本発明の1つの実施形態について詳細に説明する前に、本発明は、以下の説明に記載し又は図面に示した構成要素の構造及び配置の詳細にのみその適用が限定されるものではないことを理解すべきである。本発明は、その他の実施形態が可能であり、また、多様な方法にて具体化し又は実施することができる。また、本明細書にて使用した表現及び専門用語は、説明の目的のためであり、限定するものであると見なすべきではないことが理解される。
発明の詳細な説明
本出願は、2002年4月9日付けにて発行された、米国特許第6,368,298号の主題を引用することにより組み入れる。本出願は、また、2002年1月15日付けにて出願された、米国特許出願第10/053,247号、及び2002年6月27日付けにて出願された、米国特許出願第60/392,669号の主題を引用することにより組み入れる。
本発明は、外科手術にて使用したとき、ウィルス感染及び/又は拒絶症例を少なくとも部分的に緩和し、自己由来のフィブリングルーを迅速に得ることを許容する、直ちに使用可能なキットを提供することができる。
これは、ヒト又は動物何れの由来でもなく、無機化合物であり、このため、感染せず且つ拒絶反応を生じない凝固活性剤を使用することにより実現することができる。
本発明による「直ちに使用可能な」キットは、凝固活性剤として塩化カルシウムを含有する密封した容器を含み得る。塩化カルシウムは、患者の血漿が密封した容器内に導入されたとき、患者の血漿中に存在するフィブリノーゲンを活性化する。
本発明によるシステム及びキットは、ウィルス感染又は拒絶症例のリスクを伴わずに使用し得る自己由来のフィブリングルーの製造を許容するという非常に有利な効果がある。本発明によるキットは、また、極めて短時間に、並びに凝血塊若しくは膜を形成する間又は噴霧の間に、自己由来のフィブリングルーを患者の血漿から製造することも許容し得る。本発明による直ちに使用可能なキットは、また、自己由来のフィブリングルーを既知のシステムと比べてより低コストにて得ることも許容し得る。また、この直ちに使用可能なキットは、迅速な組織再生のための血小板及びその関連した成長因子を提供し得る。
本発明によるキットの更なる有利な効果は、その幾つかの実施形態に関する以下の詳細な説明から当該技術分野の当業者に明らかになるであろう。
本発明によるキットに適した容器は、実施例1にて以下に説明するように、抗生物質用のガラス容器を包含する。ガラス又はプラスチック製の試験管もまた使用し得る。容器の好ましい容積は、5〜15mlである。試験管は、好ましくは直径12〜16mmの範囲及び高さ75〜100mmの範囲である。容器は、容器が排気されたとき、その内側空間と大気との間の圧力差に起因する圧力に耐え得るよう適切な厚さでなければならない。好ましくは、底が半球状又は円錐形の試験管は厚さ0.7mm、底が平坦な試験管は厚さ1mmである。プラスチック製容器は、生産後少なくとも12ヶ月真空圧を保つことを保証し得るよう、好ましくは0.2〜0.8mm厚の透明なポリエステル樹脂製である。製造
後、プラスチック製試験管は、使用日まで完全な気密性を保証するため、好ましくは熱密封した内側ポリエチレン層を有する錫箔真空気密容器内に入れる。
容器又は試験管を排気することが得策であるが、本発明を具体化するのに必須ではないことを理解すべきである。
容器又は試験管は、容器が完全に気密であることを保証するため、並びに化学成分を導入した後及び蒸気又は放射線滅菌処理ステップの前に真空栓をすることを許容するために適した、ゴム又はシリコーンの穿刺可能なキャップにより密封し得る。
密封後、容器を、30分間、121℃の蒸気にて滅菌処理し得る。滅菌処理は、ガンマ線又は電子ビームの照射によっても行い得る。
フィブリン安定剤であるトラネキサム酸を使用することができるが、純粋な結晶性ε−アミノカプロン酸もまた適する。20mlの血漿の量に適した25mlの容器を使用するとき、その量は、約1gである。フィブリン安定剤を使用する必要がない場合もある。フィブリン及び血小板のネットワークに包含させるために、性能を向上させるその他の治癒剤を第二の容器に追加し得る。その例として、非限定的に、骨及び軟組織移植片、足場材料、抗生物質、鎮痛剤、幹細胞、癌治癒用の化学毒性剤、免疫抑制剤、所望の分子を発現するよう設計した細胞、及びそれらの組み合わせを包含する。
凝固活性剤として、固体CaCl2・2H2O又はカルシウムを含有する液体溶液を本発明によるキットにて使用し得るが、他の凝固活性剤(以下に列記)を使用することもできる。例えば、精密薬量計(最大誤差:1〜2mg)を使用して、11.76mgのCaCl2・2H2Oを5mlの容器内に導入し、汚染外部成分が導入されるのを防止することができる。これと代替的に、例えばマグネシウム、マンガン又は亜鉛イオンのような他のカチオン種であって、抗凝固剤に対し内因性カルシウムよりも大きな親和力を有するものを、二価カルシウムカチオン類に代えて使用することができる。抗凝固多血小板血漿(PRP)を添加したとき、内因性カルシウムイオン類は、より大きい親和力のカチオン種によって抗凝固剤から置き換えられ、当初の内因性カルシウムイオン類は、凝血活性化のため利用可能になる。
血漿量12mlに対する15mlの容器の場合、導入すべき固体無水塩化カルシウム量は35.28mgであり、一方トラネキサム酸量は、これに対して300mgもの結晶となろう。
血漿量20mlに対する25mlの容器の場合、導入すべき無水塩化カルシウム量は、58.8mgであり、一方トラネキサム酸量は、これに対して500mgもの結晶となろう。
塩化カルシウムは、実施例に使用される無水の形態のほか、例えば、CaCl2・2H2Oのような市場にて入手可能な任意のその他の適した形態とし得る。また、以下の実施例1に説明するように、この塩の溶液を使用することもできる。
本発明はまた、生きた生物にて組織を再生させることのできる固体フィブリン網又は自己由来グルーを形成するシステム及び方法を提供する。これらの方法及びシステムにおいて、血液試料を遠心分離することにより抗凝固血漿が得られる。本明細書に記載した移し装置は、安定的で濃密な自己由来フィブリン及び血小板ネットワークを得る目的で、カルシウム凝血剤を含有する第二の容器に血漿を移し、次いで直ちに遠心分離することを可能にする。本明細書に記載した移し装置は、また、他の用途にて他の液体を移すために使用し得る。換言すれば、本明細書に記載した方法、移し装置及びシステムは、同時的な遠心分離及び凝固を可能にする。これらのシステム及び方法を使用することにより、次の:1)滅菌状態が維持されるような仕方にて試料を操作すること;2)血漿の全量を移して凝血塊の全収率を最大にすること;3)凝血時間を最小にするよう、抗凝固剤とカルシウム凝血剤との化学量論値の比が狭い範囲に維持されること;4)移しが、迅速に完了し、血小板由来成長因子の半減期内で有効なうちに行うことができること;5)通常こうした作業を行わないヘルスケア提供者(例えば、歯科医)が、容易にこれらの方法を行い、システムを作動させることができること;6)装置は、再使用及び血液中に含まれる病原体による汚染の可能性を防止し得るよう単回使用型であること、のうち少なくとも1つを実現することができる。
一般的に述べるならば、本発明は、生きた生物にて組織を再生させるために使用することができる固体フィブリン網又は自己由来グルーを製造するための統合システム及び方法を提供する。ある実施形態(図1に図示)において、システムは、一次容器10、二次容器14、及び移し装置18を備える。好ましくは、一次容器10及び二次容器14は管であり、より特定すれば、試験管であるが、流体又は液体を保持することができ且つ、遠心分離可能である任意の容器が本発明の使用に適する。好ましくは、容器10、14は、ガラス又はプラスチックで出来ている。
一次容器10は、標準的な静脈穿刺技術を使用してその内部に血液を吸引し得るものでなければならない。好ましくは、該一次容器10は、血液が吸引される間、汚染を防止するためシール22にて密封されるが、容器10を、その直後に密封してもよい。例えば、ゴムストッパ、キャップ、発泡材、エラストマー又はその他の複合材のような、多様なシール22を使用して一次容器10を密封することができる。シール22は、突き刺せる又は穴を開けられるものでなければならず、このため、ゴム及びシリコーンがシールを作る好ましい材料であるが、シールを提供し且つ、突き刺し可能な任意の材料を使用することができる。一次容器10は、抗凝固溶液25を含有し得る。溶液中の抗凝固剤25は、好ましくは、カルシウム結合剤を含む。より特定すれば、抗凝固剤25は、クエン酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩、エチレンジアミン四酢酸二カリウム塩及び三カリウム並びにそれらの組み合わせを含み得る。好ましくは、一次容器10は、クエン酸ナトリウム溶液を含有する。抗凝固剤25は、該血液を遠心分離の状態に置く目的で、一次容器10内に採取された血液を薄める傾向にある。更に、一次容器は、密度勾配分離媒体26、空気27、並びに高粘度低密度流体28を包含する(以下に更に説明するキットを示す、図10を参照)。
密度勾配分離媒体26は、異なる密度を有する、一次容器10内の特定の液体又は流体の異なる分画を分離し得るものでなければならない。分離媒体26は、液体の濃密な望ましくない分画を遠心分離により分離し、その後、除去することを許容する。例えば、分離媒体26は、血液試料を遠心分離する間に、赤血球細胞30を多血小板血漿34から分離し得る。一例において、分離媒体26は、一次容器10の底部に見られ得る。他の例において、分離媒体26は、一次容器10の内部の周りにリングとして又は他の任意の適した内側の位置に取り付け得る。遠心分離する間、異なる密度を有する液体を分離可能である任意の密度勾配分離媒体26が本発明と共に使用するのに適しているが、好ましくは、媒体26はゲルであり、より好ましくは、チキソトロピックゲルである。図2は、血液試料の遠心分離後の一次容器10を示し、また、ゲル分離媒体26も示す。好ましくは、チキソトロピックゲルは、該ゲルが通常の周囲状態にて一次容器10内で流れ又は容器10の周りで動くことはないが、遠心分離間に遭遇するより大きい遠心分離力にて流れるのに充分な降伏点を有する。最も好ましくは、不要な赤血球細胞の分画30の高い密度よりも小さいが、望ましい血漿分画34の密度よりも大きい密度を有するゲルであることが好ましい。換言すれば、血液試料を遠心分離後、赤血球細胞30を血漿34から分離することのできるゲル又は他の媒体が最も好ましい。かかる媒体26は、遠心分離の間容器内にて動き又は流れるが、その後は流れず、これにより遠心分離が完了したとき、分離した分画の間に半恒久的な障壁を形成する。
図3に示すように、一次容器10内で採用可能な他の適切な密度勾配分離媒体26は、分画を分離するのに望ましい密度を保持する複数のプラスチックビーズ26である。該ビーズは、その後に移し装置38を密封するため必要とされる高粘度、低密度の流体中に懸濁させ得る。遠心分離の間、ビーズ26は、2つの分画30、34の間の境界部に移行し、焼結(sintering)と極めて類似する状態にて密集化し、異なる密度を有する分画(すなわち赤血球細胞30及び血漿34)の間に安定な障壁を形成する。ペレットを被覆する残留高粘度低密度流体は、密集化した層の安定化に寄与する。
その他の適切な密度勾配分離媒体は、引用することにより本明細書中に組み入れる、コールマン(Coleman)に対して発行された米国特許第5,560,830号及び米国特許第5,736,033号に開示されたもののような重合系フロート装置を含む。図4は、重合系フロート装置26を示す。
一次容器内の低粘度高密度の混和しない流体28(「LDHV流体」)は、一般的に不活性油を含む。最も好ましくは、LDHV流体は、ポリエステル、シリコーン又は他の不活性流体を含み、置換又は圧力ポンプにより一次容器のゲルの上方の位置に供給される。LDHV流体は、以下に更に説明するように、その内部に入ったとき、移し装置18のカニューレ38を通る流れをブロックし又は除去することができなければならない。
二次容器14(図1及び図10にとりわけ図示)は、特定の反応に必要な化学試薬を含有する。二次容器14は、一次容器10の場合と同様の仕方にて、すなわち、ゴムストッパ、キャップ、発泡材、エラストマー又は他の複合材により、シール24にて密封される。以下に説明する本発明の1つの適用例において、二次管は、カルシウム凝固活性剤36を含有し得る。適切なカルシウム凝固活性剤の例は、非限定的に、塩化カルシウム、フッ化カルシウム、炭酸カルシウム及びそれらの組み合わせを包含するが、カルシウムを含む任意の塩であればカルシウム凝固活性剤として充分であろう。更に、その他の活性剤は、グルコン酸カルシウム、フマル酸カルシウム、ピルビン酸カルシウム及び水に溶解し、ヒトと適合する他の有機カルシウム塩を包含する。凝固活性剤は、該活性剤が血漿と接触したとき、血漿を凝固させる。二次容器14は、内部圧力が実質的にゼロとなるように完全に排気することができる。二次容器14を排気すると、流体を一次容器10から移し装置18を通じて二次容器14に移すことが容易になる。二次容器14は、移す間充填される際、気体分子が全く存在しないから、残留する気体が圧縮され圧力が上昇することはない。その結果、流量は最大となり、完全な移しが促進され、排気が不要になることで滅菌性が維持され、また、望ましい反応に対する望ましい化学量論値の比が維持される。
別の実施形態において、二次容器は、また、抗生物質、鎮痛剤、癌治癒剤、血小板成長因子、骨形成タンパク質、幹細胞、骨移植片材料、軟組織移植片及び細胞培養材料、免疫抑制剤及びそれらの組み合わせのような1つ又はそれ以上の治癒増進剤を含有し得る。局所的に投与できる他の治療剤もまた、包含し得る。抗生物質の例は、非限定的に、アンピシリン、エリスロマイシン、トブラマイシン及びそれらの組み合わせを包含する。鎮痛剤は、非限定的に、アスピリン、コデイン及びそれらの組み合わせを包含する。癌治癒剤は、非限定的に、5−フルオロウラシルを包含する。骨移植片材料は、非限定的に、自己由来骨、死体からの同種異系移植片(allograft)又は同種移植片(homograft)、動物由来骨(異質移植片(xenografts)又は異種移植片(heterograft);例えば、羊、ウシ、豚、馬)、合成骨移植片(リン酸三カルシウム、ヒドロキシアパタイト、硫酸カルシウムセラミック)、正生物性(orthobiologic)化合物(血小板由来成長因子(PDGF))、骨形成因子(BMP)、組み換えヒト骨形成因子(rhBMP)、及びそれらの組み合わせを包含する。軟組織移植片及び細胞培養材料は、非限定的に、皮膚、皮膚移植片材料(オルガノジェネシス(Organogenesis)が販売するアプリグラフ(Apligraf))、歯肉移植片(例えば、柔軟なパレット(palette)からのもの)、コラーゲン、生物吸収性移植片、脈管移植片、PDGF、血小板因子4(PF4)、トロンボグロブリン、トロンボスポンジン、デュポン(DuPont)社のテフロン(TEFLON)(登録商標名)及びダクロン(DACRON)(登録商標名)及びそれらの組み合わせを包含する。免疫抑制剤は、非限定的に、臓器移植用の免疫抑制剤(例えば、コルチコステロイド、カルシン(calcin)ノイリンブロッカー(サイクロスポリン、タクロリムス、SK506)、ミコフェノール酸モフェチル、ラパマイシン)及び皮膚免疫抑制剤(セロリムス(serolimus)、スピンゴシン(spingosine)1−リン酸レセプターアゴニスト(STY720))を包含する。望ましい分子の発現及び遺伝子治療用の生きた細胞も包含し得る。
移し装置18は、例えば、図1に示すような2つの部分を含むことができ、又は、これと代替的に、例えば、図17及び図18に示すような単一部分とし得る。図5及び図6並びに図17及び図18に最も良く示すように、移し装置18は、第一の開口部46を有する第一の端部42と、第二の開口部54を有する第二の端部50とを有するカニューレ38を含む。カニューレ38の端部42、50は、一次容器10及び二次容器14のシール22、24に穴を開け又は該シールを貫通し得るように鋭角又は尖ったものである(または、これら端部に斜角面をも有する)。容器を操作する間、指が偶発的に付着するのを防止する目的で、カニューレ38を、ハウジング58に引っ込ませ且つ、同軸状に取り付ける。ハウジング58は、カニューレ38に対し中央方向及び軸方向に向き決めされた2つの円筒状の対向した案内部62、64を有する。案内部62及び64は、一次容器10及び二次容器14を、移し装置18の第一の端部42及び第二の端部50まで案内する機能を果たす。図5及び図6は、容器10、14を第一の端部42及び第二の端部50まで案内する案内部62、64を示す。
カニューレ38の端部42、50は、密閉シールを形成する安全弁、鞘又はエラストマー性スリーブ68、72にて取り囲み又は覆い得る。安全鞘68、72は、また、第一及び第二の開口部46、54を覆う。第一及び第二の端部42、50がエラストマー性スリーブ68、72に穴を開けると、これに応じて、スリーブ68、72は引っ込む。図5は、第一の端部42が一次容器10のシール22に穴を開け始め、これに応じてスリーブ68が後退し、一方、スリーブ72は依然として第二の端部50を完全に覆う状態を示す。端部42、50は充分に伸びてシール22、24に完全に穴を開けるが、更に容器10、14内に伸びることはない(図6に示すように)。このことは、逆さの一次容器10の液体容積を二次容器14に最大量移すことを許容する。図6はまた、第一及び第二の端部42、50が第一及び第二の容器10、14のシール22、24に完全に穴を開け、また、スリーブ68、72の双方が完全に後退した状態を示す。エラストマー性スリーブ68、72は、穴が開いていないときの気体又は液体の流れを阻止する。スリーブ68、72の適切な材料は、非限定的に、多様なゴム類及び熱可塑性エラストマー類を包含する。
第一の実施形態の操作について説明すると、血液が標準的な静脈穿刺技術を使用して一次容器10内に吸引されたならば、血液は、その内部の抗凝固剤25によって抗凝固化される。典型的には、一次容器10は、血液が吸引される間密封されているが、その後に該一次容器を密封してもよい。一次容器10を密封することは、その内容物の汚染を防止する。その後、一次容器及びその内容物10(例えば、血液、抗凝固剤25、分離媒体26及びLDHV流体28)を遠心分離する。許容可能な遠心分離は、5〜15分間、900〜3,500xGの重力にて行うことができる。好ましい実施形態において、一次容器を、約10分間、約1,000xGの重力にて遠心分離する。この最初の遠心分離は、一次容器の内容物又は分画を、例えば、図2に示すような、複数の層に分離する。該層は、(遠心分離後の、一次容器10の底部から容器の頂部への順序にて)、赤血球細胞層30、分離媒体26、多血小板血漿層34、LDHV流体層28及び最後に残留気体27の容積を大気と等しい圧力で包含する。これらの層の比率は、用途毎に様々であり得るため、単に説明の目的にのみこれら比率を示してある。遠心分離に次いで、移し装置18を使用してシール22に穴を開ける前に、密封した一次ホルダ10を逆さにする。換言すれば、図7に示すように、密封された開口部が最下方の垂直位置となるよう一次容器10を逆さにする。一次容器を逆さにすると層が配置される順序が変わる。シール22の上方には、底部から頂部への順序にて次の層:多血小板血漿34、高粘度低密度の混和しない流体28、残留気体27、分離媒体26及び赤血球細胞30がある。
次に、図8に最も良く示すように、二次容器14をその密封した開口部24が最上方の位置にある状態に垂直位置に配置する。これにより、二次容器14が一次ホルダの内容物を移し得るように配置される。図8は、移すための適正の位置である、二次容器14の上方にある移し装置18の上方の逆さの位置にある遠心分離後の一次容器10を示す。次に、移し装置の案内部64を二次容器14の上方に配置して、その二次容器14を案内する一方、逆さの一次容器10を他方の案内部62内に配置する(又は、その逆)。換言すれば、シール22、24のどちらに穴を開けるためにも、カニューレ38の端部42、50のいずれもを使用できる。移し装置18は両端にて対称であるから、ユーザは、ある程度の間違えようのない操作が可能となる。次に、ユーザは、容器を互いに押し付けて、シール22、24の双方に、それぞれのカニューレ端部42、50の各々で穴を開ける。端部42、50を覆う2つの弁スリーブ68、72は、更に操作を間違えようのないものにする。まず、第一の端部42が一次シール22に穴を開けるならば(この場合にも、どちらのシールに穴を開けるためもいずれの端を使用できる)、他端50を覆う穴が開いていないスリーブ72は流体を保持し、これにより、流体の流出を阻止する。一方、他端50が他方のシール24(従って、スリーブ72)に最初に穴を開けるならば、第一の端部42を覆うスリーブ68により真空が維持される。
図6及び図9に示すように、端部42、50が双方のスリーブ68、72及びシール22、24に穴を開けると、望ましい流体は、差圧により一次容器10から二次容器14へ移される。換言すれば、二次容器14内の圧力は排気されているから、一次容器10の内容物(より特定すれば血漿34)は、二次容器14内に流れる。当初、周囲圧力に等しい一次容器10内の圧力は、液体量が低下し、気体の容積が膨張するに伴って、降下する。しかし、圧力がゼロとなる時はない。二次容器14は、ゼロ又はゼロよりも僅かに高い圧力に完全に排気されるから、管が充填されるとき、圧縮すべき気体は殆ど又は全くないため、その内部の圧力は上昇しない。従って、器具18は、多様な液体及び溶液を1つの管から別の管へ移すために使用することができ、また、血液を移すことにのみ制限されると解釈されてはならない。
一次容器10内での層の特定順序の配置により、多血小板血漿34は容易に移される。更に、一次容器10は、排気レベルに予め設定されるから、容器は、血液を採取した後、部分的にのみ充填する。このことは、移す間、気体の容積が膨張したとき、「上部空間」の気体が有意にゼロ以上に止まることを許容し、これにより、二次容器14に迅速且つ完全に移すことを許容する。このことは、理想気体の法則及びポアズイユ−ハーゲンの方程式によるものである。
一次容器の内容物又は部分(すなわち多血小板血漿)の移しは、LDHV流体28がカニューレ38に入るまで続く。LDHV流体の高粘度は、カニューレ38の狭小な管腔を詰まらせ、これにより流れは中断する。これにより、汚染された血液移し装置を除去しようとするとき特に重要な移し装置18の再使用を妨げ、また、その前の使用もしくは別の患者における使用に伴う血液中の病原体による偶発的な汚染も防止する。
二次容器14への血漿分画34の移しが完了し、これにより最大の収率が許容され且つ、試薬の適正な化学量論比を保つことが許容される。次に、血漿34が、二次容器14内の凝固活性剤36に接触し、これにより混合体60を形成し、この混合体は直ちに遠心分離して固体フィブリン網を形成することができる。一次容器10と二次容器14との間の差圧は、移しの間ずっと実質的に維持され、迅速な移しを許容する。移し装置18は、管がかみ合う順序の影響を受けず、装置を実質的に間違えようのないものにする。最後に、移しは排気なしに行われ、試料の滅菌性及び汚染の無い状態を維持する。
全体として、移し装置18は、固体フィブリン網を形成する目的で、血漿34をカルシウム凝固活性剤36と接触させ、その直後、血漿の同時的な凝固及び遠心分離を行うことができる、迅速且つ効率的な方法を提供する。固体フィブリン網は、生きた生物にて身体組織を再生するのに適する。かかる方法は、血漿がカルシウム凝固活性剤36と接触する前に、その水を除去することにより、まず血漿を前濃縮化する必要性を緩和する。更に、移し装置18は、多様な用途で血液又は他の流体を移すために使用することができる。
本発明はまた、図10に示すような直ちに使用可能なキットを提供する。該キットは、一次容器10、二次容器14、及び移し装置18を含む。キットの1つの実施形態において、キットは、包装体に載せる2つのトレー70、74を有し得る。第一のトレー70はステップ1に必要な構成要素の全てを有し、第二のトレー74はステップ2に必要とされる全ての構成要素を有する。勿論、構成要素は、様々な仕様にて配置することができる。
ステップ1は、血液を一次容器10に採取し、その後、遠心分離して多血小板血漿を得ることを含む。第一のトレー70の構成要素は、静脈穿刺箇所を清浄にするアルコール綿棒78、多数試料血液採取針82(21ゲージ×25.4mm(1インチ))、安全ホルダ86、抗凝固剤(例えば、クエン酸塩)を含有する一次容器10、ゲル、LDHV流体、及び静脈穿刺箇所を覆う包帯90を含む。静脈穿刺箇所を、滅菌アルコール綿棒78にて清浄にする。針カートリッジ84を開け、安全ホルダ86内にねじ込む。次に、針82を患者の静脈に挿入し、容器10をホルダ86に接続する。次いで、血液が容器に充填し、また、針82は引き抜かれ且つ、ホルダ86内に引っ込む。ホルダの端部はヒンジ止めフラップにより閉じられる。静脈を包帯90にて閉じる。容器10を約10分間、約1000xGにて遠心分離し、血漿を赤血球細胞から分離する。
二次トレーの構成要素は、ステップ2にて使用する構成要素であり、AF管(自己由来フィブリン管)又は二次容器14、及び移し装置18を包含する。ステップ2は、一次容器10を逆さの位置且つ、移し装置18内に配置することを含む。二次容器14は、凝固剤を含有し、移し装置の他端により穴が開けられる。容器10、14は、接続され、多血小板血漿は、一次容器10から二次容器14へ流れる。次に、二次容器を、直ちに約30分間2300xGにて遠心分離し、血小板を有する濃密なフィブリン又は固体フィブリン網を得る。
本発明の第二の実施形態は、図11〜図14に示すような、固体フィブリン網を製造する別の統合システムを提供する。該システムは、第一の実施形態の一次容器10と極めて類似した一次採取装置10を含む。採取装置10は、密度勾配細胞分離媒体26(上述の通り)及び抗凝固剤(図示せず)、並びに、一次採取装置10に接続若しくは統合できるリザーバ94とを含有し得る。本発明の第一の実施形態に関して、より特定すれば、分離媒体26に関して上述したことは、本発明の第二の実施形態にも当てはまる。換言すれば、分離媒体26に対し同一の材料を使用でき、また、同一の材料が好ましい。例えば、最も好ましくは、分離媒体26はチキソトロピックゲルを含み、該ゲルの降伏点は、該ゲルが通常の周囲状態にて流れるのを阻止するが、ゲルが遠心分離の間に遭遇するようなより大きい遠心分離力では流れることを許容する。分離媒体26は、図11に示すように、一次採取装置の底部(すなわち、開口部の他端)に配置し得る。これと代替的に、分離媒体は、一次採取装置の内部の周りにリングを形成し得る。該一次採取装置10は、一次採取装置が高密度低粘度の流体を保持しなくてもよい点を除いて、上述した一次容器10と本質的に同一である。好ましくは、一次採取装置10は、ゴムストッパ又はキャップのような(上述したような)シール22を有する。
リザーバ94は、チャンバ96、及び該チャンバと流体的に連通したカニューレ100を含む。チャンバ96は、液体試薬104、最も好ましくは、カルシウム凝固活性剤を含有する。好ましくは、カルシウム凝固活性剤は、塩化カルシウム、フッ化カルシウム、炭酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、フマル酸カルシウム、ピルビン酸カルシウム及びそれらの組み合わせである。カニューレ96は、一次採取装置10のシール22に穴を開けることが可能でなければならない。ある好ましい実施形態において、カニューレは、周囲状態下、チャンバ96内の試薬104がカニューレ100から流れ出るのを阻止する降伏点のゲルのような、ブロッキング媒体108を含有する。他の適切なブロッキング媒体は、非限定的に、ばねつきボール、弁、ばね負荷式弁、穿刺可能な膜、及びアンプル(すなわち、流体又は粉体にて充填された中空の膜)のような力作動式の機械的システムを包含する。ゲル108の降伏点は、チャンバ96と一次収集装置10とが係合している場合、これらが連通することを許容するように、特に大きい重力にて遠心分離したときにゲル108が動くようなものとする。リザーバ94は、また、リザーバを採取装置10まで案内するために使用される案内ハウジング110を有し得る。カニューレ100は、その滅菌性を保つため、エラストマー性スリーブ112により取り囲まれ又は覆われ得る。スリーブ112については、第一の実施形態に関して上述した通りである。
他の実施形態において、チャンバ96は、また、抗生物質、鎮痛剤、癌治癒剤、血小板成長因子、遺伝子治療用の骨形成タンパク質、追加的な使用のための幹細胞、及びその他のホルモン剤のうち1つ又はそれ以上を含有し得る。投与可能なその他の治癒剤もまた包含し得る。抗生物質の例は、非限定的に、アンピシリン、エリスロマイシン及びトブラマイシンを包含する。鎮痛剤は、非限定的に、アスピリン及びコデインを包含する。癌治癒剤は、非限定的に、5−フルオロウラシルを包含する。
実施時、患者の血液116を、上述した従来の静脈穿刺技術によって一次採取装置10内に採取する。一次採取装置10内の抗凝固剤は、遠心分離前に、血液を薄める。その後、図13及び図14に示すように、リザーバ94のカニューレ100を一次採取装置10のシール22を通じて穿刺することにより、リザーバ94を一次採取装置10に結びつける。カニューレ100がシール22を穿刺するとき、スリーブ112は後退する。カニューレ100の長さは、シール22に穴を開けるのに充分であるが、カニューレは、可能ではあっても、採取装置10内に更に伸長しないことが好ましい。
次に、採取装置10及びリザーバ94を遠心分離する。管に加わる遠心力は、等式F=mω2rにて表わされ、ここで;F=力、m=システムの質量、r=ロータの中心からの半径方向距離、ω=回転角度率である。リザーバは、一次管のゲルよりもrが小さいため、発生するせん断応力が充分でないから、リザーバのカニューレ内のゲルは動けない。一次管10を、細胞が分離し、ゲル26が図13に示すような細胞/血漿の境界に動くまで、低重力にて旋回する。換言すれば、第一の実施形態と同様に、約10分間、約1000xGの最初の遠心分離後、分離媒体26は赤血球細胞30を多血小板血漿34から分離する。最初の遠心分離には、約5〜15分間、約900〜1500xGの遠心力での遠心分離も許容可能である。
その後、遠心分離速度を増し、リザーバは充分に大きい遠心力を受け、このため、カニューレ100内のブロッキング媒体108は、一次採取装置10内に排出され、液体試薬108(例えば、カルシウム凝固活性剤)は、図14に示すように、リザーバから排出される。その後、内容物を、約15〜40分間、約2300〜6000xGにて遠心分離し得る。カルシウム凝固活性剤が一次採取装置内で血漿に接触する際、試料は依然として遠心分離されているから、即時的且つ同時的な凝固及び遠心分離が起こる。その結果、組織の再生に適した固体フィブリン網が形成される。一次管の細胞分離の実施及びその後の適正な化学量論値比における液体凝血剤の添加は、移しなしに、1つの管内で行われる。速度及び時間に関して遠心分離機をプログラムすることにより、本発明は、簡単で間違えようのない方法を提供する。
ある代替的な実施形態において、単一の採取装置10は、図15及び図16に示すように、内側区画室119及びリザーバ94を有する。リザーバ94は、一次採取装置10と統合又は接続し、該区画室と流体的に連通する。管、導管又は開口部120は、区画室119とリザーバ94との間の流体的連通状態を提供し、ブロッキング媒体108にて密封される。この場合にも、ブロッキング媒体108は、上述したように、特に大きい重力に曝されたとき、活性化し、動いてリザーバ94と一次採取装置10との間の連通を許容する降伏点を有する。ゲル又は媒体の降伏点は、血液細胞を血漿から分離するための最初の遠心分離の間、動かないようなものである。第三の実施形態において、装置の各々の端部は開口部を有し、各々の端部は、ゴムストッパ、キャップ、発泡材、エラストマー又はその他の複合材のような取り外し可能又は取り外し不可能なシール22、122により密封されている。ストッパ122を有するリザーバ94は、採取装置のシール22及び開口部の他端に配置する。
別の実施形態において、リザーバ94は、抗生物質、鎮痛剤、癌治癒剤、血小板成長因子及び骨形成タンパク質のうち1つ又はそれ以上を含有し得る。投与可能なその他の治癒剤もまた含有し得る。抗生物質の例は、非限定的に、アンピシリン、エリスロマイシン及びトブラマイシンを包含する。鎮痛剤は、非限定的に、アスピリン及びコデインを包含する。癌治癒剤は、非限定的に、5−フルオロウラシルを包含する。
第二の実施形態に関して上述したのと同一の方法にて、代替的な実施形態が使用される。すなわち、遠心分離装置が2つの異なる遠心力にて制御される:1)第一のものは、血漿を赤血球細胞から分離するのに充分な力であり;2)第二のものは、リザーバと装置との間の管、導管又は開口部120内のブロッキング媒体108を、主要本体内に動かすのに充分な力である。その結果、カルシウム凝固活性剤が装置の内部に入ることが許容される。このことは一方、遠心分離が第二のより大きい重力にて進行する際、固体フィブリン網を形成する目的で、血漿の同時的な遠心分離及び凝固を行うことを可能にする。固体フィブリン網又は自己由来グルーを得るために、シール122を取り外し得る。好ましい実施形態において、シール122は突き通して装着され、図16に示すように装置10からねじ抜きすることができる。
1つの側面において、本発明は、生きた生物にて組織を再生するのに適した自己由来固体フィブリン網を製造するシステムを提供する。該システムは、分離媒体及び低密度高粘度液体を含有する、密封した一次容器を含む。分離媒体は、容器が血液を含有し、遠心分離され、一次容器が第一の圧力を有するとき、赤血球細胞を血漿から分離することができる。該システムは更に、カルシウム凝固活性剤を含有する密封した第二の容器を含む。第二の容器は、第一の圧力より低い第二の圧力を有する。該システムはまた、第一の端部及び第二の端部を有するカニューレを包含する移し装置を含む。第一及び第二の端部は、第一の容器と第二の容器との間に流体的連通状態を提供する目的で、密封した一次及び二次容器に穴を開けることができる。一次容器の低密度高粘度液体は、カニューレ内に入ったとき、カニューレを通る流れをブロックすることができる。
別の側面において、本発明は、生きた生物で組織を再生することのできる固体フィブリン網を製造する別のシステムを提供する。該システムは、第一の圧力を有し、その中に吸引して血液を有することのできる、密封した一次容器を含む。該システムは更に、第二の圧力を有し、カルシウム凝固活性剤を含有する、密封した第二の容器を含む。第二の圧力は第一の圧力よりも低い。該システムはまた、第一の端部及び第二の端部を有するカニューレを包含する移し装置を含む。第一及び第二の端部は、密封した容器に穴を開けることができ、移し装置は、一次容器内に吸引された血液の部分を差圧によって第二の容器に移すことができる。該システムはまた、一次容器から移し装置を通じて二次容器に移された血液であって、生きた生物の組織を再生することのできる固体フィブリン網を形成する目的で、カルシウム凝固活性剤と接触させる血液の部分を、同時的に遠心分離及び凝固するための、遠心分離装置を包含する。
別の側面において、本発明は、生きた生物で身体組織を再生するための固体フィブリン網の製造方法を提供する。該方法は、血液を患者から一次容器内に吸引し、一次容器内で血漿を血液から分離することを含む。一次容器からの血漿を、血漿とカルシウム凝固活性剤とを接触させる目的で、第一の端部及び第二の端部を有するカニューレを含む移し装置を使用して、カルシウム凝固活性剤を含有する二次容器に移す。血漿及びカルシウム凝固活性剤を、固体−フィブリン網を形成する目的で、二次容器内で同時的に凝固及び遠心分離する。固体フィブリン網は、生きた生物で身体組織を再生するのに適する。
別の側面において、本発明は、生きた生物で組織を再生するのに適した固体フィブリン網を製造する別のシステムを提供する。該システムは、内部を有し、分離媒体を含有する密封した一次採取装置を含む。該一次採取装置は、血液を内部に吸引して有することができ、分離媒体は、一次採取装置が血液を含有し遠心分離されるとき、血漿を赤血球細胞から分離することができる。該システムは更に、チャンバと、該チャンバと流体的に連通した導管とを有するリザーバを含む。チャンバは内部にカルシウム凝固活性剤を有し、また、導管はブロッキング媒体にて少なくとも部分的に充填され、活性剤が周囲状態下にてチャンバ外に流れ出るのを防止する。
別の側面において、本発明は、生きた生物にて組織を再生することのできる固体フィブリン網を製造する別の方法を提供する。該方法は、シールを有する一次採取装置内に患者から血液を吸引すること、及びチャンバと、該チャンバと流体的に連通した導管とを有するリザーバを提供することを含む。該チャンバは、カルシウム凝固活性剤にて少なくとも部分的に充填されており、また、導管はブロッキング媒体にて少なくとも部分的に充填され、活性剤が周囲状態下にてチャンバから流れ出るのを阻止する。チャンバ、導管及び採取装置は、ブロッキング媒体がなければ流体的に連通するように、リザーバは一次採取装置に接続する。次に、一次採取装置を第一の速度にて遠心分離する。第一の速度は、血漿を血液から分離するのに充分であるが、導管内のブロッキング媒体を一次採取装置内に動かすのには充分でない。次に、一次採取装置を第二の速度にて遠心分離する。第二の速度は、ブロッキング媒体の少なくとも一部分を導管から一次採取装置内に動かすことを許容するのに充分であり、これによりカルシウム凝固活性剤が採取装置内に流れ血漿と接触することを許容し、これにより生きた生物の組織を再生するのに適した固体フィブリン網を形成する。
上述したシステムの殆どは、凝血塊を圧縮する目的の、第二の遠心分離の間、半径方向遠心分離(すなわち、管の軸線が遠心分離装置の軸線に対し垂直な位置の配置)を採る。しかし、これらのシステム及び装置が使用されるとき、遠心分離工程は、滅菌上の懸念のため、手術室内で行うことはできない場合がある。このため、別の側面において、本発明は、手術室内へ伸びる滅菌管外側部を提供し、標本を滅菌状態下にて採取し、その標本を手術室外に運び、その標本を遠心分離装置内で処理し、このようにして、手術室内に再度導入されるとき、管外側が滅菌状態にあることを保証する。
よって、上述した任意の2管システムと共に、一次及び二次管の双方は、除去容易なフィルム又はこれと代替的に、成形した運搬体にて包装し得る。図52は、剥ぎ取り片を有するシュリンクラップ、又は剥ぎ取り容易な底部を有するギザギザ付き端部を有するシュリンクラップを包含し得るフィルムの設計を示す。図52は、一次又は二次容器を手術室のような滅菌された場に導入することを許容する滅菌管運搬体を示す。該運搬体は、図53に示すように、取り扱いの更なる水準に合うようシュリンクラップし得る。組立体は、放射線により滅菌処理し得る。組立体をその後手術室内で開け、管の内側及び外側は滅菌状態に保たれる。図53は、運搬体の設計を示す。包装は、一般的に製造中、最小の厚さのものである。管及びラップの双方を放射線により滅菌処理することができ、内面及び外面の滅菌性を提供する。手術室内に入れる直前に、フィルム又は運搬体を一次管から除去し、滅菌した外側管が手術室に入るようにする。更に、フィルムの外面、包まれた管又は運搬体は、手術室内に導入する前に、当該技術分野にて既知の適当な化学物質を使用して汚染除去又は滅菌処理し得る。このことは、フィルム、包み又は運搬体を手術室内で開けることを許容し、これにより、製品の絶対的な滅菌性が保証される。血液を採取し、管を手術室から出し、遠心分離する。滅菌状態の血漿を、フィルム又は容器内にある間に、活性剤を有する第二の管に移し、遠心分離する。手術室に再度入る直前に、外側の包みを除去し、滅菌状態の製品が手術室に入る。この設計の改良点は、除去可能な接着フィルムを一次管のストッパに追加することであり、これにより、移す操作の間の、滅菌表面が許容される。
更に、上述した1管システムの任意のものを使用するとき、管は、製造中予め組み立てた、フィルム又は運搬体を有し得る。組立体を密閉袋内に配置し、組立体を滅菌処理する。袋を、手術室に入る直前に開ける。その後、針が管のストッパ及びフィルムに穿刺し、血液を採取する。接着フィルムを管のストッパに追加することもできる。管は、手術室から出て、活性剤又は他の物質を有する液体リザーバを組立体に追加する。2段階遠心分離を行い、手術室に再導入する直前に、運搬体を除去する。
全体として、一次及び二次管の双方を、処理する間、滅菌性フィルム又は運搬体内に維持することができ、滅菌状態の外側部分と共に手術室内に再度導入することができる。フィルム又は運搬体を管に予め組み立て、その使用状態は、通常の血液採取管の採取及び遠心分離をするときに見える。フィルム又は運搬体は、気体及び水蒸気に対する透過障壁を提供することにより管の貯蔵寿命及び信頼性を向上させる材料、特に、プラスチック管に有用な材料にて製造することができる。
上記の説明は、濃密なフィブリン及び血小板ネットワーク、及び固体フィブリン網を同時的な遠心分離及び凝固により形成するために使用される多様な方法及び装置を確立する。これら装置及び方法の多くは、管の軸線が遠心分離装置の軸線に対し実質的に垂直の位置に配置し得る、半径方向遠心分離を採る。例えば、管は、遠心分離装置の半径に配置され、ストッパを中心付近に、及び管の底部を遠心分離装置の外端縁に向けて有し得る。上述した適用例の殆どにおいて、第二の遠心分離サイクル中に凝血塊が圧縮する。その結果、遠心力は、管の長さに沿って直線状に変化する。試薬の追加分を活性化するために遠心分離装置の相違する速度を使用することにより、遠心分離力の違いを有益に使用することができる。半径方向遠心分離装置は、商業的用途にて見られる最も一般的な型式であり、その順応性のある使用方法は、特に、その広範囲な利用可能性に着目するとき、製品の設計者にとって有益である。
固体フィブリン網又はフィブリン血小板ネットワークは、血漿、又はより特定すれば、多血小板血漿の、同時的な遠心分離及び凝固により形成された物質を意味し得る。上述したように、固体フィブリン網は、制限のない組織の再生用途にて使用可能である。血漿中のフィブリノーゲンは、フィブリンストランドに変換され、血小板の沈積と同時に沈積する。凝固カスケードの最終的なステップにおいて、フィブリンストランドは、ランダムな方向に架橋し、その結果、ゲル状のコンシステンシーとなる。極めて大きい遠心分離力が加わったならば、フィブリンは高強度の膜内に圧縮される。従って、膜は、より大きい遠心分離力又は重力(上述したような力)にて更に圧縮された固体フィブリン網を意味し得る。
しかしながら、半径方向遠心分離の一つの代替例は、軸方向遠心分離である。軸方向遠心分離を使用するとき、液体を保持する容器はその中心軸線上で回転する。換言すれば、容器は、要するに、ロータのように作動する。その結果、遠心分離装置内に重いロータは最早、不要である。軸方向遠心分離型容器は、一般的に、半径方向ロータよりも半径が小さくなり得るので、等価なg力を実現するために、より大きいrpmを必要とする。例えば、遠心分離装置を10,000rpmまで旋回する代わりに、遠心分離装置を200,000rpmまで旋回し得る。必要とされるrpmはより大きいが、重量が顕著に減少すれば安全上の危険が最小になり、モータのコストを不釣合いな程に低減する。換言すれば、ロータを取り除くことにより遠心分離装置の重量が著しく減少する結果、遠心分離装置を、より大きなrpmにて旋回させ得る。
一般的に、遠心分離力は、半径にrpmの2乗(rpm2)を掛けた値に比例する。実際、この方法により著しく大きいg力を得ることができる。極めて均一な遠心分離場の強さにて著しく大きい円筒面積が得られる。容器は一般的にロータであるから、軸方向遠心分離は、通常、バッチよりも、単一容器の作動を採用する。このため、細い管が使用され且つ、その軸線の周りで旋回する場合でさえ、膜は、管の外側の大部分以上を覆う。より特定すれば、覆われた円筒体の表面積は、約2πrlと定義することができ、ここで、rは円筒体の半径、lは円筒体の長さである。これに反して、半径方向遠心分離を使用するとき、表面積は、実質的に管の直径になるであろう。このため、半径方向遠心分離を使用すれば2πrlに等しい膜が製造され、一方、軸方向遠心分離ではπr2に等しい膜が製造される。
軸方向遠心分離の形態は、多様な仕方で実現し得る。例えば、異なるカートリッジを改変した既存のロータ内に配置し得る。これと代替的に、ロータを除去し、そこに使い捨て型カートリッジ又は容器を挿入してもよい。典型的には、軸方向遠心分離と共に使用するシステムは2つのチャンバ、すなわち血液が赤血球細胞と多血小板血漿とに分離される細胞分離チャンバ、及び多血小板血漿が凝固活性剤と接触し、同時的な遠心分離及び凝固が行われて膜を形成する高密度化チャンバを採用することになろう。この場合にも、膜は、多様な組織再生及び傷口のシーラントの用途にて使用することができる。
1つの実施形態において、例えば図19及び図20に示すように、滅菌性ドラムロータ使い捨て型カートリッジ200が提供される。該カートリッジ200は、例えば、多様なセラミック、ガラス及びプラスチックのような、多様な材料から形成し得る。特定しない限り、本発明にて形成される装置及びシステムは、多様なセラミック、プラスチック、ガラス又はその他の適切な材料から製造し得る。カートリッジ200は、一般的に、遠心分離装置のドラムロータ内に装着し得るようにした円形の王冠の断面形状とすることができるが、以下に説明するように、ろ過装置により分離した2つのチャンバを有することに比して該形状は重要でない。断面の形状は、フィブリン多血小板膜を回収するためその後に除去することが出来るようなものとする。1つの実施形態において、カートリッジ200は、中央壁208、側壁212、頂部壁及び底部壁216、220及びろ過装置224により輪郭が定められた内側チャンバ204を有する。内側チャンバ204は、上述した細胞分離チャンバとして作用する。頂部壁216は、穿刺可能な装填ポート228を有することができ、該装填ポートを通じて患者からの血液を内側チャンバ204内に導入又は注入し得る。ろ過装置224は、別個の量の全血を受け入れる、選択的な遠心分離可能(機械的に支持された)フィルタで出来たものとし得る。ろ過装置224は、非限定的に、ポリカーボネート、セルロース、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン又はテフロン(登録商標)を含む多様な材料にて形成し得る。フィルタは、約4〜9ミクロンの孔サイズを有し得る。内側チャンバ204は、例えば、1つ又はそれ以上の、半径方向遠心分離法及び装置に関して上記に説明した抗凝固剤のような、抗凝固剤232を含有し得る。抗凝固剤232は、内側チャンバ204に入る血液が凝血するのを防止する。
カートリッジ200はまた、内側チャンバ204よりも一般的に小さい容積の外側チャンバ236を有している。外側チャンバ236又は周縁タンクは、図20に示すように、ろ過装置224及び周壁240、並びに頂部壁及び底部壁216、220により輪郭が定められる。外側チャンバ236は、1つ又はそれ以上の、上述したカルシウム凝固活性剤のような、凝固活性剤244を包含し得る。外側チャンバ236は、高密度化チャンバとして作用し、ここで、多血小板血漿は凝固活性剤244により活性化する。これらの物質は、膜を形成するために同時的に遠心分離及び凝固が行われる。高密度化チャンバ236はまた、1つ又はそれ以上の二次活性剤248又は治癒増進剤を含有し得る。二次活性剤248は、非限定的に、1つ又はそれ以上の、抗生物質、鎮痛剤、癌治癒剤、血小板成長因子、骨形成タンパク質、遺伝子治療用の細胞、更なる用途用の幹細胞、その他のホルモン及びそれらの組み合わせを包含する。投与可能な他の治癒剤もまた包含し得る。抗生物質の例は、非限定的に、アンピシリン、エリスロマイシン及びトブラマイシンを包含する。鎮痛剤は、非限定的に、アスピリン及びコデインを包含する。癌治癒剤は、非限定的に、5−フルオロウラシルを包含する。二次剤は、ここにおいて、更に、以下に、より特定して説明する、任意の高密度化チャンバに包含し得る。二次活性剤又は治癒増進剤については、上記により詳細に説明してある。
作用時、カートリッジ200を遠心分離のためドラムロータ(図示せず)に挿入する。内側チャンバ204は、既に血液を含有していても、ドラムロータ内に挿入した後にポート228を通じて血液を注入してもよい。血液の内側チャンバ204内への注入は、標準的な静脈穿刺法を使用して行われる。換言すれば、内側チャンバ204を真空状態に保ち得る。血液の凝血を防止するため、内側チャンバ204内に抗凝固剤232を使用し得る。ポート228は内側チャンバ204の滅菌状態を維持し、閉システムを提供する。ドラムロータは、幾つかの異なるカートリッジを収容し得る。一般的に、カートリッジ200の各々は、同様のカートリッジ又は釣合い重りをロータ内の反対側に配置することにより、ロータ内で釣合わせる必要がある。血液試料を遠心分離するとき、フィルタ224は、赤血球及び白血球細胞を内側チャンバ204内に保持するが、所定の時間、適正な遠心分離力の下で、血漿及び血小板が外部チャンバ236まで貫通して流れることを許容する。適正な遠心分離力は、1000〜15,000xgの範囲内であり、また、所定の時間は、5分以上であり得、より特定すれば、5分〜60分又は5分〜30分の範囲であり得る。多血小板血漿が二次チャンバ236内に入ったならば、カートリッジ内で、凝固活性剤244に接触する。
本実施形態及び以下の実施形態に関して説明するように、上述した任意の凝固活性剤244が使用に適する。活性剤224と接触したとき、血漿は同時的に遠心分離及び凝固され、これにより固体フィブリン網又は膜を形成する。ロータの混合動作を提供することは、凝固プロセスを開始するために血漿及び活性剤244を完全に混合するのに役立つ。混合後、ロータを、10分以上、より特定すれば約20分以上、約3000〜15000xgにて旋回させて、第二のチャンバ236の周壁240に白血球抵抗性(white resistant)のフィブリン多血小板膜を得ることができる。使用すべく膜を取り出す目的で、膜をカートリッジ200から引き出すため、装置は、2つの部分に壊し又は開けることができる。これと代替的に、そこから膜を得ることができるように壁の一方が取り外し可能な部分又はその他のアクセス領域を有し得る。膜をカートリッジから除去するその他の方法は、膜を巻く及び折り畳むことを包含する。衛生上の目的のため、カートリッジ200は使い捨て型とし得る。膜は、非限定的に、傷口の手当て及び火傷の手当てを含む、多様な用途を有する。より一般的には、膜は限定されない数の組織再生の用途にて使用し得る。
大型軸方向旋回として知られる本発明の他の実施形態において、例えば、非限定的に、直径1000mmまでの膜のような膜を得ることができる。図21〜図25は、この実施形態を示す。膜のサイズはロータのサイズに依存する。従って、膜のサイズは、どのロータが商業的に利用可能であるかに依存する。本実施形態において、半径方向遠心分離及び装置に関して上記に説明した一次及び二次遠心分離装置の作動の双方は、1つの軸方向旋回容器内で行われる。二次チャンバは、大きい面積の、多数の別個面積の膜を与え得るように仕切ることができる。この仕切りについては、以下により詳細に説明する。
このシステムは、遠心分離装置(図示せず)及びその内部に挿入することが出来る図21〜図25に示した装置252を含む。装置252は、2つのチャンバ、すなわち、互いに流体的に連通した一次又は上側チャンバ256及び二次又は下側チャンバ260を有する。一次又は上側チャンバ256は細胞分離チャンバとして機能する一方、二次又は下側チャンバ260は高密度化チャンバとして機能する。装置252はまた、図21〜図25に示すように、図中に輪郭を示した少なくとも1つの開口部、開口又は通気口を有する隔板264を有する。該隔板264は、2つのチャンバ256、260を分離する。開口部、開口又は通気口268は、一次チャンバ256と二次チャンバ260との間の流体的連通状態を提供する。隔板264は、例えば、プラスチック、セラミック又はガラスで出来たものとし得る。
一次チャンバ256は、分離媒体272を含有し得る。上述した任意の分離媒体272をシステムと共に使用することができるが、分離媒体272の特定の例は、シリコーンゲル、ポリエステルゲル、チキソトロピックゲル及びそれらの組み合わせのうち少なくとも1つを包含し得る。より具体的には、隔板264の、1つ又は複数の通気口268を、1つ又は複数の通気口268をブロックし且つ、最初の遠心分離後赤血球細胞を血漿から分離するのに充分な量の分離媒体272(例えば、ゲル)で栓閉じし得る。一次チャンバ256は、通常、穿刺可能なストッパ276又はボトルキャップのように裏当てしたねじキャップのような他の適切な装置を通じ、患者から全血を受け取る。図21〜図25において、システムは、血液を上側チャンバ256内に導入するために使用される穿刺可能なストッパ276を有するものとして示される。一次チャンバ256はまた、抗凝固剤232を含有し得る。チャンバ256はまた、標準的な静脈穿刺法による標本の真空採取を許容し得るよう排気し得る。二次チャンバ260は、凝固活性剤244を包含することができ、上述した二次活性剤248の1つ又はそれ以上を包含することができる。
血液280が、図22に示すように、上側チャンバ256内に採取された後、装置252を適宜なg力にて軸方向に遠心分離し、細胞の分離、すなわち、赤血球細胞288の多血小板血漿284からの分離を行う。細胞分離するために使用される典型的なg力は、例えば、5分以上のような所定の時間の500〜15,000xgを包含し得る。好ましくは、最初の遠心分離は、約5〜15分間、約1000〜1500xgにて行われる。これは、本明細書に記載した膜に関係する全ての実施形態に当てはまる。最初の遠心分離は、分離媒体272を、通気口268をブロッキングする位置から境界面まで動かす。例えば、チキソトロピックゲル272は、一次チャンバ256を血液280にて充填する間、2つのチャンバ256、260の分離状態を維持し得るが、最初の遠心分離の間に動いて細胞の分離を行い、2つのチャンバ256、260を分離する接続流体路を開放する。ゲル272は、半径方向、外方及び上方に流れ、ゲル272が底部チャンバ260内に落下することはない。最初の遠心分離の結果を、図23に示す。多血小板血漿284、分離媒体272及び赤血球細胞288の相対的密度のため、遠心分離により、図23に示すように、これら3つの物質は一次チャンバ256の内側から一次チャンバ256の外側まで上述した順序にて配置する。図面及び本明細書にて使用するように、PRPは多血小板血漿を表わし、RBCは赤血球細胞を表わす。
その後、最初の遠心分離を停止し、その結果を、図24に示す。遠心分離を停止したとき、多血小板血漿284は重力によって下側チャンバ260内に通気口268を通じて排出され、該下側チャンバにて多血小板血漿は凝血活性剤244及び二次活性剤248(存在するならば)と混合する。しかし、分離媒体272は、所定位置に止まり、これにより赤血球細胞288が通気口268を通って第二のチャンバ260に入るのを阻止する。通気口268は、加えられたg力によって多血小板血漿284の全てが二次的な高密度化チャンバ260内に流れるのを保証するために、漏斗状形状であり得る。
図25に示すように、遠心分離を、例えば、500〜15,000xgのような適正なg力にて再開し、大きい膜292が下側チャンバ260の外周に形成される。好ましくは、遠心分離は、実現しようとする膜の密度に依存して、約20分〜1時間、約2500〜10,000xgにて行われる。このことは、本明細書に記載した膜形成に使用される全ての実施形態に当てはまる。分離媒体272及び赤血球細胞288は、2回目の遠心分離の間、同一の位置に止まる傾向があることを認識すべきである。このシステムは、同時的な遠心分離及び凝固を許容し、その結果、大きい血小板/フィブリン膜292となる。装置252はまた、取り外し可能であることができ、これにより膜を装置から容易に引き出すことを許容する底部294を有する。
以下のシステム及び装置は、図21〜図25に示した基本的システムの変形例である。例えば、細胞分離チャンバすなわち一次チャンバ256は、高密度化チャンバすなわち二次チャンバ260と異なる半径を有し得る。図26により詳細に示すように、上側及び下側チャンバの半径は、異なるものであることが可能で、このことは、周壁にて異なるg力を加えることを許容する。その結果、1つの速度rpmが2つの異なるg力を生じ、これによりモータ及びプログラミングを簡略化する。より特定すれば、チャンバに異なる半径を提供すると、同一のrpmにて異なるg力となるため、多数速度のプログラミングが必要なくなる。
図27〜図30は、同心状の円筒体が使用される、図21〜図25に示したシステムの1つの変更例を示す。システム296は、隔板又はその他の分離体309によって下側部分308から分離された上側部分304を有する一次管300を包含する。一次管300は、細胞分離チャンバとして機能する。少なくとも1つの通気口、穴又は開口312は、一次管300の上側部分304と下側部分308との間の流体的連通を提供する。この場合にも、血液は、1つ又はそれ以上の穿刺可能なストッパ316又は上述したその他の適切な装置を通じて一次管300内に導入し得る。一次管300は、血液の過早の凝血を防止すべく抗凝固剤232を保持し得る。分離媒体272は、血液が少なくとも1つの通気口312を通じて一次管300の上側部分304から下側部分308内に流れるのを阻止する。下側部分308はまた、液体が流れ得る空隙、穴又は開口310を有し得る。多血小板血漿384の高密度化は、二次的な同心状管320内で行われる。二次管320は、上述した凝固活性剤244の1つ又はそれ以上及び/又は1つ又はそれ以上の二次活性剤を含有し得る。
最初に、システムの遠心分離により血液が血漿及び赤血球細胞に分離され、該血漿及び赤血球細胞は、上述し且つ図28に示した分離媒体によって分離する。最初の遠心分離は、一般的に、約10分間以上、約1000xg以上にて行われる。図29に示すように、遠心分離が停止したならば、多血小板血漿284は、1つ又はそれ以上の通気口312を通って一次管300の下側部分308内に落下し、赤血球細胞288は、分離媒体272により一次管300の上側部分304内に捕らえられることになろう。一次管300の下側部分308の壁には、少なくとも1つの通気口310が設けられる。システムは、その後、図30に示すように遠心分離され、これにより多血小板血漿284の少なくとも一部分は、一次管300の空隙310を通って下側部分308から去って二次管320に入る。この場合にも、赤血球細胞288は、分離媒体272により一次管300の上側部分304内に捕らえられたままであろう。図27〜図30に示すように、二次管は、少なくとも1つの凝血活性剤244を含有し、そこで多血小板血漿284が該凝血活性剤と接触する。その後、この変更例は、膜292を形成する同時的な凝固及び遠心分離を提供する。この変更例は、より小型のユニットを許容し、プラスチックの使用量を削減する。装置296はまた、膜の除去を容易にし得るよう取り外し可能な底部324を有し得る。
別のある代替例として、分離媒体に代えて疎水性膜325を採用し得る。疎水性膜325は、分離媒体を使用する任意のシステムに代えて使用し得る。疎水性膜325は、所定のg力にて多血小板血漿が流れることのみを許容し、分離媒体を不要にする。換言すれば、ゲルによってブロックされた穴を有する隔板を使用することに代えて、図31及び図32に示すように疎水性膜を使用し得る。膜を使用するとき、下側チャンバ及び上側チャンバは、図21に示すように同一の半径を有するか、又は該2つのチャンバはその一例を図26に示すように異なる半径を有し得る。更に、疎水性膜は、図27に示した同心状の設計のものに使用し得る。
疎水性膜325は、多血小板血漿のような水溶液体がそのポアを通って流れるのを、所定の静水圧に達する迄、実質的に阻止する。疎水性膜325の例は、非限定的に、ポリプロピレン、ポリカーボネート、セルロース、ポリエチレン、デュポンのテフロン(登録商標名)及びそれらの組み合わせを包含し得る。その他の例は、ミリポア(Millipore)製造のミリポア(Millipore)(登録商標名)膜及びスクリーン、又はヌクレオポア(Nucleopore)製造のヌクレオポア(Nucleopore)(登録商標名)膜及びスクリーンを包含する。これと代替的に、レーザにて精密穴が穿孔されたプラスチック隔板を使用してもよい。疎水性膜を使用すると、血液を、細胞分離チャンバ内に導入することができるが、高密度化チャンバ内に落下することはない。最初に、赤血球細胞を低いrpmにて血漿から分離することにより、適正な静水圧圧力を実現し得る。その後、遠心分離速度を増して、所望の圧力を実現し、流動圧力を規定する表面エネルギー/表面張力の制約に打ち勝つ。換言すれば、重力は、遠心分離の速度に伴って増大し、その結果、多血小板血漿は膜を通って流れるが、赤血球細胞は流れない。膜は、赤血球細胞を実質的にブロックする。
上記のシステムに対する別の形態変更は、本明細書に記載した任意の実施形態の、二次すなわち高密度化チャンバの形態を変更することを含む。これらの改変高密度化チャンバは、システム内で使用することができ、ここで、一次チャンバ及び二次チャンバは、同一又は異なる半径を有し、チャンバは同心状であり、及び/又は分離媒体又は疎水性膜が使用される。高密度化チャンバは、膜の除去を容易にし且つ、膜の最大程度の回収を保証する、異なる内壁を有し得る。例えば、高密度化チャンバは、体内に最初に配置するための膜のはがし強度を向上させ、その後に分解する、織った生物分解性織地(例えばゴアテックス(Goretex)が製造するゴアテックス(Goretex)(登録商標名))を含有し得る。チャンバの外壁は、また、織地を均一な長さにて壁から離して支持しする成形した張出し部又は溝を含有することができ、織地の両側部にて所望の寸法のフィブリン及び血小板の厚さを実現する。
より特定すれば、図39に示すように、高密度化チャンバ318の内壁又は側壁は、円筒体ではなく平坦な薄板の形態の膜を除去することを許容するための、1つ又はそれ以上の中実な又は鋸歯状リブ319を包含し得る。穴をあけたリブは、膜のエアレーションを促進する。チャンバの内壁は、形成される膜に孔を提供し、はがしを容易にする形態とし得る。図39は、内壁の1つ又はそれ以上の、中実なリブの底面図を示す。
図33は、高密度化チャンバ326の内部に見ることのできる織った生体適合性織地328を示す。かかる織物は、膜292を壁自体から離れた状態に保つ。織地328は、平坦な膜を得るために膜を円筒体から分離することを容易にし、特定の用途のために膜のはがし強度を増大させる。織地328は膜292内に埋め込まれた状態となる。更に、図34及び図35にそれぞれ示すように、張出し部332又は溝340をチャンバ326の壁336に成形し、織地の両側部におけるフィブリン層の厚さを制御し得る。これらは、織地を壁から隔てた状態に保つ小形の支持リブとして機能する。要するに、図33は、織地328自体が、膜の壁336への付着を防止することを示し;図34は、膜324の除去を容易にする壁336の張出し部332を示し;図35は、膜292を壁から離れた状態に保つ溝又は成形した支持リブ340を示す。張出し部332又は溝340を有する壁は、織地328と独立的に採用し得る。
これと代替的に、図36に示すように、高密度化チャンバは、膜292の除去を容易にするために除去可能なフィルム344にて裏当てし得る。該フィルム344は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、又はテフロン(登録商標名)を含む、ポリオレフィンのような、プラスチックを含み得る。フィルム344は、操作が容易であるようにタブ348を有することができ、また、膜292を着色し、フィルム348から区別するのを助けることができる。更に、フィルム348を処理して、ガラス様接触活性のような望ましい性質を得ることができる。タブ348を操作することにより、膜292を上に有するフィルム344の全体を除去し得る。例えば、高密度化チャンバ326は、凝固及び成長因子放出のための血小板の活性化及び膜の操作の容易化の双方を提供するような処理フィルムにて裏当てし得る。これと代替的に、PRP又はPPPを高表面エネルギー細管を通じて流動させPRP又はPPPを凝血のために活性化し、フィブリン密封層又は接着層として使用するための急速凝血接着を可能にするようにしてもよい。
チャンバ内の他の面に関して、プラスチック面は有効であり得るが、凝血活性化及び血小板成長因子の放出のために理想的でないことがある。その結果、プラスチックの代替例を図50及び図51に概略示する。例えば、多血小板血漿は、下側チャンバ内でガラスに接触し得る。換言すれば、図50に示すようにガラスを底部キャップに取り付けるか、又は図51に示すようにガラス球を底部に接着し又は熱によりつなげることができる。ガラスはまた、加熱しプラスチック上に落下するようにしてもよい。これと代替的に、表面は、酸素又は亜酸化窒素のような活性化気体を採用するグロー放電プロセスを使用してプラズマ処理し得る。より特定すれば、表面は、プラズマ化学気相成長法を使用して処理することができる。これと代替的に、表面は、例えば、シリコーン界面活性剤又はPVPyrのような多様な化学的被覆を使用して改変し得る。プラスチックを改変する別の方法は、小寸法のシリカビーズ又は粒子を上側チャンバ内のクエン酸塩溶液に添加することである。ゲル及び赤血球細胞に比してシリカは高密度であるから、シリカの殆どは、ゲルの下方又はゲル内に埋め込まれた状態で上側チャンバ内に止まる。従って、これらのプラスチック改変法を使用してシステムの一部分を、また、より特定すれば、本明細書に記載した実施形態の任意の高密度化チャンバの一部分を、被覆し得る。
異なる側面において、本発明は、傷口の手当てに関連して使用される四角形の多血小板フィブリン膜を生産することを可能にし、このことは、血小板の細胞分裂促進性の特徴を活用し、血小板由来成長因子(PDGF)及びベータトロンボグロブリン(BTG)、及び固体フィブリンフィルムの保護作用を提供する。成長因子、BTG、血小板因子4(PT4)及びトロンボスポンジンは、全て、固体フィブリン網にて細胞増殖を増進し得る因子である。より特定すれば、保護作用は、微好気性の環境、消毒的作用、及び分離作用を含む。同時的な遠心分離及び凝固を行うために使用することのできる装置は、図38に示したロータ医療装置を含む。該装置は、プラスチック又はその他の何らかの適切な材料で出来たものとし得る使い捨て型カートリッジ352を含む。この場合にも、上述したプラスチック改変技術は、本明細書に記載した任意の実施形態に適用される。円筒状のカートリッジは、2つの同心状チャンバ、すなわち内側チャンバ356及び外側チャンバ360を有する。
内側チャンバ356は、円筒状であり、図38及び図39に示すように内側ろ過壁364により輪郭を定められる。本明細書に記載した任意のフィルタ又はろ過装置がこの実施形態と共に使用するのに適する。内側チャンバ356は、頂端部368及び底端部372を有し、これら端部の各々は、該端部に取り付けられたロータ軸376を有する。ロータ軸376は、カートリッジ352を遠心分離装置内に挿入し、使用することを許容する(図示せず)。内側チャンバ356のこれら端部368、372の少なくとも一方は、患者からの血液が導入又は注射されるときに通る、ポート又は適切な開口380を有し得る。上述したように、1つの実施形態において、内側チャンバ356は、標準的な静脈穿刺を容易にできるように真空圧に保ち得る。内側チャンバ356は抗凝固剤232を含有し、その内部に入る血液の凝固を防止し得る。内側チャンバ356は、細胞分離チャンバとして機能する。内側ろ過壁364は、個別の量の全血を受け入れる、選択的に遠心分離可能な(機械的に支持された)フィルタである。ろ過壁のろ過機能は、赤血球及び白血球細胞が貫通して流れるのを実質的に防止する。しかし、フィルタは、例えば、10分以上の所定の時間、例えば、1000xg以上の所定の遠心分離力が加えられたとき、血漿及び血小板が第二のチャンバ360まで流れるのを許容する。
第二のチャンバ360は、外壁384、内側ろ過壁364、並びに頂部壁及び底部壁により輪郭を定められる。第二の外側チャンバ384は、上述した1つ又はそれ以上の凝固活性剤244並びに1つ又はそれ以上の二次活性剤248を含有し得る。第二のチャンバ360は、高密度化チャンバとして機能する。図38及び図39に示すように、内側チャンバ356及び外側チャンバ360は同心状である。
作動時、血液が内側チャンバ356内に導入された後、装置352を遠心分離する。上述したように、遠心分離は、血液が血漿及び赤血球細胞に分離するような所定の時間、所定の力にて行われる。この場合にも、ろ過壁364は、多血小板血漿が貫通するのを許容する一方、赤血球細胞はフィルタに詰まる。フィルタ364を通過したならば、血漿は、凝固活性剤244及び/又は二次活性剤248に接触し、その結果、同時的な凝固及び遠心分離が行われ、膜が形成される。凝固を増進するため、混合動作を提供することが役立ち得る。血漿が第二のチャンバに入った後に為される遠心分離は、白血球抵抗性のフィブリン多血小板膜を得るため、通常、10分以上、約1500〜15,000xgにて行われる。該膜は、本明細書に記載した任意の組織再生用途に使用することができるが、傷口又は火傷の手当てに関連して特に有用である。
外側チャンバ360の内側部分には1つ又はそれ以上のピン388が存在し、膜を装置の頂部から垂直方向に引き出すことを可能にし得る。高密度化チャンバの表面に関して説明した全てのもの(例えば、織地、張出し部、溝を使用すること等)は、この場合、外側チャンバ360に当てはまる。更に、プラスチック表面の改変に関する説明もこの場合にも当てはまる。膜は、装置を壊し又は2つの部分に開けることにより引き出すことができる。典型的には、衛生上の理由のため、装置は使い捨て型である。装置は、操作し易く、また、安全で滅菌性の状態を提供する。
本発明の別の側面は、半径方向及び軸方向遠心分離により、成形した高密度のフィブリン及び血小板ネットワークを形成するために使用することができる、装置及び方法、並びに該装置及び方法の改変に関する。本側面は、多数のネットワークを同時に成形すべく、計測した液体を多数のアリコートに分割する方法にも関する。自己由来のフィブリン及び血小板のネットワークの、臨床的効率及び使用の容易さは、上記に説明した。移植前に、上述したネットワーク又は膜を特定の形状に形成することが望ましいような、軟組織を再生するための幾つかの臨床的適用例がある(例えば、膝の半月の修復)。半月軟骨の場合、理想的な形状は、著しく損傷した半月を置換するために使用することができる部分と同様である、半円形の楔形の形状であろう。存在する血小板は、組織を再生するのに必要な脈管組織形成を提供し、フィブリンは、荷重に耐えるための吸収クッションを提供する。
軟骨のような軟組織の修復の現在の実施では、症例の僅か20%の治療が可能である。多くの場合、残りの症例において、軟組織は恒久的に除去され、患者の動作は損なわれる。この症候群は、プロスポーツ選手にて顕著であり、スポーツ医学にて大きな関心事である。新たな組織が成長するための足場を形成すべく合成材料が利用可能ではあるが、合成材料は、好ましくない免疫応答性を生じ、脈管形成機能の欠如により成功率が低いという不利益な点がある。成功可能な方法は、所定の方法に使用される多数の形態及び形状を同時に形成するために、多血小板血漿を、制御した容積に分離し得るであろう。
成形システムは、上述した任意の遠心分離の容器中で、遠心分離力が最大となる時点にて所望の部分の形状により輪郭を定めた、形成したキャビティを含み得る。該キャビティは、遠心分離が半径方向遠心分離装置内で行われるとき、容器の底部に形成し得る。これと代替的に、キャビティは、軸方向に遠心分離される容器の円筒壁中で輪郭を定められ得る。図40は、図40(a)に示すように半径方向遠心分離にて使用し得るよう向き決めされた鋳型、及び図40(b)に示すように軸方向遠心分離にて使用し得るよう向き決めされた鋳型の例を示す。鋳型は、図43〜図46に示すように、容器と一体にし、又は別個の部品を容器に接続し、結合し、伸長させ又は付加することができる。キャビティは、一体型でないならば、割型の設計で、複雑な形状物の成形を許容し、容易に除去することを可能にし得る。キャビティはまた、図41に示すように、キャビティ内へのフィブリン/血小板の混合物の流れを向けるため漏斗型特長を含有し得る。より特定すれば、図41は、物質がキャビティ404内に流れるのを許容するランナー400に達するような、漏斗396を有する鋳型392を示す。漏斗開口部396の断面積は、フィブリン/血小板モノフィラメントの濃縮の相対量を決定する。ランナー400はまた、図41に示すように、漏斗396及びキャビティ404に接続することができ、これによりキャビティ404内に直接流れること、及び成形した部分のトリミング処理を最小にすることを許容する。図42に示すように、侵入するフィブリンによる置換によって、気体及び/又は液体がキャビティ404から押し出されることを許容するために、通気穴又は通路408を鋳型フレーム392内に包含し得る。換言すれば、通気穴408は、気体及び液体を放出することを許容する。
多数のインプラントを必要とする方法、特に、異なる容積及び密度を必要とする方法において、図43〜図47に示すように、垂直方向羽根を底部に含めることにより、上述した軸方向遠心分離装置を制御された容積に分割することができる。換言すれば、上述した装置の1つ、例えば、同心状のチャンバの実施形態を採用することができるが、多数のキャビティを遠心分離容器の各々に使用して多数形状の物体を同時に提供することができる。軸方向旋回設計の鋳型の各々に送るべき多血小板血漿の相対量は、図43〜図47に示すように垂直方向羽根412を含めることで得ることができる。羽根412は、装置の高さまで伸びるものとしてもよいが、必ずしもそうする必要はなく、中心軸線に向けて突き出すものの中心軸線に接触せず、これにより羽根により輪郭を定められた容積の間で多血小板血漿が自由に流れるのを許容する。
図44は、羽根B1、B2を示す平面図である。羽根B1、B2は接触せず、流体が最初に追加され遠心分離装置が休止しているとき、通気口416は、チャンバW1、W2間の流体的接続を許容する。チャンバW1、W2の断面積は、鋳型の各々に送るべき流体の容積に比例するものとすることができる。最初の休止状態にある液体の液位は全ての区画室にて等しく、このため、相対容積は、羽根の位置決めにより輪郭を定めた断面積に比例する。従って、羽根の位置は、各区画室における容積を決定することになる。その結果、より深い鋳型に対し、より大きい「パイ・ピース(pie pieces)」を採用することができる。
遠心分離したならば、各区画室内の容積は、目標の鋳型まで半径方向に移動する。図45は、同等でない「パイ・ピース」を有する3チャンバ装置を示す。図47は、異なる半径に設定された各鋳型420を有し、これにより、各鋳型420の内容物に対しその半径に比例するg力が加える、3チャンバ装置を示す。チャンバの数は、特定の用途に依存する。形成された材料は、鋳型420の半径に依存して異なる密度を有する。図46は、3つの異なる位置、すなわち、一体の位置、接続された位置及び装置から伸びる位置にある鋳型を示す。鋳型の位置決めは、形成される膜の密度に影響を与える。各アリコートの相対的容積及びキャビティの位置は予め設定されるから、成形された釣合い重りを追加して適正な釣合いをとることができる。この特徴の有用な適用例は、高密度で膜を、低密度でペーストを成形する場合であろう。
作動時、多血小板血漿を上述したような容器に添加し、又は、全血を前処理チャンバに添加して多血小板血漿を適切な凝血活性剤を含有する第二の容器に移すことにより該多血小板血漿を製造する。容器を遠心分離装置内に迅速に配置し、その用途に必要とされる所望のg力にて旋回させる。これにより、同時的な遠心分離及び凝固が提供される。フィブリンストランド及び血小板は、キャビティに向けて迅速に沈積し、該キャビティを充填する。次に、フィブリンストランドは、架橋結合し、安定的なネットワークを形成する。遠心分離装置から除去したとき、成形した部分を除去し、全ての余剰部分をトリミング処理することができる。より複雑な形状の場合、割型キャビティ鋳型を採用し得る。上述し且つ図41に示すように、漏斗状の前処理装置をこの設計にて採用し、必要とされる血液量を最小にし且つ、効率を高めることができる。図41及び図42に示すように、キャビティを完全に充填し且つ、複雑な形状物の取り扱いを容易にするために、趣味愛好家のプラスチックモデルキットにて採用されるランナーシステムと極めて類似した、ランナー及び通気穴を含めることが出来る。
図47〜図49は、作動中の装置の断面図を示す。図47には休止状態の装置を示す;単一の水平な流体表面が実現され、流体がチャンバ間で適正に釣合った状態となるまで、多血小板血漿284及び凝固活性剤244の混合体が、チャンバの間を流れる。図48は、遠心分離が開始したときの装置を示す;液体は、軸方向回転により旋回流の形状に形成される。遠心分離の間、羽根412はチャネル間の連通を防止し、これにより鋳型の各々に対する適正な供給状態を維持する。壁428は鋳型に向けて徐々に薄くなって、濃縮漏斗として機能し得る。遠心分離装置の速度及びそれに伴うg力が増すと、全ての流体が鋳型に搬送される迄、放物線状旋回流が増大する。図49は、完全な遠心分離状態にある装置を示し、この時点にて鋳型は、充填されている。
このシステムは、フィブリンを含む物質を形成するために、少血小板血漿(PPP)に対して使用することもできる。換言すれば、該システムは、血小板を必要としない用途にて使用することができる。少血小板血漿は、第一の管を、例えば、1,000xgの代わりに5,000xg以上のようなより大きいg力にて遠心分離することにより形成し得る。また、この設計は、ドナー及び受け手の適合性が確立された場合に、非自己由来の所望のフィブリン又はフィブリン/血小板ネットワークの形成に使用することもできる。
全体として、鋳型は、完全で、自己由来の患者の適合性を提供する。その結果、フィブリン−血小板ネットワークを、精密な成形形状及び密度にて形成することができる。膝の左側及び右側半月のような、複数の形状物を同時に形成することができる。更に、内耳に対する成形ツチ骨、キヌタ骨及びアブミ骨、並びに肩に対する回旋腱を、これらの鋳型を使用して形成することが出来る。更に、肘軟骨、エテピ関節丘(etepicondyle)の部分、指の部分、足首及び手首の軟骨を形成することもできる。形成された膜又はネットワークは、吸収可能で、安定で、成長因子を有し、治癒を促進する。複数形状の用途の場合、部分の密度は、鋳型の半径を設定することにより変化させることができる。
本発明の別の側面は、異なる遠心分離の沈積を利用してフィブリン/血小板ネットワークにおける血小板の分布状態を制御する装置及び方法に関する。自己由来のフィブリン及び血小板ネットワークの臨床的効率及び使用の容易さは、上記に説明した通りである。フィブリンは、傷口を安定化し、細胞が成長及び動くための媒体を提供する。血小板は、最初、傷口の安定化に寄与する一方、多様な抗炎症剤、成長剤及び脈管組織形成剤を含有する。従って、多くの治癒方法において、フィブリン連続体中の血小板の位置を集中させることが有益である。例えば、慢性的な傷口の場合、傷口に接触する膜の側に血小板を集中させることは、傷口に対する膜の接着力を増し、皮下層の脈管組織形成を増大することになろう。半月の修復の場合、形成された半月の最外側領域、すなわち「レッドゾーン」に血小板を集中させ、この領域の脈管組織形成を増大させることが有益であろう。骨セメントの場合、血小板が連続体の全体に均一に分配されることが好ましい。それ故、本発明のこの側面は、遠心分離力を使用して血小板をフィブリン基質内に好ましいように配置するための方法を提供する。
フィブリンの形成がg力と独立した速度にて進行するのに対し、血小板の沈積はg力の関数である。より特定すれば、血小板は一定の速度にて沈積し、その結果、血小板は、その全てが沈積する迄、一定の速度にて堆積する。血小板は多血小板血漿の全体に均一に分配する。血漿に重力が加わると、血小板は、重力の増加に伴って増大する一定の速度にて沈積する。沈積を完了する時間は、最上方の血小板が縦断しなければならない多血小板血漿の高さに比例する。よって、高さ100mm円柱の血小板の場合、沈積を完了する時間は、6000xgにて約5分又は2000xgにて15分である。
他方、フィブリンモノマーは、重力と独立的な速度にて形成する。通常の患者の場合、この過程は、約30分にて完了する。よって、ここに示す方法は、2つの異なる沈積速度に対応し、これによりネットワーク内での血小板の好ましい位置を実現するような、遠心力プロフィールを実現するという問題を解決する。血小板が好ましい位置にあることは、特定の適用例の各々に合うように組織の再生を最適化し、その方法についてのより迅速な治癒及び高い成功率を提供する。血小板を好ましいように配置する方法は、血小板の沈積速度及び形成及びその後のフィブリンの沈積の速度の違いを考慮し、沈積プロセスの間のg力を調節することを伴う。
1つの実施例において、多血小板血漿を凝固活性剤に曝し、次いで、直ちに約4000〜6000xgにて遠心分離することができる。これにより、血小板は、約5〜10分にて迅速に沈積し、次に、その後の25〜35分にて形成されるフィブリンがその上の層となる。形成される構造体は、その表面に、最初に形成された血小板が集中し、その後に形成された層内で血小板が減少する。この適用例は、半月の修復及び慢性的な傷口に対し特に有用である。
別の実施例において、多血小板血漿を凝固活性剤に曝し、次いで、直ちに2000xg以上にて遠心分離することができる。血小板の沈積及びフィブリンの形成は等価的速度にて進行し得る。これにより、形成されるネットワークは、該ネットワークの全体に均一に分配した血小板を有する。この適用例は、骨セメント及び軟組織の成長(歯周病学の)にとって特に有益である。
更に別の実施例において、多血小板血漿を凝固活性剤に曝し、直ちに遠心分離することができる。しかし、遠心分離速度は、約1〜2分間、約4000〜6000xgの速度と、その後の、5〜10分間、1000〜2000xgの速度との間にて繰り返す。約5〜10回の繰り返しにより、高濃度血小板及び低濃度血小板の別個の層を10〜20有するサンドイッチ構造体が得られる。この適用例は、骨が互いに擦り合うのを防止する、関節の軟骨の修復にとって特に有益である。
したがって、多血小板血漿及び凝固活性剤を遠心分離する速度並びに遠心分離時間を制御する結果、血小板は好ましい位置に配置される。血小板の位置を制御することは、特定の用途に対し組織の再生を最適化し、これにより、その方法のより迅速な治癒及びより高い成功率を提供する。
図56は、鋳型の設計の別の実施形態を示す。成形した挿入体424は、一般的に、プラスチック又はゴム材料で出来ている。挿入体は、図56に示すように、容器426内に導入し且つ、該容器から取り外し可能である。多血小板血漿が容器426内に配置されたならば、凝固活性剤を容器に添加することができる。これと代替的に、導入に際し、既に血漿内に凝固活性剤が存在していてもよい。挿入体は、図42〜図49のものと同様の羽根428を有する。羽根428は、突き出してチャンバ430の輪郭を形成し、遠心分離に際し、膜を該チャンバ内で成形し又は形成し得る。換言すれば、羽根は、挿入体が挿入されたとき、挿入体のコア432と容器との間に空間を残し、半径方向遠心分離装置を使用して円筒状膜を形成し得る。挿入体は、3つの羽根を有するものとして示されているが、1つ又はそれ以上の羽根を有する挿入体を製造することもできる。これと代替的に、挿入体は、割型とし、2つの挿入体の間にて長方形の膜が形成されるようにしてもよい。成形した挿入体424を使用することの利点は、旋回ヘッド遠心分離装置を備える平坦な底部の容器が不要となる点である。
本発明の別の実施形態において、軟骨の疾病に苦しむ人を治療するために使用される方法及び装置が提供される。繊維状軟骨組織は、非結晶の繊維状組織内に封入された軟骨細胞の多層構成の複雑な構造を有し、該非結晶の繊維状組織の主成分は、ヒアルロン酸及びポリサッカリドの加わったコラーゲンである。内層は、最も緻密な層であり(すなわち、内層は、外層よりも25倍まで硬い場合がある)、一方、他の2つの柔軟な層が表面に向けて認められる。感染、自己免疫疾患(関節炎など)、年令に関係した変性、及び外傷に起因する、関節の軟骨組織に伴う病的症状は、ヒト及び動物にてよく見られる。今日の手当て法は、感染を止めるため、炎症を軽減するため、又は自己軟骨組織の自然再生を刺激するための、患者の薬理学的治療に重点を置いている。膝の半月損傷の治療のような痛みを伴う症例において外科的治療法が行われて置換されない軟骨が除去され、患者の骨は保護されないままになる。この実施形態は、軟骨の疾患を治療する方法を提供する。
膜及びフィブリンは、軟骨細胞を培養する足場として使用し得る。より特定すれば、これらの方法をヒト及び動物の細胞に適用し、生物学的に活性な硬い固体フィブリンクッション(自己由来の軟骨細胞を含む)を形成し、損傷した生体の軟骨を置換して機械的ストレスを支え、組織の生物学的回復を開始することができる。1つの特定の実施形態において、当該技術分野の当業者に既知であるように、酵素によ消化される軟骨組織のバイオプシイから開始し、軟骨細胞を、CO2インキュベータ内で従来のプロトコルに従って単層に培養する。支持体から慎重に分離された軟骨細胞は、生体の損傷した軟骨の部分を置換するために使用することができる「配向した」強い膜を得る目的で、容器を約4,000〜10,000xgにて旋回させる直前に、PRPと混合することが出来る。付与された遠心分離力は、異なる種類の軟骨内の軟骨細胞に差異を生じさせ得る。
軟骨細胞を有するフィブリンの足場は、滅菌状態下、特殊なバイオリアクター内で、数日間培養することができる(ドルトムンド大学、動物細胞培養グループ、R.Portnerが記載するように)。この装置において、血清、TGF(形質転換成長因子−Cell Concept)、IGF(インシュリン様成長因子−Cell Concept)を添加したDMEM(インビトロゲン)培地を、フローチャンバ内にて足場上に連続的に補給する。この方法は、19日間行い得る。その目的は、当初のフィブリンの基盤及び形状の上に、真の軟骨をインビトロで生産することである。この新しい軟骨は、インビトロで、損傷した軟骨を置換するために使用し得る。
1つの方法において、上述した同時的な凝固及び遠心分離方法を使用して極めて丈夫な自己由来の膜を形成し得る。より特定すれば、以下の実施例5に従って厚い膜(例えば、厚さ3mm及び直径24mm)を製造し得る。勿論、上述した装置又は方法の任意のものを使用して多様な寸法の膜を形成し得る。1つの特定の膜は、滅菌性容器(例えば、自己由来の多血小板血漿(PRP)約20mlにて充填され且つ、30分間、約4500〜5000xgにて旋回させる平坦な底部の25mlガラスフラスコ)内にて形成し得る。このステップにおいて、少血小板血漿(PPP)を使用してもよい。上述したその他の任意の膜形成技術採用することも可能である。
この膜又は本発明の任意の他の膜が形成された後、その膜を滅菌性の生理溶液にて完全に洗浄し、活性剤を含有するより大形の滅菌性フラスコに入れ、多血小板フィブリン(PRF)の第二の層を製造することが出来る。このステップにおいて、完全な滅菌状態にて、強い膜を含有する新たなフラスコ内に、新たな量の多血小板血漿を導入する。3層の膜を得る目的で、第二のフラスコに対し、第二の遠心分離ステップを行い得る。1つの特定の実施例において、この遠心分離を、20分間、1000xgの速度にて行い、直径30mmのものを形成することができる。遠心分離は、上述した任意の速度にて行うことができる(すなわち、10分間以上、500〜15,000xgにて)。形成される膜は、軟骨を置換すべき箇所に移植するために使用できる。この場合にも、膜の厚さ及び寸法は、上述した状態によって決まる。血液の量及びフラスコの型もこれに応じて変更することになろう。重要なことは、滅菌膜(上述した方法の任意のものにより形成されたもの)を追加的な凝固活性剤に曝し、その後、多血漿フィブリンの第二の層を形成するためにその内容物を遠心分離することである。これと代替的に、追加的な凝固及び遠心分離は、膜の第三の層を形成することができ、その後も同様である。
1つの関連する方法において、当該技術分野の当業者に周知であるアルギン酸塩再生軟骨細胞(ARC)法に従い、軟骨組織(自己由来)をゲル中のIN VITRO培養に配置する。ARC法におけるゲルは、上述した方法及び装置に従って製造した自己由来のフィブリンにて置換してもよい。より具体的には、多血漿フィブリンの製造の第二のステップの間、選択した軟骨細胞株を自己由来のフィブリンと共に二次容器に添加し、混合物を、低い遠心分離速度で、又は、遠心分離力を全く加えずに、ゼリー状にしてもよい。
ゼリー化が行われる容器の形態及び寸法は、「人工軟骨」のその後の用途(すなわち、置換すべき軟骨の形態)に従って選ぶことができる。ゼリー化は、上記の文節に従って作製された強い膜の周りにゲルが形成されるような仕方にて行うことができる。これは、新たなゲルが当初の強い膜を実質的に取り囲み、軟骨細胞がゲル中に含まれるよう、第二の凝血が行われている容器内に強い膜を配置することで実現することができる。自己由来の軟骨細胞、ゼリー状した自己由来の多血小板フィブリン及び最終的に内側の強い膜を有する滅菌性容器は、インビトロで軟骨細胞を成長させる知識を有する人に既知であるように、適切な雰囲気(温度、O2、CO2及びR.H.レベル)下で培養するよう配置することができる。これにより、インビトロでフィブリンゲル足場上にて新たな組織を成長させることができる。組織培養が、軟骨細胞及び繊維状組織の的確な密度を有するならば、3層組織は、内部が極めて丈夫で、柔軟で且つ、宿主の病的組織を直ちに置換できる膜となる。該方法の収率を最適化するため、適切な添加剤を培地に追加することができる。幹細胞は身体の全細胞の起源であり、当業者に既知であるように適切に処理されたならば新たな軟骨細胞をインビトロにて発現させることが可能であるから、幹細胞の使用もまた予想される。
全体として、この実施形態は、合成又は異種起源の材料を使用する場合に関連するリスクを軽減する一方で、上述した疾患を治療するためのインプラントを生産するものである。自己由来の軟骨細胞は血小板が高濃度化した膜内に見られ、該膜はインビトロ及びインビボで増殖するための適切な足場となり、また、新たな軟骨を生産するための基本である軟骨細胞基質を生産する。形成される膜は、滅菌性キャビネット内で容易に製造することができ、また、該膜は、手術後の再生時間を短縮すること、及び新たな軟骨を構築する軟骨細胞の移動を促進することを目的として、所要位置への直接の移植を可能にする物理的性質を有する。
本明細書に記載した実施形態及び方法は、また、PRPを血漿分離交換機械から採取することに関連して使用することもできる。外科手術の間、外科手術箇所に溜まった血液を吸引し、細胞を分離し、細胞を患者の体内に再注入することによって血液を節約するために、細胞セイバー又は分離交換機械が何度も使用される。「非観血手術」と呼ばれることもあるこの技術は、失われた血液を置換するための輸血を最小限にし又は不要にし、その手術をより安全で且つ経済的なものにする。かかる装置は、ヘモネティックス(Haemonetics)(マサチューセッツ州、ブレインツリー)及びコベ(Cobe)(コロラド州)が製造している。これらの分離交換機械は、時には、血小板及び血漿を赤血球細胞から分離するために使用される。これら機械の血小板及び血漿ポートにアクセスすることでPRPを採取することが可能となる。PRPが第二の管に添加されるならば、PRPは再石灰化され、上述した方法により同時的な遠心分離及び凝固を行うことができる。このことは、第一の遠心分離ステップ及び採取装置を不要にしつつ、より多量のPRPを得ることを可能にする。この方法からも、多様な固体フィブリン網及び膜を得ることができ、また、本明細書中の適用にて使用することができる。
遠心分離装置の大多数は、採取血液又は直径約16mm×125mmの第二のフィブリン/血小板ネットワーク管を処理し得る設計とされている。これら寸法の管は、15mlsの最大容量を保持する傾向にある。これらの管は、清浄化目的のため取り外し可能な遠心分離装置カップ内に入れ子式に収納される。カップは、管形であり、また、カラーを有して高速度遠心分離を行う間、管及びカップを支持することができる(図52)。金属の加工又はポリマー系材料の射出成形によって管にカラーを一体的に形成することができる。該カラーは、また、別個に形成し、接着剤、超音波溶接、スピン溶接、誘導溶接又はその他の材料接着方法により管に接着させてもよい。これらの方法においては、カラーと管との材料が同一である必要はなく、広範囲の材料の選択を許容する。これと代替的に、管が閉じた下端に向けて狭小となる先細りの外径部を有し、また、カラーがその内径部に合わさる裏返しの先細りを有するようにしてもよく、管がカラー内に挿入されたとき、管の外径部及びカラーの内径部がかみ合う箇所までのみ進むことができ、成形工程の間の管の開放端からの距離が予め設定されるようにしてもよい。カラーは管との充分な接触を許容する内径を有して遠心分離時に発生する大きなせん断力が加わる間、管を支持する必要がある。カラーの厚さ、すなわち高さの低い円筒体の高さは、カラーの材料の性質及び遠心分離の間にカラーに加わる力によって決まる。カラーの外径は、遠心分離の間、管が半径方向外方に動くのを阻止するのに充分でなければならない。カラーの寸法は、工学コンピューター操作又はコンピュータ化した有限要素解析により容易に計算し得る。
構造材料は、典型的には、高強度のスチール又はエンジニアリングプラスチックである。脊柱融合及び形成外科手術のような、フィブリン及び血小板ネットワークの多くの適用例には、16×125mmの管にて得られるものよりもより多量のPRP及び/又はフィブリン血小板ネットワークが望まれる。著しく多量の採取血液又はフィブリン/血小板を得る方法は、支持カラーを取り付けるか又はカラーを一体に形成することにより採取又は受け入れ管を大きく形成することを含む。管は、支持カップを除去した後、遠心分離装置のロータ内に直接配置することができる。管の構造材料は、真空圧を保持し、ストッパを受け入れ、血液と適合可能であり且つ、遠心分離に耐えるのに充分な強度を有するものとし得る。適切な材料は、非限定的に、金属、接着剤により支持カラーが取り付けられたガラス、又はポリエチレンテレフタレート(PET)若しくはポリエチレンナフタレート(PEN)のような高強度バリアプラスチックを含む。かかる管は、約20〜30mm(例えば、25mm)の直径及び110〜140mm(例えば、125mm)の長さを有し、20〜30ml以上を保持し得る。ロータの形態を改変することによりより太い管を形成し、より大きな径の管を受け入れることができる。このことは、標準寸法の管にて得られるものよりも多量の標本が望まれる診断試験及び他の方法にも有用である。
PRPを移した後、遠心分離及び/又はカルシウム再沈着を遅らせることは、移植片内へのフィブリン、血小板及び成長因子の組み込みを向上させ得る。遠心分離及び/又はカルシウム再沈着を遅らせることは、同時的な凝固及び遠心分離が行われないことを意味するものではない。第二の管に移した後、小さい粒径の移植片材料をPRPに添加するか、又は、製造過程中に、二次管に予め充填するものの少なくとも1つとすることができる。これらの移植片材料は、自己由来の骨、ドナー骨、動物骨、合成骨、三カルシウムリン酸塩、カーボネート、硫酸塩及びそれらの組み合わせを含み得る。移植片材料の密度及びその小さな粒径のため、移植片を、フィブリン血小板ネットワーク又は固体フィブリン網内に均一に組み込むことは困難である。このことは、移植片の密度がPRPの密度よりも遥かに高くなり、また、移植片材料が、遠心分離間に管の底部内に迅速に詰め込まれる結果を生じ得る。詰め込まれる移植片材料の小さな粒径は、その後の遠心分離サイクル中に下降するフィブリン及び血小板が、詰め込まれた移植片材料の間隙間に容易に侵入することを常には許容し得ない。迅速な遠心分離に対する1つの代替的な方法は、遠心分離をある時間遅らせ、その後の架橋結合が生じる前に、フィブリンモノマー、血小板及び成長因子が移植片材料の穴のあいた表面を取り巻き、侵入することを許容することである。混合体は、遅れ期間の間、周期的又は連続的に混合して各移植片粒子の分散及び被覆を向上させ得る。移植片材料の粒径により決まる適切な時間の経過後、フィブリン形成の架橋結合ステップの間にネットワークを圧縮することで移植片を詰め込み、フィブリン血小板のネットワークを安定化するために、遠心分離を開始することができる。
骨移植片材料の粒径に依存して、遅れは広範囲のものとすることが可能である。粒子が大きければ大きい程、遅れに伴う有利な効果は少なくなる。3mm以上の自己由来並びにヒト及び動物の移植片の場合、移植片をフィブリン血小板ネットワーク内に組み込むのに遅れは全く不要であり得る。0.5mm以上3mm以下の移植片の場合、1〜20分(例えば、3分の遅れ)が、架橋結合過程の間の遠心分離を許容しつつ、移植片材料を充分に組み込むことを可能にする。0.5mm以下の移植片材料の場合、3〜25分の遅れ(例えば、5分の遅れ)が、架橋結合する間の、充分な組み込み及び圧縮を可能にする。この場合にも、PRPのカルシウム再沈着を遅らせることは、凝固の開始前に、PRPを移植片内に吸収させることを許容する。1つの実施例において、カルシウムは、第二の管内に予め充填されず、1〜30分、理想的には、5〜15分の浸漬時間の後、添加される。
その他の場合、脊柱癒合用の骨ロッドのような大容積の移植片材料が採用される。これらの場合、凝固前に、血漿、血小板及び/又は成長因子を多孔質表面内により深く侵入させるべく移植片材料をPRP内に浸漬し、これによりその後のフィブリン−血小板ネットワークの移植片材料中への組み込みを向上させることが望ましい場合がある。このことは、第二の管に移した後に、PRPに対する抗凝固剤であるキレート剤と結合した内因性カルシウムと置換するであろう、カルシウム又はその他のカチオン系種の添加を遅くすることで実現することができる。カルシウム凝固活性剤は、移植片材料の性質及びその後凝固中の遠心分離によって決まる、適切な時間的遅れの後、管に直接添加することができる。これと代替的に、第二の管に接続し且つ、遠心分離速度を増すことにより作動するカルシウム溶液を保持するリザーバを使用して、単一管システムの実施形態の方法と同様の方法にて、カルシウム凝固活性剤を添加してもよい。
PRPを傷口の表面に吹き付け、インシトゥーでフィブリン−血小板ネットワークを形成することも望ましい。この方法は、治癒効果を向上させる。フィブリンは接着剤として機能し、一方、血小板は、その成長因子を添加することにより治癒を向上させる。この技術を採用する方法の例は:皮膚移植片を火傷又は慢性的な傷口に接着すること;フェイスリフトのような形成手術の間、皮膚を皮下層に接着すること;火傷の創面切除の後、液体が滲み出る傷口をシーリングすること;及び局所的な止血剤を施すことを包含し得る。望ましい効果を実現する1つの方法は、PRPを再石灰化する管すなわち二次管に移し、その後、ポンプ型エアゾールスプレー又は空気支援型スプレーを管に付け、再石灰化したPRPを傷口箇所に施すことである。その後、PRPは、インシトゥーでフィブリン血小板ネットワークを形成することになろう。
1つの代替的な方法は、赤血球細胞の分離後、第一の管から直接圧送するか、又はカルシウム凝固活性剤若しくはその他のカチオン系種を保持しない管内にPRPを移すことであろう。別個の流体多岐管を利用することにより、又はカルシウム結晶を含有するチャンバを通じてPRPを流すことにより、圧送する間に溶液を流体経路に添加することでカルシウムを添加することができる。
1つの代替的な方法は、移した後、PRPを遠心分離することにより、カルシウム溶液無しで血小板を第二の管の底部内に濃縮することである。圧送システムに対する吸引部は、管の底部から吸引し、多量の成長因子に対し血小板をより高濃度にて作用させる。吸引ステムは、隔板の下方に血小板濃縮液を閉じ込めるスライド式隔板を有することができる。吸引ステムは、隔板の最初の位置を制限し、これにより分配すべき容積中の血小板の濃度を所望の値に設定するようなストッパを有することができる(図53参照)。該ストッパは、隔板の下方の血漿の容積中の血小板に所望の濃度を与えるであろう、吸引口の底部から予め設定した距離に配置される。ストッパが吸引ステムにて上方位置に配置されればされるほど、血小板の濃度は低くなるであろう。別の実施形態は、高エネルギの凝血活性化表面を噴霧システムの流体路中に配置する。該表面は、血漿を活性化して、架橋結合密度がより高い凝血塊を形成し、これにより機械的強度を増大し、凝血時間を短縮することになろう。
移植片材料と共に及び移植片材料無しで二次管からのフィブリン−血小板ネットワークの除去を容易にするため、その他の装置を採用することができる。第二の遠心分離ステップの完了後、フィブリン−血小板ネットワークを第二の管の底部に詰め込み得る。通常、管は、滅菌性カップ内に上澄みを静かに注ぐことができ、ネットワークは、カップ内に自在に流動する。より濃密なネットワークに対し要求される、より高速度の遠心分離速度のとき、上澄みを静かに注ぐことが容易であるように凝血塊をきつく詰め込むことができる。この詰め込みは、管の壁に対して密閉的シールを形成し、このため、上下逆さにしたときに凝血塊が動く際に真空圧が形成され、更なる流れを阻止する。この状態は、遠心分離の間に圧縮される移植片材料を添加することで悪化し、金属粉体の焼結の場合のような、詰め込まれた濃密な基質を形成する。このため、骨キャビティのような傷口箇所にネットワークを添加し得るよう、好ましくは供給システムの一部として、管の底部からネットワークを除去することが望ましい。
ネットワークの除去を容易にする1つの方法は、穴を設けた底部を有するカップを製造時に第二の管に含めることである(図54参照)。管からカップを除去する間、遠心分離中に発生した血清の排出を許容するように、底部に穴を設ける(図54a)。カップの壁は、浅い外観のもの(図54a)から管の全長(図54b)の範囲まで、高さが様々であり得る。カップのリップ部は、供給装置に連結する手段を含有し得る。連結手段は、ねじ、差込ネジロック、クリップ又は同様の機構とし得る。カップの壁は、過度の除去力が回避されるように、除去する間、真空圧を防止し得るための溝を、その壁に有し得る(図54d)。カップの壁は、凝血塊の上方の血清が、溝に沿って、カップを管から除去する間に形成された下方の容積内に流れることができるような穴部分を有し得る。カップの頂部はまた、カップの円筒状部分を通じたピストンの確実な置換により作動する、供給システムに連結することもできる;この作用は、注射器(図54e)又は歯止め式「コーキングガン」機構(図54f)を模したものとし得る。カップ又は供給シリンダの円筒状部分の材料は、蛍光計測技術を使用して正確に供給することを許容し得るよう放射線不透過性とし得る。図55において、第二の管は、円筒状であり、また、円筒体のどちらかの端にストッパを有する。遠心分離後、ストッパを除去し、ピストンが形成されたネットワークを置換する。このことは、カートリッジシステムを構成することになる。これと代替的に、カップを繊維によってストッパに取り付け、ストッパが除去されるとき、カップが引き出されるようにしてもよい。
本明細書に開示された方法により生産された膜及びフィブリンは、上述したように、細胞を培養するために使用すべき足場として機能することが可能である。フィブリン基質は、足場として機能するのに充分に濃密であり得る。基質は、コラーゲンスポンジのようにゆっくりと吸収される足場材料、生物分解性ポリマー又は腹部大動脈動脈瘤移植片のような生物非分解性ポリマーにて形成することができる。これらの組み合わせ足場は、現在の足場材料と比べ、更なる機械的強度及びより均一な組織再生を供与し得る。ある実施例において、例えば、約4,000〜10,000xgのような大きい遠心分離力を加えることにより得られた膜は、表皮細胞の生体外での接着培養のための足場として機能し得る。これらの培養物は、本来の組織の火傷又は機械的剥離に起因する、皮膚の重度の損傷を修復するめに特に有用である。これらのフィブリン足場は、通常、培養物中の細胞に対し、血小板により成長因子を供与し、また、固体フィブリン網により接着因子を供与する。インビトロで良好な培養物を得るためには、培地中で充分な密度の上皮細胞から開始することが望ましい。
本明細書に記載した膜及び固体フィブリン網はまた、幹細胞をその上にて融合するために使用し得る。より特定すれば、膜及び固体フィブリン網は、単層又は幾つかの層の細胞又は膜内の幹細胞と共に膵細胞を培養するために使用し得る。例えば、英国、エジンバラ大学のメドヴィンスキー(Medvinsky)及びオレゴン州、ポートランド大学のX・ワン(Wang)は、最近、糖尿病マウスの膵臓内に注射した幹細胞は、そのゲノムを病変膵細胞と融合させ、再度、インシュリン生産活性のある、いくつかの程度の倍数体を生成させることを実証している。本明細書に記載した足場及び支持体中に存在する活性成長因子は、従来の媒体を使用して細胞を成長させることを可能にし、また、融合、生化学的特性及び細胞学的特性を研究することも可能にする。
異なる適用において、単層培養物から得た軟骨細胞は、当該技術分野の当業者に既知であるように、アルギン酸塩ビーズ内で固定される。これらの固体ビーズは、遠心分離力を使用してより大きい「組織様」凝集物となるように圧縮され、空気圧を調整し、インビボで生理学的応力に従って「組織」を刺激する目的で、これら凝集物は「圧縮」される(ドイツ、ギーセン、応用科学大学、チェルマック(Czermak) P.))。遠心分離の間、PRPをアルギン酸塩ビーズに添加して、損傷した軟骨に代えて植え込む用意ができるように、又は軟骨の成長を誘導し得るように数日間生物反応器内で培養する用意ができるように、濃密な生物活性凝集物を製造することができる。
実施例