JP2007303264A - 鉄骨柱と鉄骨梁との接合構造 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】鉄骨梁2と鉄骨柱1との間にダンパー機能を有するブラケット3を介在させる。ブラケットを、鉄骨柱に固定した上下のフランジ4と、それらフランジの間に設けた鋼板からなるシヤパネル5を有するものとして、その曲げ剛性および曲げ耐力を鉄骨梁よりも大きく設定するとともに、シヤパネルを鉄骨梁に先行させてせん断降伏させるように設定する。ブラケットの基部および先端部の2箇所に対して鉄骨梁の端部をそれぞれピン接合することによって、ブラケットを介して鉄骨梁端を鉄骨柱に対して構造力学的に剛接合する。鉄骨梁をH形鋼からなる本体部とチャンネル形鋼からなる接合端部により構成する。
【選択図】図3
Description
また、たとえば特許文献2には、梁としてのH形鋼の端部のウェブ自体をせん断降伏させることでエネルギー吸収効果を得る構造が提案されている。
また、最近の設計手法ではより高強度化の鋼材を使用する傾向にあるが、そのような高強度の鋼材では塑性変形能力は逆に低下するので、特許文献2に示されるように梁自体を塑性変形させるという設計手法は採用し難いものである。
その場合には、鉄骨梁の本体部をH形により構成するとともに、鉄骨梁の接合端部をそのH形鋼を両側から挟み込む対のチャンネル形鋼により構成し、本体部としてのH形鋼と接合端部としてのチャンネル形鋼のウェブどうしおよびフランジどうしを当て板を介してボルト締結して剛接合することが好適である。
図1に模式的に示すように、本発明では鉄骨柱1に対して鉄骨梁2をブラケット3を介して接合するものであるが、その前提として鉄骨柱1および鉄骨梁2はいずれも大地震時にも降伏せずに弾性を維持するものとする。
ブラケット3はせん断降伏により履歴ダンパーとして機能するシヤパネル(詳細後述)を有するものであって、そのブラケット3全体の曲げ剛性および曲げ耐力は鉄骨梁2よりも大きく設定されているが、ブラケット3のシヤパネルが鉄骨梁2に先行してせん断降伏するように設定されている。
そして、ブラケット3の基部および先端部の2箇所に対して鉄骨梁2の端部がそれぞれボルトを介してピン接合されることにより、鉄骨柱1に対する鉄骨梁2の接合形態は構造力学的に剛接合とされる。また、それぞれのピン接合位置では鉄骨柱1やブラケット3に対する鉄骨梁2のシヤパネル面内方向の相対回転が許容されている。
BQE=(MJ/LJ)+Q0
となって鉄骨梁2の中央部での剪断力Q0よりも数倍も大きなものとなる(長期応力の影響は一般に小さいから、ここでは無視する)。
つまり、この接合構造はいわば「てこの原理」を利用した「せん断力拡大伝達機構」を形成していて、鉄骨梁2に作用するせん断力を拡大してブラケット3に伝達させることによりシヤパネルをせん断降伏させ、それによってシヤパネルにダンパー機能を発揮させてエネルギー吸収効果を得るものである。
したがって本発明の接合構造によれば、単に梁のせん断力をそのまま(拡大することなく)ブラケットに作用させて降伏させる場合に比べて格段にエネルギー吸収能力を高めることが可能である。
なお、この場合、ブラケット3の負担せん断力BQEにブラケット3の長さLJを乗じることで見かけ上の梁端モーメントが決定され、その梁端モーメントMEはシヤパネルのせん断降伏により頭打ちとなるから、鉄骨梁2が弾性を維持しても梁端に塑性ヒンジが生じたのと同じ応力状態となる。
そして、この接合構造では大地震時においても鉄骨柱1および鉄骨梁2による主架構自体は塑性変形せずに弾性を維持するので主架構の損傷が生じることはないし、シヤパネルがせん断降伏した後も鉄骨梁2が鉄骨柱1に対して単純支持された状態となって鉄骨梁2の荷重支持能力は失われないから自ずとフェイルセーフ機構を構成したものとなる。
上下のフランジ4は鉄骨柱1に溶接されたダイヤフラムと一体に形成されていて、そのダイヤフラムから周囲各方向に放射状に突出するように(図示例では4方向に突出するように十字状に)形成されている。シヤパネル5は低降伏点鋼からなる矩形平板状の鋼板であって、その基端が鉄骨柱1に対して溶接されているとともに、その上下がそれぞれ上下のフランジ4とそれと一体のダイヤフラムに溶接されている。
これにより、本実施形態のブラケット3は上下のフランジ4とシヤパネル5とによるH形断面の突出部が鉄骨柱1の周囲に放射状に突出する形態で形成されたものとなっており、上述したようにそのブラケット3全体の曲げ剛性および曲げ耐力が鉄骨梁2よりも大きくなるように、また、ブラケット3のシヤパネル5が鉄骨梁2よりも先行してせん断降伏するように、上下のフランジ4の断面寸法およびシヤパネル5としての低降伏点鋼の寸法と強度が適正に設定されている。
なお、鉄骨梁2としてのチャンネル形鋼2aの先端部はブラケット3を構成している上下のフランジ4間に挿入されることになるが、上記のように鉄骨梁2のシヤパネル面内方向の回転を許容するべく、各チャンネル形鋼2aとフランジ4との間には若干のクリアランスが確保されている。同時に、シヤパネル5の周囲は当て板7と上下のフランジ4により拘束されて補剛されているので、その内側に明確なせん断変形領域が形成されて理想的なせん断降伏を生じさせることができるものとなっている。
勿論、シヤパネル5としての低降伏点鋼の寸法(板厚、高さ、長さ)や材種の設定によりそれが負担する応力を自由にかつ幅広く調節することが可能であり、その塑性変形能力を充分に高く設定しておけば大地震でも破壊されることがなく、したがって大地震時後にもシヤパネル5を交換する必要はまず生じない。
また、主架構はもとよりブラケット3もシヤパネル5以外は降伏せずに弾性を維持するので、地震後の残留変形は小さいものとなる。特に、シヤパネル5として用いる低降伏点鋼のせん断降伏ひずみγは1.6×10−3程度であるので、ブラケット3の長さLJがたとえば600mmである場合にはその先端部での降伏時の鉛直変位は僅か1mm程度に過ぎず、したがってシヤパネル5が降伏し始める程度の中規模地震を受けた際に想定される床スラブの変形も僅かであって、ひび割れが生じるような被害を生じることはないといえる。
本第2実施形態は、シヤパネル5を組み込んだダンパーユニット10を採用し、2つのダンパーユニット10を上下のフランジ4間に間隔をおいて固定してそれら上下のフランジ4と左右のダンパーユニット10によって箱状のブラケット3を形成し、そのブラケット3の内部に鉄骨梁2としてのH形鋼2bの端部を挿入して、その先端部をブラケット3の基部と先端部の2箇所においてそれぞれボルト群によって実質的にピン接合するようにしたものである。
すなわち、本第2実施形態におけるブラケット3は、第1実施形態におけるものと同様の上下のフランジ4と、左右一対のダンパーユニット10とを主体とし、かつ、それらダンパーユニット10を鉄骨柱1に対してボルト締結するためのシヤプレート11と、鉄骨梁2としてのH形鋼2bのウェブを鉄骨柱1に対してボルト締結するための接合プレート12とによって構成されている。
そして、ダンパーユニット10をシヤプレート5へ接合するに先立ち鉄骨梁2を搬入し、そのウェブの先端を接合プレート12に対して一群のボルトによりボルト締結し、鉄骨梁2の側部に溶接されている縦リブ13にダンパーユニット10の先端側の枠材10bを一群のボルトによりボルト締結する。
これにより、鉄骨梁2の先端部はブラケット3の構成要素である接合プレート12を介して鉄骨柱1に対して実質的にピン接合されるとともに、同じくブラケット3の構成要素であるダンパーユニット10の先端部に対しても縦リブ13を介して実質的にピン接合されている。
本第2実施形態においても、第1実施形態の場合と同様に、せん断降伏によりダンパーとして機能するシヤパネル5を有するブラケット3に対して、鉄骨梁2が2箇所において相対回転可能な状態でピン接合されることで鉄骨梁2は鉄骨柱1に対して構造力学的に剛接合となっている。したがって第1実施形態と同様に鉄骨梁2のせん断応力がてこの原理により拡大されてシヤパネル5に伝達され、そのシヤパネル5のせん断降伏による優れたダンパー効果、すなわちエネルギー吸収効果が得られるものである。
そして、第1実施形態に比べてブラケット3の構成がやや複雑ではあるものの、2枚のシヤパネル5を有するものであるので、全体としてエネルギー吸収効果をより高める設計が可能である。
なお、図示しているように、対のチャンネル形鋼22のウェブの間、およびH形鋼21のウェブと当て板23との間には、必要に応じて適宜のスペーサ24を介在させれば良く、またH形鋼21およびチャンネル形鋼22には必要に応じて適宜位置に補強リブ25を設ければ良い。さらに、必要に応じてブラケット3の先端に補強板30を設けることも好ましい。
なお、上記のように鉄骨梁2をブラケット3に対して2箇所でピン接合することによるせん断力拡大伝達機構が有効に形成されるためには上述したように鉄骨梁2とブラケット3との上下方向の相対回転が許容される必要があり、そのためには上下方向の相対変位を確実に拘束しつつ水平方向の多少の相対変位は許容することが好ましいことから、それらのボルトを通すためのボルト孔は水平方向にやや長いルーズホールとしておくことが好ましい。このことは本第3実施形態のみならず上記の第1〜第2実施形態の場合における各群のボルトについても同様である。
すなわち、その施工に際しては、鉄骨柱1に対して予め溶接したブラケット3に対して、まず(a)に示すように接合端部としてのチャンネル形鋼22を装着し、次いで(b)に示すようにチャンネル形鋼22に対してH形鋼21をボルト締結すれば良く、それにより第1〜第2実施形態のように鉄骨梁2全体を揚重してブラケット3に位置決めして接合する場合に比べて作業性を改善でき、施工精度も充分に確保することができる。
なお、ブラケット3を鉄骨柱1に溶接するに先立って予めチャンネル形鋼22をブラケット3も装着しておくことも考えられるし、鉄骨柱1を工場製作する際にブラケット3を一体に溶接するとともにそのブラケット3に対してチャンネル形鋼22を工場にて装着することも考えられる。
ピン機構40としては、たとえば図10に示すように短円柱状の鋼材ピン41を主体としてその両端部外側に押さえ板42を装着して溶接するものや、図11に示すように略8角形断面の鋼材ピン41の両端面に対して押さえ板42の中心孔の内周縁部を溶接する形式のものが好適に採用可能であり、いずれにしても少なくともいずれか一方の押さえ板42を鋼材ピン41を装着してから溶接すれば良い。
たとえば、上記実施形態は、鉄骨梁2としてチャンネル形鋼2aによる組立梁、H形鋼2b、H形鋼21とチャンネル形鋼22とを組み合わせたものを用いたが、鉄骨梁2はそれらに限るものではないし、鉄骨柱1としても角形鋼管柱のみならず円形鋼管柱やH形鋼等の形鋼による通常の鉄骨柱はもとより、コンクリート充填鋼管柱とすることも勿論可能である。
また、上記各実施形態ではシヤパネル5を低降伏点鋼からなる矩形平板状のものとしたが、シヤパネル5は鉄骨梁2よりも先行してせん断降伏する鋼板であれば良く、そのように設定する限りはシヤパネル5の形状や寸法、素材は任意であってたとえば通常の軟鋼を採用することも可能であり、その場合にはダンパー効果はやや低下するもののコスト削減を図ることが可能である。
2 鉄骨梁
2a チャンネル形鋼
2b H形鋼
3 ブラケット
4 フランジ
5 シヤパネル
6 綴り材
7 当て板
10 ダンパーユニット
10a 枠材
10b 枠材
11 シヤプレート
12 接合プレート
13 縦リブ
21 H形鋼(鉄骨梁の本体部)
22 チャンネル形鋼(鉄骨梁の接合端部)
23 当て板
24 スペーサ
25 補強リブ
30 補強板
40 ピン機構
41 鋼材ピン
42 押さえ板
Claims (5)
- 鉄骨梁を鉄骨柱に対して接合するための構造であって、
それら鉄骨梁と鉄骨柱との間にダンパー機能を有するブラケットを介在させ、
該ブラケットを、鉄骨柱に固定した上下のフランジと、それらフランジの間に設けた鋼板からなるシヤパネルを有するものとして、該ブラケット全体の曲げ剛性および曲げ耐力を鉄骨梁よりも大きく設定するとともに、該ブラケットのシヤパネルを鉄骨梁に先行させてせん断降伏させるように設定し、
該ブラケットの基部および先端部の2箇所に対して前記鉄骨梁をせん断力を伝達可能な状態でそれぞれピン接合することによって、該鉄骨梁をブラケットを介して鉄骨柱に対して構造力学的に剛接合してなることを特徴とする鉄骨柱と鉄骨梁との接合構造。 - 請求項1記載の鉄骨柱と鉄骨梁との接合構造であって、
ブラケットの構成要素であるシヤパネルの基端部を鉄骨柱に溶接し、該シヤパネルの基部および先端部の2箇所において、シヤパネルの両面に鉄骨梁としての対のチャンネル形鋼のウェブをそれぞれ当て板を介してボルト締結してなることを特徴とする鉄骨柱と鉄骨梁との接合構造。 - 請求項1記載の鉄骨柱と鉄骨梁との接合構造であって、
ブラケットの構成要素であるシヤパネルをダンパーユニットとして鉄骨梁としてのH形鋼の端部両側に配置して、該ダンパーユニットの基部を鉄骨柱に対してシヤープレートおよび当て板を介してボルト締結するとともに、該ダンパーユニットの上下をブラケットの構成要素である上下のフランジに対してボルト締結し、鉄骨梁としてのH形鋼の端部をブラケットの構成要素である接合プレートを介して鉄骨柱に対してボルト締結するとともに、該H形鋼の側部に溶接した縦リブに対して前記ダンパーユニットの先端部をボルト締結してなることを特徴とする鉄骨柱と鉄骨梁との接合構造。 - 請求項1記載の鉄骨柱と鉄骨梁との接合構造であって、
鉄骨梁を本体部とその先端部に締結した接合端部により構成し、該接合端部の先端部を前記ブラケットの2箇所に対してピン接合することによって剛接合してなることを特徴とする鉄骨柱と鉄骨梁との接合構造。 - 請求項4記載の鉄骨柱と鉄骨梁との接合構造であって、
鉄骨梁の本体部はH形鋼からなるとともに、鉄骨梁の接合端部は本体部を両側から挟み込む対のチャンネル形鋼からなり、本体部としてのH形鋼と接合端部としてのチャンネル形鋼のウェブどうしおよびフランジどうしを当て板を介してボルト締結して剛接合してなることを特徴とする鉄骨柱と鉄骨梁との接合構造。
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