図1は、本発明の実施の一形態の遮蔽継ぎ構造10を示す断面図である。図2は、遮蔽継ぎ構造10によって継がれる2つの遮蔽体11を示す平面図である。遮蔽継ぎ構造10は、2つの遮蔽体11を継合せるための構造である。遮蔽体11は、板状またはシート状に形成され、電磁波を遮蔽可能に構成される。各遮蔽体11は、一縁辺部16同士を突合わせて配置され、これによって突合せ部13が形成される。各遮蔽体11は、互いに同一の構成である。遮蔽継ぎ構造10は、導電性材料から成る継ぎ手段14を備えている。この継ぎ手段14は、突合せ部13に配置され、突合せ部13における電磁波を遮蔽可能に構成される。
遮蔽体11は、導電性材料から成る導体層12を有し、この導体層12によって、電磁波を遮蔽することができる。このように遮蔽体11は、電磁波シールド性とも呼ばれる電磁波遮蔽性を有する。導体層12は、たとえばアルミニウム、銅などの金属から成り、遮蔽体11の全領域にわたって形成されている。導体層12としては、遮蔽体11の電磁波シールド性を確保することができる構成であればよい。したがって導体層12としては、金属板、金属箔および金属蒸着フィルムなどを用いることができるが、遮蔽対象の電磁波の波長よりも小さい寸法の空隙を有するメッシュ構造物、導電性織布、導電性不織布、導電性インク、導電性発泡体などを用いることも可能である。さらに低周波電磁波を遮蔽する電磁波遮蔽性を得るために、磁界シールド性を有する構成とする場合は、鉄、パーマロイ、センダスト、アモルファス合金、鉄系合金などの磁性金属を用いて、導体層12を形成することができる。遮蔽体11は、導体層12単層から成ってもよいが、本実施の形態では、基台層15に導体層12が積層されて構成される。導体層12は、遮蔽板11の厚み方向中間位置に配置されていてもよいが、本実施の形態では、厚み方向一方側の表面11aを形成するように、表面部に配置されている。
基台層15は、単に導体層12を設けるための基礎となる層であってもよいが、本実施の形態では、基台層15と導体層12とを合せて、電磁波吸収体を構成する。したがって遮蔽体11は、電磁波吸収性を有する遮蔽体であって、電磁波遮蔽性を有する電磁波吸収体でもある。基台層15は、少なくとも吸収層を有し、この吸収層によって電磁波のエネルギを損失させて吸収する。吸収層は、磁性損失および誘電損失の少なくともいずれか一方を利用して電磁波を吸収する構成である。また基台層15は、導電性材料から成る導体パターンが形成されるパターン層を有し、基台層15と導体層12とを合せて、パターン形の電磁波吸収体を構成してもよい。
このように基台層15と導体層12とを合せて電磁波吸収体100が構成されることによって、遮蔽体11に、導体層12と反対側から入射する電磁波を吸収することができる。本実施の形態の構成では、遮蔽体11の厚み方向他方側からの電磁波を吸収することができる。吸収体の吸収層を構成する材料、パターン層の導体パターンの形状などは、特に限定されるものではない。また吸収体の各層の厚み、導体パターンの寸法などは、吸収すべき電磁波の周波数に合せて決定される。
各遮蔽体11は、一辺の長さLがたとえば90cmの正方形であり、その正方形の1つの辺に沿った縁辺部である一縁辺部16同士を突合せて配置される。各一縁辺部16同士が突合わされる状態は、各一縁辺部16が互いに近接して配置され、各一縁辺部16の端面16a同士が対向し、または各端面16aが協働して凹所を形成するように配置される状態である。各端面16a間には、継ぎ手段14を含む他の物体が介在されていても、いなくてもよい。各端面16aは、遮蔽体11の厚み方向に垂直な平面形状にそれぞれ形成され、各遮蔽体11は、各端面16aが平行となり、厚み方向両表面が面一になるように、突合される。各遮蔽体11は、導体層12が、厚み方向に関して同じ側に配置される状態で、突合されている。
継ぎ手段14は、各遮蔽体11の一縁辺部16にそれぞれ設けられるL状導電性膜体17を有する。各遮蔽体11の突合わされる角度は任意であるが、例えばL状を使用することができる。各L状導電性膜体17は、たとえばアルミニウム、銅などの金属から成る金属製膜体である。各L状導電性膜体17は、一縁辺部16における厚み方向一方側の表面11aから端面16aを覆うように、一縁辺部16全体にわたって一様に、L字状に屈曲して設けられる。各L状導電性膜体17は、各遮蔽体11の一縁辺部16全体にわたって設けられ、端面16a全領域を覆うとともに、端面16aから幅Xの領域にわたって導体層12を覆っている。
各L状導電性膜体17は、導電性材料から成る箔、テープによって実現されてもよく、この場合、接着剤または粘着剤を用いて、遮蔽体11に貼着される。また各L状導電性膜体17は、メッキ、蒸着、印刷等によって形成されてもよい。このように各L状導電性膜体17は、遮蔽体11に接合される。
このような継ぎ手段14が設けられ、各遮蔽体11が突合される。各L状導電性膜体17における端面16aを覆う部分は、互いに当接され、各端面16a間に挟まれる。また各L状導電性膜体17における各遮蔽体11の厚み方向一方側の表面部を覆う部分は、突合せ部13を厚み方向一方側から覆う状態となる。このような遮蔽継ぎ構造10によって2つの遮蔽体11を継合せることができる。
継合される2つの遮蔽体11は、接着剤、粘着剤、締結部材などの結合手段を用いて、互いに結合されてもよいし、フレームなどの支持手段によって、突合される状態が保持されるように支持されてもよい。このような遮蔽継ぎ構造10は、各L状導電性膜体17が設けられる2つの遮蔽体11を突合せることによって構成されるので、組立作業が容易であり、かつ分解作業も容易である。
図3は、電波暗箱20を簡略化して示す斜視図である。遮蔽継ぎ構造10は、2つの遮蔽体11を継合わるだけでなく、図2に仮想線で示すように、3つ以上の遮蔽体11を並べ、その突合せ部13毎に、採用することができる。これによって複数の遮蔽体11を継合せて、大きな遮蔽構造物を形成することができる。たとえば複数の遮蔽体11を行列状に並べて遮蔽構造物を形成することができる。さらに遮蔽体11を直方体状に組立てることによって、たとえば幅Wが4m、奥行きDが90cm、高さHが90cmの箱体である電波暗箱20を形成することができる。この電波暗箱20もまた、遮蔽構造物である。
この電波暗箱20は、電磁波暗室構造体として用いられる空間形成体であり、電波暗空間を形成する空間形成体である。電波暗空間は、電磁波が遮蔽される空間であって、外部からの電磁波が遮蔽されて侵入防止されるとともに、内部の電磁波の外部への漏れも防がれる内部空間である。電波暗箱20は、電磁波暗室構造体の一例であり、電波暗室などと呼ばれる構造体も、電磁波暗室構造体に含まれる。
さらに電波暗箱20を形成する場合、遮蔽体11は、導体層12に加えて、少なくとも吸収層を有し、吸収層が、厚み方向一方の表面部側に配置される構成とすることが好ましい。このような遮蔽体11は、この遮蔽体11で仕切られる2つの空間のうち、厚み方向一方の表面部が臨む空間の電磁波を吸収することができる。各遮蔽体11を、吸収層が導体層12よりも内方側に配置され、内部空間に臨むように設けることによって、内部空間で発生した電磁波を吸収することができる。
この電波暗箱20は、内部空間に機器21,22を設置し、外乱の影響を受けないようにして、電磁波に関して測定する試験に好適に用いることができるが、用途は、これに限定されるものではない。各機器21,22は、いずれか一方が電磁波を送信する送信部となり、いずれか他方が電磁波を受信する受信部となる機器であり、無線通信する通信用装置、通信システムを構成する装置、またその他の電子機器であってもよく、たとえばICタグおよびリーダ(リーダライタとも呼ばれる)などであってもよい。またアンテナと通信装置、通信装置同士の組合せでもよい。
前述のような遮蔽継ぎ構造10によれば、2つの遮蔽体11が縁辺部16同士を突合せた状態で設けられ、突合せ部13に継ぎ手段14が設けられる。各遮蔽体11は、導体層12を有しており、この導電層12によって電磁波を遮蔽することができる。継ぎ手段14は、導電性材料から成り、突合せ部13で電磁波を遮蔽する。このように導電性の継ぎ手段14を設けることによって、突合せ部13における電磁波の遮蔽効果を高くすることができる。したがってこの遮蔽継ぎ構造10によって、複数の遮蔽体11を継合せて、遮蔽効果の高い遮蔽構造物を形成することができる。
また各遮蔽体11の端面16a間に、導電性の継ぎ手段14が挟まれるように配置されるので、電磁波が各遮蔽体11の端面16a間の通過を抑制することができる。これによって突合せ部13における電磁波の遮蔽効果を高くすることができる。また突合せ部13を覆って導電性の継ぎ手段14が配置されるので、電磁波が、各遮蔽体11の端面16a間の隙間経て一方側から他方側へ通過してしまうことを抑制することができる。これによって突合せ部13における電磁波の遮蔽効果を高くすることができる。
また継ぎ手段14は、導電線膜体17である金属製膜体を含んでいる。金属製膜体は、厚み寸法が小さく、突合せ部13に設けても、突合せ部13の寸法の変化を小さく抑えることができる。したがって突合せ部13にすっきりと、見栄え良く設けることができる。
また遮蔽体11が、電磁波を吸収する吸収層を有しているので、電磁波を遮蔽することに加えて、電磁波を吸収することができる。したがって電磁波を遮蔽し、かつ電磁波を吸収すべき用途に、好適に用いることができ、電波暗箱20を好適に実現することができる。空間形成体である電波暗箱20は、電磁波が遮蔽される空間を形成することができる。この空間は、遮蔽体11の突合せ部においても、電磁波が遮蔽されるので、遮蔽効果の高い空間が形成される。
さらに継ぎ手段14は、各遮蔽体11にL状導電性膜体17を設ける簡単な構成によって実現される。しかもL状導電性膜体17が設けられる各遮蔽体11を突合せるだけでよく、遮蔽構造物を形成する組立作業および遮蔽構造物を分解する分解作業が簡単である。したがって容易に組立および分解可能な電波暗箱20を実現することができる。また各L状導電性膜体17によって、遮蔽体11を補強することが可能となる。
電波暗箱20の内部空間に各機器21,22を配置して、電磁波を用いた試験を行うにあたっては、放射部となる機器から放射される電磁波が電波暗箱の一内表面で反射して受信部となる機器に受信されるまでに要する時間(以下「第1時間」という)と、放射部となる機器から放射される電磁波が電波暗箱の他の内表面で反射して受信部となる機器に受信されるまでに要する時間(以下「第2時間」という)とが異なるように、各機器21,22を配置することが好ましい。第1時間と第2時間とが同一であると、内表面で反射されて受信部で受信される電磁波の干渉によるうねりが生じ、試験結果に大きな影響を与えるおそれがあるが、第1時間と第2時間とを異ならせることによって、内表面で反射する電磁波の試験結果への影響を小さくすることができる。したがって好適に試験を実行することができる。
図4は、本発明の実施の他の形態の遮蔽継ぎ構造10Aを示す断面図である。図4の遮蔽継ぎ構造10Aは、図1および図2の遮蔽継ぎ構造10と類似しており、対応する部分に同一の符号を付し、異なる部分についてだけ説明する。図1および図2の構成では、端面16aが厚み方向に垂直に形成されたけれども、図4の構成では、互いに突合される2つの一縁辺部16のうち、一方の一縁辺部16の端面16aは、凸状に形成され、他方の一縁辺部16の端面16aは、凹状に形成される。一方の一縁辺部16の端面16aと、他方の一縁辺部16の端面16aとは、互いに対応する形状であり、本実施の形態では、一縁辺部16全体にわたって一様にV字状に形成される。
図4の構成では、継ぎ手段14は、各遮蔽体11の一縁辺部16のうち、端面16aが凸状に形成される一方の一縁辺部に設けられるJ状導電性膜体18を有する。図1および図2の構成は、各一縁辺部16にL状導電性膜体17が設けられたけれども、図4の構成では、一方の一縁辺部16にだけ導電性膜体18が設けられる。図4の構成では、J状導電性膜体18は、一方の一縁辺部16における厚み方向一方側の表面11aから端面16aを覆うように、略J字状に屈曲して設けられる。導電性膜体18は、一方の一縁辺部16全体にわたって設けられ、端面16a全領域を覆うとともに、端面16aから幅Xの領域にわたって導体層12を覆っている。
さらに図4の構成では、各一縁辺部16が、互いに嵌合する状態で、各遮蔽体11が突き合され、導電性膜体18と他方の一縁辺部16の端面16aとが当接し、各遮蔽体11は厚み方向の変位が阻止されている。各遮蔽体11の厚み方向両表面は、面一に配置されている。この遮蔽継ぎ構造10Aは、図1および図2の遮蔽継ぎ構造10と同様の効果を達成するとともに、図1および図2の遮蔽継ぎ構造10と同様に遮蔽構造物を形成し、電波暗箱20を形成することができる。
また図4の構成では、前述のように各一縁辺部16が互いに嵌合する構成であり、各遮蔽体11が、不所望な要因によって離反するように相対変位し、J状導電性膜体18と他方の一縁辺部16の端面16aとの間に隙間が形成されたとしても、各遮蔽体11の厚み方向に通る隙間、電波暗箱20などの空間形成体を想定すると内部空間と外部空間とが直線的に貫通するような隙間が、形成されてしまうことを防止可能である。しかもJ状導電性膜体18が、凸状に形成される一方の一縁辺部16に設けられるので、前述のように隙間が形成されても、その隙間からJ状導電性膜体18が外方に臨んでいる。したがって隙間が形成されたとしても、電磁波の遮蔽効果が低下しにくい。
さらに遮蔽継ぎ構造10Aは、一方の遮蔽体11にJ状導電性膜体18を設けて、2つの遮蔽体11を突合せることによって構成されるので、組立および分解が容易である。このように電磁波の遮蔽効果が高く、組立および分解が容易な遮蔽継ぎ構造10Aを実現することができ、したがって電磁波の遮蔽効果が高く、組立および分解が容易な遮蔽構造物、電波暗箱20を実現することができる。
正方形の遮蔽体11の場合、4つの辺のうち、2つの辺の縁辺部については、端面を凸状に形成し、残りの2つの縁辺部については、端面を凹状に形成することによって、各遮蔽体11を同一形状に形成しておいて、複数の遮蔽体11を行列状に並べ、各遮蔽体11を図4のような遮蔽継ぎ構造10Aによって、継合せることができる。端面を凸状にする縁辺部は、4つの辺のうち、互いに隣合う2つの辺の縁辺部であってもよいし、互いに平行な2つの辺の縁辺部であってもよい。
図5は、本発明の実施のさらに他の形態の遮蔽継ぎ構造10Bを示す断面図である。図5の遮蔽継ぎ構造10Bは、図1および図2の遮蔽継ぎ構造10と類似しており、対応する部分に同一の符号を付し、異なる部分についてだけ説明する。図1および図2の構成では、継ぎ手段14は、各一縁辺部16に設けられる2つのL状導電性膜体17を有していたけれども、図5の構成では、各一縁辺部16にわたって設けられる1つの帯状導電性膜体19を有する。
図5の構成では、各遮蔽体11は、各一縁辺部16の端面16a同士を対向させ、厚み方向両表面を面一に配置して突合される。各端面16aは、当接している。帯状導電性膜体19は、帯状に形成され、幅方向一方側の部分が、一方の一縁辺部16を覆い、幅方向他方側の部分が、他方の一縁辺部16を覆うように、各一縁辺部16にまたがって設けられる。帯状導電性膜体19は、各遮蔽体11の厚み方向一方側に設けられ、各遮蔽体11の導体層12を、端面16aから幅Xの領域にわたってそれぞれ覆っている。この帯状導電性膜体19は、たとえば接着剤または粘着剤を用いて、各遮蔽体11の導体層12に貼着される。
この遮蔽継ぎ構造10Bは、帯状導電性膜体19が、各端面16a間に挟まれるように設けられる構成による効果を除いて、図1および図2の遮蔽継ぎ構造10と同様の効果を達成することができるとともに、図1および図2の遮蔽継ぎ構造10と同様に遮蔽構造物を形成し、電波暗箱20を形成することができる。またこのように一体の帯状導電性膜体17を、各一縁辺部16にまたがって設け、各一縁辺部16に貼着することによって、各遮蔽体11を機械的に連結することができる。したがって各遮蔽体11を機械的に連結する構成を別途に設ける必要がなく、または別途に設けられる機械的連結のための構成を簡素にすることができる。また一体の帯状導電性膜体19が、各一縁辺部16にまたがって設けられる構成では、各遮蔽体11が、不所望な要因によって離反するように相対変位し、隙間が形成されたとしても、その隙間が、帯状導電性膜体19によって塞がれる状態が維持されるので、電磁波の遮蔽効果が低下することがない。
さらに帯状導電性膜体19を、各縁辺部16に対して、剥離可能に構成すれば、組立および分解作業を容易にすることができる。この構成に於いて帯状導電性膜体19として、金属箔テープ状のものを使用した場合は、テープを剥がす代わりに、カッターや鋏等の刃物で容易に切り離すことができる。また遮蔽体11は、刃物で切断可能な構成とする。この場合は遮蔽体11を含んで全て刃物での切断が可能であり、裁断や窓開け加工等も容易にすることができる。このように電磁波の遮蔽効果が高く、組立および分解が容易な遮蔽継ぎ構造10Bを実現することができ、したがって電磁波の遮蔽効果が高く、組立および分解が容易な遮蔽構造物、電波暗箱20を実現することができる。
図6は、本発明の実施のさらに他の形態の遮蔽継ぎ構造10Cを示す断面図である。図6の遮蔽継ぎ構造10Cは、図1および図2の遮蔽継ぎ構造10と類似しており、対応する部分に同一の符号を付し、異なる部分についてだけ説明する。図1および図2の構成では、継ぎ手段14は、各一縁辺部16に設けられる2つのL状導電性膜体17を有していたけれども、図5の構成では、導電性を有する多孔質体23を有する。この導電性を有する多孔質体23は、たとえば金属繊維などの導電性繊維から成る不織布から成り、弾性変形可能でかつ圧縮可能である。導電性を有する多孔質体23としては、多孔質体が導電性を有していても良いし、導電性部分と多孔質体(クッション効果部分)が別の構成体であっても良い。
図6の構成では、各遮蔽体11は、厚み方向に垂直な端面16a間に、導電性を有する多孔質体23を弾発的に挟む状態で、各一縁辺部16を突合せて設けられる。各遮蔽体11は、厚み方向両表面が面一になるように配置される。各端面16aに挟まれる導電性を有する多孔質体23が弾性変形可能かつ圧縮可能であり、弾発的に挟まれた状態で設けられている。これによって各端面16aと、導電性を有する多孔質体23との間に隙間が形成されてしまうことがない。導電性を有する多孔質体23は、各端面16aの全領域に当接するように設けられている。
この遮蔽継ぎ構造10Cは、L状導電性膜体17による効果、継ぎ手段14が突合せ部13を覆う効果を除いて、図1および図2の遮蔽継ぎ構造10と同様の効果を達成することができるとともに、図1および図2の遮蔽継ぎ構造10と同様に遮蔽構造物を形成し、電波暗箱20を形成することができる。また継ぎ手段14が導電性を有する多孔質体23を有する構成であるので、突合せ部13における電磁波の遮蔽効果を維持したまま、各遮蔽体11の相対変位を許容することができる。したがって、このような導電性を有する多孔質体23を継ぎ手段14として用いることによって、各遮蔽体14が相対変位しても、突合せ部13における電磁波の高い遮蔽効果を維持することができる。
さらに遮蔽継ぎ構造10Cは、2つの遮蔽体11間に導電性を有する多孔質体23を挟むようにして、2つの遮蔽体11を突合せることによって構成されるので、組立および分解が容易である。このように電磁波の遮蔽効果が高く、組立および分解が容易な遮蔽継ぎ構造10Aを実現することができ、したがって電磁波の遮蔽効果が高く、組立および分解が容易な遮蔽構造物、電波暗箱20を実現することができる。
図7は、本発明の実施のさらに他の形態の遮蔽継ぎ構造10Dを示す断面図である。図7の遮蔽継ぎ構造10Dは、図1および図2の遮蔽継ぎ構造10と類似しており、対応する部分に同一の符号を付し、異なる部分についてだけ説明する。図1および図2の構成では、端面16aが厚み方向に垂直に形成されたけれども、図7の構成では、互いに突合される2つの一縁辺部16のうち、一方の一縁辺部16の端面16aは、厚み方向他方表面から一方表面に向かうにつれて突出するように傾斜して形成され、他方の一縁辺部16の端面16aは、厚み方向一方表面から他方表面に向かうにつれて突出するように傾斜して形成される。一方の一縁辺部16の端面16aと、他方の一縁辺部16の端面16aとは、互いに対応する形状であり、各遮蔽体11の厚み方向両表面が面一になる状態で、各端面16aは、互いに平行である。
図7の構成では、継ぎ手段14は、導電性接着剤24を有する。この導電性接着剤24は、たとえばシリコーンにニッケルメッキグラファイトを混入した接着剤(デンカエレクトロン株式会社製72−00350等)を用いることができる。各遮蔽体11は、厚み方向両表面が面一になる状態で、各端面16aが、全面にわたって導電性接着剤24によって接着される。
この遮蔽継ぎ構造10Dは、L状導電性膜体17による効果、継ぎ手段14が突合せ部13を覆う効果を除いて、図1および図2の遮蔽継ぎ構造10と同様の効果を達成することができるとともに、図1および図2の遮蔽継ぎ構造10と同様に遮蔽構造物を形成し、電波暗箱20を形成することができる。また継ぎ手段14が導電性接着剤24を有する構成であるので、各遮蔽体11を機械的に接続することができる。したがって各遮蔽体11の相対変位を防止し、突合せ部13における高い遮蔽効果を維持することができる。また各遮蔽体11を機械的に連結する構成を別途に設ける必要がなく、または別途に設けられる機械的連結のための構成を簡素にすることができる。しかも各端面16aが、厚み方向に対して傾斜する傾斜面に形成されるので、導電性接着剤24によって接着するための接着面積を大きくし、接着強度を高くすることができる。
さらに導電性接着剤24で接着される構造であっても、端面同士の接着であり、たとえば突合せ部13の端部から部分的に外力を与えることが可能であり、このように局所的に外力を与え、その外力を与える位置をずらしていくことによって、接着状態を容易に解除することが可能である。また接着反応として化学的結合を伴わない場合は、例えば加熱等の温度変化を与えるだけで接着剤の凝集力は低下し、容易に外すことが可能となる。このように遮蔽継ぎ構造10Dは、2つの遮蔽体11を突合せ、導電性接着剤24で接着することによって構成されるので、組立および分解が容易である。このように電磁波の遮蔽効果が高く、組立および分解が容易な遮蔽継ぎ構造10Dを実現することができ、したがって電磁波の遮蔽効果が高く、組立および分解が容易な遮蔽構造物、電波暗箱20を実現することができる。
正方形の遮蔽体11の場合、4つの辺のうち、2つの辺の縁辺部については、端面を厚み方向一方に向かうにつれて突出する傾斜面とし、残りの2つの縁辺部については、端面を厚み方向他方に向かうにつれて突出する傾斜面に形成することによって、各遮蔽体11を同一形状に形成しておいて、複数の遮蔽体11を行列状に並べ、各遮蔽体11を図4のような遮蔽継ぎ構造10Aによって、継合せることができる。端面を厚み方向一方に向かうにつれて突出する傾斜面とする縁辺部は、4つの辺のうち、互いに隣合う2つの辺の縁辺部であってもよいし、互いに平行な2つの辺の縁辺部であってもよい。
図8は、本発明の実施のさらに他の形態の遮蔽継ぎ構造10Eを示す断面図である。図8の遮蔽継ぎ構造10Eは、図7の遮蔽継ぎ構造10と類似しており、対応する部分に同一の符号を付し、異なる部分についてだけ説明する。図7の構成では、各端面16aが傾斜面に形成されたけれども、図8の構成では、段差面に形成される。図8の構成では、互いに突合される2つの一縁辺部16のうち、一方の一縁辺部16の端面16aは、厚み方向一方表面側の部分が厚み方向他方表面側の部分に比べて突出するように形成され、他方の一縁辺部16の端面16aは、厚み方向他方表面側の部分が厚み方向一方表面側の部分に比べて突出するように形成される。一方の一縁辺部16の端面16aと、他方の一縁辺部16の端面16aとは、互いに対応する形状であり、各遮蔽体11の厚み方向両表面が面一になる状態で、各端面16aは、クランク状の隙間を形成することができる。
図8の構成では、継ぎ手段14は、図7と同様の導電性接着剤24を有する。各遮蔽体11は、厚み方向両表面が面一になる状態で、各端面16aが、全面にわたって導電性接着剤24によって接着される。この図8の遮蔽継ぎ構造10Eは、図7の遮蔽継ぎ構造10Dと同様の効果を達成することができる。遮蔽継ぎ構造10Eは、2つの遮蔽体11を突合せ、導電性接着剤24で接着することによって構成されるので、組立および分解が容易である。このように電磁波の遮蔽効果が高く、前述の理由により組立および分解が容易な遮蔽継ぎ構造10Eを実現することができ、したがって電磁波の遮蔽効果が高く、組立および分解が容易な遮蔽構造物、電波暗箱20を実現することができる。
正方形の遮蔽体11の場合、4つの辺のうち、2つの辺の縁辺部については、端面を厚み方向一方表面側が突出し、残りの2つの縁辺部については、端面を厚み方向他方表面側が突出するように形成することによって、各遮蔽体11を同一形状に形成しておいて、複数の遮蔽体11を行列状に並べ、各遮蔽体11を図4のような遮蔽継ぎ構造10Aによって、継合せることができる。端面を厚み方向一方表面側が突出するように形成する縁辺部は、4つの辺のうち、互いに隣合う2つの辺の縁辺部であってもよいし、互いに平行な2つの辺の縁辺部であってもよい。
図9は、本発明の実施のさらに他の形態の遮蔽継ぎ構造10Fを示す断面図である。図9の遮蔽継ぎ構造10Fは、図1および図2の遮蔽継ぎ構造10と類似しており、対応する部分に同一の符号を付し、異なる部分についてだけ説明する。図1および図2の構成では、継ぎ手段14は、各一縁辺部16に設けられる2つのL状導電性膜体17を有していたけれども、図9の構成では、継ぎ手段14は、H形導電性形材25を有する。この導電性形材25は、たとえば鋼、アルミニウムなどの金属から成る形材であり、図9の構成では、断面形状がH字状の形材である。
このH形導電性形材25には、互いに反対となる方向に開放する2つの溝26,27が形成されている。各遮蔽体11は、一縁辺部16が、各溝26,27にそれぞれ嵌まり込んで、厚み方向両表面が面一になるように設けられる。H形導電性形材25は、一縁辺部16の全長にわたって設けられる。各遮蔽体11は、H形導電性形材25に、たとえば接着剤によって接着されてもよい。また各遮蔽体11は、ねじ部材を用いて厚み方向に押圧され、導体層12がH形導電性形材25に密着する状態で、H形導電性形材25に締結されてもよい。このように各遮蔽体11を接着剤で接着またはねじ部材で締結されることによって、各遮蔽体11は、H形導電性形材25によって機械的に連結される。
この遮蔽継ぎ構造10Fは、L状導電性膜体17による効果を除いて、図1および図2の遮蔽継ぎ構造10と同様の効果を達成することができるとともに、図1および図2の遮蔽継ぎ構造10と同様に遮蔽構造物を形成し、電波暗箱20を形成することができる。またH形導電性形材25は、剛性を有しており、各遮蔽体11の変形を防止することができる。またH形導電性形材25は、各遮蔽体11を支持するフレームとして用いることができる。したがって各遮蔽体11の変形を阻止するための構成を別途に設ける必要がなく、または各遮蔽体11の変形を阻止するための構成を別途に設ける場合でも、その構成を簡素にすることができる。また各遮蔽体11を支持するための構成に関しても、各遮蔽体11の変形を阻止するための構成同様、設ける必要がなく、または簡素にすることができる。
遮蔽継ぎ構造10Fは、2つの遮蔽体11を、少なくともH形導電性形材25の溝26,27に嵌まり込ませればよく、組立および分解が容易である。このように電磁波の遮蔽効果が高く、組立および分解が容易な遮蔽継ぎ構造10Fを実現することができ、したがって電磁波の遮蔽効果が高く、組立および分解が容易な遮蔽構造物、電波暗箱20を実現することができる。
図10は、本発明の実施のさらに他の形態の遮蔽継ぎ構造10Gを示す断面図である。図10の遮蔽継ぎ構造10Gは、図9の遮蔽継ぎ構造10Fと類似しており、対応する部分に同一の符号を付し、異なる部分についてだけ説明する。図9の構成では、継ぎ手段14は、1つのH形導電性形材25を有していたけれども、図10の構成では、各一縁辺部16にそれぞれ設けられる2つのC形導電性形材30を有している。各C形導電性形材30は、図9のH形導電性形材25と同様に金属から成る形材である。図10の構成では、各C形導電性形材30は、断面形状がC字状の形材である。
各C形導電性形材30には、溝28がそれぞれ形成されている。各遮蔽体11には、一縁辺部16が、溝28にそれぞれ嵌まり込むようにして、一縁辺部16にC形導電性形材30がそれぞれ設けられる。各C形導電性形材30は、一縁辺部16の全長にわたって設けられる。各遮蔽体11は、C形導電性形材30に、たとえば接着剤によって接着されてもよい。また各遮蔽体11は、ねじ部材を用いて厚み方向に押圧され、導体層12がC形導電性形材30に密着するように、各C形導電性形材30に締結されてもよい。各遮蔽体11は、各C形導電性形材30が互いに当接させて設けられる。各遮蔽体11の厚み方向両表面は、面一である。この図10の遮蔽継ぎ構造10Gは、各遮蔽体11の機械的連結効果を除いて、図9の遮蔽継ぎ構造10Fと同様の効果を達成することができる。
遮蔽継ぎ構造10Gは、2つの遮蔽体11を、少なくとも各C形導電性形材30の溝28にそれぞれ嵌まり込ませ、各C形導電性形材30を突合せればよく、組立および分解が容易である。このように電磁波の遮蔽効果が高く、組立および分解が容易な遮蔽継ぎ構造10Gを実現することができ、したがって電磁波の遮蔽効果が高く、組立および分解が容易な遮蔽構造物、電波暗箱20を実現することができる。
このような2つのC形導電性形材30を用いる場合、本発明の実施のさらに他の形態として、図10に仮想線で示すように、2つのC形導電性形材30のいずれか一方に突起30aを形成し、他方にこの突起30aが嵌まり込む凹所を形成し、相互のずれを防ぐようにしてもよい。また各C形導電性形材30を接着するようにしてもよい。さらに各C形導電性形材30を、強磁性材料によって形成し、いずれか一方に永久磁石片を保持させて磁気吸着させ、互いに連結するように構成してもよい。これによって容易に組立および分解可能に構成することができる。
図11は、本発明の実施のさらに他の形態の遮蔽継ぎ構造10Hを示す断面図である。図1〜図10の形態の各遮蔽継ぎ構造10,10A〜10Gは、2つの遮蔽体11を平面的に並べて継ぐ構造であったけれども、図11の遮蔽継ぎ構造10Hは、2つの遮蔽体11を屈曲するように並べて継ぐ構造である。各遮蔽体11の成す角度は、特に限定されるものではないが、たとえば90度であってもよい。このように屈曲させて継ぐ構造は、図3のような電波暗箱20を形成する場合、その電波暗箱20の稜線に相当する部分の継ぎ構造として好適である。図11の遮蔽継ぎ構造10Hは、図7の遮蔽継ぎ構造10Dと類似しており、対応する部分に同一の符号を付し、異なる部分についてだけ説明する。
図7の構成では、互いに突合される2つの一縁辺部16のうち、一方の一縁辺部16の端面16aが、厚み方向他方表面から一方表面に向かうにつれて突出するように傾斜して形成され、他方の一縁辺部16の端面16aが、厚み方向一方表面から他方表面に向かうにつれて突出するように傾斜して形成されたけれども、図11の構成では、各位置縁辺部16の端面16aは、厚み方向他方表面から一方表面に向かうにつれて突出するように傾斜して形成される。各遮蔽体11は、各端面16aが互いに平行になるように、互いに角度を成すように配置され、各端面16aが、全面にわたって導電性接着剤24によって接着される。図11の構成では、各端面16aは、厚み方向両表面に対して45度の角度を成しており、各遮蔽体11は、互いに90度の角度を成している。各遮蔽体11の導体層12は、外側に配置されている。この遮蔽継ぎ構造10Hは、図7の遮蔽継ぎ構造10Dと同様の効果を達成することができ、複数の遮蔽体11を継合せて、遮蔽構造物を形成し、電波暗箱20を形成することができる。
遮蔽継ぎ構造10Hは、図7の遮蔽継ぎ構造10Dと同様に、2つの遮蔽体11を突合せ、導電性接着剤24で接着することによって構成されるので、組立および分解が容易である。このように電磁波の遮蔽効果が高く、組立および分解が容易な遮蔽継ぎ構造10Hを実現することができ、したがって電磁波の遮蔽効果が高く、組立および分解が容易な遮蔽構造物、電波暗箱20を実現することができる。
図12は、本発明の実施のさらに他の形態の遮蔽継ぎ構造10Iを示す断面図である。図12の遮蔽継ぎ構造10Iは、図11の遮蔽継ぎ構造10Hと類似しており、対応する部分に同一の符号を付し、異なる部分についてだけ説明する。図12遮蔽継ぎ構造10Iは、2つの遮蔽体11を屈曲するように並べて継ぐ構造である。図11の構成では、継ぎ手段14は、導電性接着剤24を有する構成であったけれども、図12の構成では、継ぎ手段14は、L形導電性形材33を有する。L形導電性形材33は、図9のH形導電性形材25と同様に金属から成る形材である。L形導電性形材33は、断面形状がL字状の形材である。
各遮蔽体11の端面16aは、図11の構成と同様に傾斜して形成される。各遮蔽体11は、各端面16aを当接させて突合される。この状態で突合せ部13を外側から覆うようにL形導電性形材33が設けられる。L形導電性形材33は、各遮蔽体11によって形成されるL字と同様に外側に凸となるように配置され、各導体層12に積層されるように設けられる。各遮蔽体11は、L形導電性形材33に、たとえば接着剤によって接着されてもよい。また各遮蔽体11は、ねじ部材を用いて厚み方向に押圧され、導体層12がL形導電性形材33に密着するように、L形導電性形材33に締結されてもよい。この遮蔽継ぎ構造10Iは、各端面16a間に導電性形材が挟まれることによる効果を除いて、図9の遮蔽継ぎ構造10Fと同様の効果を達成することができる。
遮蔽継ぎ構造10Iは、少なくとも2つの遮蔽体11を突合せた突合せ部13をL形導電性形材33に嵌まり込ませるように配置して構成されるので、組立および分解が容易である。このように電磁波の遮蔽効果が高く、組立および分解が容易な遮蔽継ぎ構造10Iを実現することができ、したがって電磁波の遮蔽効果が高く、組立および分解が容易な遮蔽構造物、電波暗箱20を実現することができる。
図13は、本発明の実施のさらに他の形態の遮蔽継ぎ構造10Jを示す断面図である。図13の遮蔽継ぎ構造10Jは、図12の遮蔽継ぎ構造10Iと類似しており、対応する部分に同一の符号を付し、異なる部分についてだけ説明する。図13遮蔽継ぎ構造10Jは、2つの遮蔽体11を屈曲するように並べて継ぐ構造である。図12の構成では、各遮蔽体11の端面16aは、傾斜して形成されたけれども、図13の構成では、厚み方向両表面に対して垂直に形成される。各遮蔽体11は、各端面16aが互いに90度の角度を成し、各端面間に凹所が形成されるように配置されている。
継ぎ手段14は、図12の構成と同様のL形導電性形材33を有する。L形導電性形材33は、各遮蔽体11によって形成されるL字と反対に外側に凹となるように配置され、各端面16a間の凹所に嵌まり込んでいる。各遮蔽体11は、端面16aがL形導電性形材33に当接する状態で設けられる。各遮蔽体11は、L形導電性形材33に、たとえば接着剤によって接着されてもよい。また各遮蔽体11は、端面16aがL形導電性形材33に密着するように、L形導電性形材33に締結されてもよい。この遮蔽継ぎ構造10Iは、突合せ部13を覆うことによる効果を除いて、図9の遮蔽継ぎ構造10Fと同様の効果を達成することができる。
遮蔽継ぎ構造10Jは、少なくとも2つの遮蔽体11の端面16a間に、L形導電性形材33を嵌まり込ませるように配置して構成されるので、組立および分解が容易である。このように電磁波の遮蔽効果が高く、組立および分解が容易な遮蔽継ぎ構造10Jを実現することができ、したがって電磁波の遮蔽効果が高く、組立および分解が容易な遮蔽構造物、電波暗箱20を実現することができる。
図14は、本発明の実施のさらに他の形態の遮蔽継ぎ構造10Kを示す断面図である。図14の遮蔽継ぎ構造10Kは、図10の遮蔽継ぎ構造10Gと類似しており、対応する部分に同一の符号を付し、異なる部分についてだけ説明する。図14遮蔽継ぎ構造10Kは、2つの遮蔽体11を屈曲するように並べて継ぐ構造である。図12の構成では、図10の構成と同様に、各一縁辺部16に、C形導電性形材30がそれぞれ設けられている。C形導電性形材30が設けられた各遮蔽体11は、互いに90度の角度を成すように配置される。
図14の構成では、継ぎ手段14は、断面形状が正方形の柱状の支持部材35を有する。この支持部材35は、各C形導電性形材30と同様の材料から成る。C形導電性形材30が設けられた各遮蔽体11は、C形導電性形材30を支持部材35に当接させる状態で設けられる。このように図14の構成は、各遮蔽体11は、各端面16aが互いに90度の角度を成し、各端面間に凹所が形成されるように配置され、この凹所に、2つのC形導電性形材30および支持部材35を有する継ぎ手段14が嵌まり込むように設けられる構成である。このような構成の遮蔽継ぎ構造10Kは、図10の遮蔽継ぎ構造10Gと同様の効果を達成することができる。
このような2つのC形導電性形材30と支持部材35とを用いる場合、各C形導電性形材30は、支持部材35に接着固定される構成でもよい。また各C形導電性形材30および支持部材35を、強磁性材料によって形成し、いずれか一方に永久磁石片を保持させて磁気吸着させ、互いに連結するように構成してもよい。これによって容易に組立および分解可能に構成することができる。
遮蔽継ぎ構造10Kは、2つの遮蔽体11を、少なくとも各C形導電性形材30の溝28にそれぞれ嵌まり込ませ、各C形導電性形材30を支持部材35に当接させればよく、組立および分解が容易である。このように電磁波の遮蔽効果が高く、組立および分解が容易な遮蔽継ぎ構造10Kを実現することができ、したがって電磁波の遮蔽効果が高く、組立および分解が容易な遮蔽構造物、電波暗箱20を実現することができる。
図15は、本発明の実施のさらに他の形態の遮蔽継ぎ構造10Lを示す断面図である。図15の遮蔽継ぎ構造10Lは、図5の遮蔽継ぎ構造10Bと類似しており、対応する部分に同一の符号を付し、異なる部分についてだけ説明する。図15には、遮蔽体11を簡略化して示す。図15の遮蔽継ぎ構造10Lでは、各遮蔽体11は、互いに間隔をあけて各端面16a間に間隙150が形成される状態で、各端面16aを対向させて設けられ、継ぎ手段14は、間隙150を塞ぐように、各一縁辺部16にわたって設けられる1つの導電性覆い体151を有する。
導電性覆い体151は、導電性材料、たとえば鋼、アルミニウムなどの金属から成る形材である。導電性覆い体151は、長手方向に垂直な断面の形状が大略的に細長い長方形となる帯状平板の形材であり、厚み方向一方側の表面部における幅方向両端部に、長手方向全長にわたって延びる凹溝152がそれぞれ形成されている。各凹溝152は、長手方向に垂直な断面における形状が、長方形状の溝であり、各凹溝152の幅寸法W1は、たとえば遮蔽すべき電磁波の波長λの4分の1(λ/4)程度である。この幅寸法W1は、正確にλ/4でなくてもよく、λ/4またはλ/4に近い値であればよい。たとえば遮蔽すべき電磁波の周波数が、たとえばUHF帯の953MHzである場合、幅寸法W1は、7.87cm程度に選ばれる。
導電性覆い体151は、幅方向両端部における各凹溝152が形成される厚み方向一方側の表面部を、各遮蔽体11の縁辺部16における厚み方向いずれかの表面にそれぞれ対向させて、設けられる。導電性覆い体151は、各遮蔽体11の厚み方向のいずれの表面に対向する構成でもよく、遮蔽体11の厚み方向一方の表面11aが導体層12によって形成される構成の場合でも、その厚み方向一方の表面11aに対向させて設けられてもよいし、厚み方向他方の表面に対向させて設けられてもよい。導電性覆い体151は、各遮蔽体11の少なくともいずれか一方に接合されて設けられる。導電性覆い体151は、たとえば接着剤を用いて貼着され、またはねじ部材を用いて締結される。
導電性覆い体151は、各凹溝152が遮蔽体11の表面で塞がれ、かつ遮蔽体11の端面16aから凹溝152までの距離W2が、たとえば遮蔽すべき電磁波の波長λの4分の1(λ/4)程度となるように、設けられる。距離W2は、正確にλ/4でなくてもよく、λ/4またはλ/4に近い値であればよい。たとえば遮蔽すべき電磁波の周波数が、たとえばUHF帯の953MHzである場合、距離W2は、7.87cm程度に選ばれる。導電性覆い体151の厚み方向一方側の表面部と、各遮蔽体11における導電性覆い体151が対向する表面とは、当接していてもよいし、わずかに間隔をあけて近接していてもよい。
このような導電性覆い体151を用いる構成は、チョーク形シールド構造を利用する構成であり、次の2つの原理によって、遮蔽体11の突合せ部の高い電磁波遮蔽性が得られる遮蔽構造物を実現することができる。第1の原理は、電磁波が、広い空間から狭い空間に侵入するとき、インピーダンスが見かけ上無限大となり、電磁波の狭い空間への侵入が困難であるという原理である。図15に示す構成では、各遮蔽体11と、導電性覆い体151の凹溝152以外の部分とに挟まれる隙間155が、狭い空間となり、各遮蔽体11によって仕切られる空間および各凹溝152によって形成される空間など、隙間155以外の空間が、広い空間となる。導電性覆い体151と遮蔽体11とが当接している場合、この隙間155が無くなるまたは非常に狭い空間になることなり、より電磁波が侵入しにくくなる。したがって導電性覆い体151が遮蔽体11に当接しているか否かに拘らず、電磁波を遮蔽することができる。第2の原理は、凹溝152によって形成される空間に電磁波が閉じ込められる状態となり、後から、この凹溝152によって形成される空間に侵入する電磁波と干渉して減衰を生じるという原理である。このような図15に示す遮蔽継ぎ構造10Lは、図5の遮蔽継ぎ構造10Bと同様に遮蔽構造物を形成し、電波暗箱20を形成することができ、特に、各端面16a間に間隙150が形成されるように遮蔽体11を設けなければならない構成に、好適に実施することができる。
図16は、電波暗箱20を簡略化して示す断面図である。図17は、図16の扉160付近を拡大して示す断面図である。図17では、導電性覆い体151を簡略化し、凹溝152を省略して示す。図15に示す遮蔽継ぎ構造10Lは、相対変位させることを前提としていない遮蔽体11同士の突合せ部に実施してもよいが、相対的に変位可能に設けられる遮蔽体11同士の突合せ部に、好適に実施することができる。電波暗箱20は、出入り口、搬入出口などの開口を有していない構成であってもよいが、図16に示す構成では、電波暗箱20は、利便性を向上するために開口を有し、開口を開閉するための扉160が設けられている。扉160もまた、壁と同様に遮蔽体11で構成される。
扉160は、たとえば一側部付近を中心に角変位可能に設けられる。図17のセクションS1,S2における、扉160となる遮蔽体11と、壁の開口に臨む部分を構成する遮蔽体11との突合せ部では、扉160を円滑に変位させることができるようにするために、扉160となる遮蔽体11と、壁の開口に臨む部分を構成する遮蔽体11との間に、間隙150が形成される。このような部分に、図15に示す遮蔽継ぎ構造10Lを好適に実施することができる。
図16に示すように、扉160が電波暗箱20の外方側へ変位して開口を開放する外開きの構成では、導電性覆い体151は、各遮蔽体11に対して、電波暗箱20の内方側に配置される。図17のセクションS1のように、扉160の角変位中心側の一側部と、壁とが突合される部分(以下「基端側部分」という)では、導電性覆い体151は、扉160となる遮蔽体11に接合され、図17に仮想線170で示すように、扉160となる遮蔽体11とともに一体的に変位する。したがってこの基端側部分では、導電性覆い体151は、壁となる遮蔽体11に対して、近接および離反変位し、扉160が開いた状態では、壁となる遮蔽体11から大きく離間し、扉160が閉じた状態では、壁となる遮蔽体11に当接または近接している。したがって扉160が閉じた状態では、電磁波を遮蔽することができる。
また図17のセクションS2のように、扉160の角変位中心側の一側部とは反対の他側部と、壁とが突合される部分(以下「遊端側部分」という)では、導電性覆い体151は、壁となる遮蔽体11に接合され、図17に示すように、扉160となる遮蔽体11が変位すると、扉160となる遮蔽体11に対して、近接および離反変位する。遊端側部分では、導電性覆い体151は、扉160が開いた状態では、扉160となる遮蔽体11から大きく離間し、扉160が閉じた状態では、扉160となる遮蔽体11に当接または近接している。したがって扉160が閉じた状態では、電磁波を遮蔽することができる。さらに図示は省略するが、扉160における前述の一側部および他側部以外の側部、つまり図17の紙面に対して手前側および奥行き側の側部と、壁または天井もしくは床とが突合される部分は、図17のセクションS2と同様に、導電性覆い体151を、壁または天井もしくは床となる遮蔽体11に接合しておくことによって、同様に電磁波を遮蔽することができる。また遊端側部分と、扉160における前述の一側部および他側部以外の側部と壁または天井もしくは床とが突合される部分とにおいては、導電性覆い体151は、扉160の側部に接合される構成であってもよい。
図15に示す導電性覆い体151を用いる遮蔽継ぎ構造10Lは、前述のように、導電性覆い体151が各遮蔽体11に対して当接している状態はもちろん、導電性覆い体151と各遮蔽体11との間に隙間155が形成される状態でも、電磁波を遮蔽することができる。したがって前述のように、扉160の開閉動作などに起因して、扉160を閉じた状態での遮蔽体11と導電性覆い体151との位置関係のずれを許容して、電磁波を吸収することができる。また図15の遮蔽継ぎ構造10Lでは、各遮蔽体11間に間隙150が形成されるので、各遮蔽体11を円滑に相対変位させることができる。したがって図15の遮蔽継ぎ構造10Lは、扉160と壁または天井もしくは床との突合せ部に、好適に実施することができる。
図16および図17には、扉160が外開きの構成を示したが、扉160を電波暗室20の内方側へ変位させて開口を開放する内開きの構成では、図16および図17に示した構成と、内外方向に対称の構成とすればよい。つまり導電性覆い体151を、遮蔽体11に対して電波暗室20の外方側に設けるようにすれば、同様の構成を実現し、同様の効果を達成することができる。
また扉160は、開き扉に限定されるものではなく、他の変位動作によって、開口を開閉する構成でもよい。たとえば扉160は、着脱可能に設けられる構成とし、開口の全周にわたって、壁または天井もしくは床に導電性覆い体151を設けておく構成であってもよい。また扉を着脱可能に設ける場合、導電性覆い体151は、扉160の全周にわたって設ける構成でもよい。
以上の導電性覆い体151は、前述の構成のまま用いてもよいし、前述の構成に加えて外周部の少なくとも一部に電波吸収体が配設された構成でもよい。隙間の電磁波シールドとして、前述の導電性覆い体151による対策がたてられるが、導電性覆い体151自身による電磁波反射が、たとえば内部空間の電波波環境を低下させることが想定される場合には、この導電性覆い体151に電波吸収体を被覆することによって、電磁波反射を抑え、内部空間の電磁波環境の低下を好適に抑えることができる。
表1は、本発明の継ぎ構造による電磁波の遮蔽効果を確認するための実験結果を示す表である。比較例1は、図26に示す従来の構成である。実施例1は、図1に示す構成である。実施例2は、図4に示す構成である。実施例3は、図6に示す構成である。実施例4は、図5に示す構成である。表1には、厚み方向一方側に放射アンテナを設け、厚み方向他方側に受信アンテナを設け、遮蔽効果を測定した。表1において数値が大きいほど、遮蔽効果が高いことを示す。たとえば遮蔽効果を表す値が40dBである場合、透過する電磁波の強さを1万分の1に減衰することを意味している。このように本発明は、従来の構成に比べて、遮蔽効果を高くすることができる。
また継ぎ手段14を遮蔽体11の支持体として兼用することで、遮蔽構造物、電波暗箱20が、構造的にも安定し、耐久性も向上する。電波暗室などとも呼ばれる電波暗箱20の組み立て、分解を容易にするためには、電波暗箱20の稜線に相当するコーナー部等に支柱を用いて骨組みを作る方法が適しており、継ぎ手段14が導電性部材、たとえば前述のような形材である場合に、骨組み(支持体となる形材)が内部で電波反射体やアンテナにならないように内側壁面は電波吸収体により被覆することが好ましい。ただし、その反射およびアンテナ効果が、測定する電波に影響しない場合は電波吸収体による完全な被覆は不要となる。
図18は、遮蔽体11の具体的積層構成の一例を示す断面図である。図19は、パターン層101の具体的構成の一例を示す正面図である。パターン形の電波吸収体でもある遮蔽体11は、単数種類または複数種類の導電性パターン(以下「パターン」という)100が、互いに連結しない態様で、配列して形成されるパターン層101と、複素比透磁率(μ’、μ”)を有する磁性損失材および複素比誘電率(ε’、ε”)を有する誘電損失材の少なくともいずれか一方である材料から成る部分を有する吸収層102と、反射層となる導体層12とが、この順序で積層されて構成される。したがって基台層15は、パターン層101と吸収層102とを有する。
パターン層101は、複数のパターン100を有する。各パターン100は、形状および寸法に依存する共振周波数を有し、その共振周波数の電磁波を受信する受信アンテナとして機能する。パターン層101は、板状基材110の厚み方向一方側の表面に、各パターン100が形成されて構成される。図16には、理解を容易にするために、各パターン100に斜線のハッチングを付して示す。
板状基材110は、たとえば合成樹脂である誘電体から成っており、この板状基材110もまた誘電損失材である。各パターン100は、導電性材料、たとえば金属から成る。各パターン100は、いわゆる星形と呼ばれる多角形である。各パターン100は、相互に間隔をあけて設けられる。各パターン100は、x方向およびy方向に行列状に規則正しく整列配置されて形成される。x方向およびy方向は、板状基材110の厚み方向一方側の表面に沿う方向である。パターン100の形状は多角形に限定されるものではなく、円形、方形、ループ状、それらの組み合わせ、さらにはパターン100のコーナー部にRを付与したものなどを任意に選択することができる。
吸収層102は、複素比透磁率(μ’、μ”)を有する磁性損失材および複素比誘電率(ε’、ε”)を有する誘電損失材の少なくともいずれか一方である材料から成る部分を有する層である。この吸収層102は、磁性損失材である材料から成る部分だけを有する層であってもよいし、誘電損失材である材料から成る部分だけを有する層であってもよいし、磁性損失材である材料から成る部分と誘電損失材である材料から成る部分とを有する層であってもよいし、磁性損失材でありかつ誘電損失材である材料から成る部分を有する層であってもよい。
図18に示す例では、吸収層102は、吸収層103と、誘電体層104とを有し、パターン層101側から吸収層103および誘電体層104の順序で積層されている。吸収層103は、磁性損失材でありかつ誘電損失材である材料から成り、誘電体層104は、誘電損失材から成る。吸収層103は、少なくとも磁性体を含む材料から成り、たとえば有機重合体と磁性体とを配合した材料から成り、このような材料は、磁性損失材でありかつ誘電損失材である。有機重合体としては、たとえば樹脂およびゴムを用いることができる。バインダーとしては無機系材料等も使用できる。磁性体としては、フェライト、鉄合金および鉄粒子を用いることができる。吸収層103は、有機重合体と磁性体とだけから成ってもよいし、他の素材、たとえばグラファイト、炭素繊維などが加えられてもよい。誘電体層104は、少なくとも誘電体を含む材料から成り、図18の例では、誘電体だけから成る。誘電体としては、たとえば合成樹脂、ゴム、紙、木材、石膏、セメントおよびガラスを用いることができる。
このような遮蔽体11は、パターン層側からされる電磁波であって、各パターン100の形状および寸法に依存して決定される共振周波数の電磁波を、各パターン100によって受信し、パターン100と遮蔽体11の間に電磁波エネルギを蓄え、その電磁波エネルギを、吸収層102で損失さる。電磁波エネルギの損失は、電磁波エネルギの熱エネルギへの変換によって生じる。また遮蔽体11は、各パターン100によって受信する電磁波を、各パターン100と導体層12とによる電磁波の干渉によって減衰させる。遮蔽体11は、パターン層101を用いることによって電磁波を効率よく受信し、前述のエネルギ変換と、干渉とによって、電磁波を効率良く吸収することができる。
遮蔽体11は、たとえば2.4GHz帯(2.4GHz以上2.5GHz未満)の電磁波を遮蔽、吸収対象とする場合、総厚が5mm以下、重量が6kg/m2以下であることから薄型軽量であり、かつ吸収量の最大値が15dB以上と、高い吸収性能を有する。またたとえばUHF帯(860MHz以上960MHz未満)の電磁波を遮蔽、吸収対象とする場合、総厚が10mm以下、重量が15kg/m2以下であることから薄型軽量であり、かつ吸収量の最大値が15dB以上と、高い吸収性能を有する。この遮蔽体11は、既存品である発泡体、ゴムフェライト、フェライト板から成る吸収体に比べて薄型、軽量化を達成している。
図20は、遮蔽体11の具体的積層構成の他の例を示す断面図である。図20の積層構成は、図18の積層構成に類似し、対応する部分には同一の参照符を付し、異なる構成についてだけ説明する。この例では、電磁波入射側から、吸収層103、パターン層101、誘電体層104、導体層12が、この順序で積層して構成される。そのほかの構成は、前述の実施の形態と同様である。このような構成であっても、同様の電磁波吸収性能が得られる。
図21は、遮蔽体11の具体的積層構成のさらに他の例を示す断面図である。図21の積層構成は、図18の積層構成に類似し、対応する部分には同一の参照符を付し、異なる構成についてだけ説明する。この例では、パターン層101に対して電磁波入射側に、表面層105が形成される。表面層105は、磁性損失材および誘電損失材の少なくともいずれか一方である材料から成る層であって、吸収層102を構成する。表面層105は、吸収層103および誘電体層104のいずれかであってもよいし、その他の層であってもよい。そのほかの構成は、前述の実施の形態と同様である。このような構成であっても、同様の電磁波吸収性能が得られる。
図22は、パターン層101の具体的構成の他の例を示す正面図である。図22のパターン層101は、図19のパターン層101と類似し、対応する部分には同一の参照符を付し、異なる構成についてだけ説明する。図22のパターン層5は、パターン100として、複数の放射形パターン130と、複数の略方形パターン131とを有する。
各放射形パターン130は、放射形状にそれぞれ形成され、複数の放射形パターン130が、相互に間隔をあけて設けられる。各放射形パターン130は、略十文字形に形成され、x方向およびy方向に行列状に規則正しく整列配置される。各放射形パターン130は、十文字の交差部分における4つの角部を円弧状にした形状である。略方形パターン131は、放射形パターン130に囲まれる領域に、放射形パターン130から間隔をあけて配置され、放射形パターン130に囲まれる領域を塗潰すようにそれぞれ配置される。各略方形パターン131は、放射形パターン131に囲まれる領域の形状と類似するに形成される。各放射形パターン130が前述のような略十文字形であり、各放射形パターン130に囲まれる各領域は、正方形の各角部を円弧状にした隅丸四角形であり、各略方形パターン131は、略正方形の隅丸四角形である。このような構成であっても、同様の電磁波吸収性能が得られる。図22には、理解を容易にするために、各パターン100に斜線のハッチングを付して示す。
図23は、遮蔽体11の電磁波吸収特性の一例を示すグラフである。図23には、図18の積層構成で、図19に示すパターン層101を用い、2.4GHz帯付近の電磁波を吸収対象とするように、パターン100の寸法を選択した6つの実施例1〜6の電磁波吸収特性を示す。図23から明らかなように吸収量が大きい吸収特性の遮蔽体11を実現している。図23の縦軸に示す反射損失の絶対値となる値が吸収量に相当する。
図24は、遮蔽体11の電磁波吸収特性の他の例を示すグラフである。図24には、図18の積層構成で、図22に示すパターン層101を用い、900MHz帯付近の電磁波を吸収対象とするように、パターン100の寸法を選択した6つの実施例7〜12の電磁波吸収特性を示す。図24から明らかなように吸収量が大きい吸収特性の遮蔽体11を実現している。図24の縦軸に示す反射損失の絶対値となる値が吸収量に相当する。
図25は、遮蔽体11の電磁波吸収特性のさらに他の例を示すシミュレーション結果のグラフである。壁材として金属板が用いられた箱体、壁材として遮蔽体11が用いられた箱体(本発明の電波暗箱20に相当)、自由空間の3つについて電磁波環境をシミュレーションで求め、遮蔽体11の電磁波吸収特性を比較し評価した。自由空間とは、壁材がなく開放される構成である。箱体は、いずれの場合も、たとえば幅Wが4m、奥行きDが90cm、高さHが90cmの箱体を電波暗箱し、自由空間についても、同様の寸法の空間を想定した。このシミュレーションは、遮蔽体11の電磁波吸収特性を確認するシミュレーションであるので、壁材は一体で継ぎ構造がない構成とした。壁材として用いた金属板は、銅(Cu)板であり、壁材として用いた遮蔽体11は、950MHz帯付近の電磁波に対する電波吸収性能(反射損失、リターンロス)が15dB以上である電波吸収体から成る。
このように空間のサイズを固定にして、壁材に金属(Cu)、電波吸収体、自由空間を想定した各場合について、電磁波環境を比較した。また各場合とも、奥行き方向および高さ方向に平行(幅方向に垂直)な2つの壁(以下「端壁」という)は、前述の電磁波吸収体からなるものとし、端壁以外の幅方向に平行な4つの壁(以下「側壁」という)について、壁材を金属(Cu)、電波吸収体、自由空間と変更し、電磁波環境を求めた。一方の端壁から45cm、各側壁から45cmの位置に置いたダイポールアンテナを球面波の発振源とし、電波の反射、干渉の度合いを電界強度の分布によって電磁波環境を評価した。
図25(a)は、各側壁が金属板から成りかつ各端壁が電磁波吸収体(遮蔽体11)から成る場合のシミュレーション結果を示し、図25(b)は、各側壁および各端壁が電磁波吸収体(遮蔽体11)から成る場合のシミュレーション結果を示し、図25(c)は、各側壁が設けられず開放されかつ各端壁が電磁波吸収体(遮蔽体11)から成る場合のシミュレーション結果を示す。図25には、電磁波の発信源が設けられる位置を含み、幅方向および高さ方向に平行な平面における電界強度を示す。このように2次元のデータであるが、側壁として金属板がある場合、その影響で明確に電磁波の強弱が現れているが、側壁として電磁波吸収体(遮蔽体11)が設けられる場合、自由空間に近い電磁波環境が得られている。
図25(a)は側壁が金属板の場合である。電界強度の強弱の分布が明確に現れている。電波の到達距離内に金属などの電波反射体があれば反射が起こり、反射波が発生する。直接波と反射波の干渉を繰り返した後、電界強度の強いエリアと弱いエリアが出現して、定在波を生じる。この場合に本来なら通信可能な領域にまったく通信できないスポット(null点)が発生することになる。この計算結果はある瞬間を示しているが、連続時間で評価した場合に波紋の黒い部分が位置変動しないとnull点となる。この様な環境では通信ができないし、通信評価もできない。
図25(a)の環境の周囲に15dBの電波吸収体を使用した場合(つまり六面とも電波吸収壁の場合)の電界分布のシミュレーション結果が図25(b)である。瞬間の結果では波紋が見られるが、これは時間と共に発振源から離れて変位するため常に黒いままのエリアは存しない。またあきらかに反射波が少なくなり干渉(干渉波紋)が抑えられ電波環境が良くなっていることがわかる。理解を容易にするために側壁を自由空間とした場合のシミュレーション結果を図25(c)に示す。15dBの吸収性能を有する電波吸収体から成る遮蔽体11を使用することで、外部空間と仕切った内部空間を形成し、この内部空間の電磁波環境を自由空間とほぼ同一に改善することができ、無線通信が自由空間での通信の場合とほぼ同じレベルに改善することが可能となる。
このような電磁波吸収特性の優れた遮蔽体11を用いて組立てられる簡易形の電波暗箱20は、パターン100の共振周波数付近の特性周波数の電磁波に対して高い吸収量を有し、かつ外乱ノイズの進入を抑えることができるので、パターン100の共振周波数付近の電磁波に関しては、優れた電波環境の内部空間が得られることになる。たとえば、RFIDシステムの通信距離測定、送信応答速度測定、通信感度測定等の特定周波数での評価には十分使用できることになる。
前述のような各実施の形態の遮蔽継ぎ構造10,10A〜10K(以下、冗長な記載となることを避けるために、符号を省略して記載する)その用途が限定されるものではなく、電磁波の遮蔽が要求される用途全般に用いることができる。あくまで一例ではあるが、遮蔽継ぎ構造を用いて構成される遮蔽構造物は、たとえば建材、電磁波暗室構造体などとして実施することができる。
建材は、建築物を建てるために用いられる素材であり、たとえば内装材、壁材、床材、衝立材、天板材、表面材である。このような建材が、遮蔽継ぎ構造を備える構成であってもよい。この場合、遮蔽継ぎ構造で継合される遮蔽体が、建材本体の表面に貼着されるなどして積層される構成であってもよいし、建材本体内に内蔵される構成であってもよい。このような建材を用いて建築物を建てることによって、電磁波を遮蔽するための構成を別途に設ける作業をしなくても、パーティションやパネル等の建材によって電磁波を遮蔽することができる。遮蔽体を連結する際に連結部分に遮蔽継ぎ構造を備えることで、電波の回り込みに対する電磁遮蔽性を高めることができる。さらにこのような建材を用いることによって、建築物内への不要電磁波の侵入を防ぐことができ、さらに吸収層を備える遮蔽体を用いることによって、建築物内の不要電磁波を吸収することができ、電磁波干渉などによる建築物内に設置される機器の動作不良および誤作動といった不具合を防ぐことができる。また建築物内で発生する電磁波の建築物外への漏洩を防ぐことができる。
電磁波暗室構造体は、外部空間との間で電磁波が遮断される内部空間を形成する構造体である。この電磁波暗室構造体には、たとえば内部空間で、電磁波を用いた試験または実験などを行い、または被処理物に対する各種処理操作を行う空間を形成する、前述の電波暗箱20または電波暗室などの構造体、電子レンジまたはマイクロ波加熱装置などと呼ばれる電磁波を用いる加熱装置の筐体、電磁波を利用して診察などを行う、レントゲン室またはMRI(Magnetic Resonance Imaging;核磁気共鳴画像法)室などを形成する構造体、空港などで所持品検査のための電磁波を用いる検査装置の筐体、磁気記録媒体などを保管する保管庫などが含まれる。これらの電磁波暗室構造体のうち、電波暗箱20以外の構成も、電波暗箱20と同様に、遮蔽継ぎ構造によって遮蔽体を継合せて形成される。
前述の実施の形態は、本発明の例示に過ぎず、構成を変更することができる。前述の各形態のうちの2つ以上の形態の構成を組合せてもよく、たとえば図1の構成において、各導電性膜体17間に、図6のように導電性を有する多孔質体23を挟むように設ける構成であってもよい。遮蔽体11は、平板状に限らず、曲面状、その他の立体形状に形成されてもよい。本発明の継ぎ手段14の材料として、導電性エラストマー材料、導電性シール材、導電性パッキン材、導電性接着剤を用いることができ、これらの材料は、たとえば本件発明者らが特開2003−256491公報で提案している配合の材料を用いることができる。
本発明の遮蔽継ぎ構造10を用いることで、電波暗室とも呼ばれる電波暗箱20を容易に作製することができる。遮蔽継ぎ構造10は、遮蔽体11の継合せ部分の電磁シールド性を高めることに有用であるが、遮蔽体11は、前述のような平板状の構成に限定されることはなく、その形状は、立体的な形状であってもよい。したがって扉部、窓部、通気孔、ケーブル孔部など、複数の部材の縁辺部同士が突合される部分に遮蔽性を与えるシールド加工にも採用することができる。また電波暗箱20などの接続および組合せ、拡張、環境変化(加温、冷却、加湿等)などの評価システムに応じた一切の変形、変更に応じることができる。これは本発明が完全な電波暗空間の形成を目的とするものではなく、特定周波数において電波環境が良い状態で、かつ簡易に試験、測定を行いたいという要求を応じるものであり、それに付随する各種要求事項も柔軟に対応できることが本発明の目的を満たすことになるためである。
さらに本発明の遮蔽継ぎ構造10を用いて遮蔽体11を継合せることで、必ずしも箱体の形状(直方体形状)にする必要はなく、筒状や円錐状などの形状にしてもよい。たとえばつまり、前述の継ぎ構造では、平板状の遮蔽体11を面一に並べる構成または90度に屈曲するように並べる構成であったが、曲面状または他の立体形状の遮蔽体11を用い、また遮蔽体11同士を90度以外の他の角度位置関係となるように並べる構成であってもよい。たとえば図11に示す構成において、端面16aを、遮蔽体11の表面11aに対して45度にすれば、遮蔽体11同士は90度屈曲する配置となり、端面16aを、遮蔽体11の表面11aに対して45度以外にすれば、遮蔽体11同士は90度以外で屈曲する配置となる。もちろん図11の構成に限らず、図12〜図14の構成でも、端面16aの傾斜角度、導電性形材30,33および支持部材35の形状を変更することによって、遮蔽体11同士を90度以外で屈曲する配置にすることができる。
さらに遮蔽構造物は、たとえばアンテナなどの電磁波の発信源や受信源の近傍に設置して、電磁波の指向性を制御する制御器として用いることも可能である。遮蔽構造物は、この様に電磁波吸収性と電磁波遮蔽性の性質を組み合わせることにより、電磁波環境を改善したり、電磁波の指向性を制御したり、様々な無線通信改善に寄与することが可能となる。