〔実施の形態1〕
(1.HMDの構成)
本発明の実施の一形態について、図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。
図2は、本実施形態に係るヘッドマウントディスプレイ(以下、HMDと略称する)の概略の構成を示す斜視図である。HMDは、映像表示装置1と、映像表示装置1を観察者の眼前で支持する支持手段2とで構成されている。
映像表示装置1は、観察者に外界像をシースルーで観察させるとともに、映像を表示して観察者にそれを虚像として提供するものである。この映像表示装置1は、後述する照明光学系10(図1参照)および反射型表示素子20(図1参照)を収容する筐体3に接眼光学系30を一体化させて構成されている。接眼光学系30は、全体として眼鏡の一方のレンズ(図2では右眼用レンズ)のような形状をなしている。以下、映像表示装置1の詳細について説明する。
(2.映像表示装置の構成)
図1は、映像表示装置1の概略の構成を示す断面図である。映像表示装置1は、照明光学系10と、反射型表示素子20と、接眼光学系30とを有して構成されている。なお、観察者がHMDをかけたときの左右方向(図2において左眼用レンズおよび右眼用レンズが並ぶ方向)は、図1においては反射型表示素子20の長辺方向(図1の紙面に垂直な方向)に対応しており、後述する反射型ホログラム光学素子33への光軸の入射面に垂直な方向にも対応している。
なお、上記光軸とは、ここでは、反射型表示素子20の表示領域の中心と接眼光学系30によって形成される光学瞳の中心とを光学的に結ぶ軸を指す。また、上記入射面とは、反射型ホログラム光学素子33における入射光の光軸と反射光の光軸とを含む平面を指す。
(2−1.照明光学系)
照明光学系10は、反射型表示素子20を照明するものであり、光源11と、凹面ミラー12と、第1の偏光板13とを有している。本実施形態では、反射型表示素子20を用いているので、照明光学系10は反射型表示素子20を表側から、すなわち、接眼光学系30が配置されている側から照明する。
光源11は、反射型表示素子20に向けて光を出射するものであり、3原色に対応する光、すなわち、R(赤)、G(緑)、B(青)の各色に対応する光を出射するRGB一体型のLEDで構成されている。光源11から出射される光の波長は、後述する反射型ホログラム光学素子33にて回折反射される光の波長とほぼ一致している。また、光源11と観察者の瞳(光学瞳、射出瞳)EPとは、略共役な位置関係となっている。
本実施形態では、後述するように、反射型表示素子20として時分割駆動が可能な強誘電液晶表示素子を用いているため、光源11は3原色に対応する光を時分割で順に出射する。なお、光源11の分光強度特性については後述する。
凹面ミラー12は、光源11から出射された光を反射させて反射型表示素子20に導く反射ミラーであり、入射光を反射型表示素子20の表示領域上に反射集光させている。なお、凹面ミラー12は、球面ミラーであってもよいし、シリンドリカル凹面ミラーであってもよい。
本実施形態では、凹面ミラー12は、光源11から反射型表示素子20に至る光路を折り曲げる光路折り曲げ部材として機能しており、反射型表示素子20から接眼光学系30に向かう光の光路に対して、光源11とは反対側に設けられている。すなわち、凹面ミラー12は、光源11と凹面ミラー12とで上記光路を挟むような位置に設けられている。このように光路折り曲げ部材としての凹面ミラー12を配置した点に本発明の最も大きな特徴があるが、その作用効果については後述する。
第1の偏光板13は、光源11から出射された光のうち、所定の偏光方向の光(ここではP偏光)を透過させて凹面ミラー12に導くとともに、凹面ミラー12にて光路を折り曲げられた光であって上記所定の偏光方向と同じ偏光方向の光(ここではP偏光)を透過させて反射型表示素子20に導く。
第1の偏光板13の配置によって反射型表示素子20に入射させる光をP偏光とすることにより、入射光をS偏光とする場合に比べて、反射型表示素子20での表面反射(フレネルロス)を抑えることができる。つまり、P偏光の場合は、S偏光と違って、表面での反射率がゼロとなるような入射角(ブリュースター角)が存在するため、光量損失を抑えることができる。その結果、光量損失に起因する映像品位の低下を回避することができる。
また、第1の偏光板13の表面には、例えば反射防止フィルムが貼り付けられるなど、反射防止処理が施されている。これにより、光源11からの光が第1の偏光板13の表面で反射されて不要光として反射型表示素子20に入射し、さらにはこの不要光が反射型表示素子20の表面で反射されて接眼光学系30に入射するのを抑えることができ、不要光による映像品位の低下を抑えることができる。
(2−2.反射型表示素子)
反射型表示素子20は、複数の画素をマトリクス状に有し、光源11からの出射光を画像データに応じて各画素ごとに変調することによって映像を表示する光変調素子である。より具体的には、反射型表示素子20は、強誘電液晶を2枚の基板で挟持してなり、一方の基板側に反射膜(反射電極、画素電極)が形成された反射型強誘電液晶表示素子で構成されている。
反射型表示素子20は、矩形の表示領域の長辺方向が観察者の左右方向、つまり、図1の紙面に垂直な方向となり、その短辺方向が図1の紙面に平行となるように配置されている。反射型強誘電液晶表示素子はカラーフィルタを有してはおらず、それゆえ、反射型表示素子20の各画素は、光源11から時分割で順に供給される3原色の光のそれぞれに対応して時分割でON/OFF駆動される。これにより、観察者にカラー映像を提供することができる。
また、反射型表示素子20においては、シリコン等の半導体を基板として用いることができるため、小型で集積度の高い表示素子を作製することができる。しかも、各画素をON/OFFするためのスイッチング素子(例えばTFT)や配線を含む周辺回路を、表示側とは反対側の基板に配置することができるので、開口率を容易に向上させることができ、明るい映像を表示することができる。
また、強誘電液晶表示素子は、駆動速度が速いことがメリットであるので、それゆえ、反射型表示素子20を反射型強誘電液晶表示素子で構成することにより、上記の時分割駆動方式を採用することができる。
ここで、カラーフィルタを透過するRGB光によってカラー映像を表示する従来のカラーフィルタ方式は、白色光源を常時点灯させ、1つの画素にRGBのいずれかのカラーフィルタを配置させてカラー表示を行う空間分割駆動方式であるため、モノクロ表示の場合よりも画素が3倍必要である。また、不要な色の映像光を遮光する場合には、光源は点灯させたままで、各画素で遮光しなければならない。各画素で完全に遮光することは難しいため、カラーフィルタ方式では、単色の色純度が低い。
これに対して、時分割駆動方式では、光源にてRGBの各発光部を順次点灯させるため、例えば単色を表示する場合は、残りの2色の発光部は消灯されている。これにより、色純度の高い、コントラストの高い映像を表示することができる。
また、反射型強誘電液晶表示素子は、TN(Twisted Nematic)液晶表示素子よりも広い視野角特性を有している点で優れており、凹面ミラー12から反射型表示素子20に入射する光の入射角が大きくても、コントラストが高く、色再現性が高く(色再現領域が広く)、表示品位の高い映像を提供することができる。また、照明光学系10を構成する各光学素子の配置自由度が高くなり、コンパクトで高性能の照明光学系10を構成することができる。
ここで、反射型表示素子20から接眼光学系30を介して瞳EPに至る光路中で、反射型表示素子20の表示領域の中心と瞳EPの中心とを結ぶ軸を基準軸L1とする。本実施形態では、反射型表示素子20は、反射型表示素子20と接眼光学系30との間の基準軸L1に対して表示面が傾くように配置されている。このように反射型表示素子20を配置することにより、装置の小型化に支障をきたすことなく、光源11から凹面ミラー12を介して反射型表示素子20に至る光路と、反射型表示素子20から接眼光学系30に至る光路とを確実に分離することができる。より具体的には、以下の通りである。
例えば、凹面ミラー12にて反射されて反射型表示素子20に入射する光の入射角が10°以下であると、上記した各光路の分離のために、反射型表示素子20と接眼光学系30との間隔を大きくとる必要があり、装置の小型化に支障をきたす。一方、上記入射角が60°以上であると、光源11と凹面ミラー12との間隔が大きくなり、これも装置の小型化に支障をきたす。また、反射型表示素子20での表面反射も大きくなり、映像品位の低下を招く。したがって、以上のことを考慮して、本実施形態では、上記入射角θが、10°<θ<60°の範囲内に収まるように、反射型表示素子20を配置している。
なお、反射型表示素子20は、位相補償板とTN液晶表示素子とを組み合わせて視野角特性を向上させたもので構成されてもよい。また、反射型表示素子20は、時分割駆動が可能な反射型の表示素子であればよく、例えばDMD(Digital Micromirror Device;米国テキサスインスツルメント社製)で構成することも可能である。
ただし、反射型表示素子20をDMDで構成すると、DMDの構造上、その入射角が大きくなるようなレイアウトとなり、照明光学系10が大型化することが予想される。したがって、照明光学系10の小型化を考えた場合は、本実施形態のように反射型表示素子20を反射型強誘電液晶表示素子で構成するほうが望ましい。
(2−3.接眼光学系)
接眼光学系30は、反射型表示素子20からの映像光を観察者の瞳EPに導くための光学系である。接眼光学系30は、軸非対称(回転非対称、非軸対称)な正の光学パワーを有しており、内部に入射した映像光が良好に収差補正される。この接眼光学系30は、接眼プリズム31と、偏向プリズム32(図2参照)と、反射型ホログラム光学素子33と、第2の偏光板34とを有している。
接眼プリズム31は、入射光すなわち反射型表示素子20からの映像光を内部で全反射させて反射型ホログラム光学素子33の方向に進行させ、反射型ホログラム光学素子33を介して観察者の瞳に導く一方、外光を透過させて観察者の瞳に導く第1の透明基板であり、偏向プリズム32とともに、例えばアクリル系樹脂で構成されている。この接眼プリズム31は、平行平板の下端部を下端に近くなるほど薄くして楔状にし、その上端部を上端に近くなるほど厚くした形状で構成されている。また、接眼プリズム31は、その下端部に配置される反射型ホログラム光学素子33を挟むように偏向プリズム32と接着剤で接合されている。
偏向プリズム32は、平面視で略U字型の平行平板で構成されており(図2参照)、接眼プリズム31の下端部および両側面部(左右の各端面)と貼り合わされたときに、接眼プリズム31と一体となって略平行平板となる第2の透明基板である。この偏向プリズム32を接眼プリズム31に接合することにより、観察者が接眼光学系30を介して観察する外界像に歪みが生じるのを防止することができる。
つまり、例えば、接眼プリズム31に偏向プリズム32を接合させない場合、外界像の光は接眼プリズム31の楔状の下端部を透過するときに屈折するので、接眼プリズム31を介して観察される外界像に歪みが生じる。しかし、接眼プリズム31に偏向プリズム32を接合させて一体的な略平行平板を形成することで、外界像の光が接眼プリズム31の楔状の下端部を透過するときの屈折を偏向プリズム32でキャンセルすることができる。その結果、シースルーで観察される外界像に歪みが生じるのを防止することができる。
反射型ホログラム光学素子33は、反射型表示素子20にて表示される映像を拡大して観察者の目に虚像として導く体積位相型の反射型ホログラムであり、正のパワーを持つ非球面凹面ミラーと同様の機能を持っている。つまり、反射型ホログラム光学素子33は、反射型表示素子20から出射される3原色に対応した波長の光をそれぞれ回折させて観察者の瞳に導く。
反射型ホログラム光学素子33における各色の回折波長半値幅は、光源11からの出射光の各色(出射光の各波長)の半値幅よりも狭く、光源11からの出射光のうち、反射型ホログラム光学素子33での回折効率が最大となる波長(回折ピーク波長)付近の光のみが反射型ホログラム光学素子33にて反射され、観察者の瞳に導かれることになる。なお、反射型ホログラム光学素子33の特性である回折効率の波長依存性については後述する。
反射型ホログラム光学素子33は、基板上に塗布されるホログラム感光材料を露光することによって形成されているが、このホログラム感光材料は、RGBの光の全てに感度を有する単層カラーフォトポリマーで構成されている。つまり、このホログラム感光材料をRGBに対応したレーザー光で3色同時に露光してホログラム感光材料に干渉縞を記録し、UV(紫外線)照射による定着を行った後、ベイク処理を行って増感することにより、反射型ホログラム光学素子33が作製される。
単層カラーフォトポリマーは、感光層1層でRGB3色のホログラムを記録することができるため、構成が簡便である。その結果、反射型ホログラム光学素子33を容易に、かつ、安定して作製することができる。また、3層カラーフォトポリマーを用いる場合には、後述するように、最適な回折効率および回折波長幅を得るための露光条件(例えば露光量)の特別な調整が必要になる場合があるが、単層カラーフォトポリマーを用いる場合はそのような特別な調整が不要なため、取り扱いやすいというメリットもある。
第2の偏光板34は、入射光のうちで第1の偏光板13を透過する光とは偏光方向が直交する光(ここではS偏光)を透過させて接眼プリズム31に導くものであり、接眼プリズム31において、反射型表示素子20からの光が入射する面に貼り付けられている。
(3.映像表示装置の動作)
次に、上記構成の映像表示装置1の動作について説明する。照明光学系10の光源11からはRGBの各色光が時分割で出射される。各色光(例えばP偏光)は、まず第1の偏光板13を透過し、凹面ミラー12にて反射される。そして、凹面ミラー12での反射光(P偏光)は、再び第1の偏光板13を透過して反射型表示素子20に入射する。
反射型表示素子20では、入射光が反射されるが、その際にRGBごとの画像データに応じて変調され、入射光とは異なる偏光(S偏光)となって反射型表示素子20から出射される。このとき、反射型表示素子20には、画像データに応じた映像が時分割でRGBごとに表示される。反射型表示素子20からの出射光(RGBごとの映像光)は、光源11から凹面ミラー12に至る光路を横切って接眼光学系30に到達し、接眼光学系30の第2の偏光板34を透過して、接眼プリズム31に入射する。
接眼プリズム31では、入射した映像光が接眼プリズム31の対向する2つの平面で複数回全反射され、接眼プリズム31の下端に配置された反射型ホログラム光学素子33まで導かれ、そこで反射されて瞳EPに達する。したがって、この瞳EPの位置では、観察者は、反射型表示素子20に表示されたRGBごとの映像の拡大虚像をカラー映像として観察することができる。
一方、接眼プリズム31、偏向プリズム32および反射型ホログラム光学素子33は、外界からの光をほとんど全て透過させるので、観察者は外界像をシースルーで観察することができる。反射型表示素子20に表示された映像の虚像は、外界像の一部に重なって観察されることになる。
上記のように、本実施形態では、照明光学系10が凹面ミラー12にて反射された光(P偏光)を透過させる第1の偏光板13を有しており、接眼光学系30が反射型表示素子20からの映像光(S偏光)を透過させる第2の偏光板34を有しているので、凹面ミラー12を用いる構成であっても、凹面ミラー12を介して反射型表示素子20を確実に照明して、反射型表示素子20からの映像光を接眼プリズム31を介して観察者の瞳EPに確実に導くことができる。
また、接眼光学系30の光入射側には第2の偏光板34が設けられているので、光源11から接眼プリズム31の方向に進行する不要光(P偏光)があっても、その不要光を第2の偏光板34にて確実にカットすることができ、その不要光に起因してゴーストやフレアが生じるのを確実に防止することができる。
また、本実施形態の映像表示装置1では、接眼光学系30の反射型ホログラム光学素子33は、反射型表示素子20からの映像光と外光とを同時に観察者の瞳に導くコンバイナとして用いられているので、観察者は、反射型ホログラム光学素子33を介して、反射型表示素子20から提供される映像と外界像とを同時に観察することができる。
また、反射型ホログラム光学素子33は、軸非対称な正の光学パワーを有しているので、このような反射型ホログラム光学素子33を用いることにより、装置を構成する各光学部材の配置の自由度を高めることができ、装置を容易に小型化することができる。
(4.照明光学系の光路の折りたたみについて)
次に、本発明の最も特徴的な部分である、照明光学系10の光路の折りたたみについて説明する。
本実施形態では、図1に示すように、光路折り曲げ部材としての凹面ミラー12を、反射型表示素子20から接眼光学系30に向かう光の光路に対して光源11とは反対側に配置している。そして、凹面ミラー12により、光源11から反射型表示素子20に至る照明光学系10の光路を、反射型表示素子20の短辺に平行でかつ表示面に垂直な面内で折りたたんでいる。この結果、光源11から凹面ミラー12に向かう光線(光路)と、上記光線が進行する光路上の光線であって反射型表示素子20から接眼光学系30に向かう光線(光路)とは、接眼光学系30の外部の空気中で交差している。
ここで、光源11から反射型表示素子20に至る光路中で、光源11と反射型表示素子20の表示領域の中心とを結ぶ軸を基準軸L2と称することとする。上記のように凹面ミラー12を配置することにより、基準軸L2を折り曲げることなく光源11からの照明光を反射型表示素子20に入射させる構成に比べて、光源11と反射型表示素子20との間の光路長を稼ぐことができる。これにより、照明光学系10のパワーを変化させなくても(例えばパワーの大きな集光レンズを光路中に配置しなくても)、反射型表示素子20から接眼光学系30に向かう光の光路に近い位置に光源11を配置することができる。したがって、光源11が観察者側に飛び出るようなレイアウトとはならないので、装置を容易に薄型化することができる。
しかも、光源11と凹面ミラー12とは、反射型表示素子20から接眼光学系30に向かう光の光路に対して互いに反対側に位置する関係となるので、光源11と接眼光学系30との距離、および、凹面ミラー12と接眼光学系30との距離が両方とも、反射型表示素子20と接眼光学系30との距離よりも短くなるように、光源11および凹面ミラー12を配置することができる。その結果、光源11、凹面ミラー12、反射型表示素子20のそれぞれを、接眼光学系30の近傍にまとめてコンパクトに配置することができ、装置を容易に小型化することができる。
つまり、光源11から凹面ミラー12に向かう光線と、上記光線が進行する光路上の光線であって反射型表示素子20から接眼光学系30に向かう光線とが交差するように凹面ミラー12が配置されていることによって、装置の薄型化および小型化を容易に実現することができる。特に、反射型表示素子20から接眼光学系30に向かう光の光路に対して光源11とは反対側に凹面ミラー12が配置されていれば、上記2つの光線(または基準軸L1・L2)が空気中で確実に交差するので、そのような効果を確実に得ることができる。
また、本実施形態では、凹面ミラー12を用いることにより、光源11から凹面ミラー12に至る光路と、反射型表示素子20から接眼光学系30に至る光路とを分離できるので、従来のように2つの光路の交差部に光路分離のためのPBSを配置する必要がない。その結果、装置を軽量化することができ、しかも安価に構成することができる。また、PBSを設ける従来の構成では、PBSの性能が不十分な場合は、照明光が不要光として接眼光学系に入射し、観察画像の品位を劣化させる原因となる。しかし、本発明では、そのようなPBSを用いることなく光路分離ができるので、そのような問題も起こらない。
また、光源11から凹面ミラー12に向かう光線を第1の光線とし、上記光線が進行する光路上の光線であって反射型表示素子20から接眼光学系30に向かう光線を第2の光線とすると、本実施形態では、第1の光線と第2の光線とが、屈折率の異なる媒質の界面ではなく、屈折率がほぼ均一の媒質中で交差している。例えば2種の光線の交差部分で媒質の屈折率が変化すると、屈折によって不要光が発生し、この不要光が接眼光学系30を介して瞳EPに導かれ、観察画像の品位を劣化させるおそれがある。しかし、本実施形態では、第1の光線と第2の光線とが、屈折率がほぼ均一の媒質中で交差しているので、その交差部分での不要光の発生を抑えることができ、観察画像の品位が劣化するのを回避することができる。
また、屈折率がほぼ均一の媒質を空気とし、第1の光線と第2の光線とが空気中で交差するように凹面ミラー12を設ける構成とすることで、例えば後述する実施の形態5のように、2種の光線の交差部分に照明プリズム19(図16参照)を設ける場合よりも照明光学系10の構成を簡素化することができる。したがって、この点からも装置自体を軽量化することができると言える。
また、第1の光線と第2の光線との交差部分は、接眼光学系30の外部に位置しているので、その交差部分と接眼光学系30の接眼プリズム31との間に、本実施形態のように第2の偏光板34を配置することが可能となる。つまり、第2の偏光板34の配置スペースを確保することができる。これにより、第2の偏光板34を設けることによる効果、すなわち、光源11から接眼プリズム31に直接入射する不要光(ゴースト光)をカットして映像品位の低下を回避できる効果を確実に得ることができる。
また、本実施形態では、凹面ミラー12は、反射型表示素子20の短辺に平行でかつ表示面に垂直な面内で照明光学系10の光路を折り曲げている。これにより、反射型表示素子20の長辺に平行でかつ表示面に垂直な面内で照明光学系10の光路を折り曲げる構成に比べて、照明光学系10の光路と反射型表示素子20から接眼光学系30に向かう光の光路とを短い距離で分離することができ、照明光学系10をコンパクトに構成することができる。
また、本実施形態では、光路折り曲げ部材として凹面ミラー12を用いている。これにより、後述する図3の構成のように、光源11からの光を反射型表示素子20の表示領域に集光させるための集光レンズ15を光路中に設けなくても済み、照明光学系10の構成を簡素化することができる。また、光源11から十分に離れて広がった位置で、かつ、照明する反射型表示素子20に近い位置に凹面ミラー12を配置すれば、照明光を無駄なく効率よく利用することができる。
なお、本実施形態では、光路折り曲げ部材を凹面ミラー12のような反射ミラーで構成した例について説明したが、光路を折り曲げる機能を有するものであればよく、例えばプリズムを用いることもできる。
(5.変形例)
図3は、映像表示装置1の他の構成例を示す断面図である。この映像表示装置1では、光路折り曲げ部材として平面ミラー14を用いているとともに、光源11の直後に集光レンズ15を配置している。平面ミラー14は、反射型表示素子20から接眼光学系30に向かう光の光路に対して光源11とは反対側に配置されている。一方、集光レンズ15および第1の偏光板13は、上記光路に対して光源11側に配置されている。したがって、光源11から出射される光は、集光レンズ15にて集光され、第1の偏光板13を介して平面ミラー14に入射し、平面ミラー14で反射されて(光路が折り曲げられて)反射型表示素子20に入射する。
このように平面ミラー14を光路折り曲げ部材として用いる場合、反射型表示素子20の表示領域に光を集光するための集光レンズ15を用いる必要があるが、この集光レンズ15としては、球面または非球面の集光レンズを用いることが可能である。よって、凹面ミラー12を用いる構成よりも安価に照明光学系10を実現することができる。
また、図4は、映像表示装置1のさらに他の構成例を示す断面図である。この映像表示装置1では、光路折り曲げ部材として平面ミラー14を用いているとともに、図3の集光レンズ15の代わりに凹面ミラー16を用いている。平面ミラー14は、反射型表示素子20から接眼光学系30に向かう光の光路に対して光源11とは反対側に配置されている。一方、凹面ミラー16および第1の偏光板13は、上記光路に対して光源11側に配置されている。したがって、光源11から出射される光は、凹面レンズ16で反射集光され、第1の偏光板13を介して平面ミラー14に入射し、平面ミラー14で反射されて反射型表示素子20に入射する。
このように、光源11から反射型表示素子20に至る光路を、2つの光学素子(凹面ミラー16、平面ミラー14)で折り曲げることにより、例えば、光源11と反射型表示素子20とを同一面に配置するレイアウトを採ることが可能となる。これにより、光源11および反射型表示素子20の基板を共通化することができるなど、光学系以外の部品点数を減らすことができる。
(6.色再現性を高くできる効果について)
ところで、観察者に提供されるカラー映像(表示素子にて表示された映像)の表示品位を高めるためには、その映像の色再現領域を広げる(色再現性を高める)ことが必要である。例えば、特許文献1のように、映像光と外光とのコンバイナとして、ホログラム光学素子ではなくハーフミラーを用いる場合、強誘電液晶表示素子が時分割駆動であれば(カラーフィルタを有していなければ)、色再現領域は、光源からの出射光におけるRGBの波長幅のみで決定される。しかし、非特許文献1のように、映像光と外光とのコンバイナとしてホログラム光学素子を用いるとともに、時分割で駆動される表示素子を用いる場合、色再現領域は、光源からの出射光のRGBの波長幅と、ホログラム光学素子でのRGBの回折波長幅との兼ね合いで決まる。
しかし、上述した非特許文献1では、表示映像の色再現領域を広げることについては全く言及されておらず、ましてや、色再現領域を広げるべく、光源からの出射光のRGBの波長幅を考慮して、ホログラム光学素子でのRGBの回折波長幅が規定されてはいない。
そこで、本実施形態では、光源からの出射光のRGBの波長幅を考慮して、ホログラム光学素子でのRGBの回折波長幅を適切に規定することにより、時分割駆動の表示素子を用いた場合でも色再現領域を広げて表示品位を向上させるようにしている。つまり、本実施形態の映像表示装置1のように、光源11としてRGB一体型のLEDを用い、かつ、反射型ホログラム光学素子33を用いた場合でも、色再現領域を広げることが可能である。以下、この点について説明する。
(6−1.ホログラム光学素子の特性)
図5は、上述した反射型ホログラム光学素子33における回折効率の波長依存性を示す説明図であり、図6は、反射型ホログラム光学素子33の他の構成例における回折効率の波長依存性を示す説明図である。なお、図6の特性を有する反射型ホログラム光学素子33は、図5の特性を有する反射型ホログラム光学素子33とはホログラム感光材料の露光条件(例えば露光量)を変えることによって作製されている。また、図5の回折効率は、B光の最大回折効率を100としたときの相対値で示しており、図6の回折効率は、BGRの各色について、最大回折効率を1としたときの相対値で示している。
図5および図6の反射型ホログラム光学素子33は、いずれも、特定の入射角で入射する光であって、回折効率のピーク波長および回折効率半値の波長幅で465±5nm(B光)、521±5nm(G光)、634±5nm(R光)の3つの波長域の光を回折(反射)させる角度選択性および波長選択性を有している。
すなわち、B光の回折効率のピーク波長λ1Bは465nmであり、G光の回折効率のピーク波長λ1Gは521nmであり、R光の回折効率のピーク波長λ1Rは634nmである。また、B光の回折効率半値の波長幅Δλ1Bは10nmであり、G光の回折効率半値の波長幅Δλ1Gは10nmであり、R光の回折効率半値の波長幅Δλ1Rは10nmである。これらの回折波長幅は、後述する光源11からの出射光のRGBの波長幅を考慮して設定されている。
なお、上記した回折効率のピーク波長とは、回折効率がピークとなるときの波長のことであり、回折効率半値の波長幅とは、回折効率が回折効率ピークの半値となるときの波長幅のことである。
上記のように、反射型ホログラム光学素子33は、特定入射角の特定波長の光のみを回折するように作製されているので、外光の透過にはほとんど影響しない。したがって、観察者は、偏向プリズム32、反射型ホログラム光学素子33および接眼プリズム31を介して外界像を通常通り見ることができる。
(6−2.光源の特性)
一方、図7は、光源11の分光強度特性、すなわち、出射光の波長と発光強度との関係を示す説明図である。なお、図7の発光強度は、B光の最大発光強度を100としたときの相対値で示している。光源11は、例えば、光強度のピーク波長および光強度半値の波長幅で462±12nm、525±17nm、635±11nmとなる3つの波長帯域の光を発するRGB一体型のLEDである。
すなわち、光源11におけるBGRの光強度のピーク波長をそれぞれλ2B、λ2G、λ2Rとすると、λ2B=462nmであり、λ2G=525nmであり、λ2R=635nmである。また、光源11におけるBGRの光強度半値の波長幅をそれぞれΔλ2B、Δλ2G、Δλ2Rとすると、Δλ2B=24nmであり、Δλ2G=34nmであり、Δλ2R=22nmである。
なお、光強度のピーク波長とは、光強度がピークとなるときの波長のことであり、光強度半値の波長幅とは、光強度が光強度ピークの半値となるときの波長幅のことである。
(6−3.Δλ1とΔλ2との関係について)
上記のように、本実施形態では、反射型ホログラム光学素子33におけるBGRの各色についての回折効率半値の波長幅Δλ1(Δλ1B、Δλ1G、Δλ1R)と、光源11からの出射光におけるBGRの各色についての光強度半値の波長幅Δλ2(Δλ2B、Δλ2G、Δλ2R)との関係が、BGRの各色について、
Δλ1<Δλ2
となるように設定されている。つまり、
Δλ1B<Δλ2B、Δλ1G<Δλ2G、Δλ1R<Δλ2R
を同時に満たすものとなっている。
このような特性の光源11および反射型ホログラム光学素子33を用いることにより、光源11からのBGRの出射光のうちで、さらに波長域を絞った光のみを反射型ホログラム光学素子33にて回折させて観察者の瞳に導くことができる。これにより、本実施形態のように時分割で駆動される表示素子20(強誘電液晶表示素子)を用いた場合でも、BGRの各色純度を高めることができ、観察映像の色再現領域を、光源11からのBGRの出射光のみで決まる色再現領域よりもさらに広げることができる。
ここで、図8は、XYZ表色系におけるXY色度座標を用いて表される色再現領域を示している。同図中、各映像表示装置における色再現領域が、それぞれ実線A、破線B、二点鎖線Cで表されている。実線Aは、本実施形態の映像表示装置1、すなわち、光源11としてRGB一体型の3-in-1LED(例えば日亜化学製のNSCM315C)を用い、反射型表示素子20として反射型強誘電液晶表示素子(例えばディスプレイテック製)を用い、そして、反射型ホログラム光学素子33を用いた映像表示装置1における色再現領域を示している。
破線Bは、光源11としてRGB一体型の3-in-1LEDを用い、反射型表示素子20として反射型強誘電液晶表示素子を用い、そして、通常の反射型ホログラム光学素子を用いない接眼光学系を用いた映像表示装置における色再現領域を示している。なお、反射型ホログラム光学素子を用いない接眼光学系としては、例えば後述する実施の形態2で示すような自由曲面プリズム35(図12参照)がある。
二点鎖線Cは、光源11としてRGB一体型の3-in-1LEDを用い、反射型表示素子20として、カラーフィルタを有する反射型液晶表示素子を用いた映像表示装置における色再現領域を示している。
同図より、色再現領域は、二点鎖線C、破線B、実線Aの順で広くなり、実線Aが色再現性に最も優れており、次に破線Bが色再現性に優れていることがわかる。上述したように、強誘電液晶表示素子においては、表示素子への照明光の入射角度が大きくても、高いコントラストを得ることができる。したがって、反射型表示素子20として反射型強誘電液晶表示素子を用い、本発明におけるコンパクトな照明光学系10と組み合わせることで、小型で表示品位の高い映像表示装置1を実現することができる。特に、反射型表示素子20として反射型強誘電液晶表示素子を用いることにより、実線Aおよび破線Bで示したように、高い色再現性(広い色再現領域)を実現することができる。
また、反射型ホログラム光学素子33は波長選択性を有しており、接眼光学系30に反射型ホログラム光学素子33を用いたときの観察光(映像光)の分光強度は、光源11の分光強度に反射型ホログラム光学素子33の回折効率を掛け合わせたものになる。したがって、RGB一体型の光源11と、反射型ホログラム光学素子33とを組み合わせて用いることにより、さらにRGBの色純度を上げることができ、実線Aのように色再現領域が広く、表示品位の高い映像を観察者に提供することができる。
また、図9は、XYZ表色系におけるXY色度座標を用いて表される別の色再現領域を示している。実線Dで示される色再現領域は、本実施形態の映像表示装置1による色再現領域を示している。一点鎖線Eは、反射型強誘電液晶表示素子単独の色再現領域を示しており、二点差線Fは、カラーフィルタを有する液晶表示素子で表示素子を構成した映像表示装置による色再現領域を示している。ちなみに、破線Gは、非特許文献1の装置の色再現領域を示している。
同図からも、本実施形態の映像表示装置1の色再現領域が一番広く、カラーフィルタタイプの表示素子を用いた映像表示装置よりもさらに色再現領域を拡大できていることがわかる。したがって、本実施形態の映像表示装置1の構成によれば、表示品位の高い映像を観察者に提供することができる。
また、本実施形態では、上述したように、反射型ホログラム光学素子33は、単層カラーフォトポリマーで構成されるホログラム感光材料を露光することによって作製されている。単層カラーフォトポリマーにおいては、感光層内でのBGRの各色の相互作用によって高い回折効率を得にくいが、その分、BGRの回折効率半値の波長幅Δλ1(Δλ1B、Δλ1G、Δλ1R)を小さくすることが容易である。
ここで、例えば、ホログラム光学素子を作製するためのホログラム感光材料が、3原色の光のそれぞれに感度を有する各層を積層した3層カラーフォトポリマーで構成されている場合、各層は1つの波長のホログラムのみを記録するので、同一層内で各色の相互作用がなく、各色について高い回折効率が得やすい。したがって、一般的なホログラム光学素子の作製方法、すなわち、最大の回折効率を得るために上記ホログラム感光材料を十分に露光し、ベイクを行う方法では、BGRの回折効率が頭打ちになり、広い波長域で回折効率が最大となりやすい。つまり、このことは、回折効率半値の波長幅が、BGRの全てについて広くなりやすいことを意味する。
しかし、本実施形態のように、ホログラム感光材料として単層カラーフォトポリマーを用い、反射型ホログラム光学素子33を作製することで、BGRの全てについて、回折効率半値の波長幅Δλ1(Δλ1B、Δλ1G、Δλ1R)を容易に小さくすることができるので、BGRの各色についてΔλ1<Δλ2を満足する反射型ホログラム光学素子33を容易に作製することができる。特に、光源としては、Rの分光強度分布がシャープなもの(Rの光強度半値の波長幅が狭い光源)が一般的に多く出回っているが、このような光源を用いた場合でも、BGRの全ての色について、Δλ1<Δλ2を確実に実現することができる。その結果、時分割駆動の反射型表示素子20を用いた場合でも、色再現領域を容易にかつ確実に広げることができる。
また、反射型ホログラム光学素子33のΔλ1がΔλ2よりも小さく設定されることで、反射型ホログラム光学素子33を透過する外光の透過波長幅は広くなり、シースルー性が向上する。したがって、本実施形態の構成によれば、色再現領域の拡大およびシースルー性の向上により、高品位な映像および外界像を観察者に提供することができ、高品位なシースルーディスプレイを実現することができる。
(6−4.Δλ1の範囲およびΔλ1/Δλ2の範囲について)
本実施形態では、BGRの各色について、Δλ1B=Δλ1G=Δλ1R=10nmとなっている。このように、3原色の各色について、Δλ1<20nmであるので、BGRの各色純度を確実に高めることができ、観察映像の色再現領域を確実に広げることができる。特に、本実施形態のように、BGRの各色について、Δλ1≦10nmの条件を満たしていれば、BGRの各色純度をより一層確実に高めることができ、図8および図9のように、観察映像の色再現領域をより一層確実に広げることができる。
ここで、Δλ1が3nm以下の場合、広い色再現領域を実現することは可能であるが、反射型ホログラム光学素子33での回折波長幅が小さくなりすぎて、光源11からの出射光の利用効率が低下し、映像が暗くなる。したがって、映像の明るさの低下を回避しつつ、広い色再現領域を実現するためには、3原色の各色についてΔλ1>3nmである、すなわち、Δλ1B>3nm、Δλ1G>3nm、Δλ1R>3nmであることが望ましい。
また、上記のようにΔλ1<Δλ2を満たす範囲内でΔλ1(絶対値)を規定すること以外にも、Δλ1とΔλ2との比の範囲を規定することで、Δλ2(絶対値)との兼ね合いで、映像の明るさと色再現領域の広さとのバランスをより的確にとることができる。
例えば、BGRの各色について、Δλ1/Δλ2の値が1/10以下であると、色再現領域の広い映像を提供することが可能となるが、反射型ホログラム光学素子33での回折波長幅が光源11からの出射光の波長幅に対して相対的に小さくなりすぎて、明るい映像を提供することが困難となる。逆に、BGRの各色について、Δλ1/Δλ2の値が1以上であると、明るい映像を提供することが可能となるが、色再現領域の広い映像を提供することが困難となる。
したがって、BGRの各色について、1/10<Δλ1/Δλ2<1を満足する、すなわち、
1/10<Δλ1B/Δλ2B<1、
1/10<Δλ1G/Δλ2G<1、
1/10<Δλ1R/Δλ2R<1
を満足することにより、Δλ2も考慮して、映像の明るさと色再現領域の広さとを両方満足させることができる。
(7.λ1とΔλ2およびλ2との関係について)
本実施形態では、BGRの各色について、反射型ホログラム光学素子33における回折効率のピーク波長λ1(λ1B、λ1G、λ1R)は、光源11からの出射光の光強度半値の波長幅Δλ2(Δλ2B、Δλ2G、Δλ2R)の波長域に含まれている。すなわち、λ1B(465nm)は、Δλ2Bの波長域(450〜474nm)に含まれており、λ1G(521nm)は、Δλ2Gの波長域(508〜542nm)に含まれており、λ1R(634nm)は、Δλ2Rの波長域(624〜646nm)に含まれている。
この場合、BGRの各色について、反射型ホログラム光学素子33における回折効率のピーク波長λ1(λ1B、λ1G、λ1R)と、光源11からの出射光の光強度のピーク波長λ2(λ2B、λ2G、λ2R)とは比較的近い値となる。このことは、λ2B=462nmであり、λ2G=525nmであり、λ2R=635nmであることからも明らかである。これにより、光源11からの出射光のうちで光強度が高い波長域の光を、効率よく反射型ホログラム光学素子33にて回折させて観察者の瞳に導くことができる。したがって、光源11からの出射光の利用効率を上げて、明るい映像を観察者に提供することができる。
特に、本実施形態では、BGRの各色について、λ1は、λ2±20nmの範囲内である、すなわち、
λ1B(465nm)=λ2B(462nm)±20nm、
λ1G(521nm)=λ2G(525nm)±20nm、
λ1R(634nm)=λ2R(635nm)±20nm
である。これにより、BGRの各色について、反射型ホログラム光学素子33における回折効率のピーク波長λ1(λ1B、λ1G、λ1R)と、光源11からの出射光の光強度のピーク波長λ2(λ2B、λ2G、λ2R)とが確実に近くなるので、光源11からの出射光の利用効率を確実に上げることができ、明るい映像を観察者に確実に提供することができる。
(8.光強度に応じた回折効率の調整について)
ところで、図9の中央の破線Hで示される領域は、RGBのカラーバランスを調整するときの白色目標エリアを示している。この目標エリアは、XY色度座標において(X,Y)=(0.32±0.05,0.33±0.05)を中心とするほぼ楕円領域である。そこで、光源11のRGBの各発光部を全て最大パワーで発光したときに表示する白色が上記目標エリアに入るように、露光条件(例えば露光量)および後処理条件(例えばベイク温度、ベイク時間)を最適化することによって反射型ホログラム光学素子33のRGBの各波長の最大回折効率を調整すれば、光の利用効率が高く、さらに高品位な映像表示装置1を実現することができる。具体的には以下の通りである。
光源11からの出射光の光強度(ピーク値)の比は、図7から、B:G:Rでおよそ10:5:8である。この場合、反射型ホログラム光学素子33での回折効率(ピーク値)の比がB:G:Rで例えば95:85:50となるように露光条件および後処理条件を最適化し、反射型ホログラム光学素子33を作製する。つまり、視感度の高いG光については、光源11からの出射光の光強度が他のB光やR光よりも小さいので、反射型ホログラム光学素子33でのG光の回折効率を高めに設定している。一方、他のB光やR光については、光源11からの出射光の光強度を考慮して、BGR全体のカラーバランスが良好となるように反射型ホログラム光学素子33でのB光およびR光の回折効率を設定している。
このように、反射型ホログラム光学素子33におけるBGRの回折効率を、光源11からのBGRの出射光の光強度に応じて設定することにより、光源光量を増大させることなく明るい映像を観察者に提供することができるとともに、BGRのカラーバランスを良好にすることができる。つまり、光源11の消費電力の増大を回避しながら、良好な品位の映像を観察者に提供することができる。
なお、上述した回折効率比の反射型ホログラム光学素子33を用いた場合、Bについては、光源11からの出射光の光強度と回折効率との積が、他のGやRについてのものよりも高い値となるが、これはBの視感度が低いことを考慮したことによる。カラーバランスは、瞳に到達する光の波長について光強度を足し合わせたもの(積分したもの)にその光の視感度を掛け合わせたもので評価されるので、回折効率比を上記のように設定することによって、BGRの視感度も考慮してカラーバランスを良好にすることができる。
(9.光学瞳内での光強度ピークのずれ量について)
図10は、BGRの各色について、光学瞳EP内での瞳位置による光強度の変化を示す説明図である。なお、図10の横軸の瞳位置は、例えば図2のHMDの上下方向(図1の映像表示装置1の縦方向)の瞳位置を示している。
光学瞳EP内でBGRの光強度のピーク位置が互いにずれていると、光学瞳EPに対して観察者の瞳が例えば上下方向にずれたときに、観察者の瞳から光強度のピーク位置が外れるような色が生じる場合がある。例えば、図10において、観察者の瞳が横軸右方向に対応する方向にずれると、そのずれ量によっては、R光の光強度のピーク位置が観察者の瞳から外れる。この場合、観察者は映像の色ムラを認識しやすくなる。
そこで、観察者の瞳が直径2mm以上であることを考慮すれば、光学瞳EP内での光強度のピーク位置のずれ量d(方向は問わない)は、BGRの各色間で1mm以下であることが望ましい。この場合、光学瞳EPに対して観察者の瞳が多少ずれたとしても、色によってはその光強度のピーク位置が観察者の瞳から外れるような事態を極力回避することができ、観察者が映像の色ムラを認識するのを抑えることができる。
(10.反射型ホログラム光学素子の他の構成例について)
ところで、反射型ホログラム光学素子33は、上述したように、基板上に塗布されるホログラム感光材料を露光することによって形成されているが、このホログラム感光材料は、3層カラーフォトポリマーで構成されていてもよい。3層カラーフォトポリマーは、BGRの光のそれぞれに感度を有する各層を積層して構成されたものである。
ここで、図11は、3層カラーフォトポリマーを用いて作製された反射型ホログラム光学素子33における回折効率の波長依存性を示す説明図である。なお、図11の回折効率は、BGRの各色について、最大回折効率を1としたときの相対値で示している。また、図11の実線Pは、一般的な露光条件および後処理条件、すなわち、露光量(mJ/cm2)がR:G:Bで60:25:25であり、ベイク温度;120℃、ベイク時間;2時間で作製された反射型ホログラム光学素子33における回折効率の波長依存性を示している。一方、図11の破線Qは、所定の露光条件および後処理条件、具体的には、露光量(mJ/cm2)がR:G:Bで15:7:7であり、ベイク温度;120℃、ベイク時間;3時間で作製された反射型ホログラム光学素子33における回折効率の波長依存性を示している。
反射型ホログラム光学素子33を作製するためのホログラム感光材料として3層カラーフォトポリマーを用いた場合、一般的な露光条件および後処理条件で反射型ホログラム光学素子33を作製すると、図11の実線Pで示すように、各色の回折効率を大きくすることが可能である。したがって、光源11から出射される光の利用効率を上げたい場合には、単層カラーフォトポリマーを用いるよりも、回折効率の高いRGB3層のカラーフォトポリマーを用いて反射型ホログラム光学素子33を作製するほうが望ましい。
しかし、一般的な露光条件および後処理条件、すなわち、回折効率を最大にするような条件で反射型ホログラム光学素子33を作製すると、実線Pのように回折効率半値の波長幅が20nmを越え、広くなりすぎる。その結果、上述したΔλ1<Δλ2などの種々の条件を満足することが困難となる。
そこで、上記のように、露光条件および後処理条件を上記所定の条件に最適化して破線Qで示す特性の反射型ホログラム光学素子33を作製することにより、反射型ホログラム光学素子33における回折効率半値の波長幅(Δλ1)をRGBの全てについて20nm以下にすることができ、Δλ1<Δλ2などの条件を満足させるようにすることができる。
ちなみに、上記所定の条件で反射型ホログラム光学素子33を作製した結果、反射型ホログラム光学素子33は、回折効率のピーク波長および回折効率半値の波長幅で465±7nm(B光)、521±7nm(G光)、634±7nm(R光)の3つの波長域の光を回折(反射)させる特性となった。すなわち、B光の回折効率のピーク波長λ1Bは465nmであり、G光の回折効率のピーク波長λ1Gは521nmであり、R光の回折効率のピーク波長λ1Rは634nmであった。また、B光の回折効率半値の波長幅Δλ1Bは14nmであり、G光の回折効率半値の波長幅Δλ1Gは14nmであり、R光の回折効率半値の波長幅Δλ1Rは14nmであった。
このような破線Qで示す特性の反射型ホログラム光学素子33を用いて映像表示装置1を構成したときの色再現領域は、反射型強誘電液晶素子単独の色再現領域(図9の一点鎖線Eの領域)よりも広くなることが実験的にわかっている。したがって、3層カラーフォトポリマーを用いて反射型ホログラム光学素子33を作製した場合には、露光条件および後処理条件を最適化することによって色再現領域を拡大することができると言える。
なお、一般的に、ホログラム光学素子の回折効率半値の波長幅を狭くする(回折効率を下げる)方法には、露光量を下げる方法とベイク温度を下げる方法(またはベイク時間を短くする方法)との2通りが考えられるが、回折効率半値の波長幅や回折効率を安定してコントロールできるのは前者の方法である。このような理由から、3層カラーフォトポリマーを用いて反射型ホログラム光学素子33を作製する場合には、上記のように露光量を主に最適化することにより、回折効率半値の波長幅のコントロールを行うのが望ましい。
〔実施の形態2〕
本発明の他の実施の形態について、図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、説明の便宜上、実施の形態1と同一の構成には同一の部材番号を付記し、その説明を省略する。
図12は、本実施形態の映像表示装置1の概略の構成を示す断面図である。本実施形態では、接眼光学系30において、実施の形態1の接眼プリズム31の代わりに自由曲面プリズム35を用いている。
自由曲面プリズム35は、反射型表示素子20からの映像光の入射面である第1面35aと、観察者の瞳EP側の面であって、全反射面兼透過面として作用する第2面35bと、第2面35bに対向する反射面である第3面35cとを有している。これらの3面は、非回転対称な非球面である。また、第1面35aは、第2面35b側よりも第3面35c側が低くなるような曲面形状で形成されている。
このような自由曲面プリズム35では、第1面35aから入った映像光は、第2面35bで正反射され、第3面35cで反射されて、第2面35bを透過して観察者の瞳EPに導かれる。したがって、実施の形態1の接眼プリズム31の代わりに自由曲面プリズム35を用いても、観察者は、実施の形態1と同様に、眼前に拡大された虚像を観察することができる。
また、本実施形態では、自由曲面プリズム35の第1面35aの上記曲面形状にあわせて、照明光学系10の各光学部材が配置されている。具体的には、光源11は、反射型表示素子20から接眼光学系30に向かう光の光路に対して、観察者側とは反対側に配置されており、凹面ミラー12および第1の偏光板13は、上記光路に対して光源11とは反対側、すなわち、観察者側に配置されている。このように照明光学系10の各光学部材を配置することにより、自由曲面プリズム35を用いた場合でも、その形状にあわせて照明光学系10をコンパクトに収めることができる。
また、本実施形態では、凹面ミラー12は、シリンドリカル凹面ミラーで構成されている。このミラーは、反射型表示素子20の短辺に平行でかつ表示面に垂直な面内(図12の紙面に平行な面内)でのみ入射光を反射集光させるものである。すなわち、本実施形態の凹面ミラー12は、上記面内でのみパワーを持ち、上記面に対して垂直方向(図12の紙面に垂直な方向)にはパワーを持っていない。第1の偏光板13は、そのような凹面ミラー12の表面に貼り合わされており、その表面には実施の形態1と同様に反射防止処理が施されている。
図12の紙面に平行な面内では、反射型表示素子20を照明する光を集光しなければ、照明光が広がりすぎて、反射型表示素子20の照明効率が悪くなる。そればかりでなく、上記面内で反射型表示素子20の表示領域に入射しない光は、照明光学系10の内部で迷光となってゴースト光の原因となり、映像の表示品位を著しく劣化させる要因となる。したがって、凹面ミラー12を上記面内で光を集光させるシリンドリカル凹面ミラーで構成することにより、照明効率の低下を回避しながら、映像品位の低下を回避することができる。ちなみに、反射型表示素子20の長辺に平行な方向で迷光となる光は、観察者の瞳EPには導かれないので、映像品位を低下させるゴースト光となる可能性はほとんどなく、問題とはならない。
また、凹面ミラー12をシリンドリカル形状とすることにより、凹面ミラー12の表面に、その表面のカーブにあわせて第1の偏光板13を曲げて貼り合わせることができる。これにより、第1の偏光板13を保持するための部材を不要にすることができ、その結果、照明光学系10をさらにコンパクトに構成することができる。
〔実施の形態3〕
本発明のさらに他の実施の形態について、図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、説明の便宜上、実施の形態1または2と同一の構成には同一の部材番号を付記し、その説明を省略する。
図13は、本実施形態の映像表示装置1の概略の構成を示す断面図である。本実施形態では、実施の形態1の構成において、照明光学系10が拡散板17および第3の偏光板18をさらに有している。まず、拡散板17について説明する。
拡散板17は、凹面ミラー12にて光路を折り曲げられた光を拡散させるものである。拡散板17は、表面が凹凸状のもので構成されてもよいし、後述する実施の形態4で用いるような、表面が平坦である体積位相型のホログラム光学素子で構成されてもよい。また、拡散板17は、凹面ミラー12にて反射された光が反射型表示素子20の表示面を照明するのに十分な面積に広がった位置、すなわち凹面ミラー12の表面付近に配置されている。拡散板17および第1の偏光板13は、凹面ミラー12と反射型表示素子20との間の光路中に、凹面ミラー12側からこの順で配置されている。
このように拡散板17を配置することにより、あたかも面積の大きな光源を配置したのと等価な効果があり、観察可能な瞳EPの大きさを大きくすることができる。なお、拡散板17を光源11の直後に配置しても、瞳EPを拡大することはできるが、必要以上に光束径が広がり、無駄にする光が多く、光の利用効率が低下するので望ましくはない。
また、凹面ミラー12側から順に拡散板17および第1の偏光板13を配置することにより、凹面ミラー12にて反射された光が拡散板17にて拡散されたときに、偏光の乱れた光を第1の偏光板13でカットすることができる。その結果、反射型表示素子20に入射する偏光の純度を上げることができる。
次に、第3の偏光板18について説明する。第3の偏光板18は、光源11から出射される光のうちで、第1の偏光板13を透過する光と同じ偏光方向の光(ここではP偏光)を透過させて凹面ミラー12に導くものである。この第3の偏光板18は、反射型表示素子20から接眼光学系30に向かう光の光路に対して光源11側(上記光路と光源11との間)に配置されている。
このような第3の偏光板18を配置することで、光源11から出射された光のうち、接眼光学系30の第2の偏光板34を透過できる偏光方向の光(S偏光)を、第3の偏光板18で予めカットすることができる。つまり、第3の偏光板18を配置することで、S偏光が光源11から直接接眼光学系30に到達したり、第1の偏光板13の表面で反射して接眼光学系30に到達するようなことがない。これにより、そのような光によるゴースト(フレア)の発生を防止することができ、映像品位の低下を確実に回避することができる。
特に、本実施形態のように、第3の偏光板18を光源11の近傍に配置する、すなわち、第3の偏光板18を反射型表示素子20から接眼光学系30に向かう光の光路に対して光源11側に配置することで、光源11から出射されるS偏光を効率よくカットすることができ、ゴースト光による映像品位の低下を確実に回避することができる。
また、第3の偏光板18がP偏光を透過させることにより、S偏光を透過させる場合に比べて、第1の偏光板13での表面反射を抑えることができ、光量損失に起因する映像品位の低下を回避することができる。
〔実施の形態4〕
本発明のさらに他の実施の形態について、図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、説明の便宜上、実施の形態1ないし3と同一の構成には同一の部材番号を付記し、その説明を省略する。
図14は、本実施形態の映像表示装置1の概略の構成を示す斜視図である。本実施形態では、実施の形態3の構成において、光源11を複数の点光源からなる光源群で構成しているとともに、拡散板17を体積位相型のホログラム光学素子で構成している。まず、光源11について説明する。
光源11は、波長の異なる光(ここではRGBの各色の光)を出射する複数の点光源11R・11G・11Bからなる光源群が1個で構成されている。各点光源11R・11G・11Bは、反射型表示素子20の長辺に平行な方向に並んで配置されている。
例えば、各点光源11R・11G・11Bが反射型表示素子20の長辺に垂直な方向に並んで配置されると、凹面ミラー12により、反射型表示素子20の短辺に平行でかつ表示面に垂直な面内で照明光学系10の光路を折り曲げたときに、その面内で各点光源11R・11G・11Bの配置がずれることになる。このため、反射型表示素子20の短辺方向全域に各波長の光を導くためには、反射型表示素子20と接眼光学系30との間隔を広く取らなければならず、装置が大型化する。
しかし、本実施形態のように、各点光源11R・11G・11Bが反射型表示素子20の長辺に平行な方向に並んで配置されていれば、各点光源11R・11G・11Bについての上記面内での位置は、反射型表示素子20の長辺方向において同じであり、短辺方向にはずれない。このため、照明光学系10の光路を上記面内で折り曲げる構成において、反射型表示素子20と接眼光学系30との間隔を広くとらなくても、反射型表示素子20の短辺方向全域に各波長の光を導くことができる。したがって、複数の点光源11R・11G・11Bを用いる場合でも、装置を小型化することができる。
次に、本実施形態の拡散板17について説明する。拡散板17は、反射型表示素子20の長辺と平行な方向に拡散度の大きい特性を有している。このような拡散板17を用いることにより、点光源11R・11G・11Bからの3つの異なる光(RGBの各光)は、十分広がり重なったところで、拡散板17によって点光源11R・11G・11Bの配列方向に拡散される。これにより、あたかも、1つの大きな光源が配置されているのと同じ照明効果を得ることができる。
また、点光源11R・11G・11Bからの各色の光が拡散板17で拡散されるので、各色の光を反射型表示素子20の表示領域全体に均一に照射することができる。その結果、色ムラの発生を抑えることができる。
また、一般的な拡散板は、表面をザラザラに荒らしたものが多く、表面は微細な凸凹の構造になっている。本実施形態では、反射型表示素子20と拡散板17との距離が近いので、拡散板17として表面が凹凸状の一般的な拡散板を用いると、その表面の凹凸による照明光のムラが映像の表示品位を落とすおそれがある。
しかし、本実施形態では、拡散板17として、表面を凹凸状に細かく荒らした通常のものではなく、表面が平面である体積位相型のホログラム光学素子を用いている。このようなホログラム光学素子で拡散板17を構成することにより、拡散板17にて上記のような照明ムラが発生するのを回避することができ、映像品位が低下するのを回避することができる。
ところで、上記した光源11は、複数の点光源11R・11G・11Bからなる光源群を2個用いて構成されていてもよい。図15は、光源11の他の構成例を模式的に示す平面図である。この光源11は、2つの光源群11P・11Qで構成されている。なお、2つの光源群11P・11Qは、図15のように別々の個体であってもよいし、1つのパッケージになっていてもよい。
このように光源11を構成した場合、反射型表示素子20の長辺に平行な方向における各点光源11R・11G・11Bの配列順序は、各光源群11P・11Q間で互いに逆であることが望ましい。つまり、反射型表示素子20の長辺に平行な方向において、光源群11Pでは点光源11B・11G・11Rの順に配列されているとすれば、光源群11Qでは点光源11R・11G・11Bの順に配列されていることが望ましい。このように各光源群11P・11Q間で点光源11R・11G・11Bが各光源群11P・11Qの境界線を中心に対称な位置関係となるように、各点光源11R・11G・11Bを配置することにより、各点光源11R・11G・11Bからの出射光の各色の光強度(各光源群11P・11Q間で足し合わせたもの)の重心が一致するので、上記方向(左右方向)において色ムラが発生するのを抑えることができる。
光源11を構成する光源群の個数は、上記の2個に限定されることはなく、偶数個であればよい。光源群の個数が偶数個のとき、反射型表示素子20の長辺に平行な方向における各点光源11R・11G・11Bの配列順序が隣接する光源群間で逆であれば、各点光源11R・11G・11Bからの出射光の各色の光強度の重心が一致する。したがって、この場合でも、上記方向(左右方向)において色ムラが発生するのを抑えることができる。
〔実施の形態5〕
本発明のさらに他の実施の形態について、図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、説明の便宜上、実施の形態1ないし4と同一の構成には同一の部材番号を付記し、その説明を省略する。
図16は、本実施形態の映像表示装置1の概略の構成を示す断面図である。本実施形態では、照明光学系10が照明プリズム19をさらに備え、照明プリズム19との干渉を防ぐために、接眼光学系30の接眼プリズム31の光入射側の面(反射型表示素子20側の面)の形状を若干変更した点以外は、実施の形態3と同様の構成である。なお、図16では、第3の偏光板18の図示を省略している。
照明プリズム19は、光源11と凹面ミラー12との間の光路中、および反射型表示素子20と接眼光学系30との間の光路中に配置されている。照明プリズム19は、反射型表示素子20とは空気層を介して配置され、接眼光学系30の接眼プリズム31とは空気層を介して配置されている。照明プリズム19は、本実施形態では、屈折率nが約1.5とほぼ均一であるプラスチック材料で構成されている。
ここで、図17は、照明プリズム19を拡大して示す断面図である。照明プリズム19は、面19a〜面19eを有している。面19aは、光源11と対向する面であり、本実施形態では平面で構成され、面19bと連結されている。面19bは、接眼光学系30の接眼プリズム31と対向する面であり、本実施形態では平面で構成されている。また、面19bには、接眼光学系30の第2の偏光板34が貼り合わされて照明プリズム19に一体的に保持されている。この面19bは、面19cと連結されている。
面19cは、第1の偏光板13および拡散板17を介して凹面ミラー12と対向する面であり、反射型表示素子20から接眼光学系30に向かう光の光路に対して、光源11とは反対側に位置している。本実施形態では、面19cは、反射型表示素子20の表示領域の短辺に平行でかつ表示面に垂直な面内(図16の紙面に平行な面内)では光学的なパワーを持ち、その長辺に平行でかつ表示面に垂直な面内(図16の紙面に垂直な面内)では光学的なパワーを持たない曲面形状、すなわち、凹面シリンドリカル形状で構成されている。
面19cには、第1の偏光板13、拡散板17および凹面ミラー12がこの順で貼り合わされており、照明プリズム19と一体化されて保持されている。つまり、第1の偏光板13は、照明プリズム19の面19cに貼り合わされ、照明プリズム19と凹面ミラー12との間に位置している。拡散板17は、第1の偏光板13に貼り合わされており、この第1の偏光板13を介して照明プリズム19に保持されている。また、凹面ミラー12は、拡散板17に貼り合わされており、この拡散板17および第1の偏光板13を介して照明プリズム19に保持されている。なお、第1の偏光版13、拡散板17および凹面ミラー12は、照明プリズム19と一体化されずに、別に設けた保持部材で保持されるようにしても構わない。照明プリズム19の面19cは、面19dと連結されている。
面19dは、面19cと面19eとを連結する面であり、平面であってもよく、曲面であってもよい。なお、面19dを省略して面19cと面19eとを直接連結してもよい。面19eは、反射型表示素子20と対向する面であり、本実施形態では平面で構成され、面19aと連結されている。面19eは、面19bと平行にはなっておらず、それゆえ、面19bの法線と面19eの法線とは、ある角度で交差することとなる。
このような照明プリズム19を配置することにより、光源11から出射された光は、照明プリズム19の面19aから内部に入射し、面19aと対向する面19cを介して第1の偏光板13に入射する。そして、P偏光だけが第1の偏光板13を透過し、拡散板17にて拡散された後、凹面ミラー12で反射型表示素子20の方向に光路を折り曲げられる。凹面ミラー12で光路を折り曲げられた光は、再度、拡散板17および第1の偏光板13を透過して反射型表示素子20に入射し、そこで変調されて映像光として出射される。
上記映像光は、照明プリズム19の面19eから再び内部に入射し、これに対向する面19bを介して第2の偏光板34を透過し、接眼プリズム31に入射する。すなわち、反射型表示素子20から出射される光は、照明プリズム19の面19e・19bを順に横切って接眼光学系30に向かう。接眼プリズム31に入射した光は、実施の形態1と同様に、反射型ホログラム光学素子33を介して瞳EPに導かれる。
以上のように、本実施形態では、光源11と凹面ミラー12との間の光路中、および反射型表示素子20と接眼光学系30との間の光路中に照明プリズム19を配置し、照明プリズム19の外部に位置する凹面ミラー12で光路を折り曲げる構成とすることにより、光源11から凹面ミラー12に向かう光線(第1の光線)と、上記光線が進行する光路上の光線であって反射型表示素子20から接眼光学系30に向かう光線(第2の光線)とを、接眼光学系30の外部のほぼ均一な屈折率を有する媒質中(ここでは照明プリズム19の内部)で交差させるレイアウトとすることができる。これにより、照明光学系10のパワーを大きくすることなく、反射型表示素子20から接眼光学系30に向かう光の光路に近い位置に光源11を配置しても、照明光学系10において反射型表示素子20の照明に必要な一定の光路長を確保することができる。その結果、実施の形態1と同様に、装置の薄型化および小型化を容易に実現することができる。
しかも、第1の光線と第2の光線とが、ほぼ均一な屈折率を有する媒質である照明プリズム19の内部で交差するので、その交差部分では屈折率の変化がほとんどない。これにより、その交差部分で不要光が発生するのを抑えることができ、観察画像の品位が劣化するのを回避することができる。
また、第1の光線と第2の光線との交差部分は照明プリズム19の内部であり、これは接眼光学系30の外部でもあるので、本実施形態のように、2光線の交差部分(照明プリズム19)と接眼プリズム31との間に第2の偏光板34を配置することが可能となる。そして、上記のように第2の偏光板34を配置することにより、光源11から照明プリズム19を介して接眼プリズム31に入射する不要光(ゴースト光)を第2の偏光板34にてカットしながら、反射型表示素子20からの入射光(映像光)のみを第2の偏光板34を介して接眼プリズム31に導くことができる。したがって、接眼プリズム31を介して観察者に提供される映像の品位が、上記ゴースト光に起因して低下するのを回避することができる。
また、本実施形態では、第2の偏光板34は、照明プリズム19に貼り合わされている。この場合、照明光学系10を保持する筐体3(図2参照)内で照明プリズム19を保持することで、第2の偏光板34も同時に保持することができる。したがって、第2の偏光板34を独自に保持する部材(機構)を不要とすることができる。さらに、照明プリズム19において、第2の偏光板34が貼り合わされる面は平面であるので、第2の偏光板34を照明プリズム19に容易に貼り合わせることができる。
また、接眼光学系30の外部に照明プリズム19を配置することにより、接眼光学系30の接眼プリズム31と反射型表示素子20との間の実距離を調整することが可能となる。これにより、照明光学系10の設計自由度を増大させることができる。
つまり、例えば、表示画角(観察画角)αの大きな映像表示装置1を実現しようとした場合、接眼光学系30の焦点距離を短く設定する必要がある。このとき、上記2種の光線の交差部分が空気の場合は、接眼光学系30の接眼プリズム31と反射型表示素子20との間隔が狭くなりすぎて、照明光学系10の各構成部材の配置が困難となる。
このとき、接眼プリズム31の高さ方向を短くする、すなわち、接眼プリズム31の上部を反射型ホログラム光学素子33に近い位置まで下げて形成し、反射型表示素子20と接眼プリズム31との間の空気層の領域を大きく確保することにより、照明光学系10の各構成部材の配置領域を確保する手法も考えられる。しかし、本実施形態の映像表示装置1を図2で示したシースルータイプのHMDに適用することを考えた場合、上記の手法では、接眼プリズム31の高さ方向が短くなることにより、シースルーで観察できる領域が狭くなり、妥当ではない。
そこで、本実施形態のように、屈折率nの照明プリズム19を配置することにより、照明プリズム10を配置しない場合に比べて、反射型表示素子20と接眼プリズム31との間の実際の距離を長くとることができる。これにより、表示画角αを大きくすべく、接眼光学系30の焦点距離を短く設定した場合でも、照明光学系10の照明プリズム19以外の各構成部材を容易に配置することが可能となる。
このような効果は、照明プリズム19を構成する媒質の屈折率nが、1.4<n<2.0の範囲内であれば確実に得られることが実験的にわかっている。したがって、照明プリズム19を構成する媒質は、例えば、屈折率nが約1.8のガラスであってもよく、屈折率nが上記範囲内のプラスチック以外の樹脂であってもよい。
また、本実施形態では、照明プリズム19は、反射型表示素子20から接眼光学系30に向かう光が順に交差する2つの面19e・19bを有しており、これらの2つの面19e・19bは、互いに平行でない平面である。これにより、照明プリズム19の傾き、すなわち、2つの面19e・19bの位置や角度(法線同士の角度)を調整することで、像面の倒れおよび色収差を補正することが可能となる。したがって、高品位な映像を提供することができるとともに、装置の設計自由度を増大させることができる。
また、本実施形態では、第1の偏光板13、拡散板17および凹面ミラー12が照明プリズム19と一体化されて保持されている。これにより、照明光学系10の各光学素子を保持する筐体3の構成が簡単になり、照明ユニットの小型化およびコストダウンを図ることができる。
ところで、第1の偏光板13、拡散板17および凹面ミラー12の全てを照明プリズム19と一体化するのではなく、その一部のみを照明プリズム19と一体化するようにしてもよい。つまり、第1の偏光板13を照明プリズム19の面19cに貼り合わせてこれらを筐体3内で一体的に保持する一方、拡散板17および凹面ミラー12を筐体3内でそれぞれ別々に保持ようにしてもよい。また、第1の偏光板13を照明プリズム19の面19cに貼り合わせるとともに、拡散板17を第1の偏光板13に貼り合わせてこれらを筐体3内で一体的に保持し、凹面ミラー12だけを筐体3内で独自に保持するようにしてもよい。
これらの場合であっても、筐体3内で各光学素子を個々に保持する構成に比べて、筐体3の構成を簡素化できることに変わりはない。ただし、本実施形態のように、第1の偏光板13、拡散板17および凹面ミラー12の全てを照明プリズム19と一体化したほうが、筐体3の構成を簡素化できる効果を最も高く得ることができる。
また、図3や図4の構成に照明プリズム19を適用する、つまり、第1の偏光板13と凹面ミラー12との間に照明プリズム19を配置することも可能であるが、その場合には、凹面ミラー12だけを照明プリズム19に貼り付けてこれらを一体化したり、第1の偏光板13および凹面ミラー12の両者を別々の面で照明プリズム19に貼り付けてこれらを一体化することもできる。これらの場合であっても、筐体3の構成が簡単になるので、照明ユニットの小型化およびコストダウンを図ることができる。
また、本実施形態では、照明プリズム19において、第1の偏光板13が貼り合わされる面19cは凹面シリンドリカル形状であるので、第1の偏光板13を照明プリズム19に容易に貼り合わせることができる。なお、面19cは平面であってもよく、この場合であっても、第1の偏光板13を照明プリズム19に容易に貼り合わせることができる。また、第1の偏光板13を照明プリズム19に貼り合わせない場合(第1の偏光板13を単独で保持する場合)には、面19cを球面で構成してもよい。
ところで、図18は、映像表示装置1の他の構成例を示す断面図である。この映像表示装置1は、接眼プリズム31を、第2の偏光板34を介して照明プリズム19に貼り合わせ、これらを一体化した以外は、図16の構成と同様である。図18の構成の場合は、接眼プリズム31を単独で保持する部材(機構)を設ける必要がなくなる。また、照明プリズム19と接眼プリズム31との相対的な位置関係をこれらの貼り合わせ時に決めることができ、位置精度を高めることができる。
また、図18の構成では、第3の偏光板18を照明プリズム19の面19aに貼り合わせ、第3の偏光板18も照明プリズム19に一体的に保持するようにしているが、このようにすることで、照明光学系10が第3の偏光板18を有している場合でも、照明光学系10を保持する筐体3の構成を簡素化することができる。
また、図19は、映像表示装置1のさらに他の構成例を示す断面図であり、図20は、その映像表示装置1に用いられる照明プリズム19’の概略の構成を示す断面図である。図20の照明プリズム19’は、反射型表示素子20から接眼光学系30に向かう光が順に交差する2つの面19e・19bが両方とも光学的なパワーを有する曲面で構成されている以外は、図17の照明プリズム19と同様の構成である。なお、図19の構成においては、接眼光学系30の第2の偏光板34を照明プリズム19’の面19bに貼り付けずに保持部材等で保持しているが、これを面19bに貼り付けるようにしてもよい。
このような照明プリズム19’を用いることにより、接眼光学系30の光学パワーを照明プリズム19’に割り振ることができる。したがって、装置の設計の自由度が増大し、観察画像のより高品質な映像表示装置1を提供することが可能となる。なお、このような効果は、面19e・19bの少なくとも一方が光学的なパワーを有する曲面であれば得ることができる。
また、上記曲面は、例えば凹面シリンドリカル形状であってもよいし、球面であってもよい。特に、上記曲面が凹面シリンドリカル形状であれば、第2の偏光板34を照明プリズム19に貼り付けることが容易となるので、そのような貼り付けを考慮した場合は、上記曲面は凹面シリンドリカル形状であることが望ましい。
なお、照明プリズム19’のように、光学的なパワーを持たせるべく、複数の面を曲面で構成する場合は、成型のしやすさの観点から、照明プリズム19’をガラスよりも樹脂で構成するほうが望ましい。
なお、以上の各実施の形態で説明した構成を適宜組み合わせて映像表示装置を実現することも勿論可能である。
なお、以上の各実施の形態では、映像表示装置をHMDに適用した例について説明したが、例えば、デジタルカメラの電子ファインダーや、携帯電話機のモニターにも適用することが可能である。
なお、本発明は、以下の構成であってもよいと言え、それによって以下の作用効果を奏する。
本発明の映像表示装置は、照明光学系と、反射型の表示素子と、接眼光学系とを有する構成において、上記照明光学系の光源は、3原色に対応した波長の光を出射するものであり、上記表示素子は、複数の画素を有し、上記光源からの出射光を各画素ごとに変調することによって映像を表示するものであり、上記表示素子の各画素は、上記光源から時分割で順に供給される3原色の光のそれぞれに対応して時分割で駆動され、上記接眼光学系は、上記表示素子から出射される3原色に対応した波長の光をそれぞれ回折させるホログラム光学素子を有しており、上記ホログラム光学素子における3原色の各色についての回折効率半値の波長幅をそれぞれΔλ1とし、上記光源からの出射光における3原色の各色についての光強度半値の波長幅をそれぞれΔλ2とすると、3原色の各色について、Δλ1<Δλ2であってもよい。
上記の構成によれば、反射型の表示素子の各画素は、光源から時分割で順に供給される3原色(RGB)の光のそれぞれに対応して時分割で駆動される。そして、表示素子から順に出射されるRGBの映像光は、接眼光学系のホログラム光学素子にて回折されて観察者の瞳に導かれる。これにより、観察者は、カラー映像を観察することが可能となる。
ここで、3原色の各色の全てについて、ホログラム光学素子における回折効率半値の波長幅Δλ1と、光源からの出射光における光強度半値の波長幅Δλ2とは、Δλ1<Δλ2の関係となっているので、光源からのRGBの出射光のうちで、さらに波長域を絞った光のみをホログラム光学素子にて回折させて観察者の瞳に導くことができる。これにより、時分割で駆動される表示素子を用いた場合でも、RGBの各色純度を高めることができ、観察映像の色再現領域を、光源からの出射光のみで決まる色再現領域よりもさらに広げることができる。
特に、3原色の各色について、Δλ1<20nmであれば、RGBの各色純度を確実に高めることができ、観察映像の色再現領域を確実に広げることができる。また、3原色の各色について、さらにΔλ1≦10nmの条件を満たせば、RGBの各色純度をより一層確実に高めることができ、観察映像の色再現領域をより一層確実に広げることができる。
また、本発明において、上記ホログラム光学素子は、基板上に塗布されるホログラム感光材料を露光することによって形成されており、上記ホログラム感光材料は、3原色の光の全てに感度を有する単層カラーフォトポリマーで構成されていてもよい。
単層カラーフォトポリマーは、3原色の光の全てに感度を有しており、感光層1層で複数の波長(RGB)のホログラムを記録することができるため、構成が簡便で、ホログラム光学素子を容易に、かつ、安定して作製することができる。また、単層カラーフォトポリマーにおいては、層内での各色の相互作用によって高い回折効率を得にくいが、その分、回折効率の半値波長幅を小さくすることが容易である。
また、本発明においては、3原色の各色について、Δλ1>3nmであることが望ましい。Δλ1が3nm以下の場合、広い色再現領域を実現することは可能であるが、ホログラム光学素子での回折波長幅が小さくなりすぎて、光源からの出射光の利用効率が低下し、映像が暗くなる。したがって、3原色の各色について、Δλ1>3nmであれば、映像の明るさの低下を回避しながら、広い色再現領域を実現することができる。
また、本発明においては、3原色の各色について、1/10<Δλ1/Δλ2<1であってもよい。
Δλ1/Δλ2の値が下限値以下であると、色再現領域の広い映像を提供することが可能となるが、ホログラム光学素子での回折波長幅が光源からの出射光の波長幅に対して相対的に小さくなりすぎて、明るい映像を提供することが困難となる。逆に、Δλ1/Δλ2の値が上限値以上であると、明るい映像を提供することが可能となるが、色再現領域の広い映像を提供することが困難となる。したがって、Δλ1/Δλ2の範囲を上記のように規定することにより、広い色再現領域と明るさとを両方満足させる映像を提供することができる。
また、本発明においては、3原色の各色について、上記ホログラム光学素子における回折効率のピーク波長は、上記光源からの出射光の光強度半値の波長幅の波長域に含まれていることが望ましい。
この場合、3原色の各色について、ホログラム光学素子における回折効率のピーク波長と、光源からの出射光の光強度のピーク波長とは比較的近い値(同一となる場合も含む)となるので、光源からの出射光のうちで光強度が高い波長域の光を、効率よくホログラム光学素子にて回折させて観察者の瞳に導くことができる。したがって、光源からの出射光の利用効率を上げて、明るい映像を観察者に提供することができる。
特に、ホログラム光学素子における3原色の各色についての回折効率のピーク波長をそれぞれλ1とし、光源からの出射光における3原色の各色についての光強度のピーク波長をそれぞれλ2とすると、3原色の各色について、λ1は、λ2±20nmの範囲内であることが望ましい。
この場合は、3原色の各色について、ホログラム光学素子における回折効率のピーク波長と、光源からの出射光の光強度のピーク波長とが確実に近くなるので、光源からの出射光の利用効率を確実に上げることができ、明るい映像を観察者に確実に提供することができる。
また、本発明において、上記表示素子は、強誘電液晶表示素子であることが望ましい。強誘電液晶表示素子は、高速応答性に優れており、コントラストの高い映像表示が可能である。したがって、上記表示素子として強誘電液晶表示素子を用いることで、時分割駆動による高品位の映像を観察者に提供することができる。
また、例えば軸非対称な光学系では、光源からの出射光は、表示素子に対して斜め方向から入射する(入射角がついている)ので、表示素子には広い視野角特性が望まれる。この点、強誘電液晶表示素子は広い視野角特性を持っているので、表示素子を強誘電液晶表示素子で構成することは、特に軸非対称な光学系において非常に有効である。
このとき、上記強誘電液晶表示素子は、反射型であってもよい。反射型の場合は、シリコン等の半導体を基板として用いることができるため、透過型の場合よりも小型で集積度の高い表示素子を作製することができる。しかも、各画素を駆動するためのスイッチング素子や配線を含む周辺回路を、表示側とは反対側の基板に配置することができるので、画素の集積度を上げても開口率の低下が少ない。この結果、反射効率が非常に高くなり、明るい映像を表示することができる。
また、本発明の映像表示装置は、上記光源から上記反射型強誘電液晶表示素子に至る光路を折り曲げる光路折り曲げ部材(例えば反射ミラーやプリズム)をさらに有しており、上記光路折り曲げ部材は、上記光源から上記光路折り曲げ部材に向かう光と、上記反射型強誘電液晶表示素子から上記接眼光学系に向かう光とが交差するように設けられており、上記光源からの光が上記光路折り曲げ部材を介して上記反射型強誘電液晶表示素子に入射するときの入射角をθとすると、10°<θ<60°を満足することが望ましい。
入射角θが下限値を下回ると、反射型強誘電液晶表示素子と接眼光学系との距離が大きくなり、入射角θが上限値を上回ると、光源と光路折り曲げ部材との距離が大きくなるので、いずれも装置の小型化に支障をきたす。したがって、入射角θが上記範囲内であれば、装置の小型化に支障をきたすことなく、上記2つの光路を確実に分離することができる。
また、本発明においては、上記ホログラム光学素子は、基板上に塗布されるホログラム感光材料を露光することによって形成されており、上記ホログラム感光材料は、3原色の光のそれぞれに感度を有する各層を積層した3層カラーフォトポリマーで構成されていてもよい。
3層カラーフォトポリマーは、3原色の光のそれぞれに感度を有する各層が積層されてなり、各層は1つの波長のホログラムのみを記録するので、同一層内で各色の相互作用がなく、各色について高い回折効率が得やすい。したがって、光源光量を上げなくても、明るい映像を観察者に提供することができる。また、光源光量を上げなくても済む分、装置の消費電力を抑えることができる。
また、本発明において、上記ホログラム光学素子は、軸非対称な正の光学パワーを有していることが望ましい。このようなホログラム光学素子を用いることにより、装置を構成する各光学部材の配置の自由度を高めることができ、装置を小型化することが容易となる。
また、本発明では、上記ホログラム光学素子における3原色の各色についての回折効率は、上記光源からの出射光における3原色の各色についての光強度に応じて設定されていることが望ましい。
例えば、光源からの出射光のうちで視感度の高いG光の光強度が他のB光やR光の光強度よりも小さい場合には、ホログラム光学素子でのG光の回折効率は高めに設定される。また、ホログラム光学素子でのB光およびR光の回折効率は、B光およびR光の光強度に応じて例えばBGR全体のカラーバランスが良好となるように設定される。
このように、3原色の各色について、光源からの出射光の光強度に応じてホログラム光学素子の回折効率が設定されることにより、光源光量を上げなくても(低消費電力で)、カラーバランスの良好な明るい映像を観察者に提供することができる。
また、本発明においては、上記接眼光学系によって形成される光学瞳内での光強度のピーク位置のずれ量は、3原色の各色間で1mm以下であることが望ましい。
光学瞳内で3原色の光強度のピーク位置(照明強度分布)がずれていると、観察者の瞳がずれたときに、観察者の瞳から光強度のピーク位置が外れるような色が生じ、この場合、観察者は色ムラを認識しやすくなる。観察者の瞳が直径2mm以上であることを考慮すると、光学瞳内で各色間の光強度のピーク位置のずれ量が1mm以下であれば、観察者の瞳がずれたとしても、観察者が色ムラを認識するのを抑えることができる。
本発明において、上記ホログラム光学素子は、上記表示素子からの映像光と外光とを同時に観察者の瞳に導くコンバイナであってもよい。この場合、観察者は、ホログラム光学素子を介して、表示素子から提供される映像と外界像とを同時に観察することができる。
また、上記接眼光学系は、上記表示素子からの映像光を内部で全反射させて上記ホログラム光学素子を介して観察者の瞳に導く一方、外光を透過させて観察者の瞳に導く第1の透明基板を有していてもよい。このような第1の透明基板を用いることにより、表示素子からの映像を観察可能としながらも、外光の透過率が高くなるので、明るい外界像を観察することができる。
また、上記接眼光学系は、上記第1の透明基板での外光の屈折をキャンセルするための第2の透明基板を有していることが望ましい。この場合、観察者が接眼光学系を介して観察する外界像に歪みが生じるのを防止することができる。
また、本発明のヘッドマウントディスプレイは、上述した映像表示装置と、上記映像表示装置を観察者の眼前で支持する支持手段とを有していることを特徴としている。この構成によれば、映像表示装置が支持手段にて支持されるので、観察者は映像表示装置から提供される映像をハンズフリーで観察することができる。