図1は、複数の軸のための駆動信号を伝搬する直巻アクチュエータを有するMEMSスキャナを示している。種々の軸に対しての機械的動作は、各軸の機械的共振に対して駆動信号周波数成分を適合させることによって確定される。
ビームスキャナあるいはビーム指向装置としてここで具現化されるMEMSスキャナ102は、シリコンダイにてエッチングあるいは形成される種々の構造によって構成されている。外側支持構造体104は、その他の実装機構(図示せず)に対してスキャナを固定するためのフレームとして機能し、駆動信号を受信するためのパッド(図示せず)及び前記アクチュエータに駆動信号を送信するためのトレースを含んでいる。支持構造体104はさらに、センサーに駆動電流を供給し制御装置に位置検出信号を送信するためのトレース及びパッドを含んでいる。
外側支持フレーム104は、トーションアーム108a及び108b上でジンバル106を支持する。従来通り、『ジンバル』及び『ジンバルリング』という用語はここでは同様の意味として用いられる。なお種々の特殊構造は、開口及び閉口端リング、及び選択した軸を中心として制御された動作を可能にするその他の非リング型構造を含むジンバルとして機能する。図に示すように、トーションアーム108a及び108bはフレーム104の縁部を通り過ぎて該フレームの内部へと延伸するタイプのものである。フレーム104の縁部を通り過ぎて延伸するために、トーションアーム108a及び108bは、エッチングされた溝によって、それぞれフレームの側面に沿って該フレームから隔てられている。
矢印111によって示すように、トーションアーム108a及び108bによって、ジンバルリング106は、軸110を中心とした回転を可能にする。発振器あるいはスキャンプレート112はジンバル106内に懸架され、例えばその上にミラー113が形成されたプレートの形式をとる。ここでの説明においては、『発振器』及び『スキャンプレート』という用語は、各種用途に応じて同義語として用いられる。トーションアーム114a及び114bは、スキャンプレート112をジンバルリング106に連結させ、矢印117によって示すように軸116を中心としたスキャンプレートの回転を可能にする。図において明らかなように、軸116はジンバルリング106に対して固定されており、支持フレーム104に対してジンバルリングに沿って回転する。
ミラー113の代用あるいはその追加として、スキャンプレート112上には1つまたは複数の電磁エネルギー源が形成されており、スキャンプレート112によって生じる動作が電磁エネルギーの1つまたは複数の光線を直接走査する。前記電磁エネルギー源は、ガンマ線、X線、紫外線、可視光線、赤外線、マイクロ波、あるいはラジオ波を含んだ広範囲の波長内のいずれか1つあるいはいくつかを放射する。紫外線、可視光線、および赤外線放射については、電磁エネルギー源(ここでは光源と呼ぶ)は、例えば従来式のエッジ放射型あるいは垂直キャビティ放射型レーザーなどの1つまたは複数のレーザーダイオード光源、1つまたは複数のLED、1つまたは複数の蛍光源、あるいはその他のタイプの放射体を含んでいる。
スキャンプレート112内の質量及び質量分布、及びトーションアーム114a及び114bの剛性は、軸116を中心としたスキャンプレート112の回転の共振周波数及び増幅率を確定する。同様に、ジンバルリング106、トーションアーム114a及び114b、及びスキャンプレート112(及びそれらの質量分布)から構成される組立体の結合質量、及びトーションアーム108a及び108bの剛性によって、軸110を中心としたスキャンプレート及びジンバル組立体の回転に対する共振周波数及び機械的増幅率(単に『増幅率』とも呼ばれる)が確定される。一般に、設計者は2つの各軸についての共振周波数及び増幅率の選択において幅広い選択の自由を有する。2軸(及び類似、多軸による)MEMSスキャナ102については、軸116を中心としたスキャンプレート112の回転の共振周波数は、軸110を中心とした組立体の回転の共振周波数よりも著しく高い度合いに選択される。
図1の例においてコイルとして具体化されているアクチュエータ118を駆動し、軸110を中心としてジンバルリング106及び懸架されたスキャンプレート112を回転させることができる。同様に、コイルとして具体化されるアクチュエータ120を駆動し、軸116を中心としてスキャンプレート112を回転させることもできる。コイル118及び120は、MEMSスキャナ102が124によって示されるように110及び116の両軸を横切る磁場において保持されると、アクチュエータとして機能する。コイル120がスキャンプレート112の共振周波数(あるいは適応した反応を示すいずれかの周波数)に対応する速さで周期的に駆動される信号を受信すると、スキャンプレート112の回転の振幅はその増幅率に比例して増加する。同じように、コイル118がスキャンプレート112、トーションアーム114a及び114b、及びジンバルリング106から構成される組立体の共振周波数に対応する速さで周期的に駆動される信号を受信すると、前記組立体は軸110を中心に振動し、機械的増幅率によって振幅率が大きくなる。例えれば、各共振周波数は各信号を受信するために調節されたレシーバとして機能する。
その他の実施の形態において、MEMS部材の1つまたは複数の調波に対応する駆動信号を提供するのが望ましい。さらに、より複雑な波形を用いて、MEMS部材がその範囲を超えるような所望の速度プロファイルを実現することができる。
図1のMEMSスキャナ102において、コイル118及び120は直列に配線される。また、あるいはコイル118及び120は並列に配線することができる。いずれにしても、1つの実施の形態に基づいて、各コイルが反応し、その関連部材の共振特性に基づいて各素子を駆動する。続いて両軸を駆動するための単一信号が、リード線122a及び122bを経由してコイルに供給される。前記単一信号がシステムの各共振周波数に等しい周波数成分を含んでいる場合、ジンバル106及びスキャンプレート112は、それらの固有特性共振周波数に対して優先的に応答する。いくつかのシステムにおいて、アクチュエータは、オクターブロールオフあたり特徴的な6dBあるいはそれ以上で応答する。従って、各軸の間で共振周波数を十分に分離することによって、各回転軸もその共振周波数のみで実質的に駆動される。
本発明に基づくさらに他の実施の形態において、スキャンプレート、ジンバルリング等は、共振せずに駆動される。図16〜20においてより詳細に説明されているように、広範囲の周波数に対して部材における適度な動作が引き起こされる。従って、ここで用いられる共振という用語は、一連の周波数に対して生じ、通常単一共振周波数においてピークとなる共振応答を指す簡単明瞭な表現である。
図1のアクチュエータは、作動して変動磁場を発生させる。それらは各回転軸110及び116を横切る磁場内に懸架されている。図1の例は、実質的に装置の名目上の表面にある横断磁場Bを示している。矢印124によってその軸が示されている磁場Bは、電磁石あるいは永久磁石の種々の配置を用いて発生させられる。図2A〜2Eは、磁石の可能な配置のいくつかを示しており、それぞれ図1のA―A’に沿って得られた断面図として示されている。矢印124の方向によって示されている磁場Bの方向は変化する。その磁場の変化は、種々の駆動信号に対して所望の応答を設定するなどの望ましい操作特性を実現し、あるいは望ましくない軸あるいはモードにおける応答を最小化するなどの望ましくない特性を抑えるためである。
図2Aにおいて、磁石202a及び202bは、MEMSダイ102を挟んで互いに異なる磁極が向かい合って位置づけられている。図2Bにおいて、磁石202a及び202bの遠方の磁極が保持器204によって連結されている。保持器204は、好ましくは例えば鋼鉄などのような高い透磁率、高い飽和率を有する材料によって構成される。高透磁率、高飽和率の保持器は、各磁石周辺のその反対側の面に対する漏れ磁場を低減することによって、磁石202a及び202bの向かい合った磁極間への磁場の集中を補助する。図2Cにおいては、磁場は単一磁石202によって発生させられる。前記磁場は、対向する磁極片206a及び206bによってMEMSダイ102全体にわたって集中させられる。また磁極片206a及び206bは、好ましくは鋼鉄などの高い透磁率、高い飽和率を有する材料によって形成される。図2Dは、MEMSダイ102全体にわたる漏れ磁場を方向づける単一磁石202の使用例を示している。図2Eは、MEMS組立体の後部に形成される単一磁石を示している。MEMSダイ102はスペーサ208に結合され、回転部品の面外での回転を可能にするキャビティ210を形成する。磁石202はスペーサ208の後部に形成される。スペーサ208は、鋼鉄などの強磁性材料及びシリコンあるいはガラスなどの非強磁性材料を含んだ複数の材料によって形成されてもよい。
図3Aは、2つの回転軸110及び116を有するMEMSスキャナ102の他のもう1つの実施の形態を示している。図3のMEMSスキャナにおいて、単一組である2軸コンプライアントサポートアーム302a及び302bはスキャンプレート112を支持し、別々の組であるトーションアーム108a、b及び114a、bに代わって使用される。従って、分離したジンバルリング106は必要ではなくなる。
スキャンプレート112の共振周波数及び増幅率は、各軸を中心に異なる質量を配分することによって、そしてサポートアーム302a及び302bが各軸において異なった捻り剛性を有するように設計することによって、軸110及び116の各軸において独立的に選択されてもよい。図3の例について、スキャンプレート112は、軸116を中心とした回転に対しては比較的高い共振周波数を有し、軸110を中心とした回転に対してはやや低い共振周波数を有している。
ミラー113は、図3Aの具体的な実施の形態としてベアシリコンが反射面として用いられているので、点線で示されている。従ってミラーのエッジ自体は存在しないが、シリコン表面に影響を与える光線の範囲によって決まるミラー領域が存在する。この画定されたエッジは、特定の光線の配置、形状、及びサイズに基づいて、そして前記光線に対するミラー113の瞬間角度に基づいて変化する。前記の有効なミラー表面は、ミラーが光線に向かって回転し、より通常な角度を形成する場合は円形により近い形状となり、ミラーが光線から遠ざかって回転する場合はより楕円形に近い形状となる。
スキャンプレート112は、ミラー113の周囲に配置された単一駆動コイル202を含んでいる。前記駆動コイル202は、リード線122a及び122bによって通電される。リード線122a及び122bが別々のサポートアーム上に担持されている状態が示されているが、これらを単一のアーム上に担持させることも可能である。リード線122a及び122bは複数の周波数成分を有する駆動信号に結び付けられる。続いて駆動コイル202は各周波数成分を受信する。駆動コイル202は、軸110を中心とした回転の共振周波数に等しい周波数成分を受信すると、スキャンプレート112を駆動し、その共振周波数で軸110を中心として回転させる。同様に駆動コイル202が、軸116の共振周波数に等しい周波数成分を受信すると、スキャンプレート112を駆動し、その共振周波数で軸116を中心として振動させる。このようにスキャンプレート112は、異なる周波数で2つの軸を中心として実質的に独立して駆動される。
図3Aの具体的な実施の形態について、軸116の周囲の共振(水平)走査周波数は2.6KHzである。軸110の周囲の共振(垂直)走査周波数は0.8kHzである。前記各水平及び垂直走査角度は9.4°及び0.85°である。垂直及び水平走査間には少量のクロストークが存在することがある。例えば、500〜1500の各増幅係数については、垂直駆動は水平駆動に結びつき、結果として上から下までに約3ピクセルの水平ピクセルオフセットが生じる。望まれる場合、画素クロックを変化させる、画像の再マッピングを行う等の方法によってこれを調整する。同様に、水平駆動を垂直駆動に結び付けても良く、その場合、約0.7ピクセルの垂直ピクセルオフセットが生じる。これは、屈曲対称性を維持し、オフセットに対抗する非対称性を形成することによって、あるいは例えば画像を再マッピングすることによって調整することができる。以下に述べるように、補正ミラーを導入することで垂直動作をさらに補正することができる。前記補正ミラーは、水平、垂直駆動結合に加えてラスターピンチも調整できるように設計される。
さらに図3AのMEMSスキャナはセンスコイル303を含んでおり、駆動コイル202が前記センスコイル303に部分的に重なっている。前記センスコイルはリード線304a及び304bに接続されている。図3B及び3Cに示されているように、前記センスコイルは駆動コイル202の上または下に形成されており、駆動コイルの第1金属層と第2金属層とは誘電体層によって分離されている。さらに第1金属層は第2金属層のためのパスアンダーを形成し、第2金属層は第1金属層のためのパスオーバーを形成する。センスコイルには、その磁場を通じた動作によって生じる誘導電流が印加される。前記電流または電圧が感知され、それによってスキャンプレート及びミラーの速度または位置が確定される。
図3B及び3Cにそれぞれ示される特定の実施の形態の詳細部分306及び308を参照すると、浅黒いトレースによって示される金属層1は、薄灰色領域によって示される1000オングストロームのTiW、2400オングストロームの金、厚さ300ミクロンのシリコン上の200オングストロームのTiWから成る蒸着金属によって構成されている。スキャンプレート及びサポートアームシリコンは、時間調節されたディープ反応性イオンエッチングによって選択的に裏面エッチング処理され、80ミクロンの厚さになり、剛性を維持するための補強リブを形成しつつ重量を低減させる。誘電体層(図示せず)は、金属層1上に形成される。金属1の金属2への結合は、誘電体層の適切な位置に孔を残すことによって形成される。明るい方のトレースによって示される金属層2は、厚さ10ミクロンの金によって構成される。金属層2は誘電体層上にメッキ処理される。
その経路の大部分が駆動コイル202の下側に位置するセンスコイル303は、金属1(金)にて形成され、21と1/2の巻数で構成される。前記センスコイルトレースは、幅が約12.5ミクロンで10ミクロンの間隔をおいて配置されており、1.5キロオームのコイル抵抗値をつくりだす。センスコイルは、トレース304bを通じてスキャンプレート112内に入り、図3Bに示されるようにパスアンダー310にて終端する。金属2ジャンパ312は、パスアンダー310をセンスコイル303の内端314と接続させる。センスコイルは反時計方向にらせん状に上昇し、図3Cに示されるようにトレース304aでスキャンプレート112から抜け出る。反時計方向の上昇についての選択は任意であり、代わりに時計方向の上昇も選択可能である。その場合は、感知された位相も180度異なる。
その経路の殆どがセンスコイル303上に位置する駆動コイル202は、金属2にて形成され、9と1/2の巻き数で構成される。前記駆動コイルトレースは、幅が約28ミクロンで10ミクロンの間隔を置いて配置され、12オームのコイル抵抗値をつくりだす。図3Aにおいて示されるように、前記駆動コイルはトレース122bを通じてスキャンプレート112内に入り込む。トレース122bは金属1パスアンダー316に接続し、該パスアンダー316は駆動コイル202の内端318に接続する。前記駆動コイルは時計方向にらせん状に上昇し、図3Cにおいて示されるようにトレース122aにてスキャンプレート112を抜け出る。前記センスコイルと同様に、時計方向の上昇の選択は任意である。
1つの特定の実施の形態において、スキャンプレート112は、0.21テスラの磁界強度で軸116の右手30度の方向の磁場に懸架される。これらの条件下において、前記センスコイルは、スキャンプレートがその設計された角度及び周波数にて駆動された場合、80mVピークの水平方向起電力(EMF)及び2mVピークの垂直方向EMFを生成する。場合によっては、応用装置に準じた磁場の所望のベクトル成分に基づいて、その他の磁場角度が用いられる。
図3A、3B、及び3CのMEMSスキャナのセンスコイルを両方の軸における動作の検知のために用いることも可能であるが、応用装置によってはピエゾ抵抗、光検知器、あるいはその他のセンサーを検知動作に加えるのも望ましい。
図1は、内側のスキャンプレート及びジンバルリングの両方に形成された一組の直列接続駆動コイルの例を示しており、図3Aは、内側スキャンプレート上の単一駆動コイルを示している。一方図4Aは、内側スキャンプレート112をトーションアーム114a及び114bを介した機械的結合を通じて“輪になる”ように配置した、ジンバルリング106上の単一駆動コイル202の例を示している。駆動コイル202は、ジンバルリング106及び内側スキャンプレート112から構成される組立体を、軸110を中心に直接回転させる。この形態で、結果として伴う低速走査のための駆動信号は、共振信号かあるいはその他の任意の形状をとってもよい。いくつかの実施の形態において、低速走査は、開始位置に素早く立ち戻る動作と交互に、軸の周囲を修正鋸歯状に進行する動作で行われる。また駆動信号が内側スキャンプレート112の共振周波数で変調された成分をも含んでいる場合は、ジンバル106のごく僅かな機械的応答が、トーションアーム114a及び114b全体にわたって送られ、任意のサスペンション402a及び402bを通じてスキャンプレート112へと伝達される。内側スキャンプレートの共振応答によって、伝達された動作はシステムによって増幅され、結果的に内側スキャンプレートの主走査軸116を中心とした共振回転を生じさせる。ミラー113が内側スキャンプレート112上に形成されている場合、結果として伴う回転動作を、二次元視野を横切った方向に光線を方向付けるために利用する。
軸110及び116は、お互いに対して任意の角度で配置される。図4Aの例(及びその他の以下の例)においては、お互いに対して90度の角度で方向付けられた“ネスト化した”走査質量を有していることが示されているが、0〜90度の範囲のその他の角度を利用することも可能である。発明者は、内側スキャンプレート112の共振周波数における駆動インパルスが、色々な角度で極めて効果的に結び付くことを発見した。
ジンバル支持アーム108a及び108bはサーペンタイン形状を有しているのが示されているが、直線状、分割した形状、複合形式、その他の形状のトーションアームを代わりに用いることも可能である。図4Aのスキャナは、そのトーションアームのいずれかあるいは全てに、位置を測定するためのピエゾ抵抗センサーを含んでいる。
図4Aの内側スキャンプレート112は、サスペンションによって担持されているのが示されている。前記サスペンションは、トーションアーム114a、114b及び懸架構造体112の間に回転トルクを伝達し、同時に前記懸架構造体に制御した動的変形を加える。いくつかの応用装置、特に内側スキャンプレートがミラー113のための基盤を形成している応用装置においては、内側スキャンプレート112上に最小限の動的変形を加えることが有効であり、これによって光学的歪みを最小限に抑えるためにミラーを可能な限り平坦に維持する。
図4Aによって表される特定の実施の形態において、サスペンション402aは、3つの位置で内側スキャンプレート112に結び付けられているサスペンションビーム403aを含んでいる。図において示されるように、サスペンション402aはサスペンションビーム403a、軸接続部404a、及びトルクを内側スキャンプレート112に伝達する2つの横方向接続部405a及び405bを含んでいる。同様にサスペンション402bは、サスペンションビーム403b、軸接続部404b、及びトルクを内側スキャンプレート112に伝達する2つの横方向接続部405c及び405dを含んでいる。図4Aの1つの特定の実施の形態の例において、軸接続部404a及び404bは、トーションアーム114a及び114bよりもその断面が小さい。これによって、軸接続部404a及び404bが内側スキャンプレート112と接続する位置におけるトルク集中の度合いが制限され、一方で、動作の横方向あるいは励起モードが低減される。
図4Aにおいて示される特定の配置においては別々のサスペンションが含まれ、その各サスペンションは内側スキャンプレート112につながる3つの別個の接続部を有しているが、実施の形態の範囲はその応用装置の形態に基づいて、融通性を有する。例えば、軸接続部404はサイズを大きくするか、あるいは完全に取り除いてしまってもよい。個々の接続部の数を増やすことも可能である。また、あるいはサスペンションビームとスキャンプレート間の接続部が、サスペンションビームと内側スキャンプレート間の厚みの度合いによって決まるコンプライアンスと連続して形成されていてもよい。連続したサスペンション接続部においては、溝の幅も可変であり、サスペンションビームと内側スキャンプレート間の間隔も可変である構造を形成することによって可変コンプライアンスが構成される。前記2つの例に加えて、非連続サスペンション素子の数を増やすことも可能である。また、あるいは単一サスペンションが内側スキャンプレート112の周囲に連続構造体を形成してもよい。また、あるいは2つ以上の個別サスペンション、例えば各トーションアーム及びスキャンプレート間の2つのサスペンションビームなどを用いることも可能である。さらに、サスペンションを、ジンバルリング106及び外側トーションアーム108a、bの間に、及び/あるいは複合ネスト化スキャンプレートなどへの追加位置に形成することも可能である。
図4Bは、スキャンプレートの中央に加えられるトルクによって駆動される従来型MEMSスキャンプレートの動的変形の側面図である。スキャンプレート112が最大に変形している状態が示されている。理解を容易にするために変形の度合いは誇大に表現されている。図示されているようにトルク408は、主に捻りバネ114(図示せず)によって逆時計方向に印加される。最大に変形した状態において、軸116におけるトーションアームからのトルクによってスキャンプレートは逆時計方向に回転し、同時に分配された慣性負荷によってスキャンプレートの端部はスキャンプレートの中央部に遅れて進行するようになる。なお、図4Aの例のようにスキャンプレートが1つまたは複数のアクチュエータによってトーションアームを通じて駆動される応用装置については、トルク408はスキャンプレートあるいはサスペンション自体が駆動される応用装置に比べて僅かに増加するが、しかし共振走査については、駆動力の大部分は、スプリング(トーションアーム)に蓄えられるエネルギーによって発生する。
図4Cは、サスペンションを用いることによって実現した、スキャンプレートにおける動的変形の低減を示すMEMSスキャナの側面図である。スキャンプレート112が軸116を中心に逆時計方向に駆動され、最大に変形している状態が示されている。横方向接続部405(図示せず)は、接線力410a及び410bによって示されるようにスキャンプレートを逆時計方向に駆動する。さらに、軸接続部404(図示せず)は、トルク408によって示されるように、スキャンプレートを軸116で逆時計方向に駆動する。サスペンションビーム403(図示せず)は、左右両端部がスキャンプレートに対して時計方向に回転するようにそれ自体が動的に変形するので(図4Bの懸架されないスキャンプレート112の変形と同様の形態で)、トルク412a及び412bが、各横方向接続部405a、b及び405c、d(図示せず)を通じて、スキャンプレートの端部にさらに印加される。トルク408及び412aの結合効果によってスキャンプレート112の左側は下方に駆動され、同時にトルク408及び412bの結合効果によってスキャンプレート112の右側が上方に向けて駆動される傾向がある。これらの効果によって、スキャンプレート112の各中間部分が平坦に維持される。従って、サスペンションの使用によって、図4Bの著しく変形したスキャンプレートによって示される慣性ラグに関連する変形を、部分的にあるいは実質的に克服することができる。
上に示したように、共振システムの駆動力の大部分はトーションアームに蓄えられたエネルギーから生じるので、サスペンションの使用は、直接駆動されるプレート用に、及びトーションアームを通じて駆動されるプレート用に、スキャンプレートを平坦に維持するために利用される。
ここまで示した例においては可動コイル磁気駆動アクチュエータを用いてきたが、移動磁石、電子容量性、圧電性、衝撃モータ、流動体等を含む他のタイプの作動技術を同様に複合し、多重軸における動作を発生させることも可能である。さらにここで示された原理を、トーションアームを介した機械的結合を通じて、単一軸スキャナの駆動に適用することも可能である。図5は、トーションアームを介して積層型圧電アクチュエータに機械的に結合される多重軸スキャナの例である。ジンバル106は、トーションアーム108a及び108bによって懸架される。トーションアーム108aはアンカーパッド502aにて終端し、アンカーパッド502aは固定基板504に取り付けられる。トーションアーム108bは駆動パッド502bにて終端し、駆動パッド502bは圧電スタック506及び506’に結合される。圧電スタック506及び506’は固定基板508上に取り付けられ、それらの下端が電路510a及び510bによってそれぞれ駆動信号と結合され、そしてそれらの上端が電路(電路は図示せず)によって直列結合される。
図5の例の代替例として、アンカーパッド502aを、第2圧電駆動スタック一組と結合させることによって駆動パッド内部に形成し、これによって108a及び108bの両トーションアームを通じて前記組立体を駆動する。
圧電スタック506及び506’は、電路510aの電圧を電路510bの電圧よりも高く設定した場合、前記電位によってスタック506aが拡張し、506bが縮小するように構成されてもよい。電路510bの電圧が電路510aの電圧よりも高く設定された場合、前記電位と反対の電位によってスタック506bが拡張し、スタック506aが縮小する。交互周期信号によって電路510a及び510bに電圧を印加することによって、圧電スタック506a及び506bは互いに向かい合って交互に拡大縮小し、これによって駆動パッド502bの僅かな捻れ動作を引き起こす。代替的構成において、圧電スタック506a及び506bは、それぞれ一組のリード線を通じて独立的に駆動される。
駆動パッド502bの前記僅かな捻れ動作は、捻れ応力としてトーションアーム114bを通じてジンバル106に伝達される。所定の駆動周波数については、ジンバルリング106(及びそこから懸架される他の構造体)の動作の振幅は、駆動信号の電圧、及び前記駆動周波数における回転質量の機械的増幅率に比例する(必ずしも線形比例とは限らない)。ジンバルリング(及び懸架構造体)の共振周波数における、あるいはその近傍における駆動周波数成分については、駆動パッド502bの回転は、ジンバルリング106の比較的大きな回転に相当する駆動パッドの少量の回転分、増幅される。オフ共振駆動周波数成分については、ジンバルリングの回転の振幅は低減され、ある特定の周波数帯域においては反転する。
ジンバルリング112は、前記システムに非対称性を導入することによって周期的に振動させられる。前記非対称性には、1つまたは複数の回転軸を中心とした質量非対称性(従って各プレートあるいはジンバルに僅かな曲げモードを導入する)、回転軸非対称性(例えば軸116は軸110に対して完全に直角ではない)、あるいは駆動非対称性が含まれる。
駆動の非対称は、一つ以上の同相周波数成分を圧電スタック506及び506’に重ね合わせることにより引き起こされる。このような駆動の非対称によって、駆動パッド502bがわずかに上下周期運動することになる。この上下周期運動(駆動パッド502bの上下周期運動と同じもしくは反対の動きを示す)がジンバルリング106に伝わり、ジンバルリング106は軸116を中心にわずかに回転する。ジンバルリング106の軸116を中心とした回転が増幅されると、(トーションアーム514a、514b及び内部スキャンプレート512を含む構成部品を備えた)ジンバルリング112の機械的増幅因子として機能し、ジンバルリング112が軸116を中心として回転することになる。
図に示すように、さらに機械的結合は、追加のスキャンプレートに及ぶ。スキャンプレート112は、トーションアーム514a、514bによってスキャンプレート112からつるされた内部スキャンプレート512のジンバルリングの働きをしている。図5に示すように、内部スキャンプレート512は、軸110を中心に回転するよう形成されている。駆動信号通電回路510a、510bがスキャンプレート512の共振周波数と等しい周波数成分をさらに備えている場合、内部スキャンプレート512の機械的増幅因子が回転をもたらす伝達周波数で軸110を中心にスキャンプレート512が回転駆動されるように、そこから発生する駆動パッド502bのわずかなねじれが、トーションアーム108b、ジンバルリング106、トーションアーム114a、114b、スキャンプレート112、トーションアーム514a、514bを介して、スキャンプレート512に伝達される。
本実施の形態においては、スキャンプレート512上にミラー113が形成されている。このような装置の活用例として、二次元ビーム走査システムにおけるラスターピンチ補正ミラーの作成が挙げられる。駆動信号の各種周波数成分間の位相関係及び振幅が制御可能である。ラスターピンチ補正システムにおいて、内部スキャンプレート512は、スキャンプレート112の共振周波数の2倍となる共振周波数を有するように構成されている。その位相と振幅は、スキャンプレート112が走査範囲を縦走する間は、ジンバル106の垂直走査動作と正反対、そして実質的に等しい垂直走査動作を繰り返すように、またスキャンプレート112が縦走を終えると、ジンバル106と同方向になるように選択される。従って、ミラー113は、実質的にラスターピンチを除外し、左から右、及び右から左への走査方向と実質的に平行する軌道を持つビームを偏向させる。
図に示すように、スキャンプレートの追加値は、追加でネストされたアクチュエータの形成に付随する追加費用、収率損失、及び電気損失を被ることなく、ネスト化して駆動される。一つ考慮すべきなのは、一連のスキャンプレートは、中板の少なくとも最小限の共振反応を介して駆動され、最後に駆動されたプレートの動作の主軸で示されることである。
あるいは、スキャンプレート112、512を排除して、1軸スキャンプレート106を駆動するシステムを使用しても良い。好ましくは、本発明の範囲内で、図1、3、4、及び5で示す実施の形態の各種組み合わせを構成しても良い。
上述したように、本発明にかかわる実施の形態の多くを作動させる駆動信号は、波形の組み合わせに関与している。機械的増幅因子、共振周波数、及びMEMS装置の各部位に作用する駆動信号を選択することにより、多様な設計が可能となる。図6は、複数の振動要素を駆動する波形の例を示している。波形602は、該当する共振高周波数で第1振動部材を駆動する高周波信号である。波形604は、該当する共振低周波数で第2振動部材を駆動する低周波信号である。波形606は、波形602と波形604の信号を組み合わせたものである。波形606に該当する信号は、アクチュエータまたは本発明にかかわるMEMSスキャナのアクチュエータに送信される。よって、各周波数成分602、604は、その共振周波数及び増幅因子に従って、特定の振動要素を作動させる。
波形608は、非共振の形でスキャナ部材を駆動させる非共振信号である。波形610は、波形602と波形608の信号を組み合わせたものである。波形610に相当する信号は、本発明にかかわるMEMSスキャナに送信される。信号602に相当する共振周波数を有するスキャナ部材の増幅因子が十分に高い場合、スキャナ部材は異なる周波数の信号と判断し受け入れないであろう。反対に、スキャナ部材が低い増幅因子を有していれば、広範囲の信号を受信する傾向にある。例えば、波形610の信号成分602がネストされた高増幅因子の内部スキャンプレートを駆動する間、波形610の信号成分608は、順次走査と、比較的多数のアクチュエータのコイル巻線を有する低増幅因子ジンバルリングのフライバックを生じさせる。
図7Aは、個々の信号成分を、各信号成分に優先的に対応する成分を有するMEMSスキャナを駆動する駆動信号に組み合わせる信号発生器のブロック図である。X軸方向の波形発生器702aとY軸方向の波形発生器702bそれぞれが、X軸及びY軸周りを移動するようにMEMSスキャナを駆動する各信号を生成する。こうした動作は、適用にふさわしい回転、並進、もしくは他のモードで行われる。図6に示した波形は、例として挙げられている。例えば、波形発生器702aが波形602を、波形発生器702bが波形604をそれぞれ生成する場合、それらはマルチプレクサ(MUX)706で組み合わされ、合成波形606が生成される。あるいは、波形発生器702bは、波形608のような非正弦信号を生成する。この場合、MUX706は、波形発生器702a及び702bで生成される波形を組み合わせ、波形610のような信号を生成する。この合成波形は、図1で示した直列コイル118、120や、図3A、3B、3C、及び4で示した結合駆動コイル202や、図5で示した圧電スタック506、506’等を備えるMEMSアクチュエータ708、または他のタイプのアクチュエータへ送信される。個別の波形発生器702a、702bの代替として、統合された装置が、個々の成分(例えば、波形602、604)が露出されないように、または事実上露出されるように、駆動波形を生成しても良い。
図7Bは、統合X-Y波形発生器702と、コントローラ712に接続されている行動/位置検出器710とを備えたMEMSの駆動ブロック図を示している。コントローラ712は、X-Y波形発生器702に波形パラメータを発する。X-Y波形発生器702は、駆動波形を作成し、この駆動波形を駆動回路122を介してMEMSスキャナ102へ送信する。物理的な位置及び/または動作は感知され、MEMSスキャナ102から感知回路304を介して行動/位置受信機710へ送信される。行動/位置受信機710は、MEMSスキャナの動作及び/または位置をコントローラ712に通知する。MEMSスキャナが所望の行動を行うか否かによって、コントローラは、X-Y波形発生器へ送られる波形パラメータを維持もしくは修正をする。コントローラ712は、光源駆動714を指示して、MEMSスキャナ102のミラーの実際の位置を考慮に入れて画像を再マッピングするように、光源716の連続発光パターンを変化させる。光源716は、MEMSスキャンプレート112のミラーによってスキャンプレートの感知された位置に相当する視野へ偏向されるビーム718を放射する。
従来の磁気駆動設計は可動コイル型であったが、ここで述べられる原理を可動磁石MEMS設計に適用することも可能である。図8は、ミラーのひずみを軽減するサスペンションを備えた1軸可動磁石MEMSスキャナを示している。スキャンプレート112は、その表面にミラー113を備えている。スキャンプレート112は、交互にアンカーパッド502a、502bでそれぞれ終端処理されるトーションアーム114a、114bからつるされている。アンカーパッド502a、502bはそれぞれ基板504a(図示せず)及び504bに取り付けられている。永久磁石または電磁石である駆動磁石802は、図で示すように付着点804a、804bでスキャナアセンブリに取り付けられている。駆動磁石802のN極、S極はそれぞれ、図で示すように磁石の右側、左側に位置合わせされている。
アクチュエータコイル806は、表示した中心線上で、且つスキャナ102の下に配置されている。あるいは、アクチュエータコイル806は、面内やスキャナ102の上などの異なった位置に配置しても良い。アクチュエータコイル806は、リード線122a、122bで加圧され、可変磁場B領域808を形成する。電磁石806が加圧され北方向に磁気B領域808が形成されると、駆動磁石802のS極は引き付けられ、駆動磁石802のN極ははね返され、スキャナ102は軸116を中心に反時計回りに回転する。反対に、電磁石806が磁場808を南方向に駆動すると、駆動磁石802のS極ははね返され、駆動磁石802のN極は引き付けられ、スキャナ102は軸116を中心に時計回りに回転する。
駆動磁石802は、図で示すように付着点804a、804bでスキャナアセンブリに付着する。可動磁石アクチュエータとねじりバネエネルギーストレージとは協調し、駆動磁石802とトーションアーム114a、114bとが直接そこに取り付けられていれば、ミラー113が変形してしまう程大量のトルクを生成することができる。その代わりとして、駆動磁石802とトーションアーム114a、114bとのサスペンションビーム403a、403bへの取り付けは、図4B、4Cに示したようにミラー表面113をフラットに保ちつつ、歪曲をサスペンション成分のみにとどめる。サスペンションビーム403a、403bは多様な配列で振動塊112に結合してもよい。本実施の形態において示すように、サスペンションビーム403を3箇所で振動塊112に結合するのが最良と思われる。有限要素解析により最適な結合ポイントが選択することができる。
トーションアーム対から振動塊112をつるす代わりに、各種片持梁や他の設計などを代用しても良い。
図9は、2軸MEMSスキャナ102の可動磁石の実施形態を示している。図8、5で示したMEMSスキャナの場合と同様に、アンカーパッド502a、502bによりアセンブリは装着位置に取り付けられている。そこから延びるトーションアーム108a、108bがジンバルリング106を支持している。ジンバルリング106は、言い換えると、サスペンション402a、402bにそれぞれ接続しているトーションアーム114a、114bのアンカーとして機能している。サスペンション402a、402bは、ミラー表面113が上に配置された振動塊112に接続している。
駆動磁石802a、802bは、駆動力を供給すべくジンバルリング106に付着してもよい。駆動磁石802aは、ジンバルリングの底面に点線で示した取り付け位置804a、804dでジンバルリング106に取り付けられている。同様に、駆動磁石802bは、取り付け位置804b、804cでジンバルリング106に取り付けられている。本実施の形態において示すように、駆動磁石802a、802bのN極とS極は、互いに逆並列に配置するのが望ましいであろう。こうした配列だと、軸110を中心にアセンブリを回転させる駆動磁石に拮抗する力を単一のアクチュエータが発することが可能である。
図9に示す可動磁石振動アセンブリは、例えば、図で示したようにMEMSスキャナの平面下に配置されている電磁アクチュエータ806により駆動される。当業者間で周知のように、電磁石806は他の位置に配置することも可能である。電磁石806は、リード線304a、304bを介して可変磁場B領域808を形成するよう駆動される。電磁石806が北方向に可変磁場808を形成するよう駆動されると、駆動磁石802aは引き付けられ、一方、駆動磁石802bははね返される。これにより、軸110を中心に反時計回り方向のねじれの力が発生し、スキャンプレートを反時計回りに回転させる。反対に、可変磁場808が南方向に駆動されると、駆動磁石802aははね返され、駆動磁石802bは引き付けられ、軸110を中心に時計回り方向の回転を発生させる。
各種波形は、軸110周りの回転駆動に使用される。例えば、適切な周波数を選択することにより、図6の波形604のような正弦波形が、軸110を中心に共振回転を発生させる。他の実施形態においては、図6の波形608のようなのこぎり波に近似した乱れた波形が、非正弦で非共振の運動を発生させる。
上述したように、スキャンプレート112は、トーションアーム114a、114bによりジンバルリング106からつるされている。他の実施例同様、スキャンプレート112の質量分布、及びトーションアーム114a、114bの剛性により、スキャンプレート112の共振周波数と機械的増幅因子が決定される。他の実施例同様、電磁石806は、複数の周波数成分からなる合成波形で駆動される。
図9の実施例で注目すべきは、駆動磁石802a、802bの配置が非対称である。駆動磁石802aは、(図中の)外側の位置804dに遠端を、(図中の)内側の位置804aに近端を取り付けている。非対称の駆動磁石802bが、逆に、外側の位置804bに近端を、内側の位置804cに遠端を取り付けている。こうした駆動の非対称により、ジンバルリング106は軸116を中心にわずかに回転する。
可変B領域808が、スキャンプレート112の共振周波数と同等もしくはそれに近い周波数を有する周波数成分で駆動される場合、スキャンプレート112は共振して、軸116を中心に揺動駆動される。図4、5に示すMEMS装置と同様に、軸116を中心としたジンバルリング106のわずかなねじれは、スキャンプレート112の共振システムにより増幅され、トーションアーム114a、114bを介してねじれの力を発生させる。総体的にジンバルリング106のねじれがわずかであったとしても、駆動回転力及びトーションアーム114a、114bに蓄積されたエネルギーから起こる回転量はかなりの量となり、スキャンプレート112に伝送される。スキャンプレート、つまりはミラー表面113を変形させるこうしたねじれの力の傾向を低減するため、サスペンション402a、402bはそれぞれスキャンプレート112とトーションアーム114a、114bの間に差し挟まれる。
従って、振動成分の共振特性に基づいて2軸以上の動きを発生させるため、波形606または610などの合成駆動信号が、リード線304a、304bを介して送られる。
上述のように、回転軸の非対称及び/または質量分布の非対称を含む1つ以上の非対称は、スキャンプレート112の駆動回転に代案としては、もしくは追加的に使用することができる。
図9に示す共振駆動システムの代わりに、各種振動成分それぞれが、駆動磁石の配置によって直接駆動されることも可能である。
ここに記載されている他の実施例同様、コイル806のいずれかの方向のDCバイアス電流は、被駆動部材(すなわち、図9の実施例におけるジンバルリング106など)の回転の振幅を、DCバイアスの向きによっては一方もしくは他方の向きに変動させる傾向にある。この影響は、こうしたシステムの比較的高い駆動回転量によって、特に磁気駆動に顕著である。こうしたDCバイアス電流は、ミラー103が向けられる公称方向を変えたり調整したりするのに使用される。これは、例えば、走査したビームディスプレイの射出瞳位置を変更したり、走査したビーム画像取得装置の視野をパンしたりするのに有用である。
また、図9は、2軸、2体系スキャナ(すなわち、単一のスキャナプレートと単一のジンバルリング)を示しており、可動磁石設計は、2軸よりも1軸の方が、同様に2体系よりも1体系を適用する方が手軽であることは周知の事実である。
先に述べたように、ここに記載される原則は、磁性、非磁性を問わず、各種MEMS駆動システムに適用することができる。例えば、電気容量性駆動パッドや電気容量性相互嵌合アームは、先の実施例で述べた駆動磁石や電磁石の代わりに用いることができる。あるいは、熱的、流体的、または他の作動メカニズムが、本発明の目的の範囲を保持しつつ、代用されることも可能である。
ここに述べられるMEMSの様々な実施の形態は、走査ビーム画像取得装置、走査ビームディスプレイ、レーザープリンタ画像システム、またその他の用途における光ビームを走査するのに採用される。図10は、走査ビーム画像取得装置1002の簡略ブロック図である。発光体716は、光718の第1ビームを形成する。ミラーを形成し備えたスキャナ102は、視野(FOV)にわたる光の第1ビームを偏向し、光1010の第2走査ビームを形成する。これらをもとに、発光体716とスキャナ102は、可変発光体1009を構成する。光1010の走査ビームの瞬間位置は、1010a、1010bなどで示されている。光1010の走査ビームは、連続的にFOVのスポット1012を照射している。位置1010a、1010bにおける走査ビーム1010はそれぞれ、FOVのスポット1012a、1012bを照射している。ビーム1010がスポットを照射している間、照射光ビーム1014のある部分は、スポットにおける対象物や材料の特性に従って反射され、光エネルギーを散乱させたり反射させたりする。散乱した光エネルギーの一部分は、受光し、受け取った光エネルギー量に相当する電気信号を発生させる1つ以上の検出器1016へと移動する。電気信号によって、デジタル表現を組み立て、このデジタル表現を、さらに処理、デコード、アーカイブ、印刷、表示、または他の処置や使用のために、インターフェース1020を介して送信するコントローラ1018が駆動される。
光源716は、多数のエミッタ、例えば、発光ダイオード(LED)、レーザー、熱光源、アーク光源、蛍光源、ガス放電光源、またはその他の発光体などを備えている。ある一実施の形態においては、発光体716は、約635から670ナノメーター(nm)の波長を有する赤色レーザーダイオードから構成されている。別の実施の形態においては、発光体716は、3つのレーザー(約635nmの赤色ダイオードレーザー、約532nmの緑色LD励起固体(DPSS)レーザー、そして約473nmの青色DPSSレーザー)から構成されている。レーザーダイオードは直接変調されてもよいが、DPSSレーザーの場合は、概して、例えば音響光学変調(AOM)などの外部変調を必要とする。外部変調器が使用される場合、光源716の一部であると一般的に見なされている。多数のエミッタの場合、光源716は、エミッタのいくつかまたは全てを単一のビームに結合させるビーム結合光を備えている。光源716はまた、1つ以上のコリメータレンズ及び/またはアパーチャなどのビーム整形光学系も備えている。さらに付け加えると、先の実施の形態において述べた波長が光学的可視域にある間、他の波長もまた本発明の範囲内である。
先に述べたように、本発明にかかわる実施の形態は走査ミラーのみだけに限定せず、他のMEMS装置にも同様に適用される。例えば、スキャンプレートは、ミラーの代わりに発光体や光ファイバー端子を形成し備えることも可能である。このような装置は、走査ミラー103の代わりもしくは補助として1つ以上の軸で光ビームを直接移動させるために使用される。
単一のビームとして示されている光ビーム718は、単一のスキャナ102もしくは個別に分離したスキャナ102に集束される複数のビームから構成されている。
二次元MEMSスキャナ102は、二次元FOV全体もしくはフレーム周期内の二次元FOVの選択領域をカバーする一定のパターンで、1つ以上の光ビームを高速度で走査する。標準的なフレームレートは、例えば60Hzである。多くの場合、1軸あるいは両軸で共振して走査すると効果的である。一実施の形態においては、1軸は約19KHzで共振して走査される一方で、他の軸が順次走査パターンを作成するため鋸歯パターンで非共振に走査される。約19KHzの走査周波数で水平方向に走査し、また60Hzで垂直方向に鋸歯パターンで走査するといった単一ビームでの順次走査二方向性アプローチにより、SVGA解像度に近似させることが可能である。こうしたシステムにおいては、水平走査動作は電気容量的に駆動され、垂直走査動作は磁気的に駆動される。あるいは、水平及び垂直走査共に磁気的または容量的に駆動される。電気容量性駆動は、電気容量性プレート、コムドライブ、または同様のアプローチで構成される。多くの実施の形態では、2軸で正弦もしくは共振して駆動される。上述の他の駆動方法や、当業者に周知の駆動方法なども代わりに使用しても良い。
いくつかのタイプの検出器は、用途または構成によっては適応可能である。例えば、一実施の形態において使用される検出器は、増幅器やデジタイザに接続されたPINフォトダイオードを備えている。この構成では、ビームの位置情報がスキャナあるいは光学メカニズムから読み出され、画像解像度は走査スポット1012のサイズと形状から判断される。多色画像の場合、検出器1016は、さらに高性能の分割機能及びフィルタリング機能を備え、探知前に散乱光を構成成分に分離する。PINフォトダイオードの代わりとして、アバランシェフォトダイオード(APD)や光電子増倍管(PMT)は特定の用途、特に微光用途に好適である。
各種アプローチにおいて、用途によっては、全体的または部分的にFOVを眺めるため、あるいは逆一括にまたは焦点を共有して光を集めるために、PINフォトダイオードや、APD、PMTなどの光検出器が設置されている。いくつかの実施の形態において使用される光検出器1016では、周辺光のほとんどを排除するフィルタを通して光を集めている。
走査ビーム画像取得装置は、モノクロ、フルカラー、またはハイパースペクトル画像にさえも使用される。いくつかの実施の形態において、多くのカラーカメラで使われる従来のRGBチャンネルの間にさらにカラーチャンネルを追加するのが望ましいとされている。ここで、用語グレイスケールとそれに関連した考察について、本発明の範囲内の他の方法や用途だけでなく、実施の形態それぞれを参照しつつ理解されるべきであろう。ピクセルグレイレベルは、モノクロ方式の場合では単色で構成され、カラーまたはハイパースペクトル方式の場合ではRGB三原色またはそれ以上の色で構成される。特定のチャンネル(例えば、赤、緑、青チャンネル)の出力を個々に制御するか、または、例えば輝度変調などの場合は、全てのチャンネルを例外なく制御する。
上に述べた以外のMEMSスキャナ及び作動メカニズムの用途としては、参考特許文献で挙げたFurnessらによる米国特許第5,467,104号、タイトル『VIRTUAL RETINAL DISPLAY』に開示している走査ビームディスプレイなどが含まれる。図11で示すように、走査ビームディスプレイ1102の一実施の形態において、走査源1009は、ビーム結合器1106によって見ている人物の目1104に結合される光の走査ビームを出力する。いくつかの走査ディスプレイにおいては、走査源1009はミラーを備えたMEMSスキャナを構成し、本文で既に述べたように、ミラーは見ている人物の網膜上に変調光ビームを走査する働きをする。その他の実施の形態では、走査源は、アンギュラスイープを介して回転する1つ以上の発光体を構成している。
走査光は、見ている人物の瞳孔1108を介して目1104に入り、角膜によって網膜1109上に撮像される。走査光に反応して、見ている人物は画像を知覚認識する。別の実施の形態では、走査源1009は、変調光ビームを、見ている人物が観察しているスクリーン上に走査する。このようなスキャナの一例としては、参考特許文献で挙げたMelvilleらによる米国特許第5,557,444号、タイトル『MINIATURE OPTICAL SCANNER FOR A TWO-AXIS SCANNING SYSTEM』に開示しているディスプレイどちらのタイプも好適である。
こうしたディプレイは、時には、部分的または拡張された視界の用途で使用される。こうした用途では、ディスプレイ部分がユーザーの視野に配され、図12Aに示すように、ユーザーの視野1204の領域43を占める画像が示されている。ユーザーは、従って、表示された虚像1206と背景情報1208共に見ることができる。仮に、背景光が塞がれていれば、見ている人物は、図12Bに示すように、虚像1206のみを知覚認識することになる。ディスプレイがシースルーになっていたり塞がれていたりする場合、例えば、ヘッドマウントディスプレイやカメラ電子ファインダーが適用される。
図5で描写して既に述べたように、MEMSスキャナの様々な実施の形態の一使用例として、ラスターピンチ補正スキャナが挙げられる。図13は、図10で例示した走査ビーム画像取得装置や、図11で例示した走査ビームディスプレイなどを含む各種装置により放射された走査ビームが進む走査経路1302を示している。図13は、画像の11本のラインのみを示しているが、実際のディスプレイや撮像装置では、一般的に11本以上の多数のラインからなることは、当業者には周知であろう。図に示すように、実際の走査パターン1302を所望のラスター走査パターン1304と比較することにより、実際の走査ビーム1302は視野の外縁で「ピンチ」される。これは、連続する光の前方及び後進のスイープにおいて、走査パターンの端部近くのピクセルが不均等な間隔で並んでいるためである。この不均等間隔により、ピクセルが重なってしまったり、隣接するピクセル列間にすき間が生じたりする。さらに、画像情報は一般的に、データ配列として供給され、データ配列の各位置は、望ましいラスターパターン1304における各位置に相当するため、ピクセル位置がずれると画像にひずみが生じてしまう。
表示または取得された画像の画質を改善するため、「ピンチ」された走査経路1302を、望ましいラスターパターン1304にもっと近似させるように、補正することが求められる。一つの方法としては、発明の詳細な説明の終盤で参照として挙げられる特許文献において述べられている分離ビーム経路補正ミラーを設けることである。しかしながら、分離補正ミラーを設けると、コストが増え、サイズも大きくなり、また複雑な影響も招いてしまい好ましくない。ほとんどの用途には、補正機能を備えたスキャナアセンブリ102を代用するのが好ましい。
再び図5を参照するに、ミラー表面113を備えた内部スキャンプレート512は、外側のジンバル106と同じく、軸110を中心に走査駆動される。もし、内部スキャンプレート512が、適切な位相関係にある水平走査プレート112の周波数の2倍の周波数で駆動されると、図14で示すように、ミラー113から反射された走査ビームは、「蝶ネクタイ」パターンまたはリサジューパターンをなぞるのが分かるであろう。図14のリサジューパターンを、シンバル106による垂直に、実質的に一定の回転速度での走査を組み合わせることにより、図15に示したような補正された走査パターンを形成することができる。図15は、「ピンチ」された走査経路が補正され、水平視野が全体的な水平走査角の90%を網羅している補正ミラーの正弦運動を示している。仮に、視野が全体的な水平走査角より少ないパーセンテージであったとしても、ビーム位置の誤差が軽減されていることは、当業者は認識できるであろう。
補正スキャナは、共振、もしくは直接駆動される。もちろん、図5で示したような積層型圧電駆動メカニズムを使用する必要がない。可動コイル磁性、可動磁石磁性、電気容量性、熱膨張差などを含む他の駆動メカニズムが使用される。
走査誤差は、1つ以上の補正ミラーをスキャナ102に追加することで、さらに軽減することができる。このような走査プレートは、図5に示したネスト化された構築に追加され、あるいは、「ダブルバウンス」や、スキャナ102の基板平面に光を戻す他のビーム経路に使用され、第1走査ミラー113の両軸どちらに対しても水平方向に配置される。誤差を軽減するための別のアプローチとしては、1つ以上の高次調波をスキャナ駆動信号に加えることで、共振補正スキャナの働きをする内部スキャンプレート512の走査パターンは、正弦走査から、ジンバル106の動きをさらに正確なものにするのこぎり波へと近づけていくことができる。
本明細書に述べるMEMSスキャナの種々の実施の形態におけるその他の使用法は当業者には自明であろう。
本明細書に述べるMEMSスキャナの種々の実施の形態はSCANNED DISPLAY WITH PINCH, AND DISTORTION CORRECTIONと題する米国特許第6,140,979、FREQUENCY TUNABLE RESONANT SCANNER AND METHOD OF MAKINGと題する米国特許第6,245,590、FREQUENCY TUNABLE RESONANT SCANNER WITH AUXILIARY ARMSと題する米国特許第6,285,489、FREUQENCY TUNABLE RESONANT SCANNERと題する米国特許第6,331,909、SCANNED IMAGING APPARATUS WITH SWITCHED FEEDSと題する米国特許第6,392,912、ACTIVE TUNING OF A TORSIONAL RESONTANT STRUCTUREと題する米国特許第6,384,406、SNCANNED DISPLAY WITH PLURALITY OF SCANNING ASSEMBLIESと題する米国特許第6,433,907、ACTIVE TUNING OF A TORSIONAL RESOTANT STRUCTUREと題する米国特許第6,512,622、FREQUENCY TUNABLE RESONANT SCANNER AND METHOD OF MAKINGと題する米国特許第6,515,278、SCANNED IMAGING APPARATUS WITH SWITCHED FEEDSと題する米国特許第6,515,781、及び/又はFREQUENCY RESONANT SCANNERと題する米国特許第6,525,310に述べられるシステムに組み込んだり、あるいはその実施の形態と組み合わせることができる。例えば、これらの特許はすべて本願と共に共通譲渡されており、参照によって本明細書に組み込まれる。
あるいは、イルミネータ104、スキャナ102、及び/又は検出器116は、BAR CODE SCANNING AND READING APAPRATUS AND DIFFRACTIVE LIGHT COLLECTION DEVICE SUITABLE FOR USE THEREINと題する米国特許第5,714,750に述べられているような一体化ビーム操作アセンブリを具備してもよい。この米国特許も参照により本明細書に組み込まれる。
前記の内容と図1、3A、4A、5、6、7A、7B、及び9の説明の組み合わせが示唆しているように、種々の軸を中心とする回転その他の運動は前記可動体の物理的応答によって判定される。前記の検討では、回転あるいはその他の動きの種々の軸間にはほとんど相互作用がないと想定された。しかしながら、実際には、モード及び可動体間の相互作用は著しく大きい場合もある。
図16は共振周波数fR を有するスキャンプレートの回転に関する簡略応答曲線1602を示している。この図で、縦軸は、変位振幅を表わし、物理的応答を示す。回転応答は図16の曲線1602によって示しているが、他の応答モードも同様に示すこともできる。例えば、「ポンピング」モードは上下方向の平行移動動作を含むであろう。従って、スキャナの部分間の結合を用いて回転以外のモードを発生させることもできる。
多くの応答曲線に特徴的であるが、発振体の変位振幅は周波数と共にその共振周波数に近づくまで単調に増大し、共振周波数に達した場合に応答は急激に増大して、その共振周波数でのその共振体の機械的な増幅係数に相当する有限レベルに達する。周波数がさらに増大すると、曲線は降下するが、それはその共振体がもはや駆動信号の速度に応答することができないからである。エネルギーを節減し電力消費を減らすためには、MEMS装置をその共振周波数で、あるいはそれに近い周波数で駆動するようにシステムを設計するのが好適である場合が多い。
図16の応答曲線は1つの軸の周りの1つの共振体の応答を示しているが、図17の応答曲線は複数の軸の周りでの1つの共振体の応答を示している。この図でも周波数を横軸に示し、右側に行くほど周波数は増大し、さらに変位振幅は縦軸に示し、高い程振幅は大きくなる。主要発振応答曲線1602は共振周波数fR1 を有しており、その形状は図16の応答曲線1602に類似している。図17にも二次的発振応答曲線1702が示されている。応答曲線1702は他の動作軸に沿った前記共振体の応答を示しており、第2の励起モードを示している。ここでの議論のために、主要発振応答1602は1対のトーションアームによって決まる1つの軸の代わりの回転を示すものとする。二次的発振応答曲線1702は平面内で主要回転軸に対して直角の1つの軸を中心とする回転に対する傾斜応答を示している。この主要発振応答は1対のトーションアームを中心とする回転と見ることもできる。二次的発振応答は装置平面状で、上向きの湾曲と下向きの湾曲を繰り返す前記トーションアーム対による傾斜と見ることができる。
なお、二次的応答曲線1702は第2の共振周波数fR2 を示し、これは主要モード共振周波数fR1と同じ場合、または異なる場合でもよい。この検討においてはfR2はfR1よりやや高いこと、及び二次軸(機械的増幅係数)における最大変位応答振幅は一次軸の応答量より低いと仮定する。
図18に示されているように、MEMS装置の種々の本体の動作モード間には関係性がある。曲線1702は第一の可動体の二次的共振応答を示している。この場合、第1の可動体はジンバルリングである。前の図に示されるように、(前記ジンバルリングサポートアーム軸110に直角な軸116を中心とする傾斜に対応する)二次応答は、第2の動作応答でシステムの単一共振周波数に対応するf1R2(つまり、モード2における第1の共振体の共振周波数)まで周波数を増大させるにつれて、比較的なだらかに、そして単調に増大し、さらに駆動周波数をさらに増大させると、なだらかにそして単調に減少する。1つの実際のシステムでは、曲線1702の共振周波数は約1500ヘルツに等しい。
外部プレートの傾斜を示す曲線1702に重複している応答曲線は内部プレートの回転を示している応答曲線1802である。物理的な実施の形態の例としては、図1あるいは4の内部プレート112及びジンバルリング106を参照するとよい。従って、曲線1702は、軸116の周りでのジンバルリング106の傾斜を示しており、そして、応答曲線1802は、軸116の周りの内部プレート112の回転を示している。図18の例で、応答曲線1802は、共振周波数f2R1(つまり、軸116を中心とする回転における第2のプレートの共振周波数)に到達するまで、周波数とともに単調に増大する。周波数がさらに増大すると、内部プレート112の応答は減少する。1つの実際のシステムでは、曲線1802の共振周波数f2R1は約20KHzである。
なお、図18に示す2つの応答曲線の共振周波数は曲線1702と1802で1500ヘルツと20KHzと、比較的大きく離れている。これは曲線1702上の共振周波数に対応する曲線1802でポイント1804、及び曲線1802の共振周波数に対応する曲線1702条のポイント1806を見ると分かる。それぞれの場合において、曲線の形状は他のプレートの共振には比較的影響を受けず、各曲線は図16と17の『ピュアな』応答に類似している。
従って、外部プレートが20KHzのf2R1で駆動されると、その周波数で曲線1702の変位振幅に従ってやや軽く傾斜するが、内部プレート内にかなりのずれを誘発し、内部プレートはその周波数で曲線1802の変位振幅に従ってかなり回転する。エネルギー転移は矢印1808によって示される。この状況は別の部材にかなり大きなずれを誘発する1つの部材の非常にわずかなずれとして前に述べたケースに対応している。
MEMSシステムの種々の構成要素の共振周波数が相互に近接している場合は、他の相互作用が起きる可能性があり、各共振モードは他のモードの応答に影響を及ぼす。そうした相互作用の曲線の形状を見る前に、先ず機械的なシステムをモデルするための1つの方法を示す図19を参照してみる。
図19に示すモデルで、上記システムの搭載ポイントに対応するベース504は硬度k1のバネを介して(例えばジンバルリングに対応する)第1の部分M1 106と弾力的に結合され、エネルギーの損失(非弾力応答)は係数c1で示される。これらはそれぞれバネ108及びダッシュポット1902としてモデル化されている。アクチュエータに対応する力F1(周波数を示す小文字のfとは混同しないため)は部分M1 をその静置位置からずらすように作用する場合がある。バネ108は、ダッシュポット1902のダンピング作用に修正されつつ、部分M1 をその静置位置に戻すように作用する。
この例で、バネ108は図1及び図4のトーションアーム108a及び108bに対応して番号が付されている。従って、部分M1 106は同じ図のジンバルリング106に対応して番号が付されている。力F1に対する応答における部分M1 106の主要なずれは、多くの周波数で軸110を中心とする回転であるが、部分M1 106が回転の直交軸方向、つまり、軸116を中心とする傾斜モードでずれる場合もある。本分析においては、関心の対象となる主要モードは軸116を中心とするこの二番目の傾斜モードである。
部分M1 106には第2の部分M2 112が接続されている。部分M2は、バネ定数k12を有するバネ114とダンピング係数C3を有するダッシュポット1904を介して部分M1に接続されている。図1と4を考慮に入れると、部分M2 112は内部スキャンプレート112に対応するものとみなすことができ(及び、そのように構成されていれば、サスペンション402の質量と)、バネ114は、トーションアーム114a及び114bに対応するものとみなすことができる。部分M2 112は、さらにダンピング係数C2を有するダッシュポット1906を介してベース504と相互作用する。ダンピング係数C1、C2 、及びC3は、システムのエネルギー損失メカニズムに対応する。特に、2つの主要効果、つまり、MEMS金型102とベース構造504との間のエネルギー損失と、ジンバルリングに作用するガスダンピングに対応する。C2は主に内部スキャンプレート112に作用するガスダンピングに対応する。主としてM1 及びM2 の相対動作によるトーションアーム内のエネルギー損失に対応するC3は通常無視でき、従ってシステムのモデル化においては無視する。
部分M1 106のずれの場合と同様、力F2 によって部分M2 112がずれる場合もある。こうしたずれが発生した場合、バネ114はダッシュポット1906のダンピング係数C2 によって修正されつつ、そのバネ定数k1の関数として、部分M2 を部分M1 に対してその静置位置に復元する傾向をしめす。このことは、部分M2 112に作用する力F2 がバネ114ばかりでなくバネ108も、それぞれのバネ定数k1及びk2の割合に応じて膨張させる場合があるというように解釈することもできる。静止状態では、力F1はバネ108ばかりでなくバネ114にも作用する。むしろ部分M1 106とM2 112の組み合わせ慣性力が動的な状態では力F1に対して反対に働く傾向がある。また、動的な状態では、システムの種々の構成要素間の相互作用は部分M1と部分M2との間に複雑な相互関係をつくりだす可能性があると解釈することができる。
モデル化を簡易化するために、いくつかの簡易的な仮定を行うことができる。これらの仮定には、バネの線形挙動及びダンピング(ヒステリシスを含まず)、無質量バネ、駆動力の線形挙動、及び温度を含む種々の環境変化に対しても一定である定数などが含まれる。いくつかのシステム、特に、大きなずれを受けるシステムの場合は、当業者にも知られているように、そうした簡易的な仮定が適切ではない可能性もある。上に挙げた様な簡易的な仮定を用いることによって、図19に示すシステムの動力学的動作を図21に示す微分方程式2102及び2104によって規定することができる。
上に示した微分方程式によれば、図19によるシステムが力F1によって周期的に駆動されると、両方の部分M1及びM2の動きがもたらされる。例えば、F2 がゼロに設定され(つまり、F2=0)、そしてF1が正弦波状態で駆動される(F2=F0*sin(2πf*t))。この式でF0は負荷強度、fは周波数、そしてtは時間であり、2つの部分の動作は図20の曲線1702及び1802に示されるように応答する。
図18の場合と同様、図20の曲線1702はジンバルリングの傾斜モードを示し、曲線1802は内部スキャンプレートの回転を示す。図19のモデルに関連して、曲線1702は、また部分M1 106のずれにも対応しており、曲線1802は、共通のずれ軸上で部分M2 112のずれに対応している。図1及び4の構造に従えば、共通ずれ軸116は曲線1702の場合のジンバルリングの傾斜及び曲線1802の場合の内部スキャンプレートの回転として示される。
曲線1702はジンバルリングの傾斜モードの共振周波数f1R2に到達するまで単調に増大する。そして、周波数がさらに増大すると低下する。しかし、図18のシステムのように滑らかに低下するわけではない。むしろ、その形状は曲線1802の応答による影響を受ける。言い換えると、部分M1 116動力学的応答は、バネ定数、ダンピング係数、及び図19のモデルの諸部分の影響下で部分M2 112の動力学的応答に影響される。このモデルで用いられる値は、MEMS装置の実際の特性に対応するものである点は強調しておかねばならない。
曲線1802は曲線1702と対応する相互作用を示している。特に、部分M2 がその共振周波数f2R1に到達するまで単調に増大する曲線よりも、曲線1802は、曲線1702が示すような傾斜モードでのジンバルリングの共振周波数f1R2に対応する応答ピーク1804を示している。物理的なシステムでは、f1R2でのピークは、軸116を中心とするスキャンプレート112とジンバルリング106の同相動作を示している。
矢印2002が示すように、ジンバルリングの傾斜は、エネルギーを回転の形で内部スキャンプレートに伝える。従って、f1R2で、ジンバルリングに物理的に結合されたアクチュエータを用いてスキャンプレートの回転を駆動することもできる。
図20から分かるように、比較的似通った共振周波数を有する結合システムにおいては、スキャンプレートはジンバルリングの共振周波数で駆動することもできる。この場合、その共振周波数は、軸116を中心とする傾斜の周波数である。しかしながら、原理的にはその他のモード及びその他の共振周波数も同様に用いることができる。
回転動作における内部スキャンプレート112の共振周波数に近いより高めの周波数f2R1では、図20の曲線1702を調べると分かるように、対応する現象を観察することができる。回転動作における内部スキャンプレート112の共振周波数より低いがそれに近い周波数では、曲線1702で極小が観察される。周波数をさらに高くすると、ジンバルリングの傾斜応答が増大して、内部スキャンプレート112の回転における共振周波数に近い極大値f2R1に到達する。この点で、矢印1808が示すように、エネルギーが内部プレートに転移されて、変位振幅の極大値がつくられる。本例の場合、この変位振幅は内部スキャンプレート112の回転軸116を中心とするジンバルリング106に対する回転として示される。
曲線1702と1804間のカップリングは共振周波数f1R2で同相であるが、f2R1でのカップリングは同相ではない。つまり、スキャンプレート112が曲線1802の変位振幅に対応する量だけ時計方向に回転されると、ジンバルリングが曲線1702の変位振幅に対応する量だけ反時計方向に傾斜される。従って、曲線1702と1802は周波数f1R2でミラー面のさらなるずれを示しているが、周波数f2R1での曲線1702のずれの方向は曲線1802のずれの方向とは反対である。
図21は、上に示した図19のシステムを示す微分法的式による実際のシステムでのdBスケールの理論的な周波数応答曲線を示している。振幅は外部固定基準フレームに対して計算される絶対値である。周波数f2R1で、スキャンプレートの振幅は7であるが、ジンバルリング発振の振幅は2である。これら2つの共振体の角度は周波数f2R1で約180相対位相となっている。
曲線1702の極小値に対応するポイントでシステムを駆動すると機械的増幅率の有効比率(ミラー振幅応答対ジンバルリング振幅応答)が高くなるが、内部スキャンプレートの応答は受け入れ可能なスキャン角度を発生させるほど十分ではなかった。
このシステムを駆動させる別の候補周波数はf1R2に対応するが、ジンバルリング及び内部スキャンプレートの応答は相互にほぼ同相である。この周波数(約1700ヘルツ)で、システムはそれぞれ曲線1802と1702に対応する25度及び20度の最高の応答を示した。しかしながら、水平方向の走査速度(約1700ヘルツ)は他のシステム必要条件を満たすほど十分ではなかった。
ここで検討している事例は走査現象、そして、特に傾斜を示す外部ジンバルリングによってつるされている内部スキャンプレートの回転動作に関係しているが、他のタイプの動作を同様に結び付けてもよい。この技術分野で知られているような種々のモードの発振も種々の応用例で有効である。例えば、垂直方向の並進運動を、光学集光装置、距離測定装置、そしてそうした動作が望ましいその他の事例を含む種々のシステムで用いることができる。同様に、面内回転、プレート(振動)モード、そして面内並進移動を機械的に結合させてスキャンプレートを共振を介して駆動させることも可能である。さらに、同様の現象を、図1の例に示すような結合アクチュエータ、図5に示す例のような多重結合体、そして図5に示す例のような平行主要発振軸(この場合、共振体106と512は軸110を中心に回転する)に対して用いることができる。
図22Aは、高性能MEMSスキャナ102の具体例を示している。上に述べたように、MEMSスキャナ102は、例えば高速高解像度レーザービームプリンタ、高速バーコードスキャナ、走査ビーム表示装置、LIDARシステム、走査レーザーレベル、その他の装置などの種々の装置で用いることができる。MEMSスキャナ102はこの技術分野では知られているようにバルク微細加工を用いて単一結晶シリコンからフォトリソグラフィによってつくられる。ミラー表面113(図示せず)を有するスキャンプレート112は、サスペンション402a、402bを介して1対のトーションアーム114a及び114bと結合されており、これらのサスペンションはサスペンションビーム403a、403b、サスペンション中央コネクタ404a、404b、そしてサスペンション外部コネクタ405a、405b、405c、405dを含んでいる。トーションアーム114a及び114bは回転軸116を形成しており、それを中心にしてスキャンプレート112とサスペンション402a、402bが回転する。これらのサスペンションはスキャンプレート112の表面を通じてトーションアーム114a及び114bにより誘起されるトルク負荷を分散することでミラー面を比較的平坦に、通常、波長の1/4に維持することに寄与する。
サスペンション402はサスペンションビーム403を含んでおり、これらはそれぞれ外部コネクタ405a、405b、405c、405dと軸方向コネクタ404a、404bによってスキャンプレート112に結合されている。全体として見れば、サスペンション要素403a、405a、405b及び404aは、第1のトーションアーム114aとスキャンプレート112間の第1のサスペンションカップリングを形成している。同様に、サスペンション要素403b、405c、405d、及び404bが第2のトーションアーム114bとスキャンプレート112間の第2のサスペンションカップリングを形成している。
トーションアーム114a及び114bはそれぞれ『梃子部材』2212a及び2212bで終端している。梃子部材2212a及び2212bは、図に示すようにそれぞれ側面ポイントで実装パッド2214a、2214b、2214c、2214dと接続している。これらを合わせると、梃子部材2212aと実装パッド2214a、2214bはトーションアーム114aをサポート構造(図示せず)に結合させるための第1の取り付け構造502aを形成している。同様に、梃子部材2212bと実装パッド2214c、2214dはトーションアーム114bをサポート構造(図示せず)に結合させるための第2の取り付け構造502bを形成している。取り付け構造は、例えば、それぞれ対応するトーションアームに(図5,8及び9に示すように)直接接合された1対の長方形実装パッドや、スキャンプレート112及びトーションアーム114a、114bに対して(図1、3A、及び4Aに示されるように)その周辺に形成された単一フレーム、その他の形状を含む他の形を形成することができる。図22Aに示す具体例は、ウエハー1個あたりの装置搭載数の増大、動的応力の減少、個別実装パッドをアクチュエータに結合できること、そして実装パッド2214を相互に『浮遊(フロート)』させて、それによってMEMEスキャナ内の残留応力を減少させることができるなどのいくつかの利点を有している。
別の例で、梃子部材2212a、2212bは側面ポイントで周辺取り付けフレームと結合しており、この周辺フレームは、スキャンプレート、オプション可能なサスペンション、トーションアーム、そしてオプション可能な部材を従来のMEMS構成に従って取り囲んでいる。
スキャンプレート112とその上に形成されているミラー113は、例えば、その縦方向(回転軸116に対して平行な方向)の幅よりかなり大きな横方向(回転軸116に対して垂直な方向)の幅を持つように形成することができる。とりわけ、こうした構成は、回転多角形ミラーの小平面に類似したものを形成して、種々の装置で回転多角形スキャナの変わりにスキャナ102を用いるのに役立つ。あるいは、スキャンプレート112をアスペクト比が低い長方形、正方形、円形、楕円、その他の形状などにその応用目的に合わせて形成することもできる。
図22Aに示すように、MEMSスキャナ102は2つのトーションアーム114a、114bを有しており、これらはそれぞれ長さが18.76ミリメートル(フィレットを含む)であり、又それぞれ近端がそれぞれ対応するサスペンション上(特にサスペンションビーム403a、403b)で400ミクロン×200ミクロンの楕円形フィレットとなっており、遠端は対応する梃子部材2212a、2212bで終端しており、ここも400ミクロン×200ミクロンの楕円形フィレットとなっている。トーションアーム114a、114bは幅が384ミクロンである。MEMSスキャナ102が静置された状態で、DRIE処理を用いて、700ミクロンのウエハー全厚にエッチングされる。ミラーの質量に合わせて、トーションアーム及び梃子部材の幅、深さ、及び長さを調節してそれぞれ必要な共振スキャン周波数及び角度をつくりだすことができる。
サスペンションビーム403a、403bは幅が396ミクロンで、多少湾曲して、対応するトーションアーム114a、114bとの間で91.6度のやや鈍角を形成しており、さらに、横方向に、スキャンプレート112の横方向と同じ広がりを有している。対応するサスペンション中央コネクタ404a、404bはサスペンションビーム403a、403bの中心線からスキャンプレート112の中心線の方向に500ミクロン延びている(フィレットを含む)。中央コネクタ404a、404bは幅が164ミクロンで、両端に100ミクロン径のフィレットを含んでいる。4つのサスペンション外部コネクタ405a、405b、405c、405dはサスペンションビーム403a、403bの端部からスキャンプレート112の方向に延びており、上に述べたように各サスペンションビーム上に1つが配置されている。外部コネクタ405a、405b、405c、405dはそれぞれ幅が250ミクロン(横方向)、長さが400ミクロン(長さ方向)で、フィレットは有していない。従って、各サスペンションは、サスペンションビーム403、中央サスペンションコネクタ404、及び2つの外部サスペンションコネクタ405とを有しており、ストレス集中を減少させ、トルク負荷を分散させ、そして作動中のスキャンプレートの動的変形を低減させるようにトーションアーム114a、114bをスキャンプレート112に接続している。別のサスペンション構造も可能で、上に述べたように、当業者であれば容易に実行できるであろう。
図22Aに示す具体例のスキャンプレートは6ミリメータ×6ミリメータの正方形である。
梃子部材2212a、2212bは、それぞれ長さが1.8ミリメータ(フィレットを含む横方向総寸法)、幅が400ミクロン(長さ方向)で、図22に示す例では、左右対称に、そしてトーションアーム114a、114bで形成される軸から延び、さらにその軸に垂直な方向に延びている。梃子部材2212a、2212bの外端は図に示すような200ミクロン径のフィレットを有する4つの対応する実装パッド2214a、2214b、2214c、そして2214dに接続されている。これらの実装パッドはそれぞれ4ミリメータ平方である。
符号2220a、2220bで示す箇所で、実装パッド2214a、2214b、2214c、2214d上にはドープされたチャンネルが形成されいる。金属がこの実装パッド2214a、2214b、2214cおよび2214d上で、このドープされたチャンネル上に蒸着される。金属はスキャンプレート112上にも蒸着され、中央サスペンションコネクター404a、404b上をドープされたチャンネル2220a、2220b上のポイントまで延びている。以下に説明するように、このドープされたチャンネルは比較的低いそして勾配づけられた抵抗を有する領域を形成しており、この領域は、金属が蒸着されていない領域と金属層との間を電流が流れるのを助ける役割を果たしている。この金属は例えば金あるいはアルミニウムなどで、スキャンプレート112上にミラー面を形成する。
梃子部材の幾何学的形状は大幅に変えてよい。同様に、実装パッドの幾何学的形状も、そのサイズ、形、及び接続される梃子部材との接続の方向も含めて、応用装置の必要条件に合わせるように自由に変えることができる。さらに、梃子部材、実装パッド、及びMEMSスキャナ102のその他の部品も応用装置の必要条件に合わせて非対称的に形成することができる。例えば、図22Bとの関連で分かるように、2つの実装パッド、2つの梃子部材及び1つのトーションアームによるセット全体を不要とすることができる。
スキャンプレート112、サスペンション(要素403a、405a、405b、404a及び403b、405c、405d、404bにそれぞれ対応する)及びトーションアーム114aと114bも同様にかなり変更自由である。例えば、共振周波数と材料応力限界をほぼ一定に保ちつつ、4ミリメータ平方のスキャンプレート112を図22Aの6ミリメータ平方のスキャンプレートと取り替えることもでき、トーションアームの長さも12ミリメータをそれぞれ短くすることができる。サスペンションも同様に大幅に変えても、スキャンプレートの動的変形を低減するという利点を提供することが可能である。
実装パッド2214a、2214b、2214c、2214d(あるいはそれに代わる周辺フレーム)をハウジングに取り付けると、アクチュエータに力が周期的にかかって、スキャンプレート112がトーションアーム114a、114bで決まる回転軸116を中心に前方向あるいは後ろ方向への定期的な回転を引き起こされる。1つの具体例で、適切な信号(たとえば、4つのアクチュエータを用いた例で、約0(ゼロ)から25−30ボルトの間で変動する5kHz正弦波)を用いて駆動すると、スキャンプレート112は、5KHzの周波数で±20度の機械的走査角度で応答する。
±20度の機械的走査角度で、スキャナ102は9面回転多角形とほぼ同様の走査角度を示す。他の多面体形状に合わせて他の走査角度を選択してもよい。5KHzの全期間走査速度で、スキャナ102は10KHzの速度で双方向走査(各サイクルで前方向に1回、後方向に1回)を行う。これは66,667rpmの回転速度で回転している9面体多角形に相当する。従って、スキャナ102は比較的高度な回転多角形スキャナと同様の走査性能を達成し、従って高速装置での利用に適している。あるいは、このスキャナを一方向スキャンに用いて、33,333rpmの回転速度で回転する多角形スキャナと同等の性能を達成することもできる。一方向操作はミラーが前方あるいは逆方向走査半サイクルのいずれかにある場合のみ画像データを変調することで(あるいは画像データを取得することで)達成される。二方向で用いられる場合に、逆方向スキャン中にデータの読み出し方向を逆転するために(つまり、レーザーに対してか、検出器からか)適切な制御用電子装置が用いられる。
図22Bは、スキャナ102の別の具体例を示している。単一のトーションアームが図22Aに関連して述べたように1つのサスペンションを介してスキャンプレート112を支承している。このスキャンプレートは種々のモードの共振周波数を制御するか、及び/又は以下に述べるようにその共振周波数かそれに非常に近い周波数でスキャンプレートを駆動することによって軸116を中心に回転させることができる。
図23はMEMSスキャナ102のさらに別の例を示している。図23に示す例で、梃子部材2212a及び2212bが蛇状に形成されている。これらの梃子部材の遠端は、通常上に示すように実装パッドか、あるいは周辺フレーム部材に接合されている。これからも分かるように、梃子部材の幾何学的形状はかなり変更できる。
図24は周期的駆動信号を適用した場合の図22に示すMEMSスキャナの動的応答を示すグラフである。曲線2402は周期的駆動周波数2406の関数としての振幅応答である。曲線2408は同じ周期的駆動周波数軸2406に対して示すスキャナvs駆動フェーズ2410を示している。曲線2402を調べると、約5KHzでの応答ピークが見られ、これは回転モードにおけるMEMSスキャナの共振周波数に対応している。ピークのサイズは相対ベースで示してあるが、このピークは、この例の場合、受け入れられる駆動電力で±20度の機械的走査角度の共振応答をつくりだすのには十分な高さである。4アクチュエータの場合、5KHzの正弦波に近似し、振幅が0から25−30ボルトの駆動波形は±20度の機械的走査角度をもたらす。
65−70KHzの間の二次的ピークは圧電スタックアクチュエータの共振挙動に対応している。
曲線2408は、駆動信号とMEMSスキャナ応答の位相的関係は共振点でどのように逆転するかを示している。5KHz以下では、(駆動対応答の)位相関係は0度である。5KHz以上で二次ピーク以下の範囲では、位相関係は−180度である。主要共振ピークの場合、位相関係は逆転し、図に示すように−90度以下となる(応答遅延駆動)。二次ピーク以上では、システムの応答は低下し、位相応答は再度逆転し、ピークから−180度低下し、二次共振ピークで−270度(+90度)、そして二次共振ピーク以上のピークで−360度(0度)となる。効率を最大にするためには、MEMSスキャナを一次共振ピーク、あるいはその近くで作動させるのが好適であることが分かっている。
5KHzで作動させるためには、MEMSスキャナの共振周波数を5KHzより数ヘルツ上にして、通常は室温で5.001−5.005KHzに設定する。こうした周波数設定はFREQUENCY TUNABLE RESONANT SCANNER AND METHOD OF MAKINGと題する米国特許第6,245,590に開示されている方法を用いて達成される。なおこの特許は参照により、本明細書に組み込まれる。少量のエポキシを用いてスキャンプレートの重量を増大させる方法で出荷前に共振周波数を調節するのが好適であることが分かっている。共振周波数をほぼ5.000KHzにするためには共振周波数の能動型熱チューニングが用いられている。
図25Aは、100ミリメータシリコンウェハー2502上でのMEMSスキャナ102a、102b、102c、102d、102e、及び102fのプロトタイプ型レイアウトを示している。この図から分かるように、MEMSスキャナは相互に噛合った実装パッド及びミラーと一体に高密度で集積される。こうしたレイアウトを用いる1つの理由はウエハーあたりの歩留りを最大限にすることである。図から分かるように、図25Aに示すスキャナ102のスキャンプレートは短く広いアスペクト比で形成される。図25Aはさらに、別の梃子部材2212のデザインを示しており、この例ではTの両端がミラー側にずれている。
図25Bは、100ミリメータ厚のシリコンウェハーからMEMSスキャナを製造するための別のレイアウトを示している。これらのスキャナの寸法、特にトーションアームの長さは、図25Aの場合と比較して、より効率的に相互に噛合った集積が可能になるように改善されている。より大型のウエハーにも装置を高密度で集積することができる。
この『相互に組み合った』という意味は、1つ以上の隣接する半導体装置を切除せずに1つの半導体装置周辺の正方形または小立方体を抜き取ることは不可能だということを意味している。つまり、1つ以上の隣接する半導体装置がダイシングソウを用いてその半導体の周りに形成できる幾何学的図形の輪郭内に進入しているということを意味している。スキャナをウエハーからほぼ完全に切り離すには、ディープ反応性イオンエッチング(DRIE)あるいはその他の処理ステップなどのエッチングステップが用いられる。各装置の周りの二重線はその装置の周囲に形成される『堀』の縁を示している。スキャナをウエハーに接続している非常に細いシリコン『ブリッジ』が間隔を置いて見られる。スキャナを切り離すためには、これらのブリッジを単に破壊すれば、スキャナは飛び出す。これらのブリッジの幅はその装置を横切ってひび割れが広がらないように十分に狭く設定してある。
別の例で、DRIEを行う前に、シリコンウェハーの裏面に金属の層をメッキするか、あるいは絶縁ウエハーを接着させる。シリコンウェハーをエッチングするためにはDRIEが用いられる。金属あるいは絶縁体の層はウエハー内にスキャナを包み込むこともできる。それらのスキャナを取り外すには、金属を引き剥がすことになる。あるいは、それらの部品を取り外すために、エッチングで金属や絶縁体を取り除いてもよい。1つの実施の形態で、金属安定化層のためにアルミニウムが用いられる。別の例で、絶縁体安定化層のためにパイレックス(登録商標)ガラスが用いられる。安定化層が用いられた場合、シリコンブリッジを取り除き、適当な場所に形状を保持することができる。あるいは、シリコンブリッジを削除してもよい。
いくつかの実施の形態によるMEMSスキャナ102の製造には上に述べたようにドープされたチャンネルすなわち電荷担持層を形成するステップを含んでいる。1−10オーム−cmのバルク抵抗性を有する燐ドープシリコンウェハーが用いられる。この燐ドープシリコンウェハーは最大4mAの電流で、30KeVで加速された5×1015個の燐31原子/cm2の量が注入されている。その量の燐は1000℃で45分間駆動される。結果として得られるドープされたチャンネルは0.5ミクロン程度の深さでドープされており、ドーピング濃度とその結果としての抵抗性が深さに伴って変わる段階的傾斜チャンネルを形成している。こうした状態で、ウエハーはドーピング濃度が約1×1020燐31原子/cm3を有し、抵抗は約0.001オーム−cmで、これは0.5ミクロンの深さで約1×1015原子/cm3のウエハーバックグラウンドに低下する。
ドープされたチャンネルは、金属層からシリコン内への電荷伝播のための導管をつくりだす。以下に説明するように、ジュール発熱をつくりだすために、MEMSスキャナ102に電流を流すことができる。図22Aに示すスキャナの例では、例えば、実装パッド2214a、2214bは、ヒーター増幅器で正電圧に駆動される。ヒーターの導線は取り付けアセンブリ及び/又は実装パッド上の金属化層につなげることができる。1つの例示的な実施の形態によれば、電流は実装パッド2214a、2214bを覆う金属層に沿って流れ、上記金属層に隣接して形成されるドープされたチャンネルを介してシリコン内に流れ込む。その後、電流は梃子部材2212a及びトーションアーム114aを通じてシリコン内部を流れて、主にトーションアーム114a内で局所化された発熱を生じる。(電流は梃子部材2212aの両方のアームに沿って分割されるので、梃子部材内でのジュール発熱は減少する)。トーションアーム114aがドープされたチャンネル2220aと接合されると、電流がシリコンからドープされたチャンネル2220a上に形成された金属層に流れ込む。電流は中央サスペンションコネクタ404a、スキャンプレート112上に形成されたミラーの金属113、および中央サスペンションコネクタ404bを通じて流れる。従って、これらの構造内でのジュール発熱が回避される。金属層がドープされたチャンネル2220bを被覆しているところで、電流はその金属からシリコンに流入する。さらに電流はトーションアーム114bと梃子部材2212bを通じて流れ、再度ジュール発熱(主にトーションアーム内)を発生させる。さらに電流は実装パッド2214c、2214d上に形成されたドープされたチャンネルを通じてその上に形成された金属層に流れ込み、そこで接地電圧に近い電位で保持されている第2のヒーター導線によって集められる。この技術分野で知られているように、図示されている方向でのホールの動作あるいは反対方向への電子の動作もそのような電流をつくりだす。
いくつかの例で、図22A、22B、23、25A,及び25Bに例示されているスキャナ設計の好適な様態は、製造に必要な処理工程数が最小限化されることである。これらのスキャナは特定の領域の厚さを減らしたり、盛り上がったリムをつくるための部分的なエッチングを行わなくても、完全な厚みのシリコンウェハーからつくることができる。ウエハー2502の前面にミラーに対応する金属化パターンが形成される。1つの実施の形態によれば、ミラー用に金による金属蒸着が用いられる。ウエハー2502の裏面には裏面金属蒸着が行われる。1つの実施の形態によれば、裏面金属蒸着層のためにアルミニウムが用いられる。次に、半導体装置及びそれらの間のエッチングされない領域に対応するフォトレジストパターンがウエハーの前面に形成され、そして、露出された領域はディープエッチングされる。1つの実施の形態で、ウエハーを通じての垂直壁面をエッチングするためにDRIEが用いられる。ウエハーの裏面はエッチング中に低温で冷却し、アルミニウムによる裏面金属蒸着による高熱伝導性はDRIEエッチングがシリコンウェハーの裏面に及ぶとそれを停止する。いくつかの事例で、スキャナの形状はエッチングされた輪郭の裏面をブリッジしているアルミニウム層によってウエハー内に保持されている。他の実施の形態で、シリコンの薄いブリッジはそれらの部分を適当な場所にとどめておくのに役立つ。アルミニウムによる裏面金属蒸着はエッチングで取り除かれ、フォトレジストは取り除かれる。そうすると、スキャナは自由になり、あるいはシリコンブリッジが用いられているのであればウエハーから取り出され、深くエッチングされた領域を通じてブリッジを壊すことで単一化することができる。これらの部分を取り除くためにディープエッチングを用いることでダイシングを回避することができる。
図26は、MEMSスキャナのアクチュエータ構成を示している。共通実装パッド508上にセットされる1対の市販圧電スタック506a及び506bは、対応する第1の絶縁体2606a、2606bを介してMEMSスキャナ102の各実装パッド2214a、2214bを支えている。そのそれぞれの位置から、圧電スタック506a、506bは交互に電気的に圧縮されたり拡張されたりして、トーションアーム114a、114bで決まる回転軸116を中心にした実装パッド2214a、2214bの周期的な回転をつくりだす。同様に、スキャンプレート112の横断方向軸にほぼ平行な横断方向を中心としてMEMSスキャナ102を回転させるために、圧電スタック506a、506bの共通モード活性化を用いることもできる。
MEMSスキャナ102と圧電アクチュエータスタック506a、506bとの接触を維持するために、それぞれのクランプすなわち圧力アセンブリ2608a及び2608b(2608bは図示せず)が実装パッド2214a、2214bを下向きにアクチュエータスタックに押し付けている。クランプ2608bは、図26では明瞭にするために省略してある。図に示されているように、クランプ2608は(アセンブリの下部から始まって、実装パッド2214に接触して)、第1の圧力プレート2610、オプション可能な直列円盤バネ2612、第2の圧力プレート2614、第2の絶縁体2616および第3の圧力プレート2618を含んでいる。1つの事例で、第1の圧力プレート2601の端部が図未示すように圧力アセンブリから外側に延びている。以下に説明するように、これによってヒーター用配線あるいは銅線のオプション可能な結合位置が提供される。直列円盤バネ2612は、SPRINGMASTERS #d63203などの市販のタイプのものであってよく、比較的硬度が低く、高い(5KHz以上の)固有共振周波数を有しているものが選択される。応用の必要条件に応じて、直列に配置された2つのバネ、あるいは異なった数のバネを用いてもよいし、バネを用いなくてもよい。第1及び第2の圧力プレート2610及び2614は、それを押す円盤バネに対する頑丈な表面を提供してくれる。第2の絶縁体2616は、MEMSスキャナ102の電気絶縁体を提供している。第1及び第2の絶縁体2606、2616は適切な密度、電気絶縁性、及び圧縮強度を有するパイレックス(登録商標)ガラスなどのような物質でつくられている。第1及び第2の圧力プレート2610、2614は、適切な導電性を有し、そして圧縮強度、頑丈さ、及び密度などの適切な物理的特性を有するスチールなどの物質でつくられている。第3の圧力プレート2618は、第2の絶縁体2616のための取り付け面を提供しており、そのアセンブリをハウジング(図示せず)に接続している。好ましくは、スチールでつくられる第3の圧力プレート2618は、取り付け及び調節ネジ(図示せず)を受け入れるための孔2620を含んでいる。当業者ならすぐ分かるように、別の、あるいは変形クランプも用いることができる。
別の例で、直列円盤バネ2612は、圧力アセンブリ2608で用いなくてもよいことが分かっている。こうした修正は、組み立て上の簡便さ及びコストの点で利点をもたらすであろうが、駆動効率には多少の問題が生じるであろう。
圧力アセンブリ2608の1つあるいは複数の構成部品は、ハウジングに閉じ込めてもよいし、あるいはその他の方法で、実質的に固定された回転関係の中で保持してもよい。これによって、取り付け及び調節ネジの調節中にアセンブリを介して送られるトルク負荷を低減、あるいは除去することができる。圧力アセンブリ2608を通じてのトルク負荷を相当程度低減あるいは除去することによって、組み立て中にMEMSスキャナの実装パッド2214にかかるトルク負荷がほとんどゼロとなり、従って、実装パッド2214の軽微な回転によって生じる共振周波数及び/又は走査角度範囲の故意的ではない変化からMEMSスキャナ102を保護してくれる。
図27は圧電スタックアクチュエータ506を示す図である。こうしたアクチュエータはhttp://www.physikinstrumente.de model PICMA 885.10を含むいくつかの供給元から入手することができる。
図28及び29は、レーザービームプリンタ、バーコードスキャナ、走査レーザーレベルなどで使用するためのMEMSスキャナハウジング2802を示す図である。2つのフロントプレート2804a、2804bが取り付けネジ2808a、2808b、2808c、2808dで後部ハウジング2806に固定されている。MEMSスキャナ102は凹部に保持されており、適切な量の回転ができるようになっている。ネジ溝を切ったネジ孔2810a、2810b、2810c、及び2810dが、対応する調節ネジ孔2620(図26参照)内に突き出る調節ネジ(図示せず)を受け入れるようになっている。組み立て中、調節ネジは直列円盤バネ2612(図示せず)に適切な量の予備負荷を与えるために回転させておく。起動中のMEMSスキャナの動作は、後部ハウジング2806の上面に形成されるMEMS観察ポート2812から観察することができる。MEMSスキャナアセンブリ2812は、ハウジング2806に形成されている取り付けタブ2814a、2814bを介してレーザービームプリンタあるいは他の装置の露出装置に固定される。
ハウジング2802にMEMSスキャナ102を固定するためにクランプ2608を用いると、『フロート』が生じて、実装パッド2214が相互に対して多少動いてしまう。いくつかの例で、組み立て作業中のクランプ2608の多少のねじれが実装パッド2214の平面内での軽度のねじれを生じさせてしまう。このことは、MEMSスキャナの梃子部材及び/又はトーションアームに望ましくない残留応力をもたらすことにつながる。こうしたねじれは取り付けたスキャナを数時間、軽減された走査角度で作動する、すなわち『バーンインする(burning-in)』ことで低減、あるいは除去することができる。1つに例示的な実施の形態で、このスキャナはほぼ4時間、半分の振幅で作動される。このバーンインプロセスは、梃子部材及び/又はトーションアームの機械的故障に伴う『初期』故障の発生を低減させることができる。スキャナアセンブリの焼付けの必要性を減らす、あるいは削除するためには、ねじれを減らした別のクランプアセンブリ設計を用いてもよい。
MEMSスキャナ102は各実装パッド2214a、2214b、2214c、2214dの下に配置された4つの圧電スタック506で駆動することができる。あるいは、MEMSスキャナの一端を固定位置に保持することもできる。つまり、実装パッド2214c、2214dを固定取り付けポイントに締め付け固定して、MEMSスキャナの他端を圧電アクチュエータで駆動するようにしてもよい。この場合、実装パッド2214a、2214bはそれぞれ、図26に示すように圧電スタックに固定される。第3の方式として、上記実装パッドのうちの3つが固定取り付けポイントにクランプされ、1つの圧電スタックが用いられる。どの方式を選択するかは、コストとアクチュエータパワーの必要性とのバランスにかかっている。上の説明から分かるように、図5、22A、22B及び23に示すようなMEMSスキャナ設計102にも同様のことが言える。
上に述べたように、MEMSスキャナは、望ましい共振周波数から数ヘルツ以内の共振周波数を有するように微調整される。図24の曲線2402から分かるように、共振周波数の小さな変化は回転強度に(任意の周期的起動電圧で)かなり大きな変動をもたらす場合がある。発明者らは、MEMS装置を制御された状態で加熱すると、MEMSスキャナが外部フレームを有していなくても共振周波数、そして起動振幅がさらに微調整されることを発見した。再度図26を参照すると、クランプ2608a上の第1の圧力プレート2610上の延在するタブは、クランプ2608b(図示せず)の対応する圧力プレートの場合と同様ヒーター配線を受け入れる。同様に、実装パッド2214c、2214d(これも図示せず)に隣接した対応する圧力プレートもヒーター配線を受け入れる。ヒーター配線は第1の圧力プレート2610の金メッキされたタブに溶接、あるいは、例えば、実装パッド2214上に形成された金属蒸着シリコン接着パッドに溶接するか、あるいは当業者には周知のその他の方法で取り付けることができる。
MEMSスキャナの一端の両方の実装パッドあるいはクランプにヒーター銅線が取り付けられている場合、相互間に電流が流れないようにするために隣接する銅線の電位は同じレベルに維持することが望ましい。対照的に、MEMSスキャナの他端の1つあるいは複数のヒーター導線はトーションアームを通じての電流を発生させるために異なった電圧に設定される。
使用時には、走査振幅はセンサーによってモニターされ、スキャナ102の両端間(一端を形成している実装パッド2214a、2214bと、他端を形成している実装パッド2214c、2214d)の電位が調節される。シリコン材料自体、電流を流すための上に述べたドープされたチャンネル、そして特にトーションアーム114a、114bの抵抗が発熱をもたらす。温度がより高いと、トーションアームの『軟化』とそれに対応する共振周波数の低下が生じる。従って、共振周波数が上記の周期的駆動信号周波数より高ければ、MEMSスキャナの温度を上昇すべく発熱が増大され、それによって共振周波数が駆動信号周波数と合うように微調整される。同様に、MEMSスキャナの共振周波数が駆動信号周波数より低くなると、発熱が低減され、従って装置が冷え、その共振周波数が上昇して駆動信号周波数と一致する。別の実施の形態で、任意のシステム設計で、スキャナがその共振周波数で正確に作動しなくても、その走査振幅を変更するために熱的微調整を用いることができる。
0Wから1.5Wのチューニング電力で約8Hzの共振周波数チューニング範囲をもたらすことが実験的に確認されている。この範囲は走査頻度が高くなると多少下がり、走査頻度が低くなると多少上がるが、恐らく、これは作動中にスキャナ上に気流が生じ冷却効果をもたらすからである。
図30はMEMSスキャナを駆動するための制御システムを示す構成図である。多くの装置では、MEMSスキャナの走査の位相と振幅を正確に制御することが好適である。バーコードスキャナ、レーザーカメラ、走査ビーム表示装置、電子写真プリンターなどの走査ビーム装置では、MEMSスキャナの位相及び/又は振幅を正確に制御するのが有効である。
同様に、スキャナの共振周波数を正確に制御すると、電力消費を最小限にすることができ、そして従来は一般的に行われていたように共振周波数からは多少ずれた周波数ではなく、共振周波数でスキャナを作動させることが可能となり、ある種の応用装置を作成することが可能になるであろう。
図30の制御システム3002の構成図には、MEMSスキャナを駆動制御するための3つの重なったサーボループ、1つの振幅制御サーボループ3004、位相制御サーボループ3006及び共振周波数制御サーボループ3008が示されており、これらはそれぞれ、中間の鎖線、短い鎖線、及び長い鎖線で示されている。
最初に振幅制御サーボループ3004について説明すると、低電圧駆動信号3009が高電圧アンプ3010で増幅されて、周期的高電圧駆動信号3011を発生させ、これが圧電ドライバースタック506の形状で1つ以上のアクチュエータを駆動して、共振MEMS走査ミラー102の周期的発振を誘起する。上の説明から分かるであろうが、磁気、静電、熱的、及びその他のアクチュエータ技術、そしてその他のタイプのアクチュエータを圧電アクチュエータ506に替えて用いることができる。
MEMS走査ミラー102の位相、振幅、位置、及び/又は速度をモニターするために種々の技術を用いることができる。上記の実施の形態で、ミラーによって偏光される光ビームは20%のオーバースキャンを含んでおり、従って、画像領域の縁部は80%走査で終了する。1対の隣接センサー領域を含む光学検出装置3012は、その中心点(センサー領域間の領域の中心)が走査範囲の85%に設定されるように配置される。1つのセンサー領域からの出力は、コンバータ3014によって他のセンサー領域からの出力から差し引かれる。コンバータ3014は差分パルス幅-電圧コンバータで、これは、ビームが走査範囲の中央85%からはみ出した時間量に比例して負電圧を走査振幅信号3016として出力するものである。
マイクロプロセッサ3018は、元の振幅誤差信号3024を生成するために加算器3022内で走査振幅信号3016に加えられる振幅設定ポイント電圧信号3020を設定する。従って、走査振幅が望ましい振幅を上回っている場合、負の走査振幅信号3016の絶対強度が設定ポイント信号3020の絶対強度より大きくなるので、原振幅誤差信号3024は負の数になる。逆に、走査振幅が望ましい値より低い場合は、負の走査振幅信号3016の絶対強度は設定ポイント信号3020の絶対強度より低くなり、そして、原振幅誤差信号3024は正の数になる。
原振幅誤差信号3024は比例積分制御装置(PIC)3026に送られる。PIC3026は調整振幅誤差信号3028をつくりだす。PIC3026は走査振幅の変動に対するシステム応答を低減するように作用する。これによって、原振幅誤差信号3024電圧の偏差が平均化され、振幅誤差がフィードバックされて高電圧駆動信号に影響を及ぼす割合を制御し、それによって振幅制御サーボループ3004の安定性と性能を改善する。
原駆動信号3030は、周期的低電圧信号で、これはMEMSスキャナを駆動するための通常の位相補正信号である。原駆動信号3030はゲイン回路3032によって受信され多重化されて、低電圧駆動信号3090を発生する。従って、MEMSスキャナ102の振幅が低すぎると測定されると、調整振幅誤差信号3028は相対的に高い電圧となり、ゲイン回路3032内で原駆動信号3030によって多重化されると、比較的大きな振幅低電圧駆動信号3009が生成される。MEMSスキャナの振幅が高すぎると測定されると、調整振幅誤差信号3028は相対的に低い電圧となり、ゲイン回路3032内で原駆動信号3030によって多重化されると、比較的低い振幅低電圧駆動信号3009が生成される。どちらの場合でも、それによって走査振幅がマイクロプロセッサ3018によって設定ポイント電圧信号3020として設定される望ましい値に戻される。
位相制御サーボループ3006は位相固定ループとして作動する。振幅制御サーボループ3004との関連で述べたコンバータ3014は位相マーク信号3034を生成し、この信号は水平同期信号3035としてホスト制御装置に送り返される。位相マーク信号3034は一方のエッジ、つまり1つの走査方向を用いて、差分検出装置の対信号から発生される。基準信号3036と位相マーク信号3034の同様のエッジが位相周波数検出装置3038によって比較される。第1の位相周波数検出装置3038は原位相誤差信号3040上に周期的なスパイクを生成し、そのスパイクの幅は位相誤差に比例しており、そして、スパイクの符号は位相マーク信号3034が基準信号3036に対して前か後かを示している。
第1のローパスフィルター3042は原位相誤差信号3040上の周期的スパイクを第1の調整位相誤差信号3044としてのDC電圧に変える。第1のローパスフィルター3042は、位相マーク3034が基準信号3036より前であれば、第1の調整位相誤差信号3044を比較的低い値に設定する。逆に、第1のローパスフィルター3042は、位相マーク3034が基準信号3036より後であれば、第1の調整位相誤差信号3044を比較的高い値に設定する。
第1の調整位相誤差信号3044は電圧制御駆動波形発生装置3046に送られる。この第1の調整位相誤差信号3044の電圧は電圧制御駆動波形発生装置3046によって出力される原駆動信号3030の周波数を決定する。
従って、位相マーク信号3034が基準信号3036より前であれば、上記第1の位相周波数検出装置3038は原位相誤差信号3040に負のスパイクを出力し、このスパイクの幅は位相マーク信号3034と基準信号3036との間の誤差強度に比例している。さらに、原位相誤差信号3040の一連の負のスパイクは第1のローパスフィルター3042を駆動して、第1の調整位相誤差信号3044上に比較的低い電圧を出力し、この電圧は原位相誤差信号3040上のスパイクの幅が狭い場合はやや低く、そして、その幅が広いとその傾向はより著しく(より低く)なる。そして、第1の調整位相誤差信号3044上に低電圧がかかると、電圧制御駆動波形発生装置3046が低い周波数の原駆動信号3030を出力し、位相の小さな偏差(第1の調整位相誤差信号3044にやや低い電圧がかかった場合)は周波数をやや低下させ、位相の比較的大きな偏差(第1の調整位相誤差信号3044に低い電圧がかかった場合)は周波数のより大幅な低下をもたらす。そして、周波数が低くなると、MEMSミラーの位相を遅らせ、位相マーク信号3034をやや遅めに出力させ、それによって、位相マーク信号3034を基準電圧と同期させ、そして、基準信号3036に位相をロックさせる。
位相マーク信号3034が基準信号3036より後であれば、第1の調整位相誤差信号3044の電圧は増大され、原駆動信号3030の駆動周波数が上昇し、同様に、位相マーク信号3034が基準信号3036と同期する。ローパスフィルター3042の時間定数は位相サーボ制御システム3006のダンピングに寄与する。
共振周波数制御サーボループ3008を参照するに、駆動信号とスキャナ応答の相対的位相がMEMSスキャナー共振周波数の調節に用いられる。上に図4に関連して述べたように、MEMSスキャナー応答位相は曲線408が示すような周波数で位相を駆動する。スキャナ振幅応答曲線2402の一次スパイクで、駆動信号とスキャナ応答の位相関係が主要共振ピーク以下で同相(0度)から、主要共振ピークでの−90度を通過して、主要ピークより上の位相から−180度逆転する。共振周波数制御サーボループ3008は位相応答でこの変化を利用して、MEMSスキャナーの共振応答を駆動周波数と一致させるようにする。
共振応答の主要ピークで、駆動信号に対するMEMS装置の位相応答は、0度からその共振ピークでの−90度を通過して−180度に急激に変化する。図24では(図示している周波数範囲が広いので)ほぼ瞬間的であるように示されているが、この逆転は数ヘルツ上で起きる。従って、位相マーク信号3034と駆動信号3030との間の位相オフセットを、MEMSスキャナーの作動がその共振ピークであることを示す−90度に保持するのが望ましい。
1つの例示的な実施の形態によれば、MEMSスキャナー共振周波数の温度依存性が利用される。位相マーク信号3034を、第2の位相周波数検出器3048で原駆動信号3030と比較する。これは第2のローパスフィルター3050と共同で作用して第2の調整位相誤差信号3052を生成する。第2の位相周波数検出器3048は、位相マーク信号3034と駆動信号3030との間の位相オフセットが−90度の場合には第2の調整位相誤差信号に公称電圧をかけて、その相対位相が−90度と−180度の間であればその電圧を増大させ、そしてその相対位相が0度と−90度との間の場合はその電圧を低下させる。公称電圧は、MEMSスキャナー102が共振周波数を駆動周波数と一致させるのに適切な電圧のことである。1つの事例で、そして上に述べたように、MEMSスキャナーは室温で公称作動周波数より数ヘルツ上になるように主要共振ピークを製造中に調整される。そして、共振周波数制御サーボループ共振周波数制御サーボループ3008によって電流を供給して、MEMSスキャナー102の共振周波数を低下させて駆動信号3030と一致させる。
システムが作動中(スタート後)、スイッチ3054は閉じられている。従って、第2の調整位相誤差信号3052上の電圧がヒーター増幅器3056に伝えられる。位相マーク信号3034と駆動信号3030との間の相対位相が−90度と−180度の範囲の場合、第2の位相周波数検出器3048と第2のローパスフィルター3050が協同して−90度からの偏差の程度に比例して第2の調整位相誤差信号3052の電圧を増大させる。ミラー応答の位相が駆動の位相から遅れている場合、ヒーター増幅器3056はMEMSミラー102を通じての電位差を設定するように駆動される。こうした状態が駆動周波数より高いミラーの共振ピークに対応する。
上に述べたように、半導体MEMSスキャナ102を通して電位を増大させると、スキャナ内部でのジュール発熱が増大する。MEMSスキャナー102の温度が上昇するとその共振周波数が低下する。従って、MEMSスキャナー102のピーク共振周波数が駆動信号周波数以上であると、その位相は90度未満で駆動信号の位相から遅れる傾向があり、そして、共振周波数制御サーボループ3008はスキャナ内部の温度を増大させて、位相差を適切な関係に戻し、それによってMEMSスキャナー102のピーク共振周波数を低下させて、駆動信号周波数に一致させる。逆に、MEMSスキャナー102が十分に加熱されて、そのピーク共振周波数が駆動周波数以下に低下すると、その位相は90度を多少上回る程度で駆動信号から送れる傾向を示し、そして制御ループがヒーターの電流を減少させて、従ってピーク共振周波数を多少上昇させて、位相関係が再度−90度になるまで、それを駆動周波数と一致させる。この制御ループによって、スキャナがそのピーク共振周波数で作動することを可能にし、従ってアクチュエータの電力要求を最小限にする。
再度図30を参照すると、マイクロプロセッサ3018は通信機能3058を含んでおり、周辺温度センサー3060を有している。この図で、第2の調整位相誤差信号3052と位相マーク信号3034がマイクロプロセッサ3018に送られること、及び制御線3062と3064がそれぞれスイッチ3054及びヒーター増幅器3056に接続していることが分かるであろう。これらの特徴の多くまたは全部がシステムスタートアップ時に利用される。
図31は、図30に示されるシステム3002によって用いられるスタートアップ方法を示すフローチャートである。プロセス3102に対応するアイドル状態で電力がONであると、位相制御ループ3006と共振周波数制御ループ3008の両方が模擬フィードバックを用いて作動される。マイクロプロセッサ3018は最初に回線3044上の電圧を設定し、その電圧が電圧制御波形発生装置3046に送られる。そうすると、原駆動信号回線3032が、第1の位相周波数検出器3038に対する模擬位相マーク信号3034を出力するコンバータ(図示せず)に対する入力として機能する。次に、第1の位相周波数検出器3038は、模擬位相マーク信号3034を基準信号3036と比較して、原位相誤差信号3040を第1のローパスフィルター3042に出力し、ローパスフィルター3042は、第1の調整位相誤差信号3044の電圧を設定する。従って、位相サーボ制御システム3006は、MEMSスキャナーの動きや検出結果に関係なく作動を続ける。
共振周波数制御サーボループ3008を作動させるために、マイクロプロセッサ3018は、周辺温度センサー3060から周辺温度を読み取る。温度センサー値はデジタル値に変換され、この値が共振周波数ルックアップテーブル(LUT)(図示せず)に対する指数として使われる。得られた共振周波LUT値がデジタル−アナログコンバータ(DAC)を作動させ、このコンバータがヒーター増幅器3056を作動させるための合成共振周波数電圧信号3064を出力する。作動中の場合と同様、ヒーター増幅器3056は、MEMSスキャナー102を通じての電圧を設定し、ジュール発熱がMEMSスキャナーの温度を共振周波数LUT値に対応する温度まで上昇させる。いくつかの例では、共振周波数LUTは、その共振周波数を目標の作動周波数、例えば5KHzに微調整するのに必要なスキャナ温度を判定することで工場での較正ステップとして各MEMSスキャナー102に対して求められる。他の例では、LUTは一群、あるいはずべてのMEMSスキャナーに対して設定することもできる。従って、プロセス3102に対応するアイドル状態で、共振周波数制御サーボループ3008は、MEMSスキャナー102を公称作動温度に維持して、その共振周波数を基準信号3036の周波数と一致させる。
周辺温度を感知する方法に代えて、温度センサー3060をMEMSスキャナー102に熱的に結合して、その温度を測定してもよい。
電源ONアイドルプロセス3102では、マイクロプロセッサ3018は、条件ステップ3104で示されるように、スタート信号がインタフェース3058を通じてホスト制御装置から受信されているかどうかの判定を行う。判定結果がNOの場合、スタート信号がホスト制御装置から受信されるまで、電源ONアイドルプロセス3102が継続される。スタート信号が受信された場合、組み込まれたソフトウエアがスタートアップ振幅制御プロセス3106に進む。スタートアップ振幅制御プロセス3106で、マイクロプロセッサ3018は低電圧駆動信号3009を設定して、高電圧増幅器3010を駆動し、高電圧駆動信号3011を最大振幅で生成し、圧電スタックアクチュエータ506を過剰に作動させる。圧電スタックアクチュエータ506を過剰に作動させると、走査振幅が非常に急速に立ち上がる。1つのスタートアップの事例では、高電圧駆動信号3011は、基準5KHz周波数で正弦波を含んでおり、その振幅は0〜60ボルトである。この例では、MEMSスキャナーはわずか20ミリ秒でその公称走査角度のほぼ90%に達するように駆動され、その結果、約0〜20ボルトのより低い公称定常状態駆動電圧をかけた場合より迅速なシステムスタートアップが可能になる。
他の例で、高電圧駆動信号をアクチュエータ506の誘電ブレークダウン電圧近くまでのより大きな振幅で設定してもよい。高スタートアップ駆動電圧を用いても構わないのは、比較的短い時間だけその電圧がかけられるからであって、その時間は非常に短いから、アクチュエータの熱的限度を超えてしまうことはない。
スタートアップ振幅プロセス3106で、プロセス3108が示すように、システムは安定した位相マーク信号3034を探し求める。安定した位相マーク信号は、いくつかの連続する位相マークを平均化して、それらが振幅制御サーボループ3004の基準を満たしているかどうかを判定する回路によって決定される。安定した位相マーク信号が存在していれば、それはMEMSスキャナー102が比較的一定した周波数で、十分な振幅で作動しており、従って走査ビームが光学的強度センサー3012を通過していることを意味し、プロセスは閉ループ振幅制御プロセス3110に移行して、そこで、スキャナ振幅が振幅制御サーボループ3004で制御される。閉ループ振幅制御プロセス3110に入ると、PIC3026が、上に述べたような安定した動作に適した速度で駆動振幅に変化を導入する。
閉ループ振幅制御プロセス3110は、『待機』プロセス3112に示されているように、システムが安定状態に入るまで待機している間、継続する。1つの例では、システムは閉ループ位相制御プロセス3114に進む前に100ミリ秒待機し、プロセス3114で(コンバータ3014によって生成された)位相マーク信号3034が第1の位相周波数検出器3038に結合されて、原駆動信号3030から発生された同期位相マーク信号の結合が解除される。プロセス3114により、MEMSスキャナー102の周波数が基準信号3036にロックされ、従って、上に述べたように、位相制御サーボループ3006が位相ロックループとして固定される。
閉ループ位相制御プロセス3114の間は、システムはプロセス3116で示されているように、一定期間、例えば30ミリ秒停止する。待機プロセス3116が終了したら、システムは閉ループ共振周波数制御プロセス3118に入り、そのプロセスには共振周波数制御サーボループ3008が含まれている。共振周波数制御サーボループ3008はスイッチ3062を閉じることで関連付けられ、ほとんど同時にマイクロプロセッサ3018からのDAC信号3064の出力を中止する。これにより、図30に関連して上に述べた方法で、ヒーター増幅器3056を駆動する第2の調整位相誤差信号3052が発生される。
1つの例示的な実施の形態によれば、図31のスタートアッププロセスは、ホスト制御装置からスタートアップ信号を受信してから2秒以内に走査システムの安定した作動を開始させる。本発明の概要、図面の簡単な説明、そして本発明の例示的な実施の形態に関する詳細な説明は、読み手に本発明を理解しやすくするためのものである。本発明の範囲内で他の構造、方法なども可能である。従って、本発明の範囲は請求項のみによって限定される。