JP2007123207A - 電池用電極の評価方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】容易且つ簡便に、活物質の状態変化を高空間分解能で観察・評価し得る電池用電極の評価方法を提供すること。
【解決手段】イオンビームの照射によって電極表面をその厚さ方向に堀削して、堀削面における活物質層の走査イオン顕微鏡(SIM)像を観察し、観察されたSIM像における活物質のコントラストに基づき電極の性能を評価する。前記電極は、リチウム二次電池又はニッケル−水素二次電池の負極であることが好ましい。特に前記負極は、活物質の粒子を含み且つ該粒子間にリチウム化合物の形成能の低い金属材料が析出してなる活物質層を有しているリチウム二次電池用負極であることが好ましい。
【選択図】図7
【解決手段】イオンビームの照射によって電極表面をその厚さ方向に堀削して、堀削面における活物質層の走査イオン顕微鏡(SIM)像を観察し、観察されたSIM像における活物質のコントラストに基づき電極の性能を評価する。前記電極は、リチウム二次電池又はニッケル−水素二次電池の負極であることが好ましい。特に前記負極は、活物質の粒子を含み且つ該粒子間にリチウム化合物の形成能の低い金属材料が析出してなる活物質層を有しているリチウム二次電池用負極であることが好ましい。
【選択図】図7
Description
本発明は電池用電極の評価方法に関し、更に詳しくは充放電に起因する活物質の状態変化を可視化することで電池用電極の性能を評価する方法に関する。
二次電池の正負極が充放電によってどのような状態変化を起こすかを知ることは、電極開発や電池開発において重要なポイントとなる。二次電池の一種として注目されているリチウム二次電池においても、充放電に起因してリチウムイオンがどのように挙動するかを、正負極の状態変化を通じて知ることは重要である。リチウム二次電池においては、充放電によってリチウムイオンが正負極間を移動する。従って、充放電に起因する正負極の状態変化は、正負極の活物質におけるリチウムイオンの吸蔵・放出状態の変化が主たるものとなる。
リチウム二次電池の活物質がリチウムイオンを吸蔵・放出する状態を直接観察する技術としては、中性子線を用いたラジオグラフィー(断層撮影)による非破壊観察が知られている(例えば非特許文献1参照)。しかし中性子発生源を有する施設は限られているので、この観察は誰もが簡単に観察できる手法とは言えない。また空間分解能が充分に高いとは言えないので、粒子レベルでの活物質の状態変化を観察することが容易でない。
N. Kamata, T. Esaka, S. Fujine, K. Yoneda, K. Kanda. "Lithium Batteries: Application of Neutron Radiography to the Study of Lithium Batteries", Journal of Power Sources, Vol. 68, No. 2, pp. 459-462, 1997
従って本発明の目的は、容易且つ簡便に、活物質の状態変化を高空間分解能で観察・評価し得る電池用電極の評価方法を提供することにある。
本発明は、イオンビームの照射によって電極表面をその厚さ方向に堀削して、堀削面における活物質層の走査イオン顕微鏡(SIM)像を観察し、観察されたSIM像における活物質のコントラストに基づき電極の性能を評価する電池用電極の評価方法を提供することにより前記目的を達成したものである。
また本発明は、イオンビームの照射によってリチウム二次電池用負極表面をその厚さ方向に堀削して、堀削面における活物質層の走査イオン顕微鏡(SIM)像を観察し、観察されたSIM像における活物質のコントラストに基づき該活物質におけるリチウムイオンの吸蔵状態を評価するリチウム二次電池用負極の評価方法を提供するものである。
本発明によれば、イオンビームの照射装置とSIM装置と組み合わせて用いているので、容易に且つ簡便に活物質の状態変化を可視化することができる。またこれらの装置により得られる観察像は空間分解能が高いので、粒子レベルで物質の状態変化を可視化することができる。更に本発明によれば、中性子源のような放射線源を用いないので、操作を安全に行うことができる。
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき説明する。本発明の最も特徴とするところは、測定対象物にイオンビームを照射して掘削を行い、掘削の観察にSIMを用いる点にある。イオンビームの照射には、例えば汎用的な機器であるFIBを用いることができる。尤も、イオンビームの照射を行うためには、この機器を用いることに制限されない。
FIBは集束イオンビーム加工装置の略である。FIBは、微細なビーム径のGaイオンビームを試料に照射することによって試料を掘削し、任意の形状に加工する装置である。Gaイオンは金属ガリウムの蒸気から生成させる。Gaイオンは数十keVの電圧で加速されてビームとなる。加速されたGaイオンが試料の原子をはじきとばすことで試料が削られる。Gaイオンのビームは、直径数nmまで絞ることができるので、試料を数nmの精度で加工することが可能である。FIBによれば、非常に平坦な加工面が得られ、また像を観察しながら加工部位を特定できる。従ってFIBは電極の断面を観察する試料の作製に好適な装置である。
FIBのもう一つの特徴として、加工する部分を観察しながら加工が行なえる点が挙げられる。Gaイオンビームを照射することで発生する二次電子を画像化することで、試料を数百〜数十万倍で観察することが可能となる。このようにして得られた像が走査イオン顕微鏡(SIM:Scanning Ion Microscopy)像である。FIBによるSIM像観察によれば、結晶方位に依存するチャネリング効果に起因して、材質の違いだけでなく、結晶子の大きさや方位等の違いも観察できる。
以上の各特徴を有することから、FIB−SIMにおいては、試料をその表面から掘り込んで観察用の断面を作製した後、該試料を所定角度に傾け、そのままFIBで該断面を観察することができる。従って、現在入手可能なFIB−SIMは、FIBとSIMとが一体化した装置でありことが一般的であり、そのような装置は材料分析の分野において汎用的に用いられている。
イオンビームの照射は、前述のFIBの他に、遮蔽板を介してアルゴンイオンを垂直に照射する装置を用いて行うこともできる。この装置の概略を図1に示す。図1に示す装置においては、真空チャンバ内で、アルゴンガンGから発生するArイオンビームを2〜10kVに加速して入射角90度で、即ち垂直方向から試料Sに照射し、表面の原子をはじきとばすことで試料が削られる。アルゴンガンGと試料Sとの間には遮蔽板Bが設置されている。遮蔽板Bは、イオンビームのうち強度の弱い周縁部のビームを遮蔽して、中心部の強度の強い部分を選択的に試料Sに照射させるために用いられる。先に説明したFIBと比較して、本装置は試料への損傷が少なく、また広い面積を掘削できるという利点がある。イオンビームの照射に本装置を用いるかFIBを用いるかは、評価対象である電極の構造や材質等に応じ適宜選択すればよい。
図2には、本発明の一例として、イオンビームの照射にFIBを用いた試料の作製方法及び観察方法が示されている。なお図2においては試料を側方からみた状態が示されている。図中に示される試料において、左側が観察方向の手前側になり、右側が観察方向の奥側になる。まず、図2(a)に示すように、観察対象となる電極10を用意し、その表面に保護膜11を形成する。保護膜11は一般にカーボンから形成されている。本実施形態においては、観察対象である試料が二次電池用負極という特殊なものであることに起因して、Gaイオンのビーム電流を通常の場合よりも高くする必要がある。そこで保護膜11は、通常場合よりもその厚みを大きくすることが好ましい。これによって、Gaイオンのビーム電流を高くすることに起因して観察面がダメージを受けることを抑制できる。この観点から、保護膜11の厚みは0.2〜5μm、特に0.5〜3μmであることが好ましい。カーボンからなる保護膜11は例えば、試料表面に有機ガス(C)をノズルから吹きつけながらGaイオンビームを照射して任意の形状に成膜するデポジション機能によって形成することができる。
保護膜11の厚みについては前述の通りであり、また保護膜11の大きさについては、観察方向から見た幅が10〜100μm、特に20〜60μmであることが好ましく、観察方向から見た奥行きが1.5〜20μm、特に3〜10μmであることが好ましい。
次に図2(b)に示すように、保護膜11に対して観察方向の手前側(図中における左側)の位置において、電極10の表面にGaイオンビームを照射し電極10を掘削する。先に述べた通り、ビーム電流は通常の場合よりも高くする必要がある。具体的には5000〜10000pA、特に6000〜8000pAとすることが好ましい。図2(b)に示す工程は粗削りの工程であることから、Gaイオンビームのビーム径を比較的太くして掘削速度を高めることが有利である。この観点からビーム径は0.1〜0.5μm、特に0.3〜0.4μmとすることが好ましい。ビーム径は、FIB−SIMに備えられているコンデンサレンズや絞りの開度を調整することでコントロールできる。
掘削する面積は、電極10をどの程度の深さまで掘削するかとの関係で決定される。例えば観察面を60度傾けて観察する場合を考えると、一般に、観察方向から見た奥行きは、掘削する深さの2倍程度必要である。従って掘削する深さを10〜100μm程度と考えた場合、観察方向から見た掘削領域D(図2(b)参照)の奥行きは20〜250μm、特に50〜250μmであることが好ましい。一方、観察方向から見た掘削領域の幅には特に制限はないが、当該幅が大きすぎると掘削に過大な時間がかかることから、20〜75μm、特に20〜60μmであることが好ましい。
掘削領域Dにおける手前側の掘削が或る程度進行したら、次に図2(c)に示すように掘削領域Dの奥側を、図2(b)と同様に掘削する。Gaイオンビームの照射条件は図2(b)と同様とすることができる。本工程も図2(b)に示す工程と同様に粗削りの工程である。掘削は図2(c)に示すように、掘削領域Dにおける手前側から奥側に向けて掘削深さが漸次深くなるように行う。
図2(b)及び図2(c)に示すように、掘削領域Dの掘削を手前側と奥側とで二段階に分けて行うのは、掘削時間を短縮化するためである。通常のFIB加工では、図21に示すように、掘削領域Dの全体を一回の操作ですべて掘削するので、掘削に長時間を要していた。
このようにして掘削領域Dの粗削りが完了したら、図2(d)に示すように観察面12の仕上げ掘削を行う。仕上げ掘削はGaイオンビームのビーム径を絞って行い観察面を平滑化する。ビーム径は0.01〜0.2μm、特に0.05〜0.1μmであることが好ましい。
仕上げ掘削においてはビーム径を絞るものの、ビーム電流は通常の仕上げ掘削の場合よりも高くすることが好ましい。通常の仕上げ掘削では1000pA程度の低ビーム電流でGaイオンを照射するが、この程度の低ビーム電流を用いると、削りかすが細かくなって観察面に付着しやすくなる。特に測定対象として、後述する図3に示す電極を用いた場合には、活物質の粒子間に削りかすが一層付着しやすくなる。また低ビーム電流で仕上げ掘削を行うと、掘削時間が長くなることに起因して削りかすの飛散が甚だしくなり、それによっても削りかすの付着量が増加してしまう。これらの観点から、電極を測定対象とする本実施形態においては、仕上げ掘削におけるGaイオンのビーム電流を、通常よりも高いレベルである700〜3500pA、特に1000〜2000pAとすることが好ましい。またこの範囲のビーム電流とすることによって、掘削時間の短縮化も図れる。なおビーム電流の上限値は、保護膜11が損傷を受けないようにする観点から決定される。
仕上げ掘削によって形成される観察面12は、保護膜11の端部11aから若干奥の位置に形成されることが、(1)表面凹凸による断面へのスパッタ痕の影響を軽減する観点、及び(2)リデポジション(掘削試料屑の再付着)除去の観点から好ましい。具体的には、観察面12は保護膜11の端部11aから0.5〜10μm、特に1〜6μm奥の位置に形成されることが好ましい。
以上のようにして、電極10に観察面12が形成される。次に観察面12のSIM像を得る。この目的のために、図2(e)に示すように電極10の全体を時計回りの方向に傾斜させる。傾斜角度θに特に制限はないが、60度以下、特に45〜60度とすることが、観察面12の深部まで観察が可能になる点から好ましい。
電極10を所定の傾斜角度に傾斜させた状態下に、観察面12に向けてGaイオンのビームを照射し二次電子を発生させる。Gaイオンの照射は観察面12の掘削を目的とするものではなく、二次電子を発生させることを目的とするので、ビーム電流は掘削の場合に比較して低レベルとすることができる。具体的には、50〜200pA、特に70〜100pAとすることが好ましい。
発生した二次電子を検出することでSIM像が得られる。SIM像は、物質の組成、結晶子の配向性、結晶子のサイズ、結晶構造などに応じてコントラストが異なる。このコントラストに基づき電極10の性能を評価することができる。具体的な評価方法は後述する。
以上の説明は、イオンビームの照射にFIBを用いた場合の例であるが、既に述べた通り、本発明ではFIB以外の装置、例えば図1に示す装置を用いてイオンビームを照射することができる。なお図1に示す装置を用いる場合、一般に該装置とSIMとは別体の装置になっていることが多いので、該装置によって掘削された試料を一旦該装置から取り出した後にSIMに装填する操作が必要になる。該装置とSIMが一体になっている装置ではそのような操作は不要である。
次に、本発明の観察対象となる電極について説明する。本発明の観察対象となる電極は、電池用の電極であればその種類に特に制限はなく、一次電池の電極及び二次電池の正負極を観察対象とすることができる。特に二次電池の電極は、充放電に起因する活物質の状態変化が大きいので、これを観察対象とすることは、二次電池の電極の開発、ひいては二次電池の開発に極めて有利である。
二次電池としては例えばリチウム二次電池やニッケル−水素(Ni−MH)二次電池が好適なものとして挙げられる。特にこれらの電池の負極はリチウムイオンや水素の吸蔵・放出に起因する状態変化が著しいので、観察の対象として好適なものである。なお、リチウム二次電池は、当該技術分野において最も広い意味に解釈されるものであり、例えばリチウムイオン二次電池と呼ばれる電池も広義のリチウム二次電池に包含される。
図3には、本発明の評価対象の一例であるリチウム二次電池用の負極の構造が模式的に示されている。図3に示す負極10は、集電体1と、その各面に形成された活物質層2とを備えている。活物質層2は、活物質の粒子3を含んでいる。活物質層2においては、隣り合う粒子3の間に、リチウム化合物の形成能の低い金属材料4が析出している。活物質層2の表面は、薄い表面層5によって実質的にその全面が被覆されている。
活物質層2に含まれる活物質の粒子3はシリコン又はシリコン系合金などのシリコン系材料、スズ又はスズ系合金などのスズ系材料、ゲルマニウム又はゲルマニウム合金などのゲルマニウム系材料が挙げられる。特に高容量の材料であるシリコン系材料が好ましい。粒子3の粒径はD50値で表すと0.1〜8μm、特に0.3〜2μmであることが好ましい。
粒子3間に析出している金属材料4は、リチウム化合物の形成能の低いものである。「リチウム化合物の形成能が低い」とは、リチウムと金属間化合物若しくは固溶体を形成しないか、又は形成したとしてもリチウムが微量であるか若しくは非常に不安定であることを意味する。リチウム化合物の形成能の低い金属材料としては銅、ニッケル、鉄、コバルト又はこれらの金属の合金などが挙げられる。
活物質層2における活物質の粒子3の間は、リチウム化合物の形成能の低い金属材料4で完全に満たされているのではなく、該粒子間に空間(ボイド)が存在していることが好ましい。特に金属材料4が主として活物質の粒子3の表面に存在しており、粒子3どうしの間が空間になっていることが好ましい。この空間の存在によって、充放電に起因する活物質の粒子3の体積変化に起因する応力が緩和される。この観点から、活物質層2における空間の割合は0.1〜30体積%程度、特に0.5〜5体積%程度であることが好ましい。空間の割合は、電子顕微鏡マッピングによって求めることができる。空間を首尾良く形成するためには、活物質の粒子3を含むスラリーを集電体1上に塗布し乾燥させることによって活物質層2を形成することが好ましい。この場合、例えば活物質の粒子3の粒径、スラリーの組成、スラリーの塗布条件を適切に選択することで、所望の空間を形成することができる。またスラリーを塗布乾燥して活物質層2を形成した後、適切な条件下でプレス加工して空間の割合を調整してもよい。更に、金属材料4を析出させるための条件、例えば電解めっきを行う場合には、めっき液の組成やめっき条件を調整することも、前記の空間を首尾良く形成する観点から有利である。
活物質層2の厚みは、負極全体に対する活物質の量の割合や活物質の粒径に応じて適宜調節することができ、一般には1〜100μm、特に3〜60μm程度である。
表面層5は、リチウムイオン二次電池の集電体となり得る金属から構成されていることが好ましい。そのような金属としては、例えば先に述べたリチウム化合物の形成能の低い金属が挙げられる。当該金属のうち銅若しくはニッケル又はそれらの合金を用いることが特に好適である。特に、ニッケル−タングステン合金を用いると、表面層5を高強度となすことができるので好ましい。なお表面層5の構成材料と、活物質の粒子3間に析出している金属材料4とは同種でもよく、或いは異種でもよい。
表面層5の主たる役割は、活物質層2に含まれる粒子3が充放電に起因して体積変化し微粉化して脱落することである。この観点から、表面層5は必要最小限の厚みで活物質層2をほぼ満遍なく連続的に被覆することが好ましい。具体的には表面層5の厚みは0.3〜10μm、特に0.4〜8μm、とりわけ0.5〜5μmの薄層であることが好ましい。前記の範囲の表面層5は、例えば電解めっきによって形成されることが好ましい。2つの表面層5はその厚みが同じでもよく、或いは異なっていてもよい。
表面層5には、電解液(非水電解液)が活物質層2へ到達可能な微細空隙(図示せず)が多数形成されている。微細空隙は、表面層5の表面において開孔し且つ活物質層2と通じている。微細空隙は各表面層5の厚さ方向へ延びるように該表面層5中に存在している。微細空隙は、表面層5を断面観察した場合にその幅が約0.1μmから約10μm程度の微細なものである。微細空隙の役割は、活物質層2内に電解液を供給することにある。
集電体1は、リチウム二次電池用負極の集電体として従来用いられているものと同様のものを用いることができる。集電体は、リチウム化合物の形成能の低い金属材料から構成されていることが好ましい。そのような金属材料の例は既に述べた通りである。特に、銅、ニッケル、ステンレス等からなることが好ましい。集電体1の厚みは臨界的ではないが、負極10の強度維持と、エネルギー密度向上とのバランスを考慮すると、10〜30μmであることが好ましい。
以上の構造を有する負極10は、例えば本出願人の先の出願に係る特許第3612669号公報に記載の方法によって製造することができる。
図4には、図3に示す負極を、図2に示す方法で加工して得られた試料のSIM像が示されている。使用した装置は、エスアイアイナノテクノロジー株式会社製のFIB−SIM装置であるSMI9200であった。掘削に先立ち形成したカーボン保護層の厚みは0.4μmとした。掘削領域における手前側及び奥側の掘削は、ビーム電流6520pA、ビーム径320nmで行った。加速電圧は30kVとした。仕上げ掘削のビーム電流は1391pA、ビーム径は92nmとした。
図4に示す負極は、活物質層がシリコンからなる活物質の粒子3を含むものである。活物質の粒子3は、リチウムイオンを吸蔵する前の状態になっている。粒子の周囲には、ピロリン酸銅浴を用いた電解めっきによって銅を析出させてある。活物質層の表面には、同じくピロリン酸銅浴を用いた電解めっきによって析出した銅からなる厚み0.3μmの表面層が形成されている。また、集電体は厚み18μmの電解銅箔からなる。
図4に示すSIM像は、試料を60度傾斜させ、ビーム電流は80pAで観察したものである。観察面は、保護層の手前2μmの位置に形成されている。なお同図中、負極の表面に位置し且つ中央部に窪みを有する扁平な直方体Mは、FIBの際の位置決め用マーカーであり、カーボンから形成されている。図5には、図4に示すSIM像の一部を拡大した像が示されている。図4及び図5から明らかなように、負極の活物質層においては、活物質の粒子3間に金属材料4が析出した状態になっている。また、活物質の粒子3間に空間が形成されている(図5中、白線で囲った部分)。活物質の粒子3はその全体が黒く描画されている。
図6には、図4及び図5に示す負極に、充電によってリチウムイオンを吸蔵させた後に該負極の断面を観察したSIM像が示されている。リチウムイオンの吸蔵量は、シリコンがリチウムイオンを吸蔵する理論容量の19%とした。図7及び図8は、図6に示すSIM像の一部を拡大した像である。これらの図から明らかなように、上述した図4及び図5に示すSIM像では黒く描画されていた活物質の粒子3は、その表面及びその近傍の部位が灰色に変化している。このコントラストの変化は、活物質の粒子がリチウムイオンを吸蔵したことに起因して、該粒子の組成、並びに該粒子の結晶の配向性、結晶性及び結晶構造等が変化したことに由来するものである。特に、図8には、活物質の粒子に形成されたクラックを通じてリチウムイオンが該粒子の内部にまで浸入している状態が鮮明に示されている。このように本発明によれば、汎用的な測定機器であるFIB−SIM装置を用いることで、容易に且つ簡便に充放電に起因する活物質の状態変化を可視化することができる。またサブミクロンオーダーないし数ミクロンオーダーという高い空間分解能で活物質の状態変化を可視化することができる。しかも、中性子線を用いた従来の技術と異なり、操作を安全に行うことができる。なお図6ないし図8において見られる縦縞の模様は、FIBによる粗削りの掘削後であり、本発明と本質的に関連するものではない。
図9には、図4及び図5に示す負極に、充電によってリチウムイオンを吸蔵させ、次いで放電を行ってリチウムイオンを放出させる操作を5サイクル繰り返した後の、該負極の断面を観察したSIM像が示されている。各サイクルにおけるリチウムの吸蔵量は、シリコンがリチウムイオンを吸蔵する理論容量の57%とした。図20は、図9に示すSIM像の一部を拡大した像である。これらの図から明らかなように、図6ないし7では灰色に描画されていた活物質の粒子3が、再び黒く描画されていることが判る。このことは、リチウムイオンを吸蔵した活物質の粒子3が、放電によってリチウムイオンを放出して、リチウムイオン吸蔵前の状態、即ち図4及び図5に示す状態に戻ったことを意味している。
このように、観察されたSIM像における活物質の粒子のコントラストに基づき、該活物質の粒子におけるリチウムイオンの吸蔵状態を評価することができる。リチウムイオンの吸蔵状態は、個々の活物質の粒子単位で評価することも重要であるが、活物質層全体でリチウムイオンの吸蔵状態を評価することも重要である。具体的には、負極の表面を基準として深さ方向に向かってリチウムイオンの吸蔵状態を観察した場合、深さ方向の観察位置が同じであれば、観察視野によらずリチウムイオンの吸蔵状態が同程度であることが、均一なリチウムイオンの吸蔵の点から好ましく、そのような吸蔵状態にある負極は性能が良好であると評価される。
逆に、深さ方向の観察位置が同じであるにもかかわらず、リチウムイオンの吸蔵状態が観察視野ごとにまちまちになる場合には、リチウムイオンが均一に吸蔵されているとは言えず、そのような吸蔵状態にある負極は性能が良好でないと評価される。そのような吸蔵状態にある負極を用いると、電流がある特定の場所に集中して流れ、短絡発生の原因となる。
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。例えば図4ないし図20に示すSIM像は、リチウム二次電池の負極を観察対象とするものであったが、本発明の観察対象はこれに限られず、例えばニッケル−水素二次電池の負極を観察対象とすることもできる。その場合には、水素の吸蔵・放出に起因する活物質(水素吸蔵合金)の状態変化を可視化することができる。
また前記実施形態においては、活物質層が活物質の粒子を含むものであったが、これに代えて、スパッタリングなどの各種薄膜形成手段によって形成された薄膜状の活物質層を有する電極を観察対象としてもよい。
1 集電体
2 活物質層
3 活物質の粒子
4 リチウム化合物の形成能の低い金属材料
5 表面層
10 負極
11 保護層
12 観察面
2 活物質層
3 活物質の粒子
4 リチウム化合物の形成能の低い金属材料
5 表面層
10 負極
11 保護層
12 観察面
Claims (6)
- イオンビームの照射によって電極表面をその厚さ方向に堀削して、堀削面における活物質層の走査イオン顕微鏡(SIM)像を観察し、観察されたSIM像における活物質のコントラストに基づき電極の性能を評価する電池用電極の評価方法。
- イオンビームの照射を、ガリウムイオンを用いた集束イオンビーム加工装置(FIB)によって行うか、又は遮蔽板を介してアルゴンイオンを垂直に照射することによって行う請求項1記載の電池用電極の評価方法。
- 前記電池がリチウム二次電池又はニッケル−水素二次電池である請求項1又は2記載の評価方法。
- 前記電極がリチウム二次電池用負極である請求項3記載の評価方法。
- 前記負極が、活物質の粒子を含み且つ該粒子間にリチウム化合物の形成能の低い金属材料が析出してなる活物質層を有している請求項4記載の評価方法。
- イオンビームの照射によってリチウム二次電池用負極表面をその厚さ方向に堀削して、堀削面における活物質層の走査イオン顕微鏡(SIM)像を観察し、観察されたSIM像における活物質のコントラストに基づき該活物質におけるリチウムイオンの吸蔵状態を評価するリチウム二次電池用負極の評価方法。
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