JP2007224159A - 難燃性樹脂組成物と硬化体 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、難燃性の樹脂組成物と、これを用いた硬化体に関するものである。
従来から、トランジスタ、IC等の電気・電子部品装置の封止では生産性、コスト等の面から樹脂封止が主流となり、熱硬化性樹脂、殊にエポキシ樹脂成形材料が広く用いられている。エポキシ樹脂が用いられていることの理由は、エポキシ樹脂が電気特性、耐湿性、耐熱性、機械特性、インサート品との接着性などの諸特性にバランスがとれているためである。そして、従来、これらのエポキシ樹脂成形材料の難燃化は、主にテトラブロモビスフェノールAのジグリシジルエーテル等のブロム化樹脂と酸化アンチモン等の難燃剤の組合せにより行われている。しかしながら、近年、環境保護の観点からダイオキシン問題に端を発し、デカブロムをはじめとするハロゲン化樹脂やアンチモン化合物に量規制の動きがあり、封止用エポキシ樹脂成形材料についてもノンハロゲン化(ノンブロム化)、ノンアンチモン化の要求が出てきている。また、プラスチック封止ICの高温放置特性にブロムイオンが悪影響を及ぼすことが知られており、この観点からもブロム化樹脂量の低減が望まれている。
そこで、ブロム化樹脂や酸化アンチモンなどを用いることなく難燃化を図る方法として、成形物を完全燃焼させた後に残存する成分であるチャー生成し易いエポキシ樹脂組成物とすることが提案されている(特許文献1)。
しかしながら、封止用エポキシ樹脂成形材料としてチャー生成し易い樹脂を用いる場合、実際に使用できる樹脂には制限があり、成形性、高耐熱性を両立し得るまでには至っていない。
また、難燃材として各種のものが提案されており、たとえばポリリン酸アンモニウム等のノンハロゲン、ノンアンチモンのリン系の難燃材についても検討されている(特許文献2−3)。しかし、これらの場合には、チャーの生成、樹脂の成形性や耐熱性等の特性においてさらなる改善が求められている。
特開2001−207023号公報
特開平10−204212号公報
特開2004−115797号公報
本発明は、以上のとおりの背景から、従来技術の問題点を解消し、ノンハロゲン、ノンアンチモンであって、難燃性が良好で、しかも成形性、そして耐熱性の諸特性にも優れた、エポキシ樹脂をはじめとする熱硬化性樹脂の難燃性組成物と、これを用いた硬化体、封止体を提供することを課題としている。
本発明者は、鋭意研究の結果、無機充填材に対して特定割合のリン含有Ti(チタン)系カップリング剤を用いた樹脂成形材料とすることで良好な難燃性を達成しうることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
すなわち、本発明に係る熱硬化性樹脂組成物は、無機充填材に対して特定割合のリン含有Ti(チタン)系カップリング剤を必須成分とし、ハロゲンフリー、アンチモンフリーのエポキシ樹脂成形材料を使用したことを特徴とするものである。
より詳しくは、以下のことを特徴としている。
第1:熱硬化性樹脂並びに無機充填材とともに、
次式
次式
と表わされるリン含有Ti系カップリング剤の少くとも1種を無機充填材に対しての重量比が0.02〜0.2の範囲内の割合で含有する難燃性樹脂組成物。
第2:前記式におけるリン含有有機基は、リン酸エステル基、亜リン酸エステル基、およびポリリン酸エステル基のうちの少くともいずれかのものである上記の難燃性樹脂組成物。
第3:前記式におけるリン含有有機基は、次式
第4:リン含有Ti系カップリング剤は、無機充填材表面に被覆または付着されて含有されている上記の難燃性樹脂組成物。
第5:無機充填材の平均粒径が3nm〜5000nmの範囲内である上記いずれかの難燃性樹脂組成物。
第6:難燃性樹脂組成物を成形した成形品中の可燃部に対するN2ガス中1000℃で熱分解した時の450℃におけるチャーの生成率が25%以上である上記いずれかの難燃性樹脂組成物。
第7:上記いずれかの難燃性樹脂組成物が成形硬化されたものである難燃性樹脂硬化体。
上記のとおりの本願の第1の発明によれば、無機充填材に対して特定割合のリン含有Ti(チタン)系カップリング剤を含有させることによって、チャーを生成させ、従来技術の問題点を解消して、ノンハロゲン、ノンアンチモンであって、難燃性が良好で、しかも成形性、そして耐熱性の諸特性にも優れた、エポキシ樹脂をはじめとする熱硬化性樹脂の難燃性組成物が実現されることになる。
リン含有Ti系カップリング剤におけるリン含有有機基を特定範囲のものとする第2の発明では、上記の効果はより確実に、より顕著なものとして実現される。
また、さらにリン含有有機基を特定の構造のものとする第3の発明によれば、さらに
確実に上記の効果が達成されることになる。
確実に上記の効果が達成されることになる。
リン含有Ti系カップリング剤を無機充填材の表面に被覆もしくは付着させたものとして使用する第4の発明では、上記第3の発明と同様の効果がより確実に顕著になるとともに、リン含有Ti系カップリング剤の取扱い、その調製も容易となる。
第5の発明においては無機充填材の平均粒径を3〜5000nmの範囲とすることで上記効果はより好ましいものとなる。また、チャーの生成率を25%以上とする第6の発明によれば、より大きな効果が実現される。
そして硬化体に係わる第7の発明によれば、ノンハロゲン、ノンアンチモンであって、難燃性が良好で、しかも成形性、そして耐熱性の諸特性を優れたものとすることができる。
本発明は以上のとおりの特徴を有するものであるが、以下にその実施の形態について説明する。
まず、本発明における熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等のように半導体装置等の電気・電子部品IC等の封止用途にも用いられるものであれば適宜のものを用いることができる。
たとえば熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を用いた場合は、1分子中にエポキシ基を少なくとも2個以上有するものであれば何れでも好適に使用することができる。たとえば具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、ナフタレン環を有するエポキシ樹脂等を例示することができる。これらのエポキシ樹脂は1種類を単独で用いたりあるいは2種類以上を併用したりすることができる。
また、本発明では、必要に応じて熱硬化性樹脂の硬化剤が用いられる。熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を用いる場合には、硬化剤としては適宜のフェノール樹脂やアミン系硬化剤や酸無水物系硬化剤を用いることができる。フェノール樹脂を硬化剤として用いる場合は、1分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有するものであれば何でも使用することができ、たとえば、具体的には、フェノールノボラック樹脂やナフトール樹脂などを例示することができる。これらの硬化剤の含有量は組成物が良好な熱硬化性等を発揮するような適宜調整されるが、エポキシ樹脂の場合、その1当量に対する硬化剤の化学量論上の当量比が0.9〜1.1の範囲となるようにすることが好ましい。また、必要に応じて硬化促進剤が用いられる。硬化促進剤も適宜なものを用いることができる。特に限定されるものではないが、イミダゾールを骨格に持つ化合物、アミン類化合物、ジアザビシクロアルケン類等を上げることができ、また、硬化促進剤の配合量は適宜調整されるが、エポキシ樹脂と硬化剤の総量に対して0.1〜2.0重量%が好ましい。
また、更に必要に応じて、離型剤、可塑剤、着色剤のような、封止用の樹脂組成物に用いられる適宜の添加剤を配合することもできる。
そして、本発明では、熱硬化性樹脂組成物において、上記のとおりのリン含有Ti系カップリング剤を必須成分にすることで、この組成物を硬化成形して得られる成形品の難燃性を達成することができると共に、成形性、耐熱性に優れた電子部品封止用の樹脂成形材料を得ることができるものである。
この場合のリン含有Ti系カップリング剤は前記のとおりのTiR1R2R3R4として示されるものであって、R1〜R4のうちの1以上はリン含有有機基で、他は有機基である。
リン含有有機基としては、好適には、たとえばリン酸エステル基、亜リン酸エステル基、ホスホン酸エステル基、ホスフィン、さらにはポリリン酸エステル等の縮合リン酸あるいは亜リン酸系のエステル等が考慮される。より好ましくは、前記のように、次式
また、R1〜R4のいずれかがリン含有有機基以外の有機基を持つ場合には、これは、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基等の各種の炭化水素基を持つアルコキシ基、アシルオキシ基、フェノキシ基等の含酸素有機基が好適なものとして例示される。また、あるいは、炭化水素基そのものであってもよい。
以上のようなリン含有Ti系カップリング剤の配合量については、無機充填材に対しての重量比が0.02〜0.2の範囲内の割合となるようにする。つまり、
W1(リン含有Ti系カップリング剤)/W2(無機質充填材)=0.02〜0.2
である。
W1(リン含有Ti系カップリング剤)/W2(無機質充填材)=0.02〜0.2
である。
この重量比が0.02未満の場合には、難燃効果は十分でなく、成形性、耐熱性も満足できるものではない。チャーの生成も期待できない。一方、0.2を超える場合には、耐熱性が低下することになる。
なお、無機質充填材については、本発明の樹脂組成物全体量の40重量%以上90重量%以下の範囲にされることが好ましい。一方、90重量%以上含有すると成形できなくなる恐れがある。
無機充填材については、シリカ、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、酸化ジルコニアが考えられるが、これらに限定されるものではない。なかでも、シリカ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムが好ましいものとしてある。
そして、無機充填材の平均粒子径が3nm〜5000nmの範囲である場合にはチャー生成量は増大し、難燃性が向上する。
無機充填材には、上記のリン含有Ti系カップリング剤をあらかじめ被覆もしくは付着させて組成物の混合調製を行うことができる。
樹脂組成物の製造については各種の手段、プロセスが採用されてよい。
上記のような各成分を含有する熱硬化性樹脂組成物は、固体状、液体状等の適宜の性状に調整することができる。熱硬化性樹脂組成物を調整するにあたっては、適宜の手法を採用することができるが、たとえば調整される樹脂組成物の性状が液体状である場合には各成分を所定量配合した後に混合し、又はミキサー、ブレンダー等で均一に混合した後にニーダーやロール等で加熱混練して、液体状の熱硬化性樹脂組成物を得ることができる。また、調整される樹脂組成物の性状が固体状である場合は各成分を所定量配合した後に溶解混合し、又はミキサー、ブレンダー等で均一に混合した後にニーダーやロール等で加熱混練したものを、冷却固化した後粉砕して粉末状の樹脂組成物を得るものであり、また、更に必要に応じて粉末状の樹脂組成物をタブレット状に打錠することもできる。
このようにして得られる熱硬化性樹脂組成物は、電気部品、電子部品、半導体、IC等の封止材料等として、圧縮成形、射出成形、押出し成形等の各種手段によって硬化体とすることができ、封止材料としても好適に用いることができる。
そこで以下に実施例を示し、さらに詳しく説明する。もちろん以下の例によって発明が限定されることはない。
比較例1〜3として表1に示す配合組成に従って、先ず無機充填材以外の成分を混合した後、シリカ及び水酸化マグネシウムの無機充填材を混合し、この混合物を混練器を用いて混練して、熱硬化性樹脂組成物を得た。
比較例4並びに実施例1〜5においては、表1に示す配合組成に従って、先ずリン含有Ti系カップリング剤を加熱することにより揮発させて無機充填剤(シリカ及び水酸化マグネシウム)の表面を修飾させる。無機充填材(シリカ及び水酸化マグネシウム)、リン含有Tiカップリング剤以外の成分を混合した後、リン含有Ti系カップリング剤で修飾した無機充填材を入れて混合し、この混合物を混練器を用いて混練して、熱硬化性樹脂組成物を得た。
なお、表1における成分としては、エポキシ樹脂1として東都化成社製YDB400(エポキシ当量:400g/eq)、エポキシ樹脂2としてダイセル化学工業社製CEL−2021(エポキシ当量:130g/eq)、硬化剤として大日本インキ化学工業社製エピクロンB−650(酸無水物当量168g/eq)、硬化促進剤として四国化成工業社製2−エチル−4−メチルイミダゾール、シリカAとして電気化学社製3SWX(平均粒径3000nm)、シリカBとして日本アエロジル社製AEROSIL380(平均粒子径7nm)、水酸化マグネシウムとして協和化学工業社製200−06H(平均粒子径600nm)、カップリング材1として味の素ファインテクノ社製KR 41B(−P(0H)(OC8H17)2で示される官能基を有する)、カップリング材2として味の素ファインテクノ社製KR 138S(前記〔化3〕に示す官能基を有する)、カップリング材3として味の素ファインテクノ社製KR 38S(前記〔化3〕に示す官能基を有する)を使用した。
各々の組成物について、その特性、性能を次の各試験により評価した。その結果も表1に示した。
(1)難燃性(UL−94試験)
各実施例及び比較例で得られた熱硬化性樹脂組成物をそれぞれ200mm×200mm×0.1mmの寸法の金型内に入れて、加熱プレスにて100℃で1時間加熱した後、150℃で3時間加熱することにより、硬化体を得た。
(1)難燃性(UL−94試験)
各実施例及び比較例で得られた熱硬化性樹脂組成物をそれぞれ200mm×200mm×0.1mmの寸法の金型内に入れて、加熱プレスにて100℃で1時間加熱した後、150℃で3時間加熱することにより、硬化体を得た。
UL−94試験法に従って難燃性を評価した。
(2)チャー生成率
各実施例及び比較例で得られた熱硬化性樹脂組成物をそれぞれ40mm×50mm×2mmの寸法の金型内に入れて、加熱プレスにて100℃で1時間加熱した後、150℃で3時間加熱することにより、硬化体を得た。
(2)チャー生成率
各実施例及び比較例で得られた熱硬化性樹脂組成物をそれぞれ40mm×50mm×2mmの寸法の金型内に入れて、加熱プレスにて100℃で1時間加熱した後、150℃で3時間加熱することにより、硬化体を得た。
TG測定器(セイコーインスツルメント社製「TG/DTA6200」)を用いて、流量50ml/minN2存在下で昇温速度40℃/minで燃焼試験を行い、燃焼前後(室温と1000℃)の試験片の重量変化(無機充填剤以外の成分の重量変化)から、450℃のチャー生成率(450℃での燃焼残渣)を求めた。
以上の評価結果を表1に示した。実施例1〜4で得られた硬化体は、同様に無機充填材としてシリカを用いた比較例1,3,4で得られた硬化体と比べて、また、実施例5で得られた硬化体は、同様に無機充填材として水酸化マグネシウムを用いた比較例2で得られた硬化体と比べて、チャー生成率が高く、難燃性が優れていることが確認された。また、各実施例で得られた硬化体の成形性を目視で確認したところ、いずれも問題ないことが確認された。
Claims (7)
- 前記式におけるリン含有有機基は、リン酸エステル基、亜リン酸エステル基、およびポリリン酸エステル基のうちの少くともいずれかのものであることを特徴とする請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
- リン含有Ti系カップリング剤は、無機充填材の表面に被覆または付着されて含有されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の難燃性樹脂組成物。
- 無機充填材の平均粒径が3nm〜5000nmの範囲内であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の難燃性樹脂組成物。
- 難燃性樹脂組成物を成形した成形品中の可燃部に対するN2ガス中1000℃で熱分解した時の450℃におけるチャーの生成率が25%以上であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の難燃性樹脂組成物。
- 請求項1から6のいずれかの難燃性樹脂組成物が硬化されたものであることを特徴とする難燃性樹脂硬化体。
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JP2006047376A JP2007224159A (ja) | 2006-02-23 | 2006-02-23 | 難燃性樹脂組成物と硬化体 |
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