JP2007333789A - 回折光学素子及びそれを有する光学系 - Google Patents
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Abstract
【課題】回折光学素子への入射角が所定の入射角分布を持つ場合においても、又可視波長域で高い回折効率が得られる回折光学素子を得ること。
【解決手段】少なくとも2種類の異なる材料から成る複数の回折格子を少なくとも1つの空気層8を介して積層した回折光学素子1であって、該複数の回折格子のうち、格子面内での格子部の格子高さの変化による回折効率の変化量が最も小さい回折格子だけが、その格子部の格子高さが変化していること。
【選択図】 図2
【解決手段】少なくとも2種類の異なる材料から成る複数の回折格子を少なくとも1つの空気層8を介して積層した回折光学素子1であって、該複数の回折格子のうち、格子面内での格子部の格子高さの変化による回折効率の変化量が最も小さい回折格子だけが、その格子部の格子高さが変化していること。
【選択図】 図2
Description
本発明は回折光学素子及びそれを有する光学系に関し、可視波長域、また、使用画角全体において高い回折効率が得られるものである。
従来、光学系の諸収差の発生を押さえる方法として、接合レンズ、異常分散材料、非球面等といった様々な光学要素を適切に組み合わせる方法がとられている。
特に諸収差のうち色収差は低分散材料より成る正レンズと高分散材料より成る負レンズを組み合わせる方法や、異常分散材料を使用する方法等がとられている。
この他、光学系中に回折作用を有する回折光学素子を用い、屈折面と回折面とで、ある基準波長に対する色収差が逆方向に発現するという物理現象を利用して、色収差を補正する方法がとられている(特許文献1,2)。
回折光学素子を用いると、回折により複数の回折光が生じる為、設計の際に使用する特定次数(以下、設計次数と表記する)の光線以外は不要回折光となり、フレア等の有害光となる。
設計次数に光線が集中するように格子構造を適切に設定して、その他の次数の不要回折光の強度を弱まるようにした回折光学素子が知られている。
このうち回折格子の格子部の高さを変化させて、回折効率を向上させ、不要光を縮小させた回折光学素子が知られている(特許文献3,4)。
特開平 4−213421号公報
特開平 6−324262号公報
特開平 9−127322号公報
特開2002−082214号公報
回折光学素子をデジタルカメラ、ビデオカメラ、銀塩カメラ等に用いられるズームレンズの一部に使用した場合、回折光学素子を構成する回折格子に入射する光線は格子部に対して垂直入射とは限らず、ある範囲の角度分布で入射する。
特許文献3、4では、2種類の回折格子の格子部の格子高さを最適に選択する事で所定の入射角度範囲内で高い回折効率を得ている。
回折光学素子の製造の観点からすると、複数の回折格子の全ての回折格子の格子部の格子高さを変化させる構成は製造上のバラつきがあると、可視領域及び所定の入射角範囲内で高い回折効率が得られなくなってくる。
このため、回折光学素子を光学系中に用いるときは、回折光学素子の製造上のバラつきを考慮して、使用波長領域及び所定の光束の入射角範囲内で高い回折効率が得られるように回折部の構造を設定することが重要となる。
本発明は、回折光学素子への入射角が所定の入射角分布を持つ場合において、又可視波長域において、高い回折効率が得られる回折光学素子及びそれを有する光学系の提供を目的とする。
本発明の回折光学素子は、少なくとも2種類の異なる材料から成る複数の回折格子を少なくとも1つの空気層を介して積層した回折光学素子であって、該複数の回折格子のうち、格子部の格子高さの変化による回折効率の変化量が最も小さい回折格子だけ、その格子部の格子高さが変化していることを特徴としている。
この他本発明の回折光学素子は、少なくとも2種類の分散の異なる材質からなる複数個の回折格子を少なくとも1の空気層を介して積層し、可視領域で特定次数の回折効率を高めた回折光学素子であって、該複数の回折格子のうち、分散の最も小さな材料より成る回折格子だけその格子部の格子高さが変化していることを特徴としている。
本発明の光学系は、回折光学素子を構成する複数の回折格子は、光入射側から順に、第1、第2の回折格子より成り、
λ0:設計波長、
λ:可視域(波長400nmから波長700nm)の任意波長、
θ(λ):波長λの光束の第1の回折格子への入射角、
θ(λ0):波長λ0の光束の第1の回折格子への入射角、
θ´(λ):波長λの光束の第1の回折格子からの出射角、
θ´(λ0):波長λ0の光束の第1の回折格子からの出射角、
θ”(λ):波長λの光束の第2の回折格子からの出射角、
θ”(λ0):波長λ0の光束の第2の回折格子からの出射角、
C:第2の回折格子と第1の回折格子の格子部の格子厚比
n1(λ):波長λでの第1の回折格子の格子部の屈折率
n1(λ0):波長λ0での第1の回折格子の格子部の屈折率
n2(λ):波長λでの第2の回折格子の格子部の屈折率
n2(λ0):波長λ0での第2の回折格子の格子部の屈折率
とし、各回折格子への光束が入射するとき、
λ0:設計波長、
λ:可視域(波長400nmから波長700nm)の任意波長、
θ(λ):波長λの光束の第1の回折格子への入射角、
θ(λ0):波長λ0の光束の第1の回折格子への入射角、
θ´(λ):波長λの光束の第1の回折格子からの出射角、
θ´(λ0):波長λ0の光束の第1の回折格子からの出射角、
θ”(λ):波長λの光束の第2の回折格子からの出射角、
θ”(λ0):波長λ0の光束の第2の回折格子からの出射角、
C:第2の回折格子と第1の回折格子の格子部の格子厚比
n1(λ):波長λでの第1の回折格子の格子部の屈折率
n1(λ0):波長λ0での第1の回折格子の格子部の屈折率
n2(λ):波長λでの第2の回折格子の格子部の屈折率
n2(λ0):波長λ0での第2の回折格子の格子部の屈折率
とし、各回折格子への光束が入射するとき、
なる条件を満足することを特徴としている。
本発明によれば、回折光学素子への入射角が所定の入射角分布を持つ場合においても、可視波長域で高い回折効率が得られる。
以下に、本発明の回折光学素子及びそれを有する光学系の実施例について図面を参照して説明する。
図1は本発明の回折光学素子の実施例1の正面概略図を表している。図1において、1は回折光学素子であり、基盤2の表面に互いに異なった複数の材料からなる複数の回折格子3が積層された構成よりなっている。基盤2は例えば光学系に用いるときは、レンズや平行板に相当する。
図2は図1の回折光学素子1を図中のA−A’の断面で切断した時の断面形状の一部の概略図である。回折光学素子は、基盤2の表面に第1の回折格子4と第2の回折格子5とを空気層8を介して積層して構成されている。第1の回折格子4と空気層8の間に第1の回折格子面6、第2の回折格子5と空気層8の間に第2の回折格子面7を形成している。
第1、第2の回折格子4,5、空気層8は、回折部1aの一要素を構成している。
該格子面6,7は、設計波長の特定の入射光線(以下、このときの入射光線の入射角を設計入射角と表記する)に対して最大の回折効率が得られる様、格子厚dが構成されている。ここで輪帯とは中心Caから同心同状に複数の輪帯に分割したときの各領域をいう。
図2は中心Caから数えて第p輪帯の格子部5pと第q輪帯の格子部5qの格子断面形状を示している。第1の回折格子4は第p輪帯と第q輪帯とで格子部の格子高さd1(p)、d1(q)が変化し、第2の回折格子5は第p輪帯と第q輪帯とで格子部の格子高さd2が変化していない様子を示している。
第1の回折格子4は、光線有効径の9割から10割の周辺輪帯での格子部の格子高さの変化量が中心付近の輪帯での格子部の格子高さの変化量より大きい。
ここで中心Caとは、回折光学素子1のX方向(回折格子の格子部の並び方向)の距離の中点をいい、中心軸とは中点Caを通り、基板2に垂直な線をいう。
実施例1では、格子面内(X方向)において格子部の格子高さの変化による回折効率の変化量が最も小さい回折格子の格子部を、格子面内の位置に応じた最適な格子高さに変化させている。これによって回折効率の入射角依存性を小さくして均一で高い回折効率を得ている。また、光学系に組み込んだ際にも、画角全般にわたり均一で高い回折効率が維持して、フレアの発生を抑制している。
実施例1では、回折格子の格子部の製造上の格子高さのバラつきによる回折効率の変化を考慮して格子部の格子高さを制御している。具体的には、積層された複数の回折格子のうち、格子部の格子高さの変化に伴う回折効率の変化量が最も小さい回折格子(層)の格子部の格子高さを変化させ、その他の回折格子の格子部の格子高さを一定としている。このような構成とする事で、格子部の格子高さの変化に伴う回折効率の変化の大きい回折格子(層)の製造バラつきによる回折効率への影響を低減している。
ここで格子部の格子高さの変化による回折効率の変化量が最も小さい回折格子とは、例えば次のものをいう。
例えば分散(アッベ数)の異なる複数の材料から、複数の回折格子を構成したとき、アッベ数の最も大きい材料から成る回折格子である。
アッベ数が大きい(分散が小さい)材料より成る回折格子は、波長変化に対して回折効率の変化が小さく、又は格子部の格子高さ変化に対しても各波長での回折効率の変化が小さくなる。
この他、格子部の格子高さの変化による回折効率の変化量が最も小さい回折格子は予め、数値解析(シミュレーション)して求めても良い。そして求めた結果より1つの回折格子のみを格子部の格子高さを変化させても良い。
次に、回折格子の格子部の格子面内での格子高さを最適に設定するための、回折光学素子1の回折部1aの回折効率の波長及び入射角依存性について説明する。
図3は、考え方を容易にする為に、1つの回折格子(1層)31からなる回折光学素子1に垂直に光線が入射した場合の説明図である。波長(設計波長)λ0の光線の回折効率が最大になる条件は、回折格子31の段差部分の光路長差が波長の整数倍になれば良く、(2)式となる。
ここで、n(λ0)は入射側の媒質の波長λ0での屈折率、n’(λ0)は射出側の媒質の波長λ0での屈折率、dは回折格子31の格子部31aの格子高さ、mは回折次数をそれぞれ示している。ただし、(2)式は入射光線、射出光線共に回折格子31への入射角が0°あるいは0°と同等と扱える場合の近似になっている。
以下、光線の入射角、出射角とは、基板の面法線に対する角をいう。
一般的には回折格子31に光束が入射側、射出側共に任意の入射角で入射又は出射角で出射してくる為、厳密に示すと(2)式は(3)式の様になる。
ここで、θ(λ0)、θ’(λ0)はそれぞれ回折格子31への波長λ0の入射光線の入射角、射出光線の射出角を示している。
次に図2の複数の回折格子が積層された積層構造の回折部1aの場合について説明する。この場合、図2の積層構造は図4の積層構造と同等として考える事が出来る。その為、回折効率が最大となる条件は、1層の回折格子のときと同様に、2つの層の回折格子4、5において、格子部の段差部分の光路長差が波長の整数倍になれば良く、(4)式の様になる。
ここで、n1(λ0)、n2(λ0)、n3(λ0)はそれぞれ媒質1(回折格子4)、媒質2(回折格子5)、媒質3(光出射側)の波長λ0での屈折率を示している。
θ(λ0)、θ’(λ0)、θ”(λ0)はそれぞれ波長λ0の媒質1、媒質2、媒質3への入射角を示している。
尚、θ’(λ)は媒質1からの出射角、θ”(λ)は、媒質2からの出射角に相当している。
d1、d2は各回折格子4,5の格子部の格子高さ、mは回折次数をそれぞれ示している。
可視領域内での任意の波長λで考えた場合、(4)式は(4)’式になる。
ここで、n1(λ)、n2(λ)、n3(λ)はそれぞれ媒質1、媒質2、媒質3の任意波長λでの屈折率を示している。θ(λ)、θ’(λ)、θ”(λ)はそれぞれ任意波長λの媒質1、媒質2、媒質3への入射角をそれぞれ示している。
尚、θ’(λ)は媒質1からの出射角、θ”(λ)は媒質2からの出射角に相当している。
該条件における任意波長λでの回折効率n(λ)を計算すると(5)式の様になる。
ここで、φ(λ)は、
で表される位相関数、Mは評価する回折光の次数である。
又、cは、第2の回折格子と第1の回折格子の格子部の格子厚比である。
2つの回折格子を積層した積層構造の本実施例は、n3(λ)=1、n3(λ0)=1、M=1より前述した(1)式を満足している。即ち、
なる条件を満足している。
上記記載の条件式(1)は、(5)式で表される回折効率η(λ)に関する条件式である。上限及び下限値を超えると設計次数以外の次数の回折効率が増大し、フレアとして現れてくるので良くない。
本実施例において、上記条件式(1)の数値範囲が下記範囲を満たす事が設計次数以外のフレアを抑制する上で望ましい。
本実施例は複数の材料からなる複数の回折格子を積層し、(5)式において使用波長域、使用入射角度において所望の回折効率η(λ)が得られる様に材料を選択している。そして回折効率η(λ)に対する敏感度が最も小さい回折格子の格子部の格子高さを面内で変化させている。
ここで、敏感度とは、格子部の格子高さの変化による回折効率の変化の比である。
このように格子部の格子高さを、高さの変化による回折効率の劣化(変化)が小さい方の格子部を選択し、製造上のバラつきに対して有利になる様にしている。
回折光学素子を光学系中に用いるときは、回折光学素子の中心付近の輪帯に比べ、光線有効径の9割から10割の周辺輪帯は回折格子への光束入射角度が大きくなる。このため、光線有効径の9割から10割の周辺輪帯で中心付近の輪帯よりも格子部の格子高さの変化率が大きくなるようにしている。
又、格子面内での格子部の格子高さが変化している回折格子は、複数の輪帯を有し、輪帯ごとに格子部の格子高さが変化している。
以下に回折光学素子の具体的な例と、それより得られる効果について説明する。
本発明の実施例2の回折光学素子として、2つの回折格子を積層した2積層構造の場合を説明する。ここで、第1層の回折格子4の材料として、エネルギー硬化材料の1つである紫外線硬化樹脂1(d線に対する屈折率nd=1.523、d線に対するアッベ数νd=50.96)、第2層の回折格子5の材料として、紫外線硬化樹脂2(nd=1.567、νd=20.79)を用いている。
図5は、本実施例の回折光学素子を有する光学系のレンズ断面図である。
図5に示す光学系は、ズームレンズである。
図5のズームレンズは、物体側から像側へ順に、正の屈折力の第1レンズ群L1、負の屈折力の第2レンズ群L2、正の屈折力の第3レンズ群L3、負の屈折力の第4レンズ群L4、正の屈折力の第5レンズ群L5から成っている。そしてズーミングに際して矢印の如く各レンズ群L1〜L5が移動している。
SPは開口絞りであり、第3レンズ群L3の物体側に位置しており、ズーミングに際して第3レンズ群L3と一体的に又は独立に移動する。
IPは像面であり、ビデオカメラやデジタルスチルカメラの撮影光学系として使用する際にはCCDセンサやCMOSセンサ等の固体撮像素子(光電変換素子)の撮像面に、銀円フィルム用カメラのときはフィルム面に相当する。
第5レンズ群L5を光軸上移動させてフォーカシングを行うリアフォーカス式を採用している。
望遠端において無限遠物体から近距離物体へフォーカスを行う場合には同図矢印5cに示すように第5レンズ群L5を前方に繰り出すことによって行っている。第5レンズ群L5の実線の曲線5aと点線の曲線5bは各々無限遠物体と近距離物体にフォーカスしているときの広角端から望遠端へのズーミングに伴う際の像面変動を補正するための移動軌跡を示している。
尚、本実施例のズームレンズのズームタイプは図5に示す5群ズームレンズに限らずどのようなズームタイプであっても良い。
又、ズームレンズでなく、単一の焦点距離の光学系であっても良い。
図6は、図1の光学系の第1レンズ群L1の回折光学素子とレンズG2の一部分の拡大説明図である。
図6において、回折光学素子1は、レンズG1(基板2)面上に2つの回折格子4、5を積層した構造より成っている。
尚、本実施例の回折光学素子は、図6においてレンズG2を基板として、その面上に2つの回折格子4,5を積層した構造より成ると取り扱うこともできる。
回折光学素子1の第1、第2の回折格子4、5は、紫外線硬化樹脂1、2を用いている。
本実施例において、光軸La上の第1光軸上の第1輪帯(格子ピッチ3mm)に入射する特定の光線が入射角0°、設計波長をd線(587.56nm)、設計回折次数を1次とする。この時、(5)式から解の1つとして第1層の回折格子4の格子部の格子高さ12.958mm、第2層の回折格子5の格子部の格子高さ10.924mmが得られる。
表1、表2に(5)式から得られた格子部の格子高さの組み合わせ時の設計次数、及び0次回折、2次回折の回折効率を示す。
表1は入射角度の依存性を表しており、入射角度±10°の範囲で変化した場合の回折効率n(λ)を表している。ここで、入射角度は左からの入射角を正、右側からの入射角を負としている。表2は第2層の回折格子5側の格子部の格子高さの依存性を示しており、±50nmの範囲で格子高さを変化した場合を示している。ここで、格子部の格子高さが高くなる方向を正、低くなる方向を負としている。
下記表中において、kは条件式(1)の値を示している。
次に、図5に示す光学系に配置された回折光学素子1の回折部1aの周辺輪帯の構造について説明する。
回折部1aの周辺輪帯の構造は、回折格子の位相関数に従い、格子ピッチが中心輪帯に比べ細かくなる(本実施例の場合、0.25mm)。
また、デジタルカメラやビデオカメラ、銀塩カメラ等に用いられるズームレンズでは、光線の回折光学素子1への入射角度が大きくなる。
また、ズーミングにより入射角度が変化し、その変化の幅も大きくなる(本実施例の場合0〜20°)。
その為、入射光の入射角に合わせて角度変化に対応するように格子部の格子高さを変化させる必要がある。
まずは、従来例の様に第1層及び第2層の双方の格子部の格子高さを変化させる事を考える。
(5)式を用いて周辺輪帯の回折効率を求めると、1つの解として第1層の回折格子の格子部の格子高さ12.942mm、第2層の回折格子の格子部の格子高さ10.935mmが得られる。ただし、設計入射角は15°で入射するものとして計算している。
表3、表4に(5)式から得られた格子部の格子高さの組み合わせ時の設計次数、及び0次回折、2次回折の回折効率を示す。表3は第2層側の回折格子5の回折部の格子高さの依存性を表しており、表4は入射角度の依存性を示している。
本実施例では、各層における格子部の高さの変化による回折効率の変化が小さい層、(本実施例の場合、第1層)の格子部の格子高さのみを変化させている。(5)式を用いて回折部1aの格子部の周辺輪帯の回折効率を求めると、1つの解として第1層の回折格子の格子部の格子高さ12.908mm、第2層の回折格子の格子部の格子高さ10.924mmが得られる。図7に回折効率n(λ)の波長特性を示す。
表5、表6に(5)式から得られた格子部の格子高さの組み合わせ時の設計次数、及び0次回折、2次回折の回折効率を示す。表5は第2層側の回折格子の格子部の格子高さの依存性を表しており、表6は入射角度の依存性を示している。
上記の様に、設計波長についてはそれほど大きな違いは現れていない。しかし、波長400から波長700nmの可視波長域まで考慮すると違いは大きくなる。比較として、可視波長域についての関係を図8乃至図11に示す。
図8、図9は、それぞれ第1層のみと、第1層、第2層共に格子部の格子高さを変えたものに対し、格子高さの変化による設計次数の回折効率の劣化量を示している。
2つを比較すると、図8に示すように1層のみの格子部の格子高さを変えた方が、特に短波長側で回折効率が減少している事が分かる。
製造による格子部の格子高さのバラつきが上記数値より大きくなった場合、違いはより顕著となる。
また、図10、図11は、それぞれ第1層のみと、第1層、第2層共に格子部の格子高さを変えたものに対し、回折光学素子への入射角度の変化による設計次数の回折効率の劣化量を示している。2つを比較すると、図11に示すように第1、第2層の格子高さを変えた方が、格子高さが高くなった影響で入射角度の影響が受け易くなっている。
この様に、格子部の格子高さの変化による回折効率の変化が小さい方の回折格子を選択し、格子部の格子高さを変化する事で、製造上のバラつきに対して有利にしている。
また、(5)式から分かるように、回折効率は三角関数に依存しているため、高ズーム比のズームレンズの場合、回折格子への入射角度が大きくなり、劣化量は三角関数的に増加する。
特にテレ端のズーム位置では回折格子への入射角度が大きく、また、不要回折光線が集光せずに広がるため、設計次数の回折効率を高める必要がある。これに対応させるため、図12の様に設計角度は輪帯毎の光束の入射角度範囲の中で大きい方に設定している。
格子部の格子高さは入射角度に依存し、角度が大きくなるにつれて最適な格子部の格子高さが大きく変わる。このため図13に示すように回折部の中心輪帯に比べ周辺輪帯で格子部の格子高さを大きく変化させている。
また、第1層の回折格子の材料として高屈折率、第2層の回折格子の材料として低屈折率高分散を選択すると、角度特性、波長特性を改善する上で望ましい。
以上の実施例は、回折部1aが2層より成る場合を示したが、本発明は、3層以上の回折格子であっても、同様に適用できる。
1:回折光学素子
2:基盤
3:積層回折格子
4:第1の回折格子
5:第2の回折格子
6:第1の回折格子面
7:第2の回折格子面
8:空気層
di(p):第I層、第p輪帯の格子高さ
L1:第1レンズ群
L2:第2レンズ群
L3:第3レンズ群
L4:第4レンズ群
L5:第5レンズ群
SP:絞り
IP:像面
G:ガラスブロック
2:基盤
3:積層回折格子
4:第1の回折格子
5:第2の回折格子
6:第1の回折格子面
7:第2の回折格子面
8:空気層
di(p):第I層、第p輪帯の格子高さ
L1:第1レンズ群
L2:第2レンズ群
L3:第3レンズ群
L4:第4レンズ群
L5:第5レンズ群
SP:絞り
IP:像面
G:ガラスブロック
Claims (6)
- 少なくとも2種類の異なる材料から成る複数の回折格子を少なくとも1つの空気層を介して積層した回折光学素子であって、該複数の回折格子のうち、格子部の格子高さの変化による回折効率の変化量が最も小さい回折格子だけが、その格子部の格子高さが変化していることを特徴とする回折光学素子。
- 前記格子部の格子高さが変化している回折格子は、光線有効径の9割から10割の周辺輪帯で中心付近の輪帯よりも格子部の格子高さの変化率が大きいことを特徴とする請求項1の回折光学素子。
- 前記格子部の格子高さが変化している回折格子は、複数の輪帯を有し、輪帯ごとに格子部の格子高さが変化していることを特徴とする請求項1又は2の回折光学素子。
- 少なくとも2種類の分散の異なる材質からなる複数個の回折格子を少なくとも1の空気層を介して積層し、可視領域で特定次数の回折効率を高めた回折光学素子であって、該複数の回折格子のうち、分散の最も小さな材料より成る回折格子のみその格子部の格子高さが変化していることを特徴とする回折光学素子。
- 請求項1〜4のいずれかの1項の回折光学素子を用いたことを特徴とする光学系。
- 前記複数の回折格子は、光入射側から順に、第1、第2の回折格子より成り、
λ0:設計波長、
λ:可視域(波長400nmから波長700nm)の任意波長、
θ(λ):波長λの光束の第1の回折格子への入射角、
θ(λ0):波長λ0の光束の第1の回折格子への入射角、
θ´(λ):波長λの光束の第1の回折格子からの出射角、
θ´(λ0):波長λ0の光束の第1の回折格子からの出射角、
θ”(λ):波長λの光束の第2の回折格子からの出射角、
θ”(λ0):波長λ0の光束の第2の回折格子からの出射角、
C:第2の回折格子と第1の回折格子の格子部の格子厚比
n1(λ):波長λでの第1の回折格子の格子部の屈折率
n1(λ0):波長λ0での第1の回折格子の格子部の屈折率
n2(λ):波長λでの第2の回折格子の格子部の屈折率
n2(λ0):波長λ0での第2の回折格子の格子部の屈折率
とし、各回折格子への光束が入射するとき、
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JP (1) | JP2007333789A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US9117430B2 (en) | 2013-01-15 | 2015-08-25 | Yamaha Corporation | Electric stringed musical instrument and method of designing the same |
CN105404002A (zh) * | 2015-12-23 | 2016-03-16 | 长春理工大学 | 空气间隙对多层衍射光学元件衍射效率影响的分析方法 |
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2006
- 2006-06-12 JP JP2006162238A patent/JP2007333789A/ja active Pending
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US9117430B2 (en) | 2013-01-15 | 2015-08-25 | Yamaha Corporation | Electric stringed musical instrument and method of designing the same |
CN105404002A (zh) * | 2015-12-23 | 2016-03-16 | 长春理工大学 | 空气间隙对多层衍射光学元件衍射效率影响的分析方法 |
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