JP2007077347A - 脂肪酸アルキルエステルの製造方法及び燃料 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】リン酸のアルカリ金属塩の存在下で、油脂と炭素数1以上4以下の直鎖または分岐のアルコールとのエステル交換反応を行う脂肪酸アルキルエステルの製造方法。
【選択図】なし
Description
さらに、脂肪酸アルキルエステル燃料は石油などから精製する燃料と違い、植物を原料とした油脂が硫黄分をほとんど含んでいないことから、燃焼時に硫黄酸化物をほとんど排出しない特徴を有しており、自動車燃料として使用した場合、人体への影響が軽油を使用した場合より低減される。
さらに、触媒を用いないでエステル交換を進行させる方法も開発されている(例えば特許文献12〜14参照)。しかしながら、これらの文献に記載された条件では、油脂の分解が部分的であり、反応条件が高温、高圧と苛烈であり、殆ど実用的ではない。
(1)リン酸のアルカリ金属塩の存在下で、油脂と炭素数1以上4以下の直鎖または分岐のアルコールとのエステル交換反応を行うことを特徴とする脂肪酸アルキルエステルの製造方法、
(2)前記エステル交換反応による生成物を比重分離によって分離してから抜き取った後、残りのリン酸のアルカリ金属塩を含む相に油脂および炭素数1以上4以下の直鎖または分岐のアルコールを添加してさらに反応を行うことを特徴とする(1)項に記載の脂肪酸アルキルエステルの製造方法、
(3)(1)又は(2)項に記載の方法により製造された脂肪酸アルキルエステルを質量比1%以上100%以下の割合で含むことを特徴とする燃料、
(4)(1)又は(2)項に記載の方法により製造された脂肪酸アルキルエステルが質量比1%以上99%以下の割合になるように軽油と混合されていることを特徴とする(3)項に記載の燃料、および
(5)(1)又は(2)項に記載の方法により製造された脂肪酸アルキルエステルを質量比20%以上80%以下の割合で灯油と混合し、この混合物をさらに軽油と混合することで脂肪酸アルキルエステルの含有量を質量比1%以上30%以下の割合としたことを特徴とする(3)又は(4)項に記載の燃料
を提供するものである。
本発明は、植物もしくは動物性脂肪を原料とする油脂(廃油を含む)と低級アルコールとをエステル交換して脂肪酸アルキルエステルを製造する方法である。
例えば下式のように求核攻撃がメトキシアニオンによって起こると、生成物は脂肪酸のエステルであり、これは本反応系において望ましいエステル交換反応である。下式中、R1は油脂を構成する長鎖脂肪酸のアルキル基を、R2はグリセリンを構成する基を、Mはアルカリ金属をそれぞれ表す。
得られた脂肪酸アルキルエステルの利用性の観点から、燃料油添加剤として用いるのにはメタノール、エタノール、2−メチル−1−プロパノールを使用するのが好ましく、さらに好ましくはメタノール、2−メチル−1−プロパノールであり、最も好ましくはメタノールである。また、これらのアルコールの含水量は低いものが好ましく、含水量1%以下のものが好ましい。
Wt:アルコールの当量仕込み量(質量部)
Mo:油脂類の平均分子量
Ma:アルコールの平均分子量
エステル交換反応は本質的には平衡反応であり、望む生成物を得るためには一般的にアルコールの使用量を原料に対して大過剰量用いることで反応生成物の生成量を高くする必要があるが、必要以上にアルコールを使用することは原料の無駄であり、生成物からアルコールを除去するためのコストがかかり経済的な観点から好ましくない。これに対し、本発明の方法では、反応の進行に伴って生成したグリセリンが生成した脂肪酸アルキルエステルと相分離を起こすために、アルコールの使用量が上記のような小過剰量で反応させることが可能である。
例えば、油脂類の平均分子量が887、アルコールがメタノール(平均分子量32)の場合のアルコールの当量仕込み量を(A)式に従って計算すると、油脂類100質量部に対して、メタノールを好ましくは10.8質量部〜324質量部、より好ましくは10.8質量部〜54.0質量部、さらに好ましくは10.8質量部〜21.6質量部仕込むことになる。
本発明により得られた脂肪酸アルキルエステルは、そのままディーゼル燃料として用いることも可能であるし(質量比100%)、常温常圧(20℃、101.325kPa)で液体の有機化合物と混合して燃料として用いることも可能である。
市販キャノーラ油(商品名:日清キャノーラ油(推定平均分子量880、d=0.9)、日清オイリオ製)20mL、メタノール3.6mL、リン酸カリウム0.21gを50mLナス型フラスコに仕込み、50℃にて攪拌しながら30分反応させた。反応終了後、常温まで冷却し、1時間後に分離した上層のメチルエステル相を吸引で抜き取り、脂肪酸メチルエステルを得た。原料の油脂の変換率は99%、生成した脂肪酸メチルエステルの質量は18gであった。このものは米国の規格(ASTM D6751)を満たすことが可能である。
実施例1における脂肪酸メチルエステルを抜き取った重液に、市販キャノーラ油(商品名:日清キャノーラ油(推定平均分子量880、d=0.9)、日清オイリオ製)20mL、メタノール3.6mLを加え、50℃にて攪拌しながら30分反応させた。反応終了後、常温まで冷却し、1時間後に分離した上層のメチルエステル相を吸引で抜き取り、脂肪酸メチルエステルを得た。原料の油脂の変換率は99%、生成した脂肪酸メチルエステルの質量は17.5gであった。このものは米国の規格(ASTM D6751)を満たすことが可能である。
実施例2における脂肪酸メチルエステルを抜き取った重液に、市販キャノーラ油(商品名:日清キャノーラ油(推定平均分子量880、d=0.9)、日清オイリオ製)20mL、メタノール3.6mLを加え、50℃にて攪拌しながら30分反応させた。反応終了後、常温まで冷却し、1時間後に分離した上層のメチルエステル相を吸引で抜き取り、脂肪酸メチルエステルを得た。原料の油脂の変換率は95%、生成した脂肪酸メチルエステルの質量は17gであった。
300mLの3口フラスコにメタノール18mL、リン酸カリウム1.0gを加え、これに50℃に加温した市販のパーム油(Fluka社製、ヨウ素価50−57、酸価<0.4)98.3gを添加して、50℃にて30分反応させた。反応終了後、30℃まで冷却し、分離した上層のメチルエステル相を吸引で抜き取り、脂肪酸メチルエステルを得た。原料の油脂の変換率は99%、生成した脂肪酸メチルエステルの質量は94.2gであった。生成した脂肪酸メチルエステルは10℃に冷却すると完全に固化した。
アースをつけた金属バケツに用意した軽油(製品名:ENEOS軽油、新日本石油社製)190gに撹拌しながら実施例1で得られた脂肪酸メチルエステル10gを導入し、10分間撹拌して燃料を作製した。撹拌直後の液体は均一に混合されており、2時間後も均一な状態を保っていた。得られた燃料は引火点、90%留出温度、流動点、セタン価、動粘度、硫黄分、密度についてJIS K 2204の規格をみたし、例えば自動車などのディーゼル燃料として使用することができる。
実施例4で得られた脂肪酸メチルエステル2gを40℃に加温したものを、アースをつけた金属バケツに用意した軽油(製品名:ENEOS軽油、新日本石油社製)98gに加え、10分間撹拌して燃料を作製した。撹拌直後の液体は均一に混合されており、6時間後も均一な状態を保っていた。得られた燃料は引火点、90%留出温度、流動点、セタン価、動粘度、硫黄分、密度についてJIS K 2204の規格をみたし、例えば自動車などのディーゼル燃料として使用することができる。
実施例4で得られた脂肪酸メチルエステル10gを40℃にて溶解させたものをアースをつけた金属バケツに用意した灯油(製品名:ENEOS灯油、新日本石油社製)10gに加え、30分間撹拌した。撹拌直後の液体は均一に混合されており、12時間後も均一な状態を保っていた。混合前の脂肪酸メチルエステルの流動点は10℃であったが、灯油と混合することにより混合燃料の流動点は0℃未満となった。
この混合液を、アースをつけた別の金属バケツに用意した軽油(製品名:ENEOS軽油、新日本石油社製)80gに攪拌しながら注意深く加え、そのまま10分間攪拌して燃料を作製した。得られた燃料はヨウ素価が5以下であり、酸化安定性が非常に高い。また、5℃に保管しても外見上変化無く流動性を保っており、ディーゼル燃料として使用することができる。
50mLのナス型フラスコに、水酸化ナトリウム0.20g、メタノール3.6mLを加え、完全に溶解するまで30分間撹拌した。これに市販キャノーラ油(商品名:日清キャノーラ油(推定平均分子量880、d=0.9)、日清オイリオ製)20mLを加え、60℃にて30分間撹拌した。反応終了後、常温まで冷却した。反応時間終了後は白い浮遊物があり、全体に濁った不均一の状態であった。1時間後も濁った不均一の状態は変わらなかった。反応混合物を50mLの遠心管に移し、700g×30分遠心し、分離した脂肪酸メチルエステル相を回収した。原料油脂の変換率は99%、軽相の収量は16gであった。
このように水酸化アルカリを触媒に用いる反応は反応性が非常に高いものの、反応後の分離操作が煩雑であり、コストアップ要因となる。
Claims (5)
- リン酸のアルカリ金属塩の存在下で、油脂と炭素数1以上4以下の直鎖または分岐のアルコールとのエステル交換反応を行うことを特徴とする脂肪酸アルキルエステルの製造方法。
- 前記エステル交換反応による生成物を比重分離によって分離してから抜き取った後、残りの前記リン酸のアルカリ金属塩を含む相に油脂および炭素数1以上4以下の直鎖または分岐のアルコールを添加してさらに反応を行うことを特徴とする請求項1記載の脂肪酸アルキルエステルの製造方法。
- 請求項1又は2に記載の方法により製造された脂肪酸アルキルエステルを質量比1%以上100%以下の割合で含むことを特徴とする燃料。
- 請求項1又は2に記載の方法により製造された脂肪酸アルキルエステルが質量比1%以上99%以下の割合になるように軽油と混合されていることを特徴とする請求項3に記載の燃料。
- 請求項1又は2に記載の方法により製造された脂肪酸アルキルエステルを質量比20%以上80%以下の割合で灯油と混合し、この混合物をさらに軽油と混合することで脂肪酸アルキルエステルの含有量を質量比1%以上30%以下の割合としたことを特徴とする請求項3又は4に記載の燃料。
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