以下、本発明の実施の形態を、作業車としての農作業用トラクタに適用した場合の図面について説明する。図1はトラクタの側面図、図2は同後方斜視図、図3はトラクタ機体の側面説明図、図4はトラクタ機体の平面説明図、図5はトラクタのミッションケースの側面図、図6は動力伝達のスケルトン図である。
図1乃至4に示されるように、トラクタ1は、走行機体2を左右一対の前車輪3と左右一対の後車輪4とで支持し、走行機体2の前部に搭載したエンジン5にて後車輪4及び前車輪3を駆動することにより、前後進走行するように構成している。エンジン5はボンネット6にて覆われている。また、走行機体2の上面にキャビン7を設置し、該キャビン7の内部には、操縦座席8と、かじ取りすることによって前車輪3を左右に動かすようにした操縦ハンドル9とを配置している。キャビン7の外側部には、オペレータが乗降するステップ10を配置し、該ステップ10より内側で且つキャビン7底部より下側には、エンジン5に燃料を供給する燃料タンク11を配置している。
図2乃至5に示されるように、走行機体2は、前バンパ12及び前車軸ケース13を備えたエンジンフレーム14と、エンジンフレーム14の後部にボルト15にて着脱自在に固定する左右一対の機体フレーム16とにより構成されている。機体フレーム16の後部には、エンジン5の回転を適宜変速して後車輪4及び前車輪3に伝達するためのミッションケース17が連結されている。この場合、後車輪4は、ミッションケース17に対して、該ミッションケース17の外側面から外向きに突出するように装着された後車軸ケース18と、この後車軸ケース18の外側端に後方に延びるように装着されたギヤケース19とを介して取付けられている。ミッションケース17の後部における上面には、耕うん機等の作業機(図示せず)を昇降動するための油圧式の作業機用昇降機構20が着脱可能に取付けられている。前記耕うん機等の作業機は、ミッションケース17の後部にロワーリンク21及びトップリンク22を介して連結されている。さらに、ミッションケース17の後側面に、前記耕うん機等の作業機に対するPTO軸23を後向きに突出している。
次に、図3乃至図5、図13乃至図15を参照して、機体フレーム16とミッションケース17とを連結する走行機体2の後部構造を説明する。鉄板製の左右の機体フレーム16の後端部に、上下連結ボス部200を一体形成している。図14及び図15に示されるように、連結ボス部200は筒形フレームピン201に被嵌されている。フレームピン201の一端側にピン締結部材202を被嵌している(図15参照)。フレームピン201と、ピン締結部材202とは、溶接加工にて固定している。機体フレーム16は、フレームピン201の内孔に貫通する1本の締付けボルト204と、ピン締結部材202の取付け孔に貫通する3本の固定ボルト205とを介して、ミッションケース17の側面に取付けられることになる。
図15に示されるように、ミッションケース17の側面には、フレームピン201を圧入するピン孔206が形成されている。ピン孔206の奥側に、締付けボルト204を螺着するための締付けネジ孔207を形成している。ミッションケース17の側面には、固定ボルト205を螺着するための固定ネジ孔209を形成する。固定ボルト205には、円筒形のスペーサ208を被嵌している。ミッションケース17の側面にスペーサ208を介して固定ボルト205を螺着し、ミッションケース17に固定ボルト205を介してピン締結部材202を固着することになる。
連結ボス部200には、フレームピン201を貫通するための軸孔199が形成されている。軸孔199の内径と、フレームピン201の外径と、ピン孔206の内径とを略同一寸法に形成している。フレームピン201の一方の端面と、ピン締結部材202の外側面が略面一になるように、ピン締結部材202にフレームピン201の端部を溶接加工にて固設している(図15参照)。
なお、フレームピン201の端部とピン締結部材202とを固設する場合、ピン締結部材202の外側面に対してフレームピン201の端面を若干突出させ、締付けネジ孔207に締付けボルト204を螺着した場合、締付けボルト204の頭部がフレームピン201端部に圧着可能に構成してもよい。フレームピン201の端部とピン締結部材202との固定は、溶接以外の固定方法、例えばフレームピン201の端部がピン締結部材202の開孔に圧入される固定方法でもよい。
図14に示されるように、連結ボス部200の外面から軸孔199にフレームピン201を貫通する。次いで、フレームピン201をピン孔206に圧入する。各ボルト204,205を各ネジ孔207,209に螺着する。このようにすると、ミッションケース17とピン締結部材202とにフレームピン201が両持ち構造にて支持されることになる。
一方、図5に示されるように、機体フレーム16の後端面の上下幅中間に、後向き開放状の位置決め溝210を形成している。ミッションケース17の側面には、位置決め溝210に嵌め込むガイドピン211を横向きに突出している。即ち、ミッションケース17の側面に機体フレーム16の後部を固設する場合、先ず、ミッションケース17にピン締結部材202を介して機体フレーム16の下側の連結ボス部200を緩く止める。そして、ミッションケース17の後部を若干持上げて、位置決め溝210にガイドピン211を嵌め込む。次いで、ミッションケース17にピン締結部材202を介して機体フレーム16の上側の連結ボス部200を固く止め、下側の連結ボス部200も固く止めることになる。
即ち、フレームピン201及び各ボルト204,205を用いて下側のピン締結部材202を組付けた後、位置決め溝210及びガイドピン211を介してミッションケース17の側面に機体フレーム16を連結した状態で、フレームピン201及び各ボルト204,205を用いて上側のピン締結部材202を組付ける上述の作業を実行でき、ミッションケース17の側面の取付け位置に機体フレーム16を支持できる。したがって、ミッションケース17に、ピン締結部材202を介して、機体フレーム16の連結ボス部200を固定する場合、機体フレーム16とミッションケース17の相対的な位置決め作業を簡単に行え、走行機体2の組立作業性を向上できる。なお、ミッションケース17にガイドピン211の一端側を埋め込んだが、鋳造加工によってミッションケース17にガイドピン211を一体的に形成してもよい。
図5、図13に示されるように、走行機体2に搭載されたエンジン5からの動力を変速するミッションケース17と、ミッションケース17の左右の外面に連結する左右の機体フレーム16とを備えてなる作業車両において、ミッションケース17の外面または左右の機体フレーム16のいずれか一方にガイドピン211を突出し、他方にガイドノッチとしての位置決め溝210を形成し、ガイドピン211と位置決め溝210との係合によって、左右の機体フレーム16に対するミッションケース17の前方移動を阻止可能に構成しているものであるから、ミッションケース17の外面に左右の機体フレーム16を連結する場合、ガイドピン211に位置決め溝210を係合してミッションケース17の組付け位置を決定でき、左右の機体フレーム16との締結位置にミッションケース17を簡単に保持でき、走行機体2の組立作業性を向上できる。
図5、図13に示されるように、ミッションケース17の外面にガイドピン211を突出し、機体フレーム16の後端側の上下幅の中間に後向き開放形状の位置決め溝210を形成しているものであるから、走行機体2を組立てる場合、予めエンジンフレーム14の後端側に左右の機体フレーム16の前端側を固着した状態で、機体フレーム16の後方からミッションケース17を接近させることにより、位置決め溝210にガイドピン211を簡単に係合でき、機体フレーム16とミッションケース17との締結作業性等を向上できる。なお、本実施形態では、ミッションケース17にガイドピン211を配置し、機体フレーム16に位置決め溝210を形成したが、機体フレーム16にガイドピン211を配置し、ミッションケース17に位置決め溝210(ミッションケース17の前方移動のストッパ)を形成してもよい。
図5、図13、図14に示されるように、左右の機体フレーム16の後端側の二又形の上部と下部とにこの外側から上下のフレームピン201をそれぞれ貫通させ、ミッションケース17に上下のフレームピン201の一端側を突入させ、上下のフレームピン201の他端側に上下の連結体としてのピン締結部材202をそれぞれ固設し、ミッションケース17の外面に上下のピン締結部材202を着脱可能に締結しているものであるから、ミッションケース17に機体フレーム16を直接締結しなくても、機体フレーム16とミッションケース17の連結強度を充分に確保でき、且つ機体フレーム16の連結に必要なミッションケース17の外面の面積を狭小に形成できる。したがって、機体フレーム16を連結するためのミッションケース17の側面を、例えば変速操作機構の設置等に活用できる。
次に、図3及び図4を参照して、エンジンフレーム14の構造を説明する。左右エンジンフレーム14の前後幅中間部の上面側には、左右一対の前部防振部材230が配置されている。エンジンフレーム14に左右の前部防振部材230を介してエンジン5の前部両側を連結している。左右のエンジンフレーム14の前後幅中間部の下面側には、前車軸ケース13と、パワーステアリング用油圧シリンダ93とを配置している。前車軸ケース13の左右両側に左右前車輪3を操舵自在に配置している。
図3及び図4に示されるように、左右の機体フレーム16の前部には、正面視門形の上連結部材250と、平板形の下連結部材251とが配設されている。左右の機体フレーム16の上面に上連結部材250の門形両端部をボルトにて締結している。機体フレーム16の下面に下連結部材251の両端部をボルトにて締結している。左右の機体フレーム16の間に、エンジン5の後側方のフライホイル25を配置している。フライホイル25の上方に上連結部材250を配置し、フライホイル25の下方に下連結部材251を配置している。即ち、左右の機体フレーム16と、上下の連結部材250,251とにより囲む空間内に、フライホイル25を配置している。
次に、走行機体2の組立作業を説明する。先ず、エンジンフレーム14の後部の外側面に、ボルト15を介して機体フレーム16の前部を締結する。左右機体フレーム16前部の上面に、上連結部材250の門形両端部をボルトにて締結する。左右機体フレーム16前部の下面に、下連結部材251の両端部をボルトにて締結する。上下連結部材250,251によって左右の機体フレーム16の前部の上面と下面を連結する。その後、機体フレーム16の位置決め溝210にミッションケース17のガイドピン211を嵌め込んで、ミッションケース17の側面の取付け位置に機体フレーム16の後部を連結する。
上述したように、位置決め溝210及びガイドピン211を介してミッションケース17の側面に機体フレーム16を連結した状態で、連結ボス部200の軸孔199にフレームピン201を差し込み、ピン孔206にフレームピン201の先端側を圧入し、ピン締結部材202の外側から締付けネジ孔207に締付けボルト204を螺着する。また、各ネジ孔207,209に各ボルト204,205を螺着し、ミッションケース17とピン締結部材202とに、フレームピン201を両持ち構造に組付け、機体フレーム16の後部とミッションケース17の側面とを連結し、走行機体2の組立作業を完了する(図3、図4参照)。
なお、走行機体2の組立作業において、エンジンフレーム14の後部の外側面に機体フレーム16の前部を締結した後、左右の機体フレームの後部16とミッションケース17の側面とを連結したが、左右の機体フレームの後部16とミッションケース17の側面とを連結した後、エンジンフレーム14の後部の外側面に機体フレーム16の前部を締結してもよい。
一方、例えば、ミッションケース17の前面側に設置した油圧ポンプ94,95のメンテナンス作業等、ミッションケース17の前面側の構成部品の脱着作業等を実行する場合、各ボルト204,205の取外し操作によりピン締結部材202を取外し、ミッションケース17の側面から機体フレーム16を取外し、機体フレーム16とミッションケース17とを分離する。また、各ボルト15等の取外し操作により、エンジンフレーム14及び上下連結部材250,251に対して機体フレーム16の前部を分離する。即ち、左右の機体フレーム16のいずれか一方だけを取外し、機体フレーム16を取外した側から、油圧ポンプ94,95のメンテナンス作業等を実行する。
したがって、エンジンフレーム14及びミッションケース17の側面に左右の機体フレーム16のいずれか他方を連結した状態で、ミッションケース17の前面側のメンテナンス作業等を実行できるから、メンテナンス作業等が完了した場合、取外した機体フレーム16を簡単な作業にて再び組付けることができ、メンテナンス等の作業性を向上できる。
図14に示されるように、ミッションケース17の側面部に機体フレーム16の後部を延設し、機体フレーム16の後部にこの外側からフレームピン201を貫通し、フレームピン201の先端部をミッションケース17の側面部に突入しているから、従来のボルト締結等の連結構造に比べ、機体フレーム16の連結に必要なミッションケース17側部の面積などを縮小でき、ミッションケース17の側部を例えば変速操作機構の設置スペース等に活用できる。機体フレーム16とミッションケース17とがフレームピン201を介して連結されるから、材料費が安くて、かつデザイン形状の制限が少ない加工にて、機体フレーム16を製作できる。例えばトラクタ1などの走行機体を簡略化でき、製造コストを低減できる。
また、左右の機体フレーム16のいずれか一方が、エンジンフレーム14及びミッションケース17に連結された状態下で、エンジンフレーム14及びミッションケース17から、他方の機体フレーム16を取外すことができるから、エンジンフレーム14と左右の機体フレーム16とは、それぞれが独立した部品として加工できる。例えばエンジンフレーム14と左右の機体フレーム16とが一体連結された従来のモノコック形の機体構造に比べ、走行機体2を低コスト構造に構成できる。
図3及び図4に示されるように、上連結部材250の上面の左右幅中間には、後部防振部材254が設置されている。上連結部材250の上面に、後部防振部材254を介してエンジン5の背面を連結している。なお、左右の前部防振部材230と、後部防振部材254とは、平面視三角形(平面視でエンジン5の重心位置が略中央に位置する三角形)の各頂角部に配置されている(図4参照)。前部防振部材230と、後部防振部材254とは、エンジン5の側面視四角形の対角線と略平行な直線(側面視でエンジン5の重心位置を通過する直線)上に配置されている(図3参照)。
図11は本実施形態のトラクタ1の油圧回路300を示し、エンジン5の回転力により作動する作業機用油圧ポンプ94及び走行用油圧ポンプ95を備えている。走行用油圧ポンプ95は、パワーステアリング用のコントロール弁302を介して操縦ハンドル9によるパワーステアリング用の油圧シリンダ93に接続している。一方、左右一対のオートブレーキ65用のブレーキシリンダ68をそれぞれ作動させる切換弁である左右オートブレーキ電磁弁67a,67bに接続している。
図11に示されるように、走行用油圧ポンプ95は、PTO油圧クラッチ100のためのPTOクラッチ油圧電磁弁(比例制御弁)104と、ミッションケース17の各変速部、すなわち後述する主変速のための油圧無段変速機29の主変速油圧シリンダ556に接続する主変速比例制御弁303とそれによって作動する主変速切換弁304と、高速側切換ソレノイド306の励磁によって走行副変速用油圧シリンダ55を高速側に切換える副変速電磁弁307と、走行の前進、後進の切換えのための油圧クラッチ40、42を作動させる前進用クラッチ電磁弁46、後進用クラッチ電磁弁48と、前車輪3及び後車輪4を同時に駆動するための四駆用の油圧クラッチ74に対する四駆油圧電磁弁80と、前車輪3を倍速駆動に切換えるための倍速用の油圧クラッチ76に対する倍速油圧電磁弁82とに接続している。
図11に示されるように、作業機用油圧ポンプ94は、作業機用昇降機構20における単動式の昇降油圧シリンダ305に作動油を供給するための昇降制御電磁弁301に接続している。なお、この油圧回路300には、リリーフ弁や流量調整弁、チェック弁、オイルクーラ、オイルフィルタ等を備えている。
次に、図7乃至図9、図12を参照して、ミッションケース17の内部構造を説明する。ミッションケース17は、この内部を中仕切り壁31にて前後に仕切られるミッションケース本体17aと、前蓋体としての前側壁部材32及び前車輪駆動ケース69と、後蓋体としての後側壁部材33とを有する。ミッションケース本体17aの前側には、前側壁部材32を介して前車輪駆動ケース69がボルトにて着脱可能に締結される。ミッションケース本体17aの後側には、後側壁部材33がボルトにて着脱可能に締結される。即ち、ミッションケース17は四角箱形に構成され、ミッションケース本体17aの内部には、前室34と後室35とが形成される。なお、前室34と後室35とは、これらの内部の作動油(潤滑油)が相互に移動するように、ミッションケース本体17aの底部近傍の中仕切り壁31の一部を切り欠いて連通している。
図6及び図7に示されるように、前室34には、後述する走行副変速ギヤ機構30と、PTO変速ギヤ機構96とを配置している。後室35には、後述する走行主変速機構である静油圧式の無段変速機29と、後車輪用の差動ギヤ機構58とを配置している。図12に示されるように、前車輪駆動ケース69の前面の外側には、上述したサクションフィルタ220と、各油圧ポンプ94,95とを配置している。
図6に示されるように、エンジン5の後側面には、エンジン出力軸24が後ろ向きに突出するように設けられている。エンジン出力軸24にフライホイル25を直結している。フライホイル25から後ろ向きに突出する主動軸26と、ミッションケース17の前面から前向きに突出する主変速入力軸27との間を、両端に自在軸継ぎ手を備えた伸縮式の動力伝達軸28を介して連結している。エンジン5の回転を主変速入力軸27に伝達し、無段変速機29及び走行副変速ギヤ機構30にて適宜変速して、その変速出力を後車輪用の差動ギヤ機構58に伝達して、左右の後車輪4を駆動するように構成している。また、走行副変速ギヤ機構30にて適宜変速したエンジン5の回転を、前車輪駆動ケース69から前車軸ケース13の前輪側差動ギヤ機構86に伝達し、左右の前車輪3を駆動するように構成している。
次に、図9は、主変速入力軸27に主変速出力軸36が同心状に配置されたインライン式油圧無段変速機29を示す。後室35の内部には、主変速入力軸27を介して油圧無段変速機29を設置している。主変速入力軸27の入力側(前端側)に対して反対側になる主変速入力軸27の後端側は、後側壁部材33に後側玉軸受504を介して回転自在に軸支されている。
図9に示されるように、油圧無段変速機29の前側、即ち主変速入力軸27の入力側には、円筒形の主変速出力軸36が被嵌されている。油圧無段変速機29から主変速出力を取出すための主変速出力ギヤ37が主変速出力軸36に設けられている。主変速出力軸36は、この中間が中仕切り壁31に貫通され、前端と後端とが前室34と後室35とにそれぞれ突出する。主変速出力軸36の中間は、二組の玉軸受502にて中仕切り壁31に回転自在に軸支されている。主変速出力軸36の前端部に主変速出力ギヤ37を配置している。主変速入力軸27の入力側は、ころ軸受503を介して主変速出力軸36の軸孔に回転自在に軸支されている(図9参照)。主変速入力軸27の入力側(前端側)は、主変速出力軸36の前端より前方に突出することになる。
無段変速機29は、以下に述べるように、可変容量形の変速用油圧ポンプ部500と、この油圧ポンプ部500から吐出される高圧の作動油にて作動する定容量形の変速用油圧モータ部501とを備えている。
図9に示されるように、前記中仕切り壁31と後側壁部材33との略中間の主変速入力軸27には、油圧ポンプ部500及び油圧モータ部501のためのシリンダブロック505が被嵌されている。主変速入力軸27とシリンダブロック505とはスプライン525にて連結されている。主変速入力軸27の入力側と反対側でシリンダブロック505を挟んでこの一側部に油圧ポンプ部500を配置している。主変速入力軸27の入力側であるシリンダブロック505の他側部に油圧モータ部501を配置している。
図9に示されるように、前記油圧ポンプ部500には、シリンダブロック505の側面に対向するようにミッションケース17の内側面に固定する第1ホルダ510と、主変速入力軸27の軸線に対して傾斜角を変更可能に第1ホルダ510に配置するポンプ斜板509と、該ポンプ斜板509に摺動自在に設けるシュー508と、該シュー508に球体自在継手を介して連結するポンププランジャ506とが備えられている。シリンダブロック505には、ポンププランジャ506を出入自在に配置する第1プランジャ孔507が形成されている。ポンププランジャ506の一端側は、シリンダブロック505の側面からポンプ斜板509の方向(図8右側)に突出している。即ち、油圧ポンプ部500は、シリンダブロック505と、ポンププランジャ506と、シュー508と、ポンプ斜板509と、第1ホルダ510とにより構成している。
なお、主変速入力軸27と第1ホルダ510との間には、主変速入力軸27に被嵌するスリーブ511と、ローラ軸受512と、ラジアル及びスラスト荷重用ころ軸受513とを介在させている。主変速入力軸27の後方にころ軸受513が抜け出るのを防ぐナット514を備えている。
図9に示されるように、前記シリンダブロック505には、ポンププランジャ506と同数の第1スプール弁536が設けられている。また、第1ホルダ510には、第1ラジアル軸受537が配置されている。第1ラジアル軸受537は、主変速入力軸27の軸線に対して一定の傾斜角で傾斜させて第1ホルダ510に配置している。図9において、ポンプ斜板509に対して約90度回転した位置(図9の図面の手前側)がシリンダブロック505の側面から離れるように、約180度反対側(図9の図面の奥側)がシリンダブロック505の側面に近くなるように、第1ラジアル軸受537を傾斜させて支持するように構成している。
他方、前記油圧モータ部501には、シリンダブロック505の側面に対向させて配置する第2ホルダ519と、主変速入力軸27の軸線に対して傾斜角を一定に保つように第2ホルダ519に固定するモータ斜板518と、モータ斜板518に摺動自在に設けるシュー517と、該シュー517に球体自在継手を介して連結するモータプランジャ515とを備えている。シリンダブロック505には、モータプランジャ515を出入自在に配置するための第2プランジャ孔516を形成している。モータプランジャ515の一端側は、シリンダブロック505の側面からモータ斜板518の方向(図9の左側)に突出している。
即ち、油圧モータ部501は、シリンダブロック505と、モータプランジャ515と、シュー517と、モータ斜板518と、第2ホルダ519とにより構成されている。第2ホルダ519には、継ぎ手部材526がボルト527にて固定されている。前記出力軸36と継ぎ手部材525とがスプライン528にて連結されている。
図9に示されるように、主変速入力軸27と第2ホルダ519との間には、ラジアル荷重用のローラ軸受520,521と、主変速入力軸27に被嵌するスリーブ522と、ラジアル及びスラスト荷重用のころ軸受523とが介在している。主変速入力軸27からころ軸受523が抜け出るのを防ぐナット524を備えている。
図9に示されるように、前記シリンダブロック505には、モータプランジャ515と同数の第2スプール弁540が設けられている。また、第2ホルダ519には、第2ラジアル軸受541を配置している。第2ラジアル軸受541は、主変速入力軸27の軸線に対して一定の傾斜角で傾斜させて第2ホルダ519に配置している。モータ斜板518に対して約90度回転した位置(図9手前側)がシリンダブロック505の側面に近くなるように、約180度反対側(図9奥側)がシリンダブロック505の側面から離れるように、第2ラジアル軸受541を傾斜させて支持するように構成している。
なお、ポンププランジャ506と、該ポンププランジャ506と同数のモータプランジャ515とは、シリンダブロック505の回転中心の同一円周上に交互に配列されている。
図9に示されるように、主変速入力軸27が挿入されるシリンダブロック505の軸孔には、輪溝形の第1油室530と、輪溝形の第2油室531とがそれぞれ形成されている。シリンダブロック505には、この回転中心の同一円周上に略等間隔に配列する第1弁孔532と第2弁孔533とが形成されている。第1弁孔532及び第2弁孔533は、第1油室530及び第2油室531とそれぞれ連通している。第1プランジャ孔507は、第1油路534を介して第1弁孔532と連通している。第2プランジャ孔516は、第2油室531を介して第2弁孔533と連通している。
図9に示されるように、第1弁孔532に第1スプール弁536を挿入している。第1スプール弁536は、シリンダブロック505の回転中心の同一円周上に略等間隔に配列されている。第1弁孔532から背圧バネ力の弾圧にて第1スプール弁536の先端が第1ホルダ510の方向に突出し、第1スプール弁536の先端が第1ラジアル軸受537の外輪538の側面に当接している。そして、シリンダブロック505の1回転で第1スプール弁536が1往復し、第1プランジャ孔507が、第1弁孔532と第1油路534とを介して第1油室530又は第2油室531に交互に連通されるように構成している。
一方、第2弁孔533に第2スプール弁540を挿入している。第2スプール弁540は、シリンダブロック505の回転中心の同一円周上に略等間隔に配列されている。第2弁孔533から背圧バネ力の弾圧にて第2スプール弁540の先端が第2ホルダ519の方向に突出し、第2スプール弁540の先端が第2ラジアル軸受541の外輪542側面に当接している。そして、シリンダブロック505の1回転で第2スプール弁540が1往復し、第2プランジャ孔516が、第2弁孔533と第2油路535とを介して、第1油室530又は第2油室531に交互に連通されるように構成している。
図9に示されるように、主変速入力軸27の中心部には、この軸線方向にチャージ用の作動油供給油路543を形成している。該供給油路543は、主変速入力軸27の後端面に開口され、上述した走行チャージ用油圧ポンプ95の吐出口に油路パイプ(図示省略)を介して連通されている。また、作動油供給油路543の作動油を第1油室530に補給する第1チャージ弁544と、作動油供給油路543の作動油を第2油室531に補給する第2チャージ弁545とを備えている。
即ち、第1及び第2プランジャ孔507,516と、第1及び第2油室530,531との間に形成される油圧閉回路に対し、第1及び第2チャージ弁544,545を介して、作動油供給油路543から作動油が補給されるように構成している。なお、油圧ポンプ部500及びモータ部501のそれぞれの回転部分にも、それぞれ逆止弁を介して、作動油供給油路543から作動油が潤滑油として供給されるように構成している。
さらに、第1ホルダ510の小径部の外周に、傾斜角調節支点555(図10参照)を介してポンプ斜板509を配置している。ポンプ斜板509は、その傾斜角が主変速入力軸27の軸線に対して調節自在となるように配置している。主変速入力軸27の軸線に対してポンプ斜板509の傾斜角を変更する変速用アクチュエータである主変速操作用の主変速油圧シリンダ556を備える(図10参照)。主変速油圧シリンダ556は、後側壁部材33に配置している。主変速油圧シリンダ556のピストンロッド557に主変速アーム558を連結している(図7参照)。傾斜角調節支点555に主変速アーム558を介してピストンロッド557を連結する。即ち、ピストンロッド557を作動させた場合、ポンプ斜板509の傾斜角が変更されて、無段変速機29の主変速動作が行われるように構成している。なお、主変速入力軸27に対して、ポンプ斜板509が回転しないように、ミッションケース17の後側壁部材33に、後述する防振体605等の連結手段を介して、第1ホルダ510が連結されている。
上述したインライン式の油圧無段変速機29の主変速動作を、以下に説明する。主変速操作具としての前進ペダル232または後進ペダル233(図2参照)の踏込み操作によって油圧シリンダ556が制御され、主変速入力軸27の軸線に対してポンプ斜板509の傾斜角が変更される。
先ず、主変速入力軸27の軸線に対してポンプ斜板509が略直交するように、ポンプ斜板509の傾斜角を略零に保つとき、シリンダブロック505が回転しても、第1プランジャ孔507にポンププランジャ506が進退動しない略一定姿勢で支持される。即ち、ポンププランジャ506の吐出行程で第1プランジャ孔507の作動油が第1油路534から第1弁孔532の方向に吐出されない。したがって、第1プランジャ孔507から第2プランジャ孔516に作動油が供給されず、モータプランジャ515が進出しない。また、ポンププランジャ506の吸入行程でも、第1プランジャ孔507に作動油が吸入されないから、第1プランジャ孔507に第2プランジャ孔516から作動油が排出されず、モータプランジャ515が退入しない。
即ち、ポンプ斜板509の傾斜角が略零の場合、変速ポンプ部500にて変速モータ501部が駆動されないから、モータプランジャ515を介してシリンダブロック505にモータ斜板518が固定された状態に維持される。したがって、シリンダブロック505とモータ斜板518とが同一方向に略同一回転数で回転し、主変速入力軸27と主変速出力軸36とが略同一回転数で回転され、主変速入力軸27の回転速度が変更されることなく主変速出力ギヤ37に伝えられる。
次に、主変速入力軸27の軸線に対してポンプ斜板509を傾斜させたときには、主変速入力軸27と一体回転するシリンダブロック505の回転により、第1ラジアル軸受537の外輪538にて第1スプール弁536が往復摺動し、シリンダブロック505の半回転毎に第1プランジャ孔507に第1油室530または第2油室531が交互に連通される。また、第2ラジアル軸受541の外輪542にて第2スプール弁540が往復摺動し、シリンダブロック505の半回転毎に第2プランジャ孔5016に第1油室530または第2油室531が交互に連通される。
そして、第1プランジャ孔507と第2プランジャ孔516の間に閉油圧回路が形成され、ポンププランジャ506の吐出行程で第1プランジャ孔507から第2プランジャ孔516に作動油が圧送される一方、ポンププランジャ506の吸入行程で第1プランジャ孔507に第2プランジャ孔516から作動油が戻され、アキシャルピストンポンプ及びモータの動作が行われる。
したがって、主変速入力軸27の軸線に対してポンプ斜板509を一方向(正の傾斜角)側に傾斜させたときには、シリンダブロック505と同一方向にモータ斜板518が回転され、変速モータ501を増速(正転)動作させ、主変速入力軸27より高い回転数で主変速出力軸36が回転され、主変速入力軸27の回転速度が増速されて主変速出力ギヤ37に伝えられる。即ち、主変速入力軸27の回転数に、変速ポンプ500にて駆動される変速モータ501の回転数が加算されて、主変速出力ギヤ37に伝えられる。そのため、高速で移動する耕耘作業(高負荷作業)等において、主変速入力軸27の回転数よりも高い回転数の範囲で、ポンプ斜板509の傾斜(正の傾斜角)に比例して、主変速出力ギヤ37からの変速出力(走行速度)が変更され、ポンプ斜板509の最大傾斜(正の傾斜角)で最大走行速度になる。
一方、主変速入力軸27の軸線に対してポンプ斜板509を他方向(負の傾斜角)側に傾斜させたときには、シリンダブロック505と逆の方向にモータ斜板518が回転され、変速モータ501を減速(逆転)動作させ、主変速入力軸27より低い回転数で主変速出力軸36が回転され、主変速入力軸27の回転速度が減速されて主変速出力ギヤ37に伝えられる。
即ち、主変速入力軸27の回転数に、変速ポンプ500にて駆動される変速モータ501の回転数が減算されて、主変速出力ギヤ37に伝えられる。そのため、低速で移動する耕耘作業(低負荷作業)等において、主変速入力軸27の回転数よりも低い回転数の範囲で、ポンプ斜板509の傾斜(負の傾斜角)に比例して、主変速出力ギヤ37からの変速出力(走行速度)が変更され、ポンプ斜板509の最大傾斜(負の傾斜角)で最低走行速度になる。
図6、図7を参照して、前進ギヤ41及び後進ギヤ43を介して行う前進と後進の切換構造を説明する。前記ミッションケース17の前室34には、前進と後進の切換を行う前進ギヤ41及び後進ギヤ43と、低速と高速の切換を行う走行副変速ギヤ機構30とを配置している。主変速出力ギヤ37が配置される前室34の内部には、走行カウンタ軸38と逆転軸39とを配置している。
図7に示されるように、走行カウンタ軸38には、前進用の湿式多板型油圧クラッチ40にて連結される前進ギヤ41と、後進用の湿式多板型油圧クラッチ42にて連結される後進ギヤ43とを被嵌している。主変速出力ギヤ37に前進ギヤ41を噛合している。主変速出力ギヤ37には、逆転軸39に設けた逆転ギヤ44を噛合している。後進ギヤ43には、逆転軸39に設けた逆転出力ギヤ45を噛合している。
したがって、前進ペダル232または前進スイッチ(図示省略)を前進操作した場合、前進油圧電磁弁46にてクラッチシリンダ47が作動して、前進用の油圧クラッチ40を継続し、主変速出力ギヤ37と走行カウンタ軸38とが前進ギヤ41にて連結されることになる(図6、図7参照)。
一方、後進ペダル233または後進スイッチ(図示省略)を後進操作した場合、後進油圧電磁弁48にてクラッチシリンダ49が作動して、後進用の油圧クラッチ42を継続し、主変速出力ギヤ37と走行カウンタ軸38とが後進ギヤ43にて連結されることになる(図6、図7参照)。
なお、前進ペダル232及び後進ペダル233が初期(中立)位置に維持されている場合(前進及び後進スイッチの両方がオフの場合)、前進用及び後進用の湿式多板型の各油圧クラッチ40,42の両方がともに切断され、前車輪3及び後車輪4に対して出力される主変速出力ギヤ37からの走行駆動力が略零(主クラッチ切の状態)になるように構成している。
次に、走行副変速ギヤ機構30を介して行う低速と高速との切換構造を説明する。図6及び図7に示されるように、ミッションケース17の前室34には、走行副変速ギヤ機構30と、副変速軸50とを配置している。走行カウンタ軸38と副変速軸50の間には、副変速用の低速ギヤ51,52と、副変速用の高速ギヤ53,54とを配置している。また、副変速油圧シリンダ55にて継続または切断される低速クラッチ56及び高速クラッチ57を備えている。
したがって、副変速レバー(図示省略)または低速及び高速用副変速スイッチ(図示省略)の操作、またはエンジン5の回転数検出等により、副変速油圧シリンダ55にて低速クラッチ56または高速クラッチ57が継続された場合、副変速軸50に低速ギヤ52または高速ギヤ54が連結され、副変速軸50から前車輪3及び後車輪4に対して走行駆動力が出力されることになる。
図6及び図7に示されるように、副変速軸50は、この後端部が中仕切り壁31を貫通してミッションケース17の後室35内部に延設されている(図6参照)。副変速軸50の後端部にはピニオン59を設けている。また、後室35の内部には、左右の後車輪4に走行駆動力を伝えるための後車輪用の差動ギヤ機構58を配置している。後車輪用の差動ギヤ機構58は、副変速軸50の後端のピニオン59に噛合させるリングギヤ60と、該リングギヤ60に設けた差動ギヤケース61と、左右の差動出力軸62とを備えている。後車軸64にファイナルギヤ63等を介して差動出力軸62を連結し、後車軸64に設けた後車輪4を駆動するように構成している。
図6に示されるように、左右の差動出力軸62には左右のブレーキ65をそれぞれ配置し、ブレーキペダル66を踏込み操作した場合、左右のブレーキ65が作動して後車輪4を制動することになる。なお、操縦ハンドル9の操舵角検出などにより、オートブレーキ電磁弁67によってブレーキシリンダ68が作動して、ブレーキ65を自動的に制動制御し、Uターン等の旋回走行を行えるように構成している。
次に、図6、図7を参照して、左右の前車輪3及び左右の後車輪4の二駆と四駆との駆動切換構造を説明する。ミッションケース17の前側壁部材32に前車輪駆動ケース69を固設している。前車輪駆動ケース69に、前車輪入力軸72と前車輪出力軸73とを備える。前車輪入力軸72は、ギヤ70,71を介して副変速軸50に連結している。また、前車輪出力軸73には、四駆用の油圧クラッチ74にて連結される四駆ギヤ75と、倍速用の油圧クラッチ76にて連結される倍速ギヤ77とを被嵌している。四駆ギヤ75及び倍速ギヤ77は、各ギヤ78,79を介して前車輪入力軸72に連結している。
したがって、二駆と四駆の切換レバー(図示省略)を四駆操作した場合、四駆油圧電磁弁80にてクラッチシリンダ81が作動して、四駆用の油圧クラッチ74を継続する。即ち、前車輪入力軸72と前車輪出力軸73とが四駆ギヤ75にて連結され、後車輪4とともに前車輪3が駆動されることになる。
次に、前車輪3の倍速駆動の切換動作を説明する。操縦ハンドル9のUターン(圃場の枕地での方向転換)操作の検出により、倍速油圧電磁弁82にてクラッチシリンダ83が作動して、倍速用の油圧クラッチ76を継続する。即ち、前車輪入力軸72と前車輪出力軸73とが倍速ギヤ77にて連結され、四駆ギヤ75にて前車輪3が駆動されるときの速度に比べて約2倍の高速度で前車輪3が駆動されることになる。
図6に示されるように、前車軸ケース13から後ろ向きに突出する前車輪入力軸84と、前記ミッションケース17の前面から前向きに突出する前車輪出力軸73との間を、前車輪3に動力を伝達する前車輪駆動軸85を介して連結する。また、前車軸ケース13の内部には、左右の前車輪3に走行駆動力を伝える前車輪用の差動ギヤ機構86が配置されている。
前車輪用の差動ギヤ機構86は、前車輪入力軸84の前端のピニオン87に噛合させるリングギヤ88と、該リングギヤ88に設けた差動ギヤケース89と、左右の差動出力軸90とを備える。差動出力軸90には、ファイナルギヤ91等を介して前車軸92を連結し、前車軸92に設けた前車輪3を駆動することになる(図6参照)。また、前車軸ケース13の外側面には、操縦ハンドル9の操舵操作にて前車輪3の走行方向を左右に変更するパワーステアリング用の油圧シリンダ93を配置している(図3参照)。
図6、図8に示されるように、ミッションケース17の前側壁部材32の前面側には、作業機用昇降機構20に作動油を供給するための作業機用油圧ポンプ94と、ミッションケース17の各変速部およびパワーステアリング用の油圧シリンダ93に作動油を供給するための走行チャージ用油圧ポンプ95とを備えている。油タンクとしてミッションケース17が併用されて、該ミッションケース17内の作動油が各油圧ポンプ94,95に供給されるように構成している。
次に、図6、図8、図12を参照して、PTO軸23の駆動速度の切換(正転4段と、逆転1段)構造を説明する。ミッションケース17の前室34には、エンジン5からの動力をPTO軸23に伝えるためのPTO変速ギヤ機構96を配置している(図8参照)。前車輪駆動ケース69には、エンジン5からの動力を各油圧ポンプ94,95に伝えるためのポンプ駆動軸97を配置している(図12参照)。
図8に示されるように、PTO変速ギヤ機構96には、PTOカウンタ軸98と、PTO変速出力軸99とを備えている。PTOカウンタ軸98に、PTO用の油圧クラッチ100を介して連結するPTO入力ギヤ101を被嵌している。PTO入力ギヤ101には、主変速入力軸27に設けた入力側ギヤ102と、ポンプ駆動軸97の出力側ギヤ103とを噛合し、主変速入力軸27にポンプ駆動軸97を連結している。
したがって、PTOクラッチレバーまたはPTOクラッチスイッチ(図示省略)をPTOクラッチ継続操作した場合、PTOクラッチ油圧電磁弁104(図6参照)にてクラッチシリンダ105を作動して、PTO用の油圧クラッチ100を継続し、主変速入力軸27とPTOカウンタ軸98とがPTO入力ギヤ101を介して連結されることになる。
また、PTO変速出力軸99には、PTO出力用として、1速ギヤ106と、2速ギヤ107と、3速ギヤ108と、4速ギヤ109と、逆転ギヤ110とを被嵌している(図6、図8参照)。
図6、図8に示されるように、PTO変速出力軸99には、スプラインにて移動自在に変速シフタ111を軸支している。各ギヤ106,107,108,109,110が、変速シフタ111を介してPTO変速出力軸99に択一的に連結されることになる。変速シフタ111には、PTO変速レバー(図示省略)に連結する変速アーム112を係合している。
したがって、PTO変速レバーを変速操作した場合、変速アーム112を介して、PTO変速出力軸99の軸線に沿って変速シフタ111が直線的に移動し、各ギヤ106,107,108,109,110のいずれかが択一的に選択されて、PTO変速出力軸99に連結される(図6、図8参照)。即ち、1速、2速、3速、4速、逆転の各PTO変速出力が、PTO伝動ギヤ113及びPTO出力ギヤ114を介して、PTO変速出力軸99からPTO軸23に伝えられることになる。
なお、図7において、逆転軸39に設ける回転検出ギヤ115と、主変速出力ギヤ37の回転数を検出する主変速ピックアップ116とを対向させて設置し、主変速機構である油圧無段変速機29の無段変速出力回転数が、主変速ピックアップ116にて検出されるように構成している。また、前車輪入力軸72のギヤ78の回転数を検出するための車速ピックアップ117を設置し、前車輪入力軸72及び副変速軸50の回転数に基づき、走行速度(車速)を車速ピックアップ117にて検出するように構成している。
次に、図5、図12、図13、図16を参照して、作業機用油圧ポンプ94及び走行チャージ用油圧ポンプ95及びサクションフィルタ220の取付構造を説明する。ミッションケース17の前部の外面に、低圧用油圧フイルタとしてのサクションフィルタ220、及び作業用油圧ポンプとしての作業機用油圧ポンプ94と操向チャージ用油圧ポンプ95とを配置する。
図5及び図12に示されるように、ミッションケース17の前面には、作動油をろ過するサクションフィルタ220が、フィルタブラケット221を介して固設されている。即ち、ミッションケース17の前部の前車輪駆動ケース69にフィルタ台座69aを形成し、フィルタ台座69aの外面にフィルタブラケット221を締結し、フィルタブラケット221にサクションフィルタ220を固設する。サクションフィルタ220は、ミッションケース17の前面の下部で、ミッションケース17の前方に突設している。
図12に示されるように、フィルタ台座69aの内面に前パイプ受け部69bを形成し、前パイプ受け部69bの接続孔69cに給油管222の一端側を嵌め込み、フィルタブラケット221の吸入孔221aと接続孔69cとを連通し、サクションフィルタ220にフィルタブラケット221を介して給油管222の一端側を連通している。ミッションケース17の前側壁部材32の壁孔32aに給油管222の中間を貫通する。ミッションケース17の中仕切り壁31に後パイプ受け部31aを形成し、後パイプ受け部31aに給油管222の他端側を嵌め込み、ミッションケース17の後室35内に給油管222の他端側を連通している。即ち、後室35の内部の低位置に、後パイプ受け部31aの連通孔31bを介して、給油管222の他端側を連通し、サクションフィルタ220に給油管222を介して後室35の底部の作動油を供給することになる。
図12及び図16に示されるように、ミッションケース17の前部の前車輪駆動ケース69にポンプ台座69dを形成し、ポンプ台座69dの外面に操向チャージ用油圧ポンプ95を締結し、操向チャージ用油圧ポンプ95の前側面に作業機用油圧ポンプ94を固着し、ポンプ台座69dに、作業機用油圧ポンプ94及び操向チャージ用油圧ポンプ95を略直列状に固設する。作業機用油圧ポンプ94及び操向チャージ用油圧ポンプ95は、ミッションケース17の前面の下部で、ミッションケース17の前方に突設している。
図12及び図16に示されるように、フィルタブラケット221の油取出口221bにサクションホース224の一端側を連結し、作業機用油圧ポンプ94の吸入口及び走行チャージ用油圧ポンプ95の吸入口に、サクションホース224の二又形の他端側を連結している。即ち、サクションフィルタ220には、サクションホース224を介して、作業機用油圧ポンプ94及び走行チャージ用油圧ポンプ95を連通している。したがって、作業機用油圧ポンプ94及び走行用油圧ポンプ95には、サクションフィルタ220を介して、ミッションケース17の後室35の底部の作動油が供給されることになる(図12参照)。
図16に示されるように、サクションホース224は、正面視で山形に折り曲げられて、サクションホース224の両端側よりサクションホース224の中間部が高くなるように形成している。上述した前車輪出力軸73の略真上にサクションホース224の中間部を配置し、進行方向に向かって前車輪出力軸73の右側方に、サクションフィルタ220を配置する。また、進行方向に向かって前車輪出力軸73の左側方に、作業機用油圧ポンプ94及び走行用油圧ポンプ95を配置する。サクションフィルタ220と、作業機用油圧ポンプ94及び走行用油圧ポンプ95とは、前車輪出力軸73を挟んで、その左右両側方に振り分けて設置される。即ち、サクションフィルタ220と、作業機用油圧ポンプ94及び走行用油圧ポンプ95とは、左右の機体フレーム16の間で、ミッションケース17の前面側の低い位置で、略横一列状に配置される。
したがって、ミッションケース17の前面の低い位置から前車輪出力軸73を介して前車輪3への駆動力を取出すことができる。且つ、後室35の底部と、給油管222と、サクションフィルタ220と、作業機用油圧ポンプ94及び走行用油圧ポンプ95の吸入口との高低差を小さくして、作業機用油圧ポンプ94及び走行用油圧ポンプ95の吸入負圧を低減できる。また、例えばミッションケース17の内部または側部の外面にサクションフィルタ220を配置した構造に比べ、サクションフィルタ220側の油取出口と、作業機用油圧ポンプ94及び走行用油圧ポンプ95の吸入口とを近接して配置でき、サクションホース224を短尺に形成して、作業機用油圧ポンプ94及び走行用油圧ポンプ95の吸入負圧を低減できる。即ち、ミッションケース17の前面側を有効に利用して、前車輪出力軸73と、サクションフィルタ220及び作業機用油圧ポンプ94及び走行用油圧ポンプ95とをコンパクトに且つ機能的に組み込むことになる。
図6、図11、図12、図16に示されるように、走行機体2に搭載されたエンジン5からの動力を変速するミッションケース17と、ミッションケース17の左右の外面に連結する左右の機体フレーム16とを備えてなる作業車両において、ミッションケース17の前部の外面に、エンジン5からの動力によって駆動する作業用油圧ポンプとしての作業機用油圧ポンプ94及び走行用油圧ポンプ95と、該作業機用油圧ポンプ94及び走行用油圧ポンプ95の吸入側にサクションホース224を介して接続するサクションフィルタ220とを配置しているものであるから、作業機用油圧ポンプ94及び走行用油圧ポンプ95とサクションフイルタ220とを接近させて、サクションホース224を短く形成でき、作業機用油圧ポンプ94及び走行用油圧ポンプ95の吸入負圧を低減できる。ミッションケース17の左右外方に作業機用油圧ポンプ94及び走行用油圧ポンプ95またはサクションフイルタ220を突出させないから、例えばプラウ等を用いた耕耘作業等において、土押しによる作業機用油圧ポンプ94及び走行用油圧ポンプ95またはサクションフイルタ220の損傷を防止できる。作業機用油圧ポンプ94及び走行用油圧ポンプ95及びサクションフイルタ220をミッションケース17の仕組みの一部として構成できるから、ミッションケース17に作業機用油圧ポンプ94及び走行用油圧ポンプ95及びサクションフイルタ220を組付けた状態で、機体フレーム16にミッションケース17を着脱できる。
図12に示されるように、サクションフィルタ220に給油管222の一端側を接続し、ミッションケース17内の後部のリヤアクスル室としての後室35に給油管222の他端側を接続し、サクションフィルタ220に後室35内の作動油を供給可能に構成しているものであるから、作業機用油圧ポンプ94及び走行用油圧ポンプ95に、サクションフイルタ220を介して、変速ギヤ(副変速ギヤ機構30等)の近傍等よりも空気の混入が少ない後室35の底部の作動油を供給でき、作業機用油圧ポンプ94及び走行用油圧ポンプ95の空気の吸込みによる効率低下を簡単に防止できる。
図12に示されるように、ミッションケース17の前蓋体としての前車輪駆動ケース69に給油管222の一端側を連結し、後室35を形成するミッションケース17内の隔壁としての中仕切り壁31に給油管222の他端側を連結しているものであるから、ミッションケース17の一部である前車輪駆動ケース69及び中仕切り壁31を利用して、ミッションケース17内に給油管222を簡単に組付けることができる。したがって、記ミッションケース17に給油管222を固着するための特別な部品が不要になる。また、給油管222に関係なく、ミッションケース17にサクションフィルタ220を着脱できるから、一定期間毎に交換する必要があるサクションフィルタ220の組立作業性及びメンテナンス作業性等を向上できる。
図7、図12に示されるように、中仕切り壁31の前方のミッションケース17内に、副変速ギヤ機構30及びPTO変速ギヤ機構96を配置し、後室35内に後車輪用の差動ギヤ機構58及び油圧無段変速機29を配置しているものであるから、後室35内の高所側に後車輪用の差動ギヤ機構58及び油圧無段変速機29を配置して、後室35内の底部側の大きな空間に給油管222の吸込み側を連通できる。したがって、作業機用油圧ポンプ94及び走行用油圧ポンプ95に、給油管222を介して、ミッションケース17内の空気の混入が少ない作動油を供給できる。
図13、図16に示されるように、左右の機体フレーム16の間で、ミッションケース17の前面から前方に突出した前車輪出力軸73の左右両側方に、作業機用油圧ポンプ94及び走行用油圧ポンプ95とサクションフィルタ220とを配置しているものであるから、左右の機体フレーム16の間に形成されるミッションケース17の前方の空間を有効に活用して、作業機用油圧ポンプ94及び走行用油圧ポンプ95及びサクションフィルタ220をコンパクトに設置できる。ミッションケース17の前面の低位置に作業機用油圧ポンプ94及び走行用油圧ポンプ95を設置できるから、作業機用油圧ポンプ94及び走行用油圧ポンプ95の吸入負圧を小さくでき、作業機用油圧ポンプ94及び走行用油圧ポンプ95及びサクションフィルタ220にミッションケース17内の作動油を充分に供給でき、空気の吸込みによる作業機用油圧ポンプ94及び走行用油圧ポンプ95の効率低下等を防止できる。
次に、図9、図12、図17乃至図19を参照して、上述した油圧無段変速機29の防振構造を説明する。図9及び図12、図17に示されるように、油圧無段変速機29における主変速入力軸27のエンジン5からの動力入力側は、前側玉軸受502を介して、ミッションケース17aの中仕切り壁31に軸支されている。また、エンジン5からの動力入力側と反対側の主変速入力軸27の後端側は、後側玉軸受504を介して、ミッションケース17の後蓋体としての後側壁部材33に回転自在に軸支されている。
図17乃至図19に示されるように、上述した後側壁部材33は、ミッションケース本体17aの後側の外面に、ボルト601と位置決めピン602によって、主変速入力軸27の軸芯線の延長方向に着脱可能に締結する。また、上述した油圧無段変速機29における第1ホルダ510の後面にネジ孔603を形成する。第1ホルダ510の後方からネジ孔603に螺着する防振ボルト604に略円筒形の防振体605を着脱可能に被嵌する。防振体605は、防振ボルト604に被嵌する内側筒体605aと、後側壁部材33の前向き開口状の袋孔形の嵌合孔606に着脱可能に嵌め込む外側筒体605bと、内側筒体605a及び外側筒体605bの間に焼結固着した防振ゴム605cとからなる。即ち、第1ホルダ510の後面に複数の防振体605を配置し、後側壁部材33の内面に複数の防振体605を介して第1ホルダ510の後面を連結することになる。
図17に示されるように、第1ホルダ510を被嵌した主変速入力軸27の軸芯線に対して防振ボルト604を略平行に配置する。図18に示されるように、主変速入力軸27の軸芯線を挟んだ略対称位置で、主変速入力軸27の軸芯線を中心とする同一円周上に、二組4体の防振体605を配置している。二組の防振体605は、主変速入力軸27の軸芯とPTO軸23の軸芯とを結ぶ直線を挟んで略対称位置に配置される。即ち、後側壁部材33の内面(前面)に開口した複数の嵌合孔606に、主変速入力軸27の軸芯線の延長方向に着脱可能に防振体605がそれぞれ嵌め込まれる。したがって、油圧無段変速機29の入力側とその反対側とは前側玉軸受502及び後側玉軸受504を介してミッションケース17に軸支されて、油圧無段変速機29の重量は各玉軸受502,504を介してミッションケース17に支持されるから、防振体605は、油圧無段変速機29の回転モーメントのみを受けて、油圧無段変速機29の回転振動がミッションケース17に伝播するのを阻止することになる(図19参照)。
次に、図17及び図19を参照して、ミッションケース17と油圧無段変速機29とを防振体605にて連結する組立作業を、以下に説明する。先ず、主変速入力軸27に油圧無段変速機29を組付け、第1ホルダ510に、防振体605を被嵌した防振ボルト604を螺着し、第1ホルダ510に防振体605を締結する(図19参照)。そして、ミッションケース本体17a内に、油圧無段変速機29を被嵌した主変速入力軸27を組み込み、ミッションケース本体17aの後面に位置決めピン602を介して後側壁部材33を連結し、ミッションケース本体17aの後面にボルト601によって後側壁部材33を締結し、ミッションケース17と油圧無段変速機29とを防振体605にて連結する組立作業を完了する(図17参照)。
図8、図12、図17に示されるように、走行機体2に搭載されたエンジン5からの動力を変速する油圧無段変速機29と、該油圧無段変速機29を内蔵したミッションケース17とを備え、エンジン5からの動力を伝える主変速入力軸27上に油圧無段変速機29を配置してなる作業車両において、ミッションケース17に、前側玉軸受502及び後側玉軸受504を介して、主変速入力軸27の動力入力側と、その反対側とをそれぞれ軸支し、ミッションケース17に、油圧無段変速機29の回転モーメントのみを受けるための防振体605を介して、油圧無段変速機29を連結しているものであるから、ミッションケース17への油圧無段変速機29の回転モーメントの伝播を低減でき、ミッションケース17の機械振動を簡単に防止でき、ミッションケース17の防振性及び防音性を向上できる。また、油圧無段変速機29の重量は、前側玉軸受502及び後側玉軸受504によって受けられるから、防振体605によって油圧無段変速機29の重量を受ける必要がなく、防振体605を小形に構成できる。
図17、図18、図19に示されるように、油圧無段変速機29に防振体605を配置し、ミッションケース17の嵌合部としての嵌合孔606に、主変速入力軸27の軸芯線方向に着脱可能に、防振体605を嵌め込んでいるものであるから、主変速入力軸27に油圧無段変速機29及び防振体605を組付けて単一のユニット構造体として構成でき、ミッションケース17及び油圧無段変速機29等の組立及び分解作業性を向上できる。
図7、図8、図12に示されるように、油圧無段変速機29は油圧ポンプ部500及び油圧モータ部501を有し、油圧モータ部501の斜板ホルダとしての第2ホルダ519に主変速出力軸36を連結し、ミッションケース17の後蓋体としての後側壁部材33と、油圧ポンプ部500の斜板ホルダとしての第1ホルダ510とを、防振体605によって連結しているものであるから、例えばミッションケース17の前部に、副変速ギヤ機構30、及びPTO変速ギヤ機構96、及び前車輪駆動ギヤ機構としての四駆ギヤ75及び倍速ギヤ77等を内蔵し、且つミッションケース17の後部に油圧無段変速機29及び後車輪用の差動ギヤ機構等を内蔵するように構成できる。したがって、ミッションケース17内の後部に油圧無段変速機29用のスペースを簡単に確保でき、ミッションケース17の後側方から油圧無段変速機29を簡単な作業手順で組付けることができ、油圧無段変速機29及び防振体605のメンテナンス作業性等を向上できる。
次に、図5、図12、図13、図17及び図18を参照して、上述したPTO軸23及びPTO出力ギヤ114の取付け構造を説明する。図12及び図17に示されるように、ミッションケース17内の後部の底面にPTO軸受壁615を立設し、PTO軸受壁615に玉軸受616を介してPTO軸23の前端側を軸支し、後側壁部材33に玉軸受617を介してPTO軸23の中間部を軸支し、各玉軸受616,617の間のPTO軸23に、スプライン23aを介してPTO出力ギヤ114を被嵌する。即ち、PTO出力ギヤ114の軸孔にPTO軸23を貫通させて、後側壁部材33に玉軸受617を介してPTO軸23の中間部を軸支してから、ミッションケース17の後部にボルト601によって後側壁部材33を締結し、後側壁部材33とPTO軸受壁615とにPTO軸23を回転可能に軸支し、ミッションケース17の後側方にPTO軸23の後端側を突出している。
図12及び図17に示されるように、後側壁部材33とPTO軸受壁615とに、玉軸受618,619を介して、PTO変速出力軸99の後端側を軸支する。各玉軸受618,619の間のPTO変速出力軸99に、スプライン99aを介してPTO伝動ギヤ113を被嵌する。PTO変速出力軸99に、PTO伝動ギヤ113及びPTO出力ギヤ114を介して、PTO軸23を連結する。したがって、エンジン5からの動力が、ミッションケース17内の前部のPTO変速ギヤ機構96及びPTO変速出力軸99を介して、PTO軸23に伝達されることになる。
図17及び図18に示されるように、PTO伝動ギヤ113にPTO出力ギヤ114を常時噛合させた状態で、上述した油圧無段変速機29の第1ホルダ510と、ミッションケース17の後蓋体としての後側壁部材33との間に、PTO出力ギヤ114が配置される。即ち、油圧無段変速機29と後側壁部材33との間にPTO出力ギヤ114の一部を入り込ませ、油圧無段変速機29とPTO出力ギヤ114とを、一定幅寸法Dr重複させる。したがって、油圧無段変速機29の後部の最下部よりもPTO出力ギヤ114の最上部が高く形成され、油圧無段変速機29の後面側に、PTO出力ギヤ114の前面側を、油圧無段変速機29の軸芯線方向視で一定幅寸法Drだけ、ラップさせることになる。
上記のように構成したことにより、油圧無段変速機29の下部(油圧無段変速機29の外径の外側)に、油圧無段変速機29との干渉を避けるように、PTO出力ギヤ114を配置した従来構造に比べ、油圧無段変速機29によってPTO軸23の取付け高さが制限されない。即ち、油圧無段変速機29及びPTO出力ギヤ114の左右方向の設置幅を略一定に維持した状態で、油圧無段変速機29とPTO軸23との上下方向の軸間距離を短く形成し、ミッションケース17の最底部に対してPTO軸23の設置高さを高くできる。したがって、ミッションケース17の左右方向の幅を拡大することなく、油圧無段変速機29及び差動ギヤ機構58を内蔵したミッションケース17の後部の高位置にPTO軸23を配置できる。
一方、図5に示されるように、ミッションケース17に内蔵した差動ギヤ機構58の差動出力軸62より高位置に、油圧無段変速機29を配置する。即ち、ミッションケース17内の作動油の油面より高い位置に油圧無段変速機29が配置される。また、図13に示されるように、平面視で、油圧無段変速機29と、差動ギヤ機構58との間に、PTO軸23を配置する。即ち、ミッションケース17内の後部の上方に、油圧無段変速機29の設置に必要なスペースを、差動ギヤ機構58に制限されることなく形成できる。
上記の記載及び図12、図17、図18から明らかなように、走行機体2に搭載されたエンジン5からの動力を変速する油圧無段変速機29と、該油圧無段変速機29を内蔵したミッションケース17とを備え、ミッションケース17の後側方にPTO軸23を突出してなる作業車両において、PTO軸23上に、PTO変速ギヤ機構96からの動力を伝えるPTO出力ギヤ114を配置し、油圧無段変速機29の入力側と反対の側部の最下部よりもPTO出力ギヤ114の最上部を高く形成し、油圧無段変速機29の軸芯線方向視で、油圧無段変速機29とPTO出力ギヤ114とを重複させたものであるから、油圧無段変速機29によってPTO軸23の取付け高さが制限されない。したがって、ミッションケース17の高い位置にPTO軸23を簡単に配置できるから、ミッションケース17の上下幅寸法をコンパクトに構成できる。また、PTO軸23、またはPTO軸23に連結する自在継ぎ手付き伝動軸(図示省略)等の対地高さを高くして藁草の巻き付き等を低減できる。
上記の記載及び図12、図17、図18から明らかなように、ミッションケース17の後蓋体としての後側壁部材33と、油圧無段変速機29の入力側と反対の後端側との間に、PTO出力ギヤ114を配置しているものであるから、油圧無段変速機29と後側壁部材33との間に、PTO出力ギヤ114を設置するためのスペースを簡単に確保できる。後側壁部材33にPTO軸23を配置した場合、後側壁部材33の脱着により、油圧無段変速機29及びPTO軸23を、ミッションケース17の後側方に脱着できる。したがって、ミッションケース17の組立作業性及び油圧無段変速機29のメンテナンス作業性等を向上できる。
上記の記載及び図13から明らかなように、平面視で、油圧無段変速機29と、差動ギヤ機構58との間に、PTO軸23を配置しているものであるから、ミッションケース17内の後部の上方に、油圧無段変速機29の設置に必要なスペースを、差動ギヤ機構58に制限されることなく確保できる。即ち、PTO軸23を挟んで差動ギヤ機構58と反対側のミッションケース17内のスペースを有効に利用するから、ミッションケース17内の高位置に油圧無段変速機29を簡単に配置できる。したがって、PTO軸23もミッションケース17の高位置に簡単に配置できる。
上記の記載及び図5から明らかなように、ミッションケース17に内蔵した差動ギヤ機構58の差動出力軸62よりも高位置に、油圧無段変速機29を配置しているものであるから、ミッションケース17内の作動油の油面よりも高い位置に油圧無段変速機29を配置でき、油圧無段変速機29の回転によってミッションケース17内の作動油が殆ど撹拌されない。したがって、油圧無段変速機29の動力伝動損失を低減でき、且つミッションケース17内の作動油の温度上昇等を防止できる。また、例えば、トラクタ1の伝動構造のように、ミッションケース17の内部に、走行副変速ギヤ機構30及び差動ギヤ機構58及びPTO変速ギヤ機構96等を設置するものであっても、ミッションケース17の後部に油圧無段変速機29の設置スペースを簡単に確保できる。また、差動ギヤ機構58がミッションケース17の後部に組み込まれた状態で、油圧無段変速機29の着脱作業を実行できる。また、油圧無段変速機29の入力側であるミッションケース17の前部にPTO変速ギヤ機構96または走行副変速ギヤ機構30等の設置スペースを確保でき、例えばトラクタ1のミッションケース17等を小型化または軽量化でき、製造コストを低減できる。