JP2007308728A - 結晶性薄膜の成膜方法 - Google Patents

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修 椎野
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Abstract

【解決手段】シングルカソードマグネトロンパルススパッタリング法による薄膜の成膜方法において、ターゲット電極に印加する印加電力のデューティ比を60%以下にすると共に、ターゲット直上の水平方向磁場を30mT以上としたこと、又はデュアルカソードマグネトロンパルススパッタリング法による薄膜の成膜方法において、2つのターゲット電極にそれぞれ印加する印加電力のデューティ比を40%以下にすると共に、ターゲット直上の水平方向磁場を30mT以上としたことを特徴とする結晶性薄膜の成膜方法。
【効果】本発明によれば、シングルカソードマグネトロンパルススパッタリング法又はデュアルカソードマグネトロンパルススパッタリング法において、低温あるいは無加熱の基板上へ、ターゲットの状態によらず、常に安定した結晶性薄膜を成膜することができる。
【選択図】なし

Description

本発明は、シングルカソードマグネトロンパルススパッタリング法又はデュアルカソードマグネトロンパルススパッタリング法により低温あるいは無加熱の基板上へ結晶性薄膜を成膜する方法、更に詳しくはターゲットの状態によらず、安定した結晶性薄膜を成膜する方法に関するものである。
従来、スパッタリング法は、薄膜形成手段として広く用いられており、真空蒸着法やCVD法等の他の成膜手段に対して、緻密で平滑な薄膜が比較的低温のプロセスで得られるという長所がある。一方、スパッタリング法で形成した薄膜はアモルファスとなることが多く、結晶性膜を得るには、一般に基板を高温に加熱しながらスパッタリングすることが必要である。このため、高分子フィルムなど耐熱性の低い基板を用いる場合や、基板に耐熱性の低い材料が使用される場合、その上から成膜する際、それぞれの耐熱温度を上回る加熱ができず、結果として結晶性の高い薄膜を形成することが困難であった。
特にDCスパッタリング法に対して、放電をより安定に長時間維持することを目的に、パルススパッタリング法が開発され、広く用いられるようになった。パルススパッタリング法は、一定の周期でターゲットに印加する印加電力のオン/オフを繰り返すもので、1周期中のオンの時間の比率であるデューティ比は70%以上で使用されることが多い。この場合、アーキングの回避など放電安定性が増し、成膜時のピンホールが低減されるが、その他の薄膜物性としては、DCスパッタリング法で成膜した場合と大きく変わらず、特に低温或いは無加熱の基板上への成膜では結晶性の高い薄膜は得られないものであった。
また、従来より2つのカソードを配置し、これらカソードに交互に電力を印加し、この際、電力としてパルス電力を付加するデュアルカソードパルススパッタリング法も知られているが、従来の方法では同様に結晶性薄膜は得られないものであった。
なお、本発明に関連する先行文献としては次のものが挙げられる。
特開2003−117404号公報 特開2004−143535号公報
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、シングルカソードマグネトロンパルススパッタリング法又はデュアルカソードマグネトロンパルススパッタリング法により低温あるいは無加熱の基板上へ薄膜を成膜する成膜方法において、ターゲットの状態によらず、安定した結晶性薄膜を成膜する成膜方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討を行った結果、結晶性の高い薄膜をパルススパッタリングで得るには、プラズマ密度を高め、プラズマ中の活性な粒子密度を上げることが重要であること、この場合、デューティ比を低下させることにより、瞬間的に大きな放電電流が流れ、それに伴いプラズマ中の活性粒子密度が向上し、結晶性の高い薄膜が得られることを知見したが、更に検討を進めた結果、結晶性の高い薄膜を常に安定して得るには、プラズマ密度を高め、プラズマ中の活性な粒子密度を上げるためのデューティ比を低下させることに加え、基板に対向するターゲット直上(つまりスパッタリング面)の水平方向磁場を一定値以上に保つことが重要であることを知見し、本発明をなすに至った。
即ち、本発明は下記結晶性薄膜の成膜方法を提供する。
[1]シングルカソードマグネトロンパルススパッタリング法による薄膜の成膜方法において、ターゲット電極に印加する印加電力のデューティ比を60%以下にすると共に、ターゲット直上の水平方向磁場を30mT以上としたことを特徴とする結晶性薄膜の成膜方法。
[2]ターゲット電極に印加する印加電力の周波数が1〜200kHzであることを特徴とする[1]記載の結晶性薄膜の成膜方法。
[3]2つのターゲット電極に交互に電力を印加するデュアルカソードマグネトロンパルススパッタリング法による薄膜の成膜方法において、前記2つのターゲット電極にそれぞれ印加する印加電力のデューティ比を40%以下にすると共に、ターゲット直上の水平方向磁場を30mT以上としたことを特徴とする結晶性薄膜の成膜方法。
[4]ターゲットに印加する印加電力の周波数が1〜200kHzであることを特徴とする[3]記載の結晶性薄膜の成膜方法。
[5]成膜進行に伴うターゲットの消費又はエロージョンの進行に従い、該ターゲットと磁石との距離を調整し、該ターゲット直上の水平方向磁場強度を一定に保って、薄膜の結晶化度をターゲットライフタイム中で安定させることを特徴とする[1]乃至[4]のいずれか1項記載の結晶性薄膜の成膜方法。
[6]前記ターゲットと磁石との距離の調整を、該ターゲットへの積算投入電力によって制御することを特徴とする[5]記載の結晶性薄膜の成膜方法。
[7]前記ターゲットと磁石との距離の調整を、該ターゲットの放電電圧を一定に保つように制御することを特徴とする[5]記載の結晶性薄膜の成膜方法。
本発明によれば、シングルカソードマグネトロンパルススパッタリング法又はデュアルカソードマグネトロンパルススパッタリング法において、低温あるいは無加熱の基板上へ、ターゲットの状態によらず、常に安定した結晶性薄膜を成膜することができる。
本発明のスパッタリングによる結晶性薄膜の成膜方法は、シングルカソードマグネトロンパルススパッタリング法又はデュアルカソードマグネトロンパルススパッタリング法によって行うものである。これは、シングルカソードパルススパッタリング法又はデュアルカソードパルススパッタリング法のカソード(陰極)に磁界を組み込むもので、この手法により直交電磁界中での電子のサイクロイド運動を利用して電離効率を上げ、多量のイオンをつくってターゲットをスパッタすることができる。
このようなマグネトロンスパッタリング法は、例えば、図1のように、薄膜を成膜する基板13と、支持体10の上にターゲット11が設けられたターゲット電極と、これらが真空のチャンバー16内に収納されて、該ターゲット電極の背後に磁石12を有するスパッタリング部、そしてこのスパッタリング部にスイッチングユニット14を介して、直流又は交流電源15が接続される構成により具体化される。
また、パルススパッタリングは、図2に示したように、DCスパッタリングが一定の電力を印加し、一定の電圧・電流にてスパッタリングを行う(図5参照)ものであるのに対し、パルス電圧(パルス電力)を与えてスパッタリングを行うもので、シングルカソードパルススパッタリングの場合、電流をオン/オフする1周期の時間に対する電流をオンにしている時間の割合をデューティ比とすると、
デューティ比=[オン時間/(オン時間+オフ時間)]×100(%)
と表され、このデューティ比を60%以下にすることで、結晶性の薄膜を形成し得るものである。
一方、デュアルカソードパルススパッタリングは、図3に示したように、2つのカソードA,Bを配置し、これらカソードA,Bに交互にパルス電圧(パルス電力)を印加するもので、この場合、一方がカソード(陰極)として放電している時、他方はアノード(陽極)として作用するものであり、通常はデポレート(成膜速度)を稼ぐためにカソードA,Bのデューティ比を合わせると100%に近い設定をするものであるが、図4(a),(b)に示すカソードA,Bにおけるそれぞれの1周期の時間に対するオン時間の割合であるデューティ比、即ち、
デューティ比(A)=[Xa/(Xa+Ya)]×100(%)
デューティ比(B)=[Xb/(Xb+Yb)]×100(%)
(Xa:カソードAのオン時間、Ya:カソードAのオフ時間)
(Xb:カソードBのオン時間、Yb:カソードBのオフ時間)
において、それぞれのカソードでのデューティ比を40%以下とすることにより、結晶性薄膜が形成されるものである。
更に詳述すると、本発明の結晶性薄膜の成膜方法は、上述した通り、ターゲット電極(カソード)に印加する電力を間欠的に変化させるパルススパッタリング法、更に、このパルススパッタリング法に複数のカソード配置を基本構成としたデュアルカソードパルススパッタリング法が用いられる。本発明においては、これらのスパッタリング法は、よりよい真空度でのプラズマ放電にも対応させるため、マグネトロンスパッタリング法を用いるものである。また、安定したパルス電流の発生と条件設定の自由度をもたせるため、パルス発生ユニットにはバイポーラ型又はユニポーラ型を用いることが好ましい。
図6は本発明に従って基板上に薄膜を形成した状態の一例を示す断面図である。
図6において、21は基板であり、その上に薄膜層22が設けられている。なお、図には示さないが、必要に応じて基板21と薄膜層22の間に下地層を設け、両者を隔絶してもよい。
なお、上記基板21の厚さは、25μm〜5mmが一般的であり、25μm〜3mmが好適に用いられる。
本発明によれば、基板を加熱することなく成膜が可能であるため、プラスチックフィルムなどの低耐熱性基板上に薄膜を形成することが可能である。
上記本発明の薄膜層22は、シングルカソードマグネトロンパルススパッタリング法、又はデュアルカソードマグネトロンパルススパッタリング法を用いてターゲットをスパッタリングすることにより形成される。
これらのスパッタリング法は、不活性ガスの存在下で行うか、又は不活性ガス及び酸素ガス等の反応性ガスの存在下で行うことができる。
その際、1周期中のオンの時間の比率であるデューティ比を低下させることにより、瞬間的に大きな放電電流が流れ、それに伴いプラズマ中の活性粒子密度が向上し、結晶性の高い薄膜層が得られる。
この大電流放電誘発と活性粒子密度向上の効果は、シングルカソードマグネトロンパルススパッタリング法では、デューティ比60%以下で現れ、このときのピーク電流は、同一印加電力密度(通常2〜10W/cm2の範囲)において、通常同方法で用いられているデューティ比80%のときのピーク電流の1.5倍以上となる。従って、同方法においては、デューティ比60%以下で、同一印加電力密度(通常2〜10W/cm2の範囲)において、通常同方法で用いられているデューティ比80%のときのピーク電流の1.5倍以上となるように実施することが好ましい。
一方、この大電流放電誘発と活性粒子密度向上の効果は、デュアルカソードマグネトロンパルススパッタリング法では、デューティ比40%以下で現れ、このときのピーク電流は、同一印加電力密度(通常2〜25W/cm2の範囲)において、通常同方法で用いられているデューティ比45%のときのピーク電流の1.3倍以上となる。従って、同方法においては、デューティ比40%以下で、同一印加電力密度(通常2〜25W/cm2の範囲)において、通常同方法で用いられているデューティ比45%のときのピーク電流の1.3倍以上となるように実施することが好ましい。
しかし、一方で過度にデューティ比を低下させることは、放電の不安定化を招き、また成膜速度の低下も招くおそれがあり、このため、本発明のデューティ比としては、シングルカソードマグネトロンパルススパッタリング法の場合、60〜15%、より好ましくは55〜20%であり、デュアルカソードマグネトロンパルススパッタリング法の場合、40〜10%、より好ましくは35〜15%である。
なお、デュアルカソードマグネトロンパルススパッタリング法では、アーキングが極めて生じにくく、ターゲットへ大電力を投入できるため、成膜速度を大きくできると共に、ターゲットを複数用いて交互に放電することで、このデューティ比下限値をより低く設定でき、好適である。
シングルカソードマグネトロンパルススパッタリング法、デュアルカソードマグネトロンパルススパッタリング法のいずれの場合も、ターゲット電極に印加するパルスの周波数は1〜200kHz、更に好ましくは20〜80kHzである。1kHz未満では、パルス化によるアーキング防止などの効果が低くなるおそれがあり、200kHzを超えても通常それ以上の効果が得られない。
本発明における薄膜材料としては、酸化物、窒化物、酸窒化物、炭化物、ホウ化物、金属、半導体から選ばれる1種又は2種以上からなる無機化合物を任意に選択することが可能で、例えば、金属Tiをターゲットとして、二酸化チタンの結晶性薄膜を形成することができる。
更にまた、デュアルカソードマグネトロンパルススパッタリング法は、特に酸素ガス等を併用する反応性スパッタリングで金属酸化物薄膜を形成する際に有用である。即ち、反応性スパッタリングを高速で行うことができ、且つスパッタリング中にターゲットの縁部に形成される酸化物等の絶縁膜のチャージアップが抑えられるため、安定した放電が得られることから、形成される金属酸化物薄膜の品質が向上する。
上記スパッタリングを行う際、成膜圧力は0.1〜5Pa、特に0.2〜3Paが好ましく、不活性ガスに加えて所望により酸素ガスや窒素ガス等の反応性ガスを導入することが好ましい。ここで、上記スパッタ空間に供給される反応性ガスとしては、公知のガスを使用することができ、具体的には、酸素ガス、窒素ガス、オゾンガス、空気、水(水蒸気)、水素ガス等が挙げられる。
投入電力も適宜選定されるが、高い投入電力とすることが好ましく、この場合、ターゲットへの投入電力密度を一般に2W/cm2以上、特に3W/cm2以上とすることが好ましい。この場合、投入電力密度が2W/cm2未満であると、結晶性が高く、均質な膜を得ることができなくなる場合がある。
ここで、本発明は、シングルカソードマグネトロンパルススパッタリング法又はデュアルカソードマグネトロンパルススパッタリング法による薄膜の成膜方法において、基板に対向するターゲット直上の水平方向磁場を30mT以上(300ガウス以上)とするものである。
即ち、上述したように、シングルカソードマグネトロンパルススパッタリング法を用いて成膜する際、ターゲットにオン/オフする電力の1周期の時間に対する電力をオンにしている時間の割合であるデューティ比を60%以下に低下させること、また、デュアルカソードマグネトロンパルススパッタリング法を用いて成膜する際、ターゲットにオン/オフする電力の1周期の時間に対する電力をオンにしている時間の割合であるデューティ比を40%以下に低下させることにより、高密度プラズマを実現し、アズデポジションで(結晶化のための加熱処理を施すことなく)結晶性薄膜が得られるものである。
この場合、シングルカソードマグネトロンパルススパッタリング法においては1パルスに対応するピーク電流が、同一印加電力密度におけるデューティ比80%の場合のピーク電流値の1.5倍以上のピーク電流値を得ることが、またデュアルカソードマグネトロンパルススパッタリング法においては1パルスに対応するピーク電流が、同一印加電力密度におけるデューティ比45%の場合のピーク電流値の1.3倍以上のピーク電流値を得ることが重要であるが、それぞれの方法におけるターゲット上の水平磁場強度についても検討したところ、いずれも当該水平磁場強度が弱い場合にはデューティ比を低下させても上記のピーク電流値が得られない場合があることがわかった。
このような現象は、例えばターゲットライフを長くするためにターゲットの厚みを厚くしたものを用いた場合や、ターゲットライフを通して全体を見た時、ターゲットの使い終わりに対する使い始めの状態において認められた。
これらのことは、ターゲットに印加するパルス電力と共に、基板に対向するターゲット直上(つまりスパッタリング面)の磁場強度がある閾値を超えないと、高密度プラズマの発生、ひいては結晶性薄膜の成膜が起こりにくいことを示唆するものであり、同時に、成膜の進行に伴いターゲットの状態(特に厚み)が経時的に変動するため、これを見込んだ磁場強度を補正するシステムが必要であることを示唆するものである。
かかる点から、本発明では、結晶性の高い薄膜を安定的に得ることを目的とし、シングルカソードマグネトロンパルススパッタリング法においてはターゲットに印加する印加電力のデューティ比を60%以下とし、1パルスに対応するピーク電流が、同一印加電力密度におけるデューティ比80%の場合のピーク電流値の1.5倍以上のピーク電流値を得ること、またデュアルカソードマグネトロンパルススパッタリング法においては同様にターゲットに印加する印加電力のデューティ比を40%以下とし、1パルスに対応するピーク電流が、同一印加電力密度におけるデューティ比45%の場合のピーク電流値の1.3倍以上のピーク電流値を得ることを基準とし、これらの状態を安定的に作り出すため、ターゲット直上の水平方向磁場強度を30mT(300ガウス)以上、好ましくは30〜150mT(300〜1,500ガウス)、更に好ましくは35〜100mT(350〜1,000ガウス)に設定する。ターゲット直上の水平方向磁場強度が30mTに満たない場合は、十分にプラズマ密度を高め、プラズマ中の活性な粒子密度を上げることができないため、結晶性の高い薄膜を常に安定に得ることができない。また、150mTを超える場合は、デューティ比を低下させた場合に放電維持が困難となる場合がある。
そして、同法において常に安定した結晶性薄膜を得るため、特にターゲットライフタイム中で安定した結晶性薄膜を得るためには、ターゲット厚さの異なるものをセットアップする場合や、成膜の進行に伴うターゲット消費乃至ターゲットエロージョンが異なる場合などターゲットの状態が変化する場合に合わせて、ターゲットと磁石との距離を調整し、ターゲット直上の磁場強度を上記の範囲内の一定値に管理することが好ましい。
ターゲット直上の水平方向磁場強度を一定の範囲内に管理するためには、一般的に磁場強度を間接又は直接的に検出するモニター部と、磁場強度を制御する制御部と、両者の橋渡しをするため両者の関係性に基づいて演算処理するインターフェース部とから構成される制御システムを用いることができる。
この場合、モニター部においてターゲットへの積算投入電力をモニターする技術又はターゲットに印加される放電電圧をモニターする技術と、制御部において該ターゲットと磁石との距離を制御する技術とを組み合わせるものが、制御システムそのものを簡単にし、メインテナンス上も有利となるため好ましい。
ターゲットへの積算投入電力をモニターし、ターゲットと磁石との距離を制御するためのインターフェース(原理)としては、例えば、任意の積算投入電力に対するその時のターゲット厚の関係、任意のターゲット厚に対するターゲット直上の磁場強度の関係、そしてターゲットと磁石の任意の距離に対するターゲット直上の磁場強度の関係などを総合的に調査し、例えば最小二乗法などによって相関式を作成し、これを用いることができる。
また、ターゲットへの放電電圧をモニターし、該ターゲットと磁石との距離を制御するインターフェース(原理)を用いることができる。
このような制御システムをシングルカソードマグネトロンパルススパッタリング法又はデュアルカソードマグネトロンパルススパッタリング法に付与させることにより、例えば図1において、厚いターゲット11がセットアップされたときや成膜の進行状況が初期段階(ターゲットエロージョン深度が浅い段階)にあるターゲット11のときは、磁場強度が相対的に高くなるようにターゲット11と磁石12との距離dが小さいところからスタートし、成膜の進行(ターゲットエロージョン深度進行)に合わせて、ターゲット11と磁石12との距離dを徐々に大きくして相対的に磁場強度を下げていくことにより、リアルタイムで常に該ターゲット直上11aの磁場強度を一定に保つことができる。従って、ターゲットの状態によらず、常に安定した結晶化度を有する結晶性薄膜を成膜することができる。なお、ターゲットと磁石との距離dを可変させるにあたっては、磁石のみを動かせても、ターゲットのみを動かせても、磁石とターゲットを両方動かせてもよいが、制御部を簡単にできるため磁石のみを動かすことが好ましい。
以上により、シングルカソードマグネトロンパルススパッタリング法又はデュアルカソードマグネトロンパルススパッタリング法において、低温あるいは無加熱の基板上へ、ターゲットの状態によらず、常に安定した結晶性薄膜を成膜することができる。
なお、形成される結晶性薄膜の膜厚は、20〜2000nmであることが一般的である。また、本発明においては、低温、高速でかつ結晶性の高い薄膜を得ることができることから、例えば、基板として連続フィルムを用いて巻き取りながら薄膜を形成することも可能である。
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
デュアルカソードマグネトロンパルススパッタリング装置の2つのカソードにそれぞれTiターゲット(放電面積270cm2/1個)を設置し、基板として石英ガラスをセットした。ターゲット背面の磁石位置を調整することにより、ターゲット上の水平方向磁場を40mT(400ガウス)とした。一旦、5×10-4Paまで真空引きした後に、装置内にArガスを導入して、0.5Paとし、電力3kW、デューティ比30%のパルス電力を50kHzの周波数でそれぞれ交互に各ターゲット電極に印加し、反応性ガスとして酸素ガスを用いて反応性マグネトロンパルススパッタリングを行った。この場合の放電電流値を図7に示す。反応性ガスはプラズマの発光をモニタリングし、500nmの発光強度がArのみでスパッタした場合の約20%の強度となるようにフィードバック制御して酸素を導入し、二酸化チタン薄膜を無加熱の基板上に300nmになるまで成膜させた。この薄膜を公知のX線回折法に基づき分析した結果、図8に示したように二酸化チタン結晶に帰属する回折ピークが認められたことから、結晶性薄膜であることを確認した。
[比較例1]
デュアルカソードマグネトロンパルススパッタリング装置の2つのカソードにそれぞれTiターゲット(放電面積270cm2/1個)を設置し、基板として石英ガラスをセットした。ターゲット背面の磁石位置を調整することにより、ターゲット上の水平方向磁場を28mT(280ガウス)とした。一旦、5×10-4Paまで真空引きした後に、装置内にArガスを導入して、0.5Paとし、電力3kW、デューティ比45%のパルス電力を50kHzの周波数でそれぞれ交互に各ターゲット電極に印加し、反応性ガスとして酸素ガスを用いて反応性マグネトロンパルススパッタリングを行った。この場合の放電電流値を図9に示す。反応性ガスはプラズマの発光をモニタリングし、500nmの発光強度がArのみでスパッタした場合の約20%の強度となるようにフィードバック制御して酸素を導入し、二酸化チタン薄膜を無加熱の基板上に300nmになるまで成膜させた。この薄膜を公知のX線回折法に基づき分析した結果、図10に示したようにブロードパターンのみが認められたことから、アモルファス薄膜であることを確認した。
[実施例2]
シングルカソードマグネトロンパルススパッタリング装置のカソードにTiターゲット(放電面積270cm2)を設置し、基板として石英ガラスをセットした。ターゲット背面の磁石位置を調整することにより、ターゲット上の水平方向磁場を40mT(400ガウス)とした。一旦、5×10-4Paまで真空引きした後に、装置内にArガスを導入して、0.5Paとし、電力2kW、デューティ比40%のパルス電力を80kHzの周波数でターゲット電極に印加し、反応性ガスとして酸素ガスを用いて反応性マグネトロンパルススパッタリングを行った。反応性ガスはプラズマの発光をモニタリングし、500nmの発光強度がArのみでスパッタした場合の約20%の強度となるようにフィードバック制御して酸素を導入し、二酸化チタン薄膜を無加熱の基板上に300nmになるまで成膜させた。この薄膜を公知のX線回折法に基づき分析した結果、実施例1と同様に二酸化チタン結晶に帰属する回折ピークが認められたことから、結晶性薄膜であることを確認した。
[比較例2]
シングルカソードマグネトロンパルススパッタリング装置のカソードにTiターゲット(放電面積270cm2)を設置し、基板として石英ガラスをセットした。ターゲット背面の磁石位置を調整することにより、ターゲット上の水平方向磁場を28mT(280ガウス)とした。一旦、5×10-4Paまで真空引きした後に、装置内にArガスを導入して、0.5Paとし、電力2kW、デューティ比80%のパルス電力を80kHzの周波数でターゲット電極に印加し、反応性ガスとして酸素ガスを用いて反応性マグネトロンパルススパッタリングを行った。反応性ガスはプラズマの発光をモニタリングし、500nmの発光強度がArのみでスパッタした場合の約20%の強度となるようにフィードバック制御して酸素を導入し、二酸化チタン薄膜を無加熱の基板上に300nmになるまで成膜させた。この薄膜を公知のX線回折法に基づき分析した結果、比較例1と同様にブロードパターンのみが認められたことから、アモルファス薄膜であることを確認した。
マグネトロンパルススパッタリング法による薄膜形成方法の一例を示す説明図である。 パルススパッタリング法における電圧と時間との関係の説明図である。 デュアルカソードパルススパッタリング法の説明図である。 デュアルカソードパルススパッタリング法における電圧と時間との関係を示し、(a)は一方のカソードAの電圧と時間との関係の説明図、(b)は他方のカソードBの電圧と時間との関係の説明図である。 従来のDCスパッタリング法における電圧と時間との関係の説明図である。 本発明に従って得られる結晶性薄膜の一例を示す断面図である。 実施例1のデュアルカソードマグネトロンパルススパッタリング法における時間と電流との関係を示す図である。 実施例1で得られた薄膜のX線回折図である。 比較例1のデュアルカソードマグネトロンパルススパッタリング法における時間と電流との関係を示す図である。 比較例1で得られた薄膜のX線回折図である。
符号の説明
10 支持体
11 ターゲット
11a ターゲット直上
12 磁石
13 基板
14 スイッチングユニット
15 直流又は交流電源
16 チャンバー
21 基板
22 薄膜層

Claims (7)

  1. シングルカソードマグネトロンパルススパッタリング法による薄膜の成膜方法において、ターゲット電極に印加する印加電力のデューティ比を60%以下にすると共に、ターゲット直上の水平方向磁場を30mT以上としたことを特徴とする結晶性薄膜の成膜方法。
  2. ターゲット電極に印加する印加電力の周波数が1〜200kHzであることを特徴とする請求項1記載の結晶性薄膜の成膜方法。
  3. 2つのターゲット電極に交互に電力を印加するデュアルカソードマグネトロンパルススパッタリング法による薄膜の成膜方法において、前記2つのターゲット電極にそれぞれ印加する印加電力のデューティ比を40%以下にすると共に、ターゲット直上の水平方向磁場を30mT以上としたことを特徴とする結晶性薄膜の成膜方法。
  4. ターゲットに印加する印加電力の周波数が1〜200kHzであることを特徴とする請求項3記載の結晶性薄膜の成膜方法。
  5. 成膜進行に伴うターゲットの消費又はエロージョンの進行に従い、該ターゲットと磁石との距離を調整し、該ターゲット直上の水平方向磁場強度を一定に保って、薄膜の結晶化度をターゲットライフタイム中で安定させることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の結晶性薄膜の成膜方法。
  6. 前記ターゲットと磁石との距離の調整を、該ターゲットへの積算投入電力によって制御することを特徴とする請求項5記載の結晶性薄膜の成膜方法。
  7. 前記ターゲットと磁石との距離の調整を、該ターゲットの放電電圧を一定に保つように制御することを特徴とする請求項5記載の結晶性薄膜の成膜方法。
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