、15分間、ろ過膜11の内側から培地組成Aの培養液(培養液供給速度7.5ml/min)を供給し、逆洗浄を行った。これにより、ろ過膜11に付着した本菌体12や副生産物(多糖類)等を取り除き、廃液の透過流速を回復させた。
(2−6)結果
実施例1におけるろ過膜11のろ過効率を評価するため、阻止率Rを計測した。阻止率Rは以下の式により得られる。
Figure 2008061522
式中、Rはろ過膜11における本菌体12の阻止率[−](0<R<1)を表し、Cは培養槽10内の菌体濃度[g/l]を表し、Cは廃液中の菌体濃度[g/l]を表す。
上記ろ過培養の結果、日本精線株式会社製の金属膜(細孔径0.03μm)の阻止率は、ろ過培養開始から0.5時間後には0.97[−]以上であることがわかった。この値はろ過培養において好適である。
図4に、実施例1のろ過培養における培養時間に対する培養槽10内の菌体濃度及びガス発生速度を示す。図4に示すように、ろ過膜11を利用したろ過培養では連続培養と比較して菌体濃度が約2倍に上昇した。また、菌体濃度が上昇するとともに、水素発生速度も33%向上した(連続培養時:3.0ml−H/min・L−培養液→ろ過培養時:4.0ml−H/min・L−培養液)。
図5に、従来の連続培養における培養時間に対する培養槽10内の菌体濃度及びガス発生速度を示す。従来の連続培養では、回分培養により菌体濃度を高め、その後、連続培養に切り替える。図5に示すように、連続培養開始後、菌体濃度は供給された培養液により希釈され、菌体濃度は一次的に低下するが、培養液の供給による希釈に本菌体12の増殖が追いつき、最終的には菌体濃度は安定し、水素発生速度も安定する。
これに対し、図4に示すように、ろ過培養においてはろ過膜11により廃液回収時の本菌体12の損失が阻止されているため、培養槽10内の本菌体12が希釈されなかった。そのため、ろ過膜11を利用するろ過培養では、連続培養と比較して、水素発生速度の向上や安定化への所要時間が短いことが判明した。
(比較例1)
ろ過膜11として、株式会社安来製作所日立メタルプレシジョン製の金属膜(細孔径0.3μm)を用いたことを除いては、実施例1と同様の条件でろ過培養を行った。結果、このろ過膜11の阻止率は0.4[−]付近であり、実施例1と比較して低いことがわかった。
(実施例2)
上述の通り、1つのろ過膜11を利用するろ過培養においては、ろ過膜11における透過流速を好適に維持するため、ろ過培養の間、定期的に逆洗浄を行う必要がある。この逆洗浄の頻度を確認するため、実施例2ではろ過時間と廃液の透過流速の関係を調べた。具体的には、逆洗浄を行わないことを除いては(2)のろ過培養と同様の条件でろ過培養を行った。その結果を図6に示す。図6から、ろ過時間が30分を超えると、廃液の透過流速が顕著に下がることがわかった。よって、本発明の嫌気性超好熱菌用ろ過培養装置の第1の例の運転においては、ろ過と逆洗浄の切り替え時間は30分付近であることが好ましいことがわかった。
本発明の嫌気性超好熱菌用ろ過培養装置の第1の例を示す概略図である。 本発明の嫌気性超好熱菌用ろ過培養装置の第2の例を示す概略図である。 (A)実施例1における培養槽の上面図である。(B)実施例1における培養槽の側面図である。 実施例1のろ過培養における培養時間に対する培養槽内の菌体濃度及びガス発生速度を示すグラフである。 従来の連続培養における培養時間に対する培養槽内の菌体濃度及びガス発生速度を示すグラフである。 実施例2のろ過培養におけるろ過時間に対する廃液の透過流速を示すグラフである。
符号の説明
10・・・培養槽、11、11a、11b・・・ろ過膜、12・・・嫌気性超好熱菌(本菌体)、13・・・加熱手段、20・・・培養液供給手段、30・・・廃液回収手段、40・・・ガス回収分離手段、50・・・不活性ガス供給手段、60・・・酸溶液/アルカリ溶液供給手段、80・・・切り替え手段

Claims (8)

  1. ろ過膜を備える培養槽と、
    前記培養槽を加熱する加熱手段と、
    前記培養槽に培養液を供給する培養液供給手段と、
    前記培養槽から廃液を回収する廃液回収手段と、
    前記培養槽内のガスを回収分離するガス回収分離手段と、
    前記培養槽に不活性ガスを供給する不活性ガス供給手段とを備え、
    前記ろ過膜と前記廃液回収手段が接続されている嫌気性超好熱菌用ろ過培養装置。
  2. 前記ろ過膜の細孔径が0.01〜0.1μmである請求項1に記載の嫌気性超好熱菌用ろ過培養装置。
  3. 前記ろ過膜が金属膜である請求項1又は2に記載の嫌気性超好熱菌用ろ過培養装置。
  4. 前記ろ過膜と前記不活性ガス供給手段が接続されている請求項1ないし5のいずれかに記載の嫌気性超好熱菌用ろ過培養装置。
  5. 前記ろ過膜と前記培養液供給手段が接続されている請求項1ないし6のいずれかに記載の嫌気性超好熱菌用ろ過培養装置。
  6. 前記培養槽に酸溶液及びアルカリ溶液を供給する酸溶液/アルカリ溶液供給手段をさらに備える請求項1ないし7のいずれかに記載の嫌気性超好熱菌用ろ過培養装置。
  7. 前記ろ過膜が2つであり、
    各ろ過膜が前記培養液供給手段及び前記廃液回収手段にそれぞれ1つずつ接続し、
    前記各ろ過膜と、前記培養液供給手段及び前記廃液回収手段との接続を切り替える切り替え手段をさらに備える請求項1ないし8のいずれかに記載の嫌気性超好熱菌用ろ過培養装置。
  8. 水素発生嫌気性超好熱菌をろ過培養することにより、水素を製造する水素の製造方法。
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