以下、本発明の実施の形態につき詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は本発明の実施形態の代表例であって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変形して実施することができる。
本発明は、電子写真感光体の下引き層形成用塗布液(以下、単に、「塗布液」と略記する場合がある)の製造方法(以下、単に、「塗布液製造方法」と略記する場合がある)、その製造方法を使用して得られた塗布液、該塗布液を塗布形成してなる下引き層を有する電子写真感光体、該電子写真感光体を用いる画像形成装置、及び該電子写真感光体を用いた電子写真カートリッジに係るものである。
また、本発明の電子写真感光体は、導電性支持体上に下引き層と感光層とを有するものである。本発明に係る下引き層は、導電性支持体と感光層との間に設けられ、導電性支持体と感光層との接着性の改善、導電性支持体の汚れや傷等の隠蔽、不純物や表面物性の不均質化によるキャリヤ注入の防止、電気特性の不均一性の改良、繰り返し使用による表面電位低下の防止、画質欠陥の原因となる局所的な表面電位変動の防止等の機能の少なくとも何れか1つを有し、光電特性の発現に必須ではない層である。
<分散装置>
本発明の塗布液製造方法は、特定の分散装置(ミル)を使用するものである。すなわち、本発明の塗布液製造方法に用いられる分散装置は、円筒形のステータと、ステータの一端に設けられるスラリーの供給口と、ステータの他端に設けられるスラリーの排出口と、ステータ内に充填されるメディアと供給口より供給されたスラリーを攪拌混合するロータと、排出口に連結され、かつロータと一体をなして回転するか、或いはロータとは別個に独立して回転し、遠心力の作用によりメディアとスラリーに分離して、スラリーを排出口より排出させるセパレータとよりなる湿式攪拌ボールミルである。
上記の湿式攪拌ボールミルによって分散された金属酸化物粒子を有する下引き層形成用塗布液は、該金属酸化物粒子が沈殿することがなく、ゲル化もしにくいので、長期保存や長期使用が可能となる。また、該塗布液された下引き層の膜厚が均一で、低温低湿度でも安定した電気特性を有する電子写真感光体を与えることができる。
ロータとしては、スラリーを攪拌できるものであれば形状は問わないが、ピン、ディスク又はアニューラタイプのものが攪拌効率の点で好ましい。また、上記のセパレータは、遠心力の作用により、メディアとスラリーに分離できるものであれば形状は問わないが、分離効率の点でインペラタイプのものが好ましい。
[湿式攪拌ボールミルの好ましい構造1]
上記の湿式攪拌ボールミルの中でも、前記セパレータを回転駆動させるシャフトの軸心を、前記排出口と通ずる中空な排出路としたものが好ましい。すなわち、円筒形のステータと、ステータの一端に設けられるスラリーの供給口と、ステータの他端に設けられるスラリーの排出口と、ステータ内に充填されるメディアと供給口より供給されたスラリーを攪拌混合するロータと、排出口に連結され、かつロータと一体をなして回転するか、或いはロータとは別個に独立して回転し、遠心力の作用によりメディアとスラリーに分離して、スラリーを排出口より排出させるインペラタイプのセパレータとよりなる湿式攪拌ボールミルであって、セパレータを回転駆動するシャフトの軸心を、上記排出口と通ずる中空な排出路とした湿式攪拌ボールミルであることが好ましい。
このような湿式攪拌ボールミルによれば、セパレータによりメディアを分離したスラリーは、シャフトの軸心をその中心線とする中空な排出路を通って排出されるが、軸心では遠心力が作用しないため、スラリーは運動エネルギーを有しない状態で排出される。このために運動エネルギーが無駄に放出されず、無駄な動力が消費されなくなる。
[湿式攪拌ボールミルの好ましい構造2]
上記の湿式攪拌ボールミルの中でも、前記セパレータが、対向する内側面にブレードの嵌合溝を備えた二枚のディスクと、嵌合溝に嵌合してディスク間に介在するブレードと、ブレードを介在させたディスクを両側より挟持する押え手段とを有するものである湿式攪拌ボールミルであることが好ましい。
すなわち、円筒形のステータと、ステータの一端に設けられるスラリーの供給口と、ステータの他端に設けられるスラリーの排出口と、ステータ内に充填されるメディアと供給口より供給されたスラリーを攪拌混合するロータと、排出口に連結され、かつロータと一体をなして回転するか、或いはロータとは別個に独立して回転し、遠心力の作用によりメディアとスラリーに分離して、スラリーを排出口より排出させるインペラタイプのセパレータとよりなる湿式攪拌ボールミルであって、前記セパレータが、対向する内側面にブレードの嵌合溝を備えた二枚のディスクと、嵌合溝に嵌合してディスク間に介在するブレードと、ブレードを介在させたディスクを両側より挟持する押え手段とを有するものである湿式攪拌ボールミルであることが好ましい。
前記セパレータをシャフトに固定する支持手段は、段付軸をなすシャフトの段と、シャフトに嵌合してディスクを押さえる円筒状の押え手段とより構成され、シャフトの段と押え手段とでブレードを介在させたディスクを両側より挟み込んで支持するようにされる。
このようなセパレータを有する湿式攪拌ボールミルによれば、分散メディアと分散液の分離が効率的にできる。
湿式攪拌ボールミルは、横向きでもよいが、メディアの充填率を多くするために好ましくは縦向きで、排出口が湿式攪拌ボールミル上端に設けられる。またセパレータもメディア充填レベルより上方に設けるのが望ましい。排出口をミル上端に設ける場合、供給口はミル底部に設けられる。
[湿式攪拌ボールミルの他の好ましい構造]
湿式攪拌ボールミルの他の好ましい構造において、供給口は弁座と、弁座に昇降可能に嵌合し、弁座のエッジと線接触が可能なV形、台形或いはコーン状の弁体とより構成され、弁座のエッジとV形、台形或いはコーン状の弁体との間にメディアが通過し得ないような環状のスリットを形成することにより、原料スラリーは供給されるが、メディアの落ち込みは防止できるようにされる。また弁体を上昇させることによりスリットを広げてメディアを排出させたり、或いは弁体を降下させることによりスリットを閉じてミルを密閉させたりすることが可能である。更にスリットは弁体と弁座のエッジで形成されるため、原料スラリー中の粗粒子が噛み込み難く、噛み込んでも上下に抜け出し易く詰まりを生じにくい。
また、弁体を振動手段により上下に振動させるようにすれば、スリットに噛み込んだ粗粒子をスリットより抜け出させることができるうえ、噛み込み自体が生じ難くなる。しかも弁体の振動により原料スラリーに剪断力が加わって粘度が低下し、上記スリットへの原料スラリー通過量、すなわち供給量を増加させることができる。弁体を振動させる振動手段としては、バイブレータ等の機械的手段のほか、弁体と一体をなすピストンに作用する圧縮空気の圧力を変動させる手段、例えば往復動型の圧縮機、圧縮空気の吸排を切換える電磁切換弁等を用いることができる。
このような湿式攪拌ボールミルにはまた、底部にメディアを分離するスクリーンと製品スラリーの取出し口を設け、粉砕終了後、ミル内に残留する製品スラリーを取り出せるようにすることが望ましい。
湿式攪拌ボールミルの他の好ましい構造は、円筒形の縦型のステータと、ステータの底部に設けられる製品スラリーの供給口と、ステータの上端に設けられるスラリーの排出口と、ステータの上端に軸支され、モータ等の駆動手段によって回転駆動されるシャフトと、シャフトに固定され、ステータ内に充填されるメディアと供給口より供給されたスラリーを攪拌混合するピン、ディスク或いはアニューラタイプのロータと、排出口近くに設けられ、スラリーよりメディアを分離するセパレータと、ステータ上端のシャフトを支承する軸承部に設けられるメカニカルシールとからなる縦型の湿式攪拌ボールミルにおいて、メカニカルシールのメイティングリングと接触するOリングが嵌合する環状溝の下側部に下方に向かって拡開するテーパ状の切込みを形成したものである。
上記湿式攪拌ボールミルによれば、メカニカルシールをメディアやスラリーが運動エネルギーを殆ど有しない軸心部で、しかもそれらの液面レベルより上方のステータ上端に設けることによりメカニカルシールのメイティングリングとOリング嵌合溝下側部との間にメディアやスラリーが入り込むのを大幅に減らすことができる。
その上、Oリングが嵌合する環状溝の下側部は、切込みにより下方に向かって拡開し、クリアランスが広がっているため、スラリーやメディアが入り込んで噛み込んだり、固化したりすることによる詰まりを生じ難く、メイティングリングのシールリングへの追随が円滑に行われてメカニカルシールの機能維持が行われる。なお、Oリングが嵌合する嵌合溝の下側部は断面V形をなし、全体が薄肉となる訳ではないから、強度が損なわれることはないし、Oリングの保持機能が損なわれることもない。
<縦型湿式攪拌ボールミルの一例>
図1に、本発明の下引き層形成用塗布液の製造方法に特に好ましく用いられる縦型湿式攪拌ボールミルの一例を示す。図1において、原料スラリーは、縦型湿式攪拌ボールミルに供給され、該ミルでメディアと共に攪拌されることにより粉砕されたのち、セパレータ14でメディアを分離してシャフト15の軸心を通って排出され、戻される経路を辿り、循環粉砕されるようになっている。
縦型湿式攪拌ボールミルは、図1に詳細に示されるように、縦向きの円筒形で、かつミル冷却のための冷却水が通されるジャケット16を備えたステータ17と、ステータ17の軸心に位置してステータ上部において回転可能に軸承されると共に、軸承部にメカニカルシールを備え、かつ上側部の軸心を中空な排出路19としたシャフト15と、シャフト下端部に径方向に突設されるピンないしディスク状のロータ21と、シャフト上部に固着され、駆動力を伝達するプーリ24と、シャフト上端の開口端に装着されるロータリージョイント25と、ステータ内の上部近くにおいてシャフト15に固着されるメディア分離のためのセパレータ14と、ステータ底部にシャフト15の軸端に対向して設けられる原料スラリーの供給口26と、ステータ底部の偏心位置に設けられる製品スラリー取出し口29に設置される格子状のスクリーンサポート27上に取着され、メディアを分離するスクリーン28とからなっている。
セパレータ14は、シャフト15に一定の間隔を存して固着される一対のディスク31と、両ディスク31を連結するブレード32とよりなってインペラを構成し、シャフト15と共に回転してディスク間に入り込んだメディアとスラリーに遠心力を付与し、その比重差によりメディアを径方向外方に飛ばす一方、スラリーをシャフト15の軸心の排出路19を通って排出させるようにしている。
原料スラリーの供給口26は、ステータ底部に形成される弁座に昇降可能に嵌合する逆台形状の弁体35と、ステータ底部より下向きに突出する有底の円筒体36よりなり、原料スラリーの供給により弁体35が押し上げられると、弁座との間に環状のスリットが形成され、これより原料スラリーがミル内に供給されるようになる。
原料供給時の弁体35は、円筒体36内に送り込まれた原料スラリーの供給圧によりミル内の圧力に抗して上昇し、弁座との間にスリットを形成する。スリットでの詰まりを解消するため、弁体35が短い周期で上限位置まで上昇する上下動を繰返して噛み込みを解消できるようにしてある。この弁体35の振動は、常時行っておいてもよいし、原料スラリー中に粗粒子が多量に含まれる場合に行ってもよく、また詰まりによって原料スラリーの供給圧が上昇したとき、これに連動して行われるようにしてもよい。
メカニカルシールは、図4に詳細に示されるように、シャフト15に固定されるシールリング100にステータ側のメイティングリング101をバネ102の作用により圧着し、ステータ17とメイティングリング101とのシールは、ステータ側の嵌合溝103に嵌合するOリング104によって行うようになっているもので、図4において、Oリング嵌合溝103の下側部には、下向きに拡開するテーパ状の切込み(図示しない)が入れられ、嵌合溝103の下側部とメイティングリング101との間のクリアランス最小部分の長さaが狭く、メディアやスラリーが入り込んで固化し、メイティングリング101の動きが阻害されてシールリング100との間のシールが損なわれることのないようにしてある。
上記実施形態では、ロータ21とセパレータ14は同じシャフト15に固定されているが、別の実施形態では同軸上に配置した別々のシャフトに固定され、別個に回転駆動される。ロータとセパレータを同じシャフトに取り付けた上記図示する実施形態においては、駆動装置が一つですむため構造が簡単となるのに対し、ロータとシャフトを別々のシャフトに取り付けて、別々の駆動装置によって回転駆動させるようにした後者の実施形態では、ロータとセパレータをそれぞれ最適な回転数で回転駆動させることができる。
図5に示すボールミルは、シャフト105を段付軸とし、シャフト下端よりセパレータ106を嵌挿し、次いでスペーサ107とディスクないしピン状のロータ108とを交互に嵌挿したのち、シャフト下端にストッパー109をネジ110により止着し、シャフト105の段105aとストッパー109とによりセパレータ106、スペーサ107及びロータ108を挟み込んで連結し固定したもので、セパレータ106は図6に示すように、内側に対向する面にそれぞれブレード嵌合溝114を形成した一対のディスク115と、両ディスク間に介在してブレード嵌合溝114に嵌合させたブレード116と、両ディスク115を一定の間隔に維持し、排出路111に通じる孔112を形成した環状のスペーサ113とよりなってインペラを構成している。
このような構造を有する湿式撹拌ボールミルとしては、具体的には例えば寿工業株式会社製のウルトラアペックスミル等が挙げられる。
次に、原料スラリーの粉砕方法について説明する。ボールミルのステータ17内にメディアを充填し、外部動力により駆動されてロータ21及びセパレータ14が回転駆動される一方、原料スラリーが一定量、供給口26に送られ、これにより弁座のエッジと弁体35との間に形成されるスリットを通してミル内に供給される。
ロータ21の回転によりミル内の原料スラリーとメディアが攪拌混合されてスラリーの粉砕が行われ、またセパレータ14の回転により、セパレータ内に入り込んだメディアとスラリーが比重差により分離され、比重の重いメディアが径方向外方に飛ばされるのに対し、比重の軽いスラリーがシャフト15の軸心に形成される排出路19を通して排出され、原料タンクに戻される。粉砕がある程度進行した段階でスラリーの粒度を適宜測定し、所望粒度に達すると、一旦原料ポンプを停止し、次いでミルの運転を停止し、粉砕を終了する。
このような縦型湿式攪拌ボールミルを用いて、金属酸化物粒子を分散させる場合、ミル内に充填されるメディアの充填率は50〜100%で粉砕するようにするのが好ましく、より好ましくは70〜95%、特に好ましくは80〜90%である。
本発明に係る下引き層形成用塗布液を分散するのに適用される湿式攪拌ボールミルは、セパレータがスクリーンやスリット機構であってもよいが、インペラタイプのものが望ましく、縦型であることが好ましい。湿式攪拌ボールミルは縦向きにし、セパレータをミル上部に設けることが望まれるが、特にメディアの充填率を80〜90%に設定すると、粉砕が最も効率的に行われるうえ、セパレータをメディア充填レベルより上方に位置させることが可能となり、メディアがセパレータに乗って排出されるのを防止することができる効果もある。
<分散メディア>
本発明の下引き層形成用塗布液の製造方法は、金属酸化物粒子及びバインダー樹脂を含有する電子写真感光体の下引き層形成用塗布液の製造方法において、該金属酸化物粒子を分散させるために、平均粒子径5〜200μmの分散メディアを用いることが必須である。
平均粒子径5〜200μmの分散メディアを用いて分散した金属酸化物粒子を使用することによって、短時間で均一な分散液が得られ、分散安定性の良好な分散液が得られる。分散メディアの平均粒子径が大きくなりすぎると、金属酸化物粒子に過度に大きな力が加わり、金属酸化物粒子が凝集し、粗大な酸化物粒子凝集体になってしまう場合がある。一方、過度に分散メディアの平均粒子径が小さくなると、分散メディアの質量が小さくなりすぎて効率よい分散ができなくなる。
本発明の下引き層形成用塗布液の製造方法において、湿式攪拌ボールミル中で金属酸化物粒子の分散を行う場合に、当該湿式攪拌ボールミルの分散メディアとして、その平均粒子径が5μm以上であることが必須であるが、好ましくは10μm以上である。また、200μm以下であることが必須であるが、100μm以下が好ましい。小さな粒子径の分散メディアの方が短時間で均一な分散液を与える傾向にあるが、過度に分散メディアの平均粒子径が小さくなると、分散メディアの質量が小さくなりすぎて効率よい分散ができなくなる場合がある。
上記平均粒子径の分散メディアを用いると、ゲル化したり、分散された金属酸化物粒子が沈殿したりせず、長期保存及び長期使用が可能となる安定した状態の下引き層形成用塗布液を得ることができ、また、塗布液の粘性等の物性変化が小さく、連続して支持体上に塗布する際、下引き層の膜厚が均一なものとなる。
上記平均粒子径の分散メディアは、スラリー(分散液)から好適に分離することが一般には困難とされるが、本発明の塗布液製造方法における上記湿式攪拌ボールミルを用いると、分離を好適に行うことができる。
本発明における分散メディアの「平均粒子径」は、画像解析により測定する。分散メディアは、通常、真球に近い形状をしているため、画像解析により測定することにより平均粒子径を求めることができる。具体的測定装置は、(株)ニレコ社製のLUZEX50という画像解析装置により、分散メディアの平均粒子径を測定し、本発明の「分散メディアの平均粒子径」は、その装置で測定されたものとして定義する。
分散メディアの真密度としては特に限定はないが、5.5g/cm3以上のものが好ましく、特に好ましくは5.9g/cm3以上、より好ましくは6.0g/cm3以上である。高い真密度を有する分散メディアを使用して分散した方が、短時間で均一な分散液を与える傾向があるので好ましい。分散メディアの「真密度」は、アルキメデス法により測定したものとして定義する。
本発明における分散メディアの真球度としては特に限定はないが、1.08以下のものが好ましく、より好ましくは1.07以下のものである。真球度は、(株)ニレコ製のLUZEX50という画像解析装置により測定し、その装置で測定されたものとして定義する。
分散メディアの材質としては、下引き層形成用塗布液に不溶、かつ、真密度が下引き層形成用塗布液より大きなものであって、下引き層形成用塗布液と反応したり、下引き層形成用塗布液を変質させたりしないものであれば、公知の如何なる分散メディアも使用することができ、クローム球(玉軸受用鋼球)、カーボン球(炭素鋼球)等のスチール球;ステンレス球;窒化珪素球、炭化珪素、ジルコニア、アルミナ等のセラミック球;窒化チタン、炭窒化チタン等の膜でコーティングされた球等が挙げられるが、これらの中でもセラミック球が好ましく、特にはジルコニア焼成ボールが好ましい。より具体的には、特許第3400836号公報に記載のジルコニア焼成ビーズを用いることが特に好ましい。
<分散液に対する固形分の質量比率>
本発明の下引き層形成用塗布液の製造方法は、分散液に対する固形分の質量比率を、8〜70質量%の範囲にして、分散液を分散処理することが必須である。ここで、「分散液」とは、分散処理される液そのものをいい、必ずしも「塗布液」を意味しない。すなわち、分散処理後の分散液をそのまま「塗布液」としてもよいし、分散処理後の分散液に、固体のバインダー樹脂及び/又はバインダー樹脂溶液や、その他の成分等を配合させて「塗布液」としてもよい。
「固形分」とは、分散液中の金属酸化物粒子とバインダー樹脂をいう。分散液全体に対する固形分の質量比率が小さすぎる場合は、過分散による金属酸化物粒子の凝集がおこる場合があり、一方、大きすぎる場合は、分散液の流動性が低下し、分散不良となる場合がある。8〜70質量%の範囲が必須であるが、好ましくは10〜65質量%の範囲である。
分散溶媒の使用量は、生産性の観点から、分散対象となる金属酸化物1質量部に対して、通常0.1質量部以上、好ましくは1質量部以上、また、通常500質量部以下、好ましくは100質量部以下の範囲である。
<湿式ボールミルの運転条件>
本発明における湿式攪拌ボールミルの運転条件は、塗布液中の金属酸化物粒子の体積平均粒子径、塗布液の安定性、該塗布液を塗布形成してなる下引き層の表面形状、該塗布液を塗布形成してなる下引き層を有する電子写真感光体の特性に影響し、特に下引き層形成用塗布液の供給速度と、ロータの回転速度が影響の大きいものとして挙げられる。
下引き層形成用塗布液の供給速度は、ミル中に下引き層形成用塗布液の滞留する時間が関係するため、ミルの容積及びその形状の影響を受けるが、通常用いられるステータの場合、ミル容積1Lあたり、20kg/時間〜80kg/時間の範囲が好ましく、より好ましくはミル容積1Lあたり、30kg/時間〜70kg/時間の範囲である。
また、ロータの回転速度は、ロータの形状やステータとの間隙等のパラメータの影響を受けるが、通常用いられるステータ及びロータの場合、ロータ先端部の周速が5m/秒〜20m/秒の範囲となることが好ましく、より好ましくは6m/秒〜15m/秒の範囲であり、特に好ましくは8m/秒〜12m/秒の範囲である。
分散メディア以外に、分散後に容易に除去することのできる分散助剤を併用して実施することも可能である。分散助剤の例としては、食塩、ぼう硝等が挙げられる。
金属酸化物の分散は、分散溶媒の共存下、湿式で行なうことが好ましいが、バインダー樹脂や各種添加剤を同時に混合していても構わない。該分散溶媒としては、特に制限されないが、後記する塗布溶液の有機溶媒を用いれば、分散後に溶媒交換等の工程を経る必要が無くなり好適である。これらの溶媒は何れか1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて混合溶媒として用いてもよい。
有機溶媒の使用量は、生産性の観点から、分散対象となる金属酸化物粒子1質量部に対して通常0.1質量部以上、好ましくは1質量部以上、また、通常500質量部以下、好ましくは100質量部以下の範囲である。
分散時の温度としては、溶媒(又は混合溶媒)の凝固点以上、沸点以下で行なうことが可能であるが、製造時の安全性の面から、通常、5℃以上、200℃以下の範囲で行なわれる。
<下引き層形成用塗布液>
[金属酸化物粒子の粒径分布等]
本発明の塗布液製造方法を使用して製造された塗布液中の金属酸化物粒子の、動的光散乱法により測定される「体積平均粒子径」は特に限定はないが、0.1μm以下であることが好ましく、0.09μm以下であることが特に好ましい。また、本発明の塗布液製造方法によると、金属酸化物粒子の体積平均粒子径を、上記値以下になるように分散させることが可能である。
また、塗布液中の金属酸化物粒子の、「累積90%粒子径」は特に限定はないが、0.3μm以下であることが好ましく、0.2μm以下であることが特に好ましい。また、本発明の塗布液製造方法によると、金属酸化物粒子の累積90%粒子径を上記値以下になるように分散させることが可能である。
本発明において、「体積平均粒子径」とは、金属酸化物粒子の全体積を100%として累積カーブを求めた時、累積カーブが、小粒径側からカウントして体積で50%となる点の粒子径と定義する。また、本発明において、「累積90%粒子径」とは、金属酸化物粒子の全体積を100%として累積カーブを求めた時、累積カーブが、小粒径側からカウントして体積で90%となる点の粒子径と定義する。
本発明における「体積平均粒子径」も「累積90%粒子径」も動的光散乱法によって測定したものである。動的光散乱法は、微小に分散された粒子のブラウン運動の速さを、粒子にレーザー光を照射してその速度に応じた位相の異なる光の散乱(ドップラーシフト)を検出して粒度分布を求めるものである。本発明の塗布液中における金属酸化物粒子の「体積平均粒子径」や「累積90%粒子径」の値は、塗布液系中に金属酸化物粒子が安定に分散しているときの値であり、分散前の粉体としての金属酸化物粒子やウエットケーキでの金属酸化物粒子の粒子径を意味していない。
本発明における「体積平均粒子径」も「累積90%粒子径」も、動的光散乱方式粒度分析計(日機装社製、MICROTRAC UPA model:9340-UPA)(以下、「UPA」と略記する)を用いて、以下の設定にて測定したものとして定義される。具体的な測定操作は、上記粒度分析計の取扱説明書(日機装社製、書類No.T15-490A00、改訂No.E)に基づいて行うものとする。測定時は、サンプル濃度指数(SIGNAL LEVEL)が0.6〜0.8になるように、メタノール/1−プロパノール=7/3(質量比)の混合溶媒で希釈し、25℃で測定するものとする。
測定上限 :5.9978μm
測定下限 :0.0035μm
チャンネル数:44
測定時間 :300sec
測定温度 :25℃
粒子透過性 :吸収
粒子屈折率 :N/A(適用しない)
粒子形状 :非球形
密度(g/cm3):4.20 (*)
分散媒種類 :メタノール/1−プロパノール=7/3(質量比)
分散媒屈折率:1.35
(*)二酸化チタン粒子の場合の例であり、他の粒子の場合は、前記取扱説明書に記載の数値を用いる。
[金属酸化物粒子の種類]
本発明は、金属酸化物粒子及びバインダー樹脂を含有する電子写真感光体の下引き層形成用塗布液の製造方法である。ここで、本発明における金属酸化物粒子としては、通常電子写真感光体に使用可能な如何なる金属酸化物粒子も使用することができる。金属酸化物粒子として、より具体的には、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化鉄等の1種の金属元素を含む金属酸化物粒子;チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等の複数の金属元素を含む金属酸化物粒子が挙げられる。これらの中でもバンドギャップが2〜4eVの金属酸化物粒子が好ましい。金属酸化物粒子は、一種類の粒子のみを用いてもよいし、複数の種類の粒子を混合して用いてもよい。
これらの金属酸化物粒子の中でも、酸化チタン粒子、酸化アルミニウム粒子、酸化珪素粒子又は酸化亜鉛粒子が好ましく、より好ましくは酸化チタン粒子又は酸化アルミニウム粒子であり、酸化チタン粒子が特に好ましい。酸化チタン粒子の結晶型としては、ルチル、アナターゼ、ブルッカイト、アモルファスの何れも用いることができる。また、これらの結晶状態の異なるものから、複数の結晶状態のものが含まれていてもよい。
金属酸化物粒子は、その表面に種々の表面処理を行ってもよい。例えば、酸化錫、酸化アルミニウム、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、酸化珪素等の無機物、又はステアリン酸、ポリオール、有機珪素化合物等の有機物による処理を施していてもよい。特に、酸化チタン粒子を用いる場合には、有機珪素化合物により表面処理されていることが好ましい。有機珪素化合物としては、ジメチルポリシロキサン、メチル水素ポリシロキサン等のシリコーンオイル及びメチルジメトキシシラン;ジフェニルジメトキシシラン等のオルガノシラン;ヘキサメチルジシラザン等のシラザン;ビニルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等のシランカップリング剤等が好ましく、下記一般式(1)の構造で表されるシラン処理剤が酸化チタン粒子との反応性もよく最も良好な処理剤である。
[一般式(1)中、R
1及びR
2は、それぞれ独立してアルキル基を表し、R
3は、アルキル基又はアルコキシ基を表す。]
一般式(1)中、R1及びR2は、それぞれ独立してアルキル基を表すが、好ましくはメチル基又はエチル基である。また、R3は、アルキル基又はアルコキシ基を表すが、好ましくは、メチル基、エチル基、メトキシ基又はエトキシ基である。
これらの表面処理された粒子の最表面は、このような処理剤で処理されていることが好ましいが、該処理の前に、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化ジルコニウム等の処理剤等で処理されていることも好ましい。
酸化チタン粒子は、一種類の粒子のみを用いてもよいし、複数の種類の粒子を混合して用いてもよい。
使用する金属酸化物粒子は、通常、平均一次粒子径が500nm以下のものが用いられ、好ましくは1nm〜100nmのものが用いられ、より好ましくは5〜50nmのものが用いられる。この「平均一次粒子径」は、透過型電子顕微鏡(Transmission electron microscope)(以下、「TEM」と略記することがある)により、金属酸化物粒子を直接観察し、観察された金属酸化物粒子の直径の算術平均値として定義される。
また、使用する金属酸化物粒子としては、種々の屈折率を有するものが利用可能である。通常、電子写真感光体に用いることのできるものであれば、どのようなものも使用可能であるが、屈折率1.4以上であって、屈折率3.0以下のものが好ましい。金属酸化物粒子の屈折率は、各種の刊行物に記載されているが、例えば、フィラー活用辞典(フィラー研究会編、大成社、1994)によれば下記表1のようになっている。
本発明における金属酸化物粒子のうち、酸化チタン粒子の具体的な商品名としては、表面処理を施していない超微粒子酸化チタン「TTO−55(N)」、Al2O3被覆を施した超微粒子酸化チタン「TTO−55(A)」、「TTO−55(B)」、ステアリン酸で表面処理を施した超微粒子酸化チタン「TTO−55(C)」、Al2O3とオルガノシロキサンで表面処理を施した超微粒子酸化チタン「TTO−55(S)」、高純度酸化チタン「CR−EL」、硫酸法酸化チタン「R−550」、「R−580」、「R−630」、「R−670」、「R−680」、「R−780」、「A−100」、「A−220」、「W−10」、塩素法酸化チタン「CR−50」、「CR−58」、「CR−60」、「CR−60−2」、「CR−67」、導電性酸化チタン「SN−100P」、「SN−100D」、「ET−300W」(以上、石原産業株式会社製);「R−60」、「A−110」、「A−150」等の酸化チタン;Al2O3被覆を施した「SR−1」、「R−GL」、「R−5N」、「R−5N−2」、「R−52N」、「RK−1」、「A−SP」;SiO2、Al2O3被覆を施した「R−GX」、「R−7E」;ZnO、SiO2、Al2O3被覆を施した「R−650」;ZrO2、Al2O3被覆を施した「R−61N」(以上、堺化学工業株式会社製);また、SiO2、Al2O3で表面処理された「TR−700」、ZnO、SiO2、Al2O3で表面処理された「TR−840」、「TA−500」;「TA−100」、「TA−200」、「TA−300」等表面未処理の酸化チタン;Al2O3で表面処理を施した「TA−400」(以上、富士チタン工業株式会社製);表面処理を施していない「MT−150W」、「MT−500B」、SiO2、Al2O3で表面処理された「MT−100SA」、「MT−500SA」;SiO2、Al2O3とオルガノシロキサンで表面処理された「MT−100SAS」、「MT−500SAS」(以上、テイカ株式会社製)等が挙げられる。
また、酸化アルミニウム粒子の具体的な商品名としては、「Aluminium Oxide C」(日本アエロジル社製)等が挙げられる。また、酸化珪素粒子の具体的な商品名としては、「200CF」、「R972」(日本アエロジル社製)、「KEP−30」(日本触媒株式会社製)等が挙げられる。また、酸化スズ粒子の具体的な商品名としては、「SN−100P」(石原産業株式会社製)等が挙げられる。そして、酸化亜鉛粒子の具体的な商品名としては「MZ−305S」(テイカ株式会社製)が挙げられる。ただ、本発明において使用可能な金属酸化物粒子は、これらに限定されるものではない。
本発明において、バインダー樹脂1質量部に対して、金属酸化物粒子は0.5質量部〜4質量部の範囲で用いることが好ましい。特に好ましくは0.6質量部〜3.9質量部の範囲である。
[バインダー樹脂の種類]
本発明において使用されるバインダー樹脂としては、下引き層形成用塗布液に通常用いられる、有機溶剤に可溶であって、かつ、形成後の下引き層が、感光層形成用の塗布液に用いられる有機溶剤に不溶であるか溶解性が低く、実質上混合しないものであれば、特に限定されるものではない。バインダー樹脂は、1種類又はそれ以上を併用することもできる。
このようなバインダー樹脂としては例えば、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸、セルロース類、ゼラチン、デンプン、ポリウレタン、ポリイミド、ポリアミド等が、単独あるいは硬化剤とともに使用できる。熱硬化性樹脂、光硬化樹脂等の硬化性樹脂も、良好な塗布性、良好な画像特性、良好な環境特性の点で好ましい。また、アルコール可溶性の共重合ポリアミド、変性ポリアミド等のポリアミド樹脂は、良好な分散性及び塗布性を示すため特に好ましい。
ポリアミド樹脂としては例えば、6−ナイロン、66−ナイロン、610−ナイロン、11−ナイロン、12−ナイロン等を共重合させた、いわゆる共重合ナイロンや、N−アルコキシメチル変性ナイロン、N−アルコキシエチル変性ナイロンのように、ナイロンを化学的に変性させたタイプのアルコール可溶性ナイロン樹脂等を挙げることができる。具体的な商品名としては、例えば「CM4000」「CM8000」(以上、東レ製)、「F−30K」「MF−30」「EF−30T」(以上、ナガセケムテック株式会社製)等が挙げられる。
これらポリアミド樹脂の中でも、下記一般式(2)で表されるジアミンを構成成分として含む共重合ポリアミド樹脂が特に好ましく用いられる。
一般式(2)においてR4〜R7は、水素原子又は有機置換基を表す。m、nはそれぞれ独立に0〜4の整数を表し、置換基が複数の場合それらの置換基は互いに異なっていてもよい。R4〜R7で表される有機置換基としては、炭素数20以下の、ヘテロ原子を含んでいても構わない炭化水素基が好ましく、より好ましくは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基等のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基等のアルコキシ基;フェニル基、ナフチル基、アントリル基、ピレニル基等のアリール基等が挙げられる。更に好ましくは、アルキル基又はアルコキシ基であり、そのうち特に好ましくは、メチル基又はエチル基である。
前記一般式(2)で表されるジアミンを構成成分として含む共重合ポリアミド樹脂は、他に例えば、γ−ブチロラクタム、ε−カプロラクタム、ラウリルラクタム等のラクタム類;1,4−ブタンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、1,20−アイコサンジカルボン酸等のジカルボン酸類;1,4−ブタンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、1,8−オクタメチレンジアミン、1,12−ドデカンジアミン等のジアミン類;ピペラジン等を組み合わせて、二元、三元、四元等に共重合させたものも好ましいものとして挙げられる。この共重合比率について特に限定はないが、通常、前記一般式(2)で表されるジアミン成分が、ジカルボン酸、ラクタム類も含めた全構成成分に対して、5〜40mol%であり、好ましくは5〜30mol%である。
共重合ポリアミド樹脂の数平均分子量としては、10000〜50000が好ましく、特に好適には15000〜35000である。数平均分子量が小さすぎても、大きすぎても膜の均一性を保つことが難しくなる場合がある。
共重合ポリアミド樹脂の製造方法には特に制限はなく、通常のポリアミドの重縮合方法が適宜適用され、溶融重合法、溶液重合法、界面重合法等が用いられる。また重合に際して、酢酸や安息香酸等の一塩基酸、あるいは、ヘキシルアミン、アニリン等の一酸塩基等を、分子量調節剤として加えることも何らさしつかえない。また、亜リン酸ソーダ、次亜リン酸ソーダ、亜リン酸、次亜リン酸やヒンダードフェノールに代表される熱安定剤やその他の重合添加剤を加えることも可能である。
本発明で使用される共重合ポリアミドの具体例を以下に示す。ただし具体例中、共重合比率はモノマーの仕込み比率(モル比率)を表す。
本発明の下引き層形成用塗布液におけるバインダー樹脂の含有率は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。ただし、本発明の下引き層形成用塗布液におけるバインダー樹脂の含有率は、通常0.5質量%以上、好ましくは1質量%以上、また、通常20質量%以上、好ましくは10質量%以下の範囲で用いられる。
<下引き層形成用塗布液に用いる有機溶媒>
本発明の塗布液製造方法に用いる有機溶媒としては、本発明におけるバインダー樹脂を溶解することができる有機溶媒であれば、どのようなものでも使用することができる。具体的には、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ノルマルプロパノール等の炭素数5以下のアルコール類;クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、ジクロロメタン、トリクレン、四塩化炭素、1,2−ジクロロプロパン等のハロゲン化炭化水素類;ジメチルホルムアミド等の含窒素有機溶媒類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類が挙げられるが、これらの中から任意の組み合わせ及び任意の割合の混合溶媒で用いることができる。
また、単独では本発明に係る下引き層用のバインダー樹脂を溶解しない有機溶媒であっても、例えば、上記の有機溶媒との混合溶媒とすることで該バインダー樹脂を溶解可能であれば使用することができる。一般に、混合溶媒を用いた方が塗布ムラを少なくすることができるので好ましい。
<塗布液の調製(分散処理後の処理)>
本発明の下引き層形成用塗布液の製造方法においては、分散液に対する固形分の質量比率を8〜70質量%の範囲にして分散液を分散処理することが必須であるが、次いで、得られた分散液を用いて塗布液を調製する。調製された塗布液の最適固形分濃度は下引き層形成用塗布液の塗布方法により異なり、適用する塗布方法において均一な塗膜が形成されるように適宜変更して用いればよい。
分散メディアを用いた分散処理後、該分散メディアを分離・除去し、更に超音波処理することが好ましい。超音波処理は、下引き層形成用塗布液に超音波振動を加えるものであるが、振動周波数等には特に制限はなく、通常、周波数10kHz〜40kHz、好ましくは15kHz〜35kHzの発振器により超音波振動を加える。超音波発振機の出力に特に制限はないが、通常100W〜5kWのものが用いられる。通常、多量の塗布液を大出力の超音波発振機による超音波で処理するよりも、少量の塗布液を低出力の超音波発振機による超音波で処理する方が、分散効率がよい。一度に処理する下引き層形成用塗布液の量は、1〜50Lが好ましく、より好ましくは5〜30Lであって、特には10〜20Lが好ましい。また、この場合の超音波発振機の出力は、200W〜3kWが好ましく、より好ましくは300W〜2kWであって、特には500W〜1.5kWが好ましい。
下引き層形成用塗布液に超音波振動を加える方法に特に制限はないが、下引き層形成用塗布液を納めた容器中に超音波発振機を直接浸漬する方法、下引き層形成用塗布液を納めた容器外壁に超音波発振機を接触させる方法、超音波発信機により振動を加えた液体の中に下引き層形成用塗布液を納めた容器を浸漬する方法等が挙げられる。
これらの方法の中でも、超音波発信機により振動を加えた液体の中に下引き層形成用塗布液を納めた溶液を浸漬する方法が好適に用いられる。この場合、超音波発信機により振動を加える液体としては、水;メタノール等のアルコール類;トルエン等の芳香族炭化水素類;シリコーンオイル等の油脂類が挙げられるが、製造上の安全性、コスト、洗浄性等を勘案すれば、水を用いることが好ましい。超音波発信機により振動を加えた液体の中に下引き層形成用塗布液を納めた溶液を浸漬する方法では、該液体の温度により超音波処理の効率が変化するため、該液体の温度を一定に保つことが好ましい。加えた超音波振動により振動を加えた液体の温度が上昇することがある。該液体の温度は、通常は5〜60℃、好ましくは10〜50℃、より好ましくは15〜40℃の温度範囲において超音波処理することが好ましい。
超音波処理する際に下引き層形成用塗布液を納める容器としては、電子写真感光体用の感光層を形成するのに用いられる下引き層形成用塗布液を入れるのに通常用いられる容器であればどのような容器でも構わないが、ポリエチレン、ポリプロピレン等の樹脂製の容器や、ガラス製容器、金属製の缶が挙げられる。これらの中では金属製の缶が好ましく、特に、JIS Z 1602 に規定される、18L金属製缶が好適に用いられる。有機溶媒に侵され難く、衝撃に強いからである。
下引き層形成用塗布液は、粗大な粒子を除去するために、必要に応じて濾過した後使用される。この場合の濾過メディアとしては、通常濾過するために用いられる、セルロース繊維、樹脂繊維、ガラス繊維等、何れの濾過材を用いても構わない。濾過メディアの形態としては、濾過面積が大きく効率がよいこと等の理由により、芯材に各種繊維を巻き付けた、いわゆるワインドフィルターが好ましい。芯材としては従前公知の何れの芯材も用いることができるが、ステンレスの芯材、ポリプロピレン等の下引き層形成用塗布液に溶解しない樹脂製の芯材等が挙げられる。
このようにして製造された下引き層形成用塗布液は、要すれば更に、結着剤、公知の酸化防止剤、種々の助剤等を添加して、下引き層の形成に用いる。
<下引き層の形状、物性等>
下引き層の膜厚は任意に選ぶことができるが、感光体特性及び塗布性を向上させる観点から、通常は0.1μm〜20μmの範囲が好ましい。特に好ましくは0.2μm〜18μmの範囲である。
本発明における下引き層の表面形状は特に限定はないが、面内2乗平均平方根粗さ(RMS)は、通常10〜100nmの範囲にあり、好ましくは20〜50nmの範囲にある。本発明に係る下引き層の面内算術平均粗さ(Ra)は、通常10〜50nmの範囲にあり、好ましくは10〜50nmの範囲にある。また、本発明に係る下引き層の面内最大粗さ(P−V)は、通常100〜1000nmの範囲にあり、好ましくは300〜800nmの範囲にある。
これらの数値は、JIS B 0601:2001の規格における、二乗平均平方根高さ、算術平均高さ、最大高さ、の基準長さを、基準面に拡張した数値であり、基準面における高さ方向の値であるZ(x)を用いて、面内2乗平均平方根粗さ(RMS)はZ(x)の二乗平均平方根を、面内算術平均粗さ(Ra)はZ(x)の絶対値の平均を、面内最大粗さ(P−V)はZ(x)の山高さの最大値と谷深さの最大値との和を表す。
これらの表面形状の数値は、光干渉顕微鏡を用いて高精度位相シフト検出法と干渉縞の次数計数を組み合わせて、試料表面の凹凸を検出する方法により測定したものとして定義される。具体的には、株式会社菱化システムのMicromapを用いて、干渉縞アドレッシング方式により、Waveモードで測定したものとして定義される。
本発明における下引き層の正反射率比は特に限定はないが、以下の範囲が好ましい。ここで、「正反射率比」とは、導電性支持体の正反射率に対する、導電性支持体上の下引き層の正反射率をいう。該反射率比は該下引き層の膜厚によって変化するため、該下引き層が2μmの場合の反射率比として定義する。
本発明に係る電子写真感光体の下引き層は、該下引き層が含有する金属酸化物粒子の屈折率が2.0以上場合には、該下引き層が2μmである場合に換算した、該導電性支持体の波長480nmの光に対する正反射率に対する、該下引き層の波長480nmの光に対する正反射率の比(反射率比)が、50%以上が好ましい。また、金属酸化物粒子の屈折率が2.0以下の場合には、該下引き層が2μmである場合に換算した、該導電性支持体の波長400nmの光に対する正反射率に対する、該下引き層の波長400nmの光に対する正反射率の比(反射率比)が、50%以上が好ましい。
ここで、該下引き層が、複数種の屈折率2.0以上の金属酸化物粒子を含有する場合でも、複数種の屈折率2.0以下の金属酸化物粒子を含有する場合でも、上記と同様の正反射率比であるものが好ましい。また、該下引き層が、屈折率2.0以上の金属酸化物粒子、及び屈折率2.0以下の金属酸化物粒子を同時に含んでいる場合では、屈折率2.0以上の金属酸化物粒子を含有する場合と同様に、該下引き層が2μmである場合に換算した、該導電性支持体の波長480nmの光に対する正反射率に対する、該下引き層の波長480nmの光に対する正反射率の比(反射率比)が、50%以上であることが特に好ましい。
一方、本発明に係る電子写真感光体においては、下引き層の膜厚が2μmであることに限定されず、任意の膜厚であってかまわない。下引き層の膜厚が2μm以外の厚さの場合には、該電子写真感光体の下引き層を形成する際に用いた下引き層形成用塗布液を用いて、該電子写真感光体と同等の導電性支持体上に、膜厚2μmの下引き層を塗布形成してその下引き層について正反射率を測定することができる。また、別の方法としては、当該電子写真感光体の下引き層の正反射率比を測定し、その膜厚が2μmである場合に換算する方法がある。
以下、その換算方法について説明する。本発明に特定の単色光が下引き層を通過し、導電性支持体上で正反射し、ふたたび下引き層を通過して検出される場合に、光に対して垂直な厚さdLの薄い層を仮定する。
dLを通過後の光の強度の減少量−dIは、層を通過する前の光の強度IとdLに比例すると考えられ、式で表現すると次のように書くことができる(kは定数)。
−dI=kIdL ・・・・・・・・・(C)
式(C)を変形すると次の様になる。
−dI/I=kdL ・・・・・・・・(D)
式(D)の両辺をそれぞれ、I0からIまで、0からLまでの区間で積分すると次の様な式が得られる。
log(I0/I)=kL ・・・・・(E)
式(E)は、溶液系に於いてLambertの法則と呼ばれるものと同じであり、本発明に於ける反射率の測定にも適用することができる。
式(E)を変形すると、
I=I0exp(−kL) ・・・・・(F)
となり、入射光が導電性支持体表面に到達するまでの挙動が式(F)で表される。
一方、本発明に於ける正反射率比は、入射光の導電性支持体に対する反射光を分母とするため、素管表面での反射率、R=I1/I0を考える。
すると、式(F)に従って導電性支持体表面に到達した光は、反射率Rを乗じられた上で正反射し、ふたたび光路長Lを通って下引き層表面に出ていく。すなわち、
I=I0exp(−kL)・R・exp(−kL)・・・(G)
となり、R=I1/I0を代入し、更に変形することで、
I/I1=exp(−2kL)・・・・・・・・・・・・(H)
という関係式を得ることができる。これが、導電性支持体に対する反射率に対する、下引き層に対する反射率の値であり、これを「正反射率比」と定義する。
さて、上述の通り、2μmの下引き層に於いて光路長は往復で4μmになるが、任意の導電性支持体上の下引き層の反射率Tは、下引き層の膜厚L(このとき光路長2Lとなる)の関数であり、T(L)と表される。式(H)から、
T(L)=I/I1=exp(−2kL)・・・・(I)
一方、知りたい値はT(2)であるため、式(I)にL=2を代入して、
T(2)=I/I1=exp(−4k)・・・・・(J)
となり、式(I)と式(J)を連立させてkを消去すると、
T(2)=T(L)2/L・・・・・・・・・・・(K)
となる。
すなわち、下引き層の膜厚がL(μm)であるとき、該下引き層の反射率比T(L)を測定することで、下引き層が2μmである場合の反射率比T(2)を相当の確度で見積もることができる。なお、下引き層の膜厚Lの値は、粗さ計等の任意の膜厚計測装置で計測する。
<下引き層の形成方法>
本発明における下引き層は、下引き層形成用塗布液を支持体上に浸漬塗布、スプレー塗布、ノズル塗布、スパイラル塗布、リング塗布、バーコート塗布、ロールコート塗布、ブレード塗布等の公知の塗布方法により塗布し、乾燥することにより形成される。スプレー塗布法としては、エアスプレー、エアレススプレー、静電エアスプレー、静電エアレススプレー、回転霧化式静電スプレー、ホットスプレー、ホットエアレススプレー等があるが、均一な膜厚を得るための微粒化度、付着効率等を考えると回転霧化式静電スプレーにおいて、再公表平1−805198号公報に開示されている搬送方法、すなわち円筒状ワークを回転させながらその軸方向に間隔を開けることなく連続して搬送することにより、総合的に高い付着効率で膜厚の均一性に優れた電子写真感光体を得ることができる。
スパイラル塗布法としては、特開昭52−119651号公報に開示されている注液塗布機又はカーテン塗布機を用いた方法、特開平1−231966号公報に開示されている微小開口部から塗料を筋状に連続して飛翔させる方法、特開平3−193161号公報に開示されているマルチノズル体を用いた方法等がある。
浸漬塗布法の場合、通常、下引き層形成用塗布液の全固形分濃度は、通常1質量%以上、好ましくは10質量%以上であって、通常80質量%以下、好ましくは50質量%以下の範囲とし、粘度を好ましくは0.1mPa・s以上、また、好ましくは100mPa・s以下の範囲とする。
その後、塗布膜を乾燥するが、必要かつ充分な乾燥が行われる様に、温度、時間を調整する。乾燥温度は通常100〜250℃、好ましくは120℃〜180℃の範囲である。乾燥、方法としては、熱風乾燥機、蒸気乾燥機、赤外線乾燥機及び遠赤外線乾燥機を用いることができる。
熱硬化性樹脂を用いたときは乾燥中又は乾燥後に所望の温度に加熱して硬化させる。光硬化樹脂を使用する場合は、白熱電球、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、発光ダイオード等を放射光として利用する。光硬化樹脂の特性に合わせて、ランプ、出力、波長、時間等条件を調節する。詳細は、光硬化技術実用ガイド(テクノネット社出版/2002年)等に条件の記述があり、その条件で硬化することが好ましい。
<電子写真感光体、画像形成装置、電子写真カートリッジ>
以下、本発明の下引き層形成用塗布液の製造方法を使用して製造される塗布液を用いて得られる電子写真感光体、画像形成装置及び電子写真カートリッジについて説明する。
<電子写真感光体>
本発明の塗布液製造方法を使用して製造された塗布液を塗布形成してなる下引き層を有する電子写真感光体は、低温低湿度でも安定した電気特性を有している。
本発明に係る電子写真感光体の有する感光層は、導電性支持体上に下引き層と感光層を有し、下引き層は導電性支持体と感光層の間に設けられる。感光層の構成は、公知の電子写真感光体に適用可能な如何なる構成も採用することが可能であって、具体的には例えば、光導電性材料をバインダー樹脂中に溶解又は分散させた単層の感光層を有する、いわゆる単層型感光体;電荷発生物質を含有する電荷発生層と、電荷輸送物質を含有する電荷輸送層を積層してなる複数の層からなる感光層を有する、いわゆる積層型感光体等が挙げられる。一般に光導電性材料は、単層型でも積層型でも、機能としては同等の性能を示すことが知られている。
本発明に係る電子写真感光体の有する感光層は、公知の何れの形態であっても構わないが、感光体の機械的物性、電気特性、製造安定性等総合的に勘案して、積層型の感光体が好ましく、より好ましくは導電性支持体上に下引き層と電荷発生層と電荷輸送層とをこの順に積層した順積層型感光体が好ましい。
[導電性支持体]
導電性支持体としては、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼、銅、ニッケル等の金属材料や、金属、カーボン、酸化錫等の導電性粉体を添加して導電性を付与した樹脂材料や、アルミニウム、ニッケル、ITO(酸化インジウム酸化錫合金)等の導電性材料をその表面に蒸着又は塗布した樹脂、ガラス、紙等が主として使用される。形態としては、ドラム状、シート状、ベルト状等のものが用いられる。金属材料の導電性支持体の上に、導電性・表面性等の制御のためや欠陥被覆のため、適当な抵抗値を持つ導電性材料を塗布したものでもよい。
導電性支持体としてアルミニウム合金等の金属材料を用いた場合、陽極酸化処理を施してから用いてもよい。陽極酸化処理を施した場合、公知の方法により封孔処理を施すのが望ましい。例えば、クロム酸、硫酸、シュウ酸、ホウ酸、スルファミン酸等の酸性浴中で、陽極酸化処理することにより陽極酸化被膜が形成されるが、硫酸中での陽極酸化処理がより良好な結果を与える。硫酸中での陽極酸化の場合、硫酸濃度は100〜300g/L、溶存アルミニウム濃度は2〜15g/L、液温は15〜30℃、電解電圧は10〜20V、電流密度は0.5〜2A/dm2の範囲内に設定されるのが好ましいが、前記条件に限定されるものではない。
このようにして形成された陽極酸化被膜に対して、封孔処理を行うことは好ましい。封孔処理は、公知の方法で行なわれればよいが、例えば、主成分としてフッ化ニッケルを含有する水溶液中に浸漬させる低温封孔処理、あるいは主成分として酢酸ニッケルを含有する水溶液中に浸漬させる高温封孔処理が施されるのが好ましい。上記低温封孔処理の場合に使用されるフッ化ニッケル水溶液濃度は、適宜選べるが、3〜6g/Lの範囲で使用された場合、より好ましい結果が得られる。また、封孔処理をスムーズに進めるために、処理温度としては、通常25℃以上、好ましくは30℃以上、また、通常40℃以下、好ましくは35℃以下の範囲で、また、フッ化ニッケル水溶液pHは、通常4.5以上、好ましくは5.5以上、また、通常6.5以下、好ましくは6.0以下の範囲で処理するのがよい。pH調節剤としては、シュウ酸、ホウ酸、ギ酸、酢酸、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム、アンモニア水等を用いることが出来る。処理時間は、被膜の膜厚1μmあたり1〜3分の範囲で処理することが好ましい。なお、被膜物性を更に改良するためにフッ化コバルト、酢酸コバルト、硫酸ニッケル、界面活性剤等をフッ化ニッケル水溶液に添加しておいてもよい。次いで水洗、乾燥して低温封孔処理を終える。
前記高温封孔処理の場合の封孔剤としては、酢酸ニッケル、酢酸コバルト、酢酸鉛、酢酸ニッケル−コバルト、硝酸バリウム等の金属塩水溶液を用いることが出来るが、特に酢酸ニッケルを用いるのが好ましい。酢酸ニッケル水溶液を用いる場合の濃度は5〜20g/Lの範囲内で使用するのが好ましい。処理温度は通常80℃以上、好ましくは90℃以上、また、通常100℃以下、好ましくは98℃以下の範囲で、また、酢酸ニッケル水溶液のpHは5.0〜6.0の範囲で処理するのが好ましい。ここでpH調節剤としてはアンモニア水、酢酸ナトリウム等を用いることが出来る。処理時間は10分以上、好ましくは15分以上処理するのが好ましい。なお、この場合も被膜物性を改良するために酢酸ナトリウム、有機カルボン酸、アニオン系、ノニオン系界面活性剤等を酢酸ニッケル水溶液に添加してもよい。更に、実質上塩類を含有しない高温水又は高温水蒸気により処理しても構わない。次いで水洗、乾燥して高温封孔処理を終える。陽極酸化被膜の平均膜厚が厚い場合には、封孔液の高濃度化、高温・長時間処理により強い封孔条件を必要とする。従って生産性が悪くなると共に、被膜表面にシミ、汚れ、粉ふきといった表面欠陥を生じやすくなる。このような点から、陽極酸化被膜の平均膜厚は通常20μm以下、特に7μm以下で形成されることが好ましい。
支持体表面は、平滑であってもよいし、特別な切削方法を用いたり、研磨処理したりすることにより、粗面化されていてもよい。また、支持体を構成する材料に適当な粒径の粒子を混合することによって、粗面化されたものであってもよい。また、安価化のためには切削処理を施さず、引き抜き管をそのまま使用することも可能である。特に引き抜き加工、インパクト加工、しごき加工等の非切削アルミニウム支持体を用いる場合、処理により、表面に存在した汚れや異物等の付着物、小さな傷等が無くなり、均一で清浄な支持体が得られるので好ましい。
[下引き層]
支持体上に下引き層を形成するが、「下引き層の形状、物性等;下引き層の形成方法」等については前述した通りである。
[電荷発生層]
本発明で電子写真感光体に用いる電荷発生物質としては、従来から本用途に用いることが提案されている任意の物質を用いることができる。このような物質としては例えば、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、アントアントロン系顔料、キナクリドン系顔料、シアニン系顔料、ピリリウム系顔料、チアピリリウム系顔料、インジゴ系顔料、多環キノン系顔料、スクエアリック酸系顔料等が挙げられる。特にフタロシアニン顔料、又はアゾ顔料が好ましい。フタロシアニン顔料は、比較的長波長のレーザー光に対して高感度の感光体が得られる点で、また、アゾ顔料は、白色光及び比較的短波長のレーザー光に対し十分な感度を持つ点で、それぞれ優れている。
本発明では、電荷発生物質としてフタロシアニン系化合物を用いる場合に高い効果を示し好ましい。フタロシアニン系化合物として具体的には、無金属フタロシアニン、銅、インジウム、ガリウム、錫、チタン、亜鉛、バナジウム、シリコン、ゲルマニウム等の金属、又はその酸化物、ハロゲン化物、水酸化物、アルコキシド等の配位したフタロシアニン、そしてそれらの有する各種の結晶型が挙げられる。特に、感度の高い結晶型であるX型、τ型無金属フタロシアニン、A型(別称β型)、B型(別称α型)、D型(別称Y型)等のチタニルフタロシアニン(別称:オキシチタニウムフタロシアニン)、バナジルフタロシアニン、クロロインジウムフタロシアニン、II型等のクロロガリウムフタロシアニン、V型等のヒドロキシガリウムフタロシアニン、G型、I型等のμ−オキソ−ガリウムフタロシアニン二量体、II型等のμ−オキソ−アルミニウムフタロシアニン二量体が好適である。なお、これらのフタロシアニンの中でも、A型(β型)、B型(α型)及びD型(Y型)チタニルフタロシアニン、II型クロロガリウムフタロシアニン、V型ヒドロキシガリウムフタロシアニン、G型μ−オキソ−ガリウムフタロシアニン二量体等が特に好ましい。更に、これらのフタロシアニン系化合物の中でも、CuKα特性X線に対するX線回折スペクトルのブラッグ角(2θ±0.2°)が、27.3°に主たる回折ピークを示すオキシチタニウムフタロシアニン、9.3°、13.2°、26.2°及び27.1°に主たる回折ピークを示すオキシチタニウムフタロシアニン、9.2、14.1、15.3、19.7、27.1°に主たる回折ピークを有するジヒドロキシシリコンフタロシアニン、8.5°、12.2°、13.8°、16.9°、22.4°、28.4°及び30.1°に主たる回折ピークを示すジクロロスズフタロシアニン、7.5°、9.9°、12.5°、16.3°、18.6°、25.1°及び28.3°に主たる回折ピークを示すヒドロキシカリウムフタロシアニン、並びに、7.4°、16.6°、25.5°及び28.3°に回折ピークを示すクロロガリウムフタロシアニンが好ましい。これらの中でも、27.3°に主たる回折ピークを示すオキシチタニウムフタロシアニンが特に好ましく、この場合、9.5°、24.1°及び27.3°に主たる回折ピークを示すオキシチタニウムフタロシアニンがとりわけ好ましい。
フタロシアニン系化合物は、単一の化合物のもののみを用いてもよいし、いくつかの混合あるいは混晶状態でもよい。ここでのフタロシアニン系化合物の混合あるいは混晶状態として、それぞれの構成要素を後から混合して用いてもよいし、合成、顔料化、結晶化等のフタロシアニン系化合物の製造・処理工程において混合状態を生じさせたものでもよい。このような処理としては、酸ペースト処理・磨砕処理・溶剤処理等が知られている。混晶状態を生じさせるためには、特開平10−48859号公報記載のように、2種類の結晶を混合後に機械的に摩砕、不定形化した後に、溶剤処理によって特定の結晶状態に変換する方法が挙げられる。
また、フタロシアニン系化合物を用いる場合に、フタロシアニン系化合物以外の電荷発生物質を用いても構わない。例えば、アゾ顔料、ペリレン顔料、キナクリドン顔料、多環キノン顔料、インジゴ顔料、ベンズイミダゾール顔料、ピリリウム塩、チアピリリウム塩、スクエアリウム塩等を混合して用いることができる。
電荷発生物質は、感光層形成用塗布液中に分散されるが、該塗布液中に分散される前に、予め前粉砕されていても構わない。前粉砕は、種々の装置を用いて行うことができるが、通常はボールミル、サンドグラインドミル等を用いて行う。これらの粉砕装置に投入する粉砕媒体としては、粉砕処理に際して、粉砕媒体が粉化することがなく、かつ分散処理後は容易に分離できるものであればどのようなものでも使用することが可能で、ガラス、アルミナ、ジルコニア、ステンレス、セラミックス等の、ビーズやボールが挙げられる。前粉砕では、体積平均粒子径で500μm以下となるよう粉砕することが好ましく、より好ましくは250μm以下まで粉砕する。体積平均粒子径は、当業者が通常用いるどのような方法で測定しても構わないが、通常沈降法や遠心沈降法で測定される。
[電荷輸送層]
電荷輸送物質としては、例えば、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルピレン、ポリグリシジルカルバゾール、ポリアセナフチレン等の高分子化合物;ピレン、アントラセン等の多環芳香族化合物;インドール誘導体、イミダゾール誘導体、カルバゾール誘導体、ピラゾール誘導体、ピラゾリン誘導体、オキサジアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、チアジアゾール誘導体等の複素環化合物;p−ジエチルアミノベンズアルデヒド−N,N−ジフェニルヒドラゾン、N−メチルカルバゾール−3−カルバルデヒド−N,N−ジフェニルヒドラゾン等のヒドラゾン系化合物;5−(4−(ジ−p−トリルアミノ)ベンジリデン)−5H−ジベンゾ(a,d)シクロヘプテン等のスチリル系化合物;p−トリトリルアミン等のトリアリールアミン系化合物;N,N,N’,N’−テトラフェニルベンジジン等のベンジジン系化合物;ブタジエン系化合物;ジ−(p−ジトリルアミノフェニル)メタン等のトリフェニルメタン系化合物等が挙げられる。これらの中でも、ヒドラゾン誘導体、カルバゾール誘導体、スチリル系化合物、ブタジエン系化合物、トリアリールアミン系化合物、ベンジジン系化合物、若しくはこれらが複数結合されたものが好適に用いられる。これらの電荷輸送物質は単独でも、いくつかを混合して用いてもよい。
[感光層用バインダー樹脂]
本発明の電子写真感光体に係る感光層は、光導電性材料を各種バインダー樹脂で結着した形で形成する。バインダー樹脂としては、電子写真感光体に用いることができる公知の如何なるバインダー樹脂も使用可能であるが、具体的には例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリビニルアセテート、ポリアクル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリエステル、ポリアリレート、ポリカーボネート、ポリエステルポリカーボネート、ポリビニルアセタール、ポリビニルアセトアセタール、ポリビニルプロピオナール、ポリビニルブチラール、ポリスルホン、ポリイミド、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、セルロースエステル、セルロースエーテル、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル等のビニル重合体、及びその共重合体等が用いられる。またこれらの部分的架橋硬化物も使用できる。
[電荷発生層を含有する層]
・積層型感光体
感光体がいわゆる積層型感光体である場合、電荷発生物質を含有する層は、通常電荷発生層であるが、電荷輸送層中に含まれていても構わない。電荷発生物質を含有する層が電荷発生層である場合、電荷発生物質の使用比率は、電荷発生層に含まれるバインダー樹脂に100質量部に対して、通常30〜500質量部の範囲で使用され、より好ましくは50〜300質量部である。使用量が少なすぎると電子写真感光体としての電気特性が十分ではなくなり、少なすぎると塗布液の安定性を損なう。電荷発生物質を含有する層中の電荷発生物質の体積平均粒子径は、好ましくは1μm以下、より好ましくは0.5μm以下である。電荷発生層の膜厚は、通常0.1μm〜2μm、好ましくは0.15μm〜0.8μmが好適である。電荷発生層には、成膜性、可とう性、機械的強度等を改良するための公知の可塑剤、残留電位を抑制するための添加剤、分散安定性向上のための分散補助剤、塗布性を改善するためのレベリング剤、界面活性剤、シリコーンオイル、フッ素系オイルその他の添加剤を含有していてもよい。
・単層型感光体
感光体がいわゆる単層型感光体である場合には、後に記載する電荷輸送層と同様の配合割合のバインダー樹脂と電荷輸送物質を主成分とするマトリックス中に、前記電荷発生物質が分散される。この場合の電荷発生物質の粒子径は十分小さいことが必要であり、体積平均粒子径で好ましくは1μm以下、より好ましくは0.5μm以下である。感光層内に分散される電荷発生物質の量は、少なすぎると十分な感度が得られず、多すぎると帯電性の低下、感度の低下等の弊害があるため、例えば好ましくは0.5〜50質量%、より好ましくは10〜45質量%で使用される。感光層の膜厚は、通常5〜50μm、より好ましくは10〜45μmで使用される。また単層型感光体の感光層も、成膜性、可とう性、機械的強度等を改良するための公知の可塑剤、残留電位を抑制するための添加剤、分散安定性向上のための分散補助剤、塗布性を改善するためのレベリング剤、界面活性剤、シリコーンオイル、フッ素系オイルその他の添加剤を含有していてもよい。
[電荷輸送物質を含有する層]
いわゆる積層型感光体の場合、電荷輸送層は電荷輸送機能を持った樹脂単独で形成されてもよいが、前記電荷輸送物質がバインダー樹脂中に分散又は溶解された構成がより好ましい。いわゆる単層型感光体の場合、電荷発生物質の分散されるマトリックスとして前記電荷輸送物質がバインダー樹脂中に分散又は溶解された構成が用いられる。電荷輸送物質を含有する層に使用されるバインダー樹脂としては、例えばポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル等のビニル重合体、及びその共重合体、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル、ポリエステルカーボネート、ポリスルホン、ポリイミド、フェノキシ、エポキシ、シリコーン樹脂等が挙げられ、またこれらの部分的架橋硬化物も使用できる。
また電荷輸送物質を含有する層には、必要に応じてヒンダードフェノール、ヒンダードアミン等の酸化防止剤、紫外線吸収剤、増感剤、レベリング剤、電子吸引性物質等の各種添加剤を含んでいてもよい。電荷輸送物質を含有する層の膜厚は、通常5〜60μm、好ましくは10〜45μm、より好ましくは15〜27μmの厚さで使用される。
前記バインダー樹脂と電荷輸送物質との割合は、通常バインダー樹脂100質量部に対して電荷輸送物質が20〜200質量部、好ましくは30〜150質量部の範囲で、より好ましくは40〜120質量部の範囲で使用される。
[表面層]
最表面層として従来公知の、例えば熱可塑性あるいは熱硬化性ポリマーを主体とする表面保護層やオーバーコート層を設けてもよい。
[感光層の形成法]
感光体の各層は、本発明の下引き層形成用塗布液のように、層に含有させる物質を溶媒に溶解又は分散させて得られた塗布液を、例えば浸漬塗布方法、スプレー塗布方法、リング塗布方法等の公知の方法を用いて順次塗布、形成される。この場合、必要に応じて塗布性を改善するためのレベリング剤や酸化防止剤、増感剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
[感光層の形成に用いる有機溶媒]
感光層の形成に用いる塗布液に用いる有機溶媒としては、好ましい例としては例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、1−ヘキサノール、1,3−ブタンジオール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;ジオキサン、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類;4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノン等のエーテルケトン類;ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン等の(ハロ)芳香族炭化水素類;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類が挙げられる。またこれらの溶媒の中でも特に、アルコール類、芳香族炭化水素類、エーテル類、エーテルケトン類が好適に用いられる。また、より好適なものとしては、トルエン、キシレン、1−ヘキサノール、1,3−ブタンジオール、テトラヒドロフラン、4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノン等が挙げられる。
これらの中から少なくとも1種類の溶媒が用いられるが、これらの溶媒の中から2種類以上を混合して用いても構わない。混合する溶媒としては、エーテル類、アルコール類、アミド類、スルホキシド類、ケトン類、エーテルケトン類が適しているが、中でも1,2−ジメトキシエタン等のエーテル類、1−プロパノール等のアルコール類が適している。特に好適には、エーテル類が混合される。これは、特にオキシチタニウムフタロシアニンを電荷発生物質として塗布液を製造する際に、該フタロシアニンの結晶形安定化能、分散安定性等の面からである。
<画像形成装置>
次に、本発明の電子写真感光体を用いた画像形成装置の実施の形態について、装置の要部構成を示す図3を用いて説明する。ただし、実施の形態は以下の説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り任意に変形して実施することができる。
図3に示すように、画像形成装置は、電子写真感光体1、帯電装置2、露光装置3、現像装置4及び転写装置5を備えて構成され、更に、必要に応じてクリーニング装置6及び定着装置7が設けられる。
すなわち、本発明の他の態様は、電子写真感光体と、該感光体を帯電させる帯電手段と、帯電した該感光体に対し像露光を行い静電潜像を形成する像露光手段と、この静電潜像をトナーで現像する現像手段と、トナーを被転写体に転写する転写手段とを有することを特徴とする画像形成装置であって、該感光体として前記感光体を用いることを特徴とする画像形成装置である。
電子写真感光体1は、上述した本発明の電子写真感光体であれば特に制限はないが、図3ではその一例として、円筒状の導電性支持体の表面に上述した感光層を形成したドラム状の感光体を示している。この電子写真感光体1の外周面に沿って、帯電装置2、露光装置3、現像装置4、転写装置5及びクリーニング装置6がそれぞれ配置されている。
帯電装置2は、電子写真感光体1を帯電させるもので、電子写真感光体1の表面を所定電位に均一帯電させる。図3では帯電装置2の一例としてローラ型の帯電装置(帯電ローラ)を示しているが、他にもコロトロンやスコロトロン等のコロナ帯電装置、帯電ブラシ等の接触型帯電装置等がよく用いられる。本発明においては、前記帯電手段が、前記電子写真感光体に接触配置されているものである場合に、その効果が顕著に発揮されるから、この構成が望ましい。
<電子写真カートリッジ>
電子写真感光体1及び帯電装置2は、多くの場合、この両方を備えたカートリッジ(以下適宜、「電子写真カートリッジ」という)として、画像形成装置の本体から取り外し可能に設計されており、本発明においてもそのような形態で用いることが望ましい。
すなわち、本発明の他の態様は、少なくとも、電子写真感光体と、該感光体を帯電させる帯電手段と、該感光体に形成される静電潜像をトナーで現像する現像手段とを有する電子写真カートリッジであって、前記感光体を用いることを特徴とする電子写真カートリッジである。
ここで、本発明の電子写真感光体を用いない場合、本発明者らの検討によれば、低温低湿下での露光−帯電繰り返し特性が安定せず、得られる画像に黒点、色点等の画像欠陥が多発するようになり、画像形成装置又は電子写真カートリッジとして鮮明かつ安定的な画像形成が行えなくなる場合がある。また、本発明の電子写真カートリッジにおいては、前記帯電手段が、前記電子写真感光体に接触配置されているものである場合に、その効果が顕著に発揮されるので、この構成が望ましい。
電子写真感光体1や帯電装置2が劣化等した場合に、この電子写真カートリッジを画像形成装置本体から取り外し、別の新しい電子写真カートリッジを画像形成装置本体に装着することができるようになっている。また、後述するトナーについても、多くの場合、トナーカートリッジ中に蓄えられて、画像形成装置本体から取り外し可能に設計され、使用しているトナーカートリッジ中のトナーが無くなった場合に、このトナーカートリッジを画像形成装置本体から取り外し、別の新しいトナーカートリッジを装着することができるようになっている。更に、電子写真感光体1、帯電装置2、トナーが全て備えられたカートリッジを用いることもある。
露光装置3は、電子写真感光体1に露光を行なって電子写真感光体1の感光面に静電潜像を形成することができるものであれば、その種類に特に制限はない。具体例としては、ハロゲンランプ、蛍光灯、半導体レーザーやHe−Neレーザー等のレーザー、LED等が挙げられる。また、感光体内部露光方式によって露光を行なうようにしてもよい。露光を行なう際の光は任意であるが、例えば波長が780nmの単色光、波長600nm〜700nmのやや短波長寄りの単色光、波長350nm〜600nmの短波長の単色光等で露光を行なえばよい。これらの中でも波長350nm〜600nmの短波長の単色光等で露光することが好ましく、より好ましくは波長380nm〜500nmの単色光で露光することである。
現像装置4は、その種類に特に制限はなく、カスケード現像、一成分導電トナー現像、二成分磁気ブラシ現像等の乾式現像方式や、湿式現像方式等の任意の装置を用いることができる。図3では、現像装置4は、現像槽41、アジテータ42、供給ローラ43、現像ローラ44、及び、規制部材45からなり、現像槽41の内部にトナーTを貯留している構成となっている。また、必要に応じ、トナーTを補給する補給装置(図示せず)を現像装置4に付帯させてもよい。この補給装置は、ボトル、カートリッジ等の容器からトナーTを補給することが可能に構成される。
供給ローラ43は、導電性スポンジ等から形成される。現像ローラ44は、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル等の金属ロール、又はこうした金属ロールにシリコーン樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂等を被覆した樹脂ロール等からなる。この現像ローラ44の表面には、必要に応じて、平滑加工や粗面加工を加えてもよい。
現像ローラ44は、電子写真感光体1と供給ローラ43との間に配置され、電子写真感光体1及び供給ローラ43に各々当接している。供給ローラ43及び現像ローラ44は、回転駆動機構(図示せず)によって回転される。供給ローラ43は、貯留されているトナーTを担持して、現像ローラ44に供給する。現像ローラ44は、供給ローラ43によって供給されるトナーTを担持して、電子写真感光体1の表面に接触させる。
規制部材45は、シリコーン樹脂やウレタン樹脂等の樹脂ブレード、ステンレス鋼、アルミニウム、銅、真鍮、リン青銅等の金属ブレード、又はこうした金属ブレードに樹脂を被覆したブレード等により形成されている。この規制部材45は、現像ローラ44に当接し、ばね等によって現像ローラ44側に所定の力で押圧(一般的なブレード線圧は5〜500g/cm)される。必要に応じて、この規制部材45に、トナーTとの摩擦帯電によりトナーTに帯電を付与する機能を具備させてもよい。
アジテータ42は、回転駆動機構によってそれぞれ回転されており、トナーTを攪拌するとともに、トナーTを供給ローラ43側に搬送する。アジテータ42は、羽根形状、大きさ等を違えて複数設けてもよい。
トナーTの種類は任意であり、粉状トナーのほか、懸濁重合法や乳化重合法等を用いた重合トナー等を用いることができる。特に、重合トナーを用いる場合には径が4〜8μm程度の小粒径のものが好ましく、また、トナーの粒子の形状も球形に近いものからポテト状の球形から外れたものまで様々に使用することができる。重合トナーは、帯電均一性、転写性に優れ、高画質化に好適に用いられる。
転写装置5は、その種類に特に制限はなく、コロナ転写、ローラ転写、ベルト転写等の静電転写法、圧力転写法、粘着転写法等、任意の方式を用いた装置を使用することができる。ここでは、転写装置5が電子写真感光体1に対向して配置された転写チャージャー、転写ローラ、転写ベルト等から構成されるものとする。この転写装置5は、トナーTの帯電電位とは逆極性で所定電圧値(転写電圧)を印加し、電子写真感光体1に形成されたトナー像を転写材(用紙、媒体)Pに転写するものである。本発明においては、転写装置5が転写材を介して感光体に接触配置される場合に効果的である。
クリーニング装置6について特に制限はなく、ブラシクリーナー、磁気ブラシクリーナー、静電ブラシクリーナー、磁気ローラクリーナー、ブレードクリーナー等、任意のクリーニング装置を用いることができる。クリーニング装置6は、感光体1に付着している残留トナーをクリーニング部材で掻き落とし、残留トナーを回収するものである。ただし、感光体表面に残留するトナーが少ないか、殆ど無い場合には、クリーニング装置6は無くても構わない。
定着装置7は、上部定着部材(定着ローラ)71及び下部定着部材(定着ローラ)72から構成され、定着部材71又は72の内部には加熱装置73がそなえられている。なお、図3では、上部定着部材71の内部に加熱装置73がそなえられた例を示す。上部及び下部の各定着部材71、72は、ステンレス、アルミニウム等の金属素管にシリコンゴムを被覆した定着ロール、更にフッ素樹脂で被覆した定着ロール、定着シート等の公知の熱定着部材を使用することができる。更に、各定着部材71、72は、離型性を向上させる為にシリコーンオイル等の離型剤を供給する構成としてもよく、バネ等により互いに強制的に圧力を加える構成としてもよい。
記録紙P上に転写されたトナーは、所定温度に加熱された上部定着部材71と下部定着部材72との間を通過する際、トナーが溶融状態まで熱加熱され、通過後冷却されて記録紙P上にトナーが定着される。なお、定着装置についてもその種類に特に限定はなく、ここで用いたものをはじめ、熱ローラ定着、フラッシュ定着、オーブン定着、圧力定着等、任意の方式による定着装置を設けることができる。
<画像形成方法>
以上のように構成された電子写真装置では、次のようにして画像の記録が行なわれる。即ち、まず感光体1の表面(感光面)が、帯電装置2によって所定の電位(例えば−600V)に帯電される。この際、直流電圧により帯電させてもよく、直流電圧に交流電圧を重畳させて帯電させてもよい。続いて、帯電された感光体1の感光面を、記録すべき画像に応じて露光装置3により露光し、感光面に静電潜像を形成する。そして、その感光体1の感光面に形成された静電潜像の現像を、現像装置4で行なう。
現像装置4は、供給ローラ43により供給されるトナーTを、規制部材(現像ブレード)45により薄層化するとともに、所定の極性(ここでは感光体1の帯電電位と同極性であり、負極性)に摩擦帯電させ、現像ローラ44に担持しながら搬送して、感光体1の表面に接触させる。現像ローラ44に担持された帯電トナーTが感光体1の表面に接触すると、静電潜像に対応するトナー像が感光体1の感光面に形成される。そしてこのトナー像は、転写装置5によって記録紙Pに転写される。この後、転写されずに感光体1の感光面に残留しているトナーが、クリーニング装置6で除去される。
トナー像の記録紙P上への転写後、定着装置7を通過させてトナー像を記録紙P上へ熱定着することで、最終的な画像が得られる。なお、画像形成装置は、上述した構成に加え、例えば除電工程を行なうことができる構成としてもよい。除電工程は、電子写真感光体に露光を行なうことで電子写真感光体の除電を行なう工程であり、除電装置としては、蛍光灯、LED等が使用される。また除電工程で用いる光は、強度としては露光光の3倍以上の露光エネルギーを有する光である場合が多い。
また、画像形成装置は更に変形して構成してもよく、例えば、前露光工程、補助帯電工程等の工程を行なうことができる構成としたり、オフセット印刷を行なう構成としたり、更には複数種のトナーを用いたフルカラータンデム方式の構成としてもよい。
以下、本発明の実施例、比較例により更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、これらに限定されるものではない。なお、実施例で用いる「部」は断りがない限り「質量部」を示し、「%」は断りがない限り「質量%」を示す。
<実施例1>
平均一次粒子径40nmのルチル型酸化チタン(石原産業株式会社製「TTO55N」)と、該酸化チタンに対して3質量%のメチルジメトキシシラン(東芝シリコーン社製「TSL8117」)とを、ヘンシェルミキサーにて混合して得られた表面処理酸化チタン50部と、メタノール150部を混合してなる原料スラリー1kg(固形分濃度25.0質量%)を、直径約50μmのジルコニアビーズ(株式会社ニッカトー製 YTZ)を分散メディアとして、ミル容積約0.15Lの寿工業株式会社製ウルトラアペックスミル(UAM−015型)を用い、ロータ周速10m/秒、液流量10kg/時間の液循環状態で2時間分散処理し、酸化チタン分散液Aを作製した。
このときの酸化チタン分散液の粘度、粒度分布を以下の方法で測定した。粘度は、E型粘度計(トキメック社製、製品名 ED)を用い、JIS Z 8803に準じた方法で測定し、粒度分布は、粒度分析計(日機装社製、商品名:マイクロトラックUPA(MODEL 9340))を用い、サンプル濃度指数(SIGNAL LEVEL)が0.6〜0.8になるように、メタノール/1−プロパノール=7/3の混合溶媒で希釈し、25℃で測定した。
酸化チタン粒子の全体積を100%として累積カーブを求めた時、その累積カーブが小粒径側からカウントして50%となる点の粒子径を体積平均粒子径(中心径:Median径)とし、累積カーブが90%となる点の粒子径を「累積90%粒子径」とした。結果を表3に示す。
前記酸化チタン分散液Aと、
メタノール/1−プロパノール/トルエンの混合溶媒と、
ε−カプロラクタム[下記式(A)で表わされる化合物]/ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン[下記式(B)で表わされる化合物]/ヘキサメチレンジアミン[下記式(C)で表わされる化合物]/デカメチレンジカルボン酸[下記式(D)で表わされる化合物]/オクタデカメチレンジカルボン酸[下記式(E)で表わされる化合物]の組成モル比率が、60%/15%/5%/15%/5%からなる共重合ポリアミドのペレット
とを加熱しながら撹拌、混合してポリアミドペレットを溶解させた。
その後、出力1200Wの超音波発信器による超音波分散処理を1時間行い、更に孔径5μmのPTFE製メンブレンフィルター(アドバンテック製 マイテックス LC)により濾過し、表面処理酸化チタン/共重合ポリアミドの質量比が3/1であり、メタノール/1−プロパノール/トルエンの混合溶媒の質量比が7/1/2である下引き層形成用塗布液Pを得た。この下引き層形成用塗布液Pについて、上記酸化チタン分散液Aと同様に、酸化チタンの粒度分布を測定した。結果を表3に示す。
<実施例2>
実施例1の表面処理酸化チタンとメタノールを混合してなる原料スラリー1kgが固形分濃度45.0質量%で、酸化チタン50部とメタノール61部を混合してなること以外は実施例1と同様に分散処理し、酸化チタン分散液Bを作製した。酸化チタン分散液Bの粘度、粒度分布を実施例1と同様に測定し、結果を表3に示す。
酸化チタン分散液Bを用い、実施例1と同様にして、表面処理酸化チタン/共重合ポリアミドを質量比が3/1であり、メタノール/1−プロパノール/トルエンの混合溶媒の質量比が7/1/2である下引き層形成用塗布液Qを得た。実施例1と同様に粒度分布を測定し、結果を表3に示す。
<実施例3>
実施例1の表面処理酸化チタンとメタノールを混合してなる原料スラリー1kgが固形分濃度60.0質量%で、酸化チタン50部とメタノール33部を混合してなること以外は実施例1と同様に分散処理し、酸化チタン分散液Cを作製した。酸化チタン分散液Cの粘度、粒度分布を実施例1と同様に測定し、結果を表3に示す。
酸化チタン分散液Cを用い、実施例1と同様にして、表面処理酸化チタン/共重合ポリアミドを質量比が3/1であり、メタノール/1−プロパノール/トルエンの混合溶媒の質量比が7/1/2である下引き層形成用塗布液Rを得た。実施例1と同様に粒度分布を測定し、結果を表3に示す。
<実施例4>
実施例1の表面処理酸化チタンとメタノールを混合してなる原料スラリー1kgが固形分濃度10.0質量%で、酸化チタン50部とメタノール450部を混合してなること以外は実施例1と同様に分散処理し、酸化チタン分散液Dを作製した。酸化チタン分散液Dの粘度、粒度分布を実施例1と同様に測定し、結果を表3に示す。
酸化チタン分散液Dを用い、実施例1と同様にして、表面処理酸化チタン/共重合ポリアミドを質量比が3/1であり、メタノール/1−プロパノール/トルエンの混合溶媒の質量比が7/1/2である下引き層形成用塗布液Sを得た。実施例1と同様に粒度分布を測定し、結果を表3に示す。
<実施例5>
実施例1の分散メディアを直径約30μmのジルコニアビーズ(株式会社ニッカトー製 YTZ)として、ミル容積約0.15Lの寿工業株式会社製ウルトラアペックスミル(UAM−015型)を用い、ロータ周速12m/秒、液流量10kg/時間の液循環状態で2時間分散処理し、酸化チタン分散液Eを作製した。酸化チタン分散液Eの粘度、粒度分布を実施例1と同様に測定し、結果を表3に示す。
酸化チタン分散液Eを用い、実施例1と同様にして、表面処理酸化チタン/共重合ポリアミドを質量比が3/1であり、メタノール/1−プロパノール/トルエンの混合溶媒の質量比が7/1/2である下引き層形成用塗布液Tを得た。実施例1と同様に粒度分布を測定し、結果を表3に示す。
<比較例1>
実施例1の表面処理酸化チタンとメタノールを混合してなる原料スラリー1kgが固形分濃度5.0質量%で、酸化チタン50部とメタノール950部を混合してなること以外は実施例1と同様に分散処理し、酸化チタン分散液Fを作製した。酸化チタン分散液Fの粘度、粒度分布を実施例1と同様に測定し、結果を表3に示す。
酸化チタン分散液Fを用い、実施例1と同様にして、表面処理酸化チタン/共重合ポリアミドを質量比が3/1であり、メタノール/1−プロパノール/トルエンの混合溶媒の質量比が7/1/2である下引き層形成用塗布液Uを得た。実施例1と同様に粒度分布を測定しようとしたが、酸化チタンが沈降、分離したため測定ができなかった。
<比較例2>
実施例1の表面処理酸化チタンとメタノールを混合してなる原料スラリー1kgが固形分濃度80.0質量%で、酸化チタン50部とメタノール12.5部を混合してなること以外は実施例1と同様に分散処理したが、スラリーの流動性がなく配管中に詰り、運転できなかった。
<比較例3>
表面処理酸化チタン50部と、メタノール120部を混合し、直径約5mmのアルミナボール(株式会社ニッカトー製 HD)を用いてボールミルで5時間分散して酸化チタン分散液G(固形分濃度29.4質量%)を作製した。酸化チタン分散液Gの粘度、粒度分布を実施例1と同様に測定し、結果を表3に示す。
酸化チタン分散液Gを用い、実施例1と同様にして、表面処理酸化チタン/共重合ポリアミドを質量比が3/1であり、メタノール/1−プロパノール/トルエンの混合溶媒の質量比が7/1/2である下引き層形成用塗布液Vを得た。実施例1と同様に粒度分布を測定し、結果を表3に示す。
本発明の方法により酸化チタン分散液を作製する場合、分散液の固形分濃度が低すぎると凝集してしまい(比較例1)、固形分濃度が高すぎると流動性がなくなりビーズミルの運転ができなくなってしまった(比較例2)。そのため、酸化チタン分散液を作製する場合は、分散液の固形分濃度が8〜70質量%が好ましく、10〜60質量%が特に好ましく、15〜50質量%が最も好ましい。
<実施例6>
実施例1で作製した下引き層形成用塗布液Pを、外径24mm、長さ236.5mm、肉厚0.75mmのアルミニウム切削管上に、浸漬塗布により、乾燥後の膜厚が2μmとなるように塗布し、乾燥させて下引き層を形成した。下引き層の表面を走査型電子顕微鏡により観察をしたところ、凝集物は殆ど観察されなかった。
電荷発生物質として、図2に示すCuKα特性X線に対する粉末X線回折スペクトルパターンを有するオキシチタニウムフタロシアニン20質量部と、1,2−ジメトキシエタン280質量部を混合し、サンドグラインドミルで2時間分散処理を行い、分散液を作製した。続いてこの分散液と、10質量部のポリビニルブチラール(電気化学工業(株)製、商品名「デンカブチラール」#6000C)、253質量部の1,2−ジメトキシエタン、85質量部の4−メトキシ−4−メチルペンタノン−2を混合し、更に、234質量部の1,2−ジメトキシエタンを混合し、超音波分散機処理した後に、孔径5μmのPTFE製メンブレンフィルター(アドバンテック社製 マイテックス LC)でろ過し、電荷発生層用塗布液を作製した。この電荷発生層用塗布液を、前記下引き層上に乾燥後の膜厚が0.4μmとなるように、浸漬塗布により塗布、乾燥して電荷発生層を形成した。
次に、この電荷発生層の上に、下記に示すヒドラゾン化合物56部、
下記に示すヒドラゾン化合物14部、
下記繰り返し構造を有するポリカーボネート樹脂100部、
及び、シリコーンオイル0.05質量部を、テトラヒドロフラン/トルエン(8/2)混合溶媒640質量部に溶解させた電荷輸送層用塗布液を、乾燥後の膜厚が17μmとなるように塗布し、室温において25分間風乾した。更に、125℃において20分間乾燥して電荷輸送層を設けて電子写真感光体を作製した。この電子写真感光体を感光体P1とする。
また、該感光体を電子写真学会測定標準に従って作製された電子写真特性評価装置(続電子写真技術の基礎と応用、電子写真学会編、コロナ社、404〜405頁記載)に装着し、表面電位が−700Vになるように帯電させた後、780nmのレーザー光を5.0μJ/cm2の強度で照射し、露光後100m秒後の表面電位VLを、温度25℃、相対湿度50%(以下、NN環境ということがある)環境下、及び温度5℃、相対湿度10%(以下、LL環境ということがある)で測定した。それぞれ、VL(NN)、VL(LL)とし、その結果を表4に示す。
この感光体P1の絶縁破壊強度を、下記のようにして測定した。すなわち、温度25℃、相対湿度50%環境下に該感光体を固定し、体積抵抗率が約2MΩ・cmでドラム長より両端が約2cmずつ短い帯電ローラを押し当て、直流電圧−3kVを印加し、絶縁破壊するまでの時間を測定した。その結果を表4に示す。
<実施例7>
下引き層形成用塗布液Rを用いて下引き層を設けた以外は、実施例6と同様にして感光体P2を作製した。この際の下引き層を、実施例6と同様に、表面を走査型電子顕微鏡により観察をしたところ凝集物は殆ど観察されなかった。実施例6と同様にして感光体P2を評価した結果を表4に示す。
<実施例8>
下引き層形成用塗布液Tを用いて下引き層を設けた以外は、実施例6と同様にして感光体P3を作製した。この際の下引き層を、実施例6と同様に、表面を走査型電子顕微鏡により観察をしたところ凝集物は殆ど観察されなかった。実施例6と同様にして感光体P3を評価した結果を表4に示す。
<比較例4>
下引き層形成用塗布液として、前記比較例3に記載の下引き層形成用塗布液Vを用いた以外は、実施例6と同様にして感光体Q1を作製した。この際の下引き層を、実施例6と同様に、表面を走査型電子顕微鏡により観察をしたところ、多数の酸化チタン凝集物が見られた。実施例6と同様にして感光体Q1を評価した結果を表4に示す。
本発明の電子写真感光体(P1〜P3)は、凝集等の無い均一な下引き層を有し、環境差による電位の変動が小さく、しかも耐絶縁破壊性能に優れていた。
<実施例9>
下引き層形成用塗布液として、前記実施例1に記載の下引き層形成用塗布液Pを用い、外径30mm、長さ285mm、肉厚0.8mmのアルミニウム切削管上に、浸漬塗布により、乾燥後の膜厚が2.4μmとなるように塗布し、乾燥させて下引き層を形成した。下引き層の表面を走査型電子顕微鏡により観察をしたところ、凝集物は殆ど観察されなかった。
実施例6と同様にして作製した電荷発生層用塗布液を、前記下引き層上に乾燥後の膜厚が0.4μmとなるように、浸漬塗布により塗布、乾燥して電荷発生層を形成した。
次に、この電荷発生層の上に、電荷輸送物質として下記組成物(A)に示す構造を主体とする、特開2002−080432号公報の実施例1に記載の製造方法により製造された組成物を60部、
下記繰り返し構造を有するポリカーボネート樹脂100部、
及び、シリコーンオイル0.05質量部を、テトラヒドロフラン/トルエン(8/2)混合溶媒640質量部に溶解させた塗布液を、乾燥後の膜厚が10μmとなるように塗布し、乾燥して電荷輸送層を設け、電子写真感光体を作製した。
作製した感光体を、セイコーエプソン株式会社製カラープリンター(製品名:InterColor LP−1500C)のカートリッジに装着し、フルカラー画像を形成したところ、良好な画像を得ることができた。得られた画像1.6cm四方中に観察される微小色点の数を表5に示す。
<実施例10>
下引き層形成用塗布液として、前記実施例3に記載の下引き層形成用塗布液Rを用いた以外は、実施例9と同様にして電子写真感光体を作製した。この電子写真感光体を用いて、実施例9と同様にしてフルカラー画像を形成したところ、良好な画像を得ることができた。得られた画像1.6cm四方中に観察される微小色点の数を表5に示す。
<実施例11>
下引き層形成用塗布液として、前記実施例5に記載の下引き層形成用塗布液Tを用いた以外は、実施例9と同様にして電子写真感光体を作製した。この電子写真感光体を用いて、実施例9と同様にしてフルカラー画像を形成したところ、良好な画像を得ることができた。得られた画像1.6cm四方中に観察される微小色点の数を表5に示す。
<比較例5>
下引き層形成用塗布液として、前記比較例3に記載の下引き層形成用塗布液Vを用いた以外は、実施例9と同様にして電子写真感光体を作製した。この電子写真感光体を用いて、実施例9と同様にしてフルカラー画像を形成したところ、多数の色点が観察され、良好な画像を得ることはできなかった。得られた画像1.6cm四方中に観察される微小色点の数を表5に示す。
<実施例12>
下引き層形成用塗布液Pを、外径24mm、長さ236.5mm、肉厚0.75mmのアルミニウム切削管上に、浸漬塗布により、乾燥後の膜厚が2μmとなるように塗布し、乾燥させて下引き層を形成した。
下記式で表される電荷発生物質1.5部、
及び、1,2−ジメトキシエタン30部を混合し、サンドグラインドミルで8時間粉砕し、微粒化分散処理を行なった。続いて、ポリビニルブチラール(電気化学工業(株)製、商品名「デンカブチラール」#6000C)0.75部、フェノキシ樹脂(ユニオンカーバイド社製品、PKHH)0.75部を、1,2−ジメトキシエタン28.5部に溶解したバインダー溶液と混合し、最後に1,2−ジメトキシエタンと4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノンの任意混合液13.5部を加えて、固形分(顔料+樹脂)濃度4.0質量%の電荷発生層形成用塗布液を調製した。この電荷発生層形成用塗布液を、前記下引き層上に乾燥後の膜厚が0.6μmとなるように浸漬塗布した後、乾燥して電荷発生層を形成した。
次に、この電荷発生層の上に、下記に示すトリフェニルアミン化合物67部、
下記繰り返し構造を有するポリカーボネート樹脂100部、
下記構造の化合物0.5部、
及び、シリコーンオイル0.02質量部を、テトラヒドロフラン/トルエン(8/2)混合溶媒640質量部に溶解させた電荷輸送層用塗布液を、乾燥後の膜厚が25μmとなるように塗布し、室温において25分間風乾し、更に125℃において20分間乾燥して電荷輸送層を設けて電子写真感光体を作製した。
以上で得られた電子写真感光体を、電子写真学会標準に従って作製された電子写真特性評価装置(続電子写真技術の基礎と応用、電子写真学会編、コロナ社、第404〜405頁に記載)に装着し、以下の手順に従って、帯電、露光、電位測定、除電のサイクルによる電気特性の評価を行なった。
暗所で、スコロトロン帯電器のグリッド電圧−800Vで放電を行ない、感光体を帯電させたときの、感光体初期表面電位を測定した。次に、ハロゲンランプの光を干渉フィルターで450nmの単色光としたものを照射して、表面電位が−350Vとなる時の照射エネルギー(μJ/cm2)を測定し、この値を感度E1/2としたところ、初期帯電電位は−708V、感度E1/2は3.288μJ/cm2であった。なお、初期帯電電位は数値が高い(電位の絶対値が大きい)方が帯電性が良く、感度は数値が小さいほど高感度であることを示す。
<比較例6>
下引き層形成用塗布液として、前記比較例3に記載の下引き層形成用塗布液Vを用いた以外は、実施例12と同様にして電子写真感光体を作製し、実施例12と同様にして電気特性を評価したところ、初期帯電電位は−696V、感度E1/2は3.304μJ/cm2であった。
実施例12と比較例6の結果から、本発明の電子写真感光体は、露光波長が350nm〜600nmの単色光で露光した場合に、感度に優れることが分かった。
本発明の電子写真感光体は、感光体特性も良好で絶縁破壊にも強く、しかも色点等の画像欠陥の少ない非常に優れた性能を有していた。