JP2008031743A - 耐火集成材 - Google Patents

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Abstract

【課題】火災が終了した後に集成材内部への炭化を防止することができ、自然に燃え止まることにより架構の崩壊を防ぐことができる、鋼材や石膏ボードを用いない耐火集成材を提供する。
【解決手段】難燃薬剤を実質的に含まない木材で構成された表面層と、該表面層に隣接した内側に、木材に難燃薬剤を注入処理した難燃薬剤注入層とを備え、前記難燃薬剤注入層における難燃薬剤の注入量の平均値が、固形分換算で70kg/m以上であることを特徴とする耐火集成材。
【選択図】図4

Description

本発明は、木材で構成された耐火集成材に関する。
建築基準法上、建築物の用途や規模によっては、その建築物の主要構造部を耐火構造や準耐火構造で建設しなければならない。例えば、大規模な建築物や不特定多数の人が利用する大規模な特殊建築物や、防火地域などに建築される住宅については、主要構造部に耐火構造を採用する必要がある。
一方で、平成12年の建築基準法の改正により、一定の性能さえ満たせば多様な材料や構造方式を耐火構造に採用することができるようになった。そのため、従来は、耐火構造としては、鉄骨造や鉄筋コンクリート造など不燃性の材料からなるものに限定されていたが、耐火性能試験を行い所定の耐火性能が確認できれは、木材など可燃性の材料を使用することができるようになった。
したがって、一定の耐火性能を満たした木材や集成材が開発されれば、大規模な建築物や特殊建築物、防火地域などに建築される木造住宅などの主要構造部にも使用することが可能になる。植林によって再生産が可能な材料である木材は、炭酸ガス削減対策としても地球環境に優しい建築材料で、積極的な用途の拡大が望まれている。
建築基準法上の耐火建築物は、火災が終了した後であっても建ち続けることが条件であり、所定の耐火加熱を加えた後であっても、その部材に期待されている耐火性能(荷重支持能力、遮熱性、遮炎性)が失われないことが必要である。
具体的な耐火試験方法では、耐火加熱炉を使って、ISO(国際標準化機構)で決められている標準火災加熱温度曲線(ISO−834−1)に沿った加熱を行った後に、炉内で加熱時間の3倍時間放置する間の変形や変形速度による判定を行うのに加え、耐火試験後に確実に燃え止まることを確認する。通常の木製の柱や梁にとっては厳しい条件であり、この条件を満足するのは極めて困難である。
これまで、可燃性である木材で構成される集成材を用いて耐火構造を実現するためには、集成材の表面に石膏ボードなど不燃性の材料で、集成材の表面を防火被覆することによって耐火性能を付与していた。
例えば、木材の表面に防火性接着剤を介してコーティングされた防火性ポルトランドセメントの層を有する複合耐火建材(例えば、特許文献1参照。)や発泡耐火層を積層した発泡耐火シートを木材上に設ける方法(例えば、特許文献2参照。)が開示されている。
しかしながら、これらの方法では集成材の表面全体が不燃性の材料で被覆されるため、木材の質感を生かすことができず、木質の仕上げを行う場合は、防火被覆を行った表面に、更に化粧を目的とした木材を仕上げ材として施工することになり、施工の工程が増えることから結果的に建設工事費も増加するという問題点があった。
特開2005−120646号公報 特開平9−256506号公報
断面積がある程度大きな木材や集成材は、火災に遭遇した場合は部材表面が燃焼しても、その部分に形成される炭化層が遮熱力を有するため、部材内部まで急速に燃焼することはない。また、炭化層の内側部分は、比較的低温に保たれ力学的性能の劣化も小さい。
また、部材断面の大きな木材や集成材は、火災時に燃焼と炭化により断面の欠損はあるが、その欠損は甚大ではなく、その断面欠損を考慮することにより、火災時でも一定時間必要な耐力を保持することができるため、耐火構造に準ずる耐火性能を有する、「準耐火構造」の主要な建築構法として広く使用されるようになった。
しかし、「耐火構造」の場合には、火災による入熱が終了した後も、建物は倒壊しないことが要件の一つとして規定化されているため、準耐火構造よりも厳しい条件が課せられている。
木造架構では、火災による火熱を受けると容易に着火し、構造材自身が燃焼し、表面か徐々に炭化層が内部に進行して、荷重支持に必要な断面が欠損していく。火災が終了した後は、炭化の進行の度合いは減少するとはいえ、自己燃焼によって部材内部への炭化は継続する。そのため、架構を構成する部材の残存断面が徐々に減少し、負担できる応力度が材料強度を上回ると、架構全体が倒壊するおそれがある。
そこで、本発明の課題は、以上の問題点を解決し、火災が終了する頃の集成材内部への炭化を防止することができ、自然に燃え止まることにより架構の崩壊を防ぐことができる、鋼材や石膏ボードを用いない耐火集成材を提供することにある。
かかる状況のもと、発明者が鋭意検討した結果、下記手段を採用することにより、本発明の課題を解決しうることを見出した。
すなわち、本発明は、
<1> 難燃薬剤を実質的に含まない木材で構成された表面層と、該表面層に隣接した内側に、木材に難燃薬剤を注入処理した難燃薬剤注入層とを備え、
前記難燃薬剤注入層における難燃薬剤の注入量の平均値が、固形分換算で70kg/m以上であることを特徴とする耐火集成材である。
本発明の耐火集成材の表面部分には、難燃薬剤を実質的に含まない表面層が設けられる。この表面層は実質的には難燃薬剤を処理注入しない木材であるため、木材そのものの風合いが保たれる。この表面層は、火災が継続している間に炭化する部分で、その表面層の内側に、難燃薬剤が注入処理された難燃薬剤注入層を配置するので、その後の自己燃焼による炭化の進行が阻止され、燃え止まる。
特に、自己燃焼による炭化が進行しないためには、難燃薬剤注入層における難燃薬剤の注入量の平均値が、70kg/m以上とすることが重要である。
これらの要件を満たす本発明の耐火集成材を使用した木造建築物は、難燃薬剤注入層で燃え止まり、残存する断面により架構全体を支えることが可能となる。その結果、火災が発生したとしても、建物の崩壊を防止することができる。
<2> 前記表面層の厚さは、外部からの加熱が終了したときに燃焼先端部分が該難燃薬剤注入層となるように調整されていることを特徴とする前記<1>に記載の耐火集成材である。
加熱終了時の燃焼部分が該難燃薬剤注入層となるように記表面層の厚さを調整すると、火災が終了する頃の燃焼部分は、難燃薬剤注入層が存在する部分に当たる。したがって、火災終了の頃からそれ以降の自己燃焼を効率的に抑止することができる。
<3> 前記難燃薬剤注入層は、レーザインサイジング処理によって穿孔を形成し、該穿孔から難燃薬剤を注入して形成されることを特徴とする前記<1>又は<2>に記載の耐火集成材である。
刃物インサイジング又はレーザインサイジング(以下、これらの方法を総称して「インサイジング」とする場合がある。)によって刺傷や穿孔を形成すると、この刺傷や穿孔から難燃薬剤が木材中に染み込み易くなり、ムラ無く均一に難燃薬剤を注入することができるので、効果的に自己燃焼による炭化の進行を阻止することができる。特にレーザインサイジングによる方法では、一定の大きさの穿孔を形成できるので、難燃薬剤をムラ無く均一に染み込ませることができる。
インサイジング処理の方法としては、本発明では、ニードルインサイジングかレーザインサイジングを適用することが、微少な穿孔を形成する観点から好ましく、その中でもレーザインサイジングでは、微小な穿孔を木材表面に荒らすことなく作製することができるので、木材片を積層し接着するのに問題となるような大きな表面の凹凸を形成しない。
更に、レーザインサイジングの場合、木材の水分通導組織(壁孔)を破壊せずに穿孔を形成できるので、この水分通導組織に難燃薬剤が入り込み、難燃薬剤が浸透しやすい。
<4> 前記穿孔の直径が、0.3〜2.0mmであることを特徴とする前記<3>に記載の耐火集成材である。
レーザインサイジングによって直径0.3〜2.0mmの穿孔を形成すると、ムラ無く均一に難燃薬液を注入でき、且つ刃物インサイジングで生じるささくれなどの表面荒れが生じないので、接着に際し表面の平滑処理を施す必要が無く、本発明において特に効果的である。
<5> 柱または梁であることを特徴とする前記<1>乃至<4>のいずれか1項に記載の耐火集成材である。
耐火建築物に対しては、火災による入熱が終了した後も、建物は倒壊しないことが要件
となっているので、倒壊を防止するのに特に重要な柱や梁については要求が厳しい。しかし、本発明の構成を有する耐火集成材であれば、梁や柱としても、耐火建築物に適用することができる。
<6> 前記難燃薬剤は、木材に注入されたときに、輻射熱強度50kW/mでのコーンカロリーメータ試験(ISO−5660−1)で、建築基準法に定める準不燃材料級または不燃材料級の防火性能を示す薬剤であることを特徴とする前記<1>乃至<5>のいずれか1項に記載の耐火集成材である。
本発明の耐火集成材に準不燃級または不燃級の難燃薬剤を適用すると、難燃薬剤注入層で燃え止まり、自己燃焼による炭化の進行を効果的に食い止めることができる。
本発明によって、火災が終了する頃の集成材内部への炭化の進行を防止することができ、自然に燃え止まることにより架構の崩壊を防ぐことができる。よって、鋼材や石膏ボードを用いない耐火集成材を提供することができる。
本発明の耐火集成材は、難燃薬剤を実質的に含まない木材で構成された表面層と、該表面層の内側に、木材に難燃薬剤を注入処理した難燃薬剤注入層とを備え、前記表面層の厚さは、加熱終了時の燃焼部分が該難燃薬剤注入層となるように調整されており、前記難燃薬剤注入層における難燃薬剤の注入量の平均値が、70kg/m以上であることを特徴とする。なお、本明細書において、「内側」「内部」とは、耐火集成材の断面において、耐火集成材の中心に向かう側をいう。
以下、本発明の耐火集成材の構成部材について説明を行い、引き続き、その構成の一例について、図を用いて説明する。
1.表面層
本発明の耐火集成材は、その表面に、難燃薬剤を実質的に含まない木材で構成される表面層を備える。したがって、本発明の耐火集成材の表面は、木材そのものの風合いが保たれる。ここで、表面とは、矩形の耐火集成材において、木口面を除く四面の表面をいう。但し、後述する図5のように、耐火構造の床板などが設けられている面の表面には表面層を設けなくてもよい。
なお、「難燃薬剤を実質的に含まない」とは、全く難燃薬剤を含まない場合のほかに、難燃薬剤の難燃効果を発揮させる含有量よりも少ない量を含有させる場合をいう。後述のように表面層は火災時には炭化してしまう部分であるため、難燃薬剤注入層よりも少ない含有量とする。したがって、本発明にかかる表面層には、積極的に難燃薬剤を注入処理しなくても難燃薬剤が含有される場合や、後述の難燃薬剤注入層よりも難燃薬剤を少なく注入する場合を包含する。木材そのものの風合いを保つ観点や製造作業性などの観点からは、表面層に難燃薬剤を積極的には注入処理しないことが、特に好ましい。
この表面層は、表面から加熱されたときに着火燃焼し炭化する。
火災が発生した場合、耐火集成材は加熱表面から着火し、内部へと炭化が進行する。火災が継続している間の燃焼部分の温度は、800〜1200℃に達することもあり、燃焼・炭化する部分に難燃薬剤の注入処理を行ったとしても炭化を抑えることは難しく、難燃薬剤を注入しない木材との差はほとんど見受けられない。
したがって、本発明にかかる表面層は難燃薬剤を注入処理しないことが好適である。このように表面層に難燃薬剤を注入しないことで、全体に難燃薬剤を注入する場合に比べて、難燃薬剤の使用量を削減することができる。また、難燃薬剤を注入するための穿孔や傷を集成材の表面につける必要がないので、この穿孔や傷から内部へ燃焼するのを防ぐことができる。
本発明にかかる表面層の厚さは、火災が継続する時間に炭化する層の厚さとほぼ同じ厚さで構成することが好ましい。つまり、火災の継続が想定される時間に、表面層を形成する木材の炭化速度を乗じることによって、表面層の厚みを求めることができる。
表面層の厚さ=「耐火構造に要求される耐火時間」×「木材の炭化速度」
例えば、耐火1時間の木材の場合、火災発生から1時間までは、架構全体を支えるのに必要な耐力を確保する必要があるので、火災が1時間継続したときに炭化する層の厚さを本発明にかかる表面層の厚さとすれば、火災が1時間継続したとしても、その後の自己燃焼を抑えることで、架構の崩壊を防ぐことができる。
標準的な火災における木材の炭化速度は、0.55〜0.75mm/分程度であるので、火災が1時間継続した場合に炭化する層の厚さは、33〜45mmとなる。
表面層の厚さは、このようにして算出した炭化する層の厚みに対して、0.5〜1.5倍であることが好ましい。0.5倍よりも薄いと、火災継続中に難燃薬剤注入層の多くが燃焼し始めてしまい、火災後の自己燃焼を抑えるには難燃薬剤の使用量を多くし、更に難燃薬剤注入層の厚みを厚くしなければならなくなる。一方、1.5倍よりも厚いと、火災後、燃焼の継続を阻止するまでにかかる時間が長くなり、火災後の残存断面が小さくなって、集成材全体の厚さにもよるが場合によっては架構の崩壊を防ぐことができない場合がある。
また、木材の炭化速度はその密度により影響され、密度の高い樹種ほど炭化速度が小さくなる傾向にある。したがって、使用する木材の種類を考慮して表面層の厚さを決定すればよい。
しかしながら、上記の炭化する層の厚みは計算に基づくものであり、現実とは異なる場合もあるので、実際に耐火試験を行って、適宜決定することが好適である。
いずれにしても、上述のように表面層の厚さを調整することで、加熱終了時の燃焼部分が該難燃薬剤注入層に当たるように設計することが好ましい。
建築基準法施行令第107条では、建築物の部分・階数に応じて、要求される耐火性能の「要件」と「時間」が規定されている。要求される性能の「要件」と「時間」は下記のとおりである。なお、間仕切壁や外壁については、非耐力壁の場合には耐火性能は要求されていない。
したがって、例えば、耐火時間が1時間となるように、前記表面層の厚さを設定し、且つ建築物が倒壊しないような残存の断面積とすることで、耐火1時間用の柱とすることができる。この場合、高さ4階建てまでの建築物に、木材で構成される本発明の集成材を適用することができる。
2.難燃薬剤注入層
本発明の耐火集成材は、前記表面層の内側に、難燃薬剤を注入処理した難燃薬剤注入層を備える。難燃薬剤注入層を備えることで、火災が終了した後に自己燃焼による炭化の進行が阻止され、燃え止まる。
集成材の燃焼は、その表面から起こるので、集成材の表面から内部に向かって、厚さ方向に対する難燃薬剤の注入位置が、火災が終了した後に自己燃焼による炭化の進行を阻止するのに、極めて重要である。具体的には、集成材の表面から、上記表面層で説明した表面層の厚さを確保して内部に入り込んだ部分に、その表面層に引き続いて難燃薬剤注入層が隣接して存在している必要がある。
また、難燃薬剤注入層の厚さは、火災後の自己燃焼を阻止するためには、表面層の厚さの1.0倍以上であることが好ましく、より好ましくは1.5倍以上である。難燃薬剤注入層の厚さが表面層の厚さの1.0倍よりも薄いと、集成材の偶角部において、自己燃焼による炭化が二方向から進行するため、難燃薬剤注入層が全て炭化してしまうことがあり、自己燃焼を抑制できないことがある。
特に、スギなどの樹種は燃え易いので、難燃薬剤注入層の厚さを表面層の厚さの1.5倍以上とすることが好ましい。
難燃薬剤注入層の厚さは、厚ければ厚いほど自己燃焼を確実に阻止することができるので、上限としては特に制限は無い。しかし、自己燃焼の抑止に使われないような難燃薬剤の使用量が増えてしまうので、難燃薬剤の使用量の低減の観点からすると、表面層の厚さの3倍以下とすることが好適である。
本発明の耐火集成材に用いることのできる難燃薬剤としては、リン系防火薬剤、窒素系防火薬剤、ホウ素系防火薬剤、ハロゲン系防火薬剤など一般な難燃薬剤を使用することができる。具体的には、ノンネンOK−201又はノンネンW2−50(リン系防火薬剤、丸菱油化工業社製)、SKO−5000S(リン系防火薬剤及びホウ素系防火薬剤を含む難燃薬剤、日本防災化学研究所製)などを挙げることができる。
適用する難燃薬剤としては、木材に注入されたとき、輻射熱強度50kW/mでのコーンカロリーメータ試験(ISO−5660−1)で、準不燃材料級または不燃材料級の防火性能を示す薬剤であることが好適である。
この中でも、セルロース系の難燃薬剤として広く用いられており、脱水炭化作用の促進による炭化層の形成とそれによる酸素及び熱供給の阻止の観点から、リン系の難燃薬剤であることが好ましく、特に加熱時に薬剤が発泡する性質を有するカルバミルポリリン酸アンモニウムは、穿孔や燃焼に伴って発生する微細な割れを防ぎ、熱の伝達をより一層阻止する観点から好ましい。
難燃薬剤の注入量は、加熱が終了する頃から確実に燃え止まるためには、70kg/m以上とする必要があり、100kg/m以上であることがより好ましく、150kg/m以上であることがより好ましい。
図1に、難燃薬剤を注入した厚さ30mmのひき板について、ISO−5660−1に準拠するコーンカロリーメータ試験の結果を示す。当該試験において、10分間の総発熱量で8MJ/m以下で、発熱速度が10秒以上継続して200kW/mを超えず、防火上有害な裏面まで達する亀裂及び孔が無いものが、準不燃材料の性能を満たす材料である。
難燃薬剤としては、薬剤1:リン酸アンモニウム・硼砂・硼酸の混合物、薬剤2:SKO−5000S、薬剤3:ノンネンOK−201、の3種類を適用し、樹種としては、スギ、カラマツの2種類を適用している。インサイジング密度は、図1に示すように変更している。
図1の結果から、木材中に固形分として70kg/m以上固定されていれば、ひき板は準不燃材料程度の防火性能となる。
なお、準不燃材料に相当する防火性能を有する難燃薬剤注入木材を難燃薬剤注入層として使用することで、耐火構造の集成材とすることが可能である。
難燃薬剤が粉末など固体の場合には、水などの溶媒に溶解又は懸濁させた状態にして、木材に注入する。
難燃薬剤の木材への注入方法は、浸漬法、塗布法、スプレー法など様々な方法を採用することができるが、薬剤吸収量の調整が可能な減圧・加圧式処理法が好適である。
木材に注入された難燃薬剤が、木材中でムラ無く均一に存在していない場合、加熱終了後に難燃薬剤の注入量が少ない部分から内部へ自己燃焼が継続して、部材内部へ炭化が進行してしまい、燃え止まらない危険性がある。したがって、難燃薬剤注入層に対してムラ無く均一に難燃薬剤を注入することが好ましい。ムラ無く均一に難燃薬剤を注入するには、インサイジングによる方法を採用することが好適である。特に、薬剤が浸潤しにくい樹種を使用する場合には、その対策として、難燃薬剤注入層の材面に、難燃薬剤の浸透の起点となるインサイジングを行うことが好ましく、特にレーザインサイジングを行うことが上述のとおり好適である。
木材に難燃薬剤を注入すると、難燃薬剤は表面から内部に向かって浸透する。木材に対する薬剤の浸透性は、材面により大きく異なり木口面からの浸透は板目や柾目に比較し、おおむね10倍以上浸透しやすいことが知られている。この木材の性質を利用し、注入薬剤の浸透性を改善する試みとして材面に多数の木口面を設けるインサイジング技術が考案されている。
なお、本発明では、木口面からだけでなく、板目や柾目からのインサイジングをも含む。
多くのインサイジング技術は、刃物などを使用し木材の表面に多くの刺傷をつけ、薬剤の浸透の起点とするので、表面が荒れやすい。表面が荒れたひき板を積層し接着すると、密着性が低下し、剥離などの問題を引き起こす場合がある。
したがって、本発明の耐火集成材では、難燃薬剤を注入するひき板の表面から厚さ方向に小径の穿孔を形成する加工法が好適であり、レーザにより穿孔を形成するレーザインサイジングは、微小な穿孔を形成できる観点からより好適である。
本発明にレーザインサイジングを適用する場合、穿孔を形成できるのであれば、用いるレーザの種類は特に限定されないが、炭酸ガスレーザを適用することが好適である。
本発明において、難燃薬剤を注入する穿孔の直径は、均一に難燃薬液を注入し、且つ表面荒れが大きくならないという観点から好ましく、ひき板表面において0.3〜2.0mmであることがより好ましく、0.5〜1.5mmであることが更に好ましい。
レーザインサイジングによって形成された穿孔は、図2に示すように、ひき板の表面では径が大きく、深くなるにつれて径が小さくなる。ひき板を接着する前に、ひき板の表面を削り出して表面を平滑にすると、点線に示すように、ひき板表面での穿孔の径が小さくなる。ひき板の表面を削り出す場合には、上記穿孔の直径の範囲は、削り出した後の径Dをいう。
難燃薬剤の注入量は、穿孔の径、面積当たりの孔数を表すインサイジング密度、及び注入時の加圧条件等により制御することができ、また難燃薬剤の浸透性は、加工する木材の種類によって異なる。
例えば、浸透性の良好なスギ材を使用した場合、穿孔の加工密度は、1400〜2000ヶ所/m(穿孔の穴径1.0mm程度)であることが好ましい。一方、薬剤の浸透性の悪いカラマツ材やベイマツ材を使用した場合は、11000〜14000ヶ所/m(穿孔の穴径1.0mm程度)であることが好ましい。
図3に、レーザインサイジング装置20の一例を示す。COレーザ21のレーザビーム22を集光レンズ23で集光し、加工テーブル24上に配置したひき板25に照射し、加工テーブル24をX方向及びY方向に移動させ、任意の位置に、また任意の密度でインサイジング穴26を開ける。
以下では、具体的な難燃薬剤の注入方法について詳細に説明するが、本発明ではこのような方法に限定されない。
<浸漬法>
サザンイエローパインなどの樹種の場合、難燃薬剤が浸透しやすいので、インサイジングなどの処理を施すことなく、難燃薬剤に浸漬させて、上記注入量を達成することもできる。難燃薬剤が浸漬し難い樹種の場合には、難燃薬剤に浸漬する前に予めインサイジングによって穿孔しておくことが好適である。特に、上述のとおり、レーザインサイジングによって穿孔することが好ましい。
<噴射法>
噴射法では、難燃薬剤を木材に噴射して浸透させる。また、塗布法では、木材に難燃薬剤を塗布して浸透させる。
難燃薬剤が浸漬し難い樹種の場合には、難燃薬剤を噴射したり塗布する前に予めインサイジングによって穿孔しておくことが好適である。特に、上述のとおり、レーザインサイジングによって穿孔することが好ましい。
<減圧・加圧式処理法>
減圧・加圧式処理法では、先ず減圧によって木材内の空気を取り出し、その後、加圧(JIS A 9002では、ゲージ圧0.4〜2.2MPa)によって、難燃薬剤液を注入する。この方法として、ベセル法、ローリー法、リュービング法などの処理法を採用することができる。
この方法では、サザンイエローパインやスギ辺材などのような難燃薬剤液の浸透性がよい樹種には好適であるが、例えば、スギ心材、ベイスギ、カラマツなどの樹種では、難燃薬剤液の浸透性が悪く、ムラ無く均一に難燃薬剤液を注入することが難しい。
そこで、減圧・加圧式処理法によって難燃薬剤を木材に注入する前に、予めインサイジングによって穿孔しておくことが好適である。特に、上述のとおり、レーザインサイジングによって穿孔することが好ましい。
<パッシブ減圧薬剤注入法>
パッシブ減圧薬剤注入法では、木材内に蒸気を導入し、温度低下による蒸気の凝縮を起こさせて、木材内を減圧状態として薬剤液を木材に含浸させる。
このときインサイジングにより、木材に貫通孔を穿孔しておくことが好適である。形成した穿孔に蒸気を貫流させて木材内に蒸気を導入し、次いで、木材を、難燃薬剤液に浸漬することによって、温度低下による蒸気の凝縮を起こさせ、材内を減圧状態として難燃薬剤液を木材に含浸させることができる。木材を穿孔する手段としては、穿孔径を小さくすることができる手段であれば特に限定されないが、COレーザ光照射によるレーザインサイジングによれば、水分通導組織(導管又は仮導管)を塞ぐことがないので、水分通導組織を通じて難燃薬剤を浸透させることができる。
この方法では、格別の高圧条件を要することなく、簡便かつ低コストで、確実に木材内部深く難燃薬剤を注入することができる。
パッシブ減圧薬剤注入法において木材の穿孔へ貫流する蒸気としては、装置の構成の容易さ、エネルギー消費の少なさなどから、室温より高い温度で凝縮し、反応性が低い、水、アルコールなどの物質の蒸気が好ましく、特に、環境への影響がなく、生木材の乾燥にも適した、安価な水蒸気が最適である。木材の穿孔へ貫流する際の蒸気温度は、凝縮点を超える温度に適宜設定する。
難燃薬剤は、浸漬温度において、穿孔を満たすことができる粘度の液状である場合は、そのまま用いられ、浸漬温度で固形ないしは粘度が大き過ぎる液状物である場合は、溶媒などにより穿孔を満たすことができる粘度の液状にしたものが用いられる。また、薬剤液と穿孔壁との界面張力、あるいは濡れも考慮しなければならない。
更には、薬剤液の状態でなくとも、温度低下による上記蒸気の凝縮によって生じる木材内の減圧を利用して、気体状ないしはエアロゾル状の薬剤を木材に注入することも可能である。
パッシブ減圧薬剤注入法における薬剤液の温度は、木材のバルク温度を、木材内に保持された蒸気が凝縮する温度よりも低くすることができる温度であればよく、用いる難燃薬剤液に応じて、加熱又は冷却して温度調整してもよいが、消費エネルギーを少なくするためには、室温の難燃薬剤液に、その量を蒸気が凝縮する温度よりも低い温度に維持できる量以上にして、蒸気が保持された木材を浸漬することが好ましい。
パッシブ減圧薬剤注入法により、例えば、スギ材の場合、薬剤液は、木材の穿孔を経て、それに通じる仮導管などの水分通導組織の100mm以上奥まで浸透し、薬剤浸潤度が大きくなるので、確実に木材内に注入することができ、注入された薬剤も、その後、放散することが殆どない。また、パッシブ減圧薬剤注入法は、蒸気の導入にそれ程の圧力を要しないため、減圧・加圧式処理法のように、薬液注入のための高圧条件のような特別の加圧及びそのための装置を必要とせず、簡便、低エネルギー消費、低コストで、環境に優しい、木材への薬剤注入方法である。
木材で構成される従来の集成材は、火災が終了し外部からの入熱が終わった後も、集成材の内部では自己燃焼が続き、炭化速度は遅くなるが徐々に炭化が内部へ進行する。その結果、残存断面は減少し続け、燃え尽きるか躯体荷重を支えることができなくなり、最終的には、架構の崩壊に至る恐れがある。
しかしながら、本発明の耐火集成材は、特定の位置に、特定量の難燃薬剤を注入した難燃薬剤注入層を設けているので、火災終了後の炭化の進行を防止し、部材内部の燃焼が終了するまで放置しても建物の崩壊を阻止することができる。
3.耐火集成材の構成及び製造方法
以下に、本発明に係わる耐火集成材及びその製造方法について添付図面を用いて説明する。図4は、本発明の耐火集成材による柱の一例の断面を、図5は、梁の一例を示したものである。
図4及び図5では、耐火集成材の断面は何れも矩形であり、耐火集成材の表面には表面層1を設け、その内側に難燃薬剤注入層2を配置し、さらに難燃薬剤注入層2の内側に難燃薬剤を処理していない未処理層3で構成されている。
表面層1と難燃薬剤注入層2の厚さは、上述の通りであり、未処理層3の厚さは、柱や梁の形状、或いは大きさによって適宜変更することができる。
難燃薬剤注入層2は火災による加熱を受ける面の内部に配置され、例えば図4に示す柱の場合は、4面のいずれからも火災による加熱を受けるために、4面すべてに難燃薬剤注入層2を設けている。図5に示す梁の場合は、上面に耐火構造の床板4が施工され、3面から加熱されるので、3面に難燃薬剤注入層2を設けている。但し、図5に示す梁の場合であっても、床板4を設けた面側の内部にも難燃薬剤注入層2を設けてもよい。つまり、図5における梁の場合には、上面はコンクリートパネルなどの耐火構造の床板4が施工されるため、床板4側から順に、ひき板14、ひき板12、ひき板5を積層すればよいが、床板4が設けられた面の内側にひき板12を設けた後、ひき板14、ひき板12、ひき板5をこの順に積層してもよい。
図6は、図4の柱において、上面及び下面に用いるひき板5を示している。図7は、図4の柱におけるひき板12の構成を説明する図であり、図8は、図4の柱におけるひき板14の構成を説明する図である。
なお、本明細書において、「上面」とは、説明する図を見たときに、上方向に配置されている面をいい、実際に耐火集成材を柱や梁に用いたときの状態を示すものではない。同様に、「下面」とは、説明する図を見たときに、下方向に配置されている面をいう。
図6におけるひき板5は、火災による加熱が継続している間は燃焼し炭化する領域に使用する。ひき板5は、難燃薬剤の処理を行っていない木材のひき板である。想定する加熱時間に対する炭化深さに対して、ひき板5の一枚の厚さでは足りない場合には、二枚以上のひき板5を配置すればよい。
図7に示すひき板12は、両側に難燃薬剤の処理を行っていない木材片7を備え、その間に難燃薬剤を処理した木材片6を挟み、予め用意されたこれら三片の木材を、幅はぎ接着部分10で幅方向に接着したひき板である。
図8に示すひき板14は、両側と中央部分には、難燃薬剤の処理を行っていない木材片7,9を備え、木材片7と9との間には難燃薬剤を処理した木材片8をそれぞれ挟持し、各々の木材片を幅方向に接着して、一枚のひき板を構成している。
本発明に係わる耐火集成材が火災に遭遇した場合、集成材内部の未炭化領域における内部温度は100℃前後まで上昇するため、木材片6〜9を互いに幅方向接着する接着剤は、耐熱性に優れたレゾルシノール系樹脂接着剤やメラミン樹脂接着剤など熱硬化型接着剤を用いることが好ましい。
このとき、接着が不充分であると隙間が生じ、この隙間から熱が入り込んで集成材の内部まで燃焼してしまうので、確実に密着して接着することが必要である。難燃薬剤の種類によって好適な接着剤の種類が異なる場合があるので、難燃薬剤の種類に応じて用いる接着剤を適宜選択することが好ましい。例えば、リン系の防火薬剤の場合には、レゾルシノール系樹脂接着剤やメラミン樹脂接着剤など熱硬化型接着剤などの接着剤を用いることが好ましい。
柱や梁を構成するひき板5、12、14は、柱や梁の形状や耐火性に合わせて、それぞれを複数枚ずつ備えていてもよい。
つまり、耐火集成材の設計耐火時間と断面のサイズにより、ひき板5、12、14について必要な枚数を用意し、ひき板の組合せに従い積層接着することにより、本発明の耐火集成材を製作することができる。
図9と図10では、レーザインサイジング加工を適用して作製したひき板12及び14を示す。
カラマツ材などの薬剤が注入しにくい樹種を使用する場合や、均一な難燃薬剤の注入を目的とする場合には、予め木材片にレーザインサイジング加工を行うことが好ましい。難燃処理層を構成する木材片61と81は、難燃薬剤を注入する前処理として前述のレーザインサイジング加工を行っている。
図9及び図10のひき板は、図7及び図8において木材片6及び8を用いたところを、木材片61及び81に変更した以外は、図7及び図8のひき板と同様の構成である。
図9及び図10に示すひき板12,14は、幅方向に接着することにより難燃薬剤の処理層を必要な部分に配置しているが、幅方向の接着を行わずに一枚のひき板から製造することも可能である。ひき板の一部に難燃薬剤を選択的に注入する方法としては、インサイジングを適用する方法を挙げることができる。
図11は、幅方向の接着を行わずに一枚のひき板から製造するひき板12の構成を示し、図12は、幅方向の接着を行わずに一枚のひき板から製造するひき板14の構成を示している。
難燃薬剤を注入する部分62や82に、予めレーザインサイジング加工を行ったあと、難燃薬剤を加圧注入することにより、耐火集成材を構成するひき板12,14を作製することができる。
いずれの方法で作製したひき板12,14であっても、難燃薬剤を注入した後、人工乾燥する。更に、その後、ひき板12,14は表面が平滑になるよう、また所定の厚さになるよう、プレーナーやモールダーを使用して切削加工を行う。
続いて準備されたひき板を組み合せ、表面に接着剤を塗布したのち加圧し積層接着する。使用する接着剤はひき板の幅方向の接着に用いる接着剤と同様に、耐熱性に優れたレゾルシノール系樹脂接着剤やメラミン樹脂接着剤などの熱硬化型接着剤を使用することが好ましい。このとき、難燃薬剤の種類に応じて接着剤を適宜選択することが好ましく、難燃薬剤と接着剤との好適な組み合わせは、ひき板の幅方向の接着の場合と同様である。
接着剤が硬化した後、所定の断面寸法に仕上げ加工を行い、本発明に係わる耐火集成材を製作することができる。
なお、図4に示す柱、図5に示す梁ともに、未処理層3を備えているが、未処理層3の部分を難燃薬剤注入層2としてもよい。但し、難燃薬剤の使用量の低減の観点からは、未処理層3を備えることが好ましい。
4.効果
本発明の耐火集成材を使用した建物は、火災が終了したのち主要構造部に使用している耐火集成材が燃え止まることにより、架構全体が崩壊する恐れはなく、一般の木造建築物に比べ安全性の高い建築物が提供できる。
また、本発明の耐火集成材は不燃材などの被覆を必要としないので、木材の外観を生かしつつ耐火性能を有する耐火集成材を提供することができる。
本発明の耐火集成材は、実質的には内部にのみ難燃薬剤を注入しているために、耐火集成材を構成する全てのひき板に難燃薬剤を注入する場合に比べ、難燃薬剤の使用量が削減でき、コストダウンが可能である。
水溶性の難燃薬剤は、高い吸湿性を有するので、部材の表面まで多量の難燃薬剤が注入された場合、多湿状態が続くと表面はべとつき、注入薬剤が析出するなどの問題が発生する。
これに対して、本発明の耐火集成材では、難燃薬剤の注入層は内部に構成されるため、表面に難燃薬剤が析出することはなく、耐久性や美観に優れた耐火集成材を提供することができる。
また、燃え止まりを目的として不燃材料などを使用する場合に比べ、本発明は、樹種など同一の原材料を使用して耐火集成材を製作することができるため、一般の集成材を製造するライン設備を利用して製作することが可能で、設備投資の必要が少なくコストダウンが可能である。
本発明の耐火集成材は耐火構造となり得るので、耐火建築物に適用できる。したがって、1時間の耐火構造となれば、4階建ての木造建築物を鋼材や石膏ボードを用いずに建築することも可能である。
以下では実施例により本発明を説明するが、本発明の耐火集成材構成の一例、及び製造方法の一例について述べるものであり、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
図13は、実施例1において、カラマツひき板(密度:380〜560kg/m)を原材料とした耐火集成材による柱の断面図を示したものである。耐火集成材を構成するひき板の厚さは全て25mmであり、ひき板を14枚用いて断面寸法35×35cmの角柱を作製した。
難燃薬剤を注入する部分には、炭酸ガスレーザにより穴径1.0mmの穿孔を12500ヶ所/mの加工密度でインサイジング加工した。
インサイジング加工を行ったひき板12,14は、カルバミルポリリン酸アンモニウムを主剤とする難燃薬剤(商品名:ノンネンOK−201、丸菱油化工業社製、この薬剤が注入された木材が輻射熱強度50kW/mでのコーンカロリーメータ試験(ISO−5660−1)試験で準不燃材料級の性能を有する難燃薬剤。)を減圧・加圧で注入し、人工乾燥した。このとき難燃薬剤注入層に注入された薬剤量は140kg/mであった。なお、ひき板12,14において、難燃薬剤を注入した部分の幅は、75mmであり、その外側に設けた難燃薬剤を注入しない部分の幅は25mmである。
次に、外側に難燃薬剤を注入していないひき板5を準備し、このひき板と、ひき板12、14とを図13に示すように組み合せ、レゾルシノール系樹脂接着剤を使用して積層接着し、耐火集成材を製作した。
したがって、得られた矩形の耐火集成材は、四面側とも、表面層の厚みが25mmで、難燃薬剤注入層の厚みは75mmである。
耐火集成材の柱の木口を不燃材料で被覆した試験体を作製し、耐火試験炉で加熱試験を行った。
試験体の加熱はISO−834−1の標準火災加熱温度曲線に従い、1時間の加熱試験を行った。加熱終了後、試験体の耐火集成材はそのまま耐火試験炉内に放置して観察を続けた。
試験体内部に設置した熱電対により内部温度の変化を測定した結果、試験体の中心部分は加熱終了後420分頃に最高温度105℃を測定したが、その後内部温度は常温まで低下した。
試験開始後24時間経過した時点で試験体を耐火試験炉から取り出し、残存断面の測定を行った。図14は燃え止まった試験体の残存断面図であり、図14において、部分16は、加熱試験により炭化焼損した試験体の外周部分を示す。
試験開始前における試験体の断面積が1225cmであったのに対して、表面から約44mmで燃え止まった試験体の残存部分17の断面積は約630cmであった。
このように、本発明に係わる耐火集成材は、加熱終了したのち集成材の内部に設けた難燃薬剤注入層により部材内部への炭化の進行を防ぐことが確認できた。
この実験において、このカラマツひき板からなる集成材の柱の中に、図15に示す位置に熱電対を設置し、加熱開始から、1時間の加熱試験を行い、その後、耐火試験炉内に放置したときの温度変化を調べた。その結果を図16に示す。
図16のグラフに示すように、25mm内部に入った位置に設置した熱電対(7)は、最大で680℃程度まで上昇しているが、75mm内部に設置された熱電対(9)は、最高でも110℃までしか上昇しなかった。中心部の熱電対(13)では、681分に最高温度の101.4℃まで上昇したが、その後減少に転じ、燃え止まった。
実施例1で用いた集成材の試験前の写真を図17に示し、試験後24時間経過した集成材の写真を図18に示し、図18の写真の集成材の断面を図19に示す。図19からも明らかなように、集成材の柱の周辺部は炭化しているが、内部には影響していないことがわかる。
このように、実施例1の耐火集成材は、1時間の耐火試験をクリアしているので、耐火構造となり得る。そのため、4階建ての建築物などにも適用し得る。
[比較例1]
実施例1において、難燃薬剤を注入して難燃薬剤注入層を形成したところを、難燃薬剤を注入せずに、30×30cmの集成材を作製し、試験体を準備した。
この試験体を用いて実施例1と同様の試験を行ったところ、1時間の加熱終了後も集成材内部への炭化の進行が止まらず、加熱開始から9時間後には、集成材は完全に燃焼した。この集成材について、図20に示す位置に熱電対を設置し、開始からその温度変化を測定した。結果を図21に示す。
熱電対(7)、(9)、(12)のいずれの位置でも加熱開始から9時間後には崩れ落ち、それ以降、温度を測定することができなかった。中心部の熱電対(12)でも、最終的に500℃を超える温度となっていた。
比較例1で用いた集成材の試験前の写真を図22に示し、試験後24時間経過した集成材の写真を図23に示す。図23に示すように、集成材は燃え尽きてしまっている。
難燃薬剤を注入した厚さ30mmのひき板について、ISO−5660−1に準拠するコーンカロリーメータ試験の結果を示すグラフである。 レーザインサイジングによって形成された穿孔の様子を示す図である。 レーザインサイジング装置の一例を示す図である。 本発明の耐火集成材による柱の一例を示す断面図である。 本発明の耐火集成材による梁の一例を示す断面図である。 本発明の耐火集成材を構成するひき板5の構成を示す図である。 本発明の耐火集成材を構成するひき板12の構成を示す図である。 本発明の耐火集成材を構成するひき板14の構成を示す図である。 本発明の耐火集成材を構成するひき板12であって、レーザインサイジング加工を行った木材片61によって構成した場合を示す図である。 本発明の耐火集成材を構成するひき板14であって、レーザインサイジング加工を行った木材片81によって構成した場合を示す図である。 幅方向の接着を行わずに一枚のひき板から製造するひき板12の構成を示す図である。 幅方向の接着を行わずに一枚のひき板から製造するひき板14の構成を示す図である。 実施例1における本発明の耐火集成材である試験体を示す断面図である。 実施例1において1時間耐火試験を行った後の試験体の残存断面図を示した図である。 実施例1において、集成材の柱の中に熱電対を設置した位置を説明する図である。 実施例1において、集成材の柱の中の各位置における温度変化を示すグラフである。 実施例1で用いた集成材の試験前の様子を示す写真である。 実施例1において、試験後24時間経過した集成材の様子を示す写真である。 図18の集成材の断面写真である。 比較例1において、集成材の柱の中に熱電対を設置した位置を説明する図である。 比較例1において、集成材の柱の中の各位置における温度変化を示すグラフである。 比較例1で用いた集成材の試験前の様子を示す写真である。 比較例1において、試験後24時間経過した集成材の様子を示す写真である。
符号の説明
1 表面層
2 難燃薬剤注入層
3 未処理層
4 床板
5,12,14 ひき板
6,8 難燃薬剤が注入された木材片
7,9 難燃薬剤が注入されていない木材片
10 幅はぎ接着部分
16 加熱試験により炭化焼損した試験体の外周部分
17 加熱試験により炭化しなかった部分
71,72 難燃薬剤が注入されていないひき板の外側部分
62 インサイジング加工によって難燃薬剤が注入された、ひき板の中央部分
61,81 レーザインサイジング加工を行い、難燃薬剤を注入した木材片
92 難燃薬剤が注入されていないひき板の中央部分

Claims (6)

  1. 難燃薬剤を実質的に含まない木材で構成された表面層と、該表面層に隣接した内側に、木材に難燃薬剤を注入処理した難燃薬剤注入層とを備え、
    前記難燃薬剤注入層における難燃薬剤の注入量の平均値が、固形分換算で70kg/m以上であることを特徴とする耐火集成材。
  2. 前記表面層の厚さは、外部からの加熱が終了したときに燃焼先端部分が該難燃薬剤注入層となるように調整されていることを特徴とする請求項1に記載の耐火集成材。
  3. 前記難燃薬剤注入層は、レーザインサイジング処理によって穿孔を形成し、該穿孔から難燃薬剤を注入して形成されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の耐火集成材。
  4. 前記穿孔の直径が、0.3〜2.0mmであることを特徴とする請求項3に記載の耐火集成材。
  5. 柱または梁であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の耐火集成材。
  6. 前記難燃薬剤は、木材に注入されたときに、輻射熱強度50kW/mでのコーンカロリーメータ試験(ISO−5660−1)で、建築基準法に定める準不燃材料級または不燃材料級の防火性能を示す薬剤であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の耐火集成材。
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