JP2007098407A - 成形用アルミニウム合金板の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】双ロール式連続鋳造方法によって、Mg含有量が8%を超え、板厚が1 〜13mmのAl-Mg 系アルミニウム合金板状鋳塊を得、この鋳塊を冷間圧延してアルミニウム合金板を製造する方法において、前記双ロールに注湯後に前記板状鋳塊中心部が凝固するまでの平均冷却速度を50℃/s以上とするとともに、この凝固しつつある板状鋳塊に対して、双ロールによって300 トン/m以上の圧下荷重を負荷しつつ鋳造し、その後全圧下率を5%以上とした冷間圧延を行ない、製造されたアルミニウム合金板の空隙率を、50倍の光学顕微鏡の板断面観察による、組織中に占める空隙の平均面積率として0.5%以下とする。
【選択図】なし
Description
先ず、本発明では、双ロール式連続鋳造方法によって製造された、8%を超える高MgのAl-Mg 系合金板の板断面組織における空隙率を、板の伸びなどの成形特性に影響の無い範囲まで抑制する。この板の成形特性に影響の無い範囲までとは、具体的には、50倍の光学顕微鏡の板断面観察による、組織中に占める空隙の平均面積率として0.5%以下とする。
上記空隙の面積率測定は、Al合金板から採取した試料 (試験片) を機械研磨し、板中央部の断面組織を50倍の光学顕微鏡を用いて観察して行なう。そして、顕微鏡視野内を画像処理して、空隙欠陥と通常の組織とを識別した上で、視野内の識別できる空隙の合計面積を求め、視野面積に占める空隙の合計面積の割合(%) を、空隙率として求める。
本発明において、双ロール式連続鋳造方法によって製造された、8%を超える高MgのAl-Mg 系合金板断面の平均結晶粒径は100 μm 以下に微細化させることが、強度延性バランスを満たす条件としても、空隙を少なくするためにも好ましい。結晶粒径をこの範囲に細かく乃至小さくすることによって、成形性が確保乃至向上される。結晶粒径が100 μm を越えて粗大化した場合、成形性が著しく低下し、成形時の割れや肌荒れなどの不良が生じ易くなる。一方、平均結晶粒径があまり細か過ぎても、5000系Al合金板に特有の、SS (ストレッチャーストレイン) マークがプレス成形時に発生するので、この観点からは、平均結晶粒径は20μm 以上とすることが好ましい。
次ぎに、本発明Al合金板における化学成分組成の、各合金元素の意義及びその限定理由について以下に説明する。本発明Al合金板、即ち双ロール式連続鋳造方法によって鋳造されるAl合金板状鋳塊(あるいは双ロールに供給される溶湯)の組成は、質量% で、Mg:8% を超え14% 以下、Fe:1.0% 以下、Si:0.5% 以下、Ti:0.005〜0.1%を含み、残部がAlおよび不可避的な不純物からなる化学成分組成とする。
MgはAl合金板の強度、延性、そして強度延性バランスを高める重要合金元素である。Mgが8%以下の含有量では、強度、延性が不足して、高MgのAl-Mg 系Al合金の特徴の強度延性バランスが出ず、成形性が不足する。一方、Mgを14% を越えて含有すると、連続鋳造の際の冷却速度を高めたり、焼鈍後の冷却速度を高めるなどの、製造方法や条件の制御を行なっても、Al-Mg 系化合物の晶析出が多くなる。この結果、やはり成形性が著しく低下する。また、加工硬化量が大きくなり、冷間圧延性も低下させる。したがって、Mgは8%を超え14% 以下の範囲とする。
FeとSiは、溶湯の溶解原料から必然的に含まれ、できるだけ少ない量に規制すべき不純物である。FeとSiは、Al-Mg-(Fe 、Si) などから成るAl-Mg 系化合物や、Al-Fe 、Al-Si 系などのAl-Mg 系以外の化合物となって多く生成する。Feの含有量が1.0%、Siの含有量が0.5%、を各々超えた場合には、これらの化合物が過大となって、破壊靱性や成形性を大きく阻害する。この結果、成形性が著しく低下する。したがって、Feは1.0%以下、好ましくは0.5%以下、Siは0.5%以下、好ましくは0.3%以下に各々規制する。
Tiは、B とともに、鋳造板 (鋳塊) 組織の微細化効果があり、これによって、鋳造板の空隙発生を抑制する効果がある。したがって、鋳造板の空隙発生を抑制するために、0.005%以上含有させる。ただ、0.1%を越えて含有すると、却って、成形性を阻害する。このため、Tiの含有量は0.005 〜0.1%の範囲とする。一方B は、Tiとともに、B:0.05% 以下まで含有させて良い。
この他、Mn、Cu、Cr、Zr、Zn、V 、Ni、Be、希土類などは、溶湯の溶解原料から含まれやすい不純物元素であり、含有量は少ない方が良い。しかし、Mn、Cr、Zr、V には圧延板組織の微細化効果もある。また、Cu、Znには、強度を向上させる効果もある。このため、これら効果を狙って、敢えて減らさずに、含有させる場合もあり、本発明板の特性である成形性を阻害しない範囲で、これら元素を一種または二種以上含有させることは許容される。これらの許容量は、各々質量% で、Mn:0.3% 以下、Cr:0.3% 以下、Zr:0.3% 以下、V:0.3%以下、Cu:1.0% 以下、Zn:1.0% 以下、である。
以下に、本発明における8%を超える高MgのAl-Mg 系合金板の製造方法につき説明する。
本発明の高MgのAl-Mg 系Al合金板は、前記した通り、DC鋳造などで鋳造した鋳塊を均熱処理後に熱間圧延を施す、通常の製造方法では、工業的に製造することは困難である。したがって、本発明の高MgのAl-Mg 系Al合金板は、双ロール式などの連続鋳造と、熱間圧延を省略した、冷間圧延、焼鈍とを組み合わせて製造する。
Al合金薄板の連続鋳造方法としては、双ロール式の他に、ベルトキャスター式、プロペルチ式、ブロックキャスター式などがある。しかし、8%を超える高MgのAl-Mg 系合金板を連続鋳造するためには、後述する鋳造の際の冷却速度を高くする必要があり、そのためにも双ロール式とする。
本発明では、前記双ロールに注湯後に、双ロール間で凝固しつつある板状鋳塊に対して、双ロールによって、板状鋳塊の長さ1m当たりにつき300 トン以上、即ち、300 トン/m以上の圧下荷重を負荷しつつ鋳造する。
この際、双ロールとしては、潤滑剤によって表面が潤滑されていないロールを用いることが望ましい。従来では、溶湯がロール表面に接触および急冷されて、双ロール表面に造形される凝固殻の割れを防止するために、酸化物粉末 (アルミナ粉、酸化亜鉛粉等) 、SiC 粉末、グラファイト粉末、油、溶融ガラスなどの潤滑剤 (離型剤) を、双ロール表面に塗布あるいは流下させて用いることが一般的であった。しかし、これら潤滑剤を用いた場合、冷却速度が小さくなって、必要な冷却速度が得られない。
鋳造する板厚が1 〜13mmの比較的薄板の範囲であっても、この双ロールによる鋳造の冷却速度は50℃/s以上のできるだけ大きい速度が必要である。上記潤滑剤を用いた場合、理論計算上は冷却速度が大きくても、実質的な、あるいは実際における冷却速度が実質的に50℃/s未満となりやすい。このため、平均結晶粒が50μm を超えて粗大化するとともに、Al-Mg 系などの金属間化合物全般が粗大化するか、多量に晶出する。この結果、このため、強度伸びバランスが低下し、プレス成形性が著しく低下する可能性が高くなる。また、板の均質性も低下する。
双ロールにより連続鋳造する薄板の板厚は1 〜13mmの範囲とする。そして、更に好ましくは、1mm 以上、5mm 未満の薄い板厚とする。板厚1mm 未満の連続鋳造は、双ロール間への注湯や、双ロール間のロールギャップ制御などの鋳造限界から、困難である。他方、板厚が13mm、より厳しくは板厚が5mm を超えて厚くなった場合、鋳造の冷却速度が著しく小さくなり、上記圧下荷重をかけることが困難となるとともに、Al-Mg 系などの金属間化合物全般が粗大化したり、多量に晶出する傾向がある。この結果、空隙が増し、強度伸びバランスが低下し、成形性が著しく低下する可能性が高くなる。
Al合金溶湯を双ロールに注湯する際の注湯温度は、液相線温度+30℃以下とすることが好ましい。注湯温度が液相線温度+30℃を超えた場合、後述する鋳造冷却速度が小さくなり、上記圧下荷重をかけることが困難となる。また、Al-Mg 系などの金属間化合物全般が粗大化したり、多量に晶出する可能性がある。この結果、強度伸びバランスが低下し、成形性が著しく低下する可能性がある。
回転する一対の双ロールの周速は1m /min 以上とすることが好ましい。双ロールの周速が1m /min 未満では、溶湯と鋳型 (双ロール) との接触時間が長くなり、鋳造薄板の表面品質が低下する可能性がある。また、凝固が進み過ぎて、上記圧下荷重をかけても空隙を抑制出来ない可能性がある。この点、双ロールの好ましい周速範囲は、ロール径が100 〜1200Φmmの範囲で、30〜100m/minである。
本発明において、上記前記板状鋳塊または薄板を400 ℃以上の温度に加熱する際、あるいは上記200 ℃を超える高温から板状鋳塊または薄板を冷却する際、などは、成形性にとって有害なAl-Mg 系金属間化合物が発生する可能性が十分にある熱履歴工程を意味する。
双ロール式連続鋳造方法による板状鋳塊の鋳造直後から例えば室温まで冷却する際、板状鋳塊が200 ℃までの温度範囲において、冷却速度が小さいと、Al-Mg 系金属間化合物が発生する可能性が十分にある。このため、このような冷却工程を選択的に行なう際には、Al-Mg 系金属間化合物発生を抑制するために、板状鋳塊の鋳造直後から200 ℃までの温度範囲を平均冷却速度が5 ℃/s以上にて冷却することが好ましい。
双ロール式連続鋳造方法による板状鋳塊を、鋳塊均質化のために、冷間圧延前に400 ℃以上液相線温度以下で、選択的に、あるいは必要に応じて、均質化熱処理(均熱処理、荒焼鈍、荒鈍とも言う)しても良い。均質化熱処理するに際しては、鋳塊の昇温時と冷却時の両方の途中過程で、昇温速度と冷却速度が小さいと、Al-Mg 系金属間化合物が発生する可能性が十分にある。特に、Al-Mg 系金属間化合物が発生する可能性が高い温度域は、昇温時は鋳塊中心部の温度が200 ℃から400 ℃までの範囲、冷却時は均質化熱処理温度から100 ℃までの範囲である。
本発明では、鋳造後に、オンラインでもオフラインでも熱間圧延をせずに、成形用の製品板の板厚0.5 〜3mm に圧延して、鋳造組織を加工組織化する。この加工組織化の程度は冷間圧延の圧下率にもより、鋳造組織が残留する場合もあるが、成形性や機械的な特性を阻害しない範囲で許容される。
冷間圧延後に板を400 ℃以上液相線温度以下で、選択的に最終焼鈍(溶体化処理とも言う)するに際しては、板の昇温時と冷却時の両方の途中過程で、昇温速度と冷却速度が小さいと、Al-Mg 系金属間化合物が発生する可能性が十分にある。特に、Al-Mg 系金属間化合物が発生する可能性が高い温度域は、最終焼鈍温度までの昇温時は板中心部の温度が200 ℃から400 ℃までの範囲、冷却時は最終焼鈍温度から100 ℃までの範囲である。
均質化熱処理時の200 〜400 ℃の平均昇温速度:10 ℃/s
均質化熱処理時の200 ℃までの平均冷却速度:10 ℃/s
最終焼鈍時の200 〜400 ℃の平均昇温速度: 5 〜20℃/s
最終焼鈍時の200 ℃までの平均冷却速度: 5 〜20℃/s
引張試験はJIS Z 2201にしたがって行うとともに、試験片形状はJIS 5 号試験片で行い、試験片長手方向が圧延方向と一致するように作製した。また、クロスヘッド速度は5mm/分で、試験片が破断するまで一定の速度で行った。
曲げ加工性は、前記採取試験片を、パネルとして、プレス成形後にフラットヘム加工されることを模擬して、常温にて、試験片に10% のストレッチを行った後、曲げ試験を行い評価した。試験片条件は、前記採取試験片を、JIS Z 2204に規定される3 号試験片 (幅30mm×長さ200mm)を用い、試験片長手方向が圧延方向と一致するように作製した。曲げ試験は、JIS Z 2248に規定されるVブロック法により、フラットヘム加工を模擬して、先端半径0.3mm 、曲げ角度60度の押金具で60度に曲げた後、更に180 度に曲げた。
そして、曲げ試験後の曲げ部 (湾曲部) の割れの発生状況を観察し、5 回(5枚) の試験共に、曲げ部表面に割れや肌荒れなどの以上が無いものを○、1 回でも割れがあるものを×と評価した。これらの結果も表3に示す。
比較例14、15は双ロールによる圧下荷重が小さ過ぎる。
比較例16は前記板状鋳塊中心部が凝固するまでの平均冷却速度が小さ過ぎる。
比較例17、18は冷間圧延全圧下率が小さ過ぎる。
比較例19は、Mg含有量が下限を下回って少な過ぎるJ の合金を用いている。
比較例20は、Mg含有量が上限を上回って多過ぎるK の合金を用いている。
比較例21は、Fe含有量が上限を上回って多過ぎるL の合金を用いている。
比較例22は、Si含有量が上限を上回って多過ぎるM の合金を用いている。
したがって、これらから、各元素の強度、延性、強度延性バランス、成形性に対する臨界的な意義が分かる。
Claims (2)
- 双ロール式連続鋳造方法によって、質量% で、Mg:8% を超え14% 以下、Fe:1.0% 以下、Si:0.5% 以下、Ti:0.005〜0.1 % を含み、残部がAlおよび不可避的不純物からなる板厚が1 〜13mmのアルミニウム合金板状鋳塊を得、この鋳塊を冷間圧延してアルミニウム合金板を製造する方法において、前記双ロールに前記合金組成から成る溶湯を注湯後に前記板状鋳塊中心部が凝固するまでの平均冷却速度を50℃/s以上とするとともに、この凝固しつつある板状鋳塊に対して、双ロールによって300 トン/m以上の圧下荷重を負荷しつつ鋳造し、その後全圧下率を5%以上とした冷間圧延を行ない、製造されたアルミニウム合金板の空隙率を、50倍の光学顕微鏡の板断面観察による組織中に占める空隙の平均面積率として、0.5%以下とすることを特徴とする成形用アルミニウム合金板の製造方法。
- 前記アルミニウム合金板状鋳塊が、更に、質量% で、Mn:0.3% 以下、Cr:0.3% 以下、Zr:0.3% 以下、V:0.3%以下、Ti:0.1% 以下、Cu:1.0% 以下、Zn:1.0% 以下、の一種または二種以上を含む請求項1に記載の成形用アルミニウム合金板の製造方法。
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