JP2007314458A - コラーゲン抽出方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】魚鱗から得た粗コラーゲンを2.5g計量し、当該計量した粗コラーゲンに濃度30%の過酸化水素水を25ml加え、20℃〜25℃の室温にて16時間経過させた。次に、過酸化水素水と粗コラーゲンとの混合物に濃度0.02Nの酢酸を200ml加え、その状態で72時間経過させた。その後、過酸化水素水、粗コラーゲンおよび酢酸の混合物を回転数1000rpmで10分間遠心分離を行うことにより、不溶性成分を除去した。さらに、その混合物を透析することにより、過酸化水素、酢酸といった低分子成分を除去し、次いで、凍結乾燥を行った。その結果、1.53gのコラーゲンを得た。すなわち、収率は61.2%であった。
【選択図】なし
Description
特許文献1に記載の方法は、魚鱗から粗コラーゲンを生成し、当該生成した粗コラーゲンを酸性水溶液中に浸漬させせることによりコラーゲンを抽出するものである。この方法においては各工程を15℃以下の低温で行っており、これにより、コラーゲンが変形や分解等せずに質の高いコラーゲンを得ることができる。
具体的には、特許文献1では、生成した粗コラーゲン(粗魚鱗コラーゲン)に4℃〜5℃の酢酸水溶液を加えて36時間〜48時間経過させてコラーゲンを抽出している。そして、この抽出工程を3回繰り返している。その結果、粗コラーゲンに対して最終的に得られたコラーゲンの収率が約6.6%となっている。このように、この方法によると質の高いコラーゲンを得ることができるが、抽出工程を複数回行うという手間があるにもかかわらず収率が悪いため、実際の生産には不向きであるという問題点がある。
具体的には、まず、粗コラーゲン(前処理済み魚鱗)を塩酸中に浸漬して膨張させた後に破砕し、当該破砕した粗コラーゲンに蛋白質分解酵素であるペプシンを加えて24時間経過させる。その後、遠心分離により上澄み液と沈殿物とに分離し、沈殿物に対しては上記処理を繰り返し行い、合計でペプシンを加える処理を3回行っている。その結果、粗コラーゲンに対して最終的に得られたコラーゲンの収率が約70.0%となっている。なお、この場合の収率は、処理工程を3回繰り返し行った後の合計の収率であり、1回の処理工程のみを行った場合の収率は依然として低いものであった。このように、この方法によると収率良くコラーゲンを抽出することもできるが各工程を繰り返し行わなければならないため、全体として煩雑な方法であり、また、各工程を一回行うのみでは収率が低いといった問題点がある。
また、このようにすることで、コラーゲンが変形や分解等しにくいため、質の高いコラーゲンを抽出することができる。ゆえに、簡易な方法でありながら、収率良く質の高いコラーゲンを得ることができる。
なお、コラーゲンの変性温度は、たとえば、コラーゲンが魚由来のものの場合には約30℃であり、コラーゲンが牛や豚由来のものの場合には約40℃である。また、コラーゲン水溶液の凝固点は、約0℃である。また、過酸化水素水の水温は、20℃〜25℃であることが好ましい.
また、コラーゲン含有組織を脱灰して粗コラーゲンを生成するので、質の高い粗コラーゲンを得ることができる。なお、脱灰するとは、広くカルシウム成分を除去することを言う。より詳しくは、魚類から得られるコラーゲン含有組織には、カルシウムが多く含まれており、このままの状態でコラーゲンを抽出すると不純物が混入しやすく抽出するコラーゲンの質が悪くなり、また、収率も悪くなってしまう。そこで、コラーゲン含有組織からカルシウム成分を除去して粗コラーゲンを生成することで、収率良く質の高い粗コラーゲンを得ることができる。
本発明においては、原料として魚鱗を用い、特に、魚としてテラピアを用いた。
また、魚鱗を脱灰する工程としてアルカリ処理および塩酸処理を行った。このうち、アルカリ処理として魚鱗を水酸化ナトリウム水溶液に浸漬した。また、塩酸処理として魚鱗を塩酸溶液に浸漬した。また、魚鱗から得た粗コラーゲンを酸化処理する工程として、粗コラーゲンに過酸化水素水を加えた。
また、魚鱗を脱灰する方法はカルシウムを除去するものであれば良く、アルカリ処理および塩酸処理を行うものに限られない。
乾燥したテラピアの魚鱗100gを濃度0.1Nの水酸化ナトリウム水溶液に浸漬し、水温を10℃に保って24時間攪拌した。その後、魚鱗を水酸化ナトリウム水溶液から取出し、洗浄液が濁らなくなるまで魚鱗を洗浄した。
そして、洗浄した魚鱗をホモジナイザーを用いて粉砕した。粉砕した魚鱗を凍結乾燥することにより、50gの「粗コラーゲン」を得た。
次に、コラーゲンを抽出するために過酸化水素水と粗コラーゲンとの混合物に濃度0.02Nの酢酸を20ml加え、その状態で72時間経過させた。
その結果、過酸化水素水を加えた後の経過時間が4時間の場合の収率が36%、7時間の場合の収率が39%、16時間の場合の収率が61.2%となった。
これより、粗コラーゲンに過酸化水素水を加えた後の経過時間は4時間〜16時間が効率的であることが確認できた。
実施例1と同様の方法で得た粗コラーゲンを2.5g計量し、当該計量した粗コラーゲンに濃度10%または20%の過酸化水素水を25ml加え、20℃〜25℃の室温にて4時間、7時間経過させた。
次に、コラーゲンを抽出するために過酸化水素水と粗コラーゲンとの混合物に濃度0.02Nの酢酸を20ml加え、その状態で72時間経過させた。
その結果、10%過酸化水素水にて4時間処理を行ったものの収率が2.5%、7時間のものは3.5%であった。20%過酸化水素水にて4時間処理を行ったものの収率が8%、7時間の場合の収率が10.5%となった。
これより、20%過酸化水素による酸化処理によってもコラーゲン抽出効率が向上することが確認できた。
実施例1と同様の方法で得た粗コラーゲンを2.0g計量し、当該計量した粗コラーゲンに濃度30%の過酸化水素水を15ml加え、20℃〜25℃の室温にて16時間経過させた。
次に、過酸化水素水と粗コラーゲンとの混合物に濃度0.02Nの酢酸を20ml加え、その状態で72時間経過させた。
次いで、より収率良くコラーゲンを得るために、この混合物に水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを7.5とし、さらに、回転数1000rpmで10分間遠心分離を行うことにより、コラーゲンを沈殿させた。
その結果、1.38gのコラーゲンを得た。すなわち、収率は69.0%であった。
実施例1と同様の方法で得た粗コラーゲンを2.5g計量し、当該計量した粗コラーゲンに、たんぱく質分解酵素であるペプシンの濃度が0.1%であり、酢酸の濃度が0.01Nである溶液を25ml加え、さらに、水温を10℃に保って72時間経過させた。
なお、比較例1は、本件発明の方法と従来技術の方法とを分かりやすく比較するため、特許文献2に記載の方法を参考にして行った。また、特許文献2によれば、各工程を複数回繰り返す方法が記載されているが、比較例1においては比較の便宜上、各工程を一回のみ行った。
これより、実施例1および実施例2と比較例1とを比較すると、過酸化水素処理を行った実施例1および実施例2の収率が、比較例1の収率に比べて高いことが確認できた。すなわち、同一時間で処理を行う場合には実施例1および実施例2の方法が比較例1の方法よりもコラーゲンを多く抽出でき、同一の量のコラーゲンを抽出する場合には実施例1および実施例2の方法が比較例1の方法よりも工程が少なく簡易な方法であることが確認できる。換言すれば、特許文献2にならってペプシンを用いて本願方法と比較できるように実験を構築した比較例1よりも、本願方法が遥かに効率的であることが確認できたと言える。
実施例2と同様の方法において、粗コラーゲンに過酸化水素水を加えた後の経過時間を種々に変更して測定結果を得た。過酸化水素水を加えた後の経過時間は、16時間、24時間、48時間、72時間、96時間および2週間の6種類として、それぞれの測定結果を得た。また、過酸化水素水は34%のものを45ml用いた。また、過酸化水素水の水温は10℃に保った。
また、約40%過酸化水素による酸化処理によってもコラーゲン抽出効率が向上することが確認できた。
Claims (4)
- コラーゲン含有組織からコラーゲンを抽出する方法であって、
コラーゲン含有組織に対して前処理を行って粗コラーゲンを生成する粗コラーゲン生成工程と、
前記粗コラーゲン生成工程により生成された粗コラーゲンに対して酸化処理を施す酸化処理工程と、
を含むことを特徴とするコラーゲン抽出方法。 - 前記酸化処理工程は、粗コラーゲンを過酸化水素を用いて処理する過酸化水素処理工程を含むことを特徴とする請求項1に記載のコラーゲン抽出方法。
- 前記過酸化水素処理工程は、水温がコラーゲンの変性温度以下かつ0℃以上の20%〜40%過酸化水素水に粗コラーゲンを4時間〜96時間浸漬させる工程を含むものであることを特徴とする請求項2に記載のコラーゲン抽出方法。
- 前記コラーゲン含有組織は、魚類から得られる組織であり、
前記粗コラーゲン生成工程は、コラーゲン含有組織を脱灰する脱灰工程を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載のコラーゲン抽出方法。
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Non-Patent Citations (1)
Title |
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鳥取県産業技術センター研究報告 NO.8 2005, vol. p.49-55, JPN6011066435, March 2006 (2006-03-01), ISSN: 0002099286 * |
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