以下、本発明の実施の形態に係るインク供給制御装置、インクジェットプリンタおよびインク供給制御方法を、図面に基づいて説明する。インク供給制御装置は、インクジェットプリンタの一部として説明する。インク供給制御方法は、インクジェットプリンタの動作の一部として説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係るインクジェットプリンタ1を示す概略構成図である。インクジェットプリンタ1は、給紙トレイ2に載置された用紙などの印刷媒体Pを排紙トレイ3まで搬送し、その印刷媒体Pの搬送経路の途中において印刷媒体Pへインクを吐出することで印刷するプリンタである。特に、このインクジェットプリンタ1では、キャリッジ22とは別体に設けられるインクタンクユニット24に複数のインクタンク25(図2参照)が着脱可能に装着されるものである。
インクジェットプリンタ1は、印刷媒体Pを搬送する機構として、LD(ロード)ローラ11、用紙ガイド12、PF(ペーパフィード)ローラ13、プラテン14、排紙ローラ15などを有する。
LDローラ11は、円柱の一部を切り欠いた略D字の断面形状を有する。LDローラ11は、その円柱半径に略相当する距離にて給紙トレイ2と離間して配設される。LDローラ11は、円柱の外周方向に回動可能に配設される。LDローラ11は、給紙動作をしていないときには、切欠き部が給紙トレイ2と対向し、給紙トレイ2から離間する。印刷媒体Pは、この切欠き部と給紙トレイ2との間に入り込む状態で給紙トレイ2に載置される。
用紙ガイド12、PFローラ13、プラテン14および排紙ローラ15は、図1に示すように、給紙トレイ2と排紙トレイ3との間にその順番で一列に並べて配設される。
PFローラ13および排紙ローラ15は、略円柱形状を有する。PFローラ13および排紙ローラ15は、印刷媒体Pの搬送方向に沿った方向にそれぞれ回動可能に配設される。PFローラ13および排紙ローラ15の上側には、それぞれの従動ローラ16,17が配設される。これらの従動ローラ16はPFローラ13に、従動ローラ17は排紙ローラ15にそれぞれ当接する。
LDローラ11、PFローラ13および排紙ローラ15は、図示外のPFモータにより回転駆動される。LDローラ11が回転すると、給紙トレイ2に載置された印刷媒体Pは、給紙トレイ2から給紙され、印刷媒体Pの搬送経路へ供給される。LDローラ11により印刷媒体Pの搬送経路へ供給された印刷媒体Pは、PFローラ13とその従動ローラ16により挟持される。PFローラ13が回転すると、印刷媒体Pは排紙トレイ3側へ搬送される。PFローラ13により印刷媒体Pの搬送経路を下流側に向けて搬送される印刷媒体Pは、排紙ローラ15とその従動ローラ17により挟持される。排紙ローラ15が回転すると、印刷媒体Pは排紙トレイ3へ排紙される。
また、インクジェットプリンタ1は、印刷媒体Pにインクを吐出する機構として、キャリッジ軸21、キャリッジ22、記録ヘッド23、インクタンクユニット24などを有する。
キャリッジ軸21は、PFローラ13の上方に、PFローラ13と略平行に配設される。キャリッジ軸21は、キャリッジ22を、キャリッジ軸21の軸方向(主走査方向)へ移動可能に保持する。キャリッジ22は、図示外のCR(キャリッジ)モータによりキャリッジ軸21の軸方向へ駆動される。記録ヘッド23は、プラテン14と対向するようにキャリッジ22の下面に配設される。記録ヘッド23は、図示外の複数のノズルを有する。ノズル内には、図示外のピエゾ素子が配設される。
図2は、図1のインクジェットプリンタ1のインク供給機構を示す構成図である。インクタンクユニット24は、図1に示すように、インクジェットプリンタ1の排紙トレイ3の上方に配設される。インクジェットプリンタ1は、図示外の開閉カバーを有する。この開閉カバーを開くと、インクタンクユニット24が露出する。このインクタンクユニット24は、インクジェットプリンタ1の本体側である固定部に配設される。
インクタンクユニット24には、9個のインクタンク25が着脱可能に配設される。9個のインクタンク25はそれぞれ、フォトブラックインク、マットブラックインク、通常のブラックインク、シアンインク、マゼンタインク、イエローインク、レッドインク、ブルーインク、グロスオプティマイザインクなど色のインクを1色ずつ収容する。グロスオプティマイザインクは、無色である。なお、1つのインクタンク25に複数色のインクを収容するようにしてもよい。インクタンク25は、上述する図示外の開閉カバーを開いて交換することができる。
インクタンクユニット24には、複数のチューブ26が接続される。チューブ26の本数は、インクタンクユニット24から供給するインクの色数と同数であればよい。この実施の形態の場合は、チューブ26は9本となる。各チューブ26は、インクタンクユニット24において各インクタンク25に接続される。
フォトブラックインクを収容するインクタンク25に接続されるチューブ26(以下、フォトブラックチューブ26aと呼ぶ。)と、マットブラックインクを収容するインクタンク25に接続されるチューブ26(以下、マットブラックチューブ26bと呼ぶ。)とは、インクセレクタ27に接続される。インクセレクタ27は、チューブ26(以下、供給チューブ26cと呼ぶ。)により記録ヘッド23に接続される。これ以外の色のインクを収容するインクタンク25に接続されるチューブ26は、記録ヘッド23に直接に接続される。
なお、このインクセレクタ27は、後述するDCモータ34などとともに、キャリッジ22に配設される。これにより、インクセレクタ27と記録ヘッド23とを接続する供給チューブ26cの長さは、必要最小限の短い長さにすることができる。仮にたとえばキャリッジ22とは別体のインクタンクユニット24にインクセレクタ27を設けた場合では、供給チューブ26cが長くなってしまうが、このインクジェットプリンタ1では供給チューブ26cが短くなる。
記録ヘッド23へ供給するインクを、フォトブラックインクとマットブラックインクとの間で切り替えるとき、インクセレクタ27から記録ヘッド23までの供給チューブ26c内のインクをすべて入れ替える必要がある。供給チューブ26cが必要最小限の短い長さとなることで、印刷に寄与せずに無駄に消費されてしまう入れ替え時のインク量を必要最小限に抑えることができる。また、インクの入れ替えには、吸引ポンプを用いて、記録ヘッド23側からインクを吸引することになる。この供給チューブ26c内のインクの入れ替え処理にかかる時間も、必要最小限な時間に抑えることができる。
インクセレクタ27は、セレクタハウジング27aを有する。セレクタハウジング27aは、略円筒の筒形状に形成される。セレクタハウジング27aには、供給チューブ26cと、マットブラックチューブ26bと、フォトブラックチューブ26aとが、円筒内部と連通するように接続される。供給チューブ26cは、セレクタハウジング27aの円筒軸方向の略中央部に接続される。マットブラックチューブ26bと、フォトブラックチューブ26aとは、この供給チューブ26cの接続位置を間に挟むようにセレクタハウジング27aに接続される。
セレクタハウジング27aの円筒内部には、シリンダ27bが配設される。シリンダ27bは、円筒内部の内径と略等しいかあるいは若干小さい円柱形状に形成される。これにより、シリンダ27bの内部空間はわずかな空間を除いて塞がれる。シリンダ27bは、長孔27cを有する。長孔27cは、シリンダ27bの軸方向の略中央部に形成される。長孔27cは、シリンダ27bの軸(図2では上下方向)と略垂直な方向において外周面を貫通するように形成される。
図3は、図2中のインクセレクタ27を駆動する制御系を示すブロック図である。インクジェットプリンタ1は、一対のプッシュアーム31,32と、回転体33と、この回転体33を駆動する駆動モータとしてのDC(直流)モータ34と、DCモータ34の回転駆動力を回転体33に伝達するギアユニット35と、を有する。これら一対のプッシュアーム31,32、回転体33、DCモータ34およびギアユニット35は、インクセレクタ27とともにキャリッジ22に配設される。
プッシュアーム31,32はそれぞれ、略S字形状に形成される。一方のプッシュアーム31は、図3においてS字の向きに配設され、他方のプッシュアーム32は、S字の表裏を入れ替えた向きに配設される。プッシュアーム31,32は、そのS字の中心が回転中心となるように、その真中部分において回転可能に固定される。一対のプッシュアーム31,32は、図3に示すように重ねて配設される。これにより、一対のプッシュアーム31,32は、両端部分において、間に物を挟むことができるようになる。一対のプッシュアーム31,32は、その一方の先端部同士が閉じられるとき、他方の先端部同士も閉じるように動作するようになる。
一対のプッシュアーム31,32は、図3に示すように、その先端部がセレクタハウジング27aの円筒両端から円筒内部へ挿入可能となるように配設される。また、一対のプッシュアーム31,32は、その他方の先端部の間に回転体33を挟持する。回転体33は、円板の一部を切り欠いた略D字形状を有する。
図4は、図3中のシリンダ27bの制御位置と、それに応じた一対のプッシュアーム31,32および回転体33の位置との相関を示す説明図である。シリンダ27b(回転体33)の目標とする制御位置には、図4の左側に示すマットエンド位置、図4の中央に示すニュートラル位置、図4の右側に示すフォトエンド位置の3つがある。
ニュートラル位置において、回転体33は、切欠き部分が下向きとなる姿勢となる。一対のプッシュアーム31,32は、回転体33の円形状の外周部分を挟む。その結果、一対のプッシュアーム31,32は、セレクタハウジング27aから離間する。シリンダ27bは、セレクタハウジング27a内で自由に移動可能になる。そのため、シリンダ27bは、セレクタハウジング27a内の略中央部に位置することが可能となる。シリンダ27bの長孔27cにより、フォトブラックチューブ26aおよびマットブラックチューブ26bが供給チューブ26cと連通する。
マットエンド位置において、回転体33は、切欠き部分が図4の右側となる。一対のプッシュアーム31,32は、回転体33を挟み込むが、図4において上側のプッシュアーム31は、回転体33の切欠き部分に当接する。その結果、図4において上側のプッシュアーム31は、セレクタハウジング27aの左側から円筒内部へ挿入される。このため、上側のプッシュアーム31は、シリンダ27bを図4の右方向へ押す。シリンダ27bは、セレクタハウジング27a内の図4右寄りに位置する。シリンダ27bの長孔27cにより、マットブラックチューブ26bのみが供給チューブ26cに連通する。フォトブラックチューブ26aは、供給チューブ26cに連通しない。
フォトエンド位置において、回転体33は、切欠き部分が図4の左側となる。一対のプッシュアーム31,32は、回転体33を挟み込む。図4において下側のプッシュアーム32は、回転体33の切欠き部分に当接する。その結果、図4において下側のプッシュアーム32は、セレクタハウジング27aの右側から円筒内部へ挿入される。このため、下側のプッシュアーム32は、シリンダ27bを図4の左方向へ押す。シリンダ27bは、セレクタハウジング27a内の図4左寄りに位置する。シリンダ27bの長孔27cにより、フォトブラックチューブ26aのみが供給チューブ26cに連通する。マットブラックチューブ26bは、供給チューブ26cに連通しない。
なお、以下の説明において回転体33の回転角度に言及する場合、マットエンド位置での回転体33の回転角度を−90度とし、ニュートラル位置での回転体33の回転角度を0度とし、フォトエンド位置での回転体33の回転角度を+90度とする。
図3に示すように、インクセレクタ27を駆動する制御系はこの他にも、カム体41と、検出手段としての二接点レバー検出スイッチ42と、モータドライバIC(Integrated Circuit)43と、制御手段としての制御部44と、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)45と、時間を計測するタイマ46と、電源スイッチ47と、を有する。
カム体41は、その半径が段階的に大きくなる巻貝に似た略円板形状を有する。カム体41は、その最大半径部分が回転体33の切欠き部分とは180度ずれた位置関係で回転体33と一体に形成される。カム体41は、DCモータ34の回転駆動により回転体33とともに回転する。
二接点レバー検出スイッチ42は、揺動可能なレバー42aと、図示外の3つの端子とを有する。3つの端子は、一列に並べられている。両端の2つの端子は、レバー42aの揺動位置に応じて真中の端子に接続される。二接点レバー検出スイッチ42は、この両端の2つの端子から、図4に示すMSC(マットセレクトチャンネル)信号と、PSC(フォトセレクトチャンネル)信号とを出力する。MSC信号およびPSC信号は、制御部44へ供給される。
また、二接点レバー検出スイッチ42は、図3および図4に示すように、レバー42aの先端部がカム体41の外周面に当接する。図4に示すように、マットエンド位置において、レバー42aは、カム体41の最大半径部分に当接する。このとき、正常に動作する二接点レバー検出スイッチ42は、ハイレベルのMSC信号と、ローレベルのPSC信号とを出力する。ニュートラル位置において、レバー42aは、カム体41の最大半径部分から90度回った部分に当接する。このとき、二接点レバー検出スイッチ42は、ローレベルのMSC信号と、ローレベルのPSC信号とを出力する。フォトエンド位置において、レバー42aは、カム体41の最大半径部分から180度回った部分に当接する。このとき、二接点レバー検出スイッチ42は、ローレベルのMSC信号と、ハイレベルのPSC信号とを出力する。
このようにMSC信号は、マットエンド位置においてハイレベルとなり、ニュートラル位置およびフォトエンド位置においてローレベルとなる。MSC信号は、マットエンド位置とニュートラル位置との間の所定の位置、たとえば−20度程度の位置においてハイレベルとローレベルとの間で切り替わる。
また、PSC信号は、フォトエンド位置においてハイレベルとなり、ニュートラル位置およびマットエンド位置においてローレベルとなる。PSC信号は、フォトエンド位置とニュートラル位置との間の所定の位置、たとえば+20度程度の位置においてハイレベルとローレベルとの間で切り替わる。
以下、MSC信号がハイレベルとなる回転角度範囲をマット範囲とよび、PSC信号がハイレベルとなる回転角度範囲をフォト範囲とよび、MSC信号およびPSC信号が共にローレベルとなるそれらの間の範囲をニュートラル範囲とよぶ。
モータドライバIC43は、DCモータ34を駆動する。
なお、モータドライバICは、複数のモータを駆動することができるものが一般的である。インクジェットプリンタ1では、PFモータ、CRモータ、DCモータ34の他にもたとえば、レリースモータ、APG(Auto Paper Gap)モータ、ASF(Auto Seet Feeder)モータ、ポンプモータ、加圧モータ、プランジャーなどのアクチュエータを有する。
レリースモータは、ボード紙などが紙詰まりを起こしたときにPFローラ13などをそれらの従動ローラ16から離間させるアクチュエータである。APGモータは、記録ヘッド23とプラテン14との間隔を調整するアクチュエータである。ASFモータは、PFローラ13とは別にLDローラ11などを駆動するアクチュエータである。ポンプモータは、インククリーニングのためのアクチュエータである。加圧モータは、インクタンク25を与圧するアクチュエータである。
このような複数のアクチュエータを有する場合、インクジェットプリンタ1は、複数のモータドライバICを使用する。この場合、DCモータ34を駆動するモータドライバIC43は、その他の分担として、PFモータやAPGモータを駆動するようにするとよい。このような組合せで複数のアクチュエータを複数のモータドライバIC43に分担させることで、複数のモータドライバICの間で、駆動するタイミングや電流値を分散し、平均化することができる。
EEPROM45は、書き込まれたデータを記憶保持するメモリである。EEPROM45は、制御部44により書き込みが可能である。なお、EEPROM45の替わりに、バッテリバックアップ機能を有するRAM(Random Access Memory)などを使用してもよい。EEPROM45は、具体的には、現在位置51、初期高デューティ値52、初期低デューティ値53、初期エンド間駆動時間54、実測エンド間駆動時間55、ニュートラル位置設定時間56、エンド位置設定時間57、エラー判定時間58などを記憶する。
EEPROM45に記憶される現在位置51は、シリンダ27b(回転体33)の最新の位置を示す情報である。シリンダ27b(回転体33)の位置には、図4に示すようにマットエンド位置、ニュートラル位置、フォトエンド位置がある。
初期高デューティ値52および初期低デューティ値53は、DCモータ34の駆動に使用されるデューティ値である。初期高デューティ値52および初期低デューティ値53は、EEPROM45に予め記憶されるデューティ値である。初期高デューティ値52および初期低デューティ値53は、印刷制御により更新されない。初期高デューティ値52は、たとえばマットエンド位置やフォトエンド位置からニュートラル範囲へ回転駆動するときに使用されるものであり、プッシュアーム31,32が略D字形状の回転体33の角を乗り越えることができる高いトルクのものである。これに対して、初期低デューティ値53は、たとえばマット範囲内においてマットエンド位置へ回転駆動するときに使用されるものであり、たとえば一対のプッシュアーム31,32が回転体33の円形状の外周部上を滑るように移動するために必要十分な低いトルクとなるものである。
初期エンド間駆動時間54は、回転体33を、初期高デューティ値52および初期低デューティ値53を用いた所定の制御シーケンスにより、マットエンド位置からフォトエンド位置まで駆動した時に必要とされる時間と略等しい時間である。初期エンド間駆動時間54は、印刷制御により更新されることはない。
実測エンド間駆動時間55は、回転体33を、高い制御デューティ値および低い制御デューティ値を用いた所定の制御シーケンスにより、マットエンド位置からフォトエンド位置まで駆動した時に実測される時間である。実測エンド間駆動時間55を初期エンド間駆動時間54で除算することで、インクジェットプリンタ1の動作状況に応じた制御デューティ値を得るための重み付け係数が得られる。なお、当初は、実測エンド間駆動時間55には、初期エンド間駆動時間54と同じ時間が格納される。このとき、重み付け係数の値は1になる。
ニュートラル位置設定時間56は、初期低デューティ値53に基づく制御デューティ値により回転体33をニュートラル範囲内でニュートラル位置まで回転するための時間である。なお、ニュートラル位置設定時間56は、フォト範囲側からニュートラル位置までの回転の場合と、マット範囲側からニュートラル位置までの回転の場合とで別々に設けられていてもよいが、この実施の形態では、両者の平均値を示している。また、いずれか一方からの値としてもよい。
エンド位置設定時間57は、初期低デューティ値53に基づく制御デューティ値により回転体33をマット範囲内でマットエンド位置まで回転したり、初期低デューティ値53に基づく制御デューティ値により回転体33をフォト範囲内でフォトエンド位置まで回転したりするための時間である。なお、エンド位置設定時間57は、マットエンド位置への回転の場合と、フォトエンド位置への回転の場合とで別々に設けられていてもよいが、この実施の形態では、両者の平均値を示している。また、いずれか一方からの値としてもよい。
エラー判定時間58は、初期高デューティ値52に基づく制御デューティ値により回転体33をマット範囲からニュートラル範囲まで回転したり、ニュートラル範囲からフォト範囲まで回転したり、フォト範囲からニュートラル範囲まで回転したり、ニュートラル範囲からマット範囲まで回転したりするときに、その駆動時間の上限時間である。なお、エラー判定時間58は、マット範囲からニュートラル範囲まで回転する場合と、ニュートラル範囲からフォト範囲まで回転する場合と、フォト範囲からニュートラル範囲まで回転する場合と、ニュートラル範囲からマット範囲まで回転する場合とで別々に設けられていてもよい。
制御部44は、インクジェットプリンタ1による印刷などを制御する。制御部44は、電源スイッチ47が投入されると、所定の初期設定処理を実行する。制御部44は、インクジェットプリンタ1に印刷データが供給されると、EEPROM45に記憶されるデータやタイマ46などを使用して、印刷データに基づく印刷制御を実行する。
なお、制御部44は、たとえば図示外のメモリICとをシステムバスで接続されたCPU(Central Processing Unit)ICが印刷制御プログラムを実行することで実現されればよい。このメモリとCPUとが1チップ化されていてもよい。さらに、それらのICに加えて、MSC信号およびPSC信号が入力されるASIC(Application Specific Integrated Circuit)を組み合わせた構成であってもよい。
また、この印刷制御プログラムは、たとえばCD−ROMなどの記録媒体に記録されたものをインクジェットプリンタ1が読み取ることで実行可能とされても、インターネットなどの通信媒体を介してインクジェットプリンタ1がダウンロードすることで実行可能とされてもよい。
次に、上述した構成によるインクジェットプリンタ1の動作を説明する。
インクジェットプリンタ1の制御部44は、プリンタ1の図示外の電源スイッチ47がオン状態になると、初期設定処理を開始する。初期設定処理において、制御部44は、インクセレクタ27の位置の修正制御を開始する。
図5は、図3中の制御部44が初期設定処理において実行する起動時位置修正シーケンスを示すフローチャートである。
起動時位置修正シーケンスにおいて、制御部44は、まず、シリンダ27b(回転体33)の現在位置が図4中のどの位置であるのかを確認する。具体的には、制御部44は、まず、二接点レバー検出スイッチ42からのMSC信号を読み込み、それがハイレベルであるか否かを判断する(ステップST1)。MSC信号がハイレベルである場合、制御部44は、シリンダ27b(回転体33)の現在位置がマット範囲内であると判断する。
シリンダ27b(回転体33)の現在位置がマット範囲内ではない場合、制御部44は、二接点レバー検出スイッチ42からのPSC信号を読み込み、それがハイレベルであるか否かを判断する(ステップST2)。PSC信号がハイレベルである場合、制御部44は、シリンダ27b(回転体33)の現在位置がフォト範囲内であると判断する。なお、PSC信号がローレベルである場合、制御部44は、起動時位置修正シーケンスを終了する。
ステップST1においてシリンダ27b(回転体33)の現在位置がマット範囲内であると判断した場合、制御部44は、シリンダ27b(回転体33)の位置をマットエンド位置とするための制御を開始する。
制御部44は、EEPROM45から初期低デューティ値53、実測エンド間駆動時間55および初期エンド間駆動時間54を読み込み、下記の式1に基づいて制御デューティ値を演算する。インクジェットプリンタ1の出荷直後では、実測エンド間駆動時間55は、初期エンド間駆動時間54と等しい。そのため、初期低デューティ値53がそのまま制御デューティ値となる。また、「実測エンド間駆動時間55÷初期エンド間駆動時間54」は、重み付け係数である。DCモータ34に加わる負荷が大きくなると、実測エンド間駆動時間55が長くなる。制御デューティ値もそれに応じて大きくなる。逆に、DCモータ34に加わる負荷が小さくなると、実測エンド間駆動時間55が短くなる。制御デューティ値もそれに応じて小さくなる。
制御デューティ値=(実測エンド間駆動時間55÷初期エンド間駆動時間54)×初期低デューティ値53 ・・・式1
初期低デューティ値53に基づく制御デューティ値を演算した後、制御部44は、モータドライバIC43へ駆動開始を指示する(ステップST3)。モータドライバIC43は、制御部44により演算された制御デューティ値によりマットエンド位置へ向かってDCモータ34を駆動する。
モータドライバIC43へ駆動開始を指示した後、制御部44は、タイマ46により計測される駆動時間がEEPROM45に記憶されるエンド位置設定時間57以上となったか否かを判断する(ステップST4)。制御部44は、DCモータ34の駆動開始後、繰り返し判断する。
そして、駆動時間がエンド位置設定時間57以上になると、制御部44は、モータドライバIC43にショートブレーキを指示する(ステップST5)。モータドライバIC43は、DCモータ34の回転を停止する。
以上の制御により、シリンダ27b(回転体33)の位置は、マットエンド位置になる。制御部44は、EEPROM45に記憶される現在位置51を、マットエンド位置に更新する(ステップST6)。
また、ステップST2においてシリンダ27b(回転体33)の現在位置51がフォト範囲内であると判断した場合、制御部44は、シリンダ27b(回転体33)の位置をフォトエンド位置とするための制御を開始する。
制御部44は、EEPROM45から初期低デューティ値53、実測エンド間駆動時間55および初期エンド間駆動時間54を読み込み、上記の式1に基づいて制御デューティ値を演算する。初期低デューティ値53に基づく制御デューティ値を演算した後、制御部44は、モータドライバIC43へ駆動開始を指示する(ステップST7)。モータドライバIC43は、制御部44により演算された制御デューティ値によりフォトエンド位置へ向かってDCモータ34を駆動する。
モータドライバIC43へ駆動開始を指示した後、制御部44は、タイマ46により計測される駆動時間がEEPROM45に記憶されるエンド位置設定時間57以上となったか否かを、繰り返し判断する(ステップST8)。そして、駆動時間がエンド位置設定時間57以上になると、制御部44は、モータドライバIC43にショートブレーキを指示する(ステップST9)。モータドライバIC43は、DCモータ34の回転を停止する。
以上の制御により、シリンダ27b(回転体33)の位置は、フォトエンド位置になる。制御部44は、EEPROM45に記憶される現在位置51を、フォトエンド位置に更新する(ステップST10)。
電源投入に基づく初期設定処理が完了すると、制御部44は、印刷データの入力待ち状態となる。インクジェットプリンタ1には、たとえば図示外のパーソナルコンピュータ、デジタルスチルカメラなどから印刷データが供給される。印刷データが供給されると、制御部44は、印刷処理を開始する。
印刷制御において、制御部44は、まず、印刷に使用するインクを選択する。制御部44は、印刷データを解析し、印刷に使用するインクに、フォトブラックインクあるいはマットブラックインクが含まれているか否かを判断する。制御部44は、たとえば印刷媒体Pが光沢紙やフォト専用紙などである場合、フォトブラックインクを使用すると判断する。この結果、制御部44は、シリンダ27b(回転体33)の目標位置をフォトエンド位置に設定する。また、制御部44は、たとえば印刷媒体Pがマット紙などである場合、マットブラックインクを使用すると判断する。この結果、制御部44は、シリンダ27b(回転体33)の目標位置をマットエンド位置に設定する。制御部44は、インク設定制御シーケンスを開始する。
図6は、図3中の制御部44が実行するインク設定制御シーケンスを示すフローチャートである。インク設定制御シーケンスにおいて、制御部44は、まず、シリンダ27b(回転体33)の現在位置を検出する(ステップST11)。
図7は、図6中の現在位置検出ステップ(ステップST11)の詳細な処理を示すフローチャートである。現在位置検出ステップ(ステップST11)において、制御部44は、まず、モータドライバIC43にショートブレーキを指示する(ステップST41)。モータドライバIC43は、ショートブレーキにより、DCモータ34を停止させる。
ショートブレーキ処理を指示した後、制御部44は、二接点レバー検出スイッチ42からのPSC信号およびMSC信号のサンプリングを開始する(ステップST42)。制御部44は、PSC信号およびMSC信号を周期的にサンプリングする。
サンプリングしたPSC信号およびMSC信号のサンプリングを開始した後、制御部44は、シリンダ27b(回転体33)の現在位置を判断する。具体的には、制御部44は、まず、PSC信号がローレベルであるか否かを判断する(ステップST43)。PSC信号がローレベルある場合、制御部44は、さらに、MSC信号がローレベルであるか否かを判断する(ステップST44)。MSC信号がローレベルである場合、制御部44は、シリンダ27b(回転体33)の現在位置がニュートラル範囲内であると判断し、EEPROM45の現在位置51をニュートラル位置に更新し(ステップST45)、現在位置検出ステップを終了する。
MSC信号のみがハイレベルである場合、制御部44は、PSC信号がローレベルであるときのステップST44の判断において、MSC信号がローレベルでないと判断する。制御部44は、シリンダ27b(回転体33)の現在位置がマット範囲内であると判断する。シリンダ27b(回転体33)の位置は、上述した起動時位置修正シーケンスにより、マットエンド位置に修正されている。制御部44は、EEPROM45の現在位置51をマットエンド位置に更新し(ステップST46)、現在位置検出ステップを終了する。
ステップST43の判断においてPSC信号がローレベルでないと判断した場合、すなわちPSC信号がハイレベルであると判断した場合、制御部44は、さらにMSC信号がローレベルであるか否かを判断する(ステップST47)。PSC信号がローレベルでなく且つMSC信号がローレベルである場合、制御部44は、シリンダ27b(回転体33)の現在位置51がフォト範囲内であると判断する。シリンダ27b(回転体33)の位置は、上述した起動時位置修正シーケンスにより、フォトエンド位置に修正されている。制御部44は、EEPROM45の現在位置51をフォトエンド位置に更新し(ステップST48)、現在位置検出ステップを終了する。
MSC信号およびPSC信号が共にハイレベルである場合、制御部44は、現在位置検出エラーと判断する。図4に示すように、正常動作するインクジェットプリンタ1では、MSC信号とPSC信号とが同時にハイレベルとなることはない。制御部44は、現在位置検出エラーと判断すると、印刷データに基づく制御を中断し、所定のエラー処理を実行する(ステップST49)。
図7の現在位置検出ステップST11を完了すると、制御部44は、図6に示すように、シリンダ27b(回転体33)の検出位置と目標位置とが一致するか否かを判断する(ステップST12)。検出位置と印刷データに基づく目標位置とが一致する場合、制御部44は、EEPROM45に記憶される現在位置51を検出位置で更新し(ステップST13)、図6のインク設定制御シーケンスを終了する。
これに対して、シリンダ27b(回転体33)の検出位置と目標位置とが一致しない場合、制御部44は、シリンダ27b(回転体33)の位置を修正する処理を開始する。
たとえば、シリンダ27b(回転体33)の検出位置がニュートラル範囲であり、且つ、目標位置がフォトエンド位置である場合、制御部44は、シリンダ27b(回転体33)の検出位置と目標位置とが一致しないと判断する。制御部44は、シリンダ27b(回転体33)の位置をフォトエンド位置とするための修正処理を開始する。
シリンダ27b(回転体33)の位置をニュートラル範囲からフォトエンド位置とするための修正処理では、制御部44は、まず、タイマ46に時間計測の開始を指示する(ステップST14)。その後、制御部44は、シリンダ27b(回転体33)の検出位置がニュートラル範囲内であるか否かを判断する(ステップST15)。
シリンダ27b(回転体33)の検出位置がニュートラル範囲内である場合、制御部44は、目標位置がマットエンド位置であるか否かを判断する(ステップST16)。この場合、目標位置は、フォトエンド位置である。制御部44は、目標位置がマットエンド位置ではないと判断する。目標位置がマットエンド位置ではないと判断した後、制御部44は、まず、ニュートラル範囲からフォト範囲までの駆動制御を実行する(ステップST17)。
図8は、図3中の制御部44によるニュートラル範囲からフォト範囲までの駆動処理(ステップST17)の詳細な流れを示すフローチャートである。ニュートラル範囲からフォト範囲までの駆動処理では、制御部44は、まず、EEPROM45から初期高デューティ値52、実測エンド間駆動時間55および初期エンド間駆動時間54を読み込み、上記の式1に基づいて制御デューティ値を演算する。制御部44は、モータドライバIC43にフォトエンド位置へ向かうDCモータ34の駆動開始を指示する(ステップST51)。モータドライバIC43は、制御部44により演算された制御デューティ値によりDCモータ34を駆動する。回転体33は、ニュートラル範囲からフォトエンド位置に向けて回転する。シリンダ27bの位置も、ニュートラル位置からフォトエンド位置に向かって移動する。
モータドライバIC43に駆動開始を指示した後、制御部44は、シリンダ27b(回転体33)の最新の位置を検出する(ステップST52)。そして、制御部44は、最新の検出位置がフォト範囲内であるか否かを判断する(ステップST53)。PSC信号がローレベルからハイレベルへ変化すると、制御部44は、最新の検出位置がフォト範囲内であると判断し、モータドライバIC43に駆動終了を指示する(ステップST54)。モータドライバIC43は、DCモータ34を停止する。PSC信号がローレベルからハイレベルへ変化する時点では、図4において下側のプッシュアーム32は、回転体33の切欠き部分に当接する。
最新の検出位置がフォト範囲内でない場合、制御部44は、さらに、タイマ46により計測される駆動時間がEEPROM45に記憶されるエラー判定時間58を超えたか否かを判断する(ステップST55)。駆動時間がエラー判定時間58を超えていない場合、制御部44は、シリンダ27b(回転体33)の最新の位置の検出(ステップST52)と、最新の検出位置がフォト範囲内であるか否かの判断(ステップST53)と、駆動時間がエラー判定時間58を超えていないか否かの判断(ステップST55)とを繰り返し実行する。
また、駆動時間がエラー判定時間58を超えた場合、制御部44は、フェイタルエラーと判断してフォト範囲までの駆動制御を中断し、所定のエラー処理を実行する(ステップST56)。
以上のニュートラル範囲からフォト範囲への駆動制御が完了すると、図6に戻り、制御部44は、フォトエンド位置への駆動制御を実行する(ステップST18)。
図9は、図3中の制御部44によるフォトエンド位置までの駆動処理(ステップST18)の詳細な流れを示すフローチャートである。フォトエンド位置までの駆動処理では、制御部44は、まず、EEPROM45から初期低デューティ値53、実測エンド間駆動時間55および初期エンド間駆動時間54を読み込み、上記の式1に基づいて制御デューティ値を演算する。制御部44は、モータドライバIC43にフォトエンド位置へ向かうDCモータ34の駆動開始を指示する(ステップST61)。モータドライバIC43は、制御部44により演算された制御デューティ値によりDCモータ34を駆動する。回転体33は、フォトエンド位置に向けて回転する。シリンダ27bの位置も、フォトエンド位置に向かって移動する。
モータドライバIC43に駆動開始を指示した後、制御部44は、タイマ46により計測されるフォトエンド位置への駆動制御を開始してからの駆動時間がEEPROM45に記憶されるエンド位置設定時間57以上になったか否かを判断する(ステップST62)。制御部44は、繰り返し判断する。そして、駆動時間がエンド位置設定時間57以上になると、制御部44は、モータドライバIC43にショートブレーキを指示する(ステップST63)。モータドライバIC43は、ショートブレーキによりDCモータ34を停止する。エンド位置設定時間57は、初期低デューティ値53に基づく制御デューティ値により回転体33をフォト範囲内でフォトエンド位置まで回転する時間である。
これにより、シリンダ27bおよび回転体33は、フォトエンド位置に設定される。その結果、図4において下側のプッシュアーム32は、セレクタハウジング27aの右側から円筒内部へ挿入された姿勢になり、シリンダ27bを図4の左方向へ押す。シリンダ27bの長孔27cにより、フォトブラックチューブ26aが供給チューブ26cに連通する。フォトブラックインクを記録ヘッド23へ供給することができる状態になる。
なお、フォト範囲内におけるこのフォトエンド位置への駆動制御では、DCモータ34は、初期低デューティ値53に基づく制御デューティ値で駆動される。したがって、シリンダ27bおよび回転体33がフォトエンド位置に到達した後にDCモータ34の駆動が継続されていたとしても、DCモータ34と回転体33との間のギアユニット35においてギアの噛み込みなどは発生しない。
以上のフォトエンド位置への駆動制御(ステップST18)が完了すると、図6に戻り、制御部44は、タイマ46による駆動時間の計測を終了する(ステップST19)。その後、制御部44は、今回のシリンダ27b(回転体33)の位置の修正制御が、フォトエンド位置とマットエンド位置との間での修正制御であるか否かを判断する(ステップST20)。先の制御では、ニュートラル位置からフォトエンド位置への制御である。制御部44は、今回の修正制御がエンド間の修正制御ではないと判断する。制御部44は、EEPROM45に記憶される現在位置51を、フォトエンド位置に更新するのみとなる(ステップST22)。制御部44は、シリンダ27b(回転体33)の現在位置をフォトエンド位置とするための修正処理を終了する。
この他にもたとえば、シリンダ27b(回転体33)の検出位置がニュートラル範囲であり、且つ、目標位置がマットエンド位置である場合、制御部44は、ステップST12において、シリンダ27b(回転体33)の検出位置と目標位置とが一致しないと判断し、シリンダ27b(回転体33)の位置をマットエンド位置とするための修正処理を開始する。
シリンダ27b(回転体33)の位置をニュートラル位置からマットエンド位置とするための修正処理では、制御部44は、まず、タイマ46に時間計測の開始を指示する(ステップST14)。その後、制御部44は、シリンダ27b(回転体33)の検出位置がニュートラル範囲内であると判断し(ステップST15)、さらに目標位置がマットエンド位置であると判断する(ステップST16)。制御部44は、マット範囲までの駆動制御を実行する(ステップST23)。
制御部44によるニュートラル範囲からマット範囲までの駆動制御(ステップST23)は、図8の制御部44によるニュートラル範囲からフォト範囲までの駆動処理(ステップST51〜56であり、ステップST17に相当)と略同様の流れで実行される。すなわち、制御部44は、EEPROM45に記憶される初期高デューティ値52、実測エンド間駆動時間55および初期エンド間駆動時間54を上記の式1に代入して制御デューティ値を演算し、モータドライバIC43にマットエンド位置へ向かうDCモータ34の駆動開始を指示する。その後、制御部44は、シリンダ27b(回転体33)の最新の位置を繰り返し検出し、MSC信号がローレベルからハイレベルへ変化すると、モータドライバIC43に駆動終了を指示する。これにより、図4において上側のプッシュアーム31は、回転体33の切欠き部分に当接する。
以上のマット範囲への駆動制御(ステップST23)が完了すると、制御部44は、マットエンド位置への駆動制御を実行する(ステップST24)。制御部44によるマットエンド位置までの駆動制御(ステップST24)は、図9の制御部44によるフォトエンド位置への駆動処理(ステップST61〜63であり、ステップST18に相当)と略同様の流れで実行される。すなわち、制御部44は、EEPROM45に記憶される初期低デューティ値53、実測エンド間駆動時間55および初期エンド間駆動時間54を上記の式1に代入して制御デューティ値を演算し、モータドライバIC43にマットエンド位置へ向かうDCモータ34の駆動開始を指示する。その後、制御部44は、タイマ46により計測されるマットエンド位置への駆動制御を開始してからの駆動時間がEEPROM45に記憶されるエンド位置設定時間57以上になると、モータドライバIC43にショートブレーキを指示し、DCモータ34を停止させる。
以上の一連の制御により、シリンダ27bおよび回転体33は、マットエンド位置に設定される。その結果、図4において上側のプッシュアーム31は、セレクタハウジング27aの左側から円筒内部へ挿入された姿勢になり、シリンダ27bを図4の右方向へ押す。シリンダ27bの長孔27cにより、マットブラックチューブ26bのみが供給チューブ26cに連通する。マットブラックインクを記録ヘッド23へ供給することができる状態になる。
その後、制御部44は、タイマ46による駆動時間の計測を終了し(ステップST25)、今回の修正制御がエンド間の修正制御ではないと判断し(ステップST26)、EEPROM45に記憶される現在位置51を、マットエンド位置に更新する(ステップST28)。制御部44は、シリンダ27b(回転体33)の位置をマットエンド位置とするための修正処理を終了する。
この他にもたとえば、シリンダ27b(回転体33)の検出位置がフォト範囲であり、且つ、目標位置がマットエンド位置である場合、制御部44は、ステップST12の判断において、シリンダ27b(回転体33)の検出位置と目標位置とが一致しないと判断し、シリンダ27b(回転体33)の位置をマットエンド位置とするための修正処理を開始する。
シリンダ27b(回転体33)の位置をフォト範囲からマットエンド位置とするための修正処理では、制御部44は、まず、タイマ46に時間計測の開始を指示する(ステップST14)。その後、制御部44は、シリンダ27b(回転体33)の検出位置がニュートラル範囲内でないと判断し(ステップST15)、まず、フォト範囲からニュートラル範囲までの駆動制御を実行する(ステップST29)。
制御部44によるフォト範囲からニュートラル範囲までの駆動制御(ステップST29)は、図8の制御部44によるニュートラル範囲からフォト範囲までの駆動処理(ステップST17)と略同様の流れで実行される。すなわち、制御部44は、EEPROM45に記憶される初期高デューティ値52、実測エンド間駆動時間55および初期エンド間駆動時間54を上記の式1に代入して制御デューティ値を演算し、モータドライバIC43にニュートラル位置へ向かうDCモータ34の駆動開始を指示する。その後、制御部44は、シリンダ27b(回転体33)の最新の位置を繰り返し検出し、PSC信号がハイレベルからローレベルへ変化すると、モータドライバIC43に駆動終了を指示する。これにより、図4において一対のプッシュアーム31,32は、回転体33の外周部分に当接する。
以上のニュートラル範囲への駆動制御(ステップST29)が完了すると、制御部44は、目標位置がニュートラル位置であるか否かを判断する(ステップST30)。目標位置は、マットエンド位置である。制御部44は、目標位置がニュートラル位置でないと判断し、上述したニュートラル範囲からマット範囲までの駆動制御(ステップST23)と、マットエンド位置までの駆動制御(ステップST24)とを実行する。
以上の一連の制御により、シリンダ27bおよび回転体33は、マットエンド位置に設定される。その結果、図4において上側のプッシュアーム31は、セレクタハウジング27aの左側から円筒内部へ挿入され、シリンダ27bは図4の右方向へ押され、シリンダ27bの長孔27cにより、マットブラックチューブ26bのみが供給チューブ26cに連通する。マットブラックインクを記録ヘッド23へ供給することができる状態になる。
その後、制御部44は、タイマ46による駆動時間の計測を終了し(ステップST25)、今回の修正制御がエンド間の修正制御であるか否かを判断する(ステップST26)。今回の駆動制御は、フォト範囲からマットエンド位置までの駆動制御である。制御部44は、今回の修正制御がエンド間の修正制御であると判断し、EEPROM45に記憶される実測エンド間駆動時間55を、タイマ46により計測した駆動時間で更新する(ステップST27)。また、制御部44は、EEPROM45に記憶される現在位置51を、マットエンド位置に更新する(ステップST28)。制御部44は、シリンダ27b(回転体33)の位置をマットエンド位置とするための修正処理を終了する。
この他にもたとえば、シリンダ27b(回転体33)の検出位置がマット範囲であり、且つ、目標位置がフォトエンド位置である場合、制御部44は、ステップST12の判断において、シリンダ27b(回転体33)の検出位置と目標位置とが一致しないと判断し、シリンダ27b(回転体33)の位置をフォトエンド位置とするための修正処理を開始する。
シリンダ27b(回転体33)の位置をマット範囲からフォトエンド位置とするための修正処理では、上述したシリンダ27b(回転体33)の位置をフォト範囲からマットエンド位置とするための修正処理と略同様の流れで実行される。すなわち、制御部44は、まず、タイマ46に時間計測の開始を指示し(ステップST14)、検出位置がニュートラル範囲でないと判断した後(ステップST15)、マット範囲からニュートラル範囲までの駆動制御を実行する(ステップST29)。その後、制御部44は、目標位置がニュートラル位置およびマットエンド位置ではないと判断し(ステップST30、ST16)、ニュートラル範囲からフォト範囲までの駆動制御(ステップST17)と、フォトエンド位置までの駆動制御(ステップST18)とを実行する。
以上の一連の制御により、シリンダ27bおよび回転体33は、フォトエンド位置に設定される。その結果、図4において下側のプッシュアーム32は、セレクタハウジング27aの右側から円筒内部へ挿入され、シリンダ27bは図4の左方向へ押され、シリンダ27bの長孔27cによりフォトブラックチューブ26aのみが供給チューブ26cに連通する。フォトブラックインクを記録ヘッド23へ供給することができる状態になる。
その後、制御部44は、タイマ46による駆動時間の計測を終了し(ステップST19)、今回の修正制御がエンド間の修正制御であると判断し(ステップST20)、EEPROM45に記憶される実測エンド間駆動時間55を、タイマ46により計測した駆動時間で更新する(ステップST21)。また、制御部44は、EEPROM45に記憶される現在位置51を、フォトエンド位置に更新する(ステップST22)。制御部44は、シリンダ27b(回転体33)の位置をフォトエンド位置とするための修正処理を終了する。
以上の4パターンの駆動制御により、シリンダ27b(回転体33)の現在位置51は、印刷時に使用する目標位置(マットエンド位置あるいはフォトエンド位置)と一致するようになる。
印刷に使用するインクの選択および図6のインク設定制御シーケンスによる設定制御が完了すると、制御部44は、印刷データに基づく給紙制御およびインク吐出制御を開始する。制御部44は、まず、モータドライバIC43を介してPFモータを駆動して、給紙制御を開始する。PFモータによりLDローラ11、PFローラ13および排紙ローラ15が回転する。LDローラ11は、給紙トレイ2の最上位に載置されている印刷媒体Pをその外周部で挟持し、給紙トレイ2から排出する。LDローラ11の回転にしたがって給紙トレイ2から排出された印刷媒体Pは、用紙ガイド12上を通過し、PFローラ13へ供給される。PFローラ13およびその従動ローラ16は、印刷媒体Pを挟持し、搬送する。これにより、印刷媒体Pは、その先端部からプラテン14の上側の印刷位置へ供給される。制御部44は、印刷媒体Pの先端部が印刷位置へ供給されるタイミングで、PFモータを停止する。
印刷媒体Pの先端部の給紙制御が完了すると、制御部44は、モータドライバIC43を介してCRモータを駆動して、1走査目のインク吐出制御を開始する。キャリッジ22は、主走査方向となる、すなわちキャリッジ軸21の方向へ移動する。また、制御部44は、印刷データにより指定された印刷パターンで記録ヘッド23へインク吐出パターンデータを出力する。記録ヘッド23では、図示外の複数のピエゾ素子がインク吐出パターンデータにより駆動され、インクを吐出する。記録ヘッド23から吐出されたインクは、印刷領域にある印刷媒体Pの先端部に付着する。インクセレクタ27により選択されたフォトブラックインクあるいはマットブラックインクは、インク吐出パターンデータにしたがって印刷媒体Pに付着する。
1走査目のインク吐出パターンデータの出力が完了すると、制御部44は、モータドライバIC43を介してPFモータを駆動して、紙送り制御を開始する。PFモータによりPFローラ13および排紙ローラ15が回転する。PFローラ13とその従動ローラ16により挟持される印刷媒体Pは、PFローラ13の回転にしたがって紙送りされる。制御部44は、紙送り量が印刷データに基づく所定の紙送り量となると、PFモータを停止する。印刷領域には、たとえば印刷媒体Pの新たな部位が位置する。
紙送り制御が完了すると、制御部44は、2番目の走査ラインのインク吐出制御を開始する。制御部44は、CRモータを駆動するとともに、記録ヘッド23に2走査目のインク吐出パターンデータを出力する。たとえば印刷媒体Pの新たな部位には、インク吐出パターンデータにしたがって吐出されたインクが付着する。
制御部44は、この走査ライン毎のインク吐出制御と、紙送り制御とを繰り返し実行する。なお、特定の走査ラインにいてインク吐出パターンデータが無い場合は、インク吐出が行われず、紙送りのみが行われる。制御部44は、印刷データが終了すると、あるいは、印刷媒体Pの後端が印刷領域を通過すると、走査ライン毎のインク吐出制御を終了する。その後、制御部44は、排紙制御を開始する。排紙制御を開始するとき、印刷媒体Pは、少なくとも排紙ローラ15とその従動ローラ17とにより挟持されている。
排紙制御において、制御部44は、モータドライバIC43を介してPFモータを駆動する。排紙ローラ15は、回転し、その従動ローラ17との間に挟持する印刷媒体Pを排紙トレイ3側へ搬送する。制御部44は、排紙ローラ15から印刷媒体Pが離間すると考えられる時間にわたってPFモータを駆動する。これにより、インクが付着した印刷媒体Pは、排紙トレイ3に排出される。
また、制御部44は、電源投入回数、ユーザ指示、未使用期間の判断などに基づいて、所定のインククリーニング制御を実行する。制御部44は、シリンダ27b(回転体33)をニュートラル位置に設定した上で、インククリーニング制御を実行する。制御部44は、インクセレクタ27のシリンダ27b(実体的には回転体33)をニュートラル位置に設定するために、図6のインク設定制御シーケンスを実行する。このとき、目標位置は、ニュートラル位置となる。
なお、インクセレクタ27のシリンダ27bをニュートラル位置に設定することで、マットブラックインクおよびフォトブラックインクが共にまたはいずれか一方が確率二分の一にて記録ヘッド23へ供給される。これにより、マットブラックインクおよびフォトブラックインクの中の一方のみがクリーニングによって偏って減ってしまうことを防止することができる。
シリンダ27b(回転体33)の現在位置51がマット範囲あるいはフォト範囲であるとき、制御部44は、ステップST12の判断において、シリンダ27b(回転体33)の現在位置51が目標位置(ニュートラル位置)と一致しないと判断する。制御部44は、シリンダ27b(回転体33)をニュートラル位置とするための修正処理を開始する。
シリンダ27b(回転体33)の位置をフォト範囲あるいはマット範囲からニュートラル位置とするための修正処理では、制御部44は、まず、タイマ46に時間計測の開始を指示する(ステップST14)。その後、制御部44は、シリンダ27b(回転体33)の検出位置がニュートラル範囲内でないと判断し(ステップST15)、まず、フォト範囲あるいはマット範囲からニュートラル範囲までの駆動制御を実行する(ステップST29)。
また、制御部44は、ニュートラル範囲への駆動制御(ステップST29)が完了すると、目標位置がニュートラル位置であると判断し(ステップST30)、ニュートラル位置までの駆動制御とを実行する(ステップST31)。
ニュートラル位置までの駆動制御(ステップST31)は、図9のフォトエンド位置への駆動処理(ステップST18)と略同様の流れで実行される。すなわち、制御部44は、EEPROM45に記憶される初期低デューティ値53、実測エンド間駆動時間55および初期エンド間駆動時間54を上記の式1に代入して制御デューティ値を演算し、モータドライバIC43にニュートラル位置へ向かうDCモータ34の駆動開始を指示する。その後、制御部44は、ニュートラル位置までの駆動制御を開始してからのタイマ46の駆動時間がEEPROM45に記憶されるニュートラル位置設定時間56以上になると、モータドライバIC43にショートブレーキを指示する。
以上の一連の制御により、回転体33は、ニュートラル位置に設定される。その結果、図4において上側のプッシュアーム31および下側のプッシュアーム32は、セレクタハウジング27aから離間する。このとき、シリンダ27bは、マット位置状態またはフォト位置状態を維持している場合もあり、ニュートラル位置に来ている可能性もある。シリンダ27bはシリンダハウジングの略中央部に位置した場合、シリンダ27bの長孔27cにより、マットブラックチューブ26bおよびフォトブラックチューブ26aが供給チューブ26cに連通する。マットブラックインクおよびフォトブラックインクを同時に記録ヘッド23へ供給することができる状態になる。
その後、制御部44は、タイマ46による駆動時間の計測を終了し(ステップST32)、EEPROM45に記憶される現在位置51を、ニュートラル位置に更新する(ステップST33)。制御部44は、シリンダ27b(回転体33)の位置をニュートラル位置とするための修正処理を終了する。制御部44は、インククリーニング制御を開始する。
以上のように、この実施の形態では、DCモータ34は、記録ヘッド23とインクタンク25との間のインク供給経路上に設けられるインクセレクタ27を駆動し、フォトブラックインクのみを記録ヘッド23へ供給するフォトエンド位置と、マットブラックインクのみを記録ヘッド23へ供給するマットエンド位置と、これら2つのインクを同時に記録ヘッド23へ供給するニュートラル位置とに制御する。フォトエンド位置は、マットブラックインクの供給を停止する位置である。また、マットエンド位置は、フォトブラックインクの供給を停止する位置である。
また、二接点レバー検出スイッチ42は、回転体33の回転位置に応じて揺動するレバー42aの位置に応じて、フォトエンド位置とニュートラル位置との間でレベルが変化するPSC信号と、マットエンド位置とニュートラル位置との間でレベルが変化するMSC信号とを出力する。
そして、制御部44は、インクセレクタ27のシリンダ27bの位置がマット範囲になったらエンド位置設定時間57だけDCモータ34を駆動し、回転体33をマットエンド位置にもたらし、インクセレクタ27のシリンダ27bの位置がフォト範囲になったらエンド位置設定時間57だけDCモータ34を駆動し、回転体33をフォトエンド位置にもたらし、さらに、インクセレクタ27のシリンダ27bの位置がニュートラル範囲になったらニュートラル位置設定時間56だけDCモータ34を駆動し、回転体33をニュートラル位置にもたらす。
その結果、制御部44は、マットエンド位置、ニュートラル位置およびフォトエンド位置を直接検出することなく、回転体33をそれらの制御位置へもたらすことができる。インク供給制御のための3つの制御位置よりも少ない2つの位置を検出しつつ、その3つの制御位置へ回転体33を制御することができる。この回転体33の制御によって、シリンダ27bも3位置の制御が可能になる。
また、インクセレクタ27の制御位置を1つの二接点レバー検出スイッチ42のみで検出することで、インクセレクタ27の小型軽量化と相俟って、キャリッジ22の大型化や重量増大などを効果的に防止することができる。
また、インクセレクタ27がキャリッジ22に設けられているため、インクセレクタ27を切り替えて、記録ヘッド23へ供給するインクを切り替えるときに捨てられるインクの量を必要最小限に抑えることができる。
また、この実施の形態では、インクセレクタ27のシリンダ27bの位置がマット範囲になってからのDCモータ34の所定時間での駆動制御と、インクセレクタ27のシリンダ27bの位置がフォト範囲になってからのDCモータ34の所定時間での駆動制御と、インクセレクタ27のシリンダ27bの位置がニュートラル範囲になってからのDCモータ34の所定時間での駆動制御とは、初期低デューティ値53に基づく制御デューティ値で実行される。
その結果、マットエンド位置やフォトエンド位置において、インクセレクタ27のシリンダ27bの位置がセレクタハウジング27aにより規制されているにも拘らず、ギアユニット35におけるギアの噛み込みを効果的に抑制することができる。また、低いトルクでマットエンド位置やフォトエンド位置に駆動することで、インクセレクタ27の位置を目標とするマットエンド位置やフォトエンド位置に正確且つ安定的に位置決めすることができる。
また、この実施の形態では、インクセレクタ27のシリンダ27bの位置がマット範囲になるまでのDCモータ34の駆動制御と、インクセレクタ27のシリンダ27bの位置がフォト範囲になるまでのDCモータ34の駆動制御と、インクセレクタ27のシリンダ27bの位置がニュートラル範囲になるまでのDCモータ34の駆動制御とは、初期高デューティ値52に基づく制御デューティ値で高速に実行される。その結果、インク切替に必要な時間が短縮される。また、一対のプッシュアーム31,32が回転体33の切欠き部から外周部に乗り上げることができるように強いトルクで、回転体33を回転駆動することができる。
また、この実施の形態では、制御部44は、エンド間駆動制御におけるタイマ46の計測時間により、EEPROM45に記憶される実測エンド間駆動時間55を更新する。実測エンド間駆動時間55は、式1に示すように、初期エンド間駆動時間54により除算された上で、重み付け係数として制御デューティ値の演算に用いられる。制御デューティ値は、実測エンド間駆動時間55が増加すると大きくなり、実測エンド間駆動時間55が減少すると小さくなる。DCモータ34のトルクは、実測エンド間駆動時間55に応じて増減する。
その結果、DCモータ34に加わる負荷がばらつきや経年変化により増減したとしても、DCモータ34による駆動時間は、常に略一定に安定する。制御部44は、インクセレクタ27のシリンダ27bの位置を一定時間の駆動により、マットエンド位置、フォトエンド位置およびニュートラル位置へ安定して位置決めすることができる。また、負荷に応じてトルクが増減することで、たとえば軽い負荷を高いトルクで高速に駆動してしまうことなどがなくなり、駆動音が大きくなってしまうことを防止することができる。その他にもたとえば、トルクが不足して駆動できなくなってしまうことを防止することができる。
また、この実施の形態では、DCモータ34は、マット範囲、ニュートラル範囲およびフォト範囲の間で駆動するときには、その範囲毎に区切って駆動が制御される。そのため、駆動開始時の範囲に拘らず、目標とする制御位置の直前の範囲境界においてインクセレクタ27のシリンダ27bの位置が安定する。ひいては最終的な目標位置である制御位置においてシリンダ27bの位置が安定する。また、たとえばマット領域からフォト領域まで制御する場合でも、制御部44は、その間となるニュートラル領域での制御情報を共通に用いることができる。
また、この実施の形態では、制御部44は、印刷を開始する前の電源投入時に、インクセレクタ27の位置をマットエンド位置あるいはフォトエンド位置となるように、DCモータ34を所定の時間駆動する。その結果、印刷を開始するときには、インクセレクタ27の位置は、EEPROM45に記憶されるマットエンド位置あるいはフォトエンド位置と一致する。インクセレクタ27の位置が、検出位置と異なる不定な位置となってしまうことはない。制御部44は、印刷開始時には、図7に示すように、MSC信号およびPSC信号に基づいてシリンダ27b(回転体33)の範囲を判断するだけで、EEPROM45中の現在位置51をマットエンド位置やフォトエンド位置に更新することができる。
以上の実施の形態は、本発明の好適な実施の形態の例であるが、本発明は、これに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変形、変更が可能である。
たとえば、上記実施の形態では、シリンダ27b(回転体33)の位置を修正する駆動制御において、DCモータ34は、制御デューティ値により連続的に駆動される。この他にもたとえば、DCモータ34は、制御デューティ値により間欠的に駆動されるようにしてもよい。このように制御デューティ値による駆動を間欠的にすることで、たとえば初期低デューティ値53に基づく制御デューティ値によりマットエンド位置やフォトエンド位置へ駆動するときに、DCモータ34と回転体33との間のギアユニット35においてギアでの噛み込みをさらに抑制する効果を期待することができる。
上記実施の形態では、シリンダ27b(回転体33)の位置は、マットエンド位置、ニュートラル位置およびフォトエンド位置の3つの位置に制御される。この他にもたとえば、シリンダ27b(回転体33)の位置は、マットエンド位置とフォトエンド位置との2つの位置に制御されるものであっても、4つ以上の位置に制御されるものであってもよい。このような変形例の場合でも、隣接する2つの目標位置の間において変化する信号を用いて、制御位置より少ない数の位置検出により、各位置への駆動制御を実現することができる。
上記実施の形態では、シリンダ27bは長孔27cを有し、ニュートラル位置において、マットブラックチューブ26bおよびフォトブラックチューブ26aを共に供給チューブ26cに連通する。この他にもたとえば、シリンダ27bは、ニュートラル位置において、マットブラックチューブ26bおよびフォトブラックチューブ26aを共に供給チューブ26cに連通しないようにしてもよい。
上記実施の形態では、制御部44は、ニュートラル範囲からフォト範囲への駆動制御(ステップST17)、ニュートラル範囲からマット範囲への駆動制御(ステップST23)、フォト範囲からニュートラル範囲への駆動制御(ステップST29)、およびマット範囲からニュートラル範囲への駆動制御(ステップST29)において、駆動時間がエラー判定時間58を超えたら、フェイタルエラー処理を実行する。この他にもたとえば、制御部44は、検出位置による範囲がある時間にわたって変化しなかったら、制御デューティ値を増加して駆動制御を継続し、それでもエラー判定時間58などの所定の時間内に検出位置による範囲が変化しなかったら、フェイタルエラー処理を実行するようにしてもよい。
上記実施の形態では、制御部44は、エンド間制御の後に、そのエンド間制御でかかった駆動時間で、EEPROM45が記憶する実測エンド間駆動時間55を更新している(ステップST21、ST27)。この他にもたとえば、制御部44は、たとえば、エンド間制御でかかった駆動時間と、EEPROM45が記憶している実測エンド間駆動時間55との平均を演算し、その平均値でEEPROM45が記憶する実測エンド間駆動時間55を更新するようにしてもよい。このように平均値をとることで、イレギュラー的に駆動時間がかかってしまった場合に、それによる悪影響を抑えることができる。逆に、本実施の形態のように、エンド間制御でかかった駆動時間をそのまま使用することで、DCモータ34の負荷の急激な変化が生じても、それに敏感に追従して駆動時間を安定化することができる。
上記実施の形態では、インクセレクタ27は、マットブラックインクを供給するマットエンド位置と、ニュートラル位置と、フォトブラックインクを供給するフォトエンド位置とに制御される。この他にもたとえば、インクセレクタ27は、マットブラックインクを供給する位置と、それを停止する位置との間で制御されるものであってもよい。
上記実施の形態では、インクセレクタ27、DCモータ34などは、キャリッジ22に配設されている。この他にもたとえば、インクセレクタ27、DCモータ34などを、キャリッジ22とは別体に設けるようにしてもよい。逆に、インクタンクユニット24を、キャリッジ22に設けるようにしてもよい。
上記実施の形態では、インクセレクタ27を駆動する部材である回転体33の位置を検出するようにしているが、インクセレクタ27の位置を直接検出するようにしてもよい。
1 インクジェットプリンタ(インク供給制御装置)、22 キャリッジ、23 記録ヘッド、24 インクタンクユニット、25 インクタンク、26a(26) フォトブラックチューブ(チューブ)、26b(26) マットブラックチューブ(チューブ)、26c(26) 供給チューブ(チューブ)、27 インクセレクタ、34 DCモータ(駆動モータ)、35 ギアユニット、42 二接点レバー検出スイッチ(検出手段)、42a レバー、44 制御部(制御手段)、46 タイマ。