JP2006504741A - 痴呆およびパーキンソン病の処置における(2−イミダゾリン−2−イルアミノ)キノキサリンの使用方法 - Google Patents

痴呆およびパーキンソン病の処置における(2−イミダゾリン−2−イルアミノ)キノキサリンの使用方法 Download PDF

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Abstract

ニューロンの変性を防止または遅延する方法、および/またはアルツハイマー病またはパーキンソン病を処置する方法であって、ブリモニジンを処置有効量で投与することを含む方法。

Description

本発明は、神経細胞(特に哺乳動物の中枢神経系の神経細胞)を、グルタミン酸毒性やアポトーシスなどの有害な傷害による損傷から保護する方法に関する。本発明の方法では、α2アドレナリン作動性受容体アゴニストであるブリモニジンを使って、例えばパーキンソン病およびアルツハイマー病などで観察されるような神経細胞損傷および神経細胞死を防止する。
本発明は医薬組成物に関し、特にα2アドレナリン作動性受容体に影響を及ぼす能力を持つ化合物が組み込まれている医薬組成物に関する。また、本発明は、多種多様な状態および障害、特に中枢神経系の機能不全に関係する状態および障害を処置するための方法に関する。
ヒトアドレナリン作動性受容体は内在性膜タンパク質であり、大きく分けて2種類、すなわちαアドレナリン作動性受容体とβアドレナリン作動性受容体とに分類されている。どちらのタイプも、カテコールアミン類であるノルエピネフリンおよびエピネフリンの結合により、末梢交感神経系の作用を媒介する。
ノルエピネフリンはアドレナリン作動性神経終末によって産生され、一方、エピネフリンは副腎髄質によって産生される。これらの化合物に対するアドレナリン作動性受容体の結合親和性は、分類の一つの根拠になっている。すなわち、α受容体は、ノルエピネフリンをエピネフリンよりも強く結合し、また、ノルエピネフリンを合成化合物イソプロテレノールよりもはるかに強く結合する傾向を持っている。これらのホルモンの選択的結合親和性はβ受容体では逆転する。多くの組織では、α受容体の活性化によって誘発される平滑筋収縮などの機能的応答は、β受容体結合によって誘発される応答と対立する。
その後に、α受容体とβ受容体との機能的差異は、さまざまな動物源および組織源に由来するこれら受容体の薬理学的特徴づけによって、さらに強調され、精密化された。その結果、αアドレナリン作動性受容体とβアドレナリン作動性受容体は、α1、α2、β1およびβ2サブタイプに、さらに細分された。
さらにその後、これらの受容体はそれぞれに数多くのサブタイプを持つことが認識されるようになった。例えばヒトα2受容体は、さらにα2A、α2Bおよびα2C受容体サブタイプに分類することができる。
α1受容体とα2受容体との機能的相違が認識されており、これら2つのサブタイプ間で選択的結合を示す化合物が文献に記載されている。
例えば、WO92/00073では、α1サブタイプのアドレナリン作動性受容体に選択的に結合するという、テラゾシンのR(+)エナンチオマーの能力が報告された。この化合物のα1/α2選択性は重要であると開示された。その理由として、α2受容体のアゴニスト刺激はエピネフリンおよびノルエピネフリンの分泌を阻害するとされ、一方、α2受容体のアンタゴニスト作用はこれらのホルモンの分泌を増加させるとされた。したがって、フェノキシベンザミンやフェントラミンなどの非選択的αアドレナリン受容体遮断剤の使用は、α2アドレナリン作動性受容体が媒介する血漿カテコールアミン濃度の増加の誘導およびそれに伴う生理学的結果(心拍数の増加および平滑筋収縮)による制約を受けるとされた。「α1選択的」または「α2選択的」と呼ばれる化合物の選択性は、伝統的にKDデータに基づいており、それが受容体に対する結合親和性の比較に限定され、比較対象受容体における実際の生物学的活性を比較していないことは、重大である。
これに対して、α受容体アゴニストの選択性を測定するための一方法は、Messier ら「High Throughput Assays Of Cloned Adrenergic, Muscarinic, Neurokinin And Neurotrophin Receptors In Living Mammalian Cells(生きた哺乳類細胞におけるクローン化アドレナリン作動性、ムスカリン性、ニューロキニンおよびニューロトロフィン受容体の高スループットアッセイ)」Pharmacol. Toxicol. 76:308-11 (1995) に記載のRSAT(Receptor Selction and Amplification Technology)アッセイを含み、α2受容体用に改造されている。この刊行物は参照により本明細書に組み込まれる。このアッセイでは、コンフルエント細胞の混合集団における受容体含有細胞の選択的増殖をもたらす、接触阻止の受容体媒介性喪失を測定する。細胞数の増加は、96穴形式で容易に測定することができる活性を持つ適当な導入マーカー遺伝子、例えばb−ガラクトシダーゼを使って評価される。Gタンパク質Gqを活性化する受容体はこの応答を引き出す。通常、Giと共役しているα2受容体は、Gq/i52と呼ばれるGi受容体認識ドメインを持つハイブリッドGqタンパク質と同時発現させると、RSAT応答を活性化する。Conklin ら「Substitution Of Three Amino Acids Switches Receptor Specificity Of G q a To That Of G i a(3アミノ酸の置換によりGqaの受容体特異性がGiaの受容体特異性に転換される)」Nature 363:274-6 (1993) を参照されたい。この参考文献は、この記載をもって、参照により本明細書に組み込まれる。
さまざまなαアドレナリン作動性受容体アゴニストが、多種多様な状態および障害の処置に有用であると報告されている。例えば、クロニジンなどのαアドレナリン作動性受容体アゴニストは、全身的および眼降圧剤として、喫煙や薬物濫用などの嗜癖行為からの禁断症状の処置に役立つ薬剤として、そして抗月経困難症剤として、文献記載され、使用されている。もう一つのαアドレナリン作動性受容体アゴニスト、チザニジンは、筋緊張を減少させることによる、多発性硬化症患者における痙縮症状の処置に、使用されている。これらの薬剤は多少の鎮痛活性を持つとも報告されている。
これらの薬剤は有用ではあるが、鎮静、血圧低下や心拍数減少などの心血管作用、および眩暈を含む、時として重篤な副作用がつきまとい、一部の適応症に対するこれらの薬剤の利用可能性は、そのような副作用によって制限されてきた。特に、これらの薬剤は、治療用量反応曲線と鎮静用量反応曲線とが部分的に重なる傾向があり、そのために、生体内では、治療(例えば降圧または鎮痛)活性の出現と同じ用量で、鎮静活性が顕著になり始める。
例えば、限定はしないが、クロニジン、チザニジンおよびデクスメデトミジンなどの化合物は、文献では、おおむね結合研究に基づいて、「α2アドレナリン作動性受容体アゴニスト」であると特徴づけられている。Hieble ら, J. Med Chem. 38:3415 (September 1, 1995) と、Ruffolo ら, J. Med. Chem. 38:3681 (September 15, 1995) も、参照されたい。これらの論文は、この記載をもって、参照により本明細書に組み込まれる。これらの薬剤がα2受容体アゴニストであることは間違いないが、これらの薬剤がかなりの程度のα1受容体アゴニスト活性も有することは、一般的には、あまり認識されていない。また、そのようなα1受容体活性がα2活性に及ぼす影響も、一般には知られていないか、あまり認識されていない。
対照的に、化合物ブリモニジンと、その機能的に類似する2-イミダゾリン-2-イルイミノ誘導体(後述)は、α2受容体に対して、α1受容体サブタイプに対する活性よりも著しく高いアゴニスト活性を示す、α2アゴニストである。
CNS障害は神経障害の一タイプである。いくつかのCNS障害は、コリン作用欠乏、ドーパミン作用欠乏、アドレナリン作用欠乏および/またはセロトニン作用欠乏に起因すると考えることができる。比較的よく発生するCNS障害としては、初老期痴呆(早期発症型アルツハイマー病)、老年痴呆(アルツハイマー型痴呆)、およびパーキンソン病を含むパーキンソニズムが挙げられる。
アルツハイマー病に関する現在の理解の土台は、罹患者の脳の一定領域、例えば海馬や大脳皮質などに、神経細胞の喪失を示す証拠が認められたという観察結果に基づいている。1970年代以降、研究者は、これらの瀕死ニューロンの一部がコリン作動性であること、すなわち、それらが、最終的にはアセチルコリンエステラーゼと呼ばれる酵素によって分解される神経伝達物質アセチルコリンを使って情報交換していることを知っていた。Jones, ら, Intern. J. Neurosci. 50:147 (1990)、Perry, Br. Med. Bull. 42: 63 (1986)、および Sitaram ら, Science 201:274 (1978) を参照されたい。
この10年間で利用できるようになったタクリンやドネペジルなどの薬物は、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤である。これらの化合物は、アセチルコリンの分解を防止することによって、初期アルツハイマー病の進展を遅らせる。しかし、コリン作動性ニューロンが完全に変性して、アセチルコリン神経伝達物質をもはや産生することができなくなると、これらの薬物は役に立たなくなる。
神経細胞の喪失が認められることの他に、アルツハイマー病を患っている患者の脳は、特徴的に、タンパク質の塊を含んでいる。この蓄積は2つの形式で起こる。すなわち、ニューロンの内部に見いだされるものと、細胞間隙に見いだされるものとがある。細胞内の塊は神経原線維変化と呼ばれ、互いにらせん状に絡み合った線維の対のように見える。分析により、このもつれは、タウタンパク質からなることがわかっている。タウは、微小管形成を担うチューブリンに結合するので、重要である。神経原線維変化の数はこの疾患の重症度と相関するようである。
細胞間タンパク質塊または細胞間タンパク質斑は、β−アミロイドタンパク質の沈着物からできている。近傍のニューロンはしばしば膨潤し変形しているように見え、アミロイド斑は通常、炎症性小膠細胞を伴っている。脳の免疫系の一部である小膠細胞は、損傷を受けたニューロンあるいは斑そのものを分解し除去しようとして、存在しているのだろう。
斑の密度は痴呆の重症度とは弱い相関関係しか示さないので、これらの斑の中または近傍にあるニューロンが正常に機能しているかどうかは不明である。また、そのような斑は、アルツハイマー病の有無とは無関係に、大半の高齢者に存在する。とは言え、それらが海馬および大脳皮質に広範に存在することはアルツハイマー病患者に特異的であり、それらは、神経原線維変化が現れるずっと前に現れる。
β−アミロイド斑は、β−アミロイド前駆体タンパク質(BAPP)と呼ばれる内在性膜タンパク質の42アミノ酸断片を含んでいる。この断片はBAPPタンパク質の2段階切断(最初はβセクレターゼと呼ばれるプロテアーゼよる切断、次はγセクレターゼによる切断)によって生成する。βセクレターゼおよびγセクレターゼの正常切断産物は40アミノ酸ペプチドであるが、これは42アミノ酸誘導体とは異なり、アルツハイマー病の発生または進行には関与しないようである。
パーキンソン病(PD)は、振戦および筋固縮を特徴とする消耗性神経変性疾患であり、その病因はまだわかっていない。この疾患の特徴には、ドーパミン作動性ニューロン(すなわちドーパミンを分泌するもの)の変性、特に中脳の黒質および腹側被蓋領域におけるドーパミン作動性ニューロンの変性が関係しているようである。Rinne ら, Brain Res. 54:167 (1991)および Clark ら, Br. J. Pharm. 85:827(1985) を参照されたい。黒質は、運動および姿勢に関する神経シグナルの調整に関与している。中脳の腹側被蓋野(VTA)は、高次認知機能と関係する脳の領域である前前頭皮質を含む部位に投射するニューロンを含んでいる。
PDを処置するためにいくつかの試みがなされてきた。提案されたPD処置剤の一つはSINEMET(登録商標)である。これはカルビドパとレボドパの混合物を含有する徐放性錠剤であり、DuPont Merck Pharmaceutical Co.から入手することができる。もう一つの提案されたPD処置剤はELDEPRYL(登録商標)である。これは塩酸セレギリンを含有する錠剤であり、Somerset Pharmaceuticals Inc.から入手することができる。もう一つの提案されたPD処置剤はPARLODEL(登録商標)である。これはメシル酸ブロモクリプチンを含有する錠剤であり、Sandoz Pharmaceuticals Corporationから入手することができる。Berliner らの米国特許第5,210,076号では、メラニン療法によってPDおよび他のさまざまな神経変性疾患を処置するもう一つの方法が提案されている。しかし、これらの処置はいずれも、ニューロンを細胞死から保護しないようである。
(発明の概要)
神経損傷部位に局所適用または注射した場合に、ブリモニジンおよびその誘導体が、視細胞または網膜細胞および脊椎の神経細胞に神経保護活性を提供できることは知られているが、そのような薬剤がアルツハイマー病やパーキンソン病などの脳神経変性状態の処置に有効な薬剤であるだろうとは、今まで考えられたことがなかった。その理由は、一つには血液脳関門であり、また一つには、他の既知のα2アドレナリン作動性受容体アゴニスト、例えばクロニジン、チザニジンおよびデクスメデトミジンなどの投与に付随する顕著な鎮静活性である。例えば、そのような薬剤を治療用量で全身的投与した場合の鎮静活性は、非局所外用薬剤または全身性薬剤としてのそれらの有用性を、実際問題として著しく制限してきた。
本出願人は驚くべきことに、ブリモニジンおよびその誘導体が、全身的投与時に、脳の神経細胞に神経保護を提供できることを発見した。ブリモニジンおよびその誘導体は、その神経保護活性とその鎮静活性との間に、今までに特徴づけられた大半のαアドレナリン作動性アゴニストよりも劇的に広い治療濃度域を持っている。
ブリモニジンおよびその治療的価値は、Danielewicz らの米国特許第3,890,319号および第4,029,792号に開示されている。これらの特許は、ブリモニジンを、以下の式を持つ心血管系の調節剤として開示している。
Figure 2006504741
[式中、2-イミダゾリン-2-イルアミノ基は、キノキサリン核の5位、6位、7位または8位のどこにあってもよい。x、yおよびzは、残っている5位、6位、7位または8位のどこにあってもよく、水素、ハロゲン、C1-5アルキル、C1-5アルコキシまたはトリフルオロメチルから選択することができる。Rは、キノキサリン核の2位または3位にある随意の置換基であり、水素、C1-5アルキルまたはC1-5アルコキシであることができる]。
現時点で有用な化合物は、特許第3,890,319号および特許第4,029,792号(これらの特許は、この記載をもって、参照により本明細書に組み込まれる)に記載の手法に従って製造することができる。
J. A. Burke ら「Ocular Effects of a Relatively Selective Alpha-2 Agonist (UK-14,304-18) in Cats, Rabbits and Monkeys(ネコ、ウサギおよびサルにおける比較的選択的なα2アゴニスト(UK−14,304−18)の眼効果)」Current Eye Rsrch., 5, (9), pp. 665-676 (1986) には、ブリモニジンという一般名を持つ下図のキノキサリン誘導体が、ウサギ、ネコおよびサルにおいて、眼内圧を低下させるのに有効であることが示された。この研究における化合物は実験動物の角膜に局所投与された。
Figure 2006504741
α2受容体アゴニストであるブリモニジンは、局所的または全身的投与した場合に、光受容器および網膜神経節細胞を含む網膜神経細胞を、緑内障、網膜色素変性および加齢黄斑変性などの状態における損傷から保護できることが知られている。米国特許第6,194,415号を参照されたい。
第1の側面として、本発明は、脳の神経変性状態を処置する方法であって、その必要がある哺乳動物の脳に、処置有効量のブリモニジンを投与することを含む方法に向けられる。
ブリモニジンは、他の周知のα2受容体アゴニストよりも低いα1受容体活性を持つ。これらのアゴニストは通常、α2「選択的」アゴニストとして考えられるが、実際には、これらの化合物はいずれも、α1A受容体において、少なくとも1つのα2受容体サブタイプでの活性よりも高い活性を持つ。これに対し、ブリモニジンは、各α2受容体サブタイプにおいて、α1A受容体における活性よりも少なくとも5.5倍は高い活性を持っている。以下に示すデータは上述のRSATアッセイを使って収集したものである。
Figure 2006504741
本発明者は、ブリモニジンが、高いα1受容体活性を持つ他の化合物より広い治療濃度域を持っていること、すなわち、α2受容体によって媒介される治療効果を得るのに必要な濃度を、鎮静を引き起こすのに必要な濃度と比較した時の差が、高いα1受容体活性を持つ他の化合物より大きいことにも気づいた。
例えば、IP適用した場合、チザニジンとクロニジンの治療効果および鎮静効果は、どちらも約100マイクログラム/kgの濃度で始まることが観察される。対照的に、ブリモニジンの治療効果は10マイクログラム/kgで測定され始めることが可能であるのに対して、ブリモニジンの鎮静効果は約30マイクログラム/kgになって初めて顕著になる。したがってブリモニジンは、神経保護活性を提供するために全身的に使用することができ、しかも患者の過鎮静が起こる懸念は少なくなる。
本発明においては、与えられた受容体または受容体サブタイプの効力は、上述のRSATアッセイ法を使って決定される。
理論に束縛されることは望まないが、α1受容体の刺激を減らすことは、より高いα1受容体活性を持つ類似化合物と比較して、鎮静用量反応曲線を変化させずに、ブリモニジンのEC50を減少させる(これは、より低い薬物濃度での治療効果につながる)のに役立つと考えられる。
もう一つの側面として、本発明は、青斑を含む脳の一領域にまたは脳の一領域から投射している神経細胞の死または変性を防止する方法であって、前記細胞に処置有効量のブリモニジンを投与することを含む方法に向けられる。
この新しい方法は、予防的処置として施されると、すなわち神経への損傷が起こってしまう前に、またはアルツハイマー病やパーキンソン病などの疾患状態の長期にわたる進行が起こってしまう前に施されると、とりわけ有効である。本発明の化合物が神経保護に果たす役割に関して特定の理論に束縛されることは望まないが、ここに記載する方法に従って使用した場合、ブリモニジンは、bcl−2ファミリーに属する一定の因子の産生を刺激しうるという仮説を、出願人は立てている。そのような因子の発現量の増加は、それらの産生をコードするmRNAの発現量の増加によって測定されている。これらの因子(bcl−2およびbcl−XL)は、アポトーシスプログラムを抑制することができる。これらの因子は、神経細胞に対する有害な刺激の結果として産生されうるbadやbaxなどのbcl−2アポトーシス因子の存在または誘導を相殺することができる。したがって、神経に細胞生存シグナルを与える本発明の化合物は、細胞死を阻害する化合物と、有利に併用することができると考えられる。そのような細胞死阻害化合物には、過剰なグルタミン酸の興奮毒作用を遮断するNMDAアンタゴニスト、特にメマンチン、一酸化窒素シンテターゼ阻害剤、フリーラジカル捕捉剤およびカルシウムチャネル遮断剤などがある。
処置する哺乳動物の脳にブリモニジンを投与する適切な方法は、どれでも使用することができる。どの方法でも、好ましい哺乳動物はヒトである。選択される特定の投与方法は、好ましくは、ブリモニジンが有効な形で(例えば低い有効濃度および低い副作用発生率で)所望の処置効果を持ちうるような方法である。
本発明の方法に適合した形でのブリモニジンの投与としては、経口投与、非経口投与、静脈内投与、皮下投与および他の全身的投与様式などを挙げることができるが、これらに限るわけではない。化合物は単独で、または医薬的に許容できる適切な担体もしくは賦形剤と組み合わせて、処置有効量で投与される。
意図する投与様式に応じて、例えば錠剤、坐剤、丸剤、カプセル剤、散剤、液剤、溶液剤、注入剤、懸濁剤、乳剤、エアロゾル剤などの医薬的に許容できる任意の剤形に、好ましくは正確な投与量の一回投与に適した剤形、または持続的制御投与用の徐放性剤形に、処置量のブリモニジンを組み込むことができる。この剤形は、好ましくは、医薬的に許容できる賦形剤と、現時点で有用な化合物または化合物群とを含みうる。また、この剤形はさらに、他の薬、医薬品、担体、佐剤などを含んでもよい。
固形剤形の場合、無毒性固形担体には、例えば医薬用のマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、ポリアルキレングリコール、滑石、セルロース、グルコース、ショ糖および炭酸マグネシウムなどがあるが、これらに限るわけではない。本発明を実施するための固形剤形の一例は、担体としてプロピレングリコールを含有する坐剤である。
液状の医薬的に投与可能な剤形は、例えば1つ以上の現時点で有用な化合物と、随意の医薬佐剤とを、例えば水、食塩水、デキストロース水溶液、グリセロール、エタノールなどの担体に溶解または懸濁することにより、溶液または懸濁液を形成させたものを含むことができる。所望により、投与される医薬組成物は、例えば湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤などといった少量の無毒性補助物質も含有することができる。そのような補助剤の典型例は、酢酸ナトリウム、モノラウリン酸ソルビタン、トリエタノールアミン、酢酸ナトリウム、オレイン酸トリエタノールアミンなどである。そのような剤形を製造する実際の方法は、当業者には知られているか、明らかであるだろう。例えば、参照により本明細書に組み込まれる「Remington's Pharmaceutical Sciences」(Mack Publishing Company、ペンシルバニア州イーストン、第16版、1980)を参照されたい。いずれによせ、投与される製剤の組成は、所望の処置効果を与えるのに有効な量の、現時点で有用な化合物の1つ以上を含有する。
非経口投与は、一般的には、皮下注射、筋肉内注射または静脈内注射を特徴とする。注射可能剤は通常の剤形で、液状の溶液剤もしくは懸濁剤として、注射前に液体に溶解もしくは懸濁するのに適した固形剤形として、または乳剤もしくは注入剤として、製造することができる。好適な賦形剤は、例えば水、食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなどである。また、所望により、投与される注射可能または注入可能な医薬組成物は、例えば湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤などといった少量の無毒性補助物質も含有することができる。
投与されるブリモニジンの量は、もちろん、所望する1つまたは複数の処置効果の詳細、処置対象である哺乳動物、その哺乳動物の状態の重症度および性質、投与方法、使用する1つまたは複数の特定化合物の力価および薬力学、ならびに処方医の判断に依存する。一般的には、処置有効投与量は、好ましくは、約0.5または約1〜約100mg/kg/日の範囲にある。
(発明の詳細な説明)
一側面として、本発明は、脳の神経変性状態を処置する方法であって、その必要がある哺乳動物の脳に、処置有効量のブリモニジンまたは医薬的に活性なその塩を投与することを含む方法に向けられる。
これに関連して本出願人は、ブリモニジンが、脳の神経細胞を損傷および死(アポトーシスを含む)から保護することに関して、α1受容体アゴニスト活性を持つ化合物よりも予想外に高い効力を持つことを発見した。理論に束縛されることは望まないが、α1アドレナリン作動性受容体の刺激は、α2アゴニスト活性が与える神経保護活性の妨害をもたらすと、本出願人は考えている。例えば、クロニジンやチザニジンなどの薬剤が持ちうる鎮静効果はいずれも、当該化合物の神経保護活性と同等か、約3倍範囲以内のEC50を持ちうる。したがって、クロニジン、チザニジンおよびデクスメデトミジンなどの非選択的薬剤がもたらす神経保護活性はいずれも、患者を鎮静させる傾向または患者にとって毒性である傾向を持つであろう濃度で、認められる。
これが理由の一つとなって、αアドレナリン作用剤は一般に、神経保護剤としては、薬剤が概して全身的投与されない局所適用(例えば眼科適用)の場合を除いて、過去に使用されたことはなかった。
理論に束縛されることは望まないが、ブリモニジンの神経保護効果はその大半がまたはその全てが、α2Bおよび/またはα2C受容体の刺激によってもたらされると、本出願人は考えている。一般的には、脳は、α2Bまたは2C受容体が豊富であるとは、考えられてこなかった。しかし本出願人は、本発明の方法が、青斑(アルツハイマー病で初期に広範な損傷が認められる部位)から投射するニューロンまたは青斑に投射するニューロンに対して、神経保護効果を提供できることを見いだした。したがって、本願の開示に適った方法によるブリモニジンの使用は、アルツハイマー病およびパーキンソン病などの状態における神経損傷の処置に有用でありうる。
緑内障とアルツハイマー病との関連
理論に束縛されることは望まないが、アルツハイマー病およびパーキンソン病などの脳神経変性状態において、ブリモニジンが有効な神経保護剤である理由に関する仮説を以下に述べる。
最近の研究により、アルツハイマー病(AD)における網膜神経節細胞(RGC)およびその軸索の緑内障性喪失が示唆されている。アミロイドβペプチドおよびリン酸化タウタンパク質は、ADに特有の選択的限局性ニューロン喪失およびタンパク質蓄積に関連づけられている。同様のタンパク質蓄積は緑内障RGCには存在しない。ニューロンはADでも緑内障でもアポトーシスによって死ぬが、ニューロン分解のためのシグナル伝達経路は、これら2つの疾患では異なっているようである。ADは、ニューロンアポトーシスを起こしている脳領域に軸索終末を送る青斑ノルアドレナリン作動性ニューロンの喪失を特徴とし、ノルアドレナリン(NA)レベルおよびニューロンのα2アドレナリン作動性受容体レベルの限局的低下をもたらす。α2アドレナリン作動性受容体の活性化は、プロテインキナーゼB(Akt)依存性シグナル伝達経路により、ニューロンのアポトーシスを減少させる。NA神経支配の喪失はADでも緑内障でもニューロンのアポトーシスを促進しうる。α2アドレナリン作動性受容体アゴニストは、失われたNA神経支配を補償することにより、どちらの疾患でもニューロン喪失を遅らせる可能性を持つ。
神経変性疾患は、ほとんどの場合、その罹病者を死亡させるのではなく障害者にする。神経変性の進行的性質と長期間に及ぶ経過は、我々の社会にとって著しい経済的負担を課しているが、それは大部分が、罹患者を支援するのに必要な介護者の数に起因している。緑内障は典型的な神経変性疾患の基準を満たす。この疾患では、しばしば眼内圧(IOP)の上昇を伴って、網膜神経節細胞(RGC)が漸進的かつ進行性に死ぬ。外側膝状核内のニューロンや、さらには視覚皮質内のニューロンも失われるらしいので、緑内障性ニューロン死は網膜に限定されないのだろう。緑内障性神経変性の病理発生について確かなことはわかっていない。篩板における視神経軸索のIOP誘発性圧迫に起因するRGC軸索タンパク質輸送の障害は、さまざまな証拠によって指摘されている。脳由来神経栄養因子(BDNF)のような栄養因子は、RGC軸索終末からニューロンの細胞体に向かって逆行的に輸送され、この栄養因子の輸送はRGCの生存にとって不可欠である。RGC軸索の圧迫または挫滅は、栄養因子レベルを低下させ、それが栄養不足によるRGC死を引き起こしうる。その他に、局所的虚血−低酸素、グルタミン酸受容体の過剰活性化、一酸化窒素による酸化性ラジカル種の過剰生成、または免疫関連受容体の活性化を、緑内障性ニューロン喪失の考えうる一因として関係づける証拠もある。
緑内障とアルツハイマー病(AD)との関係
緑内障の場合と同様に、アルツハイマー病(AD)でも、栄養不足、酸化性ラジカル損傷、低酸素および免疫関連機構はいずれも、ニューロン喪失の考えうる一因として挙げられている。ADでは主に皮質、海馬、中隔、視床および脳幹のニューロンが失われるが、RGCも同様に失われうる。死後網膜および視神経の組織学的検査により、ADではRGCとその軸索が萎縮し、死ぬことが示唆されている。いくつかの研究では、AD視神経中の平均軸索数(68/1000μm2)が年齢対応対照群に見いだされる数(116/1000μm2)の半分未満だったことから、視神経軸索喪失が大規模だった。視神経軸索のサイズ分布からは、特発性緑内障での報告と同様にADでも、大きな軸索が優先的に失われることが示唆された。死後AD視神経の他の研究では、RGC軸索変性の証拠を見いだすことはできていない。死後研究の異なる所見を評価することは困難である。というのも、それぞれの研究で調べられたAD患者および年齢対応対照群の数が少なく(n=7〜10)、ADの進行段階が十分に管理されておらず、おそらく研究間で変動があり、組織学的方法および計数方法も研究ごとに異なっていたからである。AD患者における生体内法で用いられる網膜神経線維層厚、神経乳頭蒼白および神経乳頭陥凹などの測定も、異なる研究では、著しく異なっている。それらは、緑内障性変化を示す証拠は見つからないというものから、明瞭な緑内障性変化が見いだされ、その程度は各患者における認知機能低下のレベルと相関関係があると思われるというものまで、さまざまである。ADと緑内障との関連を示す最も説得力のある証拠は、Bayerらの詳細な研究によって得られている。彼らは、AD患者(n=112)の約26%が、網膜緑内障性変化、特に視野喪失および視神経陥凹を持つのに対して、年齢対応対照群(n=116)で緑内障性変化を持つのは5%だけであることを示した。
神経原線維変化(NFT)およびアミロイド斑は、ADにおける神経変性の病理学的特徴である。アミロイド前駆体タンパク質(APP)は膜タンパク質であり、α−セクレターゼおよびβ−アミロイド切断酵素(BACE)によって、それぞれ分泌型APP(sAPPα)またはAβ1−40ペプチド(Aβ1−40)に切断されうる。ほとんどの細胞タイプではsAPPαが主要APP誘導体である。より大型のAβペプチド、すなわちAβ1−42は、容易に凝集し、アミロイド斑の芯部の主要成分である。APPプロセシングまたはAPP分解の欠陥が、ADにおいてAβ1−42ペプチドのレベルが高い原因だろう。Aβ1−42ペプチドは培養細胞にとって毒性であり、ADニューロン喪失の原因であるかもしれない。遺伝子研究により、ADの病理発生過程の考えうる引き金として、APP中に突然変異が同定されている。他の遺伝子、例えばプレセニリン1およびプレセニリン2(PS1/2)の遺伝子や、アポリポプロテインE(APOE)の遺伝子も、Aβレベルを増加させることによって、ADの一因となりうる。
NFTは主として微小管関連タンパク質タウから構成されている。ADでは、ニューロン細胞中でタウが高度にリン酸化され、凝集して線条になる。リン酸化タウは、微小管に結合する能力が低下しているらしく、神経細線維タンパク質と凝集してNFTを形成する。リン酸化タウはAβ毒性に決定的な役割を果たしているようであり、Aβ1−42ペプチドは、タウの凝集およびタウプロテインキナーゼIIによる過剰リン酸化を促進しうる。したがってこれら2つのタンパク質、すなわちAβ1−42ペプチドとリン酸化タウは、ADニューロン毒性を促進する他方のコンフォメーションを助長しうる。
高齢者網膜ならびに網膜色素変性および加齢黄斑変性を持つ人の網膜のRGC層および色素上皮には、タウ、APPおよびAβペプチド免疫反応の多少の増加が報告されている。これら免疫反応レベルの増加にはNFTもアミロイド斑も付随していなかった。同様に、ラット高眼圧症モデルについても、免疫細胞化学を使って、RGCにおけるAβペプチド免疫反応の増加が報告されている。同じ高眼圧症モデルの全網膜免疫ブロットから、このAβペプチド免疫反応の増加には、完全長APPの減少およびAβ含有断片の増加が付随して起こることが示唆されている。緑内障におけるRGC軸索圧迫は、神経細線維タンパク質異常およびAβペプチド誘発性ニューロン損傷を促進しうるという仮説が立てられている。ラット緑内障モデルと、いくつかの非緑内障網膜状態では、APP、Aβペプチドおよびタウの異常を示す証拠があるにもかかわらず、ADにおける視神経軸索喪失およびRGC変性がNFTまたはアミロイド斑を含むという報告はなされていない。したがって、ADにおけるRGC変性が、ADにおける中枢神経系(CNS)ニューロン喪失の根底にあると考えられるAPP異常およびタウ異常に起因しているかどうかは、不明である。
緑内障およびADではニューロンはアポトーシスによって死にうる
緑内障でもADでも、アポトーシスと呼ばれる細胞死過程がニューロン喪失の一因になっているようである。アポトーシスは、核および細胞の収縮と、エンドヌクレアーゼおよびプロテアーゼによる核酸および細胞骨格タンパク質の切断とを特徴とする漸進的細胞分解過程を含む。ほとんどの研究が、緑内障またはADに見られるニューロン喪失におけるアポトーシスの役割を裏付けているが、これらの疾患におけるアポトーシスの関与を疑問視している研究もある。これら見解の相違は、主として、アポトーシスを定義するのに必要とみなされる形態学的基準、および/またはターミナルデオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼによるデオキシウリジン三リン酸ニック末端標識(TUNEL)を使って得られる核DNA切断を示す証拠の解釈に基づいている。アポトーシスによる核分解は、患部ニューロンの収縮、分解および貧食の故に、神経病理学的検査で検出することが困難な場合がある。この分解過程は、見かけ上、培養細胞では24時間未満の寿命を持ち、無傷の神経組織では数日の寿命である。したがって、どの1回の検査をとっても、何年もの時間経過を持つ疾患におけるアポトーシス分解の証拠を示すのは、わずかな割合のニューロンに過ぎないと予想することができる。
アポトーシス分解のマーカーとして核DNA切断を検出するには、DNAゲル電気泳動またはパルスフィールド電気泳動を使用することができる。これらの手法では組織ホモジネートから採取したDNAを調べる。この場合、ホモジネートは、アポトーシス分解段階にある細胞を105個以上含まないと、核DNA分解が検出できるようにならない。ADまたは緑内障の長期にわたる時間経過を考えると、どの一日をとってみても核分解を起こすニューロンは少数に過ぎず、その結果、AD脳または緑内障網膜から得たホモジネート中に存在する断片化DNAは不十分であると予想される。死後AD脳または死後緑内障網膜由来の組織切片または全載標本中の核DNA切断をin situで明らかにするには、蛍光色素に結合されたd−UTPによる切断3’DNA末端の標識が用いられてきた。ヒト緑内障網膜および緑内障動物モデルの網膜にはTUNEL陽性RGC核が見いだされている。その低いTUNEL陽性RGC核の割合は、緑内障におけるRGCの漸進的喪失にふさわしいようである。TUNEL陽性ニューロンの所見はADではさまざまである。というのも、一部の研究では、この疾患に冒された脳領域におけるTUNEL陽性ニューロン数の増加が見いだされているが、他の研究では、年齢対応対照群からの脳と比較してAD脳におけるTUNEL陽性ニューロンの増加は全く検出できていないからである。さらに、いくつかの研究では、不適切に高いTUNEL陽性ニューロン数が、AD脳に見いだされた。例えばいくつかの皮質領域で、ニューロンの25%がTUNEL陽性であると報告された。
ADにおけるTUNEL所見のばらつきは、この標識技術(特にそれを死後神経組織に使用する場合)に影響を及ぼすことが知られている方法論的課題、すなわち1)エンドヌクレアーゼによるDNA切断とは無関係に、反応性酸素種によってDNAに加えられる損傷が、TUNELによって検出されうること、2)組織固定の遅れ、過剰固定または長時間固定により、TUNEL標識が誘発されうること、3)有糸分裂を開始した細胞がTUNEL標識されうること、4)さまざまなエンドヌクレアーゼはDNAをさまざまに切断することができ、それがTUNEL標識効率に劇的な影響を及ぼしうること、そして5)Mg2+やCo2+のような二価カチオン濃度の変動がTUNEL標識に著しい影響を及ぼすことに、おそらく起因するのだろう。したがって、アポトーシス分解の立証にTUNEL標識を単独で使用する場合は、陽性であろうと陰性であろうと、その結果を慎重に解釈すべきである。他の分解マーカー、特に、クロマチン凝縮を明らかにするDNA結合色素、または分解シグナル伝達タンパク質に関する免疫細胞化学と一緒に使用するのであれば、TUNEL標識はアポトーシス分解の識別に有益であることができる。
緑内障およびADにおけるアポトーシス分解シグナル伝達
アポトーシスシグナル伝達過程は、1)プレミトコンドリア段階、2)ミトコンドリア段階、および3)ポストミトコンドリア段階または分解段階、という3段階を含むとみなすことができる。核が関与するアポトーシス分解には、核DNA切断の他に、1)核DNAからのヒストンおよびラミンの分離、2)断片化したDNAの凝縮または圧縮、および3)断片化し凝縮したDNAを含有する、膜で包まれた核内構造体の形成、が含まれうる。アポトーシス核分解の程度、パターンおよび時間経過は、細胞表現型が異なれば異なり、細胞に対する傷害が異なれば異なることが明らかにされている。我々は、死後緑内障眼または緑内障動物モデルのRGC、MPTPに曝露したネズミ黒質ニューロン、ブタ海馬の低酸素ニューロン、およびPD死後脳の黒質神経メラニン含有ニューロンにおいて、アポトーシス性核変化のパターンに見られる変動を、複数の分解マーカーを使って示した。したがって、核の形態に基づいて、核分解の一形式をアポトーシス性と呼び、他の形式を非アポトーシス性と呼ぶことは、混乱を生じる可能性がある。
現在、アポトーシス細胞分解は、相互作用する多くのシグナル伝達系路に依存することが知られている。異なる傷害および/または異なる細胞表現型は、異なる分解シグナル伝達を活性化することができ、それは核変化の形態の相違、特にクロマチン凝縮および/またはDNA断片化に関する相違に反映されうる。プロテアーゼのカスパーゼファミリーは、多くのアポトーシスシグナル伝達経路に基本的な役割を果たしている。現在、哺乳類では、12を超えるカスパーゼが特徴づけられている。カスパーゼは不活性なプロ酵素として発現される。これらはタンパク質分解によって活性化され、他のカスパーゼ、細胞骨格タンパク質、核タンパク質、または抗アポトーシスシグナル伝達タンパク質を切断することができる。4つの異なるシグナル伝達経路が、核クロマチン凝縮およびDNA断片化の一因となることが知られている。これらの経路のうち、1)シトクロムC、アポトーシスプロテアーゼ活性化因子1(Apaf−1)およびプロカスパーゼ9経路と、2)SMAC(second mitochondrial derived activator of caspases)/Diablo(direct IAP binding protein)経路の2つは、カスパーゼ依存性である。他の2つの経路、すなわち1)アポトーシス開始因子(AIF)経路と、2)エンドヌクレアーゼG経路は、カスパーゼ非依存性である。
ミトコンドリアから放出されたシトクロムCは、Apaf−1およびdATPと相互作用して、プロカスパーゼ9を活性型カスパーゼ9に変換することが、初めて発見された。活性型カスパーゼ9もミトコンドリアから放出される。活性型カスパーゼ9は、プロカスパーゼ3を活性型カスパーゼ3に変換することにより、いくつもの形式のアポトーシス変性における重要段階を遂行する。活性型カスパーゼ3は、カスパーゼ活性化DNアーゼ阻害因子(ICAD)を切断して、カスパーゼ活性化DNアーゼ(CAD)を生成させ、それが核DNAを断片化する。活性型カスパーゼ3は、acinusのプロテアーゼ活性化による核クロマチン凝縮、プロテアーゼ・ゲロシンによるアクチン細胞骨格消化、およびカスパーゼ6による核ラミン切断を含むアポトーシス細胞分解の他の側面についても、シグナル伝達することができる。
緑内障RGCではカスパーゼ3の活性化が報告されている。いくつかの研究ではADにおけるニューロンカスパーゼ3の活性化が見いだされたが、他の研究ではADにおけるニューロンDNA断片化へのシトクロムC−カスパーゼ3−CAD経路の関与を示す証拠を見つけることができていない。カスパーゼ3のようなカスパーゼは、構成的に活性なタンパク質、アポトーシス阻害因子(IAP)のファミリーに属する1つ以上のメンバーによって、阻害することができる。IAPはカスパーゼに結合してカスパーゼを不活化することにより、シトクロムC−カスパーゼ3−CAD経路による核分解を防止するか、減少させることができる。そして、ミトコンドリアから放出されるSMAC/Diabloは、IAPを結合して不活化することができ、そうすることで、カスパーゼ9、3および6によるアポトーシス分解のシグナル伝達を可能にする。IAPはダウン症候群および軸索切断後のラットRGCにおけるAD様神経変性に関連づけられているが、ADまたは緑内障において、IAPまたはSMAC/Diabloがカスパーゼ3分解経路に影響を及ぼすかどうかはわかっていない。
いくつかの形式のアポトーシスでは、可溶性フラボタンパク質AIFがミトコンドリアの膜間腔から放出されて、核に移行し、そこでDNA断片化を誘発すると共に、クロマチン凝縮の一因にもなる。AIFはシトクロムCおよびプロカスパーゼ9とは無関係にミトコンドリアから放出されうる。AIFがミトコンドリアから選択的に放出される根拠はわかっていない。組換えAIFを細胞にマイクロ注入しても核の外側部分でクロマチン凝縮が起こるだけであるが、活性型カスパーゼ3またはその下流標的CADをマイクロ注入すると、核全体のクロマチン凝縮が起こる。他のいくつかの形式のアポトーシスでは、AIFが、ミトコンドリアからのシトクロムC放出を誘発する。したがって、核DNA切断およびクロマチン凝縮は、カスパーゼ3のみ、AIFのみおよび/またはAIFとそれに続くカスパーゼ3のさまざまな核内分布によって誘導されうる。通常はミトコンドリアDNAを切断する機能を果たすミトコンドリアDNアーゼ、エンドヌクレアーゼGも、いくつかの形式のアポトーシスでは、ミトコンドリアから放出され、核DNA断片化を直接的に誘発するのに役立ちうる。エンドヌクレアーゼGが引き起こす核DNA断片化は、カスパーゼ活性またはCAD活性に依存しない。エンドヌクレアーゼGはBIDによってミトコンドリアから放出されることができ、FASリガンド(下記参照)によって誘発されるアポトーシスの特徴である。エンドヌクレアーゼGが誘発するDNA断片化の核内パターンについてはほとんどわかっていないが、これはおそらく、カスパーゼ3および/またはAIFが関わるアポトーシス核分解の考えうるパターンに、さらなる変更を加えるのだろう。
アポトーシスにおける分解のためのシグナル伝達系路に関して、増大しつつある我々の理解からすると、形態学的形式の異なる核分解が数多く観察されていることは、驚くにはあたらない。我々の最新の情報に基づけば、緑内障RGCアポトーシス分解には、少なくとも部分的に、カスパーゼ3シグナル伝達経路が関与し、一方、ADアポトーシス分解はカスパーゼ依存性である場合も、カスパーゼ非依存性である場合もあるので、おそらくはカスパーゼ3活性化の他に、AIFおよび/またはエンドヌクレアーゼGシグナル伝達経路を反映するのだろう。
緑内障およびADにおけるミトコンドリアアポトーシスシグナル伝達
ニューロンはどのようにして、アポトーシス分解のためのシグナル伝達経路を活性化しようと決断するのだろうか。アポトーシス分解のためのシグナル伝達をする因子類の放出を伴うミトコンドリア膜透過性の変化は、数多くのアポトーシスシグナル伝達経路において、重大な決定段階を構成する。アポトーシス分解のためのシグナル伝達因子(シトクロムC、プロカスパーゼ9、AIF、SMAC/DiabloまたはエンドヌクレアーゼG)の1つ以上が、ミトコンドリアの内膜と外膜を隔てる膜間腔に放出されるか、ミトコンドリア基質から放出される。2つの機構、すなわち1)外膜における細孔の形成または既存の細孔の開口(に概説されている)、および2)ミトコンドリアの内膜と外膜にまたがる多タンパク質巨大細孔、透過性遷移孔複合体(PTPC)の開口が、外膜透過性の増加を引き起こすと言われている。
図1に図式化するように、BAXは、そのアポトーシス促進性関連因子BAKと共に、PTPCの開口または外膜の透過性増加の一因となりうる。ただし、ミトコンドリア外膜透過性のBAX誘発性変化の根拠はよくわかっていない。BAXオリゴマーは平面的リン脂質二重層膜に入り込んで、その膜の溶解を促進することができる。いくつかのアポトーシスモデルにおいて、BIDはBAXのオリゴマー化を誘発することができ、それはリポソームまたはミトコンドリアからのシトクロムCまたはSMAC/Diabloの放出を誘発することができる。BIDは、ミトコンドリア外膜へのBAXの挿入を誘発するか、BAXをPTPCに結合させることができる。他の形式のアポトーシスでは、BIDは、ミトコンドリアにおけるBAX蓄積にとって必要でないこともある。
PTPCの開口は、ミトコンドリア内膜を横切る浸透圧変化を引き起こしうる。これは、結果としてミトコンドリア基質の膨潤およびミトコンドリア外膜の破裂を引き起こし、それがミトコンドリアからのアポトーシス分解因子の放出を可能にしうる。PTPCの閉口を促進するシクロスポリンAのような薬剤は、いくつかの形式のアポトーシスで、シトクロムCの放出およびアポトーシスを減少させる。BAXは、PTPCのアデニンヌクレオチド輸送体(ANT)または電位依存性アニオンチャネル(VDAC)に結合することが示されている。ANTまたはVDACへのBAXの結合は、単離された膜のコンダクタンスを著しく増加させる。集まりつつあるデータから、ANTまたはVDACは、さまざまな形式のアポトーシスにおいて、ミトコンドリア内膜の透過性を増加させうることが示唆される。シトクロムCは内膜から形成されるミトコンドリアのクリステに貯蔵され、それが外膜と融合して、PTPCを通したシトクロムCの放出を可能にすると考えられる。したがって、外膜細孔の形成と共に、PTPCの開口が、シトクロムC放出の原因であると言える。
死後緑内障網膜の免疫細胞化学により、RGCの小部分にBAXの増加が示されており、それはラット高眼圧症モデルで見いだされたものと似ているようである。BAXが誘発するミトコンドリア内膜透過性の増加はミトコンドリア膜電位の低下をもたらし、ミトコンドリア膜電位は、ラット高眼圧症モデルのRGCでは低下することが示されている。死後AD脳の研究では、対照脳におけるBAXレベルと比較して、ある割合のニューロンでBAXの増加が示されるか、またはニューロンBAXレベルに相違はないことが示されている。ある研究では、BAXの増加を伴わないBAKの増加が報告された。したがって、ミトコンドリア膜透過性のBAX依存的増加がADにおけるアポトーシスの一因であるかどうかは不明である。いくつかの型のAD、すなわちBAXの増加および活性型カスパーゼ3(上記参照)が関わるものと、ミトコンドリア膜透過性の増加には依存しないものが存在しうる。
緑内障およびADにおけるプレミトコンドリアアポトーシスシグナル伝達
図1は、緑内障およびADにおけるニューロン喪失の一因となる、考えうるプレミトコンドリアアポトーシスシグナル伝達およびミトコンドリアアポトーシスシグナル伝達の模式図である。図1に示す2つの異なる経路、すなわち1)p53−グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)−BAX経路と、2)FASまたはTNF受容体−FADD−カスパーゼ8−BAX経路は、RGCの緑内障性喪失の一因として提案されている。同様に、p53シグナル伝達およびFasまたはTNFシグナル伝達はどちらも、ADに関連づけられている。
腫瘍抑制タンパク質p53は、数多くの形式のアポトーシスに関連づけられており、転写機構または翻訳後機構によって、アポトーシスのためのシグナルを伝達することができる。p53は、いくつかの形式のアポトーシスで、GAPDHとBAXの転写的増加を誘発する。GAPDHは、解糖酵素として最もよく知られているが、アポトーシスシグナル伝達タンパク質としても機能する多機能タンパク質である。アンチセンスオリゴヌクレオチドを使った研究により、GAPDHは、ニューロン細胞に対する多種多様な傷害によって開始されるアポトーシスの進行にとって不可欠でありうることが示された。GAPDHは抗アポトーシスタンパク質BCL−2およびBCL-XLの転写を減少させるようである。BCL−2およびBCL−XLは、BAXが誘発するミトコンドリア膜透過性の増加とアポトーシス分解因子放出に対抗し、その結果として、アポトーシス分解を減少させることができる。
TNF受容体およびFAS受容体を含む腫瘍壊死因子(TNF)受容体スーパーファミリーは、転写の変化を伴わないカスパーゼ依存的経路によるアポトーシスを引き起こす。これらの受容体はカスパーゼ、特にカスパーゼ8を活性化するFADDのようなアダプタータンパク質にリンクし、これは、図1に図示するように、ミトコンドリア膜透過性のBAX依存的増加を活性化するか、またはミトコンドリアを迂回してアポトーシス分解を直接的に誘発することができる。FAS誘発性アポトーシスは、そしておそらくTNF誘発性アポトーシスも、jun−n−末端キナーゼ(JNK)活性化を介して、p53誘発性アポトーシスにリンクしうる(図1に図解)。FAS受容体は、細胞障害後に、特にDNA損傷剤によって誘発される細胞障害後に、p53によってアップレギュレートされうることも示されている。このp53誘発性アップレギュレーションは、FAS/FASリガンド依存的経路ならびにp53および免疫/サイトカイン経路によるアポトーシスを誘発することができる。
ADおよび緑内障性ニューロンアポトーシスにおけるノルアドレナリン
青斑(LC)中のノルアドレナリン作動性ニューロンは、ADでは初期に大規模に失われ、この疾患に特有なNFT形成を示す。頭側に投射しているLCニューロンの軸索は、ADにおいて顕著なニューロン喪失を起こす前脳領域(皮質、中隔、海馬および視床を含む)に、密な終末分枝を形成する。ADでは、ノルアドレナリン(NA)含有LCニューロンの喪失に合わせて、これらの領域がNA濃度の著しい低下を起こす。LC終末は、チロシンのドーパへの変換を触媒するチロシンヒドロキシラーゼ(TH)と、ドーパミンをNAに変換するドーパミン-β-ヒドロキシラーゼ(DBH)とを含有する。ADでは、皮質や海馬のような変性領域におけるTHおよびDBH免疫陽性終末の著しい減少が、免疫細胞化学によって示されている。当初、ADにおけるノルアドレナリン作動性LC終末喪失の主要効果は、アドレナリン作動性受容体のNA活性化の喪失によってもたられると提唱された。LC終末はα−アドレナリン作動性受容体を介して脳の微小血管および毛細管を神経支配し、それらの感受性を増加させると共に、局所血流量を減少させることがある。
現在、ノルアドレナリン作動性終末がニューロン上またはニューロン近傍で終末して、ノルアドレナリンを放出することができ、それがそれらニューロン上のα−アドレナリン作動性受容体またはα−アドレナリン作動性受容体を活性化することが知られている。α2−アドレナリン作動性受容体は、交感神経節、脊髄、脳幹、中隔、海馬および皮質のニューロンを含む多種多様なニューロンおよび/またはそれらの終末上に示されている。α−アドレナリン作動性受容体は脳内に広く、しかし不均質に分布している。それらは大脳皮質、海馬および種々の視床下部核では豊富であるが、視床核(外側膝状核および内側膝状核を除く)および中隔核にはほとんど存在しない。
α2−アドレナリン作動性受容体はADにとっては特に重要でありうる。α2−アドレナリン作動性受容体結合はAD死後脳の皮質および海馬では減少している。LCニューロンとそのノルアドレナリン作動性終末の喪失には、おそらく、それらが神経支配するニューロン上のα2−アドレナリン作動性受容体の減少が付随して起こるか、またはこれらのα2−アドレナリン作動性受容体を持つニューロンがADでは失われる。α2−アドレナリン作動性受容体を薬理学的に活性化すると、ヒトの認知機能が改善し、虚血などの傷害への曝露後に起こる中枢ニューロン喪失も減少することが見いだされている。
α2−アドレナリン作動性受容体は、Gタンパク質依存的シグナル伝達系路またはGタンパク質に依存しないシグナル伝達機構により、数多くの異なる細胞内作用を媒介することができる。アポトーシスとの関連では、これらの受容体の活性化は、ホスファチジルイノシトール-3-キナーゼ(PI3−キナーゼ)に依存する経路により、プロテインキナーゼB(Akt)のリン酸化を誘発することができる。リン酸化されたAktは、数多くの転写依存的および翻訳後シグナル伝達経路により、抗アポトーシスを媒介する。リン酸化Aktの主要作用は、いくつかの形式のアポトーシス分解に関して、その原因となるミトコンドリア膜透過性の増加を防止することまたは減少させることにある。例えば、リン酸化Aktは、BCL−2およびBCL−XLの合成を維持するか増加させて、BADがBCL−2/BADまたはBCL−XL/BADヘテロ二量体の形成によってこれらのタンパク質を不活化するのを防止する。BCL−2およびBCL−XLは、BAX、BAKおよびBIDの作用によって起こるミトコンドリア膜透過性の増加に対抗し、その結果として、アポトーシス分解のためのシグナルを伝達するミトコンドリア因子の放出を防止するか減少させる。したがって我々は、ノルアドレナリン、2-アドレナリン作動性受容体アゴニストおよびBDNFは、それゆえに、α2−アドレナリン作動性受容体またはTrk B受容体(BDNFの神経栄養性受容体)を発現させるニューロンのアポトーシスを減少させ、ADにおけるニューロンをアポトーシスから保護することができると考える。また、ADにおけるLCニューロンの喪失によるNA放出の減少は、AD病理発生の一因であると見なされているAペプチドおよび/またはリン酸化タウ機構が引き起こすアポトーシスに対して、皮質、中隔、海馬および視床におけるニューロンの脆弱性を増加させうるとも主張できるだろう。
理論に束縛されることは望まないが、我々はさらに、RGCでのNA媒介性抗アポトーシスの同様の喪失または減少が、ADにおけるRGCの喪失およびこの疾患における緑内障の高い発生率の説明になりうるという仮説を設ける。B−HT920やUK14304(ブリモニジン)のようなアドレナリン作動性α−受容体アゴニスト、またはベタキソロール、メトロポロールまたはチモロールのようなα1−アンタゴニストは、少なくとも一つには、毛様体上皮に作用することにより、眼房水の産生量を減少させるか、眼房水の流出を増加させることで、緑内障におけるIOPを低下させるために使用されてきた。毛様体上皮中のアドレナリン作動性受容体の他に、網膜組織も、β2、α1およびα2アドレナリン作動性受容体を含有することが見いだされている。
ブリモニジンやクロニジンのようなα2−アドレナリン作動性受容体アゴニストは、網膜虚血、視神経挫滅またはIOP上昇後のRGC喪失を減少させている。同様に、α1−アンタゴニストであるベタキソロールも、網膜虚血または興奮毒曝露後のRGC喪失を減少させると報告されている。網膜培養における最近の研究でも、ブリモニジンおよびベタキソロールが、興奮毒によって引き起こされるRGC喪失を減少させることが、同様に示されている。したがって、α2−アドレナリン作動性受容体の活性化はRGCの死を減少させることができるが、α−アドレナリン作動性受容体の遮断はRGCの死を減少させることができない。我々の研究室における研究では、α2−アドレナリン作動性受容体アゴニストが、栄養補給停止、キナーゼ阻害剤、ミトコンドリア毒素および興奮毒によって引き起こされる培養ニューロン様細胞または初代ニューロン培養におけるアポトーシスを減少させるうること、そしてその抗アポトーシスが、α2−アドレナリン作動性受容体アンタゴニストによって競合的に遮断されうることが示された。抗アポトーシスは、BCL−2レベルおよびリン酸化Aktレベルの増加に関係するミトコンドリア膜不透過性の維持に依存する。
ADにおいて、中枢ニューロンとRGCとは、どのようにして共通のアポトーシス機構を持ちうるだろうか。網膜におけるNAの役割は論争の的になってきたが、ウシ、サルおよびヒト網膜の内網状層および神経節細胞層中のNA含有軸索を示す証拠が、DBH免疫細胞化学によって得られていることから、NA線維はRGCの細胞体または樹状突起の上または近傍で終末することが示唆される。NAはウシ網膜の内網状層および内顆粒層中に示されている。α2−アドレナリン受容体結合は、解離ウシまたはサル網膜中に示されている。これらの知見は全体として、内網膜が、RGC上のα2−アドレナリン作動性受容体の領域にNAを放出するノルアドレナリン終末を含有することを示している。内網膜中のNA含有軸索終末の供給源はまだわかっていない。NA含有細胞体は網膜中には見つかっていない。これは、網膜外ニューロンが網膜中にノルアドレナリン作動性軸索を送り込んでいることを示唆している。おそらくNA含有軸索は、血管の表面上を網膜まで到達するか、または視神経を通って網膜に達しうるのだろう。DBH免疫反応性軸索がウシ視神経中に示されていることから、NA含有軸索は視神経を通って網膜に到達しうることが示唆される。LC、視床下部または交感神経節中のNA含有ニューロンが、NA含有軸索を網膜に送るかどうかを明らかにすることは重要であるだろう。というのも、特に、LCニューロンとそのNA含有軸索は、ADでは失われ、網膜も神経支配しうるからである。ADにおける、RGCと中枢ニューロンに共通するノルアドレナリン作動性神経支配の喪失は、ADにおけるRGCの緑内障性喪失の説明になるかもしれない。さらに、α2−アドレナリン作動性受容体アゴニストによるAD患者の全身的処置は、生き残っているニューロンによって保たれているα2−アドレナリン作動性受容体に作用することにより、ADにおけるRGCアポトーシスと中枢ニューロンアポトーシスの両方を遅延させうる。
方法:
オープンフィールド試験
水平(すなわち移動距離)運動と垂直(すなわち「立ち上がり(rear)」)運動とを識別するために2列の光ビームが側面に搭載されている透明なプラスチック製のオープンフィールド箱に、各動物を入れる。周囲条件は低騒音および薄明かりである。箱内での動物の運動を5分間測定し、「ビーム遮断」またはフォトビーム交差の回数およびタイプの記録から計算する。最後のオープンフィールド試験時には、立ち上がりだけを計数し、「サポート有り」または「サポートなし」に分類する。サポート有りの立ち上がりとは、立ち上がりが記録された時に、動物が少なくとも一方の前肢を箱の側壁に置いている場合である。サポートなしの立ち上がりでは、マウスは後肢だけで支えられている。これらの立ち上がりはビデオ記録によって識別される。サポートなしの立ち上がりの回数は、この試験におけるドーパミンニューロン喪失の最も信頼できる尺度である。
尾懸垂試験
マウスを、3回ずつ、毎回約10秒間にわたって、その尾でぶら下げる。各マウスは、机の表面から約30cmの高さに、その尾の根元で、そのマウスが左か右に回転するまでぶら下げる。左回転には0のスコアを与え、右回転には1のスコアを与える。
尾懸垂中の前肢の位置にも注目する。肢の位置に4段階評価のスコアを与える。肢を伸ばしているか頭より上に置いている場合は、0のスコアを与える。肢を抱えているか、体に密着させている場合は、3のスコアを与える。1または2のスコアは、上記の両極の間の相対的段階に割り当てる。後肢の位置も後述のように点数化する。
巣作り
1つの群から得た同じ性別のマウス4匹を1つのプラスチック桶に入れる。紙タオルの条片を8本、きちんと重ねて桶の前におく。その紙タオルからの巣作りを、処置の24時間、48時間、72時間および96時間後に点数化する。スコアは以下のように割り当てる。0=紙が細断され、頭上の覆いを持つ完全な巣に形造られている。1=紙が細断され、頭上の覆いを持たない完全な巣に形造られている。2=紙はわずかに細断されるか噛まれており、一箇所に大雑把に集められている、3=紙はわずかに噛まれているが、集められているようには見えない、4=集められているようには見えない。
ニューロン計数
MPTP注射の55〜60日後の間に、ナトリウムネンブトールを使ってマウスを屠殺する。マウス脳にリン酸緩衝食塩水を灌流した後、ラナ(Lana)の固定液(パラホルムアルデヒドおよびピクリン酸)を灌流する。脳を取り出し、7〜10日間、ラナの固定液中に置く。次に、ビブラトームを使って、脳を50マイクロメーターずつ冠状に切片化する。そして、それらの切片を、ドーパミン合成の律速酵素であるチロシンヒドロキシラーゼに対する抗体で染色する。次に切片を100倍の倍率で検鏡した。SNおよびVTAでの細胞計数のために、組織薄片(ブレグマ後方−2.9mmおよび−3.6mm)を選択した。これらの切片は、それぞれSNの吻側半分の中点および尾側半分の中点にある。2〜6本の神経突起を持つ明瞭に見える各TH標識細胞をニューロンとみなす。各動物の総合平均計数値を、4つの切片(吻側、尾側、左および右)から計算する。4つの切片について平均を求める。SNおよびVTAからのニューロン数について個別の解析を行う。これらの数を反復測定ANOVAを使って解析した後、フィッシャーのHSD法を使って群間効果の検定を行う。
実験手順
ピリジン系毒素、1-メチル-4-フェニル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン(MPTP)の全身性注射を受けたマウスは、黒質(SN)および腹側被蓋野(VTA)中の多数のドーパミン作動性ニューロンを選択的に失う。SNにおけるドーパミン細胞の喪失は、パーキンソン病に見られる臨床状態を模倣している。VTAにおけるそのような細胞の喪失は、これらのニューロンが前頭皮質に投射していることから、パーキンソン病およびアルツハイマー病に見られる認知障害の一因となりうる。
30匹のC57B1/B6型マウス(8〜12週齢)を実験使用前に12〜14日間馴化させる。次にマウスを以下の群に無作為に割り当てる。MPTP+DMSO賦形剤、賦形剤のみ、およびMPTP+ブリモニジン(3mg/kg/日)。
今説明しているアッセイでは、次に、各マウスを初回オープンフィールド試験および尾懸垂試験にかける。オープンフィールド試験は、最もよく使用されるMPTP処置マウスの行動アッセイであり、黒質からのドーパミン作動性入力の喪失に鋭敏なようである。尾懸垂試験は直接的な線条体損傷に鋭敏である。巣作り試験は前頭皮質からの線条体入力の喪失に鋭敏である。
3つのマウス群のうちの2群に、試験化合物(または化合物を含まない賦形剤)を注入する。これらの注入液は、皮下移植した浸透圧ミニポンプから、0.25マイクロリットル/時間の流速で14日間にわたって投与する。ポンプの移植から3日後に、これらのマウスを、ミニポンプを移植していない対照マウス群と共に、オープンフィールド試験および尾懸垂試験にかける。試験直後に、ポンプ含有マウスには、40mg/kgのMPTPを皮下注射した。次に、すべての群を、MPTP処置の10〜12日後および30〜40日後に、オープンフィールド試験および尾懸垂試験にかける。オープンフィールド試験および尾懸垂試験を、MPTP処置の50〜55日後に行う。
全ての行動試験について、最初に反復測定ANOVAを使って結果を解析した後、フィッシャーのHSD法を使って群間効果の検定を行う。
結果
オープンフィールド試験
MPTP処置の前には、移動距離または立ち上がり回数に関して、3つの群間に有意差はない。
賦形剤群は、MPTP処置後10日および30日で、対照群よりも有意に活動的である。ブリモニジン処置マウスでは、この高い活動性に違いが見られない。したがって、この群と賦形剤群との間に有意差はない。
MPTP処置は、MPTPの10日後に、総立ち上がり回数の減少を引き起こすようである。30日後に、総立ち上がり回数に対するMPTP効果はなく(賦形剤群と比較)、対照群に対して立ち上がり回数がわずかに減少するだけである。
賦形剤群ではサポートなしの立ち上がりが正常マウスより少ない。サポート有りの立ち上がりに対するMPTPまたは化合物の効果はない。
尾懸垂試験
尾懸垂試験において、MPTP処置の前に有意な群差は観察されず、MPTP後も後肢には認められなかった。MPTPOは、障害後の3時点の全てで、前肢の伸長を有意に損なった。したがってこの障害は時間と共に回復しない。ブリモニジンは、該化合物が投与されている期間中は、この障害を減少させない。しかしブリモニジンは、投与後(すなわち化合物投与の14日後)に測定すると、障害を減少させる傾向がある。
ニューロン数
MPTP処置動物は、黒質に、無処置動物よりも58%少ないニューロンを持つ。しかし、ブリモニジンを投与した動物ではニューロン喪失が有意に少ない。
Figure 2006504741
腹側被蓋野では、MPTPは、対照群と比べてニューロンに28%の平均減少をもたらすことがわかった。ブリモニジンはこの喪失を平均で約10%減少させた。
上記の実施例は本発明の好ましい態様を例示するものであって、本発明の範囲を制限しようとするものではない。本発明は特許請求の範囲によって定義される。

Claims (6)

  1. 脳の神経変性状態を処置する方法であって、その必要がある哺乳動物の脳に、ブリモニジンまたはその医薬的に有効な塩を含む組成物を処置有効量で投与することを含む方法。
  2. 前記組成物を前記哺乳動物の脳に全身的送達によって投与する請求項1に記載の方法。
  3. 前記組成物の投与が、腹側被蓋野、青斑および黒質からなる群より選択される前記哺乳動物の脳の一領域にまたは一領域から投射しているニューロンの死または変性を防止するのに有効である請求項2に記載の方法。
  4. 前記神経変性状態がパーキンソン病である請求項1に記載の方法。
  5. 前記神経変性状態がアルツハイマー病である請求項1に記載の方法。
  6. 黒質、青斑および腹側被蓋野からなる群より選択される脳の一領域にまたは一領域から投射している神経細胞の死または変性を防止する方法であって、その必要がある哺乳動物に、ブリモニジンまたはその医薬的に有効な塩を含む組成物を投与することを含む方法。
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