以下、本発明に係る各実施形態を図面を参照しつつ説明する。
(第1の実施の形態)
先ず、第1実施形態に係る半導体装置の製造方法ならびに半導体装置の製造装置とその制御装置および制御方法を、図1および図2に表す構成に基づいて説明する。
本実施形態に係る酸化膜厚制御装置5を具備する半導体装置の製造装置1の構成を図1に示す。なお、本実施形態においては、酸化膜厚の制御を取り上げるが、本実施形態の半導体装置の製造装置1とその酸化膜厚制御装置5は、不純物の拡散長の制御、CVDによる薄膜堆積膜厚、窒化量、BPSG膜(絶縁膜)などのメルト量、CVD酸化膜などのデンシファイ量、シリサイド膜(電極)厚など、熱化学反応を利用するすべての半導体製造プロセスに応用できる。また、本実施形態の半導体装置の製造装置1とその酸化膜圧制御装置5は、バッチ式装置あるいは枚葉式装置のいずれにも適用可能である。以下、すべての実施形態について同様である。
実施形態の半導体装置の製造装置1が具備する、ホットプロセスが実行されるプロセス処理部としての酸化炉4は、プロセス処理部制御装置としての酸化炉コントローラ2により、その作動および非作動、ならびに作動状態が制御されている。また、本実施形態の半導体装置の製造装置1が具備するプロセス制御装置としての酸化膜厚コントローラ3は、酸化膜厚計算機能を有する酸化膜厚計算部6と計算膜厚判定機能を有する計算膜厚判定部7とを有している。酸化膜厚コントローラ3は、本実施形態においては酸化炉コントローラ2と別体の装置として構成されているが、酸化炉コントローラ2の内部に、その機能の一部として一体に構成されていても構わない。
酸化炉コントローラ2の制御により、酸化炉4が作動する。酸化炉コントローラ2の内部には、予め設定されている酸化処理プロセスシークエンスが内蔵されている。この酸化処理プロセスシークエンス内に設定された所定のタイミングで、酸化炉コントローラ2から酸化膜厚コントローラ3に酸化処理を開始するスタート信号が送られる。このスタート信号を受け取ることにより、酸化膜厚コントローラ3は、酸化膜厚計算をスタートする。以下、ここまでのプロセスを詳しく説明する。
酸化炉コントローラ2は、予め設定された酸化プロセスシークエンスに従って、酸化炉4内への図示しないウエハの搬入、酸化炉4内の昇温およびその設定温度の保持など、一連の酸化膜形成プロセスを実行させる。続けて、酸化炉コントローラ2は、酸化ガスの導入を酸化炉4内に指示するとともに、酸化膜厚コントローラ3にスタート信号を送る。この場合、酸化ガスの導入時をスタートのタイミングとしたが、酸化炉4内へのウエハの搬入時、昇温前、ウエハ炉内温度がある一定の温度に達した時点など、スタート信号を送るタイミングは、その目的に応じて、予め様々な状態に変更して設定するが可能である。
酸化膜厚コントローラ3は、スタート信号を受け取った後、酸化膜厚計算をスタートする。計算には、酸化炉4の内部の様々な情報が用いられる。酸化炉4内の情報としては、酸化炉4内に取り付けられた図示しない各種熱電対から構成される内部温度センサ8からの温度情報や、あるいは酸化炉4内に導入されるガスの流量を計測する同じく図示しない流量計からのガス流量情報など、酸化炉4内の雰囲気を構成する主要な要素についての情報が用いられる。それら酸化炉4内の内部情報の計算モデルとしては、例えば、以下に示す一般的な式(1)に従って計算が行われる。
この式(1)において、Tox は酸化膜厚、τは初期膜厚、tは時刻、Aは一次係数(μm)、Bは二次係数(μm2 /min )、B/Aは一次係数(μm/min )である。具体的には、例えば、τは15nm、B/Aは5×10-6(μm/min )、Bは8×10-6(μm2 /min )などの値を用いる。
時々刻々変化する酸化炉4内の内部温度およびガス流量などの諸情報を、酸化プロセスシークエンスに予め設定されている時間間隔、例えば1秒間隔で測定して図示しない記憶装置に記憶させ(読み込ませ)、その値を用いてその1秒間の酸化膜厚の増加分を計算し、これを累積していくことで、所定の時刻でのウエハに形成された酸化膜の膜厚を計算することができる。これにより、予め設定された酸化炉4内の内部温度やガス流量などを前提条件としつつ、それらの変化、すなわち外乱による酸化膜厚の変動を考慮できる。これは従来技術において行われていた半導体装置の製造方法における酸化プロセスでは考慮できなかった点である。この際、酸化炉4内の雰囲気の情報を測定して記憶する時間間隔を1秒としたのは、例えば形成する酸化膜厚を±0.2nmの誤差内で制御したい場合には、その範囲内の酸化膜を形成するのに要する時間が、一般の酸化膜形成プロセスにおいては、実質的に少なくとも±2秒掛かるためである。つまり、酸化膜厚を±0.2nmの精度で形成したい場合には、±2秒以内で酸化炉4の作動状態をコントロールする必要があり、前述したように酸化炉4内の雰囲気の情報を測定して記憶する時間間隔(サンプリング・レート)を1秒としたのは、装置内の情報の伝達などに掛かる時間を考慮して、計算精度が低下しないように、余裕を持たせるために、より短いサンプリング・レートに設定したためである。
酸化膜厚の計算結果は、計算膜厚判定部7に伝達される。酸化プロセスシークエンスに予め設定されている規定の膜厚、例えば60nmに計算膜厚が達した時点で、酸化炉4の酸化プロセスを停止させるために、酸化膜厚コントローラ3から酸化炉コントローラ2にストップ信号が送られる。このストップ信号を受けた酸化炉コントローラ2は、酸化炉4に対してストップ信号を送り、酸化プロセスをストップさせる。
具体的に説明すると、酸化炉コントローラ2から酸化炉4に対して、例えば「酸化ガスを流すプロセスシークエンスを終了して、次の不活性ガスを流すプロセスシークエンスに切り替える。」という割り込み指示を出すことに対応する。このタイミングは、計算膜厚が規定の膜厚に達する前に設定することも可能である。現実には、ストップ信号が出された後、酸化終了までに、ガスが瞬間的に切り替わらないので、ウエハは設定値よりも若干酸化され過ぎてしまう。この過剰酸化を見込んで、目標膜厚(規定膜厚)より若干薄い値を酸化終了の膜厚として設定する。
酸化ガスから不活性ガスに切り替わった後は、酸化炉コントローラ2から予め設定された酸化プロセスシークエンスに従って降温、ウエハの搬出の指示などの各種信号を酸化炉4に送り、これら各信号を受け取った酸化炉4が、各信号に基づいて所定の処理を実行して酸化のプロセスが終了する。
前述したように、一連の酸化プロセス(ラン、バッチ処理)ごとの酸化膜厚の変化は、従来の技術においては制御できなかった炉内温度やガス流量などの酸化炉4内の雰囲気の変化(変動)を考慮した上で計算されている。本実施形態の半導体装置の製造装置1とその制御装置5、および制御方法を用いることにより、それらの変化を取り入れた酸化膜厚計算を行い、その結果を次回の酸化プロセスにフィードバックすることで、酸化炉4内の雰囲気の変化からの影響を受け難い、すなわち外乱に対して強い(ロバストな)酸化膜厚の制御が可能となる。ひいては外乱の有無に拘らず、形成される酸化膜の膜厚が、所望される膜厚と殆ど変わらない、略均一な膜厚を有する半導体装置を、この半導体装置の製造装置1によって製造できる。
次に、本実施形態の酸化膜厚コントローラ3内において実行される演算のフローチャートを、図2に基づいて説明する。
まず、酸化膜厚計算の初期化を行う。この場合は、計算開始時刻tを0、初期膜厚τを15nmにセットする。次に、酸化炉コントローラ2からのスタート信号を待つ、いわゆる待ち状態に入る。酸化炉コントローラ2からのスタート信号を受け取る際に、併せて装置内部情報を受け取り、1回目の酸化計算を行う。この際、酸化計算膜厚が規定値を超えているか否か、この場合、60nmを超えているか否かを判断する。超えていなければ、1回目の内部情報取得から1秒待って、再度内部情報を取得して2回目の酸化計算を行う。以後、このような処理を繰り返して、酸化計算膜厚が60nmを超えた際に、酸化膜厚コントローラ3から酸化炉コントローラ2へストップ信号を送り、スタートと同じ状態に戻る。ここでは、1秒の間隔で制御を行うことを前提としている。この酸化炉4内の情報を1秒間隔で取得することは、前述した理由による。また、このような時間間隔は、現在の装置技術において、十分に可能な大きさである。
また、本実施形態においては、酸化膜厚の制御を取り上げたが、以上説明した本実施形態に係る半導体装置の製造方法、ならびに半導体装置の製造装置とその制御装置および制御方法は、例えば、不純物の拡散長の制御にも適用することが可能である。この場合には、式(1)の代わりに、以下に示す拡散の一般的な式(2)を用いればよい。
この式(2)において、Cは不純物の時刻t、位置xにおける不純物濃度である。Dは拡散係数で、以下に示す式(3)で表される温度依存性を有する。
この式(3)において、Ea は活性化エネルギー、D0 は定数である。Ea およびD0 は、不純物の種類によって変化する。例えば、ボロンの1000℃におけるD0 は、3×10-5(μm2 /min )という値を用いる。
このように、本実施形態における制御は、前述した酸化膜厚や、あるいは不純物の拡散長の制御と同様に、CVDによる薄膜堆積膜厚、窒化量、BPSG膜(絶縁膜)などのメルト量、CVD酸化膜などのデンシファイ量、シリサイド膜(電極)厚など、熱化学反応を利用するすべての半導体製造プロセス、およびこれらの半導体製造プロセスに用いられる半導体装置の製造装置の制御に、計算のアルゴリズムの変更のみで適用できる。
以上説明したように、本実施形態における半導体装置の製造方法、ならびに半導体装置の製造装置1とその制御装置5である酸化炉コントローラ2および酸化膜厚コントローラ3、および半導体装置の製造装置1の制御方法によれば、所定のプロセスが行われている間の雰囲気の変化を時々刻々、リアルタイムで測定して計算し、この計算結果に基づいてプロセスの進行状況を判断できる。したがって、外乱の有無に拘らず、適正な状態で半導体製造プロセスを遂行できる。
(第2の実施の形態)
次に、第2実施形態に係る半導体装置の製造方法、ならびに半導体装置の製造装置とその制御装置および制御方法を、図3および図4に表す構成に基づいて説明する。
この第2実施形態の半導体装置の製造方法、ならびに半導体装置の製造装置11とその制御装置12,13および制御方法は、主にこの半導体装置の製造装置11が具備する制御装置12,13の内部構成、およびこれら制御装置12,13における情報処理の流れが、前述した第1実施形態の半導体装置の製造装置1が具備している制御装置5を構成している酸化膜厚コントローラ3の内部構成、およびこの酸化膜厚コントローラ3における情報処理の流れと異なっており、その他の構成、作用、および効果は略同様である。よって、その主に異なっている部分について説明するとともに、前述した第1実施形態と同一の構成部分については同一符号を付してその説明を省略する。
前述した第1実施形態においては、比較的簡単な工程や構成などからなる半導体装置の製造方法、ならびに半導体装置の製造装置とその制御装置および制御方法を、取り上げたが、本実施形態においては、図3および図4に示すように、前述した第1実施形態を基に、より複雑で緻密な制御を可能にする構成などについて説明する。後述するように、本第2実施形態の半導体装置の製造方法、ならびに半導体装置の製造装置とその制御装置および制御方法によれば、これらが扱う各種情報や、その伝達経路などは、プロセスの目的などに応じて種々の細かい状態を設定して実行できる。したがって、それら各設定状態(設定バリエーション)に付いても説明する。また、それら各設定バリエーションは、必要に応じて取捨選択して用いることができる。
本実施形態の半導体装置の製造装置11は、図3に示すように、これが具備する酸化炉14が、酸化炉コントローラ12により、その作動および非作動、ならびに各作動状態が制御されている。また、本実施形態の酸化膜厚コントローラ13は、第1実施形態の酸化膜厚コントローラ13が有している酸化膜厚計算部6および計算膜厚判定部7よりもより高度な情報処理が可能な酸化膜厚計算部22および計算膜厚判定部23を備えているとともに、各種の計算定数を格納している計算定数ファイル20、様々な状態のデータの変換機能を有するデータ変換部19、および様々な種類のデータの解析機能を有するデータ解析部21を備えている。また、前述した第1実施形態と同様に、本実施形態においては、酸化膜厚コントローラ13は、酸化炉コントローラ12とは別体としたが、酸化炉コントローラ12の内部に、その機能の一部として一体に構成されていても構わない。
計算定数ファイル20は、酸化炉コントローラ12から酸化プロセスに関する各種処理すべき情報を受け取る。この処理情報に従って、計算定数ファイル20は、計算定数などの酸化膜厚計算に必要な各種情報を酸化膜厚計算部22に渡す。それとともに、計算定数ファイル20は、判定条件などの計算膜厚の判定に必要な各種情報を計算膜厚判定部23に渡す。本実施形態の半導体装置の製造装置11は、それら酸化膜厚計算部22および計算膜厚判定部23の両機能部22,23が並列処理を行うことができるように設定されており、この設定により複数の酸化処理を扱うことができる。
例えば、酸化膜厚が3nm、6nm、および10nmの3種類に設定されており、かつ酸化プロセスがドライ酸化、ウェット酸化の2種類に設定されていて、合計6種類の酸化処理が設定されているとする。この場合、形成すべき膜厚に応じて計算膜厚の判定条件が変わるので、その目的に応じて、酸化膜厚計算部22および計算膜厚判定部23は、計算定数ファイル20から適宜最適な計算定数および膜厚判定条件を受け取り、それらに基づいて酸化膜厚計算および計算膜厚判定を併行して行う。
また、酸化プロセスの設定に応じて、酸化計算に用いられる各種の情報(パラメータ9、ならびに第1実施形態で説明した式(1)の初期膜厚τ、一次係数B/A、および二次係数Bは、それぞれ値が異なる。つまり、酸化プロセスがドライ酸化か、あるいはウェット酸化かによって、前記各設定値(パラメータ)は異なる。酸化炉コントローラ12から送られてくる酸化処理情報に従って、計算定数ファイル20は、ドライ酸化あるいはウェット酸化のいずれかに適したパラメータを選び出して、酸化膜厚計算部22および計算膜厚判定部23に送る。
実際には、以上説明した各設定は、酸化膜厚計算の開始以前に行う。処理情報には、酸化処理を実施する上で必要十分な程度の量と質を有したプロセスシークエンス情報が含まれている。これら各情報はいずれも、少なくとも目標酸化膜厚および酸化プロセスを特定できるだけの量と質を有している。また、これら酸化処理情報は必ずしも酸化炉コントローラから受け取る必要はない。例えば、図3に示すように、本実施形態の半導体装置の製造装置11を含めた、半導体装置の生産工程の全体を制御する、より上位のコンピュータであるシステム管理コンピュータ17などから情報を受け取っても構わない。このように、酸化膜厚計算に必要なパラメータのうちの少なくとも一つ、および計算膜厚判定に必要な値のうちの少なくとも一つ、のそれぞれが酸化計算に先立って決定されればよい。
次に、本実施形態の半導体装置の製造装置11が備える、酸化炉14の外部の雰囲気の状態を外部情報として検出する外部センサ15、およびこの外部センサ15が検出する酸化炉14の外部情報について説明する。
第1実施形態の半導体装置の製造装置1においては、スタート信号を受け取った後、温度やガス流量などの酸化炉4の内部情報を用いてリアルタイムで酸化膜厚計算を行っていた。これに対して、本実施形態の半導体装置の製造装置11においては、酸化炉14の内部の情報以外にも、酸化炉14の外部の情報も用いることができる。外部センサ15は、酸化炉14の外部に取り付けられているとともに、図示しない熱電対などの温度計や、あるいは同じく図示しない大気圧センサなどを備えており、例えば、酸化炉14の外部の温度、湿度、および大気圧などの、酸化炉14の外部の雰囲気の主な構成要因の状態を測定して検出できる。この外部センサ15を用いて大気圧をモニタリングし、その情報を酸化計算に用いる。この場合、例えば、常圧付近で行われる酸化プロセスの場合は、大気圧の影響が無視し得ないと考えられるので、この情報を用いれば、酸化計算の精度を向上できる。また、大気圧は通常の酸化プロセス処理時間(一般には、おおよそ2〜4時間。)の間では、大きく変動することは考え難い。したがって、適正な状態で酸化プロセスを実行するにあたり、酸化プロセスの開始直前に求めた大気圧の値を前提条件として、酸化ガスの分圧が一定になるように酸化ガスの流量を補正したり、あるいは酸化時間を補正したりするなどの処理情報の変更をすることで、酸化プロセスを適正な状態で行わせることは十分対応可能である。
以上説明した外部情報は、図3および図4においては、外部センサ15から酸化炉コントローラ12への外部情報として示されているが、前述したように、酸化炉コントローラ12より上位のシステム管理コンピュータ17などに情報を入力して、処理方法中のガス流量や、酸化時間などの値を書き換えた後、酸化炉コントローラ12に酸化処理情報を送る方式でも構わない。つまり、外部情報に応じて処理情報が変更されればよい。
次に、データ変換部19について説明する。このデータ変換部19は、酸化炉14の内部の情報および外部の情報を受け取って、酸化膜厚計算に使用する入力データを出力する。一般には、酸化炉14の内外のセンサ18,15で情報を得られるが、それらは、酸化膜厚計算に直接使用できる数値化されたデータではない。そのため、一般には、各センサ15,18と酸化膜厚計算部22との間に、一般のA/Dコンバータのように、アナログデータを、酸化膜厚計算に直接使用できる数値化されたデジタルデータに変換できるデータ変換部19を接続する必要がある。さらに、データ変換部19は、数値化された各センサ15,18からの情報の加工を行うことができるように設定されている。例えば、データ変換部19は、ガス流量と大気圧データから、酸化炉14内の各種ガスの分圧の情報に変換して酸化膜厚計算部22に引き渡すことができる機能を有している。
また、温度に関しては、通常、酸化炉14には、図示しない10個程度の熱電対が内部センサ18の構成要素として組み込まれている。酸化計算に必要なのは、厳密にはウエハの温度である。それら熱電対は、ウエハから離れた位置にあるので、熱電対の示す温度をウエハの温度として酸化膜厚計算に用いると、誤差を含んでいるおそれがある。そこで、そのような測定誤差をできるだけ排除するために、例えば10個の熱電対の示す温度の重み付け平均を用いる。さらに、酸化炉14内の温度に経験的な加減(オフセット)を加えて、これをウエハ温度とする。または、より理想的なモデルをベースにした熱解析シミュレーションの結果、あるいはその近似式を用いるなどの方法がある。
また、この半導体装置の製造装置11の酸化炉14の内部情報を酸化計算に反映させるには、酸化炉14の内部センサ18からの内部情報を酸化膜厚計算に直接使用する第1実施形態で示した方法、あるいはデータ変換部19を介して使用可能な情報に変換してから酸化膜厚計算に使用する、前述した本実施形態の方法以外にも、酸化炉14内の内部センサ18から、一旦酸化炉コントローラ12を経由させて酸化膜厚計算に使用したりするなど方法も可能である。これら各方法は、適宜選択して実行することができる。
通常、酸化炉14内部の情報は酸化炉コントローラ12でモニタリングされている。つまり、酸化炉14の内部センサ18と酸化炉コントローラ12は接続されている。これに内部センサ18と酸化膜厚コントローラ13をさらに接続すると、内部センサ18の誤動作や感度変化などの悪影響が出る可能性がある。したがって、酸化炉14内部の情報は、本実施形態の半導体装置の製造装置11のように、酸化炉コントローラ12を経由して得ることが望ましい。この場合、例えば1秒程度の高速サンプリング機能と、高速データ転送の機能とを、酸化炉コントローラ12が備えているものとする。
次に、データ解析部21について説明する。例えば、全部で75ラン分の酸化処理を行う場合、始めの25ラン分のデータを用いて、酸化炉14内の温度から前記(1)式の酸化におけるパラメータ、つまり、初期膜厚τ、一次係数B/A、および二次係数Bを合わせ込む。次に、これらのパラメータと観測された炉内温度とを用いて酸化計算を行う。本発明者達が行った実験によれば、25ランまでは、酸化膜厚の実測値と計算値とが極めて良く一致していることが確かめられたとともに、26ラン以降も酸化膜厚の厚みの細かい変動傾向と良く一致していることが確かめられた。ランの回数が増えるに連れて、初期膜厚τ、一次係数B/A、および二次係数Bも徐々に変動するが、これをデータ解析部21によって随時補正することができる。
データ解析部21の主な役割は、以下に述べるようなものである。計算膜厚判定部23において、ストップ信号が出される際の計算膜厚が入力される。さらに、膜厚モニタ16からLAN経由で送られて来る、膜厚モニタ16が実際に酸化膜厚を測定したデータが入力される。これを始めの10ラン程度蓄積し、酸化におけるパラメータ、つまり、初期膜厚τ、一次係数B/A、および二次係数Bを合わせ込む。その結果を酸化プロセスを行う前に酸化膜厚計算部22に引き渡し、酸化計算のフィッティングパラメータとして用いる。この機能の特徴上、フィッティングパラメータの変更は各ラン(バッチ処理)の終了時ごとに、これを1単位として行われ、次回の酸化間膜厚計算の際には定数として取り扱われる。つまり、酸化炉14内の温度のように、1秒ごとに更新されることはない。したがって、この定数は酸化処理情報として用いることも可能で、酸化におけるパラメータ、つまり初期膜厚τ、一次係数B/A、および二次係数Bから所望の膜厚になるように酸化処理上の酸化温度を変更する使い方も可能である。
このような使用方法のメリットは、前述した酸化処理の際に、酸化膜厚の実測値と計算値との乖離(ドリフトとも称する。)が起こる前に酸化速度を一定に保持して、酸化膜厚(膜質)を一定に保持できるところにある。この信号は、高速で送信する必要がないので、LANを経由して行ってもよい。また、同様の理由で、データ解析部21は必ずしも酸化膜厚コントローラ13の内部にある必要はなく、前述したシステム管理コンピュータ17に、このデータ解析機能を持たせても構わない。
次に、本実施形態に酸化膜厚コントローラ13内の演算を、図4に示すフローチャートを用いて説明する。
まず、酸化膜厚計算の初期化を行う。始めの10ランの計算酸化膜厚と測定酸化膜厚とから平均値操作、重回帰分析、自己相関解析などを行い、酸化処理方法の情報からプロセスの種類、例えばドライ酸化であることを判断して、フィッティングパラメータを、例えばτは15.1nm、B/Aは5.02×10-6(μm/min )、Bは7.99×10-6(μm2 /min )にセットする。フィッティングパラメータを使わない場合には、酸化処理方法の情報だけからτ、B/A、およびBを決定する。また、目標膜厚は60nmであるが、判定膜厚を例えば58nmにセットする。また、時刻tを0に設定して初期化が終了する。
次に、酸化炉コントローラ12からのスタート信号を監視し、スタート信号が来たら酸化炉14内の内部部情報を受け取り、酸化炉14内の温度をウエハ温度に変換する。大気圧とガス流量とから酸素分圧を計算するなどのデータ変換を行い、酸化計算を1回行う。計算酸化膜厚が規定値、この場合、58nmを超えているかどうかを判断する。超えていなければ、前回の内部情報取得から1秒間待って、再度内部情報を取得し酸化計算を行う。これを繰り返して、計算酸化膜厚が58nmを超えたことを確認した後、酸化炉コントローラ12へストップ信号を送り、LAN上のシステム管理コンピュータ17に最終計算膜厚、例えば58.3nmを送り、スタートに戻る。
酸化炉コントローラ12は、酸化炉14に対してストップ信号を送り、酸化をストップさせる。より具体的には、酸化炉コントローラ12から酸化炉14に対して、例えば「酸化ガスを流すプロセスシークエンスを終了して、次の不活性ガスを流すプロセスシークエンスに切り替える。」という割り込み指示を出すことに対応する。ここで、ストップ信号を出してから酸化終了までに、すぐにはガスが切り替わらないなどの理由があり、少し余計に酸化されてしまう。この余計な酸化分を、この例では2nmと見込んでいたわけである。その後、実際のウエハの酸化膜厚を評価したところ、59.7nmであったとする。目標値は60.0nmなので、0.3nm薄く仕上がったことになる。次回の酸化の際には、判定基準膜厚を58.3nmに設定しておけば、より高精度の膜厚制御ができる。このように、τ、B/A、およびBだけでなく、判定基準膜厚もフィッティングパラメータとして使用することができる。つまり、最終計算膜厚は、次回以降の酸化膜厚計算のためのパラメータのフィッティングパラメータを計算するのに使用される。
この第2実施形態の半導体装置の製造方法、ならびに半導体装置の製造装置11とその酸化炉コントローラ12、酸化膜厚コントローラ13および制御方法は、以上説明した点以外は、第1実施形態の半導体装置の製造方法、ならびに半導体装置の製造装置1とその制御装置5(酸化炉コントローラ2,酸化膜厚コントローラ3)および制御方法と略同じであり、解決しようとする課題を解決できるのはもちろんであるが、前述したように、酸化炉14の外部の情報も考慮でき、さらに、複数の情報処理を併行して行うことができるので、以下の点で優れている。
本実施形態の半導体装置の製造方法、ならびに半導体装置の製造装置11とその酸化炉コントローラ12および酸化膜厚コントローラ13、および半導体装置の製造装置11の制御方法によれば、酸化プロセスシークエンスの制御に用いるプログラムの設定を変更するだけで、同一構成のシステムで様々な設定条件のホットプロセスに対応できるとともに、より高い精度で酸化膜厚を形成することができる。
(第3の実施の形態)
次に、第3実施形態に係る半導体装置の製造方法、ならびに半導体装置の製造装置とその制御装置および制御方法を、図5〜図7に表す構成に基づいて説明する。
この第3実施形態の半導体装置の製造方法、ならびに半導体装置の製造装置31(本実施形態においては、その一部のみを図示する。)と、その制御装置32(本実施形態においては、その一部である酸化膜厚コントローラ32のみを図示する。)および制御方法は、主にこの半導体装置の製造装置31が具備する酸化膜厚コントローラ32の内部構成、およびこの酸化膜厚コントローラ32における情報処理の流れが、前述した第1実施形態の半導体装置の製造装置1が具備している制御装置5を構成している酸化膜厚コントローラ3の内部構成、およびこの酸化膜厚コントローラ3における情報処理の流れと異なっており、その他の構成、作用、および効果は略同様である。よって、その主に異なっている部分について説明するとともに、前述した第1実施形態と同一の構成部分についてはその説明を省略する。
本実施形態の半導体装置の製造装置31は、これが備える制御装置を構成している酸化膜厚コントローラ32の内部構成が、図5に示すような構成となっている。また、本実施形態の酸化膜厚コントローラ32は、前述した第1実施形態および第2実施形態の酸化膜厚コントローラ3,13と同様に、図示しない酸化炉コントローラとは別体に構成されているものとするが、酸化炉コントローラの内部に、その機能の一部として一体に構成されていても構わない。
本実施形態の酸化膜厚コントローラ32は、これが備える酸化膜厚計算部33が、スタート信号、図示しない酸化炉の内部情報、計算定数、およびモデルパラメータなどを受け取る機能を有しており、予め指定されたウエハ上の任意の位置で現時刻の酸化膜厚を計算する機能を有している。予め指定するウエハ位置は複数個指定可能であり、バッチ処理の場合は酸化炉内に導入される複数のウエハの何枚目であるかまで指定しても良い。また、位置の指定は計算定数として通常受け取るが、それとは別な情報として受け取る機能を有していても良く、場所を予め決定しておき、酸化膜計算部内部に情報として有していても良い。すなわち、本実施形態の酸化膜厚計算部33は、複数の酸化膜厚を計算できる、いわゆるマルチ酸化膜厚計算部33aを有している。
また、本実施形態の酸化膜厚コントローラ32は、これが備える計算膜厚判定部34が、ストップ判定条件と前記マルチ酸化膜厚計算部33aで計算された酸化膜厚の情報を受け取る機能を有し、複数の酸化膜厚が計算された場合にストップ判定条件に対応した統計処理を行う機能および指定されたストップ判定条件が成り立つ場合にストップ信号を出す機能を有している。すなわち、本実施形態の計算膜厚判定部34は、複数の酸化膜厚を判定できる、いわゆるマルチ膜厚統計部34aおよびマルチ膜厚終了判定部34bを有している。
この酸化膜厚コントローラ32が備える酸化膜厚計算部33および計算膜厚判定部34において行われる酸化膜厚制御の演算は、図6のフローチャートのように示される。
酸化膜厚コントローラ32は、酸化炉コントローラからスタート信号を受け取った後に酸化膜厚計算をスタートする。装置内情報読み取りステップで酸化炉の装置内情報、計算定数などの装置内情報を読み取る。ここで、装置内情報としては、炉内外の各種熱電対からの温度情報、流量計からのガス流量、大気圧、湿度などを計算の必要に応じて読み取る。次にデータ変換ステップでA/Dコンバータなどによって酸化計算ができる数値データへ変換する。
次に、複数の酸化膜厚計算ステップで、装置内情報として得られた複数の温度情報から現時刻の酸化膜厚を計算する。計算モデルとしては、例えば、以下に示す式(4)などの一般的な式をそのまま用いても良いが、
要求される計算速度や計算の利便性の都合上、式(4)を時間微分してτを消去した、以下に示す式(5)を用いることが望ましい。
この式(5)において、T
ox は酸化膜厚、τは初期酸化膜厚、tは時刻、Bは二次係数、B/Aが一次係数、R
Tox は補正項であり、式(5)を用いた場合に初期酸化膜厚は積分時の積分定数として与えられる。なお、二次係数、一次係数、補正項は定数であっても構わないが、装置内情報読み込みステップで読み込んだ情報の中から必要なものを用いて計算されることが望ましく、少なくとも温度情報、大気圧情報を用いて計算されることが望ましい。例えば、以下に示す式(6)および式(7)を用いて計算を行うことが望ましい。
これら式(6)および式(7)において、kl,kpはそれぞれ真性一次係数、真性二次係数で温度の関数であり、Patom は大気圧である。また、nl,npは定数である。
次に膜厚の統計処理ステップにおいて、前記ステップで計算された酸化膜厚が複数個の場合に、ストップ判定条件で必要となる情報を作成するように統計処理を行い、終了判定ステップで終了条件がなりたつか判定を行う。終了条件が満たされなければ装置内情報読み取りステップへ戻り、条件が満たされるまで上記ステップを繰り返し、条件が満たされたらストップ信号を出すステップへ進む。
ここで、ストップ判定に対応する統計処理とは、平均値や分散などの分布に関するモーメントを少なくとも一つ用いた処理、分布関数の重ね合わせを用いた処理、上限と下限などによる範囲を用いた処理、度数分布を用いた処理などの少なくとも一つの処理を含むような処理である。終了条件は要求される計算処理の速度を満たさなければならず、時々刻々と変化する温度などの装置内情報のサンプリング時間内で高速に終了させなければならない。また、歩留まりが最も高くなるように選択することが望ましい。例えば、指定された目標膜厚と許容誤差から得られる上限と下限の中に入るウエハが最も多くなる条件とする。
例えば、膜厚の上限Tupper と下限Tlower で表される範囲を用いた処理を用いる場合、現時刻と前時刻でTupper ≦ T ≦Tlower の範囲に入る膜厚の数をカウントする処理が膜厚の統計処理部で行われる。また、終了判定ステップでは現時刻の数から前時刻の数を引いた値が負であるかどうかの判断が行われる。この方法は膜厚分布が1つの分布関数で表されるようなピークが1つの場合に高速判断が可能な方法である。なお、前時刻が定義できない初期時には、前時刻にTupper ≦ T ≦Tlower の範囲に入る膜厚の数はゼロとする。
前述したように、本実施形態の半導体装置の製造方法、ならびに半導体装置の製造装置31とその制御装置32および制御方法によれば、酸化炉内外の各種熱電対からの複数の温度情報を用いて複数個の酸化膜厚を計算し、それを統計処理して終了判定を行うので、歩留まりを最も高くする条件で酸化処理を終了させることができる。本実施形態に係る半導体装置の製造装置31は、ウエハ温度を直接モニタリングする熱電対が装置に取り付けられているなど、ウエハの温度および表面ガス濃度などを直接モニタリングする手段を装置が有する場合に特に有効である。
したがって、図7に示すように、図7中破線で示されているウエハの目標膜厚付近においてばらついているウエハの膜厚の実測値を、ウエハの目標膜厚に高い精度で収束させることができる。
なお、例えばストップ信号を出した後に残留する酸化ガスによって酸化される場合などを取り扱うために、終了判定部34bおよび終了判定ステップが将来の状態を推定して終了条件を判断する機能を有していても良い。具体的な終了条件は、外部から与えられるように構成されていても良く、あるいは終了判定部34b自体が有していても良い。
この第3実施形態の半導体装置の製造方法、ならびに半導体装置の製造装置31とその酸化膜厚コントローラ32および制御方法は、以上説明した点以外は、第1実施形態の半導体装置の製造方法、ならびに半導体装置の製造装置1とその制御装置5(酸化炉コントローラ2,酸化膜厚コントローラ3)および制御方法と略同じであり、解決しようとする課題を解決できるのはもちろんであるが、前述したように、複数の酸化膜の成膜状態を併行して測定して判定することができるので、以下の点で優れている。
本実施形態の半導体装置の製造方法、ならびに半導体装置の製造装置11とその酸化膜厚コントローラ32、および半導体装置の製造装置11の制御方法によれば、同一構成のシステムで1回の酸化プロセス(ラン)で処理されるウエハ面内の酸化膜の膜厚のばらつき、すなわちウエハの製造のばらつきや、あるいは1回のランで複数枚のウエハが処理される場合の、ウエハ間の製造のバラツキを考慮して酸化プロセスを行うことができる。例えば、図示しない半導体シリコンのウエハを酸化する際に、図7に示すように、ウエハの位置毎にバラツキがある場合、製品としての半導体装置の歩留まりを向上できるように制御できる。このように、本実施形態の半導体装置の製造方法、ならびに半導体装置の製造装置31とその制御装置32および制御方法によれば、複数のウエハの酸化膜厚の成膜状態を高い精度で制御して、統計的に計算および判定できるので、製造される半導体装置の性能を高い水準に維持しつつ、生産効率を向上できる。
(第4の実施の形態)
次に、第4実施形態に係る半導体装置の製造方法、ならびに半導体装置の製造装置とその制御装置および制御方法を、図8および図9に表す構成に基づいて説明する。
この第4実施形態の半導体装置の製造方法、ならびに半導体装置の製造装置41(本実施形態においては、その一部のみを図示する。)と、その制御装置42(本実施形態においては、その一部である酸化膜厚コントローラ42のみを図示する。)および制御方法は、主にこの半導体装置の製造装置41が具備する酸化膜厚コントローラ42の内部構成、およびこの酸化膜厚コントローラ42における情報処理の流れが、前述した第1実施形態の半導体装置の製造装置1が具備している制御装置5を構成している酸化膜厚コントローラ3の内部構成、およびこの酸化膜厚コントローラ3における情報処理の流れと異なっており、その他の構成、作用、および効果は略同様である。よって、その主に異なっている部分について説明するとともに、前述した第1実施形態と同一の構成部分についてはその説明を省略する。
前述した第3実施形態においては、ウエハ温度を直接モニタリングする手段を酸化炉が有する場合に有効な方法を述べた。本実施形態ではウエハ温度あるいはウエハ面上の任意の位置における温度など複数の任意の位置温度を直接モニタリングする手段を装置が有しない場合、例えば図示しない酸化炉の側壁に取り付けられている熱電対で温度をモニタリングするなど、間接的な手段を有している場合に有効な方法について述べる。
この第4実施形態の半導体装置の製造装置41は、これが備える制御装置を構成している酸化膜厚コントローラ42の内部構成が、図8に示すような構成となっている。また、本実施形態の酸化膜厚コントローラ42は、前述した第1実施形態〜第3実施形態の酸化膜厚コントローラ3,13,32と同様に、図示しない酸化炉コントローラとは別体に構成されているものとするが、酸化炉コントローラの内部に、その機能の一部として一体に構成されていても構わない。
本実施形態の酸化膜厚コントローラ42は、これが備える酸化膜厚計算部43が、スタート信号、図示しない酸化炉の内部情報、計算定数、およびモデルパラメータなどを受け取る機能を有しており、予め指定されたウエハ上の任意の位置で現時刻の酸化膜厚を計算する機能を有している。予め指定するウエハ位置は複数個指定可能であり、バッチ処理の場合は酸化炉内に導入される複数のウエハの何枚目であるかまで指定しても良い。また、位置の指定は計算定数として通常受け取るが、それとは別な情報として受け取る機能を有していても良く、場所を予め決定しておき、酸化膜計算部内部に情報として有していても良い。すなわち、本実施形態の酸化膜厚計算部43は、複数の酸化膜厚を計算できる、いわゆるマルチ酸化膜厚計算部43aを有している。
本実施形態の酸化膜厚コントローラ42は、前述した第3実施形態の酸化膜厚コントローラ32と比べて、図示しない酸化炉内の複数の位置の温度を計算する機能を有する、いわゆるマルチ温度計算部43aが加わっている点で異なっている。このマルチ温度計算部43aは、具体的には、例えば酸化炉の内側壁に取り付けられている熱電対で測定(モニタリング)した温度から、複数枚のウエハの温度や、あるいは複数枚のウエハのそれぞれの付近の所定の位置における温度を計算する機能を有している。
また、本実施形態の酸化膜厚コントローラ42は、これが備える計算膜厚判定部44が、ストップ判定条件と前記マルチ酸化膜厚計算部43aで計算された酸化膜厚の情報を受け取る機能を有し、複数の酸化膜厚が計算された場合にストップ判定条件に対応した統計処理を行う機能および指定されたストップ判定条件が成り立つ場合にストップ信号を出す機能を有している。すなわち、本実施形態の計算膜厚判定部44は、複数の酸化膜厚を判定できる、いわゆるマルチ膜厚統計部44aおよびマルチ膜厚終了判定部44bを有している。
本実施形態の酸化膜厚コントローラ42は、図9に示すフローチャートに沿って演算処理を行う。この酸化膜厚コントローラ42が行う演算処理は、図6に示すフローチャートに沿って行われる第3実施形態の酸化膜厚コントローラ32が行う演算処理と比べて、複数の位置の温度計算ステップが複数の酸化膜厚計算ステップの前に入っている点で異なっている。この複数の位置の温度計算ステップが複数の酸化膜厚計算ステップの前に入っている場合では、例えば酸化炉の内側壁に取り付けられている熱電対でモニタリングした温度をT
M 、膜厚計算を行う部分の温度をT
W とし、定数をa、T
M の関数である補正項R(T
M )を用いて、以下に示す式(8)に基づいて、膜厚計算を行う部分の温度を計算する。
なお、この式(8)は膜厚計算を行う回数だけ計算する。また、酸化炉の内部情報のサンプリング時間内で高速に処理する必要から、補正項R(TM )はゼロであることが望ましいが、より高次の効果を反映させて計算の精度を高めるために、補正項R(TM )を付け加えてもよい。すなわち、より短い間隔で高速に処理することにより処理回数を増やし、これによって計算精度を高めても良いし、あるいは1回ごとの計算精度を高めることにより、全体の計算精度を高めてもよい。どちらの方法でも、適宜選択して実行できる。
また、酸化炉の内側壁に取り付けられている熱電対でモニタリングした温度、および膜厚計算を行う部分の温度がそれぞれ複数ある場合には、それらの数をそれぞれN
M ,N
W とすると、N
M 列の列ベクトルT
M 、T
W 、そしてN
W 行N
M 列のマトリックスA、および補正項R(T
M )を用いて、以下に示す式(9)に基づいて計算を行えば良い。
この第4実施形態の半導体装置の製造方法、ならびに半導体装置の製造装置41とその酸化膜厚コントローラ42および制御方法は、以上説明した点以外は、第1実施形態の半導体装置の製造方法、ならびに半導体装置の製造装置1とその制御装置5(酸化炉コントローラ2,酸化膜厚コントローラ3)および制御方法と略同じであり、解決しようとする課題を解決できるのはもちろんであるが、前述したように、複数の酸化膜の温度および膜厚を併行して測定して、統計的に処理して判定することができるので、以下の点で優れている。
本実施形態の半導体装置の製造方法、ならびに半導体装置の製造装置41とその酸化膜厚コントローラ42、および半導体装置の製造装置41の制御方法によれば、ウエハ温度あるいはウエハ付近の所定の位置における温度など、複数の位置の温度を直接モニタリングする手段を有していない場合においても、それら複数の位置の温度を実質的に測定できる。したがって、製造される半導体装置の性能をより高い水準に維持しつつ、歩留まりを向上させて生産効率をより向上できる。
(第5の実施の形態)
次に、第5実施形態に係る半導体装置の製造方法、ならびに半導体装置の製造装置とその制御装置および制御方法を、図10〜図12に表す構成に基づいて説明する。
この第5実施形態の半導体装置の製造方法、ならびに半導体装置の製造装置51(本実施形態においては、その一部のみを図示する。)と、その制御装置52(本実施形態においては、その一部である酸化膜厚コントローラ52のみを図示する。)および制御方法は、主にこの半導体装置の製造装置51が具備する酸化膜厚コントローラ52の内部構成、およびこの酸化膜厚コントローラ52における情報処理の流れが、前述した第1実施形態の半導体装置の製造装置1が具備している制御装置5を構成している酸化膜厚コントローラ3の内部構成、およびこの酸化膜厚コントローラ3における情報処理の流れと異なっており、その他の構成、作用、および効果は略同様である。よって、その主に異なっている部分について説明するとともに、前述した第1実施形態と同一の構成部分についてはその説明を省略する。
本実施形態の半導体装置の製造装置51は、これが備える制御装置を構成している酸化膜厚コントローラ52の内部構成が、図10に示すような構成となっている。また、本実施形態の酸化膜厚コントローラ52は、前述した第1実施形態〜第4実施形態の酸化膜厚コントローラ3,13,32,42と同様に、図示しない酸化炉コントローラとは別体に構成されているものとするが、酸化炉コントローラの内部に、その機能の一部として一体に構成されていても構わない。
前述した第3実施形態および第4実施形態においては、主として酸化炉内に導入されるガスが1種類の場合について述べた。本実施形態においては、図12に簡略して示すように、図示しない酸化炉内へ順次、あるいは同時に複数種類のガス、例えば、Gas1〜Gas3が導入される場合、さらにそれら複数種類のガスが反応して、それらGas1〜Gas3とは異なるガスが酸化炉内に発生する場合においても、それらを考慮した上で、膜厚の制御を高精度に行うことができる方法について説明する。
一般の半導体装置の製造装置においては、安全性や品質保証などの理由から、酸化炉内へのウエハ搬入、昇温、温度保持、ガス導入、ガスの切り替え、降温、ウエハの搬出などの一連の各処理が設定されたプロセスシークエンスが必要である。このような様々なプロセスシークエンスを予め考慮することにより、プロセスシークエンスの変更や、あるいはプロセスの時間変化などがある場合に、それらに迅速に対応することにより、酸化炉を高精度に制御したり、あるいはそのような高精度の制御を行うモデルを得るまでの試行錯誤の回数を大幅に低減させたりすることができる。これは、例えば図12に示すように、酸化炉内に導入されるガスの切り替えの前後で膜の成長速度が大きく異なるようなガスの切り替えがある場合や、あるいは昇降温による大きな温度変化がある場合などに極めて有効な対応手段となる。以下、詳しく説明する。
この第5実施形態の酸化膜厚コントローラ52は、図10に示すように構成されている。この酸化膜厚コントローラ52は、図8に示すように構成されている第4実施形態の酸化膜厚コントローラ42と比べて、酸化炉内に導入されるガス流量や、あるいは酸化炉外の大気圧などから、酸化炉内の雰囲気や、各ガスの処理方法などを決定する手段と、その雰囲気に伴う処理を考慮して複数の酸化膜厚を計算するように設定されている点で異なっている。また、この酸化膜厚コントローラ52は、ドライ(Dry )雰囲気用、ウェット(Wet )雰囲気用、あるいはそれらの混合雰囲気用などの、異なる酸化処理に応じた膜厚計算用のモデルパラメータ(フィッティングパラメータ)を、前記各ガス、Gas1〜Gas3に対応したデータとして備えている。
また、本実施形態の酸化膜厚コントローラ52は、図11に示すフローチャートに沿って演算処理を行う。この酸化膜厚コントローラ52が行う演算処理は、図9に示すフローチャートに沿って行われる第4実施形態の酸化膜厚コントローラ42が行う演算処理と比べて、ガス分圧計算ステップが複数の位置の温度計算ステップの前に入っていること、および複数の酸化膜圧計算ステップの中に、複数の酸化ガスが混合している場合の処理が含まれていることの2点で異なっている。
本実施形態の酸化膜厚コントローラ42は、図9に示すフローチャートに沿って演算処理を行う。この酸化膜厚コントローラ42が行う演算処理は、図6に示すフローチャートに沿って行われる第3実施形態の酸化膜厚コントローラ32が行う演算処理と比べて、複数の位置の温度計算ステップが複数の酸化膜厚計算ステップの前に入っている点で異なっている。この複数の位置の温度計算ステップが複数の酸化膜厚計算ステップの前に入っている場合では、例えば酸化炉の内側壁に取り付けられている熱電対でモニタリングした温度をTM 、膜厚計算を行う部分の温度をTW とし、定数をa、TM の関数である補正項R(TM )を用いて、前述した式(8)に基づいて、膜厚計算を行う部分の温度を計算する。
具体的には、ガス分圧計算ステップにおいて、例えば以下に示す式(10)を用いて、ガス流量と大気圧とからガス分圧を計算する。
この式(10)において、酸化炉内へ導入される複数のガスについて、i番目のガスの分圧をP
i 、ガス流量をF
i 、大気圧をP
atom としている。また、ガスの反応がある場合、例えば水素ガスと酸素ガスとを含み、それらが反応する場合では、以下に示す式(11)〜(17)を用いて計算を行えばよい。
これらの式(11)〜(17)において、各ガスの間で複数の反応がある場合は、前述した考えと同様に、FH2 ,FO2 はそれぞれ反応前の水素ガス流量と酸素ガス流量、FH2O は反応によって発生する水の流量、F’H2 ,F’O2 はそれぞれ反応後の水素ガス流量と酸素ガス流量とみなせば良い。また、PH2 ,PO2 ,PH2O はそれぞれ水素ガス分圧、酸素ガス分圧、水の分圧である。
複数の反応がある場合には、前記各式を同様な考え方で拡張した式を用いれば良いだけであるので、その詳しい説明は省略する。また、不完全な反応などを考慮するために、前記各式(11)〜(17)において、然るべき補正項を付け加えたり、あるいは差し引いたり、または乗じたり、除したりしても構わない。成膜される酸化膜が所望される膜厚に近い状態で略均一に成膜されるように、適宜選択して設定すれば良い。
次に、複数の酸化ガスが混合している場合の処理を含む複数の酸化膜圧計算ステップにおいては、第3実施形態で示した式(6)および式(7)を、例えば以下に示す式(18)および式(19)に変更して計算を行えばよい。
これらの各式(18)および式(19)において、P
G はウエハを酸化するガスの分圧であり、R
l ,R
p はそれぞれ一次係数と二次係数の補正項である。ウエハを酸化するガスが複数あり、それらの相互作用がある場合はこの補正項を利用することが望ましい。また、ウエハを酸化するガスが複数あり、相互作用が無視できるような場合は、第3実施形態中の式(5)の変わりに、例えば以下に示す式(20)を用いて計算を行う。
この式(20)において、Bi 、(B/A)i 、(RTox )i は、それぞれウエハを酸化する複数のガスにおけるi番目のガスの二次係数と一次係数、そして補正項であり、ai は定数である。
また、前述した各ガス(雰囲気)ごとの各係数、および混合ガス用の各係数は、図10に示すように、様々なモデルパラメータとして、これら各モデルパラメータを保存するモデルパラメータ保存部55に保存されている。それら各モデルパラメータは、図11に示す演算ステップに入る前に、前述した第2実施形態の酸化膜厚コントローラ13が行う図4に示されている酸化膜厚初期化ステップにおいて、実行する酸化処理の種類に適したものが選択されて読み込まれる。また、これら各モデルパラメータは、同じく図11に示す演算ステップに入る前に、前述した第2実施形態の酸化膜厚コントローラ13が行う図4に示されているデータ解析ステップにおいて、フィッティングパラメータとして最適化された値に加工されて、モデルパラメータ保存部55に保存される。
この第5実施形態の半導体装置の製造方法、ならびに半導体装置の製造装置51とその酸化膜厚コントローラ52および半導体装置の製造装置51の制御方法は、以上説明した点以外は、第1実施形態の半導体装置の製造方法、ならびに半導体装置の製造装置1とその制御装置5(酸化炉コントローラ2,酸化膜厚コントローラ3)および制御方法と略同じであり、解決しようとする課題を解決できるのはもちろんであるが、前述したように、酸化炉内に導入されるガスの種類が複数種類であること、およびそれらのガスが互いに反応する可能性、の2点を考慮しつつ、酸化膜の温度および膜厚を併行して測定して判定することができるので、以下の点で優れている。
本実施形態の半導体装置の製造方法、ならびに半導体装置の製造装置51とその酸化膜厚コントローラ52、および半導体装置の製造装置51の制御方法によれば、酸化炉内に同時に複数種類のガスが導入される場合、さらにガスが反応して異なるガスが発生する場合についても、酸化炉内に導入されるガスの流量や、あるいは酸化炉の外部の大気圧などから、酸化炉の内部の雰囲気や、各ガスの処理などを決定する手段および方法と、その雰囲気に伴う各種処理を考慮しつつ複数の酸化膜厚を統計的に計算するので、さらに高精度な膜厚制御が可能である。したがって、製造される半導体装置の性能をさらに高い水準に維持しつつ、歩留まりを向上させて生産効率をさらに向上できる。
(第6の実施の形態)
次に、第6実施形態に係る半導体装置の製造方法、ならびに半導体装置の製造装置とその制御装置および制御方法を、図13〜図17に表す構成に基づいて説明する。
この第6実施形態の半導体装置の製造方法、ならびに半導体装置の製造装置61(本実施形態においては、その一部のみを図示する。)と、その制御装置62(本実施形態においては、その一部である酸化膜厚コントローラ62のみを図示する。)および制御方法は、主にこの半導体装置の製造装置61が具備する酸化膜厚コントローラ62の内部構成、およびこの酸化膜厚コントローラ62における情報処理の流れが、前述した第1実施形態の半導体装置の製造装置1が具備している制御装置5を構成している酸化膜厚コントローラ3の内部構成、およびこの酸化膜厚コントローラ3における情報処理の流れと異なっており、その他の構成、作用、および効果は略同様である。よって、その主に異なっている部分について説明するとともに、前述した第1実施形態と同一の構成部分についてはその説明を省略する。
本実施形態の半導体装置の製造装置61は、これが備える制御装置を構成している酸化膜厚コントローラ62の内部構成が、図13に示すような構成となっている。また、本実施形態の酸化膜厚コントローラ62は、前述した第1実施形態〜第5実施形態の酸化膜厚コントローラ3,13,32,42,52と同様に、図示しない酸化炉コントローラとは別体に構成されているものとするが、酸化炉コントローラの内部に、その機能の一部として一体に構成されていても構わない。
この第6実施形態においては、図17に示すように、複数種類のガスが複数本の配管を通って酸化炉としてのチャンバ77内に導入される場合の膜厚計算の実行方法、構成、および手段などについて説明する。具体的には、本実施形態においては、4種類のガス、Gas1〜Gas4がチャンバ77内に導入される設定とする。このような設定状況下において膜厚の計算を行う際に、チャンバ77内に導入されるGas1〜Gas4の各ガスから構成されるチャンバ77内の雰囲気を容易に特定できるようにするための、酸化膜厚コントローラ62における膜厚計算の実行方法、構成、および手段などについて説明する。それとともに、半導体装置の製造装置61や、この半導体装置の製造装置61を含む図示しないプラント施設などの改造などに伴う配管の変更や、それら配管の再接続を行った場合に、酸化膜厚コントローラ62における膜厚計算の実行方法、構成、および手段などの再設定を容易に行うことができるようにするための方法、構成、および手段などについても述べる。
一般の半導体装置の製造装置においては、酸化炉内に順次、または同時に複数種類のガスを導入する。ところが、従来技術における半導体装置の製造装置は、そのようなガスの配管情報を取り扱う装置が設けられていないため、複数のガスを酸化炉内へ導入する場合、それらの流量や分圧などを高い精度で制御して取り扱うことができない。従来技術の半導体装置の製造装置においては、これに付随して設けられている配管構造が、万が一の非常時においても十分な安全性を確保できるように、例えば図17に示すように、排気経路が設けられているなど、複雑な構造になっている場合がほとんどである。ところがこのような配管構造になっている場合、複数種類のガスが酸化炉内に導入される場合の膜厚計算を行う際に、酸化炉内に導入されるガスを特定することが極めて困難である。ガスの種類が多数になる場合や、それらのガス同士の間における反応が頻繁に行われる場合には、酸化炉内の雰囲気を構成しているガスを特定することが事実上不可能となる場合もある。
本実施形態の半導体装置の製造装置61は、そのような問題を解決し得る構成となっている。以下、この半導体装置の製造装置61が具備する酸化膜厚コントローラ62の機能を中心に詳しく説明する。
まず、この第6実施形態の半導体装置の製造装置61には、図17に示すような構成からなる配管設備71が取り付けられている。この配管設備71は、4種類のガス、Gas1〜Gas4をチャンバ77内に導入するための第1〜第4の4本の配管78a〜78d、これら各配管78a〜78d上においてチャンバ77の上流側に設けられており、各配管78a〜78d内を流れる各ガスの流量を測定するための第1〜第4の4個のガス流量計(MFC)72a〜72d、各配管78a〜78d上において、ガス流量計72a〜72dを挟んでその上流側と下流側にそれぞれ1個ずつ設けられており、各配管78a〜78d内を流れる各ガスの流量を調節する上流側電磁弁73a〜73dおよび下流側電磁弁74a〜74d、第1〜第3の3本の配管78a〜78cの全てからチャンバ77内へ通じる配管上に設けられており、3種類のガス、Gas1〜Gas3のチャンバ77内へ導入される流量を調節する総合電磁弁75、およびGas1〜Gas4を排気するための排気管79と、この上に設けられており、排気量を調節する排気用電磁弁76などから構成されている。
以上説明した構成からなる配管設備71を備えた第6実施形態の半導体装置の製造装置61が具備する酸化膜厚コントローラ62は、図13に示すように構成されている。この酸化膜厚コントローラ62は、図5に示すように構成されている第3実施形態の酸化膜厚コントローラ32と比べると、前記各電磁弁73a〜73d,74a〜74d,75,76のそれぞれの通電状態のONまたはOFFなどに関する論理演算を行う配管情報処理部68と、チャンバ77内へ導入するガス種とそのガス流量を短時間で把握するために配管情報を簡単化した導入ガス選択情報データ保存部69とが備えられているとともに、酸化膜厚計算部66がガス選択情報データを用いてチャンバ77内に導入されるガス種とガス流量を決定する手段を持つように構成されている点で異なっている。
本実施形態の酸化膜厚コントローラ62は、図14に示すフローチャートに沿って演算処理を行う。この酸化膜厚コントローラ62が行う演算処理は、図4に示すフローチャートに沿って行われる第2実施形態の酸化膜厚コントローラ13が行う演算処理と比べて、配管情報入力ステップと配管情報処理ステップとが加わっている点で異なっている。それとともに、この酸化膜厚コントローラ62が行う演算処理は、図6に示すフローチャートに沿って行われる第3実施形態の酸化膜厚コントローラ32が行う演算処理と比べて、図15のフローチャートに示すように、酸化膜厚計算ステップがガスの種類とガスの流量とを決定する配管情報処理を含むステップに変更されている点で異なっている。配管情報処理ステップで作成された導入ガス選択情報は、酸化膜厚計算初期化ステップで取り込まれる。また、配管情報処理は、半導体装置の製造装置61および配管設備71の立ち上げ時(設定時)、あるいは半導体装置の製造装置61および配管設備71の改造時(変更時、再設定時)などに行えば良く、通常は簡略化されて保存された導入ガス選択情報を酸化膜厚計算部66が読み込む処理を行う。また、半導体装置の製造装置61および配管設備71の立ち上げ時、あるいは半導体装置の製造装置61および配管設備71の改造時などにおいて、酸化膜厚計算部66は配管情報処理部68が持つ導入ガス情報を直接取り込むように構成されていても良い。それらの設定は、適宜選択して構わない。
また、本実施形態の酸化膜厚コントローラ62は、図15に示すフローチャートに沿って、ガスの種類とガスの流量とを決定する配管情報処理を含む酸化膜厚計算ステップの演算処理を行う。この酸化膜厚コントローラ62が行う酸化膜厚計算ステップの演算処理は、図11に示すフローチャートに沿って行われる第5実施形態の酸化膜厚コントローラ52が行う演算処理と比べて、チャンバ77内に導入される酸化ガスを決定する酸化ガス決定ステップが、酸化ガス分圧計算ステップの前に加わっている点で異なっている。この酸化ガス決定ステップにおいて、チャンバ77内に導入されるガスの種類とその流量とが、導入ガス決定情報を用いて決定(特定)される。
本実施形態の酸化膜厚コントローラ62に設けられている配管情報処理部68は、図16に示すフローチャートに沿って演算処理を行う。
まず、配管要素情報読み取りステップにおいては、図示しないガス元、前記各電磁弁73a〜73d,74a〜74d,75,76、同じく前記各ガス流量計(MFC)72a〜72d、酸化炉(チャンバ)77などの構成要素の接続状態を表す配管データを読み込む。この接続データは、具体的には、例えば図示しない回路シミュレータへ入力する素子接続データなどと同様に、前記各配管78a〜78d,79をノードとして表し、ガス元や、各電磁弁73a〜73d,74a〜74d,75,76などは、それら各配管78a〜78d,79に接続された要素として取り扱う設定として構わない。この場合、配管データは、図示しない入出力用の端末、その情報が保存されたファイルなどのデータを保存する図示しない保存装置、LANで接続された図示しない入出力端末、あるいはLANで接続された図示しないデータの保存装置などのうちの少なくとも1つからデータを読み込む設定としておけばよい。
次に、入力データチェックステップにおいては、入力されたデータが論理的に正しいか否か、あるいは正しい入力フォーマットか否かをチェックする。このステップは、入力データに誤りが無いことが保証されている場合は、省略しても差し支えない。
その後、入力された配管情報に、実際に酸化処理に関わっていない余分な配管、すなわちリダンダントな配管(要素)が入っているか否かを判断し、入っていない場合には、そのまま次の論理情報の作成ステップへ進む。また、リダンダントな配管(要素)が入っている場合には、それらを取り除く処理を行う、リダンダントな要素の削除ステップ、へ進む。ここでリダンダントな要素とは、具体的には、チャンバ77内にガスを導入するにあたって、無関係な要素、つまり無関係な配管のことを指す。
論理情報の作成ステップにおいては、ノードとしての各配管78a〜78d,79、要素としてのガス元、および各電磁弁73a〜73d,74a〜74d,75,76などのデータから、論理データあるいは論理式を作成する。この作成された、論理データあるいは論理式は、図15に示したフローチャートのガスの種類およびガスの流量を決定する配管情報処理を含む酸化膜厚計算ステップにおける処理が高速化されるように、次の論理情報の簡略化ステップにおいて簡単化が行われる。そして最後の論理情報の保存ステップにおいて、それら簡略化された論理データあるいは論理式としての論理情報が、図13に示されている導入ガス選択情報データ保存部69に保存される。
簡略化された論理情報が、配管要素情報読み取りステップで直接入力される場合には、論理情報の保存ステップで簡略化された論理情報を、導入ガス選択情報データ保存部69に直接保存しても良い。また、論理情報作成ステップで作成されるデータが、配管要素情報読み取りステップで直接入力される場合には、前記リダンダントな要素の処理に関するステップと、論理情報の作成ステップとは省略しても差し支えない。
この第6実施形態の半導体装置の製造方法、ならびに半導体装置の製造装置61とその酸化膜厚コントローラ62および半導体装置の製造装置61の制御方法は、以上説明した点以外は、第1実施形態の半導体装置の製造方法、ならびに半導体装置の製造装置1とその制御装置5(酸化炉コントローラ2,酸化膜厚コントローラ3)および制御方法と略同じであり、解決しようとする課題を解決できるのはもちろんであるが、前述したように、複数のガスが複雑な配管設備71で酸化炉77内に導入される場合を考慮して、その様々な設定に対応できることを前提に構成されている酸化膜厚コントローラ62を具備しているので、以下の点で優れている。
本実施形態の半導体装置の製造方法、ならびに半導体装置の製造装置61とその酸化膜厚コントローラ62および半導体装置の製造装置51の制御方法によれば、前述した第5実施形態が有する効果に加えて、さらに酸化炉77内に導入されるガスを容易に特定したり、酸化炉77内の雰囲気も容易に特定したりすることができる。したがって、製造される半導体装置の性能をさらに高い水準に維持しつつ、歩留まりを向上させて生産効率をさらに向上できる。
また、半導体装置の製造装置61および配管設備71の立ち上げ時、あるいは半導体装置の製造装置61および配管設備71の改造時などにおいても、酸化膜厚コントローラ62、ひいてはこの半導体装置の製造装置61を取り替えたりすること無く、導入ガス選択情報データ保存部69に保存されている導入ガス選択情報データの中から適正なデータを選び出し、これに適する前述した演算処理を行うだけで、十分に対応できる。さらに、そのような半導体装置の製造装置61および配管設備71の立ち上げや、あるいは半導体装置の製造装置61および配管設備71の改造などが行われた際には、それらの新しい情報を、新たな導入ガス選択情報データとして取り込んで、導入ガス選択情報データ保存部69に保存することも容易にできる。
(第7の実施の形態)
次に、第7実施形態に係る半導体装置の製造方法、ならびに半導体装置の製造装置とその制御装置および制御方法を、図18〜図20に表す構成に基づいて説明する。
この第7実施形態の半導体装置の製造方法、ならびに半導体装置の製造装置81(本実施形態においては、その一部のみを図示する。)と、その制御装置82(本実施形態においては、その一部である酸化膜厚コントローラ82のみを図示する。)および制御方法は、主にこの半導体装置の製造装置81が具備する酸化膜厚コントローラ82の内部構成、およびこの酸化膜厚コントローラ82における情報処理の流れが、前述した第1実施形態の半導体装置の製造装置1が具備している制御装置5を構成している酸化膜厚コントローラ3の内部構成、およびこの酸化膜厚コントローラ3における情報処理の流れと異なっており、その他の構成、作用、および効果は略同様である。よって、その主に異なっている部分について説明するとともに、前述した第1実施形態と同一の構成部分についてはその説明を省略する。
本実施形態の半導体装置の製造装置81は、これが備える制御装置を構成している酸化膜厚コントローラ82の内部構成が、図18に示すような構成となっている。また、本実施形態の酸化膜厚コントローラ82は、前述した第1実施形態〜第6実施形態の酸化膜厚コントローラ3,13,32,42,52,62と同様に、図示しない酸化炉コントローラとは別体に構成されているものとするが、酸化炉コントローラの内部に、その機能の一部として一体に構成されていても構わない。
この第7実施形態においては、ガスの流量変化を伴う複数種類のガスを取り扱う場合や、複数位置の温度を取り扱う場合において、複数回の酸化処理において発生する計算上の酸化膜の膜厚と、実際に形成される酸化膜の膜厚との膜厚の差の乖離傾向、すなわち膜厚のドリフトに対して高精度な制御を行うための構成について説明する。
一般の半導体装置の製造装置においては、酸化炉の内部および外部情報を、実際に測定しつつ順次取り込んで、解析するような、いわゆるリアルタイムで酸化炉の内部および外部情報をデータ解析して利用できる装置が設けられていない。これにより、酸化炉の内外において発生する外乱や、前記第6実施形態において説明した配管の設定の変更、あるいは複数種類のガスの組み合わせなどに迅速に適応して、半導体装置の製造装置を高精度に制御することが事実上、殆ど不可能であった。
本実施形態の半導体装置の製造装置81は、そのような問題を解決し得る構成となっている。以下、この半導体装置の製造装置81が具備する酸化膜厚コントローラ82の機能を中心に詳しく説明する。
この第7実施形態の酸化膜厚コントローラ82は、図18に示すように構成されている。この酸化膜厚コントローラ82は、図5に示すように構成されている第3実施形態の酸化膜厚コントローラ32と比べて、図示しないモニタがモニタリングした酸化炉内外の情報を、モニタリングした時刻とともに時系列情報(データ)として保存する機能を酸化膜厚計算部86が有しているとともに、それら時系列情報(データ)を取り込む機能をデータ解析部85が有している点で異なっている。それら時系列情報(データ)は、モニタリングされた時刻、酸化炉内の内部情報、酸化炉外の外部情報、計算定数、酸化膜厚の計算値、および所定のモデルパラメータセットなどを含むように構成されており、1回の酸化毎に各時刻の前記各情報が全てまとめて保存されるように設定されている。
本実施形態の酸化膜厚コントローラ82は、図19に示すフローチャートに沿って演算処理を行う。この酸化膜厚コントローラ82が行う演算処理は、図4に示すフローチャートに沿って行われる第2実施形態の酸化膜厚コントローラ13が行う演算処理と比べて、データ解析部85で時系列データを取り込むように設定されている点で異なっている。同様に、この酸化膜厚コントローラ82が行う演算処理は、図6に示すフローチャートに沿って行われる第3実施形態の酸化膜厚コントローラ32が行う演算処理と比べて、データ解析部85で時系列データを取り込むように設定されている点で異なっている。
また、酸化膜厚コントローラ82に設けられている酸化膜厚計算部86は、図20に示すフローチャートに沿って演算処理を行う。この酸化膜厚計算部86が行う演算処理は、図6に示すフローチャートに沿って行われる第3実施形態の酸化膜厚コントローラ32に設けられている酸化膜厚計算部86が行う演算処理と比べて、膜厚が規定値に達したかを判断するステップの後、かつストップ信号を出すステップの前に、図示しないLAN上のコンピュータに時系列情報を出力するステップが加わっている点である。この時系列情報を出力するステップは、膜厚が規定値に達したか判断するステップの前に置き、酸化炉内外の情報をモニタリングしつつ、酸化膜厚計算を行う毎に時系列情報保存部88に保存するようにしても構わない。これは、酸化炉内外の情報をモニタリングして酸化膜厚計算し、終了判定を行うまでに要する所用時間を予め勘案して取捨選択すればよい。
この第7実施形態の半導体装置の製造方法、ならびに半導体装置の製造装置81とその酸化膜厚コントローラ82および半導体装置の製造装置81の制御方法は、以上説明した点以外は、第1実施形態の半導体装置の製造方法、ならびに半導体装置の製造装置1とその制御装置5(酸化炉コントローラ2,酸化膜厚コントローラ3)および制御方法と略同じであり、解決しようとする課題を解決できるのはもちろんであるが、前述したように、様々な情報を含んだ時系列情報(データ)が、1回の酸化毎に各時刻の前記各情報が全てまとめて保存されるので、以下の点で優れている。
本実施形態の半導体装置の製造方法、ならびに半導体装置の製造装置81とその酸化膜厚コントローラ82および半導体装置の製造装置81の制御方法によれば、モニタリングされた時刻、酸化炉内の内部情報、酸化炉外の外部情報、計算定数、酸化膜厚の計算値、および所定のモデルパラメータセットなどを含むように構成された時系列情報(データ)を、酸化膜厚計算部85が1回の酸化毎に全てまとめて保存するとともに、それら保存された時系列情報(データ)を、データ解析部85において利用できるように構成されている。このため、第5実施形態の効果に加えて、ガスの流量変化を伴う複数種類のガスを取り扱う場合や、複数位置の温度を取り扱う場合に、それらを逐次詳細に解析することが可能となり、高精度なパラメータフィッティングを行うことができる。このため、複数回の製造において発生する膜厚のドリフトに対して高精度な制御を行うことが可能となる。したがって、製造される半導体装置の性能をさらに高い水準に維持しつつ、歩留まりを向上させて生産効率をさらに向上できる。
(第8の実施の形態)
次に、第8実施形態に係る半導体装置の製造方法、ならびに半導体装置の製造装置とその制御装置および制御方法を、図21〜図24に表す構成に基づいて説明する。
この第8実施形態の半導体装置の製造方法、ならびに半導体装置の製造装置91(本実施形態においては、その一部のみを図示する。)と、その制御装置92(本実施形態においては、その一部である酸化膜厚コントローラ92のみを図示する。)および制御方法は、主にこの半導体装置の製造装置91が具備する酸化膜厚コントローラ92の内部構成、およびこの酸化膜厚コントローラ92における情報処理の流れ、ならびに酸化膜厚コントローラ92に半導体装置の製造装置の製造工程のシミュレーション装置98が接続されている点が、前述した第1実施形態の半導体装置の製造装置1が具備している制御装置5を構成している酸化膜厚コントローラ3の内部構成、およびこの酸化膜厚コントローラ3における情報処理の流れなどと異なっており、その他の構成、作用、および効果は略同様である。よって、その主に異なっている部分について説明するとともに、前述した第1実施形態と同一の構成部分についてはその説明を省略する。
本実施形態の半導体装置の製造装置91は、これが備える制御装置を構成している酸化膜厚コントローラ92の内部構成が、図21に示すような構成となっている。また、本実施形態の酸化膜厚コントローラ92は、前述した第1実施形態〜第7実施形態の酸化膜厚コントローラ3,13,32,42,52,62,82と同様に、図示しない酸化炉コントローラとは別体に構成されているものとするが、酸化炉コントローラの内部に、その機能の一部として一体に構成されていても構わない。
一般に、半導体装置の設計段階においては、品質の評価や構造の解析および予測のために、半導体装置の不純物分布や形状、電気特性、さらには回路の作動状態などまでコンピュータによる模擬実験を行うシミュレーションが行われている。半導体装置の微細化が進むにつれ、前述した第1〜第7の各実施形態の半導体装置の製造装置1,11,31,41,51,61,81の高精度な制御と同様に、前記シミュレーションにおいても、従来に比べて遥かに高いシミュレーション精度が要求されている。例えば前述した特許文献1(特開平8−55145号公報)に開示されている技術では、酸化膜厚を高精度にシミュレーションするために、実測値とシミュレーション値が一致するまで酸化速度を変更する方法が示されている。
しかしながら、前述したような外乱を含むリアルタイムの酸化炉内外の情報や、ガス切り替え、あるいは昇降温などのプロセスシークエンスは考慮されていない。従って、非常に限られた条件におけるシミュレーションは高精度化されても、実際の半導体装置の製造装置が取り扱う広範囲のシミュレーションを高精度化することは、実質的に殆ど不可能である。
本実施形態の半導体装置の製造装置91は、そのような問題を解決し得る構成となっている。以下、この半導体装置の製造装置91が具備する酸化膜厚コントローラ92、およびこの酸化膜厚コントローラ92に接続されている半導体装置の製造装置の製造工程のシミュレーション装置98の機能を中心に詳しく説明する。
前述した第1〜第7の各実施形態においては、半導体装置の製造装置とその制御方法および半導体装置の製造方法について述べた。この第8実施形態においては、前述した各種(複数)のフィッティングパラメータを取り込む機能、複数のフィッティングパラメータを選択する機能、およびパラメータを変換する機能を含む半導体装置の製造工程のシミュレーション装置としてのプロセスシミュレータ制御部98について説明する。本第8実施形態においては、プロセスシミュレータ制御部98が行うシミュレーションとして、酸化工程のシミュレーションを取り上げるが、このプロセスシミュレータ制御部98がシミュレーション可能な製造工程は、不純物の拡散長の制御、CVDによる薄膜堆積膜厚、窒化量、BPSG膜などのメルト量、CVD酸化膜などのデンシファイ量、シリサイド膜厚など、熱化学反応を利用したすべての工程に応用できるのはもちろんである。ただし、それらの記述は省略する。
この第8実施形態の半導体装置の製造装置91が備える酸化膜厚コントローラ92と、半導体装置の製造工程のシミュレーション装置(プロセスシミュレータ制御部)98との構成は、図21に示す用に設定されている。プロセスシミュレータ制御部98と酸化膜厚コントローラ92とは、LANで結ばれており、プロセスシミュレータ制御部98は、酸化膜厚コントローラ92が備えているデータ解析部95が保存したモデルパラメータを取り込む機能を有している。また、酸化膜厚コントローラ92の酸化膜厚計算部96の酸化モデルと、プロセスシミュレータ制御部98が有する酸化モデルとは、互換性を有する設定および構成とされている。
酸化膜厚コントローラ92の機能とプロセスシミュレータ制御部98の機能とは、具体的には図22示すように関連づけられて設定および構成されている。酸化膜厚コントローラ92は、コントローラ側データ送受信部92aを備えているとともに、プロセスシミュレータ制御部98は、シミュレータ側データ送受信部98aおよび酸化シミュレーション部98bを備えている。プロセスシミュレータ制御部98は、必要に応じて酸化膜厚コントローラ92のコントローラ側データ送受信部92aに向けて、LANを介してリクエストを送信する。酸化膜厚コントローラ92は、そのリクエストに適したモデルパラメータセットを、プロセスシミュレータ制御部98のシミュレータ側データ送受信部98aに向けて、LANを介して送信する。プロセスシミュレータ制御部98のシミュレータ側データ送受信部98aは、酸化膜厚コントローラ92から送られてきたモデルパラメータセットを受け取り、そのパラメータを必要としている酸化シミュレーション部98bへ渡し、そこで所定のシミュレーションを実行させる。
プロセスシミュレータ制御部98の他の構成を、図23に示す。このプロセスシミュレータ制御部98は、受信した1セットないし複数セットのモデルパラメータセットを保存する機能を有し、そのモデルパラメータセットは、フィッティングされた際に、その時間順序に従って時系列的に保存される。また、プロセスシミュレータ制御部98は、複数セットのモデルパラメータセットから所望する1セットを選択して取り出す機能を有するパラメータセット選択部98cを備えており、ここで選択されたモデルパラメータセットをプロセスシミュレータ制御部98内の酸化シミュレーション部98bへ送り、酸化シミュレーションを実行する。モデルパラメータセットの識別方法としては、例えばフィッティングされた日時や装置名を含む名前などを用いればよいが、基本的に各モデルパラメータセット間の違いを判別できさえすれば良いので、重複しない限り任意の名前を用いることができる。
なお、このプロセスシミュレータ制御部98と酸化膜厚コントローラ92とは、プロセスシミュレータ制御部98から酸化膜厚コントローラ92へリクエストを送信しなくても、酸化膜厚コントローラ92が新しくモデルパラメータセットをフィッティングした時点で、新しいモデルパラメータセットを酸化膜厚コントローラ92がプロセスシミュレータ制御部98に向けて自動的に送信し、それをプロセスシミュレータ制御部98が受信して保存する機能を有するように設定しても構わない。
プロセスシミュレータ制御部98の、さらに他の構成を、図24に示す。このプロセスシミュレータ制御部98は、図示しない酸化膜厚コントローラに内蔵されている酸化モデルのモデルパラメータセットを、それらよりも情報量が多い(互換性が低い)酸化モデルのモデルパラメータセットへ変換する機能を有するパラメータ変換部98dを備えた構成とされている。酸化膜厚コントローラに内蔵されている酸化モデルよりも情報量が多い(互換性が低い)酸化モデルとは、酸化膜厚コントローラに内蔵されている酸化モデルよりも高度な数値計算を行うことができる情報量を有している酸化モデルのことであり、酸化膜厚コントローラが内蔵する酸化モデルが扱う現象を包含しているモデルを指す。また、酸化膜厚コントローラが内蔵する酸化モデルよりも高度な数値計算を行うモデルにおいて用いるモデルパラメータセットには、パラメータ変換部98dにおいて変換されたモデルパラメータセット以外のパラメータを用いても良い。
この第8実施形態の半導体装置の製造方法、ならびに半導体装置の製造装置91とその酸化膜厚コントローラ92および半導体装置の製造装置91の制御方法は、酸化膜厚コントローラ92にプロセスシミュレータ制御部98が接続されている点以外は、第1実施形態の半導体装置の製造方法、ならびに半導体装置の製造装置1とその制御装置5(酸化炉コントローラ2、酸化膜厚コントローラ3)および制御方法と略同じであり、解決しようとする課題を解決できるのはもちろんであるが、前述したように、プロセスシミュレータ制御部98備えているので、以下の点で優れている。
本実施形態の半導体装置の製造方法、ならびに半導体装置の製造装置91とその酸化膜厚コントローラ92および半導体装置の製造装置91の制御方法によれば、酸化膜厚コントローラ92にプロセスシミュレータ制御部98が接続されているので、半導体装置の製造装置91の制御に用いる高精度なモデルパラメータセットを用いることができ、高精度な酸化膜厚計算が可能となり、その結果、半導体装置の製造装置91の高精度な特性予測も可能となる。特に、そのモデルパラメータセットは、前記第7実施形態に述べたように、複数回の製造において発生する膜厚のドリフトに追従した高精度なモデルパラメータセットを利用することができるので、図示しない酸化炉の最新の状態を勘案した高精度のシミュレーションが可能となる。
また、本実施形態のプロセスシミュレータ制御部98において、複数のモデルパラメータセットを選択する機能を有するパラメータセット選択部98cを備えた構成とすることにより、図示しない半導体装置を試作した時点における酸化炉の最新の状態を勘案したシミュレーションが可能であるので、試作した半導体装置のより高精度な解析が可能となる。特に、酸化膜厚コントローラ92が有する時系列情報もプロセスシミュレータ制御部98へ転送するような構成とした場合、さらに高精度な解析が可能となる。
さらに、本実施形態のプロセスシミュレータ制御部98において、モデルパラメータセットを変換する機能を有するパラメータ変換部98dを備えた構成とすることにより、酸化膜厚コントローラ92に内蔵されている酸化モデルと、その酸化モデルよりも高度な数値計算に用いることができるモデルパラメータセットとが互いに関連しているモデルパラメータセットを高精度化できるので、極めて高度な数値計算を行うモデルのシミュレーション精度もより向上させることができる。
したがって、本実施形態の半導体装置の製造方法、ならびに半導体装置の製造装置91とその酸化膜厚コントローラ92および半導体装置の製造装置91の制御方法によれば、プロセスシミュレータ制御部98が接続されていることにより、製造される半導体装置の性能を極めて高い水準に維持しつつ、歩留まりを向上させて生産効率を極めて向上できる。
(第9の実施の形態)
次に、第9実施形態に係る半導体装置の製造方法、ならびに半導体装置の製造装置とその制御装置および制御方法を、図25〜図27に表す構成に基づいて説明する。
この第9実施形態の半導体装置の製造方法、ならびに半導体装置の製造装置101(本実施形態においては、その一部のみを図示する。)と、その制御装置102(本実施形態においては、その一部である酸化膜厚コントローラ102のみを図示する。)および制御方法は、主にこの半導体装置の製造装置51が具備する酸化膜厚コントローラ52の内部構成、およびこの酸化膜厚コントローラ52における情報処理の流れ、ならびに酸化膜厚コントローラ102に外部データ保存部108が接続されている点が、前述した第1実施形態の半導体装置の製造装置1が具備している制御装置5を構成している酸化膜厚コントローラ3の内部構成、およびこの酸化膜厚コントローラ3における情報処理の流れなどと異なっており、その他の構成、作用、および効果は略同様である。よって、その主に異なっている部分について説明するとともに、前述した第1実施形態と同一の構成部分についてはその説明を省略する。
本実施形態の半導体装置の製造装置101は、これが備える制御装置を構成している酸化膜厚コントローラ102の内部構成が、図25に示すような構成となっている。また、本実施形態の酸化膜厚コントローラ102は、前述した第1実施形態〜第8実施形態の酸化膜厚コントローラ3,13,32,42,52,62,82,92と同様に、図示しない酸化炉コントローラとは別体に構成されているものとするが、酸化炉コントローラの内部に、その機能の一部として一体に構成されていても構わない。
前記第8実施形態においては、フィッティングされたパラメータと時系列情報との少なくとも1つから構成される、酸化膜厚コントローラ92内に格納された情報をモデルパラメータセットとして取り込む機能を有する半導体装置の製造工程のシミュレーション装置(プロセスシミュレータ制御部)98について説明した。そのようなモデルパラメータセットは、図25に示すように、フィッティングされたパラメータと時系列情報との少なくとも1つを、酸化膜厚コントローラ102の外部において、これに接続されている外部データ保存部108に保存するように構成しても良い。
この場合、例えば図26に示すように、酸化膜厚コントローラ102と外部データ保存部108との間のデータ送受信は、前記第8実施形態の酸化膜厚コントローラ92とプロセスシミュレータ制御部98との間のデータ送受信と同様に、コントローラ側データ送受信部102aと保存部側第1データ送受信部108aとを介した構成であっても良い。また、同図26に示すように、外部データ保存部108に保存された酸化膜厚コントローラ102内の情報を、LANで接続された図示しない他の装置などからのリクエストなどに答える形で、あるいは予め定められた条件により自動で、保存部側第2データ送受信部108bを介して、それら外部の装置へ送信する機能を有するように構成しても構わない。
また、図27に示すように、外部データ保存部108は、複数の酸化膜厚コントローラ102内の情報を保存し、必要に応じてあるいは外部からのリクエストに応じてその情報を選択し、外部へ送信するように構成しても良い。
この第9実施形態の半導体装置の製造方法、ならびに半導体装置の製造装置101とその酸化膜厚コントローラ102および半導体装置の製造装置101の制御方法は、酸化膜厚コントローラ102に外部データ保存部108が接続されている点以外は、第1実施形態の半導体装置の製造方法、ならびに半導体装置の製造装置1とその制御装置5(酸化炉コントローラ2,酸化膜厚コントローラ3)および制御方法と略同じであり、解決しようとする課題を解決できるのはもちろんであるが、前述したように、外部データ保存部108を備えているので、以下の点で優れている。
本実施形態の半導体装置の製造方法、ならびに半導体装置の製造装置101とその酸化膜厚コントローラ102および半導体装置の製造装置101の制御方法によれば、酸化膜厚コントローラ102に外部データ保存部108が接続されているので、酸化膜厚コントローラ102内の情報を必要とする装置が、必要な時点において必要な情報だけを取り出して(受け取って)利用可能となる。なお、酸化膜厚コントローラ102から酸化膜厚コントローラ102内の情報を必要とする装置間で、直接に情報の送受信を行っても良い。したがって、本実施形態の半導体装置の製造装置101を含めた、図示しない半導体製造プラント施設全体の生産効率を向上できる。
なお、本発明に係る半導体装置の製造装置、半導体装置の製造方法の制御方法、半導体装置の製造装置の制御装置、シミュレーション方法、およびシミュレーション装置は、前記第1〜第9の各実施形態には制約されない。本発明が解決しようとする課題の主旨を逸脱しない範囲内において、種々様々に設定することができる。
例えば、第5実施形態では第4実施形態に対する差異について述べたが、ウエハ温度を直接モニタリングする手段を装置が有する場合などを扱う第3実施形態にも適用可能であり、その場合は第4実施形態で加えた機能およびステップを無くせば良い。また、ガス分圧と複数の位置の温度が独立の場合は、ガス分圧計算ステップと複数の位置の温度計算ステップは交換可能であり、それらに関係がある場合は同時に処理を行っても良い。
また、第7実施形態において、前述したデータ解析部85は、過去から現在までの時系列情報から傾向(トレンド)を抽出し、将来の状態を予測したパラメータを抽出する機能を有していても良い。
また、第8実施形態に係るプロセスシミュレータ制御部98では、半導体装置の試作前の特性予測において、半導体装置のドリフトが発生して新しいモデルパラメータセットが生成される際よりも後に半導体装置の製造装置91を試作する場合に、どのモデルパラメータセットを用いれば良いかが問題となる。このような場合、例えば酸化膜厚コントローラ92に内蔵されているデータ解析部95をプロセスシミュレータ制御部98にも内蔵させるなどして、過去のデータに対して平均的に合うモデルパラメータセット、あるいは装置の酸化処理情報に対してフィッティングされたモデルパラメータセットでシミュレーションを行っても良い。また、過去のモデルパラメータセットの変化の傾向(トレンド)から、半導体装置を試作する際のモデルパラメータを予測する機能で求めたモデルパラメータセットでシミュレーションを行っても良い。
さらに、第8実施形態では、酸化膜厚コントローラ92のモデルパラメータセットをプロセスシミュレータ制御部98へ転送しているが、その変わりに酸化膜厚コントローラ92がもつ時系列情報を転送するように構成しても良く、モデルパラメータセットと時系列データの両方を転送するように構成しても良い。
1,11,31,41,51,61,81,91,101…半導体装置の製造装置、2,12…酸化炉コントローラ(プロセス処理部制御装置)、3,13,32,42,52,62,82,92,102…酸化膜厚コントローラ(プロセス制御装置)、4,14,77…酸化炉(プロセス処理部、チャンバ)、5…半導体装置の製造装置の制御装置、6,22,33,43,53,66,86,96,106…酸化膜厚計算部(プロセス数値情報処理部)、7,23,34,44,54,67,87,97,107…計算膜厚判定部(プロセス状態判定部)、15…外部センサ、16…膜厚モニタ、17…システム管理コンピュータ(上位のコンピュータ、LAN上のコンピュータ)、18…内部センサ、19,63,83,93,103…A/Dコンバータ(データ変換部)、20,64,84,94,104…計算定数ファイル、21,65,85,95,105…データ解析部、33a,43b,53c…マルチ酸化膜厚計算部(複数の酸化膜厚計算部)、34a,44a,54a…膜厚統計処理部、34b,44b,54b…終了判定部、43a,53a…マルチ温度計算部(複数の位置の温度計算部)、53b…酸化ガス分圧計算部、55…モデルパラメータ保存部(フィッティングパラメータ保存部)、68…配管情報処理部、71…配管設備、69…導入ガス選択情報データ保存部、78a,78b,78c,78d…配管、88…時系列情報保存部、92a,102a…コントローラ側データ送受信部、98…プロセスシミュレータ制御部(半導体装置の製造工程のシミュレーション装置)、98a…シミュレータ側データ送受信部、
98b…酸化シミュレーション部、98c…パラメータセット選択部、98d…パラメータ変換部、108…外部データ保存部、108a…保存部側第1データ送受信部、108b…保存部側第2データ送受信部